説明

分子ピーリング方法およびピーリング剤

【課題】皮膚や頭皮にダメージを与えることなく、皮膚においては、しみ・そばかす・にきび・しわ・くすみ・アトピーや日焼けの炎症などの皮膚トラブルの改善並びに予防および皮膚の若返りを、頭皮においては育毛・発毛促進を実現する効果的な分子ピーリング方法を提供する。
【解決手段】分子ピーリングとしての加水分解酵素や酸化還元酵素などの働きにより、皮膚の基底細胞や毛乳頭細胞をその分解物によって活性化させ、外側と内側からのピーリングを誘導することによって分子と細胞の相互作用を生み出し皮膚などを若返らせ、頭皮にあっては発毛を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗腺・皮脂腺・毛穴などすべてを含む皮膚または頭皮の劣化した角質および汚れ物質を除去すると同時に、表皮および真皮にある皮膚細胞または毛乳頭および毛母細胞などを含む頭皮細胞を活性化することで皮膚トラブルの解決と発毛および皮膚の老化防止を達成する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の古い角質を除去する方法として▲1▼細かい粒子などを使用した物理的なピーリング方法、α−ヒドロキシ酸・サリチルサン・トリクロロ酢酸フェノールなどのように皮膚を溶かして角質を除去する化学的ピーリング方法、さらに、皮膚内に存在するプロテアゾームを活性化することで角質を除去しようとする酵素ピーリング方法などがあった。
【0003】
しかし、物理的なピーリング方法と化学的なピーリング方法は、皮膚に負担をかける方法であり、アトピー性皮膚炎や日焼けなどのように皮膚に炎症を起こしていたり、にきび跡のように皮膚が薄くなっている場所に使用すると炎症が悪化したり皮膚に傷を受けてヒリヒリしたり皮膚に悪影響を与えるものであった。
また、皮膚のケラチノサイトからコラーゲナーゼの分泌を活発にさせて角質除去しようとする方法も考えられたが、老化した肌やアトピー性皮膚炎を起こした肌のようにコラーゲナーゼの分泌の少ない肌には効果が少ないと言える。
【0004】
さらに、プロテアーゼそのものを皮膚に塗布して角質を分解する酵素ピーリングも考えられた。しかし、酵素の安定性が悪く、皮膚に存在する油脂分や酸化された汚れ蛋白および劣化したセラミドなどの皮膚の上皮を防御する物質などに阻害されて十分に働くことができなかった。
【0005】
なお、パパイヤに含まれる蛋白分解酵素であるパパインとリパーゼを利用する前記の欠点を補った酵素ピーリングの方法もあるが、パパインだけでは低分子ペプチドレベルまで十分な分解が進まず、角質除去による美白効果はできても、細胞賦活力に欠ける欠点があった。さらに、パパインの刺激性および液体状での酵素の安定性にも問題があった。
【0006】
一方、レチノイン酸・レチノール・ペプチド・糖質およびハーブなどの細胞賦活作用を利用して皮膚のトラブルを解決する方法も数々工夫されてきたが、皮膚などに付着している酸化された蛋白質や脂質を含む汚れ成分や残存石鹸皮膜成分および劣化して不要となった角質成分を直接分解除去するする作用はなく、これらの不要物によって細胞賦活成分の浸透が妨げられる傾向にあった。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚や頭皮にダメージを与えることなく、新規の分子ピーリング方法およびそれを達成するための新規の分子ピーリング剤によって、皮膚においては、しみ・そばかす・にきび・しわ・くすみ・アトピーや日焼けの炎症などの皮膚トラブルの改善並びに予防および皮膚の若返りを、頭皮においては毛根の分子ピーリングによる育毛・発毛促進を実現する効果的な手段を提供することを目的としている。
【0008】
ここで、分子ピーリングとは、ピーリング分子と皮膚細胞の相互作用を利用したピーリングを言う。すなわち、酵素などの分子によって皮膚に付着した各種の汚れ並びに不要な角質を除去する外側からのピーリングと同時に、皮膚の細胞を細胞賦活分子によって活性化または正常化による内側からのピーリングを誘導することによって分子と細胞の相互作用を生み出し、皮膚に付着した不要物や老廃物を除去すると共に、様々なダメージを受けた皮膚などの蘇生を行う技術を言う。
【課題を解決しようとする手段】
【0009】
