説明

処理塔のための追跡調整器システム及び方法

【課題】処理塔システムの床圧の動的変化を補償するシステムを提供する。
【解決手段】処理塔システム10は、入口と、出口と、ピストンヘッド16と、制御された床圧力をピストンヘッドに、ひいては塔内に配置されている基材床36に提供するためのピストン圧力室26と、を含んでいる。追跡調整器50が、加圧された水圧流体の供給源及びピストン圧力室並びに塔の入口と流体連通している。追跡調整器は、処理塔12に流入する処理流体流れの圧力を受信する。追跡調整器は、加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流口63を有している。追跡調整器は、処理流体流れの圧力の降下を検出すると、ピストン圧力室からの水圧流体を、加圧された水圧流体の供給源へ向かわせ、処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体をピストン圧力室に向かわせることにより、基材床の圧力を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概括的には、処理塔に、より詳しくは、処理塔のための追跡調整器システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]処理塔は、数多くの産業プロセスにおいて様々な定格圧力で使用されている。例えば、原材料、中間物、及び最終産物を精製するための大規模クロマトグラフィーの使用は、医薬品、生物医薬品、栄養補助食品、食料及び飲料品、家庭用品、私用の見の回り品、石油製品、化学製品、及び他の特製品を含め、数多くの産業分野に普及している。加えて、生物医薬産業の様な或る特定の産業は、作製される製品毎に複数のクロマトグラフィー精製工程の使用を必要とする。
【0003】
[0003]処理塔では、典型的には、粒状基材物質(ポリマー又はシリカゲルを主材とするクロマトグラフィー媒体類)の均質床が塔内に形成され且つ維持されることが求められる。効率を良くするためには、塔内部の粒状物質の配列は、できる限り均質でなくてはならない。また、粒状基材物質の床と塔入口及び塔出口の間の空き容積は回避されなくてはならない。大規模塔クロマトグラフィーにおける最先端技術は、これらの問題を解決するのに「動的軸方向圧縮」と呼ばれる技術を利用している。動的軸方向圧縮では、塔内の通常5ミクロンから100ミクロンの間の大きさの基材粒状物質を圧縮するのに位置調節可能なピストンヘッドが使用されている。ピストンヘッドは、空圧又は水圧を用いて動的に動かされる。ピストンに掛けられる力は、塔の外からロッドを介して、又は内的にはピストンの一方の側の塔を加圧することによって、印加される。
【0004】
[0004]処理塔用途では、床材料の沈降、収縮、及び膨潤が原因で、基材床体積の変動が起こり、その様な材料が圧縮できる性質のものである場合は特にそうであり、床の収縮と膨張は、床を通る流れの水圧の力のみならず、pH、溶媒濃度、又は塩濃度の付加効果も原因になっている。もう1つの問題は、溶離剤ポンプの運転に脈動が無いとはいえないことである。これは、床に可変的な機械的応力を引き起こすことにもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]従って、処理液流れ圧力のリアルタイム監視に基づいて床圧の動的変化を補償することにより床の完全性を維持するシステムと方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本願発明に係る処理塔の床圧力を制御するためのシステムは、ピストン圧力室が前記処理塔のピストンヘッドに前記床圧力を前記処理塔の床に印加するように仕向けていて、前記処理塔が前記床と流体連通している入口と出口を特徴としており、
a)加圧された水圧流体の供給源と、
b)圧力感知入力と、前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体入口と、前記ピストン圧力室と流体連通するように適合されている水圧流体出口と、を有する追跡調整器と、を備えており、
c)前記追跡調整器の圧力感知入力は、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入口と流体連通するように適合されており、
d)前記追跡調整器は、前記処理流体流れの圧力の変化に、前記ピストン圧力室の圧力を調節することによって応答する。
【0007】
好ましくは、前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記システムは、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインを更に備えており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせるように適合されている。
