説明

分枝鎖アルコールおよび/または分枝鎖酸に基づくエステル混合物およびそれらの高分子添加物としての使用

【解決手段】 本発明は、エステル混合物、高分子添加物としてのそれらの使用、および前記エステル混合物を含む高分子組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエステル混合物およびエステル混合物の高分子添加物としての使用に関連する。さらに、本発明は前記エステル混合物を含む高分子組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
市販の脂肪アルコールおよび脂肪酸は、原料元または製造工程によって非常に異なる構造を有する。鎖長がC〜C22の直鎖飽和アルコールは、天然の脂肪および油を加水分解またはメタノリシス(methanolysis)した後、得られた酸またはメチルエステルの水素化により得られる。長鎖の直鎖飽和脂肪アルコール(C22〜C40)は、例えば蜜蝋やモンタンワックスのような天然ワックスに存在する。C〜C20の鎖長を有する直鎖飽和脂肪アルコールは、アルミニウム、水素、およびエチレンを用いたチーグラー工程によって石油化学的に得られる。さらに、C20〜C60の範囲の鎖長の生成物は、エチレン重合して得られたα−オレフィンをアルコールと酸(ユニリンアルコールとユニリン酸)に変換することにより生産され得る。
【0003】
例えばNEODOL(商標)アルコールなどのような半直鎖脂肪アルコール(semilinear fatty alcohol)は、エチレンオリゴマー化の後、得られたα−オレフィンの選択的ヒドロホルミル化によって合成され得る。そのようなアルコール(変性オキソアルコール、MOと称する)は、第一級、直鎖、および飽和アルコールをおよそ80%含む。残留物は主に、アルコール基に対して2位でアルキル分枝したアルコールを含む。
【0004】
従来のオキソアルコール(NOと称する)は一般的に灯油に基づいている。ここでは、最初にパラフィンの流れ(stream)が単離され、その後これがオレフィンに脱水素化され、最終的にヒドロホルミル化される。従って得られた前記脂肪アルコールは第一級、直鎖、および飽和脂肪アルコールをおよそ50%含む。得られた分枝アルコールのほとんどすべてが2位で分枝している。その上、この生成物の流れは、直鎖と分枝した成分に分解され得ることが知られている。
【0005】
これらの脂肪アルコールの大部分が一分枝であるのに加えて、多分枝脂肪アルコールもまた知られている。そのような脂肪アルコールは、プロペンおよび/またはブテンのオリゴマー化とヒドロホルミル化によって得られる。そのようなアルコールの標準鎖長は、例えばイソノナノール、イソデカノール、およびイソトリデカノール(変性脂肪アルコール)などのように、C〜C15の範囲である。以上に記載したアルコールに相当する酸もまた知られている。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0006】
近年、新しい種類の脂肪アルコールが、合成ガスを用いたフィッシャー・トロプシュ(FT)工程において得られるオレフィンのヒドロホルミル化によって利用しやすくなった。既知の脂肪アルコールと比較して、後者の脂肪アルコールは特殊な構造的特徴を有する。例えばそれらは、従来のオキソアルコールと同様に、分岐した分子を平均しておよそ50%含んでもよいが、先行技術のアルコールとは逆に、それらの分子の大部分はヒドロキシル基に対して2位で分枝していない。
【0007】
【表1】

特に高分子添加物として適した新規なエステル混合物を提供することが本発明の目的である。加えて前記混合物は、高分子とよく適合し、直鎖アルコールに基づくエステルと比べると低い融解温度であるという利点に加えて、優れた放出特性を有するはずである。
【0008】
驚くべき特性を示す前記新規エステル混合物は、フィッシャー・トロプシュ工程において得られる前記アルコールと酸から調整され得る。前記エステル混合物は実質的に、
1〜4個のカルボキシル基と12〜60個の炭素原子とを有するエステル[KY1]から成り、前記エステルは、
選択的に、完全にもしくは部分的にハロゲン化されている1もしくはそれ以上のカルボン酸、および/または1もしくはそれ以上のリン酸と、
1もしくはそれ以上のアルコールとの反応により調整され、
前記カルボン酸、前記アルコール、もしくはその両方(しかし少なくとも1つ)は、1つの混合体として存在し、前記カルボン酸混合体および/もしくは前記アルコール混合体は、
化学式RCHOHに準じたアルコール、および/もしくは化学式RCOOHに準じたカルボン酸を有するものであり、
