説明

分析方法

【課題】抗原および抗体に比して大きい粒子を用いた免疫学的反応において、抗原と抗体との反応効率を向上させることができる分析方法を提供すること。
【解決手段】抗原A1に対して、抗原A1の特定部位を認識し、光学的に認識可能なSERS活性粒子142と結合可能な第1の抗体11、および抗原A1の他の特定部位を認識し、磁性粒子Bと結合可能な第2の抗体12を接触させて、抗原A1、第1の抗体11および第2の抗体12からなる第1複合体13を形成させる第1形成ステップと、第1複合体13に対して、SERS活性粒子142および磁性粒子Bを第1の抗体11および第2の抗体12に接触させて、第1複合体13を含む第2複合体17を形成させる第2形成ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と磁性粒子を含む試薬との反応物の光学的特性を測定して検体の分析処理を行う分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラマン分光分析は、検体にレーザ光を照射することにより発生するラマン散乱光を検出する分析法であり、検出対象物の分子構造に関する情報を得ることができるため、ウィルス、蛋白質等の生化学物質や環境化学物質の検出、バイオセンサ等に有効な分析方法として知られている。しかしながら、このラマン分光分析は、ラマン散乱光が極めて微弱であることから、微量分析には適さないという問題があった。
【0003】
一方、原子レベルの粗さを持つ金、銀などの金属表面における吸着種のラマン散乱強度は、非吸着種に比較して10−10倍増強される場合があることが知られており、この現象は表面増強ラマン散乱(surface enhanced Rman scattering;SERS)と呼ばれている。さらに、金属ナノ粒子を凝集させることによって、非吸着種と比較してラマン散乱強度を1014倍程度まで増強させることができることが発見された。そこで、近年、原子レベルの粗さを持つ金・銀などの金属ナノ粒子を標識物質として用い、さらに、この標識物質と検出対象物との複合体を凝集させてラマン散乱強度を増強させることによって、検出対象物を分析する分析方法が注目されている。
【0004】
ところで、上述したSERSによる分析方法は、抗原抗体反応による反応産物に対して、標識物質を光学的に測定することで、検体の分析処理が行われる。なお、この反応産物は、抗原を認識し、標識物質で標識された第1抗体と、抗原を認識し、固相に結合可能な第2抗体とを抗原と反応させることで光学的測定可能な反応産物を得ることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−85753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す分析方法をSERS活性粒子等、粒子を用いる反応系に応用すると、粒子の大きさが抗原および抗体に対して大きい粒子同士の反応となってしまうため、目的である抗原と抗体との反応の親和性が低下し、反応効率を低下させてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、抗原および抗体に比して大きい粒子を用いた免疫学的反応において、抗原と抗体との反応効率を向上させることができる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる分析方法は、抗原に対して、該抗原の特定部位を認識し、光学的に認識可能な標識物質と結合可能な第1の抗体、および該抗原の他の特定部位を認識し、磁性粒子と結合可能な第2の抗体を接触させて、前記抗原、前記第1の抗体および前記第2の抗体からなる第1複合体を形成させる第1形成ステップと、前記第1複合体に対して、前記標識物質および前記磁性粒子を前記第1の抗体および前記第2の抗体に接触させて、前記第1複合体を含む第2複合体を形成させる第2形成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記標識物質は、SERS活性粒子であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第1形成ステップは、サイズの小さい方を先に接触させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第2形成ステップは、サイズの小さい方を先に接触させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第1形成ステップは、結合強度をもとに接触させる順序が決定されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第2形成ステップは、結合強度をもとに接触させる順序が決定されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第1の抗体は、抗原に対応して複数の種類を含み、前記標識物質は、前記第1の抗体に対応した複数の種類の