説明

分散補償グレーティングの群遅延リップルを低減させるシステムおよび技術

【課題】分散補償グレーティング(DCG)の群遅延リップルを許容できる低いレベルまで低減するシステムおよび方式を提供する。
【解決手段】トリミングデバイスおよびトリミングデバイスの出力によってその長さ方向に沿ってグレーティングのある領域がスキャンされるためのスキャニング組み立て体を含むトリミング機構にグレーティングが取り付けられる。グレーティングはトリミングデバイスの出力に敏感であり、トリミングデバイス出力への曝露がスキャンされる領域の有効屈折率を変化させ、その変化量はスキャニング速度の関数として変化する。トリミングされるべきグレーティングの領域が選択され、その長さ方向に沿って選択されたグレーティング領域の有効屈折率を修正するように計算されるスキャニング速度のプロファイルがスキャニング組立体にプログラムされ、選択されたグレーティング領域の群遅延リップルを滑らかにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に光ファイバデバイスおよび方式に関わり、具体的には分散補償ファイバブラッググレーティングの群遅延リップルを低減するための改良されたシステムおよび方式に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバブラッググレーティング(FBG)は波長が変化する光データ信号を搬送するための中心部に導波路を有する光デバイスである。FBGは多数のグレーティング領域を含み、そのそれぞれは「ブラッグ波長」として知られる特定の波長の信号をグレーティングの長さ方向に反射して戻し、その他の波長を通過させる。FBGは、光リンク中の波長依存群遅延の勾配と逆の勾配を有する波長依存群遅延を光リンク中に導入する分散補償器用に設計されることがある。FBG群遅延は、一般的には信号がグレーティングの長手に沿って進行する距離が信号の波長とリニアな関係で変化するようにグレーティング領域を設計することにより生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば製造上の不完全さを含む多くの理由により、通常は分散補償グレーティング(DCG)によって示される群遅延は、特に光伝送システムが複数のFBGを含むときに伝送の低下およびエラーにつながる好ましくない「リップル」を含む。したがって、この群遅延リップルを許容できる低いレベルまで低減するシステムおよび方式に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来技術のこれらおよび他の問題点が本発明によって取り扱われていて、その第一の観点はファイバグレーティング中の群遅延リップルを低減するための技術に向けられている。グレーティングは、トリミングデバイスと、トリミングデバイスの出力によってグレーティングのある領域がその長手方向にスキャンされるようにするスキャニング組立品とを含むトリミング機構の中に取り付けられる。グレーティングは、トリミングデバイスの出力に対して敏感な化学構成を有するので、トリミングデバイスへの曝露がスキャンされた領域の有効屈折率を変化させ、その変化の量はスキャニングの速度の関数として変化する。トリミングされるべきグレーティングの領域が選択され、選択されたグレーティング領域での群遅延リップルを滑らかにして出力するように、その長手方向に沿うグレーティングの選択領域の有効屈折率を修正するためにスキャニング速度のプロファイルがスキャニング組立品にプログラムされる。さらに本発明の更なる観点はグレーティングのトリミング領域を位置決めし、スキャニング速度プロファイルを計算する技術を含む。
【0005】
本発明の更なる特徴および利点が以下の詳細な説明および付属の図面を参照することにより明らかになるでなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明による第一、および第二のトリミング機構のダイアグラムを示す図である。
【図2A】ファイバ分散補償グレーティングの群遅延リップルを低減するための本発明の観点による方式を説明する一連のフローチャートを示す図である。
【図2B】ファイバ分散補償グレーティングの群遅延リップルを低減するための本発明の観点による方式を説明する一連のフローチャートを示す図である。
【図2C】ファイバ分散補償グレーティングの群遅延リップルを低減するための本発明の観点による方式を説明する一連のフローチャートを示す図である。
