説明

分岐付加重合体の製造方法

【課題】長鎖分岐度の大きい分岐付加重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)、(b)および(c)を接触させて得られる化合物、該化合物からなる付加重合用触媒成分、該付加重合用触媒成分を用いる付加重合用触媒、該付加重合用触媒を用いる付加重合体の製造方法。
(a):無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子
(b):下式[1]で表される化合物
11m [1]
(c):下式[2]で表される化合物
22n [2]
(M1は周期表第12族の原子を表し、mはM1の原子価に相当する数を表し、L1は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。M2は周期表第5族の原子を表し、nはM2の原子価に相当する数を表し、L2は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖分岐度の大きい分岐付加重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン重合体、プロピレン重合体などのオレフィン重合体は、汎用樹脂として多くの分野で用いられている。例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)は、低密度ポリエチレン(LDPE)と比較して機械的強度に優れるという特長があるが、いずれも分岐構造が少なく溶融張力が小さいために、例えば、押出成形や中空成形を高速で安定して行うことが困難であった。一方、低密度ポリエチレンは長鎖分岐構造を有し、溶融張力が大きいので、押出成形や中空成形に適しているが、短鎖分岐を有し結晶性が低いために機械的強度に劣るという問題があった。
このような背景から、機械的強度と成形加工性を兼ね備えたオレフィン重合体の製造方法として、分岐度を制御するオレフィン重合体の製造方法が試みられており、例えば、特許文献1には、エチレンとn−ヘキセンをバナジウム含有固体触媒を用いて共重合する製造方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5534472号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の製造方法においても、長鎖分岐度が十分なオレフィン重合体を得られるとはいえなかった。
本発明が解決しようとする課題は、長鎖分岐度の大きい分岐付加重合体の製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、長鎖分岐度の大きい分岐付加重合体の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、下記(a)、(b)および(c)を接触させて得られる化合物、該化合物からなる付加重合用触媒成分、該付加重合用触媒成分を用いる付加重合用触媒、該付加重合用触媒を用いる付加重合体の製造方法に係るものである。
(a):無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子
(b):下式[1]で表される化合物
11m [1]
(c):下式[2]で表される化合物
22n [2]
(上式[1]において、M1は周期表第12族の原子を表し、mはM1の原子価に相当する数を表し、L1は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、L1が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。上式[2]において、M2は周期表第5族の原子を表し、nはM2の原子価に相当する数を表し、L2は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、L2が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。)
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法によって得られる分岐付加重合体は、長鎖分岐を有する付加重合体である。本発明において分岐とは、13C NMRによるピークの位置が30.00ppmであるメチレン連鎖に帰属される付加重合体主鎖から枝分かれした構造を意味する。本発明において長鎖とは、炭素原子数が6以上の側鎖を意味する。
【0008】
(a)無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子
本発明に用いられる無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子(a)としては、一般に担体として用いられているものが好ましく、より好ましくは粒径の整った多孔性の無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子である。
【0009】
本発明の無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子(a)に用いられ得る無機酸化物としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等、およびこれらの混合物、例えば、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOなどを例示することができる。これらの無機酸化物の中では、SiO2および/またはAl23が好ましい。なお、上記無機酸化物には少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有してもかまわない。
【0010】
また、他の無機酸化物として、粘土や粘土鉱物等も使用可能である。粘土または粘土鉱物としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、バイロフィライト、タルク、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられる。
これらの中で好ましくは、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイトであり、さらに好ましくはモンモリロナイト、ヘクトライトである。
【0011】
本発明の無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子(a)に用いられ得るマグネシウム化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムなどのアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムなどのアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩などを例示することができる。
これらの中で好ましくは、ハロゲン化マグネシウムまたはアルコキシマグネシウムであり、さらに好ましくは塩化マグネシウムまたはブトキシマグネシウムである。
