説明

分子腎毒性モデリング

【課題】 本発明は、遺伝子発現の全体的な変化の解明と既知の腎臓毒に曝された細胞又は組織中の毒性マーカーの同定に基づいている。医薬スクリーニング及び毒性アッセイにおいて、遺伝子が毒性マーカーとして使われる。本発明は、マイクロアレイ及びその他の固相プローブと共に使用するように設計された、毒に誘導された差次的な発現によって特徴づけられる遺伝子のデータベースを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001] 本出願は、2002年11月22日に出願された米国出願10/301,856の一部継続出願であり、それは2002年5月22日に出願された米国出願10/152,319の一部継続出願であり、米国特許法119条(e)項の下に、米国仮出願60/292,335(2001年5月22日出願);60/297,523(2001年6月13日出願);60/298,925(2001年6月19日出願);60/303,810(2001年7月10日出願);60/303,807(2001年7月10日出願);60/303,808(2001年7月10日出願);60/315,047(2001年8月28日出願);60/324,928(2001年9月27日出願);60/330,867(2001年11月1日出願);60/330,462(2001年10月22日出願);60/331,805(2001年11月21日出願);60/336,144(2001年12月6日出願);60/340,873(2001年12月19日出願);60/357,843(2002年2月21日出願);60/357,842(2002年2月21日出願);60/357,844(2002年2月21日出願);60/364,134(2002年3月15日出願);60/370,206(2002年4月8日出願);60/370,247(2002年4月8日出願);60/370,144(2002年4月8日出願);60/371,679(2002年4月12日出願);及び60/372,794(2002年4月17日出願)の利益を主張し、これらすべてを全体として関連付けにより本明細書に取り入れられる。
【0002】
(コンパクトディスクによる配列表提出)
[0002] 本明細書と同時に提出されたコンパクトディスクの配列表は、米国特許法施行規則第1.821条(c)項及び1.821(e)項の下、その全体として関連付けにより本明細書中に取り入れられる。3部の配列表(3枚のコンパクトディスクのそれぞれに1部)が提供される。コピー1及びコピー2は同一である。コピー1及びコピー2はCRFとも同一である。配列表の電子的複製物はそれぞれが2003年11月20日に作製され、ファイルサイズは2373KBである。ファイル名は下記の通りである:コピー1−g1508901wo.txt;コピー2−g1508901wo.txt;CRF−g1508901wo.txt。
【0003】
(発明の背景)
[0003] 細胞又は生物体に対する、化合物、薬剤又は環境汚染物質の有毒な影響力を評価する方法の必要性により、生物学的モニターとして生物体を利用する手法の開発につながってきた。これらの系統の最も単純であり、そして最も便利なものは、酵母やバクテリアのような単細胞の微生物を利用する。というのは、それらが最も簡単に維持され、そして操作されるからである。また、単細胞のスクリーニング系は、細胞に対する試験化合物の効果をモニターするために、たびたび表現型の簡単に検知できる変化を使用する。しかしながら、単細胞の生物は、それらが生体内変換を実行する能力を有しないので、複雑な多細胞の動物に対する多くの化合物の潜在的な効果を評価するための適当なモデルではない。
【0004】
[0004] 多細胞生物による化合物の生体内変換は、それらが曝される薬剤の全体的な毒性を決定する上での重要なファクターである。したがって、多細胞のスクリーニング系が、化合物の毒作用を検知するのに、好まれるか、又は要求される。しかしながら、毒性学スクリーニングツールとして多細胞生物を使用することは、酵母又はバクテリアの系で利用できるような、便利なスクリーニングメカニズム又はエンドポイントの欠如によって、かなり阻害されてきた。さらに、毒性学的予測系を作成する以前からの試みによっては、必要なモデリング情報を提供することができなかった(例えば、WO00/12760、WO00/47761、WO00/63435、WO01/32928及びWO01/38579)。
【0005】
(発明の概要)
[0005] 本発明は、既知の毒−特に、腎臓毒−に曝された組織若しくは細胞における、曝されない組織若しくは細胞と比較しての遺伝子発現の全体的な変化の解明、ならびに毒に曝すことにより、発現量に差のある個々の遺伝子の同定に基づく。
【0006】
[0006] 様々な側面で、本発明は化合物の少なくとも1つの毒作用を予測し、化合物の毒作用の進行を予測し、そして化合物の腎臓毒性を予測する方法を含む。また、本発明は、毒性反応の発症又は進行を調節する薬剤を同定する方法をも含む。さらに、化合物が細胞で調節する細胞経路を予測する方法も、また提供される。本発明は、タンパク質活性を調節する薬剤を同定する方法を含む。
【0007】
[0007] さらなる側面で、本発明は表1〜5N中の遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を含むプローブを含む。いくつかの例では、遺伝子はラット遺伝子である。また、以前に言及されたプローブのうちの少なくとも2つを含む固体支持体も提供される。また、本発明は、腎臓毒に曝された組織又は細胞試料において表1〜5N中の少なくとも2個の遺伝子を含む遺伝子セットの発現レベルを同定する情報を含んでいるデータベースをもつコンピューターシステムをも含む。
【0008】
(詳細な説明)
[0008] 多くの生物学的機能は、転写(例えば、開始の制御、RNA前駆体の供給、RNAプロセッシング等を通して)及び/又は翻訳制御を通して、様々な遺伝子の発現を変化させることによって達成される。例えば、細胞周期、細胞分化及び細胞死のような基本的生物学的プロセスは、遺伝子群の発現レベルにおける変化によって、しばしば特徴づけられる。
【0009】
[0009] 遺伝子発現の変化は、生物又は細胞に対する様々な化学物質、医薬、毒、薬剤及び汚染物質の影響とも関連する。例えば、薬剤に曝された後、機能的な腫瘍サプレッサー遺伝子の十分な発現の欠如、及び/又は癌遺伝子/癌原遺伝子の過剰発現によって、腫瘍形成又は細胞の過形成増殖がもたされるであろう(Marshall,Cell,64:313−326(1991);Weinberg,Science,254:1138−1146(1991))。このように、特定の遺伝子(例えば、癌遺伝子又は腫瘍サプレッサー)の発現レベルの変化は、特定の化合物に曝されたときの毒性の存在及び進行又はその他の細胞の応答の指標として役に立つであろう。
【0010】
[0010] 遺伝子発現の変化をモニターすることによって、医薬スクリーニング及び開発の間、ある種の利点が提供されるであろう。しばしば、医薬はそれが細胞に対して持つ他の作用を無視して、主要な標的と相互作用する能力についてスクリーンされる。これらの細胞への作用は、動物個体において毒性を引き起こすかもしれないし、そして、それは可能性のある医薬の開発と臨床への使用を妨げる。
【0011】
[0011] 本発明者は、有害な腎臓への影響を誘発する既知の腎臓毒に曝された動物から、組織を調べて、これらの化合物によって誘発される遺伝子発現の全体的な変化を確認した。遺伝子発現の全体的な変化は、発現プロフィル(一又は複数の遺伝子の発現レベル)の作成によって検出することができるが、試験化合物による毒性及び/又は毒性進行をモニターするのに用いることができる有用な毒性マーカーを提供する。また、これらのマーカーの一部は、様々な病気、若しくは生理的状態、病気の進行、医薬の効能及び薬物代謝をモニター又は検出するのに用いることができる。
【0012】
毒性マーカーの同定
[0012] 毒性の予測できる遺伝子発現の変化を評価及び同定するために、十分に特徴づけられた毒性を有する選択された化合物を使用した研究が本発明者らによって行われ、インビボ及びインビトロで曝されたときの変化した遺伝子発現が分類整理された。本発明の研究では、2つの異なる方法を使用して、毒性を予測するためのモデルおよびデータベースを作成した。1つのモデル、RMA/PLS(部分最小2乗アルゴリズムによる予測能力の評価を伴った、ロバストマルチアレイ平均アルゴリズムによる生データ解析)では、高用量の39種の化合物を既知の腎臓毒として選択したが、その化合物とは、アシクロビル、アドリアマイシン、アンホテリシンB、BEA(ブロモエチルアミン臭化水素酸塩)、カルボプラチン、四塩化炭素、セファロリジン、クロロホルム、シドフォビル、シプロフィブラート、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ダントロレン、ジフルニサル、エチレングリコール、ゲンタマイシン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヒドララジン、イホスファミド、インドメタシン、塩化リチウム、メロキシカム、メナジオン、塩化第二水銀、オルサラジン、ピューロマイシンアミノヌクレオシド、ペンタミジン、フェナセチン、プロピレンイミン、セムスチン、クロム酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、スルファジアジン、スラミン、タクロリムス、チオアセトアミド、およびバンコマイシンである。低用量のこれらの化合物、またはそれらを調製するビークルを、陰性対照として使用した。別の8種の化合物またはそれらを調製するビークルも陰性対照として選択したが、その化合物とは、セフタジジム(広域βラクタム抗生物質)、17−α−エチニルエストラジオール(合成エストロゲン)、ゲムフィブロジル(血清トリグリセリドおよびLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを上昇させる薬物)、フェノバルビタール(鎮静および抗コリン作動/鎮痙薬)、ストレプトマイシン(アミノグリコシド抗生物質)、タモキシフェン(抗エストロゲン、乳癌薬)、テモゾロミド(抗癌剤、特に脳腫瘍用)およびトランスプラチン(抗腫瘍薬)である。
【0013】
[0013] 他のモデル、MAS/LDA(線形判別分析による予測能力の評価を伴った、Affymetrix(登録商標)MAS4アルゴリズムによる生データ解析)では、高用量の下記の化合物を既知の腎臓毒として選択したが、その化合物とは、インドメタシン、ジフルニサル、コルヒチン、クロロホルム、ジクロフェナク、メナジオン、クロム酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、チオアセトアミド、バンコマイシン、アシクロビル、アドリアマイシン、AY−25329、ブロモエチルアミンHBr(BEA)、カルボプラチン、四塩化炭素、セファロスポリン、シドフォビル、シスプラチン、シトリニン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ゲンタマイシン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヒドララジン、イホスファミド、塩化リチウム、塩化第二水銀、パミドロネート、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、セムスチン、およびスルファジアジンである。陰性対照には、低用量のこれらの化合物およびこれらの化合物を調製するビークルが含まれる。別の陰性対照には、下記の化合物、すなわちカプトプリル、セフタジジム、フェノバルビタール、ストレプトマイシン、タモキシフェン、テモゾロミド、およびトランスプラチン、ならびにこれらを調製するビークルが含まれる。MAS/LDAモデルでは、下記のビークル、すなわちトウモロコシ油、メチルセルロース、トラガカントゴム、および生理食塩水を使用した。
【0014】
ラット腎臓毒素
[0014] セファロリジンは、セファロスポリンCに由来する、広スペクトルの両性の半合成セファロスポリンである。セファロスポリン類は、細菌細胞壁のペプチドグリカンの重合を阻害することによって細菌の増殖を妨げるβ−ラクタム含有抗生物質である。直鎖状グリカン鎖(これはN−アセチルグルコサミン及びN−アセチルムラミン酸から構成される)は、数アミノ酸の短い鎖が結合することによって相互に架橋される。この場合、その結合はトランスペプチダーゼの作用から生じる。セファロスポリン類は、このトランスペプチダーゼの活性を阻止することによって作用すると考えられている(Goodman&Gilman’s The Pharmalogical Basis of Therapeutics、第9版、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996、1074頁〜1075頁、1089頁〜1095頁)。
【0015】
[0015] セファロリジンは筋肉内投与され、気道、消化管及び尿路の感染症、ならびに軟組織、骨及び関節の感染症を治療するために使用される。顕著な副作用には、過敏性反応(アナフィラキシーショック、蕁麻疹及び気管支痙攣など)、消化器障害、カンジダ症、心臓血管毒性及び血液毒性、特に、造血系(赤血球、白血球及び血小板の形成を担う細胞)に対する毒性が含まれる。
【0016】
[0016] セファロリジンは、高用量では腎毒性をもたらすことがあるが、アミノグリコシド類及びポリミキシン類が有するほどの腎臓有害性を有していない。高用量のセファロリジンは、急性の尿細管壊死(Cecil Textbook of Medicine、第20版、XII部、586頁、J.C.Bennett及びF.Plaum編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、1996)又は薬物誘発の間質性腎炎を引き起こすことがあるが、これには、IgEレベルの上昇、発熱、関節痛及び斑点状丘疹の発疹が伴う。腎臓生検により、浮腫や主にリンパ球、単球、好酸球及び形質細胞での間質性炎症性病変が明らかにされる。小血管の血管炎が発症することがあり、これにより、壊死性の糸球体腎炎がもたらされる(G、Koren、「薬物及び化学物質の腎毒性の可能性。薬理学的基礎及び臨床的関連性」、Med Toxicol Adverse Drug Exp、4(1):59〜72、1989)。
【0017】
[0017] セファロリジンは、また、ミトコンドリアの呼吸及びアニオン性スクシナートの取り込み並びにキャリア媒介によるアニオン性基質の輸送を低下させることが示されている(Tuneら(1990)、J Pharmacol Exp Ther、252:65〜69)。腎臓組織に対する酸化的ストレス及び損傷の研究では、セファロリジンは、腎皮質において、還元型グルタチオン(GSH)を枯渇させ、酸化型グルタチオン(GSSG)を産生させた。この薬物はまた、グルタチオンレダクターゼを阻害し、マロンジアルデヒド及び共役ジエンを産生した(Tuneら(1989)、Biochem Pharmacol、38:795〜802)。セファロリジンは近位尿細管内に能動的に輸送されるが、内腔膜を通って尿細管液内にゆっくり輸送されるため、高濃度に蓄積し壊死を引き起こすことがある。壊死は、有機アニオン輸送の阻害剤を投与することによって防止することができるが、セファロリジンが腎臓の有機アニオン輸送系によって腎臓に出入りするので、そのような治療は逆効果になる場合がある(Tuneら(1980)、J Pharmacol Exp Ther、215:186〜190)。
【0018】
[0018] シスプラチン(Pt(NH(Cl))は、広スペクトルの抗腫瘍剤であり、精巣、卵巣、膀胱、皮膚、頭頸部及び肺の腫瘍を治療するために一般的に使用されている(PDR、第47版、754頁〜757頁、Medical Economics Co.,Inc.、Montvale、NJ、1993;Goodman&Gilman’s The Pharmalogical Basis of Therapeutics、第9版、1269頁〜1271頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。シスプラチンは細胞内に拡散し、そして非常に反応性の部位であるグアニンのNをアルキル化し、これにより、細胞に対して致死性である、DNAにおける鎖間及び鎖内の架橋を生じさせることによって主に機能する。この薬物は細胞周期に影響されないが、その作用はS期において最も顕著である。
【0019】
[0019] この薬物は主に腎臓によって身体から排出されるので、シスプラチン使用の最も頻発する副作用は腎毒性であり、その重篤度は、投薬量及び治療期間の増大とともに大きくなる。他の副作用には、尿細管損傷、骨髄抑制(循環する血小板、白血球及び赤血球の数の減少)、悪心及び嘔吐、聴器毒性、血清電解質の乱れ(おそらくは尿細管損傷から生じると考えられる、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム及びリン酸塩の濃度低下)、尿素及びクレアチニンの血清中濃度の上昇、そして末梢神経障害が含まれる。
【0020】
[0020] ラットに対するある研究(Nonclercqら(1989)、Exp Mol Pathol、51:123〜140)では、シスプラチン又はカルボプラチンの投与により、腎臓傷害が誘発されたが、カルボプラチンの方が、シスプラチンよりも損傷が少なかった。最も顕著な傷害は、近位尿細管の直線部分に対してであった。
【0021】
[0021] 別のラット研究(Goldsteinら(1981)、Toxicol Appl Pharmacol、60:163〜175)では、シスプラチンが注射された動物は、薬物投薬量の増大とともに食物摂取量が低下した。2日目に、高用量群(10〜15mg/kg)はBUNが6倍又は7倍上昇した。4日目に、5mg/kg群でBUNの上昇が認められた。低用量群(2.5又は5mg/kg)において、3日目〜4日目に、尿のモル浸透圧濃度の減少とともに尿量の増加が観測された。ラットに対する別の実験(Agarwalら(1995)、Kidney Int、48:1298〜1307)では、シスプラチン処理により血清クレアチニンレベルが上昇した−それは3日目から始まり、研究期間中進行した−ことが示されている。
【0022】
[0022] ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN、C2229)は、ストレプトミセス・アルボニゲル(Streptomyces alboniger)によって産生される抗生物質であり、タンパク質合成を阻害し、ヒトの微小変化型ネフローゼ症候群を模倣するために実験的にラットに対して一般的に使用されている。ある研究では、PAN注射ラットは血清非エステル型脂肪酸レベルが増大し、一方で、血清アルブミン濃度が負の影響を受けたことが示された(Sasakiら(1999)、Adv Exp Med Biol、467:341〜346)。
【0023】
[0023] 別のラット研究では、アデノシンデアミナーゼ阻害剤により、PANの腎毒性が防止された。このことは、PANの毒性がアデノシン代謝に関連することを示している(Nosakaら(1997)、Free Radic Biol Med、22:597〜605)。別の研究グループは、PANが、ラットに投与されたとき、タンパク尿(尿中のタンパク質の量が異常な状態)、腎臓損傷−例えば、糸球体上皮細胞の小疱形成、糸球体基底膜からの細胞の局所的な分離−、及び有足細胞の融合をもたらしたことを示した(Olsonら(1981)、Lab Invest、44:271〜279)。ラットに対する別の研究では、PANの投与により、糸球体上皮細胞のアポトーシスが用量依存的かつ時間依存的に誘導された(Sanwalら(2001)、Exp Mol Pathol、70:54〜64)。
【0024】
[0024] PAN注射ラットを用いたある研究(Koukouritakiら(1998)、J Investig Med、46:284〜289)では、パキシリン、局所接着キナーゼ(focal adhesion kinase)及びRhoのタンパク質(これらはすべて、細胞外基質に対する細胞接着を調節している)の発現の変化が調べられた。パキシリンのレベルは一貫して増大し、PAN注射の9日後にピークに達し、その後、タンパク尿が解消された後でさえ上昇したままであった。局所接着キナーゼ及びRhoの発現の変化はいずれも観測されなかった。
【0025】
[0025] BEA(CBrN.HBr)は、乳頭壊死及び腎皮質損傷(これはヒトの鎮痛薬腎症に類似する)を誘発するために実験的にラットに対して広く使用されている。ラットにおけるBEA誘発の乳頭壊死は、最終的には巣状糸球体硬化症及びネフローゼ性タンパク尿の発症をもたらす(Garberら(1999)、Am J Kidney Dis、33:1033〜1039)。低用量(50mg/kg)の場合でさえ、BEAは頂部の限定的な腎乳頭壊死を誘発し得る(Bachら(1983)、Toxicol Appl Pharmacol、69:333〜344)。オスのWistarラットにおいて、100mg/kgで投与されたBEAは、腎乳頭壊死を24時間以内に生じさせることが示された(Bachら(1991)、Food Chem Toxicol、29:211〜219)。さらに、Bachらは、尿トリグリセリドの増加が認められること、そしてオイルレッドO脂肪染色により、集合管の細胞及び壊死領域に隣接する過形成性尿路上皮細胞において脂肪沈着が認められたことを示した。
【0026】
[0026] コハク酸塩及びクエン酸塩の濃度がBEA処置ラットの尿では著しく低下することもまた示されている(Holmesら(1995)、Arch Toxicol、70:89〜95)。さらに、BEA処置は、グルタル酸及びアジピン酸による酸性尿を誘発したが、それはアシルCoAデヒドロゲナーゼの酵素不足の徴候である。同じ研究では、尿中のタウリンレベルが砂漠ネズミ及びBEA処置の砂漠ネズミで調べられ、肝毒性を示す尿中タウリンレベルの上昇が認められた。
【0027】
[0027] BEA処置ラットに対する別の研究では、腎乳頭におけるクレアチン濃度の上昇、そして肝臓、腎皮質及び腎髄質におけるグルタル酸濃度の上昇が処置後6時間に認められることが示された(Garrodら(2001)、Magn Reson Med、45:781〜790)。
【0028】
[0028] 1960年代初期に発見、精製されたゲンタマイシンは、広スペクトルのアミノグリコシド系抗生物質であり、好気性グラム陰性細菌を殺し、感染症(例えば、尿路、肺及び髄膜の感染症)を治療するために一般的に使用されている。アミノグリコシドに典型的なように、この化合物は、グリコシド結合によって中央のアミノサイクリトール環に結合している2つのアミノ糖の環から構成されている。アミノグリコシド類は、経口投与では吸収が悪いが、腎臓によって迅速に排出される。その結果、聴器毒性及び神経筋遮断もまた生じ得るが、腎毒性が主要な副作用である。ゲンタマイシンは、細菌のタンパク質合成を妨害することによって作用する。この化合物は、多くの他のタンパク合成阻害剤である抗菌剤−これらは、単に静菌的である−よりも強力であり、身体に対する作用も同様に、より激しい(Goodman&Gilman’s The Pharmalogical Basis of The rapeutics、第9版、1103頁〜1115頁、J.G.Hardmanら編、McGrawHill、New York、1996)。
【0029】
[0029] アミノグリコシドは迅速に作用し、殺菌速度は濃度依存的である。残留殺菌活性は、血清中濃度が最小阻止濃度(MIC)未満に低下した後も続き、持続期間もまた投与量/濃度に依存する。残留活性により、患者によっては1日1回の投与が可能になる。これらの薬物は、外膜にあるポリンチャンネルを通って細菌細胞内に拡散し、その後、内側が負である膜電位によって細胞質膜を通って輸送される(Goodman及びGilman、同上)。
【0030】
[0030] 腎臓損傷は腎不全に発展し得るが、ゲンタマイシンが近位曲尿細管に対して−特にS1セグメント及びS2セグメント−攻撃することによるものである。しかし、壊死は、多くの場合、斑点状で局所的である(Shanleyら(1990)、Ren Fail、12:83〜87)。Shanleyらによるラットでの研究では、表在ネフロンの初期セグメントは壊死に対して著しく耐性であるが、表在ネフロンは傍髄質部ネフロンよりも、壊死に対する感受性が高いことが示された。
【0031】
[0031] ゲンタマイシン処置に対する報告された酵素的変化は、タンパク質合成及びα−メチルグルコース輸送の低下とともに、N−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼ及びアルカリホスファターゼの活性上昇、ならびに、スフィンゴミエリナーゼ、カテプシンB、Na/K−ATPase、乳酸デヒドロゲナーゼ及びNADPHチトクロームCレダクターゼの活性低下である(Monteilら(1993)、Ren Fail、15:475〜483)。尿中のγ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性の上昇もまた報告されており(Kocaogluら(1994)、Arch Immunol Ther Exp(Warsz)、42:125〜127)、尿中のこの酵素の定量は、ゲンタマイシンの毒性をモニターするための有用なマーカーである。
【0032】
[0032] ゲンタマイシン処置から生じる腎臓症状の1つの原因は、活性酸素代謝産物の生成である。ゲンタマイシンは、活性酸素種の産生を増強し得ることがインビトロ及びインビボの両方で示されている。鉄(フリーラジカル形成を触媒するのに必要な補因子の1つ)がチトクロームP450によって供給される(Baligaら(1999)、Drug Metab Rev、31:971〜997)。
【0033】
[0033] ラットにおける遺伝子送達実験において、ヒトカリクレイン遺伝子がアデノウイルスベクターにクローン化され、その後、コンストラクトがゲンタマイシン製剤と同時投与されたが、この実験では、カリクレインはゲンタマイシン誘発の腎毒性を防ぎ得ることが示された。著しく増加した腎血流、糸球体ろ過速度及び尿流量が認められ、尿細管損傷、細胞壊死及び管腔蛋白円柱の低減も認められた。カリクレイン遺伝子の送達はまた、血中尿素窒素レベルの低下、ならびに尿中キニンレベル及び亜硝酸塩/硝酸塩レベルの上昇を生じさせた。この研究は、組織カリクレイン−キニン系が、ゲンタマイシンによる腎毒性の誘発期間中に乱される重要な経路であり得るという証拠を提供している(Murakamiら(1998)、Kidney Int、53:1305〜1313)。
【0034】
[0034] イホスファミドはアルキル化剤で、膀胱癌、子宮頸癌及び肺癌を治療するために化学療法において一般的に使用されている。イホスファミドは肝臓で水酸化されることによりゆっくり活性化され、トリアゼン誘導体である5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)イミダゾール−4−カルボキサミド(DTIC)が形成される(Goodman&Gilman’s The Pharmacolical Basis of Therapeutics、第9版、1235頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。チトクロームP450はN−脱メチル化反応によってDTICを活性化し、アルキル化成分のジアゾメタンをもたらす。その後、これらの活性代謝物はDNAを架橋させることができ、それによって増殖停止及び細胞死をもたらす。イホスファミドは治療的に有用であるが、腎毒性、尿毒性及び中枢神経毒性をも伴う。
【0035】
[0035] 別の治療薬であるメスナが、多くの場合、腎臓及び膀胱の問題を生じさせないために同時に投与されている(Brock及びPohl(1986)、IARC Sci Publ、78:269〜279)。しかし、メスナがイホスファミドと一緒に投与されたとしても、患者には、尿細管毒性が生じ、そしてアラニンアミノペプチダーゼ及びN−アセチル−β−D−グルコサミニダーゼの尿中レベルの上昇が見出された事例が報告されている(Gorenら(1987)、Cancer Treat Rep、71:127〜130)。
【0036】
[0036] ある研究では、進行した軟組織肉腫を治療するためにイホスファミドが投与されていた42名の患者が調べられた(Stuart−Harrisら(1983)、Cancer Chemother Pharmacol、11:69〜72)。イホスファミドの投薬量は5.0g/m〜8.0g/mであり、すべての患者には、イホスファミドの負の作用をうち消すためにメスナが与えられた。そのような場合でさえ、悪心及び嘔吐が患者のすべてに共通した。42名の患者のうち、7名が腎毒性を発症し、の内の2名が致命的な腎不全に進行した。
【0037】
[0037] 別の臨床試験において、18名の神経芽細胞腫患者で尿細管機能がモニターされた(Caronら(1992)、Med Pediatr Oncol、20:42〜47)。尿細管毒性が患者の少なくとも12名に生じ、そのような患者の内7名が最終的にはファンコーニ症候群(Debre−de Toni−Fanconi syndrome)を発症したが、3つの症例でファンコーニ症候群は可逆的であった。
【0038】
[0038] ファンコーニ症候群は、腎臓の近位尿細管の機能障害を特徴とする疾患である。ファンコーニ症候群は、アミノ酸尿、腎性糖尿及び高リン酸塩尿症を伴う。イホスファミドは、ファンコーニ症候群を誘発するために実験的にラットに対して使用されることが多い。ある研究では、80mg/kgのイホスファミドを投与されたラットは、体重及びヘマトクリットが、コントロールのラットよりも著しく低下した(Springate及びVan Liew(1995)、J Appl Toxicol、15:399〜402)。さらに、これらのラットは、低度の糖尿、タンパク尿及びリン酸塩尿症を有した。マウスでの研究では、イホスファミドにより、血清クレアチニンレベル及び尿素レベルの上昇が誘発され、クレアチニンのクリアランス速度が低下した(Badary(1999)、J Ethnopharmacol、67:135〜142)。
【0039】
[0039] シクロホスファミドはナイトロジェンマスタード型のアルキル化剤で、分裂中の細胞に対して非常に毒性であり、非ホジキンリンパ腫やバーキットリンパ腫などの悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、神経芽細胞腫、卵巣腺癌及び網膜芽細胞腫、ならびに乳癌及び肺癌を治療するために化学療法において一般的に使用されている(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1234頁、1237頁〜1239頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996;Physicians Desk Reference、第47版、744頁〜745頁、Medical Economics Co.,Inc.、Montvale、NJ、1993)。さらに、シクロホスファミドは、骨髄移植や臓器移植後における免疫抑制剤として使用されている。シクロホスファミドは、ある種のタイプの癌に対して治療上有用であるが、心臓毒性、腎毒性(尿細管壊死を含む)、出血性膀胱炎、骨髄抑制、肝毒性、男性生殖系及び女性生殖系の機能障害、間質性肺炎、ならびに中枢神経系の毒性をも伴う。
【0040】
[0040] シクロホスファミドは、肝臓において一旦、チトクロームP450混合機能オキシダーゼ系によって水酸化され、活性代謝物のホスホルアミドマスタード及びアクロレインを産生し、これらにより、DNAが架橋され、増殖停止及び細胞死がもたらされる。しかし、これらの代謝産物は、毒性が高く、これらの代謝産物が輸送される他の器官(腎臓など)において副作用を引き起こす。アクロレインは、尿中への分泌によって腎臓から除かれ、このために、膀胱炎(膀胱の炎症)、多くの場合には出血性膀胱炎が生じる。
【0041】
[0041] 腎臓において、シクロホスファミドは遠位尿細管の壊死を誘導する。シクロホスファミドは、抗癌薬のイホスファミドと構造的に類似しているが、近位尿細管に対する損傷を誘導せず、またファンコーニ症候群をも誘導しない(Rossiら(1997)、Nephrol Dial Transplant、12:1091〜1092)。
【0042】
[0042] シクロホスファミド治療を受けている患者のある臨床試験では、この薬物に由来する腎臓損傷は、この薬物の生体内変換速度の低下及び腎臓クリアランスの低下をもたらし、これにより毒性のあるアルキル化代謝産物の発生をもたらすことが示されている(Wagnerら(1980)、Arzneimittelforschung、30:1588〜1592)。
【0043】
[0043] 悪性リンパ腫及び乳癌に罹患している患者の研究では、治療で使用されたシクロホスファミドの用量と、患者の尿中のアルキル化代謝産物の濃度との間に直接的な関連性が見出された。用量の上限は、薬物が代謝され得る速度によってというよりも、毒性副作用の性質及び程度によって決定された(Saulら(1979)、J Cancer Res Clin Oncol、94:277〜286)。毒性であるのはアクロレイン自体であり、シクロホスファミドのアルキル化活性ではない(Brockら(1979)、Arzneimittelforschung、29:659〜661)。ラットに対する研究ではまた、腎臓からのアクロレインが出血性膀胱炎を生じさせ得ること、及びアクロレイン濃度が膀胱炎の頻度及び重篤度に直接的に関連することが示された(Chijiwaら(1983)、Cancer Res、43:5205〜5209)。
【0044】
[0044] カルボプラチンは白金配位錯体で、抗腫瘍剤として化学療法において一般的に使用されている。化学療法剤として、カルボプラチンは、シスプラチンと同様に作用する。カルボプラチンは拡散によって細胞内に入り、細胞内での加水分解により活性化される(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1270頁〜1271頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。活性化されると、白金錯体はDNAと反応することができ、これにより架橋を生じさせることができる。カルボプラチンとシスプラチンとの違いの1つは、カルボプラチンの方が臨床上より寛容なことである。シスプラチンに伴う副作用のいくつかは一例えば、悪心、神経毒性及び腎毒性など−、カルボプラチンが投与された患者ではより低頻度で見られる。いくつかの他の副作用には、低マグネシウム血症及び低カリウム血症がある(Kintzel(2001)、Drug Saf、24:19〜38)。
【0045】
[0045] オスのWistarラットに対する1つの研究において、カルボプラチンが65mg/kgの投薬量で投与された(Wolfgangら(1994)、Fundam Appl Toxicol、22:73〜79)。カルボプラチンによる処置の後、CGT排出が約2倍増大した。
【0046】
[0046] 別の研究では、ビンデシン及びマイトマイシンCとの組み合わせで与えられたときの、シスプラチンとカルボプラチンとが比較された(Jelicら(2001)、Lung Cancer、34:1〜13)。この研究では、ビンデシン及びマイトマイシンCと一緒にカルボプラチンを投与した場合、シスプラチン投与の場合よりも血液学的に毒性が高かったが、全体的な生存性に関しては優れていることが示された。
【0047】
[0047] AY−25329は、軽度の肝毒性を有し、ネフローゼを誘導することが示されているフェノチアジン系化合物の一つである。その構造を下記に示す。
【0048】
【化1】