【図3】波長と典型的なファイバグレーティング内の群遅延との間の関係を図示する光ベクトルアナライザ(OVA)の出力のプロットを示す図である。
【図3A】回帰線と重ねたプロットの一部の拡大図を示す図である。
【図4】測定された分散の勾配に基づくトリミングすべき帯域幅を示す表を示す図である。
【図5】典型的なファイバの有効屈折率の偏差とグレーティングの長手方向の位置との関係を示すグラフを示す図である。
【図6】トリミングデバイスの出力によってもたらされる屈折率の変化量とスキャニング速度との間の関係を示す補正曲線を示す図である。
【図7】スキャニング速度のプロファイルを示すグラフ。スキャニング速度はグレーティングの長手方向の位置の関数としてプロットされている。
【図8】スキャニングプロファイルで使われるオフセットの例を示す一連のプロットを示す図である。
【図9】スキャニングプロファイルで使われるオフセットの例を示す一連のプロットを示す図である。
【図10】スキャニングプロファイルで使われるオフセットの例を示す一連のプロットを示す図である。
【図11】スキャニングプロファイルで使われるオフセットの例を示す一連のプロットを示す図である。
【図12】本願記載の技術の応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図13】本願記載の技術の応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図14A】本願記載の技術の応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図14B】本願記載の技術の応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図15】記載の技術による更なる応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図16】記載の技術による更なる応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図17A】記載の技術による更なる応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【図17B】記載の技術による更なる応用例を示す一連のOVAのプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
添付の図を参照した以下の議論により、本発明の特徴や実施例を明らにする。なお、これらの図面中の構成要素は必ずしも寸法通りではない。
ファイバブラッググレーティングは中心部光導波路を有する光ファイバから形成される光デバイスであって、その屈折率は一連の周期的な変化を含むように修正されている。所与のグレーティング領域で屈折率の周期的な変化が“ブラッグ波長”として知られる特定の波長をグレーティングの長手方向に反射して戻し、その他の波長を通過させる。所与のグレーティング領域でブラッグ波長λは領域の有効屈折率neffおよびグレーティングの周期Λの関数であって、以下のように表される。
【数1】

【0008】
ファイバブラッググレーティングのひとつの用途は、データが一連の光パルスとして光ファイバの長手方向に伝送される光リンクの分散補償をもたらすことである。通常、パルスは2進法の「1」を表す。この光パルスの時間間隔はその伝送スピードに依存する。しかし、通常のデータ信号の光パルスは単色ではなく、ファイバ中を異なる速度で進行する異なる波長成分を含む。比較的短い伝送距離では、速度の差は十分小さく問題を示さない。しかし、パルスは光ファイバ中をある距離進行すると、速度の差がパルスの著しい“広がり”をもたらす。極端な場合には、パルスは隣のビットの時間間隔にまたがる点まで広がることもある。したがって、2進数の「1」パルスは隣の「0」にまで広がり、その点で受信機はもはや「0」ビットを識別することが出来ない。分散は正あるいは負のいずれかであって、それは伝送波長と伝送時間との間の関係の勾配による。
【0009】
分散補償グレーティング(DCG)は伝送リンクに補正量分の波長依存遅延を導入することによりパルスの広がりを低減する。この遅延はパルスの異なる波長成分をグレーティングの長手方向に異なる距離進行させることによって生成される。したがって、負のDCGにおいては短い波長成分は長い波長成分よりも長い距離を進行し、したがってより多くの時間を要する。
【0010】
一般的なDCGの場合、波長と遅延との間の関係はある量の「群遅延リップル」、つまり望ましい関係からの不規則なずれを示す。このリップルの理由は、例えば製造プロセスによってもたらされる不完全さを含む。群遅延リップルは、特に複数のDCGを含む光リンクにおいて性能を著しく低下させる結果となることもある。
