説明

分散型電力生産システムおよびその制御の方法

本発明は、2つ以上の電力ユニットが、電源属性のそれぞれの組を含む、分散型電力生産システムに関するものである。電源属性の各組は、個々の電力ユニットの動的動作状態に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の電力ユニットが、電源属性のそれぞれの組を含む、分散型電力生産システムに関するものである。電源属性の各組は、個々の電力ユニットの動的動作状態に関連する。
【背景技術】
【0002】
異なるタイプの遠隔の、またはローカルの電力ユニットが、中央コンピュータと相互接続され、それにより共通に制御される、分散型電力生産システムは、当技術分野において周知である。そのような分散型電力生産システムの様々な例が、米国特許出願公開第2003/0144864号、米国特許出願公開第2005/0285574号、米国特許出願公開第2008/0188955号、米国特許第5323328号および米国特許第3719809号の刊行物に開示されている。これらの電力生産システムの一部は、必要とされる電力生産を満たすことに関連するコストを最小化するために、利用可能な電力ユニットを、それらの相対的な生産コストの順に割り振ることにより、将来の電力需要が、経済的な方法で、どのように満たされ得るかを計画する、経済的なディスパッチプログラムを含む場合がある。
【0003】
別の分散型電力生産システムが、「Modelbased Fleet Optimization and Master Control of a Power Production System」、IFAC Symposium on Power Plants and Power System Control、Canada、2006に開示されている。この分散型電力生産システムは、化石燃料燃焼プラント、火力発電所、バイオマス燃焼プラント、および風力発電プラントのような、いくつかの異なるタイプの発電プラントを備える。電力生産システムのあらゆるレベルで、先進的なモデリングおよび制御のシステムが、経済的な、および技術的な性質の関連性のある制約に従う一方で、発電プラントの資源の最善の可能な使用を行うように努める。
【0004】
従来技術の分散型電力生産システムは、従来は、計画された電力生産の大きな部分が、電力生産ユニットの固定した電力生産スケジュールに応じて割り当てられたようにして運用されていた。各電力生産ユニットの固定した電力生産は、電力生産ユニットに対するそれぞれの生産計画に従って設定され、経済的なディスパッチプログラムにより計算されていた。生産計画に応じた実際の電力生産と消費との間の、例えば短期の過渡状態により発生する偏差は、従来は、このタスクに明確に割り当てられた1つまたは複数の専用の電力ユニットにより修正されていた。1つまたは複数の専用の電力ユニットは、生産計画またはスケジュールに関する、他の電力ユニットの電力生産を維持する一方で、検出された電力偏差、すなわち不均衡を相殺するための、必要とされる量の修正電力を生産するために動作するように設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0144864号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0285574号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0188955号明細書
【特許文献4】米国特許第5323328号明細書
【特許文献5】米国特許第3719809号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Modelbased Fleet Optimization and Master Control of a Power Production System」、IFAC Symposium on Power Plants and Power System Control、Canada、2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、マスター制御システムが、第1および第2の電力ユニットのそれぞれのローカル制御システムに接続され、それらのそれぞれの動的動作状態を表す属性データを受信する。実際の電力の消費と生成との間の偏差すなわち不均衡は、第1および第2の電力ユニットにより、(負または正のいずれかの符号を有し得る)それぞれの量の修正電力を供給することにより、低減または除去される。第1および第2の電力ユニットのそれぞれは、当の電力ユニットの動的動作状態を示す、電源属性の関連する組を備える。電源属性は、生成レート制約、電力貯蔵、時間定数、または、第1および第2の電力ユニットの1つの電力の生産もしくは消費の特徴に関連する他の任意の変数を表すことができる。
【0008】
それぞれの電源属性の現在値は、マスター制御システムにより、性能の基準または制約を満たすように、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間で修正電力の生産を分散させる最も適切な方法を決定するために使用され得る。
【0009】
属性データの動的性質は、マスター制御システムが、第1および第2の電力ユニットの現在の動作段階にアクセスし、それにより、電源属性の値に反映されるような、第1および第2の電力ユニットのそれぞれに対する、修正電力の生産に関係する関連性のある制約を認識することを確実にする。これらの制約の一部は、当の電力ユニットの特定の特徴に関係し、電力ユニットの熱力学的特性および/または大きさにより与えられる場合がある。例えば、大規模な化石燃料燃焼プラントは、その電力の生産を増大/低減させるための比較的大きな時間定数を有する場合があり、一方では、再充電可能エネルギー貯蔵装置(rechargeable energy reservoir)は、電力を生産または送出するための非常に小さな時間定数を有する場合がある。他の制約が、当の電力ユニットの動的動作状態に関係する。例えば、電力ユニットは、時間的に個々の時点では、そのフル操業の電力生産で動作している場合があり、または、それは、エネルギーを消耗している場合がある。したがって、電力ユニットは、実際の状況に応じて、その電力生産を増大させることができない場合があり、または、少なくとも、その電力を供給する能力を回復することができる前に、再充電を必要とする場合がある。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、
- 第1のローカル制御システムに従って、電力を生産するように構成される第1のタイプの第1の電力ユニットであって、
- 第1の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第1の組を有する第1の電力ユニットと、
- 第2のローカル制御システムに従って、電力を生産するように構成される第2のタイプの第2の電力ユニットであって、
- 第2の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第2の組を有する第2の電力ユニットと、
- 第1および第2のローカル制御システムから、電源属性のそれらのそれぞれの組のそれぞれの値を表す属性データを受信するように構成され、
- 所望の、または目標の設定点電力を、第1および第2の電力ユニットにより供給される総電力と比較し、それに基づいて電力偏差を形成するように構成され、
- 第1および第2の修正信号を、第1および第2のローカル制御システムにそれぞれ供給することにより、それに従って、第1および第2の電力ユニットに、修正電力のそれぞれの量を生産または消費させて、電力偏差を低減するように動作可能であるマスター制御システムとを備える分散型電力生産システムが提供される。マスター制御システムは、修正電力の量を、属性データに基づいて、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間で分散させるように構成される。
【0011】
