説明

分注装置およびそのコントローラと分注方法

【課題】生化学自動分析装置等のようにシリンジ、フレキシブルチューブ、およびノズルを介して吐出する分注装置において微量吐出を実現する分注装置を提供する。
【解決手段】内部空間を有するシリンジ1とシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストン2と前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路4を有する分岐手段3と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズル5と、前記分流流路の他方はポンプ7と連通しており、その経路上に電磁弁6を配置し、前記ピストンと接続されたシャフト9を有するモータ13によってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置において、前記シャフトの動作方向と、前記ピストンの動作方向と、前記分岐手段内の前記分流流路の流れ方向と、前記チューブ内の流れ方向と、前記ノズルの向きを同一直線上に配置するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、必要量の液体試料を反応容器に精度良く分注する分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例1の分注装置およびこれを備えた分析装置は、シリンジに対してピストンを相対移動させられるポンプ機構部と、ピストンを移動させるため駆動力を付与するためのモータと、モータを制御するための制御手段と、目的量の液体を吸引・吐出させるために必要なモータに対する制御量を、目的量の液体を吐出させるときにシリンジに対するピストンの相対位置に応じて演算するための演算手段と、を備えたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、従来例1の実施の形態の分注装置の一例を示す断面図である。図10に示した分注装置105は、血液などの試料を吸引し、その試料を試験片120,121の試薬パッド120A,121Aに点着するためのものである。この分注装置105は、ノズル150に対してフレキシブルチューブ151を介してポンプユニット152を連結した構成を有している。
【0004】
ポンプユニット152は、ノズル150に対して吸引力または吐出力を作用させるためのものである。このポンプユニット152は、図11、図12(a)および図12(b)に示したように、支持プレート153に対して、ポンプ機構部154およびパルスモータ155を固定した構成を有しており、ポンプ機構部154とパルスモータ155との間がガイドブロック156によって接続されている。
【0005】
支持プレート153は、ポンプ機構部154を固定するための起立壁153Aと、パルスモータ155を固定するための水平壁153Bとを有しており、起立壁153Aにおいて筐体103の側壁139に固定されている。この支持プレート153には、水平壁153Bから起立壁153Aに連続するスリット153Cが設けられている。このスリット153Cは、水平壁153Bに設けられ部分においてパルスモータ155の直動シャフト155Bが挿通されるのを許容し、起立壁153Aに設けられた部分において後述するガイドブロック156の移動を許容する。
【0006】
ポンプ機構部154は、ノズル150の内部に圧力変動を生じさせるためのものであり、シリンジ154Aの内部に、シリンジ154Aに対して相対動可能にピストン154Bが挿入された構成を有している。シリンジ154Aは、支持プレート153の起立壁153Aに固定されている。ピストン154Bは、ガイドブロック156を介して後述するパルスモータ155の直動シャフト155Bに連結されている。ガイドブロック156には、パルスモータ155の直動シャフト155Bの下端部およびピストン154Bの上端部がそれぞれ固定されているとともに、スリット153Cにおける起立壁153Aに設けられた部分に対して係合されている。
【0007】
パルスモータ155は、ピストン153を上下動させるための動力を発生させるためのものであり、モータ駆動部155A、およびこのモータ駆動部155Aの中心に螺号された直動シャフト155Bを有している。このパルスモータ155は、モータ駆動部155Aによって直動シャフト155Bに回転力を作用させることにより、直動シャフト155Bが上下動するように構成されている。そして、直動シャフト155Bは、上述のようにガイドブロック156を介してピストン154Bに連結されている。そのため、直動シャフト155Bを上下動させた場合には、直動シャフト155Bの運動に連動してピストン154Bが上下動する。これにより、ポンプ機構部154は、ノズル150(図10参照)の内部に圧力変動を生じさせることができる。