【0049】
[0048] フェノチアジン系化合物は向精神薬の一分類である。フェノチアジン系化合物は、統合失調症、妄想症、躁病、小児の多動性、老化のいくつかの形態、及び不安を治療するために使用されている(http://www.encyclopedia.com/articlesnew/36591.html)。これらの薬物の長期使用に伴ういくつかの副作用には、血圧の低下、パーキンソン症候群、運動活動の低下、及び視覚障害がある。
【0050】
[0049] クロルプロマジン(トラジン又はラルガクチル)は脂肪族フェノチアジン系化合物で、統合失調症及び躁うつ病を治療するために広く使用されている。プロラクチンの分泌がクロルプロマジン服用中に増大し、乳汁漏出及び女性化乳房がともにこの薬物に伴っている(http://www.mentalhealth.com/drug/p30−c01.html)。トリフルオペラジンは、別の処方されるフェノチアジン系化合物である。トリフルオペラジンは、不安治療のために、悪心及び嘔吐を防止するために、そして精神病障害を管理するために使用されている(http://www.mentalhealth.com/drug/p30−s04.html)。この薬物に伴う負の副作用には、肝臓損傷、骨髄抑制及びパーキンソン症候群がある。
【0051】
[0050] アシクロビル(9−[(2−ヒドロキシエチル)メチル]グアニン、ゾビラックス(登録商標))は抗ウイルス性のグアノシンアナログで、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)の感染症を治療するために使用されている。アシクロビルは、グアニンを取り込むヌクレオシドトランスポーターによって細胞内に輸送され、ウイルスによりコードされるチミジンキナーゼ(TK)によってリン酸化される。他のキナーゼは、アシクロビルを活性化形態の二リン酸形態及び三リン酸形態に変換するが、それらがウイルスDNAの重合を妨げる。アシクロビル三リン酸はウイルスポリメラーゼに対してdGTPと競合するが、アシクロビルが一リン酸型として優先的に取り込まれる。その結果、鎖の伸長が停止する(Fields Virology、第3版、Fieldsら編、436頁〜440頁、Lippincott−Raven Publishers、Philadelphia、1996;Cecil Textbook of Medicine、第20版、第XII部、1742頁、J.C.Bennett及びF.Plum編、W.B.Saunders Co.、Philadelphia、1996)。
【0052】
[0051] アシクロビルの薬物動態は、アシクロビルが約3時間の有用な半減期を有すること、及びその大部分がほとんど変化を受けないまま尿に排出されることを示している(Brigdenら(1985)、Scand J Infect Dis Suppl、47:33〜39)。驚くべきことではないが、アシクロビル治療の最も高頻度の副作用は、腎臓の様々な部分に対する損傷、特に尿細管に対する損傷である。結晶尿又は尿細管の内腔における結晶の沈殿(この場合、アシクロビルの結晶)が生じ得る(Fogazzi(1996)、Nephrol Dial Transplant、11:379〜387)。もし、この薬物が集合尿細管内で結晶化すると、閉塞性腎障害及び尿細管壊死が生じ得る(Richardson(2000)、Vet Hum Toxicol、42:370〜371)。罹患患者の生検組織は、刷子縁の喪失、裏打ち細胞の平板化及び病巣の核の喪失とともに近位尿細管及び遠位尿細管の拡張を示している(Beckerら(1993)、Am J Kidney Dis、22:611〜615)。
【0053】
[0052] シトリニンは、真菌であるペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)によって産生されるカビ毒(マイコトキシン)で、食品及び飼料の天然混入物である(Bondy及びArmstrong(1998)、Cell Biol.Toxicol.、14:323〜332)。マイコトキシンは免疫系に対して負の作用を有し得ることが知られており、しかしながら、シトリニンで処置された動物は、抗原に対する応答を刺激することが示されている(Sharma(1993)、J.Dairy Sci.、76:892〜897)。シトリニンは既知の腎臓毒であり、ニワトリ、子ガモ及び七面鳥などの鳥類では、腎臓変性のために、下痢、食物消費の増大、及び体重増加の低下を生じさせる(Mehdiら(1981)、Food Cosmet.Toxicol.、19:723〜733;Mehdiら(1984)、Vet.Pathol.、21:216〜223)。七面鳥及び子カモでの研究では、両方の種が、肝臓病変及びリンパ性病変の発生を伴うネフローゼを示した(Mehdiら、1984)。
【0054】
[0053] ある研究では、シトリニンが、ウサギに単回経口用量として120mg/kg又は67mg/kg投与された(Hanikaら(1986)、Vet.Pathol.、23:245〜253)。シトリニンで処置されたウサギは、凝縮したミトコンドリア及びゆがんだミトコンドリア、遠位尿細管の髄質及び直皮質の拡張した細胞間隙、ならびに嵌合プロセスの崩壊などの腎臓変化を示した。別のウサギ研究では、シトリニン投与のウサギは高窒素血症及び代謝性アシドーシスを示した(Hanikaら(1984)、Food Chem.Toxicol.、22:999〜1008)。腎不全が、低下したクレアチニンクリアランス、ならびに増大した血中尿素窒素レベル及び血清クレアチニンレベルによって示された。
【0055】
[0054] 従来、水銀は、医薬品、特に、防腐剤、抗菌剤、皮膚軟膏、利尿剤及び緩下剤の重要な成分であった。水銀は、より効果的で、より特異的で、かつより安全な化合物によって大部分が置き換えられており、これにより、薬物により引き起こされる水銀中毒が希になっているが、産業界では依然として広く使用されている。職業的暴露、及び公共水源への水銀放出などの環境汚染に由来する中毒は、野生動物、家畜動物及び人間が影響を受けるので、依然として問題である。
【0056】
[0055] その脂溶性及び血液脳関門透過能のために、水銀の最も危険な形態は有機水銀であり、その最も一般的なものは、作物の種子を殺菌するために使用されている殺菌剤であるメチル水銀である。水銀で汚染された種子が植えられ、作物が収穫され、消費されたときに、水銀中毒に由来する大規模な疾患及び死亡を伴う事故が、多数の国において報告されている。有機水銀中毒の別の汚染源は、反応生成物としてメチル水銀を形成する、水銀触媒などの無機水銀を含有する産業化学物質から生じる。この廃棄物が、貯水池、湖、河川又は湾に放出された場合、付近の住民(特に、地元の魚を食する人々)が病気になり得るか、又は死亡し得る。
【0057】
[0056] 無機塩の塩化第二水銀HgClならびに他の第二水銀塩は、その第一水銀形態よりも刺激性が高く、毒性が高い。今日、塩化第二水銀は、漂白剤、電子工学装置、プラスチック、殺菌剤及び歯科用アマルガムを製造するために産業界で使用されている。ヒトへの暴露の主要な原因は、河川への産業的廃棄である(Goodman&Gilman’s:The Pharmacological Basis of Theraputics、第9版、1654頁〜1659頁、McGraw Hill、New York、1996)。
【0058】
[0057] 無機水銀塩が摂取されたとき、約10%の第二水銀イオンが消化管によって吸収され、Hg2+の大部分が粘膜表面に結合したままになり得る。最大濃度のHg2+が腎臓で見出される。これは、Hg2+が、腎臓において、他の組織よりも長く保持されるからである。従って、腎臓は、無機水銀中毒による最も有害な影響を受ける器官である。近位尿細管は、尿細管の壊死が生じる主要な損傷部位である。水銀は主に近位尿細管のS2及びS3部位に影響を及ぼすが、高レベルの水銀暴露では、尿細管のS1部分及び遠位部分もまた損傷を受ける。ネフロンのこれらの領域は、水銀の取り込みに関与する酵素(γ−グルタミルトランスペプチダーゼなど)及び輸送タンパク質(基底外側の有機アニオン輸送系)を含有するので影響を受ける(Diamondら(1998)、Toxicol Pathol、26:92〜103)。
【0059】
[0058] NMRスペクトルで検出され得る水銀毒性の尿マーカーには、乳酸、酢酸及びタウリンのレベルの上昇、ならびに馬尿酸のレベルの低下が含まれる(Holmesら(2000)、Chem Res Toxicol、13:471〜478)。Hg2+に曝された腎臓における遺伝子発現の既知の変化には、熱ショックタンパク質hsp72及びグルコース調節タンパク質grp94のアップレギュレーションが含まれる。組織壊死の程度及びこれらのタンパク質の発現レベルは、水銀(Hg2+)量及び水銀(Hg2+)暴露時間の長さの両方に比例しており、hsp72は腎皮質に蓄積し、grp94は腎髄質に蓄積する(Goeringら(2000)、Toxicol Sci、53:447〜457)。
【0060】
[0059] インドメタシンは非ステロイド性の抗炎症、解熱鎮痛薬であり、リウマチ様関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎及び痛風を治療するために一般に使用される。本薬剤は、プロスタグランジン合成の強力な阻害剤として作用する。それは、アラキドン酸のプロスタグランジンへの変換に必要なシクロオキシゲナーゼ酵素を阻害する(PDR 第47版,Medical Economics Co.,Inc.,Montvale,NJ,1993;Goodman & Gilman’s The Pharmalogical Basis of Therapeutics 第9版,J.G.Hardman等 eds.,1074頁〜1075頁,1089頁〜1095頁,McGraw Hill,New York,1996;Cecil Textbook of Medicine,第20版,part XII,772頁〜773頁,805頁〜808頁,J.C.Bennett and F. Plum Eds.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,1996)。
【0061】
[0060] インドメタシン治療の最も頻繁な副作用は胃腸障害であり、例えば、出血、潰瘍及び穿孔などであるが、特に長期投与後に腎毒性も生じ得る。ラットでは、出血及び壊死が腎乳頭及び脳弓において認められ、太い上行脚(mTALs)への損傷も認められ、また、血尿、タンパク尿及びネフローゼ症候群を伴う間質性腎炎がヒトで報告されている。腎臓プロスタグランジンが腎臓還流に重要な役割を果たしているため、腎機能障害に罹患している患者は腎血流減少を発症する危険にさらされている(Heyman等(1997)Kidney Int 51:653−663)。
【0062】
[0061] ジフルニサルは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)で、サリチル酸のジフルオロフェニル誘導体である(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、631頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。ジフルニサルは、骨関節炎及び肉離れの治療に最も頻繁に使用されている。NSAIDは、鎮痛作用、解熱作用及び抗炎症作用を有しているが、肝毒性がNSAID治療の有害な副作用であることが知られている(Masubuchiら(1998)、J.Pharmacol.Exp.Ther.、287:208〜213)。ジフルニサルは、他のNSAIDよりも毒性が低いことが知られているが、それにもかかわらず、長期間の投薬では、血小板又は腎臓の機能に対する有害な作用をもたらし得る(Bergamoら(1989)、Am.J.Nephrol.、9:460〜463)。ジフルニサル治療に伴う他の副作用には、下痢、めまい、眠気、ガス又は胸やけ、頭痛、悪心、嘔吐及び不眠症がある(http://arthritisinsight.com/medical/meds/dolobid.html)。
【0063】
[0062] Masubuchiらは、18種類の酸性NSAIDの肝毒性を比較した。その研究では、ジフルニサル(500μMの濃度で投与された)は、対照サンプルと比較して、ラット肝細胞におけるLDH漏出(細胞傷害に対するマーカー)を増大させることが示された。さらに、ジフルニサルによる処置は細胞内ATP濃度の低下をもたらした。
【0064】
[0063] ある研究では、2週間の期間にわたって患者に与えられたときのジフルニサル及びイブプロフェンの作用が比較された(Muncie及びNasrallah(1989)、Clin.Ther.、11:539〜544)。イブプロフェン群及びジフルニサル群の両方で、2名の患者が腹部痙攣を訴えた。この研究では、短期間の使用でさえ、胃腸へ何らかの影響が生じ得ることが示された。この研究で使用された毒性用量は、著しい胃潰瘍をラットにおいて誘発しない用量として選ばれていた。高投与量のジフルニサルが与えられたラット群では、クレアチニンの濃度が増大し、それは腎臓傷害と一致しているが、脱水もまたクレアチン濃度の増大を生じさせ得る。
【0065】
[0064] シドフォビル(ビスタイド(登録商標))は、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、ポックスウイルス及びヘパドナウイルスなどのウイルス感染症の治療において使用される抗ウイルス性のシトシンアナログである(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1216頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。シドフォビルはまた、ヘルペスウイルスの一種であるサイトメガロウイルス(CMV)感染の治療にも有用である。
【0066】
[0065] シドフォビルが投与されている患者において認められるいくつかの軽度の副作用には、悪心、嘔吐及び発熱がある。この薬物の最も重篤な報告された副作用は腎毒性である(http://tthivclinic.com/cido.html)。腎毒性の脅威に応答して、シドフォビルが投与されている患者はその腎臓を治療前に調べることが必要であり、そのような患者は、腎臓問題の早期症状について治療期間中モニターされなければならない。さらに、シドフォビルは、腎毒性の危険性の低減を助けるために水分と一緒に与えられる(http://www.aidsinfonyc.org/network/simple/cido.html)。プロベネシド(腎臓を保護することを助ける薬物)が、通常、同時に投与される(Lalezari及びKuppermann(1997)、J.Acquir.Immune Defic.Syndr.Hum.Retrovirol.、14:S27〜31)。
【0067】
[0066] ある研究において、CMVの治療におけるシドフォビルの安全性及び効力が比較された(Lalezari及びKuppermann(1998)、J.Acquir.Immune Defic.Syndr.Hum.Retrovirol.、17:339〜344)。約40%の患者で用量依存的な無症候性タンパク尿を示し、25%の患者で血清クレアチニンレベルの上昇を示した。
【0068】
[0067] パミドロネート(アレディア(登録商標))は、骨の再吸収を阻害し骨をより安定にするために臨床的に使用されているビスホスホネート薬である。パミドロネートは、ある種の癌とともに生じる高カルシウム血症(血中カルシウムが非常に多くなる)を治療するために使用される。典型的には静脈内注射により投与されるが、パミドロネートは、疾患が骨に広がっている乳癌又は多発性骨髄腫の患者に使用されることが多い。パミドロネート治療に関連するいくつかの副作用には、腹部痙攣、悪寒、錯乱、発熱、筋肉痙攣、悪心、筋肉の硬直、及び注射部位の腫れがある(http://www.nursing.uiowa.edu/sites/PedsPain/Adjuvants/PAMIDRnt.html)。パミドロネートは腎臓から排出されるため、腎臓に問題を有する患者は、パミドロネートの使用が禁止されることがある。
【0069】
[0068] ある研究では、ラット及びマウスに、様々な用量の標識されたパミドロネートが投与された(Cal及びDaley−Yates(1990)、Toxicology、65:179〜197)。パミドロネート処置は、著しい体重減少及びクレアチニンクリアランスの低下をもたらした。形態学的研究により、刷子縁膜の喪失及び限局性の近位尿細管壊死の存在が示された。
【0070】
[0069] 別の研究では、1979年〜1998年の間に発表された論文を検討することによって悪性腫瘍の高カルシウム血症の様々な治療の耐容性が比較された(Zojerら(1999)、Drug Saf.、21:389〜406)。この著者らは、血清クレアチニンレベルの上昇、悪心及び発熱が、パミドロネートなどのビスホスホネートを用いた処置の後で報告されることを見出した。
【0071】
[0070] Markowitzら(2001、J.Am.Soc.Nephrol.、12:1164〜1172)は、パミドロネート処置と虚脱性の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)との間に相関が存在するかどうかを明らかにすることを試みた。この著者らは、虚脱性FSGSを発症した7名の患者の履歴を調べ、共通した唯一の薬物治療がパミドロネートの投与であることを見出した。1ヶ月あたり90mgの推奨用量で与えられたときには、腎毒性は希であった。しかし、パミドロネートがそれよりも高い用量で与えられたときには、腎毒性が生じていた。
【0072】
[0071] アルカリ金属であるリチウムは、双極性障害に対する主要な薬理学的治療である。リチウムは、炭酸リチウム又はクエン酸リチウムなどの塩として典型的には与えられる。リチウム治療のいくつかの共通する副作用には、排尿の増大、水摂取の増大、口渇、体重増加、細かい震せん、及び疲労がある。リチウム治療に関連するいくつかのより重篤な副作用には、かすんだ視野、精神錯乱、てんかん発作、嘔吐、下痢、筋肉の衰弱、眠気、及び粗大震せんがある(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、448頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。
【0073】
[0072] リチウムは、生涯期間にわたる維持で使用されることが多いので、数多くの研究が、腎臓に対するリチウムの作用を試み、解明するために行われている。ある研究グループは、リチウムをヒトの治療範囲内にある日用量でオスのWistarラットに投与した(Klingら(1984)、Lab Invest、50:526〜535)。リチウムが与えられたラットは、最初の投薬の3週間以内に著しい多尿症を発症した。これらのラットは、自由水クリアランスの上昇及びバソプレッシン抵抗性尿崩症を示した。リチウム処置の後、皮質集合管は様々な形態学的変化―例えば、尿細管の拡張、尿細管の裏打ち細胞の隆起、拡大した核―を示した。
【0074】
[0073] 別の研究では、双極性障害の治療のためにリチウムを投与されているヒトの集団が調べられた(Markowitzら(2000)、J.Am.Soc.Nephrol.、11:1439〜1448)。患者は、平均年齢が42.5歳であり、2年〜25年のリチウム治療(13.6年の平均値)を受けていた。患者の約1/4がネフローゼ性タンパク尿を有し、そのほぼ90%が腎性尿崩症(NDI)を有し、そしてすべての患者において慢性尿細管間質性腎症があることが腎臓生検により明らかにされた。リチウム治療の中断後、7名の患者が末期の腎疾患に進行した。
【0075】
[0074] 腎毒性がリチウム治療の既知の副作用であるとしても、いくつかの研究では、実際には腎毒性がそれほど共通していないことが示されている(Johnson(1998)、Neuropsychopharmacology、19:200〜205)。ある研究では、リチウム治療におけるNDI様作用が、アルギニンバソプレッシン(AVP)のレベルを増大させることにより容易に克服されたことが示された(Carneyら(1996)、Kidney Int、50:377〜383)。他の研究では、リチウム治療を受けない場合、精神病患者は腎機能のある種の欠陥を示すことが示唆されている(Gitlin(1999)、Drug Saf、20:231〜243)。
【0076】
[0075] ヒドララジンは降圧薬であり、細動脈平滑筋の弛緩を生じさせる。そのような血管拡張は、心拍数及び心収縮性の増大、血漿レニン活性の増大、そして体液貯留をその後にもたらす、交感神経系の活発な刺激に関連する(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、794頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。レニン活性の増大はアンギオテンシンIIの増大をもたらし、これは、その後、アルドステロンの刺激及びナトリウム再吸収を生じさせる。
【0077】
[0076] ヒドララジンは、高い血圧(高血圧症)を治療するために、そして高い血圧に苦しんでいる妊婦(子癇前症及び子癇)を治療するために使用される。ヒドララジンに伴ういくつかの共通する副作用には、下痢、速い心拍、頭痛、食欲低下、及び悪心がある。ヒドララジンは、ヒドララジンの使用に伴い得る軽い肺高血圧症を治療するために交感神経の活動を阻害する薬物と同時に使用されることが多い。
【0078】
[0077] あるヒドララジン研究において、ラットにヒドララジンが与えられ、ミネラル代謝がモニターされた(Petersら(1988)、Toxicol Lett、41:193〜202)。マンガン及び亜鉛の濃度はヒドララジン処置による影響を受けなかったが、コントロール群と比較して、組織の鉄濃度が低下し、腎臓の銅濃度が増大した。
【0079】
[0078] 別の研究では、ヒドラジン処置、フェネルジン処置及びヒドララジン処置のラットに対する効果が比較された(Runge−Morrisら(1996)、Drug Metab Dispos、24:734〜737)。ヒドララジンは、腎臓でのGST−αサブユニットの発現を増大させたが、ヒドラジン及びフェネルジンとは異なり、腎臓でのチトクロームP450 2E1の発現を変化させなかった。
【0080】
[0079] コルヒチンはイヌサフラン(Colchicum autumale)のアルカロイドで、痛風性関節炎の治療において使用される抗炎症剤である(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、647頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。
【0081】
[0080] 有糸分裂阻害剤であるコルヒチンはチューブリンに結合し、顆粒球及び他の運動性細胞における繊維状の微小管の脱重合及び消失をもたらす。そのような脱重合及び消失が生じるとき、炎症領域内への顆粒球の遊走が阻害される。一連の事象により、炎症応答が阻止される。
