説明

分光測光器

分光測光器はモノリシック半導体基板と、1以上の波長分散手段と、1以上の波長検出手段とを具え、モノリシック基板(1)は導波手段(2)と、特定の光の波長の検出器として動作し、かつ導波手段の近くに配置された1以上の共振器(3〜14)とを有し、これによりその光の波長に対してエバネセント光結合が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を特定および定量化するデバイスに関し、特に本発明は、光分散手段と光検出手段との間に物理的分離がない分光測光器に関する。加えて、本発明はさらに可動部品がない分光測光器に関する。
【背景技術】
【0002】
分光測光法は、電磁スペクトルに関する研究である。分光測光法は、分光測光器の使用に関係している。分光測光器は測光器、すなわち光強度を測定するデバイスであり、それは光の波長に応じて光の強度を測定することができる。この分光測光器は、化学、生物学、法医科学、宇宙および地球観測、セキュリティ、ならびに多くの種類の産業といった多くの分野で用いられている。分光測光器は、例えばフラットパネルディスプレイまたはデジタルカメラの色識別や、乾式電子写真印刷の色制御や、環境モニタリングや、色/波長識別に関するプロセス制御といったさらに広範囲の用途を有している。
【0003】
分光測光器の最も一般的な用途は光吸収の測定であるが、分光測光器は、例えば、拡散反射率や、材料もしくはデバイスの透過あるいは発光スペクトルを測定するよう設計することができる。分光測光器は、原則として光の電磁放射スペクトルの全波長帯で動作することができる。しかしながら、大抵の分光測光器は電磁スペクトルの可視、赤外、近赤外、中赤外あるいは紫外線の波長帯で動作する。分光測光器の波長域と波長帯は、分光測光器が収集するよう設計されたスペクトルデータと、使用する光分散および光検出システムの種類とによって部分的に決定される。これは、順に分光測光器の取得速度、感度および分解能を制限する。
【0004】
従来の分光システムは、(a)分散システムと(b)干渉(FTIR)システムの2つのカテゴリに分類することができる。何れにしても、基本システムは、検出素子(通常は半導体型光検出器または光電子増倍管)を加えた回折格子あるいは直線駆動機構により光が(スペクトルまたは時間の何れかで)分散するメカニズムから成る。したがって、このシステムは少なくとも2つの部分から成る。実際には、このシステムは、分光測光器が有効に機能するためにレンズ、ミラー、シャッター、スリット、および光チョッパーなどの複数の付加的な光学素子を必要とする。歴史上、分光測光器はスペクトルを分析するために単色光分光器を用いているが、CCDアレイなどの光検出器アレイを用いる分光測光器もある。このシステムは、例えば英国特許第0525408.1号に示されている。この分光測光器は、その部品の数ゆえに複雑である。これらのシステムは大抵、光を分散させる機械的な回折格子の単色光分光器と、スリットと、バフルと、冷却した光検出器と、レンズミラーと、シャッターとを具え、分光測光器が適切に機能するように全てを正確に配列しなければならない。これらのシステムはその複雑さと多くの部品とにより誤動作する傾向があり、相対的に取得時刻が遅く、製造が高価であり、迷光に関係する問題を有しており、光学システムに導入された各追加部品が光子を失うので信号強度を低減する。光分散素子と光検出素子(光路)とを具える分光測光器の素子間に大きな空間的分離があるときに、この問題は悪化する。さらに、アレイ型分光器はその光学特性が固定するという更なる欠点を有しており、例えば、従来の回折格子型分光器で可能なように、スリットの幅を変更することによってスペクトル分解能または感度を増加させることはできない。
【0005】
加えて、分光測光器が携帯型であることを要求されるといった厳格な用途では、それらが重く、サイズが大きく、応力損傷等による損傷または光路のずれにより誤動作する傾向があるため、これらのシステムは理想的ではない。従来のFTIRや機械的に駆動する可動部品のある回折格子型機器が振動応力や打ち上げ応力、宇宙真空、および極温に十分に対処していない壊れやすい機器であるという点において、システムが宇宙環境、大気環境、または他の悪環境の用途で用いられるときにこれが悪化する。質量とサイズがさらに積載量に割り当てられた資源を消費する。可視領域のCCDアレイが分光測光器に用いられる場合、エネルギ資源の重圧をやや軽減するが、宇宙線によって影響する場合があり、調整誤差の影響を受けやすい。
【0006】
分光測光器が顕著により低コストで、より軽量で、より小型で、頑丈で、機器に信号処理機能を組み込む場合、関心のある多くの付加的な用途が生まれる。
【0007】
これらの欠点の幾つかを克服するために、分光測光システムを小型化した技術が開発されており、例えば「Structure and method for a microelectromechanic cylindrical reflective diffraction grating spectrophotometer」と題する米国特許第7106441号などの微小電気機械システム(MEMS)は、モノリシックシリコン基板のローランド円に光検出器と光ファイバ光源を一体化した回転円筒反射回折格子を有する調整可能なMEMS分光測光器を開示している。
【0008】
他の実施例としては、可動走査ミラーを有する小型フーリエ変換分光測光器を記載した米国特許出願公開第2008198388号と、光検出器に結合したアレイ導波路回折格子を有する集積光学型高分解能分光測光器を記載した米国特許出願公開第2006132764号と、回転回折格子を有するMEMS分光測光器を記載した米国特許出願公開第2004145738号と、内部サンプル保持キャビティと、光入口ポートと、光出口ポートとを有し、可動ミラーもしくは他の可動連結光学素子を持たない多重反射光学セルを記載した独国特許出願公開第10216047号とがある。セルの反射面は対向した放物線もしくは平行のペア、円筒形、円形、または螺旋形配置の複数のミラーといった形態をとることができ、米国特許第6249346号はシリコン基板にモノシリックで構築したマイクロ分光測光器を記載している。この分光測光器は凹面回析格子を具え、これを用いて光波を分散させると共に、シリコンブリッジに位置するフォトダイオードアレイに反射光を集中させる。
【0009】
上記分光測光器アプローチの全ては、それらが分光測光器のサイズを縮小するという点において、上記特定した問題の幾つかを克服しているが、それらは全て1以上の可動部品を有しており、構成が単一体でないか、もしくはその構成が複雑であるか、または小型化により光分散特性と分解能が乏しいという欠点がある。したがって、これらの技術は、故障する傾向があり、迷光に関する問題を有し、一般に高価であり、製造が困難であるか、小型化により光分散特性と分解能が乏しいという点において、十分に上述した問題を取り扱っていない。
【0010】
