分散液製造装置及び分散液製造方法
【課題】インクジェット方式の吐出技術を用いて液体中に他の液体の微細液滴を吐出し、液体中に液滴径が均一な他の液体の微細液滴が分散した分散液を製造する分散液製造装置及び分散液製造方法を提供する。
【解決手段】吐出ヘッド12から気相を介してプール15内の水へ油の微細液滴を吐出して、均一なサイズを有する油の液滴が分散した分散液が生成される。プール15内の水に層流を発生させることでプール15内の水での複数の油の液滴の合体が回避され、単分散の好ましい分散液を得ることができる。
【解決手段】吐出ヘッド12から気相を介してプール15内の水へ油の微細液滴を吐出して、均一なサイズを有する油の液滴が分散した分散液が生成される。プール15内の水に層流を発生させることでプール15内の水での複数の油の液滴の合体が回避され、単分散の好ましい分散液を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散液製造装置及び分散液製造方法に係り、特に、液体中に別種の微細液滴が分散する分散液の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や化粧品などに用いられる乳化液(水と油の場合は乳濁液)は、液体中に混じりあわない他の液体が微細液滴となって分散、浮遊している。乳化液は、食品や化粧品以外に医療や電子材料の分野にも使用されている。乳化液は、分散している微細液滴の液滴径が不均一であると、微細液滴同士が合一して不安定化するといった問題があり、インクジェットの吐出技術を利用して均一な粒径を持つ微細液滴を形成し、液体中にこの微細液滴の液滴を吐出させて乳化液を製造する技術が提案されている。インクジェットの吐出技術を用いて形成された液滴は、そのサイズが揃っているので単一サイズの液滴が溶液中に分散することになる(単分散)。
【0003】
特許文献1に記載された発明には、サーマルインクジェットノズルを用いて液体2を液体1中にパルス状に吐出することにより液体1中に液体2から成る液滴が分散した分散液を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−254124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、ノズルの先端を液体1に接触させて液体2の液滴を吐出しているので、液相(液体1)の粘度や、液体1に吐出した液体2の液滴の蒸発が起こらない点を考えると、液体2の液滴の微細化には不利である。また、引用文献1の構成では、連続的に液体2を液体1中に吐出した場合に、液体1における液体2の液滴の着弾位置がずれないので、高速吐出周波数で吐出を行うと液体1中で液体2の液滴同士が合体してしまい、好ましい単分散状態を得ることが困難になる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式の吐出技術を用いて液体中に他の液体の微細液滴を吐出し、液体中に液滴径が均一な他の液体の微細液滴が分散した分散液を製造する分散液製造装置及び分散液製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る分散液製造装置は、第1の液体に微細化した第2の液体の液滴を分散させた分散液を製造する分散液製造装置であって、前記第1の液体が収容される第1の液体収容部材と、前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を微細化した液滴を吐出するとともに、前記第2の液体の吐出面が前記第1の液体の前記第2の液体が着弾する面と所定の距離を離して配置される吐出ヘッドと、を備え、前記吐出ヘッドは、気相を介して前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を吐出することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の液体に気相を介して第2の液体を吐出するので、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点や、気相中で第2の液滴の蒸発が起こる点で第2の液体の微細液滴化に有利であり、好ましい単分散の微細化された液滴を製造可能である。
【0008】
また、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に直接吐出する場合には、第2の液体に吐出力を付与する吐出力付与手段にサーマル方式など大きな吐出圧力を発生させるアクチュエータを適用しなければならないのに対して、気相を介して第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、サーマル方式と比較して吐出圧力が小さなピエゾ方式など他の方式を適用可能である。
【0009】
更に、吐出ヘッド(第2の液体)と、第1の液体が気相によって分離されているので、第1の液体と第2の液体の温度調整を個別に行うことができ、吐出ヘッドの内部に第2の液体が逆流することも防止できる。
【0010】
吐出ヘッドには、第2の液体を吐出するノズル(吐出孔)と、前記吐出孔と連通する圧力室と、前記圧力室内の第2の液体に吐出圧力を付与する圧力発生手段(アクチュエータ)と、前記圧力室に第2の液体を供給する第2の液体供給手段と、を備える態様がある。
【0011】
吐出ヘッドは、第1の液体の第2の液体が着弾する面から所定の間隔を離して配置される。吐出ヘッドと第1の液との距離は0.3mm以上5.0mm以下が好ましく、更に好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材内の第1の液体と前記吐出ヘッドとを一方向に一定の速さで相対的に移動させる移動手段を備え、前記移動手段によって前記第1液体収容部材内の第1液体と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、前記吐出ヘッドから前記第2の液体を微細液滴化して吐出することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第2の液体を所定の吐出間隔で連続的に吐出する場合に、第1の液体の第2液体が吐出される面における同一位置に同一タイミングで複数の第2の液体が着弾することが回避され、第1の液体中で第2の液体が合体することが防止される。
【0014】
第1の液体収容部材と吐出ヘッドとを相対的に移動させる態様には、第1の液体収容部材を固定して第1の液体収容部材に対して吐出ヘッドを移動させる態様や、吐出ヘッドを固定した第1の液体収容部材を移動させる態様がある。もちろん、第1の液体収容部材と吐出ヘッドの両方を移動させてもよい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材内の第1の液体に層流を発生させる層流発生手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、第1の液体に層流を発生させることで、第2の液体を所定の吐出間隔で連続的に吐出した場合に第1の液体における第2の液体の着弾位置が序々にずれていくので、第2の液体同士が第1の液体中で合体することを防止でき、好ましい単分散を実現可能である。
【0017】
第1の液体に層流を発生させる態様には、固定した吐出ヘッドに対して第1の液体収容部材を所定の速度で一方向に移動させる第1の液体収容部材移動手段を備えてもよいし、固定した第1の液体収容部材に対して吐出ヘッドを所定の速度で一方向に移動させる吐出ヘッド移動手段を備えてもよい。もちろん、第1の液体収容部材と吐出ヘッドの両方を相対的に移動させる相対移動手段を備えてもよい。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材は、前記第2の液体が吐出される面に第2の液体の液滴サイズに対応する幅を有し、前記第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を具備することを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第1の液体収容部材に第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を設けることで、好ましい層流を発生させることができる。なお、溝の幅が大きくなると乱流が起こりやすくなるので、溝幅は1mm以下とすることが好ましい。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材は、前記第1の液体が収容されるとともに微細液滴化された第2の液体のサイズに対応する複数の凹部を具備し、前記凹部の開口部は前記第2の液体の吐出面と平行な面に2次元状に並べられた構造を有することを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、凹部の中の第1の液体に微細化された第2の液体の液滴を1滴単位で吐出することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドと前記第1の液体の第2の液体が着弾する面との間の気相中に電界を形成する電界形成手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、第2の液体が吐出される空間の気相中に電界を付与することで該電界を第2の液体に作用させて、第2の液体の第1の液体への入射をアシストしたり、第2の液体のサテライト液滴をメイン液滴から分離させたりすることが可能になる。
【0024】
なお、電界に代わり、熱、光、電磁波、磁界、大気圧プラズマなどの場を適用することも可能である。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記電界形成手段は、前記吐出ヘッドから吐出された第2の液体の微細液滴からサテライト液滴を分離することを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、第2の液体のメイン液滴からサテライト液滴を容易に分離することができ、液滴径の揃った好ましい分散液が生成される。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記電界形成手段は、前記第1の液体収容部材の第1の液体への前記第2の液体の入射をアシストすることを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、第2の液体の液滴の飛翔方向が安定し、第2の液体の液滴を確実に第1の液体に到達させることが可能になる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体に分散する前記第2の液体を固体化する固体化手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、分散液の生成と該分散液中の液滴の固体化処理とを連続工程とすることができ、生産効率の向上が見込まれる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の分散液製造装置一態様に係り、前記第1の液体に分散する第2の液体のサイズ、形状及び内部の様子のうち少なくとも何れか1つを検査する検査手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項10に記載の発明によれば、検査工程を含めて連続処理が可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体に分散した第2の液体を分級する分級手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項11に記載の発明によれば、分級工程を含めて連続処理が可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記分級手段によって分級された第2の液体の級ごとに、前記第1の液体に第2の液体が分散した分散液を回収する回収手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項12に記載の発明によれば、分散液の生成から回収までの工程を連続処理することが可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0037】
また、本発明は上記目的を達成するための方法発明を提供する。即ち、請求項13に記載の分散液製造方法は、第1の液体に気相を介して吐出ヘッドから第2の液体を吐出して、前記第1の液体中に微細液滴化した前記第2の液体を分散させた分散液を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、第1の液体に気相を介して第2の液体を吐出するので、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点や気相中で第2の液滴の蒸発が起こる点で第2の液体の微細液滴化に有利であり、好ましい単分散の微細化された液滴を製造可能である。
【0039】
また、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、第2の液体に吐出力を付与する吐出力付与手段にサーマル方式など大きな吐出圧力を発生させるアクチュエータを適用しなければならないのに対して、気相を介して第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、サーマル方式と比較して吐出圧力が小さいピエゾ方式など他の方式を適用できる。
【0040】
更に、吐出ヘッド(第2の液体)と、第1の液体が気相によって分離されているので、第1の液体と第2の液体の温度調整を個別に行うことができ、吐出ヘッドの内部に第2の液体が逆流することも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0042】
〔装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る分散液製造装置の全体構成図である。同図に示す分散液製造装置10は、水または水系の溶液中に有機化合物、油、脂肪など液滴サイズが揃った微細液滴を分散させて、ドレッシング、マーガリン、健康食品などの食品となる乳化液(分散液)を製造する分散液製造装置である。
【0043】
図1に示す分散液製造装置10は、水または水系の溶液(第1液体)に分散させる油(第2の液体)を均一な液滴サイズを有する微細液滴化して吐出するインクジェット方式の吐出ヘッド12と、と、吐出ヘッド12に供給される油を貯蔵するタンク14と、油の液滴を分散させる分散媒となる水が収容され、吐出ヘッド12の吐出面と対向する面に開口を有するプール15を具備する流路チップ16と、流路チップ16に供給される水を貯蔵するタンク18と、流路チップ16内の水を加圧して層流を発生させるポンプ20と、水に油の液滴を分散させた乳化液を流路チップ16から回収する回収器22と、を備えている。
【0044】
吐出ヘッド12は、プール15の水面(油の液滴が着弾する面)から所定の(0.5mm〜5.0mmの)距離を離してプール15の開口面(油の液滴が吐出される面)に対向するようにプール15の上部に配設され、吐出ヘッド12から吐出された油の液滴は吐出ヘッド12とプール15との間の気相に吐出され、該気相を介してプール15内の水に着弾する。このように気相を介して油の液滴をプール15内の水に吐出すると、例えば、マイクロチャネルリアクターのように気相を介さずに液相に直接油の液滴を吐出させる場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点(即ち、液滴が減速しない点)や、気相中では油の液滴の蒸発が起こる点で微細液滴化に有利である。
【0045】
タンク14は吐出ヘッド12に供給する油が貯蔵されており、流路24を介して吐出ヘッド12と連通されている。また、タンク14は、油の残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、油以外の液体を用いる態様では、種類の異なる液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0046】
タンク18は、流路26、28及びポンプ20を介して流路チップ16が具備するプール15と連通している。タンク18は、タンク14と同様に複数の溶液を用いる態様では、種類の異なる溶液間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0047】
ポンプ20を動作させると、タンク18に貯蔵されている水は、流路26、ポンプ20、流路28を経由して流路チップ16の上側面(天面)に設けられた導入口30からプール15に導入され、プール15内の水に層流が発生する。プール15内の水に安定した層流を発生させるようにポンプ20の発生圧力が制御され、ポンプ20はプール15への水の供給手段及びプール15内の水の層流発生手段として機能する。プール15内に発生させた層流の流速を検出する流速センサを備え、該層流の流速が乱流とならないようにポンプ20の発生圧力を制御する態様が好ましい。
【0048】
なお、流路チップ16内の水に層流を発生させる代わりに、吐出ヘッド12をプール15に対して所定の一方向(例えば、上述した層流の流れ方向)に走査するように構成してもよい。吐出ヘッド12の走査方向は、図1に符号Bで示す方向でもよいし、符号Cで示す方向でもよい。
【0049】
ここでいう「層流」とは、プール15内の水の流れに乱れがなく整然と流れる状態であり、本発明では、{(特性速度)×(特性長さ)}/{(粘性係数)/(密度)}で表されるレイノルズ数Reが、Re<2300の状態を層流とする。なお、「層流」には、プール15内の水が全体として常に一方向に流れる状態に、プール15の外周部近傍(内壁面近傍)では、内壁面に衝突した水の流れが内壁面に沿って流れる状態を含んでいてもよい。
