処理液塗布装置及び画像形成装置
【課題】処理液を担持するローラ状部材表面を清浄化するため構成が複雑である。
【解決手段】塗布ローラ25の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、塗布ローラ25が回転することで処理液22を汲み上げて表面に保持し、更に塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に担持(保持)された処理液22を搬送し、塗布ローラ25とカウンタローラ26との間で被記録媒体11を搬送して、被記録媒体11に上記の塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布し、処理液収容槽21内には、回転する塗布ローラ25表面に接触し、処理液22の表面で移動及び回転可能な球形粒子60が配設(配置)されている。
【解決手段】塗布ローラ25の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、塗布ローラ25が回転することで処理液22を汲み上げて表面に保持し、更に塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に担持(保持)された処理液22を搬送し、塗布ローラ25とカウンタローラ26との間で被記録媒体11を搬送して、被記録媒体11に上記の塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布し、処理液収容槽21内には、回転する塗布ローラ25表面に接触し、処理液22の表面で移動及び回転可能な球形粒子60が配設(配置)されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理液塗布装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。また、「画像形成装置」には液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行なうものなども含まれるが、以下では液体吐出方式の画像形成装置で説明する。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、色材を含むインクを液滴化して画像形成を行うために、液滴で形成されるドットがひげ状に乱れるフェザリング、異なる色のインク滴が隣接して用紙に打たれた場合に、各色が相互に混ざり合って色境界が不鮮明になるカラーブリード等の不具合が生じることがあり、更に印字後の紙上の液滴が乾くまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、従来から処理液を被記録媒体に塗布することが知られており、処理液塗布装置としては、例えば、ローラ状になった汲み上げローラ(処理液担持体)の一部を処理液収容容器(処理液収容槽)内の処理液に浸漬させて、汲み上げローラで汲み上げた処理液を被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラ(塗布担持体)側に供給するものが知られている(特許文献1)。この特許文献1に開示の構成にあっては、汲み上げローラ表面の処理液膜を規制する規制部材よりも下流側でさらに板状の除去ブレードを接触させることで、塗布後に汲み上げローラ表面に残留する処理液を掻き取るようにしている。
【0006】
一方、処理液としては、水溶性の色材を凝集させる又は不溶化させる効果を持つ水溶性の凝集剤を水、有機溶媒に溶解又は分散させたものが用いられるが、処理液に用いられる凝集剤は、多価の金属塩やイオン性の微粒子、イオン性の高分子化合物を用いられ、これらは室温で固体である場合が多い(特許文献2〜特許文献4)。
【0007】
このような処理液は、通常の使用において特に問題は生じないが、装置の長時間使用時や長期間の保管時において、処理液が蒸発すると、凝集剤等の成分の析出や濃度勾配が生じることが問題となる。例えば、塗布ローラや規制部材、除去ブレード上で残留している処理液の凝集剤等が析出や濃度勾配が生じると、長期保管後に新しい処理液を補充しても、規制部材や除去ブレードに、凝集剤等の析出物や濃縮物が残っているため、新しい液に置換されるまでに長い時間を要し、処理液塗布動作を開始できるようになるまで時間がかかるか、塗布ムラを生じることになる。
【0008】
そこで、規制部材や除去ブレードに別の洗浄機構を設けることも行われている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3804284号公報
【特許文献2】特開平01−069381号公報
【特許文献3】特開平11−078211号公報
【特許文献4】特開2001−199150号公報
【特許文献5】特開2002−361141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、規制部材や除去ブレードに別の洗浄機構を設けることは、コストが高くなり、スペースが限定されている場合には洗浄機構を設けることができないという課題がある。
【0011】
また、処理液自体の乾燥性を防止する対策も、可動部材を有する機構で完全に密閉することは難しいため、長期稼動や長期保管の上では十分な効果を得ることができないという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で処理液を担持するローラ状部材を清掃できて、塗布ムラのない安定した塗布を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る処理液塗布装置は、
被塗布媒体に塗布する処理液が収容された処理液収容容器と、
前記処理液収容容器内の前記処理液に一部が浸漬され、回転することで前記処理液を表面に担持するローラ状部材と、を備え、
前記処理液収容容器内には、前記ローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている
構成とした。
【0014】
ここで、前記球状粒子は前記処理液収容容器内の前記処理液の気液界面に配置されている構成とできる。
【0015】
また、前記球状粒子は前記ローラ状部材の汲み上げ側に配置されている構成とできる。
【0016】
また、前記球状粒子の平均粒子直径dが1mm以上30mm未満であり、前記ローラ状部材と接する前記球状粒子の数密度ρが、50<ρ×d2、の関係にある構成とできる。
【0017】
また、前記球状粒子の単位体積当りの重さが、0.1〜1.2g/cm3の範囲にある構成とできる。
【0018】
また、前記球状粒子の材質が、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)のいずれかである構成とできる。
【0019】
また、前記球状粒子の単位体積当りの重量が、前記処理液の単位体積当りの重量よりも小さい構成とできる。
【0020】
また、前記処理液中に処理液水溶性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、および水を含有する構成とできる。
【0021】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る処理液塗布装置を備えているものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る処理液塗布装置によれば、処理液収容容器内には、処理液を表面に担持するローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている構成としたので、球状粒子とローラ状部材表面の接触によってローラ状部材の表面が清掃される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る処理液塗布装置を備える本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図3】同じく平面説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図5】同じく平面説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図7】同じく平面説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図9】比較例に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図10】比較例に係る他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図11】同じく平面説明図である。
【図12】比較例に係る更に他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図13】比較例に係る更にまた他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図14】同じく平面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る処理液塗布装置を備える本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成図である。
この画像形成装置は、ライン型インクジェット記録装置であり、被記録媒体供給ユニット10、本発明に係る処理液塗布装置である前処理液塗布ユニット20、画像記録ユニット30を含んで構成されている。
【0025】
被記録媒体供給ユニット10は、被記録媒体11を送り出す給紙ローラ12を有する。
【0026】
前処理液塗布ユニット20は、色剤と、該色剤を分散又は溶解する溶媒からなるインク中の色剤を不溶化する化合物とを含有する液体である前処理液22を収容すると共に、被記録媒体11をカウンタローラ26側に案内する第1のガイド部51及び塗布ローラ25(塗布担持体)とカウンタローラ26の排出側に配置され前処理液22が塗布された下面への塗布直後の接触を避けるように塗布ローラ25側であってローラ挟持部よりも下方に向けて設けられている第2のガイド部52を含む処理液収容槽(処理液収容容器)21と、前処理液22を攪拌して汲み上げる(表面に担持する)本発明におけるローラ状部材である汲み上げローラ(処理液担持体)23と、汲み上げられた前処理液22を塗布ローラ25に均一な膜厚に制御する膜厚制御ローラ24と、被記録媒体11に前処理液22を塗工する塗布ローラ25と、塗布ローラ25に対向し、塗布ローラ25とともに被記録媒体11を保持するカウンタローラ26を含んで構成されている。
【0027】
そして、画像記録ユニット30は、ベルト駆動ローラ32,33の間に渡され、当該ベルト駆動ローラ32,33が回動することによって、搬送されてきた被記録媒体11を用紙送り方向である図中矢印方向に一定速度で連続的に搬送する被記録媒体搬送ベルト31と、被記録媒体搬送ベルト31の上に被記録媒体11を案内する搬送ローラ34と、記録終了後の被記録媒体11を押し出す搬送ローラ35と、被記録媒体11の幅だけ記録可能なノズルを具備した、ライン型の液体吐出ヘッドからなるブラック用記録ヘッド36、シアン用記録ヘッド37、マゼンタ用記録ヘッド38及びイエロー用記録ヘッド39を含んで構成されている。
【0028】
なお、各記録ヘッド36ないし39は所定の間隔で配置されており、被記録媒体11の送り速度と同期して画像を記録していく。
【0029】
記録された被記録媒体11は、排出ローラ40,41によって排出部に排出される。
【0030】
インクは、各色のタンク46が配置され、図示しないチューブでそれぞれのヘッド36〜39に供給される。
【0031】
前処理液22も同様の位置に配置され図示しないチューブで処理液収容槽21に供給され、液面22aが一定の高さに保たれるようになっている。
【0032】
このように構成されたインクジェット記録装置における記録動作について以下に述べる。
被記録媒体給紙ユニット10に収納されている被記録媒体11は給紙ローラ12によって被記録媒体給紙ユニット10から送り出される。一方、前処理液塗布ユニット20の処理液収容槽21内の前処理液22は汲上げローラ23によって汲み上げられ、塗布ローラ25のローラ面に膜厚制御ローラ24によって均一な膜厚に制御される。
【0033】
そして、給紙ローラ12によって搬送された被記録媒体11は第1のガイド部51によりカウンタローラ26側に案内されてカウンタローラ26に接し、その後被記録媒体11は2つのローラで挟まれる部位で始めて塗布ローラ25と接することになる。このようにすることで、塗布ローラ25とカウンタローラ26とによる圧力がかからない状態で被記録媒体が塗布ローラ25上の前処理液22に触れることがなくなるため、前処理液22を被記録媒体11の記録領域に均一に薄く塗布することが可能となる。
【0034】
この前処理液22が塗布された被記録媒体11は第2のガイド部52に沿って案内される。しかし、ガイド部52は、塗布ローラ25とカウンタローラ26とのローラ挟持部よりも下方に位置して設けられているので、前処理液22が塗布された下面と接触するまでに一定の時間を要し、塗布直後の被記録媒体11への接触を避けられる構成となっている。
【0035】
次いで、被記録媒体11は、被記録媒体ガイド44に沿って搬送ローラ42,43によって搬送され、更に被記録媒体ガイド45に沿って被記録媒体搬送ベルト31上に送られる。
【0036】
その後、前処理液22が塗布された被記録媒体11は被記録媒体搬送ベルト31によって一定速度で連続的に用紙送り方向に搬送され、この被記録媒体11上に順次記録ヘッド36〜39から所要の色の液滴が出されて画像が記録される。
【0037】
記録が終了した被記録媒体11は排出ローラ40,41によって排出部に排出される。
【0038】
また、前処理ユニット20が長時間駆動後又は長時間放置後の状態を装置内の記録及び処理液収容槽21内の液面を検知した場合には、前処理収容槽21内に残っている前処理液22が排出され、図示しない前処理液タンクから新しい前処理液が供給される。
【0039】
そして、被記録媒体が搬送されない状態で、汲み上げローラ23と塗布ローラ25を一定時間回転させる。その後、上記と同様に、被記録媒体給紙ユニット10に収納されている被記録媒体11は給紙ローラ12によって送り出され、前処理液22が塗布された後、記録ヘッド36〜39によって記録される。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態に係る処理液塗布装置について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図3は同じく平面説明図である。
この処理液塗布装置は、上記画像形成装置の前処理ユニット20とは異なり、塗布ローラ25の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、塗布ローラ25が回転することで処理液22を汲み上げて表面に保持し、更に塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に担持(保持)された処理液22を搬送し、塗布ローラ25とカウンタローラ26との間で被記録媒体11を搬送して、被記録媒体11に上記の塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布する構成としている。
【0041】
そして、処理液収容槽21内には、回転する塗布ローラ25表面に接触し、処理液22の表面(液面22a)で移動及び回転可能な球状粒子である球形粒子60が配設(配置)されている。この球形粒子60は、塗布ローラ25の処理液22を汲み上げる側と、処理液22を戻す側の両側に配置される。
【0042】
このように球形粒子60を配置することで、搬送される処理液22の量を規制しながら、処理液22を被記録媒体11に塗布する。
【0043】
そして、処理液22は長期保管時等により乾燥し、塗布ローラ25及び球形粒子60に析出付着する。このようになると、処理液22の液量、放置時間を検知判断して、処理液収容槽21内の残った処理液を排出した後、処理液タンク27から供給経路を通って、処理液収容槽21に新しい液を補充する。
【0044】
ここで、処理液収容槽21に新しい処理液22が補充されてくると、被記録媒体11を導入しない状態で、塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に新しい処理液22を供給する。
【0045】
このとき、塗布ローラ25に接触させた球形粒子60によって、塗布ローラ25表面の析出物、付着物を掻き取られる。この球形粒子60は移動、回転可能に配設されているため、塗布ローラ25の回転により、球形粒子60同士が回転衝突して新しい処理液22により析出物、濃縮物が新しい処理液22に再溶解されるため、塗布ローラ25及び球形粒子60は常に析出物等が無い状態になり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0046】
また、前処理液22の液面全体を球形粒子60で覆うことにより、前処理液自体の蒸発を抑える効果も有する。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態に係る処理液塗布装置について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図5は同じく平面説明図である。
ここでは、前記第1実施形態と異なり、処理液収容槽21内の球形粒子60は、塗布ローラ25の回転によって塗布ローラ25表面が処理液22を引き上げる側(汲み上げ側)にのみ配置されている。このような構成であっても塗布ローラ25表面の析出物、付着物を掻き取る効果が得られる。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態に係る処理液塗布装置について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図7は同じく平面説明図である。