本発明は、このように、皮膚などに付着している酸化された脂質や蛋白質などを含む汚れ成分または残存石鹸皮膜成分および不要となった角質成分を複数の加水分解酵素ならびに酸化還元酵素で分解除去する手段と、かつ分解除去することによって上皮基底細胞や一部の真皮細胞の活性を誘導する低分子物質などの浸透性を高める手段と、当該酵素によってケラチンなど角質細胞の蛋白質を低分子分解し、あるいは当該酵素によって事前にコラーゲン含有物を低分子分解することで、上皮の基底細胞や真皮の一部の細胞を活性化または正常化する作用をもつ細胞賦活物質を生成させ、皮膚の基底細胞や一部の真皮細胞を活性化することよってメラニンの生成抑制、ランゲルハンス細胞の活性化による皮膚免疫の向上、上皮基底細胞からコラーゲナーゼなどの分泌や皮膚のターンオーバーなどを活発化することによって、不要な角質の分解を内部からさらに促進する手段との双方を併せ持つことで課題を解決しようとするものである。
【0010】
さらに、本発明は、その分解の際に生じる分解物分子または外部から補強されたコラーゲン分解物やケラチン分解物などの低分子分解物分子の作用で皮膚細胞の活性化する手段を同時に提供することのみならず、上皮組織が炎症や化膿などの原因により破壊され上皮細胞基底部または真皮層が露出、または老化による上皮の劣化によって角質の防御機構が脆弱したために基底層または真皮層まで侵襲を受けやすくなった場合に、炎症残存物や老廃物などを分解除去すると共に、当該酵素の働きにより基底層または真皮の細胞を直接活性化し正常な皮膚を回復する手段を提供するものである。
【0011】
他方、頭皮においては、シャンプーなどの発毛阻害物質であるラウリル硫酸ナトリウムを含んでいる石鹸残渣皮膜や発毛を阻害するジヒドロテストステロン(DHT)を溶かし込んでいる毛穴に蓄積された皮脂などを分解するとともに、頭皮の老朽化した角質や変性酵素を分解して得られたトリペプチドやオリゴペプチドなどの細胞賦活分子が分子ピーリングでクリーニングされた毛根に浸透し毛乳頭細胞や毛母細胞を活性化させて発毛を促進する手段を提供するものである。
【0012】
分子ピーリングを実現するにあたって、第一の方法として、プロテアーゼとして、セリンプロテアーゼ・システインプロテアゼ・メタロプロテアーゼ・アスパラギン酸プロテアーゼを検討した。単独のプロテアーゼでは、劣化した角質などの変性蛋白成分を分解することはできても生理活性のある低分子ペプチドを生じなかったり、逆にパパインなどのように低分子ペプチドはある程度生じても粘膜や炎症を起こした皮膚やにきび跡のような薄くなった皮膚などに強い刺激があり使用できなかったりする弊害が見られた。また、大きな問題として水溶液の状態で急速に酵素の劣化が見られる傾向にあることであった。
【0013】
第2の方法として、複数のプロティナーゼおよびペプチターゼを含みアミノ酸ペプチターゼを含まないプロテアーゼ混合液を検討した。特に、皮膚のPH4.5〜6.0に近いPH4.5〜7.0付近で活性を保つセリンプロテアーゼ・システインプロテアゼ・メタロプロテアーゼから複数を選び組み合わせが考えられた。例えば、蛋白質ペプチドを非特異的に加水分解するシステインプロテアーゼであるババイヤ由来のPapain(MaxPH6.2)やイチヂク属植物の乳汁由来のFicin(MaxPH6.4)など。また、C末端のL−アミノ酸を加水分解するセリンプロテアーゼである酵母由来のセリンカルボキシペプチターゼ(CarboxypeptidaseY:PH5.5〜6.5)など、さらに、N末端のジペプチドを加水分解するシステインプロテアーゼである牛の脾臓由来のCathepsinC(PH4.0〜6.0)がある。また、この他に、PH5.0〜7.0で変性コラーゲンやケラチンの分解活性を維持している亜鉛メタロブロテアーゼであるコラーゲナーゼやケラチナーゼを利用することができる。
【0014】
発明者は、これらの組み合わせ混合液が酵素の安定化を著しく向上することを発見した。安定化する理由として、混合溶液中の酵素がフリーラジカルなどで変性され、他の酵素で分解され様々なレベルのペプチドが生成されると、そのペプチドによりペプシン・パパイン・プロティナーゼ・ペプチダーゼや後述のリパーゼ・ホスホリパーゼ・セラミターゼを始めとする多くの酵素の安定性を著しく向上させると推測される。
【0015】
安定化向上については、トレハロースあるいはスクロースあるいはマルトースなどの二糖類を使用したり、グルコサミンやガラクトサミン・マンノサミンなどのアミノ配糖類を使用したりしてもよい。さらに、界面活性物質も考えられるが、一般に好ましくない。
