説明

分注装置、自動分析装置、分注装置の制御プログラム、および分注方法

【課題】泡により液面を誤検知した場合であっても分析動作を継続することができるとともに、分注精度を維持することができる分注装置、自動分析装置、分注装置の制御プログラム、および分注方法を提供する。
【解決手段】光学的液面検知手段による液面検知結果と、電気的液面検知手段による液面検知結果とを比較し、この比較結果に基づいてプローブの位置を調整した後、プローブによる吸引、吐出を行う。2つの液面検知結果を比較した結果、電気的液面検知手段で検知した液体の液面の高さの方が光学的液面検知手段で検知した液体の液面の高さより大きい場合には、プローブの先端位置を光学的液面検知手段で検知した液体の液面の位置まで下降させてから液体をプローブによって吸引し、液体を吸引したプローブの先端部を洗浄した後、液体を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分注する分注装置、当該分注装置を備えて検体の成分を分析する自動分析装置、分注装置の制御プログラム、および分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させることによってその検体の成分を分析する自動分析装置では、検体や試薬を細管状のプローブによって吸引する際に検体や試薬の液面を検知する技術が知られている。この液面検知技術では、容器内部に泡が発生していると、その泡にプローブの先端が接触することによって液面と誤検知してしまうことがあった。この誤検知の問題を解決するため、容器内に発生している泡によって液面を誤検知した場合でも、通常の分注動作を継続して行うことができる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、泡による誤吸引が発生した場合、その泡が壊れるなどしてプローブと接触しなくなることを確認した後、プローブを再下降させて潜り込み吸引を行う。
【0003】
また、試薬液面上に泡が発生していても信頼性の高い分析を可能とする技術として、試薬容器内の試薬液面上に泡が存在するか否かを検知する泡検知手段を備えた自動分析装置も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−271328号公報
【特許文献2】特開2005−164506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、コストの低減等の目的のために試薬の濃度が高くなってきつつある。濃度が高い試薬は粘性も大きいため、発生する泡が割れにくい。このため、高濃度の試薬の液面に発生した泡がプローブと接触しても、その泡が割れない可能性が大きい。泡がプローブと接触しても割れない場合、上述した特許文献1に記載の従来技術では、プローブを再下降させることができず、分析動作を続行することができなかった。
【0006】
また、上述した特許文献1、2に記載の従来技術では、プローブを用いた液面検知のみを行っているため、試薬または検体に複数の泡が多重に重なり合って発生しているような場合には、表面に存在している泡を液面と誤検知した後に所定の処理を行っても、再度泡を検知してしまうこととなり、液面を正確に検知して分析動作を続行することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、泡により液面を誤検知した場合であっても分析動作を確実に続行することができる分注装置、自動分析装置、分注装置の制御プログラム、および分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る分注装置は、細管状のプローブを用いて液体容器が収容する液体の分注を行う分注装置であって、前記液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知手段と、前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知手段と、前記光学的液面検知手段および前記電気的液面検知手段が検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算手段と、前記演算手段の演算結果に応じて前記プローブの位置を調整した後、前記プローブに前記液体を吸引させ、この吸引した前記液体を所定の位置で吐出させる制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記プローブの先端部を洗浄するプローブ洗浄手段をさらに備え、前記制御手段は、前記演算手段が前記2つの液面の高さの大小を比較した結果、前記電気的液面検知手段で検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さより大きい場合、前記プローブの先端を前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さまで下降してから前記プローブに前記液体を吸引させ、液体吸引後の前記プローブの