説明

分子ポンプ、及びフランジ

【課題】安価で安定した衝撃吸収特性を発揮する緩衝機構を備えた分子ポンプを提供すること。
【解決手段】分子ポンプの吸気口に設けたフランジ61に、ボルト穴14に隣接して空洞部72を設ける。空洞部72は、フランジ61を貫通する貫通孔である。これにより、ボルト穴14と空洞部72の間に薄肉部71が形成される。分子ポンプに、ロータ部の破壊などによって、ロータ部の回転方向の衝撃が発生した場合、フランジ61が分子ポンプと共にロータ部の回転方向に滑る。すると、フランジ61と真空装置のフランジとを固定しているボルトが薄肉部71に当たり、矢線B方向に塑性変形する。このように、薄肉部71が塑性変形する事により、分子ポンプを回転させるエネルギーが薄肉部71を塑性変形させるエネルギーに費やされ、分子ポンプで発生した衝撃を緩衝する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子ポンプなどに関し、例えば、真空容器の排気に用いるターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプやねじ溝式ポンプなどの分子ポンプは、例えば、半導体製造装置の排気や、電子顕微鏡などの高真空を要する真空容器に多用されている。
これら分子ポンプの吸気口には、フランジが設けられており、真空容器の排気口にボルトなどで固定できるようになっている。このフランジと真空容器の排気口の間にはOリングやガスケットなどが挟んであり、分子ポンプと排気口との間の気密性が保たれるようになっている。
【0003】
分子ポンプの内部には、回転自在に軸支され、モータ部により高速回転が可能なロータ部と、分子ポンプのケーシングに固定されたステータ部が設けられている。
分子ポンプは、ロータ部が高速回転することにより、ロータ部とステータ部が排気作用を発揮する。そして、この排気作用により、分子ポンプの吸気口より気体が吸引され、排気口から排気される。
通常、分子ポンプは、分子流領域(真空度が高く分子同士が衝突する頻度が小さい領域)にて気体を排気する。分子流領域で排気能力を発揮するためには、ロータ部は、例えば毎分3万回転程度の高速回転を行う必要がある。
【0004】
ところで、分子ポンプの運転中に何らかのトラブルが発生し、ロータ部がステータ部やその他の分子ポンプ内の固定した部材に衝突した場合、ロータ部の角運動量がステータ部や固定部材に伝達し、分子ポンプ全体をロータ部の回転方向に回転させる大きなトルクが瞬時に発生する。このトルクは、フランジを通じて真空容器にも大きな応力を及ぼす。
そのため、このようなトルクによる衝撃を緩和するための提案として例えば次のような技術が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−274189号公報
【特許文献2】特開平08−114196号公報
【0006】
特許文献1、特許文献2で提案されている技術は、何れもターボ分子ポンプの吸気口に設けたフランジに緩衝機構を備えたものである。
図23は、特許文献1で提案されている緩衝機構を備えたフランジを説明するための図である。
図23では、フランジ201は、ターボ分子ポンプの吸気口に設けられたものである。フランジ201には、フランジ201の円弧に沿った長穴状のボルト穴203が複数個、同心上に形成されている。一方、真空容器側のフランジは、外径と内径がフランジ201と同様であり、通常形状(内周面が円筒状)のボルト穴が同心上に形成されている。
【0007】
フランジ201と真空容器側のフランジを同心上に合わせ、両者のボルト穴にボルト202を挿通し、これにナットをねじ込んで締め付けることにより、ターボ分子ポンプが真空容器に固定される。
ここで、ターボ分子ポンプを真空容器に取り付ける際に、ボルト202をボルト穴203のロータの回転方向側の端部で固定しておく。すると、ロータ部が破壊するなどしてステータ部などに接触し、ターボ分子ポンプをロータの回転方向に回転させるトルクが発生すると、フランジ201がロータの回転方向にスライドし(滑り)、ターボ分子ポンプに発生したトルクの衝撃を緩衝させることができる。
更に、特許文献1では、フランジ201のボルト穴(円形断面)をボルト202の外径より充分大きく形成しておき、ボルト202とボルト穴203の間に緩衝材を介在させる技術も開示されている。
【0008】
特許文献2は、ロータ部の破壊などによりターボ分子ポンプに生じたトルクを、ターボ分子ポンプと真空容器を接合するボルトをくの字状に塑性変形させることにより吸収する技術が記載されている。
このようにボルトを塑性変形させるために、ターボ分子ポンプ側のフランジのボルト穴は、ロータの回転方向に長穴状に形成されていると共に、長穴の底部付近にはボルトをくの字状に変形させるための爪状の薄板部が形成されている。
【0009】
以上の特許文献1、2で開示されている技術のように、ターボ分子ポンプのフランジ部で衝撃を吸収する構造にすると、ターボ分子ポンプの安全性が高まる他、ターボ分子ポンプのフランジ部と真空容器側のフランジ部の取り付け強度をこれら緩衝機構が無い場合に比べて小さくすることができ(緩衝機構が無い場合は、発生するトルクに耐えられるように取り付け部分の機械的強度を高める必要がある他、取り付け強度も高めなければならない)、製造コスト、作業コストなどが低減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載の記述では、ボルト穴203が長穴状に形成されているため、設置現場でのボルトの位置決め(位相合わせ)がしにくいという欠点がある。また、ボルトの締め付け具合によって、衝撃吸収の特性が変化するという不都合もある。更に、緩衝材を用いた場合は製造コストが上昇するという問題もある。
また、特許文献2に記載の技術においては、使用するボルトの性質(材質、剛性、剪断応力に対する特性など)により衝撃吸収の特性が変化する。そのため、所定の衝撃吸収特性を保証する場合は、取り付け用のボルトを指定するのが望ましい。一方、ボルトは、同じ形状で性質が異なるものが多種流通しており、別部材であるターボ分子ポンプとボルトの組み合わせを指定することは、ターボ分子ポンプの流通や取り付けを煩雑にする。また、指定したボルトと異なる種類のボルトが使用された場合、ボルトが破断してターボ分子ポンプが真空容器から脱落することも考えられる。更に、長穴に爪状の薄板部を加工すると加工コストが高くなるという問題もある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、安価で安定した衝撃吸収特性を発揮する緩衝機構を備えた分子ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載した発明では、吸気口及び排気口が形成された円筒形状のケーシングと、前記ケーシング内に形成されたステータと、前記ステータに対して同心に配設されたシャフトと、前記シャフトを前記ステータに対して回転自在に軸支する軸受と、前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと一体になって回転するロータと、前記シャフトを駆動して回転させるモータと、複数のボルト穴を備え、前記ケーシングの前記吸気口側に設けられ、前記ケーシングに作用する前記ロータの回転方向のトルクによる衝撃によって変形する緩衝部が設けられたフランジ部と、を具備し、前記緩衝部は、全ての前記ボルト穴の近傍に設けられており、且つ、前記フランジ部の点対称の位置に設けられており、且つ、前記ボルト穴の、前記ロータの回転方向と逆方向に隣接して設けられた薄肉部を備えたことを特徴とする分子ポンプを提供する。