【0008】
また好ましくは、前記加圧された水圧流体の供給源は、水圧液貯留部と、当該水圧液貯留部と流体連通している入口及び前記追跡調整器の前記水圧流体入口と流体連通している出口を有するポンプと。
【0009】
また好ましくは、前記ポンプに接続されている電子制御装置であって、設定床圧力が当該電子制御装置に入力されるように前記ポンプを制御している、電子制御装置を更に備えている。
【0010】
また好ましくは、前記追跡調整器の前記圧力感知入力と流体連通していて、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入力と流体連通するように適合されている感知ダイヤフラムを更に備えている。
【0011】
また好ましくは、前記感知ダイヤフラムと流体連通していて、前記感知ダイヤフラムと前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入力と流体連通するように適合されている毛細管を更に備えている。
【0012】
また好ましくは、前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器の前記水圧流体入力に、前記システムの設定床圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせるように適合されている。
【0013】
上記課題を解決するための本願発明に係る処理塔システムは、
a)入口と、出口と、処理塔ピストンヘッドと、を特徴とする処理塔であって、更に、前記処理塔ピストンヘッドに隣接して前記処置流体入口及び出口と流体連通に配置されている床を含んでいる、処理塔と、
b)前記処理塔ピストンヘッドに床圧力を前記床に提供するように仕向けるためのピストン圧力室と、
c)加圧された水圧流体の供給源と、
d)圧力感知入力と、前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体入口と、前記ピストン圧力室と流体連通している水圧流体出口と、を有する追跡調整器と、を備えており、
e)前記追跡調整器の圧力感知入力は、前記追跡調整器が、前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入口と流体連通しており、
f)前記追跡調整器は、前記処理流体流れの圧力の変化に、前記ピストン圧力室の圧力を調節することによって応答する。
【0014】
好ましくは、前記ピストン圧力室は、前記処理塔の内部に在って、前記処理塔ピストンヘッドと前記処理塔の上板の間に配置されている。
また好ましくは、第1端側が前記処理塔ピストンに接続されているピストンロッドと、駆動ピストンを収容している外部駆動塔であって、前記ピストン圧力室が当該駆動塔内に前記駆動ピストンに隣接して配置されている、外部駆動塔と、を更に備えており、前記駆動ピストンは、前記ピストンロッドの前記第1端とは反対の第2端側に接続されている。
【0015】
また好ましくは、前記塔入口は、処理流体口を含み、前記システムは、前記ピストンヘッドに接続されているロッドを更に備えており、前記塔出口は、前記ロッドを貫いて形成されている流体通路を含んでいる。
【0016】
また好ましくは、前記塔出口は、処理流体口を含み、前記システムは、前記ピストンヘッドに接続されているロッドを更に備えており、前記塔入口は、前記ロッドを貫いて形成されている流体通路を含んでいる。
【0017】
また好ましくは、前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記システムは、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインを更に備えており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせる。
【0018】
また好ましくは、前記加圧された水圧流体の供給源は、水圧液貯留部と、当該水圧液貯留部と流体連通している入口及び前記追跡調整器の前記水圧流体入口と流体連通している出口を有するポンプと、を含んでいる。
【0019】
また好ましくは、前記追跡調整器の前記圧力感知入力と流体連通していて、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信するように、前記処理塔入力と流体連通している感知ダイヤフラムを更に備えている。
【0020】
また好ましくは、前記感知ダイヤフラムと流体連通していて、前記感知ダイヤフラムと前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信するように、前記処理塔入力と流体連通している毛細管を更に備えている。
