説明

分割練り混ぜ工法

【課題】二次練り後のフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)のスランプ値、フロー値など性状、品質を確保でき、確実に分割練り混ぜの優れた特性を得ることを可能にする分割練り混ぜ工法を提供する。
【解決手段】練り混ぜ水を一次水と二次水とに分け、施工現場のコンクリート/モルタル打設場所より離隔した場所で、骨材に一次水を加えて調整練りを行うとともに、粉状の水硬性物質を加え一次練りを行って骨材周囲に強固な造殻を形成し、コンクリート/モルタル打設場所に搬入するまでの間で、一次練りで製造した一次混練物に二次水を加え、且つコンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うことにより、モルタルあるいはコンクリートを製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割練り混ぜ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、モルタルやコンクリートは、所望の物理的性質に応じて決められた所定量の水(練り混ぜ水)と骨材(細骨材、粗骨材)とセメント(粉状の水硬性物質)を練り混ぜて製造される。また、ワーカビリティやポンパビリティの改善、強度・耐久性の向上、凝結速度の調整など、未硬化時、硬化後の物理的性質を向上させるために各種の混和材料(混和材(粉状の水硬性物質)、混和剤)を混合して製造される。なお、混和材は、水和反応に伴う初期温度の上昇を抑えたり、流動性を改善したり、組織を緻密にするなどの目的で使用される。
【0003】
ここで、本願の出願人は、練り混ぜ水を一次水と二次水とに分け、骨材に一次水を加えて調整練りを行った後に、セメントを加えて混練り(一次練り)し、最後に、二次水を加えて混練り(二次練り)することで、物理的性質に優れたモルタルやコンクリートを製造できる分割練り混ぜ工法(SEC(登録商標)工法)についての出願を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的に、この分割練り混ぜ工法では、骨材に一次水を加えて調整練りを行うと、骨材周囲に水分が均等に付着する。そして、セメントを加えて一次練りを行うと、骨材周囲に比較的水セメント比の小さいセメントペーストが固着して強固な造殻(造殻層)が形成され、造粒される(造殻体が形成される)。このように造殻された骨材とセメントに対し、投入すべき全配合水量(練り混ぜ水量)から一次水を差し引いた量の二次水を加えて二次練りを行うことで、均質なコンクリート(あるいはモルタル)を得ることができる。
【0005】
このように製造したコンクリートは、従来の一括練り混ぜで製造したものと比較し、骨材周囲に造殻が形成されることにより造粒体が立体網目構造を形成するため、コンクリート内の水分の上昇が抑制され、材料分離、ブリーディングが低減する。また、造殻層が骨材と強固に付着し、さらに二次練り時にセメントペーストが均一に造粒体の間に充填されるため、コンクリートとしての強度特性(圧縮強度等)が向上する。さらに、骨材周囲の造殻層が骨材同士の摩擦を低減することで、振動下での流動性が向上し、ワーカビリティ、ポンパビリティが向上する。
【0006】
一方、本願の出願人は、バッチャプラント(原材料準備位置)から相当に離隔した施工現場でのコンクリート施工に適用するための分割練り混ぜ工法に関する出願も行っている(特許文献2参照)。この分割練り混ぜ工法では、バッチャプラントで一次練りを行い、一次練りを行った状態の混練物を施工現場(施工現場近傍を含む)に搬入し、施工現場で二次水を加えて二次練りを行う。
【0007】
そして、このような分割練り混ぜ工法をトンネル内吹付施工に適用した場合には、坑外のバッチャプラントで一次練りして製造した一次混練物をトラックミキサー車(可搬式撹拌機)で掘削切羽近傍の施工現場まで搬送し、施工現場で二次水を加えて二次練りを行う。ここで、一次混練物は、骨材周囲に比較的水セメント比の小さいセメントペーストが固着して造殻が形成され、撹拌翼を回転させて混合した場合の抵抗が最も高くなる(練り混ぜエネルギーが最大となる)キャピラリー状態にある。このため、運搬走行時の振動や施工現場での待機時における重力条件によって骨材粒子間で水分移動が生じることが殆んどない。これにより、一次混練物の状態で長時間トラックミキサー車内に保持されていても、骨材周囲の造殻が安定して形成された一様な状態を維持することができる。そして、施工現場で二次水を加えて二次練りを行うことで、掘削施工の進捗状態やバッチャプラントからの距離に影響されることがなく、強度的に優れたトンネル内吹付施工を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4249176号公報