請求項2に記載の発明では、前記薄肉部は、前記ボルト穴の軸線方向に形成された切り欠き部を具備したことを特徴とする請求項1に記載の分子ポンプを提供する。
請求項3に記載の発明では、前記緩衝部は、前記ロータの回転方向に沿って、前記ロータのラジアル方向の幅が変化する長穴部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分子ポンプを提供する。
請求項4に記載の発明では、前記長穴部は、ボルトの位置を位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の分子ポンプを提供する。
また、本発明は、前記目的を達成するために、請求項5に記載した発明では、分子ポンプの吸気口を真空容器の排気口に接続するためのフランジであって、前記フランジは、前記フランジを固定するための複数のボルト穴と、前記ボルト穴の、前記分子ポンプのロータの回転方向に隣接し、且つ、前記フランジの点対称の位置に設けられており、且つ、全てのボルト穴の近傍に設けられた薄肉部と、を備えたことを特徴とするフランジを提供する。
更に、請求項6の発明では、吸気口及び排気口が形成された円筒形状のケーシングと、前記ケーシング内に形成されたステータと、前記ステータに対して同心に配設されたシャフトと、前記シャフトを前記ステータに対して回転自在に軸支する軸受と、前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと一体になって回転するロータと、前記シャフトを駆動して回転させるモータと、前記ケーシングの前記吸気口側に設けられ、複数のボルト穴と、全ての前記ボルト穴の前記ロータの回転方向と逆方向に、平板状の薄肉部を隔てて形成された貫通孔と、を備えたフランジ部と、を具備し、前記薄肉部は、前記フランジ部の点対称の位置に設けられたことを特徴とする分子ポンプを提供する。
請求項7の発明では、前記ボルト穴は、前記ボルト穴に挿入したボルトを前記薄肉部の中央へ案内する案内部を備えたことを特徴とする請求項6に記載の分子ポンプを提供する。
請求項8に記載の発明では、前記薄肉部の塑性変形強度は、前記ボルト穴に挿入したボルトの破断強度よりも小さいことを特徴とする請求項6、又は請求項7に記載の分子ポンプを提供する。塑性変形強度は、少なくとも前記ロータの回転方向に逆方向の塑性変形強度が前記ボルトの破断強度より小さければよい。
請求項9に記載の発明では、前記ボルト穴に挿入したボルトのボルトヘッドと前記フランジ部との間に介在する座金を具備し、前記ロータの衝突による衝撃によって前記ボルトが前記薄肉部方向に移動した位置において、前記座金の、前記ボルトの中心から前記ロータの回転方向の端部までの領域で、少なくとも前記フランジ部に接している部分が存在することを特徴とする請求項6、請求項7、又は請求項8に記載の分子ポンプを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価で安定した衝撃吸収特性を発揮する緩衝機構を備えた分子ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態の分子ポンプの真空容器への取り付け形態の一例を示した図である。
【図2】本実施の形態の分子ポンプの軸線方向の断面図を示した図である。
【図3】フランジを分子ポンプの吸気口側から見たところを示した図である。
【図4】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図5】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図6】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図7】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図8】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図9】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図10】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図11】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図12】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図13】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図14】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図15】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図16】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図17】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図18】他の例に係るフランジを説明するための図である。
【図19】薄肉部の塑性変形強度とボルトの破断強度の関係を説明するための図である。
【図20】薄肉部の塑性変形強度を決定するパラメータを説明するための図である。
【図21】従来の座金を説明するための図である。
【図22】本実施の形態の座金を説明するための図である。
【図23】特許文献1で提案されている緩衝機構を備えたフランジを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1〜図16を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施の形態では、フランジのボルト取り付け穴において、ロータ回転方向と逆の方向に面する部分に薄肉部を設ける。ロータ部がステータ部に接触するなどして分子ポンプ全体にトルクによる衝撃が発生した場合、この薄肉部が塑性変形することにより分子ポンプを回転させるエネルギーを吸収する。
薄肉部の形成パターンは各種考えられるが、例えば、図3のフランジ61のように、ボルト穴14に隣接して空洞部72を設けることができる。空洞部72は、フランジ61を貫通する貫通孔である。すると、ボルト穴14と空洞部72の間に薄肉部71が形成される。
分子ポンプに、ロータ部の破壊などによって、ロータ部の回転方向の衝撃が発生した場合、フランジ61が分子ポンプと共にロータ部の回転方向に滑る。すると、フランジ61と真空容器のフランジとを固定しているボルトが薄肉部71に当たり、矢線B方向に塑性変形する。このように、薄肉部71が塑性変形することにより、分子ポンプを回転させるエネルギーが薄肉部71を塑性変形させるエネルギーに費やされ、分子ポンプで発生した衝撃を緩衝することができる。
【0016】
(2)実施形態の詳細
図1は、本実施の形態の分子ポンプ1の真空容器205への取り付け形態の一例を示した図である。