【0011】
本発明の態様は、レーザ、フィラメントヒータ、あるいは他の適当なトリミングデバイスを使うことにより、ファイバグレーティングの群遅延リップルを低減するためのシステムおよび技術を備え、選択されたグレーティング領域に沿う有効屈折率を修正するように変化させる。記載のシステムおよび技術は式1に基づいていて、参照の便宜のためにここに繰り返す。

λ=2・neff・Λ (1)

規則的な分散のプロットは群遅延と波長との間の関係を示す。理想的なDCGの場合は、プロットは直線を示すはずである。ある波長に対してその直線的な関係からの群遅延のずれがその波長における群遅延リップルである。波長対群遅延によるプロットを示し、群遅延の値に対して、もしDCGが理想的でなければその群遅延に対する直線的な関係からの波長のずれがあることを見出すことを試みることも出来る。したがって、群遅延リップルの補正は波長のずれの補正に置き換えることが出来る。式(1)から、これらの波長のずれΔλは式(2)に見られるようにグレーティングの長さに沿う有効屈折率のずれΔneffに変換することが出来る。
【数2】

したがって、式(1)および(2)から、有効屈折率neffを調整することによりグレーティングの長さ方向に沿う所定の位置のブラッグ波長を調整することが可能であることがわかる。
【0012】
トリミングデバイスはその出力に敏感な化学構成を有するファイバグレーティングと併せて使われ、トリミング出力への曝露は、曝露された領域の有効屈折率を制御された状態で変化させる。有効屈折率の変化量は曝露時間の関数として変わる。したがって、スキャニング速度を制御することによってファイバグレーティングのスキャン領域に沿う変化量を制御することが可能である。したがって、本発明の態様により、スキャンされるグレーティング領域に沿う有効屈折率を変化させるスキャニング速度プロファイル計算し、実行することにより群遅延リップルが低減され、グレーティングの距離とブラッグ波長との間の関係を滑らかなものにする。
【0013】
図1はファイバの分散補償グレーティング(DCG)22の群遅延リップル(GDR)を低減する本発明の第一の態様によるトリミング機構20のダイアグラムを示す。第一および第二のファイバ取り付け部24および26はグレーティング22の第一および第二の端部をしっかりと保持し、グレーティング22のトリミングされる部分を曝露させるために使われる。サーキュレータ30はグレーティング22の先頭端部を光スペクトルアナライザ(OSA)32および広帯域信号源34に結合するために使われる。以下に詳細に述べられるように、OSA32と広帯域信号源34とは、トリミングされるべきグレーティング22の長さ方向に沿う領域を特定するために機構20のその他記載の構成要素と併せて使われ、グレーティング22用のデータを生成させるために使われる。
【0014】
トリミング機構20は、UVレーザ、フィラメントヒータ、あるいは類似のものなど、移動台あるいは他の適当な移動装置からなるスキャニング組立品44によってグレーティング22の暴露部分の長さ方向に沿ってスキャンされる出力42を有する適当なトリミングデバイス40を含む。トリミング出力42の動きは以下に詳細に述べられるように構成されているスキャニング速度プロファイル48がプログラムされているプログラマブルコントローラ46によって制御され、スキャンされる領域の長さ方向に沿う有効屈折率Δneffを修正するように変化させ、群遅延リップルが許容レベルまで低減される。
【0015】
上に議論されたように、グレーティング22はトリミングデバイスの出力42に対して敏感な化学構成を有するので、出力への曝露がグレーティングの有効屈折率を変化させる。変化量は曝露時間の関数として増加する。したがって、スキャニング速度を変化させることにより、ファイバのスキャンされる領域の長さ方向への有効屈折率の変化量Δneffを予想通りに変化させられる。グレーティング22の長さ方向に沿うトリミング出力42をゆっくり動かすことは変化量がより多い結果となり、トリミング出力42を速く動かすことは変化量がより少ない結果となる。スキャニングの速度とΔneffとの関係は検量線に反映され、以下に議論される。
【0016】
当面の議論の目的のために、トリミングデバイスの出力42は物理的な寸法がグレーティング22の位相変化よりも非常に大きいと仮定する。そのため、記述されているトリミングのプロセスはグレーティング22の複雑な位相に影響を与えない。したがって、例えばビーム直径が1乃至2mmのレーザは同じ程度のサイズの加熱ゾーンを有するフィラメントヒータと同様に適切なものである。