本発明によれば、マスター制御システムは、第1および第2の電力ユニットのそれぞれのローカル制御システムに接続されて動作可能であり、電源属性のそれらのそれぞれの組の値を表す属性データを受信する。マスター制御システムは、好ましくは、PCまたはUNIX(登録商標)をベースとする、サーバまたはサーバのクラスタなどの中央コンピュータ上で動作する、ソフトウェアアプリケーションまたはコンピュータプログラムとして実施される。マスター制御システムは、LAN、WLAN、GSM、UMTS等のような通信規格に従って動作する、専用の電話回線を含む有線の、または無線のデータ通信ネットワークにより、第1および第2のローカル制御システムのそれぞれに相互接続され得る。属性データは、適切な私設の、または例えばインターネットプロトコル(TCP/IP)の標準化されたプロトコルにより、送信され得る。有線の、または無線のデータ通信ネットワークは、好ましくは、属性データが、第1および第2の電力ユニットのそれぞれの動的動作状態を可能な限り綿密に反映することを可能にするために、属性データの十分に頻繁な送信をサポートすべきである。ローカル制御システムのそれぞれは、当の電力ユニットの動的動作状態に基づいて、電源属性の組の現在値を決定かつ格納するように構成される。ローカル制御システムのそれぞれは、例えば工場建物内部の、電力生産ユニットの近傍に配置される、ローカルサーバ上で動作するコンピュータプログラムに基づいてよい。しかしながら、本分散型電力生産システムに適した電力ユニットのタイプおよびサイズの多様性により、ローカル制御システムは、適切にプログラミングされた組み込みマイクロコントローラとして、または、論理および演算のユニットの私設の集合体として形成され得る。これらの後者のタイプの簡素なローカル制御システムは、家庭用機器または同様のタイプの比較的小さな電力ユニットとの統合に特に適することになる。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲では、「動的動作状態」という用語は、電力を消費または生成する電力ユニットの能力に関連性のある、熱力学的および/または電気的な処理状態を表す。動的動作状態は、例えば、ボイラー温度、蒸気温度、ボイラー圧力、蒸気または水の流れ値、風荷重、翼の速度またはピッチ角、バッテリのパックまたはアセンブリの充電状態等である場合がある。
【0013】
電源属性の第1および第2の組の現在値が、マスター制御システムに対して利用可能であることは、マスター制御システムが、第1の生産ユニットと第2の生産ユニットとの間で、修正電力の供給に関する適切な分散を決定することができるということを確実にする。電源属性の第1および第2の組の現在値はさらに、個々の電源属性に関連する適切な制約が、動的な方法で取得されることを可能にする。これは、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間で、修正電力の供給に関する適切な分散を計算するために、モデル予測制御のスキームを適用するマスター制御システムに対して、非常に有用である。更新される、すなわち現在の属性データは、電力ユニットの過去の動作状態を反映する古い、または不正確な属性データとは対照的に、当の1つまたは複数の電力ユニットの実際の動的動作状態を表す。したがって、属性データは、好ましくは、現在の属性データがマスター制御システムに対して利用可能であることを確実にするために、頻繁に送信される。本分散型電力生産システムの任意の個々の実施形態で、更新される属性データがどれだけ頻繁に送信されるかは、第1の、第2の、および可能なさらなる電力ユニットの個別の特徴により決まる。マスター制御システムが、更新される属性データを、第1および第2の電力ユニットのそれぞれの時間定数の最小の時間定数の2分の1より小さい時間間隔すなわちサンプリング時間周期で受信することを確実にすることが、特に有利である。これは、第1および第2の電力ユニットのそれぞれの動的動作状態が、少なくともクリティカルにサンプリングされる、すなわち、ナイキストレートを超えるレートでサンプリングされることを確実にする。分散型電力生産システムの状況では、これは、最速の応答時間、すなわち最小の時間定数を伴う電力ユニットのローカル制御システムが、例えば、20秒の時間間隔で、非常に頻繁に、または、10秒未満もしくは2秒未満の時間間隔のようにさらに高速に、その電源属性の現在値に関して取得される、すなわちサンプリングされる場合があるということを意味する。より大きな時間定数を伴う他の電力ユニットのそれぞれのサンプリング時間周期は、本質的には、最小の時間定数を伴う電力ユニットのそれと同一に設定される場合があり、または、それらは、より長くなり、各電力ユニットが、そのナイキストレート以上に高速のサンプリングレートでサンプリングされるように、それぞれの時間定数と調和するように構成される場合がある。サンプリング時間周期の上述の範囲を守るための、更新される属性データの送信の必要とされるレートは、現代のデータ通信ネットワークでは容易に得られる。
【0014】
第1および第2の電力ユニットの地理的位置に関する制約は存在しないので、これらは、発電プラントの共通の敷地の中で、または、同じ発電プラントの共通の建物内部でのように、近接して配置されてよい。あるいは、第1および第2の電力ユニットは、数百キロメートル離れた異なる都市または国または州のような異なる地理的位置に、ただし、本分散型電力生産システムによりサービス提供される共通の電力網に結合されて、配置される場合がある。
【0015】
本明細書では、「電力ユニット」という用語は、マスター制御システムに動作可能に結合され、電力を本分散型電力生産システムに供給すること、および/または、本分散型電力生産システムからの電力を消費することが可能な、任意の電力の生産または消費の装置を指す。したがって、第1および第2の電力ユニットは、両方とも、分散型電力生産システムからの電力をもっぱら消費するように構成される場合がある。この場合には、マスター制御システムは、それぞれの電源属性の値による決定された分散に従って、第1および第2の電力ユニットに、修正電力のそれぞれの量を消費させることにより、目標の設定点電力に対する総電力の余剰を相殺することのみが可能となる。電動機および家庭用機器は、この後者のタイプの例示的な電力ユニットである。本発明の多くの用途では、第1および第2の電力ユニットが、電力をもっぱら消費するように構成されるならば、それは実用的ではなくなるので、第1および第2の電力ユニットの少なくとも1つが、有利には、分散型電力生産システムに対して電力を生産するように構成され得る。
【0016】
あるいは、第1および第2の電力ユニットの1つまたは両方は、分散型電力生産システムに対して電力を生産すること、およびそれからの電力を消費することの両方が可能であってよい。
【0017】
第1および第2の電力ユニットは、好ましくは、{化石燃料燃焼プラント、バイオマス燃焼プラント、陸上または沖合の風力タービンプラント、廃棄物焼却プラント、原子力発電所、電気自動車、再充電可能エネルギー貯蔵装置、冷蔵用建物(cold storage house)、家庭用機器、電動機}のグループから選択される。本分散型電力生産システムの特徴、すなわち、電力生産、電力消費、もしくはその両方、ならびに、個別の電力ユニットのサイズの多様性は、このシステムの個別の電力ユニットの最大電力出力または最大電力消費が、例えば100kWから800MWまでかなり変動する場合があるということを意味する。下限の100kWは、単一の小型の風力タービン、または、電気自動車のバッテリパックなどの小型の再充電可能エネルギー貯蔵装置を表す場合がある。
【0018】
第1および第2の電源ユニットの電源属性の第1および第2の組は、それぞれ、第1および第2の電力ユニットの特徴に応じて、同じタイプまたは異なるタイプのいくつかの電源属性を含む場合がある。電源属性の一部のタイプは、電力ユニットのあるタイプまたはカテゴリに関して、他よりも高い関連性を有する場合がある。個々の電力ユニットの電源属性の数およびタイプは、例えば、電力ユニットが、電力を消費することのみが可能であるか、電力を生産することのみが可能であるか、それともその両方が可能であるかに応じて決まる場合がある。好ましくは、同じタイプの電源属性の現在値、例えば第1および第2の時間定数の現在値に正比例して、修正電力の量を分散させるための、マスター制御システムによる利用を容易にするために、電源属性の第1および第2の組のタイプの間に、一定の重複が存在する。電源属性の第1および第2の組の電源属性の数は、異なる場合もあれば、同じ場合もあるということになる。
【0019】
電源属性の第1の組は、好ましくは、{第1の生成レート制約、第1の電力貯蔵、第1の時間定数、第1の限界電力コスト(marginal power cost)、第1のエネルギー貯蔵}のグループから選択される少なくとも1つの電源属性を含み、電源属性の第2の組は、好ましくは、{第2の生成レート制約、第2の電力貯蔵、第2の時間定数、第2の限界電力コスト、第2のエネルギー貯蔵}のグループから選択される少なくとも1つの電源属性を含む。
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、マスター制御システムは、修正電力の量を、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間で、同じタイプの電源属性の値に正比例して、または反比例して分散させるように構成される。これは、電力偏差を生成するために、目標の設定点電力を総電力から減算し、第1および第2の修正信号を、第1および第2の比例積分調整器(「PI調整器」)によりそれぞれ生成するように構成される、マスターフィードバックループにより実施され得る。マスターフィードバックループの内部に、2つの並列かつ独立に動作するPI調整器を提供するように、第1のPI調整器は、電力偏差と第1の修正信号との中間に配置され、第2のPI調整器は、電力偏差と第2の修正信号との中間に配置され得る。PI調整器のそれぞれは、積分器の時間定数および利得係数を有し、マスター制御システムは、電源属性の第1および第2の組の同じタイプの電源属性、例えば第1および第2の生成レート制約、または、第1および第2の時間定数の値に正比例して、第1および第2のPI調整器の利得係数の設定を制御することができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、マスター制御システムは、修正電力の量を、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間で、優先度の所定のスキームに応じて、同じタイプの電源属性の第1の対、および同じタイプの電源属性の第2の対のそれぞれの値に基づいて、分散させるように構成される。
