説明

凝集ゼオライト吸着剤と、その製造方法および工業ガスの非極低温分離での利用

【課題】改良された凝集塊状ゼオライト吸着剤およびその製造方法および工業ガスの非極低温分離での使用。
【解決方法】Si/Al比が1であるフォージャサイトXの凝集塊。この凝集塊の不活性バインダはアルカリ性溶液でゼオライト化して活性ゼオライトに変換され、リチウム交換される。本発明吸着剤は窒素吸着能(1バール/25℃)が少なくと26cm3/gで、空気からの非極低温でのガスの分離および水素精製の優れた吸着剤になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業ガスの非極低温分離に用いられる吸着剤に関するものであり、特に、空気等のガス中の窒素を吸着分離したり、COおよび/またはN2を吸着して水素を精製するのに用いられる吸着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体混合物からの窒素の分離は工業的な非極低温分離プロセスの基礎であり、特にPSA(Pressure Swing Adsorption、圧力変動吸着)法による空気からの酸素の製造は最も重要なものの1つである。この用途では圧縮した空気を窒素分子に対して大きな選択性を有する吸着カラムに通す。この吸着サイクル中に約94〜95%の酸素およびアルゴンが得られる。一定時間後、カラムを減圧し、低圧に保って窒素を放出させる。その後、生成した酸素の一部によって再圧縮してサイクルを継続する。極低温プロセスと比べた場合の上記方法の利点は設備がはるかに簡単であり、メンテナンスがはるかに容易な点にある。しかし、競争に耐え得る効率の高い方法であるためには、使用する吸着剤の品質が鍵になる。
吸着剤の性能はいくつかのファクタに関係するが、特に、窒素吸着能(カラムの寸法を決定するための決定要因)、窒素/酸素選択性(生成した酸素と導入した酸素との比)および吸着速度(サイクル時間の最適化と、設備の生産性を向上させる)を挙げることができる。
窒素に対する選択性を有する吸着剤としてモレキュラーシーブを使用する方法は広く知られている。マックロビー(McRobbie)の下記米国特許には少なくとも0.4nm(4Å)の孔径を有するゼオライトを用いた酸素/窒素混合物の分離方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第3,140,931号明細書
【0003】
マックキー(McKee)の下記米国特許にはゼオライトの各種イオン型、特に選択性の点で最も効率が良いといわれるリチウム型の性能比較が行われている。
【特許文献2】米国特許第3,140,933号明細書
【0004】
しかし、フォージャサイト構造のリチウム型への交換が困難であるため、このゼオライトの利用は制限されている。
チャオ(Chao)の下記米国特許以来、この吸着剤の能力が十分に高い交換率、典型的には88%以上の交換率を有することは知られている。
【特許文献3】米国特許第4,859,217号明細書
【0005】
カルシウムイオンによる交換は容易であるので、カルシウムで交換したフォージャサイト構造または2つの二価イオンすなわちカルシウムとストロンチウムで交換したフォージャサイト構造に努力が傾けられた(例えば、Coeの下記特許文献4およびSircarの下記特許文献5参照)。
【特許文献4】米国特許第4,554,378号明細書
【特許文献5】米国特許第4,455,736号明細書
【0006】
Coeは交換されたイオンの水酸化状態が性能にとって特に重要であり、この状態が熱によって活性化されることを示している。
【0007】
吸着による水素の精製も工業的に非常に重要な方法であり、天然ガスの触媒を用いた改質、アンモニア精製設備またはエチレンプラントから発生する複数の成分より成る混合物からの水素の回収で用いられている。高純度の水素を得るためにはプレッシャースイング吸着の原理が用いられる。水素中に含まれる不純物は通常数ppm〜数%の割合で含まれるCO2、NH3、N2、CO、CH4およびC1〜C4の炭化水素である。実際にはアルミナまたはシリカゲルで構成されるベッドで水を吸着し、活性炭素で構成されるベッドでCO2およびCH4を吸着し、モレキュラーシーブでCOおよびN2を捕捉する。
