説明

分析デバイスの効率的処理のための機器

本発明は、固定された結合試薬を含むデバイス一つ以上の分析デバイスを有効に処理するための機器及び診断システムであって、サンプルインプットステーション、一つの処理ステーション、検出ステーション及びトランスファーモジュール、及び一つ以上の前記デバイスを含み、ここで少なくとも1つの前記処理ステーションは前記分析デバイスを受けるための凹所を備え、前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有するシステムに関する。更に本発明は、試料中の1以上の被分析物を測定するための方法であって、試料をサンプルインプットデバイスに挿入する工程、固定化された結合試薬を含む1以上のデバイスをインプットステーションに挿入する工程、及び制御され、被分析物と結合試薬の結合に基づくシグナルを検出するために試料を振盪すること、及び当該シグナルに基づき被分析物を測定することを含む、自動化された手順を行う工程、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスを処理するための機器、そのような機器を備えたシステム、分析デバイスを処理する方法、及び上記デバイスにおける被分析物の測定方法、である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、分析技術の分野において、デバイスの内側表面に結合した固定された試薬を含むデバイスを試料と接触させることによって上記試料を上記デバイスと結合させるすべての場合に有用である。特に、本発明は診断の分野、特に分子診断法の分野で、例えばヒトの体液などの試料又は環境試料における核酸成分又は蛋白質の分析などで有用である。
【0003】
核酸配列の増幅、例えばEP 0 201 184に開示されているようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅、及び例えばEP 0 200 362に開示されているようなその後の検出、によって達成された高い分析感度の進歩によって、分子診断法は、核酸を含むパラメーター、例えばウイルスやバクテリア、例えばB型肝炎ウイルスやHIVなど、を測定するための手段として確立されている。PCRに基づく分析法は、EP 0 420 260に開示されているようないわゆるヘテロジニアスフォーマット(heterogeneous format)を用いて開発された。これらの分析では、例えばRoche’s AMPLICOR分析で見られるように、B型肝炎ウイルスなどの一定の被分析物の核酸の核酸配列が増幅され、チューブに含まれるいわゆる捕捉プローブに固定される。核酸が捕捉プローブまで拡散する速さは遅いので、固定プロセスが完了するにはある程度の時間がかかる。この欠点は、固定されたプローブを検出のために必要としないいわゆる均質分析によって回避された。均質分析法の例はEP 0 543 942に開示されている。
【0004】
PCRを行うための機器は、プライマーを標的核酸にアニールし、標的核酸をテンプレートとして用いてプライマーを伸長し、核酸鎖を分離して再びプライマーに結合する一本鎖を得るために必要な、サーモサイクルとも呼ばれる温度サイクルを適切に実行するために開発された。サーモサイクルを実行するのに用いることができるサーモサイクラーは、EP 0 236 069に開示されている。
【0005】
PCRは試料中にほんの微量しか存在しない核酸配列を増幅し、一つの試料中の異なる配列を増幅する能力があるので、いくつかの被分析物又はパラメーターを独立に平行して増幅し検出する分析法が開発された。特に、一つの試料中に10種を超える被分析物が含まれ検出されると考えられる場合、これらの分析法はそれに対応する数のプローブを、好ましくは固体表面の別々の部位に固定された形で、用いる必要がある。平面上に多数の異なる結合物質を含むチップの製造法は、EP 0 476 014に開示されている。
【0006】
デバイスにチップを保持し、そして上記デバイスで分析反応を行うためのデバイスがEP 1 161 989に提案されている。上記デバイスで液体を処理するための第一の方法はEP 1 226 863に開示されている。この方法では、チップを含むカートリッジを前後に動かしてこのカートリッジに含まれる液体を混合させる。EP 1 224 976では、カートリッジ内の液体を混合する方法であって、カートリッジを前後に揺すって液体をチップの表面に通過させるようにする方法が記載されている。これらのデバイスは、液体がチップの表面まで長い距離を運ばれることを回避するように非常に細いキャビティーを有する。細いキャビティーは、液体を充填するために比較的複雑な入口及び出口チャンネル、並びにこの入口及び出口チャンネルを流体システムに結合するための特別なアダプターを必要とするという欠点がある。アダプターは、漏れ及び/又は損傷の危険があり、カートリッジの正確な位置決めが必要である。
【0007】
EP 0 695 941には、フラットなキャビティーを有し、入口及び出口チャンネルがデバイスのフラットな表面に配置されているフラット・デバイスが開示されている。このデバイスもやはり充填するのに困難を有する。すなわち、入口及び出口チャンネルを機器に緊密に結合する必要があり、特にキャビティーを機器の流体システムに結合するアダプターが非常に正確でなければならない。US 6,043,080はチップを含むフラット・デバイスを記載している。このデバイスも同じような欠点がある。
【0008】
チップを保持するための別のデバイスがEP 1 419 821に開示されている。このデバイスはキャビティーがより太いので、より多量の液体を収容できる。そこに収容された液体試料の活性表面への拡散は、混合するために液体試料をボルテックスすることにより促進される。
【0009】
US 2004/0191807及びUS 2004/0114456には、平面状アレイ・チップを含むカートリッジを含むハウジングを具備する機器であって、チップ平面に垂直な回転軸のまわりにハウジングを30 rpm〜90 rpmの範囲で回転させることによって混合が行われる機器が開示されている。この混合方法は非効率的であり、ハイブリダイゼーション時間が長くなる。記載された機器のもう一つの欠点は、US 6050719に記載されているようなハイブリダイゼーション装置とUS 6114122に記載されているような流体又は洗浄装置を工業用操作ロボットを用いる作業ベンチに配置することにある。これは大きなスペースを必要とし、タイミングが非効率的である。複雑な流体コネクタを含む流体送達システムの使用も自動化された高処理量用途では制約になる。
【0010】
US 6660233には、ホルダーに取り付けられたバイオアレイ・チップ上で反応ステーションから検出ステーションまで基質(substrate)を輸送する機器が開示されている。アレイ・チップが取り付けられたホルダーは、試料が充填されたウェルに浸漬される。しかし、この機器で行われるプロセスはアレイ・チップで典型的な洗浄工程又は典型的な流体適用を含まない。これは応用分野を制限し、柔軟性に欠ける。さらに、チップ・ホルダーと反応容器の分離は、保護されないアレイ・チップを露出させる。もう一つの欠点はアレイ・チップがそれぞれの反応容器と結合していない場合、結果の追跡可能性が不連続になることである。
【0011】
US 5538849には、いくつかの容器を含むラックを一度に機器を通して輸送することが開示されている。これは柔軟性に欠ける。反応容器はアレイ・チップを含まず、記載されたプロセスはアレイ・チップ用途に関連した必要性を考慮していない。
【0012】
US 5215714には、可逆的に回転できるローターでのハイブリダイゼーション及び混合が開示されている。ここで開示されている方法及び反応容器はアレイ・チップを含まない。さらに、このようなローターでの混合は非効率的である。
【0013】
現在知られている機器は、特に分析フォーマットの柔軟性、自動クロック化ワークフロー、デバイス操作の信頼性、チップの保護、精密なチップの位置決め、使用し易さ、及び機器のローディング、に関して、チップを含むデバイスの適切かつ迅速な処理ができないという欠点がある。既存の機器は、クロック化処理で使用するのに制約があり、特別な用途に焦点を合わせている。
【0014】
本発明は、集積された機器におけるマイクロアレイ又はチップに基づく試験手順の操作及び制御の改良に向けられている。
【発明の開示】
【0015】
発明の要約
第一の実施形態では、本発明は固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスを効率的に処理するための機器に向けられ、この機器は、サンプルインプットステーション、一つ以上の処理ステーション、検出ステーション、及びトランスファーモジュールを具備し、一つ以上の前記処理ステーションは前記分析デバイスを収容するための凹所を含むシェーカー・ユニットを含み、前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有することを特徴とする。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、試料における一つ以上の被分析物を測定するための診断システムに向けられ、この診断システムは、サンプルインプットステーション、固定された結合試薬を含むデバイスを収容するための一つ以上の凹所を備えたシェーカー・ユニットを含み前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有する少なくとも一つの処理ステーション、検出ステーション及びトランスファーモジュール、及び一つ以上の前記デバイスを含む機器を具備する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、機器を用いて試料中の一つ以上の被分析物を測定する方法に向けられ、この方法は、サンプルインプットデバイス内の試料を前記機器のインプットステーションに挿入する工程、固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを前記機器の使い捨てインプットステーションに挿入する工程、試料を結合ステーション及び検出ステーションを経て輸送する制御された自動手順であって、
−試料を前記デバイスの一つに移す工程、
−前記デバイスに試薬を移す工程、
−前記デバイスを前記結合ステーションに輸送する工程、
−前記結合ステーション内の前記デバイスを、測定される被分析物が前記結合試薬と結合することを可能にする条件に保つ工程、
−デバイスから液体を除去する工程、
−洗浄液を該デバイスに加え、該デバイスから除去する工程、
−前記デバイスに染色バッファーを加え、除去する工程、
−洗浄液を該デバイスに加え、該デバイスから除去する工程、
−前記デバイスを前記検出ステーションに輸送する工程、及び
−前記結合試薬への前記被分析物の結合に基づいて信号を検出する工程、
を含む手順をスタートさせる工程、及び前記信号に基づいて被分析物を測定する工程、を含む。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを自動的に処理する方法に向けられ、この方法は、
−一つ以上の処理ステーションを含む機器を用意する工程、
−固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを前記機器の使い捨てインプットステーションに用意する工程、
−試料を前記機器のサンプルインプットステーションに用意する工程、
−前記機器を経て前記デバイスを輸送する制御された、自動化された手順であって、
−試料を前記デバイスに移す工程、
−試薬を前記デバイスに移す工程、
−前記デバイスを前記処理ステーションに輸送する工程、及び
−前記デバイスを前記処理ステーション内に前記処理を可能にする条件の下に保つ工程、
を含む手順をスタートさせる工程、
を含み、前記デバイスが前記処理ステーションのシェーカー・ユニットの凹所で処理の間振盪され、前記凹所は前記デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有することを特徴とする。
【0019】
発明の詳細な説明
