説明

分注機

【課題】ノズルの吸排異常の発生を防止すると共に、発生した場合にはそれを確実に検出でき、保守・点検が容易な分注機及び分注装置を提供する。
【解決手段】先端部で液状試料を吸排するノズル16と、ベース部材26に保持され、ベース端部26Aから軸方向に着脱自在なシリンジ20と、ノズル16の後端部を支持してベース端部26Aに着脱自在に固定され、該ノズル16とシリンジ20とを非同一軸上に連通させる管路30Aが形成されたブロック部材30とを備え、ベース部材26に、シリンジ20に近接するベース端部26Aに開口する第1の圧力検出用孔22が形成され、ブロック部材30に、第1の圧力検出用孔22と管路30Aとを連通する第2の圧力検出用孔24が形成されていると共に、ベース端部26A近傍のベース部材26に、第1の圧力検出用孔22を介してノズル16内の圧力を検出する圧力センサ28が付設された分注機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬、検体等の液状試料の分注に用いられる分注機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や尿等の分析において、試薬、検体等の液状試料を吸排するためのノズルと、該ノズルに連結されたシリンジと、該シリンジ内に摺動自在に嵌挿されるピストンと、を有する分注機を備えた分注装置が用いられている。この分注装置は通常複数の分注機を備えている。
【0003】
ノズルは先端部がチップと称される交換可能な細い筒状の部材で構成されており、チップ内に液状試料を吸引してマイクロプレートの凹部や試験管等に排出・分注し、種類が異なる液状試料を吸引する場合はチップを交換することで、ノズル内で試薬や検体が混ざり合うことを防止している。
【0004】
正確な分析を行なうためには、チップ内に限定して液状試料を吸引するように適量の液状試料を吸引し、マイクロプレートの凹部や試験管等に所望量の液状試料を正確に排出・分注する必要がある。
【0005】
しかしながら、チップは細い筒状の部材であるため、液状試料に含まれる固形成分等で閉塞されることがあり、これにより液状試料の吸引量、排出量にばらつきが生じたり、吸引、排出(吸排)自体が困難となることがある。又、補給ミス等で液状試料が欠乏することがあり、これにより吸引量、排出量がばらつくこともある。
【0006】
これに対し、ノズル内の圧力を検出するための圧力センサを備え、圧力信号に基づいてチップの閉塞、液状試料の欠乏等の吸排異常を検出するようにした分注機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平6−331632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示されている分注機には、圧力センサとノズルとの間に、剛性が低い連通管やシリンジが介在されているため、ノズル内の圧力の検出精度が低く、吸排異常等を確実に検出することが困難であるという問題があった。
【0009】
又、ノズルとシリンジとが軸方向を一致させて同一軸上に連結されていたため、ピストンシールの交換等のためにシリンジを着脱する際に、ビストンとそのガイド部材やシール部材との摩擦により発生する摩耗粉等の異物がノズル内に落下し、吸排異常の原因となるという問題もあった。
【0010】
又、分注機は、ピストン及びシリンジの摺動部をシールするピストンシールの交換等のため、シリンジを定期的に着脱して保守・点検を行なう必要があるが、シリンジに連通管が連結されている場合、連通管も着脱しなければならず、保守・点検の作業効率が低いという問題があった。
【0011】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたもので、異物混入によるノズルの吸排異常が発生することが防止できる上に、ノズルの吸排異常が発生した場合は、それを確実に検出でき、保守・点検が容易な分注機及び分注装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、分注機において、先端部で液状試料を吸排するノズルと、ベース部材に保持され、ベース端部から軸方向に着脱自在なシリンジと、前記ノズルの後端部を支持して前記ベース端部に着脱自在に固定され、該ノズルと前記シリンジとを非同一軸上に連通させる管路が形成されているブロック部材とを備え、前記ベース部材に、前記シリンジに近接するベース端部に開口する第1の圧力検出用孔が形成され、前記ブロック部材に、前記第1の圧力検出用孔と前記管路とを連通する第2の圧力検出用孔が形成されていると共に、前記ベース端部近傍のベース部材に、前記第1の圧力検出用孔を介して前記ノズル内の圧力を検出する圧力センサが付設されているようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0013】
