説明

分析支援方法、分析装置、遠隔コンピュータ、データ解析方法及びプログラム並びに試薬容器

【課題】試薬を適切に管理することができるようにする。
【解決手段】容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と遠隔コンピュータとを有する分析システムにおいて、試薬容器のメモリから試薬情報を読み出す工程と、当該試薬情報を基に試薬容器内の試薬の使用可否を判断する工程と、試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、使用不可データを試薬容器のメモリに書き込む工程と、試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、試薬容器IDに対応して使用不可データを遠隔コンピュータにより管理される試薬DBに登録する工程とを実行する。これにより使用禁止試薬を自動的に判別して分析に使用しないように試薬の管理を行うことができる。また、試薬の自動発注やメーカの在庫管理などの業務効率化にも役立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬を用いた分析に対する支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2001−281258号公報には、容易にバックアップが行え、信頼性が向上すると共に情報管理・運用のための作業負担を軽減でき、リカバリの時間が短くなり、また他の装置間さらに遠隔地からの管理/運用を容易に制御可能な分析装置を提供することを目的とする技術が開示されている。より具体的には、制御部にて試薬情報や測定条件、検量線データ項目定義情報などの様々な情報を分析装置の動作条件として制御する。情報記憶手段にはハードディスクドライブが複数台あるいは複数のパーティションに区切られ、所定条件にてバックアップされる。またマークアップ言語で情報管理することでリモートメンテナンスを提供する。分析装置において試薬の管理は可能となっているが、試薬自体に有用な情報を保持させておくことにより試薬の管理を行うことは考慮されていない。
【0003】
また、特開2004−28670号公報には、サービス会社が通信手段を介して検査施設で実施する分析準備作業等を代行することで、検査施設の検査員の負担軽減と分析準備作業等の安定化を図るための技術が開示されている。すなわち、自動分析装置等を用いて分析業務を行う検査施設と、自動分析装置の稼動状況等のデータを通信回線を介してリアルタイムに情報を入手し、各種データの解析・診断及び保守点検等のサービス業務を行うサービス会社と、前記検査施設で分析作業を行う複数の検査員とがそれぞれ通信手段を介して随時連絡可能な手段を有し、サービス会社が前記施設で分析作業を開始する前の分析準備作業として、分析準備作業の代行と、分析業務終了後、自動分析装置のセル洗浄及び基本動作確認作業の代行を、前記通信回線を介して遠隔支援し、かつ分析準備作業及び終了作業報告を検査員に報告する。このように分析装置の稼動状況等を遠隔地で解析する技術が開示されているが、試薬自体に有用な情報を保持させて試薬を管理すること及び試薬自体に有用な情報が保持されている場合に行うべき処理については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−281258号公報
【特許文献2】特開2004−28670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように従来技術では、試薬(実際は試薬容器)自体に情報を保持させることを前提とするものは無く、分析装置をネットワークに接続しても試薬自体が分離された状態となってしまい、試薬管理上問題があった。また、分析前、分析中及び分析後において、試薬メーカや分析装置メンテナンス業者だけではなくユーザに有用な試薬及び分析装置の管理、並びに分析支援を可能にする具体的な技術は開示されていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、試薬容器自体に当該容器内の試薬に関するデータを保持させた場合における新規な試薬管理技術を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、試薬をネットワークに接続させた場合における新規な分析支援技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る分析支援方法は、容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と当該分析装置が接続される遠隔コンピュータ(例えば実施の形態におけるホストコンピュータ)とを有する分析システムにより実行されるものであって、試薬容器のメモリから試薬情報を読み出すステップと、読み出した試薬情報を基に試薬容器内の試薬の使用可否を判断する判断ステップと、試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、使用不可を表すデータを試薬容器のメモリに書き込むステップと、試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、試薬容器を識別する識別情報に対応して使用不可を表すデータを遠隔コンピュータにより管理される試薬データベースに登録するステップとを含む。
【0009】
このようにして、使用してはならない試薬を自動的に判別して分析に使用しないように試薬の管理及び設定を行うことができる。また、遠隔コンピュータにより管理される試薬データベースにも試薬の使用不可を登録することにより、試薬の自動発注やメーカの在庫管理などの業務効率化にも役立てることができる。
【0010】
また、上で述べた判断ステップにおいて試薬容器内の試薬が使用可能と判断された場合には、試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第2判断ステップと、第2判断ステップにおいて試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合には、使用不可を表すデータを試薬容器のメモリに書き込むステップとをさらに含むようにしてもよい。このように、試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件(例えば、実際の分析において問題を生じさせることが判明した特定のロットに含まれる試薬という条件)に基づき試薬容器内の試薬の使用可否を判断することにより、例えば保存状態が定められた条件を満たしていない試薬や使用期限を過ぎた試薬という単純な判断だけではなく、実際の使用によって判明するような具体的な条件を用いて、試薬の管理を行うことができるようになる。
【0011】
さらに、分析装置の稼動状況に関する分析装置情報に基づき分析装置の異常の有無について判断するステップをさらに含むようにしてもよい。試薬だけではなく、分析装置についても管理することができる。
【0012】
さらに、試薬容器内の試薬を用いて分析を実施した場合には、当該分析の結果に係るデータを上記試薬容器のメモリに書き込むステップと、分析の結果に係るデータを遠隔コンピュータにより管理される分析結果データ格納部に格納するステップとをさらに含むようにしてもよい。このように分析の結果に係るデータを試薬容器のメモリだけではなく遠隔コンピュータにより管理される分析結果データ格納部に登録することにより、当該分析の結果を例えば本試薬に関係する他の試薬の管理のためにも用いることができるようになる。
【0013】
また、試薬容器内の試薬を用いて分析を実施する際に、分析対象である検体毎の異常検出条件に従って異常の有無を判断する第3判断ステップをさらに含み、分析の結果に係るデータが第3判断ステップにおいて判断された異常の有無に関する情報を含むようにしてもよい。
【0014】
さらに、試薬容器内の試薬を用いて分析を実施した場合に、分析の結果に係るデータを用いて分析の結果全体について異常の有無を判断するステップをさらに含むようにしてもよい。このように検体毎に異常の有無を判断するだけでなく分析の結果全体について異常の有無を判断することにより、より適切な分析結果を得ることができる。すなわち、適切な分析を支援することができるようになる。
【0015】
また、分析の結果全体について異常と判断された場合には、分析の結果に係るデータを用いて、異常の原因を推定するステップと、分析の結果全体についての異常の有無についてのデータ及び異常と判断された場合には推定された異常の原因についてのデータを、分析装置の利用者に提示するステップとをさらに含むようにしてもよい。これにより分析装置の利用者は、より適切な処置を行うことができるようになる。
【0016】
本発明の第2の態様に係る分析装置は、容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置であって、試薬容器のメモリに対してデータを読み書きするメモリ・リーダライタと、メモリ・リーダライタに、試薬容器のメモリから試薬容器内の試薬に関する試薬情報を読み出させ、当該試薬容器内の試薬に関する試薬情報を基に試薬容器内の試薬の使用可否を判断する判断手段と、判断手段により試薬容器内の試薬が使用可能と判断された場合には、遠隔コンピュータに試薬情報の少なくとも一部を送信する手段とを有する。そして、上記判断手段は、メモリ・リーダライタに、試薬容器内の試薬を使用不可と判断した場合には、使用不可を表すデータを試薬容器のメモリに書き込ませ、遠隔コンピュータから試薬容器内の試薬について使用不可を表すデータを受信した場合には、当該使用不可を表すデータを試薬容器のメモリに書き込ませる。このような分析装置を用いることにより、メモリを有する試薬容器内の試薬を適切に管理することができるようになる。
【0017】
また、試薬容器内の試薬を用いて分析を実施した場合、当該分析の結果に係るデータをメモリ・リーダライタに試薬容器のメモリへ書き込ませる手段と、分析の結果に係るデータを遠隔コンピュータに送信する手段とをさらに有するようにしてもよい。分析の結果に係るデータについても試薬管理上必要となる場合もあるので、試薬容器のメモリに書き込むものである。また、分析の結果の有効性判断等に用いるため、遠隔コンピュータに送信する。
【0018】
