説明

分析用試験片及びその製造方法

本発明は、担体1と、担体1の表面11上及び/又は内部に試薬スポット2とを備えてなり、分析対象物質を含んだ試料3が担体1の表面11に導入されると、担体1の表面11上及び/又は内部に配設された試薬スポット2と接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片10であって、試薬スポット2が、互いに混合することによって所定の機能を発揮する複数種の溶液のいずれかから形成された複数種の試薬スポット21、22からなり、担体1の表面11に導入された試料3が、複数種の試薬スポット21、22と接触することによって、複数種の試薬スポット21、22を互いに混合させるとともに、混合した複数種の試薬スポット21、22と反応して信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能なもので、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性に優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象物質を含んだ試料が導入されると、試薬スポットと接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片及びその効率的な製造方法に関する。さらに詳しくは、分析対象物質(例えば、人及び動物の体液、特に尿、血液等)を含んだ試料の性状を検査、分析するための検査チップとして有用で、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性に優れた分析用試験片及びその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析対象物質(例えば、人及び動物の体液、特に尿、血液等)を含んだ試料の性状を検査、分析するための分析用試験片の製造方法としては、例えば、吸収性のよい多孔質構造体(多孔質層、多孔性膜等)からなる試験部に試料を均一に吸収させて隣接する試験部との液絡を防止する多孔性膜及びその製造方法が開示されている(特許文献1参照)。また、検出可能な物質を検出するための検出部を有する試験部を1以上設け、検出部に層状無機化合物(合成スメクタイト等)を含有させた分析用試験片を製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−6541号公報
【特許文献2】特開平9−184837号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された多孔性膜、分析用試験片及びそれらの製造方法では、複数種の試料を単一のバッファー中に含浸させているため、得られる分析用試験片において、試料の劣化が早く安定性に欠けたり、反応効率が低く、高感度及び高精度の分析ができないという問題があり、必ずしも十分に満足すべきものではなかった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、分析対象物質(例えば、人及び動物の体液、特に尿、血液等)を含んだ試料の性状を検査、分析するための検査チップとして有用で、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性に優れた分析用試験片及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の分析用試験片及びその製造方法が提供される。
【0007】
[1]担体と、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された試薬スポットとを備えてなり、分析対象物質を含んだ試料が前記担体の表面に導入されると、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に配設された前記試薬スポットと接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片であって、前記試薬スポットが、互いに混合することによって所定の機能を発揮する複数種の溶液のいずれかから形成された複数種の試薬スポットからなり、前記担体の表面に導入された試料が、前記複数種の試薬スポットと接触することによって、前記複数種の試薬スポットを互いに混合させるとともに、混合した前記複数種の試薬スポットと反応して、前記信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片。
【0008】
[2]前記担体が、多孔質体である前記[1]に記載の分析用試験片。
【0009】
[3]前記分析対象物質が、人及び動物の体液である前記[1]又は[2]に記載の分析用試験片。
【0010】
[4]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、発色体を含有してなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0011】
[5]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、蛍光発光する物質を含有してなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0012】
[6]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、水溶性ポリマーを含有してなる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0013】
[7]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体が配設されてなる前記[1]〜[6]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0014】
[8]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された前記試薬スポットが、他の領域に配設された前記試薬スポットとは異なった種類のものである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0015】
[9]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された前記試薬スポットが、他の領域に配設された前記試薬スポットとは異なった試薬濃度のものである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0016】
[10]前記試薬スポットが前記担体の内部にまで配設される場合、前記試薬スポットが、前記担体の表面側において最も高い、前記試料に対する反応感度を有してなる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0017】
[11]前記試薬スポットが前記担体の内部にまで配設される場合、前記試薬スポットが、前記担体の表面側において最も高い前記試薬濃度を有してなる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0018】
[12]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、表面活性剤が配設されてなる前記[1]〜[11]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0019】
[13]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、発泡剤が配設されてなる前記[1]〜[12]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0020】
[14]前記担体の表面とは反対側の表面(裏面)側に、前記担体を支持する支持体をさらに備えてなる前記[1]〜[13]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0021】
[15]前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面に平行な所定の平面で切断した断面形状が、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状である前記[1]〜[14]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0022】
[16]前記複数種の試薬スポットのうち、同一種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L2)が、異種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長い前記[1]〜[15]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0023】
[17]前記複数種の試薬スポットの大きさが、最大径で0.5mm以下であるとともに、前記異種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)が、0.6mm以下である前記[1]〜[16]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0024】
[18]前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポットを担体の表面に平行な所定の平面で切断した場合の試薬スポットの断面積の合計を示し、S2は、担体の表面の面積を示す。]が、0.01<(A)<0.814の範囲を満たす前記[1]〜[17]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0025】
[19]前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なっている前記[1]〜[18]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0026】
[20]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記複数種の試薬スポットが所定の前記配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、前記試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポットをさらに備えてなる前記[1]〜[19]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0027】
[21]前記試薬スポットの一つを形成する前記溶液の液滴の量(スポット量)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なっている前記[1]〜[20]のいずれかに記載の分析用試験片。
【0028】
[22]担体の表面上に又は担体の表面上及び内部に、所定の溶液を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポットを形成することによって、分析対象物質を含んだ試料が前記担体の表面に導入されると、前記試薬スポットと接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片を得る分析用試験片の製造方法であって、前記所定の溶液として、導入される前記試料と接触することによって互いに混合することが可能で、かつ互いに混合することによって所定の機能を発揮することが可能な複数種の溶液を、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部にインクジェット法を用いて前記複数種の溶液の液滴として吐出させて、前記複数種の溶液のいずれかからなる複数種の試薬スポットを形成することによって、前記試料が前記担体の表面に導入されると、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に形成された前記複数種の試薬スポットと接触して、前記複数種の試薬スポットを互いに混合させるとともに、混合した前記複数種の試薬スポットと反応して、前記信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片を得る分析用試験片の製造方法。
