説明

凝集樹脂粒子の製造方法

【課題】粗大粒子の混入が少なく、粒度分布が狭い樹脂粒子を連続的に得ることができる凝集樹脂粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有するマイクロリアクターを準備する工程、並びに、少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体を第1の流路に導入し、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体を第2の流路に導入し、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して前記第2の流体の単位時間あたりの流量が大きくなるように流し、前記合流流路において前記第1の流体と前記第2の流体とが合流した層流を生じさせ、前記樹脂粒子を凝集させる工程を含むことを特徴とする凝集樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に「微細加工を利用して作られ、等価直径が500μm以下の微小な流路で反応を行う装置」と定義されているマイクロリアクターに代表される微小な素子や装置は、例えば、物質の分析、合成、抽出、分離を行う技術に応用した場合、少量多品種、高効率、低環境負荷などの多くの利点が得られるため、近年、様々な分野への応用が期待されている。
また、従来の凝集樹脂粒子の製造方法としては、例えば、バッチ式による製造方法が挙げられ、具体的には、特許文献1及び2が例示できる。
また、特許文献3には、少なくとも樹脂と着色剤とを含有するトナー組成物を含むトナー組成物流体を、一定の周波数で振動させたノズルから吐出させて、液滴とし、該液滴を固化させ粒子化することを特徴とするトナー製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−2922号公報
【特許文献2】特開平11−2923号公報
【特許文献3】特開2006−293320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粗大粒子の混入が少なく、粒度分布が狭い樹脂粒子を連続的に得ることができる凝集樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の<1>に記載された手段によって達成された。好ましい実施態様である<2>乃至<7>と共に以下に示す。
<1>第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有するマイクロリアクターを準備する工程、並びに、少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体を第1の流路に導入し、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体を第2の流路に導入し、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して前記第2の流体の単位時間あたりの流量が大きくなるように流し、前記合流流路において前記第1の流体と前記第2の流体とが合流した層流を生じさせ、前記樹脂粒子を凝集させる工程を含むことを特徴とする凝集樹脂粒子の製造方法、
<2>前記第1の流体及び前記第2の流体のどちらか一方に凝集剤を含む上記<1>に記載の凝集樹脂粒子の製造方法、
<3>前記第1の流体が、合流流路の内壁に接触せずに流される上記<1>又は<2>に記載の凝集樹脂粒子の製造方法、
<4>前記第1の流体が、樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤を含む上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の凝集樹脂粒子の製造方法、
<5>少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子を加熱する工程を含む上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の凝集樹脂微粒子の製造方法、
<6>前記マイクロリアクターが、前記合流流路に合流する第3の流路を備え、無機又は有機粒子が分散した第3の流体を第3の流路に導入し、少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子の外側に、さらに前記無機又は有機粒子を凝集させる工程を含む上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の凝集樹脂粒子の製造方法、
<7>前記無機又は有機粒子が、外添剤粒子、前記樹脂粒子、及び/又は、前記樹脂粒子とは異なる樹脂粒子である上記<6>に記載の凝集樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
上記<1>〜<4>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、粗大粒子の混入が少なく、粒度分布が狭い樹脂粒子を連続的に得ることができる凝集樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
上記<5>に記載の発明によれば、加熱する工程を含まない場合に比べて、樹脂粒子を連続的に合一することができる凝集樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
上記<6>又は<7>に記載の発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、凝集粒子の表面処理を連続的に行うことができる凝集樹脂粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターの一例を表す模式図である。
【図2】本発明の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターの他の一例を表す模式断面図である。
【図3】図2に示すマイクロリアクターの他の一例における流路合流部分の近傍の拡大模式断面図である。
【図4】本発明の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターのさらに他の一例を表す模式図である。
【図5】図4に示すマイクロリアクターのさらに他の一例を分解した状態を示す図であり、図中マイクロリアクター上部64は、底部から見た状態を示し、混合エレメント62及びマイクロリアクター下部66は、上部から見た状態を示す。
【図6】図5に示す混合エレメント62の一例を示す図である。
【図7】本発明の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターのさらに他の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有するマイクロリアクターを準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)、並びに、少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体を第1の流路に導入し、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体を第2の流路に導入し、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して前記第2の流体の単位時間あたりの流量が大きくなるように流し、前記合流流路において前記第1の流体と前記第2の流体とが合流した層流を生じさせ、前記樹脂粒子を凝集させる工程(以下、「凝集工程」ともいう。)を含むことを特徴とする。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、静電荷像現像用トナーの製造に好適に使用することができる。
なお、本発明における「凝集樹脂粒子」とは、単に凝集させた粒子だけでなく、凝集させた後、任意の工程を経た粒子も含まれるものとする。例えば、本実施形態における「凝集樹脂粒子」は、凝集させた後、融合合一した粒子も含まれる。
以下、図面も参照しながら、本実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(マイクロリアクター(準備工程))
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有するマイクロリアクターを準備する工程を含む。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に用いることができるマイクロリアクターは、第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有する。
【0010】
また、本実施形態において用いることができるマイクロリアクターは、マイクロスケールの複数の流路(チャンネル)、例えば、数μm以上数千μm以下の幅の流路を有する反応装置である。