【0017】
現在の例ではファイバグレーティング22が静止していて、トリミングデバイスの出力42が所望のスキャニングをするために動かされているということが留意されるべきである。しかし、ここに述べられている発明はトリミングデバイスの出力42が静止していて、ファイバグレーティング22が動かされる、あるいはトリミングデバイスの出力42とファイバグレーティング22の両方が動かされるトリミング装置を使って実行されてもよいということが認識されよう。
【0018】
ここに、(1)トリミングする帯域幅に正確に対応するグレーティング22の長さ方向に沿う物理的な領域の位置および長さを決定し、(2)実行されることにより、群遅延リップルの低減をもたらすスキャニング速度プロファイル48を構成する技術が述べられている。
【0019】
図2Aは、本発明の態様による総合的な技術100のフローチャートである。ステップ101で光ベクトルアナライザ(OVA)およびサーキュレータが、トリミングされるそれぞれのグレーティングに対して分散および郡遅延リップルに関する詳細なデータを波長の関数として生成し、また記録するために使われる。目下説明している本発明の例では、分散およびGDRのデータを収集するために使われるOVAはバージニア州ブラックスバーグ(Blacksburg、VA)のルナテクノロジー(Luna Technologies)製のサーキュレータ内臓のルナ光ベクトルアナライザである。しかし、目下説明している発明は他のタイプのOVA、および類似の装置を使って実行されてもよいことが以下の議論から認識されるであろう。
【0020】
グレーティングが記載のトリミング機構に搭載された後に分散およびGDRデータを収集することは理論的に可能であることがいまの説明から明らかであろう。しかし、OVAは比較的高価な装置であるので、トリミングに先立ち、所与のまとまった数のグレーティングに対して記載のデータ生成および記憶を同時に行なうことが現実的である。OVAのデータは品質のコントロール、つまりいずれのグレーティングが許容できる低いレベルのGDRであり、どのグレーティングがトリミングを必要としているかを決定するために使われる。
【0021】
必要な分散およびGDRデータがトリミングされるグレーティングに対して生成され、記憶された後、技術100はステップ101からステップ110および120に進む。図2Bのフローチャートおよび付属のテキストにより詳細に記載されるステップ110において、指定のトリミング帯域幅に対応する長さに沿う物理的な領域の位置および長さが決定される。図2Cのフローチャートおよび付属のテキストにより詳細に記載されるステップ120において、群遅延リップルを低減させるスキャニング速度のプロファイルが構成される。図2Aに示されるように、ステップ110と120は相互に接続されている。ステップ120で構成されたスキャニング速度のプロファイルは記憶されたOVAデータの解析に基づいていて、それによってトリミングされるグレーティング領域の位置および長さを決定するためにステップ110で使われるトリミングの帯域幅が導かれる。次いで、スキャニングの距離、つまりトリミングされるべきグレーティング領域の長さが、スキャニング速度のプロファイルを構成するために他のデータと併せてステップ120で使われる。
【0022】
ステップ130では、必要に応じてオフセットが適用される。オフセットの理由は図8乃至11に関連して以下に議論される。最終的にステップ140でスキャニングプロファイルが実行される。
【0023】
さらに図2Aに示されるように、ステップ120で使われる速度対Δneff検量線、およびステップ130で使われるオフセットは、ステップ150で同一の感光および焼きなまし履歴を持つ類似のグレーティングに対する一連の試しのトリミングで使われるものと同じ機構およびパラメータを使うことにより得られる。
【0024】
図2Bはより詳細にステップ110を図示している。目下の例のためにトリミングデバイスはフィラメントヒータであると仮定する。しかし、いまの議論はレーザ、および類似のものを含む他の形式のトリミングデバイスにも当てはまることは明らかであろう。
【0025】
ステップ111で、グレーティング22がトリミング機構20に取り付けられる。
【0026】
ステップ112で、サーキュレータ30、OSA32、および広帯域信号源34がグレーティング22の反射スペクトルを得るために使われる。OSA32はステップ113乃至116を通してグレーティングに接続されたままである。