標識物質を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる分析方法は、上記の発明において、前記第2複合体の前記磁性粒子を集磁する集磁ステップと、前記第2複合体の前記光学的に識別可能な標識物質を含む領域に対して光学的測定処理を行う測光ステップと、をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる分析方法は、抗原抗体反応をサイズの小さい状態で行なわせた後にサイズの大きい物質を結合させるようしたので、抗原抗体反応の反応効率を向上させ、感度の高い分析処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる分析方法を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる分析方法における集磁処理および測光処理を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる分析方法の変形例1を示す模式図である。
【図4】図4は、従来の分析方法である比較例1−1を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる分析方法の変形例2である比較例1−2を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明にかかる分析方法を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に例示する実施の形態や変形例に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。また、図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態にかかる分析方法を示す模式図である。図1に示す分析方法は、反応容器内に収容された検体および試薬の挙動を示しており、一検体(抗原)に対する各試薬の結合(会合)の様子を図化したものである。
【0020】
まず、図1(a)において、抗原A1に対し、第1の抗体11と第2の抗体12とを接触させて反応させる。ここで、第1の抗体11は、抗原A1の特定部位を認識して反応する抗原認識部111および、標識物質であるSERS活性粒子に結合した認識部位を認識して反応する標識物質認識部112を有し、第2の抗体12は、抗原A1の他の特定部位を認識して反応する抗原認識部122および、磁性粒子に結合した認識部位を認識して反応する磁性粒子認識部121を有する。
【0021】
つぎに、抗原A1に対して、第1の抗体11と第2の抗体12とを反応させた後、この反応産物である第1複合体13に対して、標識物質認識部112と反応する抗体認識部141および、光学的に認識可能な標識物質であるSERS活性粒子142を有する抗体認識SERS活性粒子14を接触させ、反応させる(図1(b))。
【0022】
さらに、第1複合体13と抗体認識SERS活性粒子14とを反応させた後、この反応産物である標識結合体15に対して、磁性粒子認識部121と反応する抗体認識部161および磁性粒子Bを有する抗体認識磁性粒子16を接触させ、反応させる(図1(c))。
【0023】
標識結合体15と抗体認識磁性粒子16とが反応すると、抗原A1に対して、SERS活性粒子142と磁性粒子Bとが結合した第2複合体17が形成される(図1(d))。
【0024】
上述した流れで抗原A1に対して第1の抗体11、第2の抗体12、SERS活性粒子142および磁性粒子Bを結合させることによって、高い反応効率を維持して第2複合体17を形成させることが可能となる。
【0025】
ここで、本実施の形態に用いられる標識物質は、SERS活性粒子の他、ラテックス粒子やシリカ粒子等を用いた蛍光粒子が挙げられる。その他、光学的に認識可能な粒子にも対応可能である。
【0026】
また、第1の抗体11の標識物質認識部112と抗体認識部141との結合、および第2の抗体12の磁性粒子認識部121と抗体認識部161との結合に用いられる各認識部の組み合わせとしては、ビオチン−アビジンまたはストレプトアビジン、ハプテン−抗ハプテン抗体(ジニトロフェノール(DNP)−抗DNP抗体、ジコキシゲニン(DIG)−抗DIG抗体、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)−抗FITC抗体)、ニッケル−ヒスチジンタグ、グルタチオン−(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)が挙げられる。
【0027】
なお、第1の抗体、第2の抗体、SERS活性粒子、磁性粒子の抗原に対する接触の順序は、各物質のサイズの小さいものから先に接触させることが好ましい。図1に示す接触順序は、抗体(2〜10nm)、SERS活性粒子(20〜200nm)、磁性粒子(1000nm)の順となっており、小さいものから順に接触させ、反応させている。括弧内の数値は、一例として示す各物質の一般的なサイズである。第1の抗体および第2の抗体は、同時に接触させるようにしてもよく、サイズの小さい方を先に接触させるようにしてもよい。SERS活性粒子および磁性粒子においても、反応効率が低下しなければ、同時に第1複合体に対して接触させるようにしてもよい。