マイクロリアクターの流路は、マイクロスケールであるので、寸法及び流速がいずれも小さく、レイノルズ数は2,300以下である。したがって、マイクロスケールの流路を有する反応装置は、通常の反応装置のような乱流支配ではなく層流支配の装置である。
ここで、レイノルズ数(Re)は、以下の式にて定義される。
Re=uL/ν
(u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
レイノルズ数(Re)がおおよそ2,300以下である時、層流支配となる。
また、マイクロチャネルとは、マイクロスケールの流路のことを示すが、それらを含む装置のことを示す場合もある。また、総称としてマイクロリアクターという場合もある。
【0011】
マイクロリアクターは、従来の装置のように乱流を反応の場とするのではなく、層流を反応の場とすることを可能とするものである。
層流支配のもとにおいて、2種類以上の異なる流体を層流とした場合には、2種類以上の異なる流体よりなる層流の界面領域において、流体中の物質の濃度差による拡散が生じ、その結果、濃度差に基づく物質の移動が生じる。また、拡散速度は分子量の大きい分子ほど遅い。
層流を反応の場とすると、例えば、2液を混合する場合には、2液の界面領域の相互拡散により混合することができる。また、マイクロスケールの空間では比界面積が大きいため、このような界面での拡散混合を行う場合に有利である。
【0012】
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターにおける第1の流路、第2の流路、及び、合流流路が任意の配置により合流していればよいが、合流流路において第1の流体と第2の流体とが層流を形成して合流することができる配置であることが好ましい。
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターとして具体的には、第2の流路の内部に第1の流路が同心円状に配置したもの、Y字型に配置したもの等が好ましく例示でき、また、第1及び第2の流体以外の他の流体を流す流路を配置したもの、例えば、マイクロ流路における壁面の効果を減少させるシース流を前記他の流体により形成するように配置したものも好ましく例示できる。
【0013】
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターは、第1の流体が、合流流路の内壁に接触せずに流されるものであることが好ましく、さらに図1に示すように第2の流路の内部に第1の流路が同心円状に配置された構造を有するものであることがより好ましい。なお、上記場合においても、第1の流体は、第2の流体を含む他の流体に拡散していき、その下流において最終的には合流流路の内壁に接触してもよい。
第1の流体が合流流路の内壁に接触せずに流されることにより、凝集樹脂粒子等の合流流路内壁への付着を防ぐことができ、粗大粒子の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態において、粗大粒子とは、粒径分布を有する粒子の中で大きい粒径を有する成分をいい、その粒子の体積平均粒径に対し、特に2.5倍以上の粒径を有する粒子をいう。
また、本実施形態に用いることができるマイクロリアクターは、第1の流路の内壁と合流流路の内壁とが連続的に形成されていないものであることが好ましい。
【0014】
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターは、第1の流路、第2の流路、及び、合流流路以外に他の流路を有していてもよい。
他の流路は、第1の流路、第2の流路又は合流流路に任意の位置で合流してもよく、また、第1の流路、第2の流路及び合流流路とは合流せず、独立して形成されていてもよい。
また、本実施形態に用いることができるマイクロリアクターは、第1の流路の流路径よりも合流流路の外周流路径のほうが大きいことが好ましい。上記態様であると、凝集を安定して行うことができる。
さらに、これらの流路に流す流体の流量を制御する機能を付加してもよい。このような機能としては、開閉やその程度により流体の流量を調節することができるシャーター機能や、流体やマイクロリアクターに脈動や振動を与える機能が例示できる。例えば、流体に脈動を与える機能を付加することにより、流路に流す流体を、液滴状に吐出させることもできる。
【0015】
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターには、加熱装置や冷却装置等の温度調節装置を設置することができる。その際、温度制御装置を用いて温度の管理を行うことが好ましい。また、温度調節装置はマイクロリアクター内に作り込むこともできる。また、本実施形態においては、温度制御のために装置全体を温度制御された容器中にいれてもよく、分散液の混合状態を観察・制御するために、マイクロリアクターに分析装置等を設置する又はマイクロリアクター内に作り込むこともできる。
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターは、合流流路内において温度の調節が可能な温度調節装置を備えていることが好ましく、合流流路部分にヒーター又はマイクロ波照射装置を備えていることがより好ましい。合流流路内の流体を適度な温度に加熱することにより、樹脂粒子等の凝集を効率的に行うことができる。また、ヒーターとしては、金属抵抗やポリシリコン等が好適に用いることができる。
また、マイクロ波照射装置を用いて加熱を行った場合、非常に短時間で流体を加熱でき、また、照射した部分を均一に加熱することができる。
【0016】
前記マイクロ流路の直径又は長辺(流路径)は、合流流路の部分において、5,000μm以下であり、好ましくは10μm以上1,000μm以下の範囲であり、より好ましくは30μm以上500μm以下の範囲である。なお、流路の断面が円形や正方形、長方形でない場合における流路径は、流れ方向に対して垂直な面により切断した流路の断面積から求めた円相当径(直径)とする。
また、流路の深さは10μm以上500μm以下の範囲であることが好ましい。
さらに、合流流路の長さは、凝集剤の濃度や凝集速度、凝集時の温度等にもよるが、好ましくは5mm以上1,000mm以下の範囲であり、より好ましくは10mm以上400mm以下の範囲である。上記範囲であると、反応が十分終結し、また、凝集粒子が流路内壁に接触する機会を少なく、凝集粒子の付着による流路汚染を抑制することができる。
また、流路の形状については特に制限はなく、例えば、流れ方向に対し垂直な方向での断面形状が円形、楕円形、多角形(矩形を含む。)、ドーナツ形、ダルマ形など所望の形状とすることができる。
【0017】
マイクロリアクターの材質としては、第1の流体や第2の流体を流す時、及び、凝集時に特に問題が生じない材質であればよく、金属、セラミック、ガラス、ヒューズドシリカ、シリコーン、合成樹脂などの材料が例示でき、耐熱性及び耐薬品性に優れる点から、ガラス又はヒューズドシリカであることが好ましい。
また、前記マイクロリアクターの材質として使用する合成樹脂としては、耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性、透明性などの観点から、具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、クマリン樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が好ましく例示できるが、より好ましくはアクリル樹脂、エポキシ樹脂である。
また、前記熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、「高分子大辞典」(1994年、丸善(株)発行)に記載のものも、所望に応じ、好適に用いることができる。
【0018】
マイクロリアクターの大きさは、使用目的に応じ適宜設定することができる。
マイクロリアクターは、その用途に応じて、分離、精製、分析、洗浄等の機能を有する部位を有していてもよい。
また、マイクロリアクターには、必要に応じて、例えば、第1の流路及び第2の流路に流体を流入するための流入口や、マイクロリアクターから流体を回収するための回収口などを設けることが好ましい。
【0019】
また、マイクロリアクターは、その用途に応じて、複数を組み合わせたり、分離、精製、分析、洗浄等の機能を有する装置や、流入装置、回収装置、他のマイクロ流路デバイス等を組み合わせ、マイクロ化学システムを好適に構築することができる。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に用いることができるマイクロリアクターとして具体的には、以下に示すマイクロリアクターを好適に例示できる。
【0020】
図1は、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターの一例を表す模式図である。
図1に示すマイクロリアクター10は、第1の流路を形成する部材(第1の流路形成部材)24と第2の流路を形成する部材(第2の流路形成部材)26とが同心円状に配置された構造である。第1の流路形成部材24は第1の流路12を形成し、その外周に第2の流路形成部材26はドーナツ型の断面形状である第2の流路14を形成している。第1の流路形成部材24は、第2の流路形成部材26の途中までの長さの部材であり、第1の流路形成部材24の先端より下流において合流流路16を形成している。