ここでは、前記第2実施形態において、処理液収容槽21内に、塗布ローラ25表面が処理液22を引き上げる側(汲み上げ側)に球形粒子60の動きを規制する仕切り部材62を設けている。これにより、球形粒子60が、塗布ローラ25の回転によって塗布ローラ25の表面の処理液22を引き上げる部分に効率良く接する。
【0049】
このように構成することで、球形粒子60の数を減らしても、同様に塗布ローラ25表面の析出物を掻き取る効果があり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0050】
また、第2実施形態、第3実施形態のような構成をとることで、前処理液22の液面に球状粒子60の存在しない領域を形成できるため、この領域に液面センサを配置することにより正確に前処理液の量を測定、管理することもできる。
【0051】
次に、本発明の第4実施形態に係る処理液塗布装置について図8を参照して説明する。なお、図8は同処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
ここでは、前記各実施形態の塗布ローラ25に代えて、本発明におけるローラ状部材である汲み上げローラ23の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、汲み上げローラ23が回転することで処理液22を汲み上げて表面に担持(保持)し、この汲み上げローラ23を回転させて、汲み上げローラ23表面に保持された処理液22を搬送し、汲み上げローラ23表面に保持された処理液22を、塗布ローラ25へ付着する膜厚を制御する膜厚制御ローラ24に移送し、膜厚制御ローラ24に保持された処理液22を塗布ローラ25に移送して、この塗布ローラ25とカウンタローラ26との間に被記録媒体11を搬送し、被記録媒体11に塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布する。
【0052】
そして、処理液収容槽21内には、回転する汲み上げローラ23表面に接触し、処理液22の表面(液面22a)で移動及び回転可能な球状粒子である球形粒子60が配設(配置)されている。この球形粒子60は、汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側と処理液22を戻す側の両側に配置される。
【0053】
このように球形粒子60を配置することで、汲み上げる処理液22の量を規制しながら、膜厚制御ローラ24に搬送することができる。
【0054】
そして、処理液22は長期保管時等により乾燥し、汲み上げローラ23及び球形粒子60に析出付着する。このようになると、処理液22の液量、放置時間を検知判断して、処理液収容槽21内の残った処理液を排出した後、処理液タンク27から供給経路を通って、処理液収容槽21に新しい液が補充される。
【0055】
ここで、処理液収容槽21に新しい液が補充されてくると、被記録媒体11を導入しない状態で、汲み上げローラ23を回転させて、汲み上げローラ23表面に新しい処理液22を供給する。このとき、汲み上げローラ23に接触させた球形粒子60によって、汲み上げローラ23表面の析出物、付着物が掻き取られる。この球形粒子60は、移動、回転可能に配置されているため、汲み上げローラ23の回転により、球形粒子60同士が回転衝突して新しい処理液22により析出物、濃縮物が新しい処理液に再溶解されるため、汲み上げローラ23、球形粒子60は常に析出物等が無い状態になり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することができる。
【0056】
このような、処理液収容槽内に処理液に浸漬された汲み上げローラ表面の析出物を掻き取ることができ、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0057】
特に、処理液収容槽21に収容された処理液22に一部を浸漬させたローラ状部材である汲み上げローラ23は、長期保管時の処理液22の乾燥により、処理液22が濃縮しながら堆積するため、特に析出物が多く堆積する部分である。また、第1の実施形態の塗布ローラ25と異なり、汲み上げローラ23は処理液収容槽21の内部に配置され、処理液収容槽21の外に露出する部分がないため、外部からクリーニングすることも困難である。このため、処理液収容槽21内にある球形粒子60による掻き取りは極めて有効な手段となる。
【0058】
なお、球形粒子60の配置としては、前記各実施形態と同様にすることもでき、この場合には汲み上げローラ23に接触するように配置すればよい。
【0059】
なお、処理液収容槽(処理液収容容器)内に収納される液体は、インクジェット用前処理液でなくても良く、後処理液、インク、他に、被記録媒体に対して塗布ローラを用いて薄く付与させる液体であれば特に限定されるものではない。乾燥により析出、濃度勾配が生じる液体であれば同様の効果が得られる。
【0060】
上記各実施形態において、球形粒子60の材質については、処理液22に対して耐性があり、処理液22よりも比重の軽い球体である方が良く。例えば、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、等を使用することができる。
【0061】
特に好ましくは、有機溶剤に対する耐溶剤性と、比重が1.0よりも軽いことから、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に有効である。耐薬品性等の理由により、ポリエチレン、ポリプロピレンが使用できない場合には、他の材質でも、球形粒子60の中に空気が入った空洞のあるものを使用することで、問題無く使用可能である。
【0062】
また、球形粒子60の比重は、処理液22よりも小さく、球形粒子60が処理液表面を覆うよう(気液界面)に配置されるものであることが好ましいが、比重の重い材質であっても、処理液22内に多量に球形粒子60を配置し、処理液表面を覆うようになっていれば特に問題はない。
【0063】
球形粒子60の径は、特に制限は無いが、1mm〜20mm程度のものが良い。1mm未満であると、球形粒子60が回転する塗布ローラ25などに貼り付き、清掃効果が得られないことがあり、逆に20mmを超えると、球形粒子60間の隙間が大きくなりすぎて、塗布ローラ25などに適切に接触できないため、十分な効果が得られなくなる。球形粒子60の径は、複数種類の混合でも良く、径に分布のあるものでも良い。
【0064】
球形粒子60は、処理液収納容器の塗布ローラ25などと接触する領域において、球形粒子60が単一の粒径を有する場合、平均直径dmmとすると、1cm2当り、100/d2個以上の密度で充填されることで、処理液表面を隙間無く埋めることが可能となり、ローラ状部材(処理液担持体)に対して析出物、濃縮物を掻き取る効果が最大となる。このときの処理液表面での球形粒子60の占有面積は85%を超える。
【0065】
次に、上記実施形態におけるインクジェット用前処理液などについて説明する。
<インクジェット用前処理液>
インクジェット用前処理液は、水性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水を含む。
【0066】
<界面活性剤>
インクジェット用前処理液に用いられる界面活性剤としては、水性凝集剤、水溶性有機溶剤の組み合わせによって保存安定性が良く、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましく、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これら界面活性剤は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、例えば、
サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430(いずれも住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも大日本インク化学工業株式会社製);ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製);エフトップEF−351、EF−352、EF−801、EF−802(いずれもジェムコ社製)などが挙げられる。これらの中でも、信頼性と発色向上に関して良好なゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製)が特に好適である。
【0068】
前記界面活性剤の前記インクジェット用前処理液における含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、保存安定性に問題を生じる恐れがある。
【0069】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンが挙げられる。本実施の形態の水溶性有機溶剤は、インクジェット用前処理液の水分が蒸発して平衡状態に達した場合にも、水溶性有機溶剤が多量の水分を保持することにより、インクジェット用前処理液に流動性を付与する。
【0070】
前記水溶性有機溶剤としては、平衡水分量の高い水溶性有機溶剤を用いることにより、インクジェット用前処理液の水分が蒸発して平衡状態に達した場合にも、水溶性有機溶剤が多量の水分を保持し、極端な粘度上昇を抑えることができる。
【0071】
前記平衡水分量の高い水溶性有機溶剤とは、温度23℃、湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上、好ましくは40wt%以上である水溶性有機溶剤を言う(以後、水溶性有機溶剤Aと言う)。このような水溶性有機溶剤Aを用いることで、インクの水分が蒸発して水分平衡に達した場合においても、水溶性有機溶剤Aが多量の水分を保持して粘度上昇を防ぐことができる。なお、平衡水分量とは、水溶性有機溶剤と水との混合物を一定温度、湿度の空気中に開放して、溶液中の水の蒸発と空気中の水のインクへの吸収が平衡状態になったときの水分量を言う。具体的には、平衡水分量は、塩化カリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを質量変化がなくなるまでの期間保管し、次の(1)式により求めることができる。
【0072】
【数1】
【0073】
本発明で好適に用いられる水溶性有機溶剤Aとしては、温度23℃、湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上の多価アルコール類が挙げられる。このような水溶性有機溶剤Aの具体例としては、1,2,3−ブタントリオール(bp175℃/33hPa、38wt%)、1,2,4−ブタントリオール(bp190−191℃/24hPa、41wt%)、グリセリン(bp290℃、49wt%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、38wt%)、トリエチレングリコール(bp285℃、39wt%)、テトラエチレングリコール(bp324−330℃、37wt%)、ジエチレングリコール(bp245℃、43wt%)、1,3−ブタンジオール(bp203−204℃、35wt%)等が挙げられる。この中でもグリセリン、1,3−ブタンジオールは水分を含んだ場合に低粘度化することや顔料分散体が凝集せず安定に保てるなどの理由により特に好適に用いられる。上記水溶性有機溶剤Aを水溶性有機溶剤全体の50wt%以上用いた場合、吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止に優れるため好ましい。
【0074】
インクジェット用前処理液は、水溶性有機溶剤A以外にも、必要に応じて前記の水溶性有機溶剤Aの一部に代えて、または前記の水溶性有機溶剤Aに加えて、23℃、80%での平衡水分量が30wt%未満の水溶性有機溶剤(以後水溶性有機溶剤Bと言う)を併用することができる。このような水溶性有機溶剤Bとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の水溶性有機溶剤、などが挙げられる。
【0075】
水溶性有機溶剤Bの多価アルコール類の具体例としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196−198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253−260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199−201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0076】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)などが挙げられる。前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0077】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン(bp250℃、mp25.5℃、47−48wt%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプローラクタム(bp270℃)、γ−ブチローラクトン(bp204−205℃)などが挙げられる。前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199−201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176−177℃)などが挙げられる。前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282−287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。その他の固体水溶性有機溶剤としては、糖類などが好ましい。
【0078】
該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0079】
前記水溶性有機溶剤剤の前記インクジェット用前処理液中における含有量は、特に限定されないが、通常、10〜80質量%、好ましくは15〜60質量%である。80質量%より大きいと水溶性有機溶剤の種類によっては前処理後の被記録媒体上で乾燥不良の可能性があり、10質量%より小さいと前処理塗布工程等で水分蒸発が生じ、前処理液の組成が大きく変わってしまう等の可能性がある。
【0080】
―脂肪族系有機酸塩化合物、無機金属塩化合物―
前記前処理液に脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物を添加すると、顔料が被記録媒体表面に留まりやすくなり、塩析効果が向上するために画像濃度が増加する。
【0081】
前記脂肪族系有機酸塩化合物としては、例えば、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、琥珀酸二アンモニウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸二ナトリウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、DL−酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム等が挙げられる。
【0082】
前記無機金属塩化合物としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウムが挙げられる。前記水溶性1価アルカリ金属塩化合物としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0083】
前記脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物の添加量としては、前処理液全体の0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは1〜20質量%である。30質量%より大きい場合には、脂肪族系有機酸塩化合物が十分に溶解せずに析出することがあり、0.1質量%より小さい場合には画像濃度向上効果が小さくなることがある。
【0084】
―その他成分―
インクジェット用前処理液は、浸透剤として、炭素数8〜11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種を含有することが好ましい。これらは、25℃の水中において0.2〜5.0質量%の間の溶解度を有するものが好ましい。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
【0085】
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
【0086】
前記浸透剤の前記インクジェット用前処理液における含有量は、0.1〜5.0質量%であることが好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、インクジェット用インクを浸透させる効果がなくなることがあり、5.0質量%を超えると、溶媒への溶解性が低い為に溶媒から分離して浸透性を向上させる効果が飽和してしまうことがある。
本実施形態のインクジェット用前処理液には必要により、後記のインクジェット用インクに用いられる防腐剤、防錆剤等を用いても良い。
【0087】
次に、インクジェット用インクについて説明する。
<インクジェット用インク>
本実施形態の画像形成方法に用いられるインクジェット用インクは、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有する。
【0088】
―水分散性着色剤―