【0029】
[23]前記インクジェット法に用いられる液滴吐出装置として、流路が形成された流路基体と、この流路基体に組み付けられて加圧室としてキャビティ内の容積を変化させる機能を有するアクチュエータ部と、流路基体の下面に貼着され、且つ吐出ノズルが形成されたノズル基体と、流路基体の後部の上面に設けられた液体注入部とを備えるものを用いる前記[22]に記載の分析用試験片の製造方法。
【0030】
[24]前記担体として、多孔質体を用いる前記[22]又は[23]に記載の分析用試験片の製造方法。
【0031】
[25]前記分析対象物質として、人及び動物の体液を用いる前記[22]〜[24]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0032】
[26]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、発色体を含有してなるものを用いる前記[22]〜[25]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0033】
[27]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、蛍光発光する物質を含有してなるものを用いる前記[22]〜[26]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0034】
[28]前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、水溶性ポリマーを含有してなるものを用いる前記[22]〜[27]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0035】
[29]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体を配設する前記[22]〜[28]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0036】
[30]前記複数種の試薬スポットを、前記担体の表面に平行な所定の平面で切断した断面形状が、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状となるように配設する前記[22]〜[29]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0037】
[31]前記複数種の試薬スポットを、前記複数種の試薬スポットのうち、同一種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L2)が、異種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長くなるように配設する前記[22]〜[30]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0038】
[32]前記複数種の試薬スポットを、その大きさが、最大径で0.5mm以下であるとともに、前記異種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)が、0.6mm以下となるように配設する前記[22]〜[31]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0039】
[33]前記複数種の試薬スポットを、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポットを担体の表面に平行な所定の平面で切断した場合の試薬スポットの断面積の合計を示し、S2は、担体の表面の面積を示す。]が、0.01<(A)<0.814の範囲を満たすように配設する前記[22]〜[32]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0040】
[34]前記複数種の試薬スポットを、その前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとなるように配設する前記[22]〜[33]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0041】
[35]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記複数種の試薬スポットが所定の前記配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、前記試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポットをさらに配設する前記[22]〜[34]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0042】
[36]前記確認用試薬スポットのそれぞれを、前記複数種の溶液から形成する前記[35]に記載の分析用試験片の製造方法。
【0043】
[37]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域における前記試薬スポットを、他の領域の前記試薬スポットとは異なった種類のものとなるように配設する前記[22]〜[36]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0044】
[38]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域における前記試薬スポットを、他の領域の前記試薬スポットとは異なった試薬濃度のものとなるように配設する前記[22]〜[37]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0045】
[39]前記試薬スポットを前記担体の内部にまで配設する場合、前記試薬スポットを、前記試料に対する反応感度が、前記担体の表面側において最も高くなるように配設する前記[22]〜[38]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0046】
[40]前記試薬スポットを前記担体の内部にまで配設する場合、前記試薬スポットを、前記試薬濃度が、前記担体の表面側において最も高くなるように配設する前記[22]〜[38]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0047】
[41]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、表面活性剤を配設する前記[22]〜[40]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0048】
[42]前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、発泡剤を配設する前記[22]〜[41]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0049】
[43]前記担体の表面とは反対側の表面(裏面)側に、前記担体を支持する支持体をさらに配設する前記[22]〜[42]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0050】
[44]前記複数種の溶液の液滴を、その速度成分として、前記担体の表面に対して垂直な方向以外の成分を有するようにして前記インクジェット法を用いて吐出して、前記試薬スポットを形成する前記[22]〜[43]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0051】
[45]前記溶液の液滴を、複数の独立した微小液滴から構成する前記[22]〜[44]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0052】
[46]前記試薬スポットの一つを形成する前記溶液の液滴の量(スポット量)を、0.1μL以下とする前記[22]〜[45]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0053】
[47]前記複数種の試薬スポットのスポット量を、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとする前記[22]〜[46]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0054】
[48]前記試薬スポットを、前記溶液の液滴を前記試薬スポット一つ当たり複数回吐出させることによって形成する前記[22]〜[47]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0055】
[49]前記担体の温度を40℃以下に保持した状態で前記溶液の液滴を吐出して、前記試薬スポットを形成する前記[22]〜[48]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0056】
[50]前記担体の裏面を前記支持体から隔離した状態で前記溶液の液滴を吐出することによって、前記試薬スポットを形成する前記[43]〜[49]のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【0057】
以上説明したように、本発明によって、分析対象物質(例えば人及び動物の体液、特に、血液や尿等)を含んだ試料の性状を検査、分析するための検査チップとして有用で、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性に優れた分析用試験片及びその効率的な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
[図1]図1は、本発明の一の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
[図2]図2は、図1の一部拡大図であり、複数種の試薬スポットのうち、同一種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L2)が、異種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長いことを示す。
[図3]図3は、本発明の一の実施の形態において、試薬スポット間の担体表面及び内部に遮蔽体を配置することを模式的に示す説明図である。
[図4]図4は、遮蔽体の形状が直線状であることを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の分析用試験片の一の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0060】
図1に示すように、本実施の形態の分析用試験片10は、担体1と、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された試薬スポット2とを備えてなり、分析対象物質を含んだ試料3が担体1の表面11に導入されると、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に配設された試薬スポット2と接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片10であって、試薬スポット2が、互いに混合することによって所定の機能を発揮する複数種の溶液のいずれかから形成された複数種の試薬スポット(図1では符号21、22で示す)からなり、担体1の表面11に導入された試料3が、複数種の試薬スポット21、22と接触することによって、複数種の試薬スポット21、22を互いに混合させるとともに、混合した複数種の試薬スポット21、22と反応して信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能なものである。