【0027】
ステップ113で、1dB中心部波長λ1dBが反射スペクトル上に位置している。
【0028】
ステップ114で、トリミングデバイス40として使われるヒータが0.25Vに設定されると、反射スペクトルに顕著なくぼみが作られる。移動台44がスペクトルのくぼみがλ1dB−BW/2に揃うまでヒータを移動するために使われ、ここでBWは記憶されたOVAデータから導かれる帯域幅であって、以下に議論される、図2Cに示されるフローチャートのステップ121で説明される。正分散グレーティングに対しては、λ1dB−BW/2に対応するグレーティング22上の物理的な位置はオフセット前のスキャン開始点50(図1)である。(負分散グレーティングに対しては、λ1dB−BW/2に対応するグレーティング22上の物理的な位置はオフセット前のスキャン終了点である。)
【0029】
ステップ115で、ヒータ出力42はくぼみがλ1dB+BW/2に揃うように動かされる。正分散グレーティングに対して、λ1dB+BW/2に対応するグレーティング22上の物理的な位置はオフセット前のスキャン終了点52(図1)である。(負分散グレーティングに対して、λ1dB+BW/2に対応するグレーティング22上の物理的な位置はオフセット前のスキャン開始点である。)
【0030】
ステップ116で、オフセット58(図1)が開始点50に適用されると、その結果、オフセット開始点が50´およびオフセット終了点が52’であるオフセットスキャニング領域54’となる。オフセットの理由は以下に議論される。いまの例ではオフセットは5mmである。
【0031】
図2Cは図2Aのステップ120をより詳細に示す。
【0032】
ステップ121で、ステップ101(図2A)で記憶されたOVAデータがグレーティングのトリミングする帯域幅(BW)を見出すために使われる。トリミングの帯域幅BWはステップ114(図2B)でも使われる。
【0033】
ステップ122で、3dB中心部波長λ3dBがOVA反射スペクトルに対して見出される。
【0034】
ステップ123で、λ3dB±0.25nmである領域のスペクトルが平均化され、この平均化された振幅の値が1dB帯域幅および中心波長λ1dBを見出すために使われる。
【0035】
ステップ124で、λ1dB±BW/2内のデータが抽出され、このデータがトリミングの帯域幅に対する波長対遅延をプロットするために使われる。
【0036】
ステップ125で、線形回帰が実行される。波長の偏差対遅延を得るためにステップ124のデータが回帰から差し引かれる。関係式
【数3】

がΔneff対遅延を得るために使われる。上に議論されたステップ115のスキャニング距離が遅延をスキャニングの距離に変換するために使われる。
【0037】
ステップ126で、スキャニング速度のプロファイル38が計算され、読み込まれる。
【0038】
図2A乃至2Cで説明される技術が具体的な例について記載される。目下の議論のために、トリミングされるグレーティングは図1に示されるトリミング機構20、あるいは類似のものに取り付けられると仮定する。
【0039】
図3および4はそれぞれ図2のフローチャートのステップ121を説明するグラフ150および参照表156を示す。
【0040】
図3は光ベクトルアナライザから得られる群遅延対波長のデータを使うグラフ150を示す。先に指摘されたように、このプロットは波長対群遅延を示す。図3に示されるように、プロットはおおむね直線であるように見える。しかし、図3Aはプロット152の一部の拡大図を示し、それは回帰直線154と並列にしたとき、明らかにリップルを示している。ここに記載の技術はプロット上の各点を回帰直線に近づけることを試み、波長のずれを最小にする。
【0041】
分散のプロット152の勾配の逆数はps/nmで表した分散のレベルであり、トリミングの帯域幅を見出すために使われる。目下の例では、トリミングの帯域幅は図4に示される表のような参照表を用いて見出される。
【0042】
図5は図2Cのフローチャートのステップ122乃至125の適用結果を説明するグラフ160である。波長のずれがプロット162に変換されていて、それがグレーティングの長さ方向に沿う位置と有効屈折率Δneffのずれとの間の関係を説明している。
【0043】
図6は図2Aのフローチャートのステップ150に記載されているようにして得られる検量線172を説明するグラフ170を示す。検量線172は6個のデータ点174に合わせられ、Δneffとmm/秒で測定されたスキャニングの速度との間の関係を説明している。6個のデータ点174は同じようなグレーティングに使用されたのと同様のトリミング機構20を用いた一連の試行を行なうことによって得られる。
