説明

分散方法及び分散システム

【課題】ステータの絞り透孔を通過した混合流体全体に亘って良好に液相分散媒中における分散質の分散を促進し、高品質のゾルを生成する分散方法及び分散システムの確立。
【解決手段】回転翼の回転駆動により、導入室から絞り透孔を通じて翼室に流体を吸引し、翼室から吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を用い、吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、液相分散媒に分散質を分散させたゾルを生成する分散方法であって、導入室の入口部に絞り部を設け、ステータの絞り透孔の出口領域の圧力が出口領域の全周に亘って液相分散媒の飽和蒸気圧以下となるように回転翼の回転数を設定し、設定された回転数で回転翼を回転して、翼室内の少なくともステータの絞り透孔を通過した直後の領域を、液相分散媒の微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成する。
【選択図】図

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が供給される導入室と、導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、回転翼の回転駆動により、導入室から絞り透孔を通じて翼室に流体を吸引し、翼室から吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を用い、吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、液相分散媒に分散質を分散させたゾルを生成する分散方法及び分散システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液相分散媒に対し固相分散質(分散質の一例)を分散させてなるスラリー(ゾルの一例)は、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等の電極やセパレータ、塗料、トナー、研磨剤等の用途に多く利用される。一方、液相分散媒に対し液相分散質(分散質の一例)を分散させてなるエマルジョン(ゾルの一例)は、食品、シート材、エマルジョン燃料等に利用される。
このようなゾルにおいて、液相分散媒中への分散質の分散が不十分であると、その性能低下につながる場合があり、特に、二次電池電極として利用する場合には、サイクル特性の低下につながる。
ちなみに、液相分散媒としては、例えば、水等の溶媒が挙げられ、分散質としては粉体等の固相分散質や油等の液相分散質が挙げられる。
なお、粉体としては、粉体であれば特に除外されるものではないが、例えば、電池電極材料等の化学原料、脱脂粉乳や小麦粉等の食品原料、医薬原料等であって、顆粒、粉体、細粒等の粉体(これら粉体の混合物を含む)を例示することができる。粉体には、粉粒体も含まれる。
【0003】
従来、液相分散媒に対し分散質を分散させたゾル(分散液)を生成する分散システムとして、流体が供給される導入室と、導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、回転翼の回転駆動により、導入室から絞り透孔を通じて翼室に流体を吸引し、翼室から吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を備えたものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
この種の分散システムは、液相分散媒と分散質との混合流体を導入室に供給して回転翼を回転駆動させる状態で、吸引ポンプ機構部に混合流体を通過させることで、混合流体に対し回転翼によるせん断力及び衝撃力が与えられ、混合流体に含まれる分散質の凝集物(いわゆるダマ)が適度に解砕されるので、適切に液相分散媒中に分散質を分散させることができるとされる。
また、この種の分散システムでは、翼室において高速で回転駆動する回転翼の背面部で急激な圧力低下が生じるため、絞り透孔を通過して回転翼の背面部付近に存在する混合流体に局所沸騰(キャビテーション)を起こさせ、この混合流体に含まれる気泡の膨張とそれによって生じる衝撃により、分散質の凝集物(ダマ)が良好に解砕され、液相分散媒中での分散質の分散を促進させることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−216172号公報
【特許文献2】特開2006−281017号公報
【特許文献3】国際公開第2010/140516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来の分散システム及び分散方法では、翼室において回転駆動する回転翼の背面部での急激な圧力低下により、混合流体の一部、すなわち、絞り透孔を通過して回転翼の背面部付近に存在する混合流体では、局所沸騰(キャビテーション)が発生するが、一方で、絞り透孔を通過した直後の混合流体には沸騰が発生することなくそのまま吐出部に吐出されるものも存在するため、液相分散媒中への分散質の分散を十分に促進することは困難であった。
ここで、例えば、ステータの絞り透孔の大きさを極度に小さくすることにより、絞り透孔を通過した混合流体の圧力を大幅に低下させることで液相分散媒中への分散質の分散を促進することも考えられるが、混合流体中の分散質である粉体が絞り透孔に詰り流通不良を起こして、逆に分散質の分散が悪化する虞があった。
【0007】
特に、液相分散媒に対する分散質(特に、粉体)の割合が高くなるほど流動性は低くなり、分散質の凝集物(いわゆるダマ)が発生し易く、しかも、発生する分散質の凝集物が大きくなり易いので、分散質の液相分散媒への分散が十分に行えない場合があり、改善が望まれていた。
即ち、液相分散媒に分散質が分散されたゾル(分散液)の用途として、例えば、対象物に分散質を主成分とする膜や部材を形成する用途がある。この用途では、例えば、分散液を対象物に塗布した後に加熱する等の処理を実行することにより、液相分散媒を蒸発させて、分散質を主成分とする膜や部材を形成する。このような用途においては、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くして、処理の効率化を図ることが望まれる。しかしながら、処理の効率化を図るために、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くすると、上述のように、予備混合物の流動性が低くなるので、従来の分散システムでは、分散質の凝集物の問題が特に顕著となり、分散質を液相分散媒に十分に分散させることができなかった。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ステータの絞り透孔を通過した混合流体全体に亘って良好に液相分散媒中における分散質の分散を促進して、高品質のゾルを生成することができる分散方法及び分散システムを確立する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る分散方法は、
流体が供給される導入室と、前記導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、前記ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、当該翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、前記回転翼の回転駆動により、前記導入室から前記絞り透孔を通じて前記翼室に流体を吸引し、前記翼室から前記吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を用い、前記吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、前記液相分散媒に前記分散質を分散させたゾルを生成する分散方法であって、その特徴構成は、
前記導入室の入口部に絞り部を設け、
