説明

分析物検出アッセイ

本発明は分析物の検出のための方法、キットおよび組成物を提供する。本発明の方法では、第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子を修飾ポリヌクレオチド鋳型と共にインキュベートして、修飾ヌクレオチドを何ら伴わない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーを形成する。第2増幅/プライマー伸長反応において、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができない第2ポリメラーゼを使用して非修飾コピーを検出する。非修飾コピーの検出は試料中の分析物の存在および/または量の指標である。第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子の代わりに一対の分析物特異的プローブを使用することもできる。第1分析物特異的プローブは第1結合部および第1ポリメラーゼの第1部分を含み、第2分析物特異的プローブは第2結合部および第1ポリメラーゼの第2部分を含む。結合部が分析物に結合している場合、ポリメラーゼの第1および第2部分は相互作用して、修飾ヌクレオチドを何ら伴わない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーを形成するために使用される機能的ポリメラーゼ複合体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関する。さらに具体的には、本発明は、ポリメラーゼまたはその一部分に繋がれた結合部を有する分析物特異的結合分子を使用して分析物を検出および定量するための便利で迅速かつ鋭敏な方法、組成物およびキットに関する。分析物の結合部への結合時に、ポリメラーゼは核酸増幅反応のための鋳型を作成するための手段を提供する。増幅生成物の存在の検出は、試料中の分析物の存在の指標である。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイの開発および核酸検出における進歩は生物学的試料の検出の分野を進歩させてきた。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により試料中のタンパク質の存在に関して試料のハイスループットスクリーニングが可能になる。分析物の存在はアルカリ性ホスファターゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼに基づく酵素的比色アッセイの使用により検出されることが頻繁である。これは酵素基質の比色変化の検出の範囲に依存して感受性およびアッセイの範囲を限定する。これは血清中の分析物のおよその量を検出するための初期スクリーニング、または使用される具体的な方法および試薬の検出範囲内で試料が試験されることを確実にするための、多数の一連の希釈の使用のいずれかを必要とする。この方法でのその他の問題には、高いバックグラウンドレベルおよび低い感受性が含まれる。例えばELISAプレートに対するセイヨウワサビペルオキシダーゼの直接結合は非特異的バックグラウンドシグナルに至る。非特異的結合を低減させるために、相対的に不活性なタンパク質を含有する遮断溶液(乳または血清アルブミン)をアッセイに添加する。しかしながらバックグラウンドシグナルに至る非特異的結合は排除されないため、アッセイ感受性は低くなる。
【0003】
これらの限定に対処するために、試料中の分析物の酵素基盤の検出と併用するための核酸基盤の検出方法が開発されている。いくつかは「免疫PCRアッセイ」と称され、当分野において公知であり、ELISAアッセイの態様をPCRと組み合わせる。プローブ/抗体が試料中の分析物と結合した場合にアッセイは検出可能なシグナルを生成し、標的核酸の増幅が可能になる。
【0004】
例えば米国特許第5665539号は、検出を抗体およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせて特異的タンパク質の検出に関する感受性を増大させる。標準的な免疫PCRプロトコールでは、核酸配列に付着した抗体は抗原分子上のエピトープに結合する。抗体と核酸との間の付着は、核酸および抗体に関する二特異性親和性を有するリンカーを介して生じるので、特異的な抗原−抗体DNA抱合体の形成に至る。その後、付着した核酸配列のセグメントをPCRにより増幅後、ゲル電気泳動によりPCR生成物を検出する。しかしながらDNAは粘着性があり、そして検出前に未結合DNAを系から洗浄するのは決して容易ではなく、アッセイにおいて非特異的結合および高いバックグラウンドを引き起こすので、DNAの抗体に対する連結には問題がある。
【0005】
その他のこのようなアッセイは米国特許公開第2002/0132233号、米国特許第5985548号、米国特許公開第2005/0026161号および米国特許公開第2005/0239108号に記載される。米国特許公開第2002/0132233号、第2005/0026161号および第2005/0239108号は、オリゴヌクレオチドに直接的にまたは間接的に(例えば、ビオチン/アビジン結合対を使用して)繋がれた分析物特異的抗体を使用するサンドイッチ免疫PCR法を対象とする。試料中の分析物に対する抗体の結合は分析物−抗体−DNA複合体に至る。複合体を増幅条件に供することにより抗体結合を検出し、ここで付着したオリゴヌクレオチドを鋳型として使用して増幅生成物を作成する。しかしながらこれらの方法に、抗体またはその他の結合分子をポリメラーゼに繋ぐものはない。むしろそれらは全て直接的または間接的にオリゴヌクレオチドに繋がれた抗体の使用を必要とする。抗体/DNA抱合体の非特異的結合は高いバックグラウンドの原因となり、そして少量の分析物を検出する能力と干渉する。加えて2つの異なるポリメラーゼ反応を使用して増幅生成物を作成し、そしてアッセイの感受性を増大させる方法はない。
【0006】
米国特許第5985548号は別のサンドイッチ免疫PCR法を開示し、ここで抗体のような結合分子を標的オリゴヌクレオチドと抱合させる。上記で論じられた免疫PCR法と同様に、抗体/DNA抱合体の非特異的結合は高いバックグラウンドの原因となり、そして少量の分析物を検出する能力と干渉する。別の実施形態では、米国特許第5985548号は、抗体のような結合分子が、標的オリゴヌクレオチド上の部分(例えば、チラミン)を活性化することができるセイヨウワサビペルオキシダーゼのような酵素に抱合される、サンドイッチ免疫PCR法を開示する。一度チラミンが活性化されると、それは固体支持体上の受容体に結合する反応性の中間体を形成することにより、標的オリゴヌクレオチドを固定する。次いで固定された標的オリゴヌクレオチドを増幅反応に供する。この実施形態は抗体またはその他の結合部に連結されたDNAを含むレポーター抱合体の使用を回避するが、レポーター抱合体に付着した酵素により活性化される部分を有する標的核酸の使用を必要とし、そして活性化時に、増幅前に固定された受容体に必ず結合する反応性中間体を形成する部分を有する標的核酸の使用を必要とする。さらに米国特許第5985548号には、2つの異なるポリメラーゼ反応を用いて増幅生成物を作成する方法はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は分析物の検出のための方法、キットおよび組成物を提供する。本方法、キットおよび組成物は、溶液中の分析物の検出および定量に特に適している。特定の方法では、第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子は分析物に結合して、分析物、結合分子および第1ポリメラーゼを含む複合体を形成する。この複合体をプライマーおよび、特定のポリメラーゼが修飾鋳型を増幅することを防止する1つもしくはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む修飾核酸鋳型と共にインキュベートする。プライマーが修飾核酸鋳型にアニーリングする場合、それを第1ポリメラーゼにより伸長して、修飾ヌクレオチドを何ら含有しない修飾核酸鋳型のコピーを合成する。次いで修飾核酸鋳型を増幅できないが、非修飾コピーを増幅することが可能な、別のポリメラーゼを使用して、増幅反応において非修飾コピーを検出する。非修飾コピーの検出は試料中の分析物の存在および/または量の指標である。このように、修飾ポリヌクレオチド鋳型が、結合分子に繋がれた第1ポリメラーゼによりコピーされなければ、第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅しないので、2つの異なるポリメラーゼ反応の使用は感受性を増大し、バックグラウンドを低減し、かつ再現性を改善する。換言すれば、結合分子が試料中の分析物に結合しない場合、修飾ポリヌクレオチドは第1ポリメラーゼによりコピーされず、したがって第2ポリメラーゼが増幅するための鋳型を作成しない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの方法、組成物およびキットは、特異的結合対結合反応(例えば、免疫検出)の特異性をポリメラーゼ基盤の検出反応の感受性と組み合わせる。これによりさらに市販により入手可能な系に関して、別の結合分子に繋ぐ必要のない標的核酸を増幅するために使用することができるポリメラーゼに繋がれた抗体のような結合分子を提供することにより、感受性における増大およびバックグラウンドレベルの低減が可能になる。加えてこれらの方法、キットおよび組成物を、市販により入手可能な系において認められるバックグラウンドの種々の供給源を低減させるかまたは排除する、2つの異なるポリメラーゼ反応を伴う使用のために適合させることができる。
【0009】
一態様においては、分析物を検出するための方法が提供される。本方法は試料を反応混合物と接触させて、抗体のような結合分子を分析物に結合することを可能にすることを伴う。1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能である第1ポリメラーゼに、結合分子を繋ぐ。第1プライマーは修飾ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングし、そして第1ポリメラーゼにより伸長され、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを何ら含有しない、修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピー(「非修飾コピー」)を合成する。次いで非修飾コピーを第2ポリメラーゼで増幅する。第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能であるが、非修飾ポリヌクレオチド(非修飾コピー)を増幅することは可能である。増幅された非修飾コピーの検出は、試料中の分析物の存在または量の指標である。
【0010】
さらに別の態様においては、組成物が提供される。組成物は修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能である、第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子を含む。組成物はさらに修飾ポリヌクレオチド鋳型、または非修飾ポリヌクレオチド鋳型(すなわち修飾ヌクレオチドを何ら伴わない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピー)を増幅することが可能であるが、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能である第2ポリメラーゼを含む。
【0011】
修飾ポリヌクレオチド鋳型は、第2ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することを干渉/防止する、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む。適当な修飾にはデオキシウラシルおよび2’−O−メチル修飾が含まれる。一実施形態においては、結合分子に繋がれたポリメラーゼはクレノウまたはT4ポリメラーゼである。さらなる実施形態においては、第2ポリメラーゼはPfu DNAポリメラーゼである。当業者は、第1ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチドをコピーすることを許容するが、同時に第2ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することを防止する、その他のポリメラーゼ/修飾ポリヌクレオチドの組み合わせを設計することができる。
【0012】
例えば抗体−ポリメラーゼ融合タンパク質のような、またはストレプトアビジン−ビオチンもしくはアビジン−ビオチン相互作用を経る結合を介することを含む第1ポリメラーゼに、共有結合的または非共有結合的に結合分子を繋ぐことができる。好ましい実施形態では、結合分子はビオチン化抗体であり、そして第1ポリメラーゼをストレプトアビジンまたはアビジンのようなビオチン−結合分子に、例えば融合タンパク質として繋ぐ。
【0013】
別の態様においては、試料中の分析物を検出するための方法が提供される。本方法は、反応混合物をインキュベートして抗体のような結合分子が分析物に結合することを可能にすることを伴う。結合分子は3’エキソヌクレアーゼ活性を有する第1ポリメラーゼに繋がれ、そしてポリヌクレオチド鋳型ならびに、3’フラップおよび伸長時に新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を含む伸長プライマーの存在下で、インキュベートされる。インキュベーションにより、プライマーのポリヌクレオチド鋳型へのアニーリング、第1ポリメラーゼによる3’フラップの切断および第1ポリメラーゼでの切断されたプライマーの伸長が可能になる。切断されたプライマーの伸長は、伸長プライマーにより導入された新しいプライマー結合部位を含む増幅のための鋳型を形成する。増幅のための鋳型を、少なくとも2つのプライマー(そのうちの1つは伸長プライマーにより導入された新しいプライマー結合部位にアニーリングする)、および3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する第2ポリメラーゼと共にインキュベート後、増幅反応に供する。増幅用に増幅された鋳型の検出は、試料中の分析物の存在または量の指標である。1つの実施形態においては、伸長プライマーを約41℃以上の反応温度で標的核酸にアニーリングしないように設計する。この実施形態においては、第1ポリメラーゼとのインキュベーションを、結合分子の分析物への結合、伸長プライマーのポリヌクレオチド鋳型へのアニーリング、3’フラップの切断および切断されたプライマーの伸長を許容する第1反応温度で実施し、そして第2ポリメラーゼでの増幅反応を約41℃以上である第2反応温度で実施する。さらにこの実施形態においては、第2ポリメラーゼが41℃未満で不活性である限り、第2ポリメラーゼは3’エキソヌクレアーゼ活性を有し得る。別の実施形態においては、ポリヌクレオチド鋳型が1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含み、第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができない。例えば抗体−ポリメラーゼ融合タンパク質のような、またはストレプトアビジン−ビオチン相互作用を経る結合を介することを含む第1ポリメラーゼに、共有結合的または非共有結合的に結合分子を繋ぐことができる。
【0014】
さらに別の実施形態においては、前記の方法を実行するための組成物が提供される。組成物には、3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼに繋がれた抗体のような結合分子、伸長プライマーが3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼにより伸長される場合、3’フラップおよび増幅のための鋳型に新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を有する伸長プライマー、ならびに場合によっては第2ポリメラーゼおよび/または増幅のための鋳型における新しいプライマー結合部位に相補的な第2プライマーが含まれる。好ましくは、第2ポリメラーゼは3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する。一実施形態においては、プライマーは約41℃以上の反応温度では標的にアニーリングしない。組成物はさらに、修飾されていてもいなくてもよいポリヌクレオチド鋳型を含む。
【0015】
加えて、前記の方法、組成物およびキットのいずれかにおいて、ポリメラーゼに繋がれた結合分子はさらに、結合分子とポリメラーゼとの間に位置するポリペプチドリンカーのようなスペーサー分子を含む。
【0016】
別の態様では、開裂(split)ポリメラーゼ系と称される複合体が、第1および第2分析物特異的プローブ(ASP)と分析物の間で形成される。各分析物特異的プローブは、クレノウのような第1ポリメラーゼの第1または第2部分に繋がれた結合部を含む。ポリメラーゼの第1および第2部分は単離されていると本質的に不活性であるが、それらが互いに結合すると活性になるため、本質的に完全な酵素活性を再構成する。第1および第2ASPが互いに極めて近位で分析物に結合する場合、ポリメラーゼの第1および第2部分は相互作用して機能的なポリメラーゼ複合体を形成することができる。次いで機能的なポリメラーゼ複合体は、試料中の分析物の存在および/または量の指標である検出可能なシグナルを作成する。検出方法は、2つのポリメラーゼの相互関係および1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド鋳型に基づく。さらに具体的には、再構成された機能的なポリメラーゼ複合体は修飾ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングしたプライマーを伸長して、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを何ら含有しない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピー(「非修飾コピー」)を合成する。次いで非修飾コピーを第2ポリメラーゼで増幅後、検出する。第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能であるが、非修飾コピーを増幅することは可能である。
【0017】
一実施形態においては、その第1および第2部分が結合分子に繋がれた第1ポリメラーゼは、クレノウまたはT4ポリメラーゼである。さらなる実施形態においては、第2ポリメラーゼはPfu DNAポリメラーゼである。当業者は、第1ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチドをコピーすることを許容するが、同時に第2ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することを防止する、その他のポリメラーゼ/修飾ポリヌクレオチドの組み合わせを設計することができる。
【0018】
開裂ポリメラーゼ系の1つの態様では、分析物を検出する方法が提供される。本方法は試料を反応混合物と接触させて、第1ASPおよび第2ASPを分析物に結合させること、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド鋳型に第1プライマーをアニーリングすること、ならびに第1プライマーの伸長を許容することを必要とする。第1ASPは第1ポリメラーゼの第1部分に繋がれた第1結合部を含み、かつ第2ASPは第1ポリメラーゼの第2部分に繋がれた第2結合部を含む。第1および第2ASPが互いに極めて近位で分析物に結合する場合、第1ポリメラーゼの第1および第2部分は相互作用して機能的なポリメラーゼ複合体を形成することができる。次いで機能的なポリメラーゼ複合体は第1プライマーを伸長でき、修飾ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングして、1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを何ら含有しない修飾鋳型のコピー(「非修飾コピー」)を形成する。次に非修飾コピーを第2ポリメラーゼで増幅して検出可能なシグナルを生成する。第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能であるが、非修飾コピーを増幅することは可能である。増幅された非修飾コピーの検出は試料中の分析物の存在および/または量の指標である。
【0019】
開裂ポリメラーゼ系のなお別の態様においては組成物が提供される。この実施形態においては、組成物は第1分析物特異的プローブ、第2分析物特異的プローブならびに、場合によっては修飾ポリヌクレオチド鋳型および/または第2ポリメラーゼを含む。第1ASPは第1ポリメラーゼの第1部分に繋がれた結合部を含み、かつ第2ASPは第1ポリメラーゼの第2部分に繋がれた結合部を含む。それらが互いに関連する場合、第1ポリメラーゼの第1および第2部分は機能的なポリメラーゼ複合体を形成する。1つの実施形態においては、第1ポリメラーゼはクレノウまたはT4である。別の実施形態においては、例えば抗体−ポリメラーゼ融合タンパク質のような、またはストレプトアビジン−ビオチン相互作用を経る結合を介することを含むクレノウまたはT4のようなポリメラーゼの第1および第2部分に、共有結合的または非共有結合的に第1および第2結合分子を繋ぐ。好ましい実施形態においては、第1結合分子はストレプトアビジンまたはアビジン連結によりポリメラーゼの第1部分に繋がれたビオチン化抗体であり、かつ第2結合分子はストレプトアビジンまたはアビジン連結を介してポリメラーゼの第2部分に繋がれたビオチン化抗体である。
【0020】
開裂ポリメラーゼ系を、3’フラップおよび新しいプライマー結合部位を増幅のための鋳型に導入する5’領域を有するプライマーを使用する本明細書に記載される方法および組成物において使用し、かつこれに適合させることもできる。
【0021】
なお別の態様においては、組成物はクレノウフラグメントを含み、ここで該クレノウフラグメントは合成活性を有し、そして配列番号:1のアミノ酸201−605に95%以上同一であるアミノ酸配列からなる。
【0022】
開裂ポリメラーゼ法、組成物およびキットのいずれかでは、ASPは場合によっては、結合部とポリメラーゼの第1または第2部分との間に位置するポリペプチドリンカーのようなスペーサー分子を含む。
【0023】
その他の態様においては、本明細書に記載される組成物およびそのための包装材料のいずれかを含有するキットが提供される。
【0024】
これらの方法の全てにおいて、非修飾コピーまたは増幅のための鋳型の検出を、リアルタイムPCR検出アッセイ(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)反応)を含む、当分野において公知の数多くの方法により実施することができる。第1および第2ポリメラーゼ反応(非修飾コピーの合成および検出反応)を一工程反応(例えば、同じ反応混合物およびインキュベーション工程)として、または逐次的に(例えば、別個の反応混合物およびインキュベーション工程)実施できる。
【0025】
加えて、本発明の態様のいずれかを固相検出反応(例えば、プレートに結合した捕捉分子(例えば、抗体)、および場合によっては抗体またはストレプトアビジンのような結合分子に繋がれたポリヌクレオチド鋳型を利用する)、または非固相検出反応(例えば、ポリヌクレオチド鋳型に繋がれた抗体またはストレプトアビジンのような結合分子、ならびにポリメラーゼまたは第1および第2分析物特異的プローブに繋がれた抗体のような第1結合分子を使用する、溶液基盤の検出反応)として実行できる。
【0026】
本明細書に組み込まれ、そしてその一部を構成する添付の図面は、本発明の特定の実施形態を例証し、そして書面による記載と一緒に本発明の特定の原理を説明するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】図1Aは、修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用する固相検出アッセイの1つの実施形態を例証する。
【図1B】図1Bは、修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用する非固相検出アッセイ(ポリメラーゼに繋がれた第1抗体および鋳型核酸に繋がれた第2抗体の使用)の1つの実施形態を例証する。
【図2A】図2Aは、3’フラップおよび新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を有するプライマーを利用する固相検出アッセイの実施形態を例証する。第1ポリメラーゼの3’エキソヌクレアーゼ活性は3’フラップを切断するか、またはそうでなければ除去後、第1ポリメラーゼはプライマーを伸長してポリヌクレオチド鋳型のコピーを合成する。増幅/検出工程において使用されるプライマーに関するアニーリング温度よりも低いTを有するように、プライマーを設計できる。ポリヌクレオチド鋳型は修飾されていても非修飾でもよい。
【図2B】図2Bは、3’フラップおよび新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を有するプライマーを利用する、非固相検出アッセイ(ポリメラーゼに繋がれた第1抗体および鋳型核酸に繋がれた第2抗体の使用)の実施形態を例証する。第1ポリメラーゼの3’エキソヌクレアーゼ活性は3’フラップを切断するかまたはそうでなければ除去し、そして第1ポリメラーゼはプライマーを伸長してポリヌクレオチド鋳型のコピーを合成する。増幅/検出工程において使用されるプライマーに関するアニーリング温度よりも低いTを有するように、プライマーを設計できる。ポリヌクレオチド鋳型は修飾されていても非修飾でもよい。
【図3A】図3Aは、EGFに関する捕捉抗体および修飾ポリヌクレオチド鋳型を使用する検出アッセイで得られたデータを示す。
【図3B】図3Bは、VEGFに関する捕捉抗体および修飾ポリヌクレオチド鋳型を使用する検出アッセイで得られたデータを示す。
【図4】プレートに直接的に結合した分析物および修飾ポリヌクレオチド鋳型を使用する検出アッセイで得られたデータを示す。
【図5】ポリヌクレオチド鋳型(Alien1鋳型)ならびに、3’フラップおよびPCRプライマー結合部位を創成する5’領域を有するプライマー(Alien2伸長プライマー)を利用する分析物検出反応において使用することができるプライマーを例証する。Alien2伸長プライマーは相補領域をフランキングする2つのヌクレオチドミスマッチを含有して、exoポリメラーゼによる伸長を阻止する。Alien2伸長プライマーは40℃を超えてアニーリングしない。対照プライマー(図示していない)は一方の末端でのみ2つのヌクレオチドミスマッチを有する。
【図6】クレノウの第1部分に繋がれた第1抗体およびクレノウの第2部分に繋がれた第2抗体を使用する1つの実施形態を例証する。この実施形態では、極めて近位の2つのASPの結合時に、クレノウの開裂部分は相互作用して機能的なポリメラーゼ複合体を形成する。
【図7】全長クレノウ酵素および、本発明の種々の態様において有用であり得る種々の部分を例証する。
【図8】ビオチン化抗体の存在下でクレノウのN2およびC2フラグメントを使用する検出反応の結果を示す。
【図9】一定量のクレノウのN2およびC2フラグメントの存在下での抗体の変動濃度の容量応答曲線を示す。
【図10】GSTに結合するビオチン化抗GST抗体の存在を検出するためにストレプトアビジン部、異なるポリペプチドリンカーおよびクレノウ部を含む、種々のロングネック(Long Neck)融合タンパク質を使用する固相検出反応の結果を示す。
【図11】GSTに結合するビオチン化抗GST抗体の存在を検出するためにストレプトアビジン部、異なるポリペプチドリンカーおよびクレノウ部を含む、種々のロングネック(Long Neck)融合タンパク質を使用する固相検出反応の結果を示す。
