説明

分光放射計

【課題】閃光の分光特性を測定する低価格・小型・軽量・高速・高分解能・高効率・広帯域の分光放射計を実現する。
【解決手段】被測定光が入射される入射スリット2と、入射スリット2を通過した被測定光を平行光にする光学素子3と、光学素子3を出射した被測定光を分光する分光素子4と、分光素子4によって分光された分光光を検知する第1及び第2の光検知手段8、9と、分光素子4と第1及び第2の光検知手段8、9間の光学系中に設けられたダイクロイックフィルタ5とを備え、第1の光検知手段8は、ダイクロイックフィルタ5を透過した第1の波長帯域の分光光を検知し、第2の光検知手段9は、ダイクロイックフィルタ5によって反射された前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を検知することを特徴とする分光放射計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光放射計に係わり、特に、閃光の分光測定を行う分光放射計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識が極めて高く、例えば、その現れとして、化石燃料削減対策としての太陽電池による発電、更には照明の省エネルギー対策としての白熱電球から蛍光灯やLEDへの転換が行われている。これらの施策を実現のためには、太陽電池の性能評価に用いられるソーラシミュレータの出射光の分光特性、更には蛍光灯やLEDの分光特性を高速に測定することが必要とされている。特に、太陽電池の製造ラインでその性能を評価するソーラシミュレータは、測定のスループットの向上や省電力のためにパルス点灯型が主流となっており、ソーラシミュレータの分光測定は、閃光ランプから放射される閃光をミリ秒単位中に行う必要がある。又、カメラのフラッシュランプについても自然光に近い閃光を実現するためには分光特性の把握が欠かせない。このような閃光の分光測定のためには、太陽光と同様の幅広い波長領域における正確な分光分布をミリ秒単位の閃光時間中に測定することのできる分光器が必要となってきている。又、照明ランプメーカーにおいても、検査・保守要員が携帯できる安価で小型の分光器に対する需要が強まっている。そのためは、低価格、小型、軽量、高速測定、高分解能・高効率、広帯域測定という7つの要求を満たす分光放射計の早期の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−78353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、上記の7つの要求を満たす分光器は実現されていない。まず、従来技術の分光器の問題点を定性的に説明すると次の2つになる。
(1)高速化の困難性、パルス型ソーラシミュレータやフラッシュランプの分光測定には閃光時間内の高速測定が不可欠であるが、従来技術のように、分光器の中で回折格子の交換により波長帯を切替える方法や切り替えミラーを使用して受光素子を切替える方法では、波長掃引に10分程度が必要となる。つまり、閃光時間がミリ秒単位と短い時間内での分光測定を実現することはできない。
(2)小型化の困難性、高速・高分解能の分光計測を実現するためには、入射光を複数の波長帯に分割し、これらの入射光を複数のディテクタで同時に測定する必要がある。これを実現するためには、複数の光ファイバで複数の分光器に入射する方法やダイクロイックミラーを使用して、入射光を分岐させて複数の分光器に入射させる方法が取られている。しかし、いずれの方法も、分光器を複数個使用する上に、高い分解能を得るためには、スリットからディテクタまでの距離を大きく取る必要がある。言い換えれば、分光器のサイズが大きくなり、測定系全体を小型化することができない。当然、これらの方法では高速・高分解能で廉価な分光器を得ることはできない。以下に、従来から使用されていた高速測定分光器の具体例とその問題点について説明する。
【0005】
図3は、従来から使用されている典型的なツェルニターナ型分光器の構成を示す図である。
同図に示すように、光ファイバ101を通り入射口であるスリット102から入射した被測定光は、コリメータミラー103で反射後、回折格子104に入射され、回折格子104で回折されることによって各スペクトルに分散し、分散された各スペクトル光は結像ミラー105を介して、分光器出口106において波長λs〜λeの測定スペクトルの拡がりを持って測定される。通常、分光器出口106に1次元アレー型ディテクタや2次元ディテクタを設置し、その波長域に対応したスペクトルを測定する。但し、これらの市販のディテクタは、これを構成する半導体の種類によって波長帯域が限られ、広がったスペクトルを受けるディテクタの幅も限られる。つまり、測定したいスペクトル領域や分解能は、ディテクタに制約され、測定したい波長領域を1個のアレー状ディテクタではカバーすることができない場合が往々発生する。その場合、分光器の台数を増やしたり、被測定光を伝導する光ファイバや分岐を増やしたものを、作り直さねばならない等の不都合が発生する。
【0006】
図4は、従来から使用されている分岐型光ファイバ方式の高速測定分光器の構成を示す図である。