【0061】
このように構成することによって、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性を向上させることができる。
【0062】
本実施の形態に用いられる担体1としては、表面11を有するものであれば特に制限はないが、例えば、多孔質体を好適例として挙げることができる。中でも、親水性の多孔質体が好ましい。その材質としては、例えば、セルロース類、ポリエーテルスルホン類、アクリル重合体等が好適で、その孔径としては0.2μm〜数μmが好適である。このように、担体1として多孔質体を用いることによって、試薬スポット2(21、22)を形成する溶液の、担体1の内部への浸透量を増大させることができ、分析感度を向上させることができる。
【0063】
本実施の形態に用いられる試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)を形成する複数種の溶液としては、試料3の導入によって互いに混合することができ、試料3中の分析対象物質と接触反応して信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能なものであれば特に制限はないが、例えば、分析対象物質として乳酸脱水素酵素の活性を測定する場合(試料として、乳酸脱水素酵素を含む溶液を用いる場合)、1つの試薬スポット21用の溶液としては、基質として乳酸、補酵素としてNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、電子キャリアーとして1−メトキシPMS(フェナジンメトサルフェート)、テトラゾリウム試薬としてNTB(ニトロテトラゾリウムブルー)を含む溶液を、もう1つの試薬スポット22用の溶液としては、リン酸緩衝液、トリス塩酸(Tris−HCl)緩衝液等の緩衝液を挙げることができる。
【0064】
本実施の形態においては、複数種の試薬スポット21、22を形成する複数種の溶液のうちの少なくとも一種は、発色体を含有してなることが好ましい。このように構成することによって、明確な信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能となる。このような発色体を含有する溶液としては、例えば、還元系としてホルマザン試薬、酸化系として4−アミノアンチピリン、フェノール系等の溶液を挙げることができる。
【0065】
試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)を形成する複数種の溶液のうちの少なくとも一種は、蛍光発光する物質を含有してなることが好ましい。このように構成することによって、目視検査では確認しにくい試薬スポット21、22の接触の可否を蛍光検査で確実に検査することが可能となり、品質の安定化を図ることができる。このような蛍光を発する物質としては特に制限はないが、試薬スポット21、22の検査特性を損なうことなく蛍光を発するものが好ましく、例えば、緑色、黄色、青色の食紅等を好適例として挙げることができる。
【0066】
試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)を形成する複数種の溶液のうちの少なくとも一種は、水溶性ポリマーを含有してなることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22の成分が、大気中の水分によって溶出するのを防止することができるため、長期保存をする場合であっても試薬スポット21、22の特性を安定して保持することができる。
【0067】
図3に示すように、担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット21、22が配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体24が配設されてなることが、長期保存安定性を向上させる上で好ましい。この場合、水溶性の遮蔽体24を少なくとも試薬スポット21、22間が最短距離となるところに配設することがさらに好ましい。遮蔽体24の大きさは、試薬スポット21、22に接触しない大きさであればよい。遮蔽体24の形状は、試薬スポット21、22に接触することなく、試薬スポット21、22の間に配置される形状であれば特に制限はないが、長期安定性を一層向上させるため、図4に示すように、直線状であることが好ましく、曲線状であってもよい。
【0068】
遮蔽体24を形成する物質としては特に制限はないが、例えば、水溶性ポリマー等を挙げることができる。水溶性ポリマーは、比較的粘度が高く、担体表面及び内部で拡がりすぎることがないため、試薬スポット21、22の形成領域を最大化することができ、感度を向上させることができる。遮蔽体24を形成する水溶性ポリマーとしては、例えば、プルランのような糖の重合物、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、カルボキシセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、デキストラン、澱粉の部分加水分解物等を好適例として挙げることができる。遮蔽体24の形成方法としては特に制限はないが、担体1の親水性の程度によって適宜使い分けすることが好ましい。例えば、比較的親水性が高い担体1を用いる場合は、遮蔽体24を担体1内部に容易に浸透させることができるため、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。また、比較的親水性が低い担体1を用いる場合は、遮蔽体24を担体内部に浸透させることが困難であり、担体1の厚さ方向への浸透を確実にするため、インクジェット法を用いることが好ましい。中でも、遮蔽体24を微細なパターンとし、試薬スポット21、22の形成領域を拡大して感度を向上させることが可能なことから、インクジェット法が、さらに好ましい。
【0069】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)は、他の領域に配設された試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)とは異なった種類のものであることが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で複数項目の検査をすることができる。
【0070】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)は、他の領域に配設された試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)とは異なった試薬濃度のものであることが好ましい。このように構成することによって、1枚の分析用試験片で定量化を可能とすることができる。
【0071】
試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)が担体1の内部にまで配設される場合、試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)は、担体1の表面11側において最も高い反応感度(試料に対する)を有してなることが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で明確な信号特性の呈示を得ることができ、確実な検査をすることができる。
【0072】
試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)が担体1の内部にまで配設される場合、試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)は、担体1の表面11側において最も高い試薬濃度を有してなることが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で明確な信号特性の呈示を得ることができ、確実な検査をすることができる。
【0073】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)が配設されていない部分(試薬スポット間)に、表面活性剤が配設されてなることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化したり信号物質等の分散化を促進することができる。このような表面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等のいずれであってもよく、使用条件に応じて適宜選定することができる。アニオン系としては、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、カチオン系としては、アルキル・トリメチルアンモニウム、アルキル・ピリジウム等、ノニオン系としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニール等を好適例として挙げることができる。
【0074】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)が配設されていない部分(試薬スポット間)に、発泡剤が配設されてなることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21と試薬スポット22との混合を促進して、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化することができる。このような発泡剤としては、例えば、炭酸水素カリウム(KHCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)と有機酸とを個別に配置したものを挙げることができる。
【0075】
担体1の表面11とは反対側の表面(裏面)側に、担体1を支持する支持体4をさらに備えてなることが好ましい。このように構成することによって、取り扱いが容易で、さらに試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)を形成する際の配列(アライメント)を容易化することができる。なお、支持体4の形状としては、担体1を確実に支持することができるものであれば特に制限はないが、例えば、材質として、金属、セラミックス、ガラス、樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂が、低コスト、溶液に対する安定性から好ましい。さらに、樹脂の種類としては、例えば、PET系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ系樹脂等を挙げることができる。
【0076】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11に平行な所定の平面(例えば、担体1の表面11から1/2の深さの部位を通る平面)で切断した断面形状を、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状とすることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化することができる。
【0077】
図2に示すように、複数種の試薬スポット21、22のうち、同一種の試薬スポット(図2では、試薬スポット21同士又は試薬スポット22同士)の中心間の距離(スポットピッチ)(L2)を、異種の試薬スポット(図2では、試薬スポット21と試薬スポット22)の中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長くすることが好ましい。このように構成することによって、試料3が導入されたときに、試薬スポット21、22を確実に混合することができる。
【0078】
