説明

処理設備

【課題】被処理物に対して処理を行って処理物を得る複数の工程室と、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送してこれら工程室に対して被搬送物の受け渡しを行う搬送領域とが設けられた処理設備において、内部の領域の配置レイアウトの自由度が大きい処理設備を提供すること。
【解決手段】複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、処理フロア1と物流フロア2との間の床面11に受け渡し口22を形成し、物流フロア2を走行する搬送車5により受け渡し口22を介して処理フロア1と物流フロア2との間において搬送容器Cの受け渡しを行う。また、処理フロア1において受け渡し口22の側方に形成された開閉扉22bに近接するようにスライド機構55を配置して、搬送車5との間において、開閉扉22bを介して搬送容器Cの受け渡しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に対して処理を行う工程室が複数設けられた処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品などの固形製剤を製造する工場などの処理設備には、図42に示すように、例えば作業者が処理装置を用いて処理を行うための工程室102が複数箇所に設けられており、各々の工程室102において、被処理物である粉体原料やこの粉体原料から得られた中間生成物などの処理物に対して、秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、検査あるいは包装などの処理が行われる。これらの被処理物、中間生成物及び処理物は、コンテナなどの搬送容器内に収納された状態で例えばスタッカークレーン100と呼ばれる搬送機構により各工程室102間において受け渡される。そのため各工程室102は、スタッカークレーン100が配置された搬送室101の両側に沿って並べられる。図42中、105は搬送口、104は未内装(未使用)のエリア(部屋)であり、この未内装エリア104は、工場を建設した後の増産時などにおいて、内装工事、搬送口105の形成及び処理装置の搬入などの改造工事が行われて工程室102として使用される。また、図42において103は作業者が工程室102に出入りするための作業者用通路、107は処理装置の部材や配電盤を設置するための機械室であり、これら作業者用通路103及び機械室107は搬送室101に干渉しないように配置される。
【0003】
しかしながら、このようにスタッカークレーン100を用いる場合には、既述のように搬送室101と工程室102との間の位置関係が決まっているので、工場内の各領域の配置レイアウトの自由度が小さい。そのため、この工場では、新規設備(処理装置)の導入や工場建設後の増産などに柔軟に対応できなかったり、あるいは工場の建設コストが高くなったりする配置レイアウトを取らざるを得ない。即ち、例えば工程室102内に新しい処理装置を機械室107から搬入する場合には、これら機械室107と工程室102との間における作業者用通路103の壁面を取り壊すことになる。この時、作業者用通路103の内部雰囲気が汚染されないように、工事する領域106を作業者用通路103から区画しようとすると、作業者用通路103が領域106により途中で遮られて作業者が行き来できなくなる。その場合には、工場の一部または工場全体の操業を停止する必要があるので、この工場では新規設備を導入しにくい(工程室102と機械室107とが隣接していない)配置レイアウトを採っていると言える。また、未内装エリア104に搬送口105を形成する時において、搬送室101内の雰囲気が汚染されないように当該搬送口105の周囲における搬送室101を区画する場合には、スタッカークレーン100の移動が妨げられてしまう。従って、未内装エリア104に予め搬送口105を形成しておく必要があるので、当該未内装エリア104には、この搬送口105の位置に対応できる処理装置しか導入できない。そのため、増設できる工程室102の種類が限られてしまい、工場建設後の増産に柔軟に対応できない。
【0004】
また、作業者用通路103を通行する作業者の例えば衣服などを介したコンタミを防止するために、工程室102に入室する作業者の通路と工程室102から退室する作業者の通路とを別々に設ける場合には、これら2つの通路は作業者の作業性の面から工程室102と同じフロアに各々設けられることが好ましい。しかし、各々の工程室102が側方側から別の工程室102、搬送室101及び作業者用通路(入室用通路)103により囲まれているので、これら通路の一方(退室用通路)は、例えば搬送室101と工程室102との間において、当該搬送室101に沿って設けられることになる。そのため、搬送容器は、退室用通路の例えば上方位置を介して、当該上方位置に設けられたベルトコンベアなどの水平搬送機構を利用して、搬送室101から工程室102内に搬入されることになる。この場合には、各工程室102には、搬送容器の搬入される高さ位置と、作業者が処理を行う高さ位置(例えば工程室102の床面の高さレベル)との間において、搬送容器を昇降させるリフタなどの昇降装置が必要になるので、コストアップに繋がってしまう。
また、搬送室101が工場を2分するように配置されるので、例えば各工程室102内の大気の給排気を行うためのダクトや、各工程室102内を見学するための見学者通路を設ける場合には、配置できるスペースが限られてしまう。
【0005】
特許文献1には、粉体を機器40に投入する粉粒体投入システムについて記載されているが、既述の課題については何ら検討されていない。また、特許文献2には、スタッカークレーン1やフォークリフトについて記載されているが、フォークリフトの移動路(搬送軌道12の上方領域)が2階の床面を貫通するように1階及び2階に亘って形成されると共に複数のヤード3〜9を環状に囲むように形成されているので、既述の課題を解決できるものではない。また、このようなフォークリフトを用いて物(搬送容器)の動線と人(作業者)の動線とを分離しようとすると、既述のスタッカークレーン100を用いた工場と同様のレイアウトとなってしまう。更に、特許文献3には基板処理装置について記載されているが、既述の課題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−30914
【特許文献2】特開平4−25572(743頁下段左欄14行目〜同18行目、同頁下段右欄15行目〜同16行目)
【特許文献3】特開平9−275127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、被処理物に対して処理を行って処理物を得る複数の工程室と、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送してこれら工程室に対して被搬送物の受け渡しを行う搬送領域とが設けられた処理設備において、内部の領域の配置レイアウトの自由度が大きい処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の処理設備は、
被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための第2の階と、
複数の工程室のうち少なくとも一つの工程室の床面に形成され、当該工程室と前記第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して前記少なくとも一つの工程室と前記第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、前記第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、
前記受け渡し口の周囲において前記第1の階の床面から上方に向かって伸びるように設けられ、当該受け渡し口の上方領域と前記少なくとも一つの工程室の内部の処理雰囲気とを区画するための区画壁と、
被搬送物の受け渡しを行うために前記区画壁に形成された搬送口及びこの搬送口を開閉するための扉と、
この扉が開いている時に、被搬送物が前記扉の閉鎖時における占有領域に位置する状態で前記受け渡し機構との間で被搬送物の受け渡しを行い、前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置と前記扉よりも処理雰囲気側の位置との間で被搬送物を搬送できるように構成された搬送部と、を備えたことを特徴とする。
前記搬送部は、前記扉よりも処理雰囲気側に設けられた支持部と、被搬送物を下方側から保持すると共に、前記受け渡しを行う位置と前記扉よりも処理雰囲気側の位置との間で当該支持部により水平方向に進退自在に支持された保持部と、を備えたスライド機構であっても良い。
また前記搬送部は、前記扉よりも処理雰囲気側に設けられ、被搬送物を下方側から支持すると共に、前記処理雰囲気側の位置と前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置との間で被搬送物を水平方向に搬送する水平搬送機構と、
前記扉と前記受け渡し口との間に設けられ、前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置における被搬送物を、下方側から前記水平搬送機構と前記受け渡し機構との間で進退自在に支持する補助搬送部と、を含み、