【特許文献2】特許第4242988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように施工現場で二次水を加え二次練りを行うようにした分割練り混ぜ工法においては、施工現場で二次練りを行うまでの間で一次混練物の水和反応が進み過ぎると、二次練り後のコンクリートの性状(スランプ値など)に影響が生じるおそれがある。すなわち、一次混練物の状態で保持できる時間には制限があり、二次練り後のコンクリートの品質を確保できるようにする点で(分割練り混ぜの優れた特性を得る上で)、改善の余地が残されていた。
【0010】
また、例えば粉体(セメントなどの水硬性物質)の配合量が多くなるほど(富配合であるほど)、一次練りの時間が長すぎると、一次練りによって造殻を形成した骨材(造殻体)どうしが固着し、造粒してしまう場合がある。そして、造殻体どうしが造粒すると、分割練り混ぜの優れた特性が得られないおそれが生じる。
【0011】
さらに、例えば、一次混練物をアジテータ車で施工現場に搬送し、この施工現場で二次水を加え、アジテータ車の高速撹拌で二次練りを行うようにした場合には、アジテータ車の高速撹拌によって大きな騒音が発生する。このため、施工現場の条件によっては、施工現場で二次練りが行えなくなることも考えられ、このような場合であっても柔軟に対応できるようにすることが強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0013】
本発明の分割練り混ぜ工法は、練り混ぜ水を一次水と二次水とに分け、施工現場のコンクリート/モルタル打設場所より離隔した場所で、骨材に一次水を加えて調整練りを行うとともに、粉状の水硬性物質を加え一次練りを行って骨材周囲に強固な造殻を形成し、前記コンクリート/モルタル打設場所に搬入するまでの間で、前記一次練りで製造した一次混練物に二次水を加え、且つ前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うことにより、モルタルあるいはコンクリートを製造するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の分割練り混ぜ工法においては、バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成するとともに該ミキサ内に二次水を加え、直後に、その混練物を前記ミキサから可搬式撹拌機に排出し、該可搬式撹拌機により前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うことが望ましい。
【0015】
さらに、本発明の分割練り混ぜ工法においては、バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成し、前記バッチャプラントで製造した一次混練物を前記ミキサから可搬式撹拌機に排出し、該可搬式撹拌機で前記一次混練物に二次水を加え、且つ前記可搬式撹拌機により前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の分割練り混ぜ工法においては、バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成し、前記バッチャプラントで製造した一次混練物を前記ミキサから排出し、前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で、別途用意した撹拌設備にて二次水を加えて二次練りを行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分割練り混ぜ工法においては、施工現場のコンクリート打設場所(コンクリート/モルタル打設場所)に搬入するまでの間の任意の時間、場所において、一次混練物に二次水を加えて二次練りを行うようにしたことで、一次混練物の水和反応が進み過ぎることを防止できる。これにより、二次練り後のフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)のスランプ値、フロー値など性状、品質を確保でき、確実に分割練り混ぜの優れた特性を得ることが可能になる。
【0018】
また、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしたことで、従来の施工現場で二次水を加え二次練りを行うようにした場合と比較し、一次練りの状態を維持しなければならない時間を短くすることができ、一次練りによって造殻を形成した骨材(造殻体)どうしが固着し、造粒してしまうことを確実に防止できる。この点からも、二次練り後のフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)の性状、品質を確保でき、確実に分割練り混ぜの優れた特性を得ることが可能になる。
