説明

処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体

【課題】予め遅延時間を演算して処理装置に設定することなく、返信された情報を適切にリタイミング処理して、応答結果の処理を開始することが可能な処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】処理装置1は、第1の通信フレームを通信相手に出力するとともに、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを通信相手から受信する通信手段2と、第2の通信フレームから所定の信号が検出された時にパルスを生成し、該パルスを緩衝手段4に書き込むパルス生成手段3と、第1の通信フレームを生成し、第2の通信フレームを受信するとともに、緩衝手段4からパルスを読み出す処理手段5と、を備える。ここで、処理手段5は、所定の期間内に緩衝手段4からパルスが読み出された場合、該パルスの位置を応答結果の処理開始位置と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が高速にて移動する場合の通信(VICS通信:Vehicle Information Communication System)システムや、通行料金の収受を取り扱うETCシステム(Electronic Toll Collection System)等で用いられる処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体に関し、特に、前記通信において発生する遅延時間を考慮して処理を開始する処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を利用して自動車に搭載されている車載器と料金所の路側無線装置とが必要なメッセージを交換し、有料道路の料金の収受を行うETCシステムが普及しつつある。ETCシステムについては、例えば、特許文献1にその技術が開示されている。また、ETCシステムに関する標準としては、例えば、狭帯域通信(DSRC:Dedicated Short-Range Communication)システム ARIB STD-T75(非特許文献1)がある。
【0003】
図9にETCシステムの概略構成図を示す。図9において、ETCシステムは、自動車に搭載されている車載器(移動局)810、820…と、路側に設置され、車載器が通信圏内に入ったことを検知してメッセージを送受する路側無線装置(基地局)910とを備える。車載器810、820と路側無線装置910とが各種メッセージを送受信することにより、路側無線装置910は各車載器810、820から有料道路の料金の収集等を行う。
【0004】
路側無線装置910は、アンテナ部920、光ファイバ部930および制御部940を備える。アンテナ部920は、車載器810、820と無線通信を行う。光ファイバ部930は、アンテナ部920−制御部940間で各種メッセージを伝送する。光ファイバ部930は、アップリンクチャネルとダウンリンクチャネルとで、互いに異なる周波数を用いて通信フレームにスロットを多重することにより、各種メッセージを伝送する(全二重通信)。制御部940は、各種制御を行う。例えば、制御部940は、車載器へ送信する通信フレームを生成し、ダウンリンクチャネルを介して複数の車載器810、820…に送信する。さらに、制御部940は、アップリンクチャネルを介して車載器810、820…から受信した通信フレームから、各種メッセージを抽出して処理する。
【0005】
次に、路側無線装置910と車載器810、820との間で送受信される通信フレームについて簡単に説明する。図10に、通信フレームの一例を示す。図10の通信フレームは、同期式アダプティブスロッテドアロハ方式の通信制御を基本としている。同期式アダプティブスロッテドアロハ方式の通信制御とは、ポイントツーポイントの短時間内で、全二重通信の双方向通信に適用される通信制御方式である。通信フレームは、時間長が等しい複数のスロットを含む。各スロットはダウンリンクとアップリンクとの双方向で使用される。ダウンリンクでは路側無線装置910が、アップリンクでは車載器810、820が、スロットにメッセージを含める。なお、図10に示した通信フレームの各スロットの機能については、概要を図11にまとめる。
【0006】
図10において、通信フレームの先頭には、スロットの割付情報やフレーム制御情報等を含んだFCMS(Frame Control Message Slot:フレームコントロールメッセージスロット)が配置される。車載器810、820は、FCMSにより指定されたMDS(Message Data Slot:メッセージデータスロット)を受信した場合、同一スロットを用いてアックチャネル(以下、ACKCと記載する。)を返信する。さらに、車載器810、820は、FCMSを用いて路側無線装置910から指定されたスロットを用いて各種メッセージを路側無線装置910へ送信する。
【0007】