表面上で試料の成分を分析するチップは、例えばEP 0 476 014から周知である。通常これらは、ガラス、又は試料及び試料若しくはその成分と反応させるために用いられる試薬に対して不活性なその他の材料から作られる平坦なプレートである。その一方の面は、存在する場合、分析される試料の成分と結合するように設計された試薬で少なくとも部分的にコーティングされている。前記試薬で被われた面の面積は約4 mm2〜約2 cm2である。被われた表面は平坦であることが好ましい。結合試薬は分析される成分に対して特異的であることが好ましい。抗体を測定する場合、結合試薬は、その抗体と結合する抗原であってもよい。核酸の分析では、結合試薬は、その核酸とハイブリダイズできる配列を含む核酸であってもよい。核酸の場合、表面に固定される核酸は通常、オリゴヌクレオチド、すなわち、化学的に合成されたポリヌクレオチドである。これらを合成する方法は、EP 0 476 014に開示されている。デバイスで測定しようとする被分析物の数に応じて、対応する数の異なる結合試薬が表面に固定される。試薬は、幾何的に固定された一定の方法で適当に配置される。好ましくは10以上、さらに好ましくは100から100万までの、異なる結合試薬が一つのチップに固定される。そのような配置は、しばしばアレイと呼ばれる。
【0020】
チップは、キャビティー内部に向いたチップ表面に対して生成される又は結合される信号を検出するための放射に対して透過的であることが好ましい。
【0021】
本発明によるデバイスは、好ましくは分析デバイスであり、好ましくは、底壁、側壁、及びキャップ又はシーリングで閉じることができる上方開口を含む略管状の本体を有する。結合試薬は、試料がアクセスできるように本体に、好ましくは上述のようなチップに固定される。本体は、体積が10μl〜800μl、好ましくは20μl〜200μlのキャビティーを有する。当該キャビティーは、液体、例えば試料液体を処理するためのプロセス・チャンバーとして用いられる。したがって、キャビティーはデバイスで処理しようとする試料流体の体積と少なくとも同じ大きさになるように設計される。好ましくは、チャンバーの体積は処理しようとする試料流体の体積より少なくとも10%大きい。加えられる試薬のための余分の体積も考慮する必要がある。さらに、キャビティーは、試料液体が結合試薬に十分に接触するような形態を有する。チップの表面に固定される試薬の場合、チップはデバイスの側壁の一つに、試料液体及び/又は試薬を吸い上げて放出するピペット器具が表面に接触して損傷することなくキャビティーにアクセスできるように配置される。キャビティーの形は、結合試薬を担持する表面からキャビティーの最も近い対向壁まで少なくとも1.5 mmの距離があるようになっている。好ましくは、キャビティーはチップの領域で少なくとも3 mmの直径を有する。底面から上方開口までのキャビティーの長さは少なくとも5 mmであり、好ましくは6 mm〜20 mmである。
【0022】
ある好ましい実施形態では、キャビティーは、等しい又は同じオーダーの大きさの側長を有する直方体(cuboid)の形である。その場合、直方体の側長は3 mm以上である。
【0023】
本発明のある好ましい実施形態では、上述のデバイスは直立姿勢で使用されるように設計される。このことは、管状本体の一端が恒久的に閉じた底端であるということを意味する。試薬を含むチップは管状本体の下半分に位置する。管状本体の他端は開口を含む。デバイスを使用する場合、この端は好ましくは上端であり、したがって開口は上方開口と呼ばれる。上方開口は、キャビティーにいずれかの液体、例えば試料及び試薬液体を導入するために用いられる。ねじ止めキャップを用いて開口を閉じることが可能であるが、非常に好ましい実施形態は、穿刺可能な膜を用いて開口を閉じる。このような穿刺可能な膜は、シリコーンとポリマーから成る群から選択することができる。最も好ましいのは、エラストマーなどの自然封止(self sealing)物質であり、最も好ましくはTPE(熱可塑エラストマー、メルト加工性ゴム)である。穿刺した場合、この物質は60℃で16時間熱したときに90%以上の液体を保持する。キャップは2-成分射出成形によって製造されることが好ましい。処理チャンバーに面する領域のキャップ直径がこの領域のチャンバー内径よりも少し大きく、チャンバーの内径に対してわずかな圧力が維持されるようになっていると、処理チャンバーへの完全なフィットが達成される。
【0024】
デバイスはまた、デバイスを、デバイスに保持されるチップと共に、デバイス・ホルダー又は他のデバイス・インターフェースに対して正確に位置決めするための第一の3-次元係合エレメント(23)を具備する。これらの第一の係合エレメントは、デバイスのすべての自由度が固定され、キャリアの活性表面の位置が、処理、検出、及びデバイスの組立のさいにデバイスに対して規定されるようにデバイス上に配置されている。3-次元という用語は、エレメントが平面又はエッジだけではないことを反映させることを意図している。上記エレメントは、好ましくは、デバイスの表面又はエッジから、あるいは表面又はエッジに形成される溝、凹所、突出部、ノーズ、及び、突起から成る群から選択される。エレメントは、好ましくはデバイスの本体と同じ物質から作られ、好ましくはデバイスと一体化される。第一の3-次元係合エレメントの形は、機器のいわゆる第一の3-次元構成エレメントと係合してデバイスを位置決めできるように選ばれる。
【0025】
機器における識別とプロセス制御のために、デバイスはラベリング、例えばバーコードによるラベリングのための平面の印刷可能スペース(5)を、ラベリング・プロセスがキャリア自身又はキャリアの固定プロセスと干渉せず、デバイス組立プロセスの間又はその後で行うことができるように、一体化された部分として含む。ある好ましい実施形態では、自動化及び組立プロセスのために、印刷可能スペースはデバイスのキャリアと同じ面にある。
【0026】
ある好ましい実施形態では、デバイスは第二の3-次元係合エレメント(22)を含む。これらの第二のエレメントは、上述の第一の係合エレメントの存在と独立に存在する。第二の係合エレメントは、計測(instrumentation)、自動化、又は組立のためにデバイスをピックアップして輸送するように設計される。適切にアクセスできるように、これらは好ましくは第一の係合エレメントと異なる場所に、好ましくはデバイスの本体の別の側に配置される。最も好ましくは、これらはデバイスの上方部分に、好ましくはデバイスの側面で対向する位置にある対で配置される。これらの第二の係合エレメントは、キャリア自身、デバイス組立プロセス、及びデバイス開口を通る液体の印加に影響が無いように配置される。上記エレメントは、好ましくは、デバイスの表面又はエッジから、あるいは表面又はエッジに形成される溝、凹所、突出部、ノーズ、及び、突起から成る群から選択される。3-次元という用語は、エレメントが平面又はエッジだけではないことを反映させることを意図している。この手段はデバイス上のアクセス可能な場所に、前記デバイスをピックアップして輸送するように設計された機器の第二の3-次元構成エレメント、例えばグリッピング・デバイスなど、との係合が可能になるように形成される。第二の3-次元構成エレメントは、デバイス上の3-次元係合エレメントと形が適合するように構成される。最も好ましくは、係合エレメントはデバイスの表面における溝である。この溝は、好ましくは0.1から5 mmの間の深さで、好ましくは表面の0.01から0.5 cm2の間の面積をカバーする。係合エレメントは、好ましくはデバイスの上方部分に、すなわち、上方開口に近い半分に含まれる。図1には、第二の3-次元係合エレメント22の例が示されている。別の第一の3-次元係合エレメントは、デバイスの反対側に隠れている。
【0027】
図1には、本発明による機器と組み合わせたときに特に有用なデバイスが示されている。デバイス(1)は、デバイスの下方部分に配置されたチップ(2)を有し、フレーム(4)を用いてチップをシーリングリム(sealing rim)に圧しつけている。デバイスの上方部分の表面(5)は、ラベル、例えばバーコード、を取り付けるためのスペースを提供する。キャップ(3)がデバイスの上方開口を閉じている。第一の3-次元係合手段(23)はデバイスの上方部分に位置している。ある好ましい実施形態では、本発明のデバイスはEP 1 419 821によるデバイスであり、この特許は前記デバイスの特性と製造を開示するために参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、デバイスの上方部分は上述のように変更されることが好ましい。
【0028】
上方開口の特別なデザインには、大きな利点があり、特に結合試薬が固定されたチップを含む分析デバイスにおける試料の自動処理に有用である。本発明は、機器内部でのデバイスの正確な位置決めがチップに基づく分析を用いる自動化された手順の実質的な必要条件であることを見出した。すなわち、正確な位置決めによって、デバイス又はチップの表面の不正確な位置決めを計算で補償するための長時間にわたるソフトウェア手順を回避できるからである。
【0029】
本発明によるサンプルインプットステーションは、試料を機器に導入するための機器の部分である。通常、サンプルインプットステーションは、一つ以上のサンプルインプットデバイス、例えば試料を含む容器、を含むコンテナを受け入れる位置を規定する。これらの位置は、機器が規定された試料を受け入れる各位置を認識するように規定される。この試料は、機器に試料が入る前に、又はその後で、又はそれと同時に読みとることができるバーコード・ラベルなどのラベルによって優先的に認識される。これは、サンプルインプットステーションに隣接して、又はその内部に配置されたリーダー(読み取り装置)によって行われる。本発明では、試料収容ステーションは少なくとも4つの試料容器を、好ましくは少なくとも8つの、さらに好ましくは8〜96の試料容器を、受け入れるための位置を有する。このようにして、機器は対応する大きな数の試料流体を、機器の内部で起こっている他のプロセスを停止せずに操作することができる。
【0030】
本発明における試料は、分析を行おうとするどんな液体であってもよい。通常、試料は、ヒトの体から取られた流体、例えば尿、痰、血液、などの液体、又はそれから得られた流体、例えば血清や血漿、である。好ましい試料は、上述のような流体を、分析しやすいようにさらに予備処理したものである。予備処理工程は、成分の単離の群、試料からの成分の除去、濃縮、希釈、及び試薬の追加、成分の増幅、及び成分の溶解、に関して選ばれる。これらの予備処理工程は、人の手で行ったものでもよく、別の機器で行っても、同じ機器で行ってもよい。従って、サンプルインプットステーションはまた、同じ機器における前の処理ステーションのアウトプットステーションであってもよい。
【0031】
検出ステーションは、試料を刺激した後に試料から受ける信号を検出する装置を具備している機器の部分である。試料を刺激する手段は、電磁放射による照射、例えばデバイス内の成分を励起するのに適当な光による照射を含み、これは被分析物の存在、不在、又は存在量、の目安である。ある好ましい実施形態では、光を用いてプローブに付着したラベルを励起する。信号、すなわちデバイスから戻ってきた光が既知の被分析物を含む試料から受ける基準信号と比較される。さらに好ましい実施形態では、キャビティーの内側に向いたチップの表面が走査され、信号及び信号を示す場所、及び各場所から受ける信号の強度、が決定される。これらの検出器は、また、共焦点走査型顕微鏡デバイスを含むこともある。適当な走査型検出器は当業者に広く知られている。デバイスの3-次元構成エレメントは、検出ステーションにおいてデバイスを位置決めするのに特に有用である。例えば、表面の走査は正確な位置決めにきわめて敏感である。走査プロセスでは、静的に確定した無圧力の形態で支持されるチップからの信頼できる信号が得られることが好ましい。
【0032】
本発明によるトランスファーモジュールは、流体、例えば試料流体又は試薬又は洗浄バッファー、を移送する、又は/及び空の又は流体を入れたデバイスをある場所から別の場所へ輸送することを意図した機器の部分である。したがって、好ましいトランスファーモジュールは、液体操作ユニット、例えばピペット・チップ又は注射器を受けるソケット、又は/及びデバイス又はデバイスの一部と連動するグリッパー、などを含む。適当なトランスファーモジュールは、本発明によるデバイスを受容する、例えばピックアップする、グリッパーを含む。好ましくは、この受容はトランスファーモジュールの第二の3-次元構成エレメントがデバイスの第二の3-次元係合エレメントと嵌合することによって達成される。トランスファーモジュールは一つのデバイスだけを、又はいくつかのデバイスを一度にピックアップできる。好ましくは、移動は一つずつ、一定の繰り返される機器サイクルで行われる。この分野の異なるデバイスは個々のプロセス・工程の継続時間によって異なるステーションで異なる保持時間を有するので、これは作業フローにとってかなり利点になる。グリッパーの例はEP 0 907 083に記載されており、自動化されたデバイス輸送に好ましいグリッパーは図6に示されている。第二の実施形態では、分析デバイスから又は/及び分析デバイスへ流体を放出し吸引する第二のトランスファーモジュールがある。この場合、トランスファーモジュールは作業スペースの全体をカバーする必要はなく、その移動範囲はその一部に、例えば処理ステーションに限定される。一つ以上の吸引/放出デバイス、例えばピペッティング・ユニット、が各分析デバイスに一つずつ、並行して、又は引き続いて、又はその混合で動作することができる。処理ステーションでの並行ピペッティング・デバイスのケースは図3に示されている。