本発明においては、又、前記シリンジとその内側を摺動するピストンとの間をシールするためのピストンシールが、前記シリンジ側に取付けられ、前記シリンジと共に着脱自在とするようにしてもよい。
【0014】
又、前記ブロック部材に形成されている管路に、前記シリンジの軸方向に陥没した凹部が形成されているようにしてもよい。
【0015】
又、前記第1の圧力検出用孔と前記第2の圧力検出用孔との連結を気密にするためのシール部材が、前記ベース端部と前記ブロック部材の間に挟持されているようにしてもよい。
【0016】
又、前記圧力センサの出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器が備えられているようにしてもよい。
【0017】
又、前記圧力センサの出力信号を増幅するためのアンプが備えられているようにしてもよい。
【0018】
又、前記ピストンを駆動するためのドライバが備えられているようにしてもよい。
【0019】
又、前記圧力センサの出力信号に基づいて前記ノズルの吸排異常を検出するための異常検出手段が備えられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ノズル内の圧力が、ノズルに近接配置された圧力センサに、連通管を介さずに伝達されるようにしたので、圧力の伝達遅れを著しく小さくすることができ、ノズル内の小さな圧力変化を高精度で検出できる。
【0021】
又、圧力センサとシリンジとの間にベース部材が介在しており、圧力センサをベース部材に取付けた状態でベース部材にシリンジを着脱できるので、圧力センサからリード線等を取り外す作業が不要となり、ピストンシールの点検、交換が容易となる。
【0022】
又、シリンジとノズルとを非同一軸上に配置するようにしたので、ピストンとそのガイド部材やシール部材との摩擦で発生する摩耗粉が、直接ノズルの管内に落下することを防ぐことが可能となり、液体や容器への異物の混入等が防止できる。
【0023】
又、前記第1の圧力検出用孔と第2の圧力検出用孔との継ぎ目を気密にするためのシール部材を、前記ブロック部材と前記ベース端部との間に挟持されるように配置する場合には、シリンジの着脱時に該ブロック部材をねじ等で締め付けるだけで両孔間の気密を達成できるため、シール部材が摺動部に設けられている場合に比べ、該シール部材を圧縮する際の抵抗を極めて小さくすることができ、作業性を向上することができる。
【0024】
又、圧力センサの近傍に圧力センサのアナログ信号を増幅するアンプを備えたので、ノイズの影響を受けることを防止でき、精度良く圧力を検出できる。更に、A/D変換器をベース部材の上方部に配して、アンプからのアナログ信号をデジタル信号に変換して制御手段に送出するようにしたので、外部からのノイズや、配線の容量(抵抗、キャパシタ)に左右されることなく、圧力信号を制御手段に伝達できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態に係る分注装置10は、複数の分注機12を備えた構成を有している。なお、図中の符号13は、検体、試薬等の液状試料を収容するためのマイクロプレートである。分注機12以外の構成については、従来の分注装置と同様であるので、その説明は適宜省略する。
【0027】
この分注機12は、図2及び図3に示されるように、マイクロプレート13に貯留されている液状試料14を先端部で吸排するためのノズル16と、ベース部材26に保持され、ベース端部26Aから軸方向に着脱自在なシリンジ20と、前記ノズル16の後端部を支持した状態で、前記ベース端部26Aにねじ31により着脱自在に固定され、該ノズル16と前記シリンジ20とを非同一軸上に連通させる管路30Aが形成されているブロック部材30とを備えている。
【0028】