【0022】
優先度の所定のスキームは、マスター制御システムに、分散型電力生産システムの個別の電力ユニットの間で、修正電力の量の生産または消費を分散させる方法のさらなる最適化のための機構を提供する。ある状況では、電力ユニットのいくつかの異なる組み合わせにより、電力偏差に課される制約を満たすことが可能である場合がある。これは、当然、3、4または5を超える個別の電力ユニットのような、複数の電力ユニットおよび電源属性の関連する組を含む、本分散型電力生産システムの実施形態で、特にあり得ることである。マスター制御システムが、第1のタイプの電源属性のそれぞれの値を評価することにより、電力ユニットのいくつかの異なる組み合わせが制約を満たすことが可能であると判定した状況では、マスター制御システムは、好ましくは、電源属性の別のタイプのそれぞれの値を判定することにより実施され、これらを、個別の電力ユニットの間で、修正電力の量の生産または消費を分散させる方法を決定するための2次的な決定基準または規則として使用するように構成される。
【0023】
優先度の所定のスキームは、
- 同じタイプの電源属性の第1の対の値に基づいて、第1および第2の電力ユニットの任意の単一の電力ユニットにより、電力偏差に課される制約が満たされ得るかどうかを判定するステップと、
- 単一の電力ユニットが、制約を満たすことができるならば、同じタイプの電源属性の第2の対の値に基づいて、修正電力の量を生産または消費するために、単一の電力ユニットを選択するステップと
を含むことができる。
【0024】
本発明のある実施形態では、優先度の所定のスキームは、
- 第1および第2の生成レート制約を、同じタイプの電源属性の第1の対として選択し、第1および第2の限界電力コストを、同じタイプの電源属性の第2の対として選択するステップ(あるいは、優先度の所定のスキームは、第1および第2の時間定数を、同じタイプの電源属性の第1の対として選択するステップを含むことができる)と、
- 第1および第2の限界電力コストを、同じタイプの電源属性の第2の対として選択するステップと
を含む。
【0025】
本発明の別の有利な実施形態によれば、マスター制御システムは、線形計画として表現可能な線形性能関数を伴うモデル予測制御(MPC)を含む。第1および第2の電力ユニットは、線形計画では、時間領域モデル、周波数領域モデル、または状態空間モデル等のようなそれぞれの線形モデルにより表される。電源属性の第1および第2の組の電源属性は、線形計画では、それぞれの制約として表される。
【0026】
この実施形態によれば、目標の設定点電力と総電力との間の瞬間的な電力偏差を最小化する基本的な制御問題が、MPC技法を使用する最適化問題に転換または変換される。線形性能関数の適切な設計または仕様により、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間の修正電力の分散が、マスター制御システムにより考慮されるべき多数の異なる電源属性を含む、本発明の実施形態においてでさえ、最適な方法で制御され得る。線形性能関数は、電源属性の第1および第2の組のそれぞれのすべての電源属性、またはそれらのサブセットのみを含むように設定され得る。
【0027】
本発明者は、線形性能関数が、一般に利用される第2のノルムすなわち2次の性能関数の代わりに、手近の制御/最適化問題のモデル予測制御の定式化に適用され得ることを論証した。線形性能関数は、最適化問題を、従来の2次の、すなわち非線形の最適化問題と比較して、著しく低減された計算量で解かれ得る線形のものに簡素化する能力に、著しい有利な影響を与える。線形性能関数は、実際には、それらの関連する電源属性の組を有する、多数の個別の電力ユニットを備える複雑な分散型電力生産システムのリアルタイムの制御を可能にする。本発明の特に興味を引きつける実施形態は、線形性能関数を、それにダンツィク-ウルフ分解(Dantzig-Wolfe decomposition)を適用することにより計算する。
【0028】
このMPCの方法論は、経時的な、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間の修正電力の分散の計算のために、電源属性の第1および第2の組の電源属性のどのものが選択されるかを決定するために、実験的な規則の、潜在的に複雑なコレクションを判別し適用することよりも、効果的である場合がある。同様に、MPCベースのマスター制御システムの線形性能関数の適切な設計は、第1の電力ユニットと第2の電力ユニットとの間の修正電力の分散を経時的に制御するための、マスターフィードバックループの上述の第1および第2のPI調整器、ならびに、利得係数の関連する操作を置換する場合がある。
【0029】
マスター制御システムがMPCを備える本発明のある実施形態によれば、線形計画の制約行列は、ブロック対角要素が、第1および第2の電力ユニットすなわち実施部(effectuator)のそれぞれの線形モデルおよび電源属性を表すブロックアンギュラ構造(block-angular structure)を含む。この実施形態では、ブロック対角要素は、線形計画を部分問題に分割する理解しやすい方法を提供するように、個別の電力ユニットを表す。各部分問題は、好ましくは、単一の電力ユニットを含み、一方では、主問題すなわちスーパーバイザは、設定点電力すなわち基準電力の追跡を調整する。
【0030】
マスター制御システムは、好ましくは、ダンツィク-ウルフ分解を、線形計画の制約行列のブロックアンギュラ構造に適用するように構成される。ダンツィク-ウルフ分解は、手近の線形最適化問題が、より少ない計算資源を用いて、または、所与の計算容量を用いてより少ない時間で解かれることを可能にする。最適化問題を高速に解く能力は、分散型電力生産システム、特に、小さな時間定数を伴う1つまたは複数の電力ユニットを備える電力生産システムのリアルタイムの制御を保持する能力に不可欠である。
【0031】
本発明のある実施形態では、マスター制御システムは、計算時間が、マスター制御システムに課されるサンプリング時間の制約を超えるならば、線形計画の計算を早めて(prematurely)終結させるように構成される。マスター制御システムは、線形計画から第1の修正信号の現在値を決定し、線形計画から第2の修正信号の現在値を決定し、第1の修正信号の現在値を第1のローカル制御システムに供給し、第2の修正信号の現在値を第2のローカル制御システムに供給する。
【0032】
この実施形態の利点は、マスター制御システムへの属性データの送信に関するサンプル時間間隔の違反は、線形計画の早めた終結を実現することにより回避可能であり、第1および第2の修正信号のそれぞれの現在値を、第1および第2のローカル制御システムへの入力として利用するということである。この文脈では、「早めた」は、ダンツィク-ウルフ解の収束が達成される前に、線形計画を終結させることを意味する。線形計画のそのような早めた終結は、線形計画のダンツィク-ウルフ解のすべての主要な反復が、可能な出力を発生させるので、可能である。本発明者により得られた実験データは、第1および第2の修正信号のそのような現在値を、電力ユニットの対応するローカル制御システムに付与することが、マスター制御ループの安定した挙動をもたらすということを証明した。
【0033】
本発明の好適な実施形態によれば、マスター制御システムは、外部の供給源から、貯蔵活動化信号(reserve activation signal)またはプロファイルを受信し、貯蔵活動化信号により示される貯蔵電力を設定点電力に加算するように構成される。外部の供給源は、本分散型電力生産システムを含むある地域または国での、電力の生産と消費との間の不均衡を監視かつ修正する責任を負う送電システムオペレータ(Transmission System Operator)(TSO)である場合がある。貯蔵活動化信号は、即座に従われなければならない、電源勾配を含む、貯蔵電力に関する完全な電源プロファイルを規定する連続的な時間の信号を含む場合がある。
【0034】
電源属性の第1および第2の組のそれぞれの値が、第1および第2の電力ユニットのそれぞれのものの動的動作状態を正確に反映することを確実にするために、マスター制御システムは、好ましくは、更新される属性データを、10分より小さい、より好ましくは、2分もしくは1分より小さいなど、5分より小さい、または、2秒より小さいなど、20秒より小さいサンプリング時間周期で受信するように構成される。