【0050】
上述した「特性速度」は「層流」における代表的な速度を意味し、「特性長さ」は「層流」における代表的な長さを意味している。管の中を流れる流体の場合、「代表的な長さ」とは管の中で最も狭い部分の幅であり、「代表的な速度」とは、代表的な長さに対応する部分における流速といえる。
【0051】
吐出ヘッド12は、プール15の開口の最大幅を超える長さにわたって複数のノズルが配列されたライン型ヘッドで構成されている(図3(a),(b)参照)。このように、プール15の全幅をカバーするフルライン型の吐出ヘッド12によれば、1回の吐出動作でプール15の幅方向の全域にわたって微細化された油の液滴を吐出することが可能であり、プール15の幅に満たない短尺ヘッドをプール15の幅方向に走査させてプール15の幅方向の全域にわたって油を吐出するシリアル方式の吐出ヘッドに比べて生産性を上げることができる。
【0052】
本例では、プール15の幅方向(プール15内の水の層流の流れ方向Aと直交する方向)の全幅に対応するフルライン型ヘッドを例示したが、上述したシリアル方式の吐出ヘッドを本発明に適用してもよい。
【0053】
図2(a)には、層流を発生させた水40に吐出ヘッド12から油の微細液滴42を吐出させて乳化液を生成する様子を図示する。層流を発生させた水40に吐出ヘッド12から均一な液滴サイズを有する微細化された油42を吐出すると、水中に均一なサイズの油が分散した単分散の乳化液が生成される。
【0054】
水の層流の作用によって、吐出ヘッド12から数十kHz〜数百kHzの高い吐出周波数で連続的に油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,を吐出しても、水に着弾した油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,は層流の流れ方向Aに沿って時間経過とともに移動するので、水中や水の表面で油の液滴同士が合体することなく好ましい単分散が維持された乳化液が生成される。
【0055】
図2(b)には、吐出ヘッド12を符号Bで示す方向に走査させて乳化液を生成する様子を図示する。吐出ヘッド12を移動させることで連続的に吐出される油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,の着弾位置を変えることができ、図2(a)に示す態様と同様に、水中に吐出された油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,の単分散が維持された好ましい乳化液が生成される。
【0056】
このようにして生成された乳化液は、プール15の底面に設けられた回収口32から回収流路34を通って回収器22に送られる。回収器22に収容された乳化液は所定の検査、分級、封入などの工程に送られる。
【0057】
図3(a)は、分散液製造装置10を吐出ヘッド12側の上部から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すプール15の他の構造例を示す図である。
【0058】
図3(a)に示すように、プール15は底辺部15Aの長さが斜辺部15B及び斜辺部15Cの長さ(斜辺部の底辺部方向成分の長さ)よりも長くなっている細長い略六角形の平面形状を有し、吐出ヘッド(IJヘッド)12の長手方向と直交する方向に底辺部15Aが形成されている。また、流路チップ16は吐出ヘッド12の長手方向と直交する方向に細長い略長方形の平面形状を有している。
【0059】
プール15の長手方向の一方の端部(図3(a)における右側端部)の略中心部には、タンク18(図1参照)からポンプ20を介して水が供給される導入口30が設けられ、他方の端部(図3(a)の左側端部)の略中心には近傍は回収器22と連通する回収口32が設けられ、プール15は長手方向(底辺部15Aと平行方向)に層流を発生させる構造を有している。
【0060】
また、プール15は、底辺部15Aの壁面と斜辺部15B壁面とのなす角、底辺部15Aの壁面と斜辺部15Cの壁面とのなす角は90°を超える構造となっており、底辺部15Aの壁面と斜辺部15B、斜辺部15Cとの接合部近傍では水の流れによどみが抑制され、プール15内の水には好ましい層流が発生する。
【0061】
図3(b)には、プール15に代わり、数μm〜数百μmの幅を有する複数のマイクロチャネル(微細流路)48が配置される態様を示す。
【0062】
図3(b)に図示されたマイクロチャネル48は、一方の端部が導入口30と連通するとともに他方の端部が回収口32と連通し、吐出ヘッド12の長手方向に沿って複数のマイクロチャネル48が配置される配置構造を有し、マイクロチャネル48には、導入口30から回収口32へ向う方向(符号Dで図示する方向)に層流が発生する。
【0063】
図3(b)に示すマイクロチャネル48は、吐出ヘッド12の長手方向と直交する方向に沿う長辺部48Aと、該長辺部48Aに対して90°を超える角度をなし、一方の端部が長辺部48Aと連通するとともに他方の端部が導入口30と連通する斜辺部48Bと、該長辺部48Aに対して90°を超える角度をなし、一方の端部が長辺部48Aと連通するとともに他方の端部が回収口32と連通する斜辺部48Cと、から構成されている。
【0064】
なお、図3(b)には、1つの導入口30近傍で複数のマイクロチャネル48が分岐し、当該複数のマイクロチャネル48が回収口32の近傍で合流する構造を例示したが、マイクロチャネル48の数に対応した数の導入口30、回収口32及び流路26,34を備える構造も可能である。また、導入口30及び回収口32を流路チップ16の短手方向に細長い形状として、長辺部48Aの一方の端部が導入口30と連通するとともに、他方の端部が回収口32と連通する構造も可能である。なお、マイクロチャネル48の配置数及び配置構造は、吐出ヘッド12が有するノズル(図5参照)の数及び配置構造に対応して決められている。
【0065】
図4(a)には、複数のノズル51から複数のマイクロチャネル48に向けて油の微細液滴42を吐出する様子を図示する。図4(a)に示す各マイクロチャネル48には、符合Dで図示する方向に層流を発生させており、各マイクロチャネル48の層流の流れ方向(チャネル48の形成方向)の同一位置には同一タイミングでは異なるノズル51から油の液滴42が吐出されるように、マイクロチャネル48及びノズル51の配置が決められている。
【0066】
図4(a)に示すように、マイクロチャネル48に符号D示す方向の層流を発生させるとともに、吐出ヘッド12から油の微細液滴42を順次吐出することで、マイクロチャネル48内における油の微細液滴42の合体が抑制され、単分散が維持された好ましい乳化液を生成することができる。
【0067】
なお、マイクロチャネル48の厚みhが大きくなると、マイクロチャネル48内に乱流が発生しやすくなるので、マイクロチャネル48の厚みhは1mm以下とする態様が好ましい。
【0068】
図4(a)に示すマイクロチャネル48に代わり、流路チップ16に図4(b)に示す微細箱50をアレイ状に配置してもよい。微細箱50は、吐出ヘッド12の吐出面と対向する面に吐出ヘッド12から吐出される油の液滴の液滴サイズよりも大きい面積を持つ開口を有するとともに分散媒となる水が収容されている。また、吐出ヘッド12のノズルに1対1で対応しており、微細箱50内に油の微細液滴42を1滴単位で収容することが可能である。
【0069】
図4(b)に示す微細箱50を備えた流路チップ16と吐出ヘッド12とを相対的に一方向に走査させながら各微細箱50に対して異なるノズルを用いて油の液滴を吐出することで、微細箱50内で油の液滴が合体することなく単分散が維持された好ましい乳化液を生成可能である。
【0070】
また、微細箱50に乳化液が生成された状態の流路チップ16に対して加熱や冷却のなどを施して、微細箱50内の乳化液の液滴を粉粒化(固体化)させることができ、粉粒化処理の前に流路チップ16から乳化液を一旦回収する工程を省くことが可能になる。
【0071】
〔ヘッドの構造の説明〕
次に、吐出ヘッド12の構造について詳細に説明する。図5(a) は吐出ヘッド12の構造例を示す平面透視図であり、図5(b) は吐出ヘッド12の他の構造例を示す平面透視図である。また、図5(c) は吐出ヘッド12の他の構造例を示す平面透視図である。
【0072】
本例の吐出ヘッド12は、図5(a) 〜(c)に示すように、油の液滴が出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数の吐出素子53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
【0073】
即ち、本実施形態における吐出ヘッド12は、図5(a),(b) に示すように、油の液滴を吐出する複数のノズル51が主走査方向に沿って、図3(a)に示すプール15の層流の流れ方向と略直交する幅や図3(b)に示すマイクロチャネル48の形成幅などの吐出領域の幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
【0074】
また、図5(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド12’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、吐出領域の全幅に対応する長さとしてもよい。また、図示は省略するが短尺のヘッドを直線状につなぎ合わせてもよい。
【0075】
図5(a)〜(c)示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。また、各圧力室52は供給口54を介して共通液室(図5(a)〜(c)には不図示、図6に符号55で図示)と連通されている。
【0076】
かかる構造を有する多数の吐出素子53を図5(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿って吐出素子53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0077】
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投さ影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0078】
図5(b)に示す主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPを図3(b)に示すマイクロチャネル48の配置ピッチと同一に構成する態様が好ましい。また、図4(b)に示す微細箱50の配置構造を図5(b)に示すノズル51の配置構造と同一に構成する態様が好ましい。
【0079】
図6は、吐出ヘッド12の立体構造を示す断面図(図5(a),(b) 中の6−6線に沿う断面図)である。圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、加圧板56は圧電素子58の共通電極と兼用されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58にたわみ変形が生じて圧力室52が変形し、油の液滴がノズル51から吐出される。油の液滴がからインクが吐出されると、共通液室55から供給口54を通って新しい油が圧力室52に供給される。
【0080】
一般的な吐出ヘッドの吐出方式には、サーマルジェット方式及びピエゾジェット方式が好適に用いられる。サーマルジェット方式は、膜沸騰現象によりバブルを発生し吐出圧力を得る方式であり、バブル発生のため及び液体のコゲ(加熱により生成される固形物)を少なくするために適用可能な液体は基本的に水系でコゲにくい液体に限定される。したがって、分散液の製造を考えた場合、サーマルジェット方式ではその分散液として油系の溶液中に水系の液滴が分散したものに限定されることになる。一方、ピエゾジェット方式では水系の液体及び油系の液体の何れも吐出可能であり、ピエゾジェット方式はサーマルジェット方式に比べて適用可能な液体の選択の自由度が大きいという特徴がある。
【0081】
また、サーマルジェット方式が用いられる吐出ヘッドでは、液体流路の内部にサーマルアクチュエータ部(例えば、ヒータ)を形成する必要があるため、このサーマルアクチュエータ部の寿命により吐出ヘッドの寿命が短くなる傾向がある。また、液体のコゲによる特性低下もあって、一般的にピエゾジェット方式を用いた吐出ヘッドに比べて寿命が短くなる。本例のような分散液の製造では、画像形成とは異なり連続して液体を吐出し続けることも考えられるので、ピエゾジェット方式を用いた吐出ヘッドはサーマルジェット方式を用いた吐出ヘッドに比べて寿命が長いので、分散液の製造には非常に有利である。
【0082】
サーマルジェット方式では、吐出液適量の変調は基本的に吐出する/吐出しない、の2値に限られるが、ピエゾジェット方式では、一般的に吐出可能最小液滴の約10倍の範囲で変調することが可能である。即ち、ピエゾジェット方式の吐出ヘッドは、分散液のサイズを変調する際に吐出ヘッドの交換を必要とせず、分散液の製造に用いる場合には対応性に優れているといえる。
【0083】
サーマルジェット方式はピエゾジェット方式と比べて吐出の際に損失するエネルギー量が5倍から10倍程度大きくなる。即ち、ピエゾジェット方式はサーマルジェット方式と比べてエネルギー効率に優れ、更に、製造コストの面でも優位性がある。
【0084】
一方、サーマルジェット方式はアクチュエータ部(発熱体)のサイズが小さくてすむので、ピエゾジェット方式よりも吐出ヘッドの高集積化に有利であるといえるが、ピエゾジェット方式は、アクチュエータ(PZT)の寿命が長いこと、適用可能な液体の限定が少ないこと、吐出量の変調が容易であること、吐出時のエネルギー効率に優れていることといった優位性があり、分散液の製造にはサーマルジェット方式よりもピエゾジェット方式がより好ましい。
【0085】
ここで、「気相を介して液滴を吐出する場合」と、「気相を介さずに直接液相に液滴を吐出する場合」について、「微細液滴化」、「吐出周波数(液滴の生成周波数)の高速化」について詳細に説明する。
【0086】
液滴をノズルから吐出するときに抵抗として作用すると考えられるものには、「液滴と連続相の界面張力」、「連続相の粘性係数」、「連続相の密度」がある。ここで、「連続相」とは、ノズルより液滴が吐出される側の相であり、例えば、画像を形成するインクジェット記録装置の場合には「気相(空気の相)」である。
【0087】
上述した連続相を「気相」から「液相」に変えても「液滴と連続相の界面張力」の物性値が大きく変化することはなく、「気相を介して液滴を吐出する場合」と「気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合」とには大きな差が生じることはない。よって、「液滴と連続相の界面張力」によって「微細液滴化」、「吐出周波数の高速化」に大きな違いが生じるとは考え難い。
【0088】
但し、連続相を「気相」から「液相」に変えると、「連続相の粘性係数」及び「連続相の密度」の物性値は100倍から100000倍程度大きくなり、ノズルの先に大きな粘性抵抗と大きな密度を持つ相が存在することになるので、液滴の吐出に対する抵抗成分が極端に大きくなる。
【0089】
その抵抗分よりもおおきな発生圧力を発生させることができれば問題とならないが、ヘッドの構造及びサイズには現実的なノズル集積度などの観点から制約があり、アクチュエータの能力の向上も材質や構造から限界がある。よって発生圧力を最大限に見積ると、「気相を介して液滴を吐出する場合(即ち、粘性抵抗が小さい場合)」は「気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合(即ち、粘性抵抗が大きい場合)」に比べてノズルから吐出される液滴の吐出速度が大きくなり、「吐出速度の高速化」に有利となる。
【0090】
また、一般的に液滴を微細化するためには、ノズル径を小さくすることが必須であるが、ノズルの微細化によるノズル内部の流路における圧力損失はノズル径の4乗に比例して急激に大きくなる。ノズルに付加する圧力を限界まで見積り一定値として、連続相を「気相」から「液相」に変化させて更にノズルの微細化を行うと、ノズル内部の流路における抵抗成分の急激な増加に加えて、「連続相の粘性係数」及び「連続相の密度」の物性値が100倍から100000倍程度大きくなることによる抵抗成分の増加が加わるため、液滴を吐出させるためには必然的にノズル径を大きくしなければならない。よって、「微細液滴化」に関しても、「気相を介して液滴を吐出すること」は有利といえる。
【0091】
即ち、連続相の粘度と密度の違いにより、気相を介して液滴を吐出する場合は気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合に比べて、「吐出周波数の高速化」及び「微細液滴化」に有利である。
【0092】
本例では、ノズルがマトリクス状に並べえられた記録ヘッドを例示したが、ノズル配置はマトリクス配置に限定されず、図3(a)に示すプール15の幅方向に沿ってノズルを1列に並べる態様や、2列のノズル列を千鳥状に配置する態様も可能である。
【0093】
〔供給系の説明〕
次に、分散液製造装置10の供給系の概略構成について説明する。図7は分散液製造装置10における油の供給系の構成を示した概要図である。
【0094】