前記ステータの絞り透孔の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って前記液相分散媒の飽和蒸気圧以下となるように前記回転翼の回転数を設定し、当該設定された回転数で前記回転翼を回転して、前記翼室内の少なくとも前記ステータの絞り透孔を通過した直後の領域を、前記液相分散媒の微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成する点にある。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る分散システムは、
流体が供給される導入室と、前記導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、前記ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、当該翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、前記回転翼の回転駆動により、前記導入室から前記絞り透孔を通じて前記翼室に流体を吸引し、前記翼室から前記吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を備え、前記吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、前記液相分散媒に前記分散質を分散させたゾルを生成する分散システムであって、その特徴構成は、
前記導入室の入口部に絞り部を備え、
運転を制御する制御部が、前記ステータの絞り透孔の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って前記液相分散媒の飽和蒸気圧以下となるように前記回転翼の回転数を設定し、当該設定された回転数で前記回転翼を回転させて、前記翼室内の少なくとも前記ステータの絞り透孔を通過した直後の領域が、前記液相分散媒の微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成される点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、導入室の入口部に絞り部を設けるとともに、導入室の下流側(外周側)にステータの絞り透孔が設けられているので、回転翼の回転駆動により翼室に吸引される混合流体が、絞り部、導入室、絞り透孔を順に通過することになり、略大気圧となりうる導入室の一次側(入口部の上流側)圧力より導入室内の圧力が低くなり、さらに、その導入室内の圧力よりもステータの絞り透孔の出口領域の圧力が低くなる。
特に、回転翼の回転数設定により、ステータの絞り透孔の出口領域の圧力は当該出口領域の全周に亘って液相分散媒の飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となるから、翼室内の少なくとも絞り透孔を通過した直後の領域では、液相分散媒の気化による微細気泡(マイクロバブル)の発生が促進され、当該領域を、翼室内の全周に亘って連続して当該微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成することができる。
よって、翼室内の全周に亘って、分散質の凝集物(いわゆるダマ)に浸透した液相分散媒が発泡することで凝集物の解砕が促進され、さらに、その発生した微細気泡が翼室において加圧され消滅する際の衝撃力によりさらに分散質の分散が促進されることになり、結果、翼室内に存在する混合流体のほぼ全体に亘って、液相分散媒中での分散質の分散が良好な高品質のゾル(分散液)を生成することができる。
【0012】
この点について、例えば、図9に基づいて説明を加える。図9は、本体ケーシングを透明の樹脂で構成し、吸引ポンプ機構部内に流体としての水を通過させて、回転翼が回転する翼室内を外周側から観察した状態を示し、図9(a)から(c)に行くに従って、回転翼の回転数を増加させた状態を示す。図9(a)にて判明するように、回転翼の回転数が比較的低い状態では、絞り透孔の出口領域の圧力は水の飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)よりも大きくなっており、絞り透孔を通過した直後の流体においては、回転翼の背面部での急激な圧力低下により、流体の一部、すなわち、絞り透孔を通過して回転翼の背面部付近に存在する流体のみに、局所沸騰(キャビテーション)が周方向に断続的な状態で発生するだけで、絞り透孔を通過した流体の全体に沸騰が発生することなく吐出部にそのまま吐出されるものも存在している状態である。即ち、この状態は、図9(a)において翼室内に存在する白く見える領域が非常に少ない状態である。
一方で、図9(b)にて判明するように、回転翼の回転数が比較的高い状態では、絞り透孔の出口領域の圧力は全周に亘って水の飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となっており、翼室内の少なくとも絞り透孔を通過した直後の領域では、回転翼の背面部での急激な圧力低下により、翼室内において回転翼の背面部付近に存在する流体の局所沸騰(キャビテーション)に加え、流体の気化による微細気泡(本願にいう微細気泡であるマイクロバブル)の発生が促進され、当該領域が、翼室内の全周に亘って連続して微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成されている状態である。即ち、この状態は、図9(b)において翼室内に存在する白く見える領域が雲状に非常に多く発生している状態である。更に、図9(c)にて判明するように、回転翼の回転数がより高い状態では、翼室内の全周に亘る流体中の液相分散媒の気化による微細気泡(マイクロバブル)が、より多く発生し、微細気泡が多数発生した微細気泡領域がより鮮明に形成されている状態となっている。即ち、この状態は、図9(c)において翼室内に存在する白く見える領域が、雲状に非常に多く(図9(b)よりも多く)発生している状態である。
【0013】
このように、通常、吸引ポンプ機構部内では、絞り透孔の出口領域において翼室内の回転翼の背面部のみに発生する局所沸騰(キャビテーション)のみで分散質を液相分散媒に分散させることで十分とされていたが(図9(a)の状態)、本発明者らは、例えば、液相分散媒に対する分散質の割合が比較的多く、より分散性能を向上させることが必要となったことに鑑みて、上述のとおり、回転翼の回転数設定により、ステータの絞り透孔の出口領域の圧力を当該出口領域の全周に亘って液相分散媒の飽和蒸気圧以下とし、翼室内において、より広範囲に液相分散媒の沸騰を発生させることを可能とし(図9の(b),(c)の状態)、翼室内の全周に存在する混合流体のほぼ全体に亘って、液相分散媒中での分散質の分散が良好な高品質のゾル(分散液)を生成することが可能であることを見出して、本願発明を完成したのである。
【0014】
本発明に係る分散方法の更なる特徴構成は、前記導入室に対し区画板により区画されて形成され、前記ステータの絞り透孔を通じて前記翼室に通じる供給室を設け、
前記分散質と前記液相分散媒とを予備混合した予備混合物を前記供給室に供給するとともに、前記吐出部から吐出されたゾルの一部を前記混合流体として前記導入室に循環供給する点にある。
【0015】
本発明に係る分散システムの更なる特徴構成は、前記導入室に対し区画板により区画されて形成され、前記ステータの絞り透孔を通じて前記翼室に通じる供給室を備え、
前記分散質と前記液相分散媒とを予備混合した予備混合物を前記供給室に供給する供給機構部と、前記吐出部から吐出されたゾルの一部を前記混合流体として前記導入室に循環供給する再循環機構部とを備えた点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、分散質と液相分散媒とを予備混合した予備混合物は、供給機構部により供給室から翼室側に供給されて、絞り透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合され、翼室内に吸引される。一方、吐出部から吐出されたゾルの一部は、再循環機構部により導入室に循環供給されて、絞り透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合され、翼室内に吸引される。