前記インクジェット用インクは水分散性着色剤として、耐候性の面から主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で耐候性が劣化させない範囲内で染料を含有しても構わない。前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用、或いはカラー用の無機顔料や有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0090】
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、特に、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。
【0091】
上記顔料において、より好ましく用いられる顔料の具体例としては、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0092】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
【0093】
着色剤が顔料である場合の特に好ましい形態としては、以下の第1〜第2の形態が挙げられる。
【0094】
1)第1形態では前記着色剤は、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン(色材を含有させたポリマー微粒子の水分散物)を含有する。
2)第2形態では前記着色剤は、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(以下、「自己分散性顔料」と称することもある)を含有する。
本発明では、第2形態の場合は、下記に示す水分散性樹脂を含むことが好ましい。
【0095】
前記第1形態の水分散性着色剤としては、上記顔料に加え、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンを使用することが好ましい。ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンとは、ポリマー微粒子中に顔料を封入したもの、又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させたものである。この場合、全ての顔料が封入又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該顔料がエマルジョン中に分散にしていてもよい。ポリマーエマルジョンを形成するポリマー(ポリマー微粒子におけるポリマー)としてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられるが、特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーを使用することができる。
【0096】
前記第2形態の自己分散性顔料は、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。該表面改質は、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸又はその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散している形態が特に好ましい。このように顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合しているため、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の被記録媒体の耐水性がより向上する。
【0097】
また、この第1形態の自己分散性顔料を含有するインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドノズル付近のインク水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず、簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行なえる。前記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
【0098】
例えば、自己分散型カーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものが好適である。
【0099】
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、Mは、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
【0100】
また、前記親水基中における「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、等が挙げられる。前記有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
【0101】
前記親水基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−C2H4COOM(ただし、Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)、−PhSO3M(ただし、Phはフェニル基を表わす。Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)等が挙げられる。
【0102】
前記着色剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。前記含有量が2質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあり好ましくない。
【0103】
―水溶性有機溶剤―
前記インクジェット用インクに用いられる水溶性有機溶剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる水溶性有機溶剤が好適に用いられる。前記インクジェット用インクにおける前記水分散性着色剤と前記水溶性有機溶剤との質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に影響を与える。例えば、水分散性着色剤の固形分が高いのに水溶性有機溶剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。前記水溶性有機溶剤の前記インクジェット用インク中における含有量は、20〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。前記含有量が20質量%未満であると、吐出安定性が低下したりインクジェット記録装置の維持装置で廃インク固着したりする可能性がある。また、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣り更に普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0104】
―界面活性剤―
前記インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、着色剤の種類や水溶性有機溶剤の組み合わせによって分散安定性が損なわれず、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましく、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これら界面活性剤は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる界面活性剤が好適に用いられる。
【0105】
前記界面活性剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、被記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0106】
―浸透剤―
前記インクジェット用インクに用いられる浸透剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる浸透剤が好適に用いられる。前記浸透剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.1〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなる、被記録媒体への浸透性が必要以上に高くなる等、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0107】
―水分散性樹脂―
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
【0108】
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0109】
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
【0110】
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
【0111】
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。また、前記水分散性樹脂を2種類以上併用することは全く問題ない。
【0112】
前記フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子が好ましく、これらの中でも、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子が特に好ましい。
【0113】
前記フルオロオレフィン単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCI−などが挙げられる。
【0114】
前記ビニルエーテル単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式で表わされる化合物などが挙げられる。
【0115】
【化1】
【0116】
前記フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子としては、上記フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位が交互に共重合してなる交互共重合体が好ましい。
【0117】
このようなフッ素系樹脂微粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のフルオネートFEM−500、FEM−600、ディックガードF−52S、F−90、F−90M、F−90N,アクアフランTE−5A;旭硝子株式会社製のルミフロンFE4300、FE4500、FE4400、アサヒガードAG−7105、AG−950、AG−7600、AG−7000、AG−1100などが挙げられる。
【0118】
前記水分散性樹脂は、ホモポリマーとして使用されてもよく、また、コポリマーして使用して複合系樹脂として用いてもよく、単相構造型及びコアシェル型、パワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
【0119】
前記水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基をもつ樹脂にて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが最適である。不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水にて反応させ樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
【0120】
前記不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行なうことで樹脂の特性を改質することもできる。
【0121】
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0122】
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0123】
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0124】
前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0125】
前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0126】
前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0127】
前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸その塩、アリルアミン、アリルクローライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0129】
前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0130】
前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
【0131】
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0132】
前記水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4〜12が好ましく、特に水分散着色剤との混和性の点からpHは6〜11がより好ましく、7〜9が更に好ましい。
【0133】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化したときに過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0134】
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して色材の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。
【0135】
前記水分散性樹脂の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で1〜15質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。
【0136】
ここで、前記インクジェット用インクの固形分含有量は、例えば、インクジェット用インク中から水分散性着色剤と水分散性樹脂分のみを分離する方法により測定することができる。また、水分散性着色剤として顔料を用いている場合には、熱質量分析により質量減少率を評価することで着色剤と水分散性樹脂との比率を測定できる。また、水分散性着色剤の分子構造が明らかな場合には、顔料や染料ではNMRを用いて着色剤の固形分量を定量することが可能であり、重金属原子、分子骨格に含まれる無機顔料、含金有機顔料、含金染料では蛍光X線分析を用いることで着色剤の固形分量を定量することが可能である。
【0137】
―その他成分―
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0138】
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが7未満及び11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
【0139】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
【0140】
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0141】
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
【0142】
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0143】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
【0144】
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0145】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0146】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0147】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0148】
―インクジェット用インク製法―
前記インクジェット用インクは、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水、更に必要に応じて他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。前記攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行なうことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行なうことができる。
【0149】
―インクジェット用インク物性―
前記インクジェット用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力等が以下の範囲であることが好ましい。
【0150】
前記インクジェット用インクの25℃での粘度は5〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が5mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。ここで、前記粘度は、例えば、粘度計(RE−550L、東機産業株式会社製)を使用して25℃で測定することができる。