被搬送物は、前記受け渡し機構と前記水平搬送機構との間において、当該被搬送物における前記受け渡し口側の領域を前記補助搬送部により下方側から支持された状態で受け渡されると共に、この補助搬送部により下方側から支持されながら処理雰囲気側の位置に対して搬入出されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、複数の工程室が配置された第1の階の階下に、被処理物または処理物からなる被搬送物の搬送を行う第2の階を設けると共に、第1の階と第2の階との間の床面に受け渡し口を形成し、第2の階を走行する搬送車によりこの受け渡し口を介して第2の階と工程室との間で被搬送物の受け渡しを行っている。そして、受け渡し口の周囲に設けられた区画壁の扉を介してこれら搬送車と工程室との間で被搬送物の受け渡しを行うにあたり、扉の閉鎖時における占有領域にて搬送車との間で被搬送物の受け渡しを行う搬送部を設けて、この搬送部により工程室内の処理雰囲気側に被処理物を搬入している。そのため、工程室が配置された第1の階と被搬送物の搬送を行う第2の階とを上下に区画できるので、第1の階に配置される各領域の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の生産工場の要部を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の生産工場の一例を示す斜視図である。
【図3】前記工場を示す縦断面図である。
【図4】前記工場を示す縦断面図である。
【図5】前記工場を示す平面図である。
【図6】前記工場を示す平面図である。
【図7】前記工場において被処理物が収納される搬送容器の一例を示す斜視図である。
【図8】前記搬送容器が受け渡される受け渡し部材の一例を示す斜視図である。
【図9】前記工場で用いられるスタッカークレーンを示す斜視図である。
【図10】前記工場におけるスライド機構の一例を示す説明図である。
【図11】前記工場における工程室の一例を示す縦断面図である。
【図12】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図13】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図14】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図15】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図16】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図17】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図18】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図19】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図20】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図21】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図22】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図23】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図24】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図25】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図26】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図27】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図28】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図29】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図30】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図31】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図32】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図33】前記工場の他の例を示す斜視図である。
【図34】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図35】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図36】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図37】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図38】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図39】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図40】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図41】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図42】従来の工場の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の処理設備の一例として、被処理物である原料粉末から製品(処理物)である医薬品の固形製剤を製造する医薬品製造工場を例に挙げて、図1〜図11を参照して説明する。先ず、この工場の要部について図1を参照して概略的に説明すると、この工場には、原料粉末やこの原料粉末から得られる中間生成物などの処理物に対して、例えば保管、秤量、後述の搬送容器Cへの原料粉末の充填、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、コーティング、検査及び包装などの処理を行うための工程室21が平面的に複数配置された第1の階をなす処理フロア1が設けられており、この処理フロア1の階下には、被処理物または処理物が内部に収納された被搬送物である搬送容器Cを搬送して工程室21に対して受け渡すための第2の階である物流フロア2が配置されている。処理フロア1と物流フロア2との間の床面11には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が複数箇所に形成されている。処理フロア1には、この受け渡し口22に近接するように、これらフロア1、2間の雰囲気を区画するための区画壁22aが設けられており、この区画壁22aに形成された開閉扉22b及び受け渡し口22を介してフロア1、2間で搬送容器Cを受け渡すために、搬送部であるスライド機構(スライドステーション)55が工程室21内に設けられている。これら処理フロア1及び物流フロア2により階層構造体3が構成されている。尚、前記「検査」及び「包装」もこの明細書では「処理」という用語に含まれるものとする。
【0012】
続いて、工場の各部の詳細について説明する。物流フロア2には、図4に示すように、搬送容器Cを搬送して工程室21との間において受け渡しを行うために、例えばAGF(Auto Guided Forklift)などである搬送車5が複数台配置されており、各々の搬送車5は、水平方向に走行(移動)する走行車本体5aと、搬送容器Cを昇降自在に保持する受け渡し機構であるフォーク5bと、を備えている。このフォーク5bによって、例えば箱型の容器である搬送容器Cは、図7に示すように、高さ方向における概略中央位置において左右両側から支持される。また、フォーク5bは後述するように、搬送車5が水平移動する時には下方側の物流フロア2側に縮退し、工程室21との間において搬送容器Cを受け渡す時には、受け渡し口22を介して処理フロア1側に伸び出すように構成されている。
【0013】
物流フロア2の床面11には、図5に示すように、例えば磁気テープなどの搬送路6が付設されており、この搬送路6は、例えば受け渡し口22の各々の下方位置を楕円状に結ぶ本線(周回軌道)6aと、この本線6aから分岐する複数の分岐路6bと、を備えている。分岐路6bは、例えば搬送車5が故障した時やメンテナンスを受ける時に当該搬送車5を作業者が退避させる退避分岐路8aと、この退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を行う予備の搬送車5が待機する予備分岐路8bと、搬送車5が後述の受け渡し部材15に臨む位置を走行できるように配置された受け渡し用分岐路8cと、から構成されている。搬送車5の下面側には、搬送路6(搬送領域)に沿って水平方向に移動できるように、当該搬送路6を検知する図示しない検知部が設けられている。
【0014】
図5中9は、床面11における搬送車5の停止位置例えば受け渡し口22の下方位置に付設された磁気棒などのマーカーであり、搬送車5は下面に設けられた図示しないセンサーなどによりマーカー9の有無を検出し、後述の制御部10の指示によりこのマーカー9の上方において停止して、搬送容器Cの受け渡し動作を行うこととなる。この物流フロア2の床面11には、受け渡し口22の下方位置などにおいて搬送車5が180°反転できるように、例えば本線6aから分岐して円状に伸びる図示しない反転用搬送路が設けられていても良い。また、この搬送車5としては、例えば作業者がマニュアルで運転(操縦)するフォークリフトなどであっても良い。尚、物流フロア2内には、工場の補強のために、搬送車5の動作に干渉しない位置に床面11と天井面とを接続する複数の柱部が設けられているが、図示を省略している。
【0015】