例えば、車載器810は、FCMSの次の第2スロット(MDS(1))によりMDC(Message Data Channels:メッセージデータチャネル)(1)を受信し(I)、ACKCを、同一スロット(第2スロット)を用いて返信する(II)。さらに、車載器810は、アップリンクチャネルの第4スロット(MDS(3))を用いて、MDC(3)を路側無線装置910へ送信する(V)。路側無線装置910は、第4スロットを用いてMDC(3)を受信した場合、正常に受信したことを示すACKCを、同一スロット(第4スロット)を用いて返信する(VI)。
【0008】
同様に、車載器820はMDC(2)を受信して(III)、ACKCを返信する(IV)。さらに、車載器820はアップリンクチャネルの第5スロットを用いてMDC(4)を路側無線装置910へ送信し(VII)、路側無線装置910からACKCが返信される(VIII)。
【0009】
なお、車載器810、820は、MDCを正常に受信できた場合はACKCにアック(Ack)信号を含めて返信する。一方、MDCが正常に受信できなかった場合はACKCにナック(Nack)信号を含めて返信する。なお、MDSが受信されない場合には、ACKCそのものが返信されない。
【0010】
一方、路側無線装置910の制御部940は、車載器へMDCを出力した後、車載器からMDCに対するACKCを受信して処理する。制御部940は、ACKCを処理した結果、Nack信号が含まれている場合には、再度MDCを出力する。
【0011】
ここで、MDCを出力した後、ACKCが返信されるまで、所定の遅延時間が発生する。該遅延時間は主に、通信フレームの処理に要する時間と光ファイバ部930の伝送にかかる時間である。通信フレームの処理に要する時間は、使用する装置や車載器の設計値等から算出することができる。一方、光ファイバ部930による伝送時間は、光ファイバ部930の条長に依存する。光ファイバ部930の伝送に起因する遅延時間については、例えば、特許文献2に開示されている。そして、路側無線装置910には予め、装置や車載器の設計値および光ファイバ部930の条長等に基づいて算出した遅延時間が登録される。路側無線装置910は、MDCを出力した後、設定された遅延時間が経過した時、ACKCの処理を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-298746
【特許文献2】特開2002-359629
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】狭帯域通信(DSRC)システム ARIB STD-T75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図12に、路側無線装置910のブロック図の一例を示す。路側無線装置910の遅延カウンタ941には、装置や車載器の設計値および光ファイバ部930の条長等に基づいて算出した遅延時間が予め登録されている。遅延カウンタ941は、信号処理回路943が通信フレームを生成して出力した後、予め設定された遅延時間をカウントしてリタイミング回路942に出力する。リタイミング回路942は、遅延カウンタ941がカウントした遅延時間に基づいて、車載器から受信した通信フレームのリタイミング位置を決定して信号処理回路943へ出力する。信号処理回路943は、リタイミング回路942が決定したリタイミング位置を車載器から受信したACKCの先頭と認識して、ACKCの処理を開始する。
【0015】
上述の路側無線装置910は、遅延カウンタ941に、装置や車載器の設計値および光ファイバ部930の条長等に基づいて算出した遅延時間を予め設定しておく必要がある。この場合、光ファイバ部930の条長の測定に手間がかかるとともに、現地設定項目が多くなる。さらに、遅延カウンタ941に誤った遅延時間が設定された場合は、路側無線装置910と車載器810、820間において通信エラーとなり、正しく課金ができない等の問題が発生する。
【0016】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、予め遅延時間を算出して路側無線装置に設定することなく、返信された通信フレームを適切にリタイミング処理して、ACKCの処理を開始することが可能な処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明に係る処理装置は、第1の通信フレームを通信相手に出力するとともに、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを通信相手から受信する通信手段と、第2の通信フレームから所定の信号が検出された時にパルスを生成し、該パルスを緩衝手段に書き込むパルス生成手段と、第1の通信フレームを生成し、第2の通信フレームを受信するとともに、緩衝手段からパルスを読み出す処理手段と、を備える。ここで、処理手段は、所定の期間内に緩衝手段からパルスが読み出された場合、該パルスの位置を応答結果の処理開始位置と判定する。
【0018】
上記目的を達成するために本発明に係る処理開始方法は、パルスが書き込まれる緩衝手段を用いた処理開始方法であって、第1の通信フレームを生成して出力後、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信し、第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して緩衝手段に書き込み、所定の期間内に緩衝手段からパルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を応答結果の処理開始位置と認識する。