【0033】
使い捨てインプットステーションは、未使用のデバイス、例えば上述のような分析デバイス、を受け入れ収容する機器の部分である。未使用デバイスの汚染を避けるために、デバイスは処理ステーションから離れたステーションに格納されている。デバイスはトランスファーモジュールによって処理ステーションに運ばれ、液体、例えば試料又は試薬、を、好ましくは自動的な方法で受け入れる。
【0034】
処理ステーションは、分析プロセスの一つ以上の工程でデバイス(及びそれに入れられた液体)を処理するように設計された機器の部分である。それは、ステーション内の定められた位置に試料を入れたデバイスを維持するための位置を含む。適当な位置決め手段は、凹所など、デバイスの第一の3-次元係合エレメントに応じてデバイスのホルダーを規定する第一の3-次元構成エレメントである。非常に好ましいある実施形態では、処理ステーションはデバイス・キャリア(12)(以下でディスポキャリアと呼ばれる)を含み、これは分析デバイスを受け入れるための上方開口を有する凹所を含む。好ましくは、各処理ステーションは、単一又は連結したデバイス、最も好ましくは単一デバイス、を受け入れるための二つ以上の、好ましくは4〜48の自由にアクセス可能な凹所を有する。処理ステーションは、動作時にはステーションを開閉することなく規定された位置マークで上から直接に装荷(load)される。第一の3-次元構成エレメントの内側の形は、好ましくは、デバイスの第一の3-次元係合エレメントの外側の形を、少なくとも特定の処理ステーションで処理しようとするデバイスの部分でなぞり、処理の間にデバイスが処理ステーションから意図せずに脱出することができないようになっている。
【0035】
処理ステーションの意図した利用は、マイクロアレイによる試験のための典型的なパラメーター、例えば流体の送給、温度(加熱及び冷却)、及び混合など、の適用と制御を改善することである。処理ステーションは、一つの特定の目的を有し、例えば条件を整えハイブリダイゼーションを行うなど特定の目的を有し、洗浄工程は別のステーションで行うようにすることができるが、それを同じステーションで行うこともできる。本発明のある特別の様態は、コンセプトによって、同じコンセプトに基づいて二つ以上の処理ステーションで診断デバイスを操作することが可能になるということである。例えば、これらの処理ステーションでは、振盪が同じ技術的コンセプト、例えばデバイスの回転運動で行われ、液体の操作は同じコンセプト、例えばデバイスの膜を上から針で穿刺して前記デバイスへ前記の針を通して導入し、デバイスから液体を前記の針を通して取り出し、それぞれ前記デバイスが直立位置にあるときに行われる。これは、機器がきわめてフレキシブルになり、異なる処理ステーションにおいて異なる分析フォーマットを用い、異なる処理方式と滞留時間を有するいくつかの分析が同じ機器で操作できるという利点を有する。
【0036】
ある好ましい実施形態では、本発明による処理ステーションは加熱ユニットを備えている。この加熱ユニットは、処理ステーションに収容されたとき、分析デバイスとその内容物を、そのデバイスで行おうとする特定の処理に必要な温度に熱するように設計される。適当な加熱ユニットは公知であり、例えばペルチェ素子、ジュールヒーター、又は抵抗加熱装置、などである。加熱ユニットは温度制御エレメント、例えばデバイスの温度を決定する温度センサー又は/及び直接又は間接にそれに含まれる液体-、を含むことが特に好ましい。これは、液体の温度を特定の範囲内にコントロールして保つために必要なことがある。所望の温度を維持するために、ステーションはデバイスのまわりの断熱手段又は/及びヒーターを備えてもよい。そのような断熱手段は、ポリスチレン又はその他の断熱プラスチックから作ることができ、カバー内に収めることができる。ある好ましい実施形態では、図4を参照のこと、フレキシビリティーのために、処理ステーションはまた、異なる温度を用いる異なるセグメントで構成し、どのセグメントも断熱されるようにすることができる。一時的な温度変化を可能にするために、又は温度プロファイルを使用できるようにするために、処理ステーションは一つ以上の冷却ダクト(例えば図2の(21)を参照のこと)を備えることができる。冷却は公知の手段によって実行できるが、ダクトによってデバイスの外部との通気とデバイスの望ましい温度制御が得られることが好ましい。
【0037】
別の実施形態では、処理ステーションは冷却エレメントを備える。冷却エレメントもやはり一般に公知である。好ましくは、冷却エレメントは、冷却によって得られるはずの温度よりも低い温度の空気の流れを供給する処理ステーションの通気口を含む。冷却プロセスは、送風機などの機械的換気装置を設けることによって強化できる。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態では、処理ステーションはニードル・クリーナーを備えることができる。このデバイスは、同じ処理ステーションの凹所の近傍の近く、例えば10 cm以内のところに有利に配置される。ニードル・クリーナーは、デバイスから針を除去した後にデバイスの内容物から残渣の除去を可能にするデバイスである。この残渣は液体の操作に同じ針を用いる同じ処理ステーションのデバイスで行われる処理に擾乱を及ぼす可能性がある。ニードル・クリーナーは、当業者に一般に知られており、好ましくは針を洗浄液に入れ、その後洗浄液を除去するというものである。針の内側は、洗浄液を針の内側に吸い込み、廃水容器に吐出させることによってクリーンにすることができる。このクリーニング・プロセスは、必要に応じて繰り返し行うことができる。
【0039】
本発明の本質的な特徴として、処理ステーションはシェーカー・ユニットを具備している。デバイスの振盪は、結合、染色及び洗浄などのマイクロアレイに基づく典型的な処理を改善する。シェーカー・ユニットは、試料を入れたデバイスを振盪するために用いられる装置である。振盪は、デバイスを動かして内容物のコンパートメントが混合するようにするプロセスである。例えば、超音波をデバイスに印加することは、デバイスを動かさないので振盪とは見なされない。さらに、渦発生もデバイスを動かさないので振盪とは見なされない。好ましくは、シェーカーは機械的装置、例えばモーター、によって駆動される。好ましい運動は、少なくとも平面内(X-Y軸)の運動を含む。しかし、運動はそれと垂直方向(Z軸)の成分を含むこともある。さらに好ましくは、X-Y平面は地球重力に対して実質的に垂直である。さらに、X-Y平面は結合試薬がコーティングされた表面に対して実質的に垂直である。
【0040】
このような振盪を実現する方法はいくつかある。図2と3には、いくつかのデバイスを含む使い捨てデバイス(disposables)のキャリア(以下でディスポーザブル・キャリアと呼ぶ)の偏心運動を用いる実施形態が示されており、これは複雑なメカニズムを必要とする前後運動ではなく単純な連続回転運動を用いている。ドライブ(13)は回転軸を有し、それが駆動ベルト(8)を送り、さらにそれを用いて、例えば偏心部(eccentric)(9)によって、ディスポーザブル・キャリアに結合された第一の軸を回転させ、軸の回転がキャリアの偏心的なサイクリックな運動を生ずる。第二の軸が第一の軸と結合されて同じ周波数と振幅で動き、それによって完全なディスポーザブル・キャリアの円運動が生ずる。このデバイスを前記凹所におけるディスポキャリアに挿入できる(例えば、図2で(115)として示されている)。
【0041】
好ましい処理ステーションは、結合ステーション、染色ステーション、及び洗浄ステーション、から成る群、又はこれらの任意の組み合わせ、例えば結合と染色の組み合わせ、染色と洗浄の組み合わせ、結合と洗浄の組み合わせ、及び結合、染色及び洗浄の組み合わせステーション、から選択される。前記ステーションの設計はその機能によって決定される。すなわち、処理ステーションの機能は、結合、染色、及び洗浄という機能から選択される。これらの処理ステーションは上で指摘されたようないくつかの手段を必要とするが、すべての手段を必要とするわけではない。例えば、洗浄ステーションは、流体操作(例えば、吸引と放出)、混合、及び任意的に加熱、又は/及び冷却、を用いることがあり、結合ステーションは混合及び加熱、又は/及び冷却を必要とすることがあり、染色ステーションは混合及び加熱、又は/及び冷却を必要とすることがある。
【0042】
第一の好ましい実施形態では、処理ステーションは結合ステーションである。結合ステーションは、好ましくは、試料のコンポーネントとデバイスに固定された一つ以上の結合試薬との効率的な結合に必要なすべての条件を提供する。効率的な結合は、好ましくは、試料と結合試薬をデバイスに送給し、デバイス内の流体を定められた温度に保つことによって行われる。核酸を捕捉プローブに結合させるために好ましい温度は20から95℃までの間、さらに好ましくは40から60℃までの間、にある。意図した温度にアクセスし制御するために、結合ステーションは加熱エレメント、冷却エレメントを有し、結合を促進し、反応時間を短くするためのシェーカーを備えていることが好ましい。デバイスを導入し取り出すため、及び流体を送給するためには、シェーカーの一定の精密な位置決めが必要である。
【0043】
図2に示された、ある好ましい実施形態では、結合ステーションは、熱伝導物質、好ましくは金属、最も好ましくはアルミニウム、で作られた、4つのデバイスのための凹所を含むディスポキャリア(12)、前記ディスポキャリアを囲む断熱部(11)、金属又はセラミックス加熱エレメントから作られたヒーター(10)、キャリアとヒーター内の冷却ダクト(21)、及び偏心部(9)によってキャリア(12)と結合されたシェーカー駆動部(6)を含む。
【0044】
第二の実施形態では、処理ステーションは染色ステーションである。染色は、デバイスに固定された結合試薬に結合したコンポーネントを可視化するプロセスである。これは主にコンポーネントが直接検出できず、別の試薬を用いて信号を発生する必要がある場合に用いられる。このような試薬は、デバイスに結合したコンポーネントに結合できる化合物である。ある分析の例では、分析される試料のコンポーネントはビオチンでラベルされた核酸である。この場合、染色は、試料とアビジン又はストレプトアビジンの接合体(conjugate)と蛍光ラベルをデバイスに送給し、デバイス内の流体を定められた温度に保つことによって行われる。好ましい温度は、20と60℃の間、さらに好ましくは20と40℃の間である。ビオチンと(ストレプト)アビジンの結合反応が完了した後、生じた錯体が蛍光特性を有する。意図した温度にアクセスし制御するために、染色ステーションは加熱エレメント、冷却エレメントを有し、染色を促進し反応時間を短くするためにシェーカーを備えていることが好ましい。デバイスの導入と取り出し、及び流体の送給のためには、シェーカーの定められた精密な位置決めが必要である。
【0045】
第三の実施形態では、処理ステーションは図3に示されているような洗浄ステーションである。洗浄は、結合したコンポーネントから試料の望まれないコンポーネントを除去するプロセスである。これを実行するために、結合反応が完了した後、液体をデバイスから除去するが、結合試薬によって結合されたコンポーネントはデバイスに残される。洗浄液をデバイスに加えて、まだデバイスに付着して残っている望ましくないコンポーネントをさらに希釈する。洗浄液を望ましくないコンポーネントと一緒にデバイスから除去する。このプロセスは必要なだけ頻繁に繰り返して望ましくないコンポーネントを意図した被分析物の測定に邪魔にならない濃度まで除去する。洗浄及び希釈プロセスを促進し制御するために、そして必要な洗浄サイクルを減らすために、洗浄ステーションにはシェーカーが備えられる。デバイスの導入と取り出し、及び流体の送給は一定の精密なシェーカー位置決めを必要とする。洗浄液は、測定使用とする被分析物の結合に実質的に影響しない化学的な構成を有する。効率的な自動化された処理のために、多重ニードル・モジュール(17)が垂直キャリエージ(14)に搭載され、駆動部(15)で動かされる。異なるプローブの間又は異なる分析工程の間又は他の液体との間で可能な汚染の影響をなくすために、そして洗浄希釈を最適化するために、ニードル・モジュール(17)を各工程でニードル・クリーニング・モジュール(19)によってクリーニングすることができる。これは、アダプター、すなわち、ポンプ又はドッキング・ステーションによる流体交換に基づくマイクロアレイ・プロセスに比べて顕著な改善になる。意図した温度にアクセスし制御するために、洗浄ステーションは加熱エレメントと冷却エレメントを有することが好ましい。