タンク60は油を吐出ヘッド12に供給するための基タンクであり、図1で説明したタンク14と同一のものである。タンク60の形態には、油の残量が少なくなった場合に、不図示の補充口から油を補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。乳化液滴となる液体の種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、液体の種類情報をバーコード等で識別して、液体種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0095】
なお、吐出ヘッド12に供給する液体の種類を変更する場合には、吐出ヘッド12及びタンク60と吐出ヘッド12との間の流路の清掃が行われ、更に、タンク60と吐出ヘッド12との間に設けられたフィルタ62の交換が行われる。
【0096】
上述したように、タンク60と吐出ヘッド12の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましく、吐出ヘッド12に供給される液体の種類に応じて適宜メッシュサイズの異なるフィルタを用いるとよい。
【0097】
なお、吐出ヘッド12の近傍又は吐出ヘッド12と一体にサブタンク(不図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、圧力室52や共通液室55の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0098】
サブタンクにより共通液室55内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクと吐出ヘッド12内の圧力室52との水頭圧の差により圧力室52内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及び圧力室52の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
【0099】
〔ヘッドのメンテナンスの説明〕
図7に示すように、分散液製造装置10にはノズル51の乾燥防止又はノズル51近傍の液体の粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられ、ノズル51が形成されるノズル形成面のクリーニング(ワイピング)を行うための手段としてブレード66が設けられている。
【0100】
キャップ64やブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって吐出ヘッド12に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から吐出ヘッド12下方の位置に移動される。
【0101】
図7に示すキャップ64は、吐出ヘッド12のノズル形成面を全面にわたって覆うことができるサイズを有している。キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって吐出ヘッド12に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、吐出ヘッド12(吐出ヘッド12のノズル形成面)に密着させることにより、ノズル形成面をキャップ64で覆い、ノズル形成面がキャップ64によって保護される。
【0102】
また、吐出ヘッド12の供給される液体を変更する場合など、吐出ヘッド12内に残留する液体を排出するために、キャップ64をノズル形成面に当接した後にキャップ64に接続されたポンプ67を用いて吸引が行われる。なお、ノズル内に異物が混入した場合には、この異物を排出すべくキャップ64に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。上述した吸引動作は、初期の吐出ヘッドへの液体の装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも液体の排出が行われる。
【0103】
ブレード66は、ノズル形成面に当接させながら移動してノズル形成面の汚れを除去する払拭手段として機能し、硬質ゴムなどの材料が好適に用いられる。即ち、ブレード66は所定の強度(剛性)及び所定の弾力性を有し、その表面は吐出ヘッドから吐出される様々な液体をはじく所定の撥水性能を有している。ブレード66はノズル形成面に付着した液体(固まってノズル形成面に固着した液体)やその他の異物を払拭除去可能な部材で構成される。
【0104】
また、図7には図示しないが、分散液製造装置10のヘッドメンテナンス機構(ヘッドメンテナンス手段)には、該ブレード66を上下方向に移動させてノズル形成面に接触させる/接触させない(非接触)を切り換えるブレード上下機構(不図示)や、ブレード66に付着した異物を除去するクリーニング手段が備えられている。
【0105】
〔制御系の説明〕
次に、本例に示す分散液製造装置10の制御系について説明する。図8は分散液製造装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。分散液製造装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、ポンプ制御部79、吐出制御部80、バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0106】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる吐出データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された吐出データは通信インターフェース70を介して分散液製造装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された吐出データを一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0107】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0108】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。図8にはモータ88を1つだけ図示したが、モータ88には、図7に示すキャップ64の移動機構のモータや、吐出ヘッド12を流路チップに対して走査させる態様における吐出ヘッド12の走査機構のモータなど、複数のモータが含まれている。
【0109】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってヒータ89を駆動するドライバーである。図8に示すヒータ89には、吐出ヘッド12の温度調節ヒータや、図1に示すプール15の温度調節ヒータ、タンク14,18の温度調節ヒータなど、複数のヒータが含まれている。
【0110】
ポンプ制御部79は、システムコントローラ72に指令信号に応じて、図1のポンプ20や、図7のポンプ67を制御する制御ブロックである。ポンプ制御部79は、図1に示したプール15内に発生させる層流を制御する層流制御手段としても機能している。
【0111】
吐出制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の吐出データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出指令信号)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。吐出制御部80において所要の信号処理が施され、該吐出データに基づいてヘッドドライバ84を介して各吐出ヘッド12の液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。
【0112】
吐出制御部80にはバッファメモリ82が備えられており、吐出制御部80における吐出データ処理時に吐出データやパラメータなどのデータがバッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8においてバッファメモリ82は吐出制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、吐出制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0113】
ヘッドドライバ84は、吐出制御部80から与えられる吐出制御信号に基づいて吐出ヘッド12の圧電素子58(図6参照)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0114】
プログラム格納部90には、分散液製造装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラ72はプログラム格納部90に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0115】
即ち、図8に示す制御系は、吐出データに基づいて吐出ヘッド12から吐出される油の液滴の吐出タイミングや吐出量を制御するとともに、図3(a)に示すプール15内の層流を制御する。
【0116】
なお、図8には図示しないセンサ(吐出ヘッド12、タンク14、18などの温度を検出する温度センサや、プール15内の水の流速を検出する流速センサ)などの検出手段から得られた各情報は、システムコントローラ72に送られてその情報に応じて装置内の各部の制御が行われる。
【0117】
上記の如く構成された分散液製造装置では、気相を介して吐出ヘッド12から油の微細液滴が吐出されるので、均一な微小サイズを有する好ましい油の液滴を生成することができるとともに、気相を介さずに油の液滴を直接液相に吐出する場合に比べて、吐出周波数を高くすることも可能である。また、ノズルが液相に接触(近接)しないので、水や油の液滴は吐出ヘッド内に逆流することがない。
【0118】
また、油の液滴を吐出させる水に層流を発生させることで、水中で油の液滴が合体することなく単分散が維持された好ましい乳化液が生成される。
【0119】
〔応用例〕
次に、図9〜図13を用いて本実施形態に係る応用例について説明する。図9は、本応用例に係る分散液製造装置100の概略構成を示す概念図であり、図10及び図11は、液滴の飛翔方向偏向制御を説明する概念図である。また、図12は、図9に示す電極対106の他の構成例を示す図であり、図13は図9の分散液製造装置100を吐出ヘッド12側(上面側)から見た図である。なお、図9〜図13中、図1及び図3と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0120】
図9に示す分散液製造装置100は、吐出ヘッド12とマイクロチャネル48との間の油の液滴が飛翔する空間部に電界を形成するプラス電極102及びマイナス電極104から構成される電極対106が設けられている。電極対106は不図示の電源に接続され、該電源を用いてプラス電極102と、該プラス電極102に対向するマイナス電極104との間に電圧を印加すると、プラス電極102からマイナス電極104へ向う電界が油の液滴の吐出方向と略直交する方向に発生する。
【0121】
吐出ヘッド12から1回の吐出動作で吐出される油の液滴には、メイン液滴(理論上の液滴サイズと略同一サイズの液滴)110の他にサテライト(メイン液滴に比べて非常に小さなサイズを有する液滴)112を含んでいることがある。帯電させた油の液滴を吐出ヘッド12から吐出させると、該油の液滴がプラス電極102とマイナス電極104の間を通過するときに、プラス電極102とマイナス電極104の間の電場によってメイン液滴110とサテライト液滴112に分離され、サテライト液滴112はガター114に回収される。
【0122】
図9に図示する例では、メイン液滴110がプラス電極102とマイナス電極104との間を通過するタイミングではプラス電極102とマイナス電極104の間に電界を発生させず、メイン液滴110の飛翔方向を偏向させずにメイン液滴110をマイクロチャネル48の水に着弾させる。一方、サテライト112がプラス電極102とマイナス電極104との間を通過するタイミングではプラス電極102とマイナス電極104の間に電界を発生させて、サテライト112の飛翔方向を偏向してサテライト112はガター114に回収される。
【0123】
図10(a)に示すように、メイン液滴110がノズル51内の液と分離するタイミングとサテライトがノズル51の液と分離するタイミングが異なり、メイン液滴110とサテライト112には飛翔速度差が生じるので、メイン液滴110がプラス電極102及びマイナス電極104間に到達するタイミングと、サテライト112がプラス電極102及びマイナス電極104間に到達するタイミングとの間には時間差が生じる。したがって、図10(b)に示すように、サテライト112がプラス電極102とマイナス電極104との間に到達するタイミングに同期して電界を発生させることで、サテライト112の飛翔方向を偏向させて、ノズル51の垂直下方向に向かう飛翔経路から所定の距離だけ離された位置に配置されるガター114にサテライト112が回収される。
【0124】
電界の発生タイミングは、図6に示す圧電素子58の駆動タイミングt0から、サテライト112の飛翔速度vsにノズル51と電極対116との間の距離yを乗じた時間Δt(=vs×y)だけ遅れたタイミングt1(=t0+Δt=t0+(vs×y))となる。
【0125】
また、図示は省略するが、メイン液滴110の通過タイミングに同期して電界を発生させて、メイン液滴110の飛翔方向を偏向させ、サテライト112の通過タイミングでは電界を発生させないことも可能である。サテライト112の飛翔方向を偏向させずに垂直下方向に吐出させる場合には、ガター114はノズル51の垂直下方向に向かう飛翔経路上に設けられている。
【0126】
例えば、図11に示すように、メイン液滴110とサテライト112は保持する電荷量の違いを利用して分離することも可能である。電極対106の間をメイン液滴110及びサテライト112が通過する際に同じ大きさ及び同じ時間間隔で電場を発生させると(連続的に電場を発生させると)、メイン液滴110とサテライト112は同じ方向に電界から力を受けるが、メイン液滴110の持つ電荷量とサテライト112の持つ電荷量との違いによって飛翔方向に違いが生じる。このようにメイン液滴110とサテライト112の飛翔方向が変わることを利用して、サテライト112をガターに収容するとともに、メイン液滴110はマイクロチャネル48内の水に到達する。なお、図19(b)に図示するように、メイン液滴110の入射方向がマイクロチャネル48内の水の流れに対して垂直になるように、ノズル51(ヘッド12)の吐出角度(吐出方向)及び電極対106の位置を調整してもよい。
【0127】
このように油の液滴が吐出される気相空間に電場を形成し、メイン液滴110とサテライト液滴112に分離することによって、サテライト液滴112がマイクロチャネル48内の水に到達せず、液滴サイズの揃った好ましい乳化液が生成される。
【0128】
なお、サテライト液滴112をマイクロチャネル48内の水に分散させると、メイン液滴110をマイクロチャネル48内の水に分散させる態様に比べて分散させる液滴が微小化される。また、電場を油の液滴の吐出方向(吐出ヘッド12からマイクロチャネル48に向かう方向)に形成し、電場によって油の液滴の飛翔をアシストする(電場をアシスト手段として用いる)ことも可能である。
【0129】
図12(a)〜(c)には、電場を油の液滴の吐出方向に形成して油の液滴の飛翔をアシストするアシスト手段として用いられる電極対106の構成例を示す。図12(a)に示す態様は、ノズル51が形成されるノズルプレート51Aをプラス電極102とし、マイクロチャネル48の内部にノズルプレート51Aに対向するようにマイナス電極104を配設し、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0130】
図12(b)には静電吐出方式を適用した態様を示す。ノズル51の内部の設けられた針状の電極をプラス電極102とし、マイクロチャネル48の内部にノズルプレート51Aに対向するようにマイナス電極104を配設し、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0131】
図12(c)には、ノズル51とマイクロチャネル48との間の気相空間に油の液滴の吐出方向に開口部が形成されるリング形状の電極を油の液滴の吐出方向に沿って対向するように配設して電極対を形成する態様を示す。ノズル51側の電極をプラス電極102とし、マイクロチャネル48側の電極をマイナス電極104として、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0132】
本例では、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出される気相空間に電場を付与する態様を示したが、本発明の適用範囲は電場に限定されず、熱(乾燥雰囲気)、光、電磁波、磁場、大気圧プラズマなど、電場以外の場も適用可能である。
【0133】
例えば、油の液滴が吐出される気相空間に熱を付与する(或いは、油の液滴が吐出される気相空間を乾燥雰囲気とする)ことにより、吐出ヘッド12から吐出された油の液滴の乾燥を促進してより微細液滴化することや、相変化(例えば、ゾルゲル化)させることが考えられる。
【0134】
また、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出させる吐出領域のマイクロチャネル48内の水の流れ方向の下流側には、各マイクロチャネル48のそれぞれに油の液滴が分散した乳化液を加熱するヒータ120が備えられている。
【0135】
吐出ヘッド12の吐出タイミングに対応して、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出され、所定の時間が経過した後に、ヒータ120をオンしてマイクロチャネル48内の乳化液を加熱すると、乳化液中の油の液滴が固体化(或いは、結晶化、高分子化)し、粉粒体が生成される。