図2に示すように、複数種の試薬スポット21、22の大きさを、最大径で、好ましくは、0.5mm以下、さらに好ましくは、0.05〜0.25mmとするとともに、異種の試薬スポット(試薬スポット21と試薬スポット22と)の中心間の距離(スポットピッチ)(L1)を、好ましくは、0.6mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.4mmとすることによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化したり、信号物質等の分散化を促進することができるとともに、試薬スポット21と試薬スポット22との均一な混合を実現し、明確な信号物質の生成又は信号特性の呈示を実現することができる。特に、信号特性として発光量の大小で検査、分析する場合、上記径及びピッチとすると容易に目視でも確認することができるため好ましい。
【0079】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11上における又は担体1の表面11上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポット21、22を担体1の表面11に平行な所定の平面(例えば、担体1の表面11から1/2の深さの部位を通る平面)で切断した場合の試薬スポット21、22の断面積の合計を示し、S2は、担体1の表面11の面積を示す。]を、0.01<(A)<0.814の範囲を満たすようにすることが好ましい。配設割合(A)を0.01以下とすると、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間の短縮化が困難になることがあり、配設割合(A)を0.814以上とすると、長期安定性が低減することがある。分析の長期信頼性を考慮すると、0.09<(A)<0.35の範囲を満たすようにすることがさらに好ましい。
【0080】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11上における又は担体1の表面11上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)を、担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異ならせることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22の、大気中の水分を吸収することによる劣化を簡易に判定することができる(スポットピッチが短く形成された領域では試薬スポット21、22の劣化が促進されるため、劣化の状況を定量的に把握することができる)とともに、分析(測定)範囲を拡大することができる。
【0081】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、複数種の試薬スポット21、22が所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポットをさらに備えてなることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22を配設するに先立って、例えば、試薬スポット21と試薬スポット22との混合具合等を予め確認することができるため、得られる試験片10の信頼性を向上させることができる。
【0082】
確認用試薬スポット23のそれぞれを、前述の複数種の溶液から形成することが好ましい。このように構成することによって、信号物質又は信号特性の生成具合等を予め迅速に確認することができるため、得られる試験片10の信頼性を向上させることができる。
【0083】
試薬スポット21、22の一つを形成する溶液の液滴の量(スポット量)を、担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとすること(例えば、試料3が多く導入される中央部のスポット量を大きくすること等)が好ましい。このように構成することによって、試料3に対する最適なスポット量の範囲を拡大すること(分析感度を容易に変更すること)ができるため、1枚の分析用試験片で定量化を可能とすることができる。
【0084】
なお、本発明の分析用試験片は、後述するようにインクジェット法を用いて製造することが好ましいが、他の方法、例えば、ピンに溶液を保持させ、そのピンを担体の平坦面に接触させることによって溶液を担体の平坦面に移行させて、試薬スポットを形成するピン方式による方法を用いてもよい。ピンの先端の形状には、ソリッドピンタイプ(特に、溝が切られていないもの)、クイルピンタイプ(万年筆のように溝が切られているもの)、ピンアンドリングタイプ(リングに溶液を張り、張られた溶液の膜に針を貫通させてスポットするタイプ)等、さまざまなタイプがあるが、いずれのタイプのものであっても用いることができる。中でも、クイルピンタイプが好ましい。
【0085】
以下、本発明の分析用試験片の製造方法の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0086】
図1に示すように、本実施の形態の分析用試験片の製造方法は、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に、所定の溶液を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポット2を形成することによって、分析対象物質を含んだ試料3が担体1の表面11に導入されると、試薬スポット2と接触、反応して検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片10を得る分析用試験片の製造方法であって、所定の溶液として、導入される試料3と接触することによって互いに混合することが可能で、かつ互いに混合することによって所定の機能を発揮することが可能な複数種の溶液を、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に、後述するインクジェット法を用いて複数種の溶液の液滴として吐出させて、複数種の溶液のいずれかからなる複数種の試薬スポット(図1では符号21、22で示す)を形成することによって、試料3が担体1の表面11に導入されると、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に形成された複数種の試薬スポット21、22と接触して、複数種の試薬スポット21、22を互いに混合させるとともに、混合した複数種の試薬スポット21、22と反応して信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片10を得るものである。
【0087】
このように複数の溶液のスポットを構成することによって、保存安定性の優れた分析試験片10を得ることができる。さらに、インクジェット法を用いることによって、試薬スポットの位置の高精度化及び高密度化を図ることができるとともに、試薬スポットごとの投入液量(スポット量)の正確化を図ることができる。従って、分析用試験片内での感度分布が少なく分析の信頼性が向上し、分析用試験片の大きさを大きくしても品質の均一性を保持することができ、生産の効率化を図ることができる。また、高密度化により微小量の試料でも検出可能な高感度の分析用試験片を得ることができる。さらに、投入液量の正確化が図れるので、得られる分析用試験片の保存安定性をさらに向上させることができる。
【0088】
本実施の形態に用いられるインクジェット法に用いられる液滴吐出装置としては、例えば、流路が形成された流路基体と、この流路基体に組み付けられて加圧室としてキャビティ内の容積を変化させる機能を有するアクチュエータ部と、流路基体の下面に貼着され、且つ吐出ノズルが形成されたノズル基体と、流路基体の後部の上面に設けられた液体注入部とを備えたものを挙げることができる。具体的には、特開2003−75305号公報に記載されているものを好適に用いることができる。
【0089】
また、このような液滴吐出装置を制御するシステムとしては、例えば、特開2003−98183号公報に記載されたものを好適に用いることができる。
【0090】
本実施の形態に用いられる担体1としては、表面11を有するものであれば特に制限はないが、例えば、多孔質体を好適例として挙げることができる。中でも、親水性の多孔質体が好ましい。その材質としては、例えば、セルロース類、ポリエーテルスルホン類、アクリル重合体等が好適で、その孔径としては0.2μm〜数μmが好適である。このように、担体1として多孔質体を用いることによって、得られる試薬スポット2(21、22)を形成する溶液の、担体1内部への浸透量を増大させることができ、分析感度を向上させることができる。また、インクジェット法を用いることによって、非接触で溶液を担体に供給することができるので、担体が多孔質体であっても変形させることがなく、表面にムラのない分析用試験片を得ることができる。
【0091】
本実施の形態で用いられる試薬スポット2(複数種の試薬スポット21、22)を形成する複数種の溶液としては、試料3の導入によって互いに混合することができ、試料3中の分析対象物質と接触反応して信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能なものであれば特に制限はないが、例えば、分析対象物質として乳酸脱水素酵素の活性を測定する場合(試料として、乳酸脱水素酵素を含む溶液を用いる場合)、一つの試薬スポット21用の溶液としては、基質として乳酸、補酵素としてNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、電子キャリアーとして1−メトキシPMS(フェナジンメトサルフェート)、テトラゾリウム試薬としてNTB(ニトロテトラゾリウムブルー)を含む溶液を、もう一つの試薬スポット22用の溶液としては、リン酸緩衝液、Tris−HCl緩衝液等の緩衝液を挙げることができる。
【0092】
本実施の形態においては、複数種の試薬スポット21、22を形成する複数種の溶液のうちの少なくとも一種を、発色体を含有するものとすることが好ましい。このように構成することによって、明確な信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片10を得ることができる。このような発色体を含有する溶液としては、例えば、還元系としてホルマザン試薬、酸化系として4−アミノアンチピリン、フェノール系等の溶液を挙げることができる。この場合、発色体を含有する溶液の供給に、インクジェット法を用いることによって、正確な溶液量を供給することができ、高品質な分析用試験片を得ることができる。
【0093】
複数種の試薬スポット21、22を形成する複数種の溶液に、蛍光発光する物質を含有させることが好ましい。このように構成することによって、目視検査では確認しにくい試薬スポット21、22の接触の可否を蛍光検査で確実に検査することが可能となり、品質の安定化を図ることができる。このような蛍光を発する物質としては特に制限はないが、試薬スポット21、22の検査特性を損なうことなく蛍光を発するものが好ましく、例えば、緑色、黄色、青色の食紅等を好適例として挙げることができる。この場合も、上述の発色体の場合と同様に、蛍光物質を含む溶液の供給に、インクジェット法を用いることによって、正確な溶液量を供給することができ、高品質な分析用試験片を得ることができる。
【0094】
複数種の溶液の少なくとも一つに、水溶性のポリマー(水溶性ポリマー)を含有させることも長期保存安定性の面から好ましい。水溶性ポリマーを含有させることによって、試薬スポット21、22の成分が、大気中の水分によって溶出するのを防止することができるため、長期保存をする場合であっても試薬スポット21、22の特性を安定して保持することができる。
【0095】
図3に示すように、担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット21、22が配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体24を配設することが、長期保存安定性を向上させる上で好ましい。この場合、遮蔽体24を、試薬スポット21、22間が最短距離となるところに配設することがさらに好ましい。遮蔽体24の大きさは、試薬スポット21、22に接触しない大きさであればよい。遮蔽体24の形状は、試薬スポット21、22に接触することなく、試薬スポット21、22の間に配置される形状であれば特に制限はないが、長期安定性を一層向上させるため、図4に示すように、直線状であることが好ましく、曲線状であってもよい。
【0096】