【0046】
本発明の一つの利点は、固定された結合試薬を含むデバイスで信頼できる効率的な結合、染色、又は洗浄を可能にすることである。特に、一つより多くのデバイスで並行分析に実質的な差なしにこれらの利点を実現することが可能である。また、本発明は使い捨てキャリアの精密な定められた運動と位置決めを可能にするが、それはデバイスの操作と処理の自動化に有利である。
【0047】
本発明による機器の例が図4と図5に示されている。
【0048】
本発明の別の対象は、試料における一つ以上の被分析物を測定する方法であって、
−サンプルインプットデバイスにおける試料を前記機器のインプットステーションに挿入する工程;
−固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを前記機器の使い捨てインプットステーションに挿入する工程;
−試料を結合ステーション及び検出ステーションを通して輸送する以下の工程を含む制御された自動手順をスタートさせる工程;
−試料を前記デバイスの一つに移す工程;
−試薬を前記デバイスに移す工程;
−前記デバイスを前記結合ステーションに輸送する工程;
−前記結合ステーション内の前記デバイスを、測定しようとする被分析物の前記結合試薬との結合を可能にする条件下に保つ工程;
−液体をデバイスから除去する工程;
−デバイスに洗浄液を加え、デバイスからそれを除去する工程;
−前記デバイスを前記検出工程に輸送する工程;
−前記被分析物の前記結合試薬との結合に基づく信号を検出する工程;及び
−前記信号に基づいて被分析物を測定する工程;
を含む方法である。
【0049】
本発明の別の実施形態は、上述のような機器又はシステムを用いて試料中の一つ以上の被分析物を測定する方法である。
【0050】
表面に固定された試薬、例えばプローブ、のアレイを含むチップ・テクノロジーに基づいて試料中の被分析物を測定する方法は一般に当業者に公知である。広範な種類のチップが、Affymetrix Corporationなどの会社から商業的に提供されている。一般に、最も好適な方法は、測定される核酸に含まれる配列を特異的又は非特異的に増幅するための、試料に含まれる被分析物の前処理を含む。このような増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて好適に行われる。プライマーの配列の選択が、どの被分析配列が増幅され、後に決定できるかを決める。その他の方法としては、試料からの特定の核酸配列のin vitro又はin vivo発現を含む。そのような方法も良く知られている。
【0051】
さらに、本発明による試料の前処理は、決定しようとする被分析物、例えば測定される核酸、のラベリング、すなわち、本発明による機器で検出できる信号を提供できるラベルによるラベリングを含む。適当なラベル、及び被分析物にそのラベルを付着させる方法は当業者には周知である。
【0052】
本発明の方法によると、最初の工程で、被分析物(単数又は複数)又は前処理工程でそれから得られた化合物、例えば被分析物から得られた被増幅物又は発現産物、が以後の工程が行われる機器のインプットステーションに挿入される。試料は、好適に前処理の出力デバイスであるサンプルインプットデバイス、好ましくはチューブ、に入れられる。挿入は、人の手で行っても、機器によって、例えば機器のロボット・アームによって行っても良い。本発明で用いる機器で一つ以上の前処理工程が行われる場合、以後の工程で用いられるトランスファーモジュールを前処理工程で、又はサンプルインプットデバイスの挿入で好適に使用できる。
【0053】
本発明の方法を用いる分析デバイスは、試料と同じ機器の使い捨てインプットステーションに用意される。デバイスは、機器にサンプルインプットデバイスを提供する前に、それと同時に、又はその後で、機器に挿入できる。しかし、サンプルインプットデバイスと分析デバイスは、その後の自動手順をスタートさせる前に機器に用意されなければならない。分析デバイスは一つ以上のいわゆるラック、それぞれが適当な個数、例えば6〜50個、好ましくは8〜30個、のデバイスを収容するラック、に好適に用意される。これらのデバイスは異なっていても、又は同一の試薬が固定されていてもよい。好ましくは、本発明では、少なくとも二つの異なるデバイスが使い捨てインプットステーションに用意される。これらのデバイスは、デバイスに含まれるチップに固定された結合試薬の配列が異なる。例えば、一つのチップは発現プロファイルの決定のための配列を有するプローブを含み、他のデバイスは核酸増幅反応によって調製されたアンプリコン検出のためのプローブを含む。
【0054】
本発明による使い捨てインプットステーションは、本発明の方法で使用される一つ以上のディスポーザブル(disposables)がこの方法で使用できる状態で格納されているステーションである。このディスポーザブルは、ピペット・チップ、容器、及び固定された結合試薬を含む分析デバイス、から成る群から選択される。挿入は人の手で、又は自動的に行うことができる。
【0055】
本発明による方法の核心的な特徴は、結合ステーション及び検出ステーションを通る試料の輸送を含む制御された自動手順の実行にある。この自動手順は、さらに、試料又はそれから得られた産物の、好ましくは上記のような分析デバイスにおける輸送という工程を含む。後で説明するように、自動手順は、特定の方法に関して、必要な工程が自動化された方法で、実質的に人手の介入なしに行われるように制御される。
【0056】
最初の一連の工程は、試料と、被分析物又はそれから得られた化合物を結合させるために必要な試薬を分析デバイスに固定された試薬と接触させる状態を実現させるために行われる。この結果を達成するための工程の順序は本質的に重要でない。好ましくは、分析デバイスが結合ステーションに挿入され、次に試料がデバイスのキャビティーに導入され、次に試薬がデバイス中の試料に加えられる。好ましくは、結合ステーションへのデバイスの輸送は本発明の機器のトランスファーモジュールを用いて行われる。好ましくはトランスファーモジュールは、デバイスの3-次元係合エレメントによってデバイスを保持するための3-次元構成エレメントを備える。これらのエレメントの詳細に関しては、本発明による機器の記述が参照される。詳しくは、この工程の好ましいモードは、デバイスをトランスファーモジュールで把握する工程、それを垂直に(機器のZ-軸に沿って)持ち上げ、トランスファーモジュールを水平に(X-, Y-, 又はX-Y-方向に)機器の作業区域上を移動させ、次にデバイスを結合ステーションの凹所の上方開口を通って下げる(Z-方向に、垂直に)工程、を含む。次に、トランスファーモジュールはデバイスを解放して結合ステーションに残されるようにする。トランスファーモジュールは機器の異なる場所に好適に動かされる。この方法で二つ以上の分析デバイスが用いられる場合、トランスファーモジュールは別のデバイスを結合ステーションに含まれる別の凹所に輸送する。
【0057】
デバイスに試料又は試薬を移す工程は、第二のトランスファーモジュールで行うことができるが、好ましくは同じトランスファーモジュールによって行われる。試料又は試薬を移すためのトランスファーモジュールは、好ましくは液体移送デバイスを備える。本発明で有用な液体デバイスは、試料、試薬、洗浄液、又は反応混合物などの液体を、分析デバイスの中へ又は分析デバイスから吸引し放出することができる手段である。適当な液体移送デバイスは当業者には公知であり、試薬ピペッティング・ニードルやピペット・チップを含む。本発明の好ましい実施形態では、分析デバイスは穿刺可能な開口を含み、液体移送デバイスは、開口を閉じている穿刺可能な膜を穿刺できなければならない。したがって、この実施形態では鋼の針(ニードル)がきわめて好ましい。本発明の特に好ましいある実施形態は、デバイスを充填するときと洗浄するときに同じ液体操作手順を用いる、例えば、直立デバイスの穿刺可能な膜に針を通すことによる。
【0058】
試料をデバイスに移す工程は、好ましくはトランスファーモジュールを動かす工程を含み、好ましくは吸引放出ユニットを垂直に、機器の試料が位置している場所に動かす。それはサンプルインプットステーション、又は被分析物のラベリングなど何らかの前処理が行われたステーションである。試料はトランスファーモジュールに吸引され、分析デバイスの上方開口の上の位置に移動され、次に垂直に動かされて液体移送デバイスが結合ステーションに位置する分析デバイスに導入される。これは、下方に動くときに穿刺可能な膜の穿刺を含むことがある。
【0059】
同様に、結合プロセスに必要な試薬も液体移送デバイスを用いて吸引され放出される。このプロセスでは、同じ又は異なる液体移送デバイスを用いることができる。しかし、試料を移送した後に試薬を移送する場合、液体移送デバイスは、使い捨てピペット・チップの場合のように交換するか、又は使用できる液体移送デバイス、例えば鋼の針など、の場合には徹底的にクリーニングしなければならない。クリーニング・モジュールは一般に公知であり、それを結合ステーション上に、又は機器の別の場所に配置し、液体の移送に用いられるトランスファーモジュールでアクセスすることができる。
【0060】
移動及び輸送工程の間、結合ステーションでは振盪プロセスは行われない。これは、定められた繰り返される機器サイクルに従って制御をプログラムすることによって達成される。この機器サイクルはクロック化することが好ましい。本発明におけるクロック化(clocked)という用語は、ある特定処理ステーションにおける、さらに好ましくは機器のすべての処理ステーションにおいて、全体的な処理時間が、いろいろな処理ステーションで同じ時間に始まって終わる実質的に同じ長さの一定インターバルで分割されるということを意味する。機器サイクルは、そのインターバルのある予め定められた時間にあるアクションを許すようにプログラムされる。これは、機器サイクルはある与えられた処理ステーションで同一であっても、その機器サイクルで行われるアクションは、分析の条件によって、特に分析のフォーマットによって、異なるということを意味する。
【0061】
測定する被分析物をデバイスに固定された試薬に結合するために、デバイスは結合ステーションで測定する被分析物と試薬の結合を可能にする条件の下に保たれる。本発明の方法では、この工程が少なくとも1期間、結合ステーションでデバイスを振盪する工程を含むことがきわめて好ましい。このために、結合ステーションは振盪されるようになっており、したがってシェーカー・ユニットとして働く。
【0062】
本発明による振盪プロセスはいくつかの方法で行うことができる。好ましくは、機械的駆動部に、10〜50 ヘルツの周波数での振盪を可能にするシェーカー・ユニットが備えられる。振盪に用いられる振幅という点で、好ましくは、機械的駆動部は0.1〜10 mmの振幅での振盪を可能にする。好ましくは、シェーカー・ユニットはそのデバイスを予め定められた経路で導く駆動ユニットを含む。前記経路は、円形経路又は楕円形経路である。
【0063】
振盪プロセスは、好ましくはコンピューター・プログラムによって制御される。コンピューター・プログラムは、シェーカー・ユニットにおける振盪期間のインターバルを誘導する。さらに好ましくは、振盪期間と休止期間のインターバルは規則的である。これらのインターバルの長さは1〜1000秒である。好ましくは、インターバルの長さは1〜60秒、最も好ましくは5〜20秒である。好ましくは、振盪期間は、休止期間よりも短い。振盪期間の好ましい長さは、1〜200秒、さらに好ましくは2〜60秒、最も好ましくは3〜20秒である。休止期間の好ましい長さは、2〜200秒、さらに好ましくは5〜60秒、最も好ましくは10〜30秒である。明らかに、振盪期間の後には休止期間が続き、それに今度はさらに振盪期間が続く。好ましくは2から20回までの、さらに好ましくは3から10回までの、最も好ましくは4から8回までのインターバル、それぞれ振盪期間と休止期間を含むインターバル、が行われる。振盪期間と休止期間は全体的な機器サイクルに埋め込まれる。
【0064】