【0035】
異なる電力ユニットは異なる時間定数を有する場合があるので、属性データの電源属性の第1および第2の組のそれぞれの値は、マスター制御システムにより、異なるサンプリング時間周期すなわち周波数で獲得される、すなわち読み出される場合があり、それにより、更新される属性データは、ある送信では、小さな時間定数を伴う電力ユニットに関連する電源属性の更新される値のみを含む場合がある。大きな時間定数を伴う1つまたは複数の電力ユニットに関連する電源属性を表す属性データの部分は、属性データの毎回の新しい送信に対しては更新されない場合がある。これは、小さな時間定数を伴う電力ユニットの電源属性の組の値は、より大きな時間定数を伴う電力ユニットの属性の値より、頻繁に決定される、すなわち読み出される(より高いサンプリングレートで更新される)場合があるということを意味する。
【0036】
本発明の好適な実施形態では、電源属性の第1および第2の組は、それぞれ、第1の時間定数および第2の時間定数を含む。マスター制御システムは、第1および第2の時間定数のより小さいものの2分の1より小さいサンプリング時間周期で、更新される属性データを受信するように構成される。この条件に従うことは、第1および第2の電力ユニットの電源属性のそれぞれの組の値が、少なくともクリティカルにサンプリングされる、すなわち、第1および第2の電力ユニットのそれぞれの動的動作状態を正確に反映するように、それらのそれぞれのナイキスト周波数以上でサンプリングされるということを確実にする。しかしながら、上述のように、第1および第2の電力ユニットの電源属性のそれぞれの組は、別法として、好ましくは、電源属性の各組の値が少なくともクリティカルにサンプリングされるように、異なるサンプリング時間周期で決定される場合がある。
【0037】
電力偏差は、典型的には、TSOにより、総計の基準で、経済的にペナルティを受けるので、検出される電力偏差は、好ましくは、可能な限り高速に修正され、分散型電力生産システムの変動しない動作のもとで、最小の現実的な値に維持されるべきである。したがって、マスター制御システムは、5分未満、好ましくは、30秒未満など、3分または1分未満の、電力偏差を修正するための応答時間を提供するように構成されることが可能である。応答時間は、サイズΔPの目標の設定点電力の階段状の(step-wise)変化から、結果として生じる電力偏差の63%が、修正電力の量の生産または消費により修正されるまでに必要とされる時間期間として定義される。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、分散型電力生産システムの個別の電力ユニットの電力生産を制御する方法が提供される。この方法は、
a)第1のローカル制御システムに従って、第1のタイプの第1の電力ユニットにより電力を生成するステップと、
b)第1の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第1の組の値を決定するステップと、
c)第2のローカル制御システムに従って、第2のタイプの第2の電力ユニットにより電力を生成するステップと、
d)第2の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第2の組の値を決定するステップと、
e)第1および第2のローカル制御システムから、電源属性のそれらのそれぞれの組のそれぞれの値を表す属性データを、マスター制御システムに送信するステップと、
f)所望の、または目標の設定点電力を、第1および第2の電力ユニットにより供給される総電力と比較するステップと、
g)目標の設定点電力および総電力に基づいて、電力偏差を計算するステップと、
h)電力偏差を低減するために、属性データに基づいて、第1および第2の電力ユニットに対する修正電力のそれぞれの量を計算するステップと、
i)第1および第2の電力ユニットにより、修正電力のそれぞれの量を供給するステップと
を含む。
【0039】
属性データの電源属性の第1の組および第2の組のそれぞれの値が、第1および第2の動的動作状態を、それぞれ、正確に反映することを確実にするために、マスター制御システムは、好ましくは、更新される属性データを、10分より小さい、より好ましくは、2分もしくは1分より小さいなど、5分より小さい、または、20秒より小さいサンプリング時間周期で決定するように構成される。
【0040】
電源属性の第1および第2の組は、好ましくは、それぞれ、第1の時間定数および第2の時間定数を含み、
- マスター制御システムは、第1および第2の時間定数のより小さいものの2分の1より小さいサンプリング時間周期で、電源属性の第1の組および第2の組の少なくとも1つの値を受信するように構成される。
【0041】
本発明の好適な実施形態が、添付図面に関連して、より詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態による分散型電力生産システムの概略図である。
【図2】図1で示される分散型電力生産システムのモデルによる、修正電力の送出のための応答時間のMATLABシミュレーションのグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態による、分散型電力生産システムのマスター制御システムのモデル予測制御の実施の線形性能関数のダンツィク-ウルフ分解の概略説明図である。
【図4a】シミュレートされる例示的な分散型電力生産システムのマスター制御システムでモデル予測制御問題を解くための、1サンプル当たりの平均実行時間を、電力ユニットの数の関数として示す。
【図4b】シミュレートされる例示的な分散型電力生産システムのマスター制御システムでモデル予測制御問題を解くための、1サンプル当たりの平均の実行すなわち計算の時間を、予測範囲Nの関数として示す。
【図5a】シミュレートされる例示的な分散型電力生産システムのマスター制御システムでの、モデル予測制御問題の無制限の、および制限されたダンツィク-ウルフの個別のサンプルの計算時間の変動を示す。
【図5b】図5a)で示される、無制限のダンツィク-ウルフ解と、早めて終結された、すなわち制限されたダンツィク-ウルフ解との間の電力出力差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明の好適な実施形態による、分散型電力生産システム1の簡素化された概略図である。分散型電力生産システム1すなわち分散型電力システムは、共通の通信ネットワークを介して、マスター制御システム2と相互接続される、4つの異なるタイプの電力ユニット6、7、8および9を備える。マスター制御システム2は、マスター制御プログラムを動作させる中央コンピュータを備える。話を簡単にするために、電力ユニット6、7、8および9に対する割り当てを提供する電力網は、本概略図から除かれている。中央コンピュータは、好ましくは、PCまたはUNIXベースのサーバである。本発明の例示的な実施形態では、様々な以下で説明される計算は、MATLAB/Simulinkアプリケーションにより生成されるDLLのコレクションとして実装されるマスター制御プログラムにより実行される。マスター制御システム2は、Wonderware(商標)アプリケーションサーバソリューションとして動作する中央発電プラント監視システムのもとで動作している。中央発電プラント監視システムは、DLLのコレクションに対して必要とされる呼を行う。
【0044】
電力合計装置14は、4つの異なるタイプの電力ユニット6、7、8および9により、電力網に供給される、または電力網からの消費される総電力を測定するように構成される。この測定総電力は、マスター制御システム2により、4つの電力ユニット6、7、8および9のそれぞれに対しての、測定される電力の供給または消費に基づいて、好都合に計算され得る。電力ユニット6、7、8および9のそれぞれでのローカルのコンピュータ化された制御システム(図示せず)は、当の電力生成ユニットにより生産または消費される電力を測定し、対応するデータを、マスター制御プログラムに、通信ネットワークまたはインターフェースを介して送信する。
【0045】
所望の、または目標の設定点電力15は、マスター制御システム2の減算機能17に、測定総電力19とともに経路設定され、分散型電力生産システム1に結合される電力網での、電力の生産と消費との間の不均衡の指標である、得られる電力偏差は、示されるように、減算機能17の出力として形成される。目標の設定点電力15は、生産計画16、すなわち、8時間から36時間の間の先のような、時間的に先の、電力網の計画される、または予定される電力消費に応じた、電力ユニット6、7、8および9のそれぞれに対するスケジュールを計算する、経済的なディスパッチプログラムにより決定される。
【0046】