これらの欠点の幾つかを克服するため、他の種類の分光測光器が開発されている。これらとしては、例えば「Integrated optics based high resolution spectrophotometer」と題する米国特許出願第11/015,482号と、「Spectrophotometer and spectrophotometric processing using Fabry−Perot resonators」と題する国際公開第2007072428号と、「Multiple−wavelength spectrophotometer and photodiode arrayed photodetector」と題する特願1990−128765号と、「variable filter based optical spectrometer」と題する米国特許第6785002号と、「Monolithic spectrophotometer」と題する米国特許第6249346号と、「Chip−scale optical spectrum analyzers with enhanced resolution」と題する米国特許出願第11/206,900号とがある。上記先行技術は全て、製造中の問題と性能の低下に導く光分散と光検出に別個の素子を利用している。
【0011】
上記分光測光器の全ては依然として、別個の単色光分光器と検出光学部品を有しており、小型では(分散素子と検出素子間の制限された空間的分離により)分解能を欠き、(正確な位置合せの必要性により)製造が困難であり、(強い光は分光測光器内で容易に分散することができるので)迷光の影響に関する問題を有することを意味する。
【0012】
ディスク共振器はマイクロディスク共振器として知られているか、または共振器は電気通信の光ファイバケーブルに特定の波長を追加および除去する技術で知られている。ディスク共振器の実施例としては、「Tuneable optical filter」と題する米国特許出願第10/323195号があり、これは調整可能なフィルタを有する共振器を記載しており、調整可能な隙間に依存して共振器周波数が提供される。この出願は光学フィルタを記載しているが、それを用いて検出していない。Optical Express,2006,vol14,no11,p4703〜4712(Lee and Wu)の「Tuneable coupling regimes of silicon micro disk resonators using actuators」を参照されたい。この論文は、MEMS動作で制御されたシリコンマイクロディスク共振器の調整可能な結合方法を記載している。この開示はMEMS可動部品が機能することを要求する調整可能な光学フィルタを記載しており、マイクロディスクを用いて検出していない。「ultra−high Q micro−resonators and methods of fabrication」と題する米国特許出願第10/678354号は、高いおよび極めて高いQ値が可能なマイクロキャビティを具えるマイクロキャビティ共振器と、シリコン基板とを記載している。この出願は調整可能な光学フィルタを記載しているが、検出または分散に用いる手段を想定していない。Applied Physics Letters,2002,vol80,no19,p3467〜3469の「Gain trimming of the resonator characteristics in vertically coupled InP micro disk switches」は、垂直に結合したマイクロディスク共振器/単一モード動作を示す導波路スイッチデバイスを記載している。この発明は、通信アプリケーションに用いる光スイッチに関している。検出に共振器を用いていない。
【0013】
上述した先行技術は全て電気通信の分野であり、ディスク共振器を用いて光ファイバあるいは導波路から特定の波長を導く/進路を変える/追加するもしくは除去する。上記先行技術は何れも、単色光分光器としてまたはさらにその波長の光の強度の検出部として、検出、分光にマイクロディスク共振器を用いることを考慮していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この技術は分光測光器の技術の幾つかの問題を同一に扱い、これらの問題は上述した。この分光測光器は、その部品の数ゆえに複雑である。これらのシステムは大抵、光を分散させる機械的な回折格子の単色光分光器と、スリットと、バフルと、冷却した光検出器と、レンズミラーと、シャッターとを具え、分光測光器が適切に機能するように全てを正確に配列しなければならない。これらのシステムはその複雑さと多くの部品とにより誤動作する傾向があり、取得時間が遅く、製造が高価であり、迷光に関係した問題を有し、光学システムに導入される各々の追加部品が光子を失うので、信号強度が低減する。
【0015】
さらに、アレイ型分光器はその光学特性が固定するという更なる欠点を有しており、従来の回折格子型分光器で可能なように、スリットの幅を変更することによってスペクトル分解能または感度を増加させることはできない。大抵これらのシステムは重いため、携帯用のアプリケーションに適していない。
【0016】
MEMSシステムは、これらの欠点の幾つかを克服する。しかしながらこれらのシステムは全て1以上の可動部品を有しており、構成が単一体でないか、もしくはその構成が複雑であるか、または小型化により光分散特性と分解能が乏しいという欠点がある。したがって、これらの技術は、故障する傾向があり、迷光に関する問題を有し、一般に高価であり、製造が困難であるか、小型化により光分散特性と分解能が乏しいという点において、十分に上述した問題を取り扱っていない。
【0017】
これらの欠点を克服するため、チップ型素子が用いられた。しかしながら上記分光測光器の全ては、別個の単色光分光器と検出光学部品を有しており、小型では(分散素子と検出素子間の制限された空間的分離により)分解能を欠き、(正確な位置合せの必要性により)製造が困難であり、(強い光は分光測光器内で容易に分散しうるので)迷光の影響に関する問題を有することを意味する。
【0018】
したがって先行技術は、その特定した問題を取り扱っていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって本発明の目的は、上記特定した問題の1以上を取り扱う分光測光器を提供することである。具体的には、本発明は、モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3〜14)と、1以上の波長検出手段(3〜14)とを具える分光測光器であって、分散手段(3〜14)と検出手段(3〜14)との間に物理的分離がない分光測光器に関している。
【発明の効果】
【0020】
有利なことに、この分光測光器は入力光子の損失が殆どなく、高い信号対ノイズ比を有し、これにより信号強度が改善されるだろう。
【0021】
したがって、本発明の実施形態はさらに物理的に可動部品がない分光測光器を提供する。
【0022】
有利なことに、この分光測光器は複雑でないシステムをもたらし、保守が容易であり、回折格子検出部の位置合せの問題や迷光の問題がない。このシステムはさらに、高速な取得時間および高分解能の分光測光器をもたらすであろう。
【0023】