図7の上方部分は、一連の振盪期間(201)と休止期間(202)の例が示されている。振盪が停止している時間(すなわち、休止期間)には、移送アクション、例えば試料を結合ステーションの凹所に位置するデバイスに移すアクション、又はデバイスを処理ステーションに輸送するアクション、又はデバイスから液体を取り出すアクション、又はデバイスを処理ステーションから取り出すアクション、などを行うことができる。重要なことは、休止期間で分析デバイスが予め定められた位置に配置されているように、シェーカー・ユニットが制御されることである。これによって、トランスファーモジュールは処理ステーションの分析デバイスに自由にアクセスすることができ、何も葛藤が生じない。このためには、各処理ユニットのシェーカー・ユニットにおける分析デバイスの正確な位置決めが必要である。デバイスの第一次元係合エレメント及び/又はシェーカー・ユニットの第一次元構成エレメントによってこれを助けることが好ましい。最も好ましいのは、シェーカー駆動部に、ある処理ステーションにおけるすべての分析デバイスが、トランスファーモジュールがそれに上からアクセスできるように配置される定められた位置があり、好ましくはグリッパー又は吸引/放出デバイスのすぐ下にあり、トランスファーモジュールがデバイスにアプローチするのに垂直運動(Z-軸)だけしか必要でないようにすることである。
【0065】
試料を結合ステーションにおいてデバイスに固定された試薬と共に十分にインキュベートした後、液体がデバイスから除去される。固定された結合試薬に結合した被分析物は、この工程でデバイス中に残される。このような液体の除去を上から行うために、デバイスは結合ステーションから機器の別の位置へ輸送されるか、又は結合ステーションの凹所に保持される。液体の除去は、好ましくは、トランスファーモジュールを用いて、さらに好ましくは試料と試薬を移送するためにも用いられたトランスファーモジュールを用いて行われる。したがって、同じ一般的な指示が液体の除去にもあてはまる。具体的に言うと、液体移送デバイスがデバイスの上方開口を通してデバイスのキャビティーに挿入され、液体が吸引され、液体移送デバイスが上方へ動かされ、液体の廃棄を、例えば廃棄物容器に、行うことができる位置まで移動され、もしも再使用するつもりがアレイば液体移送デバイスを洗浄する。
【0066】
液体の除去後、洗浄液がデバイスに加えられる。このような洗浄液は一般に公知である。これらは、液体が被分析物の結合試薬との結合を損なうことがなく、しかし、結合試薬によって結合されることを意図していないすべてのコンポーネント、例えばチップに固定されたプローブによって結合されることを意図していない核酸、を溶解するように選ばれる。
【0067】
結合されることを意図していないコンポーネントは、洗浄液と共に、上述のような吸引/放出工程によってデバイスから除去される。デバイス中の望まれない成分の十分な除去のために必要なだけの数の洗浄工程を行うことができる。
【0068】
任意的な工程として、デバイスとその中に固定されたコンポーネントは結合した被分析物を染色するための試薬によって処理される。これは、結合が起こった処理ステーションで行っても、別の処理ステーションで行っても良い。染色反応が行われるステーションは結合又は洗浄などの機能がその他にそこで行われるかどうかに関わりなく染色ステーションと呼ばれる。一般にチップで固定された被分析物の染色は周知である。通常、バッファーに溶解された染色試薬が結合した被分析物に加えられる。染料は何らかの化学又は酵素化合物で、その後の検出工程で検出できる又は検出可能にできるものである。適当な染料は、例えば、検出可能な又は検出可能にすることができる化合物によって標識(ラベル)された被分析物に結合できる蛍光化合物(単数又は複数)である。染色試薬を含む液体、以下で「染色バッファー」と呼ばれるもの、は結合試薬との被分析物の結合を実質的に損なわないように設計される。
【0069】
洗浄液の添加と除去と同様に、染色バッファーもトランスファーモジュールを用いてデバイスに加えられ、デバイスから除去される。
【0070】
被分析物の存在によって生じたものではない信号をシミュレートする余剰な染色バッファーを完全に除去するために、デバイスには上述のような洗浄手順が施される。
【0071】
染色手順は、結合ステーションとは別の処理ステーションで行われることが好ましい。結合、特にハイブリダイゼーション・工程を行うステーションを染色手順を行うステーションから分離することによって、機器による試料の処理量が顕著に増加することが見出された。これは特に、二つ以上の被分析物が、特に異なる分析フォーマットによる測定が同じ機器で行われる場合にあてはまる。
【0072】
さらに、本発明は、好適な方法でそのような処理量を達成するためには、手順を自動化して、それをコンピューター・プログラムによって制御することが好ましいことを見出した。さらに好ましくは、そのコンピューター・プログラムは、シェーカー・ユニットにおける振盪期間と休止期間の規則的インターバルを発生させることを特徴とする。これらのインターバルは関連するいろいろなステーションで「ずれていない」ことが最も好ましい。本発明において「ずれていない」(in register)とは、同じ及び異なる処理ステーションにおける機器サイクルが同じ時点にスタートするということを意味する。例えば、規則的なインターバルを用いることは、あるステーションから別のステーションへのトランスファーモジュールによる液体及び分析デバイスの移動を容易にする。インターバルは比較的短く保たれ、休止期間の間の柔軟な移動と輸送を可能にする。したがって、移動又は輸送がそこから行われるステーションと、そこへの移動又は輸送を意図しているステーションの休止期間が時間的に重なりを有することが好ましい。さらに、振盪期間が同じ長さを有し、休止期間も同様であり、振盪期間が休止期間よりも短いことが好ましい。デバイスの振盪は、デバイスの内容物が混合されるという効果を有する。すなわち、振盪という用語は、実質的に混合という用語と同じである。さらに、以下で待機期間と呼ばれる期間があり、その期間には振盪/混合も他のどんなアクションも同じデバイスに行われない期間があることが好ましい。この期間は、トランスファーモジュールが他のアクションを行っており実際のデバイスにアクションをする用意ができていないという理由、又はモジュールの変更が行われており、例えばグリッパーがデバイスから離れ、吸引/放出デバイスがそのデバイスに接近しているという理由があるのかもしれない。しかし、待機期間はまた、デバイス中の液体をデバイス中の試薬と共に又はデバイスと共にインキュベートするという目的のためであるかもしれない。あるいは、機器サイクルにおいてスケジュールにある特定アクションがその特定サイクルにその特定デバイスには不要であるために、待機期間が必要になることもある。
【0073】
図7には、振盪(シェーカー・ユニットによる)、デバイス輸送(トランスファーモジュール上のグリッパーによる)、流体輸送(トランスファーモジュールのピペットによる)、及び洗浄(トランスファーモジュールの針による吸い上げと吐き出し)という群から選択されるアクションのスキームが示されている。持続時間が60秒の機器サイクルが示されている。このスキームは一つの選ばれた処理ステーション、ここでは洗浄ステーション、の一つの選ばれた凹所におけるアクションを示している。この洗浄ステーションで行われるアクションは、デバイスを凹所に入れること、洗浄液を導入すること、デバイスを振盪して効率的な洗浄を可能にすること、汚染を含む洗浄液を除去すること、及びデバイスを取り出すこと、である。
【0074】
図7の下方部分には、振盪期間と休止期間の例を示すダイアグラムが示されている。「オン」期間(201)では、シェーカー・ユニットによる混合が処理ステーションで行われ、「オフ」期間では、デバイスは振盪されずに処理ステーションの定められた位置にとどまる。見られるように、各振盪期間は同じ長さを有し、休止期間も同様であるが、これは振盪期間の長さと異なる。
【0075】
図7の上方部分には、機器サイクルのどの時刻(秒)にどのアクションが行われるかが示されている。灰色の区域は特定モジュールのアクションを示す。例えば、この例示サイクルは5秒の混合(振盪期間)からスタートする。その後、上記のアクションから選択されるどのアクションも行われない。次に、休止期間が続き、2秒間でデバイスがインキュベーターから取り出される、すなわち、インキュベーターがアンロードされ、デバイスが別のステーション、例えば別の処理ステーション、に輸送される。同じ休止期間に処理ステーションに新しいデバイスをロード又は再ロードできる。図7に示されている例では、4秒後に新しいデバイスをその処理ステーションに導入できる。第21秒から先、2秒間、洗浄液をデバイスのチャンバーに移すことができる。次の3休止期間の間、デバイスはインキュベーター内で洗浄ユニットによる洗浄を受けられる(注射器に結合された針を用いてデバイスのチャンバーに及びチャンバーから、洗浄液を完全に又は部分的に吸い上げ及び吐き出す)。この機器サイクルの終わりに、別の機器サイクルが同じ凹所デスタートする(機器で行われるべきタスクが完了するまで)。次のこのサイクルでは、デバイスで行われるプロセス全体に応じ、特定の処理とデバイスの必要条件に従って、最初のサイクルで行われたプロセス・工程のいずれか又は全部を行うことができる。上記の洗浄ステーションの例では、新しい(未使用)洗浄液によって同じデバイスで洗浄プロセスを繰り返すことが要求されるかもしれない。したがって、第二サイクルでは、「アンロード輸送」及び「ロード輸送」という工程は単純に省略される。これらのアクションのために留保されていた期間の間、何も特定のアクションは行われない。このサイクルの間の他のすべてのアクションは、前のサイクルと同様に行われる、すなわち、第21秒には新しい洗浄液が加えられ、休止期間の間、吸い上げと吐き出しによるアクティブな洗浄が行われ、振盪期間の間は振盪が行われる。汚染を除去するために必要な回数のサイクルを行った後、最後のサイクルの前のサイクルでは、デバイスから最後の洗浄液を廃棄物容器に移す。明らかに、このサイクルではそれ以上吸い上げと吐き出しの必要はない。最後のサイクルでは、第7秒にデバイスが次の処理ステーション、例えば検出ステーション、に輸送される。次のサイクルでは、第13秒からスタートして凹所に別のデバイスをロードできる。タスクによって、行われるサイクルの数は、前のデバイスの場合のサイクルの数と異なることがある。例では、吸い上げと吐き出しに用いられるサイクルの数は、以前に処理されたデバイスに比べて増加することも減少することもある。
【0076】
さらに、図7に示されたプロセスについて、デバイスが充填、ハイブリダイゼーション、及び洗浄の間デバイスが同じ処理ステーションにとどまるという形で別の好ましい動作モードも可能である。明らかに、このためには、処理ステーションの休止期間でさらにハイブリダイゼーションのために必要なアクションを可能にする特別なシーケンスが必要になる。そのようなプロセスは、好ましくは、第一のサイクルの休止期間の一つでデバイスへの同じ液体の移送を含み、その後のサイクルでデバイスからの試料液体(デバイスに結合したコンポーネントが失われているかもしれない)の移送を含む。これは、図7における「液体移送」と呼ばれる(そして洗浄液移送のために設計された)期間の間に好適に行うことができる。しかし、このような試料移送のために試料液体移送のための余分な期間を設けることが可能である。ハイブリダイゼーション手順が完了した後、洗浄手順を上述のような工程を用いて、同じ又は異なる凹所で行うことができる。
【0077】
染色ステーションでも同じ工程の組み合わせを行うことができる、すなわち、デバイスの表面を染色のための試薬と反応させること、そして余分な染色試薬からデバイスを洗浄することである。
【0078】
あるサイクルは、同一の機器アクションの間で必要な時間と作業のシーケンスを記述する。サイクルは可能なすべてのアクションを考慮し、すべての分析フォーマットのクロック化処理を機器で実行することを可能にする。サイクルは、機器で異なるデバイスで各診断試験に関して繰り返される。サイクルは、好ましくは、5秒から5分までの間の長さであるが、すべてのデバイスに対して同一である。しかし、異なる処理時間の異なる試験が機器で同時に行われる場合、各サイクルで各デバイスに対して行われるアクションは異なることがある。すなわち、すべての可能なアクションが各デバイスに対して行われるわけではない。サイクルの長さは、ハイブリダイゼーション、洗浄、及び検出などのデバイス処理のプロセス時間によって与えられ、プロセスは数サイクル続くこともある。その場合、処理ステーションはいくつかの凹所位置を必要とする。
【0079】