同図に示すように、被測定光を光ファイバ201で導入し、これを分岐した光ファイバ202、203、204を介して、例えば、5台の分光器205、206、207に入射して分光し、分光光はディテクタ208、209、210で測定される。ここでは、各々のスペクトル領域に分けて並列に処理している例を示しており、j=1〜5とするとき、各分光器jは、波長帯域λsj〜λejを測定するように設定してある。この方式の分光器は、被測定光の波長帯域が広いと、分光器の所要台数が増え、当然光ファイバや他の部品の個数が増え、組立や調整の工数が増え、結果として価格が上昇する欠点がある。又、広い波長帯域に対して、波長の分割数、言い換えれば光ファイバの本数を増やすには、その径を小さくする必要があり、結果として光学系のために分岐後の径が小さくなり分岐後の光量が減少し、又屈曲による光量変動をきたし、更には光学系の機械的脆弱性が大きくなる欠点がある。
【0007】
図5は、特許文献1に記載されているダイクロイックフィルタアレイ方式の高速測定分光器の構成を示す図である。
ここで、ダイクロイックフィルタとは、λs<λm<λeについて、波長帯域λs〜λmは透過し、波長帯域λm〜λeは反射するフィルタのことである。この方式の分光器は、入射光の光路中に複数の、例えば、3個のダイクロイックフィルタ301、302、303を配置し、それぞれのダイクロイックフィルタ301、302、303で切り出された波長帯域に対し、3個のレンズと各1個のスリット・回折格子・受光器から成る分光器304、305、306と、その出力を受けるディテクタ307、308、309を備えるものである。しかし、この方式の分光器の配置構造では、分光器相互の位置が干渉するために、高分解能の分光器を使用することができず、又、波長帯分割に応じた数だけ分光器の数を同一光路上に配置する必要があるため、構造的にミラーなどを使用して光路を折り曲げる必要があり、製造コストが上昇し、実用的ではない。
【0008】
上記の従来の3種類の方式の分光器においては、パルス型ソーラシミュレータの分光測定には、高速測定という要求のために波長帯ごとに光を分岐させる構造が不可欠であるが、これは測定システム全体を大型化させる傾向にあり、装置の小型化と低価格化という要求とは矛盾し、相容れるものではないという問題がある。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑みて、低価格・小型・軽量・高速・高分解能・高効率・広帯域という7つの要求を満たす分光放射計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする光学素子と、該光学素子を出射した被測定光を分光する分光素子と、該分光素子によって分光された分光光を検知する第1及び第2の光検知手段と、前記分光素子と前記第1及び第2の光検知手段との間の光学系中に配置されたダイクロイックフィルタとを備え、前記第1の光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光を検知し、前記第2の光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタによって反射された前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を検知することを特徴とする分光放射計である。
第2の手段は、被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする光学素子と、該光学素子を出射した被測定光を分光する分光素子と、該分光素子によって分光された分光光を検知する光検知手段と、前記分光素子と前記光検知手段との間の光学系中に配置されたダイクロイックフィルタとを備え、前記光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光と、前記ダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知する2次元の光検知手段であることを特徴とする分光放射計である。
第3の手段は、被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする第1の光学素子と、前記入射スリットと前記第1の光学素子との間の光学系中に配置された第1のダイクロイックフィルタと、該第1のダイクロイックフィルタを透過し前記第1の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第1の分光素子と、該第1の分光素子によって分光された分光光を検知する第1及び第2の光検知手段と、前記第1の分光素子と前記第1及び第2の光検知手段との間の光学系中に配置された第2のダイクロイックフィルタと、前記第1のダイクロイックフィルタで反射された被測定光を平行光にする第2の光学素子と、該第2の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第2の分光素子と、該第2の分光素子によって分光された分光光を検知する第3及び第4の光検知手段と、前記第2の分光素子と前記第3及び第4の光検知手段との間の光学系中に配置された第3のダイクロイックフィルタと、を備え、前記第1の光検知手段は、前記第2のダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光を検知し、前記第2の光検知手段は、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射された前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を検知し、前記第3の光検知手段は、前記第3のダイクロイックフィルタを透過した第1及び第2の波長帯域とは異なる第3の波長帯域の分光光を検知し、前記第4の光検知手段は、前記第3のダイクロイックフィルタによって反射された前記第1ないし第3の波長帯域とは異なる第4の波長帯域の分光光を検知することを特徴とする分光放射計である。