【0044】
図7は図6の検量線170を図5のプロット160に適用することによって得られるスキャニング速度のプロファイルを示すグラフ180である。図7は図2Cのフローチャートのステップ126に対応する。上に述べたように目下の例では、トリミング用のフィラメントは有効屈折率を補正するように減少させることによってリップルを滑らかにする。したがって、通常スキャニングのプロファイルはΔneffと相補的な関係を持っている。Δneffプロットのピークは速度プロファイルの谷と揃えられ、またその逆も同様である。
【0045】
目下の例で使われる特定のグレーティングおよびトリミング機構について、スキャニング速度のプロファイルにオフセットを用いる必要があることがわかっている。図8−11はこのオフセットを説明する一連のプロットである。
【0046】
図8はサンプルのグレーティングの群遅延リップルのプロット200を示す。下側の線202は、測定された群遅延データから回帰直線を差し引くことによって得られた(0.1nmの幅で滑らかにされた)トリミング前の群遅延リップルを示す。それから記載のトリミング技術が上に記載されるように、つまりオフセットなしに実行される。上側の線204はトリミング後の群遅延からトリミング前の群遅延を差し引くことによって得られ、スキャニング領域の長さ方向に沿う有効屈折率の変化によってもたらされる群遅延の変化を表す。
【0047】
図8から明らかなように、下側および上側の線202と204は互いに一列に並ぶことはない。むしろ、二本の線の間にはずれ206があることが見られる。図9にプロット200’を示し、そこでは下側の線202の位置が保持され、上側の線204にオフセットが適用され、それが線204´を生じるように左に移されて、線202と相補的に整列される。
【0048】
上に議論されるように、ナノメータの単位で波長を表すx軸に沿う動きはグレーティングの長さ方向に沿う動きに対応する。目下の例では、上側の線のオフセット206は物理的なグレーティング上で約5mmのオフセットに対応する。したがって、線202および204の所望の配置を得るために、スキャンの開始点を距離5mmだけオフセットするために移動台が使われる。オフセットの距離はグレーティング、ヒータ、およびトリミング機構の特性に依存して変わることが理解されよう。したがって、適切なオフセットを得るために数多くの試行を行なうことが必要である。
【0049】
図10はトリミング技術の結果を説明するプロット210を示す。下側の線202はトリミング前の群遅延リップルを示し、図8および9にも示される。上側の線212は記載のオフセットが適用されるときのトリミングプロセスの結果を示す。図10に示されるように、本技術はトリミングされたグレーティング領域の群遅延リップルに顕著な低減を生じている。
【0050】
図11は記載のオフセットを用いるトリミング技術の他の例を説明するプロット220を示す。第一の線222はトリミング前の群遅延リップルを示す。第二の線224はトリミング後の群遅延からトリミング前の群遅延を差し引いて得られ、それがトリミングによる実質の群遅延変化である。記載のオフセットの使用によって、上側および下側の線222および224が互いに相補的に揃えられ、所望の結果を達成していることが見られる。
【0051】
図12、13、14Aおよび14Bはサンプルグレーティングへの上記GDRトリミング効果の例を示す一連のプロット300、310、330、および330’である。図12のプロット300で、線302はトリミング前後のグレーティングの(y軸に沿ってデジベルで表される)反射と(x軸に沿ってナノメータで表される)波長との間の関係を示す。反射スペクトルは基本的に同じであって、一本の線の様相を生じる。320と322との間の帯域幅は0.68nmであって、最終的なデバイスにとって重要な帯域幅である。
【0052】
図13のプロット310で、上側の線312は(y軸に沿ってピコ秒で表される)群遅延と(x軸に沿ってナノメータで表される)波長との間のトリミング前の関係を示し、下側の線314は群遅延と波長との間のトリミング後の関係を示す。二つの線312と314はより見やすくするためにマニュアルのオフセットで示されている。これらの線の傾きはグレーティングの分散であって、それは745ps/nmである。この分散の値をもとに、このデバイスのトリミングの帯域幅BWが0.8nmであることが図4に見られる。