好適な実施形態では、分光測光器がモノリシック基板を具え、モノリシック基板(1)が1以上の導波手段(2)と1以上の共振器(3〜14)とを有する半導体であり、各共振器(3〜14)が導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3〜14)が導波手段(2)の近くに最適に配置されている。
【0024】
有利なことに、この種類の分光測光器は上述した種類の可動部品なく製造することができ、以下の特性を有する。
【0025】
小さなサイズで分光測光器を製造することができる。したがってこのような分光測光器は、例えば携帯電話もしくは(携帯電話の表面の内部またはその表面に取り付けられる)分光測光器の情報を遠隔拠点から伝達することができる他のデバイスの一部としての新たな有用性を見つけることができ、これにより動的もしくは静的な化学センサのネットワークを開発することが可能である。この小型センサはさらに、重量またはサイズが望まれない、例えば宇宙アプリケーションの分光測光器で有用であることが分かるであろう。例えば乾式電子写真印刷では、分光測光器が閉回路の色制御システムの主要な要素となり、プリンタはネットワーク環境で再現可能な色画像を生成することが可能になるであろう。カメラでは、分光測光チップを用いて現在利用可能な感光チップを置き換え、不連続な帯域の光のみを検出するのではなく、全可視領域にわたって光を検出することができるカメラを製造することができる。
【0026】
記載する分光測光器は、電力要件が低い。有利なことに、この分光測光器は携帯用の分光測光器または主電源に接続しない分光測光器で有用であることが分かるであろう。
【0027】
有利なことに、全波長の光を同時に読み取る際に、この分光測光器は高速なデータ取得を可能にするだろう。したがって、ミリセカンド以下で全スペクトルを読み出すことができる。
【0028】
有利なことに、この分光測光器は優れたスペクトル特性を有するため、分光測光器は迷光が少なく、このため高分解能のスペクトルを生成するだろう。加えて、この分光測光器は超高分解能と広い波長適用範囲を有するよう製造することができる。
【0029】
有利なことに、分光測光器は可動部品、回折格子、MEMS等を持たないので、現在市場に出ているものより安くこの分光測光器を製造することができるであろう。
【0030】
有利なことに、この分光測光器は可動部品を持たない。したがって、分光測光器は可動部品の障害による故障がないであろう。この分光測光器は、現在市場に出ている分光測光器より頑丈で信頼できるだろう。
【0031】
好適な実施形態では、分光測光器がモノシリック基板を具え、モノリシック基板(1)が1以上の導波手段(2)および1以上の共振器(3〜14)を有する半導体であり、導光手段が入力光の入射に対して角度を成し、各共振器(3〜14)が導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3〜14)が導波手段(2)の近くに最適に配置されており、共振器が所定の電磁波長に最適な寸法であり、最も小さな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点に最も近く、最も大きな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点から最も遠くに並べられ、基板は3つの機能領域に分割されており、第1の領域がp型もしくはn型の何れかにドープした半導体で作成した基板層(17)であり、第2の活性領域(16)は分光測光器の波長帯をカバーするようバンドギャップが組み込まれた半導体であり、基板より大きい屈折率を有し、第3の光学被覆領域(18)が第2の活性領域(16)より小さな屈折率を有し、第2の活性領域(16)が第1の領域(17)と第3の領域(18)との間に配置され、第3の領域(18)が第1の領域(17)に共通する電気接点であり、共振器(3〜14)がその表面に電気接点(19,20)を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで添付図面の図1〜図4を参照し、これらに図示するように単なる実施例によって本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【図1】図1は、分光測光器の概念図である。
【図2】図2は、図1のAおよびBに対応する半導体チップ[1]の2つの断面図である。
【図3】図3は、水平(A)または垂直(B)の何れかで導波路(2)に結合した共振器(3〜18)を示す半導体チップの立体図である。
【図4】図4は、NIR領域で機能し、図3Aに示す水平に配列した共振器で設計した典型的な分光チップのエピタキシャル設計を示す。
【0033】
さらに図面の特定の態様は一律の縮尺でなく、明瞭にするために特定の態様が例示され、もしくは省略されることに注意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0034】
最も好適な実施形態を参照して本発明を例示する。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0035】
本発明は、光分散手段と光検出手段との間に物理的分離がない分光測光器に関し、この分光測光器は可動部品を有していない。上述した理由で、可動部品を有する幾つかの分光測光器は故障する傾向があり、もしくは小型化できないか、または高価/製造が困難であるか、あるいは他の関連する問題を有していることを発明者らが発見した。
【0036】
したがって、本発明の目的は可動部品のない分光測光器を提供することである。それ故、本発明の実施形態は、モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3〜14)と、1以上の波長検出手段(3〜14)とを具える分光測光器であって、分散手段(3〜14)と検出手段(3〜14)との間に物理的分離がないことを特徴とする分光測光器を提供する。この分光測光器はさらに可動部品を持たないよう想定している。有利なことに、記載する種類の分光測光器は以下の特性を有するよう製造することができる。
【0037】
分光測光器は、小さなサイズで製造することができる。したがって、この分光測光器は、例えば携帯電話もしくは(携帯電話の表面に取り付けられる)分光測光器の情報を遠隔拠点から伝達することができる他のデバイスの一部として新たな有用性を見つけることができ、これにより動的もしくは静的な化学センサのネットワークを開発することが可能である。この小型センサはさらに、重量またはサイズが望ましくない分光測光器で有用であることが分かるだろう。例えば乾式電子写真印刷では、分光測光器が閉回路の色制御システムの主要な要素となり、プリンタはネットワーク環境で再現可能な色画像を生成することが可能になるだろう。カメラでは、分光測光チップを用いて現在利用可能な感光チップを置き換え、不連続な帯域の光のみを検出するのではなく、全可視領域にわたって光を検出することができるカメラを製造することができる。
【0038】
発明の態様