設定点電力15に加えて、分散型電力生産システム1は、電力貯蔵活動化プロファイル10の形でのオプションの電力需要に対処することができる。電力貯蔵活動化プロファイル10は、ある地域または国での、電力の生産と消費との間の決定された不均衡に応じて、送電システムオペレータ(TSO)11により規定される。本発明の本実施形態では、TSO11は、連続的な時間の貯蔵活動化信号10を、マスター制御システム2に送信する。連続的な時間の貯蔵活動化信号10は、(前に説明された長期の生産計画とは対照的に)分散型電力生産システム1により即座に従われなければならない、電源勾配を含む、貯蔵電力に対する電源プロファイルを規定する。
【0047】
電力偏差18は、目標の設定点電力15により定義されるような、所望の瞬間的な電力生産と、分散型電力生産システム1に結合される電力網での電力消費との間の差を示す。したがって、偏差は、TSO11により、総計の基準で、経済的にペナルティを受けるので、電力偏差は、変動しない動作のもとで、最小の現実的な値に維持されるべきである。いかなる電力偏差も、可能な限り高速に、好ましくは10〜60秒内に修正することが、同様に望ましい。
【0048】
電力偏差18を低減する目的で、マスター制御システム2は、4つのローカルのコンピュータ化された制御システムの3つに対する、それぞれの修正信号を計算かつ供給するように動作可能である調整ユニット3を備え、それにより、電力ユニット6、7および8のそれぞれは、制御信号に従って修正電力のそれぞれの量を生産する。本分散型電力システム1では、これらの修正信号は、マスター制御システム2により、3つのローカルのコンピュータ化された制御システムに送信されるそれぞれの修正データとして実施される。修正データは、本実施形態では、風力タービンパーク9に対しては、その電力生産を正確に予測することの困難さ、および、適切な電力生産制御機構がないことにより、送信されない。しかしながら、本発明の他の実施形態では、修正データの受信に関して風力タービンパーク9を含むことは、適切なローカル制御システム、例えば好適な風力パーク調整器が、その目的で設けられるならば、可能である場合がある。
【0049】
他の3つのローカルのコンピュータ化された制御システムのそれぞれでは、修正データは、当の電力ユニットに対する生産計画16に応じた電力計画データに組み合わされる。修正データと電力計画データとのこの組み合わせは、合計または加算ユニット12a、bおよびcにより、概略的に示される。実際には、加算ユニットは、電力ユニット6、7および8のそれぞれのローカルのコンピュータ化された制御システム内に、好都合に配置される場合がある。3つの電力ユニット6、7および8のそれぞれに対する修正データの供給は、所望の方向、すなわち、電力偏差18を低減する方向での総測定電力19の適切な調整につながる方法で、電力ユニット6、7および8のそれぞれからの、電力の修正量の対応する生成という結果になる。したがって、電力の修正量によりもたらされる総測定電力19の調整は、増大する、または低減するレベルの総測定電力19という結果になる場合がある。マスターコンピュータプログラムは、以下で詳細に説明されることになるように、3つの電力ユニット6、7、および8に関連する電源属性の3つの組のそれぞれの属性値に基づいて、修正電力の量を、3つの電力ユニット6、7、および8の間で分散させるように構成される。本発明の本実施形態では、3つの電力ユニット6、7、および8の間での修正電力の分散は、調整ユニット3内の、3つの並列かつ独立に動作する比例積分(“PI)調整器のそれぞれの利得係数により制御される。独立に動作するPI調整器の総利得は、電力合計装置14の出力をもとに、減算ユニットまたは機能17の総測定電力19へと延びるマスターフィードバックループにより制御される。
【0050】
第1、第2および第3の電力ユニット6〜8のそれぞれは、それらに関連する電源属性の組を有する。電源属性の各組は、3つの異なるタイプの属性、すなわち、生成レート制約、時間定数および限界電力コストを含む。本分散型電力生産システム1では、決定された電力偏差18を低減するための修正電力の供給は、第1、第2および第3の電力ユニット6、7および8の間で、生成レート制約の属性のそれぞれの値に正比例して分散される。しかしながら、分散スキームに好適な荷重を付与することにより、修正電力の供給を、第1、第2および第3の電力ユニットの間で分散させる他の方法も、確かに、検出される電力偏差18を低減する総合的な目標と矛盾しない限りは、可能である。
【0051】
本発明の本実施形態の分散スキームの動作の数に関する例として、第1、第2および第3の生成レート制約の値は、20MWの電力偏差が検出される時間上の特定の点で、マスター制御システム2によって、ローカル制御システムにより送出される属性データから、それぞれ、3MW/分、5MW/分および12MW/分と決定される場合がある。
【0052】
マスター制御システム2は、
PP1:
第1の電力ユニットの修正電力量:
【0053】
【数1】

【0054】
PP2:
第2の電力ユニットの修正電力量:
【0055】
【数2】

【0056】
PP3:
第3の電力ユニットの修正電力量:
【0057】
【数3】

【0058】
の量で、修正電力の供給を分散させるように構成される。適切な修正信号が、それに応じて、マスター制御システム2により、それぞれのローカル制御システムに送出され、それにより、電力ユニットのそれぞれが、決定された分散に従って、その電力生産を増加させる。マスター制御システム2は、有利には、第1、第2および第3の電力ユニットの間で、修正電力の量を分散させるときに、2つ以上のタイプの電源属性を考慮するように構成される場合がある。上述の電力偏差が、3MWであったならば、修正電力に関する必要性は、明らかに、第1、第2および第3の電力ユニットのいずれか、または、それらの任意の組み合わせにより満たされ得た。そのような場合では、マスター制御システム2は、有利には、電源属性の組のそれぞれで、異なるタイプの電源属性を利用するための、優先度の所定のスキームまたは規則の組に応じて、2次的なタイプの電源属性のそれぞれの値に基づいて、修正電力の生産を分散させるように構成される場合がある。本発明のある例示的な実施形態では、第1、第2および第3の電力ユニット6、7および8のそれぞれの限界電力コストを表す電源属性が、2次的な優先度として選択される。この実施形態によれば、マスター制御システム2は、修正電力に関する特定の要求が、上述のように、第1、第2および第3の電力ユニットのいずれかにより満たされ得るならば、最低の限界電力コストを有する単一の電力ユニットに、修正電力のすべての生産を命じることになる。
【0059】
本発明の例示的な実施形態では、第1の電力ユニット6は、化石燃料燃焼プラントであり、第2の電力ユニット7は、再充電可能エネルギー貯蔵装置であり、第3の電力ユニット8は、バイオマス燃焼プラントである。第4の電力ユニットは、前に述べたように、風力タービンパーク9である。再充電可能エネルギー貯蔵装置7の時間定数は、10秒から30秒の間のように非常に小さく、修正電力の送出に対する急速な応答時間につながる。他方では、再充電可能エネルギー貯蔵装置7は、有限のエネルギー蓄積容量を有し、したがって、化石燃料燃焼プラント6とは対照的に、たとえ無制限の燃料供給が与えられるとしても、連続的な動作は不可能である。したがって、再充電可能エネルギー貯蔵装置7は、ある量の修正電力を送出した後で、それは、それがエネルギーを消耗し、さらなる量の修正電力を供給するための、その能力を復活させるための再充電を必要とする、動的動作状態に到達することになる。しかしながら、マスター制御システム2は、再充電可能エネルギー貯蔵装置7の動的動作状態を、有利には追加のエネルギー貯蔵電源属性を含む場合がある、頻繁に送信される属性データの関連性のある値により、通知される場合がある。この前文後半の電源属性は、例えばMWhで、または完全に充電された状態のパーセントで測定される、再充電可能エネルギー貯蔵装置7のエネルギー貯蔵の現在値を示す。エネルギー貯蔵の現在値が、再充電可能エネルギー貯蔵装置7の消耗した動的動作状態のために小さいならば、マスター制御システム2は、再充電可能エネルギー貯蔵装置7が動作を開始するのに十分に再充電されるまでの時間の期間の間、分散型電力生産システム1の他の電力生産ユニットに、修正電力の生産を分散させることができるであろう。この場合も、再充電可能エネルギー貯蔵装置7のローカル制御システムと、マスター制御システム2との間の、更新される属性データの頻繁な送信が、マスター制御システムが、再充電可能エネルギー貯蔵装置7の再充電された動的動作状態を通知されることを確実にすることになる。
【0060】
図2は、図1で示される分散型電力生産システム1の2つの異なるタイプの電力ユニットによる、修正電力の送出のための応答時間の例示的なMATLABシミュレーションを示す。グラフは、電力ユニット6および7からの修正電力の送出が、設定点電力15(図1を参照)の階段状の増加に応答して、経時的にどのように進展するかを、t=10秒での1単位(任意のスケール)で示す。y軸上のスケールは、0が、注入される階段状の電力の増加の前の、定常状態の電力生産を表す、相対的な単位での電力である。x軸上の単位は、10倍の秒の時間を示し、したがって、x軸の終点は、t=700秒に対応する。