【0021】
また好ましくは、前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器の前記水圧流体入力に、前記システムの設定床圧力又は当該設定圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせるように適合されている。
【0022】
上記課題を解決するための本願発明に係る処理塔の床圧力を制御する方法は、ピストン圧力室が前記処理塔のピストンヘッドに前記床圧力を前記処理塔の床に印加するように仕向けていて、前記処理塔が前記床と流体連通している入口と出口を特徴としており、
a)加圧された水圧流体を、前記ピストン圧力室へ、前記加圧された水圧流体の供給源から追跡調整器を通して提供する段階と、
b)前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を、前記追跡調整器を用いて感知する段階と、
c)前記ピストン圧力室の圧力を、前記追跡調整器を使用して、前記処理流体流れの感知圧力に基づいて調節する段階と、を備えている。
【0023】
好ましくは、前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインが更に備えられており、
前記方法は、前記追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせる段階を更に備えている。
【0024】
また好ましくは、前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器に、前記システムの設定床圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、
前記方法は、前記追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の結果の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせる段階を更に備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】[0006] 内部ピストン圧力室を含む本発明の追跡調整器システム及び方法の或る実施形態を示している模式図である。
【図2】[0007] ピストン圧力室を収容している外部駆動塔を含む本発明の追跡調整器システム及び方法の或る実施形態を示している模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0008]本発明のシステム及び方法の実施形態は、以下に、液体クロマトグラフィーに関して説明されているが、本発明は、その様に限定されるものではなく、代わりに、濾過、固相合成、捕獲、及び吸着の様な、処理塔が係わる他のプロセスはもとより、気体及び超臨界流体を含む他の型式のクロマトグラフィーにも適用することができるものと理解されたい。
【0027】
[0009]本発明のシステムの或る実施形態が、図1に全体を10で表示されている。処理塔12は、垂直方向に配列されたシリンダ又は塔14を含み、当該シリンダ内には、処理塔ピストンヘッド16とピストンロッド18を特徴とする滑動ピストンが配置されている。ピストンロッドを貫いて処理流体通路22が形成されている。塔14には、ピストンロッドを通す中央開口部を含む上板24が設けられている。上板とピストンヘッドの間にピストン圧力室26が形成されている。塔14には、更に、処理流体口34が形成された下板32が設けられている。
【0028】
[0010]ピストンヘッドの下面と下板の間に、粒状物質の基材床36が配置されている。床36は、代わりに、単体(一枚板又は膜)の床、或いは細胞の懸濁液(イーストを使用した発酵又は動物細胞のプラントを使用した生物反応器で使用されているものなど)であってもよい。基材床36は、多孔質であっても非多孔質であってもよく、セルロース、メタクリレート、ジビニルベンゼン、シリカ、ゼオライト、チタンから作成された基礎構造又はその他の分離媒体で使用されている型式の基礎構造を含むポリマー材料又はゲルを含むことができる。
【0029】
[0011]システムは、処理塔12の口34と、空気又は液体の様な流体を入れた毛細管ライン44を介して、流体連通している感知ダイヤフラム42を含んでいる。システムは、更に、感知ダイヤフラム42と液充満ライン52を介して流体連通している圧力感知入力51を特徴とする追跡調整器50を含んでいる。以下に更に詳しく説明してゆくが、追跡調整器は、更に、感知ダイヤフラム42によって提供される処理液流れ圧力フフィードバックに基づいて、バイアス圧力を、ピストンヘッド16に作用している圧力に追加させられるようにしている。