以下に記載する分光測光器は、電力要件が低い。有利なことに、この分光測光器は携帯用の分光測光器または主電源に接続しないか、または例えば宇宙、航空、防衛などの厳しい環境で動作する分光測光器に有用であることが分かるだろう。
【0039】
有利なことに、全波長の光を同時に読み取る際に、この分光測光器は高速なデータ取得を可能にするだろう。したがって、ミリセカンド以下で全スペクトルを読み出すことができる。
【0040】
有利なことに、この分光測光器は優れたスペクトル特性を有するので、分光測光器は迷光が少なく、このため高分解能のスペクトルを生成するだろう。加えて、この分光測光器は超高分解能と広い波長適用範囲を有するよう製造することができる。
【0041】
有利なことに、この分光測光器は可動部品、回折格子、MEMS等を持たないので、現在市場に出ている分光測光器より安くこの分光測光器を製造することができるであろう。
【0042】
有利なことに、この分光測光器は可動部品を持たない。したがって、分光測光器は可動部品の障害による故障に悩まされないであろう。この分光測光器は、現在市場に出ている分光測光器より頑丈で信頼できるだろう。
【0043】
選択的に、分光測光器の導波路は光の入射に対して角度を成しており、光の後方反射を防止することができる。
【0044】
選択的に、分光測光器の導波路は約1ミクロン〜約50ミクロンの幅、約1000ミクロンの長さ、および約1ミクロン〜約20ミクロンの深さにすることができる。
【0045】
好適な実施形態では、各共振器が所定の電磁波長に寸法的に最適化されており、各共振器は円筒形、カップ形、球形、円錐形、段付円錐形、表形であるか、または1以上の平面あるいは湾曲面にすることができる。最も好適な選択肢では、各共振器が球形、円筒形、またはカップ形であり、各球または円筒の直径が式D=nλ/πμで決定され、ここでλは光の自由空間波長であり、nは共振次数であり、μは共振器の有効屈折率である。
【0046】
選択的に、導波手段は共振器(3〜14)が直線状に配置された共振器(3〜14)で形成され、最も小さな共振器が最初の位置に配置され、最も大きな共振器が最後の位置に配置されるように、小さいものから大きいものへ共振器が配置される。好適な実施形態では、共振器が最も小さな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点に最も近く、最も大きな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点から最も遠くに並べられる。
【0047】
あるいは、共振器サイズの代わりに、またはそのサイズに加えて吸収層の組成変化(compositional grading)またはドーピングを用いて各共振器に特定の波長を選択させることができる。同一の直径の1セットの共振器を使用し、屈折率を操作することによって共振を変化させることができる。例えば、直径1マイクロメートル以下の共振器に対して、10の共振器にわたって0.02未満の完全な屈折率ステップで変化させ、(不純物で)組成/ドーピングすることによって、共振器の直径を変更することなく例えば1500〜1510nmで、1nm間隔の共振器を生成する。
【0048】
あるいは、分光チップは屈折率を調整する手段としてバイアス電圧を用いることができる。このように、一部のチップテストは、任意の所定の共振器へのバイアス電圧を最適化して1以上の共振を変動できるかどうかを判定することができる。これはさらに、動作中に分光チップの分解能を変更する非常に良好な方法である。
【0049】
好適な実施形態では、共振器が1次で動作し、分光器内の単一波長に反応する。代替実施形態は、高次で動作する共振器を用いることを想定している(したがってより大きく、十分な公差で製造が容易である)。より大きな共振器を高次で用いる場合、不要な波長を排除することができる3つの方法がある。
1.それ自身が一定のスペクトル吸収帯域を有するように吸収層が選択され、これにより特定の限界値を超える波長にそれが反応しない。
2.チップの正面(光入力端)に薄膜フィルタを使用し、関心のない短波長であるが、共振器に入って共振器に吸収される短波長を抑制する。
3.導波路自体が特定の遮断波長より下の波長を吸収するので、フィルタとして動作する。
【0050】
共振器は、導波路に対して水平または垂直に配置し、水平または垂直に結合することができる。図3Bは垂直に結合する実施例を示しており、ここで共振器は2つのリッジに跨っている。共振器が高次で動作する場合、この構成が特に適切であろう。
【0051】
分光測光器は基板で製造され、これはIV族、III〜V族、II〜VI族、II〜IV族、または半導体合金を加えた他の半導体を含む。好ましくは、基板がp型もしくはn型の何れかにドープされる。
【0052】
好適な実施形態では、基板が3つの機能領域に分割され、第1の領域がp型もしくはn型の何れかにドープした半導体で作成した基板層(17)であり、第2の活性領域(16)は分光測光器の波長帯をカバーするようバンドギャップが組み込まれた半導体で構成され、基板より大きい屈折率を有し、第3の光学被覆領域が第2の活性領域(16)より小さい屈折率を有し、第2の活性領域(16)は第1の領域(17)と第3の領域(18)との間に配置される。第3の領域(18)は、第1の領域(17)に共通する電気接点である。好ましくは、電気接点(18)が金の電気接点、金合金の電気接点、または他の導電材料もしくはその合成物、例えば銀もしくはその合成物で作成された電気接点である。
【0053】
好ましくは、共振器(3〜14)がその表面に電気接点(19,20)を有しており、これらの接点が金の電気接点、金合金の電気接点、または他の導電材料を含む電気接点を具えている。
【0054】
選択的に、半導体ウェハの劈開ファセットを多層コーティングで覆い、特定の波長帯の光を受光または遮断することができる。このコーティングは当業者に既知である。
【0055】
更なる選択肢では、基板が1以上のソリッドステートシャッター/変調器または導光光学部品を具えることができる。
【0056】
より好適な実施形態では、分光測光器がモノシリック基板を具え、モノリシック基板(1)が1以上の導波手段(2)と1以上の共振器(3〜14)とを有する半導体であり、導光手段が入力光の入射に対して角度を成しており、各共振器(3〜14)が導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3〜14)が導波手段(2)の近くに最適に配置されており、共振器が所定の電磁波長に最適な寸法であり、最も小さな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点に最も近く、最も大きな直径の共振器が導波手段に入る光の入口地点から最も遠くに並べられ、基板が3つの機能領域に分割され、第1の領域がp型もしくはn型の何れかにドープした半導体で作成した基板層(17)であり、第2の活性領域(16)は分光測光器の波長帯をカバーするようバンドギャップが組み込まれた半導体で構成され、基板より大きい屈折率を有し、第3の光学被覆領域が第2の活性領域(16)より小さい屈折率を有し、第2の活性領域(16)は第1の領域(17)と第3の領域(18)との間に配置され、第3の領域(18)が第1の領域(17)に共通する電気接点であり、共振器(3〜14)がその表面に電気接点(19,20)を有する。