【0019】
さらに、本発明の分割練り混ぜ工法においては、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うことにより、一次混練物の性状の持続性や二次練り後のフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)の性状の持続性によって、搬送途中のどこで二次練りを行うかを任意に決定することができる。これにより、コンクリート打設場所付近の騒音対策、駐車スペース、二次水供給装置の有無など、施工現場の条件に柔軟に対応することができる。
【0020】
また、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うことで、従来のように、バッチャプラントで一次練り及び二次練りを行ったり、施工現場で一次混練物に二次水を加えて二次練りを行う場合と比較し、ミキサでの練り混ぜ時間を短縮でき、且つ、一次混練物を施工現場に搬入する時間を二次練りに有効活用することができる。これにより、分割練り混ぜの優れた特性を確保しつつ、分割練り混ぜの時間短縮を図り、効率的に分割練り混ぜを実施することが可能になる。
【0021】
さらに、施工現場のコンクリート打設場所より離隔した場所で一次練りを行い、二次練りをコンクリート打設場所への搬送途中で行うようにしたことにより、分割練り混ぜ工法に対応したバッチャプラントでなくても(通常(一括練り)のバッチャプラントを使用して一次練りを行うことができ)、効率的に分割練り混ぜを実施することが可能になる。
【0022】
また、一括練り混ぜ工法で製造したフレッシュコンクリートは、通常、練り混ぜ後、1時間半以内に打設することが求められる。これに対し、本発明では、施工現場のコンクリート打設場所より離隔した場所で一次練りを行い、施工現場のコンクリート打設場所に搬入するまでの間の任意の時間、場所で二次練りを行ってフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)を製造することができる。そして、一次練りから数時間経過した段階で二次練りを行ってフレッシュコンクリートを製造した場合であっても、二次練り後のフレッシュコンクリートの性状、品質を確保できる。このため、本発明の分割練り混ぜ工法においては、フレッシュコンクリートの可使時間(一次練りから二次練り後のフレッシュコンクリートを製造し、打設するまでの時間)を長くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る分割練り混ぜ工法の優位性を示す実験結果(スランプ、スランプロスの計測結果)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る分割練り混ぜ工法で製造した一次混練物の電圧値の経時変化を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る分割練り混ぜ工法で製造した一次混練物の温度の経時変化を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る分割練り混ぜ工法で製造した一次混練物の電圧値を計測する際に用いた計測装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る分割練り混ぜ工法について説明する。ここで、本実施形態では、粉状の水硬性物質が単にセメントであるものとして説明を行うが、本発明に係る水硬性物質は、高炉スラグやフライアッシュ、シリカフュームなどの水硬性を有する混和材と普通ポルトランドセメントなどのセメントとを混合した粉状物質(粉体)であってもよい。なお、本実施形態では、分割練り混ぜ工法によってコンクリートを製造するものとして説明を行うが、モルタルを製造する場合においても、以下に説明する本実施形態と同様にすることで本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0025】
本実施形態の分割練り混ぜ工法では、施工現場のコンクリート打設場所(コンクリート/モルタル打設場所)より離隔した場所に設けられたバッチャプラントのミキサに骨材を投入するとともに一次水を投入して、調整練りを行う。次に、セメント(水硬性物質)を投入して一次練りを行い、骨材周囲に強固な造殻を形成する。
【0026】
ここで、一次水量をトルク試験と遠心力試験によって決定する方法を例とし、一次水量の決定方法を説明する。トルク試験では、添加する水量を変化させながらセメントと水を練り混ぜ、セメントペーストの粒子間の結合力が最も強くなり、練り混ぜエネルギーが最大となる(キャピラリー状態になる)水量を求める。一方、遠心力試験では、一次練りのときに、一次水の一部が骨材に吸着されるため、実際にモルタルを製造してこの吸着水量を求める。