また、組み合わせ酵素の相互作用により生成されるトリペプチドの幾種類かは強い抗酸化力を持ちこれも酵素の安定に寄与しているとも考えられている。
【0016】
これらプロテアーゼの組み合わせによる新たな利点は、作用点の多様化によって分解効力が強化されると同時に作用がマイルドになり刺激性がほとんどなくなるということである。特に、皮膚のPH4.5〜6.0に近いPH4.5〜7.0付近で活性を保つ酵素を選んでいるために、皮膚を傷めずアレルゲンや炎症の原因の蛋白物質も分解するために、例えば日焼けの炎症やアトピーによる炎症も鎮める効果が高いことも確認された。にきびによる皮膚の薄くなった部分に対する刺激も感じないほどである。この組み合わせ混合液は、酵素の性格上、正常な細胞の蛋白には穏やかで変性したり酸化したり老化した蛋白を分解するものと考えられ皮膚に極めてやさしくしかも効果のあるピーリング作用をもつと考えられる。
しかし、この第2の方法では、皮脂の多い皮膚では酵素が阻害されてしまう欠点があった。
【0017】
第3の方法として、第2の方法の複数のプロテアーゼに、脂肪分解酵素を加えた加水分解酵素の混合液が検討された。脂肪分解酵素は、皮膚や頭皮の脂質に引き寄せられ優先的に分解するので、プロテアーゼの働きを強化することになる。皮膚のPH4.5〜6.0に近いPH4.5〜7.0付近で活性を保つ脂肪分解酵素であるリパーゼとしては、Aspergillus niger由来のリパーゼ(PH4.5〜7.0)やPenicillium camembertii由来のリパーゼ(PH4.3〜6.8)などがある。リパーゼなどの脂肪分解酵素による皮膚や特に頭皮に多く存在する石鹸残渣皮膜やその中に含まれている発毛阻害物質のラウリル硫酸ナトリウム類の分解、皮膚や頭皮の角質表面に存在する皮脂の分解、にきび穴や毛根部分に蓄積され皮脂やその酸化物の分解除去が可能となる。このように脂肪分解酵素の働きで始めて脂質や蛋白が混在した汚れが除去可能となり、また、脂質に覆われてプロテアーゼが働くことができなかった「にきび」の皮脂腺や毛髪の毛穴のクリーニングによって、皮膚の奥の細部までプロテアーゼが働き、効果の高い分子ピーリングが実現される。
【0018】
この段階では、プロティナーゼやペプチターゼを含むプロテアーゼの働きで劣化した角質特にケラチンの分解が効率よく行われる。ここで、皮膚や頭皮の角質を構成するケラチンは軟質ケラチンであって、毛髪の硬質ケラチンはシスチン・リッチであるためSS結合により堅く守られ酵素分解が著しく緩慢なため、皮膚のケラチンは分解されても毛髪のケラチンは分解されないという特徴がある。
【0019】
この角質の分解物は、ケラチンと酵素の分解生成物であり、組み合わせ酵素を使用しているためトリペプチドやアミノ酸数20以下のオリゴペプチドは生理活性と皮膚浸透性をもつ低分子のものが多く、ケラチノイドやメラノサイトおよびランゲル細胞などを含む上皮基底細胞の活性化や正常化を促すことが知られているものが多い。また、ケラチンに多く含まれるL−アルギニンをベースとしたオリゴペフチドは真皮の活性化を促す作用も知られている。L−アルギニンを含むトリペプチドまたはオリゴペプチドはNO産生による真皮や毛乳頭の血行改善や細胞内で抗老化作用で知られているポリアミンに変換される。
ケラチノイドなどの基底細胞の活性化は、亜鉛プロテアーゼの一種でコラーゲナーゼの働きもするニューロプシンの分泌を誘発し、老朽化した角質を内部から分解する。
ニューロプシンの分泌誘発は、内部からの分子ピーリングを意味している。
このように、組み合わせ酵素により外部から内部からの分子的な相互作用が生じ、自然で刺激のないが極めて効果的な分子ピーリングが実現する。
【0020】
さらに、トリペプチドには、強い抗酸化作用のあるものがあり、紫外線で発生するフリーラジカルまたは一重項酸素を除去することによってチロシンからメラニンを発生する過程を阻止することによりシミやソバカスの発生を防止することができる。ケラチンからの分解物では、Arg−His−Tyr,Arg−His−Trp,Arg−Trp−Trp,Leu−His−Trp,Leu−Trp−Trpやヒスチジン2個を含むトリペプチドなどの抗酸化力が強いとされている。
【0021】