【0061】
グラフ31は、合計機能14の出力でシミュレートされた/測定された際の、総供給修正電力を経時的に示し、グラフ32は、再充電可能エネルギー貯蔵装置7により送出される修正電力の量を示し、グラフ33は、化石燃料燃焼プラント6により送出される修正電力の量を示す。修正電力の生産は、電力ユニット6と7との間で、時間期間t=10秒からt=60秒までの、それらのそれぞれの時間定数に応じて分散される。時間的に後半の点の後では、再充電可能エネルギー貯蔵装置7は、エネルギーを消耗し、修正電力のさらなる量を送出することができないが、時間的にこの点では、化石燃料燃焼プラント6が、最初の350秒の間、修正電力のすべてのさらなる送出を引き継ぐ。t=60秒の後では、再充電可能エネルギー貯蔵装置7が、電力生成ユニットとしての初期の動作とは対照的に、電力消費ユニットとして動作する再充電の状態すなわち段階にどのように入るかが示されている。
【0062】
総供給修正電力のグラフ31は、本分散型電力生産システム1が、異なるタイプの、急速に、および、より遅く(すなわち、より小さい、および、大きな時間定数をそれぞれ有する)応答する電力ユニットの混じり合いの間で、修正電力の生産を分散させることにより、一時的な電力の不均衡すなわち一時的な電力偏差を除去すること、または少なくとも抑制することを、どのように急速かつ正確にできるかを明示する。本分散型電力生産システム1の応答時間は、グラフ31から、t=10秒で発生する、サイズΔP=1単位の目標の設定点電力の階段状の変化から、結果として生じる電力偏差の63%が、修正電力の適切な量の生産により修正されるまでの、約15〜20秒に決定され得る。
【0063】
図3は、本発明の第2の実施形態による、分散型電力生産システムのマスター制御システムのモデル予測制御の実施の線形性能関数の、いわゆるダンツィク-ウルフ分解の概略説明図である。本分散型電力生産システムは、PI調整ユニット(図1の項目3)を除いて、図1で示される分散型電力生産システムと共通の多くの特徴を有する。本実施形態では、マスター制御システムの調整ユニット3の内部の、3つの並列かつ独立に動作するPI調整器が、電力ユニットの間での修正電力の生産の最適の分散を決定するために、線形性能関数を伴うモデル予測制御(MPC)を利用する制御関数により置換されている。設定点すなわち基準の電力(図1の項目15)と総電力との間の瞬間的な電力偏差を最小化することに関連する基本的な制御問題が、MPC技法を使用する最適化問題に発明的に転換または変換されている。
【0064】
さらには、本発明者は、線形性能関数が、標準的な2次の性能関数の代わりに、手近の制御/最適化問題のモデル予測制御の定式化に適用され得ることを論証した。この発見は、最適化問題を、従来の2次の、すなわち非線形の最適化問題と比較して、著しく低減された計算量で解かれ得る線形最適化問題に簡素化する能力に、著しい影響を与える。本発明の特に興味を引きつける実施形態は、線形性能関数を、それにダンツィク-ウルフ分解を適用することにより計算する。
【0065】
ダンツィク-ウルフ分解は、線形問題をより高速に解くための技法である。それは、特に、何らかの調整を伴ういくつかのより小さな部分問題、またはあるレベルの相互作用を容易にする主問題に、分解または分割され得る最適化問題に関して良好に動作する。したがって、ダンツィク-ウルフ分解は、発電プラントのポートフォリオの制御に非常に良好に適している、というのは、この適用例は、生産される電力と消費される電力との間の連続的な均衡を確実にするために、設定点すなわち基準の電力を追跡する、電力生産を得る共通の目標で個別に制御されなければならない、電力生成および電力消費のユニットのような複数の電力ユニットを備えるためである。
【0066】
本発明の本実施形態では、線形性能関数Φは、次式で表される。
【0067】
【数4】

【0068】
ただし、
【0069】
【数5】

【0070】
であり、式中、
p:分散型電力生産システムの電力ユニットの数
N:サンプル時間間隔の整数値として表される予測範囲
xi,kおよびyi,k:第kの電力ユニットの伝達関数の状態空間定式化
であり、
【0071】
【数6】

【0072】
および
【0073】
【数7】

【0074】
は、それぞれ、第iの電力ユニットの第kの電源属性の下限および上限の電力貯蔵属性である。
【0075】
主問題は、次の全体の項により表される。
【0076】
【数8】

【0077】
式(1)は、次式のような、ブロックアンギュラ構造を伴う線形計画に書き直される。
【0078】
【数9】

【0079】
ただし、(2)
【0080】
【数10】

【0081】
式中、行列要素A0は、主問題に関係する制約であり、A1A2A3…Apは、主問題に対する個別の電力ユニットからのそれぞれの寄与であり、
行列要素B1B2B3…Bp、およびそれらの関連するベクトル要素d1d2…dpは、電力ユニットのそれぞれの電源属性である。
【0082】
式(2)は、ダンツィク-ウルフ分解に対して、効果的であるように求められるようなブロックアンギュラ構造である。ブロック対角要素は、個別の電力ユニット、すなわち実施部を表し、式すなわち計画を部分問題に分割する有利な理解しやすい方法を提供する。各部分問題は、好ましくは、単一の個別の電力ユニットを含み、一方では、主問題すなわちスーパーバイザは、設定点電力すなわち基準電力の追跡を調整する。
【0083】
具体的なダンツィク-ウルフ分解が開始され得る前に、初期の実行可能解、すなわち初期条件が、部分問題のそれぞれに対して必要とされる。本実施形態では、すべての部分問題は、同様の構造であり、修正信号に関する制約のみが課される。これは、適切な初期の実行可能解が、以下で述べられるステップ1〜4により発見され得るということを意味する。各部分問題は、3つのグループの最適化変数、すなわち、
1.修正信号
2.式(1)の
【0084】
【数11】

【0085】
部分に関する変数
3.式(1)の
【0086】
【数12】

【0087】
部分に関する変数
を含む。
1)各電力ユニットに対して直近に計算された修正信号を取り上げ、Nにより示される、選択される予測範囲を通じて、その修正信号を反復する。
2)各電力ユニットに対する、選択される予測範囲内の最新の修正信号が、上限および下限の電力貯蔵属性に違反しないことをチェックし、そうでない場合は、修正信号を上限および下限の電力貯蔵属性の内側に押し込む。この手順は、上記のグループ1に対する初期の推測を提供する。
3)電力ユニットごとに、グループ1の修正信号の差分値を計算する。この動作の結果は、初期解の第2の部分である。
4)設定点電力と推定される総電力との間の、予測範囲を通じた最大の偏差よりも明確に大きい電力偏差によって表される定数を選択する。この定数を、上記のグループ3に対する初期の推測として適用する。
【0088】
この点から、先では、電力ユニットに対する、選択される予測範囲を通じた個別の修正信号の実際の計算は、標準的なダンツィク-ウルフ解のアルゴリズムに従う。
【0089】
以下では、ダンツィク-ウルフ分解に基づく特定のモデル予測制御のスキームを解くための計算時間に関する実験結果が、概説され、式(1)により与えられるような集中型の(centralized)フォーマットで同じMPC問題を解くための計算時間と比較される。
【0090】
本実験結果では、マスター制御システムに対するサンプル時間間隔すなわち周期は、5秒に選択されたが、サンプル時間間隔は、分散型電力生産システムに含まれる電力ユニットの活動力に応じて、広範囲に変動する場合がある。この部分では、我々は、分散型電力生産システムの様々なパラメータが変動されるときの、マスター制御システムの挙動を調査することになる。その後の部分では、異なるサイズの問題が論じられることになる。電力ユニットのそれぞれは、3N個の最適化変数、および8N個の制約式を含む。ただし、Nは、前に説明されたように、サンプル時間間隔の整数値として表される、選択される予測範囲である。
【0091】
主問題は、2N個の制約を、手近の最適化問題に追加する。その結果、p個の電力ユニットで、3Np個の最適化変数、および8Np+2N個の制約を伴う集中型の最適化問題が提示される。ダンツィク-ウルフ分解を適用するときは、2N個の制約を伴うRMPに加えて、3N個の最適化変数、および8N個の制約を伴うp個の最適化問題が提示される。さらには、必要とされる反復の数に応じて、可変の数の最適化変数がさらに必要とされる。この部分で考案される解は、最適化変数の数に3次でスケーリングする、アクティブセット線形計画法ソルバ(LPソルバ)を使用することにより発見された。LPソルバは、求解時間を比較可能にするように、集中型の問題、およびダンツィク-ウルフ分解すなわち定式化の両方を解くために使用された。集中型の解とダンツィク-ウルフ解との間の、最適点の解ベクトルの要素での最大偏差は、10-6の程度である。この偏差は、アルゴリズムの期待される精度内であり、したがって、それにより、発明者は、2つのアルゴリズムが同じ最適点にまさに収束すると結論付けた。