【0136】
ヒータ120は、図8に示したヒータドライバ78を介してシステムコントローラ72によって、オンオフや発生熱量が制御される。また、ヒータ120の加熱処理領域の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)を備え、該温度センサによって検出された温度に応じてヒータ120を制御する態様が好ましい。
【0137】
本例では、乳化液中の液滴の固体化手段(結晶化手段、高分子化手段)としてヒータを例示したが、電磁波、光(赤外線、レーザ、マイクロ波)などを用いてマイクロチャネル48の外部から乳化液中の液滴へ固体化(結晶化、高分子化)に要するエネルギーを付与してもよい。また、マイクロチャネル48内の乳化液を冷却して、乳化液中の液滴を反応変化させてもよい。
【0138】
ヒータ120のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、マイクロチャネル48の上部(吐出ヘッド12から油の液滴を吐出される面に対向する位置)に、固体化した乳化液中の粉粒体の検査手段(測定手段)としてマイクロスコープ130が備えられている。
【0139】
マイクロスコープ130は解析装置132に接続されており、マイクロスコープ130により得られた情報は解析装置132で画像解析され、固体化された粉粒体のサイズ(体積)、形状、内部の様子などの情報が得られる。解析装置132は、図8の制御系の一部として設けられてもよいし、図8の制御系とは別に設けられてもよい。なお、マイクロスコープ130には、レーザ解析散乱法や動的光散乱法などの方式があり、本発明には何れの方式を適用してもよい。
【0140】
本例では、分散液として食品を製造する態様を例示したが、後述するように電子産業分野における電子機器の製造にも適用することができる。電子産業分野に使用される粉粒体には厳しい保障が要求される場合(製造バラつきが3σで±5μmの範囲に入っていることや、ある数値以上の粒子径を持つ粒子が存在しないことを要求される場合)があり、精度の高い検査が要求される。したがって、多量の粒子をひとつの容器に回収した後に粒子を再検査するよりも、1つの粒子を生成した直後にマイクロチャネル48内でそのまま検査をする態様は効率面で優れているといえる。
【0141】
マイクロスコープ130による検査領域のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、分級機構(選別機構)が設けられている。一般的なインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズは数%以内のゆらぎの範囲にあり揃っているが、イレギュラーなサイズを持つ液滴が混入する可能があるので、乳化液中の粉粒体(液滴)のサイズの規格に応じて粉粒体を分級する態様が好ましい。
【0142】
図13を用いて分級機構及び分級機構による分級工程について説明する。図13に示すように、マイクロスコープ130のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、プラス電極142とプラス電極142に対向するマイナス電極144から構成される電極対146が設けられ、電荷を持つ粉粒体にプラス電極142及びマイナス電極144間に発生させた電界を作用させて分級が行われる。
【0143】
即ち、マイクロスコープ130及び解析装置132を含む検査手段による検査工程において、規格外の粒子(異常粒子)が発見された場合には、検査手段から規格外粒子の情報(制御信号)が電極対146を制御する電圧制御部147に送られる。電圧制御手段147は、該制御信号を取得すると電極対146に所定の電圧を印加してプラス電極142及びマイナス電極144間に電界を発生させて分級が行われる。
【0144】
このようにして、検査工程による検査結果を分級工程にフィードバックすることで、検査工程及び分級工程を一貫して自動的に実行することができる。
【0145】
なお、粉粒体の分級には、レーザマニピュレータやマイクロマニピュレータ、多数の微細孔をもつフィルタなどを適用してもよい。また、本例の分級には水中で沈降する粉粒体と沈降せずに浮遊している粉粒体に分ける態様も可能である。
【0146】
上述したように分級された粉粒体を含む乳化液は、粉粒体の規格ごとに設けられた排出流路148A、148Bを介してそれぞれに対応した回収器22A及び回収器22Bに送られる。本例では、流路チップ16の底面に回収口32を設け、流路チップ16の下方に設けられた回収器22A及び回収器22Bに乳化液を回収する態様を例示したが、回収器22A及び回収器22Bは回収流路を介して排出流路148A,148Bと連通していれば回収器22A及び回収器22Bの配置は限定されない。また、粉粒体と溶液(水)を分離する機構を備え、粉粒体と溶液とを別々に回収してもよい。プラス電極142及びマイナス電極144間に印加する電圧の極性を反転させて電界を逆方向に発生させると、回収器22Aに回収される粉粒体と回収器22Bに回収される粉粒体とを入れ換えることも可能である。
【0147】
本応用例では、乳化液中の液滴を粉粒化した後に検査(測定)、分級(選別)する態様を例示したが、粉粒化せずに液滴のまま乳化液を回収する態様にも、検査工程及び分級工程を適用することも可能である。
【0148】
本応用例によれば、乳化液を生成した後に固形化(粉粒化)工程、検査工程及び分級工程を備えることで、乳化液製造の後工程の連続処理が可能となる。
【0149】
〔応用例2〕
次に、本発明の実施形態に係る他の応用例について説明する。図14は、本応用例に係る分散液製造装置200の概略構成を示す概念図である。本応用例に示す分散液製造装置200は、搬送ベルト202を用いて水が収容された容器204を一方向に一定速で搬送し、容器204が吐出ヘッド12の下部の吐出領域に到達すると、吐出ヘッド12から容器204内の水に油の液滴が吐出され、容器204内に水に油の液滴が分散した乳化液が生成される。
【0150】
搬送ベルト202の搬送制御は、図8に示す制御系のシステムコントローラ72によりモータドライバ76を介して行われる。即ち、吐出データに基づいて搬送ベルト202の搬送速度が決められ、該搬送速度に基づいて搬送ベルト202を駆動するモータ(不図示)の制御が行われる。
【0151】
吐出ヘッド12の容器204の搬送方向下流側には、乳化液中の油の液滴を固体化させるためのエネルギーを付与するハロゲンランプ206が備えられている。容器204内に乳化液が生成され、該容器がハロゲンランプ206の下部の照射領域に達すると、ハロゲンランプからハロゲン光が照射され、乳化液中の油の液滴が固体化される。
【0152】
本例では、乳化液中の液滴の固体化手段としてハロゲンランプを例示したが、図9及び図13に示したヒータ120や、電磁波、光(赤外線、レーザ、マイクロ波)などを用いて容器204の外部から乳化液中の油の液滴へ固体化(結晶化、高分子化)に要するエネルギーを付与してもよい。また、マイクロチャネル48内の乳化液を冷却して、乳化液中の液滴を反応変化させてもよい。
【0153】
ハロゲンランプ206の容器204の搬送方向の下流側には、解析装置132に接続されたマイクロスコープ130が設けられ、乳化液中の粉粒体の検査が行われる。本例の検査工程は上述した応用例と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0154】
検査工程が終了すると乳化液が収容された容器204は所定の排出路(不図示)を経由して容器ごと回収される。
【0155】
図15には、容器204の一例を図示する。本応用例に示す容器204は、図15(a)に示すように油の液滴が吐出される面に開口部を有す微細箱210を2次元状に並べた構造を適用してもよいし、図15(b)に示すように一体型のプール212を備える構造を適用してもよい。
【0156】
図15(a)に示すように、容器204を微小領域に分割する態様によれば、乳化液生成後の加熱処理がより早く、均一に行うことが可能である。また、微小領域に分かれていると検査工程が容易であり、検査工程で不合格となったものの除去も容易である。
【0157】
なお、図16に示すように、ヘッド12から吐出させる液体の種類とマイクロチャネル48内の液体の種類との組み合わせによっては、吐出液滴がマイクロチャネル48内の液体(溶媒)の中に入らずにマイクロチャネル48内の液体の表面に浮遊する場合が考えられる。また、ヘッド12から吐出される際に付与される吐出力によっても同様の現象が起こり得る。このようにマイクロチャネル48内の液体表面に浮遊する液滴を加熱して固体化すると、扁平形状を有する円盤状の分粒体や、ドーム形状を上下に貼り合わせた形状の分粒体など、非球形の分粒体が形成される。
【0158】
例えば、円盤状の分粒体は、球形状の分粒体とは違い円盤の平端部とその垂直方向で異方性を有するので、液体中の流れの中での挙動や凝集したときの充填性、光による散乱性などに違いがある。即ち、球形状の分粒体とは異なる性質を利用して、塗料、インク、潤滑油、充填剤、化粧品、電子材料などに応用することが可能である。
【0159】
本実施形態では、食品となる乳化液が生成されるので、吐出される油に影響を与え難いように、吐出ヘッド12を接着剤レスにすることや、吐出される液により吐出ヘッド12が腐食、変質し難いセラミックやシリコンなどの部材を用いることが好ましい。
【0160】
また、本実施形態では、水または水系の溶液に有機化合物、油、脂肪などの微細液滴を分散させて、マーガリンやドレッシング、健康食品などの食品を製造する態様を例示したが、本発明は他のアプリケーションにも適用可能である。
【0161】
例えば、水または水系の溶液に病気の治療に必要な薬物を含む有機化合物の液体、油もしくは油系の液体を分散させて、ドラックデリバリーを製造してもよい。ドラックデリバリーの製造では、装置はクリーンルーム環境に設置されるので装置全体として高いクリーン度が要求され、製造工程に異物を検出する工程及び吐出ヘッド12の内部を定期的に洗浄する洗浄工程が追加される。また、吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズは1μm以下のサブミクロンオーダーであり、食品製造と同様に、吐出ヘッド12から吐出される液体に影響を与えない(例えば、変質させない)ように、接着剤レス構造にすることや、吐出ヘッドから吐出される液体によって吐出ヘッドが腐食、変質し難いように、吐出ヘッドを構成する部材にはセラミックやシリコンなどの材料が適用される。吐出ヘッドの一部を透明な部材で構成し、吐出ヘッドの内部の液体の汚染状況を目視で確認できるように構成する態様も好ましい。
【0162】
また、水または水系の溶液にモノマーを含む有機化合物の液滴を分散させて、液晶スペーサーや電子ペーパの粒子のどの高分子球状粒体を製造することや、水にはんだペーストの液滴を分散させて液晶スペーサーや電子ペーパの粒子に用いられるはんだ球状粒子を製造することも可能である。高分子球状粒体の製造では、分散液を生成した後に加熱工程(加熱のためのヒータ)を備えることが必須であり、極端な単分散性(±10%以内)とサイズの保障が必要になるので、吐出ヘッドのノズルを高精度に形成しなければならない。
【0163】
逐次処理方式では生産性を上げることができないので、連続処理方式によって、液滴生成、加熱、分級、検査の各工程を一貫工程として生産性を上げることが可能である。更に、量産量の増減があるので、装置の大型化ではなくナンバリングアップにより生産性を調整する態様が好ましい。
【0164】
はんだ球状粒子の製造では、吐出ヘッド内のはんだを溶融温度まで加熱する必要があり、分散液を生成した後に冷却工程を備えて、冷却によってはんだの液滴が固体化される。なお、はんだ球状粒子の製造では、高分子球状粒子の製造と同様に、極端な単分散性(±10%以内)とサイズの保障が必要になるので、吐出ヘッドのノズルを高精度に形成しなければならず、逐次処理方式では生産性を上げることができないので、連続処理方式によって、液滴生成、冷却、分級、検査の各工程を一貫工程として生産性を上げることが可能である。更に、量産量の増減があるので、装置の大型化ではなくナンバリングアップにより生産性を調整する態様が好ましい。
【0165】
上述したアプリケーション以外にも、水または水系の溶液に油の液滴を分散させた乳液などの化粧品や、化粧品の素材や燃料ガス流速計用のトレーサー粒子となるシリカ球状粒子、水、油またはイオン液体の溶液にイオン液体または水、油の液滴を分散させるイオン液体にも適用可能である。
【0166】
化粧品の製造では、大量に低コストで製造するためにヘッドの多ノズル化、吐出周波数の高速化、ナンバリングアップが必要である。また、吐出ヘッドから吐出される液体に影響しないように、吐出ヘッドを接着レス構造にすることや、吐出ヘッドから吐出する液体によって吐出ヘッドに腐食、変質し難い材料を吐出ヘッドの構成部材に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の実施形態に係る分散液製造装置の基本構成図
【図2】層流を説明する図
【図3】図1に示す分散液製造装置の概略平面図
【図4】分散液の生成を説明する図
【図5】図1に示す吐出ヘッドのノズル配置を示す平面図
【図6】ヘッドの立体構造を示す断面図
【図7】図1に示す分散液製造装置の供給系の構成を示す断面図
【図8】図1に示す分散液製造装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図9】本発明の応用例に係る分散液製造装置の基本構成図
【図10】サテライトの回収を説明する図
【図11】図10に示すサテライトの回収の他の態様を説明する図
【図12】図9の電極対の構成例を示す図
【図13】図9に示す分散液製造装置の概略平面図
【図14】図9に示す分散液製造装置の他の応用例に係る分散液製造装置の基本構成図
【図15】図14に示す容器の構造を示す斜視図
【図16】円盤状の分散粒子を説明する図
【符号の説明】
【0168】
10,100,200…分散液製造装置、12…吐出ヘッド、15…プール、20…ポンプ、48…マイクロチャネル、50,210…微細箱、51…ノズル、79…ポンプ制御部、106,146…電極対、120…ヒータ、130…マイクロスコープ、132…解析装置、202…搬送ベルト、204…容器
【技術分野】
【0001】
本発明は分散液製造装置及び分散液製造方法に係り、特に、液体中に別種の微細液滴が分散する分散液の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や化粧品などに用いられる乳化液(水と油の場合は乳濁液)は、液体中に混じりあわない他の液体が微細液滴となって分散、浮遊している。乳化液は、食品や化粧品以外に医療や電子材料の分野にも使用されている。乳化液は、分散している微細液滴の液滴径が不均一であると、微細液滴同士が合一して不安定化するといった問題があり、インクジェットの吐出技術を利用して均一な粒径を持つ微細液滴を形成し、液体中にこの微細液滴の液滴を吐出させて乳化液を製造する技術が提案されている。インクジェットの吐出技術を用いて形成された液滴は、そのサイズが揃っているので単一サイズの液滴が溶液中に分散することになる(単分散)。
【0003】
特許文献1に記載された発明には、サーマルインクジェットノズルを用いて液体2を液体1中にパルス状に吐出することにより液体1中に液体2から成る液滴が分散した分散液を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−254124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、ノズルの先端を液体1に接触させて液体2の液滴を吐出しているので、液相(液体1)の粘度や、液体1に吐出した液体2の液滴の蒸発が起こらない点を考えると、液体2の液滴の微細化には不利である。また、引用文献1の構成では、連続的に液体2を液体1中に吐出した場合に、液体1における液体2の液滴の着弾位置がずれないので、高速吐出周波数で吐出を行うと液体1中で液体2の液滴同士が合体してしまい、好ましい単分散状態を得ることが困難になる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式の吐出技術を用いて液体中に他の液体の微細液滴を吐出し、液体中に液滴径が均一な他の液体の微細液滴が分散した分散液を製造する分散液製造装置及び分散液製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係る分散液製造装置は、第1の液体に微細化した第2の液体の液滴を分散させた分散液を製造する分散液製造装置であって、前記第1の液体が収容される第1の液体収容部材と、前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を微細化した液滴を吐出するとともに、前記第2の液体の吐出面が前記第1の液体の前記第2の液体が着弾する面と所定の距離を離して配置される吐出ヘッドと、を備え、前記吐出ヘッドは、気相を介して前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を吐出することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の液体に気相を介して第2の液体を吐出するので、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点や、気相中で第2の液滴の蒸発が起こる点で第2の液体の微細液滴化に有利であり、好ましい単分散の微細化された液滴を製造可能である。
【0008】