【図12】VEGFに結合するビオチン化抗VEGF抗体の存在を検出するためにストレプトアビジン部、ポリペプチドリンカーおよびクレノウ部(SAv−GS−Lx4−KL)を含む、ロングネック(Long Neck)融合タンパク質を使用する溶液基盤(均質)検出反応の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の種々の例示的な実施形態に対して詳細に参照し、その実例を添付の図面において例証する。以下の詳細な説明は特定の実施形態、特色および本発明の態様の詳細のより十分な理解を読み手に与えるために提供され、そして本発明の範囲の限定として解釈すべきでないことは理解されよう。
【0029】
前記で論じたように、目的の物質の免疫検出のための試薬および方法は公知であり、そして市販により入手可能である。しかしながら、これらの試薬および方法は有意な欠点、最も顕著には、相対的に低い感受性、不十分なシグナル対ノイズ比(高いバックグラウンドシグナル)のいずれかまたはその双方を有する。加えて特定の様式においてのみ機能するように具体的に設計され、したがって目的の物質を検出するための幅広い使用に適合させることができないものもある。免疫PCR技術は感受性を改善するように考案されているが、市販により入手可能なテクノロジーは依然高いシグナル対ノイズ比を有し、その有用性が限定されている。
【0030】
本出願は、高度に鋭敏なポリメラーゼ部分に結合した高度に特異的な結合部分(例えば、抗体部分)を含む分析物特異的結合剤を使用することにより、シグナル対ノイズ比が改善されるが、同時に検出アッセイの特異性および/または感受性は保持または改善される方法、組成物およびキットを開示し、ここでポリメラーゼが増幅反応(例えば、PCR)のための鋳型を合成することを許容する条件下で、ポリメラーゼのための修飾ポリヌクレオチド鋳型と共に薬剤をインキュベートすることができる。増幅反応のための鋳型を、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能である第2ポリメラーゼで増幅する。2つの異なるポリメラーゼを使用することにより、任意の残留する非特異的な修飾ポリヌクレオチド鋳型は第2ポリメラーゼにより増幅されることができず、したがって検出シグナルの一部になることはないので、感受性が増大し、バックグラウンドが低減し、かつ再現性が改善される。さらに検出反応を結合反応と物理的に分離でき、そして非特異的結合試薬によるバックグラウンドシグナルを低減または排除することができるが、感受性は保持または改善される。
【0031】
定義
本明細書で使用される際には「分析物」という用語は本発明の方法により検出または検定される物質を指す。典型的な分析物は、限定するものではないがタンパク質、ペプチド、細胞表面受容体、受容体リガンド、核酸、分子、細胞、微生物およびそのフラグメント、または結合部、例えば抗体を発達させることができる任意の物質を含むことができる。
【0032】
本明細書で使用される際には「結合分子」とは分析物に特異的に結合する分子を指す。結合分子にはモノクローナル、ポリクローナルまたはファージ由来抗体、抗体フラグメント、ペプチド、リガンド、ハプテン、核酸、核酸アプタマー、プロテインA、プロテインG、葉酸、葉酸結合タンパク質、プラスミノーゲン、ならびにマレイミドおよびスルフヒドリル反応基が含まれる。さらなる有用な結合分子が当分野において公知である。
【0033】
本明細書で使用される際には「結合部」という用語は、分析物に安定して結合する分子を指す。結合部には、限定するものではないがモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、アプタマー、細胞表面受容体、受容体リガンド、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、プロテインAおよびプロテインGならびにその結合フラグメント、例えばFabが含まれる。結合部を直接的または間接的に反応分子に繋ぐ。
【0034】
本明細書で使用される際には「分析物特異的プローブ」または「ASP」という用語は結合部および反応部(例えば、ポリメラーゼの第1または第2部分)を有する分子を指す。結合部を反応部に作動可能なように繋ぐ。2つまたはそれより多いプローブが互いに極めて近位で結合する場合、反応部は効果的に相互作用する。2つのプローブが分析物上のその各々の結合部位に結合し、そしてその活性部が相互作用する場合、分析物特異的プローブは互いに極めて近位にある。結合分子を直接的または間接的に反応部に繋ぐ。
【0035】
本明細書で使用される際には「相互作用する」という用語はASPの反応部に適用されるように、2つまたはそれより多い反応部(例えば、ポリメラーゼの第1および第2部分)を互いに極めて近位にして反応部が物理的に会合するのを可能にすることを指す。例えばポリメラーゼの第1および第2部分を有する一対の分析物特異的プローブが分析物に結合する場合、ポリメラーゼの第1および第2部分は極めて近位になり、相互作用し、そして機能的なポリメラーゼ複合体を形成するようになる。この機能的なポリメラーゼ複合体は次いで、ポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズしたプライマーの3’末端を伸長して増幅鋳型を形成するようになる。ポリメラーゼの第1および第2部分が分離されている(相互作用しない)場合、部分は合成活性を実質的に欠如する。
【0036】
本明細書で使用される際には「合成活性を実質的に欠如する」という用語は、機能的なポリメラーゼ複合体の合成活性の50%、40%、30%、20%または10%以下、および好ましくは1%未満しか有さないポリメラーゼの第1または第2部分を指す。
【0037】
本明細書で使用される際には第1ポリメラーゼに関する「部分」という用語は、単離された場合に核酸合成活性を実質的に欠如するが、核酸ポリメラーゼの第2部分と相互作用する場合に核酸合成活性を有する核酸ポリメラーゼのフラグメントを指す。本明細書で使用される際には第1ポリメラーゼに関する「部分」とは50−1000個のアミノ酸のフラグメントを指すが、それは全長ポリメラーゼに満たない。一実施形態においては、部分は核酸ポリメラーゼの少なくとも50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550もしくは600個またはそれより多いアミノ酸を有するが、全長ポリメラーゼに満たない。例えばクレノウの第1部分は配列番号:2のアミノ酸配列を有することができ、クレノウの第2部分は配列番号:3のアミノ酸配列を有することができるが、全長クレノウは配列番号:1のアミノ酸配列を含む。
【0038】
本明細書で使用される際には「機能的なポリメラーゼ複合体」という用語は、本明細書で定義されたようなポリメラーゼの2つまたはそれより多い部分を指し、それは相互作用していずれかの部分単独(例えば、複合体でない)の合成活性の少なくとも2倍である合成活性(ポリメラーゼ活性)を有するポリペプチド複合体を形成する。
【0039】
好ましい実施形態では、ASPの結合部は抗体である。
【0040】
本明細書で使用される際には「抗体」という用語は抗原、例えば分析物を結合することが可能である免疫グロブリンタンパク質を指す。抗体は一般的には、「エピトープ結合フラグメント」と称される全長抗体により認識されるエピトープに結合する能力を保持する抗体の任意の部分を含む。抗体フラグメントの例としては、好ましくは、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)ならびにVまたはVドメインのいずれかを含むフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。一本鎖抗体を含むエピトープ結合フラグメントは(複数の)可変領域を単独で、または以下:ヒンジ領域、C1、C2およびC3ドメイン;の全体または一部分との組み合わせで含むことができる。
【0041】
本明細書で使用される際には、「核酸ポリメラーゼ」または「ポリメラーゼ」とはヌクレオチドの重合化を触媒する酵素を指す。一般的には、酵素は核酸鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端で合成を開始後、鋳型鎖の5’末端に向かって進む。「DNAポリメラーゼ」はデオキシリボヌクレオチドの重合化を触媒する。公知のDNAポリメラーゼには、例えばパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、Gene 108:1(1991))大腸菌DNAポリメラーゼI(LecomteおよびDoubleday、Nucleic Acids Res.11:7505(1983))、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstromら、J.Biol.Chem.256:3112(1981))、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(MyersおよびGelfand、Biochemistry 30:7661(1991))、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(SteneshおよびMcGowan、Biochim Biophys Acta 475:32(1977))、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも称される、Carielloら、Nucleic Acids Res 19:4193(1991))、9°Nm DNAポリメラーゼ(New England Biolabsの製造中止になった製品)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(DiazおよびSabino、Braz J.Med.Res 31:1239(1998))、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chienら、J.Bacteoriol 127:1550(1976))、パイロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)KOD DNAポリメラーゼ(Takagiら、Appl.Environ.Microbiol.63:4504(1997))、JDF−3 DNAポリメラーゼ(特許出願第WO0132887号)、パイロコッカスGB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginestaら、Biotechniques 16:820(1994))、T4 DNAポリメラーゼおよび大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(「クレノウ」)が含まれる。前記の酵素のいずれかのポリメラーゼ活性を当分野において周知の方法により決定することができる。一実施形態においては、本発明の方法は3’ヌクレアーゼ活性を保有するポリメラーゼおよび3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する第2ポリメラーゼを利用する。3’ヌクレアーゼ活性を保有するまたは3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するポリメラーゼは当分野において公知であり、かつ本明細書に記載される。別の実施形態においては、本方法は修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能である第1核酸ポリメラーゼ、および修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能であるか、または実質的に不可能である第2核酸ポリメラーゼを利用する。修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能なポリメラーゼ、および修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能であるか、または実質的に不可能であるポリメラーゼは当分野において公知であり、かつ本明細書に記載される。本明細書に開示される方法、組成物およびキットの関連では、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが「不可能である」かまたは増幅もしくはコピー「できない」第2ポリメラーゼは、第2ポリメラーゼが特定の条件下で修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅または複製できないことを意味するのではなく、むしろ例えば第1ポリメラーゼと比較して、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅するときに少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10000倍、少なくとも100000倍または少なくとも1000000倍効果が低いことを含む、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅またはコピーする場合に、第2ポリメラーゼが第1ポリメラーゼよりも実質的に効果が低いことを意味する。開裂ポリメラーゼ系では、本方法は第1および第2部分に開裂する第1ポリメラーゼを利用する。一実施形態においては、第1ポリメラーゼはファミリーAポリメラーゼである。別の実施形態においては、第1および第2部分に開裂するポリメラーゼはクレノウである。
【0042】
本明細書で使用される際には「繋がれた」とは共有結合的および非共有結合的な相互作用により、例えば水素、イオンまたはファンデルワールス結合による2つの分子の会合を指す。このような結合は少なくとも2つの同じまたは異なる原子またはイオンの間で、これらの原子またはイオンの電子密度の再分布の結果として形成され得る。例えば酵素を、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用を経る結合を介して、またはFcプロテインA/G相互作用を介する結合を経て、抗体−酵素融合タンパク質として抗体に繋ぐことができる(例えば、ポリメラーゼをプロテインA/Gに繋ぎ、それを次に抗体のFc領域に結合する)。
【0043】
本明細書に記載されるような「抗体結合分子」は抗体に結合するリガンドである。一般的には、リガンドは抗原結合部位を経て抗体に結合しない。非限定的な例には、プロテインA、プロテインLおよびプロテインGが含まれる。
【0044】
本明細書で使用される際には「融合ポリペプチド」とは、互いにインフレームで連結された2つまたはそれより多いポリペプチドを含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される際には「連結された」または「融合された」という用語は、互いにインフレームで連結された2つまたはそれより多いポリペプチドをコードする融合分子を形成するためのポリペプチドまたは核酸の2つまたはそれより多いセグメントを一緒に連結することを意味する。2つまたはそれより多いポリペプチドを、直接的にまたはリンカーを介して連結できる。
【0045】
本明細書で使用される際には、用語「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)およびプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾プリンもしくはピリミジン塩基のN−グリコシドである任意のポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドはその他のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズできるか、または自己ハイブリダイズ(例えば、ヘアピン構造)できる。オリゴヌクレオチドには、限定するものではないが一本および二本鎖オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0046】
本明細書で使用される際には「ポリヌクレオチド鋳型」という用語は、プライマーがハイブリダイズし、かつ例えばPCRまたはプライマー伸長反応において核酸ポリメラーゼにより複製される核酸配列を指す。一実施形態においては、第1ポリメラーゼの第1および第2部分が相互作用して機能的なポリメラーゼ複合体を形成する場合、ポリヌクレオチド鋳型は複製される。本明細書で使用される際には「非修飾コピー」は、第1ポリメラーゼまたは修飾ポリヌクレオチド鋳型に存在する修飾ヌクレオチドを何ら含有しない機能的なポリメラーゼ複合体により合成される修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーである。非修飾コピーは、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能である第2ポリメラーゼにより増幅される。
【0047】
本明細書で使用される際には「修飾ポリヌクレオチド鋳型」または「修飾核酸鋳型」とは、鋳型が第2ポリメラーゼ(例えば、Pfuポリメラーゼ)によりコピーされることを防止するが、第1ポリメラーゼ(例えば、クレノウまたはT4ポリメラーゼ)によりコピーされることを防止しない1つまたはそれより多い非天然ヌクレオチドを伴うポリヌクレオチド鋳型を指す。このような非天然修飾には、チミンをウラシルで置換すること、および2’ヒドロキシルを2’−O−メチルで置換することが含まれる。その他の適当な修飾には3’−5’逆デオキシリボヌクレオチド(Qiang Liuら、Biotechniques.33:129−138(2002年7月))、ヒポキサンチン、およびその他の当分野において公知のおよび本明細書に記載される非伝統的なヌクレオチドが含まれ得る。「修飾核酸鋳型」を本明細書に記載される反応条件下(例えば、1倍Pfuバッファー、60−72℃)でPfuポリメラーゼ(パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、Gene 108:1(1991)))によりコピー(例えば、増幅)することはできないが、クレノウに適当な条件下(10mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM MgCl、7.5mM DTT、室温)でクレノウにより複製することができる。鋳型が修飾ポリヌクレオチド鋳型であるかどうかを決定するためのアッセイは本明細書に記載され、かつ当分野において公知である。
【0048】
本明細書で使用される際には、用語「相補的」は、2つのポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド鎖の領域の間の配列相補性の概念を指す。塩基がチミンまたはウラシルである場合、第1ポリヌクレオチド領域のアデニン塩基が、第1領域に対して逆平行である第2ポリヌクレオチド領域の塩基と特異的水素結合(「塩基対形成」)を形成することが可能であることは公知である。同様に、塩基がグアニンである場合、第1ポリヌクレオチド鎖のシトシン塩基が第1鎖に対して逆平行である第2ポリヌクレオチド鎖の塩基と塩基対形成することが可能であることは公知である。2つの領域を逆平行の様式で整列させたときに、第1領域の少なくとも1つのヌクレオチドが第2領域の塩基と塩基対形成することが可能である場合、ポリヌクレオチドの第1の領域は異なるポリヌクレオチドの第2領域に対して相補的である。したがって、ヌクレオチド位置毎に2つの相補的ポリヌクレオチドが塩基対形成することは要求されない。「相補的」とは第2ポリヌクレオチドに対して100%または「十分に」相補的であり、したがってヌクレオチド位置毎に塩基対を形成する第1ポリヌクレオチドを指すことができる。「相補的」とはまた、100%相補的でない(例えば、90%、80%、70%、60%相補的)、1つまたはそれより多いヌクレオチド位置でミスマッチしたヌクレオチドを含有する第1ポリヌクレオチドを指すこともできる。
【0049】
本明細書で使用される際には「ハイブリダイゼーション」または「アニーリング」という用語は、相補的(部分的な相補的を含む)ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド鎖、例えばプライマーおよび鋳型の対形成を記載するために用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわちポリヌクレオチド鎖間の会合の強度)は、ポリヌクレオチド間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドの融解温度(T)、他の成分の存在(例えば、ポリエチレングリコールの存在または不在)、ハイブリダイズする鎖のモル濃度、およびポリヌクレオチド鎖のG:C含量を含む、当分野において周知の多くの因子の影響を受ける。
【0050】
本明細書で使用される際には、1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドに「ハイブリダイズ」または「アニーリング」すると称される場合、それは2つのポリヌクレオチド間で何らかの相補性が存在するか、または2つのポリヌクレオチドが高ストリンジェンシー条件下でハイブリッドを形成することを意味する。1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドにハイブリダイズしないと称される場合、それは2つのポリヌクレオチド間で配列相補性が存在しないか、または高ストリンジェンシー条件下で2つのポリヌクレオチドの間でハイブリッドが形成されないことを意味する。
【0051】
「ヌクレアーゼ」という用語は、5’−3’エンドヌクレアーゼ活性および/または5’−3’エキソヌクレアーゼ活性(5’エキソヌクレアーゼ)を保有する酵素を指す。5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を保有する酵素には、DNAポリメラーゼ、例えば大腸菌由来のDNAポリメラーゼIならびにサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)およびサーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl)由来のDNAポリメラーゼが含まれる。「ヌクレアーゼ」という用語はまたFENヌクレアーゼをも包含する。FEN酵素は5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を保有し、そして一本鎖および二本鎖DNAの接合部でホスホジエステル結合の加水分解切断を経て5’核酸フラップを切断する。FENヌクレアーゼ酵素には、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeglobus fulgidus)、メタノコッカス・ヤナシ(Methanococcus jannaschii)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、ヒト、マウスまたはアフリカツメガエル(Xenopus laevis)由来のFEN酵素が含まれる。ヌクレアーゼにはまた出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)RAD27および分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)RAD2、Pol I DNAポリメラーゼ随伴5’−3’エキソヌクレアーゼドメイン(例えば、大腸菌、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)(Tfl)、バシラス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)(Bca)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae))ならびに限定するものではないがT5 5’−3’エキソヌクレアーゼ、T7遺伝子6エキソヌクレアーゼおよびT3遺伝子6エキソヌクレアーゼを含む、FENのファージ機能的相同体もまた含まれる。
【0052】
「3’ヌクレアーゼ」または「3’エキソヌクレアーゼ」という用語は、3’−5’エンドヌクレアーゼ活性(3’エンドヌクレアーゼ)および/または3’−5’エキソヌクレアーゼ活性(3’エキソヌクレアーゼ)を保有する酵素(例えば、ポリメラーゼ)を指す。3’ヌクレアーゼ活性を保有する酵素は本明細書に記載されるか、または当分野において公知である。
【0053】
用語「3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する」は、酵素がT4、T7、PfuまたはクレノウDNAポリメラーゼのような野生型ポリメラーゼの3’ヌクレアーゼ活性の5%または10%以下、および好ましくは0.1%、0.5%または1%未満を保有することを意味する。
【0054】
本明細書で使用される際には「3’フラップ」とは標的核酸にハイブリダイズした場合に3’一本鎖として突出する一本鎖核酸フラップを指す。3’フラップは標的核酸に対して非相補的であり、かつ3’ヌクレアーゼにより切断される。
【0055】
本明細書で使用される際には「切断反応」とは、オリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドから放出されるフラグメントまたはヌクレオチドおよびフラグメントに酵素的に分離する(すなわちホスホジエステル結合によりその他のフラグメントまたは核酸に物理的に連結されない)ことを指す。切断反応をエキソヌクレアーゼ活性、エンドヌクレアーゼ活性または制限酵素活性により実施する。エンドヌクレアーゼ活性を利用する切断反応にはINVADER(登録商標)検出アッセイ(Third Wave Technologies;マディソン、ウィスコンシン州)が含まれ、これは米国特許第6348314号に記載され、そしてその全てが参照により本明細書に組み込まれる。本方法に包含される切断反応アッセイには分子ビーコン検出アッセイ(種々の商業的供給源から供給される)およびTAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)検出アッセイもまた含まれ、これらは米国特許第5723591号;第5925517号および第5804375号に記載され、その各々はその全てが参照により本明細書に組み込まれる。本発明に有用な切断反応はまた米国特許第6548250号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の方法におけるヌクレアーゼによりこのような切断反応を実行できる。
【0056】
本明細書で使用される際には、用語「切断生成物」は、ヌクレアーゼによる切断反応において切断され、かつ溶液に放出されるオリゴヌクレオチドフラグメントである。
【0057】
本明細書で使用される際には「増幅」という用語は核酸配列に適用される場合、それにより特定の核酸配列の1つまたはそれより多いコピーが鋳型核酸から作成される過程を指す。一般的には当分野において周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)テクノロジー(Dieffenbach,C.W.およびG.S.Dveksler(1995)PCR Primer,a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、プレーンビュー、ニューヨーク州)を用いて増幅を実施する。しかしながら本明細書で使用される際には、増幅はまた核酸配列の一工程複製/コピー(例えば、プライマー伸長反応)を含むと意図される。
【0058】
本明細書に記載されるいずれかの方法では、増幅鋳型の合成および検出反応を一工程反応(例えば、同じ反応混合物およびインキュベーション工程)として、または逐次的に(例えば、別個の反応混合物およびインキュベーション工程)実施できる。第2ポリメラーゼは、例えば第1プライマー伸長反応条件(例えば、Pfuポリメラーゼ)下で、非修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能であるが、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが不可能である任意のポリメラーゼでよい。