【0008】
ガイドブロック156は、ポンプ機構部154のピストン154Bとパルスモータ155の直動シャフト155Bとの間を連結するためのものであるとともに、直動シャフト155Bの上下動を規制するためのものである。このガイドブロック156は、係合部156Aおよび突出部156Bを有している。係合部156Aは、支持プレート153のスリット153Cにおける起立壁153Aの部分に係合させるためのものである。すなわち、ガイドブロック156は、係合部156Aがスリット153Cに係合することにより、その移動方向が規制されるように構成されている。突出部156Bは、支持プレート153の起立壁153Aに設けられたセンサ157によって検出させるためのものである。センサ157は、ピストン154Bが必要以上に下方に移動させられることを防止するのに利用されるものである。すなわち、制御部172(図13参照)は、センサ157において突出部156Bが検出されたことが確認されたときに、モータ駆動部155Aに対する駆動パルスの入力を中止し、ピストン154Bの下動を停止させる。
【0009】
図10に示したノズル150は、先端部にチップ158を装着して使用されるものであり、水平方向および垂直方向に移動可能とされている。このノズル150は、ポンプユニット152からの動力により空気を吸引可能な状態と、空気を排出可能な状態とを選択可能とされている。すなわち、ノズル150においては、チップ158を装着した状態において空気を吸引可能な動作を行うことにより試料を吸引してチップ158の内部に試料を保持させることができる一方、空気を排出可能な動作を行うことによりチップ158に保持された試料を吐出することができる。
【0010】
ここで、ノズル150における試料の吸引量および吐出量は、ポンプユニット152から付与される動力の大きさ、すなわち図11、図12(a)および図12(b)から予想されるように、シリンジ154Aに対するピストン154Bの相対的な移動距離に依存する。そして、ピストン154Bの移動距離は、パルスモータ155の直動シャフト155Bの移動距離、すなわちモータ駆動部155Aに入力される駆動パルス数に依存する。モータ駆動部155Aに入力する駆動パルス数は、制御部172によって制御される。
【0011】
演算部171において演算された駆動パルス数に応じて制御部172によってモータ駆動部155Aを駆動すれば、ノズル150から吐出される試料の量を全ての試薬パッド120A,121Aにおいて目的量に近づけることができる。
【0012】
このように、従来例1の分注装置およびこれを備えた分注装置は、演算部において演算された駆動パルス数に応じて制御部によってモータ駆動部を駆動することにより、分注量のばらつきを低減することができる。
【0013】
従来例2のリニアモータ駆動型分注機構は、リニアモータの可動子にシリンダのピストンを接続し、小形化及び簡素化されると共にボールねじのリード誤差を無視できることにより、ピストンをより正確に位置決めできるものである(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
図14は、従来例2の実施の形態のリニアモータ駆動型分注機構を示す断面構成図である。図14において符号201で示されるものは全体形状がほぼ箱形をなすケーシングであり、このケーシング201の端部には、ノズル202を有するシリンダ203が取付けられている。
【0015】
前記シリンダ203に設けられた長手棒状のピストン204は、このシリンダ203から外部へ突出しており、このピストン204はシリンダ203に設けられたガイド220の貫通孔221を貫通して摺動自在に設けられている。前記ケーシング201の内側には、周知の長手形状をなすアクチュエータとしてのリニアモータ222が設けられており、このアクチュエータ222の可動子223は矢印Aの方向に沿って往復移動自在に設けられている。また、このリニアモータ222とピストン204とは互いに平行に配置されている。
【0016】
前記可動子223には、前記ピストン204が接続され、ねじ224によって所定長さとなるように固定されている。従って、前述の構成において、アクチュエータ222を作動させて可動子223を矢印Aの方向に沿って選択的に往復動させることにより、ピストン204はシリンダ203内で往復動し、ノズル202及びシリンダ203内への薬液等の吸入、あるいは、ノズル202及びシリンダ203からの薬液等の外部への注入を行うことができる。
【0017】