第1の流路12には、樹脂粒子18を含む第1の流体Aが流されており、第2の流路14には凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体Bが流されている。
第1の流体Aと第2の流体Bとは、合流流路16において合流し、層流を形成しながら、その境界領域で徐々に互いに拡散していく(拡散部22)。この拡散部22において、凝集剤及び/又は凝集促進剤により樹脂粒子18を含む成分が凝集を起こし、凝集樹脂粒子20が形成される。
【0021】
図2は、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターの他の一例を表す模式断面図である。
また、図3は、図2に示すマイクロリアクターの他の一例における流路合流部分の近傍の拡大模式断面図である。
図2に示す装置30は、2つのタンク32,34、マイクロリアクター40、流入ポンプP1,P2、ヒーター48、容器50、及び、流路からなる。
タンク32には、樹脂粒子を含む第1の流体Aが入っており、また、タンク34には、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体Bが入っている。
タンク32内の第1の流体A及びタンク34内の第2の流体Bは、それぞれ流ポンプP1,P2により第1の流路42及び第2の流路44に流され、合流流路46において合流する。合流流路46内において、樹脂粒子を含む成分の凝集が起こり、凝集樹脂粒子が形成され、凝集樹脂粒子含有液52が得られる。前記凝集樹脂粒子含有液52は、容器50に回収される。
合流流路46には、ヒーター48が設置されている。
ヒーター48は、必要に応じ、温度制御装置により、その温度は調節されていてもよく、また、他の加熱装置や冷却装置を有していてもよい。
ヒーター48等の温度を調節する装置の設置位置は、特に制限はなく、任意の位置、例えば、マイクロリアクター40内に設けてもよく、また、装置30全体あるいはマイクロリアクター40全体を温度制御された容器中にいれてもよい。
【0022】
マイクロリアクター40の各流路(チャンネル)42,44,46は、マイクロスケールの流路である。
図2に示すようなマイクロリアクター40は、固体基板上に微細加工技術により好適に作製することができる。
前記微細加工技術としては、特に制限はないが、例えば、X線を用いたLIGA技術、フォトリソグラフィー法によりレジスト部を構造体として使用する方法、さらに、レジスト開口部をエッチング処理する方法、マイクロ放電加工法、レーザー加工法、ダイヤモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法等が挙げられる。これらの技術は単独で用いてもよく、また、組み合わせで使用してもよい。
【0023】
図4は、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH,Germany,IMM社)製のマイクロリアクターを記載したものであり、本実施形態に好適に用いることができる。
図5は、図4に示すマイクロリアクターのさらに他の一例を分解した状態を示す図であり、図5中マイクロリアクター上部64は、底部から見た状態を示し、混合エレメント62及びマイクロリアクター下部66は、上部から見た状態を示す。
図6は、図5に示す混合エレメント62の一例を示す図である。
【0024】
図4に示すマイクロリアクターは、図5に示すように、混合エレメント62、マイクロリアクター上部64及びマイクロリアクター下部66からなる。図5においては、これらの部品を分解した状態で記載しているが、実際の使用においては、図4に示すように、これらを組み立てて一体化して使用する。
図6に示す混合エレメント62は、表面に微細加工によって分割された流路、すなわち、図6中に記載したような形状の溝によって混合エレメントの両側から分割された流路が形成されている。ここに反応に使用する第1の流体及び第2の流体を導入することによって、多数の副流が得られる。
上記分割された流路の1つ当たりの幅は、混合の観点から100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されるものではないが、製造上、数μmのオーダーである。また、流路の深さは特に限定されるものではないが、例えば、10〜500μmとすることができる。
混合エレメント62の分割された流路は、エレクトロニクス技術において用いられている微細加工技術を適用することによって形成することができる。
【0025】
図5中のマイクロリアクター上部64は、2つの注入口68及び1つの排出口70が設けられている。注入口68は、注入流路74に続いており、注入流路74の終端部は、混合エレメント流路端部78につながっている。また、上記排出口70は、排出流路76に続いており、排出流路76の終端部は、上記マイクロリアクター上部64の底面の略中央部に設けられたスリット72を形成している。上記マイクロリアクターが組み立てられた場合、スリット72は、混合エレメント62の略中央に接する。これによって、混合エレメント62上の流路とスリット72とが連結された流路を形成する。
マイロリアクター下部66は、混合エレメント62を固定するための凹部を有する。上記凹部に混合エレメント62が固定されることによって、隙間なく分割された流路が形成され、良好に反応を行うことができる。
混合エレメント62、マイクロリアクター上部64及びマイクロリアクター下部66を組み立てると、順に、注入口68、注入流路74、混合エレメント流路端部78、混合エレメント62上の分割された流路、スリット72、排出流路76、排出口70という経路で連結された流路が形成されるものである。
なお、混合エレメント62とスリット72との間には、混合の場となる微小空間が存在する。
【0026】
注入口68から送り込まれた流体は、上記注入流路74を通じて、上記混合エレメント流路端部78へと送られる。混合エレメント流路端部78へと送り込まれた流体は、注入圧力によって、それぞれ混合エレメント62上の分割された流路中を混合エレメントの両端から中央方向へと流れ、この結果、多数の副流が得られる。上記多数の副流は、混合エレメント62とスリット72との間に存在する微小空間で接触することにより、反応が進行する。反応は微小空間で生じるため、反応温度などの条件を制御することが容易であり、また、多くの副流がほぼ同時に接触するため、撹拌を行わなくても原料が充分に混合されるためエネルギー効率がよい。また一定速度で原料溶液を注入し続けることによって反応を行うため、連続運転によって反応を行うものであり、反応条件を一定に保つことも容易である。
【0027】
上記反応が生じる微小空間の体積は、例えば、マイクロリットルオーダーである10μLとすることができるが、特に限定されるものではない。
上記微小空間で接触した2つの流体はスリット72へと流入する。このスリット72へ流入する際に混合がさらに行われる。上記スリット72の幅は、混合の効率を考慮すると500μm以下であることが好ましい。
上記流体を注入する速度は、上記スリット内部の体積にもよるが、10mL/時間以上1.5L/時間以下の流量にすることが好ましい。流量が10mL/時間以上であると、流速が速くなるため、効率的な凝集を行うことができる。また、流量が1.5L/時間以下であると、流量を一定に制御することが容易であり、マイクロリアクターに対して高い圧力がかからない。
スリット72を通過した反応溶液は、排出経路76を経て排出口70から、マイクロリアクター60外に排出され、適切な容器に補集される。
【0028】
本実施形態に用いることができるマイクロリアクターとして具体的には、上記の他に、インスティテュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ社(Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH,Germany)の刊行物に記載されたマイクロリアクターや、特開2005−288254号公報記載の衝突型マイクロリアクター、特開2005−37780号公報に記載されたマイクロリアクターなどが例示できる。
【0029】
(凝集工程)
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体を第1の流路に導入し、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体を第2の流路に導入し、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して前記第2の流体の単位時間あたりの流量が大きくなるように流し、前記合流流路において前記第1の流体と前記第2の流体とが合流した層流を生じさせ、前記樹脂粒子を凝集させる工程を含む。
【0030】
