説明

処理実行装置及び電話番号登録装置

【課題】ユーザの手間をなるべく低減しつつユーザ認証や登録作業を行うことが可能な処理実行装置及び電話番号登録装置を提供する。
【解決手段】プリンタ20は、ユーザにより所定の処理に対する指示がされると、当該ユーザの電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、ユーザ認証成功と判定し上記所定の処理の実行を許容する。また、登録したい電話番号を入力すると、その電話番号の電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、上記電話番号を登録データベースに登録をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理実行装置及び電話番号登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像形成装置と端末装置とをネットワークを介して接続して、画像形成システムが構築される。通常、ユーザは、端末装置にて印刷要求の操作を行う。すると、端末装置から印刷データが送信され、その印刷データを受信した画像形成装置は、1つのジョブとして、上記印刷データについて展開処理をし、その展開データに応じた画像を印刷した用紙を出力する。ここで、端末装置からの印刷データの中には、他の者に見られないようにすべき機密性の高い資料に関するものがある。
【0003】
そこで、従来から、ユーザの認証を行うことで特定のユーザ以外には画像形成装置の操作を行わせないようにする技術がある。その技術の一例として、例えば機密資料に関する印刷データ(以下、「機密データ」という)と共にユーザのパスワードを端末装置から送信し、画像形成装置は、受信した上記機密データを内部メモリに一時的に保存し、自己備えられた操作部にて上記パスワードが入力されない限り上記機密データの印刷処理を実行しないようにしたものがある。
【0004】
しかし、上記ユーザの認証技術においては、上記パスワードが漏洩した場合には、そのパスワードによる画像形成装置の不正使用を防止することができない。そこで、特許文献1に記載の処理実行装置は、ユーザからジョブを受け付けたら、そのユーザごとに予め記録された連絡先に通知(メールの送信)し、その通知に対する上記連絡先からの返信(メール受信)があったときに限り、上記ジョブに対する制御の実行を許容する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−212436公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、正当なユーザは、自己のパスワードに基づき画像形成装置を使用する場合であっても、自分の端末装置に送られてきた通知メールに対してメールを返信するという作業が常に必要になり、手間がかかるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、ユーザの手間をなるべく低減しつつユーザ認証や登録作業を行うことが可能な処理実行装置及び電話番号登録装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る処理実行装置は、ユーザの指示に基づく指示信号が入力される第1入力部と、前記指示信号に応じた処理を実行する実行部と、前記ユーザに対応する電話番号の電話機に電話をかける送信部と、前記電話機に繋がったかどうかを判断する判断部と、前記判断部で前記電話機に繋がったと判断されたことに基づきユーザ認証成功と判定する第1認証部と、前記第1認証部で前記ユーザ認証成功と判定された場合に、前記実行部による処理の実行を許容する制御部と、を備えた。
【0007】
第2の発明は、第1の処理実行装置であって、前記第1認証部は、前記送信部の送信動作の開始から所定時間内に、前記電話機に繋がったと判断されたことを条件に前記ユーザ認証成功と判定する。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の処理実行装置であって、ユーザごとに電話番号が登録される第1記録部を備え、前記送信部は、前記第1記録部の記録内容に基づき前記ユーザに対応する電話番号の電話機に電話をかける。
【0009】