【0082】
[0081] コルヒチン治療に伴ういくつかの共通する軽度の副作用には、食欲喪失及び脱毛がある。治療中断の理由となるより重篤な副作用には、悪心、嘔吐、下痢及び腹痛がある。コルヒチンの過剰服用は、高い死亡発生率を伴う多臓器不全を引き起こし得る。この設定では、腎不全は多因子的であり、長期間の低血圧、低酸素血症、敗血症及び横紋筋融解症に関連する。ラットでは、より劇的でない用量により、インスリン及び副甲状腺ホルモンなどの多くの内因性タンパク質の分泌が阻害されることが示されている。
【0083】
[0082] ある研究では、ラット精細管における微小管の重合状態及びチューブリンの翻訳後修飾に対するコルヒチンの効果が調べられた(Correa及びMiller(2001)、Biol Reprod、64:1644〜1652)。コルヒチンは広範な微小管の脱重合を生じさせ、コルヒチン処置後、総チューブリンレベルが2分の1に低下した。この著者らはまた、コルヒチン処置が、微小管の脱重合に関連する、チューブリンの微小管プールのチロシン化の低下をもたらしたことを見出した。
【0084】
[0083] スルホンアミドであるスルファジアジンは抗菌剤である。スルファジアジンは、一般には、AIDS罹患患者におけるトキソプラズマ症(脳の感染症)を治療するためにピリメタミンと同時に使用されている。これらの薬物は、血液脳関門を通過することができ、比較的高い用量で使用される。さらに、スルファジアジンは、ある種の髄膜炎菌疾患を防止及び尿路感染症治療に有効であることが示されている。
【0085】
[0084] スルホンアミド類は、一般的にはパラアミノ安息香酸(PABA)の構造アナログである。スルホンアミド類は、PABAの競合的アンタゴニストであるので、葉酸合成のためにPABAを利用することを要求する細菌に対して有効である(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1058頁〜1060頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。
【0086】
[0085] スルファジアジン治療に伴う主な副作用には、発熱及び皮膚発疹がある。白血球、赤血球及び血小板の減少、悪心、嘔吐、ならびに下痢は、スルファジアジン処置から生じ得るいくつかの他の副作用である。HIV/AIDS患者に対するこの薬物による最も厄介な問題は腎毒性である。これらの患者は、絶え間ない負担を腎臓にかける長期間にわたってこれらの薬物を使用する傾向がある。さらに、腎結石が膀胱及び尿管で形成されやすく、それにより、尿の流れが妨害される。腎臓損傷が生じることがあり、治療されないままの場合は腎不全が生じることがある。従って、スルファジアジンで治療されている患者は、腎臓における結晶形成を防止するために、水分摂取を増やすことが指示される。
【0087】
[0086] ある症例研究では、トキソプラズマ症を治療するためにスルファジアジンが投与されていた4名のHIV陽性患者が調べられた(Crespoら(2000)、Clin Nephrol、54:68〜72)。1名は以前には健康者であったが、4名の患者すべてが、乏尿、腹痛、腎不全を発症し、超音波検査において多数の放射線透過性腎結石を示した。徹底的な水和及びアルカリ化の後、患者の腎機能は正常に戻った。
【0088】
[0087] アドリアマイシンは、一般名ドキソルビシンとして知られており、ストレプトミセス・ピューセチウス(Streptomyces peucetius)によって産生されるアントラサイクリン系抗生物質である。アドリアマイシンは、乳癌、卵巣癌、膀胱癌及び肺癌、ならびに非ホジキンリンパ腫、ホジキン病及び肉腫の治療において使用される抗腫瘍薬である(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、1264頁〜1265頁、J.G.Hardmanら編、McGraw Hill、New York、1996)。
【0089】
[0088] アドリアマイシンは、糖のダウノサミンがグリコシド結合により結合しているテトラサイクリン環構造を有する。アドリアマイシンは、DNAとインターカレーションすることができ、DNA合成及びRNA合成に影響を及ぼし、そして細胞膜と相互作用して、その機能を変化させることができる。典型的には、この薬物は細胞分裂のS期に対して細胞周期特異的である。癌細胞のDNAに結合し、トポイソメラーゼIIを阻止することによって、癌細胞は分裂及び増殖できなくなる。
【0090】
[0089] アドリアマイシン治療に伴ういくつかの共通する副作用には、疲労、白血球数、赤血球数又は血小板数の減少、脱毛、皮膚の退色、及び涙目がある(www.cancerhelp.org.uk/help/default.asp?page=4025)。より重篤な副作用には、心筋毒性、大腸の潰瘍形成及び壊死、ならびに二次ガンの発達が含まれる。
【0091】
[0090] 癌と戦うことにおけるその有用性のために、多数の研究が、アドリアマイシンの機序及び効果をさらに理解する意図で行われている。ある研究では、研究者らは単回用量のアドリアマイシンをマウスに注射した(Chenら(1998)、Nephron、78:440〜452)。マウスは、複合型の糸球体アルブミン尿症及び免疫グロブリン尿症の徴候、亜硝酸塩/硝酸塩の尿中レベルの進行的な上昇、異常な腎機能、ならびに巣状分節性糸球体硬化症を思わせる他の症状を示した。
【0092】
[0091] 別の研究では、ラットにアドリアマイシンが与えられ、アンギオテンシン変換酵素(ACE)に対する効果がモニターされた(Venkatesanら(1993)、Toxicology、85:137〜148)。ラットは糸球体及び尿細管の損傷を発症し、血清ACEレベルが、処置後の20日目、25日目及び30日目に著しく上昇した。異なる研究において、アドリアマイシン、腎摘出又はこれらの組み合わせのいずれかが処置されたウサギを1年にわたって経過観察した(Gadeholt−Gothlinら(1995)、Urol Res、23:169〜173)。アドリアマイシンで処置されたウサギは、比較的低い用量で腎毒性の徴候を示した。
【0093】
[0092] メナジオン(ビタミンK)は、肝臓でメナキノンに変換される脂溶性ビタミン前駆体である。ビタミンKの主に知られている機能とは、正常な血液凝固を助けることであるが、骨の石灰化においても役割を演ずる可能性がある。メナジオンは、酸化ストレスを誘発するキノン化合物である。これは抗癌剤および放射線増感剤として使用されており、腎臓、肺、心臓、および肝臓に毒性をもたらす可能性がある。腎臓では、毒性の徴候が用量依存的であり、低用量での尿細管細胞の少量の脱顆粒から、尿細管拡張、腎細管でのタンパク円柱の形成、カルシウムの石灰化、近位および遠位腎細管での空胞化、皮質での顆粒状変性、壊死、およびアポトーシスに及ぶ(Chiouら、Toxicology(1997)124(3):193〜202)。
【0094】
[0093] モノクロタリン、すなわち温暖な気候での園芸植物であるCrotalaria spectabilisから得られるアルカロイドは、腎臓、心臓、肝臓、および肺に影響を及ぼす多臓器毒性を誘発する。この化合物は、腎臓でメサンギウム融解を引き起こすのに使用され、またハブ毒中毒および溶血尿毒症症候群の作用を模倣する。ラットの腎障害は、まず糸球体毛細血管に現れ(内皮細胞の剥離および基底層への血小板の付着)、その後、メサンギウムの重篤な浮腫として現れた。メサンギウム融解が引き続き生じ、それに伴って毛細血管の拡張または閉塞と、メサンギウムの壊死および出血が生じた(Kurozumiら、Exp Mol Pathol(1983)39(3):377〜386)。
【0095】
[0094] バンコマイシンは、βラクタム耐性菌、特に耐性ブドウ球菌による重篤な全身感染の治療に使用される、多環式糖タンパク抗生物質である。この薬物は、ペニシリンに対してアレルギーを持つ患者に投与することができる。バンコマイシンは、腎不全および間質性腎炎を誘発する可能性がある(Physicians Desk Reference 第56版、第1970〜1971頁、Medical Economics Co.、Montvale、New Jersey、2002)。
【0096】
[0095] クロム酸ナトリウム、すなわち肝毒性を引き起こすのに使用されるモデル化合物も、腎臓に中毒作用をもたらす。近位尿細管のS1セグメントの壊死が報告されており、それと共に、腎皮質および腎髄質と尿中でキニノーゲンが高レベルであり糸球体濾過率が低いことを特徴とする急性腎不全も報告されている(Bompart他、Nephron(1993)65(4):612〜618;Beckwith−Hall他、Chem Res Toxicol(1998)11(4):260〜272)。
【0097】
[0096] 腎臓では、シュウ酸ナトリウムが尿路で結晶を形成し、その結果、尿細管が閉塞し、ヒトおよびラットでは石灰化腎結石を生成する。結石は、腎乳頭表面に位置し、有機基質とシュウ酸ナトリウムおよび/またはリン酸カルシウムの結晶とからなる。この基質は、結晶に密接に関連付けられ、石灰化を促進すると共に阻害する物質、すなわちオステオポンチン、タム−ホースフォールタンパク質、ビクニン、およびプロトロンビンフラグメント1を含有する。このような結石を持つラットは、マグネシウムおよびクエン酸塩の尿中濃度が低い状態にあることを示し、これと同じことがヒトにも生ずると考えられる。どちらの種であっても、オスはシュウ酸カルシウム腎結石を形成し易いが、メスはリン酸カルシウム結石を形成し易い(Khan、World J Urol(1997)15(4):236〜243)。
【0098】
[0097] ヘキサクロロ−1,2−ブタジエン(HCBD)は、グルタチオン、システイン、およびN−アセチルシステインと毒性抱合体および代謝産物を形成する溶媒である。次いでこれらは、腎臓の外髄質で近位尿細管のS1、S2、およびS3(直部)セグメントに損傷を与える。ミトコンドリアの膨張がS1およびS2セグメントで観察されたが、病理学的変化のほとんどはS2および3セグメントで生ずる(刷子縁の損失およびS2での細胞壊死、S3での壊死)。ラットの場合、HCBDは、オスよりもメスに対して約4倍毒性が強い(Ishmael他、Toxicol Pathol(1986)14(2):258〜262;Ishmael他、J Pathol(1982)138(2):99〜113)。
【0099】
[0098] クロロホルム(CHCl)は、薬物、化粧品、プラスチック、および清浄剤の製造で広く使用され、塩素化飲料水中の汚染副産物である。クロロホルムは、ヒトに使用される初期の麻酔薬でもあったため、その毒性に関しては多くのことが知られている。曝露によって、肝臓および腎臓の損傷と心不整脈が引き起こされる可能性がある。
【0100】
[0099] げっ歯類の曝露による毒性レベルは、直接的な遺伝子毒性作用に起因するのではなく、誘発される細胞の損傷および修復の慢性的なサイクルに起因し、発癌性のあるものである。肝臓および腎臓に対する損傷は、標的器官でのその代謝に関係した2つの異なるメカニズムによって生ずると考えられる。研究によれば、肝臓および腎臓の損傷と壊死の程度は、性別、系統、曝露経路、および使用したビークルを含めた多数の要因に関係することが示されている。腎臓では、シトクロムP450によるクロロホルムの生体内変換によって、主に近位腎細管に損傷を与える反応性中間体が生成される。腎毒性の典型的な徴候には、タンパク尿、糖尿、および高BUNレベルが含まれる(Casarett&Doull’s Toxicology:The Basic Science of Poisons第6版、Klaasen編、第14章、第503〜508頁、MaGraw−Hill、New York、2001;Smith他、Toxicol Appl Pharmacol 70:467〜479、1983)。
【0101】
[00100] ジクロフェナクは非ステロイド性抗炎症薬であり、リウマチ様関節炎、骨関節炎、および強直性脊椎炎に罹患している患者に一般に投与される。経口投与した後、ジクロフェナクは迅速に吸収され、次いでCYC2CサブファミリーのシトクロムP450アイソザイムにより肝臓で代謝される(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics第9版、Hardman他編、第637頁、McGraw Hill、New York、1996)。さらにジクロフェナクは、角膜損傷に起因する痛みを治療するため局所的に使用される(Jayamanne他、Eye 11(Pt.1):79〜83、1997;Dornic他、Am J.Ophthalmol 125(5):719〜721、1998)。
【0102】
[00101] 腎組織でのジクロフェナクの代謝によって、重篤な酸化ストレスおよびゲノムDNA断片化を引き起こす可能性のある反応性酸素種が生成される。アポトーシス特性を持つ核に関して多様なタイプの腎細胞を検査すると、そのような核は、近位および遠位腎細管の内層に見られることが示された。別の中毒作用には、高レベルのBUN、マロンジアルデヒド(MDA)、SOD、および活性化Ca2+−Mg2+−エンドヌクレアーゼが含まれる(Hickeyら、Free Radic Biol Med(2001)31(2):139〜152)。
【0103】
[00102] チオアセトアミドの唯一重要な商業的用途は、定性分析で硫化水素の代わりに使用することである(IARC、第7巻、1974)。これは皮革工業、繊維工業、および製紙工業で有機溶媒としても使用され、ブナゴム加硫の際の促進剤として、またモーター燃料の安定剤としても使用されてきた。ヒトに曝露される主な経路は、チオアセトアミドを溶媒として使用した生成物の吸入および皮膚接触である(9th Report on Carcinogens、U.S.Dept.of Health and Human Services、Public Health Service、National Toxicology Program、http://ehp.niehs.nih.gov/roc/toc9.html)。
【0104】
[00103] 曝露されたラットの場合、チオアセトアミドは肝臓および腎臓に蓄積され、その結果、血清総ビルビリン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、BUN、クレアチニン、およびTNFαが高レベルになることが示された。毒素のクリアランスが不十分でありTNFαの分泌が上昇することは、肝臓および腎臓で中毒作用が進行することに関係する(Nakatani他、Liver(2001)21(1):64〜70)。腎組織における別の組織学的変化には、糸球体房の崩壊および間質性出血が含まれる(Caballero他、Gut(2001)48(1):34〜40)。
【0105】
[00104] アンホテリシンBは、重篤な生命を脅かす真菌感染に広く使用されている。その使用は、糸球体濾過率の低下および細管機能不全によって明らかにされる用量依存的な腎毒性により制限される。アンホテリシンBに関連した高レベルのクレアチニンは、腎機能不全のマーカーであるだけではなく、血液透析の使用および高い死亡率にも結び付けられる。したがって、アンホテリシンB腎毒性は良性の合併症ではなく、その予防が必須である(Deray他(2002)、Nephrologie 23(3):119〜122)。
【0106】
[00105] 四塩化炭素は、クロロフルオロカーボン噴射剤および冷媒を作製するのに広く用いられる一般的な有機溶媒であるが、その使用は徐々に減少している。その他の用途では、ドライクリーニング剤および消火器としての使用、ナイロンの作製における使用、ゴムセメント、石けん、および殺虫剤用の溶媒としての使用が含まれる。ラットの研究では、四塩化炭素は腎毒性をもたらすことが示された。腎スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼ活性の著しい増大と、グルタチオンペルオキシダーゼ活性の著しい低下、ならびに腎皮質における糸球体および細管の変質が、四塩化炭素で処理したラットで観察された(Ozturkら(2003)、Urology 62(2):353〜356)。
【0107】
[00106] シプロフィブラートは、血清トリグリセリド濃度を低下させ血清HDLコレステロール濃度を上昇させる脂質調節薬であり、その他のフィブラート薬と共に、腎機能不全を誘発することが報告されている。これらの薬物を摂取した患者は、血漿クレアチニンおよび尿素レベルが上昇することを示した(Broedersら(2000)、Nephrol Dial Transplant 15(12):1993〜1999)。
【0108】
[00107] シクロスポリンAは、臓器移植患者に定期的に与えられる免疫抑制薬であり、腎損傷および高血圧を引き起こすことが示されている。その腎毒性は主に、輸入細動脈血管収縮によって引き起こされる腎臓の血行力学的変化に起因している。その中毒作用も、血行力学的変化とは独立に生ずる可能性のある前糸球体障害および間質性損傷を特徴とする。シクロスポリンAの親油活性が高いとすると、直接的な細管損傷が腎毒性に寄与しがちになる(Carvalho da Costa他(2003)、Nephrol Dial Transplant 18(11):2262〜2268)。
【0109】
[00108] ダントロレンは筋弛緩剤であり、脊椎損傷や卒中、多発性硬化症、脳性麻痺などの状態に関連した痙縮または筋痙攣の治療に使用される。
【0110】
[00109] エチレングリコールは、自動車、飛行機、および船用の不凍液および氷結防止液を作製するのに使用され、ポリエステル化合物を作製するのに使用され、また塗料およびプラスチック工業における溶媒として使用される化合物である。エチレングリコールは、写真現像液、油圧ブレーキ液の成分であり、スタンプパッド、ボールペン、および印刷所で使用されるインクの成分でもある。エチレングリコール中毒は、毒素代謝産物の作用、特にグリコアルデヒドおよびグリオキシレートを介して急性腎不全および近位細管の損傷を含めた多系統臓器損傷をもたらす。これらの化合物は、ATP枯渇、LDHの分解および放出、リン脂質分解を引き起こした。さらに、エチレングリコール代謝産物の溶解度が低いため細管の管腔内に結晶形成を引き起こし、腎機能不全に至る糸球体濾過率の低下に寄与する(Poldeski他(2001)、Am J Kidney Dis 38(2):339〜348;VanVleet他(2003)、Semin Naphrol 23(5):500〜508)。
【0111】
[00110] メロキシカムは、腎臓に血行力学的(機能的)副作用および特異体質的副作用を及ぼす非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。両タイプの副作用の共通の接点は、プロスタグランジン合成阻害に関係する腎虚血のようである。このプロセスでの重要な酵素はシクロオキシゲナーゼCOX−1およびCOX−2である。COX−2阻害によりNSAIDの抗炎症作用がもたらされるが、COX−1阻害は、胃毒性(潰瘍および胃腸出血)および腎毒性をもたらす(Fackovcova他(2000)、Bratisl Lek Listy 101(8):417〜422)。
【0112】
[00111] オルサラジンは抗炎症薬であり、潰瘍性大腸炎(炎症性腸)の治療に使用される。ラットの研究では、腎臓が毒性の主な標的器官であることが示され、間質性腎炎および細管壊死が観察された。より長期にわたるより高い用量での研究では、骨盤拡張、病巣での鉱質堆積、移行性の細胞過形成、うっ血および/または出血と、線維症が見られた(Medsafe Data Sheets、http://www.medsafe.govt.nz/profs/Datasheet/DSForm.asp.)。
【0113】
[00112] ペンタミジンは、ニューモシスティスカリニ肺炎(PCP)の予防および治療に使用される。これは、寄生虫の治療のための抗寄生虫剤としても使用される。ペンタミジンは、典型的な場合、ヒトに副作用が生じまたはトリメトプリム−スルファメトキサゾール(TMP−SMX)やダプソンなどその他の薬物に対して毒性が出たときに使用する。腎臓での副作用は、ペンタミジンを非経口投与した後に頻繁に観察される。ラットの研究では、腎毒性は、細管細胞の尿損失、リンゴ酸脱水素酵素活性、およびクレアチニンクリアランスを測定することによって評価した。ペンタミジンの細管毒性は、用量に関係し可逆的であると考えられる(Feddersen他(1991)、J Antimicrob Chemother 28(3):437〜446)。
【0114】
[00113] NSAIDである鎮痛薬フェナセチン、鎮痛関連腎症(AAN)およびそれに続く末期腎疾患を引き起こすために、1983年に米国市場から排除された。フェナセチンの代謝産物は、腎臓に対して中毒作用も持つ可能性のあるアセトミノフェン(タイレノール(登録商標))である。NSAIDは、プロスタグランジンを生成する原因酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX−1およびCOX−2)を阻害することによって、その抗炎症性および解熱作用を発揮する。プロスタグランジンは、正常な腎臓を持つ健常者にとって重要な腎血流媒介物ではないが、血液量の低下または循環の問題がある者にとって、腎臓は、腎血流が維持されるようにプロスタグランジンが腎血管に及ぼす拡張作用に依存し、これが腎機能を維持するのに極めて重要である。NSAIDはプロスタグランジンの生成を低下させるので、腎毒性の危険性が高い者は、利尿薬を使用する者、あるいは脱水症、心不全、または肝不全に罹っている者のような問題を持っている者である。NSAIDによるプロスタグランジン合成の阻害は、カリウムおよびナトリウムの血中濃度の増加やアルドステロンの分泌の低下など、その主な機能が血圧低下の際の血流維持にある電解質の擾乱の原因でもある。プロスタグランジンはナトリウムの分泌を促進させるので、一部の患者ではNSAIDを摂取したときにナトリウムが保持される可能性もあり、浮腫および血圧上昇が引き起こされ、心不全の徴候を憎悪させる。危険性の高い者は、糖尿病、腎疾患、循環系合併症、および高齢の者である(Dilanchian(2002)、Nurse Week、http://www.nurseweek.com/ce/ce80a.asp)。
【0115】
[00114] プロピレンイミン(2−メチル−アジリジン)は、製紙工業、繊維工業、ゴム工業、および製薬工業で使用される。これは、ヒトの急性(短期)吸入曝露によって眼および上気道を酷く刺激し、腎乳頭に壊死を引き起こすこともわかっている。乳頭毒性の臨床徴候は、コハク酸塩の尿中濃度の低下、およびクレアチンのクエン酸中濃度の上昇である(Holmesら(1997)Comp Biochem Physiol C Pharmacol Toxicol Endocrinol 116(2):125〜134)。
【0116】