先端部を前記プローブ洗浄手段に洗浄させ、洗浄後の前記プローブから前記液体を吐出させる制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記光学的液面検知手段は、前記液体容器の底部から当該液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を開始することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記光学的液面検知手段は、前記液体容器と対向する位置に上下動自在に設けられる光電素子を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記光学的液面検知手段は、前記光電素子を前記液体容器の底部と略同じ高さから上昇させていき、この上昇の途中で、前記光電素子が、前記液体容器の内部が空の状態に対応する色彩または濃淡を検出し始めた位置を前記液体の液面として検知することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記光学的液面検知手段は、前記液体容器と対向する位置に上下動自在に設けられ、発光部と受光部とを含む透過型または反射型の光センサを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記光学的液面検知手段は、前記光センサを前記液体容器の底部と略同じ高さから上昇させていき、この上昇の途中で、前記受光部が、前記液体容器の内部が空の状態に対応する色彩または濃淡を検出し始めた位置を前記液体の液面として検知することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、上記いずれかの発明に係る分注装置を、前記試薬を分注する試薬分注手段として備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、上記いずれかの発明に記載の分注装置を、前記検体を分注する検体分注手段として備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る分注装置の制御プログラムは、液体の吸引および吐出を行うプローブと、液体を収容する液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知手段と、前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知手段と、を備えた分注装置が前記液体を分注するために、コンピュータを、前記光学的液面検知手段および前記電気的液面検知手段が検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算手段、前記演算手段の演算結果に応じて前記プローブの位置を調整した後、前記プローブに前記液体を吸引させ、この吸引した前記液体を所定の位置で吐出させる制御を行う制御手段、として機能させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る分注装置の制御プログラムは、上記発明において、前記制御手段は、前記演算手段が前記2つの液面の高さの大小を比較した結果、前記電気的液面検知手段で検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さより大きい場合、前記プローブの先端を前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さまで下降してから前記プローブに前記液体を吸引させ、液体吸引後の前記プローブの先端部を前記分注装置が備えるプローブ洗浄手段に洗浄させ、洗浄後の前記プローブから前記液体を吐出させる制御を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る分注装置の制御プログラムは、上記発明において、前記制御手段は、前記光学的液面検知手段に前記液体容器の底部から当該液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を開始させる制御を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る分注方法は、細管状のプローブを用いて液体容器が収容する液体の分注を行う分注方法であって、前記液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知ステップと、前記光学的液面検知ステップと並行してまたは前記光学的液面検知ステップの後に、前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知ステップと、前記光学的液面検知ステップおよび前記電気的液面検知ステップで検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算ステップと、前記演算ステップの演算結果に応じて前記プローブの位置を調整する位置調整ステップと、前記