このように、従来例2のリニアモータ駆動型分注機構は、ケースに設けられたリニアモータ等のアクチュエータの可動子にシリンダ内のピストンが直接接続されているため、従来のカップリング、ボールねじ、リニアガイド及び移動体等を用いる必要がなく、機構全体の形状を小型化し、構成を簡略化することができ高精度化ができる。また、多数の分注機構を使用する大形の分析装置等を大幅に小型化することができる。
【特許文献1】特開2006−119067公報(第14,15頁、図2,3,4,5)
【特許文献2】特開2002−364526公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来、このような分注機構は、生化学分析装置などに搭載され、血液から摂取した血清からなる検体を分注する作業に用いられてきた。生化学分析装置では、分析用の試薬と血清とを混合させて用いるが、試薬が高価であるために試薬量を減らしたいというニーズがあった。その一方、人から採取する血液も、少量であるほうが人への負担が軽減されるために血液の採取量を減らしたいニーズがあった。さらに、環境面からも使用した分析液は、廃液処理されるために、これが低減できれば、無駄なエネルギーを消費することなく処理できるようになるために分析液を少量化するニーズがあった。
【0019】
しかしながら、分析液を調合するにあたっては、血清量と試薬量にばらつきがあると、分析結果の信頼性が低下する。血清は、人から採取するために粘度などの個体差があり、これらが血清量の分注量の誤差となっており、微量化する際に問題となっていた。また、液体を微量化して分注する場合、液体の質量よりも表面張力や粘度等が、液体の吐出動作に大きく影響を与える。このために、微量な血清を分注する装置がなく、必要とされていたのである。このように微量な液体を扱う装置では、ポンプから液体を吐出するノズルまでの流路設計も重要となり、ポンプ部からノズルまでの距離があまりに長いと、液体が移動する際の抵抗や、チューブの膨張等から正確に圧力が伝達されないために微量な液体の液量精度が悪くなるという問題が生じていた。このために、ポンプからノズルまでの流路を短くするように、ポンプ自体も小型化して装置近傍に配置できることが要求されていた。
【0020】
このような点を鑑みると、従来の技術では、ポンプの駆動にパルスモータを使用し、ノズルは先端部にチップを装着して吐出をしており、分注量の多い場合はある程度精度よく吐出できるが、パルスモータでは高速度、高加減速度の駆動は困難で吐出時の液切れが悪く、かつノズル先端部のチップに空気が多量に含まれるため微量吐出はできない、もしくは微量吐出ができたとしても分注精度が悪くなるという問題が生じていた。
【0021】
また、リニアモータのリニアガイドと可動子を平行に配置しているため、小形化といいながら側方にスペースを要しているために大型化する問題が生じていた。
【0022】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、シャフトの動作方向とピストンの動作方向と分岐手段内の分流流路の流れ方向とチューブ内の流れ方向とノズルの向きを同一直線上に配置し側方の省スペース化を図るとともに、制御手段にて所望の吐出量に応じて速度、加速度を調整することで、微量を含む所望の吐出量において精度よく分注する分注装置を提供することを目的とする。また、生化学自動分析装置等のようにシリンジ、フレキシブルチューブ、およびノズルを介して吐出する分注装置において微量吐出を実現する分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
【0024】
請求項1に記載の発明は、内部空間を有するシリンジ1とシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストン2と前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路4を有する分岐手段3と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズル5と、前記分流流路の他方はポンプ7と連通しており、その経路上に電磁弁6を配置し、前記ピストンと接続されたシャフト9を有するモータ13によってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置において、前記シャフトの動作方向と、前記ピストンの動作方向と、前記分岐手段内の前記分流流路の流れ方向と、前記チューブ内の流れ方向と、前記ノズルの向きを同一直線上に配置したものである。
【0025】
請求項2記載の発明は、前記シリンジ内径と、前記分岐手段内の前記分流流路の内径と、前記チューブ内径と、前記ノズル内径とを同一内径もしくはテーパー面で結合したものである。
