説明

凝集状態検知システム

【課題】 長期間に渡って凝集状態を安定して検知することができる凝集状態検知システムを提供する。
【解決手段】 凝集状態検知システムは、非導電体からなる外筒11と、外筒11内に配置された非導電体からなるコア12と、外筒の両端部に設けられた一対の電極15、15と、外筒11内に流体を脈流状態で供給するダイヤフラム式ポンプ21とを備えている。一対の電極15、15間に、流体の凝集状態を検知する制御演算部が接続されている。制御演算部は一対の電極15、15から得られた波形データに基づいて、ピーク時の積分値を求め、この積分値により凝集状態を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体の凝集状態を長期間に渡って安定して検知することができる凝集状態検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、河川水、湖沼水等の表流体を原水とする浄水処理あるいは工業用水や排水の処理において、凝集沈殿処理方法が広く採用されている。この凝集沈殿処理方法は、以下のように行われる。まず、原水にアルミ系や鉄系の無機凝集剤或いは高分子凝集剤を添加して急速攪拌し、濁質粒子を核とするマイクロフロック(小塊)を生成させる。次に緩速攪拌を行い、マイクロフロック同士の衝突、結合により小塊を粗大化し、沈降速度を大きくして沈澱処理を行うことで、清澄な上澄み水を得る。この凝集処理水をさらにろ過処理して、沈澱しきれなかった粒子を除去している。
【0003】
凝集沈澱処理方法においては、凝集剤添加量、攪拌強度、攪拌時間、水温、pH等の凝集条件を適切にしなければならない。凝集剤を添加した後の凝集状態を迅速かつ正確に検知することにより添加する凝集剤の量を削減し、かつ清澄な処理水を得ることができる。このため凝集状態検知センサは、凝集沈澱処理プロセスにおいて重要な役割を担っている。
【0004】
凝集状態検知センサとしては、大別して次の2通りの方法がある。1つは光学的に濁質の粒子径を直接計測する方法(特許文献1参照)である。もう1つは被検水中の濁質粒子の荷電状態をゼータ電位に関連したいわゆる流動電流として測定する方法である。
【0005】
後者の方式はオンラインで連続的に測定可能なセンサとしてGerdesにより考案されたもので、ピストン型のセンサに被検水が流入することにより、ピストンを包むシリンダーの管壁の両端に配置した電極間の流動電流を計測する方式となっている。このピストン型のセンサは簡単な構造で流動電流を検知できることから海外の浄水場において広く用いられ、国内においても最近数箇所の浄水場で用いられるようになってきた。
【0006】
このピストン型のセンサにおいては、ピストン駆動のため長期に亘って連続運転した場合、ピストンの中心がシリンダー管壁の汚れ等により初期の位置からズレてしまう。又これによりピストンとシリンダーの間隙の距離が部分的に変わってしまい安定した流動電位(電流)が測れなくなるという問題があった。
【0007】
オンライン凝集センサとしては、従来このピストン型のセンサが唯一広く使用されてきた。これに対し、絶縁性の直管内に芯となる円筒を配し、管両端部に電極を置き、芯と直管の間隙を被検水の脈流を流通させることにより流動電流を検出する方式が新たに提案された。このセンサは以下のような構造をしている。
【0008】
直管のパイプ内にコアとなる無垢の丸棒をコア保持治具により固定し、さらにパイプの両端内側にリング状の電極を設置することによりセンサが構成される。
【0009】
直管パイプとコアとの間隙は0.3±0.1mmとなり、パイプ径は30mm程度、長さは45mm程度となっている。このセンサにダイヤフラム式のポンプにより流体が脈流で供給され、流体はパイプとコアとの間の間隙を流通する。この間、パイプの両端に生じた起電力を増幅し、流動電流が得られる。そしてこの流動電流により凝集状態が検知される。
【特許文献1】特開平10−202013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来より、このようにシンプルな構造のセンサにより流動電流を検知することができ、安定して流体の凝集状態を検知することができる。
【0011】
しかしながら、現在長期間に渡って安定して流体の凝集状態を検知することができる凝集状態検知システムは開発されていないのが実情である。