【0059】
別の実施形態では、第2ポリメラーゼは化学的処理されたホットスタート用のTaq DNAポリメラーゼ(例えば、SURESTART(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ;Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)のようなTaqポリメラーゼである。この実施形態においては、特にTaqポリメラーゼはウラシル塩基を認識するので、第2ポリメラーゼでの増幅の前に修飾ポリヌクレオチド鋳型を除去するのが好ましい。修飾ポリヌクレオチド鋳型の除去に適当な薬剤および方法は当分野において公知であり、かつ第1プライマー伸長反応後、第2ポリメラーゼでの増幅前に、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)で試料を処理することを含む。UDGはNew England Biolabs(ビバリー、マサチューセッツ州)から入手可能である。UDGはウラシル含有DNAのホスホジエステルバックボーンからウラシル塩基を切断するが、天然の(すなわちチミン含有)DNAには影響を及ぼさない。得られた脱ピリミジン部位はDNAポリメラーゼによる複製を遮断し、そして酸/塩基加水分解に対して非常に不安定である。したがって第1プライマー伸長反応の後であるが、Taqポリメラーゼでの増幅の前に試料をUDGで処理することは、任意の残留する修飾ポリヌクレオチド鋳型を除去し、したがって任意のバックグラウンドシグナルの最小化を支援する。
【0060】
好ましい実施形態では、第1ポリメラーゼはクレノウまたはT4ポリメラーゼである。第1ポリメラーゼおよび結合分子、例えば抗体は、融合タンパク質として互いに会合することができるか、または化学的リンカーを介して連結できる。適当な化学的リンカーにはビオチン−ストレプトアビジン相互作用が含まれる。さらに別の実施形態では、第1ポリメラーゼを抗体結合分子(例えば、プロテインAもしくはプロテインGもしくはビオチン、アビジンまたはストレプトアビジン)を介して抗体に繋ぐ。好ましい実施形態では、結合分子はビオチン化抗体であり、そして第1ポリメラーゼをストレプトアビジンまたはアビジンに融合する。
【0061】
好ましい実施形態では、試料中の分析物を検出する方法が提供される。本方法は、
ビオチン化抗体を分析物に結合させるステップと、ここで分析物は表面に固定されている;
表面を洗浄して未結合抗体を除去するステップと;
抗体上のビオチンと融合タンパク質におけるストレプトアビジンとの間を繋ぐステップと、および固定された分析物/ビオチン化抗体/融合タンパク質複合体の形成を許容する条件下で、ストレプトアビジンに融合した第1ポリメラーゼを含む融合タンパク質と共に表面をインキュベートするステップと;
表面を洗浄して未結合融合タンパク質を除去するステップと;
第1ポリメラーゼが第1プライマーを伸長し、そして1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチド(「非修飾コピー」)を含まない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーを合成することを許容する条件下で、固定された分析物/ビオチン化抗体/融合タンパク質複合体を、デオキシウラシルまたは2’−O−メチル修飾ヌクレオチドのような1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチド、4つのデオキシ三リン酸および修飾ポリヌクレオチド鋳型に結合する第1プライマーを含む修飾ポリヌクレオチド鋳型と共に、インキュベートすること;
非修飾コピーを含むインキュベーション反応物のアリコートを新しい反応容器に移すステップと;
修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができないPfu DNAポリメラーゼのような第2ポリメラーゼで非修飾コピーを増幅するステップと;ならびに
増幅生成物を検出するステップと、ここで増幅生成物の検出は試料中の分析物の存在または量の指標である;
を含む。
【0062】
別の態様においては、本発明はクレノウまたはT4ポリメラーゼのような第1ポリメラーゼに繋がれた抗体のような結合分子、修飾ポリヌクレオチド鋳型、修飾ポリヌクレオチド鋳型に相補的な第1プライマー、Pfuポリメラーゼのような第2ポリメラーゼ、および修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーに相補的な第2プライマーを含む反応混合物を形成することにより、試料中の分析物を検出する方法を対象とする。修飾ポリヌクレオチド鋳型には、デオキシウラシルまたは2’−O−メチル修飾のような1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドが含まれる。反応混合物をインキュベートして、結合分子の分析物への結合、第1プライマーの修飾ポリヌクレオチド鋳型へのアニーリングおよび第1ポリメラーゼによる第1プライマーの伸長を許容する。第1プライマーの伸長により、修飾ヌクレオチドを何ら含有しない修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピー(「非修飾コピー」)を生成する。第2プライマーの非修飾コピーへのアニーリングおよび第2ポリメラーゼでのプライマーの伸長により、非修飾コピーを検出する。第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができないが、第1ポリメラーゼにより作成された非修飾コピーを増幅することができる。非修飾コピーの検出は試料中の分析物の存在または量の指標である。
【0063】
ポリヌクレオチド鋳型を伸長するために使用されるプライマーが3’フラップを有する特定の態様では、抗体のような結合分子は、3’エキソヌクレアーゼ活性を有する第1ポリメラーゼに繋がれる。第1ポリメラーゼはクレノウ(exo)のような3’ヌクレアーゼ活性を有する任意のポリメラーゼでよい。第2ポリメラーゼはPfu(exo)DNAポリメラーゼのような3’ヌクレアーゼ活性を有さない任意のポリメラーゼでよい。第1ポリメラーゼおよび抗体は融合タンパク質の形態で互いに会合することができるか、または化学的リンカーを介してそれらを連結できる。適当な化学的リンカーにはビオチン−ストレプトアビジン相互作用が含まれる。さらに別の実施形態では、抗体結合分子(例えば、プロテインAまたはプロテインG)を介して第1ポリメラーゼを抗体に繋ぐ。
【0064】
ポリヌクレオチド鋳型(修飾または非修飾)は好ましくは溶液中で遊離しているが、しかしながら固相および溶液基盤の実施形態の双方を含むいくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチド鋳型はさらなる抗体または、抗体のようなビオチン化検出分子と相互作用することができるストレプトアビジンのようなその他の部分に繋がれることが企図される。この実施形態においてはポリヌクレオチド鋳型のコピーは、第1および第2抗体(またはその他の部分)が互いに極めて近位内で結合し(例えば、同じ分析物)、したがって第1ポリメラーゼおよびポリヌクレオチド鋳型が相互作用するのが可能になる場合にのみ合成される。
【0065】
TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)プローブまたはSYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン色素のような当分野で利用可能な検出試薬を使用して、リアルタイムPCR検出アッセイ(例えば、StratageneのMX3005PリアルタイムPCR)を含む当分野において公知の数多くの方法により、複製されたポリヌクレオチド鋳型の検出を実施することができる。適当な検出アッセイには切断反応もまた含まれる。例えば検出反応はさらに、第2プライマーの下流でアニーリングする標識プローブを含むことができる。この実施形態において、第2プライマーは伸長されて、核酸切断反応(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)検出アッセイ)において下流の標識プローブを切断するようになる。あるいは検出工程は第2プライマーからの伸長生成物の直接検出を用いることができる。この実施形態では、伸長された第2プライマーの増幅生成物をゲル電気泳動により検出し、そして可視化することができる。増幅生成物の存在は試料中の分析物の存在の指標である。
【0066】
本明細書にて開示される方法およびキットで使用するための組成物が提供される。1つの態様においては、組成物は第1ポリメラーゼまたはその部分に繋がれた抗体を含む。一実施形態においては、抗体は第1ポリメラーゼまたはその部分に融合される。好ましい実施形態においては、抗体はビオチン/アビジン相互作用によりポリメラーゼまたはその部分に繋がれる。例えば、ストレプトアビジンまたはアビジンに連結された第1ポリメラーゼまたはその部分を含む融合タンパク質と共に、ビオチン化抗体を使用できる。組成物を本明細書に記載される方法の実行と併せて使用するのに適当である少なくとも1つのその他の物質と組み合わせることができる。適当な物質には、本明細書に開示される方法にて望まれるように実施するその能力に有害な影響を及ぼすことなく、結合分子または第1ポリメラーゼとの接触を引き起こすことができるものが含まれる。これに代えて、または加えて、組成物は結合分子および、分子が特異的に結合する1つもしくはそれより多い物質(例えば、検出されるべき抗原)、またはポリメラーゼ部と相互作用する1つもしくはそれより多い物質(例えば、修飾ポリヌクレオチド鋳型)を含むことができる。別の態様においては、組成物は、ポリメラーゼ部に繋がれたプロテインA、GもしくはL、またはビオチン、アビジンもしくはストレプトアビジンのような抗体以外の結合分子を含み、それを本明細書に記載される方法の実行と併せて使用するのに適当である少なくとも1つのその他の物質と組み合わせることができる。例えば凍結乾燥された乾燥粉末、または水性混合物のような液体または固体形態で、組成物を見出すことができる。したがって結合および検出アッセイにおける組成物の使用が提供される。
【0067】
開裂ポリメラーゼ系の1つの態様では、ポリメラーゼはクレノウであり、そして第1ポリメラーゼの第1部分は配列番号:2のアミノ酸配列を有し、そして第1ポリメラーゼの第2部分は配列番号:3のアミノ酸配列を有する。Entrez Structureデータベース(米国立生物工学情報センター(「NCBI」)のウェブサイトから利用可能)にて開示されるように、クレノウはDNAポリメラーゼAスーパーファミリーに属し、そして配列番号:1の約アミノ酸225からアミノ酸605にわたる保存されたポリメラーゼドメインを共有する;Villbrandtら、Protein Eng.13(9):645−54(2000)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)もまた参照のこと。公知のドメイン構造を使用して、当業者は例えば図7にて例証されるようなその他の型の開裂クレノウポリメラーゼを容易に構築できるであろう。クレノウのポリメラーゼドメインは当分野において公知であるので、当業者は2つの部分が会合した場合に形成されるポリメラーゼ複合体のポリメラーゼ活性に影響を及ぼすことなく、配列番号2および配列番号3の配列(または図7に描かれるもののようなその他のクレノウフラグメント)に置換または欠失を容易に作成できるであろう。したがって別の態様においては、第1ポリメラーゼの第1および第2部分が相互作用したときに機能的なポリメラーゼ複合体を形成する限り、第1ポリメラーゼの第1部分は配列番号2(またはその他のクレノウフラグメントが何でも使用される)のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有し、そして第1ポリメラーゼの第2部分は配列番号3(またはその他のクレノウフラグメントが何でも使用される)のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する。当業者はクレノウ以外の開裂ポリメラーゼを構築することができる。クレノウおよびその他のポリメラーゼの三次元構造はNCBIウェブサイトのStructureデータベースのような公のデータベースから利用可能である。構造ドメインを分離する非構造化領域に開裂点を位置決定することが好ましい。ポリメラーゼの部分を極めて近位にする任意の研究法によりポリメラーゼ活性の再構成を促進することができる。結合部はモノクローナルまたはポリクローナル抗体、レクチン、細胞表面受容体、受容体リガンド、ペプチド、炭水化物、アプタマー、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、プロテインAまたはプロテインGでよい。好ましい実施形態では、クレノウの2つの相補的部分を、同じ抗体上のビオチンに、または分析物上で互いに近位にある、異なる抗体上のビオチンに結合することができる、ストレプトアビジンタグと共に提供する。
【0068】
別の態様においては、スペーサー分子は結合分子を第1ポリメラーゼから、または第1および第2結合部を各々第1ポリメラーゼの第1および第2部分から分離する。スペーサー分子は任意の物質または物質の組み合わせからなってよい。しかしながら典型的には、スペーサー分子はポリペプチドまたはポリヌクレオチドからなる。一実施形態においては、スペーサー分子はグリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンのような小型アミノ酸を含むポリペプチドリンカーである。別の実施形態においては、自然発生の可動性非構造化領域を使用することができる。このような領域を豊富に発現されるタンパク質から、例えばL7/L12リボソームタンパク質から選択することができる(Bocharovら、「タンパク質L7/L12の構造および動態からリボソームにおける分子スイッチまで」J.Biol.Chem.279(17):17697−706(2004))。多くの非構造化領域は当業者に公知であり、そしてデータベースのタンパク質構造から、例えばEntrez Structure NCBIデータベースから利用可能である。さらにバイオインフォーマティクス法により、例えばScooby−Domain法(Pang CNら、「疎水性シグナルからタンパク質配列におけるフォールディング可能な領域を同定する」Nucleic Acids Res.36(2):578−88(2008))を用いて、タンパク質における非構造化領域を予測することができる。
【0069】
スペーサー分子を使用することにより結合分子をポリメラーゼから分離することは、例えば融合タンパク質にさらなる可動性を提供し、そして結合およびポリメラーゼドメインが妨害されずに機能することを促進するのに有用である。
【0070】
スペーサー分子はまた、開裂ポリメラーゼ部(例えば、N−およびC−末端部分)の相互作用および機能的ポリメラーゼ複合体の再構成を促進するのを支援する。実施例6〜9にて示されるように、ポリメラーゼ活性の再構成は、ストレプトアビジン−開裂ポリメラーゼ部のビオチン化抗体への結合により促進される。ビオチン化抗体への結合によりポリメラーゼのN−およびC−末端部分が極めて近位になることで、ポリメラーゼ活性の再構成が促進される。
【0071】
ビオチン化抗体におけるビオチン分子の無作為な位置のために、全てのストレプトアビジン−ビオチン結合事象は必ずしもポリメラーゼ活性の再構成には至らない。例えばいくつかのビオチン分子は、互いに遠すぎている可能性がある。あるいはビオチン分子は互いに離れたストレプトアビジン−ポリメラーゼN−およびストレプトアビジン−ポリメラーゼC−部分に結合し得る。特にストレプトアビジン−開裂ポリメラーゼ融合タンパク質が互いに向かい合わないか、またはそれほど近位ではないビオチン分子に結合している場合、スペーサー分子の使用により、例えば開裂ポリメラーゼ部分の間の立体障害を低減することによりポリメラーゼ活性の再構成を促進することを支援する。
【0072】
本明細書に記載されるいずれかの検出方法を単一の反応容器中で、または2つもしくはそれより多い反応容器中で実施できる(例えば、第1反応容器中での分析物への抗体結合および非修飾コピーまたは増幅のための鋳型の合成、ならびに第2反応容器中での増幅された非修飾コピーまたは鋳型の検出)。
【0073】
本明細書に記載されるいずれかの検出方法を、溶液基盤のアッセイ(例えば、捕捉抗体および固体支持体を伴わない)において実施されるように適合させることができる。これらの実施形態においては、方法は一般的には2つの検出抗体を利用し、第1はポリヌクレオチド鋳型に作動可能なように繋がれ、そして第2は第1核酸ポリメラーゼに繋がれている。同様に開裂ポリメラーゼ系では、方法は一般的には、各々独立して第1ポリメラーゼの第1および第2部分に繋がれた2つの検出抗体ならびに溶液中で提供される修飾ポリヌクレオチド鋳型を使用する。修飾ポリヌクレオチド鋳型を検出抗体に、またはビオチン化検出抗体と相互作用することができるストレプトアビジンのような異なる結合部に繋ぐことができる。抗体を互いに極めて近位内で結合するように設計して、ポリヌクレオチド鋳型および第1核酸ポリメラーゼが相互作用して増幅のための鋳型を形成するか、または開裂ポリメラーゼ系ではポリメラーゼ活性の再構成を促進することを可能にする。このようなアッセイは2006年10月11日出願の米国特許出願第11/546695号(その全てにおいて参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0074】
本明細書に開示される組成物および方法はバイオテクノロジーおよび医学分野で幅広い適用性を有する。これらは研究目的で有用であるのみならず、診断試薬およびアッセイとして医学、獣医、法医学、環境および食品検査の分野への適用に有利である。したがって実施形態においては、本発明は試料から目的の物質を検出するための診断方法を提供し、ここで物質の検出は特定の疾患または障害の指標である。例えば方法は患者における癌を診断するための診断方法でよく、ここでその方法には癌特異的抗原の検出が含まれる。同様に例えば方法は障害の公知のマーカーの検出により、糖尿病のような代謝障害を診断するための診断方法でよい。ヒトおよびその他の動物における疾患および障害のための多くのマーカーが公知であり、そして任意のこのようなマーカーを本明細書に開示される方法による診断アッセイの局面内で使用することができる。マーカーは特定の疾患または障害と100%相関するものである必要はないが、むしろ疾患または障害により影響を受ける一部のヒトまたは動物において、疾患または障害と関連するとして単に公知であり得ることに留意されたい。さらにマーカーは疾患または障害の原因物質である必要はないが、むしろ疾患または障害と関連する(その存在、不在またはレベルにより)として公知である任意のマーカーでよいことを理解されたい。
【0075】
本明細書に開示される方法はまた、疾患もしくは障害の結果を予後診断するか、または疾患または障害のための処置計画を追随するために使用することもできる。さらに具体的には、組成物および方法を用いて経時的に採取された複数の試料に関して検出アッセイを繰り返すことにより、疾患および障害に関するマーカーの存在およびレベルを経時的に追跡することができる。マーカーの存在、不在またはレベルが疾患または障害からの回復(または疾患または障害の重篤度等)の可能性の指標である場合、本発明のアッセイを用いて疾患または障害の結果を予測するか、または発達を追跡することができる。
【0076】
前記で論じられた使用に鑑みて、さらなる態様では、本発明の組成物を含むキットが提供される。一般的に、キットは、入れ物の貯蔵および出荷のための包装材料と組み合わされた少なくとも1つの入れ物中に抗体のような結合分子または結合部に繋がれた、ポリメラーゼまたはその第1および第2部分を含む。あるいはキットは、入れ物の貯蔵および出荷のための包装材料と組み合わされた少なくとも1つの入れ物中にストレプトアビジンまたはアビジンに繋がれた、ポリメラーゼまたはその第1および第2部分を含む。ポリメラーゼまたはその部分を純粋な物質として、または組成物の一部として供給できる。限定するものではないが、ポリヌクレオチド鋳型(修飾または非修飾)、1つまたはそれより多いプライマー、および/または修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅できないか、もしくは3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するかのいずれかである第2ポリメラーゼを含む、本発明の方法を実行するためのその他の試薬および供給物を含むさらなる構成成分をキットで供給できる。当業者は、目的の物質を検出するためのキットにおいて典型的に含まれる種々の供給物および物質を認識しており、そしてこれらの供給物および物質のいずれかを本発明によるキットに含むことができる。例えばキットは本発明の方法を実施するための1つまたはそれより多い固体基質を含むことができ、実施形態では目的の分析物および/または触媒反応のための検出反応容器(例えば、PCR反応チューブ)に特異的に結合することができる捕捉分子(例えば、抗体)にそれを予め結合させることができる。キットはまた、または代替として、結合溶液または洗浄溶液が入った1つまたはそれより多い入れ物(例えば、ビン)を含有できる。
【0077】
修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用する検出アッセイ
図1Aは修飾ポリヌクレオチド鋳型および、修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーが可能である第1DNAポリメラーゼ(例えば、クレノウ)を利用する、固相実施形態を例証する。この実施形態では、分析物を含有する被験試料を最初に固定された捕捉抗体と共に、次に第1核酸ポリメラーゼに繋がれた検出抗体と共にインキュベートする。あるいは分析物をウェルに直接的に結合させ、そして捕捉抗体を必要としない。
【0078】
インキュベーションに続いて、捕捉抗体を利用する固相アッセイではウェルを洗浄バッファーで洗浄する。
【0079】
次いで捕捉抗体−分析物−検出抗体−ポリメラーゼ複合体を含有するウェルに伸長反応混合物を添加し、そしてインキュベートする(例えば、室温で30分間)。伸長反応混合物には、本明細書に記載されるような修飾ポリヌクレオチド鋳型、および修飾ポリヌクレオチド鋳型の一部分に相補的である逆方向プライマーが含まれる。インキュベーションの間、プライマーは修飾ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングし、そして第1核酸ポリメラーゼにより伸長されて、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを形成するようになる。次いで非修飾コピーを検出反応において利用する。
【0080】
結合/伸長反応と同じか、または好ましくは異なる反応容器中で検出反応を実施できる。例えば、非修飾コピーを有する反応混合物のアリコートを96ウェルPCRプレートの対応するウェルに移すことができる。この工程では、非修飾コピーは検出試薬(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)プローブ、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン色素、分子ビーコンプローブ)、修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能である第2核酸ポリメラーゼ、および逆方向および順方向プライマーのような1つまたはそれより多いプライマーと反応する。検出反応混合物を、プライマーのアニーリング、非修飾コピーの増幅および増幅した非修飾コピーの検出を可能にする反応条件に供する。例えば1つの実施形態では、増幅および検出に必要な適切な時間および温度でプログラムされているリアルタイムPCR装置において検出反応を行う。例えばSYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンを利用する検出反応では、解離曲線ならびに95℃10分間、続いて95℃15秒間および63℃45秒間の40サイクルの2工程循環パラメーターで、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン検出アッセイに対応するプログラムを用いてMX3005PリアルタイムPCR装置を利用できる。リアルタイムPCR検出のその他の手段は当分野において周知であり(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)検出アッセイおよび分子ビーコン検出アッセイ)、そして本発明の実施形態における使用に適合させることができる。次いで検出されたシグナルを用いて試料中の分析物の濃度を決定することができる。
【0081】
別の実施形態においては、分析物、第1ポリメラーゼに繋がれた検出抗体、および修飾ポリヌクレオチド鋳型に繋がれた別の抗体は、溶液中で遊離している(図1B)。検出抗体を第1核酸ポリメラーゼに繋ぎ、その後それらを反応混合物に添加するか、または分析物とのインキュベーションの間に繋ぐことができる(例えば、ビオチン標識された検出抗体および添加されたストレプトアビジン−クレノウ)。あるいは第1核酸ポリメラーゼに繋がれ、そして検出抗体に結合する中間体(例えば、第2抗体)を介して、第1核酸ポリメラーゼを検出抗体に結合させることができる。分析物が溶液中で遊離している場合、修飾ポリヌクレオチド鋳型を抗体に繋ぐことにより、抗体の分析物への結合時に修飾ポリヌクレオチド鋳型および第1ポリメラーゼを極めて近位にすることが支援される。これは次に第1ポリメラーゼと修飾ポリヌクレオチド鋳型との間の相互作用を促進し、第1ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを合成する速度を速めることを支援する。溶液基盤の実施形態においては、伸長および検出反応は固相実施形態に関して記載されたものと同じである。
【0082】
3’フラップを伴うプライマーを利用する検出アッセイ
図2Aはポリヌクレオチド鋳型および3’エキソヌクレアーゼ活性を有する第1DNAポリメラーゼ(クレノウ(exo))を利用する1つの実施形態を例証する。いくつかの実施形態では、3’ヌクレアーゼ活性は別個の酵素(例えば、異なるポリメラーゼまたは必ずしもポリメラーゼ活性を有するとは限らないヌクレアーゼ)により供給されるので、第1ポリメラーゼは3’ヌクレアーゼ活性を有さない。
【0083】
分析物を含有する被験試料は最初に固定された捕捉抗体と、次に第1核酸ポリメラーゼに繋がれた検出抗体と反応する。あるいは分析物をウェルに直接的に結合させ、そして捕捉抗体を利用しない。別の実施形態においては、分析物、第1ポリメラーゼに繋がれた検出抗体およびポリヌクレオチド鋳型に繋がれた別の抗体は溶液中で遊離しており、かつ固体支持体に結合していない(例えば、溶液基盤のアッセイ、図2B)。検出抗体を反応混合物に添加する前に第1核酸ポリメラーゼに繋ぐことができるか、または分析物とのインキュベーションの間に繋ぐことができる(例えば、ビオチン標識された検出抗体および添加されたストレプトアビジン−クレノウ)。あるいは第1核酸ポリメラーゼに繋がれ、そして検出抗体に結合する中間体(例えば、第2抗体)を介して、第1核酸ポリメラーゼを検出抗体に結合させることができる。反応混合物を適切な温度で十分な時間インキュベートさせて(例えば、室温で30分間)、捕捉抗体および/または検出抗体の分析物への結合を可能にする。インキュベーションの後、固相アッセイではウェルを洗浄バッファーで洗浄する。
【0084】