位置調整ステップで位置が調整された前記プローブが前記液体を吸引する液体吸引ステップと、前記液体吸引ステップで前記プローブが吸引した前記液体を所定の位置で吐出する液体吐出ステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る分注方法は、上記発明において、前記演算ステップで演算した結果、前記電気的液面検知ステップで検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知ステップで検知した前記液面の高さより大きい場合、前記位置調整ステップは、前記プローブの先端を前記光学的液面検知ステップで検知した前記液面の高さまで下降させ、前記液体吸引ステップと前記液体吐出ステップとの間に、前記液体を吸引した前記プローブの先端部を洗浄するプローブ洗浄ステップをさらに行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る分注方法は、上記発明において、前記光学的液面検知ステップは、前記液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を前記液体容器の底部から開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光学的液面検知手段と電気的液面検知手段の2つの液面検知手段を用いて液面検知を行い、2つの液面検知結果を比較することによってプローブの先端位置を調整した後、プローブによる液体の吸引、吐出を行うため、液体の粘度や泡の発生状況などによらずに液面を適確に検知し、プローブの先端を液面へ確実に到達させることができる。したがって、泡により液面を誤検知した場合であっても分析動作を確実に続行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の要部の構成を示す図である。同図に示す自動分析装置1は、検体(試料)および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定ユニット101と、測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット102とを有し、これら2つのユニットが連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0026】
測定ユニット101は、検体を収容する検体容器201を複数搭載したラック202を搬送するラック搬送部2と、複数の試薬容器301を一定温度で保冷しながら保持する試薬容器ホルダ3と、検体と試薬とを反応させる反応容器401を複数保持する反応容器ホルダ4と、ラック搬送部2が搬送するラック202に搭載された検体容器201が収容する検体を細管状のプローブによって反応容器401へ分注する検体分注部5と、検体分注部5が有するプローブの先端部を洗浄する検体プローブ洗浄部6と、試薬容器ホルダ3に保持される試薬容器301が収容する試薬を細管状のプローブによって反応容器401へ分注する試薬分注部7と、試薬分注部7が有するプローブの先端部を洗浄する試薬プローブ洗浄部8と、反応容器401内の液体を攪拌する攪拌部9と、反応容器401を透過させた光の強度を測定する測光部10と、反応容器401の洗浄を行う反応容器洗浄部11と、分析動作に関する各種演算を行う演算手段としての機能を有する主制御部12と、主制御部12の制御に基づいて測定ユニット101の構成要素の動作を個別に制御する副制御部13と、分注動作に必要な情報を記憶する記憶部14と、を備える。
【0027】
図2は、試薬容器ホルダ3と試薬分注部7の要部の構成を示す図であり、本実施の形態に係る分注装置の要部の構成を示す図である。
【0028】
試薬容器ホルダ3は、円盤状の底面を有し、その底面の円周に沿って複数の試薬容器301を保持するテーブル31と、テーブル31を回転駆動するテーブル駆動部32と、テーブル31を回転自在に軸支する軸部33とを有する。
【0029】
軸部33は、上端が閉じた中空円筒形状をなしている。試薬分注部7の試薬吸引位置に面した軸部33の側面には、軸線方向に沿って孔部331が形成されている。軸部33の中空部には、軸部33の軸線方向に沿って移動可能な一連のベルト部材34が、2つのローラ35a、35bにたわむことなく巻き付けられている。ローラ35a、35bは、回転軸が軸部33に固着されている。ベルト部材34の表面であって孔部331と対向する表面には、当該表面と直交し、孔部331を介して軸部33の外部へ突出する突出部36が設けられている。突出部36の先端には、光電素子37が取り付けられている。突出部36は、ローラ駆動部38の駆動によってローラ35a、35bが回転し、この回転にしたがってベルト部材34が上下動するのに伴って上下方向に移動可能である。
【0030】