そして、供給室から絞り透孔を通過して翼室に流入した予備混合物と、導入室から絞り透孔を通過して翼室に流入した混合流体(ゾルの一部を含む)とは、翼室を周回する回転翼により混合されて吐出部から吐出される。従って、より分散質の凝集物(ダマ)の発生を極力抑制しながら、液相分散媒に対して分散質を、より確実に分散させることができる。
【0017】
本発明に係る分散システムの更なる特徴構成は、前記再循環機構部に、前記導入室に循環供給するゾルから気泡を分離する分離部を備えた点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、吐出部から吐出され導入室に循環供給されるゾルから気泡(液相分散媒の気泡)が分離されるので、導入室において、当該気泡の存在により、分散質の凝集物に対する液相分散媒の浸透が抑制されてしまうことを防止でき、また、絞り部による減圧が抑制されてしまうことを防止できる。更に、当該気泡の存在により、回転翼の回転によって生じる吸引ポンプ機構部内でのポンプ効果が低下することを防止できる。加えて、上述のとおり、翼室内の全周に亘って液相分散媒の微細気泡(マイクロバブル)が発生するが、分離部にて当該微細気泡を分離して、当該微細気泡が吐出部を介して導入室に循環供給されてしまうことを有効に抑制することができる。
【0019】
本発明に係る分散システムの更なる特徴構成は、前記区画板を、前記回転翼が設けられたロータに接続して回転駆動可能とし、
前記供給室の入口部の予備混合物を前記供給室側に掻き出す掻出翼を、前記区画板に備えた点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、回転翼が設けられたロータの回転駆動に伴って、区画板に設けられた掻出翼が回転するので、供給室の上流側から供給され入口部に存在する予備混合物を、供給室側に良好に掻き出すことができる。特に、掻き出される予備混合物は、掻出翼のせん断作用を受けて混合されるとともに、掻出翼の背面部に発生する局所沸騰(キャビテーション)により、液相分散質に対する分散質の分散がより良好に行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】遠心式の吸引ポンプ機構部を備えた分散システムの概略構成図
【図2】定量供給装置の要部を示す縦断面図
【図3】図2のIII−III方向視での断面図
【図4】遠心式の吸引ポンプ機構部の縦断側面図
【図5】図4のV−V方向視での断面図
【図6】図4のVI−VI方向視での断面図
【図7】本体ケーシングの前壁部、ステータ、区画板及びロータの組付構成を示す分解斜視図
【図8】区画板の概略構成図
【図9】回転翼が回転する翼室内を本体ケーシングの外周側から観察した概略側面視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る遠心式の吸引ポンプ機構部Yを備えた分散システム100を示す。
この分散システム100は、分散質として粉体Pを用い、液相分散媒として溶媒Rを用いて、粉体Pを溶媒Rに溶解させてゾルとしてのスラリーFを生成するものである。
本実施形態においては、例えば、粉体P(固相分散質)としてCMC(カルボキシルメチルセルロース)を用い、溶媒R(液相分散媒)として水を用いた。
【0023】
図1に示すように、分散システム100は、粉体Pを定量供給する定量供給装置Xと、溶媒Rを定量供給する溶媒供給部50と、定量供給装置Xから定量供給される粉体Pと溶媒供給部50から定量供給される溶媒Rとを負圧吸引して分散混合する吸引ポンプ機構部Yと、吸引ポンプ機構部Yから吐出されたスラリーFから、完全に溶解していない粉体Pを含む溶媒R(以下、未溶解スラリーFr)を吸引ポンプ機構部Yに循環供給する再循環機構部70等を備えて構成されている。
【0024】
〔定量供給装置〕
図1に示すように、定量供給装置Xは、上部開口部31aから受け入れた粉体Pを下部開口部31bから排出させるホッパ31と、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌機構32と、ホッパ31の上部開口部31aが大気開放された状態で、下部開口部31bの下流側に接続された吸引ポンプ機構部Yの吸引により下部開口部31bに作用する負圧吸引力によって、下部開口部31bから排出された粉体Pを吸引ポンプ機構部Yに定量供給する容積式の定量供給部40とを備えて構成されている。
【0025】
ホッパ31は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に構成され、その中心軸A1が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。そのホッパ31の上部開口部31a及び下部開口部31b夫々の横断面形状は、図1の上下方向視で、中心軸A1を中心とする円形状とされ、又、ホッパ31における逆円錐形状の内側壁面の傾斜角度は、水平面に対して略60度とされる。
【0026】
攪拌機構32は、ホッパ31内に配設されて、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌羽根32Aと、当該攪拌羽根32Aをホッパ31の中心軸A1周りに回転させる羽根駆動モータM1と、羽根駆動モータM1をホッパ31の上部開口部31aの上方に位置させて支持する取付部材32Bと、羽根駆動モータM1の回転駆動力を攪拌羽根32Aに伝動させる伝動部材32Cとを備えて構成される。
【0027】
攪拌羽根32Aは、棒状部材を概略V字形状に屈曲して構成され、その一方の辺部がホッパ31の内側壁面に沿う状態で、他方の辺部の端部がホッパ31の中心軸A1と同軸で回転自在に枢支されて配設されている。また、当該攪拌羽根32Aは、横断面形状が三角形に形成されており、三角形の一辺を形成する面がホッパ31の内側壁面と略平行となるように配設されている。これにより、攪拌羽根32Aは、ホッパ31の内側壁面に沿って中心軸A1周りに回転可能に配設されている。
【0028】
図1〜図3に示すように、容積式の定量供給部40は、ホッパ31の下部開口部31bから供給される粉体Pを下流側の吸引ポンプ機構部Yに所定量ずつ定量供給する機構である。
具体的には、ホッパ31の下部開口部31bに接続される導入部41と、供給口43a及び排出口43bを備えたケーシング43と、ケーシング43内に回転可能に配設された計量回転体44と、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2とを備えて構成される。
【0029】
導入部41は、ホッパ31の下部開口部31bとケーシング43の上部に形成された供給口43aとを連通する筒状に形成され、最下端には、ケーシング43の供給口43aと同形状のスリット状の開口が形成されている。この導入部41は、ケーシング43の供給口43a側ほど細くなる先細り状に形成されている。当該スリット状の開口の形状は、ホッパ31の大きさ、粉体Pの供給量、粉体Pの特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば、スリット状の開口の長さ方向の寸法を20〜100mm程度、幅方向の寸法を1〜5mm程度に設定するようにする。
【0030】
ケーシング43は、概略直方体形状に形成され、水平方向(図1の左右方向)に対して45度傾斜した姿勢で、導入部41を介してホッパ31に接続されている。
図2及び図3に示すように、ケーシング43の上面には、導入部41のスリット状の開口に対応したスリット状の供給口43aが設けられ、ホッパ31の下部開口部31bからの粉体Pをケーシング43内に供給可能に構成されている。傾斜状に配置されたケーシング43の下方側の側面(図2において右側面)の下部には、計量回転体44にて定量供給された粉体Pを膨張室47を介して下流側の吸引ポンプ機構部Yに排出する排出口43bが設けられ、その排出口43bには、粉体排出管45が接続されている。当該膨張室47は、供給口43aから計量回転体44の粉体収容室44bに供給された粉体Pが定量供給されるケーシング43内の位置に設けられ、排出口43bから作用する負圧吸引力によって、供給口43aよりも低圧に維持される(例えば、−0、06MPa程度)。すなわち、排出口43bは、吸引ポンプ機構部Yの一次側に接続されることによって、負圧吸引力が膨張室47に作用し供給口43bよりも低圧状態に維持されるようにしている。計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bの状態が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)と当該負圧状態よりも高圧の状態に変化するように構成されている。