【0151】
前記インクジェット用インクの静的表面張力としては、25℃で静的表面張力が20〜35mN/mが好ましく、20〜30mN/m以下がより好ましい。前記インクジェット用インクの静的表面張力20〜35mN/mの場合には、浸透性を高めることでブリーディングの低減に効果が高く、普通紙印字での乾燥性が良好となる。前処理層に濡れ易いと言うことで、発色性が良く白ポチも改良される。前記表面張力が、35mN/mを超えると、被記録剤上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0152】
前記インクジェット用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行なうと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行なうと、フルカラー画像を形成することができる。
【0153】
前記インクジェット用インクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などのいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
【0154】
前記インクジェット用インクは、例えば、印字時又は印字前後に被記録媒体及び前記インクジェット用インクを50〜200℃で加熱し、印字定着を促進する機能を有するプリンタ等に使用することもできる。
【0155】
<被記録媒体>
前記被記録媒体としては、塗工層を持たない普通紙が好適に用いられ、一般的にコピー用紙として用いているサイズ度10S以上、透気度5〜50Sの普通紙が好ましい。
【0156】
<画像形成方法>
本実施形態の画像形成方法は、本実施形態のインクジェット用前処理液を被記録媒体に塗布する前処理工程と、前記インクジェット用インクに刺激を印加し、前記前処理液を塗布した被記録媒体に、前記インクジェット用インクを飛翔させて画像を形成するインク飛翔工程とを有する。
【0157】
―インク飛翔工程―
本実施形態の画像形成方法におけるインク飛翔工程は、前記インクジェット用インクに、刺激(エネルギー)を印加し、前記インクジェット用前処理液を塗布した被記録媒体に、前記インクジェット用インクを飛翔させて被記録媒体に画像を形成する工程である。前記インク飛翔工程において被記録媒体に前記インクジェット用インクを飛翔させて被記録媒体に画像を形成する方法としては、公知のあらゆるインクジェット記録方法を適用できる。このような方法としては、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用いることにより、ある枚葉の被記録媒体において、画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
【0158】
前記インク飛翔工程において、インク飛翔手段である記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドで記録することもできる。熱エネルギーを作用させる方式においては、液滴の噴射を自在に制御することが困難とされており、被記録媒体種等による画像へのばらつきが大きくなりがちであるが、前処理液を被記録媒体に付与することでこれらの課題は解消され、被記録媒体種に依らず安定した高画質を得ることができる。
【0159】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(調製例1)
<カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
―ポリマー溶液Aの調製―
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
【0160】
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0161】
―顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製―
ポリマー溶液Aを28gと、カーボンブラック(デグサ社製、FW100)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られたカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定したところ75.2nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いた。
【0162】
(調整例2,3)
<インクジェット用インクの作製>
各インクジェット用インクの作製は、以下の手順で行なった。まず、下記表1に示す
水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、防カビ剤、及び水を混合し、1時間攪拌を行ない均一に混合する。また、混合液によっては水分散性樹脂を添加して1時間撹拌し、顔料分散液、消泡剤、pH調整剤を添加し1時間攪拌する。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、各インクジェット用インクを作製した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1中の略号などは下記の意味を表わす。
*CAB−O−JET 300:CABOT製、顔料固形分15%、ブラック自己分散顔料
*フッ素樹脂エマルジョン:旭硝子株式会社製、ルミフロンFE4500、固形分52質量%、平均粒子径136nm、最低造膜温度(MFT)=28℃
*アクリル−シリコーン樹脂エマルジョン:昭和高分子株式会社製、ポリゾールROY6312、固形分40質量%、平均粒子径171nm、最低造膜温度(MFT)=20℃
*KF−640:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(信越化学工業株式会社製、成分100質量%)
*ソフタノールEP−7025:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(日本触媒株式会社製、成分100質量%)
*Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
*KM−72F:自己乳化型シリコーン消泡剤(信越シリコーン株式会社製、成分100質量%)
【0165】
(調整例4〜5)
<前処理液の作製>
各前処理液の製造は、以下の手順で行なった。まず、下記表2に示す材料を混ぜ、1時間攪拌を行ない均一に混合する。この前処理液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、調整例4,5の各前処理液を作製した。
【0166】
【表2】
【0167】
表2中の略号などは下記の意味を表わす。
*乳酸:東京化成工業製、純度85%以上
*乳酸カルシウム5水和物:和光純薬工業製、純度95%以上
*硫酸マグネシウム:和光純薬工業製、純度98.5%以上
*ゾニールFS−300:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、式中jは6〜8、kは26以上を示す(Dupont社製、有効成分40質量%)
*Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
【0168】
<塗布ユニット>
塗布ユニットは、第1ないし第3実施形態、第4実施形態のものと同様な構成の装置を製作して使用した。
<塗布ユニットA>
第1ないし第3実施形態の処理液塗布装置(処理液塗布ユニット)は、塗布ローラ25として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、カウンタローラ26として、直径12mmのSUS304材のローラを用いた。ローラ25、26の長手方向の長さは全て300mmである。処理液収容槽21は、320mm×40mm×20mm(高さ)で、塗布ローラ25下端と収容槽21の底との間が2mmとなるように配置される。塗布ローラ25は駆動用のモータからギアによって回転力が伝達される。塗布ローラ25は、任意に回転速度を変えて駆動することが可能であり、塗布ローラ25とカウンタローラ26の間に、用紙を手差しで導入すると、用紙の下面側に処理液が塗布される。
【0169】
<塗布ユニットB>
第4実施形態の処理液塗布装置(処理液塗布ユニット)は、汲み上げローラ23として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、膜厚制御ローラ24として、直径24mmのSUS304のローラ、塗布ローラ25として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、カウンタローラとして、直径12mmのSUS304材のローラを用いた。ローラの長手方向の長さは全て300mmである。処理液収容槽21は、320mm×40mm×20mm(高さ)で、汲み上げローラ23下端と収納容器21の底との間が2mmとなるように配置される。塗布ローラ25は駆動用のモータからギアに回転力が伝達され、全てのローラが同じ線速で回転するように構成されている。汲み上げローラ23と塗布ローラ25は同方向に回転し、膜厚制御ローラ24とカウンタローラ26は塗布ローラ25と逆方向に回転する。塗布ローラ25は任意に回転速度を変えて駆動することが可能であり、塗布ローラ25とカウンタローラ26の間に、用紙を手差しで導入すると、用紙の下面側に処理液が塗布される。
【0170】
実施例として、上記の塗布ユニットA、Bに、前記第1、第4実施形態と同様に処理液収容槽21内の塗布ローラ25、又は汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側と残処理液が戻る側の両方の側に球形粒子60を配置した。
【0171】
また、実施例として、上記の塗布ユニットA、Bに、第2実施形態と同様に、処理液収容槽21内の塗布ローラ25、又は汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側のみに球形粒子60を配置した。
【0172】
比較例として、上記の塗布ユニットA、Bに、図9、図10、図11に示すように、球形粒子60を配置していない構成と、図12、図13、図14に示すように、除去ブレード61が設けられ、除去ブレード61は図12の塗布ローラ25、又は図13の汲み上げローラ23に接するように10mm×320mm×2mm(厚み)のクロロプレーンゴム部材の除去ブレード61を配置した構成で行った。
【0173】
そして、表3に示す組合せにより検討を行った。
【0174】
球形粒子60として、ポリエチレン製の平均直径が0.1mm、1mm、3mm、10mm、30mmのものを使用した。
【0175】
【表3】
【0176】
<放置後の復帰性>
前処理液を処理液収容槽21に20ml入れ、塗布ローラ25の回転速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させ、1日室温で放置し後、処理液収容容器21内の前処理液を排出し処理液収容槽21内に新しい前処理液を20ml入れ、塗布ローラ25の搬送速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させたときの塗布ローラ25の状態を観察した。
【0177】
〔評価基準〕
表3中、○:均一に処理液が塗れ広がっている、△:処理液の濡れ方が不均一、×:析出物が残っている、ことを表している。
【0178】
なお、前処理液は、調整例4、5の両方で評価し、評価結果が異なっている場合には悪い方を判定基準とした。
【0179】
<色ムラ>
放置後の復帰性の評価と同様に、前処理液を処理液収容槽21に20ml入れ、塗布ローラの回転速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させ、1日室温で放置し後、処理液収容槽21内の前処理液を排出し処理液収容槽21内に新しい前処理液を20ml入れ、塗布ローラの搬送速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させた後、被記録媒体(PPC用紙 MyPaper、株式会社リコー製)上に、表の条件で前処理液を0.15g/m2の塗布量で塗布し、前処理後、温度23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境下、インクジェットプリンタ(IPSiO GX5000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、被記録媒体に同じ付着量のインクが付くように設定を行なった。
【0180】
画像形成用のチャートは、Microsoft Word2000にて作成した「幅198mm×高さ65mmの□」部の記載のあるチャートを被記録媒体に打ち出し、印字面の「□」部のX−Rite938にて20点測色し、下記式により算出し、下記判断基準にしたがって判定した。印字モードはプリンタ添付のドライバで「普通紙−標準はやい」モードカラーマッチングoffで印字した。
【0181】
判断値:((最大値)−(最小値))/(平均値)
【0182】
〔「□」部の色指定〕
Black:(R)192、(G)192、(B)192
【0183】
〔評価基準〕
表3中、◎:0.10以下、○:0.10以上0.15未満、×:0.15以上を表している。
【0184】
インク、前処理液は、調整例2〜4の組合せを全て評価し、評価結果が異なっている場合には最も悪い結果を判定基準とした。
【0185】
結果を表4に示している。
【0186】
【表4】
【0187】
なお、上記実施形態では処理液塗布装置が画像形成前の被記録媒体に対して処理液を塗布する構成で説明しているが、記録ヘッド(画像形成手段)の下流側で画像形成が行われた用紙上に処理液を塗布する構成とすることもできる。
【0188】
また、本発明に係る画像形成装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、紙等の媒体上のトナー等の樹脂を含有する微粒子を乱すことなく、かつ当該樹脂微粒子を付着した媒体に定着液を塗布後は素早く樹脂微粒子の媒体への定着が行われ、更に媒体に残油感が発生しない程度の微量塗布が可能な樹脂微粒子の定着液を用いた、定着方法及び定着装置、並びに画像形成方法及び画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0189】
10 被記録媒体供給ユニット
20 前処理液塗布ユニット(処理液塗布装置)
30 画像記録ユニット
21 処理液収容槽(処理液収容容器)
22 処理液
23 汲み上げローラ
24 塗布ローラ
26 カウンタローラ
60 球形粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は処理液塗布装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。また、「画像形成装置」には液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行なうものなども含まれるが、以下では液体吐出方式の画像形成装置で説明する。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、色材を含むインクを液滴化して画像形成を行うために、液滴で形成されるドットがひげ状に乱れるフェザリング、異なる色のインク滴が隣接して用紙に打たれた場合に、各色が相互に混ざり合って色境界が不鮮明になるカラーブリード等の不具合が生じることがあり、更に印字後の紙上の液滴が乾くまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、従来から処理液を被記録媒体に塗布することが知られており、処理液塗布装置としては、例えば、ローラ状になった汲み上げローラ(処理液担持体)の一部を処理液収容容器(処理液収容槽)内の処理液に浸漬させて、汲み上げローラで汲み上げた処理液を被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラ(塗布担持体)側に供給するものが知られている(特許文献1)。この特許文献1に開示の構成にあっては、汲み上げローラ表面の処理液膜を規制する規制部材よりも下流側でさらに板状の除去ブレードを接触させることで、塗布後に汲み上げローラ表面に残留する処理液を掻き取るようにしている。
【0006】
一方、処理液としては、水溶性の色材を凝集させる又は不溶化させる効果を持つ水溶性の凝集剤を水、有機溶媒に溶解又は分散させたものが用いられるが、処理液に用いられる凝集剤は、多価の金属塩やイオン性の微粒子、イオン性の高分子化合物を用いられ、これらは室温で固体である場合が多い(特許文献2〜特許文献4)。
【0007】
このような処理液は、通常の使用において特に問題は生じないが、装置の長時間使用時や長期間の保管時において、処理液が蒸発すると、凝集剤等の成分の析出や濃度勾配が生じることが問題となる。例えば、塗布ローラや規制部材、除去ブレード上で残留している処理液の凝集剤等が析出や濃度勾配が生じると、長期保管後に新しい処理液を補充しても、規制部材や除去ブレードに、凝集剤等の析出物や濃縮物が残っているため、新しい液に置換されるまでに長い時間を要し、処理液塗布動作を開始できるようになるまで時間がかかるか、塗布ムラを生じることになる。
【0008】
そこで、規制部材や除去ブレードに別の洗浄機構を設けることも行われている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3804284号公報
【特許文献2】特開平01−069381号公報
【特許文献3】特開平11−078211号公報
【特許文献4】特開2001−199150号公報