光電素子37は、対向する位置に載置されている試薬容器301の表面の色彩または濃淡を検出する機能を有しており、光学的液面検知手段の少なくとも一部をなす。光電素子37は、突出部36とともに試薬容器301の底部と略同じ高さから上昇していく。試薬容器301の表面は、図2に示すように試薬Rgが透けて見えるため、光電素子37が試薬Rgの液面よりも上昇すると、試薬容器301の表面の色彩または濃淡が急激に変化する。そこで、本実施の形態においては、光電素子37が、試薬容器301の内部が空の状態に対応する色彩または濃淡を検出し始めた位置を試薬Rgの液面とする。この意味で、試薬容器301は、光電素子37が試薬Rgの有無による色彩または濃淡の違いを識別可能な程度の透過性を有する材料から構成されることが望ましい。
【0031】
次に、試薬分注部7の構成を説明する。試薬分注部7は、試薬の吸引および吐出を行う金属製のプローブ71と、水平方向に延在し、先端部にプローブ71の上端が取り付けられたアーム72と、アーム72の基端部を支持し、上下動可能な支軸73とを有する。アーム72は支軸73の中心軸Oを回転中心として回動自在である。アーム72の回動および支軸73の上下動は、分注駆動部74によって駆動される。
【0032】
試薬分注部7は、プローブ71の先端が試薬容器301内の試薬Rgの液面に達しているか否かを検知する液面検知部75を有する。液面検知部75は、プローブ71と電気的に接続しており、プローブ71が試薬Rgの液面に達した時のプローブ71とテーブル31との間の静電容量の変化を検出するものであり、電気的液面検知手段の少なくとも一部の機能を有している。
【0033】
プローブ71の上端には、試薬を吸引または吐出する際にプローブ71の先端に圧力を伝達する洗浄液の流路であるチューブ76が接続されている。チューブ76の他端は分注器77に接続されている。
【0034】
副制御部13は、測定ユニット101の構成要素ごとに独立して制御を行うものであり、ラック搬送制御部131、試薬容器ホルダ制御部132、反応容器ホルダ制御部133、検体分注制御部134、試薬分注制御部135、測光制御部136、攪拌制御部137、反応容器洗浄制御部138を有する。このように、副制御部13が測定ユニット101の構成要素ごとに独立した制御を行うことにより、複雑な分析動作を実行することができる。
【0035】
記憶部14は、分注処理に必要な各種情報に加えて、測定ユニット101を制御するための各種プログラムを記憶している。記憶部14が記憶する各種プログラムの中には、本実施の形態に係る分注装置の制御プログラムも含まれる。
【0036】
主制御部12、副制御部13および記憶部14は、CPUやメモリ等を備えた電子計算機(コンピュータ)によって実現される。
【0037】
データ処理ユニット102は、測定ユニット101の主制御部12と通信接続され、主制御部12と連携して自動分析装置1の制御を行うものであり、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。データ処理ユニット102は、測定ユニット101から送られてくる測定データを用いて吸光度の算出や検体の分析データの生成などの検体の分析に関する高度な演算を行う機能を有する。また、データ処理ユニット102は、キーボードやマウス等によって検体の分析項目などの条件の入力を受ける機能、ディスプレイ等によって分析結果を含む情報の表示出力を行う機能、および分析結果、分析パラメータ、検査項目等の各種情報を記憶する機能を有する。
【0038】
図3は、本実施の形態に係る自動分析装置が行う分注方法の処理の概要を示すフローチャートである。図3において、試薬容器ホルダ3は、データ処理ユニット102によって指定される検査項目に応じた試薬を収容する試薬容器301を試薬吸引位置まで移送する(ステップS1)。
【0039】
続いて、光学的液面検知手段による試薬容器301内の液面検知と電気的液面検知手段による試薬容器301内の液面検知とを並行して行う。なお、光学的液面検知手段による試薬容器301内の液面検知を先行して行ってもよい。
【0040】
まず、光学的液面検知手段による液面検知について説明する。試薬容器ホルダ3が停止した後、光電素子37がベルト部材34の移動に伴って上昇する(ステップS2)。なお、光電素子37は、試薬分注処理を開始する前に試薬容器301の底面付近に設定される下限位置に配置される。
【0041】
光電素子37が上昇している最中に試薬Rgの液面に到達すると、光電素子37が試薬容器301の表面の色彩または濃淡が変化する。この色彩または濃淡の変化を通じて光電素子37が液面を検知した場合(ステップS3,Yes)、ローラ駆動部38によるローラ35aの駆動が停止してベルト部材34の移動が停止し、光電素子37が停止する(ステップS4)。
【0042】
一方、光電素子37が試薬Rgの液面を検知しない場合(ステップS3,No)、光電素子37の下限位置からの上昇量が所定の閾値H1以上であるとき(ステップS5,Yes)、光電素子37は上記同様に停止する(ステップS4)。光電素子37が試薬Rgの液面を検知しない場合(ステップS3,No)であって、光電素子37の下限位置からの上昇量が閾値H1未満であるとき(ステップS5,No)、光電素子37は上昇し続ける。閾値H1は、光電素子37が試薬Rgの液面を検知できなかった場合に強制的に停止させる値である。したがって、閾値H1は、試薬容器301を試薬Rgで充填したときの液面の高さ程度の値であればよい。このような閾値H1は記憶部14に記憶されており、主制御部12は記憶部14から閾値H1を読み出して光電素子37の上昇量との比較演算を行う。