【0012】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、長期間に渡って安定して流体の凝集状態を検知することができる凝集状態検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、非導電体からなる外筒と、外筒内に配置された非導電体からなるコアと、外筒の両端部に設けられた一対の電極と、外筒内に流体を脈流状態で供給する流体供給部と、一対の電極間に接続され、流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備え、制御演算部は一対の電極間から得られた波形データから、波形データのピーク時の積分値により流体の凝集状態を検知することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0014】
本発明は、制御演算部は一対の電極から得られた信号を記録し処理する信号処理回路と、信号処理回路からのデータに基づいて凝集状態を求めるパソコンとを有することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0015】
本発明は、信号処理回路は流体供給部に、駆動信号を出力するとともに、一対の電極から波形データを求め、パソコンは信号処理回路からの波形データから、波形データのピーク時の積分値を求めることを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0016】
本発明は、パソコンは、波形データのピーク開始およびピーク終了時の平均値に基づいてベースラインを求め、このベースラインに基づいてピーク時の積分値を求めることを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0017】
本発明は、パソコンは、波形データから波形データのピーク時の積分値を求める際、波形データの勾配が一定値以上の領域の部分の面積を除外して積分値を求めることを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0018】
本発明は、外筒とコアとの間の間隙は、0.4mm以下となることを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0019】
本発明は、外筒を電磁シールド用金属網で覆うとともに、一方の電極と、金属網およびアース線が接続されていることを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0020】
本発明は、非導電体からなる外筒と、外筒内に配置された非導電体からなるコアと、外筒の両端部および両端部間に各々設けられた少なくとも3つの電極と、外筒内に流体を脈流状態で供給する流体供給部と、各電極間に接続され、各電極間から得られた信号に基づいて流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備えたことを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0021】
本発明は、コアは、各電極間に設置され、互いに異なる材料からなる第1コアおよび第2コアを有することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0022】
本発明は、制御演算部は電極間から得られた2以上の電位差信号に基づいて流体の凝集状態を検知することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0023】
本発明は、制御演算部は一方の電極間の電位差信号と、他方の電極間の電位差信号とを比較して、一方の電極間の凝集状態と他方の電極間の凝集状態を検知することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0024】
本発明は、制御演算部は一方の電極間の電位差信号と、当該電極間の過去の電位差信号とを比較して、当該電極間の凝集状態を検知することを特徴とする凝集状態検知システムである。
【0025】
本発明によれば、電極間の電位差から得られるピーク波形は流体の脈流が流通する時の応答を表しているが、それは流通の速度を表現しているものであり、濁質が界面を流動する時の流動特性はピークの積分値により表現される。
【0026】
この積分値をとることにより、ピーク波形中に含まれるノイズ成分或いはピーク基底のバックグラウンド成分等を除去できる。またピーク先端部の流速が大きく、濁質が器壁に十分吸着していない領域での応答を除去することが可能となり、通常の定常電流を記録する場合よりも感度の高い計測が可能となった。