【0026】
請求項3記載の発明は、内部空間を有するシリンジ1とシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストン2と前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路4を有する分岐手段3と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズル5と、前記分流流路の他方はポンプ7と連通しており、その経路上に電磁弁6を配置し、前記ピストンと接続されたシャフト9を有するモータ13によってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置コントローラにおいて、前記分注装置コントローラが、上位コントローラからの作業指令を受けるモーションコントローラと、前記モーションコントローラから移動指令を受けつけて前記モータを制御するサーボドライブを備えたものである。
【0027】
請求項4記載の発明は、前記モーションコントローラが、吐出条件が書かれたテーブルを備えたものである。
【0028】
請求項5記載の発明は、前記サーボドライブにフィードフォワード制御が組み込まれ、設定吐出量に応じてフィードフォワード値を調整するものである。
【0029】
請求項6記載の発明は、前記サーボドライブに外乱オブザーバが組み込まれ、前記モータの動作を制御するものである。
【0030】
請求項7記載の発明は、前記サーボドライブが、所望の吐出量に応じて速度、加速度の少なくともどちらか一方を調整するように構成されているものである。
【0031】
請求項8記載の発明は、前記サーボドライブが、吐出対象の液体の粘度に応じて速度、加減速を調整するように構成されているものである。
【0032】
請求項9記載の発明は、内部空間を有するシリンジ1とシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストン2と前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路4を有する分岐手段3と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズル5と、前記分流流路の他方はポンプ7と連通しており、その経路上に電磁弁6を配置し、前記ピストンと接続されたシャフト9を有するモータ13によってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置の吐出方法において、前記液の吐出量が少なくなるにしたがって、速度、加速度の少なくともどちらか一方を高くするように設定するものである。
【0033】
請求項10記載の発明は、前記液の吐出量1μL以下場合、加速度を50m/s、速度を50mm/s以上で前記ピストンを駆動させ、前記ノズルから前記液を吐出させるものである。
【発明の効果】
【0034】
請求項1および請求項2に記載の発明によると、押し出し水の伝送ロスを低減することができ、分注液を精度よく吐出できる。
【0035】
請求項3および請求項4に記載の発明によると、所望の吐出量に応じてモータを制御することで分注時の液切れがよくなり、分注液を精度よく吐出できる。
【0036】
請求項5に記載の発明によると、所望の吐出量におけるモータの速度または加速度を調整することができ、分注液を精度よく吐出できる。
【0037】
請求項6に記載の発明によると、シリンジの個体差、長時間の使用による摺動コンディションの変化によらずモータを所望どおりに動作させることができ、分注液を精度よく吐出できる。
【0038】
請求項7に記載の発明によると、所望の吐出量に応じてモータの速度または加速度の少なくともどちらか一方を調整することで、分注時の液切れがよくなり、分注液を精度よく吐出できる。
【0039】
請求項8に記載の発明によると、吐出対象の液体の粘度に応じてモータの速度または加減速を調整することで分注時の液切れがよくなり、ノズル先端における分注液の粘度による表面張力の違いによらず分注液を精度よく吐出できる。
【0040】
請求項9および請求項10に記載の発明によると、ピストンを高速度、高加減速度で駆動することで従来に比べて、より微量の吐出を実現するとともに液切れがよくなり、分注液を精度よく吐出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0042】
図1に本発明による分注装置の構成図を示す。1はシリンジ、2はピストン、3は分岐手段、4は分岐流路、5はノズル、6は電磁弁、7はポンプ、15はチューブ、16は貯水タンク9はモータシャフト、10A、10Bはリニアブッシュ、8は可動子、11Aは検出器、11Bはリニアスケール、12は固定子、13はモータ、14は分注装置コントローラである。
