説明

凝集結晶化物生成回収装置及び方法

【課題】
にがり成分やミネラル分を海水と同様に多量に含み苦味成分も多く残っている自然乾燥塩はもちろんのこと、塩に限らず、食品や薬剤の凝集結晶化物を比較的狭いスペースで無駄なく高効率で回収できるようにして低コストで生産する。
【解決手段】
温室(2)内に配された熱風発生装置(3)の吸込口(3in)から吸い込んだ空気を加熱して吹出口(3out)から吹き出すことにより、その吹出口(3out)から温室(2)内を対流して吸込口(3in)に還流する強制循環対流(F)を形成し、該強制循環対流(F)中に原料水を霧状の微粒子にして噴出させることにより、空中で微粒子から水分を蒸発させて原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を熱風発生装置(3)の吸込側に配した結晶化物回収機構(12)で回収するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集結晶化させようとする食品その他の原材料が溶解された原料水を霧状の微粒子にして、空中でこの微粒子から水分を蒸発させることにより原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を回収する凝集結晶化物生成回収装置及び方法であって、特に、海水や塩水から自然塩を効率良く生成する製塩技術に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、海水に含まれるにがり成分やミネラル分などの健康面及び味覚面での効果効能が注目され、これらの成分を含んだ自然塩が見直されており、製塩技術においても、これらの成分をいかに損なうことなく塩を生成するかということを目的として提案されている。
【0003】
このため、加熱された回転ドラムの外周面に海水を噴霧して焼付乾燥させ、これを掻き落すことによりミネラル成分を多量に含んだ焼塩を回収する回転ドラム外周面結晶方式が提案されている。
しかしながら、回転ドラムの外周面に海水を吹きかけると、海水に含まれる塩の成分はすべてドラムに付着されるのではなく、相当量が、自然乾燥塩となって空中に飛散してしまうため回数効率が低いという問題がある。
【特許文献1】特許第2903466号
【特許文献2】特許第3077062号
【特許文献3】特許第3144407号
【0004】
また、50〜60℃の室内に海水を噴霧し、空中で水分を蒸発させることにより塩分を凝集結晶させ、その凝集結晶塩を自然落下させたり、室内に垂れ下げられた布やネットに付着させたりして回収する瞬間空中結晶方式が提案されている。
これによれば、にがり成分やミネラル分を海水と同様に多量に含み、苦味成分も多く残っている自然乾燥塩を回収することができる。
しかしながら、空気中に浮遊する塩の結晶を自然落下させたり、布やネットへ付着させて回収しなければならないため、温度管理されたある程度大きな「部屋」が必要になり、土地代が嵩むだけでなく、塩分の回収作業が面倒で、回収効率が低く、製造コストが嵩むという問題があった。
【特許文献4】特許第3250738号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、にがり成分やミネラル分を海水と同様に多量に含み苦味成分も多く残っている自然乾燥塩はもちろんのこと、塩に限らず、食品や薬剤の凝集結晶化物を比較的狭いスペースで無駄なく高効率で回収できるようにして低コストで生産できるようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明は、凝集結晶化させようとする食品成分又は薬剤などの原材料が溶解された原料水を霧状の微粒子にして、空中でこの微粒子から水分を蒸発させることにより原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を回収する凝集結晶化物生成回収装置であって、前記原料水を微粒化して浮遊させる温室内に、吸込口から吸い込んだ空気を加熱して吹出口から吹き出すことにより、該吹出口から温室内を対流して吸込口に還流する強制循環対流を形成する熱風発生装置と、前記強制循環対流中に前記原料水を霧状の微粒子にして噴出させる微粒化装置が配され、前記熱風発生装置の吸込口には結晶化物回収手段が配されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温室内に配された熱風発生装置の吸込口から吸い込んだ空気を加熱して吹出口から吹き出すことにより、その吹出口から温室内を対流して吸込口に還流する強制循環対流を形成し、凝集結晶化させようとする塩分及びミネラル分を含んだ海水又は塩水を原料水として、これを霧状の微粒子にして噴出させると、空中で微粒子から水分が蒸発されてミネラルやにがり成分を豊富に含んだ塩が凝集結晶し、その結晶化物が強制循環対流に乗って、熱風発生装置の吸込口に運ばれる。
吸込側には、結晶化物回収手段が設けられているので、その一箇所で結晶化物を簡単に回収できる。
この場合に、温室は、熱風の強制循環対流が形成される程度の広さがあれば足り、20m程度(6畳程度)の比較的狭いスペースがあれば結晶化物を生成回収することができる。
【0008】
また、請求項2のように、無端回転ベルト状のフィルタと、そのフィルタに付着した結晶化物を掻き落すスクレーパを備えた結晶化物回収手段を用いれば、フィルタに付着した結晶化物を自動的に掻き落して回収されるので、回収作業の煩わしさもない。
さらに、請求項3のように、スクレーパを吸引ダクトの先端に取り付け、該吸引ダクトで搬送された結晶化物をサイクロン固気分離装置で回収するようにすれば、固気分離装置を温室外に配することにより、結晶化物を生成している温室の外で結晶化物を回収することができるので、より高効率で、より簡単に結晶化物を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本例では、にがり成分やミネラル分を海水と同様に多量に含み苦味成分も多く残っている自然乾燥塩はもちろんのこと、塩に限らず、食品や薬剤の凝集結晶化物を比較的狭いスペースで無駄なく高効率で回収できるようにして低コストで生産するという目的を達成するために、温室内に配された熱風発生装置の吸込口から吸い込んだ空気を加熱して吹出口から吹き出すことにより、その吹出口から温室内を対流して吸込口に還流する強制循環対流を形成し、該強制循環対流中に前記原料水を霧状の微粒子にして噴出させることにより、空中で微粒子から水分を蒸発させて原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を前記熱風発生装置の吸込側で回収するようにした。
【0010】
図1は本発明に係る結晶化物生成回収装置の一例を示す説明図、図2は熱風発生装置を示す説明図である。
【0011】
図1に示す結晶化物生成回収装置1は、凝集結晶化させようとする食品成分又は薬剤などの原材料が溶解された原料水を霧状の微粒子にして、空中でこの微粒子の水分を蒸発させることにより原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を回収する装置であって、原料水を微粒化して浮遊させる温室2内に、熱風発生装置3が配されると共に、原料水を霧状の微粒子にして噴出させる微粒化装置4が熱風発生装置3の吹出口3outに対向するように配されている。
【0012】
熱風発生装置3は、図2に示すように、軸流ファン5の吹出側にヒータ6を内蔵したダクトヒータ7が配され、吸込口3inから吸い込んだ空気をダクトヒータ6で150〜200℃程度まで加熱して吹出口3outから吹き出すことにより、吹出口3outから温室2内を対流して吸込口3inに還流する強制循環対流Fを形成するようになっている。
温室2の天井2aはドーム型に形成されたものに限られないが、スムースな強制循環対流Fを形成するためにはドーム型であることが好ましい。
これにより、温室2内は50〜60℃以上の温度に維持され、微粒化装置4から噴霧された原料水の微粒子から水分を空中で蒸発させて凝集結晶化させることができ、その結晶化物は強制循環対流Fの流れに乗って熱風発生装置3の吸込口3inに吸い込まれる。
なお、熱風発生装置3の吹出口3out及び吸込口3inには、夫々フード8in、8outが取り付けられている。
【0013】