(a)使用される前記アルコールおよび/または酸の20重量%〜80重量%、好ましくは40重量%〜70重量%において、炭化水素ラジカルRは直鎖かつ脂肪族であり、好ましくは飽和しており、さらに4〜20個、好ましくは7〜12個の炭素原子を有しており、さらに
(b)使用される前記アルコールおよび/または酸の10重量%〜80重量%、好ましくは20重量%〜60重量%において、前記炭化水素ラジカルRは脂肪族であり、好ましくは飽和しており、さらに4〜20個、好ましくは7〜12個の炭素原子を有しており、そのうち上限3個まで、好ましくは1もしくは2個は第三級の炭素原子であり、前記第三級炭素はいずれもアルコールもしくは酸の−OH基に対して2位もしくは3位にはなく、さらに前記混合体中の全第三級炭素原子に関して少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも95%の第三級炭素原子は直接隣接しておらず、さらに選択的に、
(c)10重量%まで、好ましくは5重量%まで他のアルコールまたは酸を含んでおり、それらは5〜21個、好ましくは8〜13個の炭素原子を有しているものであり、
(a)、(b)、および(c)に準じた前記アルコール、前記酸、もしくはその両方は100重量%までお互いに補足しあう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項に提示されているか、もしくは以下に記載されている。前記ラジカルRは平均11〜12個の炭素原子を含み、炭素原子各々はすべて前記ラジカルRを言及していることが好ましい。前記エステル混合物は、雑多なエステルの混合物である。前述した重量パーセントは、前記エステル混合物の組成物に言及している。
【0010】
本発明のエステル混合物は、モノ−、ジ−、トリ−、およびテトラの酸またはリン酸とモノアルコール(monols)、もしくはモノ−、ジ−、トリ−、およびテトラアルコール(tetraols)とモノカルボン酸との反応によって調整され、前記カルボン酸、前記アルコール、もしくはその両方は混合物として存在する。その両方が混合物である場合、それらはモノアルコールとモノカルボン酸の反応生成物である。
【0011】
本明細書で用いられる「高分子添加物」という用語は、例えば可塑剤、潤滑剤、離型剤、粘性低下剤、抗酸化剤、および溶媒などを意味する。それらの効用は、前記エステル構造と前記高分子タイプとの両方に左右される。
【0012】
本発明によるフタル酸エステルに関しては、可塑剤PVCとして特に有用であり、相溶性の限界は平均してアルコール残基中およそ13炭素原子となる。例えば、一般的に知られている可塑剤はジイソトリデシルフタレート(DTDP)であるが、C12〜C13のアルコール混合体に基づく可塑剤も存在する。
【0013】
長鎖アルコール残基の相溶性はそのように限られているため、アルコール混合物を使用するための技術においては、エステル化の前にC12および/またはC13の長鎖アルコールを短鎖アルコール(エステル混合体)とともに混合させることが提案されている。先行技術のエステル/可塑剤混合物の相溶性は非常に優れているにもかかわらず、それらの熱老化安定性は、本発明のエステルと比較すると満足いくものではない。FT合成において得られた前記脂肪アルコールは、高分子添加エステルの作製に特に適しており、とりわけ可塑剤としての使用、最も好ましくはPVCに適している。
【0014】
好ましくは、前記エステルのアルコールはC〜C15の鎖長を有しており、好ましくはC〜C13であり、最も好ましくはC12〜C13である。前記酸は脂肪族、環状、および/または芳香族の酸であってもよい。前記脂肪族の酸は、例えば蟻酸、酢酸、プロパン酸、ブチル酸、イソブチル酸、ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラゴン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、獣脂脂肪酸、ココナツ脂肪酸、椰子脂肪酸、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニル脂肪酸、イソステアリン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ブチルデカン酸、2−ヘキシルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルドデカン酸、2−オクチルデカン酸、2−オクチルドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−ドデシルヘキサデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセロール酸、アクリル酸、メタクリル酸などのように、分岐または直鎖であり、飽和または不飽和のC〜C22のモノカルボン酸であってもよく、または例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリト酸、クエン酸、ピロメリト酸、またはテトラクロロフタル酸などのようなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸であってもよい。
【0015】
さらに、本発明はC〜C15の、好ましくはC〜C13、最も好ましくはC12〜C13の鎖長を有する酸に基づくエステルに関連しており、例えば脂肪族または環状あるいは芳香族で、分枝鎖または直鎖の酸を含み、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、獣脂脂肪アルコール、ココナツ脂肪アルコール、椰子脂肪アルコール、ヒマシ油アルコール、オレイルアルコール、リノールアルコール、リノレンアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、2−エチルヘキサンアルコール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ドデシルヘキサデカノール、2−テトラデシルオクタデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、ビニルアルコール、乳酸、ヒドロキシル酪酸、マンデル酸、グリセロール酸、クエン酸、フェノール、などのような飽和または不飽和のC〜C22のモノアルコール、または例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサンジオールまたはグリセロール、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane)またはアルジトール(alditols)、ジグリセリド、トリグリセリド、ポリグリセリド、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトール、などのジ−、トリ−、またはポリ−アルコールを含む。
【0016】
前記エステルは、例えばポリビニルクロライド(PVC)、ポリビニリデンクロライド(PVDC)、ポリアクリル酸塩(例えばポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)、ポリアルキルメタクリル酸塩(PAMA))、フッ化ポリマー(例えばフッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール(PVB))、ポリスチレンポリマー(例えばポリスチレン(PS)、発泡性ポリスチレン(EPS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−ブタンジエン−スチレン(ABS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA),スチレンメタクリル酸共重合体)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレンビニルアセテート(EVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタル酸(PETP)、ポリブチレンテレフタル酸(PBTP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPO)、生体高分子(例えばポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシルブチル酸(PHB)、ポリヒドロキシル吉草酸(PHV))、ポリエステル、澱粉、セルロースおよびセルロース誘導体(例えばニトロセルロース(NC)、エチルセルロース(EC)、酢酸セルロース(CA)、酢酸/酪酸セルロース(CAB))、シリコン、および上記の高分子の混合物または共重合体、またはそれらのモノマー単位などのような、各種高分子の添加剤として有用である。
【0017】
前記エステルは特にPVCの可塑剤に適している。PVCの平均分子量は、k値と定義され、DIN53726に従って測定される。標準的なk値は60〜100の範囲にあり、すなわち前記平均分子量(平均粘度)はおよそ60,000〜150,000g/molの範囲である。前記分子量のほかに、PVCの加工特性もまた製造方法によって影響される。懸濁液PVC(S−PVC)、乳濁液PVC(E−PVC)、およびバルクPVCは区別されており、S−PVCとE−PVCが最も一般的である。
【0018】
広範囲の添加剤が高分子プラスチック、一次塑剤、および例えば熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、生体安定剤などのような安定剤だけでなく、充填剤、潤滑剤、離型剤、発泡剤、難燃剤、増量剤、二次可塑剤、顔料および色素、帯電防止剤、加工助剤、耐衝撃性重合調整剤にも添加され得る。
