説明

凹凸フィルムの製造方法

【課題】凹凸形成加工を比較的低温で行っても、フィルムに所望の凹凸を十分に付与できる凹凸フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂フィルム1aに溶媒2を適用した後、残留溶媒量20〜150重量%の樹脂フィルム1bに対して凹凸形成加工を行うことを特徴とする凹凸フィルム1cの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に凹凸が付与された凹凸フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムに凹凸を付与する方法として、例えば、液体を透明樹脂フィルムに含浸させる液体含浸手段により、透明樹脂フィルム内に液体を含ませて、凹凸形成加工時の前記樹脂フィルムの圧縮弾性率を低下させた後に、凹凸加工を行う技術が知られている(特許文献1)。そのような技術において、凹凸加工は、80℃以上に加熱した版を用いてエンボス加工を行うホットエンボス法が用いられる。
【特許文献1】特開2004−341070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した技術では、フィルム表面における軟化が十分ではないため、エンボス加工を比較的高温で行わないと、所望の凹凸を十分に付与できなかった。
【0004】
本発明は、凹凸形成加工を比較的低温で行っても、フィルムに所望の凹凸を十分に付与できる凹凸フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂フィルムに溶媒を適用した後、残留溶媒量20〜150重量%の樹脂フィルムに対して凹凸形成加工を行うことを特徴とする凹凸フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、凹凸形成加工を比較的低温で行っても、フィルムに所望の凹凸を十分に精度よく付与できる。特に、版の微細な凹凸をフィルムに対して、十分に高い転写性で付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る凹凸フィルムの製造方法は、樹脂フィルムに溶媒を適用した後、凹凸形成加工を行うものであり、少なくとも溶媒適用工程および凹凸形成工程を含むものである。以下、図1を用いて、各工程について詳しく説明する。図1は、本発明の凹凸フィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0008】
(溶媒適用工程)
本工程では樹脂フィルムに溶媒を適用する。
フィルムを形成する樹脂は特に制限されず、例えば、光学フィルムの分野で従来より使用されている樹脂が好ましく使用される。具体的には、セルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。より好ましくはセルロースエステル系樹脂からなるフィルムが使用される。
【0009】
本発明に係わる樹脂フィルム用の樹脂材料として、セルロースエステル系樹脂を用いる場合、セルロースエステル系樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステル系樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステル系樹脂は、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
【0010】
アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂は各置換度に合わせて上記アシル化剤を混合して反応させたものであり、アシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)と言う。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0011】
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、又はセルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂のようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネート樹脂は耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0012】
セルロースエステル系樹脂の数平均分子量は、40000〜200000が、成形した場合の機械的強度が強く、且つ、溶液流延法の場合は適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、50000〜150000である。又、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.4〜4.5の範囲であることが好ましい。
【0013】
本明細書中、平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することが出来る。
【0014】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0015】
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂について説明する。本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。
【0016】
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
【0017】
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
【0018】
本発明に係わるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
【0019】
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系樹脂も挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、例えば特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−2108号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報、特開2001−277430号公報、特開2003−139950号公報、特開2003−14901号公報、特開2003−161832号公報、特開2003−195268号公報、特開2003−211588号公報、特開2003−211589号公報、特開2003−268187号公報、特開2004−133209号公報、特開2004−309979号公報、特開2005−121813号公報、特開2005−164632号公報、特開2006−72309号公報、特開2006−178191号公報、特開2006−215333号公報、特開2006−268065号公報、特開2006−299199号公報等に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
【0020】
本発明に係わるシクロオレフィンポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0021】
又、シクロオレフィンポリマー100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
本発明に係わるポリカーボネート系樹脂に付き説明する。ポリカーボネート系樹脂としては種々があり、化学的性質及び物性の点から芳香族ポリカーボネートが好ましく、特にビスフェノールA系ポリカーボネートが好ましい。その中でも更に好ましくはビスフェノールAにベンゼン環、シクロヘキサン環、叉は脂肪族炭化水素基などを導入したビスフェノールA誘導体を用いたものが挙げられるが、特に中央炭素に対して非対称にこれらの基が導入された誘導体を用いて得られた、単位分子内の異方性を減少させた構造のポリカーボネートが好ましい。例えばビスフェノールAの中央炭素の2個のメチル基をベンゼン環に置き換えたもの、ビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環の一の水素をメチル基やフェニル基などで中央炭素に対し非対称に置換したものを用いて得られるポリカーボネート樹脂が好ましい。具体的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカン又はこれらのハロゲン置換体からホスゲン法又はエステル交換法によって得られるものであり、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルブタン等を挙げることが出来る。又、この他にも例えば、特開2006−215465号公報、特開2006−91836号公報、特開2005−121813号公報、特開2003−167121号公報等に記載されているポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂よりなる樹脂フィルムはポリスチレン系樹脂或いはメチルメタクリレート系樹脂或いはセルロースアセテート系樹脂等の透明樹脂と混合して使用してもよいし、又セルロースアセテート系フィルムの少なくとも一方の面にポリカーボネート樹脂を積層してもよい。
本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂よりなる樹脂フィルムはガラス転移点(Tg)が110℃以上であって、吸水率(23℃水中、24時間の条件で測定した値)が0.3%以下のものを使用するのがよい。より好ましくはTgが120℃以上であって、吸水率が0.2%以下のものを使用するのがよい。
【0022】
フィルムの厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は10〜200μm、好ましくは30〜150μmである。
【0023】
フィルムには紫外線吸収剤、可塑剤、マット剤、酸化防止剤、導電性物質、帯電防止剤、難燃剤、滑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0024】
フィルムは公知のいかなる方法によって製造されてよく、例えば、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等によって製造可能である。
【0025】
フィルムは延伸処理されていてよく、例えば、直交する2軸において、それぞれの軸方向で1.1〜3倍に延伸させたものを使用してもよい。
【0026】
フィルムは上記樹脂からなる単層構造を有していてもよいし、または上記樹脂からなる表面層を基材層上に有してなる多層構造を有していてもよい。多層構造を有するフィルムは上記樹脂からなる表面層の表面が凹凸形成面となるように使用され、当該表面層と基材層との間に1層または2層以上の中間層を有してもよい。凹凸形成面とは後述の凹凸形成工程において鋳型が接触する面である。
【0027】
フィルムが適用される溶媒は、後述する凹凸形成加工直前においてフィルムが所定の残留溶媒量を有し得る限り特に制限されず、フィルムを膨潤させ得る溶媒が使用される。膨潤とはフィルム内に溶媒が浸透し、結果として含浸される現象である。フィルムを膨潤させ得る溶媒として、例えば、フィルムを溶解させ得る、いわゆる良溶媒と、フィルムを溶解させ得ない、いわゆる貧溶媒との混合溶媒が使用できる。良溶媒と貧溶媒とは混合溶媒中、相溶するものが使用される。相溶とは、それらの溶媒を混合しても、白濁せず、透明かつ均一に混合することをいう。
【0028】
混合溶媒の良溶媒および貧溶媒はフィルムを構成する樹脂種に依存して選択される。
例えばセルロースエステル系樹脂の場合、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶媒となる。
【0029】
このように使用する樹脂により、良溶剤及び貧溶剤は異なってくるので、セルロースエステル系樹脂の場合の一例について説明する。良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、蟻酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘクサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0030】
良溶媒と貧溶媒との混合比率は、後述する凹凸形成加工直前においてフィルムが所定の残留溶媒量を有し得る限り特に制限されず、通常は良溶媒/貧溶媒の重量比で0.2〜2、特に0.3〜1.5が適切である。
【0031】
溶媒の温度は特に制限されず、例えば5〜40℃、通常は10〜35℃であってよい。製造コストの観点から、常温が好ましい。本明細書中、常温とは周囲温度に等しい温度であり、通常は10〜25℃の範囲内の温度である。
【0032】
溶媒の適用方法は、フィルムの少なくとも凹凸形成面に対して溶媒を均一に付与できる限り特に制限されず、例えば、図1に示すように浸漬槽2内の溶媒3にフィルム1aを浸漬する方法、フィルムに溶媒を噴霧または塗布する方法等が挙げられる。図1においてフィルム1aは巻き出しロール10から巻き出され連続的に処理されているが、これに制限されるものではなく、所望寸法に切り出されたフィルムを順次、処理してもよい。
【0033】
溶媒の適用時間、すなわちフィルム凹凸形成面と溶媒との接触時間は、後述する凹凸形成加工直前においてフィルムが所定の残留溶媒量を有し得る限り特に制限されず、通常は0.1〜10秒間、特に0.2〜5秒間が適切である。
【0034】
(凹凸形成工程)
本工程は、フィルムに凹凸を形成する工程である。本発明においては、凹凸形成加工される時のフィルムの残留溶媒量を20〜150重量%、好ましくは20〜100重量%とする。残留溶媒量が少なすぎると、比較的低温では所望形状の凹凸を十分に付与できない。残留溶媒量が多すぎると、凹凸形成加工時において、凹凸を付与するための鋳型(版)に、フィルムを形成する樹脂が付着する剥離残りが生じ、所望形状の凹凸を十分に付与できない。
【0035】
本明細書中、残留溶媒量は下記の式で表される値を用いている。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mは凹凸形成加工直前のフィルム重量であり、詳しくは溶媒を適用したフィルムを、凹凸形成加工直前において液切りして、フィルム表面に滴状に存在する溶媒を除去した直後のフィルムを測定することにより得られる値である。
NはMの測定に用いたフィルムを110℃で3時間乾燥させた時のフィルム重量である。
【0036】
フィルムの残留溶媒量は、例えば、混合溶媒の混合比率、溶媒の適用時間、溶媒を適用してから凹凸形成加工するまでの時間等を適宜、選択・調整することによって制御可能である。
【0037】
例えば、混合溶媒における溶解性溶媒の比率を上げると、残留溶媒量は増大し、当該比率を下げると、残留溶媒量は減少する。
また例えば、溶媒の適用時間を長くすると、残留溶媒量は増大し、当該時間を短くすると、残留溶媒量は減少する。
また例えば、溶媒を適用してから凹凸形成加工するまでの時間を短くすると、残留溶媒量は増大し、当該時間を長くすると、乾燥により残留溶媒量は減少する。
【0038】
具体的には、メチレンクロライド/メタノール(1/1重量比)の混合溶媒にフィルムを0.1〜3秒間適用するとき、フィルムの搬送速度および溶媒適用工程から凹凸形成工程までの搬送路の長さを調整して、溶媒を適用してから凹凸形成加工するまでの時間を0.5〜60秒に制御することによって、残留溶媒量を上記範囲内に制御できる。
【0039】
凹凸形成方法は所望の凹凸をフィルムに付与できる限り特に制限されず、例えば、鋳型でフィルムをプレスして鋳型が有する凹凸形状をフィルムに転写させる方法が使用される。そのような方法として、具体的には、ロール版プレス方式、平板版プレス方式、連続ベルト版プレス方式が挙げられる。好ましくはロール版プレス方式を採用し、詳しくは図1に示すように、所望の凹凸を表面に有する鋳型ロール4とバックロール5との間に、所定の残留溶媒量を示すフィルム1bを通過させる。
【0040】
凹凸形成加工を行う温度は特に制限されず、例えば10〜50℃の比較的低温であってよい。製造コストの観点から、常温が好ましい。凹凸形成加工を行う温度とは、鋳型(鋳型ロール4)、フィルム、バックロール5および周囲の温度を包含する概念で用いている。
【0041】
本発明においては比較的微細な形状の凹凸を有効に付与できる。例えば、凹凸深さ100nm〜100μm、および凹凸ピッチ100nm〜100μmの微細な凹凸であっても、フィルムに高精度で転写させることができる。凹凸形状は、突条を有していても、曲面、平坦部を有していても良く、その用途などにより形状を任意に選択し、微細形状凹凸を付与することが出来る。例えば、複数の突条を上記深さおよびピッチで有する微細凹凸であって、各突条の断面形状が三角形である凸部の頂角は、10°以下、特に5°以下の精度で転写できる。深さ精度は90%以上を達成する。
【0042】
鋳型表面の凹凸形状は規則的であってもよいし、または不規則的であってもよい。鋳型、特に鋳型ロール4の材質はプレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、ガラス、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスとのコンポジットなど、限定されず使用できる。鋳型はガラスや金属の表面に凹凸を形成する種々の方法で製造できる。鋳型表面に凹凸形成する方法としては、放電加工、ショット加工、エッチング加工、レーザー加工等が利用できる。鋳型に用いられる金属は所望の凹凸を付与できる限り特に制限されず、例えば、高炭素鋼、クロム−モリブデン鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などが挙げられる。鋳型表面を硬化する目的で、焼き入れ処理を施したり、ハードクロムなどのメッキ処理の他、カナック処理などの窒化表面処理等を行ってもよい。
【0043】
鋳型ロール4の外径は特に限定はなく、ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径を適用することができるが、フィルムに凹凸を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点により、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。
【0044】
鋳型ロール4に対向して設置されるバックロール5の材質もプレス圧に耐えられる剛性を有するものであればよく、金属、セラミックス、合成樹脂、合成樹脂と金属および/またはガラスのコンポジットなど、限定されず使用できる。
【0045】
バックロール5の外径に特に限定はない。ロールとして製作できる50mm以上3000mm以下の外径が適用できるが、フィルムに凹凸を精度良く付与する点、ならびに重量の肥大化を避ける点において、実質的には50mm以上2000mm以下の外径である。バックロール5の代わりに、ここでも鋳型ロール4を用いることによって、フィルムの両面に凹凸を精度よく形成できる。このとき、フィルムにおける当該鋳型ロール側の面は前記した樹脂からなっている必要がある。
【0046】
プレス加重およびプレス時間は、鋳型の凹凸をフィルムに十分に転写できれば特に制限されない。プレス加重は、例えばロール長2000mmの鋳型ロールを用いる場合で、0.5〜18t、好ましくは1〜15tの比較的低加重で十分である。プレス時間は0.0001〜1秒間、特に0.001〜0.5秒間が好ましい。
【0047】
特にロール版ブレス方式を採用する場合におけるフィルムの搬送速度は、10〜150m/分が好ましく、20〜120m/分がさらに好ましい。
【0048】
凹凸形成を行った後は、凹凸を形成されたフィルム1cを、例えば、所望により乾燥した後、図1に示すように巻き取りロール20によって巻き取ればよい。
【0049】
(用途)
以上の方法で製造された凹凸フィルムは光学フィルム、例えば、プリズムシート、レンズシート、回折格子、無反射構造体等としての使用に特に適している。
【0050】
例えば、凹凸フィルムをプリズムシートとして使用する場合、液晶ディスプレイ用バックライト用輝度向上フィルムとして好ましく用いられる。
【0051】
また例えば、凹凸フィルムを無反射構造体として使用する場合、ディスプレイ最表面の反射防止フィルムとして好ましく用いられる。
【実施例】
【0052】
[セルロースエステルフィルムの製造]
密閉容器にメチレンクロライド440重量部およびエタノール35重量部を投入し、攪拌しながら、セルロースエステル(アセチル基置換度2.9、Mn=16万、Mw/Mn=2.0)100重量部、トリメチロールプロパントリベンゾエート5重量部、エチルフタリルエチルグリコレート5重量部、チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製)1重量部、およびアエロジルR972V(日本アエロジル(株)社製)0.3重量部を順に投入し、加熱、攪拌しながら完全に溶解し、混合した。微粒子は溶剤の一部で分散して添加した。溶液を流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、セルロースエステル溶液を得た。
【0053】
次に、33℃に温度調整したセルロースエステル溶液を、ダイに送液して、ダイスリットからステンレスベルト上に均一に流延した。ステンレスベルトの流延部は裏面から37℃の温水で加熱した。流延後、金属支持体上のドープ膜(ステンレスベルトに流延以降はウェブということにする)に44℃の温風を当てて乾燥させ、剥離の際の残留溶媒量が120質量%で剥離し、剥離の際の張力をかけて所定の縦延伸倍率となるように延伸し、次いで、テンターでウェブ端部を把持し、幅手方向に表に示した延伸倍率となるように延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持した後、幅方向の張力を緩和させた後、幅保持を解放し、更に125℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送させて、乾燥を行い、幅1.4〜2mの、かつ端部に幅1.5cm、高さ8μmのナーリングを有する所定の膜厚のセルロースエステルフィルムを製造した。
製造したセルロースエステルフィルムについて、ウェブの剥離直簿の縦延伸倍率は1.1倍、横延伸倍率は1.1倍、膜厚は80μm、製膜幅は2000mmであった。
【0054】
[実施例/比較例]
図1に示す装置を用いて凹凸フィルムを製造した。詳しくは、上記セルロースエステルフィルム1aを搬送速度50m/minで搬送し、メチレンクロライドとエタノールの混合溶媒比が1:1である溶媒液槽3(パス長1m)に浸漬させた。その後、同搬送速度で、フィルム1bを、頂角90°、凹凸深さ25um、凹凸ピッチ50umの一次元プリズム形状を表面に有する鋳型ロール(直径φ=100mm、ロール長l=2000mm)4とバックロール(MCナイロンロール;直径φ=100mm、肉厚10mm、ロール長l=2000mm)5との間を室温で通過させた。
【0055】
各実施例/比較例では、溶媒適用工程から凹凸形成工程までの搬送路の長さを調整して、溶媒を適用してから凹凸形成加工するまでの時間を制御することによって、所定の残留溶媒量を達成した。また所定のプレス加重を採用した。
【0056】
[評価手法]
転写されたプリズム形状の線と直交する角度で、フィルム断面をミクロトームで切削し、断面を光学顕微鏡で観測し、鋳型のプリズム形状に対してどの程度形状が転写されたかを評価した。
【0057】
(深さ転写性)
製造されたフィルムにおいて、プリズム形状の凹凸深さH(頂角部分とエッジ部面との距離)を計測し、鋳型の凹凸深さH(25um)に対する転写割合(H/H)に基づいて評価した。
○:転写割合が90%以上であった;
△:転写割合が70%以上であった実用上問題あり;
×:転写割合が70%未満であった。
【0058】
(頂角転写性)
製造されたフィルムにおいて、鋳型凹凸の頂角に対応するプリズム形状の頂角θを計測し、鋳型の頂角(90°)との差(|θ−90°|)に基づいて評価した。
◎:差が5°以下であった;
○:差が10°以下であった;
△:差が20°以下であった実用上問題あり;
×:差が20°より大きかった。
【0059】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の凹凸フィルムの製造方法を実施する装置の一実施形態を示す概略構成図である
【符号の説明】
【0061】
1a:1b:1c:フィルム、2:浸漬槽、3:溶媒、4:鋳型ロール、5:バックロール、10:巻き出しロール、20:巻き取りロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムに溶媒を適用した後、残留溶媒量20〜150重量%の樹脂フィルムに対して凹凸形成加工を行うことを特徴とする凹凸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記凹凸形成加工を10〜50℃で行うことを特徴とする請求項1に記載の凹凸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記凹凸形成加工を常温で行うことを特徴とする請求項1に記載の凹凸フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226829(P2009−226829A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77239(P2008−77239)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】