そして、前記ベース部材26には、前記シリンジ20に近接するベース端部26Aに開口する第1の圧力検出用孔22が形成され、前記ブロック部材30には、前記第1の圧力検出用孔22と前記管路30Aとを連通する第2の圧力検出用孔24が形成されていると共に、前記ベース端部26A近傍のベース部材26の外側には、前記第1の圧力検出用孔22を介して前記ノズル16内の圧力を検出する圧力センサ28が付設されている。
【0029】
前記ノズル16は、図中上下方向に配置された筒状体で、ピペットノズル16Aと、ピペットノズル16Aの下端に着脱自在に装着されたチップ16Bと、を有して構成され、チップ16Bが下方に突出するようにブロック部材30に後端部が支持されている。又、ブロック部材30は、前記ねじ31でベース部材26のベース端部26Aに固定されることにより、ベース部材26の内部に保持されているシリンジ20の下方への動きを規制している。
【0030】
又、前記第1の圧力検出用孔22と前記第2の圧力検出用孔24との連結を気密にするためのOーリング(シール部材)23が、前記ベース端部26Aと前記ブロック部材30の間に挟持されている。
【0031】
前記ピストン18は、上下方向に配置された棒状体で、その上端には送りねじ32が同軸的に取付けられている。又、送りねじ32の下端近傍にはセンサードグ34がセットスクリュー等で固定され、該センサードグ34に係合するドグガイド36により、ピストン18及び送りねじ32は、上下方向に案内されると共に軸廻りの回転が規制されている。又、ドグガイド36の下方近傍には、ピストン18の下限位置を検出するための下限位置センサ37が設置されている。
【0032】
送りねじ32には、内側にめねじが形成された歯車38が螺合している。歯車38には歯車40が噛合しており、該歯車40は、ステッピングモータ42の出力軸に取付けられている。この歯車38は軸受44により回転自在に支持されると共に、スラスト方向の動きが規制されている。又、ステッピングモータ42は、ベース部材26に直接接触しないようにブラケット等を介してベース部材26に保持されている。
【0033】
又、軸方向を上下にして非同軸上に配置されているシリンジ20とノズル16とを連通すると共に、第2の圧力検出用孔24にも連通している、前記ブロック部材30に形成された管路30Aには、該シリンジ20の軸方向に陥没した凹部30Bが形成されている。
【0034】
又、図4に示されるように、シリンジ20の上端部48の内側には、周方向の溝48Aが形成され、該溝48Aにはピストン18及びシリンジ20の摺動部をシールするためのピストンシール50が取付けられている。なお、上端部48は、シリンジ20の本体に嵌合・接着されている。
【0035】
前記ベース部材26には、シリンジ20が収容可能なシリンジ保持孔26Bが形成されている。この保持孔26Bに収容され、保持されているシリンジ20は、下端部20Aが前記ブロック部材30に嵌入されて支持されていると共に、該下端部20Aの周囲に装着されたO−リング21により、前記管路30Aとの間の気密が保持されている。
【0036】
又、この保持孔26Bに近接して形成されている第1の圧力検出用穴22は、一方の開口部が圧力センサ28の取付用に水平方向に開口され、他端の開口部がブロック部材30が当接された状態で第2の圧力検出用孔24と合致するように下向きに開口されている。従って、第1の圧力検出用孔22と第2の圧力検出用孔24とは、ブロック部材30がベース部材26に当接された状態で連通され、且つ両者間はシール部材23により気密に保持されている。なお、ベース部材26とブロック部材30は、いずれも金属やプラスチック等の単一の部材からなる構成としても良く、複数の部材を組合わせて構成してもよい。
【0037】
前記圧力センサ28は、一部が第1の圧力検出用孔22内に入り込むように、ベース部材26の外側に取付けられている。この圧力センサ28は、図示省略するが、大気圧を検出するための第1のセンサと、一部が第1の圧力検出用孔22内に入り込み、第1と第2の圧力検出用孔22、24を介してノズル16内及びシリンジ20内の圧力を検出するための第2のセンサとが、基板の表裏にそれぞれ取付けられた一体構成になっている。
【0038】