【0027】
本発明によれば電極間に汚れが付着しているのか、そしてどの程度付着が進行しているのかについて不明な場合でも、すなわち流動電流の変化が凝集状態によるものなのか、付着によるものなのかの判断ができない場合にも、この付着による変化を認識することができる。付着の状態を確認すると、被処理水の汚濁状態や流速や流れ方にもよるが、付着の状態は必ずしも一様にならない場合が多い。この付着状態の違いを複数の電極を用いて各々測定することにより、付着や汚れた部分を含む電極間と、そうでない電極間の流動電位の差を認識して、付着や汚れの状態を検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、長期間に渡って安定して流体の凝集状態を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図6により本発明による凝集状態検知システムの第1の実施の形態について説明する。
【0030】
凝集状態検知システムは、図1および図5に示すように、凝集状態検知センサ10と、この凝集状態検知センサ10に流体を脈流状態で供給するダイヤフラム式ポンプ(流体供給部)21と、凝集状態検知センサ10に接続され流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備えている。
【0031】
このうち制御演算部は、凝集状態検知センサ10の後述する一対の電極15間に接続され、一対の電極15から得られた信号を記録して処理する信号処理回路22と、信号処理回路22からの出力信号に基づいて流体の凝集状態を求めるパソコン23とからなっている。
【0032】
また凝集状態検知センサ10に接続されたダイヤフラム式ポンプ21には被検水槽25から被検水が送られ、凝集状態検知センサ10で検出された被検水は、排水管26aを介して排水槽26内へ排出される。
【0033】
次に図5により、凝集状態検知センサ10について詳述する。この凝集状態検知センサ10は絶縁性の円筒状直管パイプ(外筒)11と、この直管パイプ11内に配管された無垢の絶縁性の円筒状コア12と、直管パイプ11の両端に設けられ、コア12を直管パイプ11に保持するとともに流通孔14aを有するコア保持具14、14と、一対のコア保持具14、14を外方から保持して直管パイプ11に固定する一対のキャップ13、13とを備えている。
【0034】
また、一対のキャップ13には、直管パイプ11内に流体を送りかつ排出するホース17がホースニップル16を介して脱着自在に取付けられている。なお、一対のキャップ13、13は直管パイプ11にねじ込み取付けられている。
【0035】
さらに、直管パイプ15の両端部内面に、一対のリング状電極15、15が取付けられている。
【0036】
直管パイプ11の材料は絶縁性でかつ耐食性を有するものからなり、塩ビ、テフロン(登録商標)、デルリン(ポリアセタール樹脂)が用いられ、電極15、15としてはステンレス(SUS304)が用いられる。
【0037】
コア12の材料としては、直管パイプ11の材料と同様のものが選択される。
【0038】
直管パイプ11とコア12との間の間隙Gは0.3±0.1mmとなっており、直管パイプ11の内径は30mm程度、長さは45mm程度となっている。
【0039】
次に実験機としての凝集状態検知システムを、図6に示す。図6に示す実験機としての凝集状態検知システムは、被検水槽25として混合槽を用いたものであり、他の構成は図1に示す凝集状態検知システムと略同一である。
【0040】
図6において、図1に示す凝集状態検知システムと同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図6に示すように、被検水槽25内に攪拌機25aが設けられ、被検水槽25には凝集剤タンク34が凝集剤送液ポンプ35を介して接続されている。
【0041】
また被検水槽25には、攪拌機31aを有する原水タンク31が、原水送液ポンプ33を介して接続されている。
【0042】
次にこのような構成からなる本実施例の作用について説明する。
【0043】
まず図1に示すように、被検水槽25からの被検水(流体)がダイヤフラム式ポンプ21により凝集状態検知センサ10内へ送られる。凝集状態検知センサ10へ送られた被検水は、その後排水槽26へ排出される。
【0044】
この間、ダイヤフラム式ポンプ21により被検水は凝集状態検知センサ10へ脈流状態で供給される。このとき凝集状態検知センサ10の一対の電極15、15間において電位差が生じる。一対の電極15、15間で生じた電位差は信号処理回路22において波形データに変換される。