【0012】
これらの無機酸化物またはマグネシウム化合物は、使用にあたって水分を除去する必要はないが、好ましくは加熱処理により乾燥させたものが用いられる。加熱処理は通常、温度100〜1,500℃で、好ましくは100〜1,000℃で、さらに好ましくは200〜800℃で実施される。加熱した上で、例えば、乾燥された不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン等)を一定の流速で数時間以上流通させる方法、あるいは、数時間減圧する方法等が挙げられるが、その方法は限定されることはない。
【0013】
無機酸化物またはマグネシウム化合物の平均粒子径として好ましくは、5〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは10〜100μmである。細孔容量として好ましくは0.1ml/g以上、より好ましくは0.3〜10ml/gである。比表面積として好ましくは、10〜1000m2/g、より好ましくは100〜500m2/gである。
【0014】
本発明に用いられる有機ポリマー粒子としては、どのような有機ポリマーを用いてもよく、また複数種の有機ポリマーを混合物として用いてもよい。有機ポリマーとしては、式[1]で表される化合物(b)との反応性を有する官能基を持つ有機ポリマーであることが好ましい。そのような官能基としては、活性水素を有する官能基、非プロトン供与性のルイス塩基性官能基等が挙げられ、有機ポリマー粒子に用いられ得る有機ポリマーとしては、活性水素を有する官能基またはは非プロトン供与性のルイス塩基性官能基を有する重合体が好ましい。
【0015】
活性水素を有する官能基としては、活性水素を有しておれば特に制限はなく、具体例としては1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドラジド基、アミジノ基、ヒドロキシ基、ヒドロペルオキシ基、カルボキシル基、ホルミル基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、チオール基、チオホルミル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、インダゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドロキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、スルホン酸基またはチオール基である。特に好ましくは、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基またはヒドロキシ基である。なお、これらの基はハロゲン原子や炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0016】
非プロトン供与性のルイス塩基性官能基としては、活性水素原子を有しないルイス塩基部分を有する官能基であれば特に制限はなく、具体例としてはピリジル基、N−置換イミダゾリル基、N−置換インダゾリル基、ニトリル基、アジド基、N−置換イミノ基、N,N−置換アミノ基、N,N−置換アミノオキシ基、N,N,N−置換ヒドラジノ基、ニトロソ基、ニトロ基、ニトロオキシ基、フリル基、カルボニル基、チオカルボニル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、N,N−置換カルバモイル基、チオアルコキシ基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、置換スルホン酸基等が挙げられる。好ましくは、複素環基であり、さらに好ましくは、酸素原子および/または窒素原子を環内に有する芳香族複素環基である。特に好ましくは、ピリジル基、N−置換イミダゾリル基、N−置換インダゾリル基であり、最も好ましくはピリジル基である。なお、これらの基はハロゲン原子や炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0017】
かかる活性水素を有する官能基または非プロトン供与性のルイス塩基性官能基の量は特に限定されないが、好ましくは、重合体の単位グラム当りの官能基のモル量として0.01〜50mmol/gであり、より好ましくは0.1〜20mmol/gである。
【0018】
かかる官能基を有する重合体は、例えば、活性水素を有する官能基または非プロトン供与性のルイス塩基性官能基と1個以上の重合性不飽和基とを有するモノマーを単独重合することにより、またはこれと他の1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーとを共重合することにより得ることができる。このときさらに2個以上の重合性不飽和基を有する架橋重合性モノマーをもいっしょに共重合することが好ましい。
【0019】
かかる活性水素を有する官能基または非プロトン供与性のルイス塩基性官能基と1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーとしては、上記の活性水素を有する官能基と1個以上の重合性不飽和基を有するモノマー、あるいは、上記の活性水素原子を有しないルイス塩基部分を有する官能基と1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。かかる重合性不飽和基の例としては、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、エチン基等のアルキニル基等が挙げられる。
活性水素を有する官能基と1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、ビニル基含有1級アミン、ビニル基含有2級アミン、ビニル基含有アミド化合物、ビニル基含有ヒドロキシ化合物を挙げることができる。具体例としては、N−(1−エテニル)アミン、N−(2−プロペニル)アミン、N−(1−エテニル)−N−メチルアミン、N−(2−プロペニル)−N−メチルアミン、1−エテニルアミド、2−プロペニルアミド、N−メチル−(1−エテニル)アミド、N−メチル−(2−プロペニル)アミド、ビニルアルコール、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール等が挙げられる。
活性水素原子を有しないルイス塩基部分を有する官能基と1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーの具体例としては、ビニルピリジン、ビニル(N−置換)イミダゾール、ビニル(N−置換)インダゾールを挙げることができる。
【0020】
他の1個以上の重合性不飽和基を有するモノマーとしては、エチレン、α−オレフィン、芳香族ビニル化合物等が例示され、具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、スチレンなどが挙げられる。好ましくはエチレンまたはスチレンである。これらのモノマーは2種以上を用いてもよい。