分子ポンプ1は、高速回転するロータ部と、固定したステータ部との排気作用により、排気機能を発揮する真空ポンプであって、ターボ分子ポンプ、ねじ溝式ポンプ、あるいはこれら両方の構造を合わせ持ったポンプなどがある。
分子ポンプ1の吸気口にはフランジ61が形成され、排気側には排気口19が設けられている。
真空容器205は、半導体製造装置や電子顕微鏡の鏡塔などの真空装置を構成しており、排気口にはフランジ62が形成されている。
【0017】
フランジ61、62には、複数個のボルト穴が同心上の同じ位置に形成されている。そして、これらのボルト穴にボルト65を挿通し、これらボルト65にナット66をねじ込んで締め付けることにより、分子ポンプ1は真空容器205の下部に取り付けられ固定されている。真空容器205内の気体は、分子ポンプ1の吸気口から吸引され、排気口19から排出される。これにより、例えば、半導体製造のための反応ガスやその他のガスを真空容器205から排出することができる。
【0018】
なお、図の例では、真空容器205の下部に分子ポンプ1を取り付け、分子ポンプが真空容器205からつり下げられた形になっているが、分子ポンプ1の取り付け位置はこれに限定するものではなく、分子ポンプ1を横にして真空容器205の横に取り付けたり、あるいは、分子ポンプ1の吸気口を下側にして真空容器205の上部に取り付けることもできる。
更に、真空容器205の排気口と分子ポンプ1の吸気口の間に排気ガスの流量を調節するための弁を設ける場合もある。
また、排気口19は、一般にロータリーポンプなどの粗引き用ポンプに接続されている。
【0019】
図2は、本実施の形態の分子ポンプ1の軸線方向の断面図を示した図である。
本実施の形態では、分子ポンプの一例としてターボ分子ポンプ部とねじ溝式ポンプ部を備えた、いわゆる複合翼タイプの分子ポンプを例にとり説明する。
分子ポンプ1の外装体を形成するケーシング16は、円筒状の形状をしており、ケーシング16の底部に設けられた円盤状のベース27と共に分子ポンプ1の筐体を構成している。そして、ケーシング16の内部には、分子ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物が収納されている。
これら排気機能を発揮する構造物は、大きく分けて回転自在に軸支されたロータ部24とケーシング16に対して固定されたステータ部から構成されている。
また、ポンプの種類から見た場合、吸気口6側がターボ分子ポンプ部により構成され、排気口19側がねじ溝式ポンプ部から構成されている。
【0020】
ロータ部24は、吸気口6側(ターボ分子ポンプ部)に設けられたロータ翼21と、排気口19側(ねじ溝式ポンプ部)に設けられた円筒部材29、及びシャフト11などから構成されている。ロータ翼21は、シャフト11の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してシャフト11から放射状に伸びたブレードから構成されており、ターボ分子ポンプ部では、これらロータ翼21が軸線方向に複数段形成されている。
円筒部材29は、外周面が円筒形状をした部材であり、ねじ溝式ポンプ部のロータ部24を構成している。
シャフト11は、ロータ部24の軸を構成する円柱部材であって、その上端部にはロータ翼21と円筒部材29からなる部材がボルト25によりねじ止めされている。
【0021】
シャフト11の軸線方向中程には、外周面に永久磁石が固着してあり、モータ部10のロータを構成している。この永久磁石がシャフト11の外周に形成する磁極は、外周面の半周に渡ってN極となり、残り半周に渡ってS極となるようになっている。
更に、シャフト11のモータ部10に対して吸気口6側、及び排気口19側には、シャフト11をラジアル方向に軸支するための磁気軸受部8、12のロータ部24側の部分が形成されており、シャフト11の下端には、シャフト11を軸線方向(スラスト方向)に軸支する磁気軸受部20のロータ部24側の部分が形成されている。
また、磁気軸受部8、12の近傍には、それぞれ変位センサ9、13のロータ側の部分が形成されており、シャフト11のラジアル方向の変位が検出できるようになっている。更に、シャフト11の下端には変位センサ17のロータ側の部分が形成されており、シャフト11の軸線方向の変位が検出できるようになっている。
これら、磁気軸受部8、12及び変位センサ9、13のロータ側の部分は、ロータ部24の回転軸線方向に鋼板を積層した積層鋼板により構成されている。これは、磁気軸受部8、12、変位センサ9、13のステータ側の部分を構成するコイルが発生する磁界によって、シャフト11に渦電流が発生するのを防ぐためである。
以上に説明したロータ部24はステンレスやアルミニウム合金などの金属を用いて構成されている。
【0022】
ケーシング16の内周側には、ステータ部が形成されている。このステータ部は、吸気口6側(ターボ分子ポンプ部)に設けられたステータ翼22と、排気口19側(ねじ溝式ポンプ)に設けられたねじ溝スペーサ5などから構成されている。
ステータ翼22は、シャフト11の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してケーシング16の内周面からシャフト11に向かって伸びたブレードから構成されており、ターボ分子ポンプ部では、これらステータ翼22が軸線方向に、ロータ翼21と互い違いに複数段形成されている。各段のステータ翼22は、円筒形状をしたスペーサ23により互いに隔てられている。
【0023】
ねじ溝スペーサ5は、内周面にらせん溝7が形成された円柱部材である。ねじ溝スペーサ5の内周面は、所定のクリアランス(間隙)を隔てて円筒部材29の外周面に対面するようになっている。ねじ溝スペーサ5に形成されたらせん溝7の方向は、らせん溝7内をロータ部24の回転方向にガスが輸送された場合、排気口19に向かう方向である。らせん溝7の深さは排気口19に近づくにつれ浅くなるようになっており、らせん溝7を輸送されるガスは排気口19に近づくにつれて圧縮されるようになっている。
これらステータ部はステンレスやアルミニウム合金などの金属を用いて構成されている。
【0024】
ベース27は、円盤形状を有した部材であって、ラジアル方向中央には、ロータの回転軸線と同心に円筒形状を有するステータコラム18が、吸気口6方向に取り付けられている。
ステータコラム18は、モータ部10、磁気軸受部8、12、及び変位センサ9、13のステータ側の部分を支持している。
モータ部10では、所定の極数のステータコイルがステータコイルの内周側に等間隔で配設され、シャフト11に形成された磁極の周囲に回転磁界を発生できるようになっている。また、ステータコイルの外周には、ステンレスなどの金属で構成された円筒部材であるカラー49が配設されており、モータ部10を保護している。
【0025】
磁気軸受部8、12は、回転軸線の回りの90度ごとに配設されたコイルから構成されている。そして、磁気軸受部8、12は、これらコイルの発生する磁界でシャフト11を吸引することにより、シャフト11をラジアル方向に磁気浮上させる。
ステータコラム18の底部には、磁気軸受部20が形成されている。磁気軸受部20は、シャフト11から張り出した円板と、この円板の上下に配設されたコイルから構成されている。これらコイルが発生する磁界がこの円板を吸引することにより、シャフト11が軸線方向に磁気浮上する。
【0026】