他方、頭皮においては、シャンプーなどの石鹸残渣皮膜とそれに溶け込んでいるラウリル硫酸ナトリウム・ラウレス硫酸ナトリウム・ラウリル硫酸TEA・ラウレス硫酸TEAなどの発毛阻害物質(C12の脂肪酸の誘導体)を分解除去し、さらに頭皮の毛穴や皮脂腺に蓄積された皮脂などを分解除去、これら皮脂の脂肪に溶かし込んで発毛を阻害しているジヒドロテストステロン(DHT)などを除去する。これによって、頭髪の毛母細胞や毛乳頭細胞を賦活させる酵素による分解生成物やケラチンの分解物である毛髪栄養素を毛穴の奥深く浸透させる働きをする。ここで、テストステロンは毛髪を太くする作用があるのとは逆に、ジヒドロテストステロンは皮脂腺や毛乳頭に作用して毛髪が成長するのを妨げる働きをしている。ここでも、トリペプチド・オリゴペプチドなどの低分子分解物が皮膚と同様に頭皮基底細胞の活性化と真皮の血流促進を行い、皮脂腺の変質した皮脂や余分な皮脂を分解除去するとともに、毛母細胞を支配している毛乳頭細胞を活性化するする。毛乳頭細胞は▲1▼毛髪形成の引き金を引く▲2▼表皮細胞(幹細胞)を毛母細胞に変化させる▲3▼毛母細胞を刺激して毛髪を伸長させる▲4▼毛母細胞に毛髪の栄養を与える▲5▼真皮の血管と毛根の橋渡しをする役割を担っている。ここで、システインおよびアルギニンリッチなケラチン低分子分解物自身が浸透性のよい毛髪の栄養素として働くこととなる。
【0022】
さらに、人毛・羊毛などシステインを多く含む硬質ケラチンをトリペプチドやオリゴペプチドのように頭皮に浸透できるほどに低分子化し配合することによって毛髪への栄養要求を満たすことによりさらに発毛効果は高まることとなる。コラーゲン分解産物にはケラチン分解産物も混入することが多いのでコラーゲンの低分子分解産物でも効果があることが確かめられた。または、このコラーゲン分解産物にシステインやアルギニンを多く含有するオリゴペプチドまたはトリペプチドを配合することでも同じ効果を得ることができる。一方、アデノシンやミノキシジルなどの発毛促進物質を配合することで、毛髪促進作用の効率を高めることも可能にしている。
【0023】
さらに、発明者の一人は、酸化還元酵素を加えることで著しい効果が得られることを発見した。これが第4の方法である。
酸化還元酵素を加えることで、脂質が分解して生じた脂肪酸をさらに分解することで脂質を中鎖脂肪酸など水溶性成分に転換することができるために分子ピーリング効果が強化されるとともに汗のにおいの原因であるイソ吉草酸などの体臭成分を分解することができる。また、イソ吉草酸よりも分子量の大きい発毛の阻害物質ラウリル硫酸ナトリウム類を分解することが可能である。
さにらに、プロテアーゼの分解を補助してペプチド分解を促進することも考えられる。
【0024】
第5の方法は、コラーゲンを多量に含む動物の皮や魚の皮や鱗などを上記の分子ピーリング剤で分解して、酵素群と共にコラーゲンとケラチンおよび酵素自身の分解物を含む混合液を得る。この分解物は、ほとんどトリペプチドやオリゴペプチドそしてジペプチドのレベルに分解されており生理活性が極めて高いものである。この溶液を飲むと特に虚弱な人には胸から頭にかけて“ふわっ”と温かくなる現象が見られることからも吸収がよいことが分かり、アミノ酸よりも遥かに吸収のよいトリペプチドやオリゴペプチドの存在をよく現している。
分極が大きいアミノ酸に比してトリペプチドを含むアミノ酸数10以下のオリゴペプチドは特に皮膚への浸透性が高く真皮に達することも確認されている。
【0025】
従って、細胞賦活作用のあるトリペプチドを含むオリゴペプチドがケラチノイドを活性化させると同時にケラチノサイトからニューロプシンを誘導させて角質のターンオーバーを促進する。また、特にプロリンやヒドロキシプロリンを特異的に含むコラーゲンの分解物では、Gly−Pro−Hypなどのトリペプチドがケラチノイドでのヒアルロン酸やニューロプシンの生成を促進すると共に、真皮層に達してコラーゲン生成を促進する。また、スカールコラーゲンやケラチンにはアルギニンが特に多く含まれているので、その分解物であるアルギニンを含有するトリペプチドを含むオリゴペプチドが真皮まで浸透し、アルギニンからNO産生によって真皮の血行を促進すると共に、真皮細胞でアルギニンからポリアミンを生成することで真皮細胞の活性を高めて肌を若返らせる働きをすると考えられる。
【0026】