【0043】
次に、電気的液面検知手段による液面検知について説明する。試薬容器ホルダ3が静止した後、プローブ71は試薬吸引位置まで移動する(ステップS6)。プローブ71が試薬吸引位置に到達して停止した後、分注駆動部74により支軸73の下降に伴ってプローブ71が下降する(ステップS7)。
【0044】
プローブ71は、その先端(下端)が試薬Rgの液面と接触し、液面検知部75が静電容量の所定値以上の変化を検出するまで下降し続ける。液面検知部75が静電容量の変化に基づいて試薬Rgの液面を検知した場合(ステップS8,Yes)、プローブ71(および支軸73)の下降が停止する(ステップS9)。
【0045】
一方、プローブ71の先端が試薬Rgの液面まで達しておらず、かつ液面検知部75が静電容量の所定値以上の変化を検出しない場合(ステップS8,No)には、プローブ71が試薬吸引位置で下降を開始する前の高さ位置(上限位置)からの下降量に応じて処理が分かれる(ステップS10)。
【0046】
まず、プローブ71の上限位置からの下降量が閾値H2未満であれば(ステップS10,No)、プローブ71は下降し続ける。閾値H2は、プローブ71がその閾値分だけ下降して停止したとき、試薬容器301の高さよりも若干高い位置に位置するような値として設定される。このような閾値H2は、閾値H1と同様、記憶部14に記憶されており、主制御部12は記憶部14から閾値H2を読み出してプローブ71の下降量との比較演算を行う。
【0047】
これに対して、プローブ71の上限位置からの下降量が閾値H2に達したとき(ステップS10,Yes)、試薬容器301内には試薬Rgがほとんど残っていないことになる。そこで、試薬分注制御部135は、プローブ71を上限位置まで上昇させた後、プローブ71を停止する制御を行う(ステップS11)。この後、データ処理ユニット102がエラー情報を出力する(ステップS12)。
【0048】
以上説明した並行処理の結果、光電素子37の上昇量およびプローブ71の下降量がともに正常な範囲である場合、主制御部12は光電素子37の上昇量とプローブ71の下降量とが揃うための待ち処理を行う(ステップS13)。
【0049】
光電素子37の上昇量とプローブ71の下降量とが揃った後、主制御部12は、光電素子37の上昇量に基づいて光電素子37の高さh1を算出するとともに、プローブ71の下降量に基づいてプローブ71の先端の高さh2を算出し、算出結果である2つの高さh1とh2の大小を比較する(ステップS14)。光電素子37の高さh1がプローブ71の先端の高さh2以上である場合(ステップS14,h1≧h2)、プローブ71は移動することなく(位置調整量ゼロ)、所定量の試薬を吸引する(ステップS15)。図4は、h1=h2である場合に光電素子37およびプローブ71が停止した状態を示す図である。図4においては、光電素子37および液面検知部75がともに試薬Rgの液面を正確に検知した場合を示している。
【0050】
この後、試薬Rgを吸引したプローブ71は、反応容器ホルダ4上の試薬吐出位置まで移動する。プローブ71を移送する際には、まずプローブ71を上限位置まで上昇させるが、プローブ71の先端が試薬Rgの液面に潜り込んでいた場合には、プローブ71を上昇させる際に液面検知部75が再び液面検知をしてしまう可能性がある。このような場合には、プローブ下降時およびプローブ上昇時のうち少なくともいずれかにおける液面検知結果が誤っており、液面検知部75に何らかの故障が発生している可能性が高い。そこで、液体吸引後のプローブ71が上昇している最中に液面を検知した場合(ステップS16,Yes)、プローブ71は、試薬分注制御部135の制御のもと、上限位置まで上昇した後、停止する(ステップS17)。この後、データ処理ユニット102がエラー情報を出力(ステップS18)し、試薬分注処理が終了する。
【0051】
ステップS16において、試薬Rgを吸引した後のプローブ71を上昇させている最中に液面検知部75が試薬Rgの液面を検知しなかった場合(ステップS16,No)、プローブ71は反応容器ホルダ4上の所定の試薬吐出位置まで移動した後、試薬Rgを反応容器401へ吐出する(ステップS19)。
【0052】
次に、ステップS14で主制御部12が演算を行った結果、プローブ71の先端の高さh2が光電素子37の高さh1よりも大きかった場合(ステップS14,h1<h2)を説明する。図5は、h1<h2である場合に光電素子37およびプローブ71が静止した状態を示す図であり、光電素子37が試薬Rgの液面を正確に検知した一方、プローブ71が試薬容器301内の泡Bbと接触して静止した状態を示す図である。図5に示す場合には、プローブ71の先端を光電素子37が検知した液面までさらに下降させることにより、プローブ71の先端を真の液面へ近づけるための位置調整を行う必要がある。そこで、主制御部12は、プローブ71の位置調整用に2つの高さh1、h2の差Δh=h2−h1を計算する(ステップS20)。ここで、主制御部12が具体的に計算するのは、Δhに相当する補正パルス数である。