[00115] セムスチン(MeCCNU)は抗癌薬であり、ラットでは近位細管損傷および乳頭壊死をもたらすことが示されている。進行性腎症、すなわち発症が遅延し、多尿症、酵素尿症、有機イオンの蓄積、および尿濃縮能力の低下を特徴とする進行性腎症が観察された。セムスチンの投与は、腎髄質の集合管において核巨大化ももたらした(Kramerら(1986)、Toxicol Appl Pharmacol 82(3):540〜550)。
【0117】
[00116] スラミンは抗寄生虫薬であり、転移癌の治療に使用される逆転写酵素阻害剤である。この化合物は、増殖因子(例えば上皮増殖因子(EGF)や血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍増殖因子β(TGF−β)など)とその受容体との結合を阻害し、したがって、生体外では腫瘍細胞の増殖を刺激するこれら因子の能力と拮抗することが知られている。ラットの実験では、腎実質が、薬物への曝露によって悪影響を受けることが示された。著しくかつ広範にわたる変化が皮質の髄質の両方で検出されたが、これはラットにおいて、スラミンが重篤な慢性腎障害を誘発することを示している(Soldani他(1992)、In Vivo 6(6):617〜620)。
【0118】
[00117] タクロリムスは、臓器移植患者に定期的に与えられる別の免疫抑制剤である。腎臓では、近位尿細管上皮細胞(PTEC)が、タクロリムスなどの免疫抑制剤に応答してアポトーシスになり易く、いくつかの腎疾患の発症に関与する。免疫抑制剤はおそらく、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の不可逆的な開放を伴うメカニズムを通してアポトーシスを誘発させる。カスパーゼ3および7の活性化も観察された。近位尿細管でのアポトーシスは、免疫抑制治療の過程で観察される腎毒性に寄与する可能性がある。
【0119】
毒性予測とモデリング
[00118] 表1〜5Nに提供される遺伝子のポートフォリオ及びサブセットと同様に、遺伝子及び遺伝子発現情報(各遺伝子の毒性群平均、非毒性群平均、LDAスコア及びPLSスコアを含む)を用いて、試験化合物又は未知化合物の腎毒性を含む、少なくとも1つの毒作用を予測する。本明細書で使用する場合、少なくとも1つの毒作用には、限定はされないが、細胞又は生物の生理的状態の有害な変化が含まれる。その応答は、特定の病理学的状態(例えば、組織壊死)と関連するかもしれないが、そうあることを要求されない。したがって、毒作用は、分子及び細胞レベルでの効果を含む。本明細書で使用される、腎毒性とは効果であり、そして腎炎、尿細管毒性、腎臓壊死、糸球体損傷、尿細管損傷及び巣状分節性糸球体硬化症の病理学的状態を含むが、これらには限られていない。本明細書で使用する場合、遺伝子発現のプロファイルは、ある細胞サンプル又は細胞集団における少なくとも1つのmRNA種の発現の定量的な表現を有しており、ディファレンシャルディスプレイ、PCR、マイクロアレイ及び他のハイブリダイゼーション分析などの様々な方法により作られたプロファイルを含んでいる。
【0120】
[00119] 一般に、試験薬剤(又は化合物又は多重成分組成物)の毒性又は腎毒性を予測するアッセイは、細胞集団を試験化合物に曝す工程と、表1〜5Nの遺伝子の1個又はそれ以上の相対的又は絶対的な遺伝子発現レベルをアッセイし又は測定する工程と、同定した発現レベルを前記表及び本明細書に開示されたデータベースに開示された発現レベル又は発現レベルの他の表現と比較する工程と、を含む。そのような遺伝子発現情報は、表5A〜5Nに列挙された遺伝子の毒性群平均、非毒性群平均、LDA(線形判別分析)スコア及びPLS(部分最小二乗法)スコアを含む。アッセイは、表1〜5Nから約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、50、75、100、200、500、1000個又はそれ以上の遺伝子の発現レベルの測定を含むか、あるいは、これらの数字の範囲、例えば、約2−10個、約10−20個、約20−50個、約50−100個、約100−200個、約200−500個又は約500−1000個の表1〜5Nの遺伝子の発現レベルの測定を含んでよい。毒性予測のアッセイは、表1−5Nのほとんどすべての遺伝子の測定も含み得る。「ほとんどすべての」遺伝子とは、任意の又はすべての表1−5Nにおける遺伝子の少なくとも80%を意味すると考えられる。
【0121】
[00120] 本発明のある方法では、試験薬剤、化合物又は組成物によって誘導される、1又は複数の遺伝子の発現レベルが約2倍、約1.5倍又は約1.0倍の係数の範囲内で変化するならば、本明細書に開示される表又はデータベースに見出されるレベルに匹敵する。いくつかのケースでは、薬剤が参照毒と同じ方向(例えば、アップ又はダウン)に、遺伝子の発現変化を誘発するならば、それらの発現レベルは匹敵する。
【0122】
[00121] 本発明の別の方法では、試験化合物に曝したサンプルとコントロールビークルに曝したサンプルのデータを用いた、遺伝子発現プロファイルの1又は複数の遺伝子に関するRMA(ロバストマルチアレイ平均)のフォールドチェンジ値を計算した(以下の文献を参照:Irizarry et al.(2003),“Summaries of Affymetrix GeneChip probe level data,”Nucl Acids Res 31(4):e15,8pp.及びIrizarry et al.(2003),“Exploration,normalization,and summaries of high density oligonucleotide array probe level data,”Biostatistics 4(2):249−264。これらの文献はともに、その全体を参照として本明細書に取り込む)。RMAフォールドチェンジ値は、遺伝子ごとに基づき、各遺伝子のPLS重み(又はPLSスコア、表5Nを参照)を乗じてもよく、これらの結果生じる値はすべての遺伝子にわたって、又は選択された遺伝子の組にわたって、合計される。この合計は、サンプルについて単一の予測スコアを生じる。この予測スコアと、本明細書で提供されるカットオフ値とを比較すれば、試験化合物が少なくとも一つの毒性応答を誘導したか否かが分かる。
【0123】
[00122] 試験薬剤、化合物又は組成物に曝される細胞集団は、インビトロ又はインビボで曝されてもよい。例えば、培養又は新たに単離された腎細胞(特に、ラット腎細胞)は、標準的な実験室及び細胞培養条件の下でその薬剤に曝される。別のアッセイ様式では、インビボの曝露は、生きている動物(例えば、研究室ラット)に、その薬剤を投与することによって達成できる。
【0124】
[00123] インビトロ及びインビボ系で毒性試験を設計及び実施するための手順は、周知であり、その主題に関しては多くの教科書に記載されている。例えば、Loomisら、Loomis’s Essentials of Toxicology Testing, 4版(Academic Press, New York, 1966)、Echobichon,The basics of Toxicity Testing(CRC Press,Boca Raton,1992)、Frazier編、In Vitro Toxicity Testing(Marcel Dekker,New York,1992)などである。
【0125】
[00124] インビトロ毒性試験では、2つのグループの試験生物が通常使用される。1つのグループは対照であり、他のグループは単一用量で(急性毒性試験用)、又は1つの投薬計画の用量で(遷延性又は慢性毒性試験用)、試験化合物を受ける。いくつかのケースでは、本発明の方法で要求される組織の抽出が、試験動物を犠牲にする必要があるので、実験の継続期間を通して遺伝子発現のダイナミックスを観察することが望ましいならば、対照グループ及び化合物を受けているグループの両方とも、組織サンプリングのために動物の取り除くことを可能にするように十分大きくなければならない。
【0126】
[00125] 毒性研究を計画するに際して、試験される化合物のために適切な試験生物を選ぶこと、投与経路、用量の範囲などについて広範囲な指針が文献で提供されている。水又は生理的食塩水(0.9%NaCl水溶液)が、試験化合物のために選択される溶質である。というのは、これらの溶剤が様々な経路による投与を許容するからである。溶解性の限界のために、これが可能でないとき、トウモロコシ油のような植物油、又はプロピレングリコールのような有機溶剤が使用できる。
【0127】
[00126] 投与経路に関係なく、所与の用量を投与するのに要する容積は、使われる動物の大きさによって制限される。動物のグループ内又はグループ間で各用量の容積を均一に保つことが望ましい。ラット又はマウスを使用するとき、一般に経口経路で投与される容積は、動物のグラム当たり0.005mLを超えてはならない。水溶液又は生理的食塩水溶液が非経口的注入のために使われるときでも、そのような溶液は通常無害であると考えられているが、許容される容積は制限される。マウスでの蒸留水の静脈LD50は、マウスグラム当たり約0.044mLであり、等張生生理食塩水のそれはマウスグラム当たり0.068mLである。ある場合には、試験動物への投与経路は、治療目的のためのヒトへの該化合物の投与経路と同一、又はできるだけ似通っているべきである。
【0128】
[00127] 化合物が吸入によって投与されることになっているとき、試験空気を発生する特殊な手法が必要である。その方法は、通常、化合物を含む液のエアロゾル化又は噴霧化を含む。試験される薬剤が感知できる蒸気圧を持つ液であるならば、それは制御された温度条件下で空気を溶液に通すことによって投与できる。これらの条件下で、用量は単位時間当たりに吸入される空気の容積、溶液の温度及び関与する薬剤の蒸気圧から見積もられる。ガスは、ガス溜めからメーターで測られる。溶液の粒子が投与されることになっているとき、粒径が約2μmより小さくなければ、粒子は肺で末端の肺胞嚢に達しない。吸入によって投与されるとき、様々な装置やチャンバーが、刺激物質又はその他の有毒なエンドポイントの効果を検出するための研究を実行するために利用できる。動物に薬剤を投与する好ましい方法は、挿管によるか又は飼料に薬剤を取り入れることによる、経口経路を通してである。
【0129】
[00128] 薬剤がインビトロで、細胞又は細胞培養物に曝されるとき、例えば、薬剤に曝される細胞集団は、その集団を2つ以上の同一のアリコートに分割することによって、2つ以上の副集団に分割されるかもしれない。本発明の方法の好適ないくつかの実施の形態で、薬剤に曝される細胞は、腎臓組織に由来する。例えば、培養されたか、又は新たに単離されたラット腎細胞が使われる。
【0130】
[00129] 本発明の方法は、一般に少なくとも1つの毒性反応を予測するのに使用でき、そして、実施例に記載されているように、化合物又は試験薬剤が腎炎、腎臓壊死、糸球体損傷、尿細管損傷、巣状分節性糸球体硬化症、本明細書に記載された少なくとも1つの毒に関連する症状などの様々な特定の腎臓症状を誘発するという見込みを予測するのに使用できる。また、本発明の方法を用いて、1つ又はそれ以上の個々の化合物に対する、毒性反応の類似性を決定できる。それに加えて、本発明の方法を用いて、既知の毒(表1〜5Nを参照)によって誘発されるプロファイルと比較しての、発現プロファイルの類似性のために、前記化合物又は試験薬剤によって影響、誘発又は調節される可能性のある細胞経路を予測するか、又は解明できる。特に、表2は、列挙された各遺伝子が関与する代謝経路を提供する。
【0131】
毒性予測のためのデータベースの構築−RMA/PLS
[00130] 本発明において、毒性研究または「tox study」は、ラットからの一組の細胞または組織サンプルを含む。これらのサンプルは、試験化合物、時間(ラットを犠牲にした、初回試験化合物投与からの時間)、および用量(投与した試験化合物の量)に応じていくつかのコホートに編成される。毒性研究における全てのコホートは、同じビークルコントロールを共用する。例えば、あるコホートは、高用量(100mg/kg)で6時間にわたりアシクロビルで処理したラットからの一組のサンプルでよい。時間が一致しているビークルコホートは、毒性研究内で治療した動物の対照としての役割をする一組のサンプルであり、例えば6時間アシクロビルで処理した高用量サンプルの場合、時間が一致しているビークルコホートは、その研究で6時間にわたりビークルで処理したサンプルである。
【0132】
[00131] 毒性データベースまたは「tox database」は、参照データベースを含んだ一組の毒性研究である。参照データベースは、種々の投薬量の種々の試験化合物で処理し、試験化合物に様々な時間曝露したラットの組織およびラットから得た細胞サンプルからのデータを含む。RMA、すなわちロバストマルチアレイ平均は、サンプル核酸のAffymetrix GeneChip(登録商標)とのハイブリダイゼーションから得られたような生の蛍光強度を発現値に、すなわちチップ上の各遺伝子断片に1個の値となるよう変換するアルゴリズムである(Irizarry他(2003)、Nucleic Acids Res.31(4):e15、8pp.)。RMAはlog2スケールで値を生成し、典型的な場合、対照レベルのかなり上または下で発現した遺伝子については4から12の間である。これらのRMA値は、正または負になる可能性があり、フォールドチェンジが約1の場合に0を中心とする。PLS、すなわち部分最小二乗法は、予測子の行列と監視スコアのベクトルを入力として取得し、入力した予測子のそれぞれに関して一組の予測重みを生成するモデル化アルゴリズムである(Nguyen他(2002)、Bioinformatics 18:39〜50)。これらの予測重みをPLSスコアに変換して、それぞれ解析された遺伝子の毒性応答予測能力を示すことができる。RMAは、毒性応答予測に関するモデル、例えば腎毒性を予測するモデルを生成するためにPLSにかけることができる遺伝子発現値の行列を作成する。
【0133】
[00132] DNAマイクロアレイを解析するためのその他のアルゴリズムが当技術分野で知られているが、本発明者等は、RMAとPLSとの組合せが、より高い精度をサンプル測定にもたらし、外部データ(毒素データベースに追加されていない毒素研究からのデータ)を使用する能力を向上させることを見出した。RMA/PLSモデルでは、他のアルゴリズムによって不適合と見なされる可能性のある外部データ集合は、これらのデータ集合がモデルに追加された場合、毒性応答を予測するというモデルの能力にほとんど影響を与えないことがわかった。その結果、外部データ集合は、適合性の評価を必ずしも必要としない。さらにこのモデルでは、高用量の毒素で処理したサンプルに関する全ての時点を、毒素で処理していないサンプル、陰性対照、ビークル対照、および低用量で処理したサンプルに関する全ての時点と比較するので、全てのサンプル時点を使用することが可能になる。さらにこのモデルは、サンプル中の遺伝子分布の影響を受けず、真の陽性サンプル率が上昇する。これらのアルゴリズムを使用すると、試験化合物ごとに個別のモデルが生成されるのではなく相関行列を含むモデルが生成されるので、試験化合物の類似性評価も改善される。
【0134】
毒性予測のためのデータベースの構築−MAS/LDA
[00133] 本発明のいくつかの実施形態で、腎毒性を予測するためのデータベースは、Affymetrix(登録商標)MAS4またはMAS5アルゴリズムを使用することによって生成されたDNAマイクロアレイからの遺伝子発現情報から構築することができる。これらの遺伝子発現値は、標的配列とのハイブリダイゼーション後の、完全なマッチ(PM)およびミスマッチ(MM)であるプローブ対の蛍光強度測定から導き出される。データはlog2スケールに変換され、これをバックグラウンドに合わせて補正し規格化する(前掲のIrizarry他、Nucl Acids Res参照)。次いで線形判別分析(LDA)法を適用して、毒素応答を最も良く予測することのできる遺伝子発現プロファイルの遺伝子を同定する。LDAは、種類がわかっている訓練サンプルに基づいて未知の種類のサンプルを分類するための古典的統計手法である。LDAを、マイクロアレイデータのサンプル分類に前もって適用し(Hakak他(2001)、Proc Natl Acad Sci USA 98(8):4746〜4751;Dudoid他(2002)、J Am Statistical Association、97(457):77〜87)、対ごとの比較において選択的に発現する(上方または下方制御された)遺伝子を同定するのに使用することができる。LDAは、グループ化情報を使用することによってグループ間分散とグループ内分散の比を最大限にする変数の線形結合を探索する。2つのグループに関し、LDAの線形重みは、遺伝子がどのように2つのグループに分かれるか、また遺伝子がどのように他の遺伝子と相互に関係しているかに依存する。
【0135】
毒性マーカーの診断用途
[00134] 上述のように、化合物に曝された組織若しくは細胞試料の生理的状態の予測又は同定のための診断マーカーとして、或いは化合物又は薬剤の毒作用を同定するか、予測するのに表1〜5Nに提供されたような遺伝子や遺伝子発現情報、又はそれらの発現情報を備える遺伝子のポートフォリオを使用することができる。例えば、腎組織のような組織試料又は末梢血液細胞の試料又他の簡単に得ることができる組織試料を上記の方法のいずれかによってアッセイでき、そして、表1〜5Nからの1又は複数の遺伝子の発現レベルが本明細書に記載される毒に曝された組織若しくは細胞で見出される発現レベル又は関連データと比較できる。これらの方法は、細胞での生理的状態の診断をもたらし、ある化合物(例えば、新規な又は未知の化合物又は薬剤)の潜在的な毒性を確認するために使用することができる。利用できる配列又は他の情報と同様に、発現データの比較は、研究者又は診断者が行ってもよいし、下記のようにコンピューターやデータベースの助けを借りてもなし得る。
【0136】
[00135] 別の様式では、試料(例えば、身体の組織若しくは体液試料)中、表1〜5Nの1又は複数の遺伝子のレベル、それがコードする1又は複数のタンパク質、又は該コードされたタンパク質によって生産されるいかなる代謝産物も、モニター又は検出して、生物体の生理的状態を確認するか、診断することができる。そのような試料としては、尿、血液及び簡単に取得できる細胞(例えば、末梢リンパ球)を含む、いかなる組織又は液試料でも挙げられる。
【0137】
毒性進行をモニターするためのマーカーの使用
[00136] 上述のように、医薬、候補薬、毒、汚染物質などに最初に曝された後に見出されるような毒性進行をモニターするためのマーカーとして、表1〜5Nに提供される遺伝子や遺伝子発現情報を使用することもできる。例えば、組織試料又は細胞試料を上記の方法のいずれによってアッセイでき、そして、表1〜5Nの1又は複数の遺伝子の発現レベルが本明細書に記載される腎臓毒に曝された組織若しくは細胞で見出される発現レベル又は関連データと比較できる。利用できる配列又は他の情報と同様に、発現データの比較は、研究者又は診断者が行ってもよいし、下記のようにコンピューターやデータベースの助けを借りてもなし得る。
【0138】
医薬スクリーニングのための毒性マーカーの使用
[00137] 本発明によれば、表1〜5Nで同定された遺伝子を、マーカー又は薬標的として使用して、細胞又は組織試料に対する、候補薬、化学物質又は他の薬剤の効果を評価することができる。遺伝子をその発現や活性を調節する薬剤をスクリーニングするための薬標的として使用することもできる。様々な様式で、候補薬又は薬剤は、所定の1又は複数のマーカーの転写・発現を刺激する能力、或いは1又は複数のマーカーの転写・発現をダウンレギュレートする又は妨げる能力をスクリーニングできる。本発明によれば、薬が誘発するマーカーの数を見て、そしてそれらを比較することによって、薬の効果の特異性を比較することもできる。より特異的な薬は、より少ない転写標的を持つ。2つの薬のために同定されたマーカーの類似したセットは、効果の類似性を示すかもしれない。
【0139】
[00138] 表1〜5Nに定義するような1又は複数のマーカーの発現をモニターするためのアッセイは、本発明の核酸の発現レベル変化をモニターするのに利用可能ないかなる手段を利用してもよい。本明細書で使用する場合、それが細胞で核酸の発現をアップ又はダウンレギュレーションできるならば、薬剤は本発明の核酸の発現を調節するという。
【0140】
[00139] 1つのアッセイ様式で、表1〜5Nからの1個、2個若しくはそれ以上の遺伝子に対するプローブを含む遺伝子チップを使用して、処理又は曝露された細胞で、遺伝子発現の変化を直接モニター又は検出することができる。株化細胞、組織又は他の試料を最初に試験薬剤にさらし、そしてある場合には既知の毒にさらして、表1〜5Nの遺伝子のうちの1個若しくはそれ以上、又は好ましくは2個若しくはそれ以上の検出した発現レベルを既知の毒単独で曝された、それらと同じ遺伝子の発現レベル又は関連データと比較する。既知の1又は複数の毒の発現パターンを調節する化合物は、インビボで潜在的に有毒な生理作用を調節することが期待されるだろう。表1〜5N中の遺伝子は、既知の腎臓毒に曝されたとき、細胞で差次的に発現されるので、これらのアッセイにおいて特に適切な指標である。表1は、指定の毒に曝されて差次的に発現した遺伝子と、対応するGenBank受入番号と、ユニジーンクラスタータイトルと、を開示する。表2は、表1のいくつかの遺伝子が機能する代謝経路を示す。表3は、表1及び表2の差次的に発現したいくつかの遺伝子のヒトホモログを開示する。
【0141】
[00140] 別の様式では、表1〜5Nの遺伝子のオープンリーディングフレーム及び/又は転写調節領域間のリポーター遺伝子融合を含む株化細胞及びアッセイ可能な融合パートナーを調製する。多数のアッセイ可能な融合パートナーが知られており、容易に入手可能であるが、ホタルルシフェラーゼ遺伝子及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含む(Alamら、(1990)Anal.Biochem.188:245−254)。リポーター遺伝子融合を含む株化細胞を、適切な条件と時間で試験される薬剤に曝す。薬剤に曝された試料と対照試料との間のリポーター遺伝子の示差発現は、核酸の発現を調節する薬剤を同定する。
【0142】
[00141] 追加のアッセイ様式を用いて、表1〜5N中で同定された遺伝子の発現を調節する薬剤の能力をモニターできる。上述のように、例えば、mRNA発現は、本発明の核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションによって直接モニターできる。株化細胞を適切な条件と時間で、試験される薬剤にさらして、トータルRNA又はmRNAをSambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に開示されているもののような標準的な手順によって単離する。
【0143】