【0057】
従来の分光システムは、(a)分散システムと(b)干渉(FTIR)システムとの2つのカテゴリに分類することができる。何れにしても、基本システムは、検出素子(通常は半導体型光検出器または光電子増倍管)を加えた回折格子あるいは直線駆動機構により光が(スペクトルまたは時間の何れかで)分散するメカニズムから成る。したがって、このシステムは少なくとも2つの部分、光分散手段と光検出手段とを具える。実際には、このシステムはレンズ、ミラー、シャッター、スリット、および光チョッパーなどの複数の付加的な光学素子が必要であり、この一例は英国特許第0525408.1号に示されている。さらに、分光器の出力部はロックイン増幅器、ボックスカーアベレージャ、および出力信号の解釈が可能な他の信号調整回路などの信号処理装置に接続される。さらに、分解能(最小の分解可能波長特性)は装置の物理的サイズに反比例するため、高分解能には大きな機器が必要である。したがって、高分解能を有する従来の分光測光器は必然的に大きく、結果として重く、かさばった。これが分光測光器の用途に限界をもたらした。加えて、この分光測光器は本来繊細であるため、本来携帯できない傾向がある。
【0058】
本出願は、単一のモノリシック半導体チップに基づく分光器(素子)を記載する。この素子は、標準的な半導体工程処理を用いて製造することができる。チップは光分散と光検出システムの双方を組み込み、1以上の共振器が光分散手段と光検出手段の双方として動作する。さらに、特定の実施形態では、チップがシャッター/変調器(ソリッドステート)および他の導光部品を組み込むことができる。
【0059】
基本コンセプトを図1に示す。[1]は、幅200ミクロン×長さ1000ミクロン×厚さ100ミクロンの典型的な寸法の半導体チップを表わしている。半導体チップを構成する物質は、IV族半導体、II〜IV族半導体、II〜VI族半導体、またはGaAs、GaN、GaP、GaSb、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AlN、AlPおよびAlSbの合金のIII−V族半導体の何れかを含むことができ、この選択は分光チップの必要な波長帯によって決定される。加えて、ドーパント不純物の組み込みを用いてチップの光学特性および電子物性を微調整することができる。[2]は、[1]に関する材料で構成した光導波路を表わしている。導波路は、後方反射を回避するように半導体チップ[1]に対してわざと角度を成している。導波路は、一般に幅1〜50ミクロン×長さ1000ミクロン×深さ1〜20ミクロンである。加えて、チップの端部ファセットをコートして特定の波長帯の入射光を受光および/または遮断することができる。[3〜14]は、円形共振器の代表的な実施例であり、この数は任意とすることができる。共振器の数を増やす程、より広い波長帯および/またはより高い分光分解能を提供する。典型的な実施形態は、一般にシングルチップに10〜1000の共振器を組み込むであろう。共振器の寸法は、共振器の直径(D)が関心の波長(λ)を共振次数(n)で乗算し、πおよび共振器を含む半導体の屈折率(μ)で割ったものに等しくなるように(すなわちD=nλ/πμ)選択される。したがって1.55ミクロンの波長の光を検出するために、1次(n=1)で動作する屈折率3の半導体を仮定すると、0.164ミクロンの直径の共振器が必要である。マイクロディスク内で共振する他の次数を除去するために光を予めフィルタする場合には、n>1で動作するより大きなディスクを製造することもできる(例えばn=10、D=1.64ミクロン)。共振器は、図1に示すように、最も小さい共振器が入射光の入口地点に最も近くなるように並べられる。共振は屈折率μにより制御することもでき、合金組成を変更することによっておよび/または共振器にドーパント不純物を導入することによってこれを変化させることができる。
【0060】
図2は、図1のAおよびBに対応する半導体チップ[1]の2つの断面図である。図2Aの[17]は、[1]に関して列挙した材料で作成し、n型もしくはp型の何れかにドープした基板材料を表わしている。基板は一般に厚さ90ミクロン以下であり、分光チップの型板として用いられる。基板上に活性領域[16]を(一般に分子線エピタキシあるいは有機金属気相エピタキシによって)成長させ、[1]の半導体から成るが、これに対して分光器の目標波長帯をカバーするようバンドギャップが設計され、これは基板より大きい屈折率を有する。半導体のバンドギャップ(E)は、共振器の最大検出波長(λ=hc/E)を決定するように選択され、ここでhがプランク定数であり、cが真空中の光速であり、これはλ(nm)=1240/E(eV)に近似することができる。量子井戸、量子細線、または量子ドットなどの低次元構造の場合には、共振器の吸収半導体層の厚さがλ(nm)=1240/(E+E+E)(eV)となるように選択され、ここでEが電子閉じ込めエネルギであり、Eが正孔閉じ込めエネルギである。[18]は、[1]の半導体物質を含む頂部光学被覆層であり、層[16]より大きなバンドギャップと小さな屈折率を有するよう選択される。[18]はデバイスの底面に共通する電気接点を表わし、一般に金とその合金で作成される。[19]および[20]は共振器の頂面に直接作成した電気接点を表わし、一般に金とその合金で作成される。共振器は、任意の順序で導波路に沿って配置することができる。しかしながら、最適な位置調整では、最も小さな直径の共振器が光の入口の最も近くに配置され、最も大きなものはさらに遠くに配置される。最初と最後の共振器の間の共振器は、直径が順に増加する。
【0061】
図3Aは、特定の実施形態の位相幾何学図であり、ここで共振器[3〜13]と導波路[2]は基板上に成長させた半導体構造のエッチングにより規定される。電気接点は、例えば[19,20]のように、蒸着および/またはスパッタリングした導体と導体パッドで提供される。この実施形態では、導波路[2]と共振器[3〜13]と間の光結合が水平である。図3Bは、導波路より上のエッチングによって共振器が規定されることにより、導波路[2]から共振器[3〜14]内に光が結合される代替実施形態を示している。電気接点は蒸着および/またはスパッタリングした導体で提供され、この実施例は[19]としてラベルされる。
【0062】
図4は、およそ1.5μmで動作するデバイスを目標にするコンセプトの図3Aに示す特定の実施形態の典型的なエピタキシャル構造を示している。1×1018cm−3の濃度までn型にドープし、約100μmの厚さまで後で薄くしたInP基板上にチップを成長させた[21]。この上に、In(0.72)Ga(0.28)As(0.6)P(0.4)層[22]を厚さ200nmで成長させ、光学バンドギャップは1.3μmに等しく、次いで 厚さ100nmのIn(0.601)Ga(0.399)As(0.856)P(0.144)層[23]があり、光学バンドギャップは1.5μmに等しい。続いて厚さ200nmの第2のIn(0.72)Ga(0.28)As(0.6)P(0.4)層[24]があり、光学バンドギャップは1.3μmに等しく、続いて2×1018cm−3の濃度にドープした厚さ5μmのp型InP層[25]がある。この実施形態では、入力光が導波路([2]および頂部[25]と底部[21]のInP層間の[22〜24])に導かれ、主に1.3μmがIn(0.72)Ga(0.28)As(0.6)P(0.4)層[22,24]を透過する。頂部InP[25]とIn(0.72)Ga(0.28)As(0.6)P(0.4)層[24]は選択的に共振器領域でエッチングされ、In(0.601)Ga(0.399)As(0.856)P(0.144)層[23]が1.5μm以下を吸収する吸収層を形成する。他のエピタキシャル構造の実施形態も想定され、この分野で既知である。