第4の手段は、被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする第1の光学素子と、前記入射スリットと前記第1の光学素子との間の光学系中に配置された第1のダイクロイックフィルタと、該第1のダイクロイックフィルタを透過し前記第1の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第1の分光素子と、該第1の分光素子によって分光された分光光を検知する第1の光検知手段と、前記第1の分光素子と前記第1の光検知手段との間の光学系中に配置された第2のダイクロイックフィルタと、前記第1のダイクロイックフィルタで反射され被測定光を平行光にする第2の光学素子と、該第2の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第2の分光素子と、該第2の分光素子によって分光された分光光を検知する第2の光検知手段と、前記第2の分光素子と前記第2の光検知手段との間の光学系中に配置された第3のダイクロイックフィルタと、を備え、前記第1光検知手段は、2次元の光検知手段からなり、前記第の2ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光と、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知し、前記第2光検知手段は、2次元の光検知手段からなり、前記第3のダイクロイックフィルタを透過した第1及び第2の波長帯域とは異なる第3の波長帯域の分光光と、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1ないし第3の波長帯域とは異なる第4の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知することを特徴とする分光放射計である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低価格・小型・軽量・高速・高分解能・高効率・広帯域という7つの要求を満たす分光放射計を実現することができる。又、輸送によるストレスにも耐え、屋外においても使用できる剛性の高い携帯可能な高性能な分光放射計を実現することができる。
又、本発明によれば、パルス型ソーラシミュレータの分光測定を行う場合、パルス光には多数の鋭いピークが存在することから、分光器には 0.25nmという非常に厳しい波長精度とこれと同程度の波長分解能が要求されるが、分光光を、ダイクロイックフィルタを介して無駄なく光検知手段で検知することができるため、上記のパルス光測定に要求される波長精度と波長分解能を実現することができる。
更に、本発明によれば、入射光学系として光ファイバを使用することにより、測定対象の光源の状態に左右されずに分光測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の発明に係る分光放射計の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態の発明に係る分光放射計の構成を示す図である。
【図3】従来技術に係るツェルニターナ型分光器の構成を示す図である。
【図4】従来技術に係る分岐型光ファイバ方式の高速測定分光器の構成を示す図である。
【図5】特許文献1に記載されているダイクロイックフィルタアレイ方式の高速測定分光器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態を、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る分光放射計の構成を示す図である。
同図に示すように、この分光放射計は、光ファイバ1から入射スリット2を通って被測定光が入射され、入射スリット2を通った光は、コリメータミラー3(又はコリメータレンズ)からなる光学素子で平行光に変えられ、回折格子4(又はプリズム)からなる分光素子に入射される。回折格子4で分光された波長帯λs〜λm〜λeの光は、光路中にダイクロイックフィルタ5が配置されていることにより、1台の分光放射計中において、波長帯がλs〜λmとλm〜λeの2つに分割され、それぞれの波長帯λs〜λmと波長帯λm〜λeの光は、それぞれの波長帯に対応する結像ミラー6及び結像ミラー7を介して、それぞれ光検知手段としての第1のディテクタ8及び第2のディテクタ9において同時に測定される。
【0013】