又、圧力センサ28の近傍には、該圧力センサ28の出力信号を増幅するためのアンプ52が配置され、該圧力センサ28に接続されている。又、アンプ52には、増幅した圧力センサ28のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器54が接続されている。ベース部材26の上端部側に設置されている制御手段56に前記A/D変換器54が搭載されており(図2、図5参照)、このA/D変換器54は差動増幅回路を備えており、ステッピングモータ42に起因するコモンモードノイズを相殺するように構成されている。
【0039】
図5に示されるように、制御手段56は、具体的にはマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等の、所定のコンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピュータ(CPU)を含む制御回路である。この制御手段56には、圧力センサ28の出力信号に基づいてノズル16の吸排異常を検出するための、コンピュータプログラムからなる異常検出手段58が備えられている。
【0040】
又、制御手段56は、ステッピングモータ・ドライバ55と外部とのインターフェース(I/F)を備え、該I/Fから入力される指定分注量に基づいてCPUからステッピングモータ・ドライバ55に駆動信号を送ることにより、該ステッピングモータ・ドライバ55にてステッピングモータ42を駆動する。なお、異常検出手段58からの異常信号を受信すると前記駆動信号を停止して、前記I/Fを介して外部へ異常であることを出力する。
【0041】
次に、分注装置10の作用について説明する。まず、ノズル16の吸引異常を検出する作用について説明する。
【0042】
液状試料14を吸引する時は、まず、ステッピングモータ42を駆動して歯車40及び38を回転させてピストン18を上昇させる。これにより、ノズル16内に負圧が供給されることになるが、この状態で、分注機12を下降させてノズル16のチップ16Bを液状試料14に浸入させると、チップ16Bに液状試料14が吸引される。なお、上方から内部の空気が吸引されつつあるチップ16Bが液状試料14に浸入されると、ノズル16内の圧力が低下するので、この圧力低下を圧力センサ28で検出することで、チップ16Bが液状試料14の液面に到達したことを検出することができる。所望の吸引量に達したところで液状試料14の吸引を停止する。
【0043】
ノズル16内の圧力は、第1の圧力検出用孔22、第2の圧力検出用孔24を介して圧力センサ28に伝達される。圧力センサ28が出力する圧力信号は、アンプ52で増幅され、A/D変換器54でデジタル信号に変換されて制御手段56に伝達される。
【0044】
図6に符号Aを付した曲線で示されるように、液状試料14の吸入開始直後はノズル16内の圧力が急激に低下するが、一定時間が経過するとノズル16内の圧力は安定する。
【0045】
これに対し、液状試料14の吸引中に液状試料14中の固形成分等でノズル16が閉塞されると、図中に符号Bを付した曲線で示されるように、ノズル16内の圧力は急激に低下する。
【0046】
又、液状試料14の吸引中に液状試料14が欠乏すると、図中に符号Cを付した曲線で示されるように、ノズル16内の圧力は一旦急激に低下した後、急激に上昇する。
【0047】
異常検出手段58は、液状試料14の吸入を開始してから一旦安定したノズル16内の圧力が急激に低下したことに基づいて、ノズル16の吸引異常が発生したことを検出することができる。更に、異常検出手段58は、吸引異常のために一旦急激に低下したノズル16内の圧力がその後も低下していることを検出することで、吸引異常がノズル16の閉塞であることを判別でき、一旦急激に低下したノズル16内の圧力がその後上昇に転じたことを検出することで、吸引異常が液状試料14の欠乏であることを判別することができる。
【0048】
圧力センサ28がノズル16の近傍に配置されており、更に、ノズル16に近接して形成された第1の圧力検出用孔22、第2の圧力検出用孔24を介して、該圧力センサ28によりノズル16内の圧力を検出しているので、ノズル16内の圧力を高精度で検出することができる。
【0049】
又、ステッピングモータ42は、ベース部材26に直接接触していないので、ステッピングモータ42を駆動しても、ステッピングモータ42からベース部材26へ伝熱が抑制されることになり、圧力センサ28の温度変化も抑制されるため、この点でもノズル16内の圧力の検出精度が高められている。
【0050】