また、2個以上の重合性不飽和基を有する架橋重合性モノマーの具体例としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0021】
有機ポリマー粒子の平均粒子径として好ましくは、5〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μmである。細孔容量として好ましくは、0.1ml/g以上、より好ましくは0.3〜10ml/gである。比表面積として好ましくは、10〜1000m2/g、より好ましくは50〜500m2/gである。
【0022】
式[1]におけるM1は、元素の周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)第12族の原子である。その具体例としては、亜鉛原子、カドミウム原子、水銀原子が挙げられる。M1として特に好ましくは亜鉛原子である。
式[1]におけるmはM1の原子価に相当する数であり、例えばM1が亜鉛原子の場合mは2である。
【0023】
式[1]におけるL1は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、L1が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。L1におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。L1における炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基が好ましい。
【0024】
ここでいうアルキル基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはイソブチル基である。
【0025】
これらのアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、トリクロロエチル基、テトラクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基、トリブロモエチル基、テトラブロモエチル基、ペンタブロモエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロエイコシル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パークロロペンチル基、パークロロヘキシル基、パークロロクチル基、パークロロドデシル基、パークロロペンタデシル基、パークロロエイコシル基、パーブロモプロピル基、パーブロモブチル基、パーブロモペンチル基、パーブロモヘキシル基、パーブロモオクチル基、パーブロモドデシル基、パーブロモペンタデシル基、パーブロモエイコシル基などが挙げられる。
またこれらのアルキル基はいずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0026】
アリール基としては、炭素原子数6〜20のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、より好ましくはフェニル基である。
これらのアリール基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0027】
アラルキル基としては、炭素原子数7〜20のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(3,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げられ、より好ましくはベンジル基である。
これらのアラルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0028】
式[1]におけるL1として好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、さらに好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくはアルキル基である。
【0029】
式[2]におけるM2は、元素の周期表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)第5族の原子を表す。その具体例としては、バナジウム原子、ニオブ原子、タンタル原子が挙げられる。M2として特に好ましくはバナジウム原子である。
式[2]におけるnはM2の原子価に相当する数であり、例えばM2が4価のバナジウムの場合nは4である。
【0030】
式[2]におけるL2は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、L2が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。L2におけるハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。L2における炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基が好ましい。
【0031】
化合物(b)を具体的に例示すると、M1が亜鉛原子の場合の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジノルマルブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジノルマルヘキシル亜鉛、ジアリル亜鉛、ビス(シクロペンタジエニル)亜鉛等のジアルキル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジナフチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛等のジアリール亜鉛、塩化メチル亜鉛、塩化エチル亜鉛、塩化プロピル亜鉛、塩化ノルマルブチル亜鉛、塩化イソブチル亜鉛、塩化ノルマルヘキシル亜鉛、臭化メチル亜鉛、臭化エチル亜鉛、臭化プロピル亜鉛、臭化ノルマルブチル亜鉛、臭化イソブチル亜鉛、臭化ノルマルヘキシル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛、ヨウ化エチル亜鉛、ヨウ化プロピル亜鉛、ヨウ化ノルマルブチル亜鉛、ヨウ化イソブチル亜鉛、ヨウ化ノルマルヘキシル亜鉛等のハロゲン化アルキル亜鉛、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。
【0032】
化合物(b)として好ましくは、ジアルキル亜鉛であり、さらに好ましくは、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジノルマルブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジノルマルヘキシル亜鉛、ジアリル亜鉛またはビス(シクロペンタジエニル)亜鉛であり、特に好ましくはジメチル亜鉛またはジエチル亜鉛である。
【0033】