【0030】
[0012]水圧液貯留部54が、水圧ポンプ56の入口とライン58を介して連通しており、当該ポンプの出口は、追跡調整器50の水圧流体入口60とライン62を介して連通している。追跡調整器は、更に、水圧液貯留部54と、63及び64でそれぞれ表示されている水圧流体排流口及び水圧流体排流ラインを介して、流体連通している。追跡調整器50は、更に、処理塔66のピストン圧力室26とライン66を介して流体連通している水圧流体出口65を特徴としている。ポンプ56の運転は電子制御装置68によって制御されている。電子制御装置68は、マイクロプロセッサであってもよいし、当技術で既知のその他の電子制御デバイスであってもよい。
【0031】
[0013]運転時、基材床36の設定床圧力Pが選択され、制御装置68に入力される。これにより、ポンプ56の運転が開始され、貯留部54からの水圧液が、ライン58及び62、追跡調整器50、そしてライン66を通って、ピストン圧力室26に向かって進められる。結果として、ピストン圧力室は水圧液で加圧され、ピストンヘッド16は、選択された設定床圧力Pで下向きに押され、基材床36の粒状物質を圧縮する、又は固める。
【0032】
[0014]液体クロマトグラフィーが開始されると、処理流体(この事例では、最初に移動相液体、その後クロマトグラフィーに掛けられる粗原料の溶液)が処理流体口34を通って塔の中へ進み、基材床36を通過し、次いで処理流体通路22を通って、塔から出てゆく。このモードの運転は、処理流体口34を塔入口とし処理流体通路22を塔出口として働かせながら、進められることを想定しているが、流れは、代わりに、処理流体通路22を通って塔に進入し、処理流体口34を通って塔から出てゆくという具合に、逆方向に進むように経路決めされてもよいものと理解されたい。
【0033】
[0015]処理流体が基材床36を通って流れてゆく結果として、ピストンヘッド16の下面には、設定床圧力Pに加え、流れ圧力Pが作用する。固定型のピストンを用いた典型的な先行技術のシステムの様に対応が取られないままでは、ピストンヘッド16は、上向きに進んで基材床36に作用している追加の流れ圧力を小さくすることはできないであろう。動的軸方向圧縮塔の場合は、特に、柔軟で圧縮性の基材床媒体を使っている場合、通常運転では、床を通過する流量の高い運転が必要となってくる。これには、ピストンを運動させないでおくために、高められたピストン圧力設定が必要になるかもしれない。高められたピストン圧力設定であっても、床材料が入ってくる流れによって水圧的に緩衝されている限り、当該床材料には許容されうる。とはいえ、流量が減少又は停止すると、その様なピストン圧力は、媒体にその物理的な支持能力を超えた物理的圧力を及ぼし、その結果、媒体が過剰圧縮されて内部の孔構造が閉じてしまうのみならず、媒体床の破壊が引き起こされかねない。これより説明してゆくが、図1のシステムは、ピストン圧力室26にPに等しい差圧を追加する。本システムは、更に、十分な流れ緩衝が無い場合の追加の直接的なピストン圧力を低減又は排除しており、このことは、圧縮性又は脆弱な媒体がピストン圧力に曝される場合には特に有用である。
【0034】
[0016]制御装置68は、ライン62を通って追跡調整器50の入口へ提供される圧力が、設定床圧力Pか、又は最大予想運転又は処理流れ圧力Pfmaxを僅かに上回る量に実質的に等しくなるように較正される。この量は好適にはPfmaxを1〜2Psi程度上回る量であって、この量が超過圧力点となるが、その使用を以下に説明してゆく。追跡調整器は、口34を通る液の流れが途絶えたとき、ピストン圧力室26には、設定床圧力Pを提供するに足るだけの水圧流体が提供されるように較正される。
【0035】
[0017]塔を通る処理流体流れが開始されると、感知ダイヤフラム42が、処理流体口34を通って流れている流体の圧力を、毛細管44を介して感知し、感知圧力入力を追跡調整器50に液充満ライン52を介して提供する。追跡調整器50は、ライン62からライン66を通ってピストン圧力室26に送出される水圧流体の量を、感知ダイヤフラム42によって感知された圧力に比例して増やすことによって応える。追跡調整器50は、ピストン圧力室26へ送出される追加の水圧流体ひいては圧力が、ピストンヘッド16の上面に作用する総床圧力Pを、設定床P圧力足すピストンヘッドの下面に作用する処理流体流れ圧力Pに等しくさせるように較正される。換言すると、追跡調整器は、ピストンヘッド16が基材床36に加える圧力を、以下の数式、
=P+P
但し、P=総床圧力
=設定床圧力
=処理流体流れ圧力
に従って調節する。
【0036】