【0019】
上記目的を達成するために本発明に係る制御プログラムは、パルスが書き込まれる緩衝手段を備えた装置のコンピュータが実行可能な制御プログラムであって、第1の通信フレームを生成して出力後、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信する機能と、第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して緩衝手段に書き込む機能と、所定の期間内に緩衝手段からパルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を応答結果の処理開始位置と認識する機能と、を装置のコンピュータに実行させる。
【0020】
上記目的を達成するために本発明に係る記録媒体は、パルスが書き込まれる緩衝手段を備えた装置のコンピュータに、第1の通信フレームを生成して出力後、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信する手順と、第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して緩衝手段に書き込む手順と、所定の期間内に緩衝手段からパルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を応答結果の処理開始位置と認識する手順と、を実行させるための制御プログラムを記録した、装置のコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0021】
上記構成とすることにより、予め遅延時間を算出して処理装置に設定することなく、返信された第2の通信フレームを適切にリタイミング処理して、応答結果の処理を開始することが可能な処理装置、処理開始方法、制御プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る処理装置1のブロック図の一例である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る路側無線装置10のブロック図の一例である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る路側無線装置10が扱う通信フレームのフレーム構造の一例である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る通信フレーム(アップリンクチャネル)のフレーム構造の一例である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る路側無線装置20のブロック図の一例である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るパルス生成回路24の回路図の一例である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る路側無線装置20が扱う通信フレームの構造の一例である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る路側無線装置20が扱うスロットの構造の一例である。
【図9】関連技術のETCシステムの概略構成図である。
【図10】関連技術の路側無線装置910が扱う通信フレームの構造の一例である。
【図11】図10に示した通信フレームで用いるスロットの機能の一覧である。
【図12】関連技術の路側無線装置910のブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る処理装置のブロック図の一例を示す。図1において、処理装置1は、通信手段2、パルス生成手段3、緩衝手段4および処理手段5を備える。
【0024】
通信手段2は、第1の通信フレームを通信相手に出力するとともに、第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを該通信相手から受信する。
【0025】
パルス生成手段3は、通信手段2が受信した第2の通信フレームから所定の信号が検出された時にパルスを生成し、生成したパルスを緩衝手段4に書き込む。
【0026】
緩衝手段4には、パルス生成手段3が生成したパルスが書き込まれる。書き込まれたパルスは、処理手段5から読み出される。
【0027】
処理手段5は、第1の通信フレームを生成して通信手段2に出力する。また、通信相手から受信した応答結果を含んだ第2の通信フレームを通信手段2から受け取る。また、処理手段5は、緩衝手段4からパルスを読み出す。そして、処理手段5は、所定の期間内において緩衝手段4からパルスが読み出された場合、該パルスが読み出された位置(タイミング)に対応する位置(タイミング)を応答結果の処理開始位置と判定する。
【0028】