第4の発明は、第3の処理実行装置であって、パスワードを入力させる第2入力部と、ユーザごとに認証用パスワードが登録される第2記録部と、現在指示しているユーザについて前記第1記録部に電話番号が登録されていない場合、または、前記第1記録部に電話番号が登録されていたが当該電話番号に基づく前記第1認証部での判定がユーザ認証失敗であった場合に、前記第2入力部に入力される入力パスワードと前記認証用パスワードとに基づくユーザ認証を行う第2認証部と、を備え、前記制御部は、前記認証部の認証結果に基づき前記実行部による処理の実行を許容する。
【0010】
第5の発明は、第2から第4のいずれか一つの処理実行装置であって、前記ユーザの電話機からの着信により当該電話機の電話番号を受信する受信部と、前記受信部で受信した電話番号を前記ユーザに対応付けて前記第1記録部に登録する第1登録部と、を備える。
【0011】
第6の発明に係る電話番号登録装置は、電話番号が入力される第3入力部と、前記第3入力部に入力された電話番号の電話機に電話をかける送信部と、前記電話機に繋がったかどうかを判断する判断部と、第1記録部と、前記判断部で前記電話機に繋がったと判断された場合に、前記電話番号を前記第1記録部に登録する第2登録部と、を備える。
【0012】
第7の発明は、第6の電話番号登録装置であって、前記第2登録部は、前記送信部の送信動作開始から所定時間内に、前記電話機に繋がったと判断されたことを条件に前記電話番号を登録する。
【発明の効果】
【0013】
<第1の発明>
本発明によれば、処理実行装置は、ユーザにより所定の処理に対する指示がされると、当該ユーザの電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、ユーザ認証成功と判定し上記所定の処理の実行を許容する。従って、ユーザ認証を電話回線の接続・切断に基づき容易に行うことができる。
【0014】
<第2の発明>
本発明のように、電話機に繋がったかどうかの判断時間を所定時間内に限ることで、ユーザ認証の精度を向上させることができる。
【0015】
<第3の発明>
現在指示をしているユーザの電話番号を、その都度、ユーザによる操作や外部機器によるデータ送信によって取得する構成でもよいが、本発明のようにユーザごとに電話番号を予め第1記録部に登録しておくことが望ましい。
【0016】
<第4の発明>
本発明によれば、電話番号が登録されている場合には、その電話番号によるユーザ認証を優先して行うようにしている。
【0017】
<第5の発明>
本発明によれば、登録したい電話番号の電話機で処理実行装置宛てに電話をすることで、上記電話番号を第1記録部に登録することができ、電話番号の入力の手間が省ける。
【0018】
<第6の発明>
本発明によれば、登録したい電話番号を入力すると、その電話番号の電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、上記電話番号を第1記録部に登録をする。従って、入力した電話番号が正しいかどうかを電話回線の接続・切断に基づき容易に確認することができる。
【0019】
<第7の発明>
本発明のように、電話機に繋がったかどうかの判断時間を所定時間内に限ることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の一実施形態について図1から図8を参照して説明する。
本実施形態では、「処理実行装置、電話番号登録装置」の一例としての画像形成装置について説明する。画像形成装置には、特定の処理、換言すれば機能(例えばカラー印刷機能や、画像形成装置が複合機である場合には、コピー機能やファクシミリ機能など)の使用権限者を、特定のユーザに限定する「ロック機能」を備えたものがある。これは、例えば、上記特定の機能の使用について、ユーザごとに課金管理をしたい場合に有効である。
【0021】
また、画像形成装置には、上記特定の機能として「セキュリティープリント機能」を備えたものがある。このセキュリティープリント機能は、印刷データと共にユーザ固有のパスワード情報を情報処理装置から画像形成装置に送信すると、この画像形成装置は、受信した印刷データ(或いはこの印刷データを展開処理した展開データ)をメモリに記憶して記録用紙への印刷をしない待機状態となる。そして、画像形成装置の操作部で上記パスワードと一致したパスワードが入力された場合に限り、上記記憶用紙への印刷を許容するという機能である。このセキュリティープリント機能は、メモリに記憶された印刷データについて記録用紙への印刷指示の操作を所定のユーザに限っているという点で、上記ロック機能のロック対象となる特定の機能の一種に含まれる。