【0027】
そして、トルク試験で求めた粉状の水硬性物質がキャピラリー状態となる水粉体比αと、遠心力試験で求めた細骨材の吸着水率βOHを下記の式(1)に当てはめて、最適一次水量W1を求める。なお、式(1)中のSは単位細骨材量、Pは単位粉体量を示す。
W1=α×P+βOH×S・・・・・・(1)
【0028】
このように決定した一次水量を投入して調整練りを行うことにより、骨材界面に一様に一次水が配される。このため、セメントを投入して一次練りを行うと、骨材界面の一次水とセメントが混合して一様なキャピラリー状態となり、強固な造殻が形成される。
【0029】
本実施形態では、このようにバッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成した段階で、バッチャプラントのミキサに、全配合水量(全練り混ぜ水量)から一次水量を差し引いた量の二次水(W2)を投入する。
【0030】
次に、バッチャプラントで製造し、二次水(W2)を加えた一次混練物をバッチャプラントのミキサから、トラックミキサー車(アジテータ車)などの可搬式撹拌機に排出する。そして、この可搬式撹拌機で、二次水(W2)を加えた一次混練物を施工現場のコンクリート打設場所に搬送(運搬)する。また、可搬式撹拌機により、一次混練物を施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で撹拌して二次練りを行う。
【0031】
なお、本実施形態では、バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成するとともにバッチャプラントのミキサ内に二次水(W2)を加え、直後に、その混練物をミキサから可搬式撹拌機に排出し、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で、可搬式撹拌機によって二次練りを行うものとした。これに対し、バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成し、バッチャプラントで製造した一次混練物をミキサから可搬式撹拌機に排出し、この可搬式撹拌機で一次混練物に二次水を加え、且つ可搬式撹拌機によりコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしてもよい。また、このとき、トラックミキサー車に適宜搭載された比較的小型のタンク内の水を二次水として使用すればよい。
【0032】
ここで、骨材と練り混ぜ水とセメントを一括練りしたCase1と、骨材に一次水を加えて調整練りを行った後にセメントを加えて一次練り、二次水を加えて二次練りする従来の標準的な分割練り混ぜ工法によるCase2と、本実施形態の分割練り混ぜ工法によるCase3の3ケースでそれぞれコンクリートを製造し、フレッシュコンクリート試験を行った結果について説明を行う。
【0033】
Case1では、表1の配合のコンクリートを通常の一括練りの方法で練り混ぜ、この混練物をアジテータ車に移した後に、アジテータ車で30秒間の高速撹拌を行ってから排出し、この試料コンクリートのフレッシュ性状をフレッシュコンクリート試験によって測定した。また、練り上がりから経過時間30分毎に高速撹拌を30秒間行い、その都度試料コンクリートを排出して、フレッシュ性状を測定し、スランプの経時変化を確認した。
【0034】
Case2では、表1の配合のコンクリートを標準的な分割練り混ぜ工法で練り混ぜて製造し、アジテータ車に移す。そして、Case1と同様に、アジテータ車で30秒間の高速撹拌を行ってから排出し、この試料コンクリートのフレッシュ性状をフレッシュコンクリート試験によって測定した。また、練り上がりから経過時間30分毎に高速撹拌を30秒間行い、その都度試料コンクリートを排出して、フレッシュ性状を測定し、スランプの経時変化を確認した。
【0035】
Case3では、表1の配合に基づいて、一次練りを行った一次混練物(コンクリート)をアジテータ車に移し、運搬時間60分を想定して低速撹拌しつつ待機する。そして、60分後に二次水をアジテータ車に投入し、120秒間の高速撹拌を行ってから排出し、この試料コンクリートのフレッシュ性状をフレッシュコンクリート試験によって測定した。また、Case1、2と同様に、練り上がりから経過時間30分毎に高速撹拌を30秒間行い、その都度試料コンクリートを排出して、フレッシュ性状を測定し、スランプの経時変化を確認した。
【0036】
【表1】

【0037】