【0063】
動作原理
本発明は、少なくとも3つの方法が先行技術と異なっている。
1.(a)光分散手段と光検出手段との間に物理的分離がない。
2.(b)一連の共振器を用いて波長帯の光を分散する。
3.(c)一連の共振器を用いて特定の波長の光のレベルを検出する。
【0064】
関心の地点から出る光は、図1の矢印で示すようにデバイスに入る。チップの入射面はコートして関心の波長を遮断/選択することができる−前置フィルタ。入口地点はさらに電界吸収型光変調器を具え、任意の所定の時間にチップを光学的に分離することができる。導波路[2]とその周囲との間の屈折率差により、光は導波路に向けられる。光の電界分布(光場分布)は、一般にエバネセント場の後部でチップにわたって側方かつ対称的に衰える形態のガウス分布である。入射光の特定の波長成分が共振器(実際にはもっと沢山あるが、図の[3〜14])の1つの共振波長と一致する場合、共振器に結合し、残りの光は導波路に沿って進む。光が各共振器を通過するとき、共振器波長と一致する波長の光の任意の成分がその共振器に結合するであろう。したがって、各共振器は入射光の一部を選択的に結合し、効果的に様々な波長を選択する。共振器を具える半導体物質は、それが特定の波長帯の光を吸収するように選択される。したがって、光が共振器の1つに入るとき、それはさらに吸収され、共振器に電子と正孔のペアを生成する。電気接点(例えば[18]&[19]または[18]&[20])を介して外部回路に接続される場合、共振器に存在する光の量に比例する電流をこれが形成する。結果的に、各共振器は特定の波長に感受性を有する検出部として動作し、各検出部から信号を適切な回路に接続した場合、光のスペクトルを生成することができる。スペクトルを記録することができる速度は、共振器の電子と正孔の脱出時間(一般にマイクロ秒以下)のみによって制限され、一般に最大毎秒100万の速度でスペクトルを取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
開示した半導体チップは、低質量&低電力要件、宇宙線耐性、熱的安定性、振動耐性、原子状酸素不感受性、宇宙真空互換性があり、可動部品がない分光測光器を提供し、このチップは保守が不要である。したがって、この分光測光器は理想的に、地球観測(例えば気候&大気監視)および宇宙観測のハイパースペクトル画像解析、保全監査&監視、化学分析、遠隔探査、ならびに環境保護、ヘルスケア(ヘルスケア/医療機器の「装着型」監視システムを含む)、産業およびセキュリティ市場にわたる画像アプリケーションに適している。各チップは広帯域のスペクトル情報を提供することができるので、この分光測光器を用いるハイパースペクトル画像解析は線形アレイの分光測光チップを用いて宇宙から実行することができる。CCD検出部を利用する現在のアプローチは7ms以下の一般的な積分時間を有し、約50mの基礎ピクセルサイズを可能にしている。従来の画像処理システムでは、2次元シリコンCCDアレイは一方の次元が空間情報を提供し、他方の次元がスペクトル情報を提供している。高速な取得時間は、地球の空間分解ウィンドウ(基礎ピクセルサイズ)を向上する可能性がある。我々のコンセプトでは、分光測光チップの線形アレイがスペクトル情報と空間情報の双方を提供する。高分解能を要求する用途では、各共振器を用いて特定の波長を対象にするであろう。このアプローチの分解能は共振器サイズに関係しており、このため私たちは本技術を用いて1nmの分解能を達成できることを期待している。速度が分解能より重要な用途については、複数のマイクロディスク(共振器)を結合してより広い波長域をカバーし、データ取得をより高速にしてもよいし、特定の共振器のデータを検出しないことによってデータ収集時間を低減してもよい。このように分光測光器は動作中に動的に調整して取得時間あるいは分解能の何れかを最適化することができる。例えば、1nm分解能で1000nm〜2000nmのスペクトル域(1000のデータポイント)をカバーする設定から、同じ領域をカバーするがより低い分解能の設定に、分光測光器の設定を変更することができ、例えば、10の共振器のグループを結合し、10nmの分解能であるが、さらに速いデータ収集速度を提供する。これは、遠隔で制御し、特定の用途の要求に依存して再構成することができる。取得時間は、光が生成した電子がチップを出る遷移期によって制限され、1ms未満であると想定される。有利なことに、このシステムはさらに、宇宙で宇宙線により悪化し、取得時間を低下するミラーと回折格子の使用を要求しない。このシステムは、共振器技術を用いて、III〜V族などの光学的に有効な直接遷移の半導体合金を利用する。
【0066】
したがって、モノリシックソリューションを生成することは非常に魅力的であり、これは様々な波長範囲を対象にし、分解能を動的に変更することができるように各々を構成することができる。これは「動作中に」選択する柔軟性を提供し、小さな基礎ピクセルサイズまたは高いスペクトル分解能の要件を満たす。
【0067】
この分光測光器を例えばデジタルカメラ装置に用いて、現在利用可能な色センサをトゥルーカラーで画像を取得するセンサ(分光測光チップ)に置換することができる。加えて、分光測光チップを用いて(分光放射照度とルクスレベルを測定して)テレビのトゥルーカラー調整を確保することができる。有利なことに、この分光測光器は粗い分解能にすることができ、これを用いておよそ5nmの分解能で可視光認識を規定することができる。
【0068】
本発明は、広いスペクトル域(低分解能で得られる)の基本波長を選択するフィルタウィンドウを持つ検出部か、またはFTIRまたは回折格子型の機器を用いる分光アプローチの何れかに基づく従来の画像処理技術の代わりとなる。後者は複雑なシステムであり、一部は機械的な可動部品の頻繁な保守と遅いデータ収集を伴い、全てが迷光の問題と多数の別個の光学素子を伴う。光学システムに導入される各々の追加部品が光子を失うので、信号強度が低減する。結果的に、共振器が波長の分散と検出機能の双方を提供するモノシリックシステムの開発は、信号強度を改善し、可動部品を無くし、回折格子検出部の調整もしくは迷光の問題を無くすと共に、高速な取得時間と高分解能を提供する。
【0069】
この分光測光器は、1nm以下の分解能と1msの高速取得時間を有し、可視から赤外スペクトル域にわたって、1000nm以下の帯域で開発することができると想定される。
【0070】