【0092】
図4a)は、1サンプル当たりの平均実行時間を、秒単位で、2つの異なる場合に対するシミュレーションに含まれる、電力ユニットすなわち実施部の数の関数として示す。両方の軸は、対数スケールであることに注意されたい。
【0093】
第1の場合は、実行時間が、電力ユニットの数にほぼ3次でスケーリングする、曲線400で示されるような、集中型の解である。理論的には、集中型の解は、厳密に3次でスケーリングすべきであるが、LPソルバに対しての収束させるための増加する反復の数と、増加する問題のサイズとともに増大されるMATLAB計算プログラムのオーバーヘッドとの混じり合いにより、計算のオーバーヘッドが与えられる。第2の場合は、曲線401で示されるような、ダンツィク-ウルフ分解に基づく解である。ダンツィク-ウルフ分解に関する実行時間は、電力ユニットの数とほぼ線形にスケーリングする。ダンツィク-ウルフアルゴリズムを動作させることに関連するオーバーヘッドの部分は、複数列生成スキーム(multi-column generation scheme)が使用されるので、多数のサブシステムが使用されるときに、より高速に増大する主問題である。図4a)の点線の曲線402は、曲線401のほぼ現実的な線形の増大を検証するための、曲線401との比較のための、本質的に線形の関数の例示的なグラフである。同様に、点線の曲線403は、曲線400の現実的な指数関数的な増大を検証するための、曲線400との比較の目的のための、例示的な本質的に3次の関数のグラフである。
【0094】
図4b)は、上記で概説された2つの異なる場合に対して、本モデル予測制御問題を解くための、1サンプル当たりの平均の実行すなわち計算の時間を、秒単位で、選択される予測範囲Nの関数として示す。期待されるように、実行すなわち計算の時間は、やはり、曲線410および411で示されるように、両方の場合に対して、予測範囲に3次でスケーリングする。下方の曲線411は、ダンツィク-ウルフ分解に対する実行時間を表し、上方の曲線410は、集中型の解を表す。増大される予測範囲は、増大される部分問題のサイズを招く。図4b)から容易に明らかなように、サンプルに対する平均計算時間は、線形性能関数のダンツィク-ウルフベースの分解の適用により、劇的に降下し、スケーラビリティもまた向上される。点線の曲線412および413は、それぞれ、曲線411および曲線410との比較の目的のための、後者の曲線の現実的な指数関数的な増大を検証するための、例示的な本質的に3次の関数のグラフである。
【0095】
図5a)は、例示的な実施形態、すなわち、N=50およびp=6の固定値を用いる場合に対する、個別のサンプルの計算時間の変動を示す。示されるように、1サンプル当たりの平均計算時間は、ほんの少し5秒より下であるが、サンプルの計算時間は変動し、選択されるサンプル時間間隔である5秒を頻繁に超える。動作可能な分散型電力生産システムのコントローラは、サンプル時間間隔により設定される時間の制約に違反することは許され得ない、というのは、それが、分散型電力生産システムの最も高速な(すなわち、最小の時間定数の)電力ユニットのクリティカルなサンプリングを確実にするためである。しかしながら、サンプル時間間隔のそのような違反に対処するために、本発明者は、ダンツィク-ウルフベースの解のすべての主要な反復が、可能な出力を発生させるという点での、ダンツィク-ウルフベースの解の別の有利な特性を利用した。本発明者により得られた実験データは、修正信号を、早めて終結された線形計画からそれぞれの電力ユニットに取得かつ付与することが、マスター制御ループの安定した挙動をもたらすということを示した。
【0096】
この特性は、最適化手順を早めて終結し、制約に違反することなしに、電力ユニットに対するそれぞれの修正信号のような、関連性のある変数の現在値を利用することが可能であるということを意味する。
【0097】
図5b)にプロットされる曲線510および511は、グラフ512により表される、ダンツィク-ウルフ解の最適な、すなわち収束された計算と、早めて終結された、すなわち制限されたダンツィク-ウルフ解との間の電力出力差を示す。グラフ510および511は、上記の図5a)で示された、無制限の、および制限されたダンツィク-ウルフ解に対する、1サンプル当たりの平均計算時間の曲線のそれぞれのものに対応する。示されるように、実質的には、グラフ510と511との間の電力出力での明らかな差は存在せず、その結果、両方のダンツィク-ウルフ解は、グラフ512に示されるような設定点すなわち基準の電力を、実用的な目的に対して同等に良好に追跡する。利用可能な計算時間が、収束を達成するには不十分であるならば、MPCアルゴリズムの終結が許されるので、この特徴は、ダンツィク-ウルフ分解を、リアルタイムの制御の目的に関して非常に興味を引きつけるものとする。
【符号の説明】
【0098】
1 分散型電力生産システム、分散型電力システム
2 マスター制御システム
3 調整ユニット
6 電力ユニット、第1の電力ユニット、化石燃料燃焼プラント
7 電力ユニット、第2の電力ユニット、再充電可能エネルギー貯蔵装置
8 電力ユニット、第3の電力ユニット
9 電力ユニット、風力タービンパーク
10 電力貯蔵活動化プロファイル、連続的な時間の貯蔵活動化信号
11 送電システムオペレータ(TSO)
12a、12b、12c 合計または加算ユニット
14 電力合計装置、合計機能
15 設定点電力
16 生産計画
17 減算機能、減算ユニット
18 電力偏差
19 測定総電力、総測定電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローカル制御システムに従って、電力を生産するように構成される第1のタイプの第1の電力ユニットであって、
前記第1の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第1の組を有する第1の電力ユニットと、
第2のローカル制御システムに従って、電力を生産するように構成される第2のタイプの第2の電力ユニットであって、
前記第2の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第2の組を有する第2の電力ユニットと、
前記第1および第2のローカル制御システムから、電源属性のそれらのそれぞれの組のそれぞれの値を表す属性データを受信するように構成され、
所望の、または目標の設定点電力を、前記第1および第2の電力ユニットにより供給される総電力と比較し、それに基づいて電力偏差を形成するように構成され、
第1および第2の修正信号を、前記第1および第2のローカル制御システムにそれぞれ供給することにより、それに従って、前記第1および第2の電力ユニットに、修正電力のそれぞれの量を生産または消費させて、前記電力偏差を低減するように動作可能であり、
修正電力の前記量を、前記属性データに基づいて、前記第1の電力ユニットと前記第2の電力ユニットとの間で分散させるように構成されるマスター制御システムと
を備える分散型電力生産システム。
【請求項2】
前記第1および第2の電力ユニットの少なくとも1つは、前記分散型電力生産システムに対して電力を生産し、分散型電力生産システムからの電力を消費するように構成される、請求項1に記載の分散型電力生産システム。
【請求項3】
前記第1および第2の電力ユニットの少なくとも1つは、前記分散型電力生産システムからの電力をもっぱら消費するように構成される、請求項1に記載の分散型電力生産システム。
【請求項4】
前記第1および第2の電力ユニットの少なくとも1つは、前記分散型電力生産システムに対して電力をもっぱら生産するように構成される、請求項1に記載の分散型電力生産システム。
【請求項5】
電源属性の前記第1の組は、{第1の生成レート制約、第1の電力貯蔵、第1の時間定数、第1の限界電力コスト、第1のエネルギー貯蔵}のグループから選択される少なくとも1つの電源属性を含み、
電源属性の前記第2の組は、{第2の生成レート制約、第2の電力貯蔵、第2の時間定数、第2の限界電力コスト、第2のエネルギー貯蔵}のグループから選択される少なくとも1つの電源属性を含む
請求項1から4のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項6】
前記マスター制御システムは、修正電力の前記量を、前記第1の電力ユニットと前記第2の電力ユニットとの間で、電源属性の前記第1および第2の組から選択される同じタイプの電源属性の値に基づいて分散させるように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項7】
前記マスター制御システムは、修正電力の前記量を、同じタイプの電源属性の前記値に正比例して、または反比例して分散させるように構成される、請求項6に記載の分散型電力生産システム。
【請求項8】
前記マスター制御システムは、
外部の供給源から、貯蔵活動化信号またはプロファイルを受信し、
前記貯蔵活動化信号により示される貯蔵電力を前記設定点電力に加算する