【0031】
計量回転体44は、計量回転体駆動モータM2の駆動軸48に配設した円盤部材49に、複数(例えば、8枚)の板状隔壁44aを円盤部材49の中心部を除いて放射状に等間隔に取り付けて構成され、周方向で等間隔に粉体収容室44bを複数区画(例えば、8室)形成するように構成されている。粉体収容室44bは、計量回転体44の外周面及び中心部において開口するように構成されている。計量回転体44の中心部には、開口閉鎖部材42が周方向に偏在して固定状に配設され、各粉体収容室44bの中心部側の開口をその回転位相に応じて閉塞或いは開放可能に構成されている。なお、粉体Pの供給量は、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2による計量回転体44の回転数を変化させることで、調整できる。
【0032】
計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bが、膨張室47に開放される膨張室開放状態、膨張室47及び供給口43aと連通しない第1密閉状態、供給口43aに開放される供給口開放状態、供給口43a及び膨張室47と連通しない第2密閉状態の順で、その状態が繰り返して変化するように構成されている。なお、計量回転体44の外周面側の開口が第1密閉状態及び第2密閉状態において閉鎖されるようにケーシング43が形成されるとともに、計量回転体44の中心部側の開口が第1密閉状態、供給口開放状態及び第2密閉状態において閉鎖されるように、開口閉鎖部材42がケーシング43に固定して配設される。
【0033】
従って、定量供給装置Xにおいては、ホッパ31内に貯留された粉体Pが攪拌羽根32Aにより攪拌されながら定量供給部40に供給され、定量供給部40により、粉体Pが排出口43bから粉体排出管45を通して吸引ポンプ機構部Yに定量供給される。
【0034】
具体的に説明すると、定量供給部40の排出口43bの下流側に接続された吸引ポンプ機構部Yからの負圧吸引力により、ケーシング43内における膨張室47の圧力が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)となる。一方で、ホッパ31の上部開口部31aは大気開放されているので、ホッパ31内は大気圧程度の状態となる。膨張室47と計量回転体44の隙間を介して連通する導入部41の内部及び下部開口部31bの近傍は、上記負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態となる。
【0035】
この状態で、ホッパ31の内壁面及び下部開口部31bの近傍の粉体Pが、攪拌機構32の攪拌羽根32Aにより攪拌されることで、攪拌羽根32Aによるせん断作用によりホッパ31内の粉体Pが解砕され、一方、計量回転体44は計量回転体駆動モータM2により回転させられることで、空の粉体収容室44bが次々と供給口43aに連通する状態となる。そして、ホッパ31内の粉体Pは下部開口部31bから導入部41を流下し、次々と供給口43aに連通する状態となる計量回転体44の粉体収容室44bに所定量ずつ収容されて、その粉体収容室44bに収容された粉体Pは膨張室47に流下し、排出口43bから排出される。従って、定量供給装置Xにより、粉体Pを粉体排出管45を通して所定量ずつ連続して吸引ポンプ機構部Yの供給口11に定量供給することができる。
【0036】
図1に示すように、粉体排出管45には、吸引ポンプ機構部Yの供給口11への粉体Pの供給を停止可能なシャッタバルブ46が配設されている。
【0037】
〔溶媒供給部〕
図1に示すように、溶媒供給部50は、溶媒源51からの溶媒Rを、設定流量で吸引ポンプ機構部Yの供給口11に連続的に供給するように構成されている。
具体的には、溶媒供給部50は、溶媒Rを送出する溶媒源51と、溶媒源51から溶媒Rが送出される溶媒供給管52と、溶媒源51から溶媒供給管52に送出される溶媒Rの流量を設定流量に調整する流量調整バルブ(図示せず)と、設定流量に調整された溶媒Rを定量供給部40から定量供給される粉体Pに混合して供給口11に供給するミキシング機構60とを備えて構成されている。
【0038】
図4に示すように、ミキシング機構60は、粉体排出管45と溶媒供給管52とを供給口11に連通接続するミキシング部材61を備えて構成されている。
このミキシング部材61は、円筒状の供給口11よりも小径に構成されて、供給口11との間に環状のスリット63を形成すべく供給口11に挿入状態で配設される筒状部62、及び、環状のスリット63に全周にわたって連通する状態で供給口11の外周部に環状流路64を形成する環状流路形成部65を備えて構成されている。
ミキシング部材61には、粉体排出管45が筒状部62に連通する状態で接続されると共に、溶媒供給管52が環状流路64に対して溶媒Rを接線方向に供給するように接続される。
粉体排出管45、ミキシング部材61の筒状部62及び供給口11は、それらの軸心A2を供給方向が下向きとなる傾斜姿勢(水平面(図1の左右方向)に対する角度が45度程度)となるように傾斜させて配置されている。
【0039】
つまり、定量供給部40の排出口43bから粉体排出管45に排出された粉体Pは、ミキシング部材61の筒状部62を通して軸心A2に沿って供給口11に導入される。一方、溶媒Rは、環状流路64に接線方向から供給されるので、環状流路64の内周側に形成される環状のスリット63を介して、切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で供給口11に供給される。
従って、円筒状の供給口11により、粉体Pと溶媒Rとが均等に予備混合され、その予備混合物Fpが吸引ポンプ機構部Yの供給室13内に吸引導入される。
【0040】
〔吸引ポンプ機構部〕
図1、図4〜図8に基づいて、吸引ポンプ機構部Yについて説明を加える。
図4に示すように、吸引ポンプ機構部Yは、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備えた本体ケーシング1を備え、その本体ケーシング1の内部に同心状で回転駆動自在に設けられたロータ5と、その本体ケーシング1の内部に同心状で前壁部2に固定配設された円筒状のステータ7と、ロータ5を回転駆動するポンプ駆動モータM3等を備えて構成されている。
【0041】
図5にも示すように、ロータ5の径方向の外方側には、複数の回転翼6が、前壁部2側である前方側(図4の左側)に突出し且つ周方向に等間隔で並ぶ状態でロータ5と一体的に備えられている。
円筒状のステータ7には、複数の透孔7a,7bが周方向に夫々並べて備えられ、そのステータ7が、ロータ5の前方側(図4の左側)で且つ回転翼6の径方向の内側に位置させて前壁部2に固定配設されて、そのステータ7と本体ケーシング1の外周壁部4との間に、回転翼6が周回する環状の翼室8が形成される。
【0042】
図4〜図7に示すように、ミキシング機構60にて粉体Pと溶媒Rとが予備混合された予備混合物Fpを回転翼6の回転により本体ケーシング1の内部に吸引導入する供給口11が、前壁部2の中心軸(本体ケーシング1の軸心A3)よりも外周側に偏移した位置に設けられている。
図4、図6及び図7に示すように、ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成され、環状溝10と連通する状態で供給口11が設けられている。
図4及び図5に示すように、粉体Pと溶媒Rとが混合されて生成されたスラリーFを吐出する円筒状の吐出部12が、本体ケーシング1の円筒状の外周壁部4の周方向における1箇所に、その外周壁部4の接線方向に延びて翼室8に連通する状態で設けられている。
【0043】
図1及び図4に示すように、この実施形態では、吐出部12から吐出されたスラリーFは、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、その再循環機構部70の分離部71にて気泡が分離された未溶解スラリーFrを、循環路16を介して本体ケーシング1内に循環供給する導入口17が本体ケーシング1の前壁部2の中央部(軸心Aと同心状)に設けられている。