染色バッファーを除去した後、デバイスを検出ステーションに輸送することができる。検出ステーションは染色バッファー中の試薬を用いて直接又は間接に生成された信号を用いて、固定された結合試薬に結合した被分析物の検出を可能にするように設計される。好ましくは、検出ステーションは結合試薬との被分析物(単数又は複数)の結合に基づく信号を検出するためのスキャナーを含む。特に、このステーションでは、本発明のある好ましい実施形態で、3-次元係合エレメント、好ましくは第一の3-次元係合エレメント、が検出ステーションの3-次元構成エレメントと相互作用して分析デバイスを検出ステーション内に正確に位置決めすることが重要である。この位置決めは、垂直方向と水平方向の両方である。検出ステーションへの分析デバイスの輸送はやはりトランスファーモジュールによって、特にデバイスを第二の3-次元係合エレメントによって把握する3-次元構成エレメントを有するグリッパーによって行うことができる。将来は分析デバイス内の二つ以上のチップを並行してスキャンすることが可能になるかもしれないが、一度に一つの分析デバイスだけを信号検出に提供するというのが本発明の好ましい実施形態である。したがって、分析デバイスは互いに結合せず、本質的に単一デバイスで一度に一つずつ、好ましくは処理ステーションにおける振盪期間と休止期間に合わせて、検出ステーションに運ばれることがきわめて好ましい。単一デバイス処理を用いることは、また、アレイ・チップを含むデバイスが直接の追跡可能な試料結果の相関を可能にするという利点がある。
【0080】
デバイスから受け取る信号に基づいて被分析物を測定する工程は、当業者には完全に公知な手順に従って行われる。
【0081】
最後の工程で、分析デバイスは検出ステーションから廃棄物ステーションに移送された後に廃棄される。やはりこれも本発明による機器のトランスファーモジュールを用いて行うことができる。
【0082】
自動化されたプロセスはコンピューターによって制御されることが好ましい。コンピューターにはプログラムがロードされ、それがステーションで行われるいろいろな工程のスタートと終了を初期化する(initialize)。例えば、コンピューター・プログラムは振盪手順のスタートを開始させ、予め定められて格納されている振盪期間の終わりに振盪手順を終了させる。さらに、プログラムはトランスファーモジュールのX-, Y-及びZ-方向のいろいろな運動を開始させる。さらに、コンピューター・プログラムは移送ユニットの吸い上げ及び放出工程を制御する。このようなコンピューター・プログラムは、好ましくは、測定する各被分析物について及び用いる各フォーマットに関して異なる予め定められた手順を含む。プログラムは、測定する被分析物に関して、及びいくつかの分析フォーマットが利用できる場合、分析フォーマットの選択に関して、オペレーターからの入力を必要とする。このようなオペレーターからの情報は、キーボード又は感度の良いモニターによって、又は分析デバイス又はサンプルインプットデバイスで与えられる情報によって、入力される。このように、機器はサンプルインプットデバイス又は/及び分析デバイスの外側表面に含まれる情報を読みとるためのユニットを備えることが好ましい。これは、商業的に利用できるバーコード・ラベルとリーダー(reader)によって行うことができる。
【実施例】
【0083】
より完全な統合された手順では、本発明による方法は以下の工程を含む:
1.試料、試薬、及び診断デバイスをロードする
2.試料調製を実行する
3.時間が遅れる場合、試料を冷却して保持する
4.試料を診断デバイスへ移送する
5.ハイブリダイゼーション
6.洗浄
7.染色
8.洗浄
9.検出ステーションへ移送する
10.廃棄物ステーションへ移送する
【0084】
本発明の一つの利点は、処理ステーションにシェーカー・ユニットを備えることで、固定された結合試薬を含むデバイスにおける信頼できる効率的な結合、染色、又は洗浄が得られることである。本発明のいくつかの実施形態の別の利点は、プロセス全体が、特に一つの機器で異なる分析フォーマットが用いられる場合、従来技術におけるものよりも速やかになることである。
【0085】
本発明の別の対象は、固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスの自動化された処理のための方法であって:
−一つ以上の処理ステーションを含む機器を用意する工程、
−前記機器の使い捨てインプットステーションにおいて固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスを用意する工程、
−前記機器のサンプルインプットステーションに試料を用意する工程、
−前記機器を通して該分析デバイスを輸送する制御された自動化された手順であって、
−試料を前記デバイスに移す工程、
−試薬を前記デバイスに移す工程、
−前記デバイスを前記処理ステーションに輸送する工程、
−前記処理ステーションにおける前記デバイスを前記処理を可能にする条件の下に維持する工程、
を含む手順をスタートさせる工程、
を含み、前記デバイスが処理の間、前記処理ステーションのシェーカー・ユニットの凹所で振盪され、前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有することを特徴とする方法である。
【0086】
このプロセスのいろいろな工程は、上の説明で略述された。好ましくは、図4を参照して、本発明による固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスを処理する自動化された処理の方法は以下の工程を含む:
第一の工程で、試料は試料ローディングエリア(101)にロードされる。図4は、4つの離散的プレートで、各6つの凹所を有し各凹所に一つの試料を保持する24の試料容器を示す。このために、インキュベーターを開き、インキュベーターに試料・チューブをロードする。試薬は試薬貯蔵部(102)に収められた試薬ボトルから吸引される。必要なら試料・チューブが開かれる。試薬をピペットで取り、各試料チューブに放出する。チューブを開いた後に放出された場合、試料・チューブは閉じられる。針が洗浄される。次に、試料・チューブが40℃及び95℃までインキュベートされる。この工程の間、増幅された核酸は短いピースに形質転換される(分裂される)。染色工程では、以下の工程が行われる:インキュベーターが開かれ、試薬が吸引され、試料・チューブが開かれ、試薬が試料・チューブに放出され、又はチューブが穿刺可能なキャップで閉じられている場合、穿刺されたキャップを通してチューブ内に達する針によって試薬が加えられる。試料・チューブが前に開かれた場合はそれが閉じられ、針がチューブから除去され、針が洗浄される。混合物が40℃及び75℃までインキュベートされる。
【0087】
結合では、以下の工程が行われる:試料とハイブリダイゼーション・バッファーを取り、穿刺可能なキャップを通して使い捨てチップに充填し、デバイスをピックアップしてハイブリダイゼーション・ステーション(106)に入れ、60℃で16時間まで加熱し混合する。
【0088】
洗浄は次のように行われる:デバイスをピックアップして洗浄ステーション(107)に入れ、穿刺可能なキャップを通して洗浄バッファーAによって洗浄し(多数回)、洗浄手順の間混合し、毎回針を洗浄し、デバイスに染色バッファーを充填する。
【0089】
染色では、以下の工程が行われる:デバイスをピックアップして染色ステーション(109)に入れ、染色の間混合する。
【0090】
別の洗浄が次のように行われる:デバイスをピックアップして洗浄ステーション(107)に入れ、穿刺可能なキャップを通して洗浄バッファーBによって洗浄し(多数回)、洗浄手順の間混合し、毎回針を洗浄し、デバイスに染色バッファーを再び充填する。
【0091】
検出は、デバイスをピックアップしてスキャナー入口(108)に入れ、検出をスタートさせる。
【0092】
試料をデバイスに入れるための液体移送デバイスは試料を本発明の診断デバイスに供給するために用いられる機器の部分である。これは自動的に行われることが好ましい。好適な手段は、コンピューターで制御されるピペット手段である。そのようなピペット・デバイスは一般に公知であり、本発明で使用できる。好適には、このデバイスハ、ピペット・チップを受け入れるソケットと、ピペット・チップの内部に弱い真空を印加して、ピペット・チップの下方開口が試料と接触していれば試料がピペット・チップに吸い込まれるようにするポンプを含む。試料を吸引した後、このデバイスを本発明のデバイスに移動させ、ピペット・チップの先端を入口ポートを通して本発明のデバイスに挿入する。その後、液体が放出され、デバイスに入れられる。同じことが反応に必要などの試薬でも行われる。
【0093】
図5には、試料の好適な分析のためのすべてのエレメントを有する本発明による機器が示されている。図4に示されているような作業表面上のモジュールについては上で説明したが、図5には他のコンポーネントも示されている。移送ユニット(111)は作業表面の上にあって、必要に応じ上で説明したようにステーションにアクセスできる。廃棄物ユニット(112)は作業表面の下にあり、作業表面から流体及び固体の廃棄物、例えば分析デバイスなどの使用済みディスポーザブル、を受け入れる。コンピューター(113)も作業表面の下にあってプロセスを制御する。
【0094】
図6には、本発明によるトランスファーモジュールの詳細が、分析デバイス(1)で使用されている状態で示されている。グリッパーは3-次元構成エレメント(114)によってデバイスと係合し、それをあるステーションから別のステーションへ運ぶ。また処理ステーションにおける三つの凹所(115)が示されており、一つはすでにデバイスによって占められている。
【0095】
本発明のさらに別の対象は、機器を用いてデバイスにおける分析を行う方法であって、
−前記デバイスを前記機器の処理ステーションの凹所にロードすること、
−前記機器の処理ステーションの凹所に配置されたとき前記デバイスに液体を移すこと、
−前記機器の処理ステーションの凹所から前記デバイスをアンロードすること、及び
−前記機器の処理ステーションの凹所で前記デバイスを洗浄すること、
から成る群から選択される少なくとも二つのアクションを行うことによって少なくとも二つの振盪期間と少なくとも二つの休止期間の間前記機器において前記デバイスを処理する工程を含み、前記アクションが、実質的に同じ長さの反復される機器サイクル内で固定された重ならないアクション・期間で同じ凹所におけるデバイスに対して行われ、前記アクション・期間が前記振盪期間と重ならないことを特徴とする方法である。
【0096】
上で与えた定義は、本発明のこの様態にもあてはまる。振盪期間は、特定凹所におけるデバイスで振盪が行われる期間である。振盪プロセスは、デバイスに入れられた液体の混合を実現する。休止期間は、特定凹所におけるデバイスで振盪が行われない期間である。休止期間の間、ここで説明したようなアクションを行うことができる、例えば前記デバイスを前記機器の処理ステーションの凹所にロードすること(例えば、トランスファーモジュール上のグリッパーによって)、前記デバイスが前記機器の処理ステーションの凹所に配置されたときに前記デバイスに液体を移すこと(例えば、トランスファーモジュール上のピペットによって)、前記機器の処理ステーションの凹所から前記デバイスをアンロードすること(例えば、トランスファーモジュール上のグリッパーによって)、及び前記機器の処理ステーションの凹所で前記デバイスを洗浄すること(例えば、トランスファーモジュールの針による吸い上げと吐き出しによって)などである。休止期間の間、デバイスは機器及び処理ステーション内の予め定められた位置に、前記デバイスを処理するためのデバイス、例えばグリッパー又はピペット・チップ、がアクセスできるように配置される。
【0097】
好ましくは、振盪期間は同じ長さを有し、休止期間も同様であるが、振盪期間が休止期間よりも短いことが好ましい。デバイスの振盪は、デバイスの内容物が混合されるという効果を有する。すなわち、振盪という用語は、実質的に混合という用語と同じである。さらに、好ましくは、以下で待機期間と呼ばれる期間があり、その期間には振盪/混合も他のどんなアクションも同じデバイスに行われない期間がある。この期間は、トランスファーモジュールが他のアクションを行っており実際のデバイスにアクションをする用意ができていないという理由、又はモジュールの変更が行われており、例えばグリッパーがデバイスから離れ、吸引/放出デバイスがそのデバイスに接近しているという理由があるのかもしれない。しかし、待機期間はまた、デバイス中の液体をデバイス中の試薬と共に又はデバイスと共にインキュベートするという目的のためであるかもしれない。あるいは、機器サイクルにおいてスケジュールにある特定アクションがその特定サイクルにその特定デバイスには不要であるために、待機期間が必要になることもある。