さらに、試薬容器内の試薬を用いて分析を実施する際、分析対象である検体毎の異常検出条件に従って異常の有無を判断する第2判断手段をさらに有し、分析の結果に係るデータが第2判断手段により判断された異常の有無に関する情報を含むようにしてもよい。分析においても異常の有無を判断することにより、分析に対する適切な支援が行われる。
【0019】
また、分析対象である検体毎の異常検出条件に関するデータは、遠隔コンピュータにより更新されるデータである場合もある。遠隔コンピュータから例えば最新のより適切なデータを用いて判断することにより、より適切な異常検出を行うことができる。
【0020】
さらに、遠隔コンピュータから分析の結果に対する有効性データを受信する手段と、受信した上記有効性データをユーザに提示する手段とをさらに有し、上記第2判断手段が、有効性データが試薬の不良を示すデータを含む場合には、試薬容器内の試薬について使用不可を表すデータをメモリ・リーダライタに試薬容器のメモリへ書き込ませるようにしてもよい。
【0021】
本発明の第3の態様に係る遠隔コンピュータは、容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と協働する遠隔コンピュータであって、分析装置から試薬情報のうち少なくとも一部を受信した場合には、試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき試薬容器内の試薬の使用可否を判断する判断手段と、判断手段による判断結果を、少なくとも試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合に分析装置に送信する手段と、判断手段により試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合には、当該試薬容器内の試薬が使用不可であるということを表すデータを試薬データベースに登録する手段とを有する。
【0022】
このように遠隔コンピュータにおいても、例えば同種の試薬の複数の使用例から導き出される条件から試薬の使用可否を判断することにより、適切な試薬の管理を可能にし、分析における業務効率を向上させることができる。
【0023】
さらに、判断手段により試薬容器内の試薬について使用可能と判断された場合には、当該試薬容器内の試薬を用いた分析において使用される最新データ(例えば実施の形態におけるオプション情報、パラメータ及び閾値データ等)を分析関連データ格納部から読み出し、分析装置に送信する手段をさらに有するようにしてもよい。分析における異常検出をより適切なデータを基に行うことができるようになる。
【0024】
また、分析装置から分析の結果に係るデータを受信した場合、当該分析の結果に係るデータを分析結果データ格納部に格納する手段と、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータを用いて当該分析の結果の有効性の有無を判断する第2判断手段と、第2判断手段による判断結果を分析装置に送信する手段とをさらに有するようにしてもよい。
【0025】
さらに、上記第2判断手段が、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータを用いて、当該分析の結果全体について異常の有無を判断し、当該分析の結果全体についての異常の有無に基づき分析の結果の有効性の有無を特定するようにしてもよい。
【0026】
また、上記第2判断手段が、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータを用いて異常の原因を推定する処理をさらに実施するようにしてもよい。異常の原因を推定することにより、利用者に適切な処置をガイドすることができる。
【0027】
さらに、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータの所定のグループを用いて、判断手段と第2判断手段の少なくともいずれかにおける判断処理のために用いるデータを生成する手段をさらに有するようにしてもよい。これにより、より実際に即したデータを基に判断することができる。
【0028】
また、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータの所定のグループを用いて、分析装置間の差を表すデータを生成する手段をさらに有するようにしてもよい。分析装置間の差を検出することにより、分析装置のメンテナンス等の必要性を特定することができるようになる。
【0029】
さらに、分析結果データ格納部に格納された分析の結果に係るデータを用いて、試薬又は分析装置の異常発生を予測する手段をさらに有するようにしてもよい。これにより適切な処置を早期に実施することができるようになる。
【0030】
本発明の第4の態様に係るデータ解析方法は、容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と協働する遠隔コンピュータにより実行されるものであって、分析装置から試薬情報のうち少なくとも一部を受信した場合には、試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき試薬容器内の試薬の使用可否を判断する判断ステップと、判断ステップにおける判断結果を、少なくとも試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合に分析装置に送信するステップと、判断ステップにおいて試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合には、当該試薬容器内の試薬が使用不可であるということを表すデータを試薬データベースに登録するステップとを含む。
【0031】
本発明に係る分析装置及び遠隔コンピュータを実現するためのプログラムを作成することができ、当該プログラムは、例えばフレキシブル・ディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体又は記憶装置に格納される。また、ネットワークを介してディジタル信号にて頒布される場合もある。なお、処理途中のデータについては、コンピュータのメモリ等の記憶装置に一時保管される。
【0032】
本発明の第5の態様に係る試薬容器は、当該試薬容器内の試薬を分析において用いることができるか、当該試薬容器内の試薬を用いた分析の結果が妥当であるかのうち少なくともいずれかを分析装置に判断させるために用いられるデータを格納し、分析装置により読み出し可能なメモリを有する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、試薬を適切に管理することができるようになる。
【0034】
また、別の観点として、試薬をネットワークにするようにして適切に分析を支援することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態におけるシステム概要図である。
【図2】分析装置の機能ブロック図である。
【図3】ホストコンピュータの機能ブロック図である。
【図4−1】RFタグに格納されるデータを示す図である。
【図4−2】RFタグに格納されるデータを示す図である。
【図5】システムの第1の処理フローを示す図である。
【図6】システムの第2の処理フローを示す図である。
【図7】システムの第3の処理フローを示す図である。
【図8】システムの第4の処理フローを示す図である。
【図9】システムの第5の処理フローを示す図である。
【図10】システムの第6の処理フローを示す図である。
【図11−1】装置間差データ生成部による処理結果を示すテーブルである。
【図11−2】装置間差データ生成部による処理結果の判定基準を示すテーブルである。
【図12】コンピュータの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に本発明の一実施の形態に係るシステム概要図を示す。インターネットや専用線等によるネットワーク1には、分析装置3aと、分析装置3bとが接続されている。ここでは分析装置は2台しか示していないが、台数は2台に限るものではない。また、ネットワーク1には、例えばファイアウォール等の通信機器を介して、分析装置3a及び3bの遠隔監視サービスを提供する企業等のLAN(Local Area Network)11が接続されており、当該LAN11には1又は複数の営業担当端末7と1又は複数のメンテナンス担当端末9とが接続されている。営業担当端末7とメンテナンス担当端末9とは例えばパーソナルコンピュータであって、ホストコンピュータ5に蓄積されるデータにアクセスしたり、ホストコンピュータ5からのメール等を受信したりすることができる。
【0037】
なお以下では、ホストコンピュータ5による情報提供等、不足する試薬の提供及び分析装置のメンテナンス・サービス提供の全てを分析装置のユーザに対して同一の企業等が行うような例を示すが、これらは全て同一の企業等で行う必要は無い。ホストコンピュータ5による情報提供等だけを行う企業等、不足する試薬の提供のみを行う企業等、分析装置のメンテナンス・サービスの提供のみを行う企業等、その他それらの任意の組み合わせを提供する企業等など事業形態は様々な形態に変形できる。例えば不足する試薬の提供を別企業等で行う場合には、営業担当端末7は、LAN11には接続されず、例えばネットワーク1に接続される他のネットワークに接続される。また、分析装置のメンテナンス・サービスの提供を別企業等で行う場合には、メンテナンス担当端末9は、LAN11には接続されず、例えばネットワーク1に接続される他のネットワークに接続される。
【0038】
本実施の形態において、試薬は試薬容器31に保持されており、当該試薬容器31は、容器内部の試薬に関する情報を格納するためのメモリを含むRF(Radio Frequency)タグ311を有する。RFタグ311のように非接触型のIC(Integrated Circuit)タグでなく、接触型のICタグであってもよい。分析装置3の試薬保管部には、1又は複数の試薬容器31が保存され、分析に使用される。
【0039】