軸流ファン5の吸込側には、モータ9により上下方向に走行駆動される無端回転ベルト状のフィルタ10と、そのフィルタ10に付着した結晶化物を下端側で掻き落すスクレーパ11を備えた結晶化物回収機構12が設けられている。
フィルタ10は、結晶化物を補足し得る程度のメッシュのものが選定されており、したがって、吸込口3inに吸い込まれた結晶化物はフィルタ10に捕捉され、そのフィルタ10をモータ9により走行駆動させることにより結晶化物がスクレーパ11で掻き落とされる。
【0014】
スクレーパ11は、サイクロン固気分離装置13に接続された吸引ダクト14の先端に取り付けられてバキュームノズルに形成されている。
そして、サイクロン固気分離装置13の排気口13outがエジェクタ15に接続され、コンプレッサ16から供給される高圧空気流により排気ダクト14を介してスクレーパ11から結晶化物を吸引するようになっている。
これにより、フィルタ10から掻き落された結晶化物は、吸引ダクト14に吸い込まれてサイクロン固気分離装置13まで搬送され、その回収口17に配された回収容器18に落下するようになっている。
【0015】
微粒化装置4は、原料水タンク19から供給される原料水を小径ノズル(図示せず)を通して高速回転(15,000回転/分)するインペラーに吹きかけることにより、毎分1リットルの原料水を微粒化して噴霧することができる。
また、前記原料水タンク19は、原料水を50〜60℃に余熱し得るように温室2内に設置され、これにより原料水を温室2内に噴霧して微粒化したときに、微粒子の蒸発が促進され、原料水に溶けている原材料が凝集結晶化し易くなっている。
【0016】
以上が本発明に係る結晶化物生成回収装置の一構成例であって、次にこの装置を用いた結晶化物生成回収方法について説明する。
本例では、原料水として海水又は塩水、あるいは、これに食品成分又は薬剤を溶解したものを用い、予め調合された原料水を原料水タンク19に貯留し、熱風発生装置3により温室2内に強制循環対流Fを形成する。
熱風発生装置3の軸流ファン5を回転駆動させると、ダクトヒータ7に送風されて150〜200℃前後に加熱され、吹出口3outから吹き出される。また、熱風発生装置3はその背面側に形成された吸込口3inから空気を吸い込んでいるので、吹出口3outから吹き出されて天井側に上昇した熱風は吸込口3in側に反転され、温度が下がるに従って降下して吸込口3inに至る強制循環対流Fが形成される。
【0017】
そして、温室2全体が50〜60℃まで上昇した時点で、原料水タンク19から図示しないポンプなどにより微粒化装置4に原料水を供給し、強制循環対流F中に原料水を霧状の微粒子にして噴出させと、空中で微粒子から水分が蒸発し、原料水に含まれる塩分及びミネラル分、あるいは、原料水に添加したその他の食品成分や薬剤が凝集結晶した微粒状の結晶化物が得られる。
この結晶化物は、強制循環対流Fに乗って温室2内を浮遊し、熱風発生装置3の吸込口3inまで運ばれる。
熱風発生装置3の吸込側には、結晶化物回収機構12の無端回転ベルト状のフィルタ10が配されているので、吸込口3inに吸い込まれる強制循環対流Fで運ばれてきた結晶化物はフィルタ10に捕捉される。
吸込口に面したフィルタ10はモータ9により上から下へ走行されているので、フィルタ10に付着した結晶化物はその下端側に配されたスクレーパ11により掻き落され、吸引ダクト14に吸い込まれて、サイクロン固液分離装置13で分離され、結晶化物のみが回収容器18に自動的に回収される。
【0018】
約20m(6畳程度)の広さの温室2を用いて、熱風発生装置3のダクトヒータ7として40kWのものを用い、微粒化装置4から毎分1リットルの海水を微粒化して実験したところ、回収容器18に毎分30gの塩を回収することができ、月産850kg、年間10tの生産見通しがついた。
このようにして海水を凝集結晶させて生成された塩は、ミネラル分が豊富に含まれ、身体に良いだけではなく、味が良くまろやかな旨みがあり、食卓塩の他、バター、チーズ、漬物、干物や発酵食品にすばらしい味のふくよかさを与える。
【0019】
また、原料水として、海水及び塩水にお茶の粉末や、明日葉の粉末、ウコンの粉末等を溶かして実験を行った結果、凝集結晶塩の結晶中にそれらの成分が含有されることが確認できた。