[0018]感知ダイヤフラム42は、処理流体流れ圧力の上昇と下降の両方を感知する。塔に流入する流体の流れが増すと、その結果、ピストンヘッド16の下面に作用する流れ圧力Pが相応に上昇するが、これは、口34で感知ダイヤフラムによって感知される圧力に反映され、追跡調整器50に連絡される。追跡調整器50は、ピストン圧力室26内の圧力を、ピストンヘッドに作用する総床圧力Pが処理流れ圧力P足す設定床圧力Pに一致し続けるように、上げることによって対応する。
【0037】
[0019]口34を通って塔に流入する処理流体の流れが減ると、この情報は、これまでに説明した様に、感知ダイヤフラム42を介して追跡調整器に伝えられる。追跡調整器50は、ピストン圧力室26からライン66及び水圧流体排流ライン64を通して圧力を逃がすことによって応える。結果として、水圧流体は、水圧流体貯留部に戻ってくる。逃がされた流体の量は、感知ダイヤフラムひいては追跡調整器によって感知された圧力下降に比例する。結果として、総床圧力Pは、処理流体流れ圧力Pの減少に相応して減少する。換言すると、追跡調整器50は、ピストン圧力室26内の圧力を、ピストンヘッドに作用する総床圧力Pが処理流れ圧力P足す設定床圧力Pに一致し続けるように下げることによって対応する。
【0038】
[0020]口34を通って塔に流入する処理流体の流れが超過圧力点に相当するレベルに達したとき、これは同様に口34を介して感知ダイヤフラム42によって検出され、すると、追跡調整器が、ピストン圧力室26からライン66及び水圧流体排流ライン64を通して圧力を逃がす。結果として、水圧流体は、水圧流体貯留部に戻ってくる。逃がされた流体の量は、差圧を設定床圧力に加算したものが下がってPfmaxに等しくなるような量である。結果として、追跡調整器50は、ピストン圧力室26内の圧力を、ピストンヘッドに作用する総床圧力Pが最大予想処理流れ圧力Pfmax足す設定床圧力Pに一致するように下げることによって対応する。
【0039】
[0021]上記に照らし、追跡調整器は、基材床の完全性が維持されるように、総床圧力が処理流体流れ圧力を追跡できるようにしている。純粋に口34と追跡調整器50の間の流体及び機械的な漏出が原因の場合は、追跡調整器の応答は、ほぼ瞬時であり、こうして、基材物質へのリスクの可能性が最小限に抑えられる。
【0040】
[0022]図1の70の仮想線に表示されている様に、感知ダイヤフラム42に通じる毛細管は、代わりに、処理流体通路22の開口部72に配置されていてもよい。この構成は、システムを、処理流体の流れが、開口部72(ここでは処理塔入口)、処理流体通路22を通って塔に進入し、基材床36を通過して、口34(ここでは処理塔出口)を通って出てゆくという状況での使用に適合させる。
【0041】
[0023]適した感知ダイヤフラム42及び追跡調整器50は、当技術では既知である。単に一例として、ミネソタ州エルクリバーのTescom Corporation社から入手可能なSISシリーズ調整器と42MW溶接ダイヤフラム計器アイソレーターは、それぞれ、追跡調整器50と感知ダイヤフラム42として使用するのに適している。感知ダイヤフラムは、在庫利用できるダイヤフラム計器アイソレーターの一部修正が必要になるかもしれないが、t−off設計ではなく流通セル設計を特徴としているのが望ましい。
【0042】
[0024]図2に全体が110で表示されている本発明のシステムの或る代わりの実施形態では、ピストン圧力室は、外部駆動塔内に収納されていて、ピストンロッドに、ひいては処理塔のピストンヘッドに働きかける。より具体的には、図2のシステム110では、処理塔112は、垂直方向に配列されたシリンダ114を含み、当該シリンダ内には、処理塔ピストンヘッド116とピストンロッド118を特徴とする滑動ピストンが配置されている。ピストンヘッドを貫いて処理流体通路122が形成されている。処理塔112は、ピストンロッドを通す開口上端124を特徴としている。処理塔には、更に、処理流体口134が形成された下板132が設けられている。
【0043】
[0025]塔114の上方に外部駆動塔125が支持され、駆動ピストン127を収容している。ピストン圧力室126は、駆動塔の上面と駆動ピストンヘッドの間に形成されている。
【0044】
[0026]ピストンヘッドの下面と下板の間に、粒状物質の基材床136が配置されている。床136は、代わりに、単体(一枚板又は膜)の床、或いは細胞の懸濁液(イーストを使用した発酵又は動物細胞のプラントを使用した生物反応器で使用されているものなど)であってもよい。基材床136は、多孔質であっても非多孔質であってもよく、セルロース、メタクリレート、ジビニルベンゼン、シリカ、ゼオライト、チタンから作成された基礎構造又はその他の分離媒体で使用されている型式の基礎構造を含むポリマー材料又はゲルを含むことができる。
【0045】