次に図2に分析装置3の機能ブロック図を示す。分析装置3は、ネットワークインターフェース部38と、発注処理部39と、発注ログ格納部40と、分析装置管理部35と、確認データ格納部36と、稼動状況データ格納部37と、バッファ34と、タグインターフェース部33と、試薬保管部32とを有する。また、図示しない表示装置を含んでいる場合もある。試薬保管部32は、保温・保冷機能を有するものが好ましく、1又は複数の試薬容器31を保持しており、試薬保管部32内の温度及び湿度、必要な場合には振動、傾きなどを測定するためのセンサ322と、試薬容器31のRFタグ311に対してデータの読み書きを実施するタグリーダライタ321とを有する。タグリーダライタ321は、RFタグ311に適合するように構成された周知の装置であるので、ここではこれ以上説明しない。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33からの指示に従ってRFタグ311に対してデータを読み書きするようになっている。なお、センサ322は、試薬容器31側に設けられる場合もあり、その場合には、試薬保管部32の外に放置された時や輸送時の温度・湿度等を測定して記録することも可能となる。また、センサ322には時間を計測するための装置を設けるようにしても良い。
【0040】
分析装置管理部35は、タグリーダライタ321に対する命令(書き込みの場合には書き込みデータを含む)をバッファ34に書き込み、タグインターフェース部33はバッファ34を参照してタグリーダライタ321に対する処理を実施するようになっている。また、分析装置管理部35は、タグインターフェース部33によりバッファ34に書き込まれたデータを読み出し、処理を実施する。また、分析装置管理部35は、試薬保持部32内のセンサ322から測定結果を受信するようになっている。
【0041】
分析装置管理部35は、試薬使用可否判定部351と分析結果判定部352とを有し、確認データ格納部36を参照して処理を実施し、さらに予め定められたデータをネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる。また、ネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5からデータを受信すると、分析装置管理部35に出力するようになっている。さらに、分析装置管理部35は、分析装置の稼動状況についてのデータを稼動状況データ格納部37に格納すると共に、所定のタイミングにて(例えば定期的に又は異常検出時など)ネットワークインターフェース部38に、ホストコンピュータ5へ送信させる。また、分析装置管理部35は、分析装置のユーザによる指示に応じて又は自動的に発注処理部39に発注処理を実施させる。発注処理部39は、発注ログを例えば後の確認のため発注ログ格納部40に格納すると共に、発注データを生成してネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる。ネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5との通信処理を実施する。
【0042】
これらの処理部のさらに詳細な機能については以下の処理フローにおいて説明する。
【0043】
次に図3にホストコンピュータ5の機能ブロック図を示す。ホストコンピュータ5は、通信制御部51と、チェック部52と、装置DB管理部53と、試薬DB管理部54と、発注処理部55と、発注データベース(DB)56と、結果ファイル格納部57と、ルールDB58と、装置DB59と、試薬DB60とを有するフロントエンド部と、データ更新部61と、装置間差データ生成部62と、試薬異常予知部63と、装置異常予知部64と、装置間差データ格納部65とを有するバックエンド部とを有する。
【0044】
各分析装置3からのデータは通信制御部51により受信され、チェック部52、装置DB管理部53、試薬DB管理部54、発注処理部55のいずれかに出力される。チェック部52は、試薬チェック部521と装置チェック部522と分析結果チェック部523とを有し、結果ファイル格納部57及びルールDB58、試薬DB管理部54を介して試薬DB60、装置DB管理部53を介して装置DB59にデータを格納したり、それらに格納されたデータを用いて処理を実施する。発注処理部55は、通信処理部51を介して受信した試薬又はメンテナンスの注文データを発注DB56に格納すると共に、メンテナンス担当端末9や営業担当端末7に通知を送信する。発注処理部55は、チェック部52から注文データを受け取る場合もある。試薬DB管理部54は、チェック部52又は通信制御部51からのデータを試薬DB60に格納し、チェック部52からの要求に応じて試薬DB60に格納されたデータをチェック部52に出力する。また、装置DB管理部53は、チェック部52又は通信制御部51からのデータを装置DB59に格納し、チェック部52からの要求に応じて装置DB59に格納されたデータをチェック部52に出力する。
【0045】
データ更新部61は、結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて解析処理を実施し、試薬DB60に格納されている例えば閾値データを最新のデータに更新する。また、装置間差データ生成部62は、結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて解析処理を実施し、分析装置間の分析結果の差を比較し、分析装置の装置間差の大きさを特定することにより分析装置に生じている問題を検出する。処理結果については装置間差データ格納部65に格納し、例えば必要があればメンテナンス担当端末9のユーザ宛に警告メッセージを送信する。試薬異常予知部63は、結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて解析処理を実施し、試薬異常が発生する予兆を検出し、必要に応じて警告メッセージを例えば営業担当端末7のユーザ宛に送信する。さらに、装置異常予知部64は、結果ファイル格納部57及び装置DB59を参照して解析処理を実施し、装置異常が発生する予兆を検出し、必要に応じて警告メッセージを例えばメンテナンス担当端末9のユーザ宛に送信する。
【0046】
これらの処理部のさらに詳細な機能については以下の処理フロー等において説明する。
【0047】
次に、図4−1及び図4−2を用いて試薬容器31のRFタグ311に格納されるデータの一例を示す。図4−1は、出荷時に書き込まれる情報をその更新の有無と共に示しており、図4−2は、出荷後に書き込まれる情報をそれぞれ示している。より具体的に出荷時に書き込まれる情報には、製造に関する情報と、分析条件に関する情報と、試薬性能に関する情報と、表示に関する情報と、結果に関する情報とが含まれる。また出荷後に書き込まれる情報には、使用中並びにそれ以外に書き込まれる情報と、使用中に書き込まれる情報とが含まれる。
【0048】
製造に関する情報としては、製造ロット番号、シリアル番号、有効期限といった情報が含まれる。これにより、試薬を特定することができるようになる。尚、ここでいう製造ロット番号とは、試薬ビン(容器)が製造された際に生産工場で製造ロット毎につけられる番号を表し、シリアル番号とは、試薬ビン(容器)毎につけられる番号を表す。
【0049】
また、分析条件に関する情報としては、分析を行うために分析装置を動作させるための条件としてのパラメータ(試料使用量、試薬使用量、測定波長(主波長及び副波長)、反応時間、測定ポイントなど)、希釈条件(希釈液種類及び希釈率)、及びキャリブレーション方法といった情報が含まれる。これにより、分析装置のユーザによる設定などを省略することができ、ユーザビリティが向上すると共に、分析の迅速化等を図ることができる。なお、パラメータは、測定項目や分析対象試料により異なる。また、試料は、分析の対象物であって、血液、尿等の検体、校正のためのキャリブレータ、及び校正結果の確認のためのコントロールを指すものである。また、ここでいうキャリブレーション方法とは、キャリブレーションを行う際に示される具体的な操作・条件に関するデータである。具体的には、例えば、1次式(直線)、2次式、スプライン曲線、Logit-log曲線等のキャリブレーションタイプ(検量線の種類)、測定するキャリブレータ(標準液)数(例えば、「2」であるならば2種類のキャリブレータを使用。)、測定するキャリブレータ(標準液)の濃度値、キャリブレータの測定回数(例えば、「3」であるならば1つのキャリブレータにつき3回測定し、測定値は、通常、n=3の平均値として示される。)及びオプション情報等が含まれる。さらに付言すれば、キャリブレーションは、装置と試薬を用いて測定値の校正を行う操作であり、キャリブレータは、測定値の校正を行うための試料を意味し、標準液とも言う。校正結果の確認を行うためには、基準範囲の測定値を持つ試料としてコントロールを測定する必要がある。
【0050】
さらに、試薬性能に関する情報としては、キャリブレーション情報、直線性、再現性、共存物質の影響、反応タイムコース、安定性、閾値データといった情報が含まれる。これにより試薬の性能を特定することができる。なお、キャリブレーション情報は、測定時のブランク値、感度、キャリブレータ濃度、キャリブレータのロット番号、校正日時、有効期限、キャリブレーション履歴、使用した試薬のロット番号及びシリアル番号等を含む。なお、反応タイムコースは、反応の途中経過の情報及びそれに関連する情報である。
【0051】
また、表示に関する情報としては、単位、表示桁数、基準値(範囲)といった情報が含まれる。これにより、分析装置のユーザによる設定入力などを省略することができ、ユーザビリティが向上すると共に、分析の迅速化等を図ることができる。
【0052】
さらに、結果に関する情報としては、血清情報、項目間演算(項目、演算式、単位、桁数)といった情報が含まれる。これにより、分析装置のユーザによる設定入力などを省略することができ、ユーザビリティが向上すると共に、分析の迅速化等を図ることができる。
【0053】
上で述べた出荷時に書き込まれる情報には、ホストコンピュータ5から受信した最新データにより更新されるものもある。すなわち、図4−1の情報更新の有無の列において「有」とされる情報項目(例えば分析条件に関する情報及び試薬性能に関する情報など)については更新され、「無」とされる情報項目(例えば製造に関する情報など)については更新されない。
【0054】