試験結果を表2、表3及び図1に示す。なお、表2及び表3中のSlはスランプ、Sfはスランプフローである。そして、これらの図表から、Case3の場合のスランプ及びその経時変化は、通常の一括練りのCase1や標準的な分割練り混ぜ工法のCase2と比べて遜色がない。すなわち、Case3の場合には、バッチャプラントのミキサで一次練りまで終了しており、コンクリートの構成材料(セメント、細骨材、粗骨材及び一次水)が均等に混ぜ合わされている。そして、その後の二次水投入とアジテータ車における高速撹拌がコンクリートに流動性を付与するため、Case3の分割練り混ぜ工法においても、十分な撹拌が行われてCase1やCase2と同等の性状のコンクリートが製造される。よって、本実施形態の分割練り混ぜ工法を用いても、好適にコンクリートを製造できることが確認された。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
そして、上記のように、本実施形態の分割練り混ぜ工法においては、施工現場のコンクリート打設場所に搬入するまでの間の任意の時間、場所で、一次混練物に二次水を加えて二次練りを行うようにした。これにより、一次混練物の水和反応が進み過ぎることを防止できるため、二次練り後のフレッシュコンクリート(あるいはモルタル)のスランプ値、フロー値など性状、品質を確保でき、確実に分割練り混ぜの優れた特性を得ることが可能になる。
【0041】
また、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしたことで、従来の施工現場で二次水を加え二次練りを行うようにした場合と比較し、一次練りの状態を維持しなければならない時間を短くすることができ、一次練りによって造殻を形成した骨材(造殻体)どうしが固着し、造粒してしまうことを確実に防止できる。この点からも、二次練り後のフレッシュコンクリートの性状、品質を確保でき、確実に分割練り混ぜの優れた特性を得ることが可能になる。
【0042】
さらに、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うことにより、一次混練物の性状の持続性や二次練り後のフレッシュコンクリートの性状の持続性によって、搬送途中のどこで二次練りを行うかを任意に決定することができる。これにより、アジテータ車を可搬式撹拌機として用いた場合等において、コンクリート打設場所付近の騒音対策、駐車スペース、二次水供給装置の有無など、施工現場の条件に柔軟に対応することができる。
【0043】
また、施工現場のコンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うことで、従来のように、バッチャプラントで一次練り及び二次練りを行ったり、施工現場で一次混練物に二次水を加えて二次練りを行う場合と比較し、ミキサでの練り混ぜ時間を短縮でき、且つ、一次混練物を施工現場に搬入する時間を二次練りに有効活用することができる。これにより、分割練り混ぜの優れた特性を確保しつつ、分割練り混ぜの時間短縮を図り、効率的に分割練り混ぜを実施することが可能になる。
【0044】
さらに、施工現場のコンクリート打設場所より離隔した場所で一次練りを行い、二次練りをコンクリート打設場所への搬送途中で行うようにしたことにより、分割練り混ぜ工法に対応したバッチャプラントでなくても(通常(一括練り)のバッチャプラントを使用して一次練りを行うことができ)、効率的に分割練り混ぜを実施することが可能になる。
【0045】
なお、バッチャプラントのミキサで一次混練物に二次水を添加し、ミキサから排出する場合には、通常(一括練り)のバッチャプラントに対し、二次水の計量、投入を行う供給ビンを加える等、軽微な改造を行うことで対応することができる。また、バッチャプラントのミキサで一次練りを行い、製造した一次混練物をミキサから可搬式撹拌機に排出し、この可搬式撹拌機で二次水を加えて二次練りを行う場合には、通常(一括練り)のバッチャプラントを、改造することなく、そのまま使用することができる。
【0046】
さらに、上記のように、本実施形態の分割練り混ぜ工法においては、施工現場のコンクリート打設場所より離隔した場所で一次練りを行い、施工現場のコンクリート打設場所に搬入するまでの間の任意の時間、場所で二次練りを行ってフレッシュコンクリートを製造することができる。
【0047】
ここで、一次練りにより得られる一次混練物の状態は水セメント比が小さいため(20〜30%)、セメント等の水硬性物質粉体の水和反応進行が遅い。一方、通常の一括練り混ぜコンクリートは水セメント比が45〜55%であるので水和反応の進行が早く、通常は練り混ぜ完了から1.5時間以内に打設する必要があるとされている。
【0048】
これに対し、本発明においては、一次練り状態の混練物を数時間おいて二次練りを行っても分割練り混ぜコンクリートとしての特性を保持できることを以下に示す。
【0049】