図1においては、回折格子4で回折された光が結像ミラー6、7により分光器出口で全体のスペクトルλs〜λeの拡がりをもって結像している状態を示しているが、図3に示した従来型の分光器と異なるのは、途中にダイクロイックフィルタ5が挿入されていることにより波長帯が2つに分けられている点にある。ダイクロイックフィルタ5を設けることにより、2つに分かれた光の出口を2箇所設け、一方の出口には第1のディテクタ8からなる光検知手段を置き、波長帯λs〜λmの光を測定させ、他方の出口には第2のディテクタ9からなる光検知手段を置き、波長帯λm〜λeの光を測定させるものである。
【0014】
分光放射計をこのように構成することにより、波長帯域λs〜λeが広くても、分光器を2台用意する必要がなく、さらに、波長分岐用の光ファイバ本数も増やさずに済み、分光器を小型化することができる。即ち、小型筐体中で一度に広い波長帯域λs〜λeを測定することができることにより、光ファイバによる分岐を必要とせず、光ファイバを1本とすることができ、又分光器も節約することができ、更に分光放射計の製造コストを低廉価化することができ、更に適切な設計により携帯用の分光放射計を実現することができる。
【0015】
本実施形態の発明によれば、回折格子4(又は回折プリズム)で分光された後にダイクロイックフィルタ5を配置することにより、入射スリット2を通った全ての光を無駄なく複数のディテクタ8、9で検知することができ、高い光利用効率が得られる。これにより、複数の分光器を使用しなくても同時に広い波長帯域の分光測定ができる。更に細かい分解能を持つディテクタを使用すれば、測定される分光の波長精度と波長分解能を上げることができる。又、複数の光ファイバにより複数の分光器に光を分岐する際に避けられない光強度の減少もなくなるので、強度が弱い波長帯の光をも、より高い精度で測定することができる。更に、必要に応じ高次光カットフィルタ機能をダイクロイックフィルタ5に付加しておけば、迷光除去もできる。なお、本発明は、図1に示した光学系に限らず、他の殆どの分光器、例えば、凹面回折格子を利用した分光器や透過型回折格子を利用した分光放射計等にも応用することができる。
【0016】
更に、本実施形態の発明によれば、分光測定に2次元センサのディテクタを用いる場合は、以下に説明するような構成を採用することにより、2つの波長帯の分光を同一ディテクタの分離されたセンサ領域で別々に測定することができる。具体的には、図1において、ディテクタを2次元センサに変えた場合について考える。まず、ダイクロイックフィルタ5と結像ミラー7の間に不図示のミラーを配置して、ダイクロイックフィルタ5で反射された波長帯λm〜λeの光の光路を下向きに変え、波長帯λm〜λeの光を、波長帯λs〜λmの光と共に、結像ミラー6に入射させ、それぞれの波長帯λm〜λeの光と波長帯λs〜λmの光を光検知手段であるディテクタの2次元センサ面の異なる領域に結像させる。つまり、2次元センサ内で2つの波長帯の像が干渉しないように光路を調整しておけば単一のディテクタによって、波長帯λs〜λmの光と波長帯λm〜λe光を同時に測定することができる。ただし、このディテクタは波長帯λs〜λmと波長帯λm〜λeの全域で分光応答度を持つものを選ぶ必要がある。広い波長帯域で分光応答度を持ち、十分に広い面積を有する2次元センサを入手することができれば、上記の構成を適用することにより、多分割した波長帯を単一のディテクタで測定することができる。このように、ダイクロイックフィルタ等で波長別に分岐した光を1つの2次元センサの上半分と下半分、又は3分割以上に分割して1つの2次元センサに複数のラインセンサの働きを行わせることができる。
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態を、図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態の発明に係る分光放射計の構成を示す図である。
同図に示すように、この分光放射計は、分光器外に第1のダイクロイックフィルタ13を配置すると共に、分光器中に第2のダイクロイックフィルタ17及び第3のダイクロイックフィルタ23を配置したものである。具体的には、光ファイバ11から出射した光が入射スリット12に入射され、入射スリット12から出射した光は、コリメータミラー14の手前で、第1のダイクロイックフィルタ13によって波長帯域が分けられる。第1のダイクロイックフィルタ13で波長帯λs1〜λe1の光は透過され、波長帯λs2〜λe2の光は反射される。第1のダイクロイックフィルタ13を透過した波長帯λs1〜λe1の光は、コリメータミラー14で平行光に変えられ、回折格子15に入射される。回折格子15で分光された波長帯λs1〜λe1の光は、結像ミラー16を介して光路中に配置された第2のダイクロイックフィルタ17に入射される。第2のダイクロイックフィルタ17によって、波長帯λs1〜λm1の光は第2のダイクロイックフィルタ17を透過して第1のディテクタ18において測定され、波長帯λm1〜λe1の光は第2のダイクロイックフィルタ17で反射されて第2のディテクタ19において測定される。同様にして、第1のダイクロイックフィルタ13で反射された波長帯λs2〜λe2の光は、コリメータミラー20で平行光に変えられ、回折格子21に入射される。回折格子21で分光された波長帯λs2〜λe2の光は、結像ミラー22を介して光路中に配置された第3のダイクロイックフィルタ23に入射される。第3のダイクロイックフィルタ23によって、分光された波長帯λs2〜λm2の光は第3のダイクロイックフィルタ23を透過して第3のディテクタ24において測定され、分光された波長帯λm2〜λe2の光は第3のダイクロイックフィルタ23で反射されて第4のディテクタ25において測定される。