本実施形態における凝集工程において得られる凝集樹脂粒子は、少なくとも樹脂粒子を凝集したものである。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法では、合流流路内において、少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体、及び、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体が合流した層流を形成し、その境界領域における相互の拡散が生じることにより、前記樹脂粒子等の凝集が開始及び/又は促進され、凝集樹脂粒子が形成される。
凝集工程においては、層流間で濃度差に基づく拡散が保持されるように、合流流路内を層流に保つことが好ましい。
また、凝集工程において、前記第2の流体の単位時間あたりの流量は、前記第1の流体の単位時間あたりの流量よりも大きい。さらに、前記第2の流体の単位時間あたりの流量は、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して、5〜30倍であることが好ましい。
【0031】
前記凝集樹脂粒子の体積平均粒径は、1μm以上15μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
また、前記凝集樹脂粒子の体積平均粒度分布指標GSDvは1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.47以下であることがより好ましい。
【0032】
樹脂粒子や凝集樹脂粒子等の粒子の平均粒径測定には、コールターカウンターTA−II型(ベックマン−コールター社製)を用いることができる。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定した。測定した粒子の粒径は体積平均粒径で表す。
粒子の粒径がおよそ5μm以下の場合は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定することができる。
さらに、粒径がナノメーターオーダーの場合は、BET式の比表面積測定装置(Flow SorbII2300、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
また、作製した凝集粒子の体積平均一次粒径や、数平均粒度分布指標、体積平均粒度分布指標等は、例えばコールターカウンターTA−II(ベックマン−コールター社製)、マルチサイザーII(日科機社製)等の測定器で測定できる。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16P、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50P、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84Pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16V1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84P/D16P1/2として算出できる。
【0033】
また、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法により得られる凝集樹脂粒子を静電荷像現像用トナーの作製に用いる場合、前記凝集樹脂粒子は、樹脂粒子、着色剤、離型剤を含むことが好ましい。
【0034】
凝集工程においては、合流流路を加熱することが好ましい。前述したように、ヒーターやマイクロ波照射装置等の温度調節装置を備えたマイクロ流路を用いて、合流流路内を加熱することにより、凝集が効率よく進行する。
凝集工程における合流流路内の温度としては、使用する樹脂粒子や凝集剤等にも依存するが、15℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。
【0035】
<第1の流体>
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法における第1の流体は、少なくとも樹脂粒子を含んでいれば、分散媒や、樹脂粒子以外の化合物や樹脂等を含んでいてもよく、また、分散媒が液体であっても、気体であっても、これらの混合物であってもよいが、少なくとも樹脂粒子を含む分散液、すなわち、分散媒として液体成分を含むことが好ましい。
第1の流体における流体成分としては、樹脂粒子を溶解せず、凝集の妨げにならない流体であれば特に制限はないが、主成分が水系媒体であることが好ましく、主成分が水であることがより好ましい。
本実施形態に用いることのできる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体には、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
さらに、第1の流体は、必要に応じて、界面活性剤や凝集剤を含んでいてもよい。
【0036】
また、第1の流体における流体成分の主成分と第2の流体における流体成分の主成分とが同一であることが好ましい。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法における第1の流体は、樹脂粒子を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
また、第1の流体中の樹脂粒子を含む固形分は、1重量%以上50重量%以下が好ましく、3重量%以上40重量%以下がより好ましい。上記範囲であると、第1の流体の流動性が適度である。
【0037】
〔樹脂粒子〕
本実施形態に用いることができる樹脂粒子の体積平均粒径は、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.01μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。体積平均粒径が上記範囲であると、水系媒体中における樹脂粒子の分散状態が安定化する。
【0038】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂を好ましく挙げることができる。
熱可塑性樹脂として、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(アクリレート系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニルニトリル系樹脂);ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテルの単独重合体又は共重合体(ビニルエーテル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニルケトン系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及び、これら非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが例示できる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
これら樹脂の中でも、樹脂粒子として、ポリエステル樹脂及び/又は各種ビニル系樹脂を含むことが好ましく、アクリレート系樹脂を含むことがより好ましく、スチレン−ブチルアクリレート共重合体を含むことが更に好ましい。これらのビニル系樹脂の場合、界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合等により樹脂粒子分散液を容易に調製できる点で有利である。
【0040】
本実施形態において、結着樹脂には、必要に応じて架橋剤を添加することもできる。
このような架橋剤の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類;フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類;ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類;ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール−2−カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類;ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロイルオキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’−チオジプロピオン酸ジビニル、trans−アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類;等が挙げられる。
【0041】
本実施形態において、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記架橋剤のうち、静電荷像現像用トナーの原料として凝集樹脂粒子を使用する場合、合一状態で必要以上に高粘度にしないために、冷却時における離型剤のトナー表面への析出を抑制できるブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロイルオキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類などを用いることが好ましい。