【0045】
また信号処理回路22は、ダイヤフラム式ポンプ21に駆動信号を出力するとともに、波形データをパソコン23に送る。
【0046】
パソコン23では信号処理回路22において求められた波形データに基づいて、凝集状態を求める。
【0047】
パソコン23では、この波形データに基づいて、図2に示すようにピーク開始時及び終了時の平均値を基に定めたベースラインBを決め、このベースラインBより上部のピーク面積を求めてこれらを総和した積分値に基づいて被検体の凝集状態を求める。
【0048】
次に本発明の具体的実施例について述べる。
【0049】
本発明による凝集状態検知手法を用いて、以下のようにしてカオリンで調整した濁度60の被検水に対して凝集剤であるPAC(ポリ塩化アルミニウム)を1mg/l,5mg/l,40mg/lと順次高濃度に添加していった時の凝集状態を調べた。また、そのときの被検水をジャーテスターにかけ、濁度を測定した。凝集状態を調べるために、図6に示す実験機としての凝集状態検知システムを用いた。
【0050】
図6において、原水タンク31内のサンプル水(カオリン懸濁液、濁度3〜100mg/l)を攪拌機31aにて十分混合し、かつ攪拌したものを原水送液ポンプ33によって(3l/min.)の運転条件で混合槽となる被検水槽25に送った。被検水槽25には凝集剤タンク34から、凝集剤送液ポンプ35により注入率が規程値となるよう一定濃度の凝集剤(PAC原液、比重1.2)が20ml/min.で注入され、被検水槽25では、攪拌機25aにより800rpmにて急速攪拌が行われる。
【0051】
被検水槽25内の被検水がダイヤフラム式ポンプ21により汲み出され、凝集状態検知センサ10内へ脈動流で送液される。
【0052】
ポンプ21の起動はパソコン23に接続された信号処理回路22により行われる。また凝集状態検知センサ10からの信号は信号処理回路22へ送られる。ジャーテスターによる凝集状態の検知は被検水槽25からセル流通水をサンプリングし、攪拌機25aにより緩速攪拌50rpmで15分行った後、30分間静値してから濁度を測定した。
【0053】
パソコン23において求めた凝集結果を図3(a)に示す。又、この結果を基にPAC注入率に対するセンサ応答値を図3(b)に示す。これらの図3(a)、(b)より明らかなように、PACを1mg/l注入することにより応答は大きく変化するが、PACを1→5mg/lへ変化させた場合の応答変化は小さい。その後PACの注入率を5→40mg/lに増加させると、再び大きな応答変化があらわれた。
【0054】
図4は被検水槽25から分取した被検水をジャーテスターにかけた結果を示す。
【0055】
図3(b)に示す結果と図4に示す結果を照合してみると良好な対応関係が得られており、パソコン23において求めた凝集状況検出結果は、ジャーテスターにより検出した結果と良く対応していることがわかる。
【0056】
第2の実施の形態
次に本発明の第2の実施の形態を示す。
【0057】
第1の実施の形態において、図5に示す凝集状態検知センサ10は円筒状の直管パイプ11と、円筒状コア12とを有しているが、コア12を図5に示すものと同様な材質の直方体とし、これを2枚の平板からなる外筒11で挟み込んだ構造とし、上下の平板の両端部に電極15を配置してもよい。
【0058】
このような構造の凝集状態検知センサ10に被検水を脈流状態で流通させて、その過渡応答を記録し、出力ピークの積分値から凝集状態を検知する。この場合でも、第1の実施の形態と同様に精度良い検知を行うことができる。この場合、コア12と外筒11との間隙は、円筒型の直管パイプを用いた場合よりもより簡単に調節できる。
【0059】
外筒11とコア12との間の間隙Gの値としては、0.4mm以下とすることが適当であった。この値以上に間隙Gを広げると界面動電現象の抵抗が小さくなり、測定感度が得られない。キャピラリー電気泳動法においてゼータ電位を測定する際も試料溶液は毛細管中を移動させるものであるが、被検水の流通するセンサ内の間隙はこの程度の値以下でないと感度良く計測できないことが確認された。
【0060】
第3の実施の形態
次に本発明による第3の実施の形態について説明する。
【0061】
図1乃至図6に示す第1の実施の形態において、信号処理回路22内で出力を記録する際、過渡応答をみているので従来の定常応答を記録する場合に比べ、ノイズの影響が特に問題となる。
【0062】