本発明は、調整可能な広帯域のモノリシック半導体分光測光チップに関し、これはソリッドステート光学回路内で波長の分離と検出機能を統合する。波長の分離と検出は可動部品あるいは空間的に分離した部分を必要とすることなく実行され、全てが1つの堅牢なチップに組み込まれるため、迷光が最小化される一方で、光の強度が最大化される。
【0071】
本発明は、広帯域の波長にわたって機能することができる。使用する帯域は、使用する半導体の構成に部分的に依存するであろう。しかしながら、400nm〜2000nmの可視〜近赤外帯域で機能し、その帯域幅の波長帯/分解能が柔軟となるように分光測光器を設計することが好ましい。近赤外領域(900nm〜1700nm)の分光測光器の設計については、III〜V群の半導体合金の光学特性が周知であるため、III〜V群の化合物半導体ベースの合金を用いることが好ましい。
【0072】
このアプローチはシリコンと共に利用されるが、III〜V群の合金はより光学的に活性であり、より広い波長帯をカバーする。典型的な材料は、短波長分光用のAlInGaN合金と、可視領域用のAlGaInAsP合金と、近赤外および中赤外用のInGaAsP、InGaAsNおよびInGaAlAsSb合金とを含む。したがって、チップの波長帯は様々な半導体合金を賢明に利用して調整することができる。加えて、合金に不純物、例えばZn、C、Teを導入することにより、チップとその素子の光学特性と電子物性を微調整することができる。
【0073】
コア半導体設計
分光測光チップは殆ど完全に半導体型であり、半導体合金が入射光の光導波路と光が検出される共振器との双方を形成する。導波路はバルク半導体物質で形成され、そのバンドギャップが関心の最も高いエネルギ(最も短波長)の光子より大きくなるように合金が設計される。導波路は半導体多層構造で形成され、バルクまたは量子井戸の活性領域は、活性領域の光学ギャップが最も小さいエネルギ(最も長波長)の光子より大きくなるようにコア吸収域を形成する。したがって、材料の電気的、光学的、熱的特性を考慮に入れて、特定の目標波長帯に対して半導体合金の厳密な構成とドーピングが決定される。
【0074】
導波路と共振器の構造
導波路は、角度を成した肋骨状の導波路で構成することができる。これは、分光測光チップの端部ファセットから後方反射を防止するためである。導波路の高さと幅は、分光測光器への光の通過量を最大化するよう最適化される。図1〜図3に示すように、円筒共振器は導波路に密接して結合され、各共振器にエバネセント光を漏洩させる。各共振器は特定の波長を対象にするため、直径、厚さおよび導波路に対する間隔が最適化されて光結合効率を最大化し、迷光を最小化する。一般的な設計ルールとして、共振器の直径(D)はD=(波長*m/Pi*n)となるように設計され、ここでnは半導体の有効屈折率であり、mは共振器次数である。したがって2次で動作し、1.5μmの放射線に感受性のある共振器については、典型的な屈折率が3.2であり、直径Dは300nmである。これは、紫外線または電子ビームリソグラフィの技術に好適である。
【0075】
電子ビームまたは遠紫外線リソグラフィを用いて20nm未満の公差が実現可能である。プロトタイプを作る段階では、電子ビームリソグラフィを用いることが想定され、それは非常に用途が広く、現在の技術は1つのウェハ上に複数の設計を試みるのに非常に適しているからである。製造段階では、電子ビームも可能であるが、このような公差で多数のデバイスを製造する際には遠紫外線およびホログラフィックリソグラフィ技術が非常に高速である。
【0076】
オプティカルコーティング
分光測光器チップの正面と背面のファセットは選択的にコーティングでコートされ、分光測光器チップを高次、例えば1次、2次もしくは3次、および81次などで動作させる。より大きな共振器で動作を許容するとき、これは望ましい特徴であり、そのため製造をより簡単にする。層の正確な構成、厚さおよび屈折率は、関心の波長帯と一致するよう最適化される。コーティングは一般に幾つかの誘電体層のペアから成り、それらの光学的厚さの合計が特定の波長帯(通過帯域)で共振するよう選択される。あるいは、ナノスケールの微粒子のコーティングを用いてチップ内の特定の波長の光を共鳴的に結合することができる。
【0077】
電気的結合
分光チップの光生成電子は電流を形成し、それがスペクトル強度の情報を提供する。電流を抽出するために、pn接合が利用され、これは所定の電圧でバイアスを掛けられたとき、電界を提供してデバイスから電子を一掃する。
【0078】
波長領域
上述したように、分光測光チップの波長帯はそれを構成する半導体物質によって決定される。900nm〜1700nmの波長帯の近赤外線アプリケーションで動作する分光測光器については、この領域を達成する既存のアプローチは冷却したInGaAs検出部を利用する。InGaAs(P)/InP合金に基づく高効率の多量子井戸吸収域を用いることもできる。しかしながら、半導体物質、ドーピング、および共振器サイズの賢明な組み合わせにより様々な波長帯で動作する分光測光チップが想定される。
【0079】
質量と実装面積
分光測光チップはそれ自体、無視できる質量である。1ミリメートル×250ミクロン×200ミクロンの寸法のInP型チップを仮定すると、これに対するInPの密度は4.8g/cmであり、チップの質量は24マイクログラムである。したがって、分光測光器の主な質量は関連するマイクロオプティックス(100g未満)となる。光学部品を除いた典型的なCCD型分光測光器の等価質量は実質的により大きい。CCDシステムの典型的な寸法は、5cm×10cm×15cmの範囲である。従来の分光測光器では、(分散を最大化する)ボックスのサイズによって分解能が制限される。本発明では、分解能が光の波長に本質的に関連しており、分光測光器を非常に小さくすることができることを意味する。
【0080】
提出した特許請求の範囲は、この記載の一部を成す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3〜14)と、1以上の波長検出手段(3〜14)とを具える分光測光器であって、前記分散手段(3〜14)と前記検出手段(3〜14)との間に物理的分離がないことを特徴とする分光測光器。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測光器において、前記分散手段(3〜14)および前記検出手段(3〜14)が物理的な可動部品を有さないことを特徴とする分光測光器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分光測光器において、前記分散手段(3〜14)および前記検出手段(3〜14)が微小共振器であることを特徴とする分光測光器。
【請求項4】
請求項3に記載の分光測光器において、各微小共振器(3〜14)が1つの波長の光または複数の波長の光を受光するのに最適なサイズであって、各共振器の直径(D)が式D=nλ/πμで決定されていることを特徴とする分光測光器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の分光測光器において、各微小共振器が特定の波長の光のレベルの検出器として動作することを特徴とする分光測光器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の分光測光器において、当該分光測光器が1以上の導波手段(2)を具えることを特徴とする分光測光器。