[0027]図2のシステムは、処理塔112の口134と、空気又は液体の様な流体を入れた毛細管ライン144を介して流体連通している感知ダイヤフラム142を含んでいる。システムは、更に、感知ダイヤフラム142と、液充満ライン152を介して流体連通している圧力感知入力151を特徴とする追跡調整器150を含んでいる。上で図1の実施形態に関して説明した様に、追跡調整器は、更に、感知ダイヤフラム142によって提供される処理液流れ圧力フィードバックに基づいて、バイアス圧力を、ピストンヘッド116に作用している圧力に追加させられるようにしている。
【0046】
[0028]水圧液貯留部154が、水圧ポンプ156の入口とライン158を介して連通しており、当該ポンプの出口は、追跡調整器150の水圧流体入口160とライン162を介して連通している。追跡調整器は、更に、水圧液貯留部154と、163及び164でそれぞれ表示されている水圧流体排流口及び水圧流体排流ラインを介して、流体連通している。追跡調整器150は、更に、外部駆動塔のピストン圧力室126とライン166を介して流体連通している水圧流体出口165を特徴としている。ポンプ156の運転は電子制御装置168によって制御されている。電子制御装置168は、マイクロプロセッサであってもよいし、当技術で既知のその他の電子制御デバイスであってもよい。
【0047】
[0029]図2のシステムの構成要素は、上で図1のシステムについて説明されているのと同じ様式で、処理流体口を処理塔入口とし処理流体通路122を処理塔出口として働かせて作動している。唯一の相違は、ピストン圧力室が、処理塔112の外部になる駆動塔125の中に配置されていることである。
【0048】
[0030]図2の170の仮想線に表示されている様に、感知ダイヤフラム142に通じる毛細管は、代わりに、処理流体通路122の開口部172に配置されていてもよい。この構成は、システムを、処理流体の流れが開口部72(ここでは処理塔入口として働く)及び処理流体通路122を通って塔に進入し、基材床136を通過して、口134(ここでは処理塔出口として働く)を通って出てゆくという状況での使用に適合させる。
【0049】
[0031]本発明のシステムと方法は、如何なる流体処理プロセス及び関連付けられている塔であって、床に圧力を印加する内部ピストンヘッドを特徴とする塔とも共に使用することができる。その様な流体プロセス及び設備の例には、限定するわけではないが、クロマトグラフィー塔(液体、超臨界流体、気体)、捕獲塔、流通合成器塔、及び生物反応器/発酵器塔(この場合、床は細胞の懸濁液である)が挙げられる。その様なプロセスは、限定するわけではないが、生物学的用途及び化学的用途を含む様々な用途で使用することができる。
【0050】
[0032]本発明は、従って、圧力追跡システムにおいて、システムの水圧用圧力を、設定床圧力の分だけ処理流体圧力を超過するようにほぼ瞬時に調節することによって、床の完全性を維持する圧力追跡システムを提供している。沈降、収縮、及び膨潤が原因の床体積の変動は、水圧液をピストン圧力室に追加するか又は液を解放して水圧流体貯留部に戻すかの何れかによって自動的に是正される。
【0051】
[0033]本発明の好適な実施形態を示し説明してきたが、実施形態には、付随の特許請求の範囲によって範囲が定義されている本発明の精神から逸脱することなく、変更及び修正を加えてもよいことが当業者には自明であろう。
【符号の説明】
【0052】
10 処理塔システム
12 処理塔
14 シリンダ又は塔
16 処理塔ピストンヘッド
18 ピストンロッド
22 処理流体通路
24 上板
26 ピストン圧力室
32 下板
34 処理流体口
36 基材床
42 感知ダイヤフラム
44 毛細管ライン
50 追跡調整器
51 圧力感知入力
52 液充満ライン
54 水圧液貯留部
56 水圧ポンプ
58、62、66 ライン
60 水圧流体入口
63 水圧流体排流口
64 水圧流体排流ライン
65 水圧流体出口
68 電子制御装置
70 毛細管ラインの代替配置を示す仮想線
72 開口部
110 処理塔システム
112 処理塔
114 シリンダ
116 処理塔ピストンヘッド
118 ピストンロッド
122 処理流体通路
124 開口上端
125 外部駆動塔
126 ピストン圧力室
127 駆動ピストン
132 下板
134 処理流体口
136 基材床
142 感知ダイヤフラム
144 毛細管ライン
150 追跡調整器
151 圧力感知入力
152 液充満ライン
154 水圧液貯留部
158、162、166 ライン
156 水圧ポンプ
160 水圧流体入口
163 水圧流体排流口
164 水圧流体排流ライン
165 水圧流体出口
168 電子制御装置
170 毛細管ラインの代替配置を示す仮想線