【0019】
可塑剤は通常、例えばフタル酸類、トリメリテート類、クエン酸塩類、アジピン酸塩類、セバシン酸塩類、ポリエステル類、スルホン酸塩類、リン酸エステル類、安息香酸塩類、グリセリド類などのエステルであり、まれにピロメリテート類およびポリオールエステルなどである。熱安定剤は一般的に金属石鹸を意味する。ここでは、例えば錫系および鉛系安定剤などの単一の金属安定剤、および例えばカドミウム−銅安定剤、バリウム−銅安定剤、カルシウム−銅安定剤などの混合金属の安定剤と、および例えばアミノクロトン酸エステル、エポキシ化大豆油、亜リン酸塩、エポキシ樹脂、α−ジケトンなどのような金属を含まない有機安定剤の間で区別される。抗酸化剤は一般的に、立体障害のあるフェノール、チオエステル、亜リン酸塩、およびアミンを意味する。通常使用される増量剤または二次可塑剤は、例えば炭化水素、塩化パラフィン、エポキシ化大豆油、およびTXIB(2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールジイソブチレート)などである。通常の充填剤は、例えば炭酸カルシウム、カオリン、カーボンブラック、滑石粉、白雲石、ケイ酸塩、およびアルミン酸塩である。
【0020】
潤滑剤に関しては、内部と外部のものに区別され、前記二つのグループの境界は液体である。使用される前記潤滑剤は通常、例えばイソブチルステアリン酸塩、ジステアリルフタル酸塩、グリセロールモノオール酸塩(GMO)、グリセロールモノステアリン酸塩(GMS)、ジ−およびトリグリセロール脂肪酸エステル、ステアリルステアリン酸塩、複合エステル、脂肪アルコール、脂肪酸、石鹸、アミドワックス、酸化および非酸化ポリエチレンワックス、およびパラフィンなどのエステルである。通常の発泡剤は、例えばアゾビスイソブチロニトリル、トロイルスルフォヒドラジド(toloylsulfohydrazide)などのように、一次化学物質である。難燃剤はリン酸塩、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩素化炭化水素、およびホウ酸塩である。現在市販されている安定剤は、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、潤滑剤、および液化機をさらに含む主に多成分系であり、(二次)可塑剤を含む。
【0021】
S−PVCは一般的に乾燥混合法を用いて加工されるが、E−PVCはペースト剤として加工される。ここでは、従来の混合体が第一段階で使用される。前記ペーストはその後、例えばコーティング技術や回転一体成型などによって加工される。乾燥混合物は通常押し出され、その後カレンダ加工する。その他の従来法は、放出成型、インフレーション工程、吹き出し(slush)成型、およびその他の熱可塑性物質を加工するための技術などである。
【0022】
製剤で用いられる「phr」という用語は、重量当たり100パーツの高分子樹脂に対する数値を意味する。製剤は1〜150phr可塑剤、0.5〜10phr安定剤、0〜50phr充填剤、および必要に応じてその他の添加剤を含む。
【0023】
FT脂肪アルコールの構造は、PVC可塑剤の調整、すなわち高分子相溶性と、得られるプラスチックシートの機械特性に関して、特に適していることが証明されている。さらに前記エステルは、処理しやすいように、直鎖アルコールに基づくエステル可塑剤と比べるとより好ましい融解温度を有している。
【0024】
以上の記載は、フタル酸エステルを例に用いて説明する。C12/13の各種アルコールに基づくエステルを比較のために調整し、従来のオキソアルコール(NO型、SASOLのLIAL(商標)123)、修飾オキソアルコール(MO型、ShellのNEODOL(商標)23)、およびFTオキソアルコール(FT型、SASOLのSAFOL(商標)23、本発明によるもの)に基づくフタル酸エステルをお互い比較した。最先端の技術は、例えばジ(デシル、ラウリル、ミリスチル)フタル酸エステル(LINPLAST(商標)1012 BP)、ジ(オクチル、デシル)フタル酸エステル(LINPLAST(商標)810 P)、およびジイソトリデシルフタル酸エステル(LINPLAST(商標)13 XP)などの高性能フタル酸エステル可塑剤によって示される。
【0025】
前記エステルを比較すると、それらの融点が徐々に下がっていることは明らかであり、つまりMOフタル酸エステルからFTフタル酸エステル、NOフタル酸エステルにつれて下がっている。融点/鋳込み温度(透明点)に関しては、前記FTフタル酸エステルが分枝アルコールのフタル酸エステルに驚くほど類似した反応を示す。