[00142] もう一つのアッセイ様式では、本発明の遺伝子産物を生理的に発現する細胞又は株化細胞をまず同定する。そのように同定された細胞及び/又は株化細胞は、転写装置の調節の忠実度が適当な表面伝達機構及び/又は細胞質カスケードと薬剤の外因性接触に関して、維持されるように必要な細胞機構を含むと期待されるだろう。さらに、そのような細胞又は株化細胞は、表1〜5Nの遺伝子産物をコードする構造遺伝子の端を含んでいる操作可能な非翻訳性の5’−プロモーターが1つ以上の抗原性フラグメント又は他の検出可能なマーカーであり、これらは本発明の遺伝子産物に特有であり、さらに前記フラグメントは、該プロモーターの転写調節の下にあり、ポリペプチドとして発現される(その分子量が天然に存在するポリペプチドから区別できるか、又はさらに免疫学的に識別される若しくは他の検出可能なタグを含む)ものに融合されたものを含んでなる発現媒体(例えば、プラスミド又はウイルス性ベクター)構築体で形質導入又は形質転換できる。そのようなプロセスは、当該技術において周知である(上記のSambrookらを参照)。
【0144】
[00143] 上記で概説したような細胞又は株化細胞を、それから、適切な条件下で薬剤と接触させる。例えば、その薬剤は薬学的に許容される賦形剤を含み、そして、生理的pHでのリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理的pHでのイーグル緩衝塩類溶液(BSS)、血清を含むPBS又はBSS、若しくはPBS又はBSS及び/又は血清を含む条件培地などの水性の生理的緩衝液に含まれる細胞と接触され、37℃でインキュベートされる。前記条件は、当業者が必要と思えば調節されるかもしれない。細胞を前記薬剤に接触させるのに続いて、該細胞を粉砕して、細胞溶解液のポリペプチドを、ポリペプチド画分がプールされ、免疫アッセイ(例えば、ELISA、免疫沈降又はウエスタンブロット)によってさらに処理されることになっている抗体と接触させられるように分画する。薬剤と接触された試料から単離したタンパク質のプールを次いで対照試料(非曝露又は既知の毒への曝露)と比較するが―そこでは賦形剤のみが細胞と接触される―、そして、その対照と比較して薬剤と接触された試料からの免疫学的に発生されたシグナルにおける増加又は減少を用いて、前記薬剤の有効性及び/又は毒作用を識別する。
【0145】
[00144] 本発明の別の実施の形態は、表1〜5Nの遺伝子によってコードされる1又は複数のタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬剤を同定するための方法を提供する。そのような方法又はアッセイは、所望の活性をモニター又は検出するいかなる手段をも利用できる。
【0146】
[00145] 1つの様式では、曝されていない対照細胞集団と比較しての試験される薬剤に曝された細胞集団と既知の毒に曝された細胞集団との間のタンパク質の相対量(表1〜5N)をアッセイする。この様式の中で、特異的抗体のようなプローブを用いて、異なる細胞集団でのタンパク質の差次的な発現をモニターする。株化細胞又は細胞集団を、適切な条件と時間の下で、試験される薬剤に曝す。曝された株化細胞又は細胞集団、及び対照の曝されていない株化細胞又は細胞集団から細胞溶解液を調製する。この細胞溶解液は、それから、プローブ(例えば、特異的抗体)で分析される。
【0147】
[00146] 上記の方法でアッセイした薬剤を無作為に選ぶことができるか、又は合理的に選ぶか若しくは設計することができる。本明細書で使用する場合、薬剤が本発明のタンパク質単独で、又はその関連する基質、結合パートナーなどとの会合に関与する特異的配列を考慮することなく無作為に選ばれるとき、その薬剤は無作為に選ばれるという。無作為に選ばれた薬剤の例は、化学的なライブラリ若しくはペプチドのコンビナトリアルライブラリ、又は生物の成長ブロスの使用である。
【0148】
[00147] 本明細書で使用する場合、薬剤がその作用と関連して、標的部位の配列及び/又はその立体配座を考慮する、無作為な基準ではなく選ばれるとき、その薬剤は合理的に選ばれるとか、設計されるという。薬剤は、これらの部位を構成するペプチド配列を利用することによって合理的に選ぶか、設計することができる。例えば、合理的に選ばれたペプチド薬剤は、そのアミノ酸配列が機能コンセンサス部位と同一であるか、又はその誘導体でありえる。
【0149】
[00148] 本発明の薬剤は、例えば、ペプチド、小分子、ビタミン誘導体、同様に炭水化物でありえる。ドミナントネガティブなタンパク質、これらのタンパク質をコードするDNA、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のペプチドフラグメント、又はこれらのタンパク質の模擬体は、機能に影響を及ぼすために細胞に導入される。本明細書で使用する「模擬体」とは、親ペプチドと化学的に構造は異なるが、組織分布的に、そして、機能的に親ペプチドと類似な構造を提供するためのペプチド分子の1つの領域又はいくつかの領域の改変を指す(Grant GA.Meyers(編)Molecular Biology and Biotechnology(New York,VCH Publishers,1995)中,659−664頁を参照)。当業者は、本発明の薬剤の構造上の性質に関して、制限がないと容易に認識できる。
【0150】
核酸アッセイ様式
[00149] 既知の腎臓毒(表1〜5N)に曝されると、差次的に発現されると同定した遺伝子を様々な核酸検出アッセイで使用して、与えられた試料中、1又は複数の遺伝子の発現レベルを検出又は定量できる。表1〜5Nに記載した遺伝子は、その差次的な発現が細胞又は組織での毒性に関連する、1つ以上の追加の遺伝子と組合せても使用されるかもしれない。好ましい実施の形態では、表1〜5N中の遺伝子は、先のかつ関連の出願である10/301,856(2002年11月22日出願)、10/152,319(2002年5月22日出願)、60/292,335(2001年5月22日出願);60/297,523(2001年6月13日出願);60/298,925(2001年6月19日出願);60/303,810(2001年7月10日出願);60/303,807(2001年7月10日出願);60/303,808(2001年7月10日出願);60/315,047(2001年8月28日出願);60/324,928(2001年9月27日出願);60/330,867(2001年11月1日出願);60/330,462(2001年10月22日出願);60/331,805(2001年11月21日出願);60/336,144(2001年12月6日出願);60/340,873(2001年12月19日出願);60/357,843(2002年2月21日出願);60/357,842(2002年2月21日出願);60/357,844(2002年2月21日出願);60/364,134;60/370,206(2002年3月15日出願、2002年4月8日出願);60/370,247(2002年4月8日出願);60/370,144(2002年4月8日出願);60/371,679(2002年4月12日出願);及び60/372,794(2002年4月17日出願)に記載される遺伝子の1つ以上と組合せられるかもしれず、これら全ては本出願の1頁で関連付けによって取り入れられる。
【0151】
[00150] 遺伝子発現を検出するいかなるアッセイ様式を使用してもよい。例えば、伝統的なノーザンブロッティング、ドットブロット又はスロットブロット、ヌクレアーゼ保護、プライマー指示された増幅、RT−PCR、半定量的若しくは定量的PCR、分枝鎖DNA及びディファレンシャルディスプレイ法が、遺伝子発現レベルを検出するために使われるかもしれない。それらの方法は、本発明のいくつかの実施の形態に有用である。より少ない数の遺伝子が検出される場合には、増幅に基づくアッセイが最も効率的であるかもしれない。しかしながら、本発明の方法及びアッセイは、多数の遺伝子の発現を検出するハイブリダイゼーションに基づく方法で、最も能率的に設計される。
【0152】
[00151] いかなるハイブリダイゼーションアッセイ様式を用いてもよいが、これには溶液に基づくアッセイ様式及び固体支持体に基づくアッセイ様式が含まれる。本発明の差次的に発現された遺伝子用オリゴヌクレオチドプローブを含む固体支持体は、フィルター、ポリ塩化ビニルディシュ、粒子、ビーズ、微粒子又はシリコン若しくはガラス基盤チップ等であり得る。そのようなチップ、ウエハー及びハイブリダイゼーション法は、広く利用でき、例えばBeattie(WO95/11755)によって開示されたものである。
【0153】
[00152] オリゴヌクレオチドが、直接的に又は間接的に、共有結合的に又は非共有結合的に、結合され得るいかなる固体の表面でも、使用することができる。好ましい固体支持体は、高密度アレイ又はDNAチップである。これらは、アレイ上で予め決められた位置に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含む。予め決められた位置は、1分子以上のプローブを含むかもしれないが、その予め決められた位置内の各分子は同一の配列を持つ。そのようなあらかじめ決められた位置は、特徴と呼ばれる。例えば、単一の固体支持体上に2、10、100、1,000から10,000、100,000個まで、又は400,000個又はそれ以上のこのような特徴があるかもしれない。固体支持体又はプローブが取り付けられる範囲は、約1平方センチメートル程度である。表1〜5Nの遺伝子に対応するプローブ、又は上記の関連出願からのプローブは、単一の又は複数の固体支持体に取り付けることができる。例えば、それらのプローブは、単一のチップ又は1つのチップセットを構成する複数のチップに取り付けることができる。
【0154】
[00153] 発現モニター用のオリゴヌクレオチドプローブアレイは、当該技術で知られているいかなる手法によっても製作し、かつ用いることができる(例えば、Lockhartら、Nat.Biotechnol.(1996)14,1675−1680;McGallら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(1996)93,13555−13460)。そのようなプローブアレイは、表1〜5Nに記載した2個若しくはそれ以上の遺伝子に相補的であるか、又はハイブリダイズする少なくとも2個以上のオリゴヌクレオチドを含む。例えば、そのようなアレイは、本明細書に記載される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100個若しくはそれ以上の遺伝子に相補的であるか、又はハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含んでよい。好ましいアレイは、表1〜5Nに挙げられた遺伝子の全て又はほぼ全て、或いは個別的には、表5A〜5Nの遺伝子セットを含む。好ましい実施の形態では、単一の固体支持体基質(例えば、チップ)上に表1〜5Nのいずれか1個又は全て遺伝子のうち、すべて又はほぼすべての遺伝子を検出するためのオリゴヌクレオチドを含むように、アレイが構築される。
【0155】
[00154] 表1〜5Nの発現マーカー遺伝子の配列は、公共のデータベースにある。表1は、配列の各々についてGenBank受入番号又はNCBIのRefSeqID(www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照)を提供し、また、遺伝子が一部となっているクラスタータイトルも提供する。表2は、各列挙した遺伝子が機能する代謝経路を列挙する一方、表3は、表1及び表2に記載の遺伝子のヒトホモログの遺伝子名及びクラスタータイトルを提供する。本出願の出願日現在でのGenBank及び/又はRefSeq中の遺伝子の配列は、明示により本明細書にそれらの全体が関連付けにより組み入れられ、関連する配列、例えば、異なる長さの同一遺伝子からの配列、該遺伝子の変異体配列、多型配列、ゲノム配列及び異なる種(適当な場合、ヒトに対応)からの関連配列も同様である。これらの配列は、本発明の方法に用いることができるか、或いは本発明のプローブ又はアレイを作製するのに用いることができる。ある実施の形態では、以前から毒性応答に関連する遺伝子又はフラグメントに一致する表1〜5N中の遺伝子は、その表から除外してよい。表4は、表3及び表5A−5Lで使用されるモデルコードのキーを提供し、ここで各モデルコードは毒の処置又は毒の処置の結果生じる一群の病理学的効果(疾患の状態)を表す。表5A〜5Nにおいて、差次的に発現している、すなわち、アップレギュレート又はダウンレギュレートされた遺伝子は、毒の処置に応答して、または特定の疾患の状態において、列挙されている。毒性応答が見出された、又は毒性応答が見出されなかった、サンプル中のこれらの遺伝子の発現レベルも示されている。
【0156】
[00155] 上述のように、表1〜5Nに開示されたGenBank受入番号又はNCBIのRefSeqIDの配列に加えて、天然に起こっている変異体又は多型の配列のような配列を本発明の方法及び組成物で使用してもよい。例えば、表1〜5Nに開示された遺伝子の様々な対立形質(allelic)体又は相同体の発現レベルをアッセイでき、ラット以外の種由来のホモログも含まれる。表1〜5Nに挙げられた遺伝子の機能活性を変えない、いかなるそして全てのヌクレオチド変異―本明細書に開示された遺伝子の天然に起こっている対立形質(allelic)変異体を含むが―を本発明の方法に用いて、本発明の組成物(例えば、アレイ)を作ることができる。
【0157】
[00156] 上記の遺伝子の配列に基づくプローブは、一般に利用できるいかなる方法によっても調製できる。組織若しくは細胞試料をスクリーニング又はアッセイするためのオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、適当な、相補的遺伝子又は転写物のみに特異的にハイブリダイズするのに十分な長さである。典型的には、オリゴヌクレオチドプローブが、長さで少なくとも10、12、14、16、18、20又は25個のヌクレオチドである。ある場合には、少なくとも30、40又は50個のヌクレオチドのより長いプローブが望ましいこともある。
【0158】
[00157] 本明細書で使用する場合、表1〜5Nに記載された遺伝子の1個若しくはそれ以上に相補的であるオリゴヌクレオチド配列とは、ストリンジェントな条件下、該遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを指す。そのようなハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは典型的には、該遺伝子にヌクレオチドレベルで、少なくとも約75%の配列一致性、好ましくは約80%又は85%の配列一致性、さらに好ましくは該遺伝子に約90%又は95%以上の配列一致性を示すことになる。
【0159】
[00158] 「実質的に結合する」とは、プローブ核酸と標的核酸間の相補的なハイブリダイゼーションを指し、標的ポリヌクレオチド配列の望ましい検出を達成するためにハイブリダイゼーション培地の厳密性を減らすことによって、適応することができる重要でないミスマッチを包含する。
【0160】
[00159] 「バックグランド」又は「バックグランドシグナル強度」という用語は、ラベルされた標的核酸とオリゴヌクレオチドアレイの成分(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ、対照プローブ、アレイ基質等)との間で、非特異的な結合、又はその他の相互作用から生じるハイブリダイゼーションシグナルを指す。バックグランドシグナルは、また、アレイ成分自身の内部蛍光によって生じるかもしれない。単一のバックグランドシグナルは、全アレイのために計算することができる、或いは、異なるバックグランドシグナルを各標的核酸のために計算してもよい。好ましい実施の形態では、バックグランドはアレイ中のプローブの最も低い5%〜10%に対する平均ハイブリダイゼーションシグナル強度として計算されるか、或いは、異なるバックグランドシグナルを各標的遺伝子のため計算する場合、各遺伝子のプローブの最も低い5%〜10%に対する平均ハイブリダイゼーションシグナル強度として計算される。当然ながら、当業者は、特定の遺伝子へのプローブがよくハイブリダイズして、標的配列に特異的に結合しているようにみえる場合は、それらをバックグランドシグナル計算に使用してはならないと理解するであろう。別法として、試料中に見出されるいかなる配列にも相補的でないプローブ(例えば、反対のセンスの核酸に指向されているプローブ、又は、試料が哺乳類の核酸であるとき、バクテリア遺伝子のような試料中に見出されない遺伝子に指向されているプローブ)へのハイブリダイゼーションによって生成されるハイブリダイゼーションシグナル強度として計算してもよい。また、バックグランドは、全くプローブを欠くアレイの領域によって生じる平均シグナル強度として計算されることもできる。
【0161】
[00160] 「特異的にハイブリダイズしている」又は「特異的にハイブリダイズする」という表現は、複雑な混合物(例えば、全細胞)のDNA又はRNA中に配列が存在するとき、ストリンジェントな条件下、特定の1又は複数の核酸配列に実質的に又はそれらだけに、ある分子が結合、二本鎖形成(duplexing)又はハイブリダイズすることを指す。
【0162】
[00161] 本発明のアッセイ及び方法は、入手可能な形態を利用して、同時に少なくとも約100個、好ましくは約1,000個、より好ましくは約10,000個、最も好ましくは約1,000,000個の異なる核酸ハイブリダイゼーションを選別できる。
【0163】
[00162] 本明細書で使用する場合、「プローブ」は、1種類以上の化学結合を通して、通常は相補的な塩基対形成を通して、通常は水素結合形成を通して、相補配列の標的核酸に結合することができる核酸として定義される。本明細書で使用する場合、プローブは天然型の塩基(すなわち、A、G、U、C又はT)又は修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を含む。加えて、それがハイブリダイゼーションを妨げない限り、プローブ中の塩基は、ホスホジエステル結合以外の結合でつながれていてもよい。したがって、プローブは、構成塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合でつながれているペプチド核酸であってもよい。
【0164】
[00163] 「完全なマッチプローブ」という用語は、特定の標的配列に、完全に相補的である配列を持つプローブを指す。試験プローブは、典型的には、標的配列の部分(部分配列(サブシークエンス))に対して完全に相補的である。完全なマッチ(PM)プローブは、「試験プローブ」、「規格化対照」プローブ、発現レベル対照プローブなどであり得る。しかしながら、完全なマッチ対照又は完全なマッチプローブは、「ミスマッチ対照」又は「ミスマッチプローブ」から区別される。
【0165】
[00164] 「ミスマッチ対照」又は「ミスマッチプローブ」という用語は、その配列が特定の標的配列に完全には相補的でないように故意に選ばれるプローブを指す。高密度アレイ中の各ミスマッチ(MM)対照に対して、同じ特定の標的配列に、完全に相補的である対応する完全なマッチ(PM)プローブが典型的には存在する。そのミスマッチは、1つ以上の塩基を含むかもしれない。
【0166】
[00165] ミスマッチは、ミスマッチプローブでどこにでも存在していてもよいが、末端ミスマッチはより望ましくない。なぜなら、末端ミスマッチは標的配列のハイブリダイゼーションを防ぎそうにないからである。特に好ましい実施の形態では、試験ハイブリダイゼーション条件下、そのミスマッチが標的配列との二本鎖を最も不安定にしそうな、プローブの中央又はその近くにミスマッチは位置する。
【0167】
[00166] 「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブがその標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列へは実体のないハイブリダイゼーションだけか、又は違いが確認される程度に他の配列にハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列に依存しており、異なる状況において異なることになる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。一般的には、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度とpHにおける特異的配列の熱融解点(Tm)より約5℃低く選ばれる。
【0168】
[00167] 典型的には、ストリンジェントな条件は、その塩濃度がpH7.0〜8.3において少なくとも0.01〜1.0MのNaイオン濃度(又は他の塩)であり、そして、温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)用には少なくとも約30℃であるものであろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加で達成することもできる。
【0169】
[00168] 「配列同一性のパーセント」又は「配列同一性」は、比較ウィンドウ又はスパンにわたって、2つの最適に整列した配列又は部分配列を比較することによって決定されるが、そこで比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分が、該2つの配列の最適な整列のための基準配列(それは、付加又は欠失を含まない)と比較して、随意に付加若しくは欠失(すなわち、ギャプ)を含むかもしれない。同一のサブユニット(例えば、核酸塩基又はアミノ酸残基)が両方の配列で起こる位置の数を決定しマッチした位置の数をだし、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中にある位置の全数で割り、そしてその結果に100を乗じて配列同一性のパーセントを出すことにより、前記パーセントを計算する。GAP又はBESTFITプログラム(下記参照)使用して計算したとき、配列同一性パーセントは、デフォルトギップの加重値を用いて計算する。
【0170】
プローブ設計
[00169] 配列設計の莫大な数が本発明の実施に適切であることを当業者は理解するであろう。高密度アレイは、興味ある配列に特異的にハイブリダイズする数多くの試験プローブを典型的に含む。プローブは、表中及び付随する代表的な配列表で同定されている遺伝子のいかなる領域から作製してもよい。その表中の遺伝子参照がESTである例では、その配列から、又は配列データベース(例えば、本明細書に記載されたもの)のどれかで入手可能であろう対応する全長転写物の他の領域から、プローブは設計されてもよい。与えられた1又は複数の遺伝子のためのプローブを作製する方法については、WO99/32660を参照。それに加えて、利用できるソフトウェアならなんでも用いて特定のプローブ配列を作成することができるが、これは例えば、Molecular Biology Insights、オリンパス光学工業(株)及びBiosoft Internationalから入手可能なソフトウェアを含む。好ましい実施の形態では、そのアレイはまた、1個若しくはそれ以上の対照プローブを含む。