また、この例においては、既述の図2〜図4に示すように、処理フロア1と物流フロア2とからなる階層構造体3が複数階層例えば2層積層されており、上下の階層の物流フロア2、2同士の間で搬送容器Cを搬送するために、バーチカルリフターやエレベータなどの昇降装置、この例ではスタッカークレーン12が工場に外部側から隣接して設けられている。このスタッカークレーン12は、工場の端部例えば後述の打錠室25に隣接する位置において、複数階層の物流フロア2に亘って設けられた昇降室13内に配置されている。この昇降室13と物流フロア2との間の壁面には、図3に示すように、これら昇降室13と物流フロア2との間において搬送容器Cの受け渡しを行うための搬入出口14、14が各々開口している。物流フロア2においてこの搬入出口14に臨む位置には、スタッカークレーン12と搬送車5との間において搬送容器Cを受け渡すための受け渡し部材15が設けられている。この受け渡し部材15は、図8に示すように、例えば搬送容器Cの搬送方向(後述の搬送台45の進退方向)に対して互いに離間して並ぶ2つの棒状部材15a、15aから構成されている。尚、図2においては、スタッカークレーン12や搬入出口14の描画を省略している。また、図4においては便宜的にこのスタッカークレーン12を描画している。
【0016】
昇降室13内の床面には、図5に示すように、工場の外壁に沿って水平に配置されたレール41が設けられている。スタッカークレーン12は、図9に示すように、互いに間隔を開けて鉛直方向に伸びる2本の柱部42、42及びこの柱部42、42を上下から支持する基部43、43を備えている。この図9中44及び46は夫々リフト及び車輪であり、スタッカークレーン12がレール41上を走行すると共に、柱部42、42に沿って搬送容器Cを昇降できるように構成されている。このリフト44上には、搬送容器Cを載置するための搬送台45が設置されており、この搬送台45は、前記棒状部材15a、15aの離間寸法よりも狭く形成されると共に、階層構造体3(物流フロア2)に対して水平方向に進退自在に構成されている。
【0017】
そして、このスタッカークレーン12から物流フロア2に搬送容器Cを搬送する時には、この搬送台45上に搬送容器Cを載置して、既述の搬入出口14を介して棒状部材15a、15aの上方位置にスタッカークレーン12から当該搬送台45を伸張させ、次いで搬送台45が棒状部材15a、15a間を下側に通過するようにリフト44を下降させることにより、受け渡し部材15上に搬送容器Cが載置されることになる。また、物流フロア2から搬送容器Cを受け取る時には、この順番と逆の順序でスタッカークレーン12が動作することとなる。そして、既述の搬送車5がこの受け渡し部材15から搬送容器Cを受け取る時には、搬送車5が受け渡し部材15に臨む位置に移動すると共に、例えば搬送容器Cの下方側からあるいはこの搬送容器Cの高さ方向における概略中央位置において搬送容器Cを支持して持ち上げることになる。搬送車5から受け渡し部材15に搬送容器Cを引き渡す時には、この搬送動作と逆の順番で搬送車5が動作する。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0018】
続いて、処理フロア1について詳述する。この処理フロア1には、既述の図2、図4及び図6に示すように、複数の工程室21が前後方向(図2中Y方向)に一列に配置されており、この工程室21の列が左右方向(図2中X方向)に平行に互いに離間するように複数列例えば2列配置されている。各々の工程室21内には、既述の処理を行うための処理装置27が設けられている。工程室21の床面11(処理フロア1と物流フロア2との間の床面11)には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が形成されている。そして、処理フロア1において、各々の受け渡し口22の外縁から当該処理フロア1の内部領域(処理雰囲気)側に離間した位置には、図1(b)にも示すように、処理フロア1の床面11から天井面に向かって伸びるように、処理フロア1の雰囲気と物流フロア2の雰囲気とを区画するための区画壁22aが当該受け渡し口22の周囲に設けられている。この区画壁22aには、開閉扉(ドア)22bにより開閉される搬送口22cが形成されている。この開閉扉22bは、当該開閉扉22bの両側の領域(受け渡し口22の上方領域と工程室21内の雰囲気)との間において、気流が行き来しにくいようにこれら領域を区画するためのものである。従って、開閉扉22bは、当該開閉扉22bと搬送口22cとの間に形成された隙間を介して、これら両側の領域の間に形成された圧力差に応じて、これら領域の一方側から他方側に雰囲気が少しずつ通流するように構成されている。後述の扉48a及び搬入出口24についても同様である。既述の図1(b)では、区画壁22aにより囲まれる床面11よりも受け渡し口22を小さく描いているが、受け渡し口22は、実際には当該区画壁22aの下方側が全面に亘って開口した状態となっている。尚、図1(b)は、区画壁22aを一部切り欠いて示している。
【0019】
この搬送口22cは、搬送車5により搬送容器Cの受け渡しを行う時に、後述の制御部10からの指示により、あるいは作業者により各々開閉される。また、後述するように、工程室21内に搬送容器Cを例えば一時的に保管する場合には、図6に示すように、この保管する領域(保管領域48)と区画壁22aとの間の壁面には、扉48aにより開閉自在な開口部48bが形成される。尚、区画壁22aは、図6に示すように、工程室21の内壁面を兼用している場合もある。
【0020】
また、工程室21内には、搬送口22cに近接するように、搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行うためのスライド機構55が搬送部として設けられている。このスライド機構55は、図7にも示すように、搬送容器Cを下方側から支持する例えば板状の保持部55aと、搬送口22c及び開閉扉22bの閉鎖時における占有領域を介して工程室21の内部の処理雰囲気と受け渡し口22側との間で保持部55aを水平方向に進退自在に支持する進退支持部55bと、が上側からこの順番で積層されている。保持部55aにおける受け渡し口22側の先端部は、上方側に向かって垂直に屈曲して起立面部55cをなしており、保持部55a上の搬送容器Cが受け渡し口22側に落下しないようにいわばストッパーとして設けられている。この進退支持部55bは、図10に示すように、例えばエアシリンダーなどの駆動機構56とリニアガイドなどのガイド機構57とを備えており、この駆動機構56の駆動に伴って、ガイド機構57によってガイドしながら保持部55aを水平方向に進退させるように構成されている。尚、図7は、区画壁22aを一部切り欠いて示している。
【0021】
即ち、駆動機構56は、基端部56aと、基端部56aに対して保持部55aの進退方向に沿って移動(突没)する進退部56bと、を備えており、基端部56aが進退支持部55bに固定され、進退部56bの先端側が保持部55aの下面に接続されている。また、ガイド機構57は、進退部56bの進退方向に沿って配置されたガイド軸57aと、このガイド軸57aにガイドされて(嵌合して)スライドするスライド部57bとを備えており、ガイド軸57aが進退支持部55bに固定され、スライド部57bが保持部55aの下面に設けられている。これら駆動機構56とガイド機構57とは、保持部55aの進退方向に対して直交する方向に例えば2組設けられており、例えば後述の制御部10からの指示により、搬送口22cを介して保持部55aを進退させて、搬送車5(フォーク5b)との間で搬送容器Cの受け渡しを行うように構成されている。このスライド機構55は、既述の保管領域48にも設けられている。
【0022】
ここで、既述の受け渡し口22は、図6に示すように、各々の工程室21毎に個別に設けられている場合もあるし、一つの受け渡し口22が互いに隣接する複数例えば2つの工程室21、21において共用されている場合もある。例えば受け渡し口22の形成された工程室21を第1の工程室21a、受け渡し口22の形成されていない工程室21を第2の工程室21bと呼ぶと、第1の工程室21aの受け渡し口22は、第2の工程室21bに近接配置されている。そして、第1の工程室21aと第2の工程室21bとの間の壁面には、搬送容器Cの受け渡しを行うための搬入出口24が形成されている。また、この搬入出口24は例えばドアなどの開閉機構24aにより開閉されるように構成されており、搬送容器Cは、第2の工程室21bに対して、受け渡し口22、第1の工程室21a及び搬入出口24を介して搬送車5により搬送される。従って、既述のスライド機構55は、第1の工程室21aでは受け渡し口22に近接して配置されており、第2の工程室21bでは搬入出口24に近接する位置に設けられている。
【0023】
また、例えば打錠処理を行う工程室21、即ち図11に示す打錠室25は、間仕切り26によって投入区域25aと処理区域25bとの上下2層に区画されている。この打錠室25には、物流フロア2と処理フロア1との間の床面11(処理区域25bの床面)及び間仕切り26を上下に亘って貫通するように、既述の受け渡し口22が各々形成されている。即ち、投入区域25a及び処理区域25bには、夫々専用の受け渡し口22、22が形成されており、この例ではこれら2つの受け渡し口22、22は平面で見た時の位置が重なっていると言える。投入区域25a及び処理区域25bにおいて受け渡し口22、22の外縁から投入区域25a側及び処理区域25b側に夫々離れた位置には、既述の区画壁22aが各々設けられており、この区画壁22aよりも投入区域25a側及び処理区域25b側には、各々既述のスライド機構55、55が設けられている。処理区域25bにおけるスライド機構55の保持部55aには、当該スライド機構55に載置される搬送容器Cの下面中央部に対応するように、図示しない開口部が形成されている。区画壁22aの搬送口22cは、開閉扉22bにより各々開閉される。
【0024】
処理区域25bには、被処理物に対して打錠処理を行うための処理装置(打錠機)27が設けられており、間仕切り26には、処理区域25bのスライド機構55に載置された搬送容器Cの下面と処理装置27とを接続する管状の投入路27aを引き回すための開口部26aが形成されている。この投入路27aは、処理区域25bにおけるスライド機構55の保持部55aに形成された開口部を介して、搬送容器Cの下面に接続される。図11では、投入区域25aにおける搬送容器C(スライド機構55)と処理区域25bにおける処理装置27とを左右に離間して配置しているが、スライド機構55の下方に処理装置27を位置させても良いし、スライド機構55から処理装置27の上方位置まで搬送容器Cを搬送する水平搬送機構を投入区域25aに配置して、搬送容器Cから処理装置27へ被処理物を投入落下させても良い。
【0025】
処理区域25bにおいて、処理装置27の側方位置には、処理装置27において打錠処理が行われた処理物を収納するための搬送容器Cがスライド機構55上に載置されている。図11中27bは、処理装置27において打錠処理が終了した処理物を取り出して、処理区域25bに載置された搬送容器Cに収納するための搬送部材である。尚、図6においては、この打錠室25を簡略化して示している。また、搬送車5において搬送容器Cを上下に昇降させる機構については、図11などでは簡略化して示している。
【0026】
また、工程室21としては、例えば図6に未使用エリア31として示すように、内壁面や床面に内装が施されていない領域(部屋)が設けられている場合がある。この未使用エリア31は、工場を建設した後に、例えば医薬品を増産するために工程室21を増設する場合などに当該工程室21として使用される領域であり、そのため工場を建設した時点では使用されていない領域である。この未使用エリア31においては、受け渡し口22が形成されておらず、隣接する工程室21の受け渡し口22を共用することになる。また、処理装置27の種類により搬送容器Cの設置される位置(スライド機構55の設置位置)が異なる場合があるので、この未使用エリア31には搬入出口24が形成されておらず、工程室21を増設する時に、当該工程室21(未使用エリア31)内に設けられる処理装置27の種類などに応じて搬入出口24が工事により形成されることになる。また、工程室21を増設する時には、この搬入出口24の工事と共に、内装工事や後述の処理装置27を搬入する工事などが行われることになる。尚、予めドアなどにより開閉される搬入出口24を形成しておいても良い。
【0027】
工程室21の列の左側の側面及び右側の側面の一方側及び他方側には、各々機械室61及びこの工程室21内において作業を行う作業者が当該工程室21内に出入りするための作業者用通路62が当該工程室21の列に沿うように設けられている。この例においては、図2及び図4に示すように、工場の外壁に沿うように処理フロア1の両側に機械室61、61が配置され、2つの工程室21、21の列に挟まれるように(内側に)作業者用通路62、62が設けられている。この機械室61において工場の外部に面する壁面(外壁)には、既述の処理装置27の搬入出を行うための図示しないドアが形成されている。作業者用通路62の天井面は、工程室21の天井面よりも所定の高さだけ低くしても良い。
【0028】
この機械室61は、例えば、工程室21内の処理装置27に関連する部材例えば集塵機や空調機あるいは配電盤などの機械設備61aを設置するための領域であり、工程室21や物流フロア2、あるいは作業者用通路62などよりも清浄度が低いレベルに設定されている。これらの工程室21と機械室61との間の壁面には、処理装置27と機械設備61aとを接続する配線や配管を引き回すための図示しない開口部が形成されている。また、この機械室61は、後述するように、工場の外部と工程室21との間において処理装置27を例えば入れ替える場合に、工場の外壁(機械室61の側面)に形成された図示しないドアから当該機械室61を介して処理装置27を搬送するための領域である。このように処理装置27を入れ替える(交換する)例としては、例えば工程室21内の古い処理装置27を新しい処理装置27に切り替える場合、あるいは当該工程室21内における処理の種類が変更になる場合などがある。
【0029】
この時、処理装置27の入れ替えを行わない場合もあるし、また処理装置27の大きさも処理の種類に応じて様々である。そのため、機械室61と工程室21との間において処理装置27を搬入出する場合には、例えば工事を行うことにより、機械室61と工程室21との間の壁面にその都度開口部が形成されることになる。尚、この壁面に予め開口部を形成しておき、処理装置27の搬送を行わない時には扉等で塞ぐようにしても良い。また、この機械室61は、工程室21に面する壁面以外の3つの側面のうちのいずれかの側面が工場の外壁に接するように配置されていれば良い。尚、図6においては、既述の機械設備61aを模式的に1つだけ描画している。
【0030】
そして、この処理フロア1には、これらの工程室21、機械室61及び作業者用通路62からなる処理ステーション7が平行に複数列に亘って例えば2列に設けられており、作業者用通路62の側面における工程室21とは反対側の面には、例えば作業者用通路62の側壁及び工程室21の側壁に形成された図示しない窓を介して見学者が工程室21内を見学するための見学者用通路63が作業者用通路62(工程室21)に沿って配置されている。この見学者用通路63の天井面は、作業者用通路62の天井面と同じ程度の高さレベルに設定されている。この例では、見学者用通路63を介して左右両側の作業者用通路62、工程室21及び機械室61が左右対称となるように配置されており、従ってこの場合には、左右の2つの処理ステーション7において見学者用通路63を兼用している。尚、図4及び図6中29は、作業者用通路62から工程室21内に作業者が出入りするためのドアである。また、これらの作業者用通路62、物流フロア2及び工程室21内は、コンタミの発生を抑えるために清浄な雰囲気に保たれている。
【0031】
作業者用通路62及び見学者用通路63の上方には、工程室21の側面の上部側に隣接するように、例えば天井面が工程室21の天井面と同程度の高さレベルとなるように配置された通気路(ダクト)35が設けられており、この通気路35は、前後方向に並ぶ工程室21に沿って長く形成されている。この通気路35は、工程室21の雰囲気を工場の外部に排気したり、あるいは工場の外部などから清浄な大気を吸引したりするための領域であり、各工程室21から例えば工場の外部に伸びる図示しない給気路や排気路が引き回されている。
【0032】
この工場は、図5に示すように、スタッカークレーン12及び搬送車5の搬送動作や開閉扉22bの開閉動作を制御する制御部10を備えている。この制御部10は、CPU、メモリ及びプログラム格納部を備えており、被処理物に対して処理を行って処理物が得られるように、工場の各部(搬送車5やスタッカークレーン12)に対して制御信号を出力するように構成されている。このプログラム格納部内に格納されるプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクあるいはメモリーカードなどの図示しない記憶媒体から制御部10にインストールされる。
【0033】
次に、この工場の作用について図12〜図24を参照して説明する。先ず、例えば物流フロア2と同じ階層に設けられた図示しない倉庫から、搬送車5により原料粉末が収納された図示しない梱包容器である被搬送物を受け取る。この梱包容器は、搬送車5によって工程室21の一つに搬入され、開梱されて内部の原料粉末が搬送容器Cに移される。続いて、例えば500kg程度の重量となるように原料粉末が収納された搬送容器Cは、図12(a)に示すように、搬送車5によってこの搬送容器C内の被処理物に対して処理が行われる工程室21に向かって搬送される。即ち、図13に示すように、搬送車5が既述の搬送路6における軌道を検出しながら搬送路6(本線6a)に沿って例えば時計回りに移動する。次いで、搬送車5は工程室21の受け渡し口22の下方位置に設けられたマーカー9を検知すると停止して、所定の受け渡し動作を行う。具体的には、搬送車5が図12(b)に示すように受け渡し口22を介してフォーク5bを上昇させると、受け渡し口22の側方側の搬送口22cが開放される。
【0034】
次いで、搬送車5は、スライド機構55に搬送容器Cが設置される高さ位置よりも僅かに高い高さ位置(搬送容器Cの下面が起立面部55cの上面よりも高くなる位置)において、搬送口22cを介して工程室21内に向かって搬送容器Cが進入するように例えば後退する。また、図12(c)に示すように、スライド機構55において保持部55aが搬送口22c及び開閉扉22bの閉鎖時における占有領域を介して搬送車5に向かって伸び出し、搬送容器Cの下方位置に当該保持部55aが位置する。そして、図14(a)に示すように、搬送車5のフォーク5bを下降させて、スライド機構55の保持部55a上に搬送容器Cを載置する。
【0035】
しかる後、搬送車5は図14(b)に示すように、例えばフォーク5bを僅かに下降させると共に受け渡し口22の下方位置まで前進し、同図(c)に示すようにフォーク5bを物流フロア2内に縮退させる。また、搬送容器Cを保持した保持部55aを工程室21の内部領域に縮退させると共に、開閉扉22bにより搬送口22cを閉じる。この時、保持部55a上の搬送容器Cは、当該保持部55aの縮退動作により受け渡し口22側に落下あるいは横滑りしようとするが、保持部55aにおける搬送車5側の先端部には起立面部55cが設けられているので、受け渡し口22側に落下しない。工程室21への搬送容器Cの搬入を終えた搬送車5は、次の搬送を行うために搬送路6に沿って例えば時計回りに移動していく。
【0036】
そして、作業者は作業者用通路62からこの工程室21内に入室すると共に、通気路35を介して当該工程室21内あるいは処理装置27の内部の雰囲気を調整して、この処理装置27を用いて搬送容器C内の被処理物に対して処理を行う。その後、この工程室21内において処理が行われた処理物は、例えば搬送容器C内に収納されて、搬入された順番と逆の順序で搬送車5により物流フロア2へと搬出される。この時、スライド機構55により搬送容器Cを受け渡し口22側に向けて搬送すると、搬送容器Cは例えば停止した時に受け渡し口22側に向かって横滑したり倒れたりしそうになるが、起立面部55cにより落下が防止される。この搬送容器Cは、図示しない倉庫あるいは次の処理を行うための工程室21に、搬送路6に沿って搬送車5により例えば時計回りに搬送される。この搬送容器C内の処理物は、続く工程室21においては被処理物として処理が行われる。尚、図12及び図14においては、処理装置27を省略しており、またスライド機構55については模式的に示している。後述の図15及び図16も同様である。
【0037】
この時、次の処理を行う工程室21において先の処理が終わっていない場合には、例えば図15に示すように、例えば受け渡し口22の下方位置において既述の図示しない反転用搬送路に沿って搬送車5が移動して例えば180°反転する。そして、搬送車5は、工程室21内における処理装置27や作業者に干渉しない位置(保管領域48)に搬送口22cを介して搬送容器Cを進入させ、既述のようにスライド機構55との協働作用により工程室21内に搬送容器Cを搬入する。この搬送車5は、別の搬送を行うために移動していき、その後当該工程室21において先の処理が終わると、例えば作業者により、あるいは搬送車5により、この干渉しない位置に載置された搬送容器Cが処理装置27に近接する位置(例えばスライド機構55)に設置されることになる。
【0038】
また、例えば受け渡し口22を共有している工程室21bでは、図16(a)に示すように、この工程室21bに隣接する工程室21aの受け渡し口22から搬送車5のフォーク5bが上方に向かって伸び出し、次いで同図(b)に示すように、搬入出口24を介してこの搬送車5とスライド機構55との間において搬送容器Cの受け渡しが行われる。その後、既述のようにスライド機構55が工程室21b内に縮退し、搬送容器Cが当該工程室21bに搬入される。
【0039】
そして、次の処理を行う工程室21が例えばこの物流フロア2の上層側の階層構造体3に配置されている場合には、図17(a)及び図18に示すように、搬送車5が受け渡し用分岐路8cに沿って受け渡し部材15に向かって移動して、この受け渡し部材15に搬送容器Cを載置する。スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15に臨む位置に搬送台45を移動させて搬送容器Cを受け取る。そして、スタッカークレーン12は、上層側の階層構造体3における物流フロア2の受け渡し部材15に臨む位置に搬送容器Cを上昇させる。次いで、図17(b)に示すように、スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15を介して搬送車5に搬送容器Cを受け渡す。こうして下層側の物流フロア2(搬送車5)から上層側の物流フロア2に対して搬送容器Cが搬送され、続く処理が順次行われていくことになる。また、上層側の物流フロア2から下層側の物流フロア2に搬送容器Cが搬送される場合も、同様に搬送車5及びスタッカークレーン12により搬送容器Cが受け渡されることになる。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0040】
また、既述の打錠処理を行う工程室21(打錠室25)の投入区域25aに搬送容器Cを搬送する場合には、図19(a)に示すように、処理区域25bの受け渡し口22及び投入区域25aの受け渡し口22を介して、搬送車5が搬送容器Cを投入区域25aと同じ高さ位置まで上昇させて、スライド機構55との協働作用により投入区域25a内に搬入する。また、同図(b)に示すように、例えば別の搬送車5は、受け渡し口22から処理物を収納する空の搬送容器Cを打錠室25側に上昇させる。この搬送容器Cは、搬送口22cを介してスライド機構55に受け渡され、次いで当該スライド機構55によって処理区域25b内に搬入される。そして、作業者がこの打錠室25内に設けられた図示しない階段を上って、投入区域25aの搬送容器Cの下面に設けられた図示しない投入口に投入路27aの開口端を接続し、この搬送容器Cから被処理物を処理装置27に投入する。この被処理物は、処理装置27において打錠処理が行われて、搬送部材27bにより処理区域25bの搬送容器C内に処理物として収納される。
【0041】
打錠処理を所定の時間行うと、搬送車5及びスライド機構55により、処理物が収納された搬送容器Cが打錠室25(処理区域25b)から搬出される。そして、例えば別の搬送車5により再度空の搬送容器Cが処理区域25bに搬入されて、打錠処理が続けられる。そして、例えば投入区域25aの搬送容器C内の被処理物がなくなるか少なくなるまで、搬送車5による処理区域25bへの搬送容器Cの搬入出が行われる。その後、投入区域25aの搬送容器Cが空になったり被処理物が少なくなったりした場合には、搬送車5により当該搬送容器Cが搬出されることになる。
以上の工程室21における例えば処理装置27や作業者の動作は、例えば見学者用通路63を通行する見学者により見学(点検)される。そして、例えば複数の階層の工程室21において被処理物に対して複数の処理を順次行うことにより、最終製品である医薬品が製造される。
【0042】
次に、工程室21内の処理装置27を取り替える(入れ替える)場合について説明する。先ず、図20(a)及び図21(a)に示すように、工事により工程室21内に発生する粉塵などが当該工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21に出て行かないように、受け渡し口22あるいは搬入出口24を例えば板状の覆い部材65により密閉すると共に、ドア29を閉じる。次いで、図20(b)に示すように、工事を行って機械室61と工程室21との間の壁面を取り壊す。また、受け渡し口22の周囲の区画壁22aについても、処理装置27の搬送に干渉する場合には取り壊す。この工事により粉塵などが発生するが、工程室21を閉じているので、粉塵はこの工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは当該工程室21に隣接する工程室21には出て行かない。
【0043】
そして、図20(c)及び図21(b)に示すように、工程室21から処理装置27を機械室61を介して工場の外部に搬出し、例えば新しい処理装置27を当該工程室21内に搬入する。この時、機械室61が2階以上の高さの階層に配置されている場合には、処理装置27は例えば工場の外部からクレーンなどを用いて搬送される。その後、この工程室21内の清掃及び工程室21と機械室61との間の壁面が形成されて(修復されて)、区画壁22aを再度形成すると共に覆い部材65を取り外して既述のように処理が再開される。尚、これらの図20及び図21においては、1つの工程室21のみを描画している。
【0044】
また、既述の未使用エリア31に対して新たに工程室21を設置する場合には、図22(a)及び図23(a)に示すように、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する(隣接する)工程室21において、同様に受け渡し口22を覆い部材65により塞ぎ、また必要に応じて区画壁22aを取り壊し、図22(b)及び図23(b)に示すように、未使用エリア31とこの工程室21との間の壁面を工事により取り壊して搬入出口24を形成する。この搬入出口24の位置は、例えば当該未使用エリア31に設置される処理装置27の種類やスライド機構55の位置に応じて設定される。そして、例えばこの未使用エリア31に対して、内装工事及び機械室61との間の壁面を取り壊して新たに処理装置27及びスライド機構55を搬入する工事を行うことにより、この未使用エリア31に対して新たな工程室21が設けられることになる。
【0045】
この場合においても、工事を行っている時には、粉塵などは未使用エリア31及びこの未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21から、物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21には出て行かない。そして、同様に清掃や機械室61との間の壁面の修復を行い、次いで区画壁22aを形成した後、この未使用エリア31は工程室21として使用されることになる。
【0046】
そして、例えば搬送車5が故障した場合やメンテナンスを受ける場合には、図24に示すように、例えば作業者により当該搬送車5を退避分岐路8aに退避させ、予備分岐路8bにて待機する搬送車5を本線6aに移動させて、退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を受け持たせることになる。
【0047】
上述の実施の形態によれば、複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、処理フロア1と物流フロア2との間の床面11に受け渡し口22を形成し、物流フロア2を走行する搬送車5により受け渡し口22を介して工程室21と物流フロア2との間において搬送容器Cの受け渡しを行っている。そして、受け渡し口22及び開閉扉22bを介して搬送容器Cの受け渡しを行うにあたり、当該開閉扉22bに近接するようにスライド機構55を工程室21内に配置して、搬送車5との間において、スライド機構55を用いて搬送容器Cの受け渡しを行っている。そのため、搬送車5から側方側に向かって伸び出すフォーク5bの長さ寸法を抑えることができる。従って、例えば搬送容器Cが重量物の場合でも、スライド機構55に対して当該搬送容器Cの受け渡しを行う時に、搬送車5が転倒する程度まで当該搬送車5のバランスが崩れない。このように、本発明では、従来から用いられていた工程室21への側方側からの搬送容器Cの搬送という考え方に対して、階下の物流フロア2と階上の処理フロア1とにおいて搬送容器Cを受け渡すといった新規な考え方を採っている。そのため、処理フロア1には搬送容器Cの搬送を行う搬送路を設けなくて済むので、いわば物の動線である物流フロア2と人の動線である作業者用通路62とを上下に区画して別個に配置できるので、処理フロア1の各領域(工程室21、機械室61、作業者用通路62及び見学者用通路63)の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【0048】
また、処理フロア1のレイアウトの自由度が大きいことから、例えば工程室21と機械室61とを隣接させることができる。通常、機械室61が工場の外壁に面していることから、工場を建設した後に工程室21内の処理装置27を入れ替える場合には、機械室61を介して工場の外部と工程室21との間で処理装置27等の機器を運搬することになる。従って、工程室21と機械室61とが隣接していると、例えば作業者用通路62を塞ぐ工事などを行うことなく、また他の工程室21に影響を及ぼすことなく、工事を行う工程室21における処理を停止するだけで処理装置27を導入できる。この結果、処理装置27を容易に且つ速やかに交換でき、従って新規設備の導入に柔軟に対応できる。また、例えば別途作業者用通路62を引き回すなど、工事を想定したレイアウトを採る必要がないので、工場の設計を行いやすい利点もあるし、また工場の設置面積を抑えることができる。
【0049】
更に、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合においても、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21の処理を停止するだけで工事を行うことができるので、例えば医薬品の増産などにも容易に対応することができる。また、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合には、当該未使用エリア31(工程室21)に設置される処理装置27の種類やスライド機構55の位置に合わせて搬入出口24の形成場所を設定できるので、未使用エリア31を様々な工程室21に対応させることができる。
従って、工場を建設した後に例えば医薬品の新しい製造方法や処理装置27などの新技術が開発された場合でも、容易にこれらの新技術を工場に導入できるので、また増産などにも容易に対応できるので、自由度の高い工場を得ることができる。
【0050】
また、搬送車5に水平移動と搬送容器Cの昇降動作とを行わせていることから、各々の工程室21毎に受け渡し口22の位置や搬送容器Cを載置する高さ位置(スライド機構55の高さ位置)がまちまちであっても、各々の工程室21には昇降装置が不要になり、そのため工場を安価に建設できる。即ち、例えばコーティングを行う工程室21では、処理装置27が大型のため、搬送容器Cの載置される高さ位置が処理フロア1の床面11から例えば2.5m程度高い位置となったりする場合もある。しかし、その場合であっても当該工程室21には昇降装置を設けることなく、例えば図25に示すように、この工程室21に搬送容器Cが載置される高さ位置に応じてスライド機構55を設けることによって、即ち例えば処理装置27にスライド機構55を組み合わせて設けることによって、当該高さ位置に対してスライド機構55及び搬送車5により搬送容器Cを直接受け渡しできる。
【0051】
更に、搬送車5により階下から階上へ搬送容器Cを受け渡していることから、隣接する工程室21、21間において受け渡し口22を共用できるので、受け渡し口22の設置数を抑えることができる。更にまた、物流フロア2と作業者用通路62とを別個に設けていることから、搬送車5と作業者との衝突を防ぐことができるし、作業者による搬送容器Cや被処理物あるいは処理物への干渉を防止できる。また、見学者用通路63を工程室21の側方位置に設けることができるので、例えば工程室21の上方に設ける場合よりも例えば処理装置27の動作などを確実に見学(点検)することができる。
【0052】
更に、水平な物流フロア2において搬送車5により搬送容器Cを搬送していることから、例えば複数階層の工程室21に沿って高さ方向にスタッカークレーンの搬送室を設ける場合に比べて、当該物流フロア2内を例えば作業者が容易に清掃することができる。また、物流フロア2には複数の搬送車5を設けているので、例えば1台が故障した場合やメンテナンスを行う場合でも、当該搬送車5の受け持つ搬送を他の搬送車5が肩代わりすることができる。
【0053】
また、上下の階層の物流フロア2、2間に亘って搬送容器Cを搬送する必要がある場合、スタッカークレーン12により搬送容器Cを昇降させることができるので、階層構造体3を積層でき、工場の設置面積を抑えることができる。この時、スタッカークレーン12の昇降室13は複数階層の物流フロア2に面するように、つまり工場の外壁などに面するように自由に設置できるので、工場内のレイアウトに干渉しない。
【0054】
また、受け渡し口22の周囲において、物流フロア2の雰囲気と処理フロア1の雰囲気とを区画する区画壁22aを設けることによって、例えば各工程室21と物流フロア2との間におけるコンタミの流入出を抑えることができるので、複数の工程室21間における物流フロア2を介したクロスコンタミを抑えることができる。この時、例えば工程室21から物流フロア2へのコンタミの流出のおそれがない場合あるいは少ない場合には、例えば図26に示すように、区画壁22aを設けなくても良い。
【0055】
また、スライド機構55における駆動機構56としては、図27に示すように、ラックピニオン式の機構であっても良い。即ち、この場合において駆動機構56は、保持部55aと共に進退自在に構成され、下面に多数の溝が形成されると共に当該保持部55aの進退方向に沿って水平に伸びるラック部56cと、このラック部56cの溝に歯合するギア状の凹凸が外周面に多数形成されると共に、ラック部56cに外周面が歯合しながら軸周りに回転自在に進退支持部55bに固定されたピニオン部56dと、を備えている。そして、図示しないモータなどによりピニオン部56dを回転させると、このピニオン部56dの外周面に歯合してラック部56cが進退し、ガイド機構57によってガイドされながら保持部55aが前後に移動する。
【0056】
更に、この駆動機構56は、図28に示すように、チェーン方式で駆動する機構であっても良い。この場合には、進退支持部55bは、保持部55aを下方側から進退自在に支持するガイド部材58aと、このガイド部材58aに沿って保持部55aを進退させるためのチェーン駆動部58bとにより構成される。ガイド部材58aの上面及び保持部55aの裏面には、保持部55aの進退方向に沿うように、互いに嵌合する凹部及び凸部(いずれも図示せず)が夫々形成されている。
【0057】
チェーン駆動部58bは、駆動チェーン59aと、この駆動チェーン59aの一端側を保持部55aに固定するために当該保持部55aの裏面に設けられた固定部59bと、駆動チェーン59aの他端側に接続されると共に外周面において当該駆動チェーン59aを巻き取り及び払い出しできるように軸周りに回転自在に構成された回転部59cと、この回転部59cを軸周りに回転自在に支持するモータMと、により構成されている。ガイド部材58aの側面には、駆動チェーン59aを走行自在に保持すると共に、回転部59cと固定部59bとの間において蛇腹状に引き回すために、軸受け部59dが前記進退方向に互いに離間して2箇所に設けられている。
【0058】
また、駆動チェーン59a、固定部59b及び回転部59cは、この例では2組設けられており、モータMによるチェーン59aの巻き取り方向及び払い出し方向が互いに逆向きとなるように配置されている。また、これらチェーン59a、59aの一方は、回転部59cから固定部59bに向かって、前記軸受け部59d、59dのうち一方側及び他方側を介して引き回され、チェーン59a、59aの他方は、回転部59cから固定部59bに向かって、前記軸受け部59d、59dのうち他方側及び一方側を介して引き回されている。尚、図28では、これらチェーン59a、59aの引き回し方法を説明するため、これらチェーン59a、59aの一方及び他方を夫々太線及び破線で描画している。
【0059】
そして、これらチェーン59a、59bのうち一方を回転部59cを介してモータMにより巻き取ると、保持部55aが例えば受け渡し口22に向かってガイド部材58aに沿って水平に前進すると共に、他方のチェーン59aが回転部59cから払い出され(伸び出し)、チェーン59a、59aのうち他方を巻き取ると、保持部55aが工程室21側に後退すると共に一方のチェーン59aが回転部59cから払い出される。こうしてチェーン駆動部58bは、モータMの回転方向に応じて、保持部55aが前進または後退するように構成されている。
【0060】
尚、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを高さ方向における概略中央位置において側方側から保持し、一方スタッカークレーン12は下方側から搬送容器Cを保持するように構成されているので、既述の受け渡し部材15を設けずに、これらの搬送車5とスタッカークレーン12との間において搬送容器Cを直接受け渡すようにしても良い。また、搬送車5については、当該搬送車5上においてフォーク5bを進退させる機構や搬送車5の進退方向に対して左右方向にフォーク5bを移動させる機構を持たせても良いし、あるいは搬送車5上においてフォーク5b(搬送容器C)の向きを調整できるようにしても良い。
【0061】
また、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを中央部において両側から保持しているので、物流フロア2の床面11に対して搬送容器Cを直接受け渡しできる。従って、図29(a)に示すように、例えば処理が終了した搬送容器Cや、処理の途中で一時的に保管する搬送容器Cあるいは空になった搬送容器Cを物流フロア2における搬送車5の動作に干渉しない位置に載置しても良い。このように物流フロア2をいわば倉庫(載置領域)として用いることで、倉庫用のスペースを別途設けることなく搬送容器Cを安価に保管できる。更に、図29(b)に示すように、物流フロア2に棚71を設けて、この棚71を倉庫として用いても良い。
【0062】
また、以上の例においては、2つの隣接する工程室21a、21b間で受け渡し口22を共有する例について説明したが、図30に示すように、隣接する3つの工程室21の中央の工程室21aに受け渡し口22を形成し、この受け渡し口22を当該工程室21aに隣接する工程室21b、21cで共有しても良い。この時、例えば受け渡し口22と工程室21c(21b)の搬入出口24とが離れている場合には、受け渡し口22と当該搬入出口24との間にコンベア91またはスライド機構55を設けても良い。尚、この図30では、区画壁22aや処理装置27については省略している。以下の図31でも同様である。
【0063】
更に、図31(a)に示すように、コンベア91を設けずに、工程室21b、21cの搬入出口24、24に各々近接するように、工程室21aに2つの受け渡し口22、22を形成しても良いし、あるいは同図(b)に示すように、工程室21b、21cの各々の搬入出口24、24に近接するように大きく受け渡し口22を形成しても良い。この場合には、例えば受け渡し口22の上方領域を介して工程室21aと機械室61との間において処理装置27を搬送する時には、例えば受け渡し口22を塞ぐように例えば金属製の図示しない運搬路が設けられ、処理装置27はこの運搬路上を搬送されることになる。
【0064】
既述の例では、スライド機構55によって搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行ったが、図32に示すように、このスライド機構55に代えて、搬送容器Cを下方側から支持するコンベアなどの水平搬送機構111を設けても良い。この水平搬送機構111は、例えば同図(b)に示すように、上面の高さ位置が搬送口22cの下端位置よりも高くなるように構成された支持台120と、この支持台120上において工程室21への搬送容器Cの搬入出方向に対して直交方向且つ水平に伸びるように円筒形状に形成された回動体121と、を備えている。回動体121は、例えば図示しないモータなどの駆動部により、支持台120において水平軸周りに回転自在に軸受けされており、この例では前記搬入出方向に沿って複数並べられている。この水平搬送機構111は、工程室21内の処理雰囲気側において区画壁22aに近接配置されている。そして、この区画壁22aと受け渡し口22との間には、水平搬送機構111と搬送車5との間における搬送容器Cの受け渡しを補助するために、搬送容器Cを下方側から支持する補助搬送部112が設けられている。
【0065】
この補助搬送部112は、上面の高さ位置が既述の水平搬送機構111上における搬送容器Cの載置面の高さレベルと揃うように設けられた支持部114と、工程室21に対する搬送容器Cの搬入出方向に対して直交方向且つ水平に伸びるように円筒形状に形成されると共に、水平方向軸周りに回転できるように、長さ方向における両端部が支持部114の上面において軸受けされた回動体113と、を備えている。従って、この補助搬送部112は、受け渡し口22と水平搬送機構111との間において、搬送容器Cを下方側から前記搬入出方向に沿って進退自在に支持できるように構成されている。これらの補助搬送部112と水平搬送機構111との間の離間距離は、例えば前記搬入出方向における搬送容器Cの底面の長さ寸法の1/2以下好ましくは1/3以下に設定されている。これらの水平搬送機構111及び補助搬送部112により搬送部が構成される。
【0066】
この水平搬送機構111及び補助搬送部112を設けた場合には、例えば受け渡し口22を介して処理フロア1内に持ち上げられた搬送容器Cは、搬送口22cと開閉扉22bの開閉領域とを介して、補助搬送部112及び水平搬送機構111に跨がって載置される。そして、制御部10によって水平搬送機構111が駆動すると、搬送容器Cの下面における受け渡し口22側の領域が補助搬送部112により補助(支持)されながら、搬送容器Cの下面における工程室21側の領域が当該水平搬送機構111によって工程室21側に引き寄せられて、当該工程室21内に搬送容器Cが搬入される。この時、これらの水平搬送機構111と補助搬送部112との間の離間距離を、既述のように搬送容器Cの搬入出方向における当該搬送容器Cの底面の長さ寸法の1/2以下好ましくは1/3以下に設定しているので、搬送容器Cが工程室21内に向かって搬入される時に搬送容器Cの下端が補助搬送部112から離れても、搬送容器Cは受け渡し口22に向かって転倒しない。工程室21から搬送容器Cを搬出する時は、搬入時と逆の順序でこれら水平搬送機構111、補助搬送部112及び搬送車5が駆動する。この場合において、補助搬送部112としては、水平搬送機構111と同様のコンベアなどを配置しても良い。尚、図32(b)は区画壁22a及び開閉扉22bの一部を切り欠いて示している。
【0067】
また、これら水平搬送機構111と補助搬送部112とを設ける場合には、スライド機構55における起立面部55cと同様に、受け渡し口22側への搬送容器Cの横滑りや落下を防止する機構を設けても良い。具体的には、図33に示すように、搬送容器Cの下端面は周縁部側において当該搬送容器Cを支持する枠状体201をなしており、いわば当該枠状体201により囲まれる内部領域が矩形に開口した状態になっている。そのため、水平搬送機構111により搬送される搬送容器Cの移動(受け渡し口22側への落下)を防止する機構として、複数本平行に並べられた回動体121同士の間の隙間領域に、当該隙間領域を介して前記枠状体201の内部領域に対して概略板状の先端部が突没するように、例えば図示しないエアシリンダなどの昇降機構を備えたストッパー機構200を設けても良い。このストッパー機構200は、水平搬送機構111と搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しが行われる時の当該搬送容器Cに対して、枠状体201の工程室21側における端部よりも僅かに受け渡し口22側に配置される。
【0068】
そして、水平搬送機構111によって搬送容器Cを例えば受け渡し口22側から工程室21内に向かって搬送している時には、ストッパー機構200は搬送容器Cの移動に干渉しないように当該搬送容器Cの下面よりも下方側に位置し、一方搬送容器Cが工程室21内から受け渡し口22に向かって移動して搬送車5との間で受け渡しを行う位置に到達した時には、水平搬送機構111の駆動を停止させると共に、前記枠状体201の内部領域に対してストッパー機構200がせり上がり、搬送容器Cの移動を停止させる。そのため、搬送容器Cは受け渡し口22側に落下しない。その後、搬送車5により搬送容器Cが支持されて持ち上げられると、ストッパー機構200は再び下方側へと縮退する。このように電気的な駆動ではなくハード的に駆動するストッパー機構200を設けることにより、例えば水平搬送機構111上において搬送容器Cが横滑りしようとした場合であっても、あるいは電気的なトラブルにより水平搬送機構111の搬送動作が停止しなかった場合であっても、受け渡し口22側への搬送容器Cの落下が防止される。
【0069】
また、既述の例では、スライド機構55や水平搬送機構111及び補助搬送部112を配置して、搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行ったが、例えばフォーク5bの長さ寸法が十分に長い場合や搬送容器Cが例えばフォークリフト積載重量に対して十分軽い場合には、図34に示すように、スライド機構55を設けずに、搬送車5により搬送口22cを介して工程室21内に搬送容器Cを直接受け渡しても良い。
また、未使用エリア31を工程室21に改造する場合について説明したが、この工場において例えば工程室21に代えて配置されている図示しない倉庫を工程室21に改造する場合にも同様に工事が行われることになる。
【0070】
更に、既述の例では、打錠室25に対して搬送容器Cの受け渡しを行うにあたって、投入区域25aに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22と、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22とを平面的に同じ位置に設けたが、図35に示すように、これらの受け渡し口22、22を夫々別の位置に設けても良い。即ち、打錠室25に平面的に2つの受け渡し口22、22を形成して、投入区域25a及び処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う経路を独立して夫々専用に設けても良い。従って、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22の上方位置は、間仕切り26が配置されている。この場合には、夫々の投入区域25a及び処理区域25bに対してアクセスする搬送車5を共通化しても良いし、個別に設けても良く、個別に設ける場合にはこれら搬送車5、5の走行する物流フロア2内を区画しても良い。また、この例においても棚71を設けても良い。尚、図35においては、2つの受け渡し口22、22を左右に離間して配置しているが、受け渡し口22、22の形成位置としては、これら受け渡し口22、22に対してアクセスする搬送車5、5同士が干渉しないように、例えば横並びに近接して設けても良い。
【0071】
更にまた、上下の物流フロア2、2間において搬送容器Cを搬送するためにスタッカークレーン12を設けたが、物流フロア2、2間にて搬送容器Cを搬送しない場合には、このスタッカークレーン12を設けなくても良い。また、階層構造体3を複数階層例えば2層に亘って積層したが、図36に示すように1層であっても良い。尚、図36においてもスライド機構55を省略している。
【0072】
また、処理フロア1と物流フロア2とを設けることによって工場の各領域の配置レイアウトの自由度が大きいことは既に述べたが、既述の例とは異なるレイアウトの工場について、図37及び図38を参照して説明する。この工場には、既述の機械室61に代えて、工程室21の並びに沿うように作業者用通路95が設けられており、この作業者用通路95と各工程室21との間の側面には、作業者のためのドア29が各々設けられている。この作業者用通路95は、工程室21に出入りする作業者の例えば衣服を介したコンタミを防止するために、各々の工程室21に入室する作業者の通路と退室する作業者の通路とを別々にするために設けたものである。従って、作業者用通路62、95のうち一方は各々の工程室21に入室する作業者のための通路であり、作業者用通路62、95のうち他方はこれら工程室21から退室する作業者のための通路である。
【0073】
このように2つの作業者用通路62、95を工程室21に各々隣接するように配置した場合であっても、工程室21には物流フロア2から搬送容器Cを搬入できるので、各々の工程室21には、搬送容器Cを昇降させるためのリフタなどの昇降装置が不要である。従って、処理フロア1と物流フロア2とを上下に区画しているので、建設費のコストアップを抑えながら処理フロア1のレイアウトを自由に設定できる。
【0074】
また、既述の各例では、工程室21を前後方向に一列に配置したが、搬送車5により下方側の物流フロア2から処理フロア1に対して搬送容器Cの受け渡しを行っていることから、ある一つの工程室21から側方側を見た時に、周囲の全ての4つの面に別の工程室21が配置されているレイアウトも採ることができる。具体的には、処理フロア1において工程室21が配置される領域を縦横夫々3つの領域に壁面を用いて区画して、当該領域を夫々工程室21として用いても良い。この場合には、例えば各々工程室21には、床面11に受け渡し口22が各々形成され、作業者は9つの工程室21のうち中央の工程室21に対しては、当該工程室21の周囲の工程室21を介して出入りする。即ち、工程室21が配置された処理フロア1の階下に物流フロア2を設けることによって、当該処理フロア1には搬送容器Cの搬送用の搬送軌道を設ける必要がないので、例えば既述のスタッカークレーン100だけに頼って搬送容器Cの搬送を行う場合と比べて、処理フロア1のレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0075】
ここで、受け渡し口22を共有する工程室21a、21bをこの処理フロア1内に配置したが、いずれの工程室21についても受け渡し口22を形成しても良い。その場合には、未使用エリア31については隣接する工程室21と受け渡し口22と共用しても良いし、あるいはこの未使用エリア31に予め受け渡し口22を形成しても良い。また、隣接する工程室21a、21bにおいて受け渡し口22を共用する場合には、工程室21aにおける受け渡し口22をこれらの工程室21a、21bの間の壁面に沿って長く形成しても良い。このように受け渡し口22を形成することにより、搬入出口24を形成する位置について、高さ位置だけでなく横方向についても自由度が高くなる。
また、区画壁22aについて、処理フロア1の床面11から天井面までに亘って配置したが、図39に示すように、工程室21(処理フロア1)の天井面よりも受け渡し口22の上方位置における天井面を低く設定しても良い。
【0076】
更に、既述の工場に、搬送車5のフォーク5bの異常動作を防止するためのインターロック機構を設けても良い。即ち、受け渡し口22を介してフォーク5bを上昇させる時に、搬送車5の例えば故障によってフォーク5bが処理フロア1の天井面に衝突しそうになった場合に、制御部10を介さずに搬送車5の電源を直接遮断(オフに)する機構を設けても良い。このようなインターロック機構について一例を挙げて簡単に説明すると、インターロック機構は、受け渡し口22の上方における処理フロア1の天井面に設けられ、発光部と受光部とからなる光センサと、この光センサから伝達される信号(受光信号が途切れたこと)に基づいて、当該受け渡し口22の下方に位置する搬送車5の電源を遮断する電源遮断部(いずれも図示せず)とを備えている。そして、光センサにおいて受光信号が遮られると、即ち搬送車5のフォーク5bが処理フロア1の天井面に衝突しそうになると、受け渡し口22の下方に位置する搬送車5に対して電源スイッチをオフにするように信号が送信されて、フォーク5bが処理フロア1の天井面に衝突する前に当該搬送車5の電源が遮断される。
【0077】
この電源遮断部は、例えば物流フロア2の床面11に埋設された光センサや電磁誘導式のスイッチなどであっても良いし、この場合には、例えば工場の外壁及び床面11に引き回されたケーブルなどを介して、処理フロア1の天井面の光センサにおける信号が電源遮断部に伝達されて、搬送車5の下面に設けられた図示しないスイッチ部に対して電源の遮断信号が送信される。また、この電源遮断部としては、処理フロア1の天井面の光センサにおいて光が遮断されると、工場全体の電源をオフにする機構であっても良い。更に、電源遮断部としては、処理フロア1または物流フロア2が複数の領域に平面的に区画されていて、これら各領域毎に電力供給部が互いに独立して設けられている場合には、故障した搬送車5が置かれている領域(光センサにおいて光が遮断された領域)に対応する電力供給部の電力を遮断する機構であっても良い。
【0078】
また、図40に示すように、搬送容器Cの内部または外部を洗浄するための洗浄室121を物流フロア2に設けても良い。この図40中122は、洗浄室121に対して搬送容器Cを搬入するための搬入口であり、123は、洗浄室121から搬送容器Cを搬出するための搬出口である。また、図40中8d、8eは、搬送車5によって洗浄室121に搬送容器Cを搬入出するために、本線6aから搬入口122及び搬出口123に各々近接する位置に分岐する分岐路である。尚、洗浄室121内には、搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行うために、既述の受け渡し部材15と同様に構成された受け渡し機構がこれら搬入口122及び搬出口123に近接する位置に各々設けられている。
【0079】
この洗浄室121の内部には洗浄装置120が設けられており、この洗浄装置120は、図41に示すように、搬送容器Cを下方側から支持して鉛直軸周りに回転させる回転ステージ124と、この回転ステージ124上の搬送容器Cに対して側方側及び上方側から例えば粉末状のドライアイスを各々吹き付けるためのノズル125、125とを備えている。図41中126は、ノズル125、125を夫々水平方向や鉛直方向に移動させるための移動機構であり、Vはドライアイス供給路127に設けられたバルブである。ドライアイスは、供給源128からスクリューフィーダ129によってドライアイス供給路127に供給され、送気機構130から吐出されるガスによってノズル125から搬送容器Cに吹き付けられるように構成されている。
【0080】
そして、被処理物や処理物が取り出されて例えば内部が空になった使用済みの搬送容器Cは、受け渡し口22から搬送車5によって物流フロア2に取り出されて、洗浄室121に搬入される。この洗浄室121において、ドライアイスを搬送容器Cに吹き付けることによって、当該搬送容器Cの外側あるいは内側における表面の汚れが除去される。清浄になった搬送容器Cは、別の処理のために使用される。このようにドライアイスを用いて搬送容器Cを洗浄することによって、例えば搬送容器Cの内部に洗浄液が入ったり、図示しないパッキン部に残る水分によって続く工程で処理物に悪影響を及ぼしたりする不具合がない。尚、この洗浄装置120として、液体状の洗浄液(例えば蒸留水や純水など)を用いても良いし、この場合には洗浄装置120と共に、例えばドライエアを吹き付けて搬送容器Cを乾燥させる乾燥室を洗浄室121に設けても良い。このように液体状の洗浄液を用いる場合には、回転ステージ124に代えて、搬送容器Cを載置するための載置台が設けられ、搬送容器Cは静置された状態(回転していない状態)で洗浄液により洗浄される。
【0081】
また、既述の例では固形製剤を製造する医薬品工場を例に本発明について説明したが、例えばこのような固形製剤以外にも、被処理物に対して処理を行う工程室21が複数設けられた処理設備例えば食品、化学品を製造する工場などに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0082】
C 搬送容器
1 処理フロア
2 物流フロア
5 搬送車
21 工程室
22 受け渡し口
22a 区画壁
22b 開閉扉
22c 搬送口
55 スライド機構
55a 保持部
56 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための第2の階と、
複数の工程室のうち少なくとも一つの工程室の床面に形成され、当該工程室と前記第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して前記少なくとも一つの工程室と前記第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、前記第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、
前記受け渡し口の周囲において前記第1の階の床面から上方に向かって伸びるように設けられ、当該受け渡し口の上方領域と前記少なくとも一つの工程室の内部の処理雰囲気とを区画するための区画壁と、
被搬送物の受け渡しを行うために前記区画壁に形成された搬送口及びこの搬送口を開閉するための扉と、
この扉が開いている時に、被搬送物が前記扉の閉鎖時における占有領域に位置する状態で前記受け渡し機構との間で被搬送物の受け渡しを行い、前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置と前記扉よりも処理雰囲気側の位置との間で被搬送物を搬送できるように構成された搬送部と、を備えたことを特徴とする処理設備。
【請求項2】
前記搬送部は、前記扉よりも処理雰囲気側に設けられた支持部と、被搬送物を下方側から保持すると共に、前記受け渡しを行う位置と前記扉よりも処理雰囲気側の位置との間で当該支持部により水平方向に進退自在に支持された保持部と、を備えたスライド機構であることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項3】
前記搬送部は、前記扉よりも処理雰囲気側に設けられ、被搬送物を下方側から支持すると共に、前記処理雰囲気側の位置と前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置との間で被搬送物を水平方向に搬送する水平搬送機構と、
前記扉と前記受け渡し口との間に設けられ、前記受け渡し機構に対して受け渡しを行う位置における被搬送物を、下方側から前記水平搬送機構と前記受け渡し機構との間で進退自在に支持する補助搬送部と、を含み、
被搬送物は、前記受け渡し機構と前記水平搬送機構との間において、当該被搬送物における前記受け渡し口側の領域を前記補助搬送部により下方側から支持された状態で受け渡されると共に、この補助搬送部により下方側から支持されながら処理雰囲気側の位置に対して搬入出されることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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