【0018】
本実施形態の発明によれば、波長帯λs1〜λm1の光は第1のディテクタ18において、又波長帯λm1〜λe1の光は第2のディテクタ19において、又波長帯λs2〜λm2の光は第3のディテクタ24において、又波長帯λm2〜λe2の光は第4のディテクタ25においてそれぞれ測定され、λs1〜λm1〜λe1、λs2〜λm2〜λe2という広い波長帯域を同時に測定することができる。そのため、分岐用光ファイバの本数を増やさずに、さらに広い測定波長帯域をカバーすることができる。つまり、分光器への入射前と分光器以降の光学系中に、ダイクロイックフィルタそれぞれ挿入することにより、分光放射計を携帯できる程に小型化することが可能となる。更に、本実施形態の発明によれば、図1に示したような波長域分割用の分岐用光ファイバを必要としないので、コストを削減することができ、かつ組み込み時の調整の工数が少なくなる。更に、必要な光ファイバ本数が1本だけとなり剛性が高いものを使用することができるので、測定系の剛性、従って測定の再現性が増大するという、性能向上を図ることができる。更に、市販のアレー状ディテクタの長さが制限されている場合でも広い波長帯の測定が小型筐体中の光学系と少数の光ファイバによって実現することができる。
【0019】
更に、本実施形態の発明によれば、分光測定に2次元センサのディテクタを用いる場合は、以下に説明するような構成を採用することにより、4つの波長帯の分光を2つのディテクタの分離されたセンサ領域で別々に測定することができる。具体的には、図2において、ディテクタを2次元センサに変えた場合について考える。まず、第2のダイクロイックフィルタ17で反射される波長帯域λm1〜λe1の光が出射する光学系に不図示のミラーを配置して、第2のダイクロイックフィルタ17で反射した波長帯λm1〜λe1の光の光路を上向きに変え、波長帯λm1〜λe1の光を、波長帯λs1〜λm1の光と共に、一方のディテクタの2次元センサ面の異なる領域に結像させる。更に、第3のダイクロイックフィルタ23で反射される波長帯域λm2〜λe2の光が出射する光学系に不図示のミラーを配置して、第3のダイクロイックフィルタ23で反射した波長帯λm2〜λe2の光の光路を右上向きに変え、波長帯λm2〜λe2の光を、波長帯λs2〜λm2の光と共に、他方のディテクタの2次元センサ面の異なる領域に結像させる。つまり、一方の2次元センサにおいて波長帯λs1〜λm1の光と波長帯λm1〜λe1の光を同時に測定すると共に、他方の2次元センサにおいて波長帯λs2〜λm2の光と波長帯λm2〜λe2の光を同時に測定することができる。
【0020】
上記の各実施形態の発明によれば、装置の小型化と低価格化という相矛盾する2つの要求を、入射スリットを通りコリメータミラー又はコリメ−トレンズを介して回折格子又はプリズムに当てて分光した光を、結像ミラーを介してダイクロイックフィルタに当てて波長帯を分割し、それぞれの波長帯をラインセンサ又は2次元センサを用いた個別のディテクタで測定することができる。このように構成することにより、装置を大型化することなく、全波長帯を同時に測定するためのディテクタの波長帯を伸ばすことができる。又、限られた分解能のディテクタを、同時に複数用いることで、結果として被測定光の波長分解能を上げた高速測定を実現することができる。又、被測定光の導入に光ファイバを用いることにより、測定対象の光源の状態に左右されずに測定ができる。更に、従来の高速測定分光器の持つ複雑なシステム構造を簡素化し、組立や調整の工数の工数を減らし、価格を下げることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の将来的に使用が期待される分野として、分光放射計の国際的な評価方法の基準の確立に寄与することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 光ファイバ
2 入射スリット
3 コリメータミラー
4 回折格子
5 ダイクロイックフィルタ
6 結像ミラー
7 結像ミラー
8 第1のディテクタ
9 第2のディテクタ
11 光ファイバ
12 入射スリット
13 第1のダイクロイックフィルタ
14 コリメータミラー
15 回折格子
16 結像ミラー
17 第2のダイクロイックフィルタ
18 第1のディテクタ
19 第2のディテクタ
20 コリメータミラー
21 回折格子
22 結像ミラー
23 第3のダイクロイックフィルタ
24 第3のディテクタ
25 第4のディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする光学素子と、該光学素子を出射した被測定光を分光する分光素子と、該分光素子によって分光された分光光を検知する第1及び第2の光検知手段と、前記分光素子と前記第1及び第2の光検知手段との間の光学系中に配置されたダイクロイックフィルタとを備え、
前記第1の光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光を検知し、前記第2の光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタによって反射された前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を検知することを特徴とする分光放射計。