また、出荷後に書き込まれる情報としては、使用中並びにそれ以外に書き込まれる情報と、使用中に書き込まれる情報とを含む。使用中並びにそれ以外に書き込まれる情報としては、保存状況等に関する情報が含まれる。保存状況等に関する情報は、輸送状況(温度、湿度、時間、振動)と保存状況(温度、湿度、時間、振動)とを含む。ここで輸送状況とは、試薬輸送時の温度、湿度及び振動のデータ並びにそれに要した時間に関する情報である。また、保存状況とは、試薬保存時の温度、湿度及び振動のデータ並びにそれに要した時間に関する情報である。これらの情報は、試薬使用可否の判定に用いられる。
【0055】
さらに、使用中に書き込まれるデータとしては、使用状況に関する情報と、結果ファイルに関する情報とが含まれる。使用状況に関する情報としては、使用回数、使用時刻、使用時間、有効期限、残量、使用可否の情報といった情報が含まれる。これにより、試薬の使用可否並びに性能保証の情報を得ることができる。
【0056】
また、結果ファイルに関する情報としては、環境情報と、性能情報と、警告情報とが含まれる。環境情報としては、測定分析装置ID、測定項目、測定状況、測定時使用パラメータ、測定試料の検体情報、測定時セルブランク、測定時反応タイムコース情報、分析結果といった情報が含まれる。さらに、性能情報としては、測定ブランク値、実施したキャリブレーションの情報、コントロール測定結果といった情報が含まれる。
【0057】
次に図5乃至図11−2を用いて図1乃至3に示したシステムの処理フローの一例を示す。まず、分析装置3の分析装置管理部35は、定期的に、分析開始直前に又は異常検出時などのタイミングで、センサ322による、前回書き込み時からの測定結果(温度及び湿度など)を保存状況情報としてまとめ、書込指示と共にバッファ34に出力する(ステップS1)。バッファ34は保存状況情報及び書込指示データを格納する。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介してバッファ34に格納された保存状況情報及び書込指示を受け取り、RFタグ311に保存状況情報を記録する(ステップS3)。臨床検査に用いられる大部分の試薬は、酵素、抗体など生体由来のタンパク質やその他温度などによる影響を受けやすい試薬(色素等の有機化合物)を含むため、温度管理が必要である。そのため本実施の形態では保冷機能を有する試薬保管部32を有する分析装置3を前提としており、ユーザは使用中であれば当該試薬保管部32に試薬を保存しているものとする。このように保存状況情報を試薬容器31のRFタグ311に書き込むことにより、試薬保存時の温度や湿度等が適切に管理されているか後に確認することができるようになる。ステップS1及びS3については、以下の処理とは関係なく実施される。なお、分析装置管理部35は、例えばセンサ322から取得されたデータ等を適宜稼動状況データ格納部37に格納しておき、ステップS1では稼動状況データ格納部37に格納されているこの情報を用いて書き込みを指示する。
【0058】
また、分析装置3の分析装置管理部35は、分析開始前に、試薬情報の読出要求をバッファ34に出力する(ステップS7)。バッファ34は、試薬情報の読出要求を格納する。例えば、分析開始前のユーザによる何らかの選択入力や、場合によっては試薬容器31のセットのタイミングで、ステップS7が実行される。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介してバッファ34から試薬情報の読出要求を受け取り、RFタグ311から試薬情報を読み出し、タグインターフェース部33を介してバッファ34に出力する(ステップS9)。バッファ34は、試薬情報を格納する。分析装置管理部35は、バッファ34に格納された試薬情報を取得する(ステップS11)。ここで試薬情報とは、RFタグ311に格納された、出荷時に書き込まれる情報、保存状況等に関する情報及び使用状況に関する情報を含む。
【0059】
次に、分析装置管理部35の試薬使用可否判定部351は、試薬情報を用いて所定の使用不可条件を満たしているか判定する(ステップS13)。所定の使用不可条件とは、残量不足、有効期限切れ、試薬情報読み取り失敗、使用禁止該当試薬、保存温度又は湿度若しくはその両方の異常などである。また、振動や試薬容器の傾き異常を使用不可条件としてもよい。残量不足については、試薬情報に含まれる試薬残量によって判断することができる。また、有効期限切れについてもシステム時刻と試薬情報に含まれる有効期限との比較にて判断できる。試薬情報読み取り失敗については、ステップS9においてバッファ34に出力されるデータが「読み取り失敗」を表すデータであるか否かで判断できる。使用禁止該当試薬についてはロット番号及びシリアル番号等が確認データ格納部36に格納されているので、当該データと試薬情報に含まれるロット番号及びシリアル番号とを照合することにより特定する。さらに、保存温度又は湿度若しくはその両方の異常については、試薬情報に含まれる保存状況等に関する情報に基づき、輸送時及び保存時に所定の温度幅又は湿度幅若しくは温度幅及び湿度幅以内で保存されていたか、何時間所定の温度幅外で又は湿度幅外で若しくはその両方から外れる状態で放置されたのかなどを確認できる。所定の温度幅や湿度幅については、確認データ格納部36に格納されている。
【0060】
そして試薬使用可否判定部351は、当該試薬が使用可能であるか判断する(ステップS15)。所定の使用不可条件に基づき使用可能と判断された場合には(ステップS15:Yesルート)、端子Aを介して図6の処理に移行する。所定の使用不可条件に基づき使用不可であると判断された場合には(ステップS15:Noルート)、試薬使用可否判定部351は、使用不可を表すデータ及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS17)。バッファ34は、使用不可を表すデータ及びその書込指示を格納する。これに対してタグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介して使用不可を表すデータ及びその書込指示を受け取り、使用不可を表すデータ(使用可否の情報。以下同じ。)をRFタグ311に記録する(ステップS19)。但し、試薬情報読み取り失敗で使用不可と判断された場合には、書き込みも不可能な場合があるため、ステップS17及びS19はスキップされる場合もある。
【0061】
また、試薬使用可否判定部351は、ネットワークインターフェース部38に、試薬特定データ(試薬の種類、ロット番号及びシリアル番号)及び使用不可を表すデータをホストコンピュータ5に送信させる(ステップS21)。ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3から試薬特定データ及び使用不可を表すデータを受信すると、試薬DB管理部54に出力し、試薬DB60に登録させる(ステップS23)。試薬DB60には、出荷した全ての試薬の情報などが登録されている。すなわち、各試薬容器の試薬について出荷時に書き込まれる情報と使用可否フラグとが格納されている。さらに、出荷先データ等が含まれる場合もある。ステップS23では、試薬特定データにより特定の試薬容器の試薬を識別し、それに対応して使用可否フラグを使用不可にセットする。
【0062】
さらに、ホストコンピュータ5の通信制御部51は、例えば発注処理部55に試薬特定データ及び使用不可データを出力する。そうすると、発注処理部55は、発注とは判断しないが、警告メッセージとして試薬について問題が発生したことを例えば営業担当端末7のユーザ宛に送信する(ステップS25)。なお、この段階にて自動的に発注処理を行うようにしても良い。
【0063】
一方、試薬使用可否判定部351は、試薬交換を勧告するメッセージを分析装置3の表示装置に表示する(ステップS27)。また、例えば試薬交換を勧告するメッセージを表示する画面において、交換試薬の注文というボタンを設けて、ユーザに当該ボタンを押すことを勧める。そして、交換試薬の注文の指示に応じて又は場合によっては指示のいかんにかかわらず自動的に、発注処理部39は、交換試薬の注文に係る発注ログを発注ログ格納部40に格納し、ネットワークインターフェース部38に交換試薬の注文データをホストコンピュータ5へ送信させる(ステップS29)。交換試薬の注文データには、試薬の種類データ等を含む。
【0064】
ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3から注文データを受信し、発注処理部55に出力する。発注処理部55は、注文データに基づき発注データを発注DB56に登録するなどの発注処理を実施する(ステップS31)。また、発注処理部55は、例えば営業担当端末7のユーザ宛に注文データを転送することにより通知を行う(ステップS33)。これにより営業担当のユーザは、適切な処理を早期に実施することができる。また、発注DB56により試薬のメーカは在庫管理及び生産管理を実施することができる。
【0065】
なお、所定の使用不可条件には、試薬間違いを含める場合もある。これは、実施する分析が特定されており、当該分析により使用される試薬が特定されている場合に、当該試薬が試薬保管部32にセットされていなければ検出される。しかし、使用不可を表すデータをRFタグ311に書き込んでしまうことは不適切な場合もあるので、試薬間違いが検出された場合には交換の勧告のみを実施するようにしてもよい。
【0066】
次に、図6を用いて端子A以降の処理について説明する。分析装置管理部35の試薬使用可否判定部351は、所定の使用不可条件に基づき使用可能と判断した場合には、分析装置3の装置情報と試薬特定データとを、ネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる(ステップS35)。ここで装置情報は、分析装置IDと、稼動状況データ格納部37に格納されているデータ(センサ322による測定データ及び分析実施状況のデータ)とを含む。ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3から装置情報及び試薬特定データを受信し(ステップS37)、試薬チェック部521と装置チェック部522に受信データを出力する。
【0067】