ケーシング16の吸気口6には、ケーシング16の外周側に張り出したフランジ61が形成されている。フランジ61には、ボルト65を挿通するためのボルト穴14と、真空容器205側のフランジ62との気密性を保つためのOリングを装着するための溝15が形成されている。フランジ61には、分子ポンプ1でロータ部24の回転方向の衝撃が生じた場合、これを緩衝するための機構が設けられている。この機構については後ほど詳細に説明する。
【0027】
以上のように構成された分子ポンプ1は、以下のように動作し、真空容器205からガスを排出する。
まず、磁気軸受部8、12、20がシャフト11を磁気浮上させることにより、ロータ部24を非接触で空間中に軸支する。
次に、モータ部10が作動し、ロータを所定の方向に回転させる。回転速度は例えば毎分3万回転程度である。本実施の形態では、ロータ部24の回転方向を図2の矢線A方向にみて時計回り方向とする。なお、反時計回り方向に回転するように分子ポンプ1を構成することも可能である。
ロータ部24が回転すると、ロータ翼21とステータ翼22の作用により、吸気口6からガスが吸引され、下段に行くほど圧縮される。
ターボ分子ポンプ部で圧縮されたガスは、更にねじ溝式ポンプ部で圧縮され、排気口19から排出される。
【0028】
図3は、フランジ61を図2の矢線A方向に見たところを示した図である。図を簡略化するため、Oリング用の溝15と分子ポンプ1の内部構造は図示していない。
図に示したように、フランジ61には同心上に所定間隔でボルト穴14が複数個形成されている。
ボルト穴14は、ロータ部24の回転方向に長穴形状となっており、ロータ部24の回転方向の端部の幅が広く、逆方向の他端部に行くに従って幅が狭くなるように概略くさび型になっている。
【0029】
ボルト穴14のロータ部24の回転方向の端部は、所定のクリアランスを隔ててボルト65が挿入できるように、ボルト65と相似形状の円弧状となっており、ボルト65は、この端部に挿入される。
ボルト穴14の幅は他端部にかけて小さくなるため、ボルト65を他端部方向にスライドさせようとすると、ボルト65の外径がボルト穴14の内壁に当たり、ボルト65を他端部方向にスライドできないようになっている。このようにして、ボルト65は、ボルト穴14の端部に位置決めされるようになっている。
ボルト穴14の外周側には、長穴方向に沿ってフランジ61を貫通する空洞部72が設けてあり、これにより、ボルト穴14と空洞部72の間に薄肉部71が形成されている。
薄肉部71の厚さは、フランジ61の材質や厚さなどにもよるが、0.5ミリメートル程度から数ミリ程度である。
【0030】
次に、このように、構成されたフランジ61の緩衝機能について説明する。
分子ポンプ1で、ロータ部24が高速回転しているときに、これが破断するなどしてステータ部などに衝突すると、分子ポンプ1の全体をロータ部24の回転方向に回転させようとするトルクによる衝撃が発生する。
すると、この衝撃によりフランジ61が真空容器205のフランジ62に対してロータ部24の回転方向に滑って回転しようとする。
【0031】
一方、ボルト65の位置はフランジ62で固定されているため(フランジ62のボルト穴は通常の円形のボルト穴とする)、フランジ61がロータ部24の回転方向に回転すると、ボルト65はボルト穴14内において、他端部方向に相対的に移動することになる。
ボルト穴14は他端部方向にかけて穴の幅が狭くなるため、ボルト穴14の内周の側壁がボルト65に当たり、薄肉部71が矢線B方向(ロータ部24の回転方向と逆の方向の接線方向からラジアル方向外側に向いた方向)に押されて塑性変形する。
薄肉部71が塑性変形する過程で分子ポンプ1を回転させるエネルギーが塑性変形に消費され、これによって、衝撃が緩和される。
【0032】
以上に述べたように、本実施の形態では、フランジ61に、分子ポンプ1を回転させるトルクによって塑性変形するように構成された緩衝機構を備えることによって、万が一ロータ部24が破断したり、あるいは、半導体製造装置で反応ガスを排出する際にロータ部24やステータ部などに積層した堆積物が分子ポンプ1内で衝突したりなどの不具合が発生した場合でも、安全性を高めることができる。
また、ボルト穴14や空洞部72にゴムやその他の弾性部材を緩衝部材として充填してもよい。
更に、フランジ61のボルト穴14は通常の円形断面のねじ穴とし、真空容器205側のフランジ62のボルト穴に薄肉部を設けたり、あるいは、フランジ61、62の双方のボルト穴に薄肉部を設けるように構成することもできる。
【0033】
図4は、フランジ61の他の例に係るフランジ61aを説明するための図である。
フランジ61aは、フランジ61の空洞部72を切り欠き部73としたものである。
ロータ部24が破壊するなどして分子ポンプ1にロータ部24の回転方向の大きなトルクが生じて回転した場合、ボルト65が薄肉部71に当たって薄肉部71が矢線B方向に塑性変形する。これにより、分子ポンプ1の回転エネルギーが吸収され、分子ポンプ1に生じた衝撃が緩和される。
切り欠き部73の加工は、空洞部72の加工よりも容易であるため、製造コストを低くすることができる。
【0034】
図5は、フランジ61の他の例に係るフランジ61bを説明するための図である。
フランジ61bでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっており、ボルト65を位置決めすることができる。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部77が形成されている。空洞部77は、ボルト穴14より内径の小さい円形断面を有する貫通孔である。ボルト穴14と空洞部77の間にある部分が薄肉部76を構成している。
このように構成されたフランジ61bを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部76と空洞部77が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0035】
図6は、フランジ61の他の例に係るフランジ61cを説明するための図である。
フランジ61cでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部79が形成されている。空洞部79は、ボルト穴14より内径の小さい円形断面を有する貫通孔である。そして、更に空洞部79からロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部80が形成されている。空洞部80は、空洞部79より内径が小さい円形断面を有する貫通孔である。
ボルト穴14と空洞部79の間、及び空洞部79と空洞部80の間にある部分が薄肉部を構成している。
このように構成されたフランジ61cを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、これら薄肉部、及び空洞部79、80が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0036】
図7は、フランジ61の他の例に係るフランジ61dを説明するための図である。
フランジ61dでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部83が形成されている。空洞部83は、ボルト穴14と内径の等しい円形断面を有する貫通孔である。ボルト穴14と空洞部83の間にある部分が薄肉部82を構成している。