【0022】
そして、上記ロック機能及びセキュリティープリント機能は、画像形成装置に所定の処理を実行させようとするユーザが、当該画像形成装置の使用権限を有しているかどうかを判定するユーザ認証が必要であるという点で共通する。本実施形態は、このユーザ認証をパスワードなしでも行うことが可能な技術に関する。
【0023】
(全体構成)
図1は、画像形成システムの構成を示すブロック図である。この画像形成システムは、画像形成装置としてのプリンタ20と、このプリンタ20にLANなどの通信回線30を介して接続された情報処理装置(以下、「コンピュータ10」という)とを備えて構成されている。
【0024】
1.コンピュータ
コンピュータ10は、キーボードやマウスなどの外部からの入力操作を受け付ける操作部11、液晶ディスプレイ等の表示部12、ROM13、RAM14、CPU15、ハードディスク16、通信回線30に接続されるネットワークインターフェイス17等を備えて構成されている。ハードディスク16には、プリンタドライバやその他のアプリケーションソフト等が記憶されており、CPU15は、上記操作部11からの実行指令に基づきプリンタドライバ等をハードディスク16から読み出して実行する。セキュリティープリント機能を使う場合、ユーザは、上記操作部11での操作によって、上記セキュリティープリント機能を指定しつつ所望のファイルの印刷要求を行う。すると、CPU15は、上記ユーザのユーザ名情報を上記所望のファイルの印刷データと共にプリンタ20に送信する制御を行う。セキュリティープリント機能の使用時には、プリンタ20のCPU25は、コンピュータ10からのユーザ名情報を受け取ると、そのユーザ名に対応する電話番号や認証用パスワードを登録データベースから読み出して、各ユーザ認証処理(図6,図7参照)を行う。
【0025】
2.プリンタ
プリンタ20(「処理実行装置、電話番号登録装置」の一例)は、スキャナ機能やファクシミリ機能を備えた、いわゆる複合機である。具体的には、プリンタ20は、各種のキー等からなる操作部21、被記録媒体としての記録用紙への印刷を行う印刷部22、ROM23、RAM24、CPU25、NVRAM(不揮発性メモリ)26、表示部27、ネットワークインターフェイス28、スキャナ部29等を備えて構成されている。CPU25は、ROM23に記憶されたプログラムに従って、その処理結果をRAM24やNVRAM26に記憶させながら各部の制御を行う。スキャナ部29は、セットされた原稿に図示しない光源、例えばランプからの光を照射して、その原稿の画像を読み取り、その画像データを出力する。ネットワークインターフェイス28は、通信回線30に接続されており、プリンタ20は、このネットワークインターフェイス28を介して上記コンピュータ10との間で印刷データや指令信号などのデータ通信を行う。
【0026】
更に、プリンタ20は回線制御部50を備えている。この回線制御部50は、公衆電話回線網51に対するダイヤル信号の送信や、公衆電話回線網51からのダイヤル信号に対する応答等の動作を行うためのものである。回線制御部50は、例えば建造物内に配された電話線54を介して公衆電話回線網51に接続され、公衆電話回線網51及び基地局52を介して外部機器としての通信端末(電話機53(携帯電話機、PHSなどの無線式、固定電話機などの有線式を含む)や、図示しないファクシミリ装置など)との間で、音声通信やファクシミリデータの送受信などを行う。
【0027】
回線制御部50に繋がるモデム55は、ファクシミリデータを公衆電話回線への送信用の通信信号に変換したり、公衆電話回線網51からの受信信号を復調してファクシミリデータの抽出を行ったりするためのものである。また、回線制御部50には、外部の電話機端末(上記電話機53など)との音声通信を可能とするためのハンドセット56が接続されている。
【0028】
図2はプリンタ20の操作部21(「第1入力部」の一例)を構成する操作パネル31の外観図である。この操作パネル31上には、液晶ディスプレイ32が配置されている。また、操作パネル31には、上キー34、下キー35、左キー36及び右キー37と、セットキー38と、メニューキー39及びキャンセルキー45と、数字キー46とが配置されている。これらのキー操作によって、各メニューの選択、ユーザ指定、電話番号及びパスワードの入力などを行うことができる。なお、後述する使用権限者の変更のための操作やセキュリティプリント機能においてメモリ(例えばRAM24)に記録された印刷データについて記録用紙への印刷を実行させるための操作時に操作部21から出力される信号が、「指示信号」の一例である。