又、図4〜図7に示すように、ステータ7の内周側を前壁部2側の供給室13とロータ5側の導入室14とに区画する区画板15が、ロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けられると共に、区画板15の前壁部2側に掻出翼9が設けられている。掻出翼9は、同心状に、周方向において均等間隔で複数(図6では、4つ)備えられ、各掻出翼9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設されている。
【0044】
供給室13及び導入室14は、ステータ7の複数の透孔7a,7bを介して翼室8と連通されるように構成され、供給口11が供給室13に連通し、導入口17が導入室14に連通するように構成されている。
具体的には、供給室13と翼室8とは、ステータ7における供給室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の供給室側透孔7aにて連通され、導入室14と翼室8とは、ステータ7における導入室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の導入室側透孔7bにて連通されている。
【0045】
吸引ポンプ機構部Yの各部について、説明を加える。
図4に示すように、ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されると共に、その外周側に、複数の回転翼6が前方に突出する状態で等間隔に並べて設けられている。なお、図5では、周方向に等間隔に10個の回転翼6が配設されている。また、この回転翼6は、内周側から外周側に向かうに連れて、回転方向後方に傾斜するようにロータ5の外周側から内周側に突出形成されており、回転翼6の先端部の内径は、ステータ7の外径よりも若干大径に形成されている。
このロータ5が、本体ケーシング1内において本体ケーシング1と同心状に位置する状態で、後壁部3を貫通して本体ケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータM3の駆動軸19に連結されて、そのポンプ駆動モータM3により回転駆動される。
このロータ5が、その軸心方向視(図5に示すような図4のV−V方向視)において回転翼6の先端部が前側となる向きに回転駆動されることにより、回転翼6の回転方向の後側となる面(背面)6aには、いわゆる局所沸騰(キャビテーション)が発生するように構成されている。
【0046】
図4、図7及び図8に示すように、区画板15は、ステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成されている。この漏斗状の区画板15は、具体的には、その中央部に、頂部が円筒状に突出する筒状摺接部15aにて開口された漏斗状部15bを備えると共に、その漏斗状部15bの外周部に、前面及び後面共に本体ケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部15cを備える形状に構成されている。
そして、図4及び図5に示すように、この区画板15が、頂部の筒状摺接部15aが本体ケーシング1の前壁部2側を向く姿勢で、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では、4箇所)に配設された間隔保持部材20を介して、ロータ5の前面の取付部5aに取り付けられる。
【0047】
図5及び図8(c)に示すように、区画板15を複数箇所夫々で間隔保持部材20を介してロータ5に取り付ける際には、攪拌羽根21が、本体ケーシング1の後壁部3側に向く姿勢で区画板15に一体的に組み付けられ、ロータ5が回転駆動されると、4枚の攪拌羽根21がロータ5と一体的に回転するように構成されている。
【0048】
図4及び図7に示すように、この実施形態では、円筒状の導入口17が、本体ケーシング1と同心状で、その本体ケーシング1の前壁部2の中心部に設けられている。この導入口17には、循環路16の内径よりも小径で、区画板15の筒状摺接部15aよりも小径となり流路面積が小さな絞り部14aが形成されている。ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介してスラリーFが吐出され、導入口17の絞り部14aを介して未溶解スラリーFrが導入されることになるので、吸引ポンプ機構部Y内が減圧される。
【0049】
図4〜図7に示すように、供給口11は、その本体ケーシング1内に開口する開口部(入口部)が、環状溝10における周方向の一部を内部に含む状態で、本体ケーシング1内に対する導入口17の開口部の横側方に位置するように、前壁部2に設けられている。又、供給口11は、平面視(図1及び図4の上下方向視)において軸心A2が本体ケーシング1の軸心A3と平行となり、且つ、ケーシング1の軸心A3に直交する水平方向視(図1及び図4の紙面表裏方向視)において、軸心A2が本体ケーシング1の前壁部2に近付くほど本体ケーシング1の軸心A3に近づく下向きの傾斜姿勢で、本体ケーシング1の前壁部2に設けられている。ちなみに、供給口11の水平方向(図1及び図4の左右方向)に対する下向きの傾斜角度は、上述したように45度程度である。
【0050】
図4及び図7に示すように、ステータ7は、本体ケーシング1の前壁部2の内面(ロータ5に対向する面)に取り付けられて、本体ケーシング1の前壁部2とステータ7とが一体となるように固定されている。ステータ7において、供給室13に臨む部分に配設された複数の供給室側透孔7aは、概略円形状に形成され、供給室13の流路面積よりも複数の供給室側透孔7aの合計流路面積が小さくなるように設定されており、また、導入室14に臨む部分に配設された複数の導入室側透孔7bは、概略楕円形状に形成され、導入室14の流路面積よりも複数の供給室側透孔7bの合計流路面積が小さくなるように設定されている。ロータ5の回転翼6が回転することにより、吐出部12を介してスラリーFが吐出され、供給室13の供給室側透孔7aを介して予備混合物Fpが供給されるとともに、導入口17を介して未溶解スラリーFrが導入されることになるので、吸引ポンプ機構部Y内が減圧される。
【0051】
図6〜図8に示すように、この実施形態では、各掻出翼9が棒状に形成され、ロータ5の径方向視(図8(b)の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほど前壁部2側に位置し、且つ、ロータ5の軸心方向視(図8(a)の紙面表裏方向視)で、当該棒状の掻出翼9の先端側ほどロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻出翼9の基端部9Bがロータ5と一体回転するように固定され、ロータ5が、その軸心方向視(図8(a)の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向き(図4〜図8において矢印にて示す向き)に回転駆動される。
【0052】
図5〜図8に基づいて、掻出翼9について説明を加える。
掻出翼9は、区画板15に固定される基端部9B、供給室13に露呈する状態となる中間部9M、環状溝10に嵌め込まれる(即ち、進入する)状態となる先端部9Tを基端から先端に向けて一連に備えた棒状に構成されている。
【0053】
図5、図7、図8(b)に示すように、掻き出し片9の基端部9Tは、概ね矩形板状に構成されている。
図5、図7、図8(a)及び(b)、並びに、図9に示すように、掻出翼9の中間部9Mは、横断面形状が概ね三角形状になる概ね三角柱状に構成されている(特に、図5参照)。そして、掻出翼9が上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、三角柱状の中間部9Mの三側面のうちのロータ5の回転方向前側を向く一側面9m(以下、放散面と記載する場合がある)は、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)ように構成されている(特に、図7、図8参照)。
【0054】