【0042】
架橋剤の含有量は、前記樹脂の形成に用いられる重合性単量体総量の0.05重量%以上5重量%以下の範囲にあることが好ましく、0.1重量%以上1.0重量%以下の範囲にあることがより好ましい。
【0043】
これら樹脂のうち、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂は、前記重合性単量体のラジカル重合等により製造することもできる。
ここで用いるラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。
また、樹脂の分子量調整は、公知の連鎖移動剤を用いて行うこともでき、例えば、チオール類や四臭化炭素等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。
【0044】
また、前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はないが、公知の多価カルボン酸、ポリオール、又は、これらの誘導体から好適に合成することができる。これらの中でも、公知のジカルボン酸、及び、公知のジオールを主成分として使用したポリエステル樹脂であることがより好ましい。
また、ポリエステル樹脂は、結晶性であっても、非結晶性であってもよい。さらに、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル樹脂等の重縮合樹脂の合成には、重縮合触媒を使用することが好ましい。重縮合触媒としては、公知のものを使用することができる。
【0045】
また、前記樹脂は、静電荷像現像用トナーの原料として凝集樹脂粒子を使用する場合、重量平均分子量Mwが6,000以上45,000以下の範囲にあることが好ましく、結着樹脂がポリエステル樹脂の場合は6,000以上30,000以下の範囲にあることがより好ましく、ビニル系樹脂の場合は24,000以上36,000以下の範囲にあることがより好ましい。
重量平均分子量Mwが45,000以下であると、定着時に溶解性が良好であり、透過度に優れた画像が得られる。また、重量平均分子量が6,000以上であると、定着工程時のトナーの溶融粘度が好適であり、凝集力に優れるため、ホットオフセットの発生が抑制できる。
また、結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、重量平均分子量が30,000以下であると、水系媒体中への分散が良好である。
【0046】
また、前記樹脂は、静電荷像現像用トナーの原料として凝集樹脂粒子を使用する場合、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、3.3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
離型剤の定着像表面への移行を速やかなものとするため、及び、平滑な定着像表面を得るためには適度な低粘度であることが有利であり、結着樹脂の分子量分布が狭いことが好ましい。また、Mw/Mnが3.3以下であると、樹脂の透過度が良好であるので好ましい。
【0047】
〔着色剤〕
本実施形態における第1の流体、及び/又は、第2の流体は、着色剤を含有していてもよい。特に、凝集樹脂粒子を使用して静電荷像現像用トナーを製造する場合、第1の流体は、着色剤を含有することが好ましく、着色剤粒子を含有することがより好ましい。
本実施形態に用いることができる着色剤としては、公知の着色剤であればよく、特に限定はしない。凝集樹脂粒子を使用して静電荷像現像用トナーを製造する場合は、トナー用として公知の着色剤を好適に用いることができる。
着色剤の例としては、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウォッチャングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料:アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などを例示できる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
静電荷像現像用トナーを製造する場合、凝集樹脂粒子中の着色剤の含有量は、凝集樹脂粒子全量に対して50重量%以下であることが好ましく、2重量%以上20重量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0049】
また、前記着色剤を用いた着色剤粒子の体積平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上0.5μm以下の範囲であることがさらに好ましい。体積平均粒径が1μm以下であると、静電荷像現像用トナーを製造する場合、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒度分布が狭く、また、遊離粒子の発生が少なく、トナーの性能や信頼性が良好であるので好ましい。
【0050】
着色剤の体積平均粒径を前記の範囲に調製することにより、凝集粒子中への着色剤への分散を良好にし、静電荷像現像用トナーを製造する場合、トナー粒子間の組成の偏在を抑制することができ、トナー性能や信頼性のバラツキを低く抑えることができるという利点がある。そして、体積平均粒径を0.5μm以下にすることにより、静電荷像現像用トナーに用いる場合、トナーの発色性、色再現性等を一層向上させることができるので好ましい。
【0051】
〔離型剤〕
凝集樹脂粒子を使用して静電荷像現像用トナーを製造する場合、第1の流体は、離型剤を含有することが好ましく、離型剤粒子を含有することがより好ましい。
本実施形態に用いることができる離型剤は、樹脂粒子との相溶性に乏しい物(非相溶性)が好ましい。樹脂粒子との相溶性に乏しいと、離型剤が樹脂粒子と溶け込まず、樹脂粒子の可塑化を促すことがないので、静電荷像現像用トナーに使用する場合、高温定着時におけるトナーの粘度を低下させず、オフセット発生の原因となることがない。
【0052】
離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化温度を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油ワックス;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価又は多価低級アルコールとのエステルワックス類;ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類;ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類;コレステリルステアレート等のコレステロール高級脂肪酸エステルワックス類などを例示できる。
【0053】
静電荷像現像用トナーを製造する場合、凝集樹脂粒子中の離型剤量は、凝集樹脂粒子全量に対して、6重量%以上25重量%以下の範囲であることが好ましく、9重量%以上20重量%以下の範囲であることがより好ましい。離型剤量が6重量%以上であると、離型剤の絶対量として十分であり、また、静電荷像現像用トナーに用いた場合、熱や圧力によって定着画像が対向する用紙や画像に移行する、所謂ドキュメントオフセットの発生を抑制できる。また、離型剤量が25重量%以下であると、静電荷像現像用トナーに用いた場合、定着時に要求するトナーの粘弾性が良好であり、ホットオフセットの発生が抑制できる。また、非吸収性の基材に画像を形成した場合でも、定着ロールへの離型剤の付着が抑制でき、2回転目以降に非吸収性基材の表面に離型剤痕が残る、ワックスオフセットと呼ばれる現象の発生が抑制できる。
【0054】
離型剤粒子の体積平均粒径は、1.5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1.0μm以下の範囲であることがより好ましい。体積平均粒径が1.5μm以下であると、遊離粒子が発生しにくく、また、静電荷像現像用トナーに用いた場合、最終的に得られる静電荷像現像用トナー中の離型剤ドメイン径が好適であり、また、トナーの性能や信頼性が向上する。
【0055】
樹脂粒子の作製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的には、乳化重合法、懸濁重合、転相乳化等で作製した樹脂粒子を使用することもできるし、塊状重合法により得られた樹脂を機械的に解砕し樹脂粒子とすることもできるし、任意の重合法により得られた樹脂を機械的シェア等により乳化分散させて樹脂粒子を使用することもできる。また、これらの方法で作製した樹脂粒子分散液を第1の流体又はその一部として使用することもできる。
【0056】
<第2の流体>
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法における第2の流体は、少なくとも凝集剤及び/又は凝集促進剤を含んでいれば、分散媒や、凝集剤及び/又は凝集促進剤以外の化合物や樹脂等を含んでいてもよく、また、分散媒が液体であっても、気体であっても、これらの混合物であってもよいが、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む液、すなわち、分散媒として液体成分を含むことが好ましい。