【0029】
(CPUによる制御内容)
次に、CPU25によって実行される制御内容について説明する。
上記メニューキー39が押下されると、CPU25は、液晶ディスプレイ32にセキュリティーメニューを含む各種のメニューを一覧表示させる。そして、セットキー等の操作によって上記セキュリティーメニューが指定されると、更に、「使用権限者変更メニュー」、「ユーザ登録・編集メニュー」などを液晶ディスプレイ32に一覧表示させ、この中から1つのメニューを選択できるようになる。図3には、このとき、ユーザが操作部21で行う操作に基づきCPU25が実行する処理が示されている。
【0030】
1.使用権限者変更
「使用権限者変更メニュー」は、特定の機能(上記セキュリティープリント機能を含む)に対する操作を操作部21で行おうとしているユーザについて、ユーザ認証を行って、認証成功した場合に限り、上記特定の機能に対する操作の使用権限者を上記ユーザに変更するためのメニューである。
【0031】
上記NVRAM26(「第1記録部、第2記録部」の一例)には登録情報データベースが記憶されている。この登録データベースは、図4に示すように、ユーザごとに電話番号及びパスワードを対応付けて記憶することができる。なお、この使用権限者変更メニューでは、登録データベースにユーザ名が登録されているユーザのうち、電話番号或いはパスワードが記録されているユーザに限り使用者権限の変更を行うことができる。
【0032】
CPU25は、S11でどのメニューが選択されたかを判断し、使用権限者変更メニューが指定された場合には(S11:Y)、S12で現在、登録データベースに登録されているユーザ名を液晶ディスプレイ32に一覧表示させる。ここで、操作部21の操作によっていずれかのユーザ名が指定されると、S13で図5に示すユーザ認証処理を行う。以下、このとき指定されたユーザ名を「指定ユーザ名」と呼ぶ。
【0033】
ユーザ認証処理では、S31で上記指定ユーザ名に対応する電話番号(以下、「指定電話番号」という)が登録データベースに登録されているかどうかを判断し、登録されていれば(S31:Y)、S32で図6に示す電話番号によるユーザ認証処理を行い、登録されていなければ(S31:N)、S33で図7に示すパスワードによるユーザ認証処理を行う。なお、パスワードによるユーザ認証処理は、電話番号によるユーザ認証処理においてユーザ認証失敗となった場合(S31:Y、且つ、S33:N)にも実行される。
【0034】
まず、電話番号によるユーザ認証処理では、図6のS41で上記指定電話番号を読み出し、回線制御部50を介して当該指定電話番号の電話機53(「ユーザに対応する電話番号の電話機」の一例)に電話をかける。このとき、CPU25及び回線制御部50は「送信部」の一例として機能する。そして、S42で回線が繋がったかどうか、換言すれば、指定電話番号の電話機53がオフフックされたかどかを判断する。ここで、一般に、相手の電話機53がオンフック(通話拒否)からオフフック(例えば受話器を持ち上げたり、携帯電話機などのオフフックボタンを押下したりすること)されて相手の電話機53と公衆電話回線網51等を介して繋がると、公衆電話回線網51にある交換機(図示せず)から送出されていた呼び出し音が送出されなくなり、交換機によって回線の極性が反転される。そして、回線制御部50は、送出されていた呼び出し音が送出されなくなったことを検出したり、或いは、回線の極性が反転されたことを検出したりして、指定電話番号の電話機53がオフフックされたと判断することができる。このとき、回線制御部50は「判断部」の一例として機能する。CPU25は、この回線制御部50の認識結果を受けて回線が繋がったかどうかを認識できる。
【0035】