【0028】
また、第1の抗体、第2の抗体、SERS活性粒子、磁性粒子の抗原に対する接触の順序を、各反応における結合強度としての結合定数をもとに、結合定数の小さいものから先に反応させるようにしてもよく、結合定数の大きいものから先に反応させるようにしてもよい。たとえば、抗原抗体反応の結合定数は、10−1〜10−1であり、ビオチン−アビジンの結合定数は、1015−1である。これらの値をもとに、接触の順序を決定することができる。また、抗原抗体反応を先に行い、SERS活性粒子と磁性粒子との接触の順序を、粒子の大きさまたは結合定数によって決定してもよい。なお、結合強度として、各結合の解離定数をもとに順序を決定してもよい。
【0029】
つぎに、図1に示す分析方法によって得られた第2複合体に対する光学的な測定について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる分析方法における集磁処理および測光処理を示す模式図である。
【0030】
まず、図2(a)において、磁性体Mを第2複合体17に接近させて、第2複合体17の磁性粒子Bを磁性体M側に引き付けて集磁する。このとき、磁性体Mは、永久磁石を接近させてもよく、電磁石によってオンとオフとの切り替えによって第2複合体17を引き付けるようにしてもよい。また、磁性体Mは、第2複合体17を収容する反応容器側面から接近させてもよく、磁性体Mを反応容器内に挿入して、直接的に引き付けるようにしてもよい。
【0031】
磁性体Mによって第2複合体17を集磁した後、レーザ光L1を照射して、SERS活性粒子142から散乱する表面増強されたラマン散乱光L2に対して測光処理することで、検体の分析処理を行うことができる(図2(b))。
【0032】
なお、図2(a)において、第2複合体17を磁性体Mによって集磁した際に、未反応の他の抗原、抗体およびSERS活性粒子を回収する。このとき、反応容器内の液体を回収し、生理食塩水等の新たな液体を注入して、未反応のSERS活性粒子を除去するとともに、集磁されている状態の第2複合体17の乾燥を防ぐことによって、測光処理を行った場合に、抗原と未反応のSERS活性粒子から散乱するラマン散乱光を誤って測定することなく、反応したSERS活性粒子のラマン散乱光のみに対して測光処理することができる。
【0033】
また、第2複合体17を集磁した磁性粒子Mを反応容器外に移送し、集磁された第2複合体17に対してレーザ光L1を照射し、測光処理を行ってもよい。
【0034】
つづいて、図1に示す分析方法の変形例1について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる分析方法の変形例1を示す模式図である。図3に示す変形例1では、同一の系において存在する複数種の抗原に対して、それぞれ異なるSERS活性粒子を結合させて分析を行う分析方法である。
【0035】
まず、図3(a)において、抗原A1,A2に対して、抗原A1,A2をそれぞれ認識可能な抗原認識部111,211および、標識物質であるSERS活性粒子に結合した認識部位を認識する標識物質認識部112,212を有する第1の抗体11,21と、抗原A1,A2をそれぞれ認識可能な抗原認識部122,221および、磁性粒子に結合した認識部位を認識する磁性粒子認識部121を有する第2の抗体12,22とをそれぞれ接触させ、反応させる。
【0036】
図3(a)で得られた第1複合体13,23に対して、SERS活性粒子142および、標識物質認識部112を認識して反応する抗体認識部141を有する抗体認識SERS活性粒子14と、SERS活性粒子142とは異なる振動数の散乱光を散乱するSERS活性粒子242および、標識物質認識部212を認識して反応する抗体認識部241を有する抗体認識SERS活性粒子24とをそれぞれ第1複合体13,23に接触させ、反応させる(図3(b))。
【0037】
その後、図3(b)で得られた標識結合体15,25に対して、磁性粒子Bおよび、磁性粒子認識部121を認識して反応する抗体認識部161を有する抗体認識磁性粒子16を各標識結合体15,25に接触させて、反応させ(図3(c))、第2複合体17,26を形成させる(図3(d))。
【0038】
図3に示した処理によって、同一の反応容器内に存在する複数の抗原に対して、同一の処理手順で、異なるSERS活性粒子を結合させることによって分析を行うことができる。また、図2に示したような、磁性粒子によって一箇所に集磁し、測光処理する場合においても、各SERS活性粒子から散乱するラマン散乱光を分光器等によって所定波長の強度をそれぞれ測定することで、一検体における複数項目(抗原)を同時に分析することが可能となる。
【0039】