次いでウェルに伸長反応混合物を添加し、そしてインキュベートする(例えば、室温で30分間)。伸長反応混合物には本明細書に記載されるようなポリヌクレオチド鋳型、ならびに3’フラップおよび伸長時に新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を伴う伸長プライマーが含まれる。インキュベーション工程の間に、プライマーはポリヌクレオチド鋳型にアニーリングして3’非相補的フラップを形成するようになる。次いで3’フラップは第1核酸ポリメラーゼにより切断され、かつ伸長されて、伸長プライマーにより導入された新しいプライマー結合部位を含む増幅のための鋳型を形成するようになる。いくつかの実施形態においては、第1ポリメラーゼは3’ヌクレアーゼ活性を有さず、そして3’フラップは異なる酵素(例えば、異なるポリメラーゼまたは必ずしもポリメラーゼ活性を有するとは限らないヌクレアーゼ)により切断される。次いで増幅のための鋳型を、Pfu(exo)DNAポリメラーゼのような3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する第2DNAポリメラーゼと共に検出反応において利用する。
【0085】
結合/伸長反応と同じか、または好ましくは別個の反応容器中で検出反応を実施できる。例えば、増幅のための鋳型を有する反応混合物のアリコートを96ウェルPCRプレートの対応するウェルに移すことができる。この工程では、増幅のための鋳型は検出試薬(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)プローブ、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン色素)、第1および第2プライマー(そのうちの1つは伸長プライマーにより導入された新しいプライマー結合部位にアニーリングする)ならびに3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する第2核酸ポリメラーゼと反応する。検出反応混合物を、プライマーのアニーリング、増幅のための鋳型の増幅および増幅された鋳型の検出を可能にする反応条件に供する。例えば1つの実施形態では、増幅および検出に必要な適切な時間および温度でプログラムされているリアルタイムPCR装置において検出反応を行う。例えば解離曲線ならびに95℃10分間、続いて95℃15秒間および63℃45秒間の40サイクルの2工程循環パラメーターで、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン検出アッセイに対応するプログラムを用いて、MX3005PリアルタイムPCR装置を利用できる。リアルタイムPCR検出のその他の手段は当分野において周知であり(例えば、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)および分子ビーコン検出アッセイ)、そして本実施形態における使用に適合させることができる。次いで検出されたシグナルを用いて試料中の分析物の濃度を決定することができる。
【0086】
開裂ポリメラーゼおよび修飾ポリヌクレオチド鋳型を使用する検出アッセイ
図6は修飾ポリヌクレオチド鋳型、第1結合部および第1ポリメラーゼの第1部分を有する第1分析物特異的プローブ、ならびに第2結合部および第1ポリメラーゼ(例えば、クレノウ)の第2部分を有する第2分析物特異的プローブを利用する1つの実施形態を例証する。
【0087】
この実施形態では、分析物を含有する被験試料は最初に結合反応において第1および第2分析物特異的プローブと反応する。いくつかの実施形態では、固体支持体に結合した捕捉抗体もまた存在する。第1および第2結合部を各々第1および第2ポリメラーゼ部分に繋ぐ。限定するものではないが抗体/ポリメラーゼ融合タンパク質として直接連結すること、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用またはプロテインAもしくはプロテインGを介して連結されることを含む多くの異なる方式で、結合部をポリメラーゼ部分に繋ぐことができる。第1ポリメラーゼの第1および第2部分が分離されている場合、これらは合成活性を実質的に欠如する。しかしながら第1ポリメラーゼの第1および第2部分が互いに極めて近位になる場合、それらは相互作用して合成活性を有する機能的な第1ポリメラーゼ複合体を形成するようになる。
【0088】
ASPの結合ならびに第1ポリメラーゼの第1および第2部分の相互作用の後、伸長反応が進行する。前記で列挙された試薬に加えて、伸長反応にはさらに修飾ポリヌクレオチド鋳型および修飾ポリヌクレオチド鋳型の一部分に相補的である1つまたはそれより多いさらなるプライマーが含まれる。反応混合物をインキュベート(例えば、室温で30分間)して、プライマーアニーリングおよび第1ポリメラーゼ複合体によるプライマーの伸長を許容して、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを形成するようになる。次いで非修飾コピーを、図1Aに関連する固相実施形態を参照して前記で論じられたような修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能である第2ポリメラーゼと共に検出反応において利用する。
【0089】
分析物
方法、組成物およびキットを使用して多岐にわたる分析物を検出できる。結合分子または各ASPに関する結合部位は同じかまたは異なっていてよい。分析物は単一分子、分子複合体、複数の試薬結合部位を含有する生物またはウイルスでよい。変動する分子距離に及ぶために結合分子またはASPをコードするオリゴヌクレオチドの長さを構築することができるので、結合部位は同じ分子上にある必要はない。しかしながら、それらは別個であるが近接した位置の分子上にあり得る。例えばウイルス、細菌または細胞のような有機体の複数の結合エピトープを本明細書に開示される方法によりターゲティングすることができる。1つの態様においては、分析物はタンパク質、オリゴヌクレオチド、細胞表面受容体または受容体リガンドである。
【0090】
結合分子および結合部
利用される捕捉および検出分子が、方法が用いられている分析物を特異的に認識および結合するように、方法(例えば、固体支持体に付着した捕捉抗体およびポリメラーゼまたはその一部分に繋がれた検出抗体)において使用される結合分子または結合部(捕捉分子および/または検出分子とも称される)を単純に改変することにより、本明細書に開示される方法を任意の分析物の検出のために適合させることができる。いくつかの実施形態においては、分析物を固体支持体に直接結合させて、捕捉抗体が必要ではないようにできる。その他の実施形態においては、捕捉抗体は分析物に結合し、未標識中間抗体は分析物に結合し、そして検出抗体は中間抗体に結合する。
【0091】
その他の実施形態では、溶液相反応において(例えば、捕捉抗体および固体支持体を伴わずに)アッセイを実施する。これらの実施形態においては、方法は一般的に修飾ポリヌクレオチド鋳型に作動可能なように繋がれた第1検出抗体および第1核酸ポリメラーゼに繋がれた第2検出抗体、または代替として第1核酸ポリメラーゼの第1および第2部分に繋がれた第2および第3検出抗体を利用する。抗体を互いに極めて近位内に結合して、ポリヌクレオチド鋳型および第1核酸ポリメラーゼが相互作用して、増幅のための鋳型(例えば、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピー)を形成することを可能にするように設計する。このようなアッセイは2006年10月11日出願の米国特許出願第11/546695号(その全が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0092】
捕捉分子および検出分子は調査中の分析物(例えば、多価分析物)の同じ部分またはエピトープを認識および結合できる。あるいは捕捉分子および検出分子は分析物の異なる部分またはエピトープを認識および結合する。いくつかの実施形態においては、捕捉分子および検出分子は同じ分析物ではなく、相互作用して複合体を形成する2つの異なる分析物に結合できる。例えば捕捉抗体は受容体タンパク質に特異的でよく、かつそれに結合でき、そして検出抗体は受容体のリガンドに特異的でよく、かつそれに結合でき、捕捉分子、受容体タンパク質、リガンドおよび検出抗体は複合体を形成するようになる。
【0093】
結合部を互いに極めて近位内に結合して、第1核酸ポリメラーゼの第1および第2部分が相互作用して、増幅のための鋳型を形成することを可能にするように設計する。
【0094】
好ましくは捕捉および分析物結合検出分子または結合部は、モノクローナル、ポリクローナルもしくはファージ由来抗体または抗体フラグメントである。さらに好ましくは、捕捉および検出分子または結合部は、モノクローナル抗体である。
【0095】
抗体がポリクローナル、モノクローナルまたは免疫反応性のそのフラグメントのいずれでも、当業者によく知られた慣習的な方法により生成することができる。従来のモノクローナルおよびポリクローナル抗体は有用であり、そして好ましい型の結合分子を示す。したがって抗体調製の確立された方法を用いて、免疫型結合分子を調製することができる。抗体調製および免疫型結合部に関する精製の適当な方法は、Harlow,EdおよびLane,D、Antibodies a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(1988)に記載される。さらに本明細書に記載されるアッセイを現在利用可能な市販により入手可能である抗体と共に使用することができる。
【0096】
「ポリクローナル抗体」は抗原またはその抗原性機能的誘導体で免疫された動物の血清から誘導された抗体分子の異種性集団である。ポリクローナル抗体の生成のために、ウサギ、マウスおよびヤギのような宿主動物を、場合によってはアジュバントを補充された、抗原またはハプテンキャリア抱合体の注射により免疫できる。
【0097】
モノクローナル抗体を作成するための当分野において公知の任意の方法は、例えばファージディスプレイテクノロジーでのインビトロ作成、およびマウスのような動物を免疫することによるインビボ作成により企図される。これらの方法にはKohlerおよびMilstein(Nature 256:495−497(1975))およびCampbell(Burdonら編、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology、第13巻、Elsevier Science Publishers、アムステルダム(1995)における「モノクローナル抗体テクノロジー、げっ歯類およびヒトハイブリドーマの生成および特徴付け」)に記載される免疫学的方法;ならびにHuseら、(Science 246:1275−1281(1989))により記載される組換えDNA法が含まれる。標準的な組換えDNA技術はSambrookら(「Molecular Cloning」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987))およびAusubel(「Current Protocols in Molecular Biology」Green Publishing Associates/Wiley−Interscience、ニューヨーク(1990))において記載される。これらの方法の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
捕捉分子および検出分子はインタクトな抗体に限定されず、抗体フラグメントおよび抗体フラグメントを含む組換え融合タンパク質のようなその他の結合分子を包含する。
【0099】
キメラ化、ヒト化および一本鎖抗体ならびにそのフラグメントを生成する方法はPCT出願第WO93/21319号、欧州特許出願第239400号;PCT出願第WO89/09622号;欧州特許出願第338745号;および欧州特許出願第EP332424号において開示される。これらの出願の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の生成のための開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−6855(1984);Takedaら、Nature 314:452−54(1985))を使用することができる。キメラ抗体は、ネズミmAbから誘導される可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような、異なる部分が異なる動物種から誘導される分子である。あるいは、一本鎖抗体の生成のために記載される技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−26(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83(1988);およびWardら、Nature 334:544−46(1989))を遺伝子−一本鎖抗体を生成するために適合させることができる。典型的には一本鎖抗体は、アミノ酸橋を介してFv領域の重および軽鎖フラグメントを連結することにより形成され、結果的に一本鎖ポリペプチドに至る。
【0101】
非免疫結合分子もまた捕捉または検出分子としての使用に関して企図される。これらの分子には、2つの構成要素がお互いに関して天然の親和性を共有するが、抗原/抗体様の対ではない系が含まれる。非免疫結合部の実例にはビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジン、葉酸−葉酸結合タンパク質、ビタミンB12/内因子、相補的プローブ核酸、プロテインA、G、免疫グロブリン、ヘテロおよびホモ二量体ポリペプチド複合体等が含まれる。互いに共有結合を形成する非免疫結合対もまた含まれる。
【0102】
ポリ核酸アプタマーのような非抗体タンパク質受容体または非タンパク質受容体を使用することもできる。ポリ核酸アプタマーは典型的には、受容体または抗体とほぼ同じ様式でタンパク質に選択的に結合するように作用し得るRNAオリゴヌクレオチドである(Conradら、Methods Enzymol.267(Combinatorial Chemistry)336−367(1996))。これらのアプタマーは結合分子または結合部として適当であろう。
【0103】
「特異的に結合する」および「特異的な結合」という用語は本明細書で使用される際には、本発明の明記された条件下で抗体またはその他の結合分子もしくは結合部が、抗原、リガンドまたは分析物のような標的に、その他の分子に結合するよりも大きな親和性で結合することを意味する。当分野において公知であるように抗体または抗体フラグメントは、抗原のようなその他の分子に結合することができる領域を含有するポリペプチド分子である。種々の実施形態においては「特異的に結合する」とは、抗体またはその他の生物学的分子が標的分子に少なくとも約10−6−10−10/Mの親和性で結合し、さらに好ましくはそれらは少なくとも10−8/Mの親和性を有し、最も好ましくは少なくとも10−9/Mの親和性を有することを意味する。
【0104】
ポリメラーゼ
DNAポリメラーゼは当業者に周知である。これにはDNA依存性ポリメラーゼおよび逆転写酵素のようなRNA依存性ポリメラーゼの双方が含まれる。DNA依存性DNAポリメラーゼの少なくとも5つのファミリーが公知であるが、たいていがファミリーA、BおよびCに入る。種々のファミリー間で構造または配列類似性はほとんどまたは全くない。たいていのファミリーAポリメラーゼは、ポリメラーゼ、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性および5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を含む複数の酵素的機能を含有することができる一本鎖タンパク質である。ファミリーBポリメラーゼは典型的には、ポリメラーゼとの単一の触媒ドメインおよび3’−5’エキソヌクレアーゼ活性、ならびにアクセサリー因子を有する。ファミリーCポリメラーゼは典型的には、重合化および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を伴うマルチサブユニットタンパク質である。大腸菌では、DNAポリメラーゼの3つの型:DNAポリメラーゼI(ファミリーA)、II(ファミリーB)およびIII(ファミリーC)が見出されている。真核細胞では、3つの異なるファミリーBポリメラーゼ、DNAポリメラーゼα、δおよびεは核複製に関わり、そしてファミリーAポリメラーゼ、ポリメラーゼyはミトコンドリア1DNA複製に使用される。その他の型のDNAポリメラーゼにはファージポリメラーゼが含まれる。
【0105】
同様にRNAポリメラーゼには、典型的には真核生物RNAポリメラーゼI、IIおよびIII、および細菌性RNAポリメラーゼ、ならびにファージおよびウイルスポリメラーゼが含まれる。RNAポリメラーゼはDNA依存性およびRNA依存性でよい。
【0106】
本明細書に記載される方法、組成物およびキットは少なくとも4つのクラスのポリメラーゼ:(1)3’ヌクレアーゼ活性を欠如するポリメラーゼ;(2)3’ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ;(3)修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能なポリメラーゼ;および(4)修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能なポリメラーゼ;を利用することができる。特定の実施形態において有用な核酸ポリメラーゼは3’−5’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如し、exoPfu DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するPfu DNAポリメラーゼの変異形態、Clineら、Nucleic Acids Research 24:3546(1996);米国特許第5,556,772号;Stratagene(ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)から市販により入手可能、カタログ番号600163)、exoTma DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するTma DNAポリメラーゼの変異形態)、exoTli DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するTli DNAポリメラーゼの変異形態、New England Biolabs(カタログ番号257))、exo大腸菌DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する大腸菌DNAポリメラーゼの変異形態)、大腸菌DNAポリメラーゼIのexoクレノウフラグメント(Stratagene、カタログ番号600069)、exoT7 DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するT7 DNAポリメラーゼの変異形態)、exoKOD DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するKOD DNAポリメラーゼの変異形態)、exoJDF−3 DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するJDF−3 DNAポリメラーゼの変異形態)、exoPGB−D DNAポリメラーゼ(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠如するPGB−D DNAポリメラーゼの変異形態)New England Biolabs、カタログ番号259、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(例えば、カタログ番号600131、600132、600139、Stratagene);U1Tma(N−トランケート体)サーモトガ・マリティマ(Thermatoga martima)DNAポリメラーゼ;DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント、9°Nm DNAポリメラーゼ(New England Biolabs(ビバリー、マサチューセッツ州)の製造中止になった製品)、「3’−5’エキソレデュースト(exo reduced)」変異体(Southworthら、Proc.Natl.Acad.Sci 935281(1996))およびSequenase(USB、クリーブランド、オハイオ州)が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
具体的な実施形態においては、第1ポリメラーゼは抗体のような結合分子に繋がれた、または2部に開裂したクレノウであり、その各々は抗体のような結合部に繋がれている。クレノウに類似して作用するその他のファミリーAポリメラーゼ、例えば完全大腸菌DNAポリメラーゼI、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)DNAポリメラーゼI、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)DNAポリメラーゼI、T5 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Spo2 DNAポリメラーゼまたはその部分を使用することもできる。伸長工程は典型的には同じ混合物中に存在し得るその他の中温性タンパク質(抗原、抗体)の生物学的活性に適合する温度で実施されるので(例えば、約室温から約37℃にわたる温度)、クレノウのような中温性ポリメラーゼは第1ポリメラーゼとして好ましい。しかしながらTaqのような好熱性ポリメラーゼは中温性の温度で活性であるので、それらを使用することもできる。具体的な実施形態では、Taqポリメラーゼは、その各々が結合部(例えば、抗体)に連結された第1および第2部分に開裂する。加えて第1ポリメラーゼを用いる伸長工程を分析物結合工程から分離することができ、そして第1ポリメラーゼ反応に最適である任意の温度で実施することができる。Taqポリメラーゼに約90%類似するサーマス・ブロキアヌス(Thermus brockianus)ポリメラーゼ、ならびにサーマス・フラバス(Thermus flavus)ポリメラーゼ、および逆転写酵素活性を有するサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)ポリメラーゼもまた使用できる。加えてバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)に由来するファミリーAポリメラーゼのような極端な好熱性ではないポリメラーゼを使用することができる。
【0108】
パイロコッカスポリメラーゼのようなファミリーBポリメラーゼ、例えばPfuポリメラーゼは第2ポリメラーゼとして有用である。
【0109】
当業者に周知のアッセイを用いてポリメラーゼの活性を測定することができる。例えばポリメラーゼ連鎖反応のような反応において合成された核酸の量を決定することにより、ポリメラーゼ活性のような前進型酵素活性を測定することができる。酵素の相対的有効性を決定するときに、次いで配列非特異的二本鎖DNA結合ドメインを含有するポリメラーゼで得られた生成物の量を、通常のポリメラーゼ酵素で得られた生成物の量と比較することができる。
【0110】
本明細書に開示される方法、組成物およびキットにおける使用に適当なポリメラーゼドメインは、酵素自体または触媒ドメイン、例えば大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメント(「クレノウ」)、またはポリメラーゼ活性を有するクレノウの一部分でよい。触媒ドメインはさらなるアミノ酸を含むことができ、および/またはアミノ酸置換、欠失もしくは付加を含有するが、依然として酵素活性を保持するバリアントでよい。
【0111】
一実施形態においては、分離された場合には実質的な合成活性を有さないが、それらが相互作用して複合体を形成する場合には実質的な合成活性を有する2つの部分にポリメラーゼを分ける。第1ポリメラーゼを、その各々が別個の抗体に繋がれている2つの部分に開裂できる。一実施形態においては、第1ポリメラーゼはクレノウである。好ましい実施形態においては、第1ポリメラーゼの第1部分は配列番号1のアミノ酸残基1〜224を含み、そして第1ポリメラーゼの第2部分は配列番号1のアミノ酸残基225〜605を含む。
【0112】
「クレノウ」という用語は、好ましくは少なくとも約25個、35個、50個またはそれを超えるアミノ酸の1つの領域にわたって、配列番号1のクレノウ配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%より大きい、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれより大きいアミノ酸配列同一性を有し、そして合成活性を表示するアミノ酸配列を有する、ポリペプチド多型バリアント、対立遺伝子、変異体、および種間相同体を指す。一実施形態においては、クレノウは配列番号1と少なくとも95%アミノ酸同一性を共有するポリペプチドを指す。配列番号1は、Exoクレノウ(ここで1位置のアミノ酸はメチオニンであり、そして32および34位置のアミノ酸はアラニン残基である)およびExoクレノウ(ここで1位置のアミノ酸はバリンであり、そして32および34位置のアミノ酸は各々アスパラギン酸およびグルタミン酸である)の双方を包含する。ExoクレノウおよびExoクレノウに関する野生型配列は、例えば各々受け入れ番号1D8Y_Aおよび1KFD_Aで本出願の出願日として公に利用可能である。
【0113】
クレノウ以外の第1ポリメラーゼの第1および第2部分を構築するための適当な切断部位を、クレノウに対するその配列相同性に基づいて同定することができる。比較ウインドウにわたって最大一致するようにクレノウ配列と、または下記の配列比較アルゴリズムもしくは手動アラインメントおよび肉眼検査のうちの1つを使用して測定されるような指定された領域と、被験配列とを比較し、そしてアラインすることができる。BLASTのデフォルトパラメーターによりアミノ酸同一性パーセントを決定することができる。例えばその他のファミリーAポリメラーゼを配列番号1のアミノ酸残基1〜224に対応する第1部分に、および配列番号1のアミノ酸残基225〜605に対応する第2部分に切断することができる。なお別の実施形態においては、被験ポリメラーゼを配列番号1のアミノ酸199〜310のいずれか1つに対応するアミノ酸で2つの部分に切断する。
【0114】
本明細書で使用される際には「に対応する」という用語は、第1ポリペプチドおよび参照ポリペプチド配列をアラインする場合、参照ポリペプチド配列(例えば、クレノウ、配列番号1)における所定の(複数の)アミノ酸とアラインする被験ポリペプチド配列(ファミリーAポリメラーゼ)における、1つまたはそれより多いアミノ酸を指す。当業者はこの目的のために設計されたソフトウェア、例えばBLASTPバージョン2.2.2をそのバージョン用のデフォルトパラメーターで用いて、アラインメントを実施する。
【0115】
配列比較のために、典型的には1つの配列が、被験配列と比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを用いる場合、被験および参照配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムパラメーターを使用することができるか、または代替のパラメーターを指定することができる。次いで配列比較アルゴリズムがプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に相対した被験配列に関する配列同一性パーセントを計算する。
【0116】