【請求項7】
請求項5に記載の分光測光器において、各共振器(3〜14)が前記導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3〜14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置されていることを特徴とする分光測光器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の分光測光器において、前記導波手段(2)が光の後方反射を防止する角度を成すことを特徴とする分光測光器。
【請求項9】
請求項6、7または8に記載の分光測光器において、前記導波手段が約1ミクロン〜約50ミクロンの幅、約1000ミクロンの長さ、および約1ミクロン〜約20ミクロンの深さであることを特徴とする分光測光器。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の分光測光器において、各共振器が寸法的に所定の波長に最適化されていることを特徴とする分光測光器。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の分光測光器において、前記共振器(3〜14)が球形、円錐形、段付円錐形、表形、円筒カップ形であるか、または1以上の平面あるいは湾曲面を具えることを特徴とする分光測光器。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の分光測光器において、前記導波手段(2)は前記共振器(3〜14)が直線状に配置された円筒共振器(3〜14)で形成され、最も小さな共振器が最初の位置に配置され、最も大きな共振器が最後の位置に配置されるように小さいものから大きいものへ前記共振器が配置されていることを特徴とする分光測光器。
【請求項13】
請求項5〜12の何れか1項に記載の分光測光器において、前記共振器は、最も小さな直径の共振器が前記導波手段に入る光の入口地点に最も近く、最も大きな直径の共振器が前記導波手段に入る光の入口地点から最も遠くに並べられていることを特徴とする分光測光器。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の分光測光器において、前記基板がシリコンまたはIII−V族半導体を具え、自身の上にIII−V族半導体合金の層が加えられることを特徴とする分光測光器。
【請求項15】
請求項14に記載の分光測光器において、前記基板がp型もしくはn型の何れかにドープされていることを特徴とする分光測光器。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の分光測光器において、前記基板が3つの機能領域に分割され、第1の領域がp型もしくはn型の何れかにドープした半導体で作成した基板層(17)であり、第2の活性領域(16)は前記分光測光器の波長帯をカバーするようバンドギャップが組み込まれた半導体で構成され、前記基板より大きい屈折率を有し、第3の光学被覆領域が前記第2の活性領域(16)より小さい屈折率を有し、前記第2の活性領域(16)が前記第1の領域(17)と前記第3の領域(18)との間に配置されることを特徴とする分光測光器。
【請求項17】
請求項16に記載の分光測光器において、前記第3の領域(18)が前記第1の領域(17)に共通する電気接点であることを特徴とする分光測光器。
【請求項18】
請求項16または17に記載の分光測光器において、前記電気接点(18)が金の電気接点、金合金の電気接点、または他の導電材料もしくはその合成物で作成された電気接点であることを特徴とする分光測光器。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか1項に記載の分光測光器において、前記共振器(3〜14)がその表面に電気接点(19,20)を有することを特徴とする分光測光器。
【請求項20】
請求項19に記載の分光測光器において、前記電気接点(19,20)が金の電気接点、金合金の電気接点、または他の導電材料もしくはその合成物で作成された電気接点であることを特徴とする分光測光器。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項に記載の分光測光器において、チップのファセットが特定の波長帯の光を受光または遮断する物質でコートされていることを特徴とする分光測光器。
【請求項22】
請求項1〜21の何れか1項に記載の分光測光器において、前記基板が1以上のソリッドステートシャッターまたは導光光学部品を具えることを特徴とする分光測光器。
【請求項23】
半導体を具える分光測光器であって、モノリシック基板(1)が導波手段(2)および1以上の共振器(3〜14)を有する半導体であり、前記導光手段が入力光の入射に対して角度を成しており、各共振器(3〜14)が前記導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3〜14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置されており、前記共振器が所定の電磁波長に最適な寸法であり、最も小さな直径の共振器が前記導波手段に入る光の入口地点に最も近く、最も大きな直径の共振器が前記導波手段に入る光の入口地点から最も遠くに並べられており、前記基板が3つの機能領域に分割され、第1の領域がp型もしくはn型の何れかにドープした半導体で作成された基板層(17)であり、第2の活性領域(16)は前記分光測光器の波長帯をカバーするようバンドギャップが組み込まれた半導体で構成され、前記基板より大きい屈折率を有し、第3の光学被覆領域が前記第2の活性領域(16)より小さい屈折率を有し、前記第2の活性領域(16)が前記第1の領域(17)と前記第3の領域(18)との間に配置されており、前記第3の領域(18)が前記第1の領域(17)に共通する電気接点であり、前記共振器(3〜14)がその表面に電気接点(19,20)を有することを特徴とする分光測光器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−526273(P2012−526273A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509092(P2012−509092)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050737
【国際公開番号】WO2010/128325
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511247183)ザイニア リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ZINIR LTD
【Fターム(参考)】