【0026】
前記各種可塑剤のゲル化温度を比較すると、FTオキソアルコールが可塑剤の調整に最も適していることが明らかである。前記ゲル化温度は、可塑剤の高分子融和性の基準でもあり、MO−およびNOフタル酸エステルの温度よりも著しく低く、後者は最も好ましくないゲル化の挙動を示す。
【0027】
各種可塑剤を含むシートの機械特性を比較すると、顕著な違いは見られない。しかしながら、前記ゲル化温度から推測されるように、FTオキソアルコールに基づく前記可塑剤の相溶性が優れていることは明らかである。MOフタル酸エステルとNOフタル酸エステルは、33%の標準プラスチックシートからかなり浸出するのに対し、FT C12/13アルコールに基づくフタル酸エステルはそのようなシートとわずかな不適合性のみであることがわかっている。
【0028】
しかしながら、C12/13アルコールと、例えばLINCOL(商標)812 Hなどの直鎖C8−14アルコールとの70:30混合物に基づくフタル酸エステル可塑剤を調整する場合、FTオキソアルコールを含む前記可塑剤は、従来のオキソアルコールを含む生成物と比較すると完全に適合する。先行技術の生成物とは異なり、可塑剤の揮発性の顕著な劣化は見られない。
【0029】
従って、FTアルコールに基づく可塑剤は、それらの相溶性が十分である期間は、放出性(例えば噴霧、老化による分解など)は非常に低い。これは例えばケーブル製剤によっても実証される。そのような充填剤を含む製剤においては、C12/13FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルの不適合性は観察されていない。
【0030】
トリブテン(ジイソトリデシルフタル酸エステル)から作られるオキソアルコールに基づく先行技術のフタル酸エステルは、優れた熱老化安定性を有する。しかし、C12/13FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルの熱老化安定性は、前述のジイソトリデシルフタル酸エステルよりもかなり優れている。C12/13アルコールと、例えばLINCOL(商標)812 Hなどの直鎖C8−14アルコールとの70:30混合物に基づくフタル酸エステル可塑剤の熱老化安定性でさえ、前記ジイソトリデシルフタル酸エステルよりも劣る。
【0031】
さらに、C12/13FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルの他の利点は、優れた低温屈曲性であり、例えばClash&Bergねじれ負荷試験によって実証され得る。この試験は、シート(100%と比較して)の初期硬度がわずかに増加しているにもかかわらず、C12/13FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルが、例えばSASOLドイツGmbHのLINPLAST(商標)1012 BPなどの直鎖C10〜14アルコールに基づく前記先行技術のフタル酸エステルと同様に、よい低温特性を示すことを明らかにする。従って、C12/13FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルは、明らかにジイソトリデシルフタル酸エステルより優れている。例えば直鎖アルコールとFTオキソアルコールを含むような混合物に基づくエステルにも同様のことが当てはまる。
【0032】
さらに、FTオキソアルコールに基づくフタル酸エステルを含むプラスチックシートは、`例えばLINPLAST(商標)1012 BPのような直鎖アルコールに完全に基づくフタル酸エステルを含むシートと同様に、高い熱安定性(コンゴレッド試験)を示す。従ってこのような可塑剤は、従来のジイソトリデシルフタル酸エステルを超える独特の実用的な利点を有する。よって、FTオキソアルコールに基づく可塑剤は明らかに先行技術の可塑剤より優れている。
【0033】
仕込み
SASOLのLINPLAST(商標)13 XP(ジイソトリデシルフタル酸エステル)、LINPLAST(商標)1012 BP(ジ(C10〜14アルキル)フタル酸エステル)、LIAL(商標)123(C12〜13オキソアルコール)、SAFOL(商標)23(C12〜C13FTオキソアルコール)、LINCOL(商標)810(オクタノール/デカノール混合物)、LINCOL(商標)812 H(オクタノール/デカノール/ドデカノール/テトラデカノール混合物)。
ShellのNEODOL(商標)23(変性C12/C13オキソアルコール)。
ChemsonのNAFTOVIN(商標)T80(鉛フタル酸エステル)。
Cromton Vinyl AdditivesのIRGASTAB(商標)BZ 561(液体バリウム/亜鉛安定剤)。
【実施例1】
【0034】
エステル調整SAFOL(商標)23フタル酸エステルの調整
4.4molのC12/13FTアルコール(SAFOL(商標)23)と2.0molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステル、および150mlのトルエンを水分離還流とともに6時間過熱した。この温度は180℃〜210℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬は蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは、0.3mbarの分子エバポレーターで分離され、外装温度は145℃であった。
【0035】
比較実施例1 NEODOL(商標)23フタル酸エステルの調整
3.45molのC12/13変性オキソアルコール(NEODOL(商標)23)と1.57molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステル、および150mlのキシレンを水分離還流と共に5時間過熱した。この温度は160℃〜180℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬が蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは、0.13mbarの分子エバポレーターで分離され、外装温度は135℃であった。
【0036】
比較実施例2 LIAL(商標)(123)フタル酸エステルの調整
8.8molのC12/13オキソアルコール(LIAL(商標)123)と4.0molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステル、および150mlのシクロヘキサンを水分離還流とともに5.5時間過熱した。この温度は160℃〜190℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬は蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは0.06mbarの分子エバポレーターで分離され、外装温度は140℃であった。
【実施例2】
【0037】
SAFOL(商標)23/LINCOL(商標)812 Hフタル酸エステルの調整
12/13FTアルコール(SAFOL(商標)23)とC〜C14直鎖アルコール(LINCOL(商標)812 H)の70:30混合物9.9mol、および4.5molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタンエステル、および150mlのシクロヘキサンを水分離還流とともに2.5時間過熱した。この温度は160℃〜190℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬が蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは0.3mbarの分子エバポレーターで分離され、外装温度は115℃であった。
【0038】
比較実施例3
LIAL(商標)123/LINCOL(商標)812 Hフタル酸エステルの調整
12/13オキソアルコール(LIAL(商標)123)とC〜C14直鎖アルコール(LINCOL(商標)812 H)の70:30混合物8.8mol、および4.0molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステル、および150mlのシクロヘキサンを水分離還流と共に5.5時間過熱した。この温度は160℃〜220℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬が蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは0.04mbar分子エバポレーターで分離され、外装温度は140℃であった。
【実施例3】
【0039】
SAFOL(商標)23/LINCOL(商標)810フタル酸エステルの調整
12/13FTアルコール(SAFOL(商標)23)とC〜C10直鎖アルコール(LINCOL(商標)810)の50:50混合物8.8mol、および4.0molのフタル酸無水物、0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステル、および150mlのキシレンを水分離還流と共に7時間過熱した。この温度は170℃〜190℃まで上昇させた。水分離が終結する頃には、ほとんどの同伴試薬が蒸留除去された。冷却後、前記過剰アルコールは0.3mbar分子エバポレーターで分離され、外装温度は125℃であった。