比較ウインドウは20から600、通常的には約50から約200、さらに通常的には約100から約150からなる群から選択される隣接位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、ここで2つの配列を最適にアラインした後に、配列を同数の隣接位置の参照配列と比較できる。比較のための配列アラインメントの方法は、当分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントを、例えばSmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch,J.、Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法に関する検索により、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group(575サイエンス通り、マディソン、ウィスコンシン州)におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピューターによる実行により、または手動アラインメントおよび肉眼検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1995年補冊)参照)により行うことができる。
【0117】
配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するのに適当であるアルゴリズムの実例はBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それらは各々Altschulら、Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは米国立生物工学情報センターのウェブサイトを経て公に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードでアラインした場合、いくつかの正の値の閾値スコアTに合致するかまたは満足するかのいずれかである、クエリー配列における長さWのショートワードを同定することにより、最初に高いスコアの配列対(HSP)を同定することを伴う。Tは近隣ワードスコア閾値と称される(Altschulら、前出)。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして働く。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増大し得る限り、各々の配列に沿って双方向に伸長する。ヌクレオチド配列に関してパラメーターM(マッチする残基の対に関するリワードスコア(reward score);常に>0)およびN(ミスマッチする残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて累積スコアを計算する。アミノ酸配列に関して、スコアマトリクスを用いて累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの伸長は:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下落する;1つまたはそれより多い負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために、累積スコアがゼロに達するかまたはそれを下回る;またはいずれかの配列の末端に到達する;場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXはアラインメントの感受性および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列用にBLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアマトリクス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を使用する。
【0118】
BLASTアルゴリズムはまた2つの配列間の類似性の統計分析をも実施する(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:58735787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの測定値は最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の指標である。例えば被験核酸の参照核酸に対する比較における最小合計確率が約0.2未満、さらに好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似すると考えられる。
【0119】
ファミリーAおよびファミリーB DNAポリメラーゼに関するポリメラーゼアラインメントはBraithwaiteおよびIto.、Nucleic Acids Res.21(4);787−802(1993)(参照により本明細書に組み込まれる)の図1に見出される。
【0120】
3’−5’エキソヌクレアーゼ(3’ヌクレアーゼ)活性を有するポリメラーゼが本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態を実行するのに好ましい。3’ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼには、例えば大腸菌DNAポリメラーゼI、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ、Vent、Deep Vent、T7、クレノウ(exo)およびT4が含まれる。その全てが当分野において公知であり、そして市販により入手可能である(例えば、New England Biolabs)。
【0121】
修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能なポリメラーゼが、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態を実行するのに好ましい。修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能なポリメラーゼにはクレノウ(exo)および(exo)ならびにT4が含まれる。修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製するのに適当であり得るその他のポリメラーゼには、TaqおよびT7を含む、BraithwaiteおよびIto.、Nucleic Acids Res.21(4);787−802(1993)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるもののようなファミリーA DNAポリメラーゼが含まれる。このようなポリメラーゼは当分野において周知であり、そして本明細書に記載される方法における使用に関してその適合性を決定するために、本明細書に記載されるアッセイにおいて試験され得る。例えば修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを合成するに適当な条件下で、被験ポリメラーゼを修飾ポリヌクレオチド鋳型と共にインキュベートすることにより、特定の被験ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能であるか、または不可能であるかを決定できる。このような条件は当分野において公知であり、そして市販により入手可能であるポリメラーゼを容易に利用できる。例えば適当な反応条件には以下が含まれる(全て混合後の最終濃度である):
15mM Tris−HCl pH8.4
50mM KCl
2.5mM MgCl
3% DMSO
0.01% Tween−20
800nM dNTP(ACGT)
0.444倍SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン(10000倍として提供)
30nM Rox参照色素(Stratageneカタログ番号600530)
種々の濃度の酵素、例えば50単位/ml
100nM 順方向プライマー
100nM 逆方向プライマー
40pM 修飾Oligo1およびその相補的配列。
5’−TTTTTTTGCTCGACGGTGAAUGAUGTAGGUACCAGCAGUAACUCGAGCACGUCUU2’OMe(CG)A2’OMe(CC)AAATCUGGAUATTGCAGCCTCGT−3’(配列番号:4)
83塩基長ホスホジエステルDNA/2’OMe、ここで2’OMeは2’−O−メトキシ修飾ヌクレオチドを示す;Uは2’デオキシウリジンを示す。
【0122】
次いでMX3005PにおいてSYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンのためのプログラムを用いて、試験されているポリメラーゼに適当な反応条件下でQPCRを実施することができる。増幅生成物の検出は、ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能であることを示すが、増幅なしはポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能であることを示す。
【0123】
修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能であるポリメラーゼが、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態を実行するのに好ましい。修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能なポリメラーゼにはPfu DNAポリメラーゼが含まれる。その他のファミリーB DNAポリメラーゼもまた、修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが不可能であるポリメラーゼが必要とされる実施形態を実行するのに有用であることが企図される。このようなポリメラーゼには、ヒトα、δおよびεDNAポリメラーゼ、RB69およびPhi29バクテリオファージDNAポリメラーゼならびに、BraithwaiteおよびIto.、Nucleic Acids Res.21(4);787−802(1993)(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるその他のファミリーB DNAポリメラーゼが含まれる。
【0124】
ポリメラーゼまたはその部分をストレプトアビジンまたはプロテインGもしくはAに繋ぐことができる。例えばクレノウまたはT4をストレプトアビジンまたはプロテインGに融合させることができる。ポリメラーゼ融合タンパク質を作成する方法は当分野において公知であり、そして本明細書に記載される。
【0125】
前記で言及されたカテゴリーの1つに入るさらなるポリメラーゼは当分野において公知である。加えて、当分野において公知であり本明細書に記載されるアッセイにより、前記の活性のいずれかに関してポリメラーゼを試験することができる。特定のポリメラーゼによる最適な活性を可能にするようにバッファーおよび伸長温度を選択する。ポリメラーゼに有用なバッファーおよび伸長温度は当分野において公知であり、そして製造供給元の仕様書から決定することもできる。
【0126】
オリゴヌクレオチド/ポリヌクレオチド
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸(分子)」は、互換的に使用されて任意の長さのヌクレオチドの多量体形態を指す。ポリヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはその類似体を含有できる。ヌクレオチドは三次元構造を有することができ、そして公知の、または未知の任意の機能を実施し得る。「ポリヌクレオチド」という用語には一本鎖、二本鎖および三重らせん分子が含まれる。ポリヌクレオチドを遺伝子から単離するか、または当分野において公知の方法により化学的に合成できる。
【0127】
核酸を検出または測定するために、鋳型核酸配列を増幅するために、および本明細書に開示される方法にしたがって切断構造を形成するために有用な、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブもまた提供される。
【0128】
用語「プライマー」は1を超えるプライマーを指すことができ、そして精製された制限消化におけるような自然発生でも、または合成的に生成されても、核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長生成物の合成が触媒される条件下に置かれた場合、相補鎖に沿って合成の開始点として作用することが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。このような条件には、適当なバッファー(「バッファー」にはコファクターである、またはpH、イオン強度等に影響を及ぼす置換成分が含まれる)中および適当な温度で、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸およびDNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合化誘導剤の存在が含まれる。プライマーは好ましくは増幅において有効性が最大になるために一本鎖である。いくつかの実施形態においては、プライマーは3’ヌクレアーゼにより切断される3’フラップを有し得る。
【0129】
オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸配列にハイブリダイズ可能であり、かつ第2核酸鎖の酵素的合成を予備刺激する一本鎖DNAまたはRNA分子でよい。プライマーは標的分子の一部分に相補的である。化学的または酵素的のいずれかの合成方法によりオリゴヌクレオチドプライマーを調製することができることが企図される。あるいは、このような分子またはそのフラグメントは自然発生であり、かつその天然の供給源から単離されるかまたは商業的供給者から購入される。オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは5から100ヌクレオチド長、理想的には17から40ヌクレオチドであるが、様々な長さのプライマーおよびプローブが有用である。増幅のためのプライマーは好ましくは約17−25ヌクレオチドである。融解温度(T)推定の方法により特定の融解温度を有するようにプライマーを設計することができる。いくつかの実施形態においては、検出/PCR反応と干渉しないように、検出/PCR反応において使用されるプライマーの有効TのTよりも低いT(例えば、40℃)を有するように、ポリヌクレオチド鋳型に相補的なプライマーを設計することができる。OLIGO(商標)(Molecular Biology Insights,Inc.、カスケード、カナダ)を含む市販のプログラム、Primer3およびOligo Calculatorを含むインターネットで利用可能なプライマーデザインおよびプログラムを用いて、核酸配列のTを計算することができる。好ましいTのプライマーは実行されている特定の実施形態に依存するであろう。例えば一実施形態においては、プライマーは41℃以上の温度で標的から解離するであろう。一方その他の実施形態においては、好ましいのは約45から65℃の間、そしてさらに好ましくは約50から60℃の間のTを有することである。オリゴヌクレオチドにはポリヌクレオチド鋳型(修飾または非修飾)およびプライマーが含まれる。ポリヌクレオチド鋳型を少なくとも10塩基長、典型的には少なくとも20塩基長、例えば少なくとも30、40、50、60、70、80、90または100塩基長からの長さの範囲の長さで調製することができる。オリゴヌクレオチドは大きな核酸フラグメントでよいが、一般的にはそれは500塩基以下の核酸に限定される。
【0130】
オリゴヌクレオチドは溶液中で遊離するかまたは結合分子に抱合されてよい。結合部に抱合されているオリゴヌクレオチドは一般的に、核酸のそのストレッチにおける任意の位置で、抱合されることを可能にする化学的に活性な基(例えば、第一級アミン基)を有するであろう。
【0131】
本明細書で使用される際には、「修飾」または「修飾された」とは、具体的なクラスのポリメラーゼ(例えば、Pfu(exo))により増幅できないが、その他のポリメラーゼ(例えば、クレノウ)により増幅できる核酸を付与するポリヌクレオチド鋳型における、任意の変化(例えば、従来型でないヌクレオチドの付加)を指す。このような修飾には核酸のリン酸をチオリン酸と置換すること、および2’ヒドロキシルを2’−O−メチルと置換することが含まれる。その他の適当な修飾には1つまたはそれより多い以下のものが含まれる:2’−デオキシ−2’−フルオロ−β−D−アラビノ核酸(arabinonucleic acid)(2’F−ANA)ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)およびENA:2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸、逆(reversed)デオキシリボヌクレオチド、dU、ヒポキサンチン、8−オキソグアニン、8−オキソアデニン、エテノアデニン、脱プリン部位、コレステロール付加物ならびに、例えばTriLink BioTech(サンディエゴ、カリフォルニア州)、PerkinElmer Life And Analytical Sciences,Inc.(ウォルサム、マサチューセッツ州)およびSigma−Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から入手可能なもののような、その他の非従来型ヌクレオチド。
【0132】
「非従来型ヌクレオチド」または「非天然ヌクレオチド」とは、a)DNAポリメラーゼにより認識および組み込みされる4つの従来型デオキシヌクレオチド、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPのうちの1つではないヌクレオチド構造;b)(a)における4つの従来型デオキシヌクレオチドのうちの1つではない合成ヌクレオチド;c)修飾された従来型ヌクレオチド;またはd)リボヌクレオチド(それらは通常DNAポリメラーゼにより認識または組み込みされないため)およびリボヌクレオチドの修飾形態;を指す。これらの修飾ヌクレオチドを、修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用する実施形態におけるその有用性に関して、本明細書に記載される方法を介して試験することができる。
【0133】
したがって修飾ポリヌクレオチドは結果的に、非修飾ポリヌクレオチド鋳型および同じポリメラーゼ(例えば、Pfu)で生成されるような増幅生成物の量の10%、5%、1%、0.5%、0.1%および最も好ましくは0%を超えるべきではない。当業者はポリメラーゼが、当分野において公知のアッセイにおいて修飾ポリヌクレオチド鋳型をコピーすることが可能であるかどうかを決定することができる。例えば特定のポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能であるかどうかを決定するために、プライマー伸長反応においてポリメラーゼを本明細書に記載される修飾ポリヌクレオチド鋳型と共にインキュベートし、そして得られた生成物を検出することができる。増幅生成物の存在は、ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型をコピーすることが可能であることを示すが、増幅生成物の不在は、ポリメラーゼが修飾ポリヌクレオチド鋳型をコピーすることが不可能であることを示す。
【0134】
前記で記したように、ポリヌクレオチド鋳型は複製されて、増幅のための鋳型、通常は修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを生成する。複製は適当な(複数の)相補的プライマーを必要とするので;およびまたポリヌクレオチド鋳型は様々な検出の手段および反応条件における柔軟性を提供することができるので、ポリヌクレオチド鋳型の設計は重要である。例えばいくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチド鋳型を修飾する。
【0135】
ポリヌクレオチド鋳型は2つの相補的核酸鎖のハイブリッド二重鎖を含む二本鎖(ds)でよいか、または代替として一本鎖(ss)でよい。いずれかまたは双方の鎖は修飾塩基を担持することができる。
【0136】
一実施形態においては、一本鎖ポリヌクレオチド鋳型および単一のプライマーを使用して対数的複製を達成することができる。ss標的の1つの末端でプライマー結合配列、および標的鎖の反対の末端でプライマー結合部位の相補配列を含有するようにポリヌクレオチド鋳型配列を設計することにより、これを達成する。プライマーのアニーリングおよび伸長は、結果的に同一のプライマー結合部位を含有する相補的標的鎖の形成に至るであろう。この方式で、得られたds標的の(+)および(−)鎖の双方は標的二重鎖の反対の末端で同一のプライマー部位を含有し、かつポリメラーゼおよび標的核酸の組み合わせで使用される同じプライマーは、+および−標的鎖の双方の複製を促進する。
【0137】
その他の好ましい実施形態においては、ポリヌクレオチド鋳型配列の塩基の組成および配列を異なるアッセイ要件に適応させるために変更することができる。例えばポリヌクレオチド鋳型は本明細書に記載されるような1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含有して、特定のクラスのポリメラーゼ(例えば、Pfuポリメラーゼ)による複製を防止することができる。
【0138】
例えば5’末端で検出分子および3’末端でプライマー結合部位を、間に挿入された可変領域と共に付着するための繋ぎ連結を含有するように、ポリヌクレオチド鋳型配列を設計できることが企図される。あるいは繋ぎ連結はポリヌクレオチドの3’末端でよい。可変領域はポリヌクレオチド鋳型増幅法の要件によってのみ限定される任意の長さまたは組成にできる。例えばオリゴヌクレオチドを5’末端で化学的に繋ぎ連結を経て抗体に抱合させることができる。ポリヌクレオチド鋳型は複製プライマーの1つに相補的な5’結合領域およびその他の複製されたプライマーを結合するための3’部位を含有できる。ポリヌクレオチド鋳型は核酸塩基可変領域を有することができ、かつ長さまたは配列において可変でよく、検出増幅反応の間に特異的プライマーおよび/またはプローブで検出される様々な配列を含み、それにより大きさまたはその他の因子に基づいて複製された標的の検出の代替手段を提供する。
【0139】
別の実施形態では、一連の様々なポリヌクレオチド鋳型をマルチプレックスアッセイにおいて使用するために様々な分析物に利用する。例えばプライマー結合部位および/または内部ポリヌクレオチド鋳型領域のいずれかが異なる一連のポリヌクレオチド鋳型を調製し、そして様々な分析物に結合することが可能である様々な結合分子に繋ぐことができる。これらの受容体抱合体(例えば、増幅生成物)の各々の複製生成物を次いで検出反応において、大きさまたは配列に基づいて容易に区別できる。例えば様々なレポーター分子を伴う増幅鋳型特異的プライマーおよび/またはプローブを使用して、マルチプレックス反応において存在し得る種々の様々な増幅生成物を区別することができる。したがって複数の分析物をリアルタイムPCR反応において検出することができる。
【0140】
ポリメラーゼおよびポリヌクレオチドを結合分子または結合部に繋ぐ
本明細書に開示される方法を実行する場合、2つの異なる型の連結が企図される。第1の連結型は、例えば抗体−ポリメラーゼ融合タンパク質のような、またはストレプトアビジン−ビオチン相互作用を経る結合を介することを含む抗体またはその他の結合分子もしくは結合部に、共有結合的にまたは非共有結合的に繋がれたポリメラーゼまたはその一部分を含む。好ましい実施形態においては、結合分子または結合部は、ストレプトアビジンまたはアビジンに融合した第1ポリメラーゼまたはその一部分を含む融合タンパク質に間接的に繋がれた抗体である。当業者に周知の方法を用いてこれらを調製できる(D.G.Williams、J.Immun.Methods 79:261(1984))。あるいは組換えDNAおよび遺伝子操作技術を用いて酵素結合抱合体を作成することができる(I.PastanおよびD.Fitzgerald、Science 254:1173(1991))。抗体接合体における使用に適当な酵素には限定するものではないが、ポリメラーゼ(例えば、3’ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼおよび修飾ポリヌクレオチド鋳型を複製することが可能なポリメラーゼ)が含まれる。ポリメラーゼ接合体の選択は、実行される実施形態に依存する。
【0141】
タンパク質を抗体のような結合化合物に共有結合的に連結するための詳しい手引きを文献、例えばHermanson、Bioconjugate Techniques(Academic Press、ニューヨーク、1996年)等に見出すことができる。1つの態様においては、1つまたはそれより多いタンパク質を結合分子または結合部上の共通する反応基に直接的または間接的に付着させる。共通する反応基はアミン、チオール、カルボン酸、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン等を含み、そして市販により入手可能である架橋剤、例えばHermanson(前記で引用);Haugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Products、第9版(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州、2002年)によりタンパク質に繋がれ得る。一実施形態においては、分子タグのNHS−エステルは結合分子上の遊離アミンと反応する。
【0142】
第2の連結型は、分析物を認識する抗体またはその他の結合分子に繋がれたポリヌクレオチド鋳型配列からなる。タンパク質をアミノ−オリゴヌクレオチドに連結するための当業者に公知の方法の変法を用いてこれらを調製することができる。例えばアミノ修飾された窪みを核酸の3’末端に付加する酵素テーリング法を用いてこれを達成できる(A.Kumar,Anal.Brioche.169:376(1988))。あるいはアミノ修飾塩基を核酸塩基配列に合成的に導入することができる(P.Liら、Nucleic Acids Res.15:5275(1987))。次いでUreaの方法における酵素を抗体に置換することにより、抗体をアミノ修飾核酸に付着させることができる(M.S,Urea、Nucleic Acids Res.16:4937(1988))。
【0143】
いくつかの実施形態においては、核酸/抗体抱合体はヘテロ二機能性クロスリンカーをDNAオリゴヌクレオチド標的に繋ぐことを伴い、次にそれをTsengら、米国特許第5324650号により記載される化学を用いて抗体に繋ぐ。
【0144】
オリゴヌクレオチドの抗体への化学的付着を促進するために、シアノエチルホスホラミダイト化学を用いて合成の間にその5’末端に第一級アミン基を導入することによりオリゴヌクレオチドをアミノ修飾できる。アミノ修飾オリゴヌクレオチドをスルフヒドリル基を導入するヘテロ二機能性試薬でさらに修飾できる。試薬、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセタート(SATA)は、第一級アミン反応基N−ヒドロキシルスクシンイミド(NHS)を用いてアミノ修飾オリゴヌクレオチドに繋ぎ、アセチル保護スルフヒドリル基を導入するヘテロ二機能性クロスリンカーである。抗体は別のNHSクロスリンク剤、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)で修飾される。SMCCは抗体のペプチド内の第一級アミン基(例えば、リジン上の.イプシロン.−基)と反応し、マレイミド基(遊離スルフヒドリル反応基)を抗体に導入する。マレイミド修飾抗体をSATA修飾抗体と混合する。SATA修飾オリゴヌクレオチド上のアセチル保護スルフヒドリル基はヒドロキシルアミンの添加で活性化されて反応性の遊離スルフヒドリル基を生成する(米国特許出願第07/946247号)。遊離スルフヒドリル含有オリゴヌクレオチドはマレイミド修飾抗体と即座に反応してDNA−抗体抱合体を形成する。
【0145】
オリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドの5’ヌクレオチド、3’ヌクレオチドまたは内部ヌクレオチドで結合分子に付着させることができる。あるいはオリゴヌクレオチドを、ストレプトアビジン、プロテインAまたはプロテインGを介して結合分子に間接的に付着させる。例えばビオチン−ストレプトアビジンを介してオリゴヌクレオチドを抗体に抱合させることができる。