又、圧力センサ28から出力される圧力信号は圧力センサ28の近傍でアンプ52により増幅されるので、圧力センサ28とアンプ52との間ではノイズが混入しにくく、アンプ52から増幅して出力された後に圧力信号にノイズが混入しても、ノイズの影響は相対的に小さく抑制される。
【0051】
更に、アンプ52で増幅された圧力信号はA/D変換器54でデジタル信号に変換されて制御手段56に伝達される。このA/D変換器54は差動増幅回路を備えているので、ステッピングモータ42に起因するコモンモードノイズが相殺される。即ち、圧力信号は、分注機12内でノイズの影響が充分抑制されつつデジタル信号に変換され、ノイズの影響を受けにくいデジタル信号として制御手段56に伝達される。更に、ステッピングモータ・ドライバ55、制御手段56が近傍に設置されているため、伝送経路でのノイズ混入防止への信頼性が高まる。
【0052】
従って、制御手段56は、ノズル16内の圧力を高精度で検出し、異常検出手段58は、ノズル16の吸引異常を確実に検出することができる。
【0053】
なお、ここまでは液状試料14を吸引する場合について説明したが、ノズル16から液状試料14を排出する場合についても同様にノズル16内の圧力を高精度で検出できるので、異常検出手段58が、ノズル16の排出異常を確実に検出することができる。
【0054】
異常検出手段58が吸排異常を検出した場合、制御手段56は制御信号を出力してステッピングモータ42を停止させて液状試料14の吸排を中止すると共に警告灯、警告音等で吸引異常が発生したことをオペレータに知らせる。
【0055】
オペレータは、状況に応じて、閉塞されたチップ16Bの交換や検体、マイクロプレートの交換等を行い、分析作業等を再開する。このように、チップ16Bを交換しつつ、液状試料14を吸引、排出を繰返すことにより、連続して検体の分析等を行うことができる。
【0056】
使用条件によっては、ピストン18が摺動するガイド部材48又はピストンシール50から摩耗粉が発生し、該摩耗粉がピストンシール50に塗布されたグリスに混入し、場合によってはシリンジ20の摺動管に沿って落下することがある。
【0057】
ところが、本実施形態では、シリンジ20とノズル16とは非同軸上に配置されている上に、前記ブロック部材30には、シリンジ20の軸方向に低い凹部30Bが形成され、ノズル16との間に一段高いバリア30Cが形成された構造になっている管路30Aにより中継して連通されているため、摩耗粉は直接ノズル16内に落下することがない上に、落下したとしても凹部30Bに捕捉されることになるため、ノズル16の管内に侵入することは確実に防止される。
【0058】
次に、シリンジ20の保守・点検時の作用について説明する。
【0059】
まず、ベース部材26にブロック部材30を固定しているねじ31を取外す。この状態でブロック部材30と共にシリンジ20を下方に引き出すことにより、ノズル16、ブロック部材30及びシール部材23と、シリンジ20及びピストンシール50とを、それぞれ一体でベース部材26から取外すことができる。
【0060】
シリンジ20の点検を行い、必要に応じてピストンシール50を交換する。これらの作業が完了したら、上記と逆の要領で、シリンジ20をベース部材26のシリンジ保持孔26Aに嵌入し、ブロック部材30をねじ31で固定することで、シリンジ20及びピストンシール50と、ノズル16、ブロック部材30及びシール部材23とを、それぞれ一体でベース部材26に取付けることができる。又、ブロック部材30をねじ31でベース部材26に固定する際、シール部材23は、ブロック部材30がベース部材26に密着する間際でのみ圧縮されるだけなので、シリンジ20をシリンジ保持孔26Aに容易に嵌入することができるため、極めて作業性が良い。
【0061】
又、圧力センサ28は、シリンジ20を保持するベース部材26の外側に付設されているため、該圧力センサ28をベース部材26に取付けた状態で、シリンジ20及びピストンシール50を着脱できるので保守・点検が容易である。
【0062】
なお、本実施形態において、分注機12は、圧力センサ28の圧力信号を増幅するためのアンプ52を備えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧力信号に含まれるノイズが充分小さい場合には、アンプを省略し、圧力センサ28と、A/D変換器54と、を直接接続してもよい。