ここで、処理手段5は、第1の通信フレームの生成に関する時間を覚えておき、該第1の通信フレームの生成に関する時間を基準として、応答結果が返信されると期待される期間を、所定の期間とする。そして、処理手段5は、該所定の期間内にパルスが読み出された場合、該パルスの位置に対応する位置を応答結果の処理開始位置とする。
【0029】
以上の構成とすることにより、処理手段5は、通信相手との情報の送受信に要する時間(遅延時間)がわからなくても、通信相手から受信した第2の通信フレームを適切にリタイミング処理して、応答結果の処理を開始することができる。すなわち、本実施形態に係る処理装置1は、予め処理装置1に遅延時間を設定することなく、通信相手から送信された第2の通信フレームを適切にリタイミング処理して、応答結果の処理を開始することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態では、通信相手として、自動車(移動体)に搭載された車載器を、処理装置として路側に設置され、車載器と無線通信を行う路側無線装置を適用する。
【0031】
図2に、本実施形態に係る路側無線装置のブロック図の一例を示す。図2において、路側無線装置10は、アンテナ部11、光ファイバ部12および制御部13を備える。本実施形態において、制御部13は、パルス生成回路14、FIFO(First-In/First-out)メモリ15および信号処理回路16を備える。
【0032】
アンテナ部11は、図示しない自動車に搭載された車載器と無線通信を行う。本実施形態において、アンテナ部11は、制御部13が生成した通信フレームを車載器へ送信し、車載器から受信した通信フレームを、光ファイバ部12を介して制御部13へ出力する。
【0033】
光ファイバ部12は、ダウンリンクの通信フレームを制御部13からアンテナ部11へ光信号として伝送する。また、光ファイバ部12は、アップリンクの通信フレームをアンテナ部11から制御部13へ光信号として伝送する。
【0034】
制御部13は、路側無線装置10の各部および各回路を制御する。また、通信フレームを用いて車載器との間で各種メッセージの交換を行う。
【0035】
制御部13のパルス生成回路14は、制御部13のアップリンクチャネル側の光ファイバ部12の後段に配置される。パルス生成回路14は、光ファイバ部12を介して車載器から返信され通信フレームを書込クロックとともにFIFOメモリ15に書き込む。また、パルス生成回路14は、入力された通信フレームから所定の信号を検出した場合、パルスを生成し、生成したパルスを通信フレームと一緒にFIFOメモリ15に書き込む。パルスの生成については後述する。
【0036】
FIFOメモリ15には、車載器から受信した通信フレームおよびパルス生成回路14が生成したパルスが、書込クロックとともに書き込まれる。そして、FIFOメモリ15に書き込まれた通信フレームは、信号処理回路16から読出クロックを用いて読み出される。
【0037】
信号処理回路16は、通信フレームを生成し、光ファイバ部12およびアンテナ部11を介して車載器へ出力する。さらに、信号処理回路16は、読出クロックを用いて、通信フレームをFIFOメモリ15から読み出す。さらに、信号処理回路16は、所定の期間内にパルスが読み出された場合、該パルスが出力されたタイミングをACKCの先頭として認識し、ACKCの処理を開始する。
【0038】
ここで、ダウンリンクの通信フレームが請求項の第1の通信フレームに、アップリンクの通信フレームが請求項の第2の通信フレームに、ACKCが請求項の応答結果に相当する。さらに、アンテナ部11が通信手段に、光ファイバ部12が伝送手段に、FIFO15が緩衝手段に、信号処理回路16が処理手段に相当する。
【0039】
次に、路側無線装置10と車載器間で送受信される通信フレームについて説明する。図3にダウンリンクの通信フレームの一例を、図4にアップリンクの通信フレームの一例を示す。本実施形態では、1フレームを3つのスロットで構成する。
【0040】
図3において、ダウンリンクの通信フレームの第1スロットには、FCMCが含まれている。該FCMCには、通信フレーム内に含まれる後続スロットの種別および後続スロットの個数などのフレーム情報が含まれ、FCMCの先頭には、プリアンブル(PR)およびユニークワード1(UW1)が配置される。第1スロットに続く第2スロットおよび第3スロットには、路側無線装置10から各種メッセージを送信するために用いるMDC1、MDC2が含まれる。MDCの先頭には、プリアンブル(PR)およびユニークワード2(UW2)が配置される。
【0041】
車載器は、FCMCに含まれるフレーム情報に基づいて、路側無線装置10から割り当てられたスロットを使って路側無線装置10との間で各種メッセージの交換を行う。車載器は、割り当てられたスロットにおいてMDCを受信した場合、ACKCを返信する。図3にACKCを点線で示す。ACKCの先頭には、プリアンブル(PR)およびユニークワード2(UW2)が配置される。
【0042】
一方、図4において、アップリンクの通信フレームには、MDCの返信であるACKC、路側無線装置10への接続に用いられるACTC(Activation Channels:アクチベーションチャネル)が含まれている。図4に、MDC1、MDC2を点線で示す。ここで、ACKCおよびACTCの先頭には、プリアンブル(PR)およびユニークワード2(UW2)が配置される。