【0146】
ASPは反応部に繋がれた結合部を含む。1つの実施形態においては、結合部は抗体であり、かつ反応部はポリメラーゼの第1または第2部分である。なおさらなる実施形態においては、抗体およびポリメラーゼの第1または第2部分は融合ポリペプチドである。好ましい実施形態においては、結合部は、ストレプトアビジンまたはアビジンに融合した第1ポリメラーゼの第1または第2部分を含む融合タンパク質に間接的に繋がれた抗体である。
【0147】
ポリメラーゼ/抗体融合タンパク質は、目的の抗体またはその活性フラグメントの第1ポリペプチド配列、およびポリメラーゼまたはその第1もしくは第2部分の第2ポリペプチド配列を含むポリペプチド鎖を含む。当分野において公知の方法を用いて本明細書に記載される抗体融合ポリペプチドを作成することができる。例えば融合タンパク質を米国特許第6194177号に記載されるように構築できる。
【0148】
一般的に、目的の抗体をコードする核酸分子をPCRによりクローン化し、そしてポリメラーゼまたはその第1もしくは第2部分をコードする核酸分子と共にインフレームでライゲートする。融合/ハイブリッドタンパク質をコードする核酸分子を、続いて発現のために宿主細胞にトランスフェクトする。最終構築物の配列をシークエンシングにより確認することができる。
【0149】
組換え遺伝学の分野における日常的な技術を用いて、抗体−ポリメラーゼハイブリッドに組み込まれるべきポリメラーゼまたはポリメラーゼ部分をコードする核酸を得ることができる。使用の一般法を開示する基礎的な教科書にはSambrookおよびRussell、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第3版、2001年);Kriegler、Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990年);およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1994−1999年)が含まれる。
【0150】
種々の方法のいずれかを用いてポリメラーゼをコードする核酸配列を得ることができる。いくつかの実施形態においては、ポリペプチドをコードする核酸配列を、cDNAおよびゲノムDNAライブラリーからプローブでのハイブリダイゼーションによりクローン化するか、またはオリゴヌクレオチドプライマーでの増幅技術を用いて単離する。さらに一般的には、増幅技術を用いて、DNAまたはRNA鋳型(例えば、DieffenfachおよびDveksler、PCR Primers:A Laboratory Manual(1995)参照)を用いてポリメラーゼ配列を増幅および単離する。あるいは重複オリゴヌクレオチドを合成的に生成し、そして結合させて1つまたはそれより多いドメインを生成することができる。プローブとして抗体を用いて、ポリメラーゼをコードする核酸を発現ライブラリーから単離することもできる。
【0151】
抗体およびポリメラーゼまたはポリメラーゼ部分を直接的に、または共有結合リンカー、例えばポリグリシンリンカーのようなアミノ酸リンカー、もしくは別の型の化学的リンカー、例えば炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えばPEG等を介してのいずれかで連結することができる(例えば、Hermanson、Bioconjugate techniques(1996)参照)。融合タンパク質を形成するポリペプチドをC末端からN末端に連結できるが、それらをC末端からC末端に連結することもできる。融合タンパク質におけるアミノ酸の様々な鎖を一緒に直接的にスプライシングできるか、または化学的連結基もしくはアミノ酸連結基を介して一緒に間接的にスプライシングでき、それは約200以上のアミノ酸長でよく、典型的には1から100アミノ酸である。いくつかの実施形態においては、プロリン残基をリンカーに組み込んでリンカーによる有意な二次構造エレメントの形成を防止する。リンカーはしばしば組換え融合タンパク質の一部として合成される可動性アミノ酸部分配列でよい。このような可動性リンカーは当業者に公知である。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗体またはその結合フラグメントのアミノ酸配列をペプチドリンカーを介してポリメラーゼの一部分に連結する。ペプチドリンカーの実例は当分野において周知であり、かつ一般的には、例えばGlyGlyGlySerSerGlyGlyGlySerGly(配列番号26)のようないくつかのGlyおよびいくつかのSer残基を含む。一実施形態においては、融合タンパク質において使用するためのペプチドリンカーは可動性ヒンジとして作用する。
【0153】
一実施形態においては、ポリメラーゼまたはポリメラーゼの第1もしくは第2部分を抗体の非抗原結合部分に連結する。別の実施形態においては、ポリメラーゼまたはポリメラーゼの第1もしくは第2部分を結合部のC末端に連結する。
【0154】
別の実施形態は配列番号1のアミノ酸配列に95%以上同一であるクレノウに繋がれた抗体のような結合分子または結合部を対象とし、ここでクレノウはポリメラーゼ活性を保持する。
【0155】
別の実施形態は、第1ポリメラーゼの第1部分が第1ポリメラーゼの第2部分と相互作用する場合に、それが機能的なポリメラーゼ複合体を形成する限り、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%、98%または99%同一である第1ポリメラーゼの第1部分を対象とする。
【0156】
別の実施形態は、第1ポリメラーゼの第2部分が第1ポリメラーゼの第1部分と相互作用する場合に、それが機能的なポリメラーゼ複合体を形成する限り、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも95%、98%または99%同一である第1ポリメラーゼの第2部分を対象とする。
【0157】
ASPの発現
特定の実施形態においては、本明細書に記載されるいずれかの方法または当分野において公知である方法により得られる、当分野において周知の技術により適切な発現ベクターに挿入することができるDNA分子を使用して、ASPを発現することができる。例えばホモ多量体のテーリング、合成DNAリンカーの使用を伴う制限酵素連結、またはブラント末端ライゲーションにより、二本鎖cDNAを適当なベクターにクローン化することができる。通常DNAリガーゼを使用してDNA分子を連結後、アルカリ性ホスファターゼでの処理により、望ましくない結合を回避することができる。
【0158】
したがって本発明は、本明細書に記載されるような核酸分子(例えば、遺伝子または遺伝子を含む組換え核酸分子)を含むベクター(例えば、組換えプラスミドおよびバクテリオファージ)を含む。「組換えベクター」という用語には、組換えベクターが誘導された元来のまたは天然の核酸分子に含まれるものよりも大きな、小さなまたは異なる核酸配列を含有するように改変、修飾または操作されているベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ウイルス、コスミド、フォスミドまたはその他の精製された核酸ベクター)が含まれる。
【0159】
真核生物宿主のために、宿主の性質に依存して様々な転写および翻訳調節配列を用いることができる。これらはアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルス等のようなウイルス供給源から誘導でき、ここで調節シグナルは高レベルで発現する特定の遺伝子に関連する。実施例には、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子の発現を調整できるように抑制または活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択できる。
【0160】
いくつかの実施形態においては、ハイブリッドタンパク質の1つまたはそれより多いポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む1つまたはそれより多いDNA分子を、望ましいDNA分子を宿主細胞に組み入れることが可能である1つまたはそれより多い調節配列に作動可能なように連結する。例えば発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれより多いマーカーを導入することにより、導入されたDNAにより安定して形質転換されている細胞を選択することができる。選択可能マーカー遺伝子を発現されるべき核酸配列に直接連結するか、または同時トランスフェクションにより同じ細胞に導入することができるかのいずれかである。本明細書に記載されるタンパク質の最適な合成のためにさらなるエレメントもまた必要とされ得る。必要に応じて使用するさらなるエレメントは当業者には明白であろう。
【0161】
特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択するのに重要な因子には、限定するものではないが;ベクターを含有するレシピエント細胞が、ベクターを含有しないこれらのレシピエント細胞から認識および選択される容易さ;特定の宿主において望まれるベクターのコピー数;および異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」できることが望ましいかどうか;が含まれる。
【0162】
一度(複数の)ベクターが発現のためのDNA配列を含むように構築されると、例えば形質転換、トランスフェクション、抱合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、直接マイクロインジェクション等を含むがこれらに限定されない、当分野において公知である種々の適当な方法の1つまたはそれより多くにより、それを適切な宿主細胞に導入できる。
【0163】
宿主細胞は原核生物性または真核生物性のいずれかでよい。真核生物宿主細胞の実施例には、例えばヒト、サル、マウスおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物細胞が含まれる。このような細胞は、例えば正確なフォールディングまたはグリコシル化を含むタンパク質の翻訳後修飾を促進する。加えて、酵母細胞を用いてハイブリッドタンパク質を発現することもできる。たいていの哺乳動物細胞と同様に、酵母細胞もまた例えばグリコシル化を含むタンパク質の翻訳後修飾を可能にする。酵母におけるタンパク質の生成に利用することができる強力なプロモーター配列および高コピー数のプラスミドを利用する、多くの組換えDNA計画が存在する。酵母の転写および翻訳の機構はクローン化された哺乳動物遺伝子生成物上のリーダー配列を認識することができ、それによりリーダー配列を担持するペプチドの分泌を可能にする(すなわちプレペプチド)。ハイブリッドタンパク質の高収率生成の特に好ましい方法は、米国特許第4889803号に記載されるような連続的な漸増レベルのメトトレキサートの使用による、DHFR−欠損CHO細胞におけるジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)増幅の使用による。得られたポリペプチドはグリコシル化形態でよい。
【0164】
1つまたはそれより多いベクターの導入の後、宿主細胞を通常ベクター含有細胞の成長に関して選択する選択培地中で成長させる。当分野において公知の、または本明細書に記載される方法のいずれか、例えば抽出、沈降、クロマトグラフィーおよび電気泳動を伴う任意の従来の手順により、組換えタンパク質の精製を実施することができる。タンパク質を精製するために使用できるさらなる精製手順は、標的タンパク質に結合するモノクローナル抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーである。一般的には、組換えタンパク質を含有する粗製調製物を、適当なモノクローナル抗体が固定されているカラムに通過させる。タンパク質は通常、特異的抗体を介してカラムに結合するが、不純物は通過する。カラムを洗浄した後、例えばpHまたはイオン強度を変化させることによりタンパク質をゲルから溶出する。
【0165】
固体表面に付着した結合分子または結合部
一実施形態においては、固体支持体の存在下で方法を実行する。本明細書で使用される際には「固体支持体」または「固体表面」とは、捕捉分子(例えば、抗体)として使用される結合分子または結合部のための支持体を提供する任意の構造を指す。適当な固体支持体にはポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ニトロセルロース、PVDFもしくはナイロンのような膜、ラテックスビーズ、ガラスビーズ、シリカビーズ、常磁性もしくはラテックスマイクロスフェア、またはマイクロタイターウェルが含まれる。さらなる実施例として、固体支持体は抗体のような捕捉分子のプレートへの共有結合的付着を可能にする、Top Yieldプレートのような修飾されたマイクロタイタープレートでよい。固体支持体がビーズ、常磁性マイクロスフェアまたはラテックスマイクロスフェアのような材料である場合、固体支持体はマルチウェル組織培養皿のような開口した入れ物、またはスクリュートップチューブのような密閉された入れ物に入れることができ、双方共に研究室で一般的に使用される。
【0166】
一実施形態においては、捕捉抗体は固体支持体に結合している。別の実施形態においては、分析物は固体支持体に直接的に結合する。
【0167】
表面をポリL−リジンでコーティングすることによるような、支持体の表面への捕捉分子の結合を促進するために固体支持体を修飾するか、またはアミノアルデヒドサイレージもしくはエポキシシランでシリコン化することができる。方法を実施する環境が、どの固体支持体が最も好ましいか、および入れ物を使用するかどうかを左右するであろうということは当業者には理解されよう。
【0168】
被験試料中の量を擬似することが予期される分析物の様々な量での交差力価測定により、固体支持体に付着すべき捕捉分子の量を実験的に決定できる。一般的には被験試料中の分析物の量は、アトグラムからミリグラムの範囲であると予期される。被験試料中の未知の濃度の分析物を明記された容量で添加することは試験の感受性に影響を及ぼすであろう。大容量の被験試料(例えば、200−400μl)を使用する場合、より大容量の試料を可能にするために試験形式の修飾が必要な可能性がある。しかしながら一般的には捕捉分子の濃度はmlあたり約1から約10μgであろう。
【0169】
分析物のプラスチックまたはその他の固体支持体系(例えば、膜またはマイクロスフェア)への付着に関して記載されている日常的な方法により、捕捉分子を固体支持体に付着させることができる。このような方法の実施例を、米国特許第4045384号および米国特許第4046723号(双方共に参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
【0170】
膜、マイクロスフェアまたはマイクロタイターウェルのような表面への捕捉分子の付着を、PBSまたは規定のpHのその他のバッファー中での直接添加により実施し、続いて対流式オーブン中で乾燥させることができる。
【0171】
吸着、共有結合的連結、アビジン−ビオチン連結、ストレプトアビジン−ビオチン連結、ヘテロ二機能性クロスリンカー、プロテインA連結またはプロテインG連結を介するような付着手段により、捕捉分子を固体支持体に付着させることができる。各々の付着手段は、固体支持体の表面からの捕捉分子の喪失が最小であるストリンジェント洗浄条件の使用を許容すべきである。実施例としては、吸着は親水性吸着でよい。さらなる実施例としては、ヘテロ二機能性クロスリンカーはマレイン酸無水物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、N−5アジド、2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(ANB−NOS)またはメルカプトシランでよい。
【0172】
アミノ酸残基、好ましくはリジンもしくはアルギニン残基、チオール基または炭水化物残基のような捕捉分子の一部分を経て、捕捉分子を固体支持体に付着させることができる。捕捉分子が抗体である場合、チオール基は抗体ヒンジ領域のチオール基でよい。
【0173】
固体支持体をアビジンまたはストレプトアビジンで誘導体化でき、かつ捕捉分子の固体支持体への付着に役立つように、捕捉分子を修飾して少なくとも1つのビオチン部を含有できる。あるいは固体支持体をビオチンで誘導体化でき、そして捕捉分子を修飾して少なくとも1つのアビジンまたは少なくとも1つのストレプトアビジン部を含有できる。
【0174】
被験試料および分析物結合
本明細書に開示される方法を実行するときに、調査中の選択された分析物を含有することが疑われる被験試料を、捕捉分子を含有する支持体に適用することができる。あるいは溶液基盤のアッセイでは、被験試料を反応混合物または固体支持体を含まない容器に直接添加する。支持体の同一性に依存して、支持体をいくつかの型の培養装置内に含有できる。支持体が膜である場合、例えば膜の長さおよび幅よりもわずかに大きい浅いガラス皿を使用できる。支持体がマイクロスフェアである場合、マイクロスフェアをポリプロピレンまたはポリスチレンスクリュートップチューブのようなチューブ中に含有できる。反応容器または入れ物の同一性は重大ではないが、方法で使用される試薬が接着しない材料から構成されるべきである。
【0175】
使用される被験試料の量は重大ではないが、容易に取り扱うことができ、かつ本明細書に開示される方法の限界内で検出可能である分析物の濃度を有する量であるべきである。被験試料はまた支持体を適確に覆うために十分であるべきであり、かつこの点で必要に応じて希釈され得る。例えば被験試料の量は0.2μlから2mlの間でよい。好ましくは、被験試料の量は0.2μlから1mlの間でよい。最も好ましくは被験試料の量は0.2μlから200μlの間でよい。
【0176】
被験試料中の分析物の濃度は重大ではないが、本明細書に開示される方法の検出限界内であるべきである。濃度は被験試料の容量に依存して異なり得るため、分析物を検出できる濃度範囲を提供することは困難であることは当業者には理解されるであろう。好ましくは方法において使用される被験試料は約1×10−6と約1×10−18gの間の分析物、さらに好ましくは約1×10−6gと約1×10−15gの間の分析物、最も好ましくは約1×10−6gと約1×10−18gの間の分析物を含有する。
【0177】
したがって本明細書にて教示される方法およびキットを使用して、例えば約10pg/ml以下、約1ng/ml以下、約0.7ng/ml以下、約0.5ng/ml以下、約0.1ng/ml以下、約0.01ng/ml以下、約1pg/ml以下、約0.1pg/ml以下、約0.01pg/ml以下、約1fg/ml以下の濃度で試料中に存在する分析物を検出することができる。
【0178】
いくつかの実施形態においては、固体支持体および捕捉抗体を使用する。この実施形態においては、捕捉分子が固体支持体に結合するのを可能にするのに十分な時間、捕捉分子を固体支持体と共にインキュベートする。あるいは分析物が固体支持体に結合するのを可能にするのに十分な時間、分析物を固体支持体と共にインキュベートする。好ましくはインキュベーションを約10分から約60分の間続行するが、適切な場合、一晩を含む、より長時間続行できる。
【0179】
方法の各々のインキュベーション工程を実施する温度もまた重大ではない。好ましくはインキュベーションを行う温度は約18℃から約37℃の間である。さらに好ましくはインキュベーション温度は約18℃から約30℃の間である。最も好ましくはインキュベーション温度は周囲温度(20℃)である。分析物および捕捉抗体の添加後、一般的には洗浄、続いて検出分子結合反応を実施する。
【0180】
検出抗体結合および伸長反応
特定の実施形態においては、第1核酸ポリメラーゼおよび抗体のような検出分子を適当なバッファーに添加する。第1核酸ポリメラーゼを検出抗体(例えば、融合タンパク質またはビオチン−ストレプトアビジン相互作用)に繋ぐ。一実施形態においては、反応のこの工程は修飾ポリヌクレオチド鋳型および修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することが可能である第1ポリメラーゼを利用する。別の実施形態においては、反応のこの工程は、3’ヌクレアーゼ活性を有する第1ポリメラーゼ、およびポリヌクレオチド鋳型に相補的であり、かつ3’フラップおよび伸長時に新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を有するプライマーを利用する。検出抗体を反応混合物に添加する前に第1核酸ポリメラーゼに繋ぐことができるか、または分析物とのインキュベーションの間に繋ぐことができる(例えば、ビオチン標識された検出抗体および添加されたストレプトアビジン−クレノウ)。別の実施形態においては、第1分析物特異的プローブおよび第2分析物特異的プローブを適当なバッファー中で添加する。第1分析物特異的プローブは第1ポリメラーゼの第1部分に繋がれた抗体のような検出分子を有するが、第2分析物特異的プローブは第1ポリメラーゼの第2部分に繋がれた抗体のような検出分子を有する。核酸ポリメラーゼの第1および第2部分を反応混合物に添加する前に検出抗体に繋ぐことができるか、またはそれらを分析物とのインキュベーションの間に繋ぐことができる(例えば、ビオチン標識された抗体ならびに添加されたストレプトアビジン−クレノウの第1および第2部分)。
【0181】
反応混合物は、検出抗体が分析物に結合するのを可能にするのに十分な時間インキュベートされる。好ましくは、インキュベーションを約5分と約60分との間続行するが、適切な場合、一晩を含む、より長時間続行できる。
【0182】
方法の各々のインキュベーション工程が実施される温度もまた重大ではない。好ましくはインキュベーションを行う温度は約18℃から約37℃の間である。さらに好ましくはインキュベーション温度は約18℃から約30℃の間である。最も好ましくはインキュベーション温度は周囲温度(20℃)である。インキュベーションの後、ウェルを洗浄バッファーで洗浄する。
【0183】
一実施形態においては、分析物−検出抗体インキュベーション反応および伸長反応を同じ反応条件下で同時に実施する。好ましい実施形態においては、分析物−検出抗体インキュベーション反応および伸長反応を逐次的に実施する。
【0184】
次いで伸長反応混合物をウェルに添加する。伸長反応混合物には本明細書に記載されるような修飾ポリヌクレオチド鋳型、および修飾ポリヌクレオチド鋳型の一部分に相補的である1つまたはそれより多い逆方向プライマーが含まれる。一般的には反応混合物を室温で30分から一晩インキュベートする。一実施形態においては、ポリヌクレオチド鋳型を1つまたはそれより多い非従来型ヌクレオチドを有するように修飾する。インキュベーション工程の間、プライマーは修飾ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングし、そして第1核酸ポリメラーゼまたは、第1ポリメラーゼの第1および第2部分の相互作用により形成されるポリメラーゼ複合体により伸長されて、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを形成する。次いで非修飾コピーを検出反応において利用する。
【0185】
検出分子結合/プライマー伸長条件が、ポリヌクレオチド分子の性質および同一性、ならびに(1つまたは複数の)プライマーの性質および同一性に依存して異なり得ることは、当業者には理解されよう。本明細書にて論じられるような基準を有する多くのその他のDNAポリメラーゼ(例えば、3’ヌクレアーゼ活性を有する)が利用可能であり、本明細書に開示される方法において使用できることは当業者には理解されよう。条件の実例を実施例にて記載する。
【0186】
検出アッセイ
結合/伸長反応の後、検出反応を実施する。この反応を、伸長反応を行った同一の反応容器中で、または別個の反応容器中で行うことができる。好ましくは検出反応は、伸長反応の間に生成された増幅のための鋳型(および/またはその相補体)(例えば、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピー)に特異的である、(1つまたは複数の)オリゴヌクレオチドプライマーを使用して実施されるポリメラーゼ連鎖(PCR)である。PCRをマイクロウェルプレート中の、またはいくつかのその他の適切な入れ物中の(例えば、マイクロビーズを支持体として使用する場合)アッセイ系で直接実施できる。
【0187】
PCR増幅バッファー、増幅のための鋳型(および/またはその相補体)に特異的である(1つまたは複数の)オリゴヌクレオチドプライマー、および第2DNAポリメラーゼ(例えば、3’ヌクレアーゼ活性を欠如するポリメラーゼまたはPfu DNAポリメラーゼ)をインキュベートする。PCRで使用される増幅バッファーおよびDNAポリメラーゼは、増幅分子のポリヌクレオチド分子部分の性質および同一性、ならびに(1つまたは複数の)プライマーの性質および同一性に依存して異なり得ることは、当業者には理解されよう。一実施形態においては、反応物に添加される第2ポリメラーゼ(例えば、Pfu DNAポリメラーゼ)は修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができない。PCR増幅バッファー/プライマー/DNAポリメラーゼ組成物の実施例は、反応混合物25μl中15mM Tris−HCl(pH8.4)、50mM KCl、2.5mM MgCl、3% DMSO、0.01% Tween−20、800μM dNTP(ACGT)、Pfu(exo)50単位/ml(Stratageneカタログ番号600163−81)および100nMプライマーである。本明細書にて論じられるような基準を有する多くのその他のDNAポリメラーゼ(例えば、3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する)が利用可能であり、本明細書に開示される方法において使用できることは当業者には理解されよう。
【0188】
一実施形態においては、反応混合物に添加される第2ポリメラーゼは3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する。別の実施形態においては、反応物に添加される第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができない。この後者の実施形態においては、第2ポリメラーゼは3’ヌクレアーゼ活性を呈しても、呈しなくてもよい。
【0189】
第2ポリメラーゼが本明細書にて論じられる基準内に入る限り(例えば、修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができないか、または3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する)、PCRを実施するためのいずれかの市販により入手可能な系においてPCR増幅を実施できる。PCRの時間および温度は増幅分子のポリヌクレオチド分子部分の性質および同一性、ならびに(1つまたは複数の)プライマーの性質および同一性に依存するであろう。条件の実例には95℃(15秒)および63℃(45秒)で40サイクルが含まれる。
【0190】
PCR増幅に加えて、本明細書で開示される方法を鎖置換増幅(SDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、転写媒介増幅(TMA)またはリガーゼ連鎖反応(LCR)を用いて実行できる。リアルタイム増幅を用いて均一な閉管環境においてシグナルの増幅を作成できる。リアルタイム増幅に適当な計器装備には、ABI PRISM(登録商標)(Applied Biosystems,Inc.、フォスターシティー、カリフォルニア州)、TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)システム、LIGHTCYCLER(登録商標)(Roche Diagnostic GmbH、マンハイム、ドイツ)、RAPIDCYCLER(登録商標)(Idaho Technologies、ソルトレークシティー、ユタ州)、Bio−RadのサーマルサイクラーおよびSMARTCYCLER(登録商標)(Cepheid Corporation、サニーベール、カリフォルニア州)が含まれる。