最初の工業設備は1976年のUCCの米国特許に記載されており、現在に至るまで5A型のモレキュラーシーブがゼオライト型吸着剤として使用されている。
【特許文献6】米国特許第3,430,418号明細書
【0008】
エアリキッド(Air Liquide)の下記国際特許にはCOで汚染され且つCO2、直鎖または分岐鎖あるいは環状の飽和または不飽和C1〜C8炭化水素、窒素からなる群の中から選択されるそれ以外の不純物を少なくとも一種含有する混合気体中に含まれる水素を分離する方法を開示している。
【特許文献7】国際特許WO 97/45363号公報
【0009】
この方法では精製すべき混合気体を少なくとも二酸化炭素とC1〜C8炭化水素に対して選択性を有する第1のベッドと接触させ、次いで窒素に対して特異性を有する吸着剤(混合気体中に存在する窒素の大部分を吸着可能なもの)、例えばゼオライト5Aのベッドと接触させ、最後に少なくとも80%までリチウムによって交換されたSi/Al比が1.5未満のフォージャサイト型ゼオライトである第3の吸着剤のベッドと接触させて一酸化炭素を除去する。
モレキュラーシーブを用いた工業ガスの非極低温分離プロセスは益々重要になるので、高性能な吸着剤の開発はガス製造会社およびモレキュラーシーブ供給会社にとって重要な課題になっている。
【0010】
本発明は、一般に活性成分を構成するゼオライト粉末と結晶を顆粒状に凝集させるバインダとで構成される塊状吸着剤 (adsorbants agglomeres)に関するものである。バインダは吸着特性を持たず、その機能はカラムの加圧および減圧操作時に顆粒に加わる振動や運動に対して十分耐え得るだけの機械的強度を顆粒に与えることにある。
【0011】
バインダが吸着性能に全く寄与しないという欠点を解決するために、種々の手段が提案されてきた。その中でもバインダの一部または全部をゼオライトに変換する方法は予め500℃〜700℃の温度で焼成したカオリナイト族に由来するクレイを使用する場合には容易にできる。その変形例では純粋なカオリン顆粒を作り、それをゼオライトに変換する。この原理は下記非特許文献1に記載されており、95重量%以下のゼオライトと未変換の残留バインダとで構成されるゼオライトAまたはXの粒子の合成に適用され、成功している(ハウエルHowellの下記米国特許参照)。
【非特許文献1】ブレック達、D.W. Breck, John Wiley and Sons, New York、Zeolite Molecular Sieves
【特許文献8】米国特許第3,119,660号明細書
【0012】
カオリナイト族に属する他のバインダ、例えばハロイサイトがゼオライトに変換されてくる。ゼオライトXの製造ではシリカ源の添加が推奨されている(上記「ゼオライトモレキュラーシーブ」、第3頁)。
クズニキ(Kuznicki)とその共同研究者は、カオリンの凝集塊をSi/Al比が1であるゼオライトXに変換することが可能であることを明らかにした(下記米国特許参照)。
【特許文献9】米国特許第4,603,040号明細書
【0013】
しかし、反応が実質的に完了するまですなわち約95%のゼオライトXを含む顆粒が生成するまでに、50℃の温度で10日間程度を必要とするため、この操作は工業的には使用不可能である。この操作は40℃で5日間の熟成期間と、それに続く高温での結晶化とを組み合わせて実施する。
【0014】
下記日本国特許にはSi/Al比が1のゼオライトX顆粒を、カオリン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースと混合することによってSi/Al比の低い(1.0程度の)ゼオライトXの顆粒が得られることが開示されている。
【特許文献10】日本国特許第05-163015号(Tosoh Corp.)