【特許文献5】特開2002−361141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、規制部材や除去ブレードに別の洗浄機構を設けることは、コストが高くなり、スペースが限定されている場合には洗浄機構を設けることができないという課題がある。
【0011】
また、処理液自体の乾燥性を防止する対策も、可動部材を有する機構で完全に密閉することは難しいため、長期稼動や長期保管の上では十分な効果を得ることができないという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で処理液を担持するローラ状部材を清掃できて、塗布ムラのない安定した塗布を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る処理液塗布装置は、
被塗布媒体に塗布する処理液が収容された処理液収容容器と、
前記処理液収容容器内の前記処理液に一部が浸漬され、回転することで前記処理液を表面に担持するローラ状部材と、を備え、
前記処理液収容容器内には、前記ローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている
構成とした。
【0014】
ここで、前記球状粒子は前記処理液収容容器内の前記処理液の気液界面に配置されている構成とできる。
【0015】
また、前記球状粒子は前記ローラ状部材の汲み上げ側に配置されている構成とできる。
【0016】
また、前記球状粒子の平均粒子直径dが1mm以上30mm未満であり、前記ローラ状部材と接する前記球状粒子の数密度ρが、50<ρ×d2、の関係にある構成とできる。
【0017】
また、前記球状粒子の単位体積当りの重さが、0.1〜1.2g/cm3の範囲にある構成とできる。
【0018】
また、前記球状粒子の材質が、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)のいずれかである構成とできる。
【0019】
また、前記球状粒子の単位体積当りの重量が、前記処理液の単位体積当りの重量よりも小さい構成とできる。
【0020】
また、前記処理液中に処理液水溶性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、および水を含有する構成とできる。
【0021】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る処理液塗布装置を備えているものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る処理液塗布装置によれば、処理液収容容器内には、処理液を表面に担持するローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている構成としたので、球状粒子とローラ状部材表面の接触によってローラ状部材の表面が清掃される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る処理液塗布装置を備える本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図3】同じく平面説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図5】同じく平面説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図7】同じく平面説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図9】比較例に係る処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図10】比較例に係る他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図11】同じく平面説明図である。
【図12】比較例に係る更に他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図13】比較例に係る更にまた他の処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
【図14】同じく平面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る処理液塗布装置を備える本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成図である。
この画像形成装置は、ライン型インクジェット記録装置であり、被記録媒体供給ユニット10、本発明に係る処理液塗布装置である前処理液塗布ユニット20、画像記録ユニット30を含んで構成されている。
【0025】
被記録媒体供給ユニット10は、被記録媒体11を送り出す給紙ローラ12を有する。
【0026】
前処理液塗布ユニット20は、色剤と、該色剤を分散又は溶解する溶媒からなるインク中の色剤を不溶化する化合物とを含有する液体である前処理液22を収容すると共に、被記録媒体11をカウンタローラ26側に案内する第1のガイド部51及び塗布ローラ25(塗布担持体)とカウンタローラ26の排出側に配置され前処理液22が塗布された下面への塗布直後の接触を避けるように塗布ローラ25側であってローラ挟持部よりも下方に向けて設けられている第2のガイド部52を含む処理液収容槽(処理液収容容器)21と、前処理液22を攪拌して汲み上げる(表面に担持する)本発明におけるローラ状部材である汲み上げローラ(処理液担持体)23と、汲み上げられた前処理液22を塗布ローラ25に均一な膜厚に制御する膜厚制御ローラ24と、被記録媒体11に前処理液22を塗工する塗布ローラ25と、塗布ローラ25に対向し、塗布ローラ25とともに被記録媒体11を保持するカウンタローラ26を含んで構成されている。
【0027】
そして、画像記録ユニット30は、ベルト駆動ローラ32,33の間に渡され、当該ベルト駆動ローラ32,33が回動することによって、搬送されてきた被記録媒体11を用紙送り方向である図中矢印方向に一定速度で連続的に搬送する被記録媒体搬送ベルト31と、被記録媒体搬送ベルト31の上に被記録媒体11を案内する搬送ローラ34と、記録終了後の被記録媒体11を押し出す搬送ローラ35と、被記録媒体11の幅だけ記録可能なノズルを具備した、ライン型の液体吐出ヘッドからなるブラック用記録ヘッド36、シアン用記録ヘッド37、マゼンタ用記録ヘッド38及びイエロー用記録ヘッド39を含んで構成されている。
【0028】
なお、各記録ヘッド36ないし39は所定の間隔で配置されており、被記録媒体11の送り速度と同期して画像を記録していく。
【0029】
記録された被記録媒体11は、排出ローラ40,41によって排出部に排出される。
【0030】
インクは、各色のタンク46が配置され、図示しないチューブでそれぞれのヘッド36〜39に供給される。
【0031】
前処理液22も同様の位置に配置され図示しないチューブで処理液収容槽21に供給され、液面22aが一定の高さに保たれるようになっている。
【0032】
このように構成されたインクジェット記録装置における記録動作について以下に述べる。
被記録媒体給紙ユニット10に収納されている被記録媒体11は給紙ローラ12によって被記録媒体給紙ユニット10から送り出される。一方、前処理液塗布ユニット20の処理液収容槽21内の前処理液22は汲上げローラ23によって汲み上げられ、塗布ローラ25のローラ面に膜厚制御ローラ24によって均一な膜厚に制御される。
【0033】
そして、給紙ローラ12によって搬送された被記録媒体11は第1のガイド部51によりカウンタローラ26側に案内されてカウンタローラ26に接し、その後被記録媒体11は2つのローラで挟まれる部位で始めて塗布ローラ25と接することになる。このようにすることで、塗布ローラ25とカウンタローラ26とによる圧力がかからない状態で被記録媒体が塗布ローラ25上の前処理液22に触れることがなくなるため、前処理液22を被記録媒体11の記録領域に均一に薄く塗布することが可能となる。
【0034】
この前処理液22が塗布された被記録媒体11は第2のガイド部52に沿って案内される。しかし、ガイド部52は、塗布ローラ25とカウンタローラ26とのローラ挟持部よりも下方に位置して設けられているので、前処理液22が塗布された下面と接触するまでに一定の時間を要し、塗布直後の被記録媒体11への接触を避けられる構成となっている。
【0035】
次いで、被記録媒体11は、被記録媒体ガイド44に沿って搬送ローラ42,43によって搬送され、更に被記録媒体ガイド45に沿って被記録媒体搬送ベルト31上に送られる。
【0036】
その後、前処理液22が塗布された被記録媒体11は被記録媒体搬送ベルト31によって一定速度で連続的に用紙送り方向に搬送され、この被記録媒体11上に順次記録ヘッド36〜39から所要の色の液滴が出されて画像が記録される。
【0037】
記録が終了した被記録媒体11は排出ローラ40,41によって排出部に排出される。
【0038】
また、前処理ユニット20が長時間駆動後又は長時間放置後の状態を装置内の記録及び処理液収容槽21内の液面を検知した場合には、前処理収容槽21内に残っている前処理液22が排出され、図示しない前処理液タンクから新しい前処理液が供給される。
【0039】
そして、被記録媒体が搬送されない状態で、汲み上げローラ23と塗布ローラ25を一定時間回転させる。その後、上記と同様に、被記録媒体給紙ユニット10に収納されている被記録媒体11は給紙ローラ12によって送り出され、前処理液22が塗布された後、記録ヘッド36〜39によって記録される。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態に係る処理液塗布装置について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図3は同じく平面説明図である。
この処理液塗布装置は、上記画像形成装置の前処理ユニット20とは異なり、塗布ローラ25の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、塗布ローラ25が回転することで処理液22を汲み上げて表面に保持し、更に塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に担持(保持)された処理液22を搬送し、塗布ローラ25とカウンタローラ26との間で被記録媒体11を搬送して、被記録媒体11に上記の塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布する構成としている。
【0041】
そして、処理液収容槽21内には、回転する塗布ローラ25表面に接触し、処理液22の表面(液面22a)で移動及び回転可能な球状粒子である球形粒子60が配設(配置)されている。この球形粒子60は、塗布ローラ25の処理液22を汲み上げる側と、処理液22を戻す側の両側に配置される。
【0042】
このように球形粒子60を配置することで、搬送される処理液22の量を規制しながら、処理液22を被記録媒体11に塗布する。
【0043】
そして、処理液22は長期保管時等により乾燥し、塗布ローラ25及び球形粒子60に析出付着する。このようになると、処理液22の液量、放置時間を検知判断して、処理液収容槽21内の残った処理液を排出した後、処理液タンク27から供給経路を通って、処理液収容槽21に新しい液を補充する。
【0044】
ここで、処理液収容槽21に新しい処理液22が補充されてくると、被記録媒体11を導入しない状態で、塗布ローラ25を回転させて、塗布ローラ25表面に新しい処理液22を供給する。
【0045】
このとき、塗布ローラ25に接触させた球形粒子60によって、塗布ローラ25表面の析出物、付着物を掻き取られる。この球形粒子60は移動、回転可能に配設されているため、塗布ローラ25の回転により、球形粒子60同士が回転衝突して新しい処理液22により析出物、濃縮物が新しい処理液22に再溶解されるため、塗布ローラ25及び球形粒子60は常に析出物等が無い状態になり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0046】
また、前処理液22の液面全体を球形粒子60で覆うことにより、前処理液自体の蒸発を抑える効果も有する。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態に係る処理液塗布装置について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図5は同じく平面説明図である。
ここでは、前記第1実施形態と異なり、処理液収容槽21内の球形粒子60は、塗布ローラ25の回転によって塗布ローラ25表面が処理液22を引き上げる側(汲み上げ側)にのみ配置されている。このような構成であっても塗布ローラ25表面の析出物、付着物を掻き取る効果が得られる。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態に係る処理液塗布装置について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6は同処理液塗布装置の模式的断面説明図、図7は同じく平面説明図である。
ここでは、前記第2実施形態において、処理液収容槽21内に、塗布ローラ25表面が処理液22を引き上げる側(汲み上げ側)に球形粒子60の動きを規制する仕切り部材62を設けている。これにより、球形粒子60が、塗布ローラ25の回転によって塗布ローラ25の表面の処理液22を引き上げる部分に効率良く接する。
【0049】
このように構成することで、球形粒子60の数を減らしても、同様に塗布ローラ25表面の析出物を掻き取る効果があり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0050】
また、第2実施形態、第3実施形態のような構成をとることで、前処理液22の液面に球状粒子60の存在しない領域を形成できるため、この領域に液面センサを配置することにより正確に前処理液の量を測定、管理することもできる。
【0051】
次に、本発明の第4実施形態に係る処理液塗布装置について図8を参照して説明する。なお、図8は同処理液塗布装置の模式的断面説明図である。
ここでは、前記各実施形態の塗布ローラ25に代えて、本発明におけるローラ状部材である汲み上げローラ23の一部を処理液収容槽21に収容された処理液22内に浸漬させ、汲み上げローラ23が回転することで処理液22を汲み上げて表面に担持(保持)し、この汲み上げローラ23を回転させて、汲み上げローラ23表面に保持された処理液22を搬送し、汲み上げローラ23表面に保持された処理液22を、塗布ローラ25へ付着する膜厚を制御する膜厚制御ローラ24に移送し、膜厚制御ローラ24に保持された処理液22を塗布ローラ25に移送して、この塗布ローラ25とカウンタローラ26との間に被記録媒体11を搬送し、被記録媒体11に塗布ローラ25の表面に保持された処理液22を塗布する。
【0052】
そして、処理液収容槽21内には、回転する汲み上げローラ23表面に接触し、処理液22の表面(液面22a)で移動及び回転可能な球状粒子である球形粒子60が配設(配置)されている。この球形粒子60は、汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側と処理液22を戻す側の両側に配置される。
【0053】
このように球形粒子60を配置することで、汲み上げる処理液22の量を規制しながら、膜厚制御ローラ24に搬送することができる。
【0054】
そして、処理液22は長期保管時等により乾燥し、汲み上げローラ23及び球形粒子60に析出付着する。このようになると、処理液22の液量、放置時間を検知判断して、処理液収容槽21内の残った処理液を排出した後、処理液タンク27から供給経路を通って、処理液収容槽21に新しい液が補充される。
【0055】
ここで、処理液収容槽21に新しい液が補充されてくると、被記録媒体11を導入しない状態で、汲み上げローラ23を回転させて、汲み上げローラ23表面に新しい処理液22を供給する。このとき、汲み上げローラ23に接触させた球形粒子60によって、汲み上げローラ23表面の析出物、付着物が掻き取られる。この球形粒子60は、移動、回転可能に配置されているため、汲み上げローラ23の回転により、球形粒子60同士が回転衝突して新しい処理液22により析出物、濃縮物が新しい処理液に再溶解されるため、汲み上げローラ23、球形粒子60は常に析出物等が無い状態になり、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することができる。
【0056】
このような、処理液収容槽内に処理液に浸漬された汲み上げローラ表面の析出物を掻き取ることができ、塗布ムラや磨耗等の影響を受けないで安定して塗布することが可能となる。
【0057】
特に、処理液収容槽21に収容された処理液22に一部を浸漬させたローラ状部材である汲み上げローラ23は、長期保管時の処理液22の乾燥により、処理液22が濃縮しながら堆積するため、特に析出物が多く堆積する部分である。また、第1の実施形態の塗布ローラ25と異なり、汲み上げローラ23は処理液収容槽21の内部に配置され、処理液収容槽21の外に露出する部分がないため、外部からクリーニングすることも困難である。このため、処理液収容槽21内にある球形粒子60による掻き取りは極めて有効な手段となる。
【0058】
なお、球形粒子60の配置としては、前記各実施形態と同様にすることもでき、この場合には汲み上げローラ23に接触するように配置すればよい。
【0059】
なお、処理液収容槽(処理液収容容器)内に収納される液体は、インクジェット用前処理液でなくても良く、後処理液、インク、他に、被記録媒体に対して塗布ローラを用いて薄く付与させる液体であれば特に限定されるものではない。乾燥により析出、濃度勾配が生じる液体であれば同様の効果が得られる。
【0060】