【0171】
[00171] 本発明の高密度アレイチップは、「試験プローブ」を含む。試験プローブは、長さで約5〜約500個、又は約7〜約50個のヌクレオチド、より好ましくは約10〜約40個のヌクレオチド、そして、最も好ましくは約15〜約35個のヌクレオチドの範囲にあるオリゴヌクレオチドであってもよい。他の特に好ましい実施の形態では、プローブが長さで20個又は25個のヌクレオチドである。好ましいもう一つの実施の形態では、試験プローブは、二本鎖又は一本鎖DNA配列(例えば、cDNA断片)である。DNA配列は、自然源から単離されるかクローンされるか、或いは天然の核酸を鋳型に使用して増幅される。これらのプローブは、その発現を検出するように設計した遺伝子の特定の部分配列に相補的な配列を有する。このように、試験プローブは、それが検出するはずである標的核酸に、特異的にハイブリダイズすることができる。
【0172】
[00170] 興味ある標的核酸を結合する試験プローブに加えて、高密度アレイは、数多くの対照プローブを含むことができる。その対照プローブは、ここで1)規格化対照、2)発現レベル対照、そして3)ミスマッチ対照と呼ばれる3つのカテゴリーに分類されるかもしれない。
【0173】
[00172] 規格化対照は、ラベルされた参照オリゴヌクレオチドに、又はスクリーンされる核酸試料に加えられた他の核酸配列に相補的であるオリゴヌクレオチド、又は他の核酸プローブである。ハイブリダイゼーション後、規格化対照から得られるシグナルは、ハイブリダイゼーション条件の変化、ラベル強度、「読み」効率及び完全ハイブリダイゼーションのシグナルをアレイ間で変化させる他の因子、のための対照を提供する。好ましい実施の形態において、アレイ中全ての他のプローブから読まれるシグナル(例えば、蛍光強度)は、対照プローブからのシグナル(例えば蛍光強度)によって割られ、かくして、測定を規格化している。
【0174】
[00173] 実質的に、いかなるプローブでも、標準対照として役に立つかもしれない。しかしながら、ハイブリダイゼーション効率は、塩基組成及びプローブ長さとともに変化すると認められている。好ましい規格化プローブは、アレイに存在する他のプローブの平均長を反映するように選ばれるが、それらはある範囲の長さをカバーするように選ばれることができる。規格化対照も、また、アレイ中の他のプローブの(平均)塩基組成を反映するように選ばれ得るが、好ましい実施の形態では、1個か、数個のみのプローブを使用し、それらはよくハイブリダイズし(すなわち、二次構造をとらない)、そしていかなる標的特異的プローブにもマッチしないように選択される。
【0175】
[00174] 発現レベル対照は、生物学的試料中の恒常的に発現した遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブである。実質的に、恒常的に発現した遺伝子はどれも、発現レベル対照に対して適当な標的を提供する。典型的には、発現レベル対照プローブは、アクチン遺伝子、トランスフェリンレセプター遺伝子、GAPDH遺伝子などを含むがこれらに限らない、恒常的に発現した「ハウスキーピング遺伝子」の部分配列に相補的な配列を有する。
【0176】
[00175] 標的遺伝子に対するプローブ、発現レベル対照、又は規格化対照に対して、ミスマッチ対照が提供される。ミスマッチ対照は、1個以上のミスマッチ塩基の存在を除いて、対応する試験プローブ又は対照プローブと同一なオリゴヌクレオチドプローブ又は他の核酸プローブである。ミスマッチ塩基とは、そのプローブがさもなければ特異的にハイブリダイズするであろう標的配列中の対応する塩基に相補的でないように、選ばれる塩基である。適切なハイブリダイゼーション条件下(例えば、ストリンジェントな条件)、試験プローブ又は対照プローブがその標的配列にハイブリダイズすると期待されるが、ミスマッチプローブはハイブリダイズしないであろう(又は、かなり少ない程度でしかハイブリダイズしないであろう)ように、1個以上のミスマッチが選択される。好ましいミスマッチプローブは、中央ミスマッチを含む。このように、例えばプローブが20merである場合、対応するミスマッチプローブは、6位から14位(中央ミスマッチ)のどの位置でも単一の塩基ミスマッチ(例えば、G、C又はTをAのかわりとする)を除いて、同一の配列を持つことになる。
【0177】
[00176] かくして、ミスマッチプローブは、試料中でそのプローブが指示する標的以外の核酸に非特異的に結合するか、又はクロスハイブリダイゼーションするための対照を提供する。例えば、標的が存在するならば、完全なマッチプローブはミスマッチプローブより絶えず明るいはずである。それに加えて、全ての中央ミスマッチが存在するならば、ミスマッチプローブを使用して、変異(例えば、添付の表1〜5Nの遺伝子の変異)を検出することができる。完全なマッチプローブとミスマッチプローブとの間の強度の違いは、ハイブリダイズした材料の濃度の良い尺度を提供する。
【0178】
核酸試料
[00177] 細胞又は組織試料は、インビトロ又はインビボで試験薬剤に曝される。培養細胞又は組織が使用されるとき、適当な哺乳動物の細胞抽出物(例えば、肝臓抽出物)を、試験薬剤と共に加え、毒性を示すのに生体内変換を要するかもしれない薬剤を評価してもよい。好ましい様式では、動物又はヒト腎臓細胞の初代単離株(primary isolate)又は培養細胞株が使用される。
【0179】
[00178] 本発明によってアッセイされる遺伝子は、典型的にはmRNA又は逆転写されたmRNAの形態である。遺伝子は、クローン化されてもよいし、されなくてもよい。遺伝子は、増幅されてもよいし、されなくてもよい。クローニング及び/又は増幅は、集団内での遺伝子の表現にバイアスをかけるようには見えない。しかし、いくつかのアッセイでは、より少ないプロセッシングステップで使用できるので、材料としてpolyA+RNAを用いることが好ましいかもしれない。
【0180】
[00179] 当業者にとって明らかであるように、本発明の方法及びアッセイにおいて使われる核酸試料は、いかなる利用可能な方法又はプロセスによって調製されてもよい。トータルmRNAを単離する方法は、当業者に周知である。例えば、核酸の単離と精製の方法は、「生化学と分子生物学における研究室手法(第24巻) 核酸プローブとのハイブリダイゼーション:理論と核酸プローブ、P.Tijssen、編、Elsevier Press,N.Y.(1993)」の第3章に詳しく記載されている。そのような試料は、RNA試料を含むが、興味ある細胞若しくは組織から単離されるmRNA試料から合成されるcDNAをも含む。また、そのような試料は、cDNAから増幅されるDNA、及びその増幅されたDNAから転写されるRNAをも含む。当業者は、ホモジネートが使われる前に、ホモジネートに存在するRNA分解酵素を阻害又は破壊することが、望ましいと認めるだろう。
【0181】
[00180] 生物学的試料は、どんな生物並びにインビトロで育てられた細胞(例えば、株化細胞及び組織培養細胞)からのいかなる生体組織、液体又は細胞のものでもよい。しばしば、その試料は、化合物、薬剤、医薬、医薬組成物、潜在的な環境汚染物質又は他の組成物に曝された組織又は細胞試料である。ある様式では、試料は、患者に由来する試料である「臨床試料」であるだろう。典型的な臨床試料には、痰、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織若しくは細針バイオプシーの試料、尿、腹膜液や胸水、或いはそれらからの細胞が含まれるが、これらには限定されない。生物学的試料は、組織学的目的で取られた凍結切片又はホルマリン固定切片のような、組織の切片をも含むかもしれない。
【0182】
高密度アレイの作成
[00181] 合成のステップの最小数で、オリゴヌクレオチドの高密度アレイを作成する方法は、知られている。オリゴヌクレオチド類似体のアレイは、様々な方法で単一又は複数の固体基質上に合成することができ、これらは限定されないが、光指向された化学的カップリング及び機械的に指向されたカップリングを含む(Pirrung(米国特許第5,143,854号)を参照)。
【0183】
[00182] 手短に言えば、ガラス表面上でのオリゴヌクレオチドアレイの光指向されたコンビナトリアル合成は、自動化されたホスホラミダイト化学とチップマスキング手法を用いて進む。1つの特定的実施において、ガラス表面を、官能基(例えば、光反応性保護基によってブロックされている水酸基又はアミン基)を有するシラン試薬で誘導体化する。光リソグラフ性マスクを通しての光分解を使用して、導入する5’光保護されたヌクレオシドホスホラミダイトと化学反応する準備ができている官能基を選択的に露出する。そのホスホラミダイトは、照射された(かくして、光反応性ブロック基の除去によって曝される)部位のみと反応する。このように、ホスホラミダイトは前のステップで選択的に曝されるそれらの領域にのみ付加する。所望の配列アレイが固体表面上に合成されるまで、これらのステップが繰り返される。アレイ上の異なる位置での異なるオリゴヌクレオチド類似体のコンビナトリアル合成は、合成の間の照射パターンとカップリング試薬の添加の順序によって決定される。
【0184】
[00183] 前述のことに加えて、単一基質上でオリゴヌクレオチドのアレイを生成するために使用できる追加の方法は、PCT公開WO93/09668号とWO01/23614号に記載されている。高密度核酸アレイは、予め調製した、又は天然の核酸を予め決められた位置に置くことによって組み立てることもできる。合成又は天然の核酸は、光指向ターゲティング及びオリゴヌクレオチド指向ターゲティングによって、基質の特定位置に置かれる。別の実施の形態は、区域から区域に移動し、核酸を特定スポットに置くディスペンサーを使用する。
【0185】
ハイブリダイゼーション
[00184] 核酸ハイブリダイゼーションは、相補的な塩基対形成を通してプローブとその相補的な標的とが安定した混成二本鎖を形成することができる条件下、プローブと標的核酸とを接触させることを単に含む。WO99/32660を参照。混成二本鎖を形成しない核酸は、その後、洗い流されて、ハイブリダイズした核酸が検出されるのにまかせる(典型的には、付着した検出可能なラベルの検出を通して)。核酸を含んだ緩衝液の温度を上昇させるか、又はその塩濃度を減少させることによって、核酸が変性すると一般に認められている。低いストリンジェンシー条件下では(例えば、低温及び/又は高塩濃度)、アニールした配列が完全に相補的でない場合でも、混成二本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNA又はRNA:DNA)が形成される。このように、ハイブリダイゼーションの特異性は、低いストリンジェンシーで減少する。逆に、より高いストリンジェンシー(例えば、より高温及び/又は低塩濃度)では、うまくゆくハイブリダイゼーションは、より少ないミスマッチしか許容しない。ハイブリダイゼーション条件を選択して、いかなる程度のストリンジェンシーをも提供できると当業者は認識するであろう。
【0186】
[00185] 好ましい実施の形態では、ハイブリダイゼーションを確実にするために低いストリンジェンシー(この場合、37℃で6×SSPET(0.005% Triton X−100))で、ハイブリダイゼーションを実行し、それから、ミスマッチした混成二本鎖を除去するためにより高いストリンジェンシー(例えば、37℃で1×SSPET)で、続く洗浄を実行する。続く洗浄はハイブリダイゼーション特異性の要求されるレベルが得られるまで、ストリンジェンシーをより高くしながら(例えば、37℃から50℃で0.25×SSPETまで低く落として)実行されるかもしれない。ストリンジェンシーは、ホルムアミドのような薬剤の添加によっても増加することができる。存在することがありえる様々な対照(例えば、発現レベル対照、規格化対照、ミスマッチ対照など)へのハイブリダイゼーションと試験プローブへのハイブリダイゼーションを比較することによって、ハイブリダイゼーション特異性を評価できる。
【0187】
[00186] 一般に、ハイブリダイゼーション特異性(ストリンジェンシー)とシグナル強度の間にはトレードオフがある。このように、好ましい実施の形態では、一貫した結果を生む、そして、バックグランド強度のおよそ10%を超えるシグナル強度を与える最も高いストリンジェンシーで、洗浄を実行する。このように、好ましい実施の形態では、ハイブリダイズしたアレイは、継続してより高いストリンジェンシー溶液で洗浄され、各洗浄の間に読み取られる。このようにでてきたデータセットの解析により、それ以上ではハイブリダイゼーションパターンが認めうるほどに変化せず、適切なシグナルを興味ある特定のオリゴヌクレオチドプローブのために適切なシグナルを提供する洗浄ストリンジェンシーが明らかとなる。
【0188】
シグナル検出
[00187] ハイブリダイズした核酸は、試料核酸に付けられた1つ以上のラベルを検出することによって典型的に検出される。ラベルは、当業者に周知である数多い手段のいずれによって取り込まれてもよい。WO99/32660を参照。
【0189】
データベース
[00188] 本発明には、配列情報(例えば、表1〜5Nの遺伝子)と同様に、様々な標準的毒に曝された組織又は細胞からの遺伝子発現情報又は関連情報(例えば、本明細書に記載のもの、表5A〜5Nを参照)を含んでいる関連あるデータベースが含まれる。データベースは、与えられた配列又は組織試料に関連する情報をも含むかもしれないが、これは例えば、配列情報と関連する遺伝子についての記載的な情報(表1及び2を参照)や組織試料の臨床状態又はその試料が由来する動物に関する記載的な情報である。データベースは、例えば配列データベースと遺伝子発現データベースというような異なる部分を含むようになっているかもしれない。そのようなデータベースの配置と構築のための方法及びそのようなデータベースがセーブされるコンピューター読み取り可能な媒体は、広く利用できる。例えば、その全体が関連付けにより本明細書に取り入れられている、2002年3月5日に出願された米国公開番号2003−0171876(出願番号10/090,144)、2002年11月23日に公開されたPCT公開番号WO02/095659、米国特許5,953,727号を参照されたい。好ましい実施の形態において、データベースはジーン・ロジック社(ゲーサーズバーグ、メリーランド州)が販売するToxExpress(登録商標)である。
【0190】
[00189] 本発明のデータベースは、外部のデータベースとリンクされていてもよいが、これらは例えば、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez.index.html)、KEGG(www.genome.ad.jp/kegg)、SPAD(www.grt.kyushu−u.ac.jp/spad/index.html)、HUGO(www.gene.ucl.ac.uk/hugo)、Swiss−Prot(www.expasy.ch.sprot)、Prosite(www.expasy.ch/tools/scnpsitl.html)、OMIM(www.ncbi.nlm.nih.gov/omim)及びGDB(www.gdb.org)である。好ましい実施の形態では、表1〜5Nに記載されているように、外部データベースはGenBank及び国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって維持されているそれに関連するデータベースである。
【0191】
[00190] 配列情報、遺伝子発現情報及びデータベース中のその他の情報又は入力として提供された他の情報の間の必要な比較を実行するためには、適当なコンピュータープラットフォーム、ユーザーインターフェースなどを用いてもよい。例えば、多数のコンピューターワークステーションが様々な製造業者から入手可能である。クライアント/サーバー環境、データベースサーバー及びネットワークも、本発明のデータベースのために広く利用できて、適当なプラットフォームである。
【0192】
[00191] 本発明のデータベースを用いて、とりわけ、与えられた遺伝子が発現する細胞の型又は組織をユーザーが決定することが可能な電子ノーザン(E−NORTHERN(商標)、ジーン・ロジック社(ゲーサーズバーグ、メリーランド州))を生成し、そして特定の組織又は細胞中の与えられた遺伝子の存在量及び発現レベルを決定することが可能となる。
【0193】
[00192] 組織又は細胞において表1〜5Nの1個若しくはそれ以上の遺伝子を含む遺伝子セットの発現レベルを同定する情報であって、試験薬剤に曝された細胞又は組織中で表1〜5N中の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを、データベース中のその遺伝子の発現レベルと比較するステップを含むものを提供するために、本発明のデータベースを用いることができる。ある実施の形態において、そのような方法を用いて、試験薬剤に曝された組織又は細胞試料から、表1〜5Nの1又は複数の遺伝子の発現レベルを、標準毒又は腎臓毒(例えば、本明細書に記載されたもの)に曝された対照組織試料又は細胞試料で見出される発現レベルと比較することによって、与えられた化合物の毒性ポテンシャルを予測しうる。そのような方法は、また、本明細書に記載されるように、薬又は薬剤スクリーニングアッセイでも使われるかもしれない。
【0194】
キット
[00193] 本発明は、異なる組合せで、高密度のオリゴヌクレオチドアレイ、アレイと使用する試薬、表の遺伝子によってコードされるタンパク質試薬、シグナル検出とアレイ−プロセッシング機器、遺伝子発現データベース及び上記の解析・データベース管理ソフトウェアを組合せたキットをさらに含む。例えば、前記キットを用いて、試験化合物の毒性反応を予測し、モデリングし、腎臓疾患の状態の進行をモニターし、新しい薬標的としての見込みを示す遺伝子を同定し、そして上記で議論したように既知及び新しく設計された薬をスクリーニングすることができる。
【0195】
[00194] キットとパッケージされるデータベースは、ヒト又は実験動物の遺伝子及び遺伝子断片(表1〜5Nの遺伝子に対応する)からの発現パターンの編集体である。特に、データベースソフトウェアとパッケージされた情報−コンピューター読み取り可能な媒体にセーブされたデータベースも含む−には、試験薬剤によって誘導される表1〜5Nの遺伝子の発現レベルを表5A〜5Nに提示される発現レベルと比較することによって、試験薬剤の毒性を予測するために使用することができる、表1〜5Nの発現結果が含まれる。別の様式では、データベースとソフトウェア情報は、例えば、ウェブサイトのようにアドレスがキットとパッケージされた、遠隔電子フォーマットで提供されるかもしれない。
【0196】
[00195] キットは、製薬業界で使用されるが、そこでは医薬開発に関連する高いコストのために早期の医薬試験への要求が強いが、バイオインフォマティクス、特に遺伝子発現情報がまだ欠落している。これらのキットは、細胞培養や実験動物を使用する伝統的な新薬スクリーニングに伴うコスト、時間及びリスクを低減するであろう。予めグループ分けされた患者集団、薬理ゲノミクス試験の大規模な医薬スクリーニングの結果も、またより大きい効能とより少ない副作用を備える薬を選ぶために応用できる。そのような大規模試験を実施するための施設を持たない規模の小さいバイオテクノロジー会社及び研究機関によっても前記キットは、使用されるであろう。
【0197】
[00196] マイクロアレイと使用するように設計されたデータベースとソフトウェアは、Balabanらの米国特許第6,229,911号(少数又は多数のマイクロアレイから収集され、表1〜5Nにインデックスされたように保存されている情報を管理するためのコンピューターで実行される方法)及び第6,185,561号(遺伝子発現レベルデータを集め、追加の特性を加え、そしてそのデータをフォーマットし直して様々な質問に対する答えを出すデータマイニング能力を有する、コンピュータベースの方法)で議論されている。Cheeらの米国特許第5,974,164号には、参照配列にハイブリダイズする野生型及び変異型配列間のプローブ蛍光強度の差異に基づいて、核酸配列中の変異を同定するためのソフトウェアベースの方法が開示されている。
【0198】
[00197] さらに説明することなく、当業者は前の記載と以下の例示的な実施例を使って、本発明の化合物を作りそして利用することができ、特許請求の範囲に記載の方法を実施できると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好適な実施の形態を特定的に指摘するものであり、開示の残りをいかようにも制限するもとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0199】
(実施例1) 線形判別分析(LDA)を利用した毒性マーカーの同定
[00198] 腎臓毒であるインドメタシン、ジフルニサル、コルヒチン、クロロホルム、ジクロフェナク、メナジオン、クロム酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、チオアセトアミド、バンコマイシン、アシクロビル、アドリアマイシン、AY−25329、ブロモエチルアミンHBr(BEA)、カルボプラチン、四塩化炭素、セファロスポリン、シドフォビル、シスプラチン、シトリニン、シクロホスファミド、シクロスポリン、ゲンタマイシン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヒドララジン、イホスファミド、塩化リチウム、塩化第二水銀、パミドロネート、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、セムスチン、およびスルファジアジンを当該技術分野で以前に記載され、そして上記で議論した優先権出願に記載されているような投与希釈剤、プロトコルや投与計画を用いて、様々な時点において、雄性SD系ラットに投与した。陰性対照として、セフタジジム、ストレプトマイシン、トランスプラチン、カプトプリル、フェノバルビタール、タモキシフェンおよびテモゾロミドを使用した。表4でラベルしたように毒素A〜Gを使用した実験において、血液サンプル及び組織サンプルを以下の時点において採取した:クロロホルム(A)、チオアセトアミド(F)及びバンコマイシン(G)は曝露の6、24、48時間後;ジクロフェナク(B)及びメナジオン(C)は曝露の3、6、24時間後;クロム酸ナトリウム(D)及びシュウ酸ナトリウム(E)は曝露の6、24、72時間後。これらの化合物について、曝露時間を変化させても遺伝子発現のレベルに顕著な変化は認められなかった、つまり、短い又は長い時点で差次的な遺伝子発現の同じパターンが見られた。各化合物の低用量レベル又は高用量レベルは、以下のチャートに示す。
【0200】
[00199]
【表】