【0053】
続いて、試薬分注部7では、試薬分注制御部135の制御のもと、プローブ71がΔhだけ下降する(ステップS21)。
【0054】
プローブ71が下降した後のプローブ71の先端の高さh2'が下限値hmin以下である場合(ステップS22,h2'≦hmin)、プローブ71は上限位置まで上昇する(ステップS11)。下限値hminは、試薬容器301内に試薬Rgがほとんど残っていない状態に相当する値である。この後、データ処理ユニット102がエラー情報を出力し(ステップS12)、試薬分注処理が終了する。
【0055】
一方、プローブ71が下降した後のプローブ71の先端高さh2'が下限値hminよりも大きい場合(ステップS22,h2'>hmin)、プローブ71が所定量の試薬Rgを吸引する(ステップS23)。この後、試薬Rgを吸引したプローブ71は試薬プローブ洗浄部8へ移送される。試薬プローブ洗浄部8は、移送されてきたプローブ71の先端部表面を洗浄する(ステップS24)。プローブ71が試薬Rgを吐出する前にプローブ71の先端部を洗浄することにより、プローブ71の先端部表面に泡Bbが付着していても、その付着した泡Bbを洗い流すことができる。したがって、プローブ71が泡Bbを試薬Rgの液面と誤検知した場合であっても、分注精度に影響を与えることなく試薬の分注処理を最後まで行うことができる。また、試薬吐出前にプローブ71の洗浄処理を行うことにより、図6に示すように、光電素子37が試薬Rgの液面よりも下方に位置しており、プローブ71がΔhだけ下降することによって試薬Rgの液面から潜り込んでしまった場合であっても、試薬の分注を最後まで行うとともに、分注精度を維持することができる。
【0056】
ステップS24の後、試薬分注部7は、試薬プローブ洗浄部8で先端部表面が洗浄されたプローブ71を反応容器ホルダ4上の試薬吐出位置まで移送し、試薬Rgを反応容器401へ吐出する(ステップS19)。
【0057】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、光学的液面検知手段と電気的液面検知手段の2つの液面検知手段を用いて液面検知を行い、2つの液面検知結果を比較することによってプローブの先端位置を調整した後、プローブによる液体の吸引、吐出を行うため、液体の粘度や泡の発生状況などによらずに液面を適確に判定することができる。したがって、泡により液面を誤検知した場合であっても分析動作を確実に続行することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、2つの液面検知結果を比較した結果、電気的液面検知手段で検知した液体の液面の高さの方が光学的液面検知手段で検知した液体の液面の高さより大きい場合、プローブの先端位置を光学的液面検知手段で検知した液体の液面の位置まで下降させてから液体をプローブによって吸引し、液体を吸引したプローブの先端部を洗浄した後、液体を吐出するため、プローブの先端部表面に付着した泡が吐出対象の容器に混入してしまうことがない。したがって、泡により液面を誤検知した場合であっても分注精度を維持することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、光学的液面検知手段と電気的液面検知手段とは液面に対して逆方向から液面検知を行うため、一つの方向から液面検知を行う場合よりも確実に液面を特定することが可能となる。
【0060】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を説明してきたが、本発明は上述した一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、光学的液面検知手段は、光電素子37を用いて実現されるものに限られるわけではない。図7は、光学的液面検知手段の別な構成例を示す図である。図7に示す光学的液面検知手段は、投光部501と受光部502とを有する透過型の光センサを用いて実現される。この場合には、投光部501と受光部502とが同期して上下動可能な一対の駆動手段を試薬容器ホルダの軸部とテーブルに設ければよい。
【0061】
図8は、光学的液面検知手段のさらに別な構成例を示す図である。図8に示す光学的液面検知手段は、投光部と受光部とを有する反射型の光センサ503を用いて実現される。光センサ503は、上記一実施の形態における光電素子37と同様にベルト部材34を介して上下動を行う。
【0062】
なお、本発明に係る分注装置は、検体を分注する検体分注機構として適用することも可能である。この場合には、検体分注用のプローブを用いて電気的な液面検知を行う電気的液面検知手段を設ける一方、ラック搬送部の検体吸引位置の近傍の適当な位置に、上述した一実施の形態と同様の構成を有する光学的液面検知手段を設ければよい。