また、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に直接吐出する場合には、第2の液体に吐出力を付与する吐出力付与手段にサーマル方式など大きな吐出圧力を発生させるアクチュエータを適用しなければならないのに対して、気相を介して第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、サーマル方式と比較して吐出圧力が小さなピエゾ方式など他の方式を適用可能である。
【0009】
更に、吐出ヘッド(第2の液体)と、第1の液体が気相によって分離されているので、第1の液体と第2の液体の温度調整を個別に行うことができ、吐出ヘッドの内部に第2の液体が逆流することも防止できる。
【0010】
吐出ヘッドには、第2の液体を吐出するノズル(吐出孔)と、前記吐出孔と連通する圧力室と、前記圧力室内の第2の液体に吐出圧力を付与する圧力発生手段(アクチュエータ)と、前記圧力室に第2の液体を供給する第2の液体供給手段と、を備える態様がある。
【0011】
吐出ヘッドは、第1の液体の第2の液体が着弾する面から所定の間隔を離して配置される。吐出ヘッドと第1の液との距離は0.3mm以上5.0mm以下が好ましく、更に好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材内の第1の液体と前記吐出ヘッドとを一方向に一定の速さで相対的に移動させる移動手段を備え、前記移動手段によって前記第1液体収容部材内の第1液体と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、前記吐出ヘッドから前記第2の液体を微細液滴化して吐出することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第2の液体を所定の吐出間隔で連続的に吐出する場合に、第1の液体の第2液体が吐出される面における同一位置に同一タイミングで複数の第2の液体が着弾することが回避され、第1の液体中で第2の液体が合体することが防止される。
【0014】
第1の液体収容部材と吐出ヘッドとを相対的に移動させる態様には、第1の液体収容部材を固定して第1の液体収容部材に対して吐出ヘッドを移動させる態様や、吐出ヘッドを固定した第1の液体収容部材を移動させる態様がある。もちろん、第1の液体収容部材と吐出ヘッドの両方を移動させてもよい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材内の第1の液体に層流を発生させる層流発生手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、第1の液体に層流を発生させることで、第2の液体を所定の吐出間隔で連続的に吐出した場合に第1の液体における第2の液体の着弾位置が序々にずれていくので、第2の液体同士が第1の液体中で合体することを防止でき、好ましい単分散を実現可能である。
【0017】
第1の液体に層流を発生させる態様には、固定した吐出ヘッドに対して第1の液体収容部材を所定の速度で一方向に移動させる第1の液体収容部材移動手段を備えてもよいし、固定した第1の液体収容部材に対して吐出ヘッドを所定の速度で一方向に移動させる吐出ヘッド移動手段を備えてもよい。もちろん、第1の液体収容部材と吐出ヘッドの両方を相対的に移動させる相対移動手段を備えてもよい。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材は、前記第2の液体が吐出される面に第2の液体の液滴サイズに対応する幅を有し、前記第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を具備することを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第1の液体収容部材に第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を設けることで、好ましい層流を発生させることができる。なお、溝の幅が大きくなると乱流が起こりやすくなるので、溝幅は1mm以下とすることが好ましい。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体収容部材は、前記第1の液体が収容されるとともに微細液滴化された第2の液体のサイズに対応する複数の凹部を具備し、前記凹部の開口部は前記第2の液体の吐出面と平行な面に2次元状に並べられた構造を有することを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、凹部の中の第1の液体に微細化された第2の液体の液滴を1滴単位で吐出することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記吐出ヘッドと前記第1の液体の第2の液体が着弾する面との間の気相中に電界を形成する電界形成手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、第2の液体が吐出される空間の気相中に電界を付与することで該電界を第2の液体に作用させて、第2の液体の第1の液体への入射をアシストしたり、第2の液体のサテライト液滴をメイン液滴から分離させたりすることが可能になる。
【0024】
なお、電界に代わり、熱、光、電磁波、磁界、大気圧プラズマなどの場を適用することも可能である。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記電界形成手段は、前記吐出ヘッドから吐出された第2の液体の微細液滴からサテライト液滴を分離することを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、第2の液体のメイン液滴からサテライト液滴を容易に分離することができ、液滴径の揃った好ましい分散液が生成される。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記電界形成手段は、前記第1の液体収容部材の第1の液体への前記第2の液体の入射をアシストすることを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、第2の液体の液滴の飛翔方向が安定し、第2の液体の液滴を確実に第1の液体に到達させることが可能になる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体に分散する前記第2の液体を固体化する固体化手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、分散液の生成と該分散液中の液滴の固体化処理とを連続工程とすることができ、生産効率の向上が見込まれる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の分散液製造装置一態様に係り、前記第1の液体に分散する第2の液体のサイズ、形状及び内部の様子のうち少なくとも何れか1つを検査する検査手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項10に記載の発明によれば、検査工程を含めて連続処理が可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のうち何れか1項に記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記第1の液体に分散した第2の液体を分級する分級手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項11に記載の発明によれば、分級工程を含めて連続処理が可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の分散液製造装置の一態様に係り、前記分級手段によって分級された第2の液体の級ごとに、前記第1の液体に第2の液体が分散した分散液を回収する回収手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項12に記載の発明によれば、分散液の生成から回収までの工程を連続処理することが可能になり、更なる生産効率の向上が見込まれる。
【0037】
また、本発明は上記目的を達成するための方法発明を提供する。即ち、請求項13に記載の分散液製造方法は、第1の液体に気相を介して吐出ヘッドから第2の液体を吐出して、前記第1の液体中に微細液滴化した前記第2の液体を分散させた分散液を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、第1の液体に気相を介して第2の液体を吐出するので、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点や気相中で第2の液滴の蒸発が起こる点で第2の液体の微細液滴化に有利であり、好ましい単分散の微細化された液滴を製造可能である。
【0039】
また、気相を介さずに第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、第2の液体に吐出力を付与する吐出力付与手段にサーマル方式など大きな吐出圧力を発生させるアクチュエータを適用しなければならないのに対して、気相を介して第2の液体を第1の液体に吐出する場合には、サーマル方式と比較して吐出圧力が小さいピエゾ方式など他の方式を適用できる。
【0040】
更に、吐出ヘッド(第2の液体)と、第1の液体が気相によって分離されているので、第1の液体と第2の液体の温度調整を個別に行うことができ、吐出ヘッドの内部に第2の液体が逆流することも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0042】
〔装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る分散液製造装置の全体構成図である。同図に示す分散液製造装置10は、水または水系の溶液中に有機化合物、油、脂肪など液滴サイズが揃った微細液滴を分散させて、ドレッシング、マーガリン、健康食品などの食品となる乳化液(分散液)を製造する分散液製造装置である。
【0043】
図1に示す分散液製造装置10は、水または水系の溶液(第1液体)に分散させる油(第2の液体)を均一な液滴サイズを有する微細液滴化して吐出するインクジェット方式の吐出ヘッド12と、と、吐出ヘッド12に供給される油を貯蔵するタンク14と、油の液滴を分散させる分散媒となる水が収容され、吐出ヘッド12の吐出面と対向する面に開口を有するプール15を具備する流路チップ16と、流路チップ16に供給される水を貯蔵するタンク18と、流路チップ16内の水を加圧して層流を発生させるポンプ20と、水に油の液滴を分散させた乳化液を流路チップ16から回収する回収器22と、を備えている。
【0044】
吐出ヘッド12は、プール15の水面(油の液滴が着弾する面)から所定の(0.5mm〜5.0mmの)距離を離してプール15の開口面(油の液滴が吐出される面)に対向するようにプール15の上部に配設され、吐出ヘッド12から吐出された油の液滴は吐出ヘッド12とプール15との間の気相に吐出され、該気相を介してプール15内の水に着弾する。このように気相を介して油の液滴をプール15内の水に吐出すると、例えば、マイクロチャネルリアクターのように気相を介さずに液相に直接油の液滴を吐出させる場合に比べて、液相に比べて気相の粘度が小さい点(即ち、液滴が減速しない点)や、気相中では油の液滴の蒸発が起こる点で微細液滴化に有利である。
【0045】
タンク14は吐出ヘッド12に供給する油が貯蔵されており、流路24を介して吐出ヘッド12と連通されている。また、タンク14は、油の残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、油以外の液体を用いる態様では、種類の異なる液体間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0046】
タンク18は、流路26、28及びポンプ20を介して流路チップ16が具備するプール15と連通している。タンク18は、タンク14と同様に複数の溶液を用いる態様では、種類の異なる溶液間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0047】
ポンプ20を動作させると、タンク18に貯蔵されている水は、流路26、ポンプ20、流路28を経由して流路チップ16の上側面(天面)に設けられた導入口30からプール15に導入され、プール15内の水に層流が発生する。プール15内の水に安定した層流を発生させるようにポンプ20の発生圧力が制御され、ポンプ20はプール15への水の供給手段及びプール15内の水の層流発生手段として機能する。プール15内に発生させた層流の流速を検出する流速センサを備え、該層流の流速が乱流とならないようにポンプ20の発生圧力を制御する態様が好ましい。
【0048】
なお、流路チップ16内の水に層流を発生させる代わりに、吐出ヘッド12をプール15に対して所定の一方向(例えば、上述した層流の流れ方向)に走査するように構成してもよい。吐出ヘッド12の走査方向は、図1に符号Bで示す方向でもよいし、符号Cで示す方向でもよい。
【0049】
ここでいう「層流」とは、プール15内の水の流れに乱れがなく整然と流れる状態であり、本発明では、{(特性速度)×(特性長さ)}/{(粘性係数)/(密度)}で表されるレイノルズ数Reが、Re<2300の状態を層流とする。なお、「層流」には、プール15内の水が全体として常に一方向に流れる状態に、プール15の外周部近傍(内壁面近傍)では、内壁面に衝突した水の流れが内壁面に沿って流れる状態を含んでいてもよい。
【0050】
上述した「特性速度」は「層流」における代表的な速度を意味し、「特性長さ」は「層流」における代表的な長さを意味している。管の中を流れる流体の場合、「代表的な長さ」とは管の中で最も狭い部分の幅であり、「代表的な速度」とは、代表的な長さに対応する部分における流速といえる。
【0051】
吐出ヘッド12は、プール15の開口の最大幅を超える長さにわたって複数のノズルが配列されたライン型ヘッドで構成されている(図3(a),(b)参照)。このように、プール15の全幅をカバーするフルライン型の吐出ヘッド12によれば、1回の吐出動作でプール15の幅方向の全域にわたって微細化された油の液滴を吐出することが可能であり、プール15の幅に満たない短尺ヘッドをプール15の幅方向に走査させてプール15の幅方向の全域にわたって油を吐出するシリアル方式の吐出ヘッドに比べて生産性を上げることができる。
【0052】
本例では、プール15の幅方向(プール15内の水の層流の流れ方向Aと直交する方向)の全幅に対応するフルライン型ヘッドを例示したが、上述したシリアル方式の吐出ヘッドを本発明に適用してもよい。
【0053】
図2(a)には、層流を発生させた水40に吐出ヘッド12から油の微細液滴42を吐出させて乳化液を生成する様子を図示する。層流を発生させた水40に吐出ヘッド12から均一な液滴サイズを有する微細化された油42を吐出すると、水中に均一なサイズの油が分散した単分散の乳化液が生成される。
【0054】
水の層流の作用によって、吐出ヘッド12から数十kHz〜数百kHzの高い吐出周波数で連続的に油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,を吐出しても、水に着弾した油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,は層流の流れ方向Aに沿って時間経過とともに移動するので、水中や水の表面で油の液滴同士が合体することなく好ましい単分散が維持された乳化液が生成される。
【0055】
図2(b)には、吐出ヘッド12を符号Bで示す方向に走査させて乳化液を生成する様子を図示する。吐出ヘッド12を移動させることで連続的に吐出される油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,の着弾位置を変えることができ、図2(a)に示す態様と同様に、水中に吐出された油の液滴42−1,42−2,42−3,42−4,…,の単分散が維持された好ましい乳化液が生成される。
【0056】
このようにして生成された乳化液は、プール15の底面に設けられた回収口32から回収流路34を通って回収器22に送られる。回収器22に収容された乳化液は所定の検査、分級、封入などの工程に送られる。
【0057】
図3(a)は、分散液製造装置10を吐出ヘッド12側の上部から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すプール15の他の構造例を示す図である。
【0058】
図3(a)に示すように、プール15は底辺部15Aの長さが斜辺部15B及び斜辺部15Cの長さ(斜辺部の底辺部方向成分の長さ)よりも長くなっている細長い略六角形の平面形状を有し、吐出ヘッド(IJヘッド)12の長手方向と直交する方向に底辺部15Aが形成されている。また、流路チップ16は吐出ヘッド12の長手方向と直交する方向に細長い略長方形の平面形状を有している。
【0059】
プール15の長手方向の一方の端部(図3(a)における右側端部)の略中心部には、タンク18(図1参照)からポンプ20を介して水が供給される導入口30が設けられ、他方の端部(図3(a)の左側端部)の略中心には近傍は回収器22と連通する回収口32が設けられ、プール15は長手方向(底辺部15Aと平行方向)に層流を発生させる構造を有している。
【0060】
また、プール15は、底辺部15Aの壁面と斜辺部15B壁面とのなす角、底辺部15Aの壁面と斜辺部15Cの壁面とのなす角は90°を超える構造となっており、底辺部15Aの壁面と斜辺部15B、斜辺部15Cとの接合部近傍では水の流れによどみが抑制され、プール15内の水には好ましい層流が発生する。
【0061】