そして、上記指定電話番号の電話機53に電話をかけ始めたとき(「送信動作の開始」の一例)から所定時間内に相手の電話機53がオフフックされた場合には(S42:Y」)、回線を開放してユーザ認証成功のフラグを立てる(S43,S44)。一方、所定時間内に相手の電話機53がオフフックされなかった場合には(S42:N、且つ、S45:Y)、回線を開放してユーザ認証失敗として、ユーザ認証成功のフラグを立てない(S46,S47)。そして、図5に戻り、ユーザ認証成功のフラグが立っているときには(S33:Y)、図3のメイン処理に戻り、S14で「Y」となり、S15で上記指定ユーザ名のユーザに使用権限を許可する。このとき、CPU25は「第1認証部、制御部」として機能する。また、このときの使用権限者変更が「指示信号に応じた処理」の一例であり、CPU25は「実行部」の一例としても機能する。
【0036】
例えば、ユーザAが使用権限者を自分に変更する場合、まず、自己のユーザ名"A"を指定し、この指定ユーザ名"A"に対応する指定電話番号(例えばユーザAが所持する電話機53の電話番号)が登録データベースに登録されていれば、その自分の電話機53宛てにプリンタ20から電話がかかってくる。しかも、ユーザAの電話機53の表示部53Aにはプリンタ20の電話番号が表示される。従って、ユーザAは、これがプリンタ20からの電話であることを確かめることができ、自己の電話機53を所定時間内にオフフックすればユーザ認証成功となる。
【0037】
一方、ユーザA以外の第三者が使用権限者をユーザAに変更しようとしてユーザ名"A"を指定した場合には、やはり上記指定電話番号によってユーザAの電話機53に電話がかかってくる。このとき、ユーザAの電話機53の表示部53Aにプリンタ20の電話番号が表示される。従って、ユーザAは、これがプリンタ20からの電話であることが分かり、第三者が自分のユーザ名"A"で特定の機能を使用しようとしていることが分かる。そこで、所定時間経過するまでオフフックせずに放置したり、或いは、自己の電話機53のオンフックボタンを押下して強制的に回線を遮断することで、ユーザ認証失敗となり、第三者の使用を排除できる。
【0038】
次に、パスワードによるユーザ認証処理では、図7に示すように、S51で指定ユーザ名に対応するパスワード(以下、「指定パスワード」という)が登録されているかどうかを判断し、登録されていれば(S51:Y)、S52で例えば液晶ディスプレイ32にパスワード入力を要求するメッセージを表示させてユーザにパスワード入力を要求する。ユーザは操作部21での操作によりパスワード入力を行う。このとき、操作部21は「第2入力部」の一例として機能する。
【0039】
S52でパスワード入力を要求をした時点から所定時間内にパスワード入力があれば(S53:Y)、その入力されたパスワードと登録データベースに登録された認証用パスワードとが一致するかどうかを判断し(S54)、一致すれば(S54:Y)ユーザ認証成功のフラグを立てる(S55)。一方、上記所定時間内にパスワード入力がなければ(S53:N、且つ、S56:Y)、ユーザ認証失敗であるとしてユーザ認証成功のフラグを立てない(S57)。このときCPU25は「第2認証部」として機能する。
【0040】
登録データベースに指定パスワードが登録されていない場合(S51:N)にもユーザ認証失敗であるとする(S57)。そして、ユーザ認証失敗のときは、図3のS16でユーザ認証失敗の旨を報知する。具体的には、ユーザ認証失敗の旨を液晶ディスプレイ32に表示する。その他、例えば図示しない点灯ランプを点灯させたり、図示しないスピーカを鳴らすことで報知する構成であってもよい。
【0041】
また、上述したように、本実施形態では、電話番号によるユーザ認証とパスワードによるユーザ認証とができるようになっている。しかし、パスワードによるユーザ認証では、パスワードを覚えていなければならないし、また、このパスワードを入力する手間がかかる。そこで、図5に示すように、登録データベースに指定パスワードが登録されているかどうかにかかわらず、指定電話番号が登録されているときには優先的に電話番号によるユーザ認証を行うようにしている。
【0042】
なお、プリンタ20が、例えば登録データベースに各ユーザの情報が登録されていない初期状態のときには、管理者に対応する初期パスワード(例えば"0000")だけが登録されている。つまり、電話番号によるユーザ認証はできない。従って、まず管理者が初期パスワードを使ってパスワードによるユーザ認証(図5のS33参照)によって使用権限を得ることで、自己及び他のユーザについて登録データベースへの登録が可能となる。
【0043】
また、管理者以外のユーザにとっても、登録データベースに指定電話番号が登録されていないときや、指定電話番号は登録されているが自己の電話機53が手元にないときには、パスワードによるユーザ認証によって使用権限を得ることができるという利点がある。