【実施例4】
【0040】
SAFOL23酸の合成
1950g(10mol)のSAFOL23アルコールを730g(13mol)の水酸化カリウムと共に335℃まで加熱した。水素放出は4時間で終結した。得られたカリウム石鹸は周囲温度まで冷却し、過剰の硫酸を加えることにより中和した。相分離の後、水相が中性反応となるまで有機層を水で数回洗浄した。
【実施例5】
【0041】
ペンタエリトリトールテトラキス(SAFOL23酸)エステルの調整
実施例1の反応生成物(SAFOL23酸)を1500g(7.2mol)、220g(1.6mol)のペンタエリトリトール、200mlのキシレン、および2.6g(0.15重量%のテトライソプロピルチタン酸エステルをフラスコ中、180℃まで加熱した。この温度において、反応水の分離が始まった。この加熱は継続して240℃まで上昇させた。前記反応は9時間後終結させた。ヒドロキシル価はGC分析で測定し、1gあたり4.3mg KOHとして計算した。過剰の酸と残渣の溶媒は140℃、0.05mbarの短工程蒸留によって蒸留除去された。ペンタエリトリトールテトラキス(SAFOL23酸)エステルは蒸留残渣として分離され,1gあたり0.15mg KOHの酸価で55ヘイゼン色であった。
【実施例6】
【0042】
PVC潤滑剤としてのペンタエリトリトールテトラキス(SAFOL23酸)エステルの使用
PVC試験シートは以下の製剤に基づいて調整した。
【0043】
100 phr PVC(K70)
50 phr 可塑剤LINPLAST 610 P
(ジ(ヘキシル、オクチル、デシル)フタル酸エステル)
1.5 phr 液体バリウム/亜鉛安定剤(IRGASTAB BZ 561)
0.3 phr 潤滑剤(実施例2のエステル)
前記成分は一緒に混合し、2軸ブラベンダープラスチコーダーに変換して170℃で10分間練った。トルク曲線は、前記ペンタエリトリトールテトラキス(SAFOL23酸)エステルが内部PVC潤滑剤として働く強い兆候を示した。ゲル化前PVC化合物(ドール(doll)と呼ぶ)は前記軸から除去しやすかった。変色は観察されなかった。その後前記化合物を2ロールカレンダー上でおよそ3分間カレンダー法を実施し、PVC箔を0.5mmの厚さにした。再び、変色はなく、揮発または発煙は観られなかった。
【0044】
方法
DINおよびISO標準および試験下のエステルとプラスチックシートを試験するために用いた社内(in−house)試験方法は表4に従った。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
プラスチックシートの調整
(社内試験方法62−HF−1、DIN7749から類推、シート2)
前記に記載した製剤1または製剤2の構成成分は磁気製の瓶の中に入れ、乾燥パウダー(乾燥混合物)が得られるまでお互い混合した。前記パウダーはニーダ−(Brabender Plasti Corder)の中に入れ、170℃、30r.p.mで10分間練った。調整した前記化合物は、170℃でおよそ3分間、ロール上で通気した後、取り除いた。得られたシートはその後、水圧成形プレス(Polystat 200S)を用いた3工程、すなわち170℃/70barで1分間、170℃/200barで3分間、および200barで170℃から100℃に冷却、という3工程で押し出した。その後、33%のPVC柔軟性シートは0.5mmの厚さに押し出すと、前記ケーブルシートは2mmの厚さであった。
【0049】
融点測定
(社内試験方法61−EE−9)
およそ50mlの試験化合物を流動点ビーカーの中に置いた。流動点温度計をサンプルの中におよそ3cmの深さで突き刺した。その後前記ビーカーは低温マットの冷却槽の中に置いた。前記冷却剤の温度は、サンプルが固体になるまで徐々に低くした。その後前記冷却槽の温度はさらに少なくとも4℃まで下げ、続いて4時間毎におよそ2度温度をゆっくり上げた。融解範囲は融解開始と融解完結の間の温度として規定した。
【0050】
溶液温度測定
(社内試験方法61−EE−1)
50mlのビーカー中の2.5mgのS−PVC K70を、47.5mgの可塑剤中で懸濁した。この温度はゆっくり上昇させた(1分あたり約1℃)。前記溶液温度は、S−PVCが可塑剤に溶解し、アリアル(Arial)12形式の文字が溶液を通して明瞭に見える温度として規定した。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル混合物であって、
1〜4個のカルボキシル基と12〜60個の炭素原子を含むエステルを実質的に有するものであり、
前記エステルは、選択的に、全体もしくは部分的にハロゲン化されている1もしくはそれ以上のカルボン酸および/または1もしくはそれ以上のリン酸と、1もしくはそれ以上のアルコールの反応によって得られ、