一方、第1から第5の方法で得られた分子ピーリング剤に、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ナノ粒子化したレチノールまたはレチナール、ナノ粒子化したレチノイン酸、レチノイン酸誘導体、胎盤エキスなどのFGFファミリーを含む物質、繊維化細胞を活性化するマクロファージ活性化因子などの細胞賦活物質を配合することもできる。
【0027】
本発明は、このように分子ピーリングという手段で、皮膚においては、しみ・そばかす・にきび・しわ・くすみ・アトピーや日焼けの炎症などの皮膚トラブルの改善と皮膚の若返りを、頭皮においては毛根の育毛・発毛促進を実現するものである。
【0028】
頭皮の育毛・発毛促進の効果を高めるためには、毛の栄養素である硬質ケラチンの低分子分解物(ケラチン分解のジペプチド・トリペプチドを含むオリゴペプチド)を加えることでその有効性を高めることができた。さらに、血行促進のための唐辛子分解物やミノキシジルなどの従来の発毛・養毛剤成分を加えることも効果のある方法である。
【0029】
また、このピーリング剤は、化粧品・毛髪剤のほか浴剤や飲料にも使用可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の分子ピーリング方法または分子ピーリング剤を使用した具体的効果は、皮膚にあっては、
▲1▼毛穴などに付着した「汚れの分解」効果=例えば鼻の頭の黒ずみの消失
▲2▼皮脂腺や皮膚の余分な「脂質の除去」=皮膚のサラサラ感
▲3▼老化した不要な角質のピーリングによる除去効果=皮膚のハリ・ツヤが出る
▲4▼皮膚表面に近い部分のメラニン除去と皮膚の血行の改善による「くすみ」の改善
▲5▼表皮表面に近いしみの短期間(1〜3日)での消失効果と皮膚全体の顕著な美白効果。
▲6▼ターンオーバ期間と見られる期間を過ぎて見られる「しみ」の消失
▲7▼短期間(3日〜2週間目)での細かいしわの消失
▲8▼1ヶ月〜3ヶ月目から大きなしわも消失傾向が見られる
▲9▼短期間(1日〜2日)での「にきび」の炎症の沈静化
▲10▼白ニキビ・赤にキビの消失効果
▲11▼ニキビ跡の穴の縮小効果
▲12▼日焼けの防止効果
▲13▼日焼けの炎症を抑制する効果
▲14▼日焼け後の肌の美白効果
▲15▼敏感肌でもトラブルを起こさない
▲16▼アトピー性皮膚炎による炎症を抑制する効果
▲17▼保湿促進効果および乾燥肌の改善効果(ただし、使い始めは保湿感を感じない)
【0031】
頭皮においては
▲1▼頭皮の余分な脂を除去する効果
▲2▼ふけなどの減少効果
▲3▼発毛促進効果(産毛が生え始める)
▲4▼毛を太く健康にする効果
▲5▼稀に白髪が黒くなる効果
が認められた。もちろん、その効果における体質的な個体差や年齢差が認められた。
【実施例1】
【0032】
黒鯛の鱗500gを微粉砕して、塩酸でカルシューム成分を処理、重曹でPH6.4に調整した溶液に、次の加水分解酵素を配合調整して100g添加した。酵素の配分率は、プロテアーゼとして、ババイヤ由来のPapain50%、イチヂク属植物の乳汁由来のFicin20、酵母由来のセリンカルボキシペプチターゼ25%、牛の脾臓由来のCathepsinC、Aspergillus niger由来のリパーゼAS5%である。こうして得られた溶液を3ヶ月室温で酵素反応をさせて、透明な黄金色の上澄み液を得た。この溶液に、保湿と酵素の安定化を目的に蟹の甲羅の分解物から作られたキトサン5gを添加した。このように、酵素65%・コラーゲン分解物30%・キトサン5%の溶液を得た。これを2倍に希釈して化粧水とした。
次の表1は、この化粧水で100名の女性モニターに試験してもらった結果である。
【表1】

【0033】
この試験では、アンケート項目の他に以下の多数の被験者コメントが寄せられた。
「しみ」に関しては、多くの場合、上皮の浅いところにあるシミは2〜3日で消失するものが現れた。また、1週間以内に肌が明るくなってきたものが多かった。にきび跡の色素沈着も早期に消失する傾向が見られた。通常4週目から「しみ」が薄くなり「ソバカス」の周囲が黄ばみはじめ、5週目で「しみ」が黄ばみ、6週目で「しみ」や「ソバカス」が消失する確率が高いことが判明した。
「にきび」に関しては、1〜2日で炎症が治まり、赤ニキビ・白ニキビ・黒ニキビともに少しずつ目立たなくなってくる。ニキビ跡の穴は縮小していく傾向が見られた。