【0043】
本実施形態において、パルス生成回路14は、プリアンブル(PR)に続いてユニークワード2(UW2)を検出した場合、パルスを生成して通信フレームと一緒にFIFOメモリ15に書き込む。図4に、パルス生成回路14が生成したパルスを併せて示す。図4に例では、パルス生成回路14は、3つのパルス17a〜17cを生成して通信フレームと一緒にFIFOメモリ15に書き込む。なお、「PR+UW2」が、請求項の「所定の信号」の一つの態様である。
【0044】
一方、信号処理回路16は、読出クロックを用いて、通信フレームをFIFOメモリ15から読み出す。図4の例において、信号処理回路16は、FIFOメモリ15から3つのパルス17a〜17cを読み出す。ここで、信号処理回路16は、MDCを出力したタイミングを覚えていることから、MDCの後段のパルスのみを抽出することができる。信号処理回路16は、MDCの後段のパルスとして、パルス17a、17cを抽出し、該パルス17a、17cが読み出された時のタイミングをACKCの先頭として認識し、ACKCの処理を開始する。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る路側無線装置10は、無線装置から返信された通信フレームをいったんFIFOメモリ15に書き込み、信号処理回路16は通信フレームをFIFOメモリ15から読み出す。また、パルス生成回路14は、プリアンブル(PR)に続いてユニークワード2(UW2)が検出された場合、パルスを生成して通信フレームと一緒にFIFOメモリ15に書き込む。信号処理回路16は、MDCの後段のパルスを抽出し、ACKCの処理を開始する。
【0046】
MDCの出力からACKCが返信されるまでの遅延時間はFIFOメモリ15で吸収されることから、予め遅延時間を算出して路側無線装置10に登録しておく必要がない。従って、本実施形態に係る路側無線装置10は、遅延時間を算出して路側無線装置10に設定することなく、車載器から返信された通信フレームを適切にリタイミング処理して、ACKCの処理を開始することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、FIFOメモリ15にパルスと通信フレームとを書き込んだが、これに限定されない。例えば、FIFOメモリ15にはパルスのみ書き込んで、通信フレームはFIFOメモリ15に書き込むことなく、直接、信号処理回路16に入力することもできる。この場合、信号処理回路16は、MDCの後段のパルスが読み出された時、入力された通信フレームにおいてACKCの処理を開始する。
【0048】
また、本実施形態では、パルス生成回路14は、プリアンブル(PR)に続いてユニークワード2(UW2)が検出された場合にパルスを生成したが、プリアンブル(PR)に続いてユニークワード2および3(UW2、UW3)が検出された場合にパルスを生成するように形成しても良い。なお、ユニークワード3を検出して生成したパルスを抽出する場合、信号処理回路16は、例えば、図11で示したWCNC(Wireless Call Number Channels:ワイヤレスコールナンバーチャネル)の受信可能期間を所定の時間として設定する。
【0049】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態では、処理装置としてETCシステムにおいて路側に設置される路側無線装置を、無線装置として自動車(移動体)に搭載された車載器を適用する。
【0050】
図5に、本実施形態に係る路側無線装置のブロック図の一例を示す。図5において、路側無線装置20は、アンテナ部21、光ファイバ部22a、22b、制御部23を備える。また、制御部23は、パルス生成回路24、FIFOメモリ25、信号処理回路26、パラレル/シリアル変換回路28a、28b、E/O変換回路29a、29bを備える。
【0051】
アンテナ部21は、制御部23が生成した通信フレームを車載器へ送信し、車載器から受信した通信フレームを、光ファイバ部22bを介して制御部23へ出力する。
【0052】
光ファイバ部22a、22bは、アンテナ部21と制御部23との間で通信フレームを光信号として伝送する。
【0053】
制御部23は、路側無線装置20の各部および各回路を制御する。また、通信フレームを用いて車載器との間で各種メッセージの交換を行う。
【0054】
制御部23について、詳細に説明する。信号処理回路26は、通信フレーム内の複数のスロットをどの車載器に割りつけるか決定し、通信フレームとして、8bitの信号データと制御データを生成する。生成した信号データと制御データはパラレル/シリアル変換回路28aへ出力される。
【0055】
パラレル/シリアル変換回路28aは、受け取った信号データと制御データをパラレル展開し、さらに、1bitにシリアル化してE/O変換回路29aへ出力する。E/O変換回路29aは、パラレル/シリアル変換回路28aから受信した1bitの電気信号を光信号に変換し、光ファイバ部22aへ出力する。
【0056】