図3(b)には、プール15に代わり、数μm〜数百μmの幅を有する複数のマイクロチャネル(微細流路)48が配置される態様を示す。
【0062】
図3(b)に図示されたマイクロチャネル48は、一方の端部が導入口30と連通するとともに他方の端部が回収口32と連通し、吐出ヘッド12の長手方向に沿って複数のマイクロチャネル48が配置される配置構造を有し、マイクロチャネル48には、導入口30から回収口32へ向う方向(符号Dで図示する方向)に層流が発生する。
【0063】
図3(b)に示すマイクロチャネル48は、吐出ヘッド12の長手方向と直交する方向に沿う長辺部48Aと、該長辺部48Aに対して90°を超える角度をなし、一方の端部が長辺部48Aと連通するとともに他方の端部が導入口30と連通する斜辺部48Bと、該長辺部48Aに対して90°を超える角度をなし、一方の端部が長辺部48Aと連通するとともに他方の端部が回収口32と連通する斜辺部48Cと、から構成されている。
【0064】
なお、図3(b)には、1つの導入口30近傍で複数のマイクロチャネル48が分岐し、当該複数のマイクロチャネル48が回収口32の近傍で合流する構造を例示したが、マイクロチャネル48の数に対応した数の導入口30、回収口32及び流路26,34を備える構造も可能である。また、導入口30及び回収口32を流路チップ16の短手方向に細長い形状として、長辺部48Aの一方の端部が導入口30と連通するとともに、他方の端部が回収口32と連通する構造も可能である。なお、マイクロチャネル48の配置数及び配置構造は、吐出ヘッド12が有するノズル(図5参照)の数及び配置構造に対応して決められている。
【0065】
図4(a)には、複数のノズル51から複数のマイクロチャネル48に向けて油の微細液滴42を吐出する様子を図示する。図4(a)に示す各マイクロチャネル48には、符合Dで図示する方向に層流を発生させており、各マイクロチャネル48の層流の流れ方向(チャネル48の形成方向)の同一位置には同一タイミングでは異なるノズル51から油の液滴42が吐出されるように、マイクロチャネル48及びノズル51の配置が決められている。
【0066】
図4(a)に示すように、マイクロチャネル48に符号D示す方向の層流を発生させるとともに、吐出ヘッド12から油の微細液滴42を順次吐出することで、マイクロチャネル48内における油の微細液滴42の合体が抑制され、単分散が維持された好ましい乳化液を生成することができる。
【0067】
なお、マイクロチャネル48の厚みhが大きくなると、マイクロチャネル48内に乱流が発生しやすくなるので、マイクロチャネル48の厚みhは1mm以下とする態様が好ましい。
【0068】
図4(a)に示すマイクロチャネル48に代わり、流路チップ16に図4(b)に示す微細箱50をアレイ状に配置してもよい。微細箱50は、吐出ヘッド12の吐出面と対向する面に吐出ヘッド12から吐出される油の液滴の液滴サイズよりも大きい面積を持つ開口を有するとともに分散媒となる水が収容されている。また、吐出ヘッド12のノズルに1対1で対応しており、微細箱50内に油の微細液滴42を1滴単位で収容することが可能である。
【0069】
図4(b)に示す微細箱50を備えた流路チップ16と吐出ヘッド12とを相対的に一方向に走査させながら各微細箱50に対して異なるノズルを用いて油の液滴を吐出することで、微細箱50内で油の液滴が合体することなく単分散が維持された好ましい乳化液を生成可能である。
【0070】
また、微細箱50に乳化液が生成された状態の流路チップ16に対して加熱や冷却のなどを施して、微細箱50内の乳化液の液滴を粉粒化(固体化)させることができ、粉粒化処理の前に流路チップ16から乳化液を一旦回収する工程を省くことが可能になる。
【0071】
〔ヘッドの構造の説明〕
次に、吐出ヘッド12の構造について詳細に説明する。図5(a) は吐出ヘッド12の構造例を示す平面透視図であり、図5(b) は吐出ヘッド12の他の構造例を示す平面透視図である。また、図5(c) は吐出ヘッド12の他の構造例を示す平面透視図である。
【0072】
本例の吐出ヘッド12は、図5(a) 〜(c)に示すように、油の液滴が出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数の吐出素子53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
【0073】
即ち、本実施形態における吐出ヘッド12は、図5(a),(b) に示すように、油の液滴を吐出する複数のノズル51が主走査方向に沿って、図3(a)に示すプール15の層流の流れ方向と略直交する幅や図3(b)に示すマイクロチャネル48の形成幅などの吐出領域の幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
【0074】
また、図5(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド12’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、吐出領域の全幅に対応する長さとしてもよい。また、図示は省略するが短尺のヘッドを直線状につなぎ合わせてもよい。
【0075】
図5(a)〜(c)示すように、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。また、各圧力室52は供給口54を介して共通液室(図5(a)〜(c)には不図示、図6に符号55で図示)と連通されている。
【0076】
かかる構造を有する多数の吐出素子53を図5(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿って吐出素子53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0077】
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投さ影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0078】
図5(b)に示す主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPを図3(b)に示すマイクロチャネル48の配置ピッチと同一に構成する態様が好ましい。また、図4(b)に示す微細箱50の配置構造を図5(b)に示すノズル51の配置構造と同一に構成する態様が好ましい。
【0079】
図6は、吐出ヘッド12の立体構造を示す断面図(図5(a),(b) 中の6−6線に沿う断面図)である。圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、加圧板56は圧電素子58の共通電極と兼用されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58にたわみ変形が生じて圧力室52が変形し、油の液滴がノズル51から吐出される。油の液滴がからインクが吐出されると、共通液室55から供給口54を通って新しい油が圧力室52に供給される。
【0080】
一般的な吐出ヘッドの吐出方式には、サーマルジェット方式及びピエゾジェット方式が好適に用いられる。サーマルジェット方式は、膜沸騰現象によりバブルを発生し吐出圧力を得る方式であり、バブル発生のため及び液体のコゲ(加熱により生成される固形物)を少なくするために適用可能な液体は基本的に水系でコゲにくい液体に限定される。したがって、分散液の製造を考えた場合、サーマルジェット方式ではその分散液として油系の溶液中に水系の液滴が分散したものに限定されることになる。一方、ピエゾジェット方式では水系の液体及び油系の液体の何れも吐出可能であり、ピエゾジェット方式はサーマルジェット方式に比べて適用可能な液体の選択の自由度が大きいという特徴がある。
【0081】
また、サーマルジェット方式が用いられる吐出ヘッドでは、液体流路の内部にサーマルアクチュエータ部(例えば、ヒータ)を形成する必要があるため、このサーマルアクチュエータ部の寿命により吐出ヘッドの寿命が短くなる傾向がある。また、液体のコゲによる特性低下もあって、一般的にピエゾジェット方式を用いた吐出ヘッドに比べて寿命が短くなる。本例のような分散液の製造では、画像形成とは異なり連続して液体を吐出し続けることも考えられるので、ピエゾジェット方式を用いた吐出ヘッドはサーマルジェット方式を用いた吐出ヘッドに比べて寿命が長いので、分散液の製造には非常に有利である。
【0082】
サーマルジェット方式では、吐出液適量の変調は基本的に吐出する/吐出しない、の2値に限られるが、ピエゾジェット方式では、一般的に吐出可能最小液滴の約10倍の範囲で変調することが可能である。即ち、ピエゾジェット方式の吐出ヘッドは、分散液のサイズを変調する際に吐出ヘッドの交換を必要とせず、分散液の製造に用いる場合には対応性に優れているといえる。
【0083】
サーマルジェット方式はピエゾジェット方式と比べて吐出の際に損失するエネルギー量が5倍から10倍程度大きくなる。即ち、ピエゾジェット方式はサーマルジェット方式と比べてエネルギー効率に優れ、更に、製造コストの面でも優位性がある。
【0084】
一方、サーマルジェット方式はアクチュエータ部(発熱体)のサイズが小さくてすむので、ピエゾジェット方式よりも吐出ヘッドの高集積化に有利であるといえるが、ピエゾジェット方式は、アクチュエータ(PZT)の寿命が長いこと、適用可能な液体の限定が少ないこと、吐出量の変調が容易であること、吐出時のエネルギー効率に優れていることといった優位性があり、分散液の製造にはサーマルジェット方式よりもピエゾジェット方式がより好ましい。
【0085】
ここで、「気相を介して液滴を吐出する場合」と、「気相を介さずに直接液相に液滴を吐出する場合」について、「微細液滴化」、「吐出周波数(液滴の生成周波数)の高速化」について詳細に説明する。
【0086】
液滴をノズルから吐出するときに抵抗として作用すると考えられるものには、「液滴と連続相の界面張力」、「連続相の粘性係数」、「連続相の密度」がある。ここで、「連続相」とは、ノズルより液滴が吐出される側の相であり、例えば、画像を形成するインクジェット記録装置の場合には「気相(空気の相)」である。
【0087】
上述した連続相を「気相」から「液相」に変えても「液滴と連続相の界面張力」の物性値が大きく変化することはなく、「気相を介して液滴を吐出する場合」と「気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合」とには大きな差が生じることはない。よって、「液滴と連続相の界面張力」によって「微細液滴化」、「吐出周波数の高速化」に大きな違いが生じるとは考え難い。
【0088】
但し、連続相を「気相」から「液相」に変えると、「連続相の粘性係数」及び「連続相の密度」の物性値は100倍から100000倍程度大きくなり、ノズルの先に大きな粘性抵抗と大きな密度を持つ相が存在することになるので、液滴の吐出に対する抵抗成分が極端に大きくなる。
【0089】
その抵抗分よりもおおきな発生圧力を発生させることができれば問題とならないが、ヘッドの構造及びサイズには現実的なノズル集積度などの観点から制約があり、アクチュエータの能力の向上も材質や構造から限界がある。よって発生圧力を最大限に見積ると、「気相を介して液滴を吐出する場合(即ち、粘性抵抗が小さい場合)」は「気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合(即ち、粘性抵抗が大きい場合)」に比べてノズルから吐出される液滴の吐出速度が大きくなり、「吐出速度の高速化」に有利となる。
【0090】
また、一般的に液滴を微細化するためには、ノズル径を小さくすることが必須であるが、ノズルの微細化によるノズル内部の流路における圧力損失はノズル径の4乗に比例して急激に大きくなる。ノズルに付加する圧力を限界まで見積り一定値として、連続相を「気相」から「液相」に変化させて更にノズルの微細化を行うと、ノズル内部の流路における抵抗成分の急激な増加に加えて、「連続相の粘性係数」及び「連続相の密度」の物性値が100倍から100000倍程度大きくなることによる抵抗成分の増加が加わるため、液滴を吐出させるためには必然的にノズル径を大きくしなければならない。よって、「微細液滴化」に関しても、「気相を介して液滴を吐出すること」は有利といえる。
【0091】
即ち、連続相の粘度と密度の違いにより、気相を介して液滴を吐出する場合は気相を介さずに液相に直接液滴を吐出する場合に比べて、「吐出周波数の高速化」及び「微細液滴化」に有利である。
【0092】
本例では、ノズルがマトリクス状に並べえられた記録ヘッドを例示したが、ノズル配置はマトリクス配置に限定されず、図3(a)に示すプール15の幅方向に沿ってノズルを1列に並べる態様や、2列のノズル列を千鳥状に配置する態様も可能である。
【0093】
〔供給系の説明〕
次に、分散液製造装置10の供給系の概略構成について説明する。図7は分散液製造装置10における油の供給系の構成を示した概要図である。
【0094】
タンク60は油を吐出ヘッド12に供給するための基タンクであり、図1で説明したタンク14と同一のものである。タンク60の形態には、油の残量が少なくなった場合に、不図示の補充口から油を補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。乳化液滴となる液体の種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、液体の種類情報をバーコード等で識別して、液体種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0095】
なお、吐出ヘッド12に供給する液体の種類を変更する場合には、吐出ヘッド12及びタンク60と吐出ヘッド12との間の流路の清掃が行われ、更に、タンク60と吐出ヘッド12との間に設けられたフィルタ62の交換が行われる。
【0096】
上述したように、タンク60と吐出ヘッド12の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましく、吐出ヘッド12に供給される液体の種類に応じて適宜メッシュサイズの異なるフィルタを用いるとよい。
【0097】
なお、吐出ヘッド12の近傍又は吐出ヘッド12と一体にサブタンク(不図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、圧力室52や共通液室55の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0098】
サブタンクにより共通液室55内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクと吐出ヘッド12内の圧力室52との水頭圧の差により圧力室52内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及び圧力室52の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
【0099】
〔ヘッドのメンテナンスの説明〕
図7に示すように、分散液製造装置10にはノズル51の乾燥防止又はノズル51近傍の液体の粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64が設けられ、ノズル51が形成されるノズル形成面のクリーニング(ワイピング)を行うための手段としてブレード66が設けられている。
【0100】
キャップ64やブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって吐出ヘッド12に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から吐出ヘッド12下方の位置に移動される。
【0101】
図7に示すキャップ64は、吐出ヘッド12のノズル形成面を全面にわたって覆うことができるサイズを有している。キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって吐出ヘッド12に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、吐出ヘッド12(吐出ヘッド12のノズル形成面)に密着させることにより、ノズル形成面をキャップ64で覆い、ノズル形成面がキャップ64によって保護される。
【0102】
また、吐出ヘッド12の供給される液体を変更する場合など、吐出ヘッド12内に残留する液体を排出するために、キャップ64をノズル形成面に当接した後にキャップ64に接続されたポンプ67を用いて吸引が行われる。なお、ノズル内に異物が混入した場合には、この異物を排出すべくキャップ64に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。上述した吸引動作は、初期の吐出ヘッドへの液体の装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも液体の排出が行われる。
【0103】
ブレード66は、ノズル形成面に当接させながら移動してノズル形成面の汚れを除去する払拭手段として機能し、硬質ゴムなどの材料が好適に用いられる。即ち、ブレード66は所定の強度(剛性)及び所定の弾力性を有し、その表面は吐出ヘッドから吐出される様々な液体をはじく所定の撥水性能を有している。ブレード66はノズル形成面に付着した液体(固まってノズル形成面に固着した液体)やその他の異物を払拭除去可能な部材で構成される。
【0104】
また、図7には図示しないが、分散液製造装置10のヘッドメンテナンス機構(ヘッドメンテナンス手段)には、該ブレード66を上下方向に移動させてノズル形成面に接触させる/接触させない(非接触)を切り換えるブレード上下機構(不図示)や、ブレード66に付着した異物を除去するクリーニング手段が備えられている。