第2の流体は、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含むことにより、第1の流体と接触したとき、少なくとも樹脂粒子を凝集した凝集体を発生、又は、凝集を促進する。
凝集及び/又はその促進を開始するきっかけ(トリガー)となるものとしては、凝集剤だけでなく、水素イオン濃度(pH)も例示できる。
凝集促進剤としては、水素イオン濃度を調節することができるpH調整剤が好ましく例示できる。例えば、第1の流体中に凝集剤を入れておき、第2の流体でpH調整剤により水素イオン濃度を低くしておくと、これらの液が接触した部分で凝集体を発生、あるいは凝集を促進することができる。
また、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法においては、例えば、第1の流体にトナーの構成成分である、樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤を含み、第2の流体に凝集剤を含むことにより、これらの液が接触した部分で凝集体を発生、あるいは凝集を促進する。
第2の流体における流体成分としては、樹脂粒子を溶解せず、凝集の妨げにならない流体であれば特に制限はないが、凝集剤及び/又は凝集促進剤を溶解することができる流体であることが好ましく、主成分が水系媒体であることがより好ましく、主成分が水であることがさらに好ましい。
また、第2の流体は、必要に応じて、界面活性剤を含有していてもよい。
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法における第2の流体は、凝集剤又は凝集促進剤のどちらか1方のみを含有していてもよく、凝集剤及び凝集促進剤の両方を含有していてもよい。また、凝集剤、凝集促進剤は、それぞれ1種のみ含有していてもよく、それぞれ2種以上含有していてもよい。
【0057】
凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その具体例としては、イオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の水溶性界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩;酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸、芳香族酸の金属塩;ナトリウムフェノレート等のフェノール類の金属塩;アミノ酸の金属塩;トリエタノールアミン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の脂肪族、芳香族アミン類の無機酸塩類;等が例示できる。
【0058】
凝集剤として、より好ましくは塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩;酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸;等の無機、有機の金属塩であり、更に好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の多価の無機金属塩が凝集粒子の安定性、凝集剤の熱や経時に対する安定性、洗浄時の除去等の点で好適に用いることができる。
また、第2の流体に凝集剤として塩化アルミニウム等の酸性金属塩を用いる場合、第1の流体に酸等を添加し、第1の流体を酸性に調整することが好ましい。また、第1の流体に凝集剤として酸性金属塩を用いる場合、第2の流体は凝集促進剤として酸等を含有していることが好ましい。
【0059】
凝集剤の含有量は、流体に対して、1×10-3重量%以上10重量%以下であることが好ましい。上記範囲であると、凝集を十分起こすことができ、また、効率的である。
【0060】
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、酸及び/又はアルカリ等の公知のpH調整剤を用いることができる。
【0061】
第1の流体の単位時間あたりの流量V1と第2の流体の単位時間あたりの流量V2とは、それぞれ流体の濃度にも依存するが、第1の流体と第2の流体とが層流状態となる流速比であると凝集を効率よく行うことができるため好ましい。
【0062】
本実施形態においては、第1の流体、及び/又は、第2の流体に、必要に応じて、種々の添加剤を添加してもよく、例えば、静電荷像現像用トナーの作製に使用する場合、公知の内添剤、帯電制御剤、無機粒子、有機粒子、滑剤、研磨剤などを添加することができる。
【0063】
本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法において、得られる凝集樹脂粒子の形状は球形形状のものだけでなく、凝集剤や凝集条件、加熱する温度や時間等を適宜変更することにより、得られる凝集樹脂粒子の形状は球形形状から不定形形状まで、種々の形状にコントロールすることが可能である。
【0064】
また、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、前記準備工程及び前記凝集工程以外に、任意の公知の工程を含んでいてもよい。
例えば、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子を加熱する工程を含むことが好ましい。
得られた凝集粒子の加熱温度や加熱時間等の加熱条件は、材料として使用した樹脂粒子等の各種材料、また、所望の凝集粒子の形状に応じて、適宜選択することができる。
【0065】
また、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法は、前記マイクロリアクターが、前記合流流路に合流する第3の流路を備え、無機又は有機粒子が分散した第3の流体を第3の流路に導入し、少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子の外側に、さらに前記無機又は有機粒子を凝集させる工程を含むことが好ましい。
前記無機又は有機粒子としては、凝集可能であれば、特に制限はないが、外添剤粒子、前記樹脂粒子、及び/又は、前記樹脂粒子とは異なる樹脂粒子であることが好ましい。
例えば、前記無機又は有機粒子として、外添剤粒子を用いると、外添された粒子が得られる。また、前記無機又は有機粒子として、前記樹脂粒子とは異なる樹脂粒子を使用すると、コアシェル粒子を得ることができる。
前記外添剤粒子としては、トナーの分野において公知の外添剤粒子が挙げられる。具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアなどの無機粒子や、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等の脂肪酸金属粒子が好適に挙げられる。
前記樹脂粒子、及び、前記樹脂粒子とは異なる樹脂粒子としては、前述した樹脂粒子を好適に例示できる。
【0066】
本実施形態に用いることができる前記合流流路に合流する第3の流路を備えたマイクロリアクターとしては、特に制限はなく、種々のマイクロリアクターを用いることができるが、一例として、図7に示すようなマイクロリアクターを挙げることができる。
図7は、本実施形態の凝集樹脂粒子の製造方法に使用するマイクロリアクターのさらに他の一例を表す模式図である。
図7に示すマイクロリアクター100は、第1の流路を形成する部材(第1の流路形成部材)124と第2の流路を形成する部材(第2の流路形成部材)126とが同心円状に配置された構造である。第1の流路形成部材124は第1の流路112を形成し、その外周に第2の流路形成部材126は第2の流路114を形成している。第1の流路形成部材124は、第2の流路形成部材126の途中までの長さの部材であり、第1の流路形成部材124の先端より下流において合流流路116を形成している。さらに、第3の流路形成部材128は、第2の流路形成部材126の外周には第3の流路130を形成している。第2の流路形成部材126は、第3の流路形成部材128の途中までの長さの部材であり、第2の流路形成部材126の先端より下流において第3の流路が合流した合流流路132を形成している。また、図7に示すマイクロリアクター100は、第3の流路が合流した合流流路132において、ヒーターなどの加熱手段(不図示)による加熱領域を備えている。
第1の流路12には、樹脂粒子18を含む第1の流体Aが流されており、第2の流路には凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体Bが流されており、第3の流路には無機又は有機粒子122を含む第3の流体Cが流されている。
第1の流体Aと第2の流体Bとは、合流流路116において合流し、層流を形成しながら、その境界領域で徐々に互いに拡散していき、凝集剤及び/又は凝集促進剤により樹脂粒子118を含む成分が凝集を起こし、凝集樹脂粒子A120が得られる。。また、第3の流路が合流した合流流路132において、凝集樹脂粒子A120にさらに無機又は有機粒子122が凝集を起こし、凝集樹脂粒子B134が得られる。得られた凝集樹脂粒子B134は、加熱領域136において融合し、凝集樹脂粒子C138が得られる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