これにより、食品成分のみならず、薬剤を含有させることも可能であり、ひいては、塩を含まない場合であっても、凝集結晶可能な核となる食品成分や薬剤が含有されていれば、塩と同様に結晶化物を回収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上述べたように、本発明は、海水などの塩水から、にがり分やミネラルを多く含んだ苦味の強い塩を高効率で製塩すると共に、ミネラルを多く含んだ苦味の少ない塩を高効率で製塩する用途に適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る製塩装置の一例を示す説明図。
【図2】熱風発生装置を示す説明図。
【符号の説明】
【0022】
1 結晶化物生成回収装置
2 温室
3 熱風発生装置
3in 吸込口
3out 吹出口
4 微粒化装置
F 強制循環対流
10 フィルタ
11 スクレーパ
12 結晶化物回収機構
13 サイクロン固気分離装置
14 吸引ダクト





【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集結晶化させようとする食品成分又は薬剤などの原材料が溶解された原料水を霧状の微粒子にして、空中でこの微粒子から水分を蒸発させることにより原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を回収する凝集結晶化物生成回収装置であって、
前記原料水を微粒化して浮遊させる温室内に、吸込口から吸い込んだ空気を加熱して吹出口から吹き出すことにより、該吹出口から温室内を対流して吸込口に還流する強制循環対流を形成する熱風発生装置と、前記強制循環対流中に前記原料水を霧状の微粒子にして噴出させる微粒化装置が配され、
前記熱風発生装置の吸込側には強制循環対流により運ばれたてきた結晶化物を回収する結晶化物回収機構が配されたことを特徴とする凝集結晶化物生成回収装置。
【請求項2】
前記結晶化物回収機構が、無端回転ベルト状のフィルタと、そのフィルタに付着した結晶化物を掻き落すスクレーパを備えた請求項1記載の凝集結晶化物生成回収装置。
【請求項3】
前記スクレーパが吸引ダクトの先端に取り付けられ、該吸引ダクトがサイクロン固気分離装置に接続されてなる請求項2記載の凝集結晶化物生成回収装置。
【請求項4】
前記原料水が、海水又は塩水、あるいは、これに食品成分又は薬剤を溶解してなる請求項1乃至3記載の凝集結晶化物生成回収装置。
【請求項5】
凝集結晶化させようとする食品成分又は薬剤などの原材料が溶解された原料水を霧状の微粒子にして、空中でこの微粒子から水分を蒸発させることにより原材料を凝集結晶させ、その結晶化物を回収する凝集結晶化物生成回収方法であって、
温室内に配された熱風発生装置の吸込口から吸い込んだ空気を加熱して吹出口から吹き出すことにより、その吹出口から温室内を対流して吸込口に還流する強制循環対流を形成し、
該強制循環対流中に前記原料水を霧状の微粒子にして噴出させることにより、空中で微粒子から水分を蒸発させて原材料を凝集結晶させ、
強制循環対流により運ばれたてきた結晶化物を前記熱風発生装置の吸込側で回収することを特徴とする凝集結晶化物生成回収方法。
【請求項6】
前記熱風発生装置の吸込側に、無端回転ベルト状のフィルタと、そのフィルタに付着した結晶化物を掻き落して回収するスクレーパが配されてなる請求項5記載の凝集結晶化物生成回収方法。
【請求項7】
前記スクレーパを吸引ダクトの先端に取り付け、該吸引ダクトで搬送された結晶化物をサイクロン固気分離装置で分離回収する請求項6記載の凝集結晶化物生成回収方法。
【請求項8】
前記原料水に、海水又は塩水、あるいは、これらに食品成分又は薬剤を溶解したものを原料水に用いる請求項5乃至8記載の凝集結晶化物生成回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−275708(P2007−275708A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102368(P2006−102368)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(504404478)
【Fターム(参考)】