【0105】
〔制御系の説明〕
次に、本例に示す分散液製造装置10の制御系について説明する。図8は分散液製造装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。分散液製造装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、ポンプ制御部79、吐出制御部80、バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0106】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる吐出データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された吐出データは通信インターフェース70を介して分散液製造装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された吐出データを一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0107】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0108】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。図8にはモータ88を1つだけ図示したが、モータ88には、図7に示すキャップ64の移動機構のモータや、吐出ヘッド12を流路チップに対して走査させる態様における吐出ヘッド12の走査機構のモータなど、複数のモータが含まれている。
【0109】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってヒータ89を駆動するドライバーである。図8に示すヒータ89には、吐出ヘッド12の温度調節ヒータや、図1に示すプール15の温度調節ヒータ、タンク14,18の温度調節ヒータなど、複数のヒータが含まれている。
【0110】
ポンプ制御部79は、システムコントローラ72に指令信号に応じて、図1のポンプ20や、図7のポンプ67を制御する制御ブロックである。ポンプ制御部79は、図1に示したプール15内に発生させる層流を制御する層流制御手段としても機能している。
【0111】
吐出制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の吐出データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出指令信号)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。吐出制御部80において所要の信号処理が施され、該吐出データに基づいてヘッドドライバ84を介して各吐出ヘッド12の液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。
【0112】
吐出制御部80にはバッファメモリ82が備えられており、吐出制御部80における吐出データ処理時に吐出データやパラメータなどのデータがバッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8においてバッファメモリ82は吐出制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、吐出制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0113】
ヘッドドライバ84は、吐出制御部80から与えられる吐出制御信号に基づいて吐出ヘッド12の圧電素子58(図6参照)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0114】
プログラム格納部90には、分散液製造装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラ72はプログラム格納部90に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0115】
即ち、図8に示す制御系は、吐出データに基づいて吐出ヘッド12から吐出される油の液滴の吐出タイミングや吐出量を制御するとともに、図3(a)に示すプール15内の層流を制御する。
【0116】
なお、図8には図示しないセンサ(吐出ヘッド12、タンク14、18などの温度を検出する温度センサや、プール15内の水の流速を検出する流速センサ)などの検出手段から得られた各情報は、システムコントローラ72に送られてその情報に応じて装置内の各部の制御が行われる。
【0117】
上記の如く構成された分散液製造装置では、気相を介して吐出ヘッド12から油の微細液滴が吐出されるので、均一な微小サイズを有する好ましい油の液滴を生成することができるとともに、気相を介さずに油の液滴を直接液相に吐出する場合に比べて、吐出周波数を高くすることも可能である。また、ノズルが液相に接触(近接)しないので、水や油の液滴は吐出ヘッド内に逆流することがない。
【0118】
また、油の液滴を吐出させる水に層流を発生させることで、水中で油の液滴が合体することなく単分散が維持された好ましい乳化液が生成される。
【0119】
〔応用例〕
次に、図9〜図13を用いて本実施形態に係る応用例について説明する。図9は、本応用例に係る分散液製造装置100の概略構成を示す概念図であり、図10及び図11は、液滴の飛翔方向偏向制御を説明する概念図である。また、図12は、図9に示す電極対106の他の構成例を示す図であり、図13は図9の分散液製造装置100を吐出ヘッド12側(上面側)から見た図である。なお、図9〜図13中、図1及び図3と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0120】
図9に示す分散液製造装置100は、吐出ヘッド12とマイクロチャネル48との間の油の液滴が飛翔する空間部に電界を形成するプラス電極102及びマイナス電極104から構成される電極対106が設けられている。電極対106は不図示の電源に接続され、該電源を用いてプラス電極102と、該プラス電極102に対向するマイナス電極104との間に電圧を印加すると、プラス電極102からマイナス電極104へ向う電界が油の液滴の吐出方向と略直交する方向に発生する。
【0121】
吐出ヘッド12から1回の吐出動作で吐出される油の液滴には、メイン液滴(理論上の液滴サイズと略同一サイズの液滴)110の他にサテライト(メイン液滴に比べて非常に小さなサイズを有する液滴)112を含んでいることがある。帯電させた油の液滴を吐出ヘッド12から吐出させると、該油の液滴がプラス電極102とマイナス電極104の間を通過するときに、プラス電極102とマイナス電極104の間の電場によってメイン液滴110とサテライト液滴112に分離され、サテライト液滴112はガター114に回収される。
【0122】
図9に図示する例では、メイン液滴110がプラス電極102とマイナス電極104との間を通過するタイミングではプラス電極102とマイナス電極104の間に電界を発生させず、メイン液滴110の飛翔方向を偏向させずにメイン液滴110をマイクロチャネル48の水に着弾させる。一方、サテライト112がプラス電極102とマイナス電極104との間を通過するタイミングではプラス電極102とマイナス電極104の間に電界を発生させて、サテライト112の飛翔方向を偏向してサテライト112はガター114に回収される。
【0123】
図10(a)に示すように、メイン液滴110がノズル51内の液と分離するタイミングとサテライトがノズル51の液と分離するタイミングが異なり、メイン液滴110とサテライト112には飛翔速度差が生じるので、メイン液滴110がプラス電極102及びマイナス電極104間に到達するタイミングと、サテライト112がプラス電極102及びマイナス電極104間に到達するタイミングとの間には時間差が生じる。したがって、図10(b)に示すように、サテライト112がプラス電極102とマイナス電極104との間に到達するタイミングに同期して電界を発生させることで、サテライト112の飛翔方向を偏向させて、ノズル51の垂直下方向に向かう飛翔経路から所定の距離だけ離された位置に配置されるガター114にサテライト112が回収される。
【0124】
電界の発生タイミングは、図6に示す圧電素子58の駆動タイミングt0から、サテライト112の飛翔速度vsにノズル51と電極対116との間の距離yを乗じた時間Δt(=vs×y)だけ遅れたタイミングt1(=t0+Δt=t0+(vs×y))となる。
【0125】
また、図示は省略するが、メイン液滴110の通過タイミングに同期して電界を発生させて、メイン液滴110の飛翔方向を偏向させ、サテライト112の通過タイミングでは電界を発生させないことも可能である。サテライト112の飛翔方向を偏向させずに垂直下方向に吐出させる場合には、ガター114はノズル51の垂直下方向に向かう飛翔経路上に設けられている。
【0126】
例えば、図11に示すように、メイン液滴110とサテライト112は保持する電荷量の違いを利用して分離することも可能である。電極対106の間をメイン液滴110及びサテライト112が通過する際に同じ大きさ及び同じ時間間隔で電場を発生させると(連続的に電場を発生させると)、メイン液滴110とサテライト112は同じ方向に電界から力を受けるが、メイン液滴110の持つ電荷量とサテライト112の持つ電荷量との違いによって飛翔方向に違いが生じる。このようにメイン液滴110とサテライト112の飛翔方向が変わることを利用して、サテライト112をガターに収容するとともに、メイン液滴110はマイクロチャネル48内の水に到達する。なお、図19(b)に図示するように、メイン液滴110の入射方向がマイクロチャネル48内の水の流れに対して垂直になるように、ノズル51(ヘッド12)の吐出角度(吐出方向)及び電極対106の位置を調整してもよい。
【0127】
このように油の液滴が吐出される気相空間に電場を形成し、メイン液滴110とサテライト液滴112に分離することによって、サテライト液滴112がマイクロチャネル48内の水に到達せず、液滴サイズの揃った好ましい乳化液が生成される。
【0128】
なお、サテライト液滴112をマイクロチャネル48内の水に分散させると、メイン液滴110をマイクロチャネル48内の水に分散させる態様に比べて分散させる液滴が微小化される。また、電場を油の液滴の吐出方向(吐出ヘッド12からマイクロチャネル48に向かう方向)に形成し、電場によって油の液滴の飛翔をアシストする(電場をアシスト手段として用いる)ことも可能である。
【0129】
図12(a)〜(c)には、電場を油の液滴の吐出方向に形成して油の液滴の飛翔をアシストするアシスト手段として用いられる電極対106の構成例を示す。図12(a)に示す態様は、ノズル51が形成されるノズルプレート51Aをプラス電極102とし、マイクロチャネル48の内部にノズルプレート51Aに対向するようにマイナス電極104を配設し、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0130】
図12(b)には静電吐出方式を適用した態様を示す。ノズル51の内部の設けられた針状の電極をプラス電極102とし、マイクロチャネル48の内部にノズルプレート51Aに対向するようにマイナス電極104を配設し、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0131】
図12(c)には、ノズル51とマイクロチャネル48との間の気相空間に油の液滴の吐出方向に開口部が形成されるリング形状の電極を油の液滴の吐出方向に沿って対向するように配設して電極対を形成する態様を示す。ノズル51側の電極をプラス電極102とし、マイクロチャネル48側の電極をマイナス電極104として、電源113から電極対106に所定の電圧を印加して油の液滴の吐出方向(飛翔方向)と略平行方向に電界を発生させる。
【0132】
本例では、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出される気相空間に電場を付与する態様を示したが、本発明の適用範囲は電場に限定されず、熱(乾燥雰囲気)、光、電磁波、磁場、大気圧プラズマなど、電場以外の場も適用可能である。
【0133】
例えば、油の液滴が吐出される気相空間に熱を付与する(或いは、油の液滴が吐出される気相空間を乾燥雰囲気とする)ことにより、吐出ヘッド12から吐出された油の液滴の乾燥を促進してより微細液滴化することや、相変化(例えば、ゾルゲル化)させることが考えられる。
【0134】
また、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出させる吐出領域のマイクロチャネル48内の水の流れ方向の下流側には、各マイクロチャネル48のそれぞれに油の液滴が分散した乳化液を加熱するヒータ120が備えられている。
【0135】
吐出ヘッド12の吐出タイミングに対応して、吐出ヘッド12から油の液滴が吐出され、所定の時間が経過した後に、ヒータ120をオンしてマイクロチャネル48内の乳化液を加熱すると、乳化液中の油の液滴が固体化(或いは、結晶化、高分子化)し、粉粒体が生成される。
【0136】
ヒータ120は、図8に示したヒータドライバ78を介してシステムコントローラ72によって、オンオフや発生熱量が制御される。また、ヒータ120の加熱処理領域の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)を備え、該温度センサによって検出された温度に応じてヒータ120を制御する態様が好ましい。
【0137】
本例では、乳化液中の液滴の固体化手段(結晶化手段、高分子化手段)としてヒータを例示したが、電磁波、光(赤外線、レーザ、マイクロ波)などを用いてマイクロチャネル48の外部から乳化液中の液滴へ固体化(結晶化、高分子化)に要するエネルギーを付与してもよい。また、マイクロチャネル48内の乳化液を冷却して、乳化液中の液滴を反応変化させてもよい。
【0138】
ヒータ120のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、マイクロチャネル48の上部(吐出ヘッド12から油の液滴を吐出される面に対向する位置)に、固体化した乳化液中の粉粒体の検査手段(測定手段)としてマイクロスコープ130が備えられている。
【0139】
マイクロスコープ130は解析装置132に接続されており、マイクロスコープ130により得られた情報は解析装置132で画像解析され、固体化された粉粒体のサイズ(体積)、形状、内部の様子などの情報が得られる。解析装置132は、図8の制御系の一部として設けられてもよいし、図8の制御系とは別に設けられてもよい。なお、マイクロスコープ130には、レーザ解析散乱法や動的光散乱法などの方式があり、本発明には何れの方式を適用してもよい。
【0140】
本例では、分散液として食品を製造する態様を例示したが、後述するように電子産業分野における電子機器の製造にも適用することができる。電子産業分野に使用される粉粒体には厳しい保障が要求される場合(製造バラつきが3σで±5μmの範囲に入っていることや、ある数値以上の粒子径を持つ粒子が存在しないことを要求される場合)があり、精度の高い検査が要求される。したがって、多量の粒子をひとつの容器に回収した後に粒子を再検査するよりも、1つの粒子を生成した直後にマイクロチャネル48内でそのまま検査をする態様は効率面で優れているといえる。
【0141】
マイクロスコープ130による検査領域のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、分級機構(選別機構)が設けられている。一般的なインクジェット方式の吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズは数%以内のゆらぎの範囲にあり揃っているが、イレギュラーなサイズを持つ液滴が混入する可能があるので、乳化液中の粉粒体(液滴)のサイズの規格に応じて粉粒体を分級する態様が好ましい。
【0142】
図13を用いて分級機構及び分級機構による分級工程について説明する。図13に示すように、マイクロスコープ130のマイクロチャネル48の内の水の流れ方向の下流側には、プラス電極142とプラス電極142に対向するマイナス電極144から構成される電極対146が設けられ、電荷を持つ粉粒体にプラス電極142及びマイナス電極144間に発生させた電界を作用させて分級が行われる。
【0143】
即ち、マイクロスコープ130及び解析装置132を含む検査手段による検査工程において、規格外の粒子(異常粒子)が発見された場合には、検査手段から規格外粒子の情報(制御信号)が電極対146を制御する電圧制御部147に送られる。電圧制御手段147は、該制御信号を取得すると電極対146に所定の電圧を印加してプラス電極142及びマイナス電極144間に電界を発生させて分級が行われる。
【0144】
このようにして、検査工程による検査結果を分級工程にフィードバックすることで、検査工程及び分級工程を一貫して自動的に実行することができる。
【0145】
なお、粉粒体の分級には、レーザマニピュレータやマイクロマニピュレータ、多数の微細孔をもつフィルタなどを適用してもよい。また、本例の分級には水中で沈降する粉粒体と沈降せずに浮遊している粉粒体に分ける態様も可能である。
【0146】