【0053】
上に議論されるように、トリミングの帯域幅はグレーティング上の物理的な位置に対応し、スキャニング長さで60.8mmであることがわかる。さらに上記から熱スキャニングプロファイルが計算され、それが制御ソフトウエアに読み込まれ、実行される。図14Aおよび14Bのプロット330および330’はそれぞれトリミング前後の0.68nm帯域幅の群遅延リップルを示す。図14Aで、線332はトリミング前の100pmの平滑化された群遅延リップルを示し、それはトリミング前の群遅延データから回帰直線を差し引いて得られる。図14Bで、線332’はトリミング後の100pmの平滑化された群遅延リップルを示し、それはトリミング後の群遅延データから回帰直線を差し引くことにより得られる。図14Aおよび14Bで説明されるように、トリミング技術は群遅延リップルに顕著な低減を実現している。
【0054】
図15、16、17Aおよび17Bは第二のグレーティングに関する本発明の更なる例を説明する一連のプロット340、350、360および360’である。この場合、分散は814ps/nmであり、トリミングの帯域幅は0.72nmであることがわかる。スキャニングの長さは60.3mmであることがわかる。ここでもまた、図17Aおよび17Bに示されるように、記載のトリミング技術は群遅延リップルに顕著な減少を生じている。
【0055】
前述の記載は当業者が本発明を実施することを可能にする詳細を含んでいるが、その記述は事実上例示的なものであり、多くの修正および変形がこれらの教えるところの効果を知る当業者には明らかであろう。したがって、本発明は付属する請求の範囲によってのみ規定され、かつ請求の範囲は従来技術によって許される限り広く解釈されると意図されるものである。
【符号の説明】
【0056】
20 トリミング機構
22 グレーティング
24 第一のファイバ取り付け部
26 第二のファイバ取り付け部
30 サーキュレータ
32 光スペクトルアナライザ(OSA)
34 広帯域信号源
40 トリミングデバイス
42 トリミングデバイスの出力
44 スキャニング組立品(移動台)
46 プログラマブルコントローラ
48 スキャニング速度プロファイル
50 オフセット前のスキャン開始点
50’ オフセット開始点
52 オフセット前のスキャン終了点
52’ オフセット終了点
54 オフセット前のスキャニング領域
54’ オフセットスキャニング領域
56 スキャニングの距離
58 オフセット
152 波長対群遅延プロットの一部の拡大図
154 回帰直線
202 トリミング前の群遅延リップル
204 トリミング前後の群遅延リップルの差分
206 オフセット
212 トリミングの結果
222 トリミング前の群遅延リップル
224 トリミング前後の群遅延リップルの差分
302 トリミング前後のグレーティングの反射と波長の関係
312 群遅延と波長との間のトリミング前の関係
314 群遅延と波長との間のトリミング後の関係

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバグレーティングの群遅延リップルを低減する方法であって、
(a)前記グレーティングを、トリミングデバイス、およびトリミングデバイスの出力によって前記グレーティングのある領域をその長さ方向に沿ってスキャンするスキャニング組立品を含むトリミング機構に取り付けることを含み、前記トリミングデバイス出力への曝露がスキャンされた領域の有効屈折率を変化させるように、前記グレーティングが前記トリミングデバイスの出力に敏感である化学組成を有し、変化の量がスキャニング速度の関数として変化するものであり、さらに、
(b)トリミングされるべき前記グレーティングの領域を選択すること、
(c)前記選択されたグレーティングの領域の群遅延リップルを滑らかにするためにその長さ方向に沿う選択された前記グレーティング領域の有効屈折率を修正するように計算されるスキャニング速度のプロファイルを前記スキャニング組立品にプログラムすること、
ことを特徴とするファイバグレーティングの群遅延リップルを低減する方法。
【請求項2】
前記(c)が、
(c1)前記グレーティングの選択された領域に関して、波長と群遅延との間の関係に関するデータを得ること、
(c2)前記(c1)で得られたデータの直線回帰を実行し、波長のずれと群遅延との間の関係を得るために前記回帰から前記データを差し引くこと、
(c3)前記(c2)で得られた関係を有効屈折率差と群遅延との間の関係に変換すること、