このように構成されたフランジ61dを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部82、及び空洞部83が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
また、空洞部83の内径をボルト穴14より大きくなるように構成することもできる。
【0037】
図8は、フランジ61の他の例に係るフランジ61eを説明するための図である。
フランジ61eでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部86が形成されている。空洞部86は、ボルト穴14と内径の等しい円形断面を有する貫通孔である。この例では、ボルト穴14と空洞部86の中心間の距離がボルト穴14の半径と空洞部86の半径の和より小さくなるように設定されており、ボルト穴14と空洞部86は連接している。
そして、ボルト穴14と空洞部86の連接部分のくびれた部位が薄肉部85を形成している。
このように構成されたフランジ61eを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部85が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0038】
図9は、フランジ61の他の例に係るフランジ61fを説明するための図である。
フランジ61fでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて、断面形状が三日月型をした貫通孔から構成された空洞部89が形成されている。空洞部89の三日月型断面は、凹部が薄肉部88を隔ててボルト穴14に面するように配置されている。そして、凹部のR形状は薄肉部88の厚さが略均等になるように設定されている。
このように構成されたフランジ61fを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部88が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0039】
図10は、フランジ61の他の例に係るフランジ61gを説明するための図である。
フランジ61gでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に所定の距離を隔てて空洞部92が形成されている。
空洞部92は、円形断面を有する3つの貫通孔から構成されている。これらの貫通孔のうち、2つは内径が同じであり、ボルト穴14から薄肉部91を隔てて、ラジアル方向に整列して形成されている。そして、これら2つの貫通孔の中間がボルト穴14の中心を通り、フランジ61gに同心な円周上に位置するように設定されている。そして、残りの1つの貫通孔は、先の2つの貫通孔の更にロータ部24の回転方向と逆方向側に形成されており、その中心がボルト穴14の中心を通り、フランジ61gに同心な円周上に位置するようになっている。
【0040】
このように空洞部92においては、空洞部92とボルト穴14に薄肉部91が形成される他、空洞部92を構成する3つの貫通孔間にも薄肉部が形成される。
このように構成されたフランジ61gを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部91、及び空洞部92を構成する3つの貫通孔間の薄肉部が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0041】
図11は、フランジ61の他の例に係るフランジ61hを説明するための図である。
フランジ61hでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に薄肉部94を隔てて切り欠き部95が形成されている。
切り欠き部95は、薄肉部94からフランジ61hの円周の接線方向からラジアル方向外側に向いた方向(図11中の矢線D方向)に形成されている。
このように構成されたフランジ61hを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部94が矢線D方向に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0042】
図12は、フランジ61の他の例に係るフランジ61iを説明するための図である。
フランジ61iでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に薄肉部97を隔てて切り欠き部98が形成されている。
切り欠き部98は、薄肉部97を隔てて、フランジ61iの外周をラジアル方向にえぐるように構成されている。
このように構成されたフランジ61iを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部97が矢線C方向に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0043】
図13は、フランジ61の他の例に係るフランジ61jを説明するための図である。
フランジ61jでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に薄肉部100を隔てて空洞部101が形成されている。
空洞部101は、2つの円弧状の貫通孔から形成されている。これら2つの貫通孔は、所定の距離を隔て、かつ凹部がボルト穴14に面するように円周方向に並んで配置されている。このように、2つの貫通孔の間にも薄肉部102が形成されている。
このように構成されたフランジ61jを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部100と薄肉部102が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0044】
図14は、フランジ61の他の例に係るフランジ61kを説明するための図である。
フランジ61kでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に薄肉部103を隔てて空洞部104が形成されている。
空洞部104は、2つの長穴状の貫通孔から形成されている。これら2つの貫通孔は、所定の距離を隔て、かつ長穴の曲率が大きい側面がボルト穴14に面するように円周方向に並んで配置されている。このように、2つの貫通孔の間にも薄肉部105が形成されている。
このように構成されたフランジ61kを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部103と2つの貫通孔の間に形成された薄肉部105が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
【0045】
図15は、フランジ61の他の例に係るフランジ61lを説明するための図である。
フランジ61lでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。そして、ボルト穴14のロータ部24の回転方向と逆方向に薄肉部113を隔てて空洞部109が形成されている。
空洞部109は、円形断面を有する貫通孔110、111、112から構成されている。貫通孔111は、内周側に、貫通孔110は外周側に、及び貫通孔112は貫通孔110、111の間に形成されている。