遮蔽体24を形成する物質としては特に制限はないが、例えば、水溶性ポリマー等を挙げることができる。水溶性ポリマーは、比較的粘度が高く、担体表面及び内部で拡がりすぎることがないため、試薬スポット21、22の形成領域を最大化することができ、感度を向上させることができる。遮蔽体24を形成する水溶性ポリマーとしては、例えば、プルランのような糖の重合物、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、カルボキシセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、デキストラン、澱粉の部分加水分解物等を好適例として挙げることができる。遮蔽体24の形成方法としては特に制限はないが、担体1の親水性の程度によって適宜使い分けすることが好ましい。例えば、比較的親水性が高い担体1を用いる場合は、遮蔽体24を担体1内部に容易に浸透させることができるため、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。また、比較的親水性が低い担体1を用いる場合は、遮蔽体24を担体内部に浸透させることが困難であり、担体1の厚さ方向への浸透を確実にするため、インクジェット法を用いることが好ましい。中でも、遮蔽体24を微細なパターンとし、試薬スポット21、22の形成領域を拡大して感度を向上させることが可能なことから、インクジェット法が、さらに好ましい。
【0097】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11に平行な所定の平面(例えば、担体1の表面11から1/2の深さの部位を通る平面)で切断した断面形状を、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状とすることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化することが可能な分析用試験片を得ることができる。また、インクジェット法を用いることによって、上記形状を容易に形成することができる。
【0098】
図2に示すように、複数種の試薬スポット21、22のうち、同一種の試薬スポット(図2では、試薬スポット21同士又は試薬スポット22同士)の中心間の距離(スポットピッチ)(L2)を、異種の試薬スポット(図2では、試薬スポット21と試薬スポット22)の中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長くすることが好ましい。このように構成することによって、試料3が導入されたときに、試薬スポット21、22を確実に混合することができる。
【0099】
図2に示すように、複数種の試薬スポット21、22の大きさを、最大径で、好ましくは、0.5mm以下、さらに好ましくは、0.05〜0.25mmとするとともに、異種の試薬スポット(試薬スポット21と試薬スポット22と)の中心間の距離(スポットピッチ)(L1)を、好ましくは、0.6mm以下、さらに好ましくは0.1〜0.4mmとすることによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化することが可能な分析用試験片10を得ることができるとともに、試薬スポット21と試薬スポット22との均一な混合を実現し、明確な信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片10を得ることができる。特に、信号特性として発光量の大小で検査、分析する場合、上記径及びピッチとすると容易に目視でも確認することができるため好ましい。
【0100】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11上における又は担体1の表面11上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポット21、22を担体1の表面11に平行な所定の平面(例えば、担体1の表面11から1/2の深さの部位を通る平面)で切断した場合の試薬スポット21、22の断面積の合計を示し、S2は、担体1の表面11の面積を示す。]を、0.01<(A)<0.814の範囲を満たすようにすることが好ましい。配設割合(A)を0.01以下とすると、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間の短縮化を図ることが可能な分析用試験片10を得ることが困難になることがあり、配設割合(A)を0.814以上とすると、得られる分析用試験片10の長期安定性が低減することがある。得られる分析用試験片10の分析の長期信頼性を考慮すると、0.09<(A)<0.35の範囲を満たすようにすることがさらに好ましい。なお、非接触で溶液を供給することができるとともに、スポット量が正確であるインクジェット法を用いることによって、上述のスポットピッチ、径、断面積の配設割合を効率よく実現することができる。
【0101】
複数種の試薬スポット21、22の、担体1の表面11上における又は担体1の表面11上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)を、担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異ならせることが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22の、大気中の水分を吸収することによる劣化を簡易に判定できる(スポットピッチが短く形成された領域では試薬スポット21、22の劣化が促進されるため、劣化の状況を定量的に把握することができる)とともに、分析(測定)範囲の拡大した分析用試験片10を得ることができる。また、1枚の分析用試験片で定量化を可能とすることができる。
【0102】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、複数種の試薬スポット21、22が所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポット23を配設することが好ましい。この場合、確認用試薬スポット23は、最終形状としての分析用試験片10の内部に配設されてもよく、最終形状となる前の担体1上(分析用試験片10の外部)に配設されてもよい。このように構成することによって、試薬スポット21、22を配設するに先立って、例えば、試薬スポット21と試薬スポット22との混合具合等を予め確認することができるため、得られる試験片10の信頼性を向上させることができる。
【0103】
確認用試薬スポット23のそれぞれを、前述の複数種の溶液から形成することが好ましい。このように構成することによって、信号物質又は信号特性の生成具合等を予め迅速に確認することができるため、得られる試験片10の信頼性を向上させることができる。また、確認用試薬スポット23の形成にインクジェット法を用いることによって、分析用試験片10内の試薬スポット21、22と同一のスポットを容易に形成することことができ、正確な確認検査を行うことができる。
【0104】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域における試薬スポット21、22を、他の領域の試薬スポット21、22とは異なった種類のものとなるように配設することが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で複数項目の検査をすることができる。さらに、インクジェット法を用いることによって、高密度なスポット形成ができるので、チップを大きくすることなく、異種の検査ができるチップを得ることができる。
【0105】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の少なくとも一部の領域における試薬スポット21、22を、他の領域の試薬スポット21、22とは異なった試薬濃度のものとなるように配設することが好ましい。なお、インクジェット法を用いることによって、高密度化することができ、小さな領域でも試薬濃度の変更をすることができる。このように構成することによって、1枚の分析用試験片で定量化を可能とすることができる。
【0106】
試薬スポット21、22を担体1の内部にまで配設する場合、試薬スポット21、22を、試料に対する反応感度が、担体1の表面11側において最も高くなるように配設することが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で明確な信号特性の呈示を得ることができ、確実な検査をすることができる。この場合、インクジェット法を用いることによって、反応感度が担体の表面11側において最も高くなるように、効率よく配設することができる。すなわち、まず、担体1に所定の濃度の溶液を供給後、同一装置を用いて、ノズル面における溶液の乾燥時間を長くし、より濃縮した溶液を同一箇所へ供給することによって効率よく上述の配設を実現することができる。
【0107】
試薬スポット21、22を担体1の内部にまで配設する場合、試薬スポット21、22を、試薬濃度が、担体の表面側において最も高くなるように配設することが好ましい。このように構成することによって、少量の検体(試料)で明確な信号特性の呈示を得ることができ、確実な検査をすることができる。
【0108】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット21、22が配設されていない部分(試薬スポット21と試薬スポット22との間)に、表面活性剤(図示せず)を配設することが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化したり信号物質等の分散化を促進することが可能な分析用試験片10を得ることができる。このような表面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等のいずれであってもよく、使用条件に応じて適宜選定することができる。アニオン系としては、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、カチオン系としては、アルキル・トリメチルアンモニウム、アルキル・ピリジウム等、ノニオン系としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニール等を好適例として挙げることができる。
【0109】
担体1の表面11上の又は担体1の表面11上及び内部の、試薬スポット21、22が配設されていない部分(試薬スポット21と試薬スポット22との間)に、発泡剤(図示せず)を配設することが好ましい。このように構成することによって、試薬スポット21と試薬スポット22との混合を促進して、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間を短縮化することが可能な分析用試験片10を得ることができる。このような発泡剤としては、例えば、炭酸水素カリウム(KHCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)と有機酸とを個別に配置したものを挙げることができる。この場合、インクジェット法を用いることによって、表面活性剤及び発泡剤を微少量で均一に供給することができ、分析用試験片10内及び分析用試験片10間で差のないものを得ることができる。
【0110】
担体1の表面11とは反対側の表面(裏面)側に、担体1を支持する支持体4をさらに配設することが好ましい。このように構成することによって、取り扱いが容易で、さらに試薬スポットを形成する際の配列(アライメント)を容易化することができる。なお、支持体4の形状としては、担体1を確実に支持することができるものであれば特に制限はないが、例えば、材質として、金属、セラミックス、ガラス、樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂が、低コスト、溶液に対する安定性から好ましい。さらに、樹脂の種類としては、例えば、PET系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ系樹脂等を挙げることができる。
【0111】