(c4)前記(c3)で得られた関係を有効屈折率差と前記選択されたグレーティング領域の長さ方向に沿う距離との間の関係に変換すること、
(c5)前記(c4)で得られた関係および検量線を使い前記スキャニング速度のプロファイルを計算すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(c5)における検量線は、同一の感光および焼きなまし履歴を有する類似のグレーティングに一連の試行を行うために使用されるのと同様のトリミング機構およびトリミングパラメータを使うことによって決定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記(c1)において、波長と群遅延との間の関係をプロットするために反射スペクトルを使い、その分散勾配を見出すこと、そして、
トリミングの帯域幅を見出すために前記分散勾配を使うこと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記分散勾配に基づき前記トリミングの帯域幅を見出すために参照表を使うことをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反射スペクトルの1dB中心部波長を見出すこと、
前記1dB中心部波長マイナス帯域幅の1/2と前記1dB中心部波長プラス帯域幅の1/2との間の前記反射スペクトルの領域からデータを抽出すること、
をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1dB中心部波長を見出すことには、
前記反射スペクトルから3dB中心部波長を見出すこと、
前記3dB中心部波長プラスあるいはマイナス0.25nmの領域のスペクトルを平均化すること、そして、
前記1dB中心部波長を見出すために前記平均化されたスペクトル値を使うこと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記トリミングデバイスが発熱体であり、そして、前記(b)が、
(b1)前記グレーティングから反射スペクトルを得るためにサーキュレータおよび広帯域信号源を使うこと、
(b2)前記反射スペクトルの1dB中心部波長を見出すこと、
(b3)前記反射スペクトルをくぼませるために低電圧でヒータを作動させること、
(b4)前記くぼみが前記1dB中心部波長マイナストリミング帯域幅の1/2に揃うように前記ヒータを移動させること、そして、
(b5)前記くぼみが前記1dB中心部波長プラストリミング帯域幅の1/2に揃うように前記ヒータを移動させることを含み、スキャンの開始および終了点が前記(b4)および前記(b5)の前記ヒータ位置に対応し、それらの距離がスキャニングの距離である、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(b5)が、
前記スキャンの開始点においてオフセットを適用すること、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ファイバグレーティングの群遅延リップルを低減するトリミング機構であって、
トリミングされるべきグレーティングを受け止める取り付け組立品と、
トリミングデバイスと、
前記トリミングデバイスの出力によって前記グレーティングのある領域をその長さ方向に沿ってスキャンするスキャニング組立品とを含み、前記グレーティングが前記トリミングデバイスの出力に敏感である化学組成を有し、前記トリミングデバイス出力への曝露がスキャンされた領域の有効屈折率を変化させ、変化の量がスキャニング速度の関数として変化するものであり、さらに、
選択されたグレーティングの領域の群遅延リップルを滑らかにするように、その長さ方向に沿う前記選択されたグレーティング領域の有効屈折率を修正するように計算されるスキャニング速度のプロファイルを前記スキャニング組立品にプログラムする手段と、
を含むことを特徴とする機構。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【公開番号】特開2009−205163(P2009−205163A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45090(P2009−45090)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(302003314)フルカワ エレクトリック ノース アメリカ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】