貫通孔110の中心と貫通孔112の中心との距離が貫通孔110、112の半径の和よりも小さくなっており、貫通孔110、112は、連続した貫通孔となっている。
【0046】
同様に、貫通孔111の中心と貫通孔112の中心との距離が貫通孔111、112の半径の和よりも小さくなっており、貫通孔111、112は、連続した貫通孔となっている。また、空洞部109では、貫通孔112の内径が、貫通孔111、110の内径よりも大きく設定されているが、何れも同じ内径としても良いし、貫通孔112の内径を貫通孔110、111の内径より小さくしても良い。
そして、貫通孔112の中心は、貫通孔110、111の中心よりも矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に位置している。このため、空洞部109とボルト穴14の間に形成された薄肉部113は、矢線C方向に凸となっている。
【0047】
このように構成されたフランジ61lを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部113が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。これにより衝撃が吸収される。
空洞部109は、フライス盤などで3カ所貫通孔を形成するだけでできるので、加工が容易である。
【0048】
図16(a)は、フランジ61の他の例に係るフランジ61mを説明するための図である。図16(b)は、ボルト穴14付近を拡大した図である。
フランジ61mでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。
そして、ボルト穴14の矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)で、ボルト穴14中心からの距離がボルト穴14の内径より小さい位置に、ラジアル方向に長穴形状の貫通孔となった長穴119が形成されている。そのため、ボルト穴14は、矢線C方向で、長穴119と連続している。長穴119の長穴方向の内径は、ボルト穴14の内径よりも大きく設定されている。
【0049】
また、長穴119のC方向の位置は、長穴119内でボルト穴14の内径を延長した円弧が長穴119の内周面と接する位置に設定されている。そして、長穴119のC方向には、長穴119と相似形状の長穴115、116が形成されており、長穴119と長穴115の間に薄肉部117が形成されている。更に、長穴115と長穴116の間に薄肉部118が形成されている。
このように構成されたフランジ61mを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65により、薄肉部117が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形する。そして、塑性変形した薄肉部117が更に薄肉部118を圧迫して塑性変形させる。このように、薄肉部117、118が塑性変形することにより、衝撃が吸収される。
【0050】
以上、フランジ61のボルト穴14の近傍に塑性変形可能な薄肉部を設けることにより緩衝機構を構成したが、薄肉部の形状は、以上に示した例に限定するものではなく、この他に各種の形態が考えられる。
また、分子ポンプ1は、ターボ分子ポンプ部とねじ溝式ポンプ部から構成された複合翼タイプとしたが、分子ポンプ1の種類はこれに限定するものではなく、吸気口6側から排気口19側まで、全てステータ翼とロータ翼で構成された全翼タイプのターボ分子ポンプであってもよい。
以上に説明した本実施の形態により、以下のような効果を得ることができる。
(1)ボルト穴14の近傍に空洞部や切り欠き部などを設けることにより薄肉部を形成するという簡単な構造で、ロータ部24の回転方向の衝撃を効果的に吸収することができる。
(2)構造が簡単であるので安価に製造することかできる。
(3)フランジ61に緩衝機構を構成するので、分子ポンプ1の内部構造を問わずに適用することができる。
(4)フランジ61が緩衝機構を備えているので、従来より、分子ポンプ1と真空容器205の接合部の強度が低くても実用に耐えるため、例えば、ボルト65の本数を減らしたり、あるいは従来より強度の低いボルト65を使用したりできる他、シェル状の安全カバー(分子ポンプ1全体を覆う安全カバー)の設置の必要が無くなり、トータルコストダウンが可能となる。
(5)ボルト穴14でボルト65の位置決めが容易であるので、作業性が向上する。
【0051】
次に、コンピュータを用いた解析が容易な緩衝機構の例について説明する。
近年コンピュータによる解析技術の進歩が著しく、シミュレーションによって、予め緩衝機構による緩衝効果を計算できるようになってきた。
分子ポンプは、高価な製品であるので、予めコンピュータでシミュレーションを行って緩衝機構の形状の候補を絞った後、実験を行うようにすると、実物の分子ポンプを用いた実験回数を最小限に抑えることができる。
特に、分子ポンプは、高価な製品であるので、このようにシミュレーションを行うことにより開発コストを低減することができる。
【0052】
シミュレーションは、緩衝機構の形状、寸法、材質などの諸元をパラメータとして設定して計算対象となるモデルを作成した後、分子ポンプで発生する衝撃の大きさを入力し、緩衝機構がどのようにこの衝撃を吸収するかを数値計算する。数値計算には、例えば、有限要素法などの公知の理論を適用する。
パラメータを変化させながら所望の効果を発揮する緩衝機構の候補を絞り込んだ後、実際に分子ポンプの破壊実験を行って、シミュレーション結果と比較する。
比較結果により、実際に実施する緩衝機構を決定する。
【0053】
以上のようにシミュレーションを行って緩衝機構を設計する場合、計算が容易であり、かつ加工が容易である形状を選択することが重要である。
このような要請を満たす形状として、例えば、薄肉部を平板形状に形成したものがある。
薄肉部が平板状であると、塑性変形する部分の肉厚が均一であるので、計算が非常に容易である。また加工も容易であり、更に実験結果との一致も良好である。
【0054】
以下に、図17、図18を用いて薄肉部を平板状に形成した場合の例について説明する。
図17(a)は、フランジ61の他の例に係るフランジ61nを説明するための図であり、図17(b)は、ボルト穴14付近を拡大した図である。
フランジ61nでは、ボルト穴14は円形断面を有する通常のボルト穴となっている。
そして、ボルト穴14の矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)で、ボルト穴14中心からの距離がボルト穴14の内径より小さい位置に、ラジアル方向に長穴形状の貫通孔となった長穴124が形成されている。そのため、長穴124は、矢線C方向で、ボルト穴14と連続している。長穴124の長穴方向の内径は、ボルト穴14の内径よりも大きく設定されている。
【0055】
更に、長穴124のC方向の位置は、長穴124内でボルト穴14の内径を延長した円弧が長穴124の内周面と接する位置に設定されている。そして、長穴124のC方向には、長穴124と相似形状の貫通孔である長穴120が長穴124と平行に形成されており、長穴124と長穴120の間に薄肉部122が形成されている。
長穴124と長穴120は平行であるため、薄肉部122は、肉厚が一定となり平板状となっている。