上述した実施の形態にかかる分析方法によって、抗原と抗体との反応を確実に行なわせた後に、SERS活性粒子等の標識物質および磁性粒子を結合させるため、抗原抗体反応の反応効率を向上させ、一層精度の高い分析処理を行うことが可能となる。特に、標識物質に粒子等のサイズの大きいものを用いる場合に有効である。
【0040】
なお、本実施の形態は、検体と試薬との反応物の光学的特性を測定して検体の分析処理を行う自動分析装置にも適用可能である。検体および各試薬を分注する分注機構と光学的測定を行なう測光機構を設けることによって、自動的に分析処理を行うことが可能となる。
【0041】
<分析例1>
ここで、上述した分析方法と従来の分析方法とを比較する分析処理を行った。後述する実施例1、比較例1−1および比較例1−2について、それぞれの分析方法によって反応させて、集磁・洗浄処理および測光処理を行う分析処理を10回行い、得られたラマン信号強度の平均値と標準偏差%とを算出した。
【0042】
(実施例1)
抗原としての甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対して、図1に示す分析方法の手順に従い、第1の抗体としてのビオチン標識抗TSH抗体と、DNP標識TSH抗体とを接触させて反応させた後、ストレプトアビジン標識SERS活性粒子と抗DNP抗体標識磁性粒子とを接触させて反応させることによって、実施例1にかかる複合体を形成させた。
【0043】
(比較例1−1)
従来の分析方法として実施した分析方法を、図4を参照して説明する。図4は、従来の分析方法である比較例1−1を示す模式図である。まず、図4(a)において、抗原A1に対して、磁性粒子Bおよび、抗原A1の特定部位を認識して反応する抗原認識部122を有する抗原認識磁性粒子31を接触させて反応させる。
【0044】
その後、図4(a)で得られた磁性粒子結合体32に対して、SERS活性粒子142および、抗原A1の他の特定部位を認識して反応する抗原認識部111を有する抗原認識標識物質33を接触させて反応させ(図4(b))、抗原A1に磁性粒子BとSERS活性粒子142とが結合した複合体34を形成させる(図4(c))。ここで、比較例1−1で用いた抗原はTSHであり、磁性粒子、SERS活性粒子も実施例1と同様のものである。
【0045】
(比較例1−2)
さらに、比較のため、磁性粒子が予め抗体に結合されている抗原認識磁性粒子を用いて反応処理を行った。図5は、本発明の実施の形態にかかる分析方法の変形例2である比較例1−2を示す模式図である。
【0046】
まず、抗原A1に対して、抗原A1の特定部位を認識して反応する抗原認識部111および、標識物質であるSERS活性粒子を認識して反応する標識物質認識部112を有する上述した第1の抗体11と、磁性粒子Bおよび、抗原A1の他の特定部位を認識して反応する抗原認識部122を有する抗原認識磁性粒子41とを接触させ、反応させる(図5(a))。
【0047】
その後、図5(a)で得られた磁性粒子結合体42に対して、標識物質認識部112と反応する抗体認識部141および、光学的に認識可能な標識物質であるSERS活性粒子142を有する抗体認識SERS活性粒子14を接触させて反応させ(図5(b))、複合体43を形成させる(図5(c))。ここで、比較例1−2で用いた抗原はTSHであり、磁性粒子、SERS活性粒子も実施例1と同様のものである。
【0048】
上述した処理によって得られた実施例1、比較例1−1、比較例1−2の各複合体に対して、10回のラマン信号強度平均値と標準偏差%とを表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
ここで、ラマン信号強度平均値は、実施例1の平均値が最も大きく、比較例1−1の平均値が最も小さい。このラマン信号強度平均値は、抗原抗体反応の反応効率に直接的に関わる数値であり、本実施の形態にかかる分析方法が最も高い反応効率であることを示している。また、各数値の偏差を示す標準偏差%においても、実施例1が最も小さく、ラマン信号強度が安定して得られていることを示している。
【0051】
なお、比較例1−2は、磁性粒子が予め結合された抗体を用いて反応処理を行ったものであるが、比較例1−1と比して、ラマン信号強度平均値は大きく、標準偏差%は小さい。従って、抗原を介して抗体が結合した粒子−粒子での結合(比較例1−1)よりサイズの小さい反応である粒子−抗体での結合の方が、反応効率が高いことが理解できる。
【0052】
<分析例2>
さらに、上述した複数の抗原に対する分析方法と従来の分析方法とを比較する分析処理を行った。後述する実施例2および比較例2について、それぞれの分析方法によって反応させて、集磁・洗浄処理および測光処理を行う分析処理を10回行い、得られたラマン信号強度の平均値と標準偏差%とを算出した。
【0053】
(実施例2)
抗原A1としての甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対して、図3に示す分析方法の手順に従い、第1の抗体としてのビオチン標識抗TSH抗体と、DNP標識TSH抗体とを接触させて反応させた後、ストレプトアビジン標識第1SERS活性粒子と抗DNP抗体標識磁性粒子とを接触させて反応させることによって、実施例2にかかる第1SERS活性粒子複合体を形成させた。