【0063】
又、本実施形態において、分注機12は、圧力センサ28の圧力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器54を備えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧力信号に含まれるノイズが充分小さい場合には、分注機から分離した位置にA/D変換器を設置してもよい。
【0064】
又、本実施形態において、前期ブロック部材30の管路30Aには凹部30Bが形成されている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、平坦な形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、試薬、検体等の液状試料の分注に用いられる分注機及び分注装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態にかかる分注装置の概略構造を示す斜視図
【図2】同分注装置の分注機の構造を模式的に示す側断面図
【図3】同分注機のシリンジの下端近傍の構造を拡大して示す側断面図
【図4】同分注機の分注機のピストンシール周辺の構造を拡大して示す側断面図
【図5】同分注機の制御系の概要を示すブロック図
【図6】同分注機による液状試料の吸引時のノズル内の圧力の経時的な変化を模式的に示すグラフ
【符号の説明】
【0067】
10…分注装置
12…分注機
13…マイクロプレート
14…液状試料
16…ノズル
16A…ピペットノズル
16B…チップ
18…ピストン
20…シリンジ
22…第1の圧力検出用孔
23…シール部材
24…第2の圧力検出用孔
26…ベース部材
26A…ベース端部
28…圧力センサ
30…ブロック部材
30A…管路
30B…凹部
42…ステッピングモータ
50…ピストンシール
52…アンプ
54…A/D変換器
56…制御手段
58…異常検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部で液状試料を吸排するノズルと、ベース部材に保持され、ベース端部から軸方向に着脱自在なシリンジと、前記ノズルの後端部を支持して前記ベース端部に着脱自在に固定され、該ノズルと前記シリンジとを非同一軸上に連通させる管路が形成されているブロック部材とを備え、
前記ベース部材に、前記シリンジに近接するベース端部に開口する第1の圧力検出用孔が形成され、
前記ブロック部材に、前記第1の圧力検出用孔と前記管路とを連通する第2の圧力検出用孔が形成されていると共に、
前記ベース端部近傍のベース部材に、前記第1の圧力検出用孔を介して前記ノズル内の圧力を検出する圧力センサが付設されていることを特徴とする分注機。
【請求項2】
請求項1において、
前記シリンジとその内側を摺動するピストンとの間をシールするためのピストンシールが、前記シリンジ側に取付けられ、前記シリンジと共に着脱自在とされていることを特徴とする分注機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ブロック部材に形成されている管路に、前記シリンジの軸方向に陥没した凹部が形成されていることを特徴とする分注機。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、
前記第1の圧力検出用孔と前記第2の圧力検出用孔との連結を気密にするためのシール部材が、前記ベース端部と前記ブロック部材の間に挟持されていることを特徴とする分注機。
【請求項5】
請求項1において、
前記圧力センサの出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器が備えられていることを特徴とする分注機。
【請求項6】
請求項1において、
前記圧力センサの出力信号を増幅するためのアンプが備えられていることを特徴とする分注機。
【請求項7】
請求項1において、
前記ピストンを駆動するためのドライバが備えられていることを特徴とする分注機。
【請求項8】
請求項1において、
前記圧力センサの出力信号に基づいて前記ノズルの吸排異常を検出するための異常検出手段が備えられていることを特徴とする分注機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate