出力回路
【課題】出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することが可能な出力回路を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる出力回路は、高電位側電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される出力トランジスタMP13と、低電位側電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される出力トランジスタMN14と、出力トランジスタMP13のゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、出力トランジスタMP13のドレインに第2の端子が接続されたクランプ用トランジスタMP15と、を備える。
【解決手段】本発明にかかる出力回路は、高電位側電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される出力トランジスタMP13と、低電位側電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される出力トランジスタMN14と、出力トランジスタMP13のゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、出力トランジスタMP13のドレインに第2の端子が接続されたクランプ用トランジスタMP15と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力回路に関し、特に出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するのに適した出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を駆動するLCD(Liquid Crystal Display)ドライバは、出力駆動回路としてボルテージフォロワ接続された演算増幅器を備えている。この演算増幅器の過渡特性は、表示品質に大きく影響を及ぼすことが知られている。特に出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生した場合、画質が劣化してしまうという問題がある。したがって、LCDドライバに備えられた演算増幅器は、その出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制することが求められている。
【0003】
しかし、一般的に、MOSトランジスタの相互コンダクタンスgmは、バイポーラトランジスタよりも低い。そのため、MOSアナログにより構成される演算増幅器が容量性負荷を駆動する場合、その駆動波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題がある。対策として、演算増幅器に設けられた出力MOSトランジスタのWサイズを大きくすることにより、相互コンダクタンスgmを大きくする方法がある。しかし、出力MOSトランジスタのWサイズを大きくすると、チップサイズが大きくなり、ひいては、コストアップに繋がる。
【0004】
図7A及び図7Bに、特許文献1に開示された正専用アンプ(以下、正側増幅器と称す)100及び負専用アンプ(以下、負側増幅器と称す)200の等価回路を示す。図7A及び図7Bは、近年のLCDドライバに採用されているHalf_VDD用の演算増幅器である。
【0005】
なお、図7Aに示す正側増幅器100は、液晶表示装置において基準電圧COM(液晶の対向電極に与える基準電圧)より高い電圧側を駆動する増幅器である。図7Bに示す負側増幅器200は、基準電圧COMより低い電圧側を駆動する増幅器である。このように、液晶表示装置の分野においては、基準電圧COMを基準として正/負が判断される。したがって、一般的な電気工学でいうところの正電圧/負電圧とは異なる。
【0006】
ここで、正側増幅器100は、液晶の正極性を駆動する増幅器であるため、基準電圧COMをVDDとVSSとの2分点であるVDD/2とする時、電源電圧VDD〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。一方、負側増幅器200は、液晶の負極性を駆動する増幅器であるため、接地電圧VSS〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。したがって、正側増幅器100及び負側増幅器200は、出力段回路(出力回路)に供給する電源電圧範囲を、他の回路(ここでは差動段回路)に供給する電源電圧範囲の約半分とし、消費電力の増大を抑制している。
【0007】
図7Aに示す正側増幅器100は、差動段回路101及び出力段回路(出力回路)102を備える。出力段回路102は、PチャネルMOSトランジスタMP103及びNチャネルMOSトランジスタMN104を有する。出力段回路102では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に中間電圧VMLが供給される。なお、中間電圧VMLは、電源電圧VDDの約半分の電圧レベルを示す。出力段回路102以外の回路(差動段回路101)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0008】
トランジスタMP103では、ソースに電源電圧VDDが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路101の一方の出力端子が接続される。トランジスタMN104では、ソースに中間電圧VMLが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路101の他方の出力端子が接続される。
【0009】
図7Aに示す正側増幅器100において、差動段回路101は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力段回路102に対して出力する。出力段回路102において、トランジスタMP103のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMP103のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。トランジスタMN104のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMN104のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、トランジスタMP103のソースに電源電圧VDDが供給され、トランジスタMN104のソースに中間電圧VMLが供給されているため、正側増幅器100の出力信号の電圧範囲はVDD/2〜VDDとなる。
【0010】
図7Bに示す負側増幅器200は、差動段回路201及び出力段回路(出力回路)202を備える。出力段回路202は、PチャネルMOSトランジスタMP203及びNチャネルMOSトランジスタMN204を有する。出力段回路202では、高電位側電源端子に中間電圧VMHが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。なお、中間電圧VMHは、電源電圧VDDの約半分の電圧レベルを示す。出力段回路202以外の回路(差動段回路201)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0011】
トランジスタMP203では、ソースに中間電圧VMHが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路201の一方の出力端子が接続される。トランジスタMN204では、ソースに接地電圧VSSが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路201の他方の出力端子が接続される。
【0012】
図7Bに示す負側増幅器200において、差動段回路201は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力段回路202に対して出力する。出力段回路202において、トランジスタMP203のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMP203のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。トランジスタMN204のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMN204のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、トランジスタMP203のソースに中間電圧VMHが供給され、トランジスタMN204のソースに接地電圧VSSが供給されているため、負側増幅器200の出力信号の電圧範囲はVSS〜VDD/2となる。
【0013】
なお、負荷に供給される電流を制御する回路には、クランプ回路を用いた回路がある。図8に、特許文献2に開示されたトランジスタ出力回路の回路図を示す。図8に示すトランジスタ出力回路300は、ゲートドライブ回路301と、出力トランジスタ302と、クランプ回路304と、抵抗307と、を備え、出力トランジスタ302を介して負荷305に流れる電流を制御する回路である。図9に示すように、出力トランジスタ302のゲート−ソース間電圧Vgsが大きくなるほど、出力トランジスタ302のソース−ドレイン間に流れる電流Idは大きくなる。つまり、出力トランジスタ302のゲート−ソース間電圧Vgsが所定電圧以上になると、負荷305に過電流が供給される。したがって、トランジスタ出力回路300は、出力トランジスタ302のゲート−ソース間にクランプ回路304を備えることにより、ゲート−ソース間電圧Vgsを所定電圧以上に上昇させないようにして過電流を抑制している。
【0014】
また、特許文献3には、電源から負荷に対して通電を行う経路内に直列に接続された同一導電型の2つのMOSトランジスタと、これら2つのMOSトランジスタのゲート−ドレイン間にそれぞれ接続されるクランプ回路と、を備えた負荷駆動装置が開示されている。各クランプ回路は、逆流防止用のダイオードと、クランプ用のツェナーダイオードと、を有する(文献中の図5参照)。
【0015】
また、特許文献4には、第1及び第2の電源端子間に設けられた誘導負荷装置(L1)と、当該誘導負荷装置(L1)と直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタ(N1)と、トランジスタ(N1)のゲート−ドレイン間に接続されたPチャネル型のクランピングトランジスタ(P1)と、を備えた誘導負荷ダンプ回路が開示されている(文献中の図3参照)。なお、クランピングトランジスタ(P1)のゲートには電源電圧Vccが供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−194485号公報
【特許文献2】特開平3−117017号公報
【特許文献3】特許第4228960号公報
【特許文献4】特表平7−505994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、一般的に、従来技術の出力回路を備えた増幅器では、その出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0018】
特に、特許文献1の場合、図7A及び図7Bに示すように、出力段回路(出力回路)に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路に供給する電源電圧の範囲の約半分としている。そのため、出力段回路に設けられた2つの出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なってしまう。
【0019】
例えば、図7Aに示す正側増幅器100の場合、トランジスタMP103のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、トランジスタMN104のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMLとなる。つまり、出力トランジスタMP103のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMN104の場合と比較して、約2倍となる。したがって、正側増幅器100では、立ち上がりの過渡特性時にオーバーシュートが発生しやすいという問題があった。言い換えると、正側増幅器100では、その立ち上がりの出力波形にオーバーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0020】
一方、図7Bに示す負側増幅器200の場合、トランジスタMN204のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、トランジスタMP203のゲート−ソース間電圧は、最大でVMH−VSSとなる。つまり、出力トランジスタMN204のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMP203の場合と比較して、約2倍となる。したがって、負側増幅器200では、立ち下がりの過渡特性時にアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。言い換えると、負側増幅器200では、その立ち下がりの出力波形にアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0021】
このように、従来技術の出力回路を備えた増幅器では、その出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明にかかる出力回路は、第1の電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第1の出力MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMP13)と、第2の電源端子と前記外部出力端子との間に設けられ、前記外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第2の出力MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMN14)と、前記第1の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第1の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第1のクランプ用MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMP15)と、を備える。
【0023】
上述のような回路構成により、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することが可能な出力回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明の実施の形態1にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図1B】本発明の実施の形態1にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図2A】本発明の実施の形態2にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図2B】本発明の実施の形態2にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路の出力波形を示す図である。
【図4A】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路に設けられた出力トランジスタのゲート電圧の変化を示す図である。
【図4B】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路に設けられた出力トランジスタのゲート電圧の変化を示す図である。
【図5A】本発明の実施の形態3にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図5B】本発明の実施の形態3にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかる出力回路の出力波形を示す図である。
【図7A】従来技術の出力回路を備えた演算増幅器を示す回路図である。
【図7B】従来技術の出力回路を備えた演算増幅器を示す回路図である。
【図8】従来技術の出力回路を示す回路図である。
【図9】MOSトランジスタのID−VDS特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
実施の形態1
図1A及び図1Bに、本発明の実施の形態1にかかる出力回路を備えた正側増幅器10及び負側増幅器20を示す。図1A及び図1Bは、LCDドライバ等に採用されているHalf_VDD用の演算増幅器である。
【0028】
ここで、図1Aに示す正側増幅器10は、液晶の正極性を駆動する増幅器であるため、電源電圧VDD〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。一方、図1Bに示す負側増幅器20は、液晶の負極性を駆動する増幅器であるため、接地電圧VSS〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。したがって、正側増幅器10及び負側増幅器20は、出力回路に供給する電源電圧範囲を、他の回路(差動段回路)に供給する電源電圧範囲の約半分とし、消費電力の増大を抑制している。以下、具体的に説明する。
【0029】
図1Aに示す正側増幅器10は、差動段回路11及び出力回路12を備える。出力回路12は、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、を有する。なお、本実施の形態では、出力トランジスタMP13及びクランプ用トランジスタMP15がPチャネルMOSトランジスタであって、出力トランジスタMN14がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0030】
出力回路12では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に中間電圧VMLが供給される。なお、本実施の形態では、中間電圧VMLが電源電圧VDDの約半分の電圧レベルである場合を例に説明するが、これに限られない。中間電圧VMLは電源電圧VDDよりも低い電圧レベルに適宜変更可能である。出力回路12以外の回路(差動段回路11)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0031】
出力トランジスタMP13では、ソースに電源電圧VDDが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路11の一方の出力端子が接続される。出力トランジスタMN14では、ソースに中間電圧VMLが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路11の他方の出力端子が接続される。クランプ用トランジスタMP15では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMP13のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMP13のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMP15の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。
【0032】
図1Aに示す正側増幅器10において、差動段回路11は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力回路12に対して出力する。出力回路12において、出力トランジスタMP13のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMP13のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。出力トランジスタMN14のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMN14のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、出力トランジスタMP13のソースに電源電圧VDDが供給され、出力トランジスタMN14のソースに中間電圧VMLが供給されているため、正側増幅器10の出力信号の電圧範囲はVDD/2〜VDDとなる。
【0033】
このように、正側増幅器10は、出力回路12に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路11に供給する電源電圧の約半分としている。そのため、出力回路12に設けられた2つの出力トランジスタMP13,MN14のゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なる。具体的には、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMLとなる。つまり、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMN14の場合と比較して、約2倍となる。したがって、正側増幅器10では、何も対策しなければ、出力トランジスタMP13より出力トランジスタMN14の電流駆動能力が相対的に小さくなるため、その立ち上がりの出力波形にオーバーシュートが発生する可能性がある。もしくは、中間電圧VMLの値に合わせて出力トランジスタMN14のディメンジョンを無駄に大きくする必要があり、レイアウトサイズが大きくなってしまう。
【0034】
そこで、本実施の形態にかかる出力回路12は、出力トランジスタMP13のゲート−ドレイン間に設けられたクランプ用トランジスタMP15にクランプ動作させることにより、出力波形のオーバーシュートを抑制している。具体的には、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMP15のしきい値電圧Vt分以上低下した場合、クランプ用トランジスタMP15が導通状態になる。これは、クランプ用トランジスタMP15の第1の端子(出力トランジスタMP13のゲートと接続)の電位がクランプ用トランジスタMP15の第2の端子(出力トランジスタMP13のドレインと接続)より低くなるため、第1の端子がドレインになり、第2の端子がソースになることにより、第1の端子に接続する当該クランプ用トランジスタMP15のゲートの電圧がソース電圧に対して−Vt以下の電圧になるためである。つまり、クランプ用トランジスタMP15は、順方向にダイオード接続された状態となっている。
【0035】
したがって、出力トランジスタMP13のゲート電圧は、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧によってクランプされる。より具体的には、出力トランジスタMP13のゲート電圧は、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMP15のしきい値電圧Vt分低い電圧レベルにクランプされる。これにより、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧の上昇が制限されるため、当該出力トランジスタMP13のドレイン電流は制限される。その結果、正側増幅器10は、その出力波形のオーバーシュートを抑制することができる。
【0036】
なお、出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧は、上述のように、最大でVDD−VML、つまり、出力トランジスタMP13の場合と比較して約半分である。したがって、出力トランジスタMN14には、出力トランジスタMP13の場合と異なり、クランプ用トランジスタを設ける必要は無い。また、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧より高い状態の場合は、クランプ用トランジスタMP15は逆方向にダイオード接続された状態となっているため、非導通状態になっている。この状態では、クランプ用トランジスタMP15は、出力トランジスタMP13の動作に影響を与えることはほとんどない。
【0037】
図1Bに示す負側増幅器20は、差動段回路21及び出力回路22を備える。出力回路22は、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMN26と、を有する。なお、本実施の形態では、出力トランジスタMP23がPチャネルMOSトランジスタであって、出力トランジスタMN24及びクランプ用トランジスタMN26がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0038】
出力回路22では、高電位側電源端子に中間電圧VMHが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。なお、本実施の形態では、中間電圧VMHが電源電圧VDDの約半分の電圧レベルである場合を例に説明するが、これに限られない。中間電圧VMHは接地電圧VSSよりも高い電圧レベルに適宜変更可能である。出力回路22以外の回路(差動段回路21)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0039】
出力トランジスタMP23では、ソースに中間電圧VMHが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路21の一方の出力端子が接続される。出力トランジスタMN24では、ソースに接地電圧VSSが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路21の他方の出力端子が接続される。クランプ用トランジスタMN26では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMN24のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMN24のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMN26の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。
【0040】
図1Bに示す負側増幅器20において、差動段回路21は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力回路22に対して出力する。出力回路22において、出力トランジスタMP23のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMP23のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。出力トランジスタMN24のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMN24のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、出力トランジスタMP23のソースに中間電圧VMHが供給され、出力トランジスタMN24のソースに接地電圧VSSが供給されているため、負側増幅器20の出力信号の電圧範囲はVSS〜VDD/2となる。
【0041】
このように、負側増幅器20は、出力回路22に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路21に供給する電源電圧の約半分としている。そのため、出力回路22に設けられた2つの出力トランジスタMP23,MN24のゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なる。具体的には、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMHとなる。つまり、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMP23の場合と比較して、約2倍となる。したがって、負側増幅器20では、何も対策しなければ、出力トランジスタMN24より出力トランジスタMP23の電流駆動能力が相対的に小さくなるため、その立ち下がりの出力波形にアンダーシュートが発生する可能性がある。もしくは、中間電圧VMHの値に合わせて出力トランジスタMN23のディメンジョンを無駄に大きくする必要があり、レイアウトサイズが大きくなってしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態にかかる出力回路22は、出力トランジスタMN24のゲート−ドレイン間に設けられたクランプ用トランジスタMN26にクランプ動作させることにより、出力波形のアンダーシュートを抑制している。具体的には、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMN26のしきい値電圧Vt分以上上昇した場合、クランプ用トランジスタMN26が導通状態になる。これは、クランプ用トランジスタMN26の第1の端子(出力トランジスタMN24のゲートと接続)の電位がクランプ用トランジスタMN26の第2の端子(出力トランジスタMN24のドレインと接続)より高くなるため、第1の端子がドレインになり、第2の端子がソースになることにより、第1の端子に接続する当該クランプ用トランジスタMN26のゲートの電圧がソース電圧に対して+Vt以上の電圧になるためである。つまり、クランプ用トランジスタMN26は、順方向にダイオード接続された状態となっている。
【0043】
したがって、出力トランジスタMN24のゲート電圧は、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧によってクランプされる。より具体的には、出力トランジスタMN24のゲート電圧は、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMN26のしきい値電圧Vt分高い電圧レベルにクランプされる。これにより、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧の上昇が制限されるため、当該出力トランジスタMN24のドレイン電流は制限される。その結果、負側増幅器20は、その出力波形のアンダーシュートを抑制することができる。
【0044】
なお、出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧は、上述のように、最大でVDD−VMH、つまり、出力トランジスタMN24の場合と比較して約半分である。したがって、出力トランジスタMP23には、出力トランジスタMN24の場合と異なり、クランプ用トランジスタを設ける必要は無い。また、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧より低い状態の場合は、クランプ用トランジスタMN26は逆方向にダイオード接続された状態となっているため、非導通状態になっている。この状態では、クランプ用トランジスタMN26は、出力トランジスタMN24の動作に影響を与えることはほとんどない。
【0045】
次に、本実施の形態にかかる出力回路の効果を、図3を参照して説明する。図3は、従来技術の出力回路を備えた増幅器における外部出力端子Voutの出力過渡特性波形と、本実施の形態にかかる出力回路を備えた増幅器における外部出力端子Voutの出力過渡特性波形と、を示す図である。なお、図3に示す各波形は、同じ条件でシミュレーションした結果をプロットしたものである。この波形を見てわかるように、従来技術の出力回路の場合、出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しているのがわかる。一方、本実施の形態にかかる出力回路の場合、出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートが抑制されているのがわかる。なお、本実施の形態にかかる出力回路では、出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートが抑制されてもセットリング時間に遅延は生じず、従来技術の場合と同等である。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる出力回路がその出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するメカニズムを、図4A及び図4Bを参照して説明する。図4Aは、正側増幅器における出力トランジスタ(MP13、MP103)のゲート電圧のシミュレーション過渡解析波形である。図4Bは、負側増幅器における出力トランジスタ(MN24、MN204)のゲート電圧のシミュレーション過渡解析波形である。なお、図4A及び図4Bのシミュレーション結果は、図3のシミュレーション結果に対応している。図4Aの波形を見てもわかるように、本実施の形態にかかる出力回路12では、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、所定の電圧レベル以下にならないようにクランプされている。つまり、出力回路12では、出力トランジスタMP13のゲート電圧がクランプされて、当該出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧が所定の電圧レベル以上にならないようにしている。同様に、図4Bの波形を見てもわかるように、本実施の形態にかかる出力回路22では、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、所定の電圧レベル以上にならないようにクランプされている。つまり、出力回路22では、出力トランジスタMN24のゲート電圧がクランプされて、当該出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧が所定の電圧レベル以上にならないようにしている。これにより、オーバーシュートやアンダーシュートを発生させないようにゲート−ソース間電圧の最大値を制御して出力信号の制御をすると同時に、必要なゲート−ソース間電圧を確保することにより、セットリングタイムを遅くしすぎないように出力信号の制御をすることができるようになる。
【0047】
このように、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間にクランプ用トランジスタを備えることにより、当該出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の上昇を制限する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレイン電流を制限することができるため、その出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【0048】
なお、本実施の形態にかかる出力回路は、オーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するために、1つのクランプ用MOSトランジスタを追加するだけで良い。したがって、チップサイズへのインパクトはほとんど無視できるレベルである。
【0049】
また、クランプ回路として、ダイオード接続されたMOSトランジスタの代わりに、PN接合のダイオードを用いた場合でも、原理的には同様の効果を得ることができる。しかし、PN接合のダイオードを用いた場合、クランプ電圧である約0.6〜0.7Vを超えた後のインピーダンスが急峻に低くなるため、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合と比較してクランプ動作が効き過ぎる。そのため、出力トランジスタの駆動能力が過剰に低下してしまう。
【0050】
これに対し、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合、クランプ電圧が当該MOSトランジスタのしきい値電圧であり、かつ、そのインピーダンスはPN接合のダイオードを用いた場合よりも高くなる。これは、ダイオード接続されたMOSトランジスタの相互コンダクタンスgmが、PN接合のダイオードと比較して約1桁以上低いことに起因する。そのため、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合、PN接合のダイオードを用いた場合よりも滑らかなクランプ特性を得ることができる。つまり、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた方が、本発明の課題を解決するのに適している。
【0051】
実施の形態2
図2A及び図2Bに、本発明の実施の形態2にかかる出力回路を備えた正側増幅器10a及び負側増幅器20aを示す。図2Aに示す正側増幅器10aは、図1Aに示す正側増幅器10と比較して、出力回路12に代えて、出力回路12にクランプ用トランジスタMN16を追加した出力回路12aを備える。図2Bに示す負側増幅器20aは、図1Bに示す負側増幅器20と比較して、出力回路22に代えて、出力回路22にクランプ用トランジスタMP25を追加した出力回路22aを備える。
【0052】
具体的には、図2Aの正側増幅器10aにおいて、出力回路12aは、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、クランプ用トランジスタMN16と、を有する。なお、本実施の形態では、クランプ用トランジスタMN16がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0053】
クランプ用トランジスタMN16では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMN14のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMN14のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMN16の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。図2Aのその他の回路構成は、図1Aの場合と同様であるため、説明を省略する。このように、本実施の形態にかかる出力回路12aは、2つの出力トランジスタMP13、MN14に対してクランプ用トランジスタMP15、MN16を備える。それにより、本実施の形態にかかる出力回路12aは、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができる。
【0054】
また、図2Bの負側増幅器20aにおいて、出力回路22aは、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMP25と、クランプ用トランジスタMN26と、を有する。なお、本実施の形態では、クランプ用トランジスタMP25がPチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0055】
クランプ用トランジスタMP25では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMP23のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMP23のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMP25の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。図2Bのその他の回路構成は、図1Bの場合と同様であるため、説明を省略する。このように、本実施の形態にかかる出力回路22aは、2つの出力トランジスタMP23、MN24に対してクランプ用トランジスタMP25、MN26を備える。それにより、本実施の形態にかかる出力回路22aは、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができる。
【0056】
なお、図1Aに示す正側増幅器10では、出力回路12に供給される中間電圧VMLが接地電圧VSS付近の低い電圧レベルである場合、その出力波形の立ち下がりにアンダーシュートが発生する可能性がある。一方、図2Aに示す正側増幅器10aでは、クランプ用トランジスタMN16を用いて出力トランジスタMN14のゲート電圧をクランプすることにより、当該出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧の上昇が制限される。それにより、出力トランジスタMN14のドレイン電流が制限される。その結果、正側増幅器10aは、その出力波形のアンダーシュートを抑制することができる。図2Aのその他の動作は、図1Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
同様に、図1Bに示す負側増幅器20では、出力回路22に供給される中間電圧VMHが電源電圧VDD付近の高い電圧レベルである場合、その出力波形の立ち上がりにオーバーシュートが発生する可能性がある。一方、図2Bに示す負側増幅器20aでは、クランプ用トランジスタMP25を用いて出力トランジスタMP23のゲート電圧をクランプすることにより、当該出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧の上昇が制限される。それにより、出力トランジスタMP23のドレイン電流が制限される。その結果、負側増幅器20aは、その出力波形のオーバーシュートを抑制することができる。図2Bのその他の回路構成は、図1Bの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
このような回路構成により、本実施の形態にかかる出力回路は、実施の形態1の場合と同等の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態にかかる出力回路は、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができるとともに、中間電圧(VML、VMH)が接地電圧VSS〜電源電圧VDD範囲内のいずれの電圧レベルでも、出力信号を供給電源電圧範囲内にクランプすることができる。
【0059】
実施の形態3
図5A及び図5Bに、本発明の実施の形態3にかかる正側増幅器10b及び負側増幅器20bを示す。図5Aに示す正側増幅器10bは、図2Aに示す正側増幅器10aと比較して、出力回路12aに代えて、出力回路12aにスイッチSW17及びスイッチSW18を追加した出力回路12bを備える。図5Bに示す負側増幅器20bは、図2Bに示す負側増幅器20aと比較して、出力回路22aに代えて、出力回路22aにスイッチSW27及びスイッチSW28を追加した出力回路22bを備える。
【0060】
本実施の形態にかかる出力回路は、2つのスイッチのオンオフを切り替え制御することにより、各クランプ用トランジスタのクランプ動作のタイミングを制御する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、クランプ動作の影響によるセットリング時間の遅延を抑制する。以下、具体的に説明する。
【0061】
図5Aの正側増幅器10bにおいて、出力回路12bは、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、クランプ用トランジスタMN16と、スイッチSW17と、スイッチSW18と、を有する。スイッチSW17は、クランプ用トランジスタMP15の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。スイッチSW18は、クランプ用トランジスタMN16の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。図5Aのその他の回路構成は、図2Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
図5Bの負側増幅器20bにおいて、出力回路22bは、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMP25と、クランプ用トランジスタMN26と、スイッチSW27と、スイッチSW28と、を有する。スイッチSW27は、クランプ用トランジスタMP25の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。スイッチSW28は、クランプ用トランジスタMN26の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。図5Bのその他の回路構成は、図2Bの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
図6は、図3に対して図5Aの正側増幅器10b及び図5Bの負側増幅器20bの出力波形をさらに追加した図である。なお、スイッチSW17及びSW18は連動して制御されるものとする。スイッチSW27及びSW28は連動して制御されるものとする。ここで、図6の例では、スイッチSW17、SW18、SW27、及びSW28は、制御電圧がHレベルの場合の一定期間のみオンに制御されている。つまり、本実施の形態にかかる出力回路は、出力波形の立ち上がり又は立ち下がりの途中までは、クランプ用トランジスタによるクランプ動作を有効にして、オーバーシュート又はアンダーシュートを抑制する。そして、その後、クランプ動作を無効にして、出力波形を急速に立ち上げ又は立ち下げることにより、オーバーシュート又はアンダーシュートが発生しない範囲内でセットリング時間を速める。
【0064】
各スイッチは、例えば、STB期間(LCDドライバの1水平期間の最初に出力される制御信号)の立ち上がり又は立ち下がり、すなわち出力が変化する最初のタイミングからオンに切り替わり、ある一定の期間だけオンする。オン時間はパネル負荷に応じて最適な時間に制御される。
【0065】
このように、図5Aに示す正側増幅器10bでは、図1Aに示す正側増幅器10及び図2Aに示す正側増幅器10aと比較して、出力信号の立ち上がり時間(スルーレート、例えば電圧レベルが10%から90%に到達する時間)が同等程度であるが、セットリング時間(例えば電圧レベルが0.5%から99.5%に到達し安定する時間)が速くなる。同様に、図5Bに示す負側増幅器20bでは、図1Bに示す負側増幅器20及び図2Bに示す負側増幅器20aと比較して、出力信号の立ち下がり時間(例えば電圧レベルが90%から10%に到達する時間)が同等程度であるが、セットリング時間(例えば電圧レベルが99.5%から0.5%に到達し安定する時間)が速くなる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路は、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するとともに、クランプ動作の影響によるセットリング時間の遅延を抑制することができる。
【0066】
以上のように、上記実施の形態1〜3にかかる出力回路は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間にクランプ用トランジスタを備えることにより、当該出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の上昇を制限する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレイン電流を制限することができるため、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【0067】
ここで、特許文献2には、上述のように、クランプ回路を備えたトランジスタ出力回路が開示されているが、これは出力トランジスタのソースが外部出力端子に接続される構成である。そして、この回路に用いられるクランプ回路は、ソースフォロワ動作時の電流クランプ回路であって、出力トランジスタのゲート−ソース間に設けられている。一方、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレインが外部出力端子に接続される構成である。そして、この回路に用いられるクランプ回路(クランプ用トランジスタ)は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間に設けられている。したがって、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、互いに回路構成が異なる。
【0068】
また、この従来技術では、クランプ電圧の基準が出力トランジスタのソースであり、ソース電圧を基準としてゲート電圧をクランプしている。この場合、出力電流を制限するためには、クランプ回路としてツェナーダイオードの特性のものが必要であり、クランプ回路としてMOSトランジスタを用いた本願とは異なる。仮に、ツェナーダイオードの等価回路として、MOSトランジスタ及び抵抗により構成されるアクティブツェナー等をクランプ回路として用いた場合には、素子数が多くなり回路構成も複雑になる。その結果、チップサイズが大きくなり、ひいてはコストアップに繋がる。
【0069】
次に、特許文献3には、上述のように、2つのMOSトランジスタ(出力トランジスタ)のゲート−ドレイン間にそれぞれ接続されるクランプ回路を備えた負荷駆動装置が開示されている(文献中の図5参照)。各クランプ回路は、逆流防止用のダイオードと、クランプ用のツェナーダイオードと、を有する。ここで、この従来技術では、MOSトランジスタのドレイン電圧が、当該MOSトランジスタのゲート電圧によってクランプされる。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、出力トランジスタのゲート電圧が、当該出力トランジスタのドレイン電圧によってクランプされる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、回路構成のみならず、目的及び効果が異なるものである。
【0070】
また、この従来技術では、クランプ回路としてツェナーダイオードを用いているため、クランプ電圧(降伏電圧)を超えた後のインピーダンスが急峻に低くなる。そのため、本実施の形態にかかる出力回路の場合と比較してクランプ動作が効き過ぎる。それにより、出力トランジスタの駆動能力が過剰に低下してしまう。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、クランプ回路としてダイオード接続されたMOSトランジスタを用いているため、前述のように、従来技術の場合よりも滑らかなクランプ特性を得ることができる。つまり、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた方が、本発明の課題を解決するのに適している。
【0071】
次に、特許文献4には、上述のように、NチャネルMOSトランジスタ(出力トランジスタ)のゲート−ドレイン間に接続されたPチャネル型のクランピングトランジスタ(クランプ回路)を備えた誘導負荷ダンプ回路が開示されている(文献中の図3参照)。クランピングトランジスタ(P1)のゲートには電源電圧Vccが供給されている。ここで、この従来技術では、トランジスタ(N1)のドレイン電圧が、クランピングトランジスタ(P1)のゲート電圧によってクランプされる。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、出力トランジスタのゲート電圧が、当該出力トランジスタのドレイン電圧によってクランプされる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、回路構成のみならず、目的及び効果が異なるものである。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10,10a,10b 正側増幅器
11 差動段回路
12,12a,12b 出力回路
20,20a,20b 負側増幅器
21 差動段回路
22,22a,22b 出力回路
MP13,MN14,MP15,MN16 トランジスタ
MP23,MN24,MP25,MN26 トランジスタ
SW17,SW18 スイッチ
SW27,SW28 スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力回路に関し、特に出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するのに適した出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を駆動するLCD(Liquid Crystal Display)ドライバは、出力駆動回路としてボルテージフォロワ接続された演算増幅器を備えている。この演算増幅器の過渡特性は、表示品質に大きく影響を及ぼすことが知られている。特に出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生した場合、画質が劣化してしまうという問題がある。したがって、LCDドライバに備えられた演算増幅器は、その出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制することが求められている。
【0003】
しかし、一般的に、MOSトランジスタの相互コンダクタンスgmは、バイポーラトランジスタよりも低い。そのため、MOSアナログにより構成される演算増幅器が容量性負荷を駆動する場合、その駆動波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題がある。対策として、演算増幅器に設けられた出力MOSトランジスタのWサイズを大きくすることにより、相互コンダクタンスgmを大きくする方法がある。しかし、出力MOSトランジスタのWサイズを大きくすると、チップサイズが大きくなり、ひいては、コストアップに繋がる。
【0004】
図7A及び図7Bに、特許文献1に開示された正専用アンプ(以下、正側増幅器と称す)100及び負専用アンプ(以下、負側増幅器と称す)200の等価回路を示す。図7A及び図7Bは、近年のLCDドライバに採用されているHalf_VDD用の演算増幅器である。
【0005】
なお、図7Aに示す正側増幅器100は、液晶表示装置において基準電圧COM(液晶の対向電極に与える基準電圧)より高い電圧側を駆動する増幅器である。図7Bに示す負側増幅器200は、基準電圧COMより低い電圧側を駆動する増幅器である。このように、液晶表示装置の分野においては、基準電圧COMを基準として正/負が判断される。したがって、一般的な電気工学でいうところの正電圧/負電圧とは異なる。
【0006】
ここで、正側増幅器100は、液晶の正極性を駆動する増幅器であるため、基準電圧COMをVDDとVSSとの2分点であるVDD/2とする時、電源電圧VDD〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。一方、負側増幅器200は、液晶の負極性を駆動する増幅器であるため、接地電圧VSS〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。したがって、正側増幅器100及び負側増幅器200は、出力段回路(出力回路)に供給する電源電圧範囲を、他の回路(ここでは差動段回路)に供給する電源電圧範囲の約半分とし、消費電力の増大を抑制している。
【0007】
図7Aに示す正側増幅器100は、差動段回路101及び出力段回路(出力回路)102を備える。出力段回路102は、PチャネルMOSトランジスタMP103及びNチャネルMOSトランジスタMN104を有する。出力段回路102では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に中間電圧VMLが供給される。なお、中間電圧VMLは、電源電圧VDDの約半分の電圧レベルを示す。出力段回路102以外の回路(差動段回路101)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0008】
トランジスタMP103では、ソースに電源電圧VDDが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路101の一方の出力端子が接続される。トランジスタMN104では、ソースに中間電圧VMLが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路101の他方の出力端子が接続される。
【0009】
図7Aに示す正側増幅器100において、差動段回路101は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力段回路102に対して出力する。出力段回路102において、トランジスタMP103のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMP103のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。トランジスタMN104のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMN104のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、トランジスタMP103のソースに電源電圧VDDが供給され、トランジスタMN104のソースに中間電圧VMLが供給されているため、正側増幅器100の出力信号の電圧範囲はVDD/2〜VDDとなる。
【0010】
図7Bに示す負側増幅器200は、差動段回路201及び出力段回路(出力回路)202を備える。出力段回路202は、PチャネルMOSトランジスタMP203及びNチャネルMOSトランジスタMN204を有する。出力段回路202では、高電位側電源端子に中間電圧VMHが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。なお、中間電圧VMHは、電源電圧VDDの約半分の電圧レベルを示す。出力段回路202以外の回路(差動段回路201)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0011】
トランジスタMP203では、ソースに中間電圧VMHが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路201の一方の出力端子が接続される。トランジスタMN204では、ソースに接地電圧VSSが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路201の他方の出力端子が接続される。
【0012】
図7Bに示す負側増幅器200において、差動段回路201は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力段回路202に対して出力する。出力段回路202において、トランジスタMP203のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMP203のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。トランジスタMN204のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該トランジスタMN204のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、トランジスタMP203のソースに中間電圧VMHが供給され、トランジスタMN204のソースに接地電圧VSSが供給されているため、負側増幅器200の出力信号の電圧範囲はVSS〜VDD/2となる。
【0013】
なお、負荷に供給される電流を制御する回路には、クランプ回路を用いた回路がある。図8に、特許文献2に開示されたトランジスタ出力回路の回路図を示す。図8に示すトランジスタ出力回路300は、ゲートドライブ回路301と、出力トランジスタ302と、クランプ回路304と、抵抗307と、を備え、出力トランジスタ302を介して負荷305に流れる電流を制御する回路である。図9に示すように、出力トランジスタ302のゲート−ソース間電圧Vgsが大きくなるほど、出力トランジスタ302のソース−ドレイン間に流れる電流Idは大きくなる。つまり、出力トランジスタ302のゲート−ソース間電圧Vgsが所定電圧以上になると、負荷305に過電流が供給される。したがって、トランジスタ出力回路300は、出力トランジスタ302のゲート−ソース間にクランプ回路304を備えることにより、ゲート−ソース間電圧Vgsを所定電圧以上に上昇させないようにして過電流を抑制している。
【0014】
また、特許文献3には、電源から負荷に対して通電を行う経路内に直列に接続された同一導電型の2つのMOSトランジスタと、これら2つのMOSトランジスタのゲート−ドレイン間にそれぞれ接続されるクランプ回路と、を備えた負荷駆動装置が開示されている。各クランプ回路は、逆流防止用のダイオードと、クランプ用のツェナーダイオードと、を有する(文献中の図5参照)。
【0015】
また、特許文献4には、第1及び第2の電源端子間に設けられた誘導負荷装置(L1)と、当該誘導負荷装置(L1)と直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタ(N1)と、トランジスタ(N1)のゲート−ドレイン間に接続されたPチャネル型のクランピングトランジスタ(P1)と、を備えた誘導負荷ダンプ回路が開示されている(文献中の図3参照)。なお、クランピングトランジスタ(P1)のゲートには電源電圧Vccが供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−194485号公報
【特許文献2】特開平3−117017号公報
【特許文献3】特許第4228960号公報
【特許文献4】特表平7−505994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、一般的に、従来技術の出力回路を備えた増幅器では、その出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0018】
特に、特許文献1の場合、図7A及び図7Bに示すように、出力段回路(出力回路)に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路に供給する電源電圧の範囲の約半分としている。そのため、出力段回路に設けられた2つの出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なってしまう。
【0019】
例えば、図7Aに示す正側増幅器100の場合、トランジスタMP103のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、トランジスタMN104のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMLとなる。つまり、出力トランジスタMP103のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMN104の場合と比較して、約2倍となる。したがって、正側増幅器100では、立ち上がりの過渡特性時にオーバーシュートが発生しやすいという問題があった。言い換えると、正側増幅器100では、その立ち上がりの出力波形にオーバーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0020】
一方、図7Bに示す負側増幅器200の場合、トランジスタMN204のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、トランジスタMP203のゲート−ソース間電圧は、最大でVMH−VSSとなる。つまり、出力トランジスタMN204のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMP203の場合と比較して、約2倍となる。したがって、負側増幅器200では、立ち下がりの過渡特性時にアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。言い換えると、負側増幅器200では、その立ち下がりの出力波形にアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【0021】
このように、従来技術の出力回路を備えた増幅器では、その出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明にかかる出力回路は、第1の電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第1の出力MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMP13)と、第2の電源端子と前記外部出力端子との間に設けられ、前記外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第2の出力MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMN14)と、前記第1の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第1の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第1のクランプ用MOSトランジスタ(例えば、実施の形態1にかかる出力トランジスタMP15)と、を備える。
【0023】
上述のような回路構成により、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することが可能な出力回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明の実施の形態1にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図1B】本発明の実施の形態1にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図2A】本発明の実施の形態2にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図2B】本発明の実施の形態2にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路の出力波形を示す図である。
【図4A】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路に設けられた出力トランジスタのゲート電圧の変化を示す図である。
【図4B】本発明の実施の形態1、2にかかる出力回路に設けられた出力トランジスタのゲート電圧の変化を示す図である。
【図5A】本発明の実施の形態3にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図5B】本発明の実施の形態3にかかる演算増幅器を示す回路図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかる出力回路の出力波形を示す図である。
【図7A】従来技術の出力回路を備えた演算増幅器を示す回路図である。
【図7B】従来技術の出力回路を備えた演算増幅器を示す回路図である。
【図8】従来技術の出力回路を示す回路図である。
【図9】MOSトランジスタのID−VDS特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
実施の形態1
図1A及び図1Bに、本発明の実施の形態1にかかる出力回路を備えた正側増幅器10及び負側増幅器20を示す。図1A及び図1Bは、LCDドライバ等に採用されているHalf_VDD用の演算増幅器である。
【0028】
ここで、図1Aに示す正側増幅器10は、液晶の正極性を駆動する増幅器であるため、電源電圧VDD〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。一方、図1Bに示す負側増幅器20は、液晶の負極性を駆動する増幅器であるため、接地電圧VSS〜VDD/2の電圧範囲を駆動することができれば良い。したがって、正側増幅器10及び負側増幅器20は、出力回路に供給する電源電圧範囲を、他の回路(差動段回路)に供給する電源電圧範囲の約半分とし、消費電力の増大を抑制している。以下、具体的に説明する。
【0029】
図1Aに示す正側増幅器10は、差動段回路11及び出力回路12を備える。出力回路12は、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、を有する。なお、本実施の形態では、出力トランジスタMP13及びクランプ用トランジスタMP15がPチャネルMOSトランジスタであって、出力トランジスタMN14がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0030】
出力回路12では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に中間電圧VMLが供給される。なお、本実施の形態では、中間電圧VMLが電源電圧VDDの約半分の電圧レベルである場合を例に説明するが、これに限られない。中間電圧VMLは電源電圧VDDよりも低い電圧レベルに適宜変更可能である。出力回路12以外の回路(差動段回路11)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0031】
出力トランジスタMP13では、ソースに電源電圧VDDが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路11の一方の出力端子が接続される。出力トランジスタMN14では、ソースに中間電圧VMLが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路11の他方の出力端子が接続される。クランプ用トランジスタMP15では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMP13のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMP13のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMP15の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。
【0032】
図1Aに示す正側増幅器10において、差動段回路11は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力回路12に対して出力する。出力回路12において、出力トランジスタMP13のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMP13のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。出力トランジスタMN14のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMN14のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、出力トランジスタMP13のソースに電源電圧VDDが供給され、出力トランジスタMN14のソースに中間電圧VMLが供給されているため、正側増幅器10の出力信号の電圧範囲はVDD/2〜VDDとなる。
【0033】
このように、正側増幅器10は、出力回路12に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路11に供給する電源電圧の約半分としている。そのため、出力回路12に設けられた2つの出力トランジスタMP13,MN14のゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なる。具体的には、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMLとなる。つまり、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMN14の場合と比較して、約2倍となる。したがって、正側増幅器10では、何も対策しなければ、出力トランジスタMP13より出力トランジスタMN14の電流駆動能力が相対的に小さくなるため、その立ち上がりの出力波形にオーバーシュートが発生する可能性がある。もしくは、中間電圧VMLの値に合わせて出力トランジスタMN14のディメンジョンを無駄に大きくする必要があり、レイアウトサイズが大きくなってしまう。
【0034】
そこで、本実施の形態にかかる出力回路12は、出力トランジスタMP13のゲート−ドレイン間に設けられたクランプ用トランジスタMP15にクランプ動作させることにより、出力波形のオーバーシュートを抑制している。具体的には、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMP15のしきい値電圧Vt分以上低下した場合、クランプ用トランジスタMP15が導通状態になる。これは、クランプ用トランジスタMP15の第1の端子(出力トランジスタMP13のゲートと接続)の電位がクランプ用トランジスタMP15の第2の端子(出力トランジスタMP13のドレインと接続)より低くなるため、第1の端子がドレインになり、第2の端子がソースになることにより、第1の端子に接続する当該クランプ用トランジスタMP15のゲートの電圧がソース電圧に対して−Vt以下の電圧になるためである。つまり、クランプ用トランジスタMP15は、順方向にダイオード接続された状態となっている。
【0035】
したがって、出力トランジスタMP13のゲート電圧は、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧によってクランプされる。より具体的には、出力トランジスタMP13のゲート電圧は、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMP15のしきい値電圧Vt分低い電圧レベルにクランプされる。これにより、出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧の上昇が制限されるため、当該出力トランジスタMP13のドレイン電流は制限される。その結果、正側増幅器10は、その出力波形のオーバーシュートを抑制することができる。
【0036】
なお、出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧は、上述のように、最大でVDD−VML、つまり、出力トランジスタMP13の場合と比較して約半分である。したがって、出力トランジスタMN14には、出力トランジスタMP13の場合と異なり、クランプ用トランジスタを設ける必要は無い。また、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、当該出力トランジスタMP13のドレイン電圧より高い状態の場合は、クランプ用トランジスタMP15は逆方向にダイオード接続された状態となっているため、非導通状態になっている。この状態では、クランプ用トランジスタMP15は、出力トランジスタMP13の動作に影響を与えることはほとんどない。
【0037】
図1Bに示す負側増幅器20は、差動段回路21及び出力回路22を備える。出力回路22は、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMN26と、を有する。なお、本実施の形態では、出力トランジスタMP23がPチャネルMOSトランジスタであって、出力トランジスタMN24及びクランプ用トランジスタMN26がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0038】
出力回路22では、高電位側電源端子に中間電圧VMHが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。なお、本実施の形態では、中間電圧VMHが電源電圧VDDの約半分の電圧レベルである場合を例に説明するが、これに限られない。中間電圧VMHは接地電圧VSSよりも高い電圧レベルに適宜変更可能である。出力回路22以外の回路(差動段回路21)では、高電位側電源端子に電源電圧VDDが供給され、低電位側電源端子に接地電圧VSSが供給される。
【0039】
出力トランジスタMP23では、ソースに中間電圧VMHが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路21の一方の出力端子が接続される。出力トランジスタMN24では、ソースに接地電圧VSSが供給され、ドレインに外部出力端子Voutが接続され、ゲートに差動段回路21の他方の出力端子が接続される。クランプ用トランジスタMN26では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMN24のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMN24のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMN26の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。
【0040】
図1Bに示す負側増幅器20において、差動段回路21は、入力端子IN+、IN−に供給される入力信号の電位差に応じた一対の増幅信号を出力回路22に対して出力する。出力回路22において、出力トランジスタMP23のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMP23のゲートに印加される増幅信号の一方に基づいて制御される。出力トランジスタMN24のソース−ドレイン間に流れる電流は、当該出力トランジスタMN24のゲートに印加される増幅信号の他方に基づいて制御される。ここで、出力トランジスタMP23のソースに中間電圧VMHが供給され、出力トランジスタMN24のソースに接地電圧VSSが供給されているため、負側増幅器20の出力信号の電圧範囲はVSS〜VDD/2となる。
【0041】
このように、負側増幅器20は、出力回路22に供給する電源電圧の範囲を、差動段回路21に供給する電源電圧の約半分としている。そのため、出力回路22に設けられた2つの出力トランジスタMP23,MN24のゲート−ソース間電圧の範囲が互いに異なる。具体的には、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VSSとなる。一方、出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧は、最大でVDD−VMHとなる。つまり、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧は、出力トランジスタMP23の場合と比較して、約2倍となる。したがって、負側増幅器20では、何も対策しなければ、出力トランジスタMN24より出力トランジスタMP23の電流駆動能力が相対的に小さくなるため、その立ち下がりの出力波形にアンダーシュートが発生する可能性がある。もしくは、中間電圧VMHの値に合わせて出力トランジスタMN23のディメンジョンを無駄に大きくする必要があり、レイアウトサイズが大きくなってしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態にかかる出力回路22は、出力トランジスタMN24のゲート−ドレイン間に設けられたクランプ用トランジスタMN26にクランプ動作させることにより、出力波形のアンダーシュートを抑制している。具体的には、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMN26のしきい値電圧Vt分以上上昇した場合、クランプ用トランジスタMN26が導通状態になる。これは、クランプ用トランジスタMN26の第1の端子(出力トランジスタMN24のゲートと接続)の電位がクランプ用トランジスタMN26の第2の端子(出力トランジスタMN24のドレインと接続)より高くなるため、第1の端子がドレインになり、第2の端子がソースになることにより、第1の端子に接続する当該クランプ用トランジスタMN26のゲートの電圧がソース電圧に対して+Vt以上の電圧になるためである。つまり、クランプ用トランジスタMN26は、順方向にダイオード接続された状態となっている。
【0043】
したがって、出力トランジスタMN24のゲート電圧は、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧によってクランプされる。より具体的には、出力トランジスタMN24のゲート電圧は、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧よりクランプ用トランジスタMN26のしきい値電圧Vt分高い電圧レベルにクランプされる。これにより、出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧の上昇が制限されるため、当該出力トランジスタMN24のドレイン電流は制限される。その結果、負側増幅器20は、その出力波形のアンダーシュートを抑制することができる。
【0044】
なお、出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧は、上述のように、最大でVDD−VMH、つまり、出力トランジスタMN24の場合と比較して約半分である。したがって、出力トランジスタMP23には、出力トランジスタMN24の場合と異なり、クランプ用トランジスタを設ける必要は無い。また、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、当該出力トランジスタMN24のドレイン電圧より低い状態の場合は、クランプ用トランジスタMN26は逆方向にダイオード接続された状態となっているため、非導通状態になっている。この状態では、クランプ用トランジスタMN26は、出力トランジスタMN24の動作に影響を与えることはほとんどない。
【0045】
次に、本実施の形態にかかる出力回路の効果を、図3を参照して説明する。図3は、従来技術の出力回路を備えた増幅器における外部出力端子Voutの出力過渡特性波形と、本実施の形態にかかる出力回路を備えた増幅器における外部出力端子Voutの出力過渡特性波形と、を示す図である。なお、図3に示す各波形は、同じ条件でシミュレーションした結果をプロットしたものである。この波形を見てわかるように、従来技術の出力回路の場合、出力波形にオーバーシュートやアンダーシュートが発生しているのがわかる。一方、本実施の形態にかかる出力回路の場合、出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートが抑制されているのがわかる。なお、本実施の形態にかかる出力回路では、出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートが抑制されてもセットリング時間に遅延は生じず、従来技術の場合と同等である。
【0046】
次に、本実施の形態にかかる出力回路がその出力波形のオーバーシュートやアンダーシュートを抑制するメカニズムを、図4A及び図4Bを参照して説明する。図4Aは、正側増幅器における出力トランジスタ(MP13、MP103)のゲート電圧のシミュレーション過渡解析波形である。図4Bは、負側増幅器における出力トランジスタ(MN24、MN204)のゲート電圧のシミュレーション過渡解析波形である。なお、図4A及び図4Bのシミュレーション結果は、図3のシミュレーション結果に対応している。図4Aの波形を見てもわかるように、本実施の形態にかかる出力回路12では、出力トランジスタMP13のゲート電圧が、所定の電圧レベル以下にならないようにクランプされている。つまり、出力回路12では、出力トランジスタMP13のゲート電圧がクランプされて、当該出力トランジスタMP13のゲート−ソース間電圧が所定の電圧レベル以上にならないようにしている。同様に、図4Bの波形を見てもわかるように、本実施の形態にかかる出力回路22では、出力トランジスタMN24のゲート電圧が、所定の電圧レベル以上にならないようにクランプされている。つまり、出力回路22では、出力トランジスタMN24のゲート電圧がクランプされて、当該出力トランジスタMN24のゲート−ソース間電圧が所定の電圧レベル以上にならないようにしている。これにより、オーバーシュートやアンダーシュートを発生させないようにゲート−ソース間電圧の最大値を制御して出力信号の制御をすると同時に、必要なゲート−ソース間電圧を確保することにより、セットリングタイムを遅くしすぎないように出力信号の制御をすることができるようになる。
【0047】
このように、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間にクランプ用トランジスタを備えることにより、当該出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の上昇を制限する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレイン電流を制限することができるため、その出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【0048】
なお、本実施の形態にかかる出力回路は、オーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するために、1つのクランプ用MOSトランジスタを追加するだけで良い。したがって、チップサイズへのインパクトはほとんど無視できるレベルである。
【0049】
また、クランプ回路として、ダイオード接続されたMOSトランジスタの代わりに、PN接合のダイオードを用いた場合でも、原理的には同様の効果を得ることができる。しかし、PN接合のダイオードを用いた場合、クランプ電圧である約0.6〜0.7Vを超えた後のインピーダンスが急峻に低くなるため、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合と比較してクランプ動作が効き過ぎる。そのため、出力トランジスタの駆動能力が過剰に低下してしまう。
【0050】
これに対し、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合、クランプ電圧が当該MOSトランジスタのしきい値電圧であり、かつ、そのインピーダンスはPN接合のダイオードを用いた場合よりも高くなる。これは、ダイオード接続されたMOSトランジスタの相互コンダクタンスgmが、PN接合のダイオードと比較して約1桁以上低いことに起因する。そのため、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた場合、PN接合のダイオードを用いた場合よりも滑らかなクランプ特性を得ることができる。つまり、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた方が、本発明の課題を解決するのに適している。
【0051】
実施の形態2
図2A及び図2Bに、本発明の実施の形態2にかかる出力回路を備えた正側増幅器10a及び負側増幅器20aを示す。図2Aに示す正側増幅器10aは、図1Aに示す正側増幅器10と比較して、出力回路12に代えて、出力回路12にクランプ用トランジスタMN16を追加した出力回路12aを備える。図2Bに示す負側増幅器20aは、図1Bに示す負側増幅器20と比較して、出力回路22に代えて、出力回路22にクランプ用トランジスタMP25を追加した出力回路22aを備える。
【0052】
具体的には、図2Aの正側増幅器10aにおいて、出力回路12aは、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、クランプ用トランジスタMN16と、を有する。なお、本実施の形態では、クランプ用トランジスタMN16がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0053】
クランプ用トランジスタMN16では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMN14のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMN14のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMN16の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。図2Aのその他の回路構成は、図1Aの場合と同様であるため、説明を省略する。このように、本実施の形態にかかる出力回路12aは、2つの出力トランジスタMP13、MN14に対してクランプ用トランジスタMP15、MN16を備える。それにより、本実施の形態にかかる出力回路12aは、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができる。
【0054】
また、図2Bの負側増幅器20aにおいて、出力回路22aは、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMP25と、クランプ用トランジスタMN26と、を有する。なお、本実施の形態では、クランプ用トランジスタMP25がPチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0055】
クランプ用トランジスタMP25では、第1の端子及びゲート(制御端子)に出力トランジスタMP23のゲートが共通接続され、第2の端子に出力トランジスタMP23のドレインが接続される。なお、クランプ用トランジスタMP25の第1及び第2の端子は、一組のソース及びドレインであって、それぞれに供給される電圧レベルに応じてソース及びドレインが切り替わる。図2Bのその他の回路構成は、図1Bの場合と同様であるため、説明を省略する。このように、本実施の形態にかかる出力回路22aは、2つの出力トランジスタMP23、MN24に対してクランプ用トランジスタMP25、MN26を備える。それにより、本実施の形態にかかる出力回路22aは、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができる。
【0056】
なお、図1Aに示す正側増幅器10では、出力回路12に供給される中間電圧VMLが接地電圧VSS付近の低い電圧レベルである場合、その出力波形の立ち下がりにアンダーシュートが発生する可能性がある。一方、図2Aに示す正側増幅器10aでは、クランプ用トランジスタMN16を用いて出力トランジスタMN14のゲート電圧をクランプすることにより、当該出力トランジスタMN14のゲート−ソース間電圧の上昇が制限される。それにより、出力トランジスタMN14のドレイン電流が制限される。その結果、正側増幅器10aは、その出力波形のアンダーシュートを抑制することができる。図2Aのその他の動作は、図1Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
同様に、図1Bに示す負側増幅器20では、出力回路22に供給される中間電圧VMHが電源電圧VDD付近の高い電圧レベルである場合、その出力波形の立ち上がりにオーバーシュートが発生する可能性がある。一方、図2Bに示す負側増幅器20aでは、クランプ用トランジスタMP25を用いて出力トランジスタMP23のゲート電圧をクランプすることにより、当該出力トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧の上昇が制限される。それにより、出力トランジスタMP23のドレイン電流が制限される。その結果、負側増幅器20aは、その出力波形のオーバーシュートを抑制することができる。図2Bのその他の回路構成は、図1Bの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
このような回路構成により、本実施の形態にかかる出力回路は、実施の形態1の場合と同等の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態にかかる出力回路は、各出力トランジスタに付加される寄生容量のバランスを取ることができるとともに、中間電圧(VML、VMH)が接地電圧VSS〜電源電圧VDD範囲内のいずれの電圧レベルでも、出力信号を供給電源電圧範囲内にクランプすることができる。
【0059】
実施の形態3
図5A及び図5Bに、本発明の実施の形態3にかかる正側増幅器10b及び負側増幅器20bを示す。図5Aに示す正側増幅器10bは、図2Aに示す正側増幅器10aと比較して、出力回路12aに代えて、出力回路12aにスイッチSW17及びスイッチSW18を追加した出力回路12bを備える。図5Bに示す負側増幅器20bは、図2Bに示す負側増幅器20aと比較して、出力回路22aに代えて、出力回路22aにスイッチSW27及びスイッチSW28を追加した出力回路22bを備える。
【0060】
本実施の形態にかかる出力回路は、2つのスイッチのオンオフを切り替え制御することにより、各クランプ用トランジスタのクランプ動作のタイミングを制御する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、クランプ動作の影響によるセットリング時間の遅延を抑制する。以下、具体的に説明する。
【0061】
図5Aの正側増幅器10bにおいて、出力回路12bは、出力トランジスタMP13と、出力トランジスタMN14と、クランプ用トランジスタMP15と、クランプ用トランジスタMN16と、スイッチSW17と、スイッチSW18と、を有する。スイッチSW17は、クランプ用トランジスタMP15の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。スイッチSW18は、クランプ用トランジスタMN16の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。図5Aのその他の回路構成は、図2Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
図5Bの負側増幅器20bにおいて、出力回路22bは、出力トランジスタMP23と、出力トランジスタMN24と、クランプ用トランジスタMP25と、クランプ用トランジスタMN26と、スイッチSW27と、スイッチSW28と、を有する。スイッチSW27は、クランプ用トランジスタMP25の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。スイッチSW28は、クランプ用トランジスタMN26の第2の端子と外部出力端子Voutとの間に接続される。図5Bのその他の回路構成は、図2Bの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
図6は、図3に対して図5Aの正側増幅器10b及び図5Bの負側増幅器20bの出力波形をさらに追加した図である。なお、スイッチSW17及びSW18は連動して制御されるものとする。スイッチSW27及びSW28は連動して制御されるものとする。ここで、図6の例では、スイッチSW17、SW18、SW27、及びSW28は、制御電圧がHレベルの場合の一定期間のみオンに制御されている。つまり、本実施の形態にかかる出力回路は、出力波形の立ち上がり又は立ち下がりの途中までは、クランプ用トランジスタによるクランプ動作を有効にして、オーバーシュート又はアンダーシュートを抑制する。そして、その後、クランプ動作を無効にして、出力波形を急速に立ち上げ又は立ち下げることにより、オーバーシュート又はアンダーシュートが発生しない範囲内でセットリング時間を速める。
【0064】
各スイッチは、例えば、STB期間(LCDドライバの1水平期間の最初に出力される制御信号)の立ち上がり又は立ち下がり、すなわち出力が変化する最初のタイミングからオンに切り替わり、ある一定の期間だけオンする。オン時間はパネル負荷に応じて最適な時間に制御される。
【0065】
このように、図5Aに示す正側増幅器10bでは、図1Aに示す正側増幅器10及び図2Aに示す正側増幅器10aと比較して、出力信号の立ち上がり時間(スルーレート、例えば電圧レベルが10%から90%に到達する時間)が同等程度であるが、セットリング時間(例えば電圧レベルが0.5%から99.5%に到達し安定する時間)が速くなる。同様に、図5Bに示す負側増幅器20bでは、図1Bに示す負側増幅器20及び図2Bに示す負側増幅器20aと比較して、出力信号の立ち下がり時間(例えば電圧レベルが90%から10%に到達する時間)が同等程度であるが、セットリング時間(例えば電圧レベルが99.5%から0.5%に到達し安定する時間)が速くなる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路は、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制するとともに、クランプ動作の影響によるセットリング時間の遅延を抑制することができる。
【0066】
以上のように、上記実施の形態1〜3にかかる出力回路は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間にクランプ用トランジスタを備えることにより、当該出力トランジスタのゲート−ソース間電圧の上昇を制限する。それにより、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレイン電流を制限することができるため、出力波形のオーバーシュート又はアンダーシュートを抑制することができる。
【0067】
ここで、特許文献2には、上述のように、クランプ回路を備えたトランジスタ出力回路が開示されているが、これは出力トランジスタのソースが外部出力端子に接続される構成である。そして、この回路に用いられるクランプ回路は、ソースフォロワ動作時の電流クランプ回路であって、出力トランジスタのゲート−ソース間に設けられている。一方、本実施の形態にかかる出力回路は、出力トランジスタのドレインが外部出力端子に接続される構成である。そして、この回路に用いられるクランプ回路(クランプ用トランジスタ)は、出力トランジスタのゲート−ドレイン間に設けられている。したがって、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、互いに回路構成が異なる。
【0068】
また、この従来技術では、クランプ電圧の基準が出力トランジスタのソースであり、ソース電圧を基準としてゲート電圧をクランプしている。この場合、出力電流を制限するためには、クランプ回路としてツェナーダイオードの特性のものが必要であり、クランプ回路としてMOSトランジスタを用いた本願とは異なる。仮に、ツェナーダイオードの等価回路として、MOSトランジスタ及び抵抗により構成されるアクティブツェナー等をクランプ回路として用いた場合には、素子数が多くなり回路構成も複雑になる。その結果、チップサイズが大きくなり、ひいてはコストアップに繋がる。
【0069】
次に、特許文献3には、上述のように、2つのMOSトランジスタ(出力トランジスタ)のゲート−ドレイン間にそれぞれ接続されるクランプ回路を備えた負荷駆動装置が開示されている(文献中の図5参照)。各クランプ回路は、逆流防止用のダイオードと、クランプ用のツェナーダイオードと、を有する。ここで、この従来技術では、MOSトランジスタのドレイン電圧が、当該MOSトランジスタのゲート電圧によってクランプされる。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、出力トランジスタのゲート電圧が、当該出力トランジスタのドレイン電圧によってクランプされる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、回路構成のみならず、目的及び効果が異なるものである。
【0070】
また、この従来技術では、クランプ回路としてツェナーダイオードを用いているため、クランプ電圧(降伏電圧)を超えた後のインピーダンスが急峻に低くなる。そのため、本実施の形態にかかる出力回路の場合と比較してクランプ動作が効き過ぎる。それにより、出力トランジスタの駆動能力が過剰に低下してしまう。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、クランプ回路としてダイオード接続されたMOSトランジスタを用いているため、前述のように、従来技術の場合よりも滑らかなクランプ特性を得ることができる。つまり、ダイオード接続されたMOSトランジスタを用いた方が、本発明の課題を解決するのに適している。
【0071】
次に、特許文献4には、上述のように、NチャネルMOSトランジスタ(出力トランジスタ)のゲート−ドレイン間に接続されたPチャネル型のクランピングトランジスタ(クランプ回路)を備えた誘導負荷ダンプ回路が開示されている(文献中の図3参照)。クランピングトランジスタ(P1)のゲートには電源電圧Vccが供給されている。ここで、この従来技術では、トランジスタ(N1)のドレイン電圧が、クランピングトランジスタ(P1)のゲート電圧によってクランプされる。一方、本実施の形態にかかる出力回路では、出力トランジスタのゲート電圧が、当該出力トランジスタのドレイン電圧によってクランプされる。つまり、本実施の形態にかかる出力回路と従来技術とでは、回路構成のみならず、目的及び効果が異なるものである。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
10,10a,10b 正側増幅器
11 差動段回路
12,12a,12b 出力回路
20,20a,20b 負側増幅器
21 差動段回路
22,22a,22b 出力回路
MP13,MN14,MP15,MN16 トランジスタ
MP23,MN24,MP25,MN26 トランジスタ
SW17,SW18 スイッチ
SW27,SW28 スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第1の出力MOSトランジスタと、
第2の電源端子と前記外部出力端子との間に設けられ、前記外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第2の出力MOSトランジスタと、
前記第1の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第1の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第1のクランプ用MOSトランジスタと、を備えた出力回路。
【請求項2】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、高電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載の出力回路。
【請求項3】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、低電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載の出力回路。
【請求項4】
前記第2の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第2の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第2のクランプ用MOSトランジスタをさらに備えた請求項1に記載の出力回路。
【請求項5】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタ及び前記第2のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、高電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項4に記載の出力回路。
【請求項6】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタ及び前記第2のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、低電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項4に記載の出力回路。
【請求項7】
前記第1のクランプ用MOSトランジスタに直列に接続され、前記外部出力端子の電圧レベルの変化に応じてオンオフが制御される第1のスイッチをさらに備えた請求項1〜6のいずれか一項に記載の出力回路。
【請求項8】
前記第2のクランプ用MOSトランジスタに直列に接続され、前記外部出力端子の電圧レベルの変化に応じてオンオフが制御される第2のスイッチをさらに備えた請求項1〜7のいずれか一項に記載の出力回路。
【請求項1】
第1の電源端子と外部出力端子との間に設けられ、外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第1の出力MOSトランジスタと、
第2の電源端子と前記外部出力端子との間に設けられ、前記外部入力信号に基づいてソース−ドレイン間に流れる電流が制御される第2の出力MOSトランジスタと、
前記第1の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第1の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第1のクランプ用MOSトランジスタと、を備えた出力回路。
【請求項2】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、高電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載の出力回路。
【請求項3】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、低電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項1に記載の出力回路。
【請求項4】
前記第2の出力MOSトランジスタのゲートに第1の端子及び制御端子が接続され、前記第2の出力MOSトランジスタのドレインに第2の端子が接続された第2のクランプ用MOSトランジスタをさらに備えた請求項1に記載の出力回路。
【請求項5】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタ及び前記第2のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、高電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項4に記載の出力回路。
【請求項6】
前記第1の出力MOSトランジスタ及び前記第1のクランプ用MOSトランジスタはNチャネルMOSトランジスタ、前記第2の出力MOSトランジスタ及び前記第2のクランプ用MOSトランジスタはPチャネルMOSトランジスタであって、
前記第1の電源端子には、低電位側電源が供給され、
前記第2の電源端子には、高電位側電源と低電位側電源との間の中間電圧が供給されることを特徴とする請求項4に記載の出力回路。
【請求項7】
前記第1のクランプ用MOSトランジスタに直列に接続され、前記外部出力端子の電圧レベルの変化に応じてオンオフが制御される第1のスイッチをさらに備えた請求項1〜6のいずれか一項に記載の出力回路。
【請求項8】
前記第2のクランプ用MOSトランジスタに直列に接続され、前記外部出力端子の電圧レベルの変化に応じてオンオフが制御される第2のスイッチをさらに備えた請求項1〜7のいずれか一項に記載の出力回路。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−49861(P2012−49861A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190684(P2010−190684)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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