つまり、棒状の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、掻出翼9のうち供給室13に露呈する中間部9Mが環状溝10に嵌め込まれる先端部9Tよりもロータ5の径方向外方に位置し、しかも、その中間部9Mの回転方向前側を向く放散面9mが、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して斜め外向きに傾斜している。これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻出翼9の中間部9Mの放散面9mにより、供給室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。
【0055】
図6、図7、図8(a)及び(b)に示すように、掻出翼9の先端部9Tは、横断面形状が概ね矩形状になる概ね四角柱状であり(特に、図6参照)、ロータ5の軸心方向視(図8(a)の紙面表裏方向視)において、四側面のうちのロータ5の径方向外方側に向く外向き側面9oが環状溝10の内面における径方向内方側を向く内向き内面に沿い、且つ、四側面のうちのロータ5の径方向内方側に内向き側面9iが環状溝10の内面における径方向外方側を向く外向き内面に沿う状態となる弧状に構成されている。
又、四角柱状の先端部9Tの四側面のうちの、ロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9fは、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)になるように構成されている。
これにより、掻出翼9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻出翼9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて供給室13内に放出されることになる。
更に、掻出翼9の先端部9Tの先端面9tは、その先端部9Tが環状溝10に嵌め込まれた状態で環状溝10の底面と平行になるように構成されている。
【0056】
また、ロータ5が、その軸心方向視(図8(a)の紙面表裏方向視)において掻出翼9の先端が前側となる向きに回転駆動されると、掻出翼9の基端部9B、中間部9M、先端部9Tそれぞれに、回転方向の後側となる面(背面)9aが形成される。この背面9aには、掻出翼9が回転することにより、いわゆる局所沸騰(キャビテーション)が発生するように構成されている。
【0057】
上述のような形状に構成された4個の掻出翼9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを区画板15の環状平板部15cに固定して設けられている。
【0058】
図4に示すように、掻出翼9が設けられた区画板15が、間隔保持部材20によりロータ5の前面と間隔を隔てた状態でロータ5の前面の取付部5aに取り付けられ、このロータ5が、区画板15の筒状摺接部15aが導入口17に摺接回転可能に嵌めこまれた状態で、本体ケーシング1内に配設される。
すると、ロータ5の膨出状の前面と区画板15の後面との間に、本体ケーシング1の前壁部2側ほど小径となる先細り状の導入室14が形成され、導入口17が区画板15の筒状摺接部15aを介して導入室14に連通するように構成されている。
又、本体ケーシング1の前壁部2と区画板15の前面との間に、供給口11に連通する環状の供給室13が形成される。
【0059】
そして、ロータ5が回転駆動されると、筒状摺接部15aが導入口17に摺接する状態で、区画板15がロータ5と一体的に回転することになり、ロータ5及び区画板15が回転する状態でも、導入口17が区画板15の筒状摺接部15aを介して導入室14に連通する状態が維持されるように構成されている。
【0060】
〔再循環機構部〕
再循環機構部(分離部の一例)70は、円筒状容器71内において比重によって溶解液を分離するように構成され、図1に示すように、吸引ポンプ機構部Yの吐出部12から吐出路18を通して供給されるスラリーFから、完全に溶解していない粉体Pを含む可能性がある状態の未溶解スラリーFrを循環路16に、粉体Pが略完全に溶解した状態のスラリーFを排出路22にそれぞれ分離するように構成されている。吐出路18及び循環路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続され、排出路22は、円筒状容器71の上部とスラリーFの供給先80とに接続される。
ここで、再循環機構部70は、図示しないが、吐出路18が接続される導入パイプを円筒状容器71の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器71の上部に排出路22に接続される排出部を備えるとともに、下部に循環路16に接続される循環部を備え、導入パイプの吐出上端に、導入パイプから吐出されるスラリーFの流れを旋回させる捻り板を配設して構成されている。これにより、スラリーF内から溶媒Rの気泡を分離して、循環路16に循環供給される未溶解スラリーFrから溶媒Rの気泡を分離した状態で導入室14内に供給することができる。
【0061】
〔制御部〕
分散システム100に備えられる制御部は、図示しないが、CPUや記憶部等を備えた公知の演算処理装置からなり、分散システム100を構成する定量供給装置X、吸引ポンプ機構部Y、溶媒供給部50等の各機器の運転を制御可能に構成されている。
特に、制御部は、ロータ5(回転翼6)の回転数を制御可能に構成され、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7b(絞り透孔)の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となるように回転翼6の回転数を設定し、当該設定された回転数で回転翼6を回転することで、少なくともステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域を、翼室8内の全周に亘って連続して、溶媒Rの微細気泡(マイクロバブル)が多数発生した微細気泡領域として形成させることができるように構成されている。
【0062】
〔分散システムの動作〕
次に、この分散システム100の動作について説明する。
まず、定量供給装置Xを停止し、シャッタバルブ46を閉止して粉体排出管45を介する粉体Pの吸引を停止した状態で、溶媒供給部50から溶媒Rのみを供給しながらロータ5を回転させ、吸引ポンプ機構部Yの運転を開始する。所定の運転時間が経過して、吸引ポンプ機構部Y内が、負圧状態(例えば、−0.06MPa程度の真空状態)となると、シャッタバルブ46を開放する。これによって、定量供給装置Xの膨張室47を負圧状態(−0.06MPa程度)とし、導入部41の内部及びホッパ31の下部開口部31b近傍を当該負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態にする。
【0063】
そして、定量供給装置Xを作動させ、ホッパ31内に貯留された粉体Pを、攪拌羽根32Aの攪拌作用及び吸引ポンプ機構部Yの負圧吸引力により、ホッパ31の下部開口部31bから定量供給部40の膨張室47を介してミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。並行して、溶媒供給部50を作動させ、吸引ポンプ機構部Yの負圧吸引力により、溶媒Rをミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。
ミキシング機構60のミキシング部材61からは、粉体Pがミキシング部材61の筒状部62を通して供給口11に供給されると共に、溶媒Rが、環状のスリット63を通して切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で供給口11に供給され、供給口11により、粉体Pと溶媒Rとが予備混合され、その予備混合物Fpが環状溝10に導入される。
【0064】
ロータ5が回転駆動されて、そのロータ5と一体的に区画板15が回転すると、その区画板15に同心状に設けられた掻出翼9が、環状溝10に先端部9Tが嵌め込まれた状態で周回する。
すると、図4及び図5において実線矢印にて示すように、供給口11を流動して環状溝10に導入された予備混合物Fpは、環状溝10に嵌め込まれて周回する掻出翼9の先端部9Tにより掻き出され、その掻き出された予備混合物Fpは、概略的には、供給室13内を区画板15における漏斗状部15bの前面と環状平板部15cの前面とに沿いながらロータ5の回転方向に流動し、更に、ステータ7の供給室側透孔7aを通過して翼室8に流入し、その翼室8内をロータ5の回転方向に流動して、吐出部12から吐出される。