一方、光ファイバ部22bを介して車載器から受信した通信フレームは、E/O変換回路29bに入力される。E/O変換回路29bは、車載器から受信した光信号を1bitの電気信号に変換してパラレル/シリアル変換回路28bへ出力する。パラレル/シリアル変換回路28bは、E/O変換回路29bから受信した1bitの電気信号を8bitの信号データと制御データとに分離し、パルス生成回路24へ出力する。
【0057】
パルス生成回路24は、パラレル化された信号データと制御データとを、書込クロックを用いてFIFOメモリ25に書き込む。さらに、パルス生成回路24は、パラレル化された信号データと制御データとが所定の配列である場合、パルスを生成してFIFOメモリ25に書き込む。
【0058】
本実施形態において、パルス生成回路24は、下記の配列を検出した時にパルスを生成する。
PR(16Bit)「1010101010101010」
UW2(16Bit)「0100101100111110」
【0059】
なお、本実施形態では、パラレル化した信号データから所定の配列を検出したが、シリアル化されたままの通信フレームから検出することもできる。シリアル化されたままの通信フレームを用いる場合、パルス生成回路24は、下記の配列を検出した時パルスを生成する。
PR+UW2(32Bit)「10101010101010100100101100111110」
【0060】
制御部23の説明に戻る。FIFOメモリ25には、信号データ、制御データおよびパルスが書き込まれる。本実施形態において、FIFOメモリ25には信号データと制御データとは区別されること無く書き込まれる。さらに、FIFOメモリ25に書き込まれた信号データ、制御データおよびパルスは、信号処理回路26から読出クロックを用いて読み出される。
【0061】
前述の信号処理回路26は、通信フレームを生成するのと並行して、読出クロックを用いてFIFOメモリ25から信号データ、制御データおよびパルスを読み出す。ここで、読出クロックは、パルス生成回路24が用いる書込クロックとは独立に生成され、書込クロックとは位相のみが異なる。信号処理回路26は、MDCの生成時間が分っていることから、FIFOメモリ25から読み出したパルスのうち、MDCの後段のタイミングで読み出されたパルスのみを抽出することができる。信号処理回路26は、MDCの後段のタイミングでパルスがFIFOメモリ25から読み出された時、該読み出したパルスをACKCの起点として、ACKCに対する処理を開始する。
【0062】
ここで、本実施形態では、FIFOメモリ25に通信フレーム(信号データおよび制御データ)全体を書き込んだが、これに限定されない。信号データがある場合のみ書き込みクロックを出力することにより、FIFOメモリ25に必要な信号データ(例えばACKC)のみ書き込むこともできる。FIFOメモリ25に必要な信号データのみを書き込む場合の、パルス生成回路24の回路図の一例を図6に示す。図6において、パルス生成回路24は、PRとUWの連続した固定BIT列を、信号データとの排他的論理和を取ることにより検出する。そして、BIT列が一致したところでパルスを生成し、信号データと一緒にFIFOメモリ25に書き込む。
【0063】
また、必ずしもFIFOメモリ25にACKCの全体を書き込む必要はない。例えば、FIFOメモリ25にACKCの最初の数バイトのデータのみを書き込むこともできる。この場合、FIFOメモリ25に書き込まれたACKCの最初の数バイトがパルスと一緒に先読み出しされることにより、ACKCのデータ部はFIFOメモリ25に書き込まれることなしに、信号処理回路26へ直接入力されて処理される。
【0064】
次に、MDCが出力された後、ACKCを受信するまでの遅延時間について説明する。図7に、路側無線装置20と車載器との間で送受信される通信フレームの構成の一例を示す。図7の通信フレームは、3スロット構成、フレーム長2.34375msecである。該通信フレームは全二重通信の双方向通信に適用され、1スロットは100byte(0.78125msec)、伝送スピードは1,024kbpsである。
【0065】
図7において、第1スロットにはFCMCが含まれる。車載器は、該FCMCに含まれるフレーム情報に基づいて、路側無線装置20から割り当てられたMDSを使って無線通信を行う。
【0066】
第1スロットに続く第2スロットおよび第3スロットには、路側無線装置20から出力されたMDC1、MDC2と、車載器がその応答として出力するACKCとが含まれる。
【0067】
ここで、図7において、各チャネル間には各回路の処理時間および光伝送に要する伝送時間を考慮した所定のガードタイマが設定されている。例えば、第1スロットの開始からFCMCの出力までの間にはガードタイマt0として218.75μsecが、FCMCとMDCとの間にはガードタイマt2として93.75μsecが、MDCとACKCとの間にはガードタイマt3として85.94μsecが、ACKCと次のスロットとの間にはガードタイマt4として70.31μsecが設定されている。
【0068】
既に述べたように、路側無線装置20から出力されたMDCに対する車載器からのACKCは、スロットをまたがって返信することはできない。すなわち、車載器から返信されるACKCは、MDCの出力後、次のスロットの開始前までに返信されなければならない。すなわち、車載器から返信されるACKCは、ガードタイマt4が経過する前に信号処理回路26で処理される必要がある。
【0069】
ACKCの受信までに要する時間について、図6および図7を用いて説明する。上述のように、信号処理回路26で生成されたMDCは、パラレル/シリアル変換回路28a、E/O変換回路29aで所定の処理が施された後、光ファイバ部22aおよびアンテナ部21を介して車載器に出力される。
【0070】
ここで、MDCが信号処理回路26で生成された後、車載器で受信されるまでにかかる時間の合計を遅延時間(1)と記す(図8の(1))。遅延時間(1)は、MDCの各種処理に要する時間と光ファイバ部22aでの伝送時間の合計である。MDCの各種処理に要する時間は、路側無線装置20の設計値等から算出した固定値を用いることができる。本実施形態において、MDCの各種処理に要する時間を2μsecとする。一方、光ファイバ部22aでの伝送時間は光ファイバ部22aの条長に比例する。例えば、光ファイバ部22aの条長が2000m場合、MDCが光ファイバ部22aを1m進むのに約5nsecかかることから、伝送時間=2000m×5nsec=10000nsec(10μsec)となる。従って、遅延時間(1)=10μsec+2μsec=12μsecとなる。
【0071】
次に、路側無線装置20からMDSを受信した車載器は、同一スロットを用いてACKCを返信する。車載器は、MDCを正常に受信できた場合はAck信号を、正常に受信できなかった場合はNack信号を、ACKCに含めて返信する。車載器がMDCを受信してACKCを生成し、アンテナ部21へ返信するまでの時間を遅延時間(2)と記す(図8の(2))。遅延時間(2)は、MDCを受信して処理する時間やACKC生成に要する時間等の合計時間であり、車載器の性能、車載器とアンテナ部21との通信状態および車載器の設置状態等に依存する。本実施形態では、遅延時間(2)=100μsecとする。
【0072】
さらに、車載器から受信したACKCは、アンテナ部21および光ファイバ部22bを介してE/O変換回路29bに入力される。そして、E/O変換回路29bおよびパラレル/シリアル変換回路28bで所定の処理が施された後、パルス生成回路24を介してFIFOメモリ25に書き込まれる。ACKCが車載器から出力された後、FIFOメモリ25に書き込まれるまでにかかる時間の合計を遅延時間(3)と記す(図8の(3))。遅延時間(3)は遅延時間(1)とほぼ同じであり、本実施形態において、遅延時間(3)=12μsecである。
【0073】
ここで、遅延時間(1)(2)(3)の合計124μsec(=12μsec+100μsec+12μsec)は、t3(11byte)とt4(9byte)との合計時間より小さい必要がある。伝送スピードが1,024kbpsであることから、t3+t4=11byte+9byte=(20×8)bit/(1.024kbps)=156.25μsecであり、上述の遅延時間(1)(2)(3)=124μsecは該条件を満足する。
【0074】
本実施形態において、上述の遅延時間(1)(2)(3)は、車載器から受信した通信フレームをいったんFIFOメモリ25に書き込み、改めて信号処理回路26がFIFOメモリ25から読み出すことにより、FIFOメモリ25で吸収される。
【0075】
以上のように、本実施形態に係る路側無線装置20において、パルス生成回路24は、PRとUW2とを検出した時にパルスを生成し、通信フレームと一緒にFIFOメモリ25に書き込む。そして、信号処理回路26は、MDCを生成した後、ガードタイマt3が経過する付近のタイミング(請求項の所定の期間に相当)でFIFOメモリ25からパルスが読み出された時、該パルスをACKCの開始と認識して、ACKCに関する処理を開始する。つまり、信号処理に要する時間と光ファイバ部22a、22bの伝送時間との合計時間(遅延時間(1)(2)(3))は、FIFOメモリ25で吸収される。
【0076】
従って、本実施形態に係る路側無線装置20は、装置や車載器の設計値および光ファイバ部の条長等に基づいて算出した遅延時間(1)(2)(3)を、予め路側無線装置20に設定することなく、返信された通信フレームを適切にリタイミング処理して、ACKCの処理を開始することが可能である。
【0077】
ここで、本実施形態に係る路側無線装置20を用いることにより、次の利点が得られる。(1)光ファイバ部の条長測定の手間が省け、工程が簡略化される。
(2)光ファイバ部の敷設工事や遅延時間の登録等の現地調整項目が簡略化される。
(3)ETCレーンの移設時において光ファイバ部の条長の再測定および再登録の手間が省け、作業内容簡略化や作業工程が短くなり調整等が簡略化される。
(4)信号処理に要する時間および光ファイバ部の伝送時間の誤登録による路側無線装置と車載器間における通信エラーが無くなり、誤課金やシステムの誤動作を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0078】
1 処理装置
2 通信手段
3 パルス生成手段
4 緩衝手段
5 処理手段
10、20 路側無線装置
11、21 アンテナ部
12、22 光ファイバ部
13、23 制御部
14、24 パルス生成回路
15、25 FIFOメモリ
16、26 信号処理回路