【0098】
好ましい機器サイクルは持続時間が5から1200秒までの間、さらに好ましくは15から600秒までの間、最も好ましくは20から120秒までの間、である。1機器サイクルは2から60までの間、さらに好ましくは3から30までの間、最も好ましくは4から6までの間、の振盪期間を含み、ほぼ同数の休止期間を含む。例えば、ある機器サイクルは振盪期間からスタートし、休止期間がそれに続く。振盪期間の長さはある機器サイクル内に行われる工程の数及び完全な混合のために必要かつ十分な時間を考慮して最適化される。休止期間の長さは、休止期間の間に行われる具体的なアクションに必要な時間を考慮に入れて決定できる。特に、同じ操作デバイス、例えば同じグリッパーを用いて二回以上のアクションを行おうとする場合、そのデバイスをロードしアンロードするための休止期間は、アクションが以後の機器サイクルで行われるプロセスに比べて長くする必要があるかもしれない。同じ休止期間の間に、処理ステーションに新しいデバイスロードしたり再ロードしたり、あるいは洗浄液をデバイスのチャンバーに移すことができる。専用機器サイクルの終わりに、同じ凹所で別の機器サイクルがスタートする(機器で行うべきタスクが完了するまで)。次のこのサイクルでは、デバイスで行われるプロセス全体に応じ、特定の処理とデバイスの必要条件に従って、最初のサイクルで行われたプロセス・工程のいずれか又は全部を行うことができる。次のサイクルでは、凹所に別のデバイスをロードすることができる。タスクによって、行われるサイクルの数、及び行われるアクションは、前のデバイスの場合のサイクルの数と異なることがある。
【0099】
好ましい処理ステーションは、結合ステーション、染色ステーション、及び洗浄ステーション、から成る群から選択される。
【0100】
洗浄ステーションでは、デバイスがロードされ、洗浄液が加えられ、洗浄液がピペット・チップから及びピペット・チップに吸い上げられ及び吐き出され、洗浄液がデバイスから除去される。完全な純化のためには、洗浄プロセスを同じデバイスで新しい(未使用の)洗浄液で繰り返す必要があるかもしれない。したがって、第二サイクルでは、「アンロード輸送」及び「ロード輸送」という工程は単純に省略される。これらのアクションのために留保されていた期間の間、何も特定のアクションは行われない。このサイクルの間の他のすべてのアクションは、前のサイクルと同様に行われる。必要なだけの回数のサイクルを行った後、最後のサイクルは、次の処理ステーション、例えば検出ステーション、へのデバイスの輸送を含む。洗浄手順は、デバイスの内容物を、洗浄が特に効率的になるある特定温度まで加熱することを含むかもしれない。
【0101】
結合ステーションでは、好ましくは、デバイスを凹所にロードする工程、試薬を充填する工程、デバイスを凹所からアンロードする工程が行われる(試薬を充填する工程はデバイスをロードする工程より前に行うこともできる)。結合工程の間、さらに好ましくはハイブリダイゼーションの間、デバイスに含まれる液体は、好ましくは、結合に有用な定められた温度に加熱される。この加熱はいつでも、振盪期間及び休止期間のスタートと無関係に行うことができる。
【0102】
染色ステーションでも同じ工程の組み合わせを行うことができる、すなわち、デバイスの表面を染色のための試薬と反応させる工程と余剰な染色試薬からデバイスを洗浄する工程を組み合わせることができる。やはり、好ましくは、液体は染色に最適な定められた温度に保たれる。
【0103】
ある好ましい動作モードでは、処理ステーションは結合、染色、及び洗浄に用いられる。明らかに、このためには凹所におけるデバイスにアクセスできる特別なデバイスが必要になる。さらに、処理ステーションの休止期間の間の追加試薬のピペッティングなど、追加アクション・シーケンスのための適当な期間が留保される。
【0104】
一つのサイクルは、同じ処理ステーションでの一つの凹所又は異なる凹所における同一の機器アクションの必要な時間及び操作のシーケンスを記述する。サイクルは、すべての可能な必要なアクションを考慮し、機器で用いるすべての分析フォーマットのクロック化処理を可能にする。サイクルは、機器で、それぞれ、異なるデバイスで及び各診断試験で繰り返される。好ましくは、サイクルはすべての凹所で同一の長さである。しかし、異なる処理時間の異なる試験が機器で同時に行われる場合、各サイクルで各デバイスに着いて行われるアクションは異なることがある。すなわち、各デバイスですべての可能なアクションが行われるわけではない。各デバイスが特定の凹所に保持される時間及び機器サイクルの数は、前記デバイス内で行われる特定の分析による。サイクル長さは、ハイブリダイゼーション、洗浄、及び検出など、プロセスが数サイクル続く可能性があるデバイス処理のプロセス時間によって与えられる。その場合、プロセス・ステーションはいくつかのデバイス位置を必要とする。
【0105】
好ましくは、本発明による方法は同じ機器で第二のデバイスにおいて第二の分析を行う工程を含み、前記第二のデバイスに行われる少なくとも一つのアクションは、第一のデバイスに対するアクションが行われる機器サイクルと異なる機器サイクルで行われる。好ましくは、これらの分析は、異なる試料に対して、したがって異なるデバイスに行われる反応工程が異なるために完了するのに異なる時間を必要とする。例えば、遺伝子型分析では、遺伝子発現分析に比べて必要な時間はずっと少ない。本発明は、これらの分析を並行して行うことができる、すなわち、一つの遺伝子発現分析の時間の間に二つ以上の遺伝子型分析を行うことができる、という利点がある。このような場合、機器サイクルは、最も長い時間を必要とする分析、すなわち遺伝子発現分析、に必要な時間より小さくなる。
【0106】
他方、異なる処理ステーション上の凹所の機器サイクルの長さが一つの機器で同じであることが好ましい。さらに好ましくは、異なる処理ステーションでの機器サイクルがクロック化されており(clocked)、すなわち、同じ時間にスタートする。
【0107】
図8には、本発明のこの実施形態のモードが概略図で示されている。図は、同じ処理ステーション、見本の洗浄ステーション、の6つの異なる凹所で行われるアクションを示す。灰色バーは加熱と振盪の間の制御されたインキュベーションを表す(インターバルで)。A1はアクション1(アンロード)を意味し、A2はアクション2(ロード)を意味し、A3はアクション3(液体移送)を意味し、A4はアクション4(洗浄;吸い上げと吐き出し)を意味する。第一サイクル(サイクル1)では、デバイス1が凹所1にロードされる(詳しくは、例えば1サイクル内のローディング・プロセスの正確なスタート時間(秒)など、は図7を参照のこと)。第二サイクル(サイクル2)では、デバイス2が凹所2にロードされ、洗浄液が凹所1のデバイス1に移される。これから先は、サイクル7の終わりまで、移送、ローディング、及びアンローディングから選択されるアクションは凹所1のデバイス1にそれ以上行われない。しかし、デバイスは振盪され、温度は他のすべてのデバイスと同様に制御され、汚染コンポーネントがマイクロアレイ表面から洗浄液に溶解することを可能にする。デバイス5と6を除いて他のデバイスにも同じ処理が行われる。デバイス5は、サイクル5に凹所5に入れられ、サイクル8と9での追加洗浄(図7を見よ)の後、サイクル10でアクションの後にアンロードされる。デバイス6は、サイクル6のローディング・期間に凹所6に入れられる。しかし、デバイス6では特別の分析が行われるため、プロセスはすでにサイクル10で、サイクル9と10での追加洗浄を行った後、終了される。この例は、異なる凹所でのすべてのデバイスに対してサイクル時間が同じであるが、異なる凹所でのすべてのデバイスに対してサイクル時間が同じであるが、それぞれの凹所におけるデバイスの全体的な処理時間及び滞在時間は異なるということを示している。安全な時間に関する本発明の利点は、例えば、凹所1はサイクル8で新しいデバイス(デバイス7)を再ロードできることを考えると非常に明らかになる;例では、それはサイクル12でロードされる。
【0108】
同じ手順を結合ステーションで、洗浄液を結合液体によって、例えばハイブリダイゼーション液体によって置き換えるときにも用いることができる。
【0109】
このプロセスは、異なる長さの異なる分析フォーマットのプロセスを同じ処理ステーションで実行することを可能にする。
【0110】
特別な実施形態では、本発明は、シェーカー・ユニットを含み自由にアクセスできる、好ましくは加熱できる処理ステーションにおいて、多重結合及び洗浄サイクルのクロック化プロセスを用いることができる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】表面に固定された試薬を有するチップを含むデバイスを示す図である。
【図2】本発明による処理ステーションを示す図である。
【図3】デバイスの定置洗浄希釈のための洗浄ユニットを含む処理ステーションを示す図である。
【図4】本発明による機器を示す上面図である。
【図5】ある可能な機器セットアップを示す異なる正面図及び側面図である。
【図6】本発明による機器でのデバイスの輸送と移動のためのグリッパーを示す図である。
【図7】機器サイクルを示すダイアグラムであって、順次交代する混合期間と休止期間を含む。さらに、サイクルにおける他の動作も示されている。
【図8】同じ処理ステーションの6つの凹所における6つのデバイスの継起的な、少しずつずらされた処理ワークフローを示すダイアグラムであり、処理時間が異なるものもあるが機器サイクルの長さは同じである。
【符号の説明】
【0112】
参照数字
1 デバイス
2 フラット・キャリア(裏面から示す)
3 キャップ
4 ロッキング・フレーム
5 バーコード・ラベルのスペース
6 駆動部
7 ギアー・ボックス
8 駆動ベルト
9 偏心部
10 ヒーター
11 断熱部
12 デバイス・キャリア
13 駆動部
14 水平キャリエージ
15 駆動部
16 垂直キャリエージ
17 ニードル・モジュール
18 弁ユニット
19 ニードル・クリーニング・モジュール
20 ボトル・キャリア
21 冷却ダクト
22 第二の3-次元係合エレメント
23 第一の3-次元係合エレメント
101 サンプルインプットモジュール
102 サンプルインプットモジュール
103 廃棄物処分位置
104 インキュベーター
105 デバイスインプットモジュール
106 ハイブリダイゼーション・モジュール
107 洗浄ステーション
108 検出ステーション
109 染色ステーション
110 ゆすぎステーション
111 移送ユニット
112 廃棄物ユニット
113 コンピューター
114 グリッパーの3-次元構成エレメント
115 凹所
201 振盪期間
202 休止期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された結合試薬を含む一つ以上の分析デバイスを処理するための機器であって:
−サンプルインプットステーション、
−一つ以上の処理ステーション、
−検出ステーション、及び
−トランスファーモジュール、
を含み、少なくとも一つの前記処理ステーションが、分析デバイスを受け入れる凹所を備えたシェーカー・ユニットを含み、前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有することを特徴とする機器。
【請求項2】
前記少なくとも一つの処理ステーションは、結合ステーション、染色ステーション、及び洗浄ステーションから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記少なくとも一つの処理ステーションは、結合と染色の組み合わせ、染色と洗浄の組み合わせ、結合と洗浄の組み合わせ、及び結合と染色と洗浄の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載の機器。
【請求項4】
前記処理ステーションは加熱ユニットを具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の機器。
【請求項5】
前記シェーカー・ユニットは10から50 Hzまでの間の周波数での振盪を可能にする機械的駆動部を具備していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の機器。
【請求項6】
前記シェーカー・ユニットは二つ以上のデバイスのための凹所を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の機器。
【請求項7】