上記各実施形態において、球形粒子60の材質については、処理液22に対して耐性があり、処理液22よりも比重の軽い球体である方が良く。例えば、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、等を使用することができる。
【0061】
特に好ましくは、有機溶剤に対する耐溶剤性と、比重が1.0よりも軽いことから、ポリエチレン、ポリプロピレンが特に有効である。耐薬品性等の理由により、ポリエチレン、ポリプロピレンが使用できない場合には、他の材質でも、球形粒子60の中に空気が入った空洞のあるものを使用することで、問題無く使用可能である。
【0062】
また、球形粒子60の比重は、処理液22よりも小さく、球形粒子60が処理液表面を覆うよう(気液界面)に配置されるものであることが好ましいが、比重の重い材質であっても、処理液22内に多量に球形粒子60を配置し、処理液表面を覆うようになっていれば特に問題はない。
【0063】
球形粒子60の径は、特に制限は無いが、1mm〜20mm程度のものが良い。1mm未満であると、球形粒子60が回転する塗布ローラ25などに貼り付き、清掃効果が得られないことがあり、逆に20mmを超えると、球形粒子60間の隙間が大きくなりすぎて、塗布ローラ25などに適切に接触できないため、十分な効果が得られなくなる。球形粒子60の径は、複数種類の混合でも良く、径に分布のあるものでも良い。
【0064】
球形粒子60は、処理液収納容器の塗布ローラ25などと接触する領域において、球形粒子60が単一の粒径を有する場合、平均直径dmmとすると、1cm2当り、100/d2個以上の密度で充填されることで、処理液表面を隙間無く埋めることが可能となり、ローラ状部材(処理液担持体)に対して析出物、濃縮物を掻き取る効果が最大となる。このときの処理液表面での球形粒子60の占有面積は85%を超える。
【0065】
次に、上記実施形態におけるインクジェット用前処理液などについて説明する。
<インクジェット用前処理液>
インクジェット用前処理液は、水性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、水を含む。
【0066】
<界面活性剤>
インクジェット用前処理液に用いられる界面活性剤としては、水性凝集剤、水溶性有機溶剤の組み合わせによって保存安定性が良く、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましく、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これら界面活性剤は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、例えば、
サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431、FC−4430(いずれも住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも大日本インク化学工業株式会社製);ゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製);エフトップEF−351、EF−352、EF−801、EF−802(いずれもジェムコ社製)などが挙げられる。これらの中でも、信頼性と発色向上に関して良好なゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製)が特に好適である。
【0068】
前記界面活性剤の前記インクジェット用前処理液における含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、保存安定性に問題を生じる恐れがある。
【0069】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンが挙げられる。本実施の形態の水溶性有機溶剤は、インクジェット用前処理液の水分が蒸発して平衡状態に達した場合にも、水溶性有機溶剤が多量の水分を保持することにより、インクジェット用前処理液に流動性を付与する。
【0070】
前記水溶性有機溶剤としては、平衡水分量の高い水溶性有機溶剤を用いることにより、インクジェット用前処理液の水分が蒸発して平衡状態に達した場合にも、水溶性有機溶剤が多量の水分を保持し、極端な粘度上昇を抑えることができる。
【0071】
前記平衡水分量の高い水溶性有機溶剤とは、温度23℃、湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上、好ましくは40wt%以上である水溶性有機溶剤を言う(以後、水溶性有機溶剤Aと言う)。このような水溶性有機溶剤Aを用いることで、インクの水分が蒸発して水分平衡に達した場合においても、水溶性有機溶剤Aが多量の水分を保持して粘度上昇を防ぐことができる。なお、平衡水分量とは、水溶性有機溶剤と水との混合物を一定温度、湿度の空気中に開放して、溶液中の水の蒸発と空気中の水のインクへの吸収が平衡状態になったときの水分量を言う。具体的には、平衡水分量は、塩化カリウム飽和水溶液を用いデシケーター内の温湿度を温度23±1℃、湿度80±3%に保ち、このデシケーター内に各水溶性有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを質量変化がなくなるまでの期間保管し、次の(1)式により求めることができる。
【0072】
【数1】
【0073】
本発明で好適に用いられる水溶性有機溶剤Aとしては、温度23℃、湿度80%環境中の平衡水分量が30wt%以上の多価アルコール類が挙げられる。このような水溶性有機溶剤Aの具体例としては、1,2,3−ブタントリオール(bp175℃/33hPa、38wt%)、1,2,4−ブタントリオール(bp190−191℃/24hPa、41wt%)、グリセリン(bp290℃、49wt%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、38wt%)、トリエチレングリコール(bp285℃、39wt%)、テトラエチレングリコール(bp324−330℃、37wt%)、ジエチレングリコール(bp245℃、43wt%)、1,3−ブタンジオール(bp203−204℃、35wt%)等が挙げられる。この中でもグリセリン、1,3−ブタンジオールは水分を含んだ場合に低粘度化することや顔料分散体が凝集せず安定に保てるなどの理由により特に好適に用いられる。上記水溶性有機溶剤Aを水溶性有機溶剤全体の50wt%以上用いた場合、吐出安定性確保やインク吐出装置の維持装置での廃インク固着防止に優れるため好ましい。
【0074】
インクジェット用前処理液は、水溶性有機溶剤A以外にも、必要に応じて前記の水溶性有機溶剤Aの一部に代えて、または前記の水溶性有機溶剤Aに加えて、23℃、80%での平衡水分量が30wt%未満の水溶性有機溶剤(以後水溶性有機溶剤Bと言う)を併用することができる。このような水溶性有機溶剤Bとしては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の水溶性有機溶剤、などが挙げられる。
【0075】
水溶性有機溶剤Bの多価アルコール類の具体例としては、例えば、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196−198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体〜固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp253−260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199−201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0076】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp229℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(bp132℃)などが挙げられる。前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp237℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0077】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン(bp250℃、mp25.5℃、47−48wt%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(bp226℃)、ε−カプローラクタム(bp270℃)、γ−ブチローラクトン(bp204−205℃)などが挙げられる。前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド(bp210℃)、N−メチルホルムアミド(bp199−201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp153℃)、N,N−ジエチルホルムアミド(bp176−177℃)などが挙げられる。前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン(bp170℃)、ジエタノールアミン(bp268℃)、トリエタノールアミン(bp360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp282−287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp169℃)などが挙げられる。前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(bp139℃)、スルホラン(bp285℃)、チオジグリコール(bp282℃)などが挙げられる。その他の固体水溶性有機溶剤としては、糖類などが好ましい。
【0078】
該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、nは2〜5の整数を表す)で表わされる。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0079】
前記水溶性有機溶剤剤の前記インクジェット用前処理液中における含有量は、特に限定されないが、通常、10〜80質量%、好ましくは15〜60質量%である。80質量%より大きいと水溶性有機溶剤の種類によっては前処理後の被記録媒体上で乾燥不良の可能性があり、10質量%より小さいと前処理塗布工程等で水分蒸発が生じ、前処理液の組成が大きく変わってしまう等の可能性がある。
【0080】
―脂肪族系有機酸塩化合物、無機金属塩化合物―
前記前処理液に脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物を添加すると、顔料が被記録媒体表面に留まりやすくなり、塩析効果が向上するために画像濃度が増加する。
【0081】
前記脂肪族系有機酸塩化合物としては、例えば、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、琥珀酸二アンモニウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸二ナトリウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸アンモニウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、DL−酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム等が挙げられる。
【0082】
前記無機金属塩化合物としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウムが挙げられる。前記水溶性1価アルカリ金属塩化合物としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0083】
前記脂肪族系有機酸塩化合物又は無機金属塩化合物の添加量としては、前処理液全体の0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは1〜20質量%である。30質量%より大きい場合には、脂肪族系有機酸塩化合物が十分に溶解せずに析出することがあり、0.1質量%より小さい場合には画像濃度向上効果が小さくなることがある。
【0084】
―その他成分―
インクジェット用前処理液は、浸透剤として、炭素数8〜11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種を含有することが好ましい。これらは、25℃の水中において0.2〜5.0質量%の間の溶解度を有するものが好ましい。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
【0085】
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
【0086】
前記浸透剤の前記インクジェット用前処理液における含有量は、0.1〜5.0質量%であることが好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、インクジェット用インクを浸透させる効果がなくなることがあり、5.0質量%を超えると、溶媒への溶解性が低い為に溶媒から分離して浸透性を向上させる効果が飽和してしまうことがある。
本実施形態のインクジェット用前処理液には必要により、後記のインクジェット用インクに用いられる防腐剤、防錆剤等を用いても良い。
【0087】
次に、インクジェット用インクについて説明する。
<インクジェット用インク>
本実施形態の画像形成方法に用いられるインクジェット用インクは、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水を含有する。
【0088】
―水分散性着色剤―
前記インクジェット用インクは水分散性着色剤として、耐候性の面から主として顔料が用いられるが、色調調整の目的で耐候性が劣化させない範囲内で染料を含有しても構わない。前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒色用、或いはカラー用の無機顔料や有機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0090】
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、特に、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。
【0091】
上記顔料において、より好ましく用いられる顔料の具体例としては、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0092】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、138、150、151、153、183、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
【0093】
着色剤が顔料である場合の特に好ましい形態としては、以下の第1〜第2の形態が挙げられる。
【0094】
1)第1形態では前記着色剤は、ポリマー微粒子に水不溶乃至水難溶性の色材を含有させてなるポリマーエマルジョン(色材を含有させたポリマー微粒子の水分散物)を含有する。
2)第2形態では前記着色剤は、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を示す顔料(以下、「自己分散性顔料」と称することもある)を含有する。
本発明では、第2形態の場合は、下記に示す水分散性樹脂を含むことが好ましい。
【0095】
前記第1形態の水分散性着色剤としては、上記顔料に加え、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンを使用することが好ましい。ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンとは、ポリマー微粒子中に顔料を封入したもの、又はポリマー微粒子の表面に顔料を吸着させたものである。この場合、全ての顔料が封入又は吸着している必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で該顔料がエマルジョン中に分散にしていてもよい。ポリマーエマルジョンを形成するポリマー(ポリマー微粒子におけるポリマー)としてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマー等が挙げられるが、特に好ましく用いられるポリマーはビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーであり、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーを使用することができる。
【0096】
前記第2形態の自己分散性顔料は、顔料の表面に少なくとも1種の親水基が直接もしくは他の原子団を介して結合するように表面改質されたものである。該表面改質は、顔料の表面に、ある特定の官能基(スルホン基やカルボキシル基等の官能基)を化学的に結合させるか、あるいは、次亜ハロゲン酸又はその塩の少なくともいずれかを用いて湿式酸化処理するなどの方法が用いられる。これらの中でも、顔料の表面にカルボキシル基が結合され、水中に分散している形態が特に好ましい。このように顔料が表面改質され、カルボキシル基が結合しているため、分散安定性が向上するばかりではなく、高品位な印字品質が得られるとともに、印字後の被記録媒体の耐水性がより向上する。
【0097】