17a、17b、17c パルス
28a、28b パラレル/シリアル変換回路
29a、29b E/O変換回路
810、820 車載器
910 路側無線装置
920 アンテナ部
930 光ファイバ部
940 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信フレームを通信相手に出力するとともに、前記第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを前記通信相手から受信する通信手段と、
前記第2の通信フレームから所定の信号が検出された時にパルスを生成し、該パルスを緩衝手段に書き込むパルス生成手段と、
前記第1の通信フレームを生成し、前記第2の通信フレームを受信するとともに、前記緩衝手段から前記パルスを読み出す処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、所定の期間内に前記緩衝手段から前記パルスが読み出された場合、該パルスの位置を前記応答結果の処理開始位置と判定することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記第1の通信フレームはダウンリンクの通信フレームであり、前記第2の通信フレームはアップリンクの通信フレームであり、前記所定の信号はプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)である、請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記所定の期間は、前記第1の通信フレームの生成に関する時間を基準とする期間である、請求項1または2記載の処理装置。
【請求項4】
前記第1の通信フレームにはメッセージデータチャネル(MDC)が含まれ、前記応答結果は前記MDCについてのアックチャネル(ACKC)であり、前記所定の期間は、前記処理手段が前記MDCを生成した時間を基準とする期間である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の処理装置。
【請求項5】
前記パルス生成手段は前記パルスを所定の書込クロックを用いて前記緩衝手段に書き込み、前記処理手段は、前記書込クロックと位相のみが異なる読出クロックを用いて前記パルスを前記緩衝手段から読み出す、請求項1乃至4のいずれか1項記載の処理装置。
【請求項6】
前記通信手段と前記処理手段との間を、前記第1の通信フレームおよび前記第2の通信フレームを伝送する伝送手段を備える、請求項1乃至5のいずれか1項記載の処理装置。
【請求項7】
前記処理装置は、ETCシステムにおいて路側に配置される路側無線装置である、請求項1乃至6のいずれか1項記載の処理装置。
【請求項8】
パルスが書き込まれる緩衝手段を用いた処理開始方法であって、
第1の通信フレームを生成して出力後、前記第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信し、
前記第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して前記緩衝手段に書き込み、
所定の期間内に前記緩衝手段から前記パルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を前記応答結果の処理開始位置と認識する、処理開始方法。
【請求項9】
パルスが書き込まれる緩衝手段を備えた装置のコンピュータが実行可能な制御プログラムであって、
第1の通信フレームを生成して出力後、前記第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信する機能と、
前記第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して前記緩衝手段に書き込む機能と、
所定の期間内に前記緩衝手段から前記パルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を前記応答結果の処理開始位置と認識する機能と、
を前記装置のコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項10】
パルスが書き込まれる緩衝手段を備えた装置のコンピュータに、
第1の通信フレームを生成して出力後、前記第1の通信フレームについての応答結果を含んだ第2の通信フレームを受信する手順と、
前記第2の通信フレームから所定の信号を検出した時、パルスを生成して前記緩衝手段に書き込む手順と、
所定の期間内に前記緩衝手段から前記パルスが読み出された場合、該パルスの読出位置を前記応答結果の処理開始位置と認識する手順と、
を実行させるための制御プログラムを記録した、
前記装置のコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−9972(P2012−9972A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142262(P2010−142262)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】