試薬スポット21、22を配設するため、上述のインクジェット法を用いて吐出される際の、複数種の溶液の液滴を、その速度成分として、担体1の表面11に対して垂直な方向以外の成分を有するものとすることが好ましい。このように構成することによって、噴射(吐出)ノズルから液滴が吐出されてから担体1に達するまでの時間が長くなり、より高濃度な液滴を担体1に供給することができるため、得られる分析用試験片10の分析感度の向上を図ることができる。
【0112】
また、インクジェット法を用いて、溶液の液滴を、複数の独立した微小液滴から構成することが好ましい。このように構成することによって、液滴が担体1に達するまでの時間内に、液滴がより濃縮されるため、試薬スポット21、22の大きさ(スポット径)を大きくすることなく、多くのスポット量(試薬スポット21、22の一つを形成する溶液の液滴の量)を供給することができ、得られる分析用試験片10の分析感度を向上させることができる。
【0113】
試薬スポット21、22の一つを形成する溶液の液滴の量(スポット量)を、好ましくは、0.1μL以下、さらに好ましくは、0.002〜0.02μLとする。0.1μLを超えると、溶液の液滴が担体1に拡がりすぎてスポット径が必要以上に大きくなるため、得られる分析用試験片10において、試薬スポット21、22と試料3との、接触、反応時間が長くなることがある。
【0114】
複数種の試薬スポット21、22のスポット量を、担体1の表面11の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとすること(例えば、試料3が多く導入される中央部のスポット量を大きくすること等)が好ましい。このように構成することによって、試料3に対する最適なスポット量の範囲を拡大すること(得られる分析用試験片10の分析感度を容易に変更すること)ができるため、1枚の分析用試験片10で定量化を可能とすることができる。また、インクジェット法を用いることによって、小さなチップであっても容易に作製することができる。
【0115】
試薬スポット21、22を、溶液の液滴を、試薬スポット21、22一つ当たり複数回吐出することにより形成することが好ましい。このように構成することによって、スポット径を必要以上に大きくすることなく、スポット量を大きくすることができるため、得られる分析用試験片10の分析感度を向上させることができる。
【0116】
担体1の温度を、好ましくは、40℃以下、さらに好ましくは、15〜30℃以下に保持した状態で溶液の液滴を吐出することにより試薬スポット21、22を形成することによって、試薬スポット21、22の形成後、短時間で液滴が乾燥し、試薬スポット21、22の拡がりを抑えることができ、スポット径を必要以上に大きくすることなく、スポット量を大きくすることができるため、得られる分析用試験片10の分析感度を向上させることができる。
【0117】
さらに、担体1の裏面を支持体4から隔離した状態で溶液の液滴を吐出することが好ましい。このようにして試薬スポット21、22を形成することによって、担体1の裏面における試薬スポット21、22の拡がりを抑えることができ、液滴の不必要な混合を防止することができるため、得られる分析用試験片10の分析感度を向上させることができる。
【0118】
上記のいずれかの方法によって製造された分析用試験片10は、表面11を有する担体1と、担体1の表面11上に又は担体1の表面11上及び内部に、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された、互いに混合することによって所定の機能を発揮する複数種の溶液のいずれかから、インクジェット法を用いて複数種の溶液の液滴として吐出させることによって形成された複数種の試薬スポット21、22からなる試薬スポット2とを備えてなり、分析対象物質を含んだ試料3が導入されると、試料3が複数種の試薬スポット21、22と接触することによって、複数種の試薬スポット21、22を互いに混合させるとともに、混合した複数種の試薬スポット21、22と反応して、検出可能な物質又は検出可能な特性(信号物質又は信号特性)を生成することが可能な分析用試験片10であり、担体1の表面11に導入された分析対象物質(例えば、人及び動物の体液、特に尿、血液等)を含んだ試料3の性状を検査、分析するための検査チップとして有用で、分析信頼性、分析感度(分析精度)及び保存安定性に優れたものとなる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の分析用試験片及びその製造方法を実施例によってさらに具体的に説明する。
【0120】
(実施例1、2)
試薬スポットの形成方法として、ピン方式を用いて、下記に示す手順で、サンプルを作製して、長期安定性等の特性評価を行った。すなわち、第1の試薬として、乳酸、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、1−メトキシPMS(フェナジンメトサルフェート)、NTB(ニトロテトラゾリウムブルー)を含む第1の溶液を使用し、第2の試薬として、リン酸緩衝液(第2の溶液)を使用した。試料としては牛乳を使用した。担体として、材質が親水性セルロース混合エステル、サイズが5mm×5mm、孔径が0.8μm、厚さが0.16mmのものを使用した。
【0121】
上記第1、第2の溶液と担体とを使用するとともに、試薬スポットの形成方法としてピン方式(クイルピンタイプ、万年筆のように溝が切られているもの)を用い、ピンに第1、第2の溶液を保持させ、そのピンを担体に接触させることによって第1、第2の溶液をそれぞれ担体に移行させて、第1、第2の試薬スポットを形成した。この場合、第1、第2の試薬スポット一つ当り、それぞれ、ほぼ0.01μL、0.06μLの第1、第2の溶液量をスポットすることによって、担体上に、第1、第2の試薬スポットが、それぞれ、ほぼ0.6mm、1.5mmのピッチで、ほぼ0.3mm、1.2mmの大きさ(直径)で形成された第1、第2のサンプルを得、その特性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0122】
(比較例1)
試薬スポットの形成方法として、液含浸法用いて、比較サンプルを作製し、その特性評価を行った。すなわち、実施例1で用いたものと同様の第1、第2の試薬を、それぞれビーカーに入れ、実施例1で用いたものと同様の担体を、まず、第1の試薬を入れたビーカーに入れて第1の試薬に浸すことで第1の試薬を担体に含浸させ、30℃で乾燥後、第2の試薬を入れたビーカーに入れて第2の試薬に浸すことで第2の試薬を担体に含浸させ、30℃で乾燥して、担体に第1、第2の試薬を含浸させた比較サンプルを得、その特性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0123】
実施例1、2及び比較例1における特性評価は、作製後1、7、30日間、4℃で冷蔵保管した複数のサンプル及び比較サンプル(以下、単に「サンプル」ということがある)の、表面のほぼ中央部全域に検出波長520nmのレーザ光を照射し、その反射率を測定することによって行った。反射率が高い(低下しない)ものほど安定性に優れており、反射率が初期値(作製直後)に対し10%以上低下したサンプルだけが得られた場合を×、反射率の低下が10%未満のサンプルだけが得られた場合を○と判定した。なお、実施例2においては、試薬スポットのスポット径が大きいため、試薬スポット中央部と周辺部で、実用上の問題がない程度ではあるが、第1、第2の試薬の濃度ムラが発生した。さらに、上記複数のサンプルのそれぞれに試料を滴下して複数の試料滴下サンプルとし、上記と同様にして、その反射率を測定することで感度も確認した。感度は、反射率が試料の滴下前のサンプルの反射率に対し20%以上低下した試料滴下サンプルだけが得られた場合を○と判定した。さらに、目視観察も行い、スポット内のムラの発生、5mm×5mm内のムラの発生を観察した。
【0124】


【0125】
表1に示すように、担体の表面上及び内部に、所定の溶液(実施例1、2では第1、第2の溶液の2種類)を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポットを形成することにより、分析対象物質を含んだ試料が担体の表面に導入されると、試薬スポットと接触、反応して、検出可能な信号が得られ、かつ長期安定性に優れた分析用試験片が得られることが確認できた。なお、実施例1、2は、2種の試薬(溶液)を用いて行ったが、安定性を考慮し、3、4種類の試薬(溶液)を用いて、試薬スポットを形成してもよい。
【実施例3〜5】
【0126】
試薬スポットの形成方法として、インクジェット法を用いて、下記に示す手順で、サンプルを作製して、長期安定性等の特性評価を行った。すなわち、第1の試薬として、乳酸、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、1−メトキシPMS(フェナジンメトサルフェート)、NTB(ニトロテトラゾリウムブルー)を含む第1の溶液を使用し、第2の試薬として、リン酸緩衝液(第2の溶液)を使用した。試料は牛乳を使用した。担体として、材質が親水性セルロース混合エステル、サイズが5mm×5mm、孔径が0.8μm、厚さが0.16mmのものを使用した。上記第1、第2の溶液と担体とを使用するとともに、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニットを使用し、第1、第2の試薬スポットを形成した。この場合、第1、第2の試薬スポット一つ当り、それぞれ、ほぼ0.003μL、0.01μL、0.06μLの第1、第2の溶液量をスポットすることによって、担体上に、第1、第2の試薬スポットが、それぞれ、ほぼ0.3mm、0.6mm、1.5mmのピッチで、ほぼ0.15mm、0.3mm、1.2mmの大きさ(直径)で形成された第1〜第3のサンプル(実施例3〜5)を得、その特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0127】
(比較例2)
試薬スポットの形成方法として、液含浸法用いて、下記に示す手順で、第1の比較サンプル(比較例2)を作製して、その特性評価を行った。すなわち、実施例3で用いたものと同様の第1、第2の試薬を、それぞれビーカーに入れ、実施例3で用いたものと同様の担体を、まず、第1の試薬を入れたビーカーに入れて第1の試薬に浸すことで第1の試薬を担体に含浸させ、30℃で乾燥後、第2の試薬を入れたビーカーに入れて第2の試薬に浸すことで第2の試薬を担体に含浸させ、30℃で乾燥して、担体に第1、第2の試薬を含浸させた第1の比較サンプル(比較例2)を得、その特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0128】
(比較例3)
試薬スポットの形成方法として、ピンに第1、第2の溶液を保持させ、そのピンを担体に接触させることによって第1、第2の溶液を担体に移行させて、第1、第2の試薬スポットを形成するピン方式(クイルピンタイプ、万年筆のように溝が切られているもの)を用いて、第2の比較サンプル(比較例3)を作製し、その特性評価を行った。その結果を表2に示す。すなわち、第1、第2の試薬スポット一つ当り、それぞれ、ほぼ0.003μLの第1、第2の溶液量をスポットすることによって、担体上に、第1、第2の試薬スポットが、それぞれ、ほぼ0.3mmのピッチで、ほぼ0.15mmの大きさ(直径)で形成された第2の比較サンプル(比較例3)を得、その特性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0129】
実施例3〜5及び比較例2、3における特性評価は、作製後1、7、30日間、4℃で冷蔵保管した複数のサンプル及び比較サンプル(以下、単に「サンプル」ということがある)の、表面のほぼ中央部全域に検出波長520nmのレーザ光を照射し、その反射率を測定することによって行った。反射率が高い(低下しない)ものほど安定性に優れており、反射率が初期値(作製直後)に対し10%以上低下したサンプルだけが得られた場合を×、反射率の低下が10%未満のサンプルだけが得られた場合を○と判定した。なお、10%以上低下したサンプル及び10%未満のサンプルが混在して得られた場合を△と判定した。また、実施例5においては、試薬スポットのスポット径が大きいため、試薬スポット中央部と周辺部で、実用上の問題がない程度ではあるが、第1、第2の試薬の濃度ムラが発生した。さらに、上記複数のサンプルのそれぞれに試料を滴下して複数の試料滴下サンプルとし、上記と同様にして、その反射率を測定することで感度も確認した。感度は、反射率が試料の滴下前のサンプルの反射率に対し20%以上低下した試料滴下サンプルだけが得られた場合を○と判定した。さらに、目視観察も行い、スポット内のムラの発生、5mm×5mm内のムラの発生を観察した。