ノイズの除去についてその原因を調べたところ、センサ10からの排水が排水槽26に流入する際、センサ10からの排水が排水槽26の水面との導通が起こり、水面の振動をノイズとして拾うことになることが明らかになった。そこで、センサ10からの排水管26aを2段以上の接続とし、センサ20からの排水が排水槽面と導通しないようにした。これにより、排水槽26面の振動がノイズとして拾われることなく、ノイズの少ない良好な出力を得ることができるようになった。
【0063】
図1乃至図6に示す第1の実施の形態において、センサ10外部からのノイズを除去するため、センサ10の外筒11を電磁シールド用のフレキシブルな金属網11aで覆い、電極15の一端とこの金属網11a及びアース線を接続することによりノイズを低減してもよい。
【0064】
第4の実施の形態
以下、図1、図7および図8により本発明による凝集状態検知システムの第4の実施の形態について説明する。ここで図8は図7のA−A線断面図である。
【0065】
凝集状態検知システムは図1に示すように、凝集状態検知センサ10と、この凝集状態検知センサ10に流体を脈流状態で供給するダイヤフラム式ポンプ(流体供給部)21と、凝集状態検知センサ10に接続され流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備えている。
【0066】
このうち制御演算部は、凝集状態検知センサ10の後述する一対の電極15間に接続され、一対の電極15から得られた信号を記録して処理する信号処理回路22と、信号処理回路22からの出力信号に基づいて流体の凝集状態を求めるパソコン23とからなっている。
【0067】
また凝集状態検知センサ10に接続されたダイヤフラム式ポンプ21には被検水槽25から被検水が送られ、凝集状態検知センサ10で検出された被検水は、排水管26aを介して排水槽26内へ排出される。
【0068】
次に図7および図8により、凝集状態検知センサ10について詳述する。この凝集状態検知センサ10は絶縁性の円筒状直管パイプ(外筒)11と、この直管パイプ11内に配置された無垢の絶縁性の円筒状コア12と、直管パイプ11の両端に設けられ、コア12を直管パイプ11に保持するとともに流通孔14aを有するコア保持具14、14と、一対のコア保持具14、14を外方から保持して直管パイプ11に固定する一対のキャップ13、13とを備えている。
【0069】
また、一対のキャップ13には、直管パイプ11内に流体を送りかつ排出するホース17がホースニップル16を介して脱着自在に取付けられている。なお、一対のキャップ13、13は直管パイプ11にねじ込み取付けられている。
【0070】
さらに、直管パイプ15の両端部内面および両端部間の中央部内面に、3つのリング状電極15a、15c、15bが各々取付けられている。
【0071】
直管パイプ11の材料は絶縁性でかつ耐食性を有するものからなり、塩ビ、テフロン、デルリン(ポリアセタール樹脂)が用いられ、電極15、15としてはステンレス(SUS304)が用いられる。
【0072】
コア12の材料としては、直管パイプ11の材料と同様のものが選択される。
【0073】
直管パイプ11とコア12との間の間隙Gは0.3±0.1mmとなっており、直管パイプ11の内径は30mm程度、長さは45mm程度となっている。
【0074】
次にこのような構成からなる本実施例の作用について説明する。
【0075】
まず被検水槽25からの被検水(流体)がダイヤフラム式ポンプ21により凝集状態検知センサ10内へ送られる。凝集状態検知センサ10へ送られた被検水は、その後排水槽26へ排出される。
【0076】
この間、ダイヤフラム式ポンプ21により被検水は凝集状態検知センサ10へ脈流状態で供給される。このとき凝集状態検知センサ10の電極15a、15b、15c間において電位差が生じる。各電極15a、15b、15c間で生じた電位差は信号処理回路22において波形データに変換される。
【0077】
また信号処理回路22は、ダイヤフラム式ポンプ21に駆動信号を出力するとともに、波形データをパソコン23に送る。
【0078】
パソコン23では信号処理回路22において求められた各電極15a、15b、15c間の波形データに基づいて、凝集状態を求める。
【0079】
すなわち、各電極15a、15b、15c間に生じる電位差は、コロイド粒子を含む被検水が流されたときに凝集剤(例えばPAC:ポリ塩化アルミニウムなど)の添加量に応じて変化する凝集状態に相関性のある応答をする。このため各電極15a、15b、15c間に生じる電位差を求めることにより、被検水の凝集状態を求めることができる。
【0080】