【0043】
モータ13は、空隙を介して可動子8と固定子12間での磁気的作用により直動移動するリニアモータから構成されている。可動子8にはモータシャフト9が嵌合されて形成され、リニアブッシュ10A、10Bで直動可能に支持されており、モータシャフト9の一端はピストン2が連結され、モータ13で生じる直動動作がモータシャフト9を介してピストン2へ伝えられる。また、他端は、リニアスケール11Bを備えており、可動子8の移動量を検出器11Aで検出し、コントローラ14に位置情報を伝送し、制御されている。
【0044】
また、ピストン2はシリンジ1の内部を図示しないシール材を介して往復移動するように摺動している。シリンジ1の先端には、3方向流路からなる分岐手段3を備えており、電磁弁6を開閉することでシリンジ1からノズル5への分岐流路4と、ポンプ7からの流路を切り替える。各々の流路はシリコン等からなるチューブで連結されている。本実施例で示すようにモータシャフト9の動作方向とピストン2の動作方向と分岐手段内の分岐流路4の方向とチューブ15方向とノズル5の向きを同一直線上になるように配置されている。また、図2に示すようにシリンジの内径をφA、分岐手段の入力部の開口径をφB、チューブの内径をφC、ノズル入力部の開口径をφDとし、すべてを同値にする。もしくは、それぞれの直径が異なる場合には、連結部内径の段差によって流体抵抗が発生しないようにテーパーを付けて接続する。
【0045】
次に、分注装置コントローラの構成について説明する。分注装置コントローラ14は、図3に示すように上位コントローラ17との通信やI/O信号処理、サーボドライブ19への指令を出すモーションコントローラ18と、モーションコントローラ18からの指令を受け、モータ13の制御を行うサーボドライブ19から構成されている。分注装置コントローラ14は上位コントローラ17から作業指令を受け、図4に示すような吐出条件が書かれたテーブル20から分注作業に適した移動量、速度および加速度からなる指令をサーボドライブ19に渡し、サーボドライブ19では位置速度制御によって、モータ13へ電流を通電している。モータ13の移動量は検出器11Aからフィードバックされている。
【0046】
サーボドライブの内部構成を図5および図6に示す。図5は速度フィードフォワードを速度指令に組み込んだ例であり、エンコーダからのフィードバックにあらかじめ設定した速度フィードフォワード値を速度指令に加算する。このような制御系を組むことで指令に対して遅れが少なく目標位置へ移動させることできる。
【0047】
また、図6は、外乱オブザーバをトルク指令に組み込んだ例である。エンコーダからのフィードバックにピストンの摺動抵抗等の外乱をモデル化した値をトルク指令から差分することで、ピストンの動きをモデル化してモータの最適な動作を行わせるものである。
【0048】
次に分注作業について図1を用いて説明する。初期状態においては、シリンジ1の内部、分岐手段4の内部、チューブ15、ノズル5には押し出し水が充填されている。押し出し水をノズル5先端まで充填するためには、電磁弁6を開の状態にし、ポンプ7を駆動させて貯水タンク16よりノズル5へ押し出し水を送液する。ノズル5先端まで押し出し水が充填された後、電磁弁6を閉の状態にする。続いて、モータ13を駆動し、図面上側へ向かってモータシャフト9を動作させる。この動作によりノズル5先端の押し出し水がノズル5内部に吸い込まれ、ノズル5先端に空気層が形成される。この状態で図示しない移動手段を用いてノズル5先端を液体試料に挿入し、さらにモータ13を駆動し、図面上側へ向かってモータシャフト9を動作させると、液体試料がノズル5先端より吸い込まれて、ノズル5内部は図7に示すように液体試料、空気層、押し出し水という並びでノズル5内に配置される。吐出の際は、設定吐出量に応じて分注装置コントローラ14よりモータ13の駆動ストロークが演算され、図面下側へ向かってモータシャフト9を動作させると、ノズル5先端部では押し出し水より空気層を介して液体試料が押し出される。なお、空気層は、液体試料が押し出し水と接触することにより液体試料の濃度が希釈され分析の際の誤差とならないように、分離層として機能している。
【0049】