前記凹所は、前記分析デバイスの正確な垂直方向及び水平方向の位置決めのための3-次元構成エレメントを備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記シェーカー・ユニットは0.1から10 mmまでの間の振幅での振盪を可能にする機械的駆動部を具備していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項9】
前記移送ユニットは前記分析デバイスを水平に前記凹所の上に移動させることができ垂直に移動させて前記凹所の前記開口を通して前記分析デバイスを位置決めさせることができるグリッパー・ユニットを含むロボット・アームを具備することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
少なくとも一つの前記処理ステーションと前記トランスファーモジュールはさらに、前記処理ステーションに位置決めされた分析デバイスに液体移送デバイスを導入するために垂直に移動させることができる吸引−放出ユニットを備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の機器。
【請求項11】
前記シェーカー・ユニット前記デバイスを予め定められた経路で導く駆動ユニットを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の機器。
【請求項12】
前記機器のコンポーネントのアクションはコンピューター・プログラムによって制御されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
前記コンピューター・プログラムは、デバイスのローディングとアンローディング、液体の吸引と放出、デバイスの振盪、及び前記機器内でのデバイスの輸送を制御することを特徴とする請求項12に記載の機器。
【請求項14】
前記コンピューター・プログラムは、シェーカー・ユニットにおける振盪期間と休止期間の規則的なインターバルを含むことを特徴とする請求項12〜13のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
前記処理ステーションはさらに冷却エレメントを具備することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
該トランスファーモジュールは単一分析デバイスの輸送を許容するように構成されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の機器。
【請求項17】
試料における一つ以上の被分析物を測定する診断システムであって:
−請求項1〜16のいずれか1項に記載の機器、及び
−固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイス、
を含むシステム。
【請求項18】
−前記デバイスは第一の3-次元係合エレメントを含み、
−前記シェーカー・ユニットは分析デバイスを受け入れるための凹所を備え、前記凹所は前記分析デバイスを前記凹所に入れるための上方開口を有し、前記凹所はさらに、前記デバイスの前記第一の3-次元係合エレメントによる前記分析デバイスの正確な垂直方向及び水平方向の位置決めのための3-次元構成エレメントを含み、かつ
−少なくとも一つの前記処理ステーション及び前記トランスファーモジュールがさらに、前記処理ステーションに位置決めされた分析デバイスに液体を導入するために垂直に移動させることができる吸引−放出ユニットを備える、
ことを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
−前記デバイスが第二の3-次元係合エレメントを含み、かつ
−前記トランスファーモジュールが前記第二の3-次元係合エレメントによって前記デバイスを保持するための3-次元構成エレメントを含む、
ことを特徴とする請求項17と18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
該結合試薬はデバイスの処理チャンバーに向いたフラットな表面に固定されることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
該結合試薬が核酸プローブであることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
該結合試薬はアレイに配列されていることを特徴とする請求項17〜21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
該試料は10から500μmまでの体積を有することを特徴とする請求項17〜22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
さらに:
−被分析物精製ステーション、
を含む請求項17〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
さらに:
−増幅ステーション、
を含む請求項17〜24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
さらに、インプットステーションから検出結果までの試料追跡を可能にするデータ管理ユニットを備えることを特徴とする請求項17〜25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記デバイスが前記液体移送デバイスによって穿刺可能なキャップを有することを特徴とする請求項18〜26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
機器を用いて試料における一つ以上の被分析物を測定する方法であって:
−サンプルインプットデバイス中の試料を前記機器のインプットステーションに挿入する工程、
−固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを前記機器の使い捨てインプットステーションに挿入する工程、
−該試料を結合ステーション及び検出ステーションを通って輸送する制御された、自動化された手順であって:
−該試料を前記デバイスの一つに移す工程、
−試薬を前記デバイスに移す工程、
−前記デバイスを前記結合ステーションに輸送する工程、
−前記結合ステーション中の前記デバイスを測定しようとする該被分析物と前記結合試薬との結合を可能にする条件の下に保つ工程、
−液体を該デバイスから除去する工程、
−該デバイスに及び該デバイスから洗浄液を加える及び除去する工程、
−前記デバイスを前記検出ステーションに輸送する工程、及び
−前記被分析物と前記結合試薬の結合に基づく信号を検出する工程、及び
−前記信号に基づいて該被分析物を測定する工程、
を含む手順をスタートさせる工程、
を含む方法。
【請求項29】
さらに、染色バッファーを前記デバイスに加える及び除去する工程、及び洗浄液を該デバイスに及び該デバイスから加える及び除去する工程、を含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらに、前記デバイスを前記結合ステーションから洗浄ステーションへ輸送する工程を含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
該制御された自動化された手順が前記デバイスを前記検出ステーションから除去する工程を含むことを特徴とする請求項28〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
該被分析物が増幅された標的配列を含むことを特徴とする請求項28〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
該機器は請求項1〜16のいずれか1項に記載の機器であることを特徴とする請求項28〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスの自動化された処理のための方法であって:
−一つ以上の処理ステーションを含む機器を用意する工程、
−前記機器の使い捨てインプットステーションにおいて固定された結合試薬を含む一つ以上のデバイスを用意する工程、
−前記機器のサンプルインプットステーションに試料を用意する工程、
−前記機器を通って該デバイスを輸送する制御された、自動化された手順であって:
−試料を前記デバイスに移す工程、
−試薬を前記デバイスに移す工程、
−前記デバイスを前記処理ステーションに輸送する工程、
−前記処理ステーションにおいて前記処理を可能にする条件の下に前記デバイスを維持する工程、
を含む手順をスタートさせる工程、
を含む方法。
【請求項35】
前記処理は結合プロセスであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記処理は染色プロセスであることを特徴とする請求項34〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記処理は洗浄プロセスであることを特徴とする請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記条件は前記デバイスを加熱することを含むことを特徴とする請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記振盪は10から50 Hzまでの間の周波数で行われることを特徴とする請求項34〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
2つ以上のデバイスが並行して振盪されることを特徴とする請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記振盪は0.1から10 mmまでの間の振幅で行われることを特徴とする請求項34〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法はコンピューター・プログラムによって制御されることを特徴とする請求項34〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
機器を用いてデバイスにおいて分析を行うための方法であって、少なくとも二つの振盪期間と少なくとも二つの休止期間の間に、
−前記機器の処理ステーションの凹所に前記デバイスをロードすること、
−前記機器の処理ステーションの凹所に配置されたとき前記デバイスに液体を移すこと、
−前記機器の処理ステーションの凹所から前記デバイスをアンロードすること、及び
−前記機器の処理ステーションの凹所で前記デバイスを洗浄すること、
から成る群から選択される少なくとも二つのアクションを行うことによって前記機器において前記デバイスを処理する工程を含み、前記アクションが反復される実質的に同じ長さの機器サイクル内の固定された重ならないアクション・期間に同じ凹所において該デバイスに対して行われ、前記アクション・期間は前記振盪期間と重ならないことを特徴とする方法。
【請求項44】
前記処理ステーションが、洗浄ステーション、結合ステーション、及び染色ステーションから成る群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
さらに、同じ機器で第二のデバイスにおける第二の分析を行う工程を含み、前記第二のデバイスにおいて行われるアクションの少なくとも一つは第一のデバイスに対するアクションが行われる機器サイクルと異なる機器サイクルにおいて行われることを特徴とする請求項43と44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
さらに、実質的に同じ長さの機器サイクルを有する別の処理ステーションの凹所において前記デバイスを処理する工程を含む請求項43〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
異なる処理ステーションにおける機器サイクルはクロック化されることを特徴とする請求項43〜46のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−504538(P2008−504538A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518552(P2007−518552)
【出願日】平成17年7月2日(2005.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007150
【国際公開番号】WO2006/002960
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】