化合物(c)を具体例に例示すると、M2がバナジウム原子の場合の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウム ジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウム、シクロペンタジエニルバナジウム テトラカルボニル、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(IV)ビス(アセチルアセトナート)オキシド、バナジウム(III)ブロマイド、バナジウム(III)クロライド、バナジウム(IV)クロライド、バナジウム(V)トリクロライド オキシド、バナジウム(V)トリフルオライド オキシド
【0034】
化合物(b)として好ましくは、バナジウムハライドであり、更に好ましくはバナジウム(IV)クロライドである。
【0035】
本発明の化合物は、上記のような化合物(a)、(b)および(c)を接触させて得られる化合物である。(a)、(b)および(c)を接触させる順序としては特に限定されることはないが、例えば以下に挙げる順序を採用することができる。
(I)(a)と(b)を接触させた後に(c)を接触させる方法。
(II)(a)と(c)を接触させた後に(b)を接触させる方法。
(III)(b)と(c)を接触させた後に(a)を接触させる方法。
(IV)(a)〜(c)を同時に接触させる方法
接触順序として好ましくは(I)であり、即ち本発明の化合物として好ましくは、(a)と(b)とを接触させて得られた接触物と(c)とを接触させて得られる化合物である。
【0036】
このような処理は不活性気体雰囲気にて実施されるのが好ましい。処理温度は通常−100〜200℃であり、好ましくは−80〜150℃である。処理時間は通常1分間〜36時間であり、好ましくは10分間〜24時間である。また、このような処理は溶媒を用いてもよく、用いることなくこれらの化合物を直接処理してもよい。使用される溶媒は化合物(a)、(b)および(c)に対して不活性である脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、またはエーテル系化合物であることが好ましく、特に脂肪族炭化水素溶媒が好ましい。溶媒の具体例としてはブタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。最も好ましくはトルエンである。
【0037】
各化合物の使用量は特に制限はないが、単位質量当たりの粒子(a)に対する化合物(b)および(c)の使用量をそれぞれ、(b)=x mmol/g−(a);(c)=y mmol/g−(a)とすると、0.1<x<10、0.1<y<10であることが好ましく、より好ましくは、0.2<x<5、0.2<y<5であり、さらに好ましくは、0.5<x<3、0.5<y<3である。
【0038】
本発明の化合物としては、このような接触処理の結果、原料である(a)、(b)および/または(c)が未反応物として残存してもよい。
また、このような接触処理の後、生成物から溶媒を留去し、25℃以上の温度で減圧下1時間以上乾燥を行うことが好ましい。
【0039】
本発明の化合物の製造方法の具体例を、無機酸化物粒子または有機ポリマー粒子(a)がシリカであり、化合物(b)がジエチル亜鉛であり、化合物(c)が四塩化バナジウムである場合についてさらに詳細に以下に示す。トルエンを溶媒とし、シリカにジエチル亜鉛を滴下する。その後、四塩化バナジウムを滴下する。生成した固体成分をろ別し、減圧下乾燥を行う方法を採用することができる。もちろん、これらの処理において使用する化合物はシリカ、ジエチル亜鉛や四塩化バナジウムに限定されることはない。
【0040】
以上詳述した本発明の化合物は、付加重合用触媒成分、中でもオレフィン重合用触媒成分として有用である。
本発明の付加重合用触媒は、上記(a)、(b)および(c)を接触させて得られる本発明の付加重合用触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)およびハロゲン化炭化水素(C)を接触させることによって得ることができる。
以下、該付加重合用触媒についてさらに詳細に説明する。
(B)有機アルミニウム化合物
本発明の付加重合用触媒に使用される有機アルミニウム化合物(B)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用できる。好ましくは、下式[3]で示される有機アルミニウム化合物である。
4bAlX13-b [3]
(式[3]において、R4 は炭化水素基を表し、R4が複数存在するとき、複数のR4は同じであっても異なっていてもよい。X1は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基またはアリールオキシ基を表し、bは0<b≦3を満たす数を表す。)
【0041】
式[3]におけるR4として好ましくは炭素原子数1〜24の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1〜24のアルキル基である。具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、ノルマルオクチル基等が挙げられ、好ましくはエチル基、ノルマルブチル基、イソブチル基またはノルマルヘキシル基である。
【0042】
また、X1がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
1におけるアルコキシ基としては炭素原子数1〜24のアルコキシ基が好ましく、具体例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、ネオペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−オクトキシ基、n−ドデソキシ基、n−ペンタデソキシ基、n−イコソキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基またはt−ブトキシ基である。
これらのアルコキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等で置換されていてもよい。
【0043】
1におけるアリールオキシ基としては炭素原子数6〜24のアリールオキシ基が好ましく、具体例としては、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などが挙げられる。
これらのアリールオキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等で置換されていてもよい。
【0044】
1におけるアラルキルオキシ基としては炭素原子数7〜24のアラルキルオキシ基が好ましく、具体例としては、例えばベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−テトラデシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが挙げられ、好ましくはベンジルオキシ基である。
これらのアラルキルオキシル基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等で置換されていてもよい。
【0045】