さて、被検水を凝集状態検知センサ10内に長期間流しつづけるとほとんどの場合、付着や汚れが発生するが、これによって電極15a、15b、15c間に生じる電位差が変化することも考えられる。しかし、このような電位差の変化は、実際に凝集状態の変化による応答なのか、付着・汚れによる影響なのかが、電位差だけからは判断することは困難であり、また被検水の状態や流れ方によって付着や汚れの状態が変化し、一様に分布しないことがある。
【0081】
本発明においては、2つの電極だけではなく、3つの電極15a、15b、15cを用い、電極15a、15b間の電位差および電極15b、15c間の電位差を測定することにより、被検水の凝集状態を求める。このためいずれかの電極15a、15b、15c表面または電極15a、15b、15c間に付着や汚れが発生した場合には電位差に変化が生じるが、電極15a、15b間の電位差と電極15b、15c間の電位差の変化を比較することにより、付着や汚れによる電位差への影響を検知することが可能となる。
【0082】
なお本発明は上述した実施例におけるその要旨を変更しない範囲で変形してもよい。例えば、上記実施例では3つの電極15a、15b、15cのうち一つの電極15bを共有電極とするが、電極を4つ用意し、各電極間の電位差を測定するようにしてもかまわない。また、あらかじめ凝集状態と相関性のある各電位差の感度を同一とさせることにより、各電位差間の差を注視し、閾値などを設定することにより、それ以上大きくなったらアラームや洗浄を促すような信号を上位システムへ通知するなどの対応をとるようにすることも可能である。
【0083】
第5の実施の形態
次に図9および図10により、本発明の第5の実施の形態について説明する。
【0084】
図9および図10に示す第5の実施の形態において、図1、図7および図8に示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
ここで、図9は、凝集状態検知センサの構成を示す断面図であり、図10は、図9のB−B矢視断面図である。
【0086】
図9に示すように凝集状態検知センサ10は、直方体状のコア12と、コア12を挟み込む2枚の平板11aを有する外筒11とからなり、上下の平板11aに3つの電極15a、15b、15cが配置されている。
【0087】
図9および図10に示す凝集状態検知センサ10において、直方体状のコア12と、上下の平板11a内面との間の間隙Gの調節をより簡単に行うことができる。また、この間隙Gの値としては0.4mm以下とすることが適当である。この値以上に間隙Gを広げると界面動電現象の抵抗が小さくなり測定感度が得られない。キャピラリー電気泳動法において、ゼータ電位を測定する際も試料溶液は毛細管中を移動させるものであるが、被検水の流通する凝集状態検知センサ10内の間隙Gはこの程度の値以下でないと計測がむずかしい。
【0088】
また、各電極15a、15b、15c間で計測される電位差は、コロイド粒子を含む被検水が流されたときに、凝集剤(例えばPAC:ポリ塩化アルミニウムなど)の添加量に応じて変化し、凝集状態に相関性のある応答を示す。
【0089】
3つの電極15a、15b、15cを用いて各電極15a、15b、15c間の電位差、つまり電極15a、15b間の電位差と、電極15b、15c間の電位差を測定する構成とすることにより、いずれかの電極15a、15b、15c表面または電極15a、15b間または電極15b、15c間に付着や汚れが発生した場合には2つの電位差に変化が生じるため、2つの電位差間の変化を比較することにより、付着や汚れによる電位差への影響を検知することが可能となる。
【0090】
なお本実施の形態において、その要旨を変更しない範囲で変形してもよい。例えば3つの電極15a、15b、15cのうちの一つが共有電極15bとなっているが、電極を4つ用意し、各電極間の電位差を測定するようにしてもかまわない。また、あらかじめ凝集状態と相関性のある各電位差の感度を同一とさせることにより、各電位差間の差を注視し、閾値などを設定することにより、それ以上大きくなったらアラームや洗浄を促すような信号を上位システムへ通知してもよい。
【0091】
第6の実施の形態
次に図11により本発明の第6の実施の形態について説明する。図11に示す第6の実施の形態において、図1、図7および図8に示す第4の実施の形態と同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。ここで、図11は、第6の実施の形態による凝集状態検知センサを示す断面図である。
【0092】