【請求項2】
被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする光学素子と、該光学素子を出射した被測定光を分光する分光素子と、該分光素子によって分光された分光光を検知する光検知手段と、前記分光素子と前記光検知手段との間の光学系中に配置されたダイクロイックフィルタとを備え、
前記光検知手段は、前記ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光と、前記ダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知する2次元の光検知手段であることを特徴とする分光放射計。
【請求項3】
被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする第1の光学素子と、前記入射スリットと前記第1の光学素子との間の光学系中に配置された第1のダイクロイックフィルタと、
該第1のダイクロイックフィルタを透過し前記第1の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第1の分光素子と、該第1の分光素子によって分光された分光光を検知する第1及び第2の光検知手段と、前記第1の分光素子と前記第1及び第2の光検知手段との間の光学系中に配置された第2のダイクロイックフィルタと、
前記第1のダイクロイックフィルタで反射され被測定光を平行光にする第2の光学素子と、該第2の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第2の分光素子と、該第2の分光素子によって分光された分光光を検知する第3及び第4の光検知手段と、前記第2の分光素子と前記第3及び第4の光検知手段との間の光学系中に配置された第3のダイクロイックフィルタと、を備え、
前記第1の光検知手段は、前記第2のダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光を検知し、前記第2の光検知手段は、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射された前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を検知し、前記第3の光検知手段は、前記第3のダイクロイックフィルタを透過した第1及び第2の波長帯域とは異なる第3の波長帯域の分光光を検知し、前記第4の光検知手段は、前記第3のダイクロイックフィルタによって反射された前記第1ないし第3の波長帯域とは異なる第4の波長帯域の分光光を検知することを特徴とする分光放射計。
【請求項4】
被測定光が入射される入射スリットと、該入射スリットを通過した被測定光を平行光にする第1の光学素子と、前記入射スリットと前記第1の光学素子との間の光学系中に配置された第1のダイクロイックフィルタと、
該第1のダイクロイックフィルタを透過し前記第1の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第1の分光素子と、該第1の分光素子によって分光された分光光を検知する第1の光検知手段と、前記第1の分光素子と前記第1の光検知手段との間の光学系中に配置された第2のダイクロイックフィルタと、
前記第1のダイクロイックフィルタで反射され被測定光を平行光にする第2の光学素子と、該第2の光学素子で平行光化された被測定光を分光する第2の分光素子と、該第2の分光素子によって分光された分光光を検知する第2の光検知手段と、前記第2の分光素子と前記第2の光検知手段との間の光学系中に配置された第3のダイクロイックフィルタと、を備え、
前記第1光検知手段は、2次元の光検知手段からなり、前記第の2ダイクロイックフィルタを透過した第1の波長帯域の分光光と、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知し、前記第2光検知手段は、2次元の光検知手段からなり、前記第3のダイクロイックフィルタを透過した第1及び第2の波長帯域とは異なる第3の波長帯域の分光光と、前記第2のダイクロイックフィルタによって反射され、前記第1ないし第3の波長帯域とは異なる第4の波長帯域の分光光を更に反射させた分光光とを検知することを特徴とする分光放射計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169493(P2010−169493A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11480(P2009−11480)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(591288388)株式会社オプトリサーチ (2)
【出願人】(507104016)オーケーラボ有限会社 (5)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【出願人】(591107676)山下電装株式会社 (3)
【Fターム(参考)】