【0065】
環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻出翼9の先端部9Tにより掻き出されるときに、せん断作用を受ける。この場合、掻出翼9の先端部9Tの外向き側面9oと内側の環状溝10の内向き内面との間、及び、掻出翼9の先端部9Tの内向き側面9iと内側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働く。同時に、掻出翼9の回転方向背面側の背面9aにおいては、掻出翼9が回転することにより、いわゆる局所沸騰(キャビテーション)が発生する。また、ステータ7の供給室側透孔7aを通過する際に、せん断作用が働く。
つまり、供給室13内の予備混合物Fpにせん断力を作用させるとともに、局所沸騰を発生させることができるので、掻き出される予備混合物Fpは、掻出翼9及び供給室側透孔7aからせん断作用を受けて混合されるとともに、掻出翼9の背面9aに発生する局所沸騰(キャビテーション)により、溶媒Rに対する粉体Pの分散がより良好に行われることとなる。よって、このような予備混合物Fpを供給することができ、翼室8内において溶媒Rに対する粉体Pの良好な分散を期待することができる。
【0066】
吐出部12から吐出されたスラリーFは、吐出路18を通して再循環機構部70に供給され、再循環機構部70において、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解スラリーFrと、粉体Pが略完全に溶解した状態のスラリーFとに分離されるとともに、溶媒Rの気泡が分離されて、未溶解スラリーFrは循環路16を通して再び吸引ポンプ機構部Yの導入口17に供給され、スラリーFは排出路22を通して供給先80に供給される。
【0067】
未溶解スラリーFrは、導入口17の絞り部14aを介して流量が制限された状態で導入室14内に導入される。その導入室14内においては、回転する複数の攪拌羽根21によりせん断作用を受けて、更に細かく解砕され、更に、導入室側透孔7bの通過の際にもせん断作用を受けて解砕される。この際には、導入室側透孔7bを介して流量が制限された状態で翼室8に導入される。そして、翼室8内において、高速で回転する回転翼6によりせん断作用を受けて解砕され、粉体Pの凝集物(ダマ)が更に少なくなったスラリーFが供給室13からのスラリーFと混合されて吐出部12から吐出される。
【0068】
ここで、制御部により、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域である翼室8内の圧力がその全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧以下となるように回転翼6の回転数が設定され、当該設定された回転数で回転翼6を回転させる。
これにより、回転翼6の回転数設定により、当該出口領域である翼室8内の圧力は、その全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となるから、少なくともステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の翼室8内の領域では、溶媒Rの気化による微細気泡(マイクロバブル)の発生が促進され、当該領域が、翼室8内の全周に亘って連続して微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成される状態となる。
よって、翼室8内の全周に亘って、粉体Pの凝集物(いわゆるダマ)に浸透した溶媒Rが発泡することで当該凝集物の解砕が促進され、さらに、その発生した微細気泡が翼室8において加圧され消滅する際の衝撃力によりさらに粉体Pの分散が促進されることになり、結果、翼室8内の全周に存在するスラリーFのほぼ全体に亘って、溶媒R中での粉体Pの分散が良好な高品質のスラリーFを生成することができる。
【0069】
次に、図9に基づいて、本実施形態の構成を採用して、導入口17に絞り部14aを設け、ステータ7に供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを設けるとともに、ロータ5(回転翼6)の回転数を適切に制御した場合における実証試験結果について説明する。
【0070】
図9では、本体ケーシング1を透明の樹脂で構成し、吸引ポンプ機構部Y内に溶媒Rとしての水を通過させて、回転翼6が回転する翼室8内を外周側から観察した状態を示し、図9(a)から(c)に行くに従って、回転翼6の回転数を増加させた状態を示し、回転翼6の回転数を、(a)では630rpm、(b)では1800rpm、(c)では2400rpmとした例を示す。
【0071】
図9(a)にて判明するように、回転翼6の回転数が比較的低い状態では、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7b(絞り透孔)の出口領域である翼室8内の圧力は水の飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)よりも大きくなっており、これら供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の溶媒Rにおいては、回転翼6の背面6aでの急激な圧力低下により、溶媒Rの一部、すなわち、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過して回転翼6の背面6a付近に存在する溶媒Rのみに、局所沸騰(キャビテーション)が周方向に断続的な状態で発生するだけで、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した溶媒Rの全体には沸騰が発生することなく吐出部12にそのまま吐出されるものも存在している状態である。即ち、この状態は、図9(a)において翼室8内に存在する白く見える領域が非常に少ない状態である。
一方で、図9(b)にて判明するように、回転翼6の回転数が比較的高い状態では、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域である翼室8内の圧力は全周に亘って水の飽和蒸気圧(25℃の水の場合、3.169kPa)以下となっており、翼室8内の少なくとも供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bを通過した直後の領域では、回転翼6の背面6aでの急激な圧力低下により、翼室8内において回転翼6の背面6a付近に存在する溶媒Rの局所沸騰(キャビテーション)に加え、溶媒Rの気化による微細気泡(本願にいう微細気泡であるマイクロバブル)の発生が促進され、当該領域が、翼室8内の全周に亘って連続して微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成されている状態である。即ち、この状態は、図9(b)において翼室8内に存在する白く見える領域が雲状に非常に多く発生している状態である。更に、図9(c)にて判明するように、回転翼6の回転数がより高い状態では、翼室8内の全周に亘る溶媒Rの気化による微細気泡(マイクロバブル)が、より多く発生し、微細気泡が多数発生した微細気泡領域がより鮮明に形成されている状態となっている。即ち、この状態は、図9(c)において翼室8内に存在する白く見える領域が、雲状に非常に多く(図9(b)よりも多く)発生している状態である。
【0072】