【0063】
また、本発明に係る分注装置は、免疫的な分析を行う自動分析装置や遺伝学的な分析を行う自動分析装置にも適用可能である。
【0064】
なお、本発明に係る分注装置の制御プログラムは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性メモリ、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0065】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の要部の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る分注装置の要部の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置が行う試薬分注処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】光電素子とプローブがともに液面を正確に検知した状態を示す図である。
【図5】プローブが泡を液面と誤検知した状態を示す図である。
【図6】光電素子が液面を誤検知した場合にプローブを下降させた状態を示す図である。
【図7】光学的液面検知手段の別な構成例を示す図である。
【図8】光学的液面検知手段のさらに別な構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 自動分析装置
2 ラック搬送部
3 試薬容器ホルダ
4 反応容器ホルダ
5 検体分注部
6 検体プローブ洗浄部
7 試薬分注部
8 試薬プローブ洗浄部
9 攪拌部
10 測光部
11 反応容器洗浄部
12 主制御部
13 副制御部
14 記憶部
31 テーブル
32 テーブル駆動部
33 軸部
34 ベルト部材
35a、35b ローラ
36 突出部
37 光電素子
38 ローラ駆動部
71 プローブ
72 アーム
73 支軸
74 分注駆動部
75 液面検知部
76 チューブ
77 分注器
101 測定ユニット
102 データ処理ユニット
131 ラック搬送制御部
132 試薬容器ホルダ制御部
133 反応容器ホルダ制御部
134 検体分注制御部
135 試薬分注制御部
136 測光制御部
137 攪拌制御部
138 反応容器洗浄制御部
201 検体容器
202 ラック
301 試薬容器
331 孔部
401 反応容器
501 投光部
502 受光部
503 光センサ
Bb 泡
Rg 試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細管状のプローブを用いて液体容器が収容する液体の分注を行う分注装置であって、
前記液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知手段と、
前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知手段と、
前記光学的液面検知手段および前記電気的液面検知手段が検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算手段と、
前記演算手段の演算結果に応じて前記プローブの位置を調整した後、前記プローブに前記液体を吸引させ、この吸引した前記液体を所定の位置で吐出させる制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記プローブの先端部を洗浄するプローブ洗浄手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記演算手段が前記2つの液面の高さの大小を比較した結果、前記電気的液面検知手段で検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さより大きい場合、前記プローブの先端を前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さまで下降してから前記プローブに前記液体を吸引させ、液体吸引後の前記プローブの先端部を前記プローブ洗浄手段に洗浄させ、洗浄後の前記プローブから前記液体を吐出させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
前記光学的液面検知手段は、
前記液体容器の底部から当該液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を開始することを特徴とする請求項1または2記載の分注装置。
【請求項4】
前記光学的液面検知手段は、
前記液体容器と対向する位置に上下動自在に設けられる光電素子を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の分注装置。
【請求項5】
前記光学的液面検知手段は、
前記光電素子を前記液体容器の底部と略同じ高さから上昇させていき、この上昇の途中で、前記光電素子が、前記液体容器の内部が空の状態に対応する色彩または濃淡を検出し始めた位置を前記液体の液面として検知することを特徴とする請求項4記載の分注装置。