【0044】
2.ユーザ登録・編集
「ユーザ登録・編集メニュー」では、管理者は、上記登録データベースについて登録済みユーザの登録内容を編集(変更・追加・削除))したり、使用権限者の候補としての新規ユーザ名を追加登録することができるのに対し、管理者以外のユーザは自己の登録内容の編集のみができる。上記使用権限者変更メニューでユーザ認証に成功し使用権限を得た管理者は、ユーザ登録メニューを指定することができる。ユーザ登録メニューが指定されると(S11:N、且つ、S17:Y)、CPU25は、S18で現在の使用権限者は管理者かどうかを判断し、管理者であれば(S18:Y)、S19で現在登録済みの全ユーザ名を液晶ディスプレイ32に表示させ、特定のユーザ名が指定されると、S21で図8に示す登録・編集処理に進み、この指定されたユーザ名について登録内容の編集を行うことができる。また、このとき、操作部21での入力により新規ユーザ名の追加登録が指定されると、やはりS21に進む。
【0045】
一方、現在の使用権限者が管理者でない場合(S18:N)、S20で当該現在の使用権限者のユーザ名のみを液晶ディスプレイ32に表示させ、S21に進み、この現在の使用権限者の登録内容についてのみ編集を行うことができる。
【0046】
図8の登録・編集処理では、まずS61で例えば液晶ディスプレイ32を介してユーザに電話番号及びパスワードのうち少なくともいずれか一方を入力することを要求する。そして、所定時間内に電話番号が入力された場合には(S62:Y、且つ、S63:Y)、S64で前述した図6に示す電話番号によるユーザ認証を行う。つまり、入力された電話番号の電話機53に回線制御部50を介して電話をし、所定時間内にオフフックされればユーザ認証成功とし、所定時間を越えてもオンフックのままのときはユーザ認証失敗とするのである。
【0047】
例えば現在の使用権限者であるユーザAが、自己が所持する携帯電話機の電話番号"XXXXXXXXXXX"をプリンタ20の操作部21に入力する。そして、間もなくユーザA所持の携帯電話機に電話がかかり、当該携帯電話機の表示部にプリンタ20の電話番号が表示されれば、上記携帯電話機の電話番号が正しくプリンタ20に入力できたことになり、ユーザAは所定時間内に携帯電話機をオフフックする。これにより、プリンタ20側ではユーザ認証成功と判定する。
【0048】
一方、上記ユーザAが、自己の携帯電話機の電話番号とは異なる電話番号を入力してしまった場合には、ユーザA所持の携帯電話機に電話がかかってこない。かかって来たとしてもそれはプリンタ20以外からの電話であり、携帯電話機の表示部にはプリンタ20以外の電話番号が表示される。このように誤って入力された上記電話番号に基づきユーザA以外の第三者の電話機(上記指定電話番号とは異なる電話番号の電話機)に対してユーザ認証のための電話をプリンタ20がかけてしまうと、上記第三者がその電話を受けてしまい、プリンタ20はユーザ認証成功と誤って判断してしまう事態が発生し得る。しかし、ユーザAは自己の携帯電話機に電話がかかっていないことから、入力ミスだということが分かるため、再度登録し直すことができる。
【0049】
なお、電話番号の入力方法は、操作部21でのユーザの入力操作を介して入力する方法以外に、入力したい電話番号の電話機(例えば電話機53)からプリンタ20宛てに電話番号通知を許可した状態で電話をかけることで入力する方法であってもよい。このとき回線制御部50が上記電話機からの電話番号情報を受信するから、「受信部」の一例として機能する。
【0050】
ユーザ認証成功のときは(S65:Y)、S66で上記電話番号を現在の使用権限者のユーザ名に対応付けて登録データベースに記録する。既に電話番号が登録されている場合には、この旧電話番号に今回入力した新電話番号を上書きして更新する。このとき、CPU25は「第1登録部、第2登録部」の一例として機能する。これに対して、ユーザ認証失敗のときは(S65:N)上記電話番号の記録をしない。
【0051】
パスワード入力があった場合(S63:N且つS68:Y、または、S67:Y)、S69で液晶ディスプレイ32を介して再度パスワード入力を要求し、最初に入力されたパスワードと2回目に入力されたパスワードが一致したとき(S70:Y)はそのパスワードを現在の使用権限者のユーザ名に対応付けて登録データベースに記録する(S71)。既にパスワードが登録されている場合には、この旧パスワードに今回入力した新パスワードを上書きして更新する。一方、不一致のとき(S70:N)は登録しない。