このように、通常、吸引ポンプ機構部Y内では、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域において翼室8内の回転翼6の背面6aのみに発生する局所沸騰(キャビテーション)のみで粉体Fを溶媒Rに分散させることで十分とされていたが(図9(a)の状態)、本発明者らは、例えば、溶媒Rに対する粉体Pの割合が比較的多く、より分散性能を向上させることが必要となる場合でも、上述のとおり、回転翼6の回転数設定により、ステータ7の供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域である翼室8内の圧力をその全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧以下とし、翼室8内において、より広範囲に溶媒Rの沸騰を発生させることを可能とし(図9の(b),(c)の状態)、翼室8内の全周に存在するスラリーFのほぼ全体に亘って、溶媒R中での粉体Pの分散が良好な高品質のスラリーFを生成することを可能としたのである。従って、上述の結果から、上記実施形態に係る構成では、ロータ5の回転数を少なくとも1800rpm以上に設定すると、翼室8内の圧力がその全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧以下となり、翼室8内の全周に亘って微細気泡(マイクロバブル)を発生させることが可能であると確認できた。
【0073】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態では、制御部が、ロータ5の回転数を、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域の圧力が全周に亘って溶媒Rの飽和蒸気圧以下となるように適切に設定した。しかしながら、これに限らず、ロータ5の回転数を、供給室側透孔7a及び導入室側透孔7bの出口領域の圧力が全周に亘って飽和蒸気圧よりも所定圧力だけ低くなるように設定して、当該出口領域である翼室8内の全周に亘って連続して、溶媒Rの気化による微細気泡(マイクロバブル)の発生を促進し、当該微細気泡が多数発生した微細気泡領域を形成することもできる。この場合、ロータ5の回転数を1800rpmよりも幾分大きく設定することとなる。
【0074】
(B)上記の実施形態では、区画板15をロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けて、掻出翼9を区画板15に設けたが、吐出部12から吐出されるスラリーFの一部を循環供給させなくても、粉体Pを溶媒Rに適切に分散させることができる場合は、再循環機構部70を省略したり、区画板15を省略することもでき、この場合、掻出翼9をロータ5に直接設けても良い。
【0075】
(C)上記の実施形態では、粉体Pとして単一種類のCMC粉体を用いたが、必要に応じて、複数種類の粉体を混合した混合粉体を粉体Pとして用いることができる。また、同様に、溶媒Rとして単一種類の水を用いたが、必要に応じて、複数種類の液体を混合した混合液体を溶媒Rとして用いることができる。
また、粉体Pとしては、粉体であれば特に除外されるものではなく、電池電極材料等の化学原料、脱脂粉乳や小麦粉等の食品原料、医薬原料等であって、顆粒、粉体、細粒等の粉体(これら粉体の混合物を含む)を例示することができる。粉体には、粉粒体も含まれる。
さらに、分散質としては、上記の実施形態において例示した粉体P(固相分散質)に限定されるものではなく、液状(液相分散質)のものとしてエマルジョンを生成するようにしても良い。例えば、液相分散質としての油を液相分散媒としての水に分散させる場合にも、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、ステータの絞り透孔を通過した混合流体全体に亘って良好に液相分散媒中における分散質の分散を促進して、高品質のゾルを生成することができる分散方法及び分散システムを確立できる。
【符号の説明】
【0077】
1 本体ケーシング(吸引ポンプ機構部)
5 ロータ
6 回転翼
6a 背面部
7 ステータ
7a 導入室側透孔(絞り透孔)
7b 導入室側透孔(絞り透孔)
8 翼室(出口領域)
9 掻出翼
12 吐出部(出口領域)
13 供給室
14 導入室
14a 絞り部
15 区画板
60 ミキシング機構(供給機構部)
70 再循環機構部
71 分離部(円筒状容器)
100 分散システム
Y 吸引ポンプ機構部
F スラリー(ゾル)
Fp 予備混合物
Fr 未溶解スラリー(ゾルの一部)
P 粉体(分散質)
R 溶媒(液相分散媒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給される導入室と、前記導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、前記ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、当該翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、前記回転翼の回転駆動により、前記導入室から前記絞り透孔を通じて前記翼室に流体を吸引し、前記翼室から前記吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を用い、前記吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、前記液相分散媒に前記分散質を分散させたゾルを生成する分散方法であって、
前記導入室の入口部に絞り部を設け、
前記ステータの絞り透孔の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って前記液相分散媒の飽和蒸気圧以下となるように前記回転翼の回転数を設定し、当該設定された回転数で前記回転翼を回転して、前記翼室内の少なくとも前記ステータの絞り透孔を通過した直後の領域を、前記液相分散媒の微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成する分散方法。
【請求項2】
前記導入室に対し区画板により区画されて形成され、前記ステータの絞り透孔を通じて前記翼室に通じる供給室を設け、
前記分散質と前記液相分散媒とを予備混合した予備混合物を前記供給室に供給するとともに、前記吐出部から吐出されたゾルの一部を前記混合流体として前記導入室に循環供給する請求項1に記載の分散方法。
【請求項3】
流体が供給される導入室と、前記導入室の外周側に配置され複数の絞り透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータと、前記ステータの外周側に形成された吐出部に通じる環状の翼室と、当該翼室で回転駆動可能な回転翼とを、本体ケーシング内に配置し、前記回転翼の回転駆動により、前記導入室から前記絞り透孔を通じて前記翼室に流体を吸引し、前記翼室から前記吐出部に流体を吐出する遠心式の吸引ポンプ機構部を備え、前記吸引ポンプ機構部に分散質と液相分散媒との混合流体を通過させ、前記液相分散媒に前記分散質を分散させたゾルを生成する分散システムであって、
前記導入室の入口部に絞り部を備え、
運転を制御する制御部が、前記ステータの絞り透孔の出口領域の圧力が当該出口領域の全周に亘って前記液相分散媒の飽和蒸気圧以下となるように前記回転翼の回転数を設定し、当該設定された回転数で前記回転翼を回転させて、前記翼室内の少なくとも前記ステータの絞り透孔を通過した直後の領域が、前記液相分散媒の微細気泡が多数発生した微細気泡領域として形成される分散システム。
【請求項4】
前記導入室に対し区画板により区画されて形成され、前記ステータの絞り透孔を通じて前記翼室に通じる供給室を備え、
前記分散質と前記液相分散媒とを予備混合した予備混合物を前記供給室に供給する供給機構部と、前記吐出部から吐出されたゾルの一部を前記混合流体として前記導入室に循環供給する再循環機構部とを備えた請求項3に記載の分散システム。
【請求項5】
前記再循環機構部に、前記導入室に循環供給するゾルから気泡を分離する分離部を備えた請求項4に記載の分散システム。
【請求項6】
前記区画板を、前記回転翼が設けられたロータに接続して回転駆動可能とし、
前記供給室の入口部の予備混合物を前記供給室側に掻き出す掻出翼を、前記区画板に備えた請求項4又は5に記載の分散システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−250145(P2012−250145A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122554(P2011−122554)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】