172 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理塔の床圧力を制御するためのシステムであって、ピストン圧力室が前記処理塔のピストンヘッドに前記床圧力を前記処理塔の床に印加するように仕向けていて、前記処理塔が前記床と流体連通している入口と出口を特徴としている、システムにおいて、
a)加圧された水圧流体の供給源と、
b)圧力感知入力と、前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体入口と、前記ピストン圧力室と流体連通するように適合されている水圧流体出口と、を有する追跡調整器と、を備えており、
c)前記追跡調整器の圧力感知入力は、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入口と流体連通するように適合されており、
d)前記追跡調整器は、前記処理流体流れの圧力の変化に、前記ピストン圧力室の圧力を調節することによって応答する、システム。
【請求項2】
前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記システムは、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインを更に備えており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記加圧された水圧流体の供給源は、水圧液貯留部と、当該水圧液貯留部と流体連通している入口及び前記追跡調整器の前記水圧流体入口と流体連通している出口を有するポンプと、を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ポンプに接続されている電子制御装置であって、設定床圧力が当該電子制御装置に入力されるように前記ポンプを制御している、電子制御装置を更に備えている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記追跡調整器の前記圧力感知入力と流体連通していて、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入力と流体連通するように適合されている感知ダイヤフラムを更に備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記感知ダイヤフラムと流体連通していて、前記感知ダイヤフラムと前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入力と流体連通するように適合されている毛細管を更に備えている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器の前記水圧流体入力に、前記システムの設定床圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
処理塔システムにおいて、
a)入口と、出口と、処理塔ピストンヘッドと、を特徴とする処理塔であって、更に、前記処理塔ピストンヘッドに隣接して前記処置流体入口及び出口と流体連通に配置されている床を含んでいる、処理塔と、
b)前記処理塔ピストンヘッドに床圧力を前記床に提供するように仕向けるためのピストン圧力室と、
c)加圧された水圧流体の供給源と、
d)圧力感知入力と、前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体入口と、前記ピストン圧力室と流体連通している水圧流体出口と、を有する追跡調整器と、を備えており、
e)前記追跡調整器の圧力感知入力は、前記追跡調整器が、前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信することができるように、前記処理塔入口と流体連通しており、
f)前記追跡調整器は、前記処理流体流れの圧力の変化に、前記ピストン圧力室の圧力を調節することによって応答する、処理塔システム。
【請求項9】
前記ピストン圧力室は、前記処理塔の内部に在って、前記処理塔ピストンヘッドと前記処理塔の上板の間に配置されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