【0201】
[00200] 残りの化合物に関して、投与量及び投与法方は以下の通りである。
【0202】
【表】

【0203】
上で議論した優先権出願で既に記載した時点において、動物を犠牲にし、サンプルを回収した。
【0204】
[00201] 投与後、投与された動物を観察し、そして、組織を以下に記載したように収集した。
【0205】
動物の観察
[00202] 1.ケージ側面観察 毎日2回、死亡率と瀕死性をチェック。皮膚と毛、目と粘膜、呼吸系、循環器系、自律神経系及び中心神経系、体性運動パターン及び行動パターンをチェックした。震え、痙攣、唾液分泌、下痢、傾眠、昏睡又は異常な行動や外見を含む、毒性の可能性のある兆候が起こったときに、発症の時間、程度及び持続時間も含めて記録した。
【0206】
[00203] 2.身体検査 ランダム化の前、最初の処置前に、そして犠牲の前に。
【0207】
[00204] 3.体重 ランダム化の前、最初の処置前に、そして犠牲の前に。
【0208】
臨床病理
[00205] 1.頻度 死体解剖の前に。
【0209】
[00206] 2.動物の数 全ての生き残っている動物。
【0210】
[00207] 3.出血手順 70%CO/30%O麻酔下にあるあいだに、眼窩洞に穴を開けて血液を得た。
【0211】
[00208] 4.血液試科の採取 血液学パラメーターの評価のために、約0.5mLの血液をEDTAチューブに集めた。臨床化学分析のために、約1mLの血液を血清セパレーターチューブに集めた。試験化合物/代謝産物の推定のために、約200μLの血漿を取得して、−80℃で凍結した。追加の2mLの血液を15mL円錐状ポリプロピレン・バイアルに収集して、直ちに3mLのTrizolを加えた。内容物を直ぐにボルテックス及び繰り返し逆さまにして混合した。それらチューブを液体窒素中で凍結して、−80℃で保存した。
【0212】
終結手順
終結犠牲
[00209] 最初の投与から、約3、6、24、48、72、120、144、168、336及び/又は360時間後に、ラットを計量し、身体検査して、断頭によって犠牲にし、失血させた。犠牲の約5分以内に動物を死体解剖した。頭蓋帽を開くのに使用した骨切断機を除いては、別々の滅菌した、使い捨ての機器を各々の動物のために使用した。その骨切断機は、動物と動物の間に殺菌剤溶液に浸した。
【0213】
[00210] 委員会に認証された病理学者に承認された手順に従って、各動物の死体解剖を実施した。
【0214】
[00211] 終結犠牲まで生き残っていない動物は、死体解剖(もし瀕死であるなら、二酸化炭素仮死状態による安楽死に続いて)することなく捨てられた。瀕死又は死んでいるのが見つかった動物の死のおおよその時間を記録した。
【0215】
死後手順
[00212] 新しくそして滅菌した使い捨て機器を使用して組織を収集した。組織又はバイアルを取り扱うときは、手袋をいつでも着用した。全ての組織は、動物の死のおよそ5分以内に採取して、凍結した。肝臓切片及び腎臓は、動物の死のおよそ3〜5分以内に凍結した。安楽死の時間、肝臓切片及び腎臓の凍結の暫定的な時点、及び死体解剖完了の時を記録した。組織を約−80℃で保存するか、又は10%中性緩衝ホルマリンに保存した。
【0216】
組織採取及び処理
[00213] 肝臓
1.内側右葉 液体窒素で瞬時に凍結し、そして約−80℃で保存した。
2.内側左葉 10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に保存し、全体の及び顕微鏡での病理検査のために評価した。
3.外側左葉 液体窒素で瞬時に凍結し、そして約−80℃で保存した。
【0217】
[00214] 心臓
2つの心房の部分及び2つの心室の部分を含んでいる矢状横断面を10%NBFに保存した。残っている心臓を液体窒素で凍結して、約−80℃で保存した。
【0218】
[00215] 腎臓(両方)
1.左: 半分に切開した。半分を10%NBFに保存して、そして残っている半分を液体窒素中で凍結して、約−80℃で保存した。
2.右: 半分に切開した。半分を10%NBFに保存して、そして残っている半分を液体窒素中で凍結して、約−80℃で保存した。
【0219】
[00216] 精巣(両方)
各精巣の矢状横断面を10%NBFに保存した。残っている精巣を液体窒素中、一緒に凍結して、約−80℃で保存した。
【0220】
[00217] 脳(全部)
大脳半球及び間脳の横断面を10%NBFに保存し、そして脳の残りを液体窒素中で凍結して約−80℃で保存した。
【0221】
[00218] マイクロアレイ試料の調製は、アフィメトリクス ジーンチップ(登録商標)発現技術解析マニュアル(Affymetrix GeneChip Expression Techinical Analysis Manual;アフィメトリクス社、サンタクララ、カリフォルニア州)に記載されているプロトコルに従い、若干の修正の上、実施した。凍結した組織は、Spex Certiprep 6800 Freezer Millを使用して、粉末にすりつぶした。トータルRNAは、製造業者のプロトコルを利用してTrizol(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)で抽出した。各試料用のトータルRNA収率は、300mgの組織重量あたり200〜500μgであった。Oligotex mRNA Midiキット(Qiagen)を使用してmRNAを単離し、エタノール沈殿を行った。SuperScript Choice System(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)を使用して、mRNAから二本鎖cDNAを生成させた。第1鎖cDNA合成をT7−(dT24)オリゴヌクレオチドでプライムした。そのcDNAをフェノール−クロロホルムで抽出して、終濃度1μg/mLにエタノール沈殿した。2μgのcDNAからAmbion’s T7 MegaScript in vitro Transcription Kitを使用してcRNAを合成した。
【0222】
[00219] cRNAをビオチンラベルするために、ヌクレオチドBio−11−CTPとBio16−UTP(Enzo Diagnostics)を反応液に加えた。6時間、37℃のインキュベーションに続いて、不純物はRneasy Minikitプロトコル(Qiagen)に従って、ラベルされたcRNAから取り除いた。cRNAを94℃で35分間、断片化した(200mM Tris−酢酸、pH8.1、500mM 酢酸カリウム、150mM 酢酸マグネシウムからなるフラグメンテーション緩衝液)。アフィメトリクスのプロトコルに従って、55μgの断片化したcRNAを、45℃のハイブリダイゼーション・オーブン中で、60rpmで24時間セットしたアフィメトリクスラットアレイ上にハイブリダイズさせた。チップを洗浄して、Affymetrix fluidics station中、ストレプトアビジンフィコエリトリン(SAPE)(Molecular Probe)で染色した。染色を増幅するために、抗ストレプトアビジン ビオチン化抗体(Vector Laboratories)染色ステップを間に挟んで、SAPE溶液を2回加えた。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光測定スキャンニング(Hewlett Packard Gene Array Scanner)によって検出した。データは、Affymetrix GeneChip(登録商標)バージョン2.0及びExpression Data Minig(EDMT)ソフトウェア(バージョン1.0)、GeneExpress(登録商標)データベース及びS−Plus(登録商標)統計解析ソフトウェア(Insightful Corp.)を使用して解析した。
【0223】
[00220] 表1及び表2には、示された毒に曝されたときに差次的に発現するそのような遺伝子及びそれらの対応するGenBank受入番号及び配列識別番号、遺伝子が機能する代謝経路の正体、知られている場合には遺伝子名、並びにUnigeneクラスター名が開示される。モデルコードは、各遺伝子が識別することができる様々な毒性状態、及び各遺伝子に関連する個々の毒のタイプを表す。コードは表4に定義される。GLGC IDはジーン・ロジック内部の識別番号である。
【0224】
[00221] 表3には、示された毒に曝されたときに差次的に発現する表1及び表2におけるそのような遺伝子のヒトホモログであるそのような遺伝子が開示される。対応するGenBank受入番号及び配列識別番号、知られている場合には遺伝子名、そしてヒトホモログのUnigeneクラスター名が示される。
【0225】
[00222] 表4は、表5A〜5Nのモデルコードを定義する。
【0226】
[00223] 表5A〜表5M(個々の毒モデル、病理モデル及び一般毒モデル)には、行われた比較のそれぞれに対する統計概要が開示される。表5Aはクロロホルム毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表5Bはジクロフェナク毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Cはメナジオン毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。クロロホルム毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Dはクロム酸ナトリウム毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Eはシュウ酸ナトリウム毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Fはチオアセトアミド毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Gはバンコマイシン毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Hは腎近位尿細管のS2セグメントへの損傷の病理モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Iは腎近位尿細管毒性の病理モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Jは糸球体損傷の病理モデルからの遺伝子発現情報を含む。表Kは尿細管閉塞の病理モデルからの遺伝子発現情報を含む。表LはNSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。最後に、表Mは一般毒性モデルからの遺伝子発現情報を含む。
【0227】
[00224] これらの表はそれぞれが、予測遺伝子のセットを含み、未知の化合物、すなわち、試験されていない化合物の腎臓毒性を予測するためのモデルをもたらす。それぞれの遺伝子は、そのジーン・ロジック識別番号によって識別され、表1及び表2における遺伝子名及び代表的な配列番号に対して相互参照することができる。毒性群における試料(特定の毒に曝されたことによる影響を受けた試料)と非毒性群における試料(その同じ特定の毒に曝されたことによる影響を受けなかった試料)との間における遺伝子発現レベルのそれぞれの比較のために、毒性平均(毒性群試料について)は、アッセイされている様々なチップパラメーターについて規格化されたときの平均シグナル強度である。非毒性平均は、特定の毒の高用量で処置された動物とは異なる動物から得られたサンプルにおける、アッセイされている様々なチップパラメーターについて規格化されたときの平均シグナル強度を表す。これらの動物は、低用量の特定のトキシンで、又はビークル単独で、又は異なる毒で処置された。毒性群における試料は、既に記した時点で屠殺された動物から得られ、一方、非毒性群における試料は、実験におけるすべての時点で屠殺された動物から得られた。個々の遺伝子について、非毒性平均と比較した場合の毒性平均の増大は、トキシンに曝されたときのアップレギュレーションを示している。逆に、非毒性平均と比較した場合の毒性平均の低下はダウンレギュレーションを示している。
【0228】
[00225] 平均値は、対応する試料全体で平均化された特定の遺伝子に対する平均差(AveDiff)値から導かれる。個々の平均差値はそれぞれが、特定のフラグメントについて覆われる多数のプローブ対から得られる強度情報を積分することによって計算される。規格化により、所与の実験(チップ)に対するそれぞれの発現強度が全体的な調整係数(scaling factor)で乗ぜられる。この規格化の意図は、チップ間の個々の遺伝子の比較を可能にすることである。調整係数は下記のように計算される:
【0229】
[00226]1.実験における規格化されていない発現値のすべてから、最大値側の2%及び最小値側の2%の値を除く。すなわち、実験により、10,000個の実験値が得られた場合、それらの値を順に並べ、最小値側の200個及び最大値側の200個を除く。
2.残った値の平均値に等しい調整平均を計算する。
3.調整係数SF=100/(調整平均)を計算する。
【0230】
[00227] ここで使用される100の値は、使用された基準標的の値である。AveDiff値のいくつかは、核酸ハイブリダイゼーション実験に含まれる一般的なノイズのために負になることがある。多くの結論を、GeneChip(登録商標)プラットフォームでの負の値に対応して下すことができるが、個々のフラグメントについて負の値の背後にある意味を評価することは困難である。本発明者らの観測結果は、負の値が予測遺伝子セット内において何度も観測されるが、これらの値は測定が行われたすべての試料にわたって非常に再現的である実際の生物学的現象を反映することを示している。この理由のために、負の値を示すそのような遺伝子が予測セットに含められる。遺伝子発現測定の他のプラットフォームにより、対応する遺伝子について負の数字が解消され得ることに留意しなければならない。そのような遺伝子の個々の予測能はプラットフォーム中に広がる。それぞれの平均値には、平均値に対する標準偏差が伴う。表に開示されるような線形判別分析スコア(判別スコア)により、サンプルが毒性であるか否かを予測する各遺伝子の能力が評価される。判別スコアは、下記の工程によって計算される:
【0231】
判別スコアの計算
[00228] 1. Xが非毒試料、i=1、…、nにわたる、与えられた遺伝子のAveDiff値を表わすとする。
2. Yが毒試料、i=1、…、tにわたる、与えられた遺伝子のAveDiff値を表わすとする。
計算を次のように進める。
3. XとYに対する平均値と標準偏差を計算して、そして、これらをm、m、s、sと表示する。
4. 全てのXとYに対して、関数
f(z)=((1/s)*exp(−.5*((z−m)/s))/(((1/s)*exp(−.5*((z−m)/s))+((1/s)*exp(−.5*((z−m)/s)))の数値を求める。
5. 正しい予測(例えば、P)の数は、f(Y)>.5であるYの数にf(X)<.5であるXの数を足した数である。
6. 判別式スコアは、それからP/(n+t)である。
【0232】
[00229] 線形判別分析は、試料を分類するのに、各遺伝子の個々の測定値と遺伝子の全ての組合せの計算された測定値の両方を使用する。各遺伝子については、加重値は毒性グループと非毒性グループの平均と標準偏差から導かれる。あらゆる遺伝子に加重値が乗ぜられ、そして、これらの値の合計が集合的な判別スコアをもたらす。この判別スコアは、それから毒性グループと非毒性グループの集合的な中心(重心)に対して比較される。これらの中心は、それぞれ毒性と非毒性全ての試料の平均値である。したがって、各遺伝子は、全体的な予測に貢献する。この貢献は、その遺伝子に対する毒性と非毒性試料の間の相対的な間隔が大きいならば、大きい正値又は負値であり、相対的な間隔が小さいならば、小さい数値である加重値に依存している。各未知試料の判別スコアと中心値を使用して、その未知試料がどのグループに属しているかについて、0と1の間の確率を計算することができる。
【0233】
(実施例2:RMA及びPLSアルゴリズムを利用した毒性マーカーの同定
[00230] 上述の実施例1で述べたように、動物に対して毒素およびビークルコントロールを投与し、動物を犠牲にし、RNAの調製およびRNAのDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションを行い、遺伝子発現値を得た。以下の毒素および陰性対照を使用し、表6のプロトコルに従って投与した。
【0234】
[00231] RMA/PLSモデルを以下のように構築した。1又はそれ以上の毒素研究から得たDNAマイクロアレイデータから、RMAフォールドチェンジ発現値の行列を作成した。これらの値は、例えば、以下の方程式:T(PMij)=e+a+εijを使用してlogスケール線形付加モデルを生成するIrizarryらの方法(Nucl Acids Res 31(4):e15、2003)に従い、得ることができる。上式でTは変換を表し、すなわちバックグラウンドを補正し、規格化し、PM(完全なマッチ)強度をログスケールに変換することを表す。eは、アレイi=1−I上に見出されたlog2スケール発現値を表し、aは、プローブj=1−Jに関するlogスケール親和作用を表し、εijは誤差を表す(異なる強度で結合するプローブを使用したときに、分散の差を補正するため)。RMAフォールドチェンジ行列では、行が個々の断片を表し、列が個々のサンプルを表す。次いでビークルコホートメジアン行列を計算したが、その行列において、行は断片を表し、列はビークルコホートを表し、研究/時点の組合せごとに1つのコホートが存在する。この行列の値は、これらコホート内のサンプル全体のメジアンRMA発現値である。次に、規格化RMA発現値の行列を作成したが、その行列において、行は個々の断片を表し、列は個々のサンプルを表す。規格化RMA値は、RMA値から、時間が一致しているビークルコホートに対応したビークルコホートメジアン行列からの値を引いたものである。次いでPLSモデル化を、−1=非毒素、+1=毒素である監視スコアベクトルを使用して、規格化RMA行列(以下に述べるように、ある特定の断片の取得による部分集合)に適用した。
【0235】
[00232] 断片を選択するため、ビークルコホート平均行列を作成したが、その行列において、行は断片を表し、列はビークルコホートを表し、研究/時点の組合せごとに1つのコホートが存在する。この行列における値は、これらコホート内のサンプル全体の平均RMA発現値である。次いで処理したコホートの平均行列を作成したが、その行列において、行は断片を表し、列は処理した(ビークルではない)コホートを表し、研究/時点/化合物/用量の組合せごとに1つのコホートが存在する。この行列における値は、これらコホート内のサンプル全体の平均RMA発現値である。次に、処理したコホートのフォールドチェンジ行列を作成したが、その行列において、行は断片を表し、列は処理したコホートを表し、研究/時点/化合物/用量の組合せごとに1つのコホートが存在する。この行列における値は、処理したコホートの平均行列の値から、適切な時間一致のビークルコホートに対応したビークルコホート平均行列の値を引いたものである。引き続き、処理したコホートのp値行列を作成したが、その行列において、行は断片を表し、列は処理したコホートを表し、研究/時点/化合物/用量の組合せごとに1つのコホートが存在する。この行列における値は、処理したコホートの平均値と、適切な時間一致のビークルコホートに対応したビークルコホート平均値とを比較する、2サンプルのt検定に基づいたp値である。この行列を、0.05未満であり(1とコード化される)または0.05を超える(0とコード化される)p値に基づいて、バイナリコードに変換した。
【0236】
[00233] バイナリ処理したコホートのp値行列の行の和を計算したが、その行の和は断片ごとの「調節スコア」を表し、断片が選択的調節(上方または下方調節)を示す処理済みコホートをその時間一致のビークルコホートと比較したものの総数を表す。次いでPLSのモデル化および相互検証を実施したが、これは、調節スコアにより上位N個の断片を取得し、Nを変化させ、Nごとにモデル成功率を記録することに基づいて行った。Nは、相互検証のエラー率が最小限に抑えられるようなポイントになるよう選択した。PLSモデルでは、これらN個の断片のそれぞれが、モデルの断片ユーティリティまたは予測能力に対応したPLS重み(PLSスコア)を受け取る。表5Nのデータは、2179個のサンプルのアッセイを行った腎毒性予測モデルから得た。この予測モデルは、782個の遺伝子の発現レベルに基づく。したがって、一組の遺伝子および監視されたサンプルのグループ化を使用することにより、PLSは、最適な予測重みを特定することができる。
【0237】
[00234] 試験化合物で処理した動物からのサンプルが毒素応答を示すか否かを決定するため、上述の実施例1で述べたように、処理サンプルからRNAを調製し、DNAマイクロアレイとハイブリダイズする。遺伝子発現情報から、以下の方程式に従って、そのサンプルに関する予測スコアを計算し、腎毒性参照データベースからの参照スコアと比較する。サンプル予測スコア=ΣwFCiである。「i」は、評価すべき遺伝子発現プロフィルの遺伝子ごとのインデックスナンバーである。「w」は、遺伝子ごとのPLS重み(又はPLSスコア、表5N参照)である。「RFCi」は、第i番目の遺伝子に関するRMAフォールドチェンジ値であり、サンプルから得た遺伝子発現データの規格化RMA行列(上述)から決定されたものである。PLS重みにRMAフォールドチェンジ値を掛けることによって、遺伝子ごとの予測スコアが得られ、個々の遺伝子全てに関する予測スコアを加えることによって、サンプルに関する予測スコアが得られる。本発明の腎毒性データベースでは、カットオフ予測スコアが約0.318である。サンプルスコアが約0.318以上である場合、サンプルは、試験化合物に曝露された後に毒性応答を示すことを予測することができる。サンプルスコアが0.318よりも低い場合、サンプルは毒性応答を示さないことを予測することができる。
【0238】
[00235] モデルは、毒性応答を予測することのできない遺伝子ごとに−1のスコアを設定することによって、また毒性応答を予測することのできる遺伝子ごとに+1のスコアを設定することによって、慣らすことができる。RMA/PLSモデルの相互検証は、化合物ドロップ法によって、また2/3:1/3法によって行った。化合物ドロップ法では、ある特定の試験化合物で処理した動物からのサンプルデータをモデルから取り出し、このモデルの毒性予測能力を、全データ集合を含むモデルの予測能力と比較した。2/3:1/3法では、モデル内のランダムな3分の1の遺伝子からの遺伝子発現情報を取 り出し、この部分集合モデルの毒性予測能力を、全データ集合を含むモデルの予測能力と比較した。
【0239】
[00236] 腎毒性を予測するためのLDAモデルと比較すると、RMA/PLSモデルは、真の陽性サンプル率が約10%増加したことを示し(89%対79%)、偽陽性サンプル率が約1.5%増加したことを示した(2.5%対1%)。
【0240】
(実施例3:一般毒性モデル作製)
[00237] 試料が、主成分分析(PCA)を用いてそれぞれの研究を個々に調べて、どの処置が観測可能な応答を有するかを明らかにすることによって毒性応答群及び毒性非応答群へのグループ分けのために選択された。それらの毒性応答状態及び毒性非応答状態の信頼度が明らかにされた群のみが、一般的な毒性モデルを組み立てる際に含められた(表5M)。
【0241】
[00238] 線形判別モデルが、毒性試料及び非毒性試料を記述するために作製された。最高の判別遺伝子及び/又はESTが、分散の等分散的処理及び異分散的処理ならびに遺伝子間の相互情報の包含又は排除とともにそれぞれの遺伝子寄与を計算することによって毒性を明らかにするために使用された。データベース内の試料の予測は、真の陽性が80%越え、偽陽性率は5%未満であった。遺伝子及び/又はESTの組み合わせは、個々の遺伝子よりも良好な予測能を一般にもたらすこと、そして使用される遺伝子及び/又はESTが多いほど、予測能が良好であることが明らかにされた。好ましい実施形態には、50個以上の遺伝子が含まれるが、遺伝子及び/又はESTの多くの対形成又はより多くの組み合わせが個々の遺伝子よりも良好に機能し得る。選択されたリスト(表5M)からの2つ以上の遺伝子の組み合わせはすべてが、毒性を予測するために使用され得る。これらの組み合わせは、集団として、区別的に、又は無作為なアプローチでの対形成によって選択することができる。さらに、今までのところ明らかにされていない遺伝子及び/又はESTを、予測能を増大させるために、本明細書に記載される遺伝子及び/又はESTの1つ1つと組み合わせることができ、あるいは本明細書に記載される遺伝子及び/又はESTの組み合わせと組み合わせることができる。しかし、本明細書に記載される遺伝子及び/又はESTは、任意のそのような明らかにされていない組み合わせの予測能の大部分に寄与していると考えられる。
【0242】
[00239] 上記方法に対する他の様々な変化により、十分な予測能が提供され得る。これらには、集団として、区別的に、又は無作為なアプローチによる構成成分の選択的包含、あるいは集団として、区別的に、又は無作為なアプローチで構成成分を負荷し、組み合わせることの抜き出しが含まれる。また、サンプルの分類を決定するためのロジスティック回帰における複合変数の使用もまた、線形判別分析、ニューラルネットワークもしくはベイジアンネットワーク、又は類別的もしくは連続的な従属変数及び独立変数に基づく回帰及び分類の他の形態を用いて達成することができる。
【0243】
(実施例4:モデリング方法)
[00240] 上記のモデリング方法は、遺伝子の発現を組合せて、試料毒性を予測する、広いアプローチを提供する。1つの方法は、単純な投票方法(voting method)で加重値を提供しないか、集団として、区別的に、又は無作為なアプローチを用いる監督された、或いは監督されなかった方法で加重値を決定する。遺伝子の全て又は選ばれた組み合わせを、分類のための未知試料と、順序づけた、集団として、又は区別的に、監督されているか、監督されていないクラスタリングアルゴリズムと組み合わせることができる。未知試料を分類するために相関行列のどんな形でも用いることができる。グループ分布と判別スコアの広がり単独で、当業者に個別遺伝子の判別能力を超えうる正確さをもって上記のモデルタイプの全てを作成することを可能にする十分な情報を提供できる。個別に又はデータタイプを変換した後に組み合わせて用いることができる方法のいくつかの例には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない。すなわち、判別分析、多重判別分析、ロジスティック回帰、多重回帰分析、線形回帰分析、共同解析、正準相関、階層的なクラスター解析、k−meanクラスター解析、自己編成マップ、多次元尺度解析、構造方程式モデリング、サポートベクトルマシン決定境界、ファクター解析、ニューラルネットワーク、ベイシアン分類及びリサンプリング方法である。さらに、いかなるモデルにおいても、化合物を陰性対照として分類することができる。なぜならば、毒性を予測する感度が上昇させるために毒としてモデルに化合物を加えることもできるが、それは減少した毒性を生み出すようだからである。
【0244】
(実施例5:個々の化合物と病理学的クラスのグループ化)
[00241] 既知の毒性学的反応と観察された臨床化学及び病理学測定に基づく、個々の病理学的クラスへ、或いは1つの化合物(表5A〜5L)の範囲内で、観察される毒性の早期又は後期に、試料を分類した。1つのモデルにおいて個々の判別スコアに基づく上位10、25、50、100個の遺伝子を使用して、遺伝子の組み合わせが個々の遺伝子に比べてより良い予測を提供することを確実にした。上記で説明したように、どのような順序で、或いは順序づけて、集団として、区別的に、又は無作為なアプローチによって、選択されるとき、このリストからの2個若しくはそれ以上の遺伝子の全ての組み合わせは、潜在的に個々の遺伝子に比べてより良い予測を提供することができた。それに加えて、これらの遺伝子を他の遺伝子と組み合わせることは、より良い予測能力を提供することができたが、この予測能力の大部分は、本明細書に列挙された遺伝子から来るだろう。
【0245】
[00242] それらがここで表示された、病理学的な又は個々の化合物クラスで、或いはデータから獲得できる個々の毒性化合物の投与量グループ分けと個々の時間との組み合わせに基づく、一般的な毒性学モデルの項で言及されるいかなるモデリング方法において、正を記録する場合、試料は毒性があるとみなされうる。病理学的なグループ化及び早期や後期モデルは、試料時間と用量時点との全ての得られうる組み合わせの好ましい例である。1個若しくはそれ以上の遺伝子及び1つ若しくはそれ以上の試料用量と時点を備えるほとんどの論理的なグループ化は、個々の遺伝子と比べて、一般的な毒性、病理的な特異的毒性又は既知の毒への類似性のより良い予測を出すはずである。
【0246】
[00243] 本発明は、上記の実施例に関連して詳述されてきたが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変をなし得ることが理解される。したがって、本発明は特許請求の範囲のみによって限定される。本出願で言及された全ての引用特許、特許出願及び刊行物は、それらの全体が関連付けによって本明細書に取り入れられる。
【0247】
【表1−1】