また、この第1形態の自己分散性顔料を含有するインクは乾燥後の再分散性に優れるため、長期間印字を休止し、インクジェットヘッドノズル付近のインク水分が蒸発した場合も目詰まりを起こさず、簡単なクリーニング動作で容易に良好な印字が行なえる。前記自己分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、インク中において0.01〜0.16μmが好ましい。
【0098】
例えば、自己分散型カーボンブラックとしては、イオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものが好適である。
【0099】
前記アニオン性親水基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NH2、−SO2NHCOR(ただし、Mは、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SO3Mがカラー顔料表面に結合されたものを用いることが好ましい。
【0100】
また、前記親水基中における「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、等が挙げられる。前記有機アンモニウムとしては、例えば、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。前記アニオン性に帯電したカラー顔料を得る方法としては、カラー顔料表面に−COONaを導入する方法として、例えば、カラー顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化による方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられる。
【0101】
前記親水基は、他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水基が他の原子団を介してカーボンブラックの表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−C2H4COOM(ただし、Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)、−PhSO3M(ただし、Phはフェニル基を表わす。Mは、アルカリ金属、又は第4級アンモニウムを表わす)等が挙げられる。
【0102】
前記着色剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。前記含有量が2質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して吐出性が悪くなってしまうことがあり好ましくない。
【0103】
―水溶性有機溶剤―
前記インクジェット用インクに用いられる水溶性有機溶剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる水溶性有機溶剤が好適に用いられる。前記インクジェット用インクにおける前記水分散性着色剤と前記水溶性有機溶剤との質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に影響を与える。例えば、水分散性着色剤の固形分が高いのに水溶性有機溶剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。前記水溶性有機溶剤の前記インクジェット用インク中における含有量は、20〜50質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。前記含有量が20質量%未満であると、吐出安定性が低下したりインクジェット記録装置の維持装置で廃インク固着したりする可能性がある。また、50質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣り更に普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0104】
―界面活性剤―
前記インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、着色剤の種類や水溶性有機溶剤の組み合わせによって分散安定性が損なわれず、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましく、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これら界面活性剤は、1種を単独、又は2種以上を混合して用いることができる。
インクジェット用インクに用いられる界面活性剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる界面活性剤が好適に用いられる。
【0105】
前記界面活性剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.01〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が無くなることがあり、3.0質量%を超えると、被記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0106】
―浸透剤―
前記インクジェット用インクに用いられる浸透剤としては、前記インクジェット用前処理液に用いられる浸透剤が好適に用いられる。前記浸透剤の前記インクジェット用インクにおける含有量は、0.1〜4.0質量%が好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4.0質量%を超えると、着色剤の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなる、被記録媒体への浸透性が必要以上に高くなる等、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0107】
―水分散性樹脂―
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
【0108】
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0109】
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。
【0110】
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
【0111】
この中でも、特にポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。また、前記水分散性樹脂を2種類以上併用することは全く問題ない。
【0112】
前記フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子が好ましく、これらの中でも、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子が特に好ましい。
【0113】
前記フルオロオレフィン単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCI−などが挙げられる。
【0114】
前記ビニルエーテル単位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式で表わされる化合物などが挙げられる。
【0115】
【化1】
【0116】
前記フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成されるフッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子としては、上記フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位が交互に共重合してなる交互共重合体が好ましい。
【0117】
このようなフッ素系樹脂微粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製のフルオネートFEM−500、FEM−600、ディックガードF−52S、F−90、F−90M、F−90N,アクアフランTE−5A;旭硝子株式会社製のルミフロンFE4300、FE4500、FE4400、アサヒガードAG−7105、AG−950、AG−7600、AG−7000、AG−1100などが挙げられる。
【0118】
前記水分散性樹脂は、ホモポリマーとして使用されてもよく、また、コポリマーして使用して複合系樹脂として用いてもよく、単相構造型及びコアシェル型、パワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
【0119】
前記水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基をもつ樹脂にて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが最適である。不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水にて反応させ樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
【0120】
前記不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行なうことで樹脂の特性を改質することもできる。
【0121】
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0122】
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0123】
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0124】
前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0125】
前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0126】
前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0127】
前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0128】
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸その塩、アリルアミン、アリルクローライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0129】
前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0130】
前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
【0131】
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0132】
前記水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4〜12が好ましく、特に水分散着色剤との混和性の点からpHは6〜11がより好ましく、7〜9が更に好ましい。
【0133】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化したときに過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0134】
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して色材の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。
【0135】
前記水分散性樹脂の前記インクジェット用インクにおける含有量は、固形分で1〜15質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。
【0136】
ここで、前記インクジェット用インクの固形分含有量は、例えば、インクジェット用インク中から水分散性着色剤と水分散性樹脂分のみを分離する方法により測定することができる。また、水分散性着色剤として顔料を用いている場合には、熱質量分析により質量減少率を評価することで着色剤と水分散性樹脂との比率を測定できる。また、水分散性着色剤の分子構造が明らかな場合には、顔料や染料ではNMRを用いて着色剤の固形分量を定量することが可能であり、重金属原子、分子骨格に含まれる無機顔料、含金有機顔料、含金染料では蛍光X線分析を用いることで着色剤の固形分量を定量することが可能である。
【0137】
―その他成分―
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0138】
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット用インクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが7未満及び11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
【0139】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオール等が挙げられる。
【0140】
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0141】
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
【0142】
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0143】
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
【0144】
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0145】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0146】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0147】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0148】
―インクジェット用インク製法―
前記インクジェット用インクは、水分散性着色剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、浸透剤及び水、更に必要に応じて他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。前記攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行なうことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行なうことができる。
【0149】
―インクジェット用インク物性―
前記インクジェット用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力等が以下の範囲であることが好ましい。
【0150】
前記インクジェット用インクの25℃での粘度は5〜20mPa・sが好ましい。前記インク粘度が5mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、インク粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。ここで、前記粘度は、例えば、粘度計(RE−550L、東機産業株式会社製)を使用して25℃で測定することができる。
【0151】
前記インクジェット用インクの静的表面張力としては、25℃で静的表面張力が20〜35mN/mが好ましく、20〜30mN/m以下がより好ましい。前記インクジェット用インクの静的表面張力20〜35mN/mの場合には、浸透性を高めることでブリーディングの低減に効果が高く、普通紙印字での乾燥性が良好となる。前処理層に濡れ易いと言うことで、発色性が良く白ポチも改良される。前記表面張力が、35mN/mを超えると、被記録剤上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0152】
前記インクジェット用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行なうと、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行なうと、フルカラー画像を形成することができる。
【0153】
前記インクジェット用インクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などのいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
【0154】
前記インクジェット用インクは、例えば、印字時又は印字前後に被記録媒体及び前記インクジェット用インクを50〜200℃で加熱し、印字定着を促進する機能を有するプリンタ等に使用することもできる。
【0155】
<被記録媒体>
前記被記録媒体としては、塗工層を持たない普通紙が好適に用いられ、一般的にコピー用紙として用いているサイズ度10S以上、透気度5〜50Sの普通紙が好ましい。
【0156】
<画像形成方法>
本実施形態の画像形成方法は、本実施形態のインクジェット用前処理液を被記録媒体に塗布する前処理工程と、前記インクジェット用インクに刺激を印加し、前記前処理液を塗布した被記録媒体に、前記インクジェット用インクを飛翔させて画像を形成するインク飛翔工程とを有する。
【0157】