「しわ」に関してもモニターから多くのコメントがあった。1〜2週間で小じわが消失する人が現れ始め、4〜6週でかなり目立つ「しわ」が消失し始める。中には、若いのに”おばあさん顔”の女性の深い「しわ」が改善され若々しくなった例も見られた。
「超敏感肌」で様々な化粧品を受け付けなかった人もトラブルなく使えた例もあった。
「アトピー性皮膚炎」の肌の炎症は短期間で収まり、皮膚のかゆみが取れて皮膚の状態が徐々に改善するのが見られた。
「日焼け」の予防効果が見られた。日焼け止めを塗らずに炎天下での日焼けが抑制されるのが確認された。また、日焼けした肌の著しい消炎効果が見られ、肌の白さも早く回復する効果も得られた。
以上のように、この実施例では、肌のしみ・ソバカス・しわやアトピー肌の改善も効果があることが確かめられた。
【実施例2】
【0034】
次のような加水分解酵素の濃い溶液を調整した。プロテアーゼとして、ババイヤ由来のPapain60%、イチヂク属植物の乳汁由来のFicin10、酵母由来のセリンカルボキシペプチターゼ25%、牛の脾臓由来のCathepsinC、Aspergillus niger由来のリパーゼAS5%である。これに水酸化カルシュームと水酸化マグシュームを安定化のため0.5%ほど加え、室温に1〜2日放置し熟成させ、ペプチドの生成を待った。この溶液を頭髪用化粧品とした。発毛のテストのため300名のモニターで試験した。
【表2】

【0035】
多くの場合、使用し始めて最初に頭皮の皮脂が減少しふけなどが目立たなくなる。4週から6週目にかけて頭皮のしみなどが薄くなり、頭皮に細かい皺ができ始める。早ければ、2ヶ月で頭皮に細い産毛が生え始める。さらに使用を継続すると長い毛が少しずつ生え始め、毛が次第に太くになる。頭皮では、多数の発毛の実績を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解酵素の作用およびその加水分解酵素によって生じた低分子生成物よる細胞賦活作用を同時に利用したことを特徴とする分子ピーリング方法
【請求項2】
請求項第1項記載の加水分解酵素がPH4.5からPH7.0で活性状態にある蛋白分解酵素を含むことを特徴とする請求項第1項記載の分子ピーリング剤
【請求項3】
請求項第2項の分子ピーリング剤に脂肪分解酵素を含有させたことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項4】
請求項第3項記載の分子ピーリング剤に酸化還元酵素を含有させたことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項5】
請求項第2項から第4項までに記載された分子ピーリング剤に酵素安定剤を含有させたことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項6】
請求項第2項から第5項までに記載された分子ピーリング剤にコラーゲン分解産物を含有させたことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項7】
請求項第6項記載のコラーゲン分解物がアミノ酸数20以下のペプチドまたはトリペプチドであることを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項8】
請求項第6項または請求項第7項記載の分子ピーリング剤にポリアミンを含有させたことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項9】
請求項第2項から第8項までに記載された分子ピーリング剤を発毛促進に利用したことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項10】
請求項第9項に記載された分子ピーリング剤に硬質ケラチン分解物を配合したことを特徴とする分子ピーリング剤
【請求項11】
請求項第6項または請求項第7項記載の分子ピーリング剤に発毛促進剤を配合したことを特徴とする分子ピーリング剤

【公開番号】特開2008−81483(P2008−81483A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290500(P2006−290500)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506359060)有限会社メイショウ (1)
【Fターム(参考)】