次に、本実施例における詳細な分注作業の吐出条件について図8を用いて説明する。吐出量の均一性を評価するCV値という指標を1%〜2%以下という安定した状態に保つための必要速度、および必要加速度は吐出量に関係しており、それぞれ図8(a)、図8(b)のように表される。すなわち吐出量を微量化していくと、より高速、より高加速度な動きが必要となるのである。さらに、前述したように血液から採取した血清を分注する場合、個人差によって粘度にばらつきが発生する。バイオ関連の用途においても分注する試薬によって、粘度や表面張力に違いがある。一般に粘度が大きくなると吐出時の流体抵抗が増加し、その結果、吐出量が少なくなるため、吐出量は液体試料の粘度や表面張力などの物性にも依存することになる。粘度の変化に依らず吐出量を一定に保つためには図8(a)、図8(b)の関係に加えて、粘度に応じた速度、加速度の補正が必要となる。以上より、図8(c)、(d)に示すような粘度と速度補正値および加速度補正値の関係をテーブル20にしてモーションコントローラ18内部に記憶し、設定吐出量と液体の粘度に応じてモーションコントローラ18内部で速度補正値および加速度補正値を演算し、サーボドライブに指令を渡してモータを動かすことで、粘度の変動に依らず、所望の吐出量を正確に吐出させることができる。表面張力に関しても同様に吐出量との関係をテーブルにすることで表面張力の違いに依らず、所望の吐出量を正確に吐出させることができる。
【0050】
次に、微量吐出における具体的な吐出条件について説明する。図9(a)と図9(b)はそれぞれ、外乱オブザーバを機能させた時の吐出量1μLと吐出量2.5μLにおけるCV値と速度および加速度の関係を表している。2.5μLの吐出、1μLの吐出ともに、速度および加速度を大きくすることでCV値が小さくなる(吐出量のばらつきが小さくなる)ことがわかった。特に、1μLすなわち微量域の吐出では、速度、加速度が小さくなるとCV値が極端に悪くなることがわかった。実験検証の結果、1μLの設定吐出量において、ばらつきの少ない安定した吐出を得ようとした場合、ノズル径、0.1mm〜0.5mm、チューブ長、300mm〜2000mmという吐出条件では、モータシャフト端の加速度、56m/s、速度、53mm/sの条件で吐出する必要があることが明らかとなった。
【0051】
以上のように、微量から比較的量の多い領域までの分注作業では、液体の特性から求められる粘度や表面張力と動作条件である液体の吸入量等のパラメータを図3に示したコントローラに設定吐出量との関係についてのテーブルを持ち、任意の吐出量に対するモータへの移動指令に反映させ、最適な速度および加速度で、所定の移動量を移動するように制御するものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
なお、ノズル先端における液体試料の粘度による表面張力の違いによらず液体試料を精度良く吐出できるので、吸引・吐出が必要なバイオ関連および医療関連の装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例の分注装置の構成図
【図2】流路の構成を示す図
【図3】コントローラのシステム構成図
【図4】吐出条件を記述したテーブル
【図5】速度フィードフォワードを速度指令に組み込んだ制御ブロック図
【図6】外乱オブザーバをトルク指令に組み込んだ制御ブロック図
【図7】ノズル内の吸引状態を示す図
【図8】(a)速度と吐出量の関係、(b)加速度と吐出量の関係、(c)粘度と速度補正値の関係、(d)粘度と加速度補正値の関係
【図9】(a)速度とCV値の関係、(b)加速度とCV値の関係
【図10】第1従来例の分注装置を示す断面図
【図11】第1従来例のポンプユニットの正面図
【図12】(a)第1従来例のポンプユニットの破断した正面図、(b)第1従来例のポンプユニットのIvb−Ivb線の断面図
【図13】第1従来例の分析装置のブロック図
【図14】第2従来例の断面構成図
【符号の説明】
【0054】
1 シリンジ
2 ピストン
3 分岐手段
4 分岐流路
5 ノズル
6 電磁弁
7 ポンプ
8 可動子
9 モータシャフト
10A、10B リニアブッシュ
11A 検出器
11B リニアスケール
12 固定子
13 モータ
14 分注装置コントローラ
15 チューブ
16 貯水タンク
17 上位コントローラ
18 モーションコントローラ
19 サーボドライブ
20 テーブル
103 筐体
105 分注装置
120,121 試験片
120A,121A 試薬パッド
139 筐体の側壁
150 ノズル
151 フレキシブルチューブ
152 ポンプユニット
153 支持プレート
153A 起立壁
153B 水平壁
153C スリット
154 ポンプ機構部
154A シリンジ
154B ピストン
155 パルスモータ
155A モータ駆動部
155B 直動シャフト
156 ガイドブロック
156A 係合部
156B 突出部
157 センサ
158 チップ
171 演算部
172 制御部
201 ケーシング
202 ノズル
203 シリンダ
204 ピストン
220 ガイド
221 貫通孔
222 アクチュエータ(リニアモータ)