粒子の平均粒径測定には、コールターカウンターTA−II型(ベックマン−コールター社製)を用いた。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定した。測定した粒子の粒径は、体積平均粒径で表す。
粒子の粒径がおよそ5μm以下の場合は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。
さらに、粒径がナノメーターオーダーの場合は、BET式の比表面積測定装置(Flow SorbII2300、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0069】
また、作製した凝集粒子の体積平均一次粒径や、体積平均粒度分布指標GSDv、及び数平均粒度分布指標GSDpの値は、次のようにして測定し算出した。
まず、コールターカウンターTA−II(ベックマン−コールター社製)、マルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて測定されたトナーの粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々の粒子の体積及び数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、及び、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、及び、数平均粒子径D50pと定義する。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、及び、数平均粒子径D84pと定義する。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、D84v/D16vとして定義され、数平均粒度指標(GSDp)は、D84p/D16pとして定義されるこれらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)及び数平均粒度指標(GSDp)を算出できる。
【0070】
また、粒子中における粗大粒子の含有量は、次のようにして測定した。
上述した粒度分布指標の測定により得られた体積平均粒度分布指標のデータから、特定の粒径以上の粒子(なお、下記実施例では15μmに設定した。)の含有%を算出し、粗大粒子の含有量とした。
【0071】
(実施例1)
<スチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子分散液の調製>
・スチレン 370重量部
・n−ブチルアクリレート 30重量部
・アクリル酸 4重量部
・ドデカンチオール 24重量部
・四臭化炭素 4重量部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成工業(株)製:ノニポール400)6重量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10重量部をイオン交換水560重量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4重量部を溶解したイオン交換水50重量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、体積平均粒径が180nm、ガラス転移点が55℃、重量平均分子量(Mw)が15,800、比重は1.18である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液(樹脂粒子濃度:30%)を調製した。
【0072】
<第1の流体(A1液)の調製:樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤含有分散液>
前記で調製したスチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子分散液を使用し、体積平均粒径が180nmのスチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子86重量部と、銅フタロシアニン顔料(PV FAST BLUE(BASF社製))5重量部と、離型剤粒子(パラフィンワックスHNP0190(日本精蝋(株)製)をゴーリンホモジナイザーで粒径約200nm化したもの。)9重量部を水中に固形分5重量%になるように分散、調整した。この分散液を硝酸でpH3に調整し、第1の流体(A1液)とした。
【0073】
<第2の流体(B1液):凝集剤含有液>
凝集剤PAC(ポリ塩化アルミニウム)を0.16重量%含有する水溶液を調製した。
【0074】
<凝集樹脂粒子の製造>
内径1,000μmのガラス管と外径350μm・内径250μmのヒューズドシリカキャピラリーチューブ(チューブ、ジーエルサイエンス(株)製)を図1のようにガラス管の中央にシリカチューブがくるように配置し、A1液、及び、B1液を図1のように送液できるように液体クロマトグラフ用部品を組み合わせて、マイクロリアクターを作製した。ガラス管に挿入されているシリカチューブの長さは約1cmとし、ガラス管の長さは約20cmとした。送液ポンプはシリンジポンプを使用した。また、ガラス管の上部から5乃至10cmの間にヒーター(不図示)を巻き、約50℃に加温した。マイクロリアクターへの送液量は、A1液を約2ml/h、B1液を約50ml/hとした。
その結果、体積平均粒径=約5.7μm、GSDv=1.4の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.05%であった。
【0075】
(実施例2)
<非結晶性ポリエステル樹脂粒子の作製>
加熱乾燥したフラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン35モル部とポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン65モル部と、テレフタル酸80モル部と、n−ドデセニルコハク酸10モル部と、イソフタル酸10モル部と、これらの酸成分(テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸、イソフタル酸の合計モル数(100モル部))に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210〜250℃で徐々に減圧して、非結晶性ポリエステル樹脂を合成した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた非結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は15,400であり、数平均分子量(Mn)は6,800であった。
また、非結晶性ポリエステル樹脂のDSCスペクトルを、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークは示さず階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移点は62℃であった。
非結晶性ポリエステル樹脂30重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、アニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)1.5重量部、及び、イオン交換水150重量部をとともに加え、60℃に加熱して、乳化機(Ultra Turrax T-50、IKA社製)を用いて8,000rpmで撹拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることで、体積平均粒径180nmの非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製した。
【0076】
<第1の流体(A2液)の調製:樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤含有分散液>
実施例1において、スチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子分散液を、上記で得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液に変更した以外は同様にして、第1の流体(A2液)とした。
【0077】
<凝集樹脂粒子の製造>
実施例1において、第1の流体(A1液)を第1の流体(A2液)に変更した以外は同様にした。
その結果、体積平均粒径=約6.0μm、GSDv=1.43の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.1%であった。
【0078】
(実施例3)
<凝集樹脂粒子の製造>