式[3]で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジノルマルプロピルアルミニウムクロライド、ジノルマルブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ノルマルプロピルアルミニウムジクロライド、ノルマルブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ノルマルヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルプロピルアルミニウムハイドライド、ジノルマルブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ(t−ブトキシ)アルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム、メチル(ジメトキシ)アルミニウム、メチル(ジエトキシ)アルミニウム、メチル(ジ−t−ブトキシ)アルミニウム等のアルキル(ジアルコキシ)アルミニウム、ジメチル(メトキシ)アルミニウム、ジメチル(エトキシ)アルミニウム、ジメチル(t−ブトキシ)アルミニウム等のジアルキル(アルコキシ)アルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、トリス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)アルミニウム、トリス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のトリアリールオキシアルミニウム、メチル(ジフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)アルミニウム、メチルビス(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のアルキル(ジアリールオキシ)アルミニウム、ジメチル(フェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジイソプロピルフェノキシ)アルミニウム、ジメチル(2,6−ジフェニルフェノキシ)アルミニウム等のジアルキル(アリールオキシ)アルミニウム等を例示することができる。
【0046】
これらのうち、好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、さらに好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはトリノルマルヘキシルアルミニウムであり、特に好ましくはトリエチルアルミニウムである。
これらの有機アルミニウム化合物は一種類のみを用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ハロゲン化炭化水素(C)
本発明の付加重合用触媒に使用される成分(C)ハロゲン化炭化水素としては、公知のハロゲン化炭化水素化合物が使用できる。好ましくは、下式[4]で示されるハロゲン化炭化水素化合物である。
2ts22t+2-s[4]
2は炭素、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、X2はハロゲン原子であり、X2が複数存在する場合、複数のX2は互いに同じかまたは異なっていてもよい。tは1〜5の整数であり、sは0〜11の整数である。
2として好ましくは、炭素原子であり、X2として好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、tとして好ましくは1〜3の整数である。
好ましいハロゲン化炭化水素としては、テトラクロロメタン、テトラブロモメタン、ジクロロメタン、ジブロモメタン、トリクロロメタン(別名:クロロフォルム)、トリブロモメタン、1,1,1−トリクロロエタン、2,2−ジフルオロテトラクロロエタン、1−ジクロロフルオロ−3−ジフルオロクロロプロパン(別名:フレオン113)、メチルブロマイド、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ヘプタクロロプロパンであり、より好ましくはジブロモメタンである。
【0048】
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は特に制限はないが、成分(A)あたりの(B)の使用量をx mmol/g−(A)とすると、0.1<x<10000であることが好ましく、より好ましくは1<x<1000であり、さらに好ましくは10<x<500である。
【0049】
ハロゲン化炭化水素(C)の使用量は特に制限はないが、成分(A)あたりの(C)の使用量をx mmol/g−(A)とすると、0.1<x<10000であることが好ましく、より好ましくは1<x<1000であることが好ましく、さらに好ましくは10<x<500である。
【0050】
本発明の付加重合用触媒としては、成分(A)および成分(B)、さらには成分(C)を予め接触させて得られた反応物を用いてもよく、重合反応装置中に別々に投入して用いてもよい。それらのうちの任意の2つの成分を予め接触させて、その後もう一つの成分を接触させてもよい。
【0051】
各触媒成分を反応器に供給する方法としては、特に制限されるものではない。各成分を固体状態で供給する方法、水分や酸素等の触媒成分を失活させる成分を十分に取り除いた炭化水素溶媒に溶解させた溶液、または懸濁またはスラリー化させた状態で供給する方法等が挙げられる。
【0052】
重合方法に関しては、特に制限されるべきものではない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、またはメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合またはスラリー重合、液状モノマー中で重合を実施するバルク重合、ガス状のモノマー中で重合を実施する気相重合、高温高圧下に超臨界流体状態で重合を実施する高圧法等が挙げられる。重合形式としてはバッチ式、連続式いずれでも可能である。
【0053】
重合温度は通常−100℃〜350℃、好ましくは−20℃〜300℃、より好ましくは20℃〜300℃である。重合圧力は通常0.1〜350MPa、好ましくは0.1〜300MPaで、より好ましくは0.1〜200MPaである。重合時間は一般的に、目的とするポリマーの種類、反応装置により適宜決定されるが、1分間〜20時間の範囲をとることができる。
【0054】
本発明の付加重合に用いられるモノマーは、付加重合性を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用することができる。例えば、炭素原子数2〜100のオレフィン、ジオレフィン、環状オレフィン、アルケニル芳香族炭化水素、極性モノマーのいずれをも用いることができ、同時に2種以上のモノマーを用いることもできる。