―インク飛翔工程―
本実施形態の画像形成方法におけるインク飛翔工程は、前記インクジェット用インクに、刺激(エネルギー)を印加し、前記インクジェット用前処理液を塗布した被記録媒体に、前記インクジェット用インクを飛翔させて被記録媒体に画像を形成する工程である。前記インク飛翔工程において被記録媒体に前記インクジェット用インクを飛翔させて被記録媒体に画像を形成する方法としては、公知のあらゆるインクジェット記録方法を適用できる。このような方法としては、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用いることにより、ある枚葉の被記録媒体において、画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
【0158】
前記インク飛翔工程において、インク飛翔手段である記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドで記録することもできる。熱エネルギーを作用させる方式においては、液滴の噴射を自在に制御することが困難とされており、被記録媒体種等による画像へのばらつきが大きくなりがちであるが、前処理液を被記録媒体に付与することでこれらの課題は解消され、被記録媒体種に依らず安定した高画質を得ることができる。
【0159】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(調製例1)
<カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
―ポリマー溶液Aの調製―
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
【0160】
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0161】
―顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製―
ポリマー溶液Aを28gと、カーボンブラック(デグサ社製、FW100)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られたカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定したところ75.2nmであった。なお、平均粒子径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA−EX150)を用いた。
【0162】
(調整例2,3)
<インクジェット用インクの作製>
各インクジェット用インクの作製は、以下の手順で行なった。まず、下記表1に示す
水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、防カビ剤、及び水を混合し、1時間攪拌を行ない均一に混合する。また、混合液によっては水分散性樹脂を添加して1時間撹拌し、顔料分散液、消泡剤、pH調整剤を添加し1時間攪拌する。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、各インクジェット用インクを作製した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1中の略号などは下記の意味を表わす。
*CAB−O−JET 300:CABOT製、顔料固形分15%、ブラック自己分散顔料
*フッ素樹脂エマルジョン:旭硝子株式会社製、ルミフロンFE4500、固形分52質量%、平均粒子径136nm、最低造膜温度(MFT)=28℃
*アクリル−シリコーン樹脂エマルジョン:昭和高分子株式会社製、ポリゾールROY6312、固形分40質量%、平均粒子径171nm、最低造膜温度(MFT)=20℃
*KF−640:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(信越化学工業株式会社製、成分100質量%)
*ソフタノールEP−7025:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(日本触媒株式会社製、成分100質量%)
*Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
*KM−72F:自己乳化型シリコーン消泡剤(信越シリコーン株式会社製、成分100質量%)
【0165】
(調整例4〜5)
<前処理液の作製>
各前処理液の製造は、以下の手順で行なった。まず、下記表2に示す材料を混ぜ、1時間攪拌を行ない均一に混合する。この前処理液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフローライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、調整例4,5の各前処理液を作製した。
【0166】
【表2】
【0167】
表2中の略号などは下記の意味を表わす。
*乳酸:東京化成工業製、純度85%以上
*乳酸カルシウム5水和物:和光純薬工業製、純度95%以上
*硫酸マグネシウム:和光純薬工業製、純度98.5%以上
*ゾニールFS−300:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、式中jは6〜8、kは26以上を示す(Dupont社製、有効成分40質量%)
*Proxel GXL:1,2−benzisothiazolin−3−oneを主成分とした防カビ剤(アビシア社製、成分20質量%、ジプロピレングリコール含有)
【0168】
<塗布ユニット>
塗布ユニットは、第1ないし第3実施形態、第4実施形態のものと同様な構成の装置を製作して使用した。
<塗布ユニットA>
第1ないし第3実施形態の処理液塗布装置(処理液塗布ユニット)は、塗布ローラ25として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、カウンタローラ26として、直径12mmのSUS304材のローラを用いた。ローラ25、26の長手方向の長さは全て300mmである。処理液収容槽21は、320mm×40mm×20mm(高さ)で、塗布ローラ25下端と収容槽21の底との間が2mmとなるように配置される。塗布ローラ25は駆動用のモータからギアによって回転力が伝達される。塗布ローラ25は、任意に回転速度を変えて駆動することが可能であり、塗布ローラ25とカウンタローラ26の間に、用紙を手差しで導入すると、用紙の下面側に処理液が塗布される。
【0169】
<塗布ユニットB>
第4実施形態の処理液塗布装置(処理液塗布ユニット)は、汲み上げローラ23として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、膜厚制御ローラ24として、直径24mmのSUS304のローラ、塗布ローラ25として、直径22mmのメッキ処理した鉄材に、厚み3mmでゴム硬度50度のクロロプレーンゴムを被覆したローラ、カウンタローラとして、直径12mmのSUS304材のローラを用いた。ローラの長手方向の長さは全て300mmである。処理液収容槽21は、320mm×40mm×20mm(高さ)で、汲み上げローラ23下端と収納容器21の底との間が2mmとなるように配置される。塗布ローラ25は駆動用のモータからギアに回転力が伝達され、全てのローラが同じ線速で回転するように構成されている。汲み上げローラ23と塗布ローラ25は同方向に回転し、膜厚制御ローラ24とカウンタローラ26は塗布ローラ25と逆方向に回転する。塗布ローラ25は任意に回転速度を変えて駆動することが可能であり、塗布ローラ25とカウンタローラ26の間に、用紙を手差しで導入すると、用紙の下面側に処理液が塗布される。
【0170】
実施例として、上記の塗布ユニットA、Bに、前記第1、第4実施形態と同様に処理液収容槽21内の塗布ローラ25、又は汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側と残処理液が戻る側の両方の側に球形粒子60を配置した。
【0171】
また、実施例として、上記の塗布ユニットA、Bに、第2実施形態と同様に、処理液収容槽21内の塗布ローラ25、又は汲み上げローラ23の処理液22を汲み上げる側のみに球形粒子60を配置した。
【0172】
比較例として、上記の塗布ユニットA、Bに、図9、図10、図11に示すように、球形粒子60を配置していない構成と、図12、図13、図14に示すように、除去ブレード61が設けられ、除去ブレード61は図12の塗布ローラ25、又は図13の汲み上げローラ23に接するように10mm×320mm×2mm(厚み)のクロロプレーンゴム部材の除去ブレード61を配置した構成で行った。
【0173】
そして、表3に示す組合せにより検討を行った。
【0174】
球形粒子60として、ポリエチレン製の平均直径が0.1mm、1mm、3mm、10mm、30mmのものを使用した。
【0175】
【表3】
【0176】
<放置後の復帰性>
前処理液を処理液収容槽21に20ml入れ、塗布ローラ25の回転速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させ、1日室温で放置し後、処理液収容容器21内の前処理液を排出し処理液収容槽21内に新しい前処理液を20ml入れ、塗布ローラ25の搬送速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させたときの塗布ローラ25の状態を観察した。
【0177】
〔評価基準〕
表3中、○:均一に処理液が塗れ広がっている、△:処理液の濡れ方が不均一、×:析出物が残っている、ことを表している。
【0178】
なお、前処理液は、調整例4、5の両方で評価し、評価結果が異なっている場合には悪い方を判定基準とした。
【0179】
<色ムラ>
放置後の復帰性の評価と同様に、前処理液を処理液収容槽21に20ml入れ、塗布ローラの回転速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させ、1日室温で放置し後、処理液収容槽21内の前処理液を排出し処理液収容槽21内に新しい前処理液を20ml入れ、塗布ローラの搬送速度が200mm/secとなるようにモータを1分間駆動させた後、被記録媒体(PPC用紙 MyPaper、株式会社リコー製)上に、表の条件で前処理液を0.15g/m2の塗布量で塗布し、前処理後、温度23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境下、インクジェットプリンタ(IPSiO GX5000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、被記録媒体に同じ付着量のインクが付くように設定を行なった。
【0180】
画像形成用のチャートは、Microsoft Word2000にて作成した「幅198mm×高さ65mmの□」部の記載のあるチャートを被記録媒体に打ち出し、印字面の「□」部のX−Rite938にて20点測色し、下記式により算出し、下記判断基準にしたがって判定した。印字モードはプリンタ添付のドライバで「普通紙−標準はやい」モードカラーマッチングoffで印字した。
【0181】
判断値:((最大値)−(最小値))/(平均値)
【0182】
〔「□」部の色指定〕
Black:(R)192、(G)192、(B)192
【0183】
〔評価基準〕
表3中、◎:0.10以下、○:0.10以上0.15未満、×:0.15以上を表している。
【0184】
インク、前処理液は、調整例2〜4の組合せを全て評価し、評価結果が異なっている場合には最も悪い結果を判定基準とした。
【0185】
結果を表4に示している。
【0186】
【表4】
【0187】
なお、上記実施形態では処理液塗布装置が画像形成前の被記録媒体に対して処理液を塗布する構成で説明しているが、記録ヘッド(画像形成手段)の下流側で画像形成が行われた用紙上に処理液を塗布する構成とすることもできる。
【0188】
また、本発明に係る画像形成装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、紙等の媒体上のトナー等の樹脂を含有する微粒子を乱すことなく、かつ当該樹脂微粒子を付着した媒体に定着液を塗布後は素早く樹脂微粒子の媒体への定着が行われ、更に媒体に残油感が発生しない程度の微量塗布が可能な樹脂微粒子の定着液を用いた、定着方法及び定着装置、並びに画像形成方法及び画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0189】
10 被記録媒体供給ユニット
20 前処理液塗布ユニット(処理液塗布装置)
30 画像記録ユニット
21 処理液収容槽(処理液収容容器)
22 処理液
23 汲み上げローラ
24 塗布ローラ
26 カウンタローラ
60 球形粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布媒体に塗布する処理液が収容された処理液収容容器と、
前記処理液収容容器内の前記処理液に一部が浸漬され、回転することで前記処理液を表面に担持するローラ状部材と、を備え、
前記処理液収容容器内には、前記ローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている
ことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記球状粒子は前記処理液収容容器内の前記処理液の気液界面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記球状粒子は前記ローラ状部材の汲み上げ側に配置されていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項4】
前記球状粒子の平均粒子直径dが1mm以上30mm未満であり、前記ローラ状部材と接する前記球状粒子の数密度ρが、50<ρ×d2、の関係にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
前記球状粒子の単位体積当りの重さが、0.1〜1.2g/cm3の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
前記球状粒子の材質が、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)のいずれかであるあることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
前記球状粒子の単位体積当りの重量が、前記処理液の単位体積当りの重量よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項8】
前記処理液中に処理液水溶性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、および水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液塗布装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
被塗布媒体に塗布する処理液が収容された処理液収容容器と、
前記処理液収容容器内の前記処理液に一部が浸漬され、回転することで前記処理液を表面に担持するローラ状部材と、を備え、
前記処理液収容容器内には、前記ローラ状部材の表面に接触する球状粒子が収容されている
ことを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
前記球状粒子は前記処理液収容容器内の前記処理液の気液界面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の処理液塗布装置。
【請求項3】
前記球状粒子は前記ローラ状部材の汲み上げ側に配置されていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項4】
前記球状粒子の平均粒子直径dが1mm以上30mm未満であり、前記ローラ状部材と接する前記球状粒子の数密度ρが、50<ρ×d2、の関係にあることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項5】
前記球状粒子の単位体積当りの重さが、0.1〜1.2g/cm3の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項6】
前記球状粒子の材質が、ナイロン(NA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリアセタール(POM)、アクリル、フェノール、ピーク(PEEK)、ポリカーボネート(PC)のいずれかであるあることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項7】
前記球状粒子の単位体積当りの重量が、前記処理液の単位体積当りの重量よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項8】
前記処理液中に処理液水溶性凝集剤、水溶性有機溶剤、界面活性剤、および水を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の処理液塗布装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液塗布装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−183336(P2011−183336A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52997(P2010−52997)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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