試薬チェック部521は、試薬DB管理部54を介して試薬DB60から蓄積確認データを読み出し、当該蓄積確認データを用いて試薬特定データにより特定される試薬容器内の試薬の使用可否を確認する(ステップS39)。蓄積確認データについては、使用不可とされる試薬容器のロット番号、ロット番号及びシリアル番号の組み合わせの最新リストを含む。分析装置3に保持されているロット番号、ロット番号及びシリアル番号の組み合わせのリストが古い可能性があるため、ステップS39が実行される。なお、さらに分析装置間で分析結果に大きな差が出てしまうことが分かっている試薬の場合には、ロット番号、ロット番号及びシリアル番号の組み合わせに、分析装置ID等の分析装置を特定するためのデータが対応付けられ、それらのセットがリストに登録されている。また、使用不可の理由が特定されている場合には、理由データも合わせて登録されている。従って試薬チェック部521は、試薬特定データ及び装置情報とを用いて最新リストをチェックする。
【0068】
具体的には、試薬チェック部521は、同じ試薬、同じロット番号の試薬に使用不可と判断されたものがないかを検索し、その検索結果から試薬特定データにより特定される試薬が使用不可の可能性があるか(使用不可と判断された試薬のリストに含まれているか)を確認・判定する。使用不可と判断される試薬のリストは、試薬異常予知部63が結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて解析処理することで生成できる。なお、特定の試薬ロットが使用不可と判断される例としては、同じロット番号の試薬で使用不可となった試薬数が同じロット番号の全試薬数の5%を超えた場合等のように定めることができる。この使用不可と判断される試薬のリストは、試薬DB60に格納される。
【0069】
試薬チェック部521は、試薬特定データにより特定される試薬を使用不可と判断した場合には(ステップS41:Noルート)、RFタグ311への使用不可を表すデータの書込指示及び理由データを、通信制御部51に分析装置3へ送信させる(ステップS43)。分析装置3のネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5から使用不可を表すデータの書込指示及び理由データを受信し、分析装置管理部35に出力する。分析装置管理部35は、使用不可を表すメッセージ及び理由データを表示装置に表示する(ステップS45)。また、使用不可を表すデータ及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS47)。バッファ34は、使用不可を表すデータ及びその書込指示を格納する。これに対してタグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介して使用不可を表すデータ及びその書込指示を受け取り、使用不可を表すデータをRFタグ311に記録する(ステップS49)。処理は端子Gを介して図5のステップS29に移行する。
【0070】
また、試薬チェック部521は、試薬DB60において、当該試薬特定データに対応する使用可否フラグを使用不可にセットし、理由データを登録する(ステップS51)。この後ステップS25以降の処理を実施するようにしても良い。
【0071】
一方、試薬チェック部521は、試薬特定データにより特定される試薬を使用可能と判断した場合には(ステップS41:Yesルート)、試薬DB管理部54を介して試薬DB60を参照して該当試薬について最新のオプション情報、パラメータ及び閾値データ(以下、これらを最新データと略す。)を読み出す(ステップS53)。オプション情報は、特定の試薬項目や試薬ロットを使用する場合に、併せて使用することが必要になるものの情報であり、例えば試薬ロットとキャリブレータロットとの組み合わせの情報である。試薬項目によっては、試薬ロットとキャリブレータロットの組み合わせによって校正の精度に影響が出るケースがあるためである。また、閾値データについては、以下の説明で分析装置3において使用する第1の閾値データと、ホストコンピュータ5において使用する第2の閾値データとが含まれるが、ここでは第1の閾値データを読み出す。第1の閾値データは、試薬ブランク閾値(例えば吸光度0.1以下)、キャリブレータ測定値閾値(例えば吸光度で0.6以上0.9以下)、セルブランクデータ閾値、タイムコースデータ閾値を含む。
【0072】
試薬チェック部521は、最新データとして読み出したデータについてデータ更新が行われているか判断する(ステップS55)。全く更新が行われていない場合には送信する意味が無いためである。また、例えば試薬DB60等に最新データの送信履歴が登録されている場合には、当該試薬DB60を参照して未送信の更新が存在するか判断する。そして、データ更新があると判断された場合には(ステップS55:Yesルート)、試薬特定データにより特定される試薬の最新データを通信制御部51に分析装置3へ送信させる(ステップS57)。分析装置3のネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5から試薬特定データにより特定される試薬の最新データを受信すると、分析装置管理部35に出力する。分析装置管理部35は、試薬特定データにより特定される試薬の最新データを確認データ格納部36に格納すると共に、当該最新データ及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS59)。バッファ34は、最新データ及びその書込指示を格納する。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介して最新データ及び書込指示を受け取り、最新データをRFタグ311に記録する(ステップS61)。
【0073】
ステップS57の後に又はステップS55でデータ更新がないと判断された場合(ステップS55:Noルート)、端子Bを介して図7の処理に移行する。
【0074】
次に図7を用いて端子B以降の処理について説明する。装置チェック部522は、受信した装置情報から装置異常の有無を判定する(ステップS63)。例えば、稼動状況データにセンサ異常やその他の部位の異常を表すデータ等が含まれているか確認する。なお、ステップS63における装置異常の有無の判断は、分析の実施とは関係なく任意のタイミングで実施してもよい。異常ありに該当しないと判断された場合には(ステップS65:Noルート)、装置チェック部522は、正常メッセージを生成して、通信制御部51に分析装置3へ送信させる(ステップS67)。分析装置3のネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5から正常メッセージを受信すると、分析装置管理部35に出力する。分析装置管理部35は、表示装置に正常メッセージを表示する(ステップS69)。そして端子Cを介して図8の処理に移行する。
【0075】
一方、異常ありに該当すると判断された場合には(ステップS65:Yesルート)、装置チェック部522は、装置異常についての警告メッセージを生成し、通信制御部51に分析装置3へ送信させる(ステップS71)。分析装置3のネットワークインターフェース部38は、ホストコンピュータ5から装置異常についての警告メッセージを受信し、分析装置管理部35に出力する。分析装置管理部35は、装置異常についての警告メッセージを表示装置に表示する(ステップS73)。分析装置のユーザは、警告メッセージを見て、装置異常を解決するための適切な処置を実施して分析を開始する場合もあれば(端子Cを介して図8の処理に移行する場合)、警告メッセージの表示画面に併せて設けられたメンテンナンス発注ボタンを押下するなど、メンテナンス発注指示を入力する場合もある。分析装置3の分析装置管理部35は、ユーザからのメンテナンス発注指示を受け付けると、異常部分を特定したメンテンナンス注文データを生成して、発注ログ格納部40に格納すると共に、ネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる(ステップS79)。ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3からメンテナンス注文データを受信し、発注処理部55に出力する。発注処理部55は、受け取ったメンテナンス注文データを発注DB56に登録するなど発注処理を実施する(ステップS81)。例えば、メンテナンス担当端末9のユーザ宛に、メンテナンス注文データを転送し、メンテナンスの発注が行われたことを通知する(ステップS83)。
【0076】
なお、ステップS71の後に、装置チェック部522は、装置異常を表すデータを装置DB59に登録する(ステップS75)。装置DB59には、分析装置ID、正常又は異常を表す状態フラグ、稼動状況データ、異常の発生を検出した場合には日時及びその原因データ等が登録されている。ステップS75では、状態フラグを異常を表すようにセットし、原因データ(異常と判断した理由データ)を日時データと共に登録する。また、このような場合には、装置チェック部522から自動的に発注処理部55にメンテナンス注文データを送信するようにしても良い。この場合も、発注処理部55は、分析装置3からのメンテナンス注文データと同じようにメンテナンス発注処理を実施する(ステップS77)。また、メンテナンス担当端末9のユーザ宛に装置異常の発生を通知するようにしてもよい。
【0077】
図8を用いて端子C以降の処理について説明する。分析装置3のユーザは、例えば分析を行うべき検体を分析装置3にセットし、分析開始を指示する。分析装置3の分析装置管理部35は、ユーザからの分析開始指示を受け付ける(ステップS85)。そうすると、分析装置管理部35は、確認データ格納部36に格納された試薬情報及び試薬自体を用いた分析を開始する。そして、分析結果判定部352は、第1閾値データを確認データ格納部36から読み出し、当該第1閾値データを用いて分析時異常の有無を判定する(ステップS87)。ステップS87では、分析時の異常の有無を検体毎に判定するものである。なお、ステップS57においてホストコンピュータ5から最新の第1の閾値データを受信しない場合もあるので、その場合にはRFタグ311から読み出した試薬情報に含まれる第1の閾値データを用いる。具体的な判定方法としては、例えば特定の測定項目におけるタイムコースに関し、反応タイムコースの平衡到達時間が閾値として反応開始後5分以内と定められている場合、測定した反応タイムコースの平衡到達時間が6分であったならば、分析時異常ありと判定される。