【0056】
このように構成されたフランジ61nを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65(図示せず)により、薄肉部122が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に圧迫されて塑性変形し、衝撃が吸収される。
【0057】
図18は、(a)は、フランジ61の他の例に係るフランジ61pを説明するための図であり、図18(b)は、ボルト穴14付近を拡大した図である。
フランジ61pの緩衝部は、円形断面を有するボルト穴14、ボルト65を薄肉部132に案内する案内部136、薄肉部132を形成するための貫通孔である長穴134、130から構成されている。
ボルト穴14は、ボルト65を挿通するための貫通孔である。ボルト穴14の内径は、ボルト65の外径より所定の値だけ大きく設定されており、ボルト穴14の内壁面とボルト65の外面部は所定のクリアランスが設定されてる。
【0058】
ボルト穴14の矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)には、案内部136を介して長穴134が連通している。
案内部136は、ラジアル方向に形成された間隙であり、この間隙の幅はボルト65の外径と同程度か、あるいは、ボルト65の外径より大きく、ボルト穴14の内径より小さく設定されている。
ロータ部24の回転方向に大きなトルクが発生し、フランジ61pが回転した場合、ボルト65は、案内部136を通過して薄肉部132の中央に導かれるようになっている。
シミュレーションは、ボルト65が薄肉部132の中央に衝突するという想定で行われており、案内部136を形成することによりボルト65をシミュレーションで想定した位置に導くことができる。
【0059】
長穴134の矢線C方向には、長穴134と平行に長穴130が形成されている。長穴134と長穴130の長手方向の長さは同じに設定されており、長穴134と長穴130の間に薄肉部132が形成されている。
薄肉部132は、長穴134と長穴130の長手方向の内壁面によって形成されており、厚さが一定で平板状の形状を成している。
薄肉部132の厚さは、シミュレーションと実験を行うことにより設定されている。
薄肉部132のフランジ61p径方向の長さは、例えば、少なくとも案内部136の塑性変形時にボルト65の側面が接触する長さとしている。
また、薄肉部132に生じる塑性変形が、ボルト65に接触する部分を越えた領域に広がる場合は、塑性変形が及ぶ領域を平板状に形成することができる。
【0060】
このように構成されたフランジ61pを用いた分子ポンプ1に、ロータ部24の回転方向の大きなトルクが発生して回転すると、ボルト穴14に挿通されたボルト65は、フランジ61pに対して矢線C方向に移動する。
このとき、ボルト65は、案内部136に案内されて薄肉部132の中央部に衝突する。薄肉部132は、この衝突により塑性変形し、衝撃を緩衝する。
このように、案内部136を設けてボルト65を導くことにより、ボルト65を薄肉部132のねらった位置(中央部)に衝突させることができ、薄肉部132をシミュレーションで計算した通りに塑性変形させることができる。
【0061】
図19は、薄肉部132の塑性変形強度とボルト65の破断強度の関係を説明するための図である。
図19(a)は、図18(a)のボルト穴14を示している。ここで、ボルト65の中心を原点Oとし、原点Oから、ロータ部24の回転方向と逆方向にx軸をとる。変形後の薄肉部132は点線で示してある。
分子ポンプ1が回転すると、ボルト65は、x=aで薄肉部132に接し、薄肉部132を変形させながらx=bに達する。
【0062】
図19(b)は、ボルト65の移動量を横軸にとり、ボルト65の移動に伴ってボルト65に作用する加重P(x)を縦軸にとったグラフである。
図19(b)に示したように、ボルト65には、x=aで加重P(x)が作用し始め、x=bに至るまで徐々に加重が増大する。この区間では主に薄肉部132が変形する。
ボルト65がx=bに達すると、薄肉部132は長穴130の側面に当たってこれ以上変形せず、以降はボルト65が変形する。ボルト65が変形しながら+x方向に移動する区間では、加重P(x)は、急激に増大し、破断点に達すると、ボルト65は破断する。
【0063】
本実施の形態では、薄肉部132の塑性変形強度がボルト65の破断強度よりも小さくなるように設定されているため、上述したように、薄肉部132の変形に要する加重P(x)よりも、ボルト65の破断に要する加重P(x)の方が大きくなる。そのため、ボルト65が破断する前に、薄肉部132を最大限変形させることができる。そのため、薄肉部132が変形し終える前にボルト65が破断することを防ぐことができ、薄肉部132が緩衝効果を十分に発揮することができる。
【0064】
図20は、薄肉部132の塑性変形強度を決定するパラメータを説明するための図である。
薄肉部132の塑性変形強度は、薄肉部132の厚さt、薄肉部132の長さL、フランジ61の厚さT、及びフランジ61の材質などで決定される。
これらのパラメータをシミュレーションソフトに入力すると、薄肉部132の塑性変形強度が自動的に算出される。
ボルト65の破断強度は予めわかっており、フランジ61の材質と厚さTは、予め決めてあるので、薄肉部132の厚さt、薄肉部132の長さLを変化させながら、条件を満たす範囲で薄肉部132の形状を設計する。
【0065】
次に、ボルト65に装着する座金(ワッシャ)について説明する。
以下では、フランジ61pとボルト65の間に装着する場合を例に取り説明するが、他の種類のフランジ61に対して適用することもできる。
図21(a)、(b)は、従来の座金について説明するための図である。図21(a)は平面図であり、図21(b)は断面図である。
座金141は、外径がボルト65のボルトヘッドの外径よりも大きく、内径がボルト65のねじ部の外径よりも大きいリング形状を有した円板部材である。
座金141は、ボルト65を挿通することによりフランジ61pに装着され、装着時は、ボルトヘッドによりフランジ61pの表面に押圧されている。
【0066】
このように構成された座金141は、薄肉部132の変形時にボルト65と共に矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に移動する。
この際、ボルト65は、薄肉部132から矢線C方向と逆方向に力を受ける。そのため、図21(b)に示したように、ボルト穴14の矢線C方向と逆側の座金端部142に、ボルト穴14に落ち込む方向に作用する力Fが作用する。
ところが、座金端部142は、ボルト穴14の上に位置しており、力Fに対向してボルト65を支える力を発生させることができない。
そのため、座金端部142は、ボルト穴14に落ち込んでボルト65が傾き、薄肉部132を均等に塑性変形させることが困難となる。
【0067】
図22(a)、(b)は、以上のような不具合を改善した座金を説明するための図である。図22(a)は、平面図であり、図22(b)は断面図である。
座金145は、矩形形状を有しており、フランジ61pの移動方向に長くなっている。
このため、ボルト65が矢線C方向(ロータ部24の回転方向と逆方向)に移動し、薄肉部132が塑性変形した場合でも、ボルトヘッドの中心から座金端部146までの何れかの位置で座金145がフランジ61pの表面に接しているため、ボルトヘッドのボルト穴14への落ち込みを防止することができる。