図11に示す第6の実施の形態において、直管パイプ11内にコア12が配置され、このコア12は直管パイプ11内を往復運動する。図11において、直管パイプ11内を往復運動するコア12によって被検水を脈流状態で供給する流体供給部が構成される。
【0093】
図11において、被検水のコロイド粒子等が、モータ43によって駆動されるコア12の往復運動により、直管パイプ11内部に被検水の脈流が誘起される。この被検水の脈流により流動電流が生じ、コア11を囲む3つの電極15a、15b、15c間に電位差が生じる。この計測される電位差を信号処理回路22で計測し、パソコン23により凝集状態が求められる。
【0094】
なお、モータ43は信号処理回路22により制御される。
【0095】
図11に示すように、直管パイプ11に3つの電極15a、15b、15cを設置することにより、電極15a、15b、15cに汚れが付着しても電位差を検知可能とすることができる。
【0096】
本実施の形態においても、その要旨を変更しない範囲で変形してもよい。例えば、本実施の形態では3つの電極15a、15b、15cのうち一つが共有電極15bとなっているが、電極を4つ用意し、各電極間の電位差を測定するようにしてもかまわない。また、あらかじめ凝集状態と相関性のある各電位差の感度を同一とさせることにより、各電位差間の差を注視し、閾値などを設定することにより、それ以上大きくなったらアラームや洗浄を促すような信号を上位システムへ通知してもよい。
【0097】
第7の実施の形態
次に図12により第7の実施の形態について説明する。
【0098】
図12に示す本発明の第7の実施の形態において、図1、図7及び図8に示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。ここで、図12は、凝集状態検知センサを示す断面図である。
【0099】
図12に示すように、直管パイプ11内にコア12が配置されている。このコア12は電極15aから電極15bまで延びる第1コア12aと、電極15bから電極15cまで延びる第2コア12bとを有し、第1コア12aと第2コア12bは、絶縁性で互いに異なる材料からなっている。
【0100】
ここで、凝集状態検知センサ10において、コア12が互いに異なる材料からなる第1コア12aと第2コア12bとからなることにより、被検水に凝集剤を添加したときの凝集状態に相関の有る各電極15a、15b、15c間に現れる電位差の変化幅が各材質の特性により異なる。また、被検水の凝集状態に対する感度が異なるだけで、多くの材質が凝集状態を検出できる可能性がある。
【0101】
そこでコア12を構成する第1コア12aと第2コア12bの材質を付着や汚れの発生しにくい材質、またはあえて発生しやすい材質を選定することができる。付着の汚れの発生しにくい材質として、PTFEやPFAなどのフッ素系樹脂などがよく知られている。そこでこれらのPTFEやPFAなどの付着しにくい材質を第2コア12bの材質として選定し、第1コア12aの材質として通常のものを選ぶと、第2コア12bは第1コア12aと比較して付着や汚れが発生しにくいため、測定している電極15b、15c間の電位差が安定する。一方第1コア12aの両端近傍の電極15a、15b間の電位差は、付着や汚れが発生しやすいためにその影響を受けやすくなる。
【0102】
これを利用することにより、あらかじめ設置当初や洗浄後間もないときの付着やよごれが比較的少ない状況で凝集状態を測定している時の各電極15a、15b、15c間の電位差を記録しておく。その後の各電極15a、15b、15c間の電位差を測定と比較することにより、付着しにくい材質を採用した第2コア12bに比較して、第1コア12a表面上には付着や汚れが発生し、電位差や電位差の変化に差が生じるために、付着や汚れによる影響を容易に検知することが可能となる。
【0103】
本実施の形態において、要旨を変更しない範囲で変形してもよい。例えば、上記実施例では3つの電極15a、15b、15cのうち一つが共有電極15bとなっているが、電極を4つ用意し、各電極15a、15b、15c間の電位差を測定するようにしてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明による凝集状態検知システムの第1乃至第3の実施の形態を示す概略図。
【図2】凝集状態検知センサの応答ピークと積分領域を示す図。
【図3】ピーク積分値による凝集状態検知センサ応答の経時変化およびPAC注入率と凝集状態検知センサ応答の定常値を示す図。
【図4】被検水のジャーテスト結果を示す図。
【図5】凝集状態検知センサを示す断面図。
【図6】実験機としての凝集状態検知システムを示す概略図。