【0015】
成形は押出しで行われる。得られた顆粒は乾燥され、600℃で2時間焼成され、その後、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム溶液に40℃で2日間浸漬される。
【0016】
これら2つの文献に従うと、ゲル法で製造されるゼオライトX(このゼオライトのSi/Al比は1.1〜1.5)よりもはるかに低いSi/Al比を有するゼオライトXを主成分とする機械的強度に優れた固体を調製することができる。しかし、これらの方法は洗練されたものではなく、反応時間が過剰に長く、あるいは操作段階の数が多いといういずれかの問題を有する。上記日本国特許に記載の成形段階後の熱処理は粒子の非晶質化に貢献せず、その後の苛性浸漬の目的はそれを再結晶化させることにある。プロセスの遅さはこれで説明される。
【0017】
本出願では、LSX (Low Silica X)という用語はSi/Al比の低いゼオライトXすなわちSi/Al比が1であるゼオライトXを表し、この値を中心として実験的偏差が許容される。これより低い方の値は測定の不正確さに対応し、高い方の値はシリカ含有率が高く、ナトリウムイオン(場合によってはさらにカリウムイオン)を含む不可避不純物が存在することに対応する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、少なくとも95%のゼオライトLSXを含む塊状ゼオライトを調製することができ、この塊状ゼオライトからリチウム交換によって窒素/酸素分離だけでなく窒素/一酸化炭素/水素分離でも優れた性能を示す吸着剤をはるかに簡単で迅速な方法で調製することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、下記段階(a)〜(c):
(a) ゼオライトLSXより成る凝集塊を約100℃の温度で塩化リチウム溶液で1回または複数回交換し、必要な場合にはLSXの交換可能なカチオン部位を周期律表IA、IIA、IIIAおよびIIIB族のイオン、ランタニド系または希土類金属の三価のイオン、亜鉛(II)イオン、第二銅(II)イオン、クロム(III)イオン、第二鉄(III)イオン、アンモニウムイオンおよび/またはヒドロニウムイオンでさらに交換し(好ましいイオンはカルシウム、ストロンチウム、亜鉛および希土類金属イオンである)、
(b) (a)で交換した凝集塊を、固体に対する塩化物含有率が十分低い値(0.02重量%以下)になるまで繰り返し洗浄し、
(c) (b)で洗浄した生成物を乾燥し、ゼオライト構造の劣化を引き起こさないような方法で熱で活性化させる
からなる、リチウム交換ゼオライトLSX(以下、LiLSX)の凝集塊の製造方法において、ゼオライトLSX本体が下記(i)〜(v) 段階で得られることを特徴とする方法を提供する:
(i) ゼオライトLSX粉末をゼオライトに変換可能なクレイを少なくとも80%含むバインダーで凝集させ、
(ii) (i)で得られた混合物を成形し、
(iii) 乾燥後に500〜700℃、好ましくは500〜600℃の温度で焼成し、
(iv) (iii)で得られた固体生成物を少なくとも0.5モル濃度の苛性水溶液と接触させ、
(v) 洗浄し、乾燥し、ゼオライト構造の劣化が起こらない方法で300〜600℃、好ましくは500〜600℃で活性化させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
バインダーのゼオライトへの変換は段階(iv)で苛性溶液の作用で起こる。この苛性溶液は少なくとも0.5Mでなければならず、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの溶液にすることができ、水酸化ナトリウム+水酸化カリウムを合わせた量に対して水酸化カルシウムが最大で30モル%の割合で存在する。水酸化ナトリウム溶液を使用するのが有利である。
ゼオライトへの変換を水酸化ナトリウムを用いて行う場合にはカラムで行うのが特に有利である。すなわち、構造からカリウムを除去することができ、後のリチウム交換の際にリチウム排出液中にカリウムが存在せず、従って、選択的再結晶化処理の負担が少なくなるという利点がある。
【0021】
このゼオライトへの変換はゼオライトへの変換速度が適度な値になるような温度で実施する。
ゼオライトに変換可能なクレイはカオリナイト(kaolinite)、ハロイサイト(halloysite)、ナクライト(nacrite)、またはジッカイト(dickite)に属する。カオリンは極めて簡単に使用できる。
リチウム交換操作と上記のカチオン性部位の交換操作は当業者に周知の条件で行われる。リチウムおよび他のカチオンの消費を最小限に抑えるためにこれらの操作をカラムで行うのが好ましい。