【0078】
判定により異常が検出された場合には(ステップS89:Yesルート)、異常の発生を表示装置に表示し、ユーザに通知する(ステップS91)。ステップS91は、異常の発生が検出される毎に、実行される。判定により異常が検出されない場合(ステップS89:Noルート)、又は異常があったとしても可能ならばステップS91の後において、分析結果の解析を実施する(ステップS93)。これは分析装置の通常の処理であるからこれ以上述べない。そして、分析終了時に結果ファイルを生成し、例えばバッファ34に格納する(ステップS95)。また、分析装置3の表示装置に結果ファイルの内容(一部の場合もある)を表示する。本実施の形態では、どのような場合にも、すなわち分析時に異常が検出されず正常に測定が完了した場合、分析時に異常が検出されたが測定そのものは終了した場合、分析時に異常が検出され測定結果をも得られずに終了した場合(分析装置3が自動的に分析を中止した場合及びユーザが異常の発生の表示に応じて分析を停止させた場合を含む)等も、「分析が終了した」ものとする。結果ファイルは、環境情報と性能情報と異常が検出された場合には警告情報とを含む。環境情報は、図4−2でも述べたように、分析装置ID、測定項目、測定状況、今回使用したパラメータ、今回測定した試料の検体情報、今回のセルブランク(測定する際に使用するセル(試薬の反応・検出容器)のみの吸光度。セルの汚染度合いを表す。)、今回のタイムコース情報、分析結果(実測値情報)を含む。ここで検体情報とは、検体の識別ID、種類(血液や尿など)、色調(溶血、乳ビ、ビリルビン検体などの区別)や粘度などの検査結果及びそれに関連する情報を含む。また、実測値情報は、検体の校正前の実測値、校正後測定値、基準値(範囲)との対比結果に関する情報を含む。性能情報は、図4−2でも述べたように、今回の測定ブランク値、今回実施されたキャリブレーション情報、今回のコントロール測定結果を含む。警告情報は、ユーザの操作誤り、試薬の異常、分析装置の異常、結果の異常に関する情報及びそれらを判定するための情報(例えば閾値データ等)を含む。
【0079】
そして、分析結果判定部352は、結果ファイル及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS97)。バッファ34は、結果ファイル及びその書込指示を格納する。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介して結果ファイル及びその書込指示を受け取り、結果ファイルをRFタグ311に記録する(ステップS99)。
【0080】
そして、異常の検出の有無にかかわらず上で実施した分析において測定結果を得ることができた場合には(ステップS101:Yesルート)、分析結果判定部352は、分析結果の有効性判断等のために結果ファイルをネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる(ステップS103)。ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3から結果ファイルを受信し、チェック部52の分析結果チェック部523に出力する。分析結果チェック部523は、結果ファイルを結果ファイル格納部57に格納する(ステップS105)。また、分析結果判定部352は、分析結果を表示装置に表示する(ステップS107)。この後の処理は端子Dを介して図9の処理に移行する。
【0081】
一方、上で実施した分析において測定結果を得ることができなかった場合には(ステップS101:Noルート)、分析結果判定部352は、測定結果が得られない状態で分析結果チェック部523において有効性の判断をしても無駄であるため分析結果の報告のみのために結果ファイルをネットワークインターフェース部38にホストコンピュータ5へ送信させる(ステップS109)。ホストコンピュータ5の通信制御部51は、分析装置3から結果ファイルを受信し、実測値情報が空(例えばNull)となっている場合にはチェック部52を介して結果ファイル格納部57に格納する(ステップS111)。なお、このような場合には警告情報も付加されているので、分析装置3の異常を表すデータが警告情報に含まれている場合には、通信制御部51が発注処理部55に結果ファイルを出力し、発注処理部55が、結果ファイルの送信元の分析装置3についてメンテナンス発注処理を自動的に実施するようにしてもよい(ステップS113)。
【0082】
そして、再測定を実施する場合には(ステップS115:Yesルート)ステップS85に戻り、再測定を実施しない場合には(ステップS115:Noルート)端子Eを介して図7のステップS79に移行する。
【0083】
なお、例えば確認データ格納部36に格納されているリストに規定された軽微な異常が検出された場合には、その異常の原因を除去することを分析装置3のユーザに促す。再測定を実施した方が迅速な分析が可能となるためで、ステップS101でNoルートに遷移するものとする。ここで軽微な異常とは、ユーザの誤操作等を起因とする異常を意味し、例えば誤ったサンプルや試薬の使用、サンプル容量の不足等による測定値異常や、不要なものが装置に挟まったなどのユーザで容易に異常要因の除去が可能な装置異常等が挙げられる。
【0084】
次に図9を用いて端子D以降の処理について説明する。分析結果チェック部523は、試薬DB60に格納されている第2の閾値データを試薬DB管理部54を介して読み出す(ステップS117)。第2の閾値データは、分析結果の全体の有効性の有無を判定するためのデータである。より具体的には、試薬ブランク閾値、キャリブレータ測定値に対する閾値、コントロール測定値に対する閾値、検体情報、セルブランクデータ閾値、タイムコース閾値、タイムコースデータ閾値などを含む。そして、分析結果チェック部523は、当該第2の閾値データを用いて、さらに必要に応じて結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて、分析結果の有効性の有無、及び有効性が無い場合には再測定の要否を判定する(ステップS119)。ここでは、基本的に分析結果全体としての有効性を判断するものであって、個別の分析装置3では実施できない判断をホストコンピュータ5側で行う。
【0085】
ステップS119では、試薬ブランク閾値に関連して、測定開始時と終了時での比較、前回との比較、経時変動のチェック、使用した試薬と同じロット番号を有する他の試薬の測定データとの比較(例えば、経時的な試薬ブランクのチェック等)、他分析装置についてのデータとの比較などを行うことにより分析結果の有効性を判断する。また、キャリブレータ測定値に対する閾値に関連して、前回分析との比較、経時変動のチェック、他キャリブレータロットとの比較(経時変動のチェック等)、使用した試薬と同じロット番号を有する他の試薬の測定データとの比較(例えば、経時的なキャリブレータ測定値のチェック等)、他分析装置についてのデータとの比較などを行うことにより分析結果の有効性を判断する。さらに、コントロール測定値に対する閾値に関連して、校正前実測値に対する閾値との比較、校正後測定値に対する閾値との比較、コントロール試料につき前回との比較、経時変動のチェック、使用した試薬と同じロット番号を有する他の試薬の測定データとの比較(例えば、経時的なコントロール測定値のチェック等)、他コントロールロットデータとの比較(経時変動のチェック等)、他分析装置についてのデータとの比較などを行うことにより分析結果の有効性を判断する。また、セルブランクデータに対する閾値に関連して、経時変動のチェック、他分析装置についてのデータとの比較などを行うことにより分析結果の有効性を判断する。さらに、タイムコースデータに対する閾値に関連して、前回との比較、経時変動のチェック、他分析装置についてのデータとの比較などを行うことにより分析結果の有効性を判断する。このように、今回の結果ファイル以外の必要な結果ファイルについても結果ファイル格納部57から読み出して本処理において使用する。
【0086】
ステップS119で行われる判定の具体的な方法として、例えば試薬ブランクデータによる判定を例に取ると、例えば分析に用いた試薬ロットと同じ試薬の平均試薬ブランク上昇値が1週間あたりデータ値5で、同閾値の上限がデータ値10と定められている試薬において、分析結果から得られた、現在使用中である試薬の1週間あたりのブランク上昇値がデータ値12であった場合、試薬ブランクデータに対して判定の対象となった分析結果は、その有効性がないと判定される。同様にして試薬ブランクに関連する他のデータについて、それらの閾値を用いて有効性をそれぞれ判定することができる。
【0087】
さらに、閾値が複数規定されている場合もある。すなわち、注意レベルを規定するための閾値と、有効性なしを表すレベルを規定するための閾値とを設けるものである。例えば、有効性なしを表すレベルを規定するための閾値を超える(又は下回る)場合には、それだけで有効性なしと判定し、注意レベルを規定するための閾値を超える(又は下回る)場合には、他の判定結果との組み合わせや注意レベルの検出回数などによって最終的な有効性の有無を判定する。なお、閾値は3以上設定してもよく、その場合には注意レベルの深刻度合いに応じたポイントを規定しておき、検出された注意レベルに応じたポイントの合計値などが所定の値以上となった場合に有効性なしと判断するなど、様々な態様が可能である。
【0088】
なお、再測定の要否については、例えば統計的に再測定が適当と判断されるケースがあり、当該ケースに該当するか否かを判断する。
【0089】
また、分析結果チェック部523は、ステップS119で有効性なしと判断された場合にはルールDB58を参照して、原因を推定する(ステップS121)。なお、ステップS119で有効性ありと判断された場合には、原因を推定する必要がないため、ステップS121は実行されない。この処理は、様々な方法が可能であるが、例えば以下のような処理を行う。すなわち、個別検体の分析結果(又は測定結果)につき原因を例えばルールDB58に格納されているルールデータを用いて推定し、全検体の分析結果につき原因を集計する。ここで最も多く出現する原因を基に、例えばルールDB58に格納されている別のルールデータを用いて試薬又は分析装置につき原因を推定する。最も多く出現する原因だけではなく、原因の出現割合や組み合わせに応じて、ルールDB58に格納された、過去実績から得られているルールデータを適用して、原因を特定するようにしても良い。