【0248】
【表1−2】

【0249】
【表1−3】

【0250】
【表1−4】

【0251】
【表1−5】

【0252】
【表1−6】

【0253】
【表1−7】

【0254】
【表1−8】

【0255】
【表1−9】

【0256】
【表1−10】

【0257】
【表1−11】

【0258】
【表1−12】

【0259】
【表1−13】

【0260】
【表1−14】

【0261】
【表1−15】

【0262】
【表1−16】

【0263】
【表1−17】

【0264】
【表1−18】

【0265】
【表1−19】

【0266】
【表1−20】

【0267】
【表1−21】

【0268】
【表1−22】

【0269】
【表1−23】

【0270】
【表1−24】

【0271】
【表1−25】

【0272】
【表1−26】

【0273】
【表1−27】

【0274】
【表1−28】

【0275】
【表1−29】

【0276】
【表1−30】

【0277】
【表1−31】

【0278】
【表1−32】

【0279】
【表1−33】

【0280】
【表1−34】

【0281】
【表1−35】

【0282】
【表1−36】

【0283】
【表1−37】

【0284】
【表1−38】

【0285】
【表1−39】

【0286】
【表1−40】

【0287】
【表1−41】

【0288】
【表1−42】

【0289】
【表1−43】

【0290】
【表1−44】

【0291】
【表1−45】

【0292】
【表1−46】

【0293】
【表1−47】

【0294】
【表1−48】

【0295】
【表1−49】

【0296】
【表1−50】

【0297】
【表1−51】

【0298】
【表1−52】

【0299】
【表1−53】

【0300】
【表1−54】

【0301】
【表1−55】

【0302】
【表1−56】

【0303】
【表1−57】

【0304】
【表1−58】

【0305】
【表1−59】

【0306】
【表1−60】

【0307】
【表1−61】

【0308】
【表1−62】

【0309】
【表1−63】

【0310】
【表2−1】

【0311】
【表2−2】

【0312】
【表2−3】

【0313】
【表2−4】

【0314】
【表2−5】

【0315】
【表2−6】

【0316】
【表2−7】

【0317】
【表2−8】

【0318】
【表2−9】

【0319】
【表2−10】

【0320】
【表2−11】

【0321】
【表2−12】

【0322】
【表2−13】

【0323】
【表2−14】

【0324】
【表2−15】

【0325】
【表3−1】

【0326】
【表3−2】

【0327】
【表3−3】

【0328】
【表3−4】

【0329】
【表3−5】

【0330】
【表3−6】

【0331】
【表3−7】

【0332】
【表3−8】

【0333】
【表3−9】

【0334】
【表3−10】

【0335】
【表3−11】

【0336】
【表3−12】

【0337】
【表3−13】

【0338】
【表3−14】

【0339】
【表3−15】

【0340】
【表3−16】

【0341】
【表3−17】

【0342】
【表3−18】

【0343】
【表3−19】

【0344】
【表3−20】

【0345】
【表3−21】

【0346】
【表3−22】

【0347】
【表3−23】

【0348】
【表3−24】

【0349】
【表3−25】

【0350】
【表3−26】

【0351】
【表3−27】

【0352】
【表3−28】

【0353】
【表3−29】

【0354】
【表3−30】

【0355】
【表3−31】

【0356】
【表3−32】

【0357】
【表3−33】

【0358】
【表3−34】

【0359】
【表3−35】

【0360】
【表3−36】

【0361】
【表3−37】

【0362】
【表3−38】

【0363】
【表4】

【0364】
【表5A−1】

【0365】
【表5A−2】

【0366】
【表5A−3】

【0367】
【表5B−1】

【0368】
【表5B−2】

【0369】
【表5B−3】

【0370】
【表5C−1】

【0371】
【表5C−2】

【0372】
【表5C−3】

【0373】
【表5D−1】

【0374】
【表5D−2】

【0375】
【表5D−3】

【0376】
【表5E−1】

【0377】
【表5E−2】

【0378】
【表5F−1】

【0379】
【表5F−2】

【0380】
【表5F−3】

【0381】
【表5G−1】

【0382】
【表5G−2】

【0383】
【表5G−3】

【0384】
【表5H−1】

【0385】
【表5H−2】

【0386】
【表5H−3】

【0387】
【表5I−1】

【0388】
【表5I−2】

【0389】
【表5I−3】

【0390】
【表5J−1】

【0391】
【表5J−2】

【0392】
【表5J−3】

【0393】
【表5K−1】

【0394】
【表5K−2】

【0395】
【表5K−3】

【0396】
【表5L−1】

【0397】
【表5L−2】

【0398】
【表5L−3】

【0399】
【表5M−1】

【0400】
【表5M−2】

【0401】
【表5M−3】

【0402】
【表5M−4】

【0403】
【表5M−5】

【0404】
【表5M−6】

【0405】
【表5M−7】

【0406】
【表5M−8】

【0407】
【表5M−9】

【0408】
【表5N−1】

【0409】
【表5N−2】

【0410】
【表5N−3】

【0411】
【表5N−4】

【0412】
【表5N−5】

【0413】
【表5N−6】

【0414】
【表5N−7】

【0415】
【表5N−8】

【0416】
【表5N−9】

【0417】
【表5N−10】

【0418】
【表5N−11】

【0419】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物の少なくとも1つの毒作用を予測する方法であって、
(a)当該化合物に曝された腎臓組織又は細胞試料の遺伝子発現プロファイルを作成すること、及び
(b)当該遺伝子発現プロファイルを表5A〜5Nのデータ又は情報の少なくとも一部を含むデータベースと比較すること
を含む方法。
【請求項2】
前記組織又は細胞試料から作成された前記遺伝子発現プロファイルが少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腎臓組織又は細胞試料がヒトの組織又は細胞由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記発現レベルが表5A〜5Mの毒性平均及び/又は非毒性平均の値と比較される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記発現レベルが比較の前に規格化される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子発現レベルがRMAアルゴリズムで計算されたフォールドチェンジ値である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記組織又は細胞試料について予測スコアが計算され、
a)前記遺伝子発現プロファイルの少なくとも2つの遺伝子のフォールドチェンジ値に、前記少なくとも2つの遺伝子の前記データベースからのPLSスコアを乗じること、及び
b)前記積を合計すること
を含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
a)前記予測スコアを毒性データベースのカットオフ予測スコアと比較することを
を含み、
前記カットオフ予測スコアよりも大きいか等しい試料の予測スコアは毒性応答を表している、方法。
【請求項9】
各遺伝子の前記データベースPLSスコアが表5Nから得る、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記データベースが、表5A〜5Nのデータ又は情報のほぼすべてを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
化合物の少なくとも1つの毒作用を予測する方法であって、
(a)当該化合物に曝された組織又は細胞試料において、表1〜5N中の2個又はそれ以上の遺伝子の発現レベルを検出することを含み、
ここで、コントロールに比べて表1〜5N中の遺伝子の差次的発現が少なくとも1つの毒作用を表している、方法。
【請求項12】
化合物の毒作用の進行を予測する方法であって、
(a)当該化合物に曝された組織又は細胞試料において、表1〜5N中の2個又はそれ以上の遺伝子の発現レベルを検出することを含み、
ここで、コントロールに比べて表1〜5N中の遺伝子の差次的発現が毒作用の進行を示唆している、方法。
【請求項13】
前記毒作用が腎毒性である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
毒性反応の発症又は進行を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)細胞を当該薬剤及び既知の毒にさらすこと、及び
(b)表1〜5N中の2個又はそれ以上の遺伝子の発現レベルを検出することを含み、
ここで、表1〜5N中の遺伝子の差次的発現が毒性を表している、方法。
【請求項15】
細胞中で化合物が調節する細胞経路を予測する方法であって、
(a)当該化合物に曝された組織又は細胞において、表1〜5N中の2個又はそれ以上の遺伝子の発現レベルを検出することを含み、
ここで、表1〜5N中の遺伝子の差次的発現が少なくとも1つの細胞経路の調節と関連している、方法。
【請求項16】
前記化合物の曝露がインビボである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記発現レベルが増幅アッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイによって検出される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記増幅アッセイが定量的又は半定量的PCRである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ハイブリダイゼーションアッセイがノーザンブロット、ドット又はスロットブロット、ヌクレアーゼ保護及びマイクロアレイアッセイからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも5個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも10個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも25個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも30個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも50個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも75個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも100個の遺伝子の発現レベルが検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記2個又はそれ以上の遺伝子がラット遺伝子である、請求項11に記載の方法。
【請求項28】
前記作用が、腎尿細管毒性、腎尿細管閉塞、糸球体損傷及び近位尿細管のS2セグメントの毒性からなる群から選択される、請求項11に記載の方法
【請求項29】
前記腎毒性が、腎尿細管毒性、腎尿細管閉塞、糸球体損傷及び近位尿細管のS2セグメントの毒性からなる群から選択される少なくとも1つの腎臓疾患の病理と関連している、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞経路が、アシクロビル、アドリアマイシン、アンホテリシンB、BEA、カルボプラチン、四塩化炭素、セファロリジン、クロロホルム、シドフォビル、シプロフィブラート、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ダントロレン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エチレングリコール、ゲンタマイシン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヒドララジン、イホスファミド、インドメタシン、塩化リチウム、メロキシカム、メナジオン、塩化第二水銀、オルサラジン、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、ペンタミジン、フェナセチン、プロピレンイミン、セムスチン、クロム酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、スルファジアジン、スラミン、タクロリムス、チオアセトアミド、バンコマイシン、AY−25329、セファロスポリン、シトリニン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン及びパミドロネートからなる群から選択される化合物によって調節される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
各プローブが表1〜5N中の遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を含む、少なくとも2個のプローブのセット。
【請求項32】
前記セットが少なくとも10個の遺伝子にハイブリダイズするプローブを含む、請求項31に記載のプローブのセット。
【請求項33】
前記セットが少なくとも25個の遺伝子にハイブリダイズするプローブを含む、請求項31に記載のプローブのセット。
【請求項34】
前記セットが少なくとも50個の遺伝子にハイブリダイズするプローブを含む、請求項31に記載のプローブのセット。
【請求項35】
前記セットが少なくとも100個の遺伝子にハイブリダイズするプローブを含む、請求項31に記載のプローブのセット。
【請求項36】
前記プローブが固体支持体に取り付けられている、請求項31〜35のいずれか1項に記載のプローブのセット。
【請求項37】
前記固体支持体が、膜、ガラス支持体及びシリコン支持体からなる群から選択される、請求項36に記載のプローブセット。
【請求項38】
各プローブが表1〜5N中の遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を含む、少なくとも2個のプローブを含む固体支持体。
【請求項39】
前記遺伝子がラット遺伝子である、請求項38に記載の固体支持体。
【請求項40】
前記固体支持体が、1平方センチメートル当たり、少なくとも100個の異なるオリゴヌクレオチドを分離した位置に含むアレイである、請求項38記載の固体支持体。
【請求項41】
前記固体支持体が、1平方センチメートル当たり、少なくとも1000個の異なるオリゴヌクレオチドを分離した位置に含むアレイである、請求項38記載の固体支持体。
【請求項42】
前記固体支持体が、1平方センチメートル当たり、少なくとも10,000個の異なるオリゴヌクレオチドを分離した位置に含むアレイである、請求項38記載の固体支持体。
【請求項43】
(a)腎臓毒に曝された組織又は細胞試料において、表1〜5N中の少なくとも2個の遺伝子を含む遺伝子セットの発現レベルに関連する情報を含むデータベース、及び
(b)前記情報にアクセス、回収又は閲覧するためのユーザーインターフェース
を含むコンピューターシステム。
【請求項44】
前記データベースが前記遺伝子の配列情報をさらに含む、請求項43に記載のコンピューターシステム。
【請求項45】
前記データベースが腎臓毒に曝される前の組織又は細胞試料における前記遺伝子セットの発現レベルを同定する情報をさらに含む、請求項43に記載のコンピューターシステム。
【請求項46】
前記データベースが少なくとも第二の腎臓毒に曝された組織又は細胞試料における前記遺伝子セットの発現レベルを同定する情報をさらに含む、請求項43に記載のコンピューターシステム。
【請求項47】
請求項43に記載のコンピューターシステムであって、外部データベースからの記述的な情報を含む記録をさらに含み、当該情報は前記遺伝子を当該外部データベースの記録に関連させる、コンピューターシステム。
【請求項48】
前記外部データベースがGenBankである、請求項47に記載のコンピューターシステム。
【請求項49】
組織又は細胞試料における表1〜5N中の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを同定する情報を提示するために、請求項43〜46のいずれか1項に記載のコンピューターシステムを用いる方法であって、
試験化合物に曝された組織又は細胞試料における、表1〜5N中の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを、前記データベース中の前記試験化合物に曝された後の前記遺伝子の発現レベルと比較することを含む方法。
【請求項50】
少なくとも10個の遺伝子の発現レベルが比較される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも50個の遺伝子の発現レベルが比較される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも100個の遺伝子の発現レベルが比較される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
組織又は細胞試料における少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを、毒に曝されたときの前記遺伝子の発現レベルと比較して、表示するステップを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記既知の毒が腎臓毒である、請求項14に記載の方法。
【請求項55】
前記腎臓毒が、アシクロビル、アドリアマイシン、アンホテリシンB、BEA、カルボプラチン、四塩化炭素、セファロリジン、クロロホルム、シドフォビル、シプロフィブラート、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ダントロレン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エチレングリコール、ゲンタマイシン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヒドララジン、イホスファミド、インドメタシン、塩化リチウム、メロキシカム、メナジオン、塩化第二水銀、オルサラジン、ピューロマイシンアミノヌクレオシド(PAN)、ペンタミジン、フェナセチン、プロピレンイミン、セムスチン、クロム酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、スルファジアジン、スラミン、タクロリムス、チオアセトアミド、バンコマイシン、AY−25329、セファロスポリン、シトリニン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン及びパミドロネートからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
表1〜5N中の遺伝子のほぼすべてが検出される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
表5A〜5Nのいずれか1つのうちのすべての遺伝子が検出される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記遺伝子の遺伝子発現情報と共にパッケージされた、請求項38〜42のいずれか1項に記載の少なくとも1個の固体支持体を含むキット。
【請求項59】
使用に関する取り扱い説明書と共にパッケージされた、請求項38〜42のいずれか1項に記載の少なくとも1個の固体支持体を含むキット。
【請求項60】
前記遺伝子発現情報が腎臓毒に曝された組織又は細胞試料における遺伝子発現情報を含む、請求項58に記載のキット。
【請求項61】
前記遺伝子発現情報が各前記遺伝子のPLSスコアを含む、請求項58に記載のキット。
【請求項62】
前記遺伝子発現情報が電子フォーマットである、請求項58に記載のキット。
【請求項63】
表1〜5N中の遺伝子によってコードされるタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)当該タンパク質を当該薬剤に曝すこと、及び
(b)当該タンパク質の少なくとも1つの活性をアッセイすること
を含む方法。
【請求項64】
前記薬剤が前記タンパク質を発現している細胞に曝される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が既知の毒に曝される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記毒が前記タンパク質の発現を調節する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記遺伝子がラット遺伝子である、請求項43に記載のコンピューターシステム。

【公表番号】特表2006−507006(P2006−507006A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555684(P2004−555684)
【出願日】平成15年11月24日(2003.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/037556
【国際公開番号】WO2004/048598
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(501105750)ジーン ロジック インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】