(c)段階のLiLSXsの活性化は構造を維持するために、欧州特許第0,421,875号に従って、カラム内で高温の空気を用いて活性化する方法が推奨される。
【0022】
本発明を工業的に利用する場合、塊状ゼオライトをリチウムで交換し、必要に応じてさらに、周期律表のIA、IIA、IIIAおよびIIIB族、ランタニド系または希土類金属の三価のイオン、亜鉛(II)イオン、第二銅(II)イオン、クロム(III)イオン、第二鉄(III)イオン、アンモニウムイオンおよび/またはヒドロニウムイオンを含む群から選択される1つまたは複数のイオンで交換する。その交換率(段階(a)で交換されるカチオン性部位の合計に相当)がゼオライト中の全カチオン性部位に対して80%以上、好ましくは95%とし、
リチウムが全交換率の少なくとも50%を占め、
カルシウムは全交換率に対して最大で40%を占めることができ、
ストロンチウムは全交換率に対して最大で40%を占めることができ、
亜鉛は全交換率に対して最大40%を占めることができ、
希土類金属は全交換率に対して最大50%を占めることができる。
本発明の塊状ゼオライトは空気からガスを分離するための非常に優れた窒素の吸着剤でり且つ水素精製用の非常に優れた窒素および/または一酸化炭素の吸着剤である。交換率(段階(a)で交換されるカチオン性部位の合計に相当)がゼオライト中の全カチオン性部位に対して95%以上である塊状ゼオライトは特に好ましく、25℃、1バールにおける窒素吸着能が26cm3/g以上である。吸着プロセスは一般にPSAまたはVSAプロセスを用いる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例】
【0023】
実施例1
水酸化カリウムを用いた従来のフォージャサイトLSXの調製
下記溶液を混合してSi/Al比が1のフォージャサイト型ゼオライトを合成する。
溶液A
136gの水酸化ナトリウムと73gの水酸化カリウム(純粋物)を、280gの水に溶解する。溶液を100℃〜115℃の沸点に加熱した後、78gのアルミナを溶解する。溶解後、溶液を放冷し、蒸発した水を補うために水を加えて570gとする。
溶液B
300gの水と235.3gの珪酸ナトリウム (SiO2で25.5%、Na2Oで7.75%)とを緩やかに撹拌しながら混合する。レイネリ(Rayneri)型の解凝集型タービンミキサを用いて2500rpm(周速=3.7m/s)で激しく撹拌しながら約2分かけてアルミン酸塩溶液に珪酸塩溶液を添加し、その後、精製したゲルを撹拌せずに24時間60℃に放置する。24時間経過後、静置によってかなり分離する。これは結晶化プロセスの特徴である。その後、混合物を濾過し、固体1gあたり約15mlの水を用いて残渣を洗浄する。続いて残渣を80℃のオーブンで乾燥させる。ゲルの組成は次の通りであり:
4Na2O・1.3K2O・1Al2O3・2SiO2・91H2
合成で得られた固体の化学分析の結果は下記組成である:
0.77Na2O・0.23K2O・2SiO2・1Al23
X線回折分析の結果、生成した粉末はほぼ純粋なフォージャサイトで構成されており、痕跡量のゼオライトAを含む。ゼオライトAの含有率は2%以下であることが確認された。不活性雰囲気下、550℃で2時間焼成後、トルエン吸着能を測定したところ、分圧0.5、温度25℃での吸着能は22.5%であった。
【0024】
実施例2
塊状LiLSXの調製
42.5gの粉末(焼成後の当量)、7.5gの繊維状クレイ(焼成後の当量)、1gのカルボキシメチルセルロースおよび水(直径1.6mm、長さ約4mmの押出し物にするのに必要な量の水)を混合して、粉末の一部を成形する。押出し物を80℃で乾燥し、次いで、不活性雰囲気下、550℃で2時間焼成する。その後、1Mの塩化リチウム溶液を固体1gあたり20mlの割合で使用して、連続5回の交換を行う。各交換操作は100℃で4時間行い、間に各段階の過剰な塩を除去するための洗浄操作を行う。最終段階として室温で4回洗浄操作(20ml/gの割合で)を行い
、濾紙上の残留塩化物レベルを0.05%以下まで低下させる。得られた固体の特徴は下記の通り:
トルエン吸着能
(25℃、P/Po=0.5) 21%
Li交換度(%)
(Li2O/(Li2O+K2O+Na2Oで表される) 98.4%
【0025】
実施例3
本発明によるゼオライト化バインダで凝集した塊状LSXの調製
実施例1の粉末状ゼオライトLSXを、モンノリロナイト型のクレイ(15%)、カオリン型のクレイ(85%)、少量のカルボキシメチルセルロースおよび水の混合物で凝集させた。押し出し後、80℃で乾燥し、水蒸気を含まない不活性雰囲気下、600℃で2時間焼成した。