【0090】
そして、分析結果チェック部523は、ステップS119及びS121における判定結果を通信制御部51に分析装置3へ送信させる(ステップS123)。一方、判定結果を結果ファイルに対応して結果ファイル格納部57に格納すると共に、有効性なしと判定された場合には、試薬が原因であれば試薬DB60において当該試薬の使用可否フラグを使用不可にセットし、分析装置が原因であれば装置DB59において当該分析装置について状態フラグを異常にセットする(ステップS127)。装置DB59には、日時及び原因データも登録される。試薬DB60にも原因データを登録するようにしても良い。
【0091】
分析装置3のネットワークインターフェース部38は、判定結果のデータをホストコンピュータ5から受信し、分析装置管理部35の分析結果判定部352に出力する(ステップS125)。分析結果判定部352は、受信した判定結果のデータを分析装置3の表示装置に表示すると共に(ステップS125)、有効性ありの判定を得られたか判断する(ステップS129)。有効性ありと判定された場合には、試薬情報の更新情報及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS131)。バッファ34は、試薬情報の更新情報及びその書込指示を格納する。試薬情報の更新情報は、試薬残量等を含む。但し、今回の分析結果ファイルの有効性判定結果もこのステップにおいて書き込むようにしても良い。タグリーダライタ321は、タグインターフェース部33を介して受け取った試薬情報の更新情報をRFタグ311に記録する(ステップS133)。
【0092】
一方、有効性なしと判定された場合には、再測定要と判断されたか確認する(ステップS135)。もし、再測定要と判断された場合には、2回以上再測定を実施したか判断する(ステップS137)。再測定が1回までであれば、端子Cを介して図8のステップS85に戻る。なお、ステップS85に移行する前に例えば再測定回数をカウントするカウンタを1インクリメントする。これに対して、再測定が2回以上である場合には、警告表示を分析装置3の表示装置に行い、処理を終了する場合もある(ステップS139)。一方、再測定不要と判断された場合には端子Fを介して図10の処理に移行する。
【0093】
図10を用いて端子F以降の処理を説明する。分析結果判定部352は、判定結果に試薬不良が原因として含まれているか確認する(ステップS141)。もし、試薬不良が原因として推定されている場合には、使用不可を表すデータ及びその書込指示をバッファ34に出力する(ステップS143)。バッファ34は、使用不可を表すデータ及びその書込指示を格納する。タグリーダライタ321が、タグインターフェース部33を介してバッファ34から使用不可を表すデータ及びその書込指示を受け取り、使用不可を表すデータをRFタグ311に記録する(ステップS145)。また、分析結果判定部352は、試薬交換を勧告するメッセージを分析装置3の表示装置に表示する(ステップS147)。この後端子Gを介して図5のステップS29に移行する。
【0094】
一方、試薬不良が原因ではない場合には、分析結果判定部352は、判定結果に分析装置3の異常が原因として含まれているか確認する(ステップS149)。分析装置3の異常が原因として推定されている場合には、メンテナンス実施を勧告するメッセージを分析装置3の表示装置に表示する(ステップS151)。そして処理は端子Eを介して図7のステップS79に移行する。
【0095】
さらに、分析装置3の異常が原因ではない場合には、分析結果判定部352は、分析装置3の表示装置に、不具合の除去を勧告するメッセージを表示する(ステップS153)。不具合とは、例えばキャリブレータの不良や検体の異常などである。これに応じてユーザが何らかの措置を講じ、不具合が解決した場合には(ステップS155:Yesルート)、端子Cを介して図8のステップS85に移行する。一方、不具合が解決しない場合には(ステップS155:Noルート)、端子Eを介して図7のステップS79に移行する。
【0096】
このようにすることにより試薬の管理及び分析の有効性判断が自動的に行われ、分析装置3のユーザの業務効率化がなされる。また、試薬やメンテナンスの発注も可能となるので、総合的な分析支援が可能となる。
【0097】
上では分析装置3及びホストコンピュータ5のフロントエンドにおける処理内容を示したが、本実施の形態ではホストコンピュータ5のバックエンドの処理も重要である。バックエンドの処理としては、データ更新部61、装置間差データ生成部62、試薬異常予知部63及び装置異常予知部64による処理がある。
【0098】
データ更新部61は、結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて第1及び第2の閾値データを更新して、試薬DB60に格納する。例えばコントロール測定値についての閾値の場合には、データ更新部61は、結果ファイル格納部57から、同一試薬ロット、データが測定された期間、異常と判定されたデータを除くなどの条件の下、処理対象データを抽出する。そして、予め定められた統計処理を実施して、新たな閾値データを決定する。例えば閾値データが、(平均値−3×標準偏差)から(平均値+3×標準偏差)と決定される場合には、平均値及び標準偏差を抽出されたデータから算出して上記式に従って閾値を計算する。計算結果である新しい閾値データは、試薬DB60に格納される。この計算は任意のタイミングで実施され、試薬DB60に登録されると、第1の閾値は分析装置3に送信され、第2の閾値は分析結果チェック部523において分析の都度使用されるようになる。従って、最新のデータを用いて判断がなされるようになる。なお、データ更新部61においては、処理方法、判定方法及び基準等は、更新すべきデータや測定項目によって異なる場合もある。
【0099】
また装置間差データ生成部62は、分析装置間での品質管理を目的とする機能であり、結果ファイル格納部57を参照して処理を行う。例えば、キャリブレーション情報に含まれるコントロール測定結果を用いて分析装置間差をチェックする場合を例に処理内容を説明する。例えば、結果ファイル格納部57から、測定日、測定項目、試薬ロット、コントロールロット等について設定された所定の条件の下にコントロール測定結果を抽出する。そして、所定の統計処理(例えば平均値との差の絶対値算出)を実施し、その統計処理の結果により(差の絶対値の大きさ)、各分析装置につき判定を行う。例えば、図11−1に示したように、装置IDに対応してデータの値を特定し、平均値を算出した後に|データ値−平均値|を算出する。判定については、図11−2に示すような基準テーブルに従う。図11−2の例では、10未満は装置間差なし、10以上20未満であれば装置間差なし(但し要観察)、20以上30未満であれば要注意、30以上40未満であれば装置間差検出、40以上であれば大きな装置間差検出となる。この判定結果については、装置間差データ格納部65に格納する。そして、判定結果を分析装置3に送信させて、分析装置3のユーザに判定結果を通知するようにしても良い。また、例えば分析装置間差が大きいと判断された分析装置3については、メンテナンス担当端末9のユーザ宛に警告メッセージを送信するようにしても良い。さらに正式に発注処理部55にメンテナンス発注処理を実施させるようにしても良い。
【0100】
また試薬異常予知部63は、結果ファイル格納部57に格納されたデータを用いて、特定の試薬ロットについて有効性なしの判定や異常の検出が増加するなどの傾向を判定して、試薬異常の発生を推定するなどの処理を実施する。その結果、例えば試薬DB60における使用不可の試薬リストに、試薬異常の発生が所定の基準以上の確率で推定される場合には当該試薬ロット番号を登録する。
【0101】
さらに装置異常予知部64は、結果ファイル格納部57及び装置DB59に格納されたデータを用いて、特定の種類の分析装置につき異常発生の検出が増加するなどの傾向を判定して、分析装置異常の発生を推定するなどの処理を実施する。その結果、例えば装置DB59に、異常発生の警告を登録したり、分析装置3に警告メッセージを送信させたり、メンテナンス担当端末9のユーザ宛に警告メッセージを送信させたり、実際に発注処理部55によりメンテナンス発注処理を自動的に行わせたりする。
【0102】
以上のような構成のシステムを構築及び使用することにより、以下のような効果が得られる。すなわち、結果ファイル格納部57に格納されているデータ等を用いる試薬異常予知部63及び装置異常予知部64が設けられており、特定の試薬ロット、シリアル番号について異常が起きる前に予知でき、また特定の分析装置に異常が起きる前に予知でき、問題が発生する前に対処できるようになる。また、試薬の寿命や分析装置の寿命が予測でき、分析システム全体の信頼性向上を図ることができるようになる。また、試薬の生産管理及び在庫管理も容易になる。さらに分析装置3のユーザは、異常が発生する前に対処可能となるので、クレーム率の低下が期待される。
【0103】
また、結果ファイル格納部57に格納されているデータを用いる装置間差データ生成部62が設けられており、分析装置間差のデータを収集することができるようになるため、当該分析装置間差を少なくするための処置(補正係数の設定などを含む)も随時可能となり、データの精度を高めることができるようになる。
【0104】
さらに、結果ファイル格納部57や装置DB59を管理しているため、複数の分析装置からのデータを用いて、分析装置の異常やその原因の特定が容易になる。
【0105】
また、図3には示されていないが、クレーム情報をもホストコンピュータ5に蓄積するようにして、試薬や分析装置の異常との相関などから事前対処法を導出することも可能となる。すなわちクレーム発生前の分析装置や試薬の状況を解析することにより、より異常予知のルールを適切なものに変更することも可能である。
【0106】
さらに、発注処理部55により発注データは発注DB56に格納されるようになっているので、このデータを用いて生産管理及び在庫管理も可能となる。さらに、発注DB56に格納されているデータを解析することにより、ユーザの使用状況の傾向や、分析装置のメンテナンス傾向を特定して、部品交換時期の予測、試薬配達時期の予測、分析装置の改良点の抽出など、試薬メーカ及び分析装置メーカにとって有用な情報を得ることができるようになる。