【0052】
そして、電話番号及びパスワードのうち少なくともいずれか一方の登録が成功したときは(S72:Y)、S73で登録成功フラグを立てて図3のS22へ進む。一方、電話番号及びパスワードのいずれも登録がされなかったときは(S72:N)、S74で登録失敗であるとして登録成功フラグを立てずに図3のS22へ進む。なお、S61の後、所定時間内に電話番号及びパスワードのいずれも入力がなかったとき(S62:N、且つ、S75:Y)も、S74で登録失敗であるとして登録成功フラグを立てずに図3のS22へ進む。
【0053】
そして、S22では登録の成否を例えば液晶ディスプレイ32に表示させる。このとき、登録成功時であっても、電話番号及びパスワードのいずれか一方が登録できなかったとき(図8でS65:Nのときや、S70:Nのとき)には、そのことを液晶ディスプレイ32に表示させてもよい。
【0054】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、プリンタ20は、ユーザにより所定の処理に対する指示がされると、当該ユーザの電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、ユーザ認証成功と判定し上記所定の処理の実行を許容する。従って、ユーザ認証を電話回線の接続・切断に基づき容易に行うことができる。つまり、ユーザがかかってきた電話を取る(オフフック)するという簡単な操作だけでユーザ認証を行うことができる。また、電話機に繋がったかどうかの判断時間を所定時間内に限ることで、ユーザ認証の精度を向上させることができる。
【0055】
現在指示をしているユーザの電話番号を、その都度、ユーザによる操作や外部機器によるデータ送信によって取得する構成でもよいが、本実施形態のようにユーザごとに電話番号を予め登録データベースに登録しておくことが望ましい。
【0056】
図8の登録・編集処理において、登録したい電話番号の電話機でプリンタ20宛てに電話をすることで、上記電話番号をプリンタ20に伝えることができるため、ユーザは電話番号の入力の手間がなくなる。また、登録したい電話番号を入力すると、その電話番号の電話機に電話をかけ、この電話機に繋がった(換言すればオフフックされた)と判断した場合に、上記電話番号を登録データベースに登録をする。従って、入力した電話番号が正しいかどうかを電話回線の接続・切断に基づき容易に確認することができる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)「処理実行装置、電話番号登録装置」として、上記実施形態では画像形成装置(プリンタ20)であったが、これに限らず、ユーザ認証が必要な装置、電話番号の登録が必要な装置であれば本発明を適用することができる。
【0058】
(2)本発明の「処理実行装置」には、上記実施形態の画像形成システムのように、情報処理装置と通信可能に接続され、ユーザの指示に基づく指示信号(これは印刷要求に限られず、処理実行装置で実行可能な所定の処理を指示する信号であればよい)を当該情報処理装置から受けるものも含まれる。そして、このものにおいて、情報処理装置から上記指示信号とともにユーザの電話番号情報を送信する一方で、処理実行装置は、上記情報処理装置から受信した電話番号を利用して電話番号によるユーザ認証処理を行う構成であってもよい。このような構成であれば、登録データベースへの登録が不要となる。具体的には、上記実施形態において、セキュリティープリント機能を利用するときに、印刷要求を行うコンピュータ10から電話番号情報を印刷データとともに送信し、プリンタ20は、受信した電話番号を利用して電話番号によるユーザ認証処理(図6参照)を行うようにする。
【0059】
(3)上記実施形態では、図6に示す電話番号によるユーザ認証において所定時間内に相手方の電話機の回線に繋がったかどうかで認証を行う構成であったが、これに限らず、電話をかけた後の呼び出し回数(コール回数)が所定回数に達したかどうかに基づき認証を行う構成であってもよい。
【0060】