【0191】
PCR反応の間に、当分野において公知の種々の方法により非修飾コピーまたは増幅のための鋳型を検出できる。(a)ゲル上で放出された切断生成物の直接検出;(b)核酸切断反応(TAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)反応)の間に作成されたシグナルの間接的または直接的な検出;(c)標的にプローブ結合したときの蛍光変化(分子ビーコン);またはSYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン検出アッセイ(例えば、実施例参照)を含むいくつかの手段により、増幅された生成物の検出を検出できるが、これらに限定されない。エンドヌクレアーゼ活性を利用する切断反応には、INVADER(登録商標)検出アッセイ(Third Wave Technologies;マディソン、ウィスコンシン州)(米国特許第6348314号に記載され、その全が参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。本方法により包含される切断反応アッセイには、分子ビーコン検出アッセイ(種々の商業用供給源により供給される)およびTAQMAN(登録商標)(Roche Molecular Systems Inc.、アラメダ、カリフォルニア州)検出アッセイ(Rocheを含む種々の商業用供給源により供給される)(米国特許第5723591号;第5925517号および第5804375号に記載され、その各々はその全てが参照により本明細書に組み込まれる)もまた含まれる。特定の実施形態において有用な切断反応はまた米国特許第6548250号に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される方法においてこのような切断反応はヌクレアーゼにより実行される。
【0192】
とりわけ固体支持体および捕捉抗体を使用するこれらの方法を含む本明細書に開示される方法における試薬の添加の間に、アッセイ系を洗浄に供して非特異的結合の発生を低減させるのが好ましい。インタクトなポリメラーゼ(非開裂)または開裂ポリメラーゼ系では、結合分子、第1ポリメラーゼおよび分析物またはASP−分析物を含む複合体ならびに第1ポリメラーゼ複合体の解離を引き起こさないストリンジェント洗浄条件を用いることができる。例えば加熱、pH変化または(ならびに)ホルムアミド、界面活性剤および塩の添加を用いて、洗浄工程の効率を増大させることができる。あまりにストリンジェントな条件では、結合分子、第1ポリメラーゼおよび分析物もしくはASP−分析物を含む複合体ならびに第1ポリメラーゼ複合体の解離、またはレポーターの破壊に至り得る。ストリンジェント洗浄条件に対する耐性は、使用される分析物、結合メンバー、反応部、ポリメラーゼおよび特異的レポーターの性質で異なるであろう。したがって、ストリンジェント条件は各アッセイに関して実験的に最適化されるべきである。しかしながら、非特異的結合を低減させるための洗浄において、結合分子、第1ポリメラーゼおよび分析物またはASP−分析物を含む複合体ならびにポリメラーゼ複合体のいくつかを喪失する場合、温度リサイクル工程の数の増大、またはプライマー伸長工程の時間の増大により実現されるさらなる標的複製により、これを代償することができる。
【0193】
洗浄サイクルの数および浸漬時間は実験的に決定されるが、一般的にTween20、Triton X−100またはNP−40のような界面活性剤を伴って、水または低もしくは高モル濃度の塩溶液のいずれかを洗浄溶液として使用できる。方法において使用される試薬の各々のインキュベーションの後、5または15秒間から10分間持続する1−5または1−8回の洗浄を実施できる。デタージェント濃度は典型的には0から1%であり、塩濃度(例えば、NaCl)は0から1000mMである。好ましくは、例えば固体支持体への捕捉分子の添加の後、被験試料の添加の後、および検出分子の添加の後に各インキュベーション工程との間に洗浄を行う。洗浄条件の例を実施例に記載する。
【0194】
特記しない場合、本明細書にて使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似するかまたは均等な方法および材料を本発明の実行または試験において使用することができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。全ての出版物、特許出願、特許および本明細書にて言及されるその他の参考文献は、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する事例では、定義を含む本明細書が統制する。加えて材料、方法および実例は例証となるものであり、そして限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0195】
実施例1:修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用する分析物検出反応
これらの反応を用いて、固相(例えば、ELISAプレート)に直接的または間接的に取り付けた分析物を測定することができる。
【0196】
試料中の分析物の量を測定するために、ヒトEGFおよびヒトVEGFに関するR&D Systems DUO SET ELISAディベロップメントキット(カタログ番号DY236およびDY293B;R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)で以下のアッセイを実施した。
【0197】
捕捉抗体の一晩コーティング、遮断、分析物希釈および捕捉、洗浄ならびにビオチン化検出抗体の適用のために、R&D Systemsのキットを製造者の説明書にしたがって使用した。しかしながら検出抗体の添加後、市販のキットからのストレプトアビジン(「SAv」)−セイヨウワサビペルオキシダーゼをSAv−クレノウ(exo)で置換した。SAv−クレノウ(exo)を遮断/希釈バッファー中100ng/mlまで希釈した。
【0198】
SAv−クレノウ(exo)をELISAプレートに75μl/ウェルで添加し、そして室温で30分間インキュベートして、SAvがビオチン化抗体に結合するのを可能にした。溶液をウェルから吸引し、そしてウェルをTBST 400μlで4回洗浄し、続いて水で2回洗浄した。クレノウ伸長混合物をウェルに75μl/ウェルで添加し、そして室温で30分間、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーが形成されるのを可能にした。クレノウ伸長混合物には以下が含まれる(全て混合後の最終濃度である):
10mM Tris−HCl(pH7.5)
5mM MgCl
7.5mM DTT
100μg/ml BSA
500μM dNTP(ACGT)
100nM Alien1−逆方向プライマー
40pM Oligo1
【0199】
以下のオリゴヌクレオチドもまた使用した:
Alien1(修飾ポリヌクレオチド鋳型)=Oligo1:
5’−TTTTTTTGCTCGACGGTGAAUGAUGTAGGUACCAGCAGUAACUCGAGCACGUCUU2’OMe(CG)A2’OMe(CC)AAATCUGGAUATTGCAGCCTCGT−3’(配列番号:4)
83塩基長ホスホジエステルDNA/2’OMe(ここで2’OMeは2’−O−メトキシ修飾ヌクレオチドを示し;Uは2’デオキシウリジンを示す)
【0200】
Alien1−逆方向プライマー(Oligo1の3’末端にアニーリングしてQPCRの適当な鎖を予備刺激する):
ACGAGGCTGCAATATCCAGA(配列番号:5)
PCRプライマー:
Alien1−逆方向:ACGAGGCTGCAATATCCAGA(配列番号:5)
Alien1−順方向:TGCTCGACGGTGAATGATGT(配列番号:6)
【0201】
修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを含有する伸長反応のアリコートを、2倍QPCRマスターミックス(試料での1回希釈で1倍MMになる)および抗Pfu(ホットスタート増幅を促進するために使用された抗体)を含有する96ウェルPCRプレートの対応するウェルに移した。QPCR増幅マスターミックスには以下が含まれる(全て試料との混合後の最終濃度である):
15mM Tris−HCl(pH8.4)
50mM KCl
2.5mM MgCl
3% DMSO
0.01% Tween−20
800μM dNTP(ACGT)
0.444倍SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン(10,000倍として提供される)
30nM Rox参照色素(Stratageneカタログ番号600530)
Pfu(exo)50単位/ml(Stratageneカタログ番号600163−81)
100nM Alien1−順方向プライマー
100nM Alien1−逆方向プライマー
【0202】
試料を混合し、そして解離曲線および2工程循環パラメーター[95℃10分間](1サイクル)、[95℃15秒間、63℃45秒間](40サイクル)で、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンに関するプログラムを用いてMX3005PリアルタイムPCR装置に流す。
【0203】
分析物濃度=0pg/mlのCtと分析物濃度=Xpg/mlのCtとの間のCtにおける変化を計算することにより、相対QPCRシグナルをコンピューター計算した。これを「0からのdCt」と称した。効率100%のアッセイでは、1つのCtの変化は初期の使用可能なQPCR鋳型の量の2倍に均等である。この対数的シグナルを直線的な量に変換するために、以下の式:「相対QPCRシグナル」=2^(0からのdCt)−1を使用した。図3Aおよび3Bは試料中で使用される分析物の濃度(pg/ml)に対してプロットされたQPCRシグナルを示す。
【0204】
実施例2:修飾ポリヌクレオチド鋳型を利用し、そして捕捉抗体なしの分析物検出反応
実施例1と同一であるが、本明細書に記載される修飾を伴って以下のアッセイを実施した。
【0205】
イエダニ抽出物を炭酸塩バッファー(pH9.6)中40μg/ml、75μl容量でR&D System8ウェルストリップチューブ(カタログ番号DY990;R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)に4℃で16時間コーティングした。ウェルをTBSTで2回洗浄し、そして遮断/希釈バッファーで、37℃で2時間遮断した。
【0206】
次いでウェルを、イエダニアレルゲンに関してアレルギーであるかまたはアレルギーでないかのいずれかであることが分かっている患者からの血清75μlと共に、室温で1−2時間インキュベートした。正常なヤギ血清で血清の希釈を実施した。ウェルをTBSTで4回洗浄し、続いて遮断/希釈バッファー中1:10,000に希釈されたビオチン標識されたアフィニティー精製ヤギ抗ヒトIgE(Fc)(カタログ番号116BN;American Qualex;サンクレメンテ、カリフォルニア州)(0.01M PBS(pH7.6)、1% BSA中0.5 mg/mlでストック)75μlと共に室温で1時間インキュベートした。次いでウェルをTBSTで3回および水で1回洗浄した。
【0207】
SAv−クレノウ(exo)をELISAプレートに75μl/ウェルで添加し、そして室温で30分間インキュベートして、SAvがビオチン化抗体に結合するのを可能にした。ウェルから溶液を吸引し、そしてウェルをTBST 400μlで4回、続いて水で2回洗浄した。クレノウ伸長混合物をウェルに75μl/ウェルで添加し、そして室温で30分間、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを形成させた。
【0208】
修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを含有する伸長反応物のアリコートを、2倍QPCRマスターミックス(試料での1回希釈で1倍MMになる)を含有する96ウェルPCRプレートの対応するウェルに移した。ホットスタート増幅を促進するために抗Pfu抗体もまた含まれた。
【0209】
試料を混合し、次いで解離曲線および2工程循環パラメーター[95℃10分間](1サイクル)、[95℃15秒間、63℃45秒間](40サイクル)で、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンに関するプログラムを用いてMX3005PリアルタイムPCR装置に流した。
【0210】
得られた結果により、アッセイはアレルギー患者の血清を陰性対照から区別するのに非常に有効であることが示される(図4)。
【0211】
実施例3:3’フラップを伴うプライマーを利用する分析物検出反応
この実施例では、3’フラップおよび伸長時に新しいプライマー結合部位を導入する5’領域を伴うプライマー、3’ヌクレアーゼ活性を有する第1ポリメラーゼ、ならびに3’ヌクレアーゼ活性を実質的に欠如する第2ポリメラーゼを使用した。以下に列挙されるプロトコールは溶液相アッセイ(分析物または捕捉抗体の固体支持体への結合がない)であるが、当業者はそれを固相アッセイにおける使用に容易に適合させることができる。この実施例において利用されるオリゴヌクレオチドを図5において例証する。
【0212】
以下の反応構成要素を調製した(全て混合後の最終濃度である):
10mM Tris−HCl(pH7.5)
5mM MgCl
7.5mM DTT
100μg/ml BSA
500μM dNTP(ACGT)
40pM Alien2−伸長プライマー
40pM Oligo1(修飾ポリヌクレオチド鋳型)
種々の量のSAv−クレノウ(4mg/mlストック(exo)から希釈した)
【0213】
0から1×10個の間の分子のSAv−クレノウ(exo)を含有する反応物をPCRチューブ中25μl容量で室温で30分間インキュベートして、ポリメラーゼがOligo1鋳型の非修飾コピーを創成することを可能にした。Alien2−伸長プライマーはAlien2−逆方向PCRプライマーに関するプライマー結合部位をOligo1鋳型の非修飾コピーに組み込んだ。
【0214】
伸長反応が完了後、12.1μlを:
15mM Tris−HCl(pH8.4)
50mM KCl
2.5mM MgCl
3% DMSO
0.01% Tween−20
800μM dNTP(ACGT)
0.444倍SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン(10,000倍として提供される)
30nM Rox参照色素(Stratageneカタログ番号600530)
Pfu(exo)50単位/ml(Stratageneカタログ番号600163−81)
ホットスタート抗体
100nM Alien1−順方向プライマー
100nM Alien2−逆方向プライマー
(全て試料との混合後の最終濃度である)を含有するQPCR増幅マスターミックス12.9μlを含有する新しいチューブに移した。
【0215】
試料を混合し、そして解離曲線および2工程循環パラメーター[95℃10分間](1サイクル)、[95℃15秒間、63℃45秒間](50サイクル)で、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンに関するプログラムを用いてMX3005PリアルタイムPCR装置に流した。
【0216】
得られた結果により、アッセイを分析物の検出に使用できることが示される。
【0217】
実施例4:ビオチン化抗体の存在下でのクレノウ活性の再構成
本発明を実行するときに使用するための最適な構築物を同定するために、図7に示されるN末端/C末端クレノウ開裂実施形態の各々に関して、以下のアッセイを実施した。N2/C2開裂に関する結果および条件を以下に記載する。
【0218】
簡単には、クレノウN2およびC2ストレプトアビジン融合タンパク質(図7参照)を、30mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、50mM NaCl、4mM DTT、50%グリセロールで、各々0.19mg/mlおよび0.27mg/mlの濃度に希釈した。
【0219】
次いで以下の反応混合物を調製した:
クレノウN2およびC2融合ポリペプチドの各々2μl
16mM Tris−HCl(pH7.5)、8mM MgCl、4mM DTTを含有する反応混合物6μl
0.5mM dNTP
0.2mM 逆方向プライマー:
5’−ACGAGGCTGCAATATCCAGA−3’(配列番号:5)
0.1mM Oligo1鋳型(修飾ポリヌクレオチド鋳型):
5’−TTTTTTTGCTCGACGGTGAAUGAUGTAGGUACCAGCAGUAACUCGAGCACGUCUU2’OMe(CG)A2’OMe(CC)AAATCUGGAUATTGCAGCCTCGT−3’(配列番号:4)
83塩基長ホスホジエステルDNA/2’OMe(Uは2’デオキシウリジンを示す)
25μg/mlビオチン標識ヤギ抗ウサギIGG、25μg/mlの濃度で(American Quialex、サンクレメンテ、カリフォルニア州)。
【0220】
反応混合物を室温で一晩インキュベートして、開裂ポリメラーゼ融合ポリペプチドがビオチン化抗体に結合して、機能的クレノウ複合体を形成し、そしてoligo1鋳型の非修飾コピーを合成することを可能にした。
【0221】
翌日に反応混合物を水で1:250に希釈した。各希釈された反応混合物12.1μlをQPCRマスターミックス12.9μlと組み合わせた。QPCR増幅マスターミックスには以下が含まれた(全て試料との混合後の最終濃度である):
15mM Tris−HCl(pH8.4)
50mM KCl
2.5mM MgCl
3% DMSO
0.01% Tween−20
800μM dNTP(ACGT)
0.444倍SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン(10,000倍として提供される)
30nM Rox参照色素(Stratageneカタログ番号600530)
Pfu(exo)50単位/ml(Stratageneカタログ番号600163−81)
100nM Alien1−順方向プライマー:
5’−TGCTCGACGGTGAATGATGT−3(配列番号:6)
100nM Alien1−逆方向プライマー:
5’−ACGAGGCTGCAATATCCAGA−3’(配列番号:5)
【0222】
試料を混合し、そして解離曲線および2工程循環パラメーター[95℃10分間](1サイクル)、[95℃15秒間、63℃45秒間](40サイクル)で、SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンに関するプログラムを用いてMX3005PリアルタイムPCR装置に流した。
【0223】
QPCRデータを図8に表す。ビオチン化抗体を伴う開裂クレノウの半分(N2C2+AB)の双方の組み合わせは、結果的に抗体を伴わない半分(N2C2)の双方の組み合わせよりも実質的に良好なシグナルに至る。これは開裂クレノウの2つの部分の間での近位相互作用が、抗体に対するその結合およびポリメラーゼ部分の相互作用により促進されることを示している。
【0224】
実施例5:作動範囲の最適化(分析物の力価測定)
開裂クレノウ融合ポリペプチドと共に使用するための最適抗体濃度を決定するために、反応混合物を調製し、そして開裂クレノウ部分、逆方向プライマーおよび鋳型の濃度が100倍低く、そして反応物に0.01% BSA(New England Biolabs、ビバリー、マサチューセッツ州)を補充した以外は、実施例4のように処理した。
【0225】
用量応答性を研究するために、抗体濃度を実施例4のクレノウ分子1あたりビオチン分子1(1:1比率)から変更した。ビオチン化抗体濃度を調整してビオチン−対−クレノウ比率1:100、1:10、1:3.33、1:1、3.33:1、10:1および100:1を用いた。
【0226】
QPCRデータを図9に示す。x軸は分析物(ビオチン)−対−クレノウの比率を示し、そしてy軸は「相対QPCRシグナル」を示す。予期されるように、ビオチン−対−クレノウの比率およそ1:10で最大に到達するまで、さらなる分析物(ビオチン化抗体)が添加されるので、2成分結合からのシグナルが上昇する。等モル比率を超えた分析物のさらなる添加により、半分の双方により同時に結合する分析物の数が低減され、そしてシグナルが低下する。
【0227】
実施例6:ロングネック融合タンパク質の構築
この実施例は、ストレプトアビジン(「SAv」)およびクレノウ部(成熟酵素またはそのN末端もしくはC末端部分)を含む融合タンパク質の構築について記載し、ここでストレプトアビジン部およびクレノウ部はスペーサー領域により分離される。これらの構築物もまた本明細書ではロングネック融合タンパク質と称する。
【0228】
鋳型としてストレプトマイセス・アビジニ(Streptomyces avidinii)DNAならびに1対のプライマーSF1およびSR:
SF1 GATCCGACCCCTCCAAGGACT(配列番号:7)
SR1 GCGCAGATCTCGAGCTGCTGAACGGCGTCGA(配列番号:8)
を使用して、成熟ストレプトアビジンをコードするDNAフラグメントをPCRにより得る。
【0229】
得られたPCRフラグメントは、SF1プライマー配列の少し下流に独特なBsaI部位、ならびにSR1プライマーにコードされる独特なXhoIおよびBglII部位を有する。PCRフラグメントは、成熟ストレプトアビジンをコードするヌクレオチド配列の始めに位置するBsaI制限エンドヌクレアーゼ部位で切断される。以下の配列を有する二本鎖リンカーをBsaI部位にライゲートする:
5’−CATGGGCAGCAGCCATCATCATCATCATCAC−3’(配列番号:9)
3’−CCGTCGTCGGTAGTAGTAGTAGTAGTGCGGC−5’(配列番号:10)
【0230】
リンカーはポリヒスチジンタグをコードし、そして一方の末端にNcoI粘着末端および他方の末端に5’−CGGC粘着末端を含有する。後者はBsaIでPCRフラグメントを切断した後に作成された粘着末端5’−GCCGに適合する。リンカーはT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs、ビバリー、マサチューセッツ州)を使用して5’突出末端でリン酸化され、そしてT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs、ビバリー、マサチューセッツ州)を使用して、そのBsaIにより作成された粘着末端でPCRフラグメントに接続される。PCRフラグメントの大部分が付着したリンカーを有することを確実にするために、PCRフラグメントよりも約10−100倍過剰のリンカーが推奨される。ライゲーション生成物をNcoIおよびBglII制限エンドヌクレアーゼで切断し、リンカー−PCRフラグメントを1.5%アガロースゲル中でリンカーから分離後、リンカー−PCRフラグメントライゲーション生成物を、例えばQIAEX IIキット(QIAGEN Sciences、ジャーマンタウン、メリーランド州)を製造者の説明書にしたがって使用してアガロースゲルから精製する。
【0231】
精製されたDNAフラグメントを、NcoIおよびBamI制限エンドヌクレアーゼで切断されたpET−15bベクターにライゲートする。ライゲーション生成物をXL10 Goldコンピテント細胞(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)に形質転換し、そして100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート上に播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした後、アンピシリン抵抗性コロニーが出現する。水1ml中でコロニーからの材料を3分間煮沸することによりプラスミドDNAを抽出後、放出されたプラスミドをSF1およびSR1プライマーを使用してPCRにおけるインサートの存在に関して分析する。100μg/mlアンピシリンを補充したL−ブロスのような液体培地中でインサート陽性コロニーを一晩成長させた後、STRATAPREP(登録商標)プラスミドミニプレップキット(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を使用してプラスミドDNAを精製する。インサートの上流のT7プロモーターDNA配列に相補的であるT7プロモータープライマー5’−TAATACGACTCACTATAGG−3’(配列番号:11)を使用して、得られたプラスミドのDNA配列をSanger法により検証する。
【0232】
得られたpET−SAVプラスミドはT7プロモーターの制御下でHisタグ化ストレプトアビジンをコードする。SR1プライマーにおいてコードされる独特なXhoI部位をストレプトアビジンオープンリーディグフレームの末端に導入して、スペーサーおよびポリメラーゼをコードするDNA配列のpET−SAVプラスミドへのクローニングを促進する。
【0233】
グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンのような小型アミノ酸に富む合成可動性スペーサー領域をプラスミドに導入する。小型アミノ酸グリシンおよびセリンをコードする以下の二本鎖オリゴヌクレオチド「GS」を合成する:
5’−TCGACGGATCGGGCGGTGGCTCCGGTGGCGGCAGCGGCC−3’(配列番号:12)
3’−GCCTAGCCCGCCACCGAGGCCACCGCCGTCGCCGGAGCT−5’(配列番号:13)
【0234】
pET−SAVプラスミドを、ストレプトアビジンオープンリーディグフレームをコードするヌクレオチド配列の末端で、XhoIエンドヌクレアーゼで切断後、XhoI粘着末端(5’−TCGA)によりフランキングされるGSオリゴヌクレオチドをその部位にライゲートする。T7プロモータープライマーを使用して得られたクローンをシークエンシングし、そして正確な配向で(SAvオープンリーディグフレームとのイン・ヒュージョン(in−fusion))GSオリゴヌクレオチドを有するクローンをさらなる作業のために選択する。選択されたクローンをpET−SAV−GSと称した。GSの始めでのXhoI粘着末端はプラスミドにライゲートされた場合に、完全なXhoI部位に至らないので、このクローンはGS配列の末端で独特なXhoI部位を有する。独特なXhoI部位を使用してSAv−GS融合遺伝子の下流にさらなる部分を付加することができる。この研究法、すなわち挿入された配列の末端で独特なXhoI部位に至るポリヌクレオチド配列を挿入することにより、目的の部分をコードするその他のポリヌクレオチド配列の反復した付加が許容される。
【0235】
GSスペーサーオリゴヌクレオチドの代わりに、またはそれに加えて、自然発生の可動性非構造化領域を使用することができる。このような領域を豊富に発現されるタンパク質から、例えばL7/L12リボソームタンパク質から選択することができる(Bocharovら、「タンパク質L7/L12の構造および動態からリボソームにおける分子スイッチまで」J.Biol.Chem.279(17):17697−706(2004))。
【0236】
鋳型として大腸菌K12 DNAならびにプライマーのL73FおよびL71R対を使用して、タンパク質の可動性非構造化領域をコードするPCRフラグメントが得られる:
L73F GCGCGTCGACGAAGAAAAATTCGGTGTTTCC(配列番号:14)
L71R GCGCCTCGAGCTTTTCTTCAGCAGCTTCAACC(配列番号:15)
【0237】