図2に示したマイクロリアクター40を備えた装置30を用い、第1の流体Aとして前記A1液を、ポンプP1を備えたタンク32に、また、第2の流体Bとして前記B1液を、ポンプP2を備えたタンク34にそれぞれにセットし、ガラス製マイクロリアクター40のインレット部に送液した。また、合流流路46において、合流部分の端部から5乃至20cm離れた部分にヒーター48を巻き、約50℃に加温した。なお、マイクロリアクター40における各流路42,44,46は矩形の流路であり、第1の流路42の流路径L1は300μm、第2の流路44の流路径L2は300μm、合流流路46の流路径L3は500μm、各流路42,44,46の深さは300μmであった。マイクロリアクター40内以外の部分も含む合流流路46の全長は30cmであった。マイクロリアクターへの送液量は、A1液を5ml/h、B1液を45ml/hとした。
その結果、体積平均粒径=約6.0μm、GSDv=1.45の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.1%であった。
【0079】
(実施例4)
<非結晶性ポリエステル樹脂粒子の作製>
前記実施例2で作製した非結晶性ポリエステル樹脂30重量部を酢酸エチル100重量部に溶解し、1.5重量部のアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、及び、イオン交換水150重量部をとともに加え、60℃に加熱して、乳化機(Ultra Turrax T-50、IKA社製)を用いて8,000rpmで撹拌し、その後酢酸エチルを蒸発させることで、体積平均粒径180nmの非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製した。
【0080】
<第1の流体(A3液)の調製:樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤含有分散液>
実施例1において、スチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子分散液を、上記で得られた非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液に変更し、さらに、凝集剤PAC(ポリ塩化アルミニウム)を0.16重量%添加し、硝酸でpH=7に設定した以外は同様にして、第1の流体(A3液)とした。
【0081】
<凝集樹脂粒子の製造>
実施例1において、第1の流体(A1液)を第1の流体(A3液)に変更し、第2の流体としてB1液の代わりに硝酸にてpH=3に制御したイオン交換水(B2液)を用いた以外は同様にした。
その結果、体積平均粒径=約6.0μm、GSDv=1.43の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.1%であった。
【0082】
(実施例5)
<凝集樹脂粒子の製造>
図2に示したマイクロリアクター40を備えた装置30を用い、第1の流体として前記A3液を、ポンプP1を備えたタンク32に、また、第2の流体として前記B2液を、ポンプP2を備えたタンク34にそれぞれにセットし、ガラス製マイクロリアクター40のインレット部に送液した。また、合流流路46において、合流部分の端部から5乃至20cm離れた部分にヒーター48を巻き、約50℃に加温した。なお、マイクロリアクター40における各流路42,44,46は矩形の流路であり、第1の流路42の流路径L1は300μm、第2の流路44の流路径L2は300μm、合流流路46の流路径L3は500μm、各流路42,44,46の深さは300μmであった。マイクロリアクター40内以外の部分も含む合流流路46の全長は30cmであった。マイクロリアクターへの送液量は、A3液を5ml/h、B2液を45ml/hとした。
その結果、体積平均粒径=約6.0μm、GSDv=1.45の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.1%であった。
【0083】
(実施例6)
内径500μmのガラス管と外径350μm・内径250μmのヒューズドシリカキャピラリーチューブ(チューブ、ジーエルサイエンス(株)製)を図7のようにガラス管の中央にシリカチューブがくるように配置し、さらに、これらの外側に内径1,000μmのガラス管を配置し、A1液(第1の流体)、B1液(第2の流体)、及び、C1液(第3の流体)を、図7のようにそれぞれ送液できるように液体クロマトグラフ用部品を組み合わせて、マイクロリアクターを作製した。ガラス管に挿入されているシリカチューブの長さは約1cmとし、ガラス管の長さは約20cmとした。送液ポンプはシリンジポンプを使用した。また、ガラス管の上部から5乃至10cmの間にヒーター(不図示)を巻き、約90℃に加温した。マイクロリアクターへの送液量は、A1液を約2ml/h、B1液を約50ml/h、C1液を約100ml/hとした。ここでC1液は、実施例1で用いた、スチレン−n−ブチルアクリレート樹脂粒子分散液20重量部を水中に固形分5重量%になるように分散、調整したものを用いた。
その結果、体積平均粒径=約6.5μm、GSDv=1.4の凝集樹脂粒子が連続的に得られた。得られた粒子をSEM観察すると粒子内部に空孔がほとんど観察されず、合一されたものであった。
また、得られた凝集樹脂粒子中の15μm以上の粗大粒子含有量は、0.05%であった。
【符号の説明】
【0084】
10:マイクロリアクター
12:第1の流路
14:第2の流路
16:合流流路
18:樹脂粒子
20:凝集樹脂粒子
22:拡散部
24:第1の流路形成部材
26:第2の流路形成部材
30:装置
32,34:タンク
40:マイクロリアクター
42:第1の流路
44:第2の流路
46:合流流路
48:ヒーター
50:容器
52:凝集樹脂粒子含有液
60:マイクロリアクター
62:混合エレメント
64:マイクロリアクター上部
66:マイクロリアクター下部
68:注入口
70:排出口
72:スリット
74:注入流路
76:排出流路
78:混合エレメント流路端部
100:マイクロリアクター
112:第1の流路
114:第2の流路
116:合流流路
118:樹脂粒子
120:凝集樹脂粒子A
122:無機又は有機粒子
124:第1の流路形成部材
126:第2の流路形成部材
128:第3の流路形成部材
130:第3の流路
132:第3の流路が合流した合流流路
134:凝集樹脂粒子B
136:加熱領域
138:凝集樹脂粒子C
A:第1の流体
B:第2の流体
C:第3の流体
P1,P2:ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路、第2の流路、及び、第1の流路と第2の流路とが合流した合流流路を少なくとも有するマイクロリアクターを準備する工程、並びに、
少なくとも樹脂粒子が分散した第1の流体を第1の流路に導入し、凝集剤及び/又は凝集促進剤を含む第2の流体を第2の流路に導入し、前記第1の流体の単位時間あたりの流量に対して前記第2の流体の単位時間あたりの流量が大きくなるように流し、前記合流流路において前記第1の流体と前記第2の流体とが合流した層流を生じさせ、前記樹脂粒子を凝集させる工程を含むことを特徴とする
凝集樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の流体及び前記第2の流体のどちらか一方に凝集剤を含む請求項1に記載の凝集樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の流体が、合流流路の内壁に接触せずに流される請求項1又は2に記載の凝集樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の流体が、樹脂粒子、着色剤、及び、離型剤を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の凝集樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子を加熱する工程を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の凝集樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記マイクロリアクターが、前記合流流路に合流する第3の流路を備え、
無機又は有機粒子が分散した第3の流体を第3の流路に導入し、少なくとも前記樹脂粒子を凝集させて得られた凝集粒子の外側に、さらに前記無機又は有機粒子を凝集させる工程を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の凝集樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記無機又は有機粒子が、外添剤粒子、前記樹脂粒子、及び/又は、前記樹脂粒子とは異なる樹脂粒子である請求項6に記載の凝集樹脂粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−235389(P2009−235389A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41719(P2009−41719)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】