【0054】
また、抗原A2としてのαフェトプロテイン(AFP)に対して、図3に示す分析方法の手順に従い、第1の抗体としてのDIG標識抗AFP抗体と、DNP標識AFP抗体とを接触させて反応させた後、抗DIG標識第2SERS活性粒子と抗DNP抗体標識磁性粒子とを接触させて反応させることによって、実施例2にかかる第2SERS活性粒子複合体を形成させた。
【0055】
(比較例2)
図4に示すように、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびαフェトプロテイン(AFP)の各抗原に対して、磁性粒子標識抗TSH抗体および磁性粒子標識抗AFP抗体をそれぞれ接触させて反応させた後、第1SERS活性粒子標識TSH抗体および第2SERS活性粒子標識AFP抗体をそれぞれ接触させて反応させて、比較例2にかかる第1SERS活性粒子複合体および第2SERS活性粒子複合体を形成させた。
【0056】
上述した処理によって得られた実施例2および比較例2の各複合体に対して、10回のラマン信号強度平均値と標準偏差%とを表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
ここで、実施例2の各SERS活性粒子のラマン信号強度平均値は、比較例2のラマン信号強度平均値と比して大きく、標準偏差%は小さくなっている。この結果からも、本実施の形態にかかる分析方法によって、複数の抗原を同一の系内で反応させた場合においても、安定した高い反応効率で分析処理を行うことが可能となる。
【0059】
以上のように、上述の実施の形態にかかる分析方法は、たとえば、磁性粒子を用いた分析処理を行うことに有用であり、特に、SERS活性粒子等、比較的大きな粒子を用いた分析処理に適している。
【符号の説明】
【0060】
11,21 第1の抗体
12,22 第2の抗体
13,23 第1複合体
14,24 抗体認識SERS活性粒子
15,25 標識結合体
17,26 第2複合体
31,41 抗原認識磁性粒子
32,42 磁性粒子結合体
33 抗原認識標識物質
34,43 複合体
111,122,211,221 抗原認識部
112,212 標識物質認識部
121 磁性粒子認識部
141,241 抗体認識部
142,242 SERS活性粒子
A1,A2 抗原
B 磁性粒子
M 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原に対して、該抗原の特定部位を認識し、光学的に認識可能な標識物質と結合可能な第1の抗体、および該抗原の他の特定部位を認識し、磁性粒子と結合可能な第2の抗体を接触させて、前記抗原、前記第1の抗体および前記第2の抗体からなる第1複合体を形成させる第1形成ステップと、
前記第1複合体に対して、前記標識物質および前記磁性粒子を前記第1の抗体および前記第2の抗体に接触させて、前記第1複合体を含む第2複合体を形成させる第2形成ステップと、
を含むことを特徴とする分析方法。
【請求項2】
前記標識物質は、SERS活性粒子であることを特徴とする請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記第1形成ステップは、サイズの小さい方を先に接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の分析方法。
【請求項4】
前記第2形成ステップは、サイズの小さい方を先に接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分析方法。
【請求項5】
前記第1形成ステップは、結合強度をもとに接触させる順序が決定されることを特徴とする請求項1または2に記載の分析方法。
【請求項6】
前記第2形成ステップは、結合強度をもとに接触させる順序が決定されることを特徴とする請求項1,2または5のいずれか一つに記載の分析方法。
【請求項7】
前記第1の抗体は、抗原に対応して複数の種類を含み、
前記標識物質は、前記第1の抗体に対応した複数の種類の標識物質を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の分析方法。
【請求項8】
前記第2複合体の前記磁性粒子を集磁する集磁ステップと、
前記第2複合体の前記光学的に識別可能な標識物質を含む領域に対して光学的測定処理を行う測光ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−128122(P2011−128122A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289721(P2009−289721)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】