ここで、図2は、一次混練物の電気抵抗の変化を得るために、回路に直列に入れた抵抗の両端に発生する電圧を一次練りの練り上がりから経時的に計測した結果を示し、図3は、一次混練物の温度を一次練りの練り上がりから経時的に計測した結果を示し、図4はこれらの計測装置を示している。なお、図4の計測装置における電気抵抗値測定容器には、土木学会基準(JSCE−C−506−2003):「電気抵抗法によるコンクリート用スラブ細骨材の密度および吸水率試験方法」に規定された電気抵抗値測定容器を使用している。
【0050】
そして、図2から、一次混練物の電圧値は、一次練りの練り上がりから5時間の間、大きく変化しないことが確認された。これは一次混練物の抵抗値が変化しないことであり、造殻部の水が水和反応で減少していないことを示す。また、図3から、一次混練物の温度は、一次練りの練り上がりから徐々に上昇し、練り上がりから9時間経過した段階でピークを示すことが確認された。これは、一次練りの練り上がりから数時間の間は水和反応による発熱はピークに比して小さく水和反応が進んでいないことが分かる。このような一次混練物の電気抵抗や温度の変化は、セメントの水和反応に起因したものである。
【0051】
このことから、一次練りから数時間経過した段階で二次練りを行いフレッシュコンクリートを製造した場合であっても、二次練り後のフレッシュコンクリートの性状、品質を確保できると言える。さらに、このことから、本実施形態の分割練り混ぜ工法においては、フレッシュコンクリートの可使時間(一次練りから二次練り後のフレッシュコンクリートを製造し、打設するまでの時間)を長くすることも可能になる。
【0052】
以上、本発明に係る分割練り混ぜ工法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、バッチャプラントのミキサから可搬式撹拌機に一次混練物を排出し、この可搬式撹拌機により、コンクリート打設場所への搬送途中で二次練りを行うものとして説明を行った。これに対し、バッチャプラントのミキサから一次混練物を排出し、コンクリート打設場所への搬送途中で、別途用意した撹拌設備にて二次水を加えて二次練りを行うようにしてもよい。このようにしても、勿論、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り混ぜ水を一次水と二次水とに分け、
施工現場のコンクリート/モルタル打設場所より離隔した場所で、骨材に一次水を加えて調整練りを行うとともに、粉状の水硬性物質を加え一次練りを行って骨材周囲に強固な造殻を形成し、
前記コンクリート/モルタル打設場所に搬入するまでの間で、前記一次練りで製造した一次混練物に二次水を加え、且つ前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うことにより、モルタルあるいはコンクリートを製造するようにしたことを特徴とする分割練り混ぜ工法。
【請求項2】
請求項1記載の分割練り混ぜ工法において、
バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成するとともに該ミキサ内に二次水を加え、直後に、その混練物を前記ミキサから可搬式撹拌機に排出し、該可搬式撹拌機により前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしたことを特徴とする分割練り混ぜ工法。
【請求項3】
請求項1記載の分割練り混ぜ工法において、
バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成し、前記バッチャプラントで製造した一次混練物を前記ミキサから可搬式撹拌機に排出し、該可搬式撹拌機で前記一次混練物に二次水を加え、且つ前記可搬式撹拌機により前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で二次練りを行うようにしたことを特徴とする分割練り混ぜ工法。
【請求項4】
請求項1記載の分割練り混ぜ工法において、
バッチャプラントのミキサで一次練りを行って骨材周囲に造殻を形成し、前記バッチャプラントで製造した一次混練物を前記ミキサから排出し、前記コンクリート/モルタル打設場所への搬送途中で、別途用意した撹拌設備にて二次水を加えて二次練りを行うようにしたことを特徴とする分割練り混ぜ工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161956(P2012−161956A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22970(P2011−22970)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【特許番号】特許第4747229号(P4747229)
【特許公報発行日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(592068130)リブコンエンジニアリング株式会社 (11)
【Fターム(参考)】