【請求項6】
前記光学的液面検知手段は、
前記液体容器と対向する位置に上下動自在に設けられ、発光部と受光部とを含む透過型または反射型の光センサを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の分注装置。
【請求項7】
前記光学的液面検知手段は、
前記光センサを前記液体容器の底部と略同じ高さから上昇させていき、この上昇の途中で、前記受光部が、前記液体容器の内部が空の状態に対応する色彩または濃淡を検出し始めた位置を前記液体の液面として検知することを特徴とする請求項6記載の分注装置。
【請求項8】
検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
請求項1〜7のいずれか一項記載の分注装置を、前記試薬を分注する試薬分注手段として備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
請求項1〜7のいずれか一項記載の分注装置を、前記検体を分注する検体分注手段として備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
液体の吸引および吐出を行うプローブと、液体を収容する液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知手段と、前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知手段と、を備えた分注装置が前記液体を分注するために、コンピュータを、
前記光学的液面検知手段および前記電気的液面検知手段が検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算手段、
前記演算手段の演算結果に応じて前記プローブの位置を調整した後、前記プローブに前記液体を吸引させ、この吸引した前記液体を所定の位置で吐出させる制御を行う制御手段、
として機能させることを特徴とする分注装置の制御プログラム。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記演算手段が前記2つの液面の高さの大小を比較した結果、前記電気的液面検知手段で検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さより大きい場合、前記プローブの先端を前記光学的液面検知手段で検知した前記液面の高さまで下降してから前記プローブに前記液体を吸引させ、液体吸引後の前記プローブの先端部を前記分注装置が備えるプローブ洗浄手段に洗浄させ、洗浄後の前記プローブから前記液体を吐出させる制御を行うことを特徴とする請求項10記載の分注装置の制御プログラム。
【請求項12】
前記制御手段は、
前記光学的液面検知手段に前記液体容器の底部から当該液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を開始させる制御を行うことを特徴とする請求項10または11記載の分注装置の制御プログラム。
【請求項13】
細管状のプローブを用いて液体容器が収容する液体の分注を行う分注方法であって、
前記液体容器の表面の色彩または濃淡を検出することによって前記液体の液面を検知する光学的液面検知ステップと、
前記光学的液面検知ステップと並行してまたは前記光学的液面検知ステップの後に、前記プローブと前記液体との接触を電気的に検出することによって前記液体の液面を検知する電気的液面検知ステップと、
前記光学的液面検知ステップおよび前記電気的液面検知ステップで検知した前記液体の液面の高さをそれぞれ算出し、この算出した2つの液面の高さの大小を比較する演算ステップと、
前記演算ステップの演算結果に応じて前記プローブの位置を調整する位置調整ステップと、
前記位置調整ステップで位置が調整された前記プローブが前記液体を吸引する液体吸引ステップと、
前記液体吸引ステップで前記プローブが吸引した前記液体を所定の位置で吐出する液体吐出ステップと、
を有することを特徴とする分注方法。
【請求項14】
前記演算ステップで演算した結果、前記電気的液面検知ステップで検知した前記液面の高さが前記光学的液面検知ステップで検知した前記液面の高さより大きい場合、
前記位置調整ステップは、前記プローブの先端を前記光学的液面検知ステップで検知した前記液面の高さまで下降させ、
前記液体吸引ステップと前記液体吐出ステップとの間に、前記液体を吸引した前記プローブの先端部を洗浄するプローブ洗浄ステップをさらに行うこと
を特徴とする請求項13記載の分注方法。
【請求項15】
前記光学的液面検知ステップは、
前記液体容器の表面の色彩または濃淡の検出を前記液体容器の底部から開始することを特徴とする請求項13または14記載の分注方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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