【0130】

【0131】
表2に示すように、担体の表面上及び内部に、所定の溶液(実施例3〜5では第1、第2の溶液2種類)を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポットを形成することにより、分析対象物質を含んだ試料が担体の表面に導入されると、試薬スポットと接触、反応して、検出可能な信号が得られ、かつ長期安定性に優れた分析用試験片が得られることが確認でき、さらにその製造法として、ピン方式よりも、インクジェット法の方が、スポット量のばらつきによるチップ内ムラの発生を防止することができる点で優れていることが確認できた。なお、実施例3〜5は、2種の試薬(溶液)を用いて行ったが、安定性を考慮し、3、4種類の試薬(溶液)を用いて、試薬スポットを形成してもよい。また、表2における比較例2及び表1における比較例1は、同一内容の試験であったが、評価方法等のばらつきによって、それぞれ△及び○と判定されたと推定される。
【0132】
(実施例6、7)
試料として、牛乳(乳酸脱水素酵素)の代わりに、アルカリ性フォスファターゼを用いて、第4、第5のサンプル(実施例6、7)を得た。すなわち、試薬スポットの形成方法として、インクジェット法を用いて、下記に示す手順で、サンプルを作製して、長期安定性等の特性評価を行った。第1の試薬として、p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩18.94mM、塩化マグネシウム(6水塩)/0.505mM(第1の溶液)を使用し、第2の試薬として、2−エチルアミノエタノール/5.05mM、塩化マグネシウム(6水塩)/0.505mM(第2の溶液)を使用した。試料としては、アルカリ性フォスファターゼを使用した。担体として、材質が親水性セルロース混合エステル、サイズが5mm×5mm、孔径が0.8μm、厚さが0.16mmのものを使用した。上記第1、第2の溶液と担体とを使用するとともに、特開2003−75305号公報に記載されている吐出ユニットを使用し、第1、第2の試薬スポットを形成した。この場合、第1、第2の試薬スポット一つ当り、それぞれ、ほぼ、0.01μL、0.06μLの第1、第2の溶液量をスポットすることによって、担体上に、第1、第2の試薬スポットが、それぞれ、ほぼ0.6mm、1.5mmのピッチで、ほぼ0.3mm、1.2mmの大きさ(直径)で形成された第4、第5のサンプル(実施例6、7)を得、その特性評価を行った。その結果を表3に示す。
【0133】
(比較例4)
試薬スポットの形成方法として、液含浸法用いて、第3の比較サンプル(比較例4)を作製し、その特性評価を行った。その結果を表3に示す。すなわち、実施例6で用いたものと同様の第1、第2の試薬(すなわち、第1、第2の溶液として、2−エチルアミノエタノール/1.01mM、p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩/75.75mM、塩化マグネシウム(6水塩)/0.505mM)を、実施例6で用いたものと同様の担体の内部に、比較例2と同様の方法で第1、第2の試薬を含浸させて、第3の比較サンプル(比較例4)を得、その特性評価を行った。その結果を表3に示す。
【0134】
実施例6、7及び比較例4における特性評価は、作製後1、100、150日間、4℃で冷蔵保管した複数のサンプル及び比較サンプル(以下、単に「サンプル」ということがある)の表面のほぼ中央部全域における、検出波長405nmにおける試薬自身の吸光度を測定することにより、p−ニトロフェニルリン酸の分解物であるp−ニトロフェノールの生成率を測定することにより行った。保管開始時の405nmにおける吸光度を100%とした時の相対値が100に近いほど安定性に優れており、相対値が初期値(作製直後)に対し10%以上低下したサンプルだけが得られた場合を×、相対値の低下が10%未満のサンプルだけが得られた場合を○と判定した。なお、実施例7においては、試薬スポットのスポット径が大きいため、試薬スポット中央部と周辺部で、実用上の問題がない程度ではあるが、第1、第2の試薬の濃度ムラが発生した。また、上記複数のサンプルのそれぞれに試料を滴下して複数の試料滴下サンプルとし、上記と同様にして、その反射率を測定することで感度も確認した。感度は、反射率が試料の滴下前のサンプルの反射率に対し20%以上低下した試料滴下サンプルだけが得られた場合を○と判定した。さらに、目視観察も行い、スポット内のムラの発生、5mm×5mm内のムラの発生を観察した。
【0135】

【0136】
表3に示すように、担体の表面上及び内部に、所定の溶液(実施例6、7では第1、第2の溶液2種類)を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポットを形成することにより、分析対象物質を含んだ試料が担体の表面に導入されると、試薬スポットと接触、反応して、検出可能な信号が得られ、かつ長期安定性に優れた分析用試験片がさまざまな溶液に対し得られることが確認できた。なお、実施例6、7は、2種の試薬(溶液)を用いて行ったが、安定性を考慮し、3、4種類の試薬(溶液)を用いて、試薬スポットを形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の分析用試験片及びその製造方法は、研究、創薬、診断、医療等の分野で、分析対象物質(例えば、人及び動物の体液、特に尿、血液等)を含んだ試料の性状を検査、分析するための検査チップ等の製造に有効に利用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設された試薬スポットとを備えてなり、分析対象物質を含んだ試料が前記担体の表面に導入されると、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に配設された前記試薬スポットと接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片であって、
前記試薬スポットが、互いに混合することによって所定の機能を発揮する複数種の溶液のいずれかから形成された複数種の試薬スポットからなり、
前記担体の表面に導入された試料が、前記複数種の試薬スポットと接触することによって、前記複数種の試薬スポットを互いに混合させるとともに、混合した前記複数種の試薬スポットと反応して、前記信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片。
【請求項2】
前記担体が、多孔質体である請求の範囲第1項に記載の分析用試験片。
【請求項3】
前記分析対象物質が、人及び動物の体液である請求の範囲第1項又は第2項に記載の分析用試験片。
【請求項4】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、発色体を含有してなる請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項5】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、蛍光発光する物質を含有してなる請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項6】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種が、水溶性ポリマーを含有してなる請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項7】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体が配設されてなる請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項8】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された前記試薬スポットが、他の領域に配設された前記試薬スポットとは異なった種類のものである請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項9】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域に配設された前記試薬スポットが、他の領域に配設された前記試薬スポットとは異なった試薬濃度のものである請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項10】
前記試薬スポットが前記担体の内部にまで配設される場合、前記試薬スポットが、前記担体の表面側において最も高い、前記試料に対する反応感度を有してなる請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項11】
前記試薬スポットが前記担体の内部にまで配設される場合、前記試薬スポットが、前記担体の表面側において最も高い前記試薬濃度を有してなる請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項12】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、表面活性剤が配設されてなる請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項13】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、発泡剤が配設されてなる請求の範囲第1項〜第12項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項14】
前記担体の表面とは反対側の表面(裏面)側に、前記担体を支持する支持体をさらに備えてなる請求の範囲第1項〜第13項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項15】
前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面に平行な所定の平面で切断した断面形状が、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状である請求の範囲第1項〜第14項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項16】
前記複数種の試薬スポットのうち、同一種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L2)が、異種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長い請求の範囲第1項〜第15項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項17】
前記複数種の試薬スポットの大きさが、最大径で0.5mm以下であるとともに、前記異種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)が、0.6mm以下である請求の範囲第1項〜第16項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項18】
前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポットを担体の表面に平行な所定の平面で切断した場合の試薬スポットの断面積の合計を示し、S2は、担体の表面の面積を示す。]が、0.01<(A)<0.814の範囲を満たす請求の範囲第1項〜第17項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項19】