223 可動子
224 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するシリンジとシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストンと前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路を有する分岐手段と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズルと、前記分流流路の他方はポンプと連通しており、その経路上に電磁弁を配置し、前記ピストンと接続されたシャフトを有するモータによってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置において、
前記シャフトの動作方向と、前記ピストンの動作方向と、前記分岐手段内の前記分流流路の流れ方向と、前記チューブ内の流れ方向と、前記ノズルの向きを同一直線上に配置したことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記シリンジ内径と、前記分岐手段内の前記分流流路の内径と、前記チューブ内径と、前記ノズル内径とを同一内径もしくはテーパー面で結合したことを特徴とする請求項1記載の分注装置。
【請求項3】
内部空間を有するシリンジとシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストンと前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路を有する分岐手段と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズルと、前記分流流路の他方はポンプと連通しており、その経路上に電磁弁を配置し、前記ピストンと接続されたシャフトを有するモータによってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置コントローラにおいて、
前記分注装置コントローラは、上位コントローラからの作業指令を受けるモーションコントローラと、前記モーションコントローラから移動指令を受けつけて前記モータを制御するサーボドライブを備えたことを特徴とする分注装置コントローラ。
【請求項4】
前記モーションコントローラは、吐出条件が書かれたテーブルを備えたことを特徴とする請求項3記載の分注装置コントローラ。
【請求項5】
前記サーボドライブには、フィードフォワード制御が組み込まれ、設定吐出量に応じてフィードフォワード値を調整することを特徴とする請求項3記載の分注装置コントローラ。
【請求項6】
前記サーボドライブは、外乱オブザーバが組み込まれ、前記モータの動作を制御することを特徴とする請求項3記載の分注装置。
【請求項7】
前記サーボドライブは、所望の吐出量に応じて速度、加速度の少なくともどちらか一方を調整するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の分注装置コントローラ。
【請求項8】
前記サーボドライブは、吐出対象の液体の粘度に応じて速度、加減速を調整するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の分注装置コントローラ。
【請求項9】
内部空間を有するシリンジとシリンジ内面に接触しながら往復運動するピストンと前記ピストン内部空間と連通し、前記ピストンからの流路を2方向に分流する流路を有する分岐手段と分流流路の一方とチューブを介して連通されたノズルと、前記分流流路の他方はポンプと連通しており、その経路上に電磁弁を配置し、前記ピストンと接続されたシャフトを有するモータによってピストンを往復動作させて、前記ノズル先端より液を吸引、吐出させる分注装置の吐出方法において、
前記液の吐出量が少なくなるにしたがって、速度、加速度の少なくともどちらか一方を高くするように設定することを特徴とする分注装置の吐出方法。
【請求項10】
前記液の吐出量1μL以下場合、加速度を50m/s、速度を50mm/s以上で前記ピストンを駆動させ、前記ノズルから前記液を吐出させることを特徴とする請求項9記載の分注装置の吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−197037(P2008−197037A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34464(P2007−34464)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】