ようにさらに構成される、請求項1から7のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項9】
前記マスター制御システムは、修正電力の前記量を、前記第1の電力ユニットと前記第2の電力ユニットとの間で、優先度の所定のスキームに応じて、同じタイプの電源属性の第1の対、および同じタイプの電源属性の第2の対のそれぞれの値に基づいて、分散させるように構成される、請求項7または8に記載の分散型電力生産システム。
【請求項10】
優先度の前記所定のスキームは、
同じタイプの電源属性の前記第1の対の前記値に基づいて、前記第1および第2の電力ユニットの任意の単一の電力ユニットにより、前記電力偏差に課される制約が満たされ得るかどうかを判定するステップと、
単一の電力ユニットが、前記制約を満たすことができるならば、同じタイプの電源属性の前記第2の対の値に基づいて、修正電力の前記量を生産または消費するために、前記単一の電力ユニットを選択するステップと
を含む、請求項9に記載の分散型電力生産システム。
【請求項11】
優先度の前記所定のスキームは、
第1および第2の生成レート制約を、前記同じタイプの電源属性の前記第1の対として選択するステップと、
第1および第2の限界電力コストを、前記同じタイプの電源属性の前記第2の対として選択するステップと
を含む、請求項9または10に記載の分散型電力生産システム。
【請求項12】
優先度の前記所定のスキームは、
第1および第2の時間定数を、前記同じタイプの電源属性の前記第1の対として選択するステップと、
第1および第2の限界電力コストを、前記同じタイプの電源属性の前記第2の対として選択するステップと
を含む、請求項9または10に記載の分散型電力生産システム。
【請求項13】
前記マスター制御システムは、
前記第1および第2の修正信号を生成し、
前記電力偏差を生成するために、前記目標の設定点電力を前記総電力から減算する
ように構成される、マスターフィードバックループを備える、請求項1から12のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項14】
前記マスターフィードバックループは、
前記電力偏差と前記第1の修正信号との中間に配置される第1の比例積分調整器と、
前記電力偏差と前記第2の修正信号との中間に配置される第2の比例積分調整器とを備え、
各比例積分調整器は、積分器の時間定数および利得係数を有し、
前記マスター制御システムは、前記第1および第2の比例積分調整器の前記それぞれの利得係数を制御することにより、修正電力の前記量を、前記第1の電力ユニットと前記第2の電力ユニットとの間で、分散させるように構成される、
請求項13に記載の分散型電力生産システム。
【請求項15】
前記マスター制御システムは、線形計画として表現可能な線形性能関数を伴うモデル予測制御を含み、
前記第1および第2の電力ユニットは、前記線形計画では、時間領域モデル、周波数領域モデル、または状態空間モデルなどのそれぞれの線形モデルにより表され、
電源属性の前記第1または第2の組の電源属性は、前記線形計画では、それぞれの制約として表される
請求項1から5のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項16】
前記線形計画の制約行列は、ブロック対角要素が、前記第1および第2の電力ユニットのそれぞれの線形モデルおよび電源属性を表すブロックアンギュラ構造を含む、請求項15に記載の分散型電力生産システム。
【請求項17】
前記マスター制御システムは、ダンツィク-ウルフ分解を、前記線形計画の前記制約行列の前記ブロックアンギュラ構造に適用するように構成される、請求項16に記載の分散型電力生産システム。
【請求項18】
前記マスター制御システムは、
計算時間が、前記マスター制御システムに課されるサンプリング時間の制約を超えるならば、前記線形計画の計算を早めて終結させ、
前記線形計画から前記第1の修正信号の現在値を決定し、前記線形計画から前記第2の修正信号の現在値を決定し、
前記第1の修正信号の前記現在値を前記第1のローカル制御システムに供給し、前記第2の修正信号の前記現在値を前記第2のローカル制御システムに供給する
ように構成される、請求項17に記載の分散型電力生産システム。
【請求項19】
前記第1および第2の電力ユニットは、{化石燃料燃焼プラント、バイオマス燃焼プラント、陸上または沖合の風力タービンプラント、廃棄物焼却プラント、原子力発電所、電気自動車、再充電可能エネルギー貯蔵装置、冷蔵用建物、家庭用機器、電動機}のグループから選択される、請求項1から18のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項20】
前記第1または第2の電力ユニットは、充電/再充電サイクルにわたって、有限のエネルギー蓄積容量を有する再充電可能エネルギー貯蔵装置を備える、請求項1から19のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項21】
前記マスター制御システムは、更新される属性データを、10分より小さい、より好ましくは、2分もしくは1分より小さいなど、5分より小さい、または、20秒より小さいサンプリング時間周期で受信するように構成される、請求項1から20のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項22】
電源属性の前記第1および第2の組は、それぞれ、第1の時間定数および第2の時間定数を含み、
前記マスター制御システムは、前記第1および第2の時間定数のより小さいものの値の2分の1より小さいサンプリング時間周期で、更新される属性データを受信するように構成される、請求項1から21のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項23】
前記電力偏差を修正するための応答時間は、5分未満、好ましくは、30秒未満など、3分または1分未満であり、
前記応答時間は、サイズΔPの前記目標の設定点電力の階段状の変化から、前記結果として生じる電力偏差の63%が、修正電力の前記量の生産または消費により修正されるまでに必要とされる時間期間として定義される
請求項1から22のいずれかに記載の分散型電力生産システム。
【請求項24】
a)第1のローカル制御システムに従って、第1のタイプの第1の電力ユニットにより電力を生成するステップと、
b)前記第1の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第1の組の値を決定するステップと、
c)第2のローカル制御システムに従って、第2のタイプの第2の電力ユニットにより電力を生成するステップと、
d)前記第2の電力ユニットの動的動作状態に関連する電源属性の第2の組の値を決定するステップと、
e)前記第1および第2のローカル制御システムから、電源属性のそれらのそれぞれの組のそれぞれの値を表す属性データを、マスター制御システムに送信するステップと、
f)所望の、または目標の設定点電力を、前記第1および第2の電力ユニットにより供給される総電力と比較するステップと、
g)前記目標の設定点電力および前記総電力に基づいて、電力偏差を計算するステップと、
h)前記電力偏差を低減するために、前記属性データに基づいて、前記第1および第2の電力ユニットに対する修正電力のそれぞれの量を計算するステップと、
i)前記第1および第2の電力ユニットにより、修正電力の前記それぞれの量を供給するステップと
を含む、分散型電力生産システムの個別の電力ユニットの電力生産を制御する方法。
【請求項25】
前記マスター制御システムは、更新される属性データを、10分より小さい、より好ましくは、5分より小さい、または、2秒より小さいなど、2分もしくは1分もしくは20秒より小さいサンプリング時間周期で決定するように構成される、請求項24に記載の電力生産を制御する方法。
【請求項26】
電源属性の前記第1および第2の組は、それぞれ、第1の時間定数および第2の時間定数を含み、
前記マスター制御システムは、前記第1および第2の時間定数のより小さいものの2分の1より小さい時間周期で、電源属性の前記第1の組および第2の組の少なくとも1つの値を受信するように構成される
請求項24または25に記載の電力生産を制御する方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−517207(P2012−517207A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546853(P2011−546853)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051067
【国際公開番号】WO2010/089253
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(511188369)ドン・エナジー・パワー・エ/エス (1)
【Fターム(参考)】