前記カルボン酸、前記アルコール、若しくはその両方は混合体として存在し、前記カルボン酸混合体および/または前記アルコール混合体は、化学式RCHOHに従ったアルコールおよび/または化学式RCOOHに従ったカルボン酸を含み、前記混合体は、
(a)20重量%〜80重量%のアルコールおよび/または炭素原子4〜20を含んだ脂肪族直鎖の炭化水素ラジカルRを用いた酸と、
(b)10重量%〜80重量%のアルコールおよび/または脂肪族であり炭素原子4〜20を含む炭化水素ラジカルRを用いた酸であり、前記炭素原子は、第三級炭素原子が最大3個あり、さらにすべての炭素原子がアルコールまたは酸の−OH基の2位または3位に位置していない酸と、選択的にさらに
(c)最大10重量%まで炭素原子を5〜21個有する他のアルコールまたは酸と、であって、
前記アルコール、前記酸、若しくはその両方は、(a)、(b)、および(c)に従い、100重量%になるようにお互い補っているものである、エステル混合物。
【請求項2】
請求項1の前記エステル混合物において、70%以上、好ましくは80%以上の前記混合物のアルキル分岐は、メチル基および/またはエチル基であり、このましくはメチル基である。
【請求項3】
上記請求項のいずれか1つのエステル混合体において、80%以上、このましくは95%以上の前記混合体のラジカルRは、−CH−OH基または−COOH基に連結した−CH−CH−基を有するものである。
【請求項4】
上記請求項のいずれか1つのエステル混合体において、各ラジカルRは平均して0.1〜2個の三級炭素原子を含み、好ましくは0.2〜0.7個である。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つのエステル混合体において、前記アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサンジオール、グリセロール、トリメチルオールプロパンまたはアルジトール、ジグリセリド、トリグリセリド、ポリグリセリド、ペンタエルトリトール、ジペンタエリトリトール、およびC〜C22のモノ−またはジ−オール、から成る群から選択される1つのアルコールもしくは複数のアルコールである。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つのエステル混合体において、前記モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリト酸、クエン酸、ピロメリト酸、およびC〜C22のモノ−またはジカルボン酸から選択される1つのカルボン酸または複数のカルボン酸である。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つのエステル混合体において、モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、および/またはテレフタル酸、またはそれらのテトラクロロ置換誘導体である。
【請求項8】
上記請求項のいずれか1つのエステルを含む高分子混合物、および500g/molより大きい分子量を有する高分子。
【請求項9】
請求項1〜9のいずれか1つにおいて、1〜150phr、好ましくは20〜100phr、最も好ましくは30〜60phrである前記エステルを含む高分子混合物。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか1つの高分子混合物において、前記高分子は、好ましくはDIN 53 726に従って60〜100のk値を有する高分子PVCとして含むPVCまたは前記可塑剤である。
【請求項11】
500g/mol、特に20,000より大きい分子量を有する高分子のための可塑剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、増量剤としての請求項1〜9のいずれか1つのエステル混合物の使用方法であって、前記高分子は好ましくはPVCであるかPVCを含む、使用。

【公表番号】特表2006−517247(P2006−517247A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501777(P2006−501777)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001147
【国際公開番号】WO2004/069911
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505027926)サソル ジャーマニー ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】