L73FプライマーはSalI制限部位をコードし、かつL71RプライマーはXhoI制限エンドヌクレアーゼ部位をコードする。得られたL7 PCRフラグメントは始めにSalI部位および、フラグメントにおいてコードされる部分的L7/L12オープンリーディグフレームの末端にXhoI部位を有する。フラグメントをXhoIおよびSalI制限エンドヌクレアーゼで切断後、XhoIで切断されるpET−SAV−GSプラスミドにライゲートする。正確な配向のインサートを伴うプラスミドを前記のようなDNAシークエンシングを用いて選択する。得られたプラスミドをpET−SAV−GS−Lと称する。この研究法を用いてL7フラグメントのいくつかのタンデムコピーをスペーサー領域に挿入することができる。得られた2、3、4、5、6、7または8個のL7コピーを伴うプラスミドを、pET−SAV−GS−Lx2、pET−SAV−GS−Lx3、pET−SAV−GS−Lx4、pET−SAV−GS−Lx5、pET−SAV−GS−Lx6、pET−SAV−GS−Lx7およびpET−SAV−GS−Lx8と称した。得られた1つまたはそれより多いL7インサートを伴うプラスミドは、SAV−GS−L7x(n)オープンリーディグフレームの末端で独特なXhoI部位を有する。この独特なXhoI部位を用いて融合遺伝子の下流にクレノウ部を付加する。これらのプラスミドをpET−SAV−GS−Lx(n)(ここでnはL7フラグメントのタンデムコピーの数である)と総称する。
【0238】
DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを前記で記載された融合遺伝子の末端にクローン化する。鋳型として大腸菌DNAおよび以下のプライマー対を使用して、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントをコードするPCRフラグメントを作成した:
KlinF
GCGCGTCGACGGTGGCGGTGGCTCGGTGATTTCTTATGACAACTACGTCA−3’(配列番号:16)
KWR 5’−GCGCAAGCTTAGTGCGCCTGATCCCAGTTTTC−3’(配列番号:17)
【0239】
得られたPCRフラグメントはKLと称され、そしてさらなるスペーサー距離を提供するためにKlinFプライマーにおいて設計されたグリシンおよびセリンをコードするいくつかのコドンにより先行される、クレノウオープンリーディグフレーム全体をコードする。フラグメントを双方の末端で、プライマーで提供されたSalIおよびHindIII部位で切断後、スペーサー配列に続いて、前記で記載されたプラスミドのいずれかにクローン化する。得られたプラスミドをpET−SAV−GS−KLおよびpET−SAV−GS−Lx(n)−KLと称する。
【0240】
加えて、クレノウのN末端またはC末端部分をコードするPCRフラグメントを、前記で記載されたSAv−スペーサー融合構築物のうちの1つにクローン化する。KlinFプライマーおよび以下の逆方向プライマーSN2Rを使用してクレノウのN末端部分をコードするPCRフラグメントを得る:
SN2R 5’−GCGCAAGCTTAATCGATCTTCACACCGTTAC−3’(配列番号:18)
【0241】
得られたPCRフラグメントをN2と称する。
【0242】
クレノウのC末端部分をコードするPCRフラグメントは逆方向プライマーKWRおよび以下の順方向プライマーSC2Fを使用して得られる:
SC2F 5’−GCGCGTCGACGGTGGCAGCGATCCGAAAGTCCTGCACAA−3’(配列番号:19)
【0243】
得られたPCRフラグメントをC2と称する。
【0244】
N2およびC2フラグメントをSalIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで切断後、SAv−スペーサー融合タンパク質をコードするXhoIおよびHindIII消化プラスミドにクローン化する。得られたプラスミドをpET−SAV−GS−Lx(n)−N2およびpET−SAV−GS−Lx(n)−C2(ここでnはL7フラグメントのタンデムコピーの数である)と称する。
【0245】
アフィニティー精製タグを融合遺伝子の末端に付加することもできる。C末端タグはストレプトアビジンのN末端に導入されたHisタグと組み合わされてタンデムアフィニティー精製(TAP)に備える。1)その天然の、もしくは修飾された小型リガンドまたはタンパク質結合パートナーに対する結合;または2)固定されたタグ特異的抗体に対する結合;に基づくものを含む、TAPに使用することができる当業者に公知の多くのタグがある。例としてFLAG、His、CBP、CYD(共有結合的であるが、解離可能なNorpDペプチド)、StrepII、HPC(プロテインCの重鎖)ペプチドタグならびにGSTおよびMBPをTAPに組み合わせることができる。
【0246】
クレノウ部のC末端にFLAGタグを提供するために、2つのFLAGタグ、続いて停止コドンをコードする以下の二本鎖オリゴヌクレオチドFを合成する:
5’−ACTAGTGATTATAAGGATGACGATGACAAAGATTACAAAGATGATGACGATAAGTAG−3’(配列番号:20)
3’−CACTAATATTCCTACTGCTACTGTTTCTAATGTTTCTACTACTGCTATTCATCTTAA−5’(配列番号:21)
【0247】
2未満または2を超えるFLAGタグをコードするオリゴヌクレオチドを使用することもできる。クレノウオープンリーディグフレームの末端の停止コドンを除去するために、クレノウDNA鋳型を以下のプライマー対で増幅する:
XhoF CGTGCACTCGAGTTGCTAAA(配列番号:22)
SpR GCGCACTAGTATGCGCCTGATCCCAGTTTTC(配列番号:23)
【0248】
このように得られたPCRフラグメントは、クレノウポリヌクレオチド配列内に存在する独特な内部XhoI部位、および停止コドンの前にSpRプライマーを使用してクレノウオープンリーディグフレームの末端に導入された独特なSpeI部位を有する。フラグメントをXhoIで切断後、同じ内部部位でXhoIで切断されたpET−SAV−GS−KL、pET−SAV−GS−Lx(n)−KL、pET−SAV−GS−Lx(n)−C2およびpET−SAV−GS−Lx(n)−N2プラスミドのいずれかにライゲートする。次に65℃で20分間のインキュベーションによりT4 DNAリガーゼを不活化する。ライゲーション生成物をSpeIおよびEcoRI制限エンドヌクレアーゼで、製造者の説明書にしたがって切断し、1%アガロースゲル中で分離後、NcoIとEcoRI部位との間にpET−15b DNA配列全体、およびNcoI部位でプラスミドに接続され、それの末端でSpeI部位までクレノウ遺伝子を含む融合遺伝子を含有する最も大きいDNAフラグメントを、例えばQIAEX IIキット(QIAGEN Sciences、ジャーマンタウン、メリーランド州)を製造者の説明書にしたがって使用して精製した。
【0249】
SpeIおよびEcoRI粘着末端によりフランキングされるオリゴヌクレオチドFを同じ粘着末端を有する精製されたフラグメントと共にライゲートする。ライゲーション生成物をXL10 Goldコンピテント細胞(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)に形質転換後、100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート上に播種する。プレートを37℃で一晩インキュベートした後、アンピシリン抵抗性コロニーが出現する。水1ml中でコロニーからの材料を3分間煮沸することによりプラスミドDNAを抽出し、そして放出されたプラスミドをXhoFおよびFR(CTACTTGTCATCGTCATCCTTAT)(配列番号:24)プライマーを使用してPCRにおいてインサートの存在に関して分析する。
【0250】
100μg/mlアンピシリンを補充したL−ブロスのような液体培地中でインサート陽性コロニーを一晩成長させた後、STRATAPREP(登録商標)プラスミドミニプレップキット(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を使用してプラスミドDNAを精製する。融合遺伝子の末端での二重FLAGタグの存在をMfeF(CGGCAGAAGTGTTTGGTTTG)(配列番号:25)プライマーを使用してSanger法により検証する。
【0251】
実施例7:ロングネック融合タンパク質の生成および精製
実施例6に記載されるSAv−ポリメラーゼ融合タンパク質をコードするプラスミドのいずれかを宿す大腸菌株を使用して、プラスミドによりコードされるSAv−スペーサー−クレノウ融合タンパク質を生成することができる。日常的には大腸菌BL21 DE3株(Stratagene、ラ・ホーヤ、カリフォルニア州)を使用するが、融合タンパク質の発現はpET−15bベクター中に存在するT7プロモーターにより駆動されるので、T7 RNAポリメラーゼを発現する任意の大腸菌株がこの目的に適当である。もちろんその他のベクターおよびその他のプロモーター、例えばtacプロモーターを使用してこれらの融合タンパク質を生成できることは当業者により認識されよう。T7プロモーターの制御下でタンパク質を発現するために、本質的に米国特許第4952496号(Studier)に開示されるように組換え大腸菌の培養を実施する。JA−10ローター中J2−21遠心器(Beckman Coulter、フラートン、カリフォルニア州)を用いて5000rpmで、4℃で15分間遠心することにより細胞を収集する。培養物250mlからの細胞を1% Triton X−100およびプロテアーゼ阻害剤のセットComplete(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を補充したバッファーA(50mM Tris−HCl(pH8)、150mM NaCl、5mMジチオスレイトール)10mlに再懸濁し、そしてSonifier250(Branson Ultrasonics Corporation、ダンベリー、コネチカット州)をアウトプット3設定で用いて1.5分間の一定の超音波処理により破壊する。
【0252】
破壊された細胞をJA−20ローター中J2−21遠心器(Beckman Coulter、フラートン、カリフォルニア州)を用いて20000rpm、4℃で15分間遠心する。ストレプトアビジン融合タンパク質は封入体を形成し、そして主にペレット中に見出される。しかしながら、特にストレプトアビジンおよび酵素が長い可動性非構造化領域により分離される場合、有意な量の可溶性タンパク質を回収できる。それにもかかわらず、ペレットは上澄みと比較して融合タンパク質に富み、ペレット中の融合タンパク質はタンパク質分解の傾向が少なく、そして最も重要なことに、それらは内因性ビオチンを除去するためにとにかく変性される必要があるので、不溶性分画からの精製が好ましい。前記されたような超音波処理によりペレットをバッファーA10mlに再懸濁し、バッファーAで40mlに希釈し、そしてJA−20ローター中J2−21遠心器で20000rpm、4℃で15分間再び遠心する。
【0253】
ペレットをバッファーA7.5mlに再懸濁後、再懸濁液の300μlアリコートを使用して融合タンパク質を精製する。残りの再懸濁されたペレットをさらなる使用のために−80℃で保存する。再懸濁された封入体の300μlアリコートを14000rpm/分で15分間遠心し、上澄みを捨てた後、ペレットを6M GdHCl(pH1.5)2.8mlに再懸濁し、そして2つの1.5mlチューブに移す。チューブを4℃で1時間回転させ、そして次に14000rpm/分で15分間遠心する。
【0254】
上澄みを収集し、そして6M GdHCl(pH1.5)300mlに対して室温で一晩透析して、ストレプトアビジン部に結合していた内因性ビオチンを除去する。さらなる透析工程を4℃で実施する。
【0255】
次に、試料を6M GdHCl、0.5M NaCl、20mM Na−P(pH7.4)300mlに対して4時間透析し、そして次に同じ容量のバッファーB(20mMリン酸ナトリウム(pH8)、150mM NaCl、2mMジチオスレイトール)の3回交換(各交換に少なくとも2時間)に対してさらに透析する。
【0256】
透析バッグから試料を除去し、14000rpm/分で15分間遠心し、そして上澄みを1.5mlマイクロチューブに収集する。上澄みにイミダゾールを10mM濃度で添加し、その後バッファーBで平衡にしたNi−NTAアガロースビーズ(QIAGEN Sciences、ジャーマンタウン、メリーランド州)の50%スラリー100μlを上澄各1.4mlに添加する。
【0257】
上澄みをビーズと共に4℃で15分間回転させ、その後2000rpm/分で2分間の遠心によりビーズをペレット化し、10mMイミダゾールを補充したバッファーB1.5mlで3回洗浄し、前記したようにペレット化し、そして上澄みを完全に除去する。吸着した融合タンパク質をバッファーB中250mMイミダゾールで溶出し、そして30mMリン酸ナトリウム(pH7.2)、50mM NaCl、4mM DTT、50%グリセロールを含有するバッファー少なくとも100容量に対して一晩透析する。精製された融合タンパク質を−20℃で保存する。
【0258】
実施例8:固相アッセイにおけるロングネック融合タンパク質を使用する分析物の検出
ELISAを使用して、ロングネック融合タンパク質が固相検出反応においてGSTに結合するビオチン化抗GST抗体の存在を検出する能力を試験した。吸着、遮断、洗浄およびインキュベーション工程は全て典型的なELISAに標準的であった。ビオチン化抗GST検出抗体の添加の後、実施例6のストレプトアビジン−スペーサー−クレノウタンパク質を添加する。
【0259】
最初に0.2%魚皮ゼラチン、2%熱不活化正常ヤギ血清、10mM Tris−HCl(pH8.0)、200mM NaCl、0.02% Tween−20を含有する遮断/希釈バッファー中、融合タンパク質を100ng/mlまで希釈する。希釈された融合タンパク質をELISAプレートに75μl/ウェルで添加後、室温で30分間インキュベートして、SAv部がビオチン化抗体に結合するのを可能にする。溶液をウェルから吸引し、そしてウェルをTBSTバッファー(25mM Tris−HCl(pH8.0)、125mM NaCl、0.1% Tween−20)400μlで4回、続いて脱イオン水で2回洗浄した。
【0260】
次いでクレノウ伸長混合物をウェルに添加して、修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーの形成を促進する。
【0261】
クレノウ伸長混合物(全て混合後の最終濃度である):
10mM Tris−HCl(pH7.5)
5mM MgCl
7.5mM DTT
500μM dNTP(ACGT)
100μg/ml BSA
100nM Alien1−逆方向プライマー
40pM Oligo1(修飾オリゴヌクレオチド鋳型)
【0262】
Oligo1は以下の配列を有する(ここで2’OMeは2’−O−メトキシ修飾ヌクレオチドを示し、そしてUは2’−デオキシウリジンを示す):
5’−TTTTTTTGCTCGACGGTGAAUGAUGTAGGUACCAGCAGUAACUCGAGCACGUCUU2’OMe(CG)A2’OMe(CC)AAATCUGGAUATTGCAGCCTCGT−3’(配列番号:4)
【0263】
Alien1−逆方向プライマーはOligo1の3’末端にアニーリングして、クレノウ反応を予備刺激し、そして以下の配列を有する:
5’−ACGAGGCTGCAATATCCAGA−3’(配列番号:5)
【0264】
反応を室温で0.5−16時間進行させる。反応の間、クレノウポリメラーゼは2’−Meまたは2’−デオキシウリジン修飾を有さないOligo1鋳型のコピーを生成する。
【0265】
次に2倍QPCRマスターミックスをウェルに添加して、PCR反応の構成要素の以下の濃度を提供する:
15mM Tris−HCl(pH8.4)
50mM KCl
2.5mM MgCl
3% DMSO
0.01% Tween−20
800μM dNTP(ACGT)
0.444倍SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーン(10,000倍として提供される)
30nM Rox参照色素(Stratageneカタログ番号600530)
Pfu(exo)50単位/ml(Stratageneカタログ番号600163−81)
100nM Alien1−順方向プライマー(5’−TGCTCGACGGTGAATGATGT−3’)(配列番号:6)
100nM Alien1−逆方向プライマー(5’−ACGAGGCTGCAATATCCAGA−3’)(配列番号:5)
【0266】
試料を混合した後、それらを解離曲線および95℃10分間(1サイクル)、95℃15秒間、63℃30秒間(40サイクル)の2工程循環パラメーターで、SYBR(登録商標)グリーンに関するプログラムを用いてMX3005Pに流す。分析物濃度=0pg/mlのCtと分析物濃度=Xpg/mlのCtとの間のCtにおける変化を計算することにより、相対QPCRシグナルをコンピューター計算する。これを「0からのdCt」と称する。効率100%のアッセイでは、1つのCtの変化は初期の使用可能なQPCR鋳型の量の2倍に均等である。この対数的シグナルを直線的な量に変換するために、以下の式:「相対QPCRシグナル」=2^(0からのdCt)−1を使用する。最後に相対QPCRシグナルを、試料中で使用される分析物の濃度(pg/ml)に対してプロットする。
【0267】
SAv−KL、SAv−KL、SAv−GS−Lx2−KL、SAv−GS−Lx3−KL、SAv−GS−Lx4−KLおよびSAv−GS−Lx5−KLを含むいくつかの種類のSAv−スペーサー−クレノウ融合タンパク質を、このアッセイにおいて活性に関して試験した。図10および11はこのアッセイの結果を示す。全ての融合タンパク質は活性であり、そして全て分析物(ビオチン化抗GST抗体)の力価測定において有用であった。図10および11に示されるように、スペーサー領域をこれらの融合タンパク質構築物に付加することは、一般的にこのアッセイにおける相対QPCRシグナルを強化する。
【0268】
実施例9:溶液基盤のアッセイにおけるロングネック融合タンパク質を使用する分析物の検出
【0269】
ポリクローナルビオチン化抗VEGF抗体を2つのプールに分けた。1つのプールを実施例6のSAv−GS−Lx4−KL融合タンパク質で標識した。その他のプールを、dUTPおよび2’−O−メトキシ修飾ヌクレオチドを含有する修飾ポリヌクレオチド鋳型に化学的に繋がれているストレプトアビジンで標識した。1mM D−ビオチンの添加により標識反応をクエンチした。等量で組み合わされたプローブの100pM溶液を調製後、4μlをQPCR反応チューブに分配した。組換えヒトVEGFの3倍希釈系列の各々1μlをプローブ混合物4μlに添加後、室温で1時間インキュベートした。次いでクレノウ伸長バッファー45μlを各試料に添加後、37℃で10分間インキュベートした。次いでクレノウを75℃で20分間加熱して死滅させた。Pfu(exo)ポリメラーゼ含有SYBR(登録商標)(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州)グリーンQPCRマスターミックスを含有する新しいチューブに、加熱により死滅した伸長反応物5μlを移た後、次にQPCRにより分析した。結果を図12に示し、それはQPCRシグナルが各反応物に添加されたVEGF分析物の量に比例したことを示す。
【0270】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願および出版された参考文献は、その全てにおいて参照により本明細書に組み込まれる。本発明を特にその好ましい実施形態を参照して示し、そして記載してきたが、添付の請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更を行うことができることは当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
(i)分析物に対する第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子、または
(ii)分析物に対する第1分析物特異的プローブおよび第2分析物特異的プローブ
の結合ステップであって、前記第1分析物特異的プローブは第1ポリメラーゼの第1部分に繋がれた第1結合部を含み、前記第2分析物特異的プローブは第1ポリメラーゼの第2部分に繋がれた第2結合部を含む、機能的なポリメラーゼ複合体を形成するためのステップと、
1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを含む修飾ポリヌクレオチド鋳型に対する第1プライマーのアニーリングステップと、
第1ポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体でのプライマーの伸長ステップであって、これにより修飾ポリヌクレオチド鋳型のコピーを合成し、前記コピーは1つまたはそれ以上の修飾ヌクレオチドを何ら有さない(「非修飾コピー」)ステップと、
を許容するように、試料を反応物混合物と接触させるステップと、
b)非修飾コピーを第2ポリメラーゼで増幅するステップであって、前記第2ポリメラーゼは修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができないステップと、
c)増幅された非修飾コピーを検出するステップであって、前記増幅された非修飾コピーの検出は試料中の分析物の存在または量の指標であるステップ
とを含む、試料中の分析物を検出するための方法。
【請求項2】
a)3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼに繋がれた結合分子の分析物に対する結合ステップと、
3’フラップおよび伸長時にプライマー結合部位を導入する5’領域を含む第1プライマーのポリヌクレオチド鋳型に対するアニーリングステップと、
3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼでの第1プライマーの3’フラップの切断ステップと、
3’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼで切断された第1プライマーの伸長;それによりプライマー結合部位を含む増幅のための鋳型を合成するステップと
を許容するように、反応物混合物をインキュベートするステップと、
b)3’エキソヌクレアーゼ活性を欠如するポリメラーゼ、およびそのうちの1つは増幅のための鋳型におけるプライマー結合部位にアニーリングする少なくとも2つのプライマーを用いて、増幅のための鋳型を増幅するステップと、
c)増幅のための増幅された鋳型を検出するステップであって、前記増幅のための増幅された鋳型の検出は試料中の分析物の存在または量の指標であるステップ
とを含む、試料中の分析物を検出するための方法。
【請求項3】
前記第1プライマーが約41℃以上の反応温度で前記ポリヌクレオチド鋳型にアニーリングせず、前記第1プライマーのポリヌクレオチド鋳型に対するアニーリングを許容する第1反応温度で前記インキュベーとするステップを実施し、かつ前記増幅するステップにおける前記第2プライマーのアニーリングおよび伸長を約41℃以上の反応温度で実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合分子または第1および第2結合部が抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体がクレノウまたはT4である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用により前記第1ポリメラーゼまたは前記第1ポリメラーゼの第1および第2部分に繋がれている、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がビオチン化され、かつ前記第1ポリメラーゼまたは前記第1ポリメラーゼの前記第1および第2部分がストレプトアビジンまたはアビジンに繋がれている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾ポリヌクレオチド鋳型が、1つもしくはそれより多いデオキシウラシルおよび/または1つもしくはそれより多い2’O−メチル修飾を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2ポリメラーゼが熱安定性ポリメラーゼである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱安定性ポリメラーゼがPfuまたはTaqポリメラーゼである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ストレプトアビジンもしくはアビジンと前記第1ポリメラーゼとの間、または前記ストレプトアビジンもしくはアビジンと前記第1ポリメラーゼの前記第1もしくは第2部分との間にポリペプチドリンカーをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記修飾ポリヌクレオチド鋳型が第2抗体に繋がれている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の分析物特異的プローブおよび第2の分析物特異的プローブを含む組成物であって、前記第1の分析物特異的プローブは分析物に特異的な第1結合部および第1ポリメラーゼの第1部分を含み、ならびに前記第2の分析物特異的プローブは分析物に特異的な第2結合部および第1ポリメラーゼの第2部分を含み、前記第1ポリメラーゼの前記第1および第2部分は互いに関連する場合に機能的なポリメラーゼ複合体を形成する、組成物。
【請求項14】
1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを有する修飾ポリヌクレオチド鋳型をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1つまたはそれより多い修飾ヌクレオチドを有する修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅する第1ポリメラーゼに繋がれた結合分子と、
修飾ポリヌクレオチド鋳型と
とを含む、組成物。
【請求項16】
前記修飾ポリヌクレオチド鋳型を増幅することができないが、前記修飾ポリヌクレオチド鋳型の非修飾コピーを増幅することができる第2ポリメラーゼをさらに含む、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1および第2結合部または前記結合分子が抗体であり、かつ前記第1ポリメラーゼまたはポリメラーゼ複合体がクレノウまたはT4ポリメラーゼである、請求項13から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記修飾ポリヌクレオチド鋳型が1つまたはそれより多いデオキシウラシルおよび/または2’O−メチル修飾を含む、請求項13〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗体が、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用により前記第1ポリメラーゼまたは前記第1ポリメラーゼの前記第1もしくは第2部分に繋がれている、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗体がビオチン化され、前記第1ポリメラーゼまたは前記第1ポリメラーゼの第1および第2部分がストレプトアビジンまたはアビジンに繋がれている、請求項17に記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−533867(P2010−533867A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517099(P2010−517099)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/069975
【国際公開番号】WO2009/012220
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(509331283)アジレント テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】