上述したように分級された粉粒体を含む乳化液は、粉粒体の規格ごとに設けられた排出流路148A、148Bを介してそれぞれに対応した回収器22A及び回収器22Bに送られる。本例では、流路チップ16の底面に回収口32を設け、流路チップ16の下方に設けられた回収器22A及び回収器22Bに乳化液を回収する態様を例示したが、回収器22A及び回収器22Bは回収流路を介して排出流路148A,148Bと連通していれば回収器22A及び回収器22Bの配置は限定されない。また、粉粒体と溶液(水)を分離する機構を備え、粉粒体と溶液とを別々に回収してもよい。プラス電極142及びマイナス電極144間に印加する電圧の極性を反転させて電界を逆方向に発生させると、回収器22Aに回収される粉粒体と回収器22Bに回収される粉粒体とを入れ換えることも可能である。
【0147】
本応用例では、乳化液中の液滴を粉粒化した後に検査(測定)、分級(選別)する態様を例示したが、粉粒化せずに液滴のまま乳化液を回収する態様にも、検査工程及び分級工程を適用することも可能である。
【0148】
本応用例によれば、乳化液を生成した後に固形化(粉粒化)工程、検査工程及び分級工程を備えることで、乳化液製造の後工程の連続処理が可能となる。
【0149】
〔応用例2〕
次に、本発明の実施形態に係る他の応用例について説明する。図14は、本応用例に係る分散液製造装置200の概略構成を示す概念図である。本応用例に示す分散液製造装置200は、搬送ベルト202を用いて水が収容された容器204を一方向に一定速で搬送し、容器204が吐出ヘッド12の下部の吐出領域に到達すると、吐出ヘッド12から容器204内の水に油の液滴が吐出され、容器204内に水に油の液滴が分散した乳化液が生成される。
【0150】
搬送ベルト202の搬送制御は、図8に示す制御系のシステムコントローラ72によりモータドライバ76を介して行われる。即ち、吐出データに基づいて搬送ベルト202の搬送速度が決められ、該搬送速度に基づいて搬送ベルト202を駆動するモータ(不図示)の制御が行われる。
【0151】
吐出ヘッド12の容器204の搬送方向下流側には、乳化液中の油の液滴を固体化させるためのエネルギーを付与するハロゲンランプ206が備えられている。容器204内に乳化液が生成され、該容器がハロゲンランプ206の下部の照射領域に達すると、ハロゲンランプからハロゲン光が照射され、乳化液中の油の液滴が固体化される。
【0152】
本例では、乳化液中の液滴の固体化手段としてハロゲンランプを例示したが、図9及び図13に示したヒータ120や、電磁波、光(赤外線、レーザ、マイクロ波)などを用いて容器204の外部から乳化液中の油の液滴へ固体化(結晶化、高分子化)に要するエネルギーを付与してもよい。また、マイクロチャネル48内の乳化液を冷却して、乳化液中の液滴を反応変化させてもよい。
【0153】
ハロゲンランプ206の容器204の搬送方向の下流側には、解析装置132に接続されたマイクロスコープ130が設けられ、乳化液中の粉粒体の検査が行われる。本例の検査工程は上述した応用例と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0154】
検査工程が終了すると乳化液が収容された容器204は所定の排出路(不図示)を経由して容器ごと回収される。
【0155】
図15には、容器204の一例を図示する。本応用例に示す容器204は、図15(a)に示すように油の液滴が吐出される面に開口部を有す微細箱210を2次元状に並べた構造を適用してもよいし、図15(b)に示すように一体型のプール212を備える構造を適用してもよい。
【0156】
図15(a)に示すように、容器204を微小領域に分割する態様によれば、乳化液生成後の加熱処理がより早く、均一に行うことが可能である。また、微小領域に分かれていると検査工程が容易であり、検査工程で不合格となったものの除去も容易である。
【0157】
なお、図16に示すように、ヘッド12から吐出させる液体の種類とマイクロチャネル48内の液体の種類との組み合わせによっては、吐出液滴がマイクロチャネル48内の液体(溶媒)の中に入らずにマイクロチャネル48内の液体の表面に浮遊する場合が考えられる。また、ヘッド12から吐出される際に付与される吐出力によっても同様の現象が起こり得る。このようにマイクロチャネル48内の液体表面に浮遊する液滴を加熱して固体化すると、扁平形状を有する円盤状の分粒体や、ドーム形状を上下に貼り合わせた形状の分粒体など、非球形の分粒体が形成される。
【0158】
例えば、円盤状の分粒体は、球形状の分粒体とは違い円盤の平端部とその垂直方向で異方性を有するので、液体中の流れの中での挙動や凝集したときの充填性、光による散乱性などに違いがある。即ち、球形状の分粒体とは異なる性質を利用して、塗料、インク、潤滑油、充填剤、化粧品、電子材料などに応用することが可能である。
【0159】
本実施形態では、食品となる乳化液が生成されるので、吐出される油に影響を与え難いように、吐出ヘッド12を接着剤レスにすることや、吐出される液により吐出ヘッド12が腐食、変質し難いセラミックやシリコンなどの部材を用いることが好ましい。
【0160】
また、本実施形態では、水または水系の溶液に有機化合物、油、脂肪などの微細液滴を分散させて、マーガリンやドレッシング、健康食品などの食品を製造する態様を例示したが、本発明は他のアプリケーションにも適用可能である。
【0161】
例えば、水または水系の溶液に病気の治療に必要な薬物を含む有機化合物の液体、油もしくは油系の液体を分散させて、ドラックデリバリーを製造してもよい。ドラックデリバリーの製造では、装置はクリーンルーム環境に設置されるので装置全体として高いクリーン度が要求され、製造工程に異物を検出する工程及び吐出ヘッド12の内部を定期的に洗浄する洗浄工程が追加される。また、吐出ヘッドから吐出される液滴のサイズは1μm以下のサブミクロンオーダーであり、食品製造と同様に、吐出ヘッド12から吐出される液体に影響を与えない(例えば、変質させない)ように、接着剤レス構造にすることや、吐出ヘッドから吐出される液体によって吐出ヘッドが腐食、変質し難いように、吐出ヘッドを構成する部材にはセラミックやシリコンなどの材料が適用される。吐出ヘッドの一部を透明な部材で構成し、吐出ヘッドの内部の液体の汚染状況を目視で確認できるように構成する態様も好ましい。
【0162】
また、水または水系の溶液にモノマーを含む有機化合物の液滴を分散させて、液晶スペーサーや電子ペーパの粒子のどの高分子球状粒体を製造することや、水にはんだペーストの液滴を分散させて液晶スペーサーや電子ペーパの粒子に用いられるはんだ球状粒子を製造することも可能である。高分子球状粒体の製造では、分散液を生成した後に加熱工程(加熱のためのヒータ)を備えることが必須であり、極端な単分散性(±10%以内)とサイズの保障が必要になるので、吐出ヘッドのノズルを高精度に形成しなければならない。
【0163】
逐次処理方式では生産性を上げることができないので、連続処理方式によって、液滴生成、加熱、分級、検査の各工程を一貫工程として生産性を上げることが可能である。更に、量産量の増減があるので、装置の大型化ではなくナンバリングアップにより生産性を調整する態様が好ましい。
【0164】
はんだ球状粒子の製造では、吐出ヘッド内のはんだを溶融温度まで加熱する必要があり、分散液を生成した後に冷却工程を備えて、冷却によってはんだの液滴が固体化される。なお、はんだ球状粒子の製造では、高分子球状粒子の製造と同様に、極端な単分散性(±10%以内)とサイズの保障が必要になるので、吐出ヘッドのノズルを高精度に形成しなければならず、逐次処理方式では生産性を上げることができないので、連続処理方式によって、液滴生成、冷却、分級、検査の各工程を一貫工程として生産性を上げることが可能である。更に、量産量の増減があるので、装置の大型化ではなくナンバリングアップにより生産性を調整する態様が好ましい。
【0165】
上述したアプリケーション以外にも、水または水系の溶液に油の液滴を分散させた乳液などの化粧品や、化粧品の素材や燃料ガス流速計用のトレーサー粒子となるシリカ球状粒子、水、油またはイオン液体の溶液にイオン液体または水、油の液滴を分散させるイオン液体にも適用可能である。
【0166】
化粧品の製造では、大量に低コストで製造するためにヘッドの多ノズル化、吐出周波数の高速化、ナンバリングアップが必要である。また、吐出ヘッドから吐出される液体に影響しないように、吐出ヘッドを接着レス構造にすることや、吐出ヘッドから吐出する液体によって吐出ヘッドに腐食、変質し難い材料を吐出ヘッドの構成部材に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の実施形態に係る分散液製造装置の基本構成図
【図2】層流を説明する図
【図3】図1に示す分散液製造装置の概略平面図
【図4】分散液の生成を説明する図
【図5】図1に示す吐出ヘッドのノズル配置を示す平面図
【図6】ヘッドの立体構造を示す断面図
【図7】図1に示す分散液製造装置の供給系の構成を示す断面図
【図8】図1に示す分散液製造装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図9】本発明の応用例に係る分散液製造装置の基本構成図
【図10】サテライトの回収を説明する図
【図11】図10に示すサテライトの回収の他の態様を説明する図
【図12】図9の電極対の構成例を示す図
【図13】図9に示す分散液製造装置の概略平面図
【図14】図9に示す分散液製造装置の他の応用例に係る分散液製造装置の基本構成図
【図15】図14に示す容器の構造を示す斜視図
【図16】円盤状の分散粒子を説明する図
【符号の説明】
【0168】
10,100,200…分散液製造装置、12…吐出ヘッド、15…プール、20…ポンプ、48…マイクロチャネル、50,210…微細箱、51…ノズル、79…ポンプ制御部、106,146…電極対、120…ヒータ、130…マイクロスコープ、132…解析装置、202…搬送ベルト、204…容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体に微細化した第2の液体の液滴を分散させた分散液を製造する分散液製造装置であって、
前記第1の液体が収容される第1の液体収容部材と、
前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を微細化した液滴を吐出するとともに、前記第2の液体の吐出面が前記第1の液体の前記第2の液体が着弾する面と所定の距離を離して配置される吐出ヘッドと、
を備え、
前記吐出ヘッドは、気相を介して前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を吐出することを特徴とする分散液製造装置。
【請求項2】
前記第1の液体収容部材内の第1の液体と前記吐出ヘッドとを一方向に一定の速さで相対的に移動させる移動手段を備え、
前記移動手段によって前記第1液体収容部材内の第1液体と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、前記吐出ヘッドから前記第2の液体を微細液滴化して吐出することを特徴とする請求項1記載の分散液製造装置。
【請求項3】
前記第1の液体収容部材内の第1の液体に層流を発生させる層流発生手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の分散液製造装置。
【請求項4】
前記第1の液体収容部材は、前記第2の液体が吐出される面に第2の液体の液滴サイズに対応する幅を有し、前記第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を具備することを特徴とする請求項3記載の分散液製造装置。
【請求項5】
前記第1の液体収容部材は、前記第1の液体が収容されるとともに微細液滴化された第2の液体のサイズに対応する複数の凹部を具備し、前記凹部の開口部は前記第2の液体の吐出面と平行な面に2次元状に並べられた構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の分散液製造装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドと前記第1の液体の第2の液体が着弾する面との間の気相中に電界を形成する電界形成手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項7】
前記電界形成手段は、前記吐出ヘッドから吐出された第2の液体の微細液滴からサテライト液滴を分離することを特徴とする請求項6記載の分散液製造装置。
【請求項8】
前記電界形成手段は、前記第1の液体収容部材の第1の液体への前記第2の液体の入射をアシストすることを特徴とする請求項6記載の分散液製造装置。
【請求項9】
前記第1の液体に分散する前記第2の液体を固体化する固体化手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項10】
前記第1の液体に分散する第2の液体のサイズ、形状及び内部の様子のうち少なくとも何れか1つを検査する検査手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項11】
前記第1の液体に分散した第2の液体を分級する分級手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至10のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項12】
前記分級手段によって分級された第2の液体の級ごとに、前記第1の液体に第2の液体が分散した分散液を回収する回収手段を備えたことを特徴とする請求項11記載の分散液製造装置。
【請求項13】
第1の液体に気相を介して吐出ヘッドから第2の液体を吐出して、前記第1の液体中に微細液滴化した前記第2の液体を分散させた分散液を製造することを特徴とする分散液製造方法。
【請求項1】
第1の液体に微細化した第2の液体の液滴を分散させた分散液を製造する分散液製造装置であって、
前記第1の液体が収容される第1の液体収容部材と、
前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を微細化した液滴を吐出するとともに、前記第2の液体の吐出面が前記第1の液体の前記第2の液体が着弾する面と所定の距離を離して配置される吐出ヘッドと、
を備え、
前記吐出ヘッドは、気相を介して前記第1の液体収容部材内の第1の液体に前記第2の液体を吐出することを特徴とする分散液製造装置。
【請求項2】
前記第1の液体収容部材内の第1の液体と前記吐出ヘッドとを一方向に一定の速さで相対的に移動させる移動手段を備え、
前記移動手段によって前記第1液体収容部材内の第1液体と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、前記吐出ヘッドから前記第2の液体を微細液滴化して吐出することを特徴とする請求項1記載の分散液製造装置。
【請求項3】
前記第1の液体収容部材内の第1の液体に層流を発生させる層流発生手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の分散液製造装置。
【請求項4】
前記第1の液体収容部材は、前記第2の液体が吐出される面に第2の液体の液滴サイズに対応する幅を有し、前記第1の液体の層流の流れ方向に形成された複数の溝を具備することを特徴とする請求項3記載の分散液製造装置。
【請求項5】
前記第1の液体収容部材は、前記第1の液体が収容されるとともに微細液滴化された第2の液体のサイズに対応する複数の凹部を具備し、前記凹部の開口部は前記第2の液体の吐出面と平行な面に2次元状に並べられた構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の分散液製造装置。
【請求項6】
前記吐出ヘッドと前記第1の液体の第2の液体が着弾する面との間の気相中に電界を形成する電界形成手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項7】
前記電界形成手段は、前記吐出ヘッドから吐出された第2の液体の微細液滴からサテライト液滴を分離することを特徴とする請求項6記載の分散液製造装置。
【請求項8】
前記電界形成手段は、前記第1の液体収容部材の第1の液体への前記第2の液体の入射をアシストすることを特徴とする請求項6記載の分散液製造装置。
【請求項9】
前記第1の液体に分散する前記第2の液体を固体化する固体化手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項10】
前記第1の液体に分散する第2の液体のサイズ、形状及び内部の様子のうち少なくとも何れか1つを検査する検査手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項11】
前記第1の液体に分散した第2の液体を分級する分級手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至10のうち何れか1項に記載の分散液製造装置。
【請求項12】
前記分級手段によって分級された第2の液体の級ごとに、前記第1の液体に第2の液体が分散した分散液を回収する回収手段を備えたことを特徴とする請求項11記載の分散液製造装置。
【請求項13】
第1の液体に気相を介して吐出ヘッドから第2の液体を吐出して、前記第1の液体中に微細液滴化した前記第2の液体を分散させた分散液を製造することを特徴とする分散液製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−80250(P2008−80250A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263480(P2006−263480)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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