100mlの水を用いて16.7gの水酸化ナトリウムペレットおよび7.7gの水酸化カリウム(100%基準)を含む溶液を調製する。この溶液17mlに新たに焼成したゼオライトの顆粒10gを浸漬し、混合物全体を撹拌せずに95℃に加熱する。
3、6および24時間後に固体サンプルを取り、経時的な結晶度の変化をモニターした。各サンプルを20ml/gの割合で水に浸漬して洗浄し、塊状LSXは4回洗浄する。
【0026】
トルエン吸着能の測定は上記条件下で行い、下記の値を得た:
塊状LSX (NaOH+KOH未処理) 18.2%
塊状LSX (NaOH+KOH被処理、3時間反応) 21.7%
塊状LSX (NaOH+KOH被処理、6時間反応) 21.6%
塊状LSX (NaOH+KOH被処理、24時間反応) 21.6%
X線回析図から主成分のフォージャサイトと共に凝集前の粉末について測定された量と同様の痕跡量のゼオライトAの存在が示された。化学分析の結果、全体のSi/Al比は1.04 となり、これは所望の目的に相当する。硅素N.M.Rで測定したSi/Al比は1.01で、結晶格子の比に相当する。
【0027】
この実施例で吸着能ベースでのフォージャサイト型ゼオライトの含有率が少なくとも95%であるLSX粒子を得ることが可能であることが示された。同時に、反応は短時間(3時間未満)で行うことができ、熟成期間を必要とせず、米国特許第4,603,040号に記載の多量の孔形成剤(pore-forming agent)も不要である。
得られた固体を実施例1と同じ交換操作して得られた吸着剤は下記特徴を示す:
トルエン吸着能
(25℃−P/Po=0.5) 23.9%
Li交換率(%)
(Li2O/Li2O+Na2O+K2Oで表される 98.1%
【0028】
実施例4
本発明によるゼオライト化バインダで凝集した塊状LiLSXの調製
実施例1の粉末状ゼオライトLSXを、モンノリロナイト型のクレイ(15%)、カオリン型のクレイ(85%)、少量のカルボキシメチルセルロースおよび水の混合物で凝集させた。押出し後、80℃で乾燥し、水蒸気を含まない不活性雰囲気下で600℃で2時間焼成した。
凝集塊10gを220g/lの水酸化ナトリウム溶液17mlに95℃で3時間浸漬する。その後、凝集塊を水に浸漬させて4回洗浄する。
【0029】
上記の条件下でトルエン吸着能を測定し、下記の値を得た:
塊状LSX(未処理) 18.2%
塊状LSX(NaOH処理) 22.4%
この塊状LSXは優れたトルエン吸着能を有し、これは上記実施例よりも結晶度が高いことを反映している。さらに、硅素N.M.Rによって結晶格子のSi/Al比が1.01であることが確認された。
得られた固体を実施例1と同じの交換操作して得られる吸着剤は下記特徴を示す:
トルエン吸着能
(25℃−P/Po=0.5) 24.3%
Li交換率(%)
(Li2O/Li2O+Na2O+K2Oで表される) 982%
【0030】
実施例5
実施例2、3および4のLi含有吸着剤を0.002mmHgの減圧下300℃で15時間脱気後に25℃の恒温で窒素および酸素の吸着能を測定した。結果を以下にまとめて示す。
【0031】
【表1】

【0032】
この結果から本発明の吸着剤は吸着能が26cm3/g以上であるので、公知吸着剤より優れていると結論できる。
【0033】
実施例6
本発明によるゼオライト化バインダで凝集した塊状LiLSXおよび塊状LiCaLSXの調製
実施例3で調製された塊状LSXを1Mの塩化リチウム溶液(100℃)を用いて交換し、リチウム交換率が91%の(Li91LSX)の凝集塊を得た。
この凝集塊を0.23Mの塩化カルシウム溶液70℃)で1時間処理する。操作終了後、生成物を濾過し、凝集塊1gあたり10mlの水を用いて洗浄する。得られた凝集塊全体のリチウム+カリウム交換率は91%である。これは69%のリチウムと22%のカリウムとに分けられる(Li69Ca22LSX)。
【0034】
凝集塊を550℃の空気中で2時間焼成し、減圧下300℃で脱気した後、30℃でCOおよびN2吸着能を測定した。
結果を〔表2〕に示す。〔表2〕には2種類の気体に関する1バールにおける吸着能と、1バールにおける吸着能と0.2バールにおける吸着能との比が示してある。これによって温度を一定とした場合の情報が得られる。
【0035】
【表2】

【0036】
以上の結果から(リチウム+カルシウム)で交換された塊状吸着剤はCOおよびN2の吸着に関してリチウムのみで交換した塊状吸着剤と同様に挙動することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記段階(a)〜(c):