【図7】本発明による凝集状態検知システムの第4の実施の形態を示す概略図。
【図8】図7のA−A線断面図。
【図9】本発明による凝集状態検知システムの第5の実施の形態を示す概略図。
【図10】図9のB−B線断面図。
【図11】本発明による凝集状態検知システムの第6の実施の形態を示す概略図。
【図12】本発明による凝集状態検知システムの第7の実施の形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0105】
10 凝集状態検知センサ
11 直管パイプ
11a 金属網(電磁シールド用)
12 コア
13 キャップ
14 コア保持治具
14a 被検水流通路
15 電極
15a、15b、15c 電極
16 ホースニップル
17 ホース
21 ダイヤフラム式ポンプ
22 信号処理回路
23 パソコン
25 被検水槽(急速撹拌槽)
25a 撹拌機
26 排水槽
26a 排水管
31 原水タンク
31a 撹拌機
33 原水送液ポンプ
34 凝集剤タンク
35 凝集剤送液ポンプ
43 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電体からなる外筒と、
外筒内に配置された非導電体からなるコアと、
外筒の両端部に設けられた一対の電極と、
外筒内に流体を脈流状態で供給する流体供給部と、
一対の電極間に接続され、流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備え、
制御演算部は一対の電極間から得られた波形データから、波形データのピーク時の積分値により流体の凝集状態を検知することを特徴とする凝集状態検知システム。
【請求項2】
制御演算部は一対の電極から得られた信号を記録し処理する信号処理回路と、信号処理回路からのデータに基づいて凝集状態を求めるパソコンとを有することを特徴とする請求項1記載の凝集状態検知システム。
【請求項3】
信号処理回路は流体供給部に、駆動信号を出力するとともに、一対の電極から波形データを求め、
パソコンは信号処理回路からの波形データから、波形データのピーク時の積分値を求めることを特徴とする請求項2記載の凝集状態検知システム。
【請求項4】
パソコンは、波形データのピーク開始およびピーク終了時の平均値に基づいてベースラインを求め、このベースラインに基づいてピーク時の積分値を求めることを特徴とする請求項3記載の凝集状態検知システム。
【請求項5】
パソコンは、波形データから波形データのピーク時の積分値を求める際、波形データの勾配が一定値以上の領域の部分の面積を除外して積分値を求めることを特徴とする請求項3記載の凝集状態検知システム。
【請求項6】
外筒とコアとの間の間隙は、0.4mm以下となることを特徴とする請求項1記載の凝集状態検知システム。
【請求項7】
外筒を電磁シールド用金属網で覆うとともに、一方の電極と、金属網およびアース線が接続されていることを特徴とする請求項1記載の凝集状態検知システム。
【請求項8】
非導電体からなる外筒と、
外筒内に配置された非導電体からなるコアと、
外筒の両端部および両端部間に各々設けられた少なくとも3つの電極と、
外筒内に流体を脈流状態で供給する流体供給部と、
各電極間に接続され、各電極間から得られた信号に基づいて流体の凝集状態を検知する制御演算部とを備えたことを特徴とする凝集状態検知システム。
【請求項9】
コアは、各電極間に設置され、互いに異なる材料からなる第1コアおよび第2コアを有することを特徴とする請求項8記載の凝集状態検知システム。
【請求項10】
制御演算部は電極間から得られた2以上の電位差信号に基づいて流体の凝集状態を検知することを特徴とする請求項8記載の凝集状態検知システム。
【請求項11】
制御演算部は一方の電極間の電位差信号と、他方の電極間の電位差信号とを比較して、一方の電極間の凝集状態と他方の電極間の凝集状態を検知することを特徴とする請求項8記載の凝集状態検知システム。
【請求項12】
制御演算部は一方の電極間の電位差信号と、当該電極間の過去の電位差信号とを比較して、当該電極間の凝集状態を検知することを特徴とする請求項8記載の凝集状態検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−317324(P2006−317324A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141082(P2005−141082)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】