前記複数種の試薬スポットの、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なっている請求の範囲第1項〜第18項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項20】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記複数種の試薬スポットが所定の前記配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、前記試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポットをさらに備えてなる請求の範囲第1項〜第19項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項21】
前記試薬スポットの一つを形成する前記溶液の液滴の量(スポット量)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なっている請求の範囲第1項〜第20項のいずれかに記載の分析用試験片。
【請求項22】
担体の表面上に又は担体の表面上及び内部に、所定の溶液を、スポット状に所定の配列パターン(スポットピッチ)で配設して、試薬スポットを形成することによって、分析対象物質を含んだ試料が前記担体の表面に導入されると、前記試薬スポットと接触、反応して、検出可能な物質(信号物質)の生成又は検出可能な特性(信号特性)の呈示が可能な分析用試験片を得る分析用試験片の製造方法であって、
前記所定の溶液として、導入される前記試料と接触することによって互いに混合することが可能で、かつ互いに混合することによって所定の機能を発揮することが可能な複数種の溶液を、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部にインクジェット法を用いて前記複数種の溶液の液滴として吐出させて、前記複数種の溶液のいずれかからなる複数種の試薬スポットを形成することによって、前記試料が前記担体の表面に導入されると、前記担体の表面上に又は前記担体の表面上及び内部に形成された前記複数種の試薬スポットと接触して、前記複数種の試薬スポットを互いに混合させるとともに、混合した前記複数種の試薬スポットと反応して、前記信号物質の生成又は信号特性の呈示が可能な分析用試験片を得る分析用試験片の製造方法。
【請求項23】
前記インクジェット法に用いられる液滴吐出装置として、流路が形成された流路基体と、この流路基体に組み付けられて加圧室としてキャビティ内の容積を変化させる機能を有するアクチュエータ部と、流路基体の下面に貼着され、且つ吐出ノズルが形成されたノズル基体と、流路基体の後部の上面に設けられた液体注入部とを備えるものを用いる請求の範囲第22項に記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項24】
前記担体として、多孔質体を用いる請求の範囲第22項又は第23項に記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項25】
前記分析対象物質として、人及び動物の体液を用いる請求の範囲第22項〜第24項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項26】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、発色体を含有してなるものを用いる請求の範囲第22項〜第25項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項27】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、蛍光発光する物質を含有してなるものを用いる請求の範囲第22項〜第26項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項28】
前記複数種の試薬スポットを形成する前記複数種の溶液のうちの少なくとも一種として、水溶性ポリマーを含有してなるものを用いる請求の範囲第22項〜第27項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項29】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、水溶性の遮蔽体を配設する請求の範囲第22項〜第28項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項30】
前記複数種の試薬スポットを、前記担体の表面に平行な所定の平面で切断した断面形状が、楕円形状、長円形状又はレーシングトラック形状となるように配設する請求の範囲第22項〜第29項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項31】
前記複数種の試薬スポットを、前記複数種の試薬スポットのうち、同一種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L2)が、異種の前記試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)よりも長くなるように配設する請求の範囲第22項〜第30項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項32】
前記複数種の試薬スポットを、その大きさが、最大径で0.5mm以下であるとともに、前記異種の試薬スポットの中心間の距離(スポットピッチ)(L1)が、0.6mm以下となるように配設する請求の範囲第22項〜第31項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項33】
前記複数種の試薬スポットを、前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配設割合[(A)=(S1/S2)、ここで、S1は、複数種の試薬スポットを担体の表面に平行な所定の平面で切断した場合の試薬スポットの断面積の合計を示し、S2は、担体の表面の面積を示す。]が、0.01<(A)<0.814の範囲を満たすように配設する請求の範囲第22項〜第32項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項34】
前記複数種の試薬スポットを、その前記担体の表面上における又は前記担体の表面上及び内部における配列パターン(スポットピッチ)が、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとなるように配設する請求の範囲第22項〜第33項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項35】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記複数種の試薬スポットが所定の前記配列パターン(スポットピッチ)で配設された領域の外側に、前記試薬スポットが正常に配設されることを予め確認するための確認用試薬スポットをさらに配設する請求の範囲第22項〜第34項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項36】
前記確認用試薬スポットのそれぞれを、前記複数種の溶液から形成する請求の範囲第35項に記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項37】
前記担体の表面の少なくとも一部の領域における前記試薬スポットを、他の領域の前記試薬スポットとは異なった種類のものとなるように配設する請求の範囲第22項〜第36項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項38】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域における前記試薬スポットを、他の領域の前記試薬スポットとは異なった試薬濃度のものとなるように配設する請求の範囲第22項〜第37項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項39】
前記試薬スポットを前記担体の内部にまで配設する場合、前記試薬スポットを、前記試料に対する反応感度が、前記担体の表面側において最も高くなるように配設する請求の範囲第22項〜第38項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項40】
前記試薬スポットを前記担体の内部にまで配設する場合、前記試薬スポットを、前記試薬濃度が、前記担体の表面側において最も高くなるように配設する請求の範囲第22項〜第39項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項41】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、表面活性剤を配設する請求の範囲第22項〜第40項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項42】
前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の、前記試薬スポットが配設されていない部分(試薬スポット間)に、発泡剤を配設する請求の範囲第22項〜第41項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項43】
前記担体の表面とは反対側の表面(裏面)側に、前記担体を支持する支持体をさらに配設する請求の範囲第22項〜第42項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項44】
前記複数種の溶液の液滴を、その速度成分として、前記担体の表面に対して垂直な方向以外の成分を有するようにして前記インクジェット法を用いて吐出して、前記試薬スポットを形成する請求の範囲第22項〜第43項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項45】
前記溶液の液滴を、複数の独立した微小液滴から構成する請求の範囲第22項〜第44項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項46】
前記試薬スポットの一つを形成する前記溶液の液滴の量(スポット量)を、0.1μL以下とする請求の範囲第22項〜第45項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項47】
前記複数種の試薬スポットのスポット量を、前記担体の表面上の又は前記担体の表面上及び内部の少なくとも一部の領域において、他の領域とは異なったものとする請求の範囲第22項〜第46項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項48】
前記試薬スポットを、前記溶液の液滴を前記試薬スポット一つ当たり複数回吐出させることによって形成する請求の範囲第22項〜第47項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項49】
前記担体の温度を40℃以下に保持した状態で前記溶液の液滴を吐出して、前記試薬スポットを形成する請求の範囲第22項〜第48項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。
【請求項50】
前記担体の裏面を前記支持体から隔離した状態で前記溶液の液滴を吐出することによって、前記試薬スポットを形成する請求の範囲第43項〜第49項のいずれかに記載の分析用試験片の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/113916
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507278(P2005−507278)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008886
【国際出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】