これにより、薄肉部132が塑性変形する際に、ボルト65が傾くことを抑制することができ、薄肉部132を均等に塑性変形させることができる。
そのため、よりシミュレーションに忠実に薄肉部132を塑性変形させることができる。
【0068】
なお、座金145の形状は、矩形形状に限らず、ボルト穴14の形状に応じて各種考えられる。
例えば、ボルト穴14に挿入したボルト65のボルトヘッドとフランジ61pとの間に介在するわけであるが、ロータ部24の衝突でケーシング16に生じるトルクによる衝撃によってボルト65が薄肉部132方向に移動した位置において、座金145の前記ボルトヘッドの中心からロータ部24の回転方向の座金端部146までの領域で、少なくともフランジ61pに接している部分が存在するようにすればよい。
【0069】
または、少なくとも、ボルト65の中心からボルト穴14のロータ部24の回転方向の端部までの距離に、ロータ部24の衝突でケーシング16に生じるトルクによる衝撃によってボルト65が薄肉部132方向に移動する移動量を加えた長さより、ボルト65の中心から座金145のロータ部24の回転方向の座金端部146までの距離が大きければよい。
あるいは、ボルト65の移動後に、ボルト65の中心からロータ部24の回転方向に向かって、座金145の幅がボルト穴14の幅よりも広いところがあればよい。
【0070】
以上に説明したように、緩衝機構を形成する薄肉部を平板状に構成することにより、シミュレーションが容易となり、また加工も容易である。
そのため、緩衝機構を備えた分子ポンプの開発コスト、製造コストを低減することができる。
更に、薄肉部の塑性変形強度をボルトの破断強度より小さくすることにより、緩衝機構の緩衝機能を最大限に引き出すことができる。
また、フランジの移動方向が長手方向となる座金を用いることにより、薄肉部の塑性変形時におけるボルトの傾きを抑制することができ、薄肉部を均一に塑性変形させることができる。これにより、シミュレーションによって得た良好な緩衝機能を実現することができる。
【0071】
以上、本発明の1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
真空装置や半導体装置などに装着する分子ポンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 分子ポンプ
5 ねじ溝スペーサ
6 吸気口
7 らせん溝
8 磁気軸受部
9 変位センサ
10 モータ部
11 シャフト
12 磁気軸受部
13 変位センサ
14 ボルト穴
15 溝
16 ケーシング
17 変位センサ
18 ステータコラム
19 排気口
20 磁気軸受部
21 ロータ翼
22 ステータ翼
23 スペーサ
24 ロータ部
25 ボルト
27 ベース
29 円筒部材
49 カラー
61 フランジ
62 フランジ
65 ボルト
66 ナット
71 薄肉部
72 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び排気口が形成された円筒形状のケーシングと、
前記ケーシング内に形成されたステータと、
前記ステータに対して同心に配設されたシャフトと、
前記シャフトを前記ステータに対して回転自在に軸支する軸受と、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと一体になって回転するロータと、
前記シャフトを駆動して回転させるモータと、
複数のボルト穴を備え、前記ケーシングの前記吸気口側に設けられ、前記ケーシングに作用する前記ロータの回転方向のトルクによる衝撃によって変形する緩衝部が設けられたフランジ部と、を具備し、
前記緩衝部は、全ての前記ボルト穴の近傍に設けられており、且つ、前記フランジ部の点対称の位置に設けられており、且つ、前記ボルト穴の、前記ロータの回転方向と逆方向に隣接して設けられた薄肉部を備えたことを特徴とする分子ポンプ。
【請求項2】
前記薄肉部は、前記ボルト穴の軸線方向に形成された切り欠き部を具備したことを特徴とする請求項1に記載の分子ポンプ。
【請求項3】
前記緩衝部は、前記ロータの回転方向に沿って、前記ロータのラジアル方向の幅が変化する長穴部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の分子ポンプ。
【請求項4】
前記長穴部は、ボルトの位置を位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の分子ポンプ。
【請求項5】
分子ポンプの吸気口を真空容器の排気口に接続するためのフランジであって、
前記フランジは、
前記フランジを固定するための複数のボルト穴と、
前記ボルト穴の、前記分子ポンプのロータの回転方向に隣接し、且つ、前記フランジの点対称の位置に設けられており、且つ、全てのボルト穴の近傍に設けられた薄肉部と、を備えたことを特徴とするフランジ。
【請求項6】
吸気口及び排気口が形成された円筒形状のケーシングと、
前記ケーシング内に形成されたステータと、
前記ステータに対して同心に配設されたシャフトと、
前記シャフトを前記ステータに対して回転自在に軸支する軸受と、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと一体になって回転するロータと、
前記シャフトを駆動して回転させるモータと、
前記ケーシングの前記吸気口側に設けられ、複数のボルト穴と、全ての前記ボルト穴の前記ロータの回転方向と逆方向に、平板状の薄肉部を隔てて形成された貫通孔と、を備えたフランジ部と、を具備し、
前記薄肉部は、前記フランジ部の点対称の位置に設けられたことを特徴とする分子ポンプ。
【請求項7】
前記ボルト穴は、前記ボルト穴に挿入したボルトを前記薄肉部の中央へ案内する案内部を備えたことを特徴とする請求項6に記載の分子ポンプ。
【請求項8】
前記薄肉部の塑性変形強度は、前記ボルト穴に挿入したボルトの破断強度よりも小さいことを特徴とする請求項6、又は請求項7に記載の分子ポンプ。
【請求項9】
前記ボルト穴に挿入したボルトのボルトヘッドと前記フランジ部との間に介在する座金を具備し、
前記ロータの衝突による衝撃によって前記ボルトが前記薄肉部方向に移動した位置において、
前記座金の、前記ボルトの中心から前記ロータの回転方向の端部までの領域で、少なくとも前記フランジ部に接している部分が存在することを特徴とする請求項6、請求項7、又は請求項8に記載の分子ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−287576(P2009−287576A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211622(P2009−211622)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2003−296803(P2003−296803)の分割
【原出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(508275939)エドワーズ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】