(a) ゼオライトLSXの凝集塊を約100℃の温度で塩化リチウム溶液で1回または複数回の交換し、必要な場合にはLSXの交換可能なカチオン部位を周期律表IA、IIA、IIIAおよびIIIB族のイオン、ランタニド系または希土類金属の三価のイオン、亜鉛(II)イオン、第二銅(II)イオン、クロム(III)イオン、第二鉄(III)イオン、アンモニウムイオンおよび/またはヒドロニウムイオンでさらに交換し、
(b) (a)で交換したゼオライトLSXの凝集塊を繰り返し洗浄し、
(c) (b)で洗浄した生成物を乾燥し、熱で活性化する
からなる、少なくとも95%のSi/Al比が1であるリチウム交換したゼオライトXからなる凝集したゼオライト本体を製造する方法において、
ゼオライトLSX本体が下記(i)〜(v) 段階で得られることを特徴とする方法:
(i) ゼオライトLSX粉末をゼオライトに変換可能なクレイを少なくとも80%含むバインダーで凝集させ、
(ii) (i)で得られた混合物を成形し、
(iii) 乾燥後に500〜700℃の温度で焼成し、
(iv) (iii)で得られた固体生成物を少なくとも0.5モル濃度の苛性水溶液と接触させ、
(v) 洗浄し、乾燥し、ゼオライト構造の劣化が起こらない方法で300〜600℃で活性化させる。
【請求項2】
苛性溶液が水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの溶液であり、この溶液中の水酸化カリウムの最大含有率が水酸化ナトリウム+水酸化カリウムの合計に対して30モル%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
苛性溶液が水酸化ナトリウム溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ゼオライトに変換可能なバインダーがカオリナイト、ハロイサイト、ナクライトまたはジッカイトに属する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ゼオライトに変換可能なバインダがカオリンである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法で得られる、少なくとも95%がリチウム交換されたゼオライトXで構成され、 必要に応じて1つまたは複数の周期律表IA、IIA、IIIAおよびIIIB族のイオン、ランタニド系または希土類金属のイオン、亜鉛(II)イオン、第二銅(II)イオン、クロム(III)イオン、第二鉄(III)イオン、アンモニウムイオンおよび/またはヒドロニウムイオンで交換されている、Si/Al比が1であるゼオライトの凝集塊。
【請求項7】
リチウムで交換された請求項6に記載のゼオライトの凝集塊。
【請求項8】
リチウムおよび/またはカルシウムおよび/またはストロンチウムおよび/または一種または複数の希土類金属で交換された請求項6に記載のゼオライトの凝集塊。
【請求項9】
1バール、25℃における窒素吸着能が26cm3/g以上である請求項6〜8のいずれか一項に記載のゼオライトの凝集塊。
【請求項10】
下記1)〜6)を特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載のゼオライトの凝集塊の工業ガスの非極低温分離での使用:
1) 段階(a)で交換される全カチオン性部位に対応する交換率がゼオライトの全カチオン性部位に対して80%以上であり、
2) リチウムが全交換率の少なくとも50%を占め、
3) カルシウムは全交換率に対して最大で40%を占めることができ、
4) ストロンチウムは全交換率に対して最大で40%を占めることができ、
5) 亜鉛は全交換率に対して最大40%を占めることができ、
6) 希土類金属は全交換率に対して最大50%を占めることができる。
【請求項11】
ゼオライトの凝集塊の、空気分離での窒素の吸着における請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ゼオライトの凝集塊の、水素精製での窒素および/または一酸化炭素の吸着における請求項10に記載の使用。
【請求項13】
ゼオライトの凝集塊の、PSAまたはVSAプロセスにおける請求項10〜12のいずれか一項に記載の使用。

【公開番号】特開2009−13058(P2009−13058A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209629(P2008−209629)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【分割の表示】特願平10−204889の分割
【原出願日】平成10年7月21日(1998.7.21)
【出願人】(591054521)セカ ソシエテ アノニム (4)
【氏名又は名称原語表記】CECA SOCIETE ANONYME
【Fターム(参考)】