第1端側が前記処理塔ピストンに接続されているピストンロッドと、駆動ピストンを収容している外部駆動塔であって、前記ピストン圧力室が当該駆動塔内に前記駆動ピストンに隣接して配置されている、外部駆動塔と、を更に備えており、前記駆動ピストンは、前記ピストンロッドの前記第1端とは反対の第2端側に接続されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記塔入口は、処理流体口を含み、前記システムは、前記ピストンヘッドに接続されているロッドを更に備えており、前記塔出口は、前記ロッドを貫いて形成されている流体通路を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記塔出口は、処理流体口を含み、前記システムは、前記ピストンヘッドに接続されているロッドを更に備えており、前記塔入口は、前記ロッドを貫いて形成されている流体通路を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記システムは、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインを更に備えており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記加圧された水圧流体の供給源は、水圧液貯留部と、当該水圧液貯留部と流体連通している入口及び前記追跡調整器の前記水圧流体入口と流体連通している出口を有するポンプと、を含んでいる、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記追跡調整器の前記圧力感知入力と流体連通していて、前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信するように、前記処理塔入力と流体連通している感知ダイヤフラムを更に備えている、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記感知ダイヤフラムと流体連通していて、前記感知ダイヤフラムと前記追跡調整器が前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を受信するように、前記処理塔入力と流体連通している毛細管を更に備えている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器の前記水圧流体入力に、前記システムの設定床圧力又は当該設定圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、前記追跡調整器は、当該追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせるように適合されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項18】
処理塔の床圧力を制御する方法であって、ピストン圧力室が前記処理塔のピストンヘッドに前記床圧力を前記処理塔の床に印加するように仕向けていて、前記処理塔が前記床と流体連通している入口と出口を特徴としている、処理塔の床圧力を制御する方法において、
a)加圧された水圧流体を、前記ピストン圧力室へ、前記加圧された水圧流体の供給源から追跡調整器を通して提供する段階と、
b)前記処理塔に流入する処理流体流れの圧力を、前記追跡調整器を用いて感知する段階と、
c)前記ピストン圧力室の圧力を、前記追跡調整器を使用して、前記処理流体流れの感知圧力に基づいて調節する段階と、を備えている方法。
【請求項19】
前記追跡調整器は、水圧流体排流口を含み、前記追跡調整器の前記水圧流体排流口及び前記加圧された水圧流体の供給源と流体連通している水圧流体排流ラインが更に備えられており、
前記方法は、前記追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の降下を検出すると、前記ピストン圧力室からの水圧流体を前記水圧流体排流ライン及び前記加圧された水圧流体の供給源に向かわせる段階を更に備えている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記加圧された水圧流体の供給源は、前記追跡調整器に、前記システムの設定床圧力足す最大予想処理流れ圧力に等しい圧力を提供しており、
前記方法は、前記追跡調整器が前記処理流体流れの圧力の上昇を検出すると、前記ピストン圧力室の結果の圧力が前記設定床圧力より大きくなるように、前記加圧された水圧流体の供給源からの追加の水圧流体を前記ピストン圧力室へ向かわせる段階を更に備えている、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224564(P2011−224564A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−93930(P2011−93930)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(511099722)アサヒカセイ・バイオプロセス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】