【0107】
また、遠隔のホストコンピュータ5から試薬容器31のRFタグ311にデータを書き込むことができるようになるため、試薬に関する最新データを書き込むことができるようになり、分析精度を向上させることができるようになる。また、使用できない試薬については、使用不可データを書き込むことにより、誤って使用不可能な試薬を使用して分析を実行するような事態を回避することができる。これによって、分析効率を向上させ、コスト及び労力の削減につながる。またホストコンピュータ5に特定の試薬につき使用不可が通知されるので、回収も迅速に実行できるようになる。
【0108】
以上本発明の一実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ホストコンピュータ5は一台のコンピュータではなく複数台のコンピュータにて上で述べた機能を実現することも可能である。また、分析装置3とホストコンピュータ5における機能分担については、ある程度変更することが可能である。例えば、分析前の試薬の使用可否の判断について全てホストコンピュータ5により判断するようにしても良いし、必要な最新データを分析装置3に送信しておき全て分析装置3により判断して判断結果をホストコンピュータ5に送信するようにしても良い。同じように分析後の分析結果の判定についても全てホストコンピュータ5において実施しても良いし、必要なデータを分析装置3に送信しておき分析装置3において全て実行して分析結果をホストコンピュータ5に送信するようにしても良い。
【0109】
また、試薬容器31にはRFタグ311のみを設けるような例を示したが、さらに試薬容器31に温度などのセンサを設けるようにしても良い。そのような場合には、例えば試薬容器31のセンサによる温度と、センサ322による温度とに許容範囲以上の差が存在する場合に、センサ322の異常を検出するなどのバリエーションも可能である。試薬容器31には、さらに他の機能を付加するようにしてもよい。
【0110】
なお、ホストコンピュータ5、営業担当端末7及びメンテナンス担当端末9については、図12に示すようなコンピュータ装置であって、当該コンピュータ装置においては、メモリ201とCPU203とハードディスク・ドライブ(HDD)205と表示装置209に接続される表示制御部207とリムーバブル・ディスク211用のドライブ装置213と入力装置215とネットワークに接続するための通信制御部217とがバス219で接続されている。オペレーティング・システム(OS)及び上記機能を実現するためのアプリケーション・プログラム等は、HDD205に格納されており、CPU203により実行される際にはHDD205からメモリ201に読み出される。必要に応じてCPU203は、表示制御部207、通信制御部217、ドライブ装置213を制御して、必要な動作を行わせる。また、処理途中のデータについては、メモリ201に格納され、必要があればHDD205に格納される。このようなコンピュータは、上で述べたCPU203、メモリ201などのハードウエアとOS及び必要なアプリケーション・プログラムとが有機的に協働することにより、上で述べたような各種機能を実現する。
【0111】
また分析装置3についても、分析を実施する機能については従来と同じであり、試薬保管部32にタグリーダライタ321を設けRFタグ311とのインターフェースを確保している。タグインターフェース部33、バッファ34、分析装置管理部35、確認データ格納部36、稼動状況データ格納部37、発注処理部39、発注ログ格納部40、及びネットワークインターフェース部38については、図12に示すようなコンピュータ装置により実現することも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 ネットワーク 3 分析装置
5 ホストコンピュータ 7 営業担当端末
9 メンテナンス担当端末 11 LAN
31 試薬容器 311 RFタグ
32 試薬保管部 321 タグリーダライタ 322 センサ
33 タグインターフェース部 34 バッファ
35 分析装置管理部 36 確認データ格納部
37 稼動状況データ格納部 38 ネットワークインターフェース部
39 発注処理部 40 発注ログ格納部
351 試薬使用可否判定部 352 分析結果判定部
51 通信制御部 52 チェック部
53 装置DB管理部 54 試薬DB管理部
55 発注処理部 56 発注DB
57 結果ファイル格納部 58 ルールDB
59 装置DB 60 試薬DB
61 データ更新部 62 装置間差データ生成部
63 試薬異常予知部 64 装置異常予知部
65 装置間差データ格納部
521 試薬チェック部 522 装置チェック部
523 分析結果チェック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と当該分析装置が接続される遠隔コンピュータとを有する分析システムにより実行される分析支援方法であって、
前記試薬容器のメモリから試薬情報を読み出すステップと、
読み出した前記試薬情報を基に前記試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第1判断ステップと、
前記第1判断ステップにおいて前記試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、使用不可を表すデータを前記試薬容器のメモリに書き込むステップと、
前記第1判断ステップにおいて前記試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、前記試薬容器を識別する識別情報に対応して使用不可を表すデータを前記遠隔コンピュータにより管理される試薬データベースに登録するステップと、
前記第1判断ステップにおいて前記試薬容器内の試薬が使用可能と判断された場合には、前記試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき前記試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第2判断ステップと、
前記第2判断ステップにおいて前記試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合には、使用不可を表すデータを前記試薬容器のメモリに書き込むステップと、
を含む分析支援方法。
【請求項2】
前記分析装置の稼動状況に関する分析装置情報に基づき分析装置の異常の有無について判断するステップ
をさらに含む請求項1記載の分析支援方法。
【請求項3】
前記試薬容器内の試薬を用いて分析を実施した場合には、当該分析の結果に係るデータを前記メモリに書き込むステップと、
前記分析の結果に係るデータを前記遠隔コンピュータにより管理される分析結果データ格納部に格納するステップと、
をさらに含む請求項1記載の分析支援方法。
【請求項4】
前記試薬容器内の試薬を用いて分析を実施した場合に、複数の試料による分析の結果に係るデータを用いて前記分析の結果全体について異常の有無を判断するステップ
をさらに含む請求項3記載の分析支援方法。
【請求項5】
容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と、
前記分析装置が接続される遠隔コンピュータと、
を有し、
前記分析装置が、
前記試薬容器のメモリに対してデータを読み書きするメモリ・リーダライタと、
前記メモリ・リーダライタに、前記試薬容器のメモリから前記試薬容器内の試薬に関する試薬情報を読み出させ、当該試薬容器内の試薬に関する試薬情報を基に前記試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第1判断手段と、
前記試薬容器内の試薬が使用不可と判断された場合には、前記メモリ・リーダライタに、使用不可を表すデータを前記試薬容器のメモリに書き込ませる手段と、
前記第1判断手段により前記試薬容器内の試薬が使用可能と判断された場合に、前記試薬情報の少なくとも一部を前記遠隔コンピュータに送信する手段と、
を有し、
前記遠隔コンピュータが、
前記分析装置から前記試薬情報の少なくとも一部を受信した場合には、前記試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき前記試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第2判断手段と、
前記第2判断手段による判断結果を、少なくとも前記試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合に前記分析装置に送信する手段と、
を有する分析システム。
【請求項6】
容器内部の試薬に関する試薬情報を格納するためのメモリを有する試薬容器を利用する分析装置と協働する遠隔コンピュータであって、
前記分析装置から前記試薬情報のうち少なくとも一部を受信した場合には、前記試薬容器内の試薬と所定の関係にある試薬の使用結果から特定された使用可否の条件に基づき前記試薬容器内の試薬の使用可否を判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段による判断結果を、少なくとも前記試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合に前記分析装置に送信する手段と、
前記第1判断手段により前記試薬容器内の試薬について使用不可と判断された場合には、当該試薬容器内の試薬が使用不可であるということを表すデータを試薬データベースに登録する手段と、
を有する遠隔コンピュータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−53229(P2011−53229A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277509(P2010−277509)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【分割の表示】特願2006−529296(P2006−529296)の分割
【原出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】