これらの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、ビニルシクロヘキサン等のオレフィン;1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等のジオレフィン;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、5−アセチルノルボルネン、5−アセチルオキシノルボルネン、5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−シアノノルボルネン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−テトラシクロドデセン、8−シアノテトラシクロドデセン等の環状オレフィン;スチレン、2−フェニルプロピレン、2−フェニルブテン、3−フェニルプロピレン等のアルケニルベンゼン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、3−メチル−5−エチルスチレン、p−第3級ブチルスチレン、p−第2級ブチルスチレンなどのアルキルスチレン、ジビニルベンゼン等のビスアルケニルベンゼン、1−ビニルナフタレン等のアルケニルナフタレン等のアルケニル芳香族炭化水素;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、およびそのナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル等の極性モノマーなどが挙げられる。
【0055】
本発明の付加重合用触媒は、これらのモノマーの単独重合または共重合に適用できる。共重合体を行うモノマーの具体的な組み合わせとしては、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−ブテン等が例示されるが、本発明はこれらに限定されるべきものではない。
本発明の付加重合体の分子量を調節するために、水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。
【0056】
本発明の付加重合用触媒はオレフィン重合用触媒として特に好適であり、オレフィン重合体の製造方法に好適に用いられる。かかるオレフィン重合体として特に好ましくはエチレン単独重合体またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0058】
(1)長鎖分岐度
長鎖分岐度の測定は、13C NMRを用いて、[0〜50ppmに存在する全ピークの積分値]を1000としたときの、[38.29ppmのピークの積分値]で表す。
13C NMRの測定には、日本電子JNM−AL400(100.40MHz,13C)を用いた。オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として用い、135℃で測定を行った。試料約100mgを5mmφのNMR用サンプル管中で、約0.5mLのオルトジクロロベンゼン−d4に135℃で完全に溶解させた。プロトン完全デカップリング法により測定を行った。測定条件はフリップアングル45°、パルス間隔4秒とした。
【0059】
[実施例1]
(1)
アルゴン置換した100mLフラスコに、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.7mL/g;比表面積=306m2/g)2.11g、トルエン20mLを入れ攪拌を行った。これに、ジエチル亜鉛(2.01mol/L、ヘキサン溶液)1.99mLを室温で徐々に滴下した。室温で30分間攪拌を行った後、VCl4(1.0mol/L、ヘキサン溶液)1.69mLを室温で徐々に滴下した。室温で30分間攪拌を行った後、生成した固体成分をろ別し、減圧下乾燥を行うことにより、流動性のある紫色固体化合物2.82gを得た。
【0060】
(2)重合
内容積400mlの撹拌機付きオートクレーブを真空乾燥してアルゴンで置換後、溶媒としてヘキサン200mlを仕込み、水素0.69MPaを仕込み、反応器を100℃まで昇温した。昇温後、エチレン圧を0.1MPaに調整しながらフィードし、系内が安定した後、トリエチルアルミニウム(1mol/L、ヘキサン溶液)0.86mmolを投入し、さらに上記(1)で得た紫色固体化合物49.9mg、続いてCH2Br2(1.76mol/L)0.49mLを投入して重合を開始した。30分間重合を行った。
重合の結果、0.405gのエチレン単独重合体が得られた。重合活性16g重合体/g触媒成分/時間、長鎖分岐度0.78/1000Cであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)および(c)を接触させて得られる化合物。
(a):無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子
(b):下式[1]で表される化合物
11m [1]
(c):下式[2]で表される化合物
22n [2]
(上式[1]において、M1は周期表第12族の原子を表し、mはM1の原子価に相当する数を表し、L1は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、L1が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。上式[2]において、M2は周期表第5族の原子を表し、nはM2の原子価に相当する数を表し、L2は水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、L2が複数存在する場合はそれらは互いに同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
1が亜鉛原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
2がバナジウム原子である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
無機酸化物粒子、マグネシウム化合物粒子または有機ポリマー粒子(a)がシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物からなる付加重合用触媒成分。
【請求項6】
請求項5に記載の付加重合用触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)およびハロゲン化炭化水素(C)を接触して得られる付加重合用触媒。
【請求項7】
請求項6に記載の付加重合用触媒を用いる付加重合体の製造方法。
【請求項8】
付加重合体が、オレフィン重合体である請求項7記載の付加重合体の製造方法。
【請求項9】
付加重合体が、エチレン単独重合である請求項7記載の付加重合体の製造方法。
【請求項10】
付加重合体が、エチレンとα−オレフィンとの共重合である請求項7記載の付加重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−231351(P2008−231351A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76413(P2007−76413)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】