(4)電話をかけたユーザの携帯電話機がオフフックされたときに、プリンタ20が例えばランダムに選択或いは生成したパスワードを音声送信により上記ユーザに伝え、このパスワードがプリンタ20の操作部21で入力された場合に使用者権限の変更を受け付ける構成であってもよい。このような構成であってもユーザは自分専用のパスワードを憶えている必要はなく、プリンタ20から音声送信により受けたパスワードを入力すれば済むというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態の画像読取システムの構成を示すブロック図
【図2】操作パネルの外観図
【図3】メイン処理を示すフローチャート
【図4】登録データベースのデータ構造を示す説明図
【図5】ユーザ認証処理を示すフローチャート
【図6】電話番号によるユーザ認証処理を示すフローチャート
【図7】パスワードによるユーザ認証処理を示すフローチャート
【図8】登録・編集処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0062】
20…プリンタ(処理実行装置、電話番号登録装置)
21…操作部(第1入力部、第2入力部)
25…CPU(送信部、第1認証部、第2認証部、制御部、実行部、第3入力部、第1登録部、第2登録部)
26…NVRAM(第1記録部、第2記録部)
50…回線制御部(送信部、判断部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの指示に基づく指示信号が入力される第1入力部と、
前記指示信号に応じた処理を実行する実行部と、
前記ユーザに対応する電話番号の電話機に電話をかける送信部と、
前記電話機に繋がったかどうかを判断する判断部と、
前記判断部で前記電話機に繋がったと判断されたことに基づきユーザ認証成功と判定する第1認証部と、
前記第1認証部で前記ユーザ認証成功と判定された場合に、前記実行部による処理の実行を許容する制御部と、を備えた処理実行装置。
【請求項2】
請求項1記載の処理実行装置であって、
前記第1認証部は、前記送信部の送信動作の開始から所定時間内に、前記電話機に繋がったと判断されたことを条件に前記ユーザ認証成功と判定する。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の処理実行装置であって、
ユーザごとに電話番号が登録される第1記録部を備え、
前記送信部は、前記第1記録部の記録内容に基づき前記ユーザに対応する電話番号の電話機に電話をかける。
【請求項4】
請求項3に記載の処理実行装置であって、
パスワードを入力させる第2入力部と、
ユーザごとに認証用パスワードが登録される第2記録部と、
現在指示しているユーザについて前記第1記録部に電話番号が登録されていない場合、または、前記第1記録部に電話番号が登録されていたが当該電話番号に基づく前記第1認証部での判定がユーザ認証失敗であった場合に、前記第2入力部に入力される入力パスワードと前記認証用パスワードとに基づくユーザ認証を行う第2認証部と、を備え、
前記制御部は、前記認証部の認証結果に基づき前記実行部による処理の実行を許容する。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の処理実行装置であって、
前記ユーザの電話機からの着信により当該電話機の電話番号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した電話番号を前記ユーザに対応付けて前記第1記録部に登録する第1登録部と、を備える。
【請求項6】
電話番号が入力される第3入力部と、
前記第3入力部に入力された電話番号の電話機に電話をかける送信部と、
前記電話機に繋がったかどうかを判断する判断部と、
第1記録部と、
前記判断部で前記電話機に繋がったと判断された場合に、前記電話番号を前記第1記録部に登録する第2登録部と、を備える電話番号登録装置。
【請求項7】
請求項6記載の電話番号登録装置であって、
前記第2登録部は、前記送信部の送信動作開始から所定時間内に、前記電話機に繋がったと判断されたことを条件に前記電話番号を登録する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−167142(P2008−167142A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354204(P2006−354204)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】