説明

分注装置

【課題】容器内の液体の液面を正確に検出するために装置構成を複雑化せずとも精度の高い分注処理を行なうことができる分注装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる分注装置は、容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶しておき、記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとにノズルの下降速度切替高さを設定して、下降速度切替高さまでノズルを高速下降させ下降速度切替高さからはノズルを低速下降させて容器内の液体にノズルを挿入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内に挿入されることによって前記容器が保持する液体を吸引し、該吸引した液体を分注先の反応容器に吐出するノズルを備えた分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、試薬が分注されたキュベットに検体を加え、キュベット内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、正確な分注処理を行なうために、液体を分注するノズル先端に液面検出器を設け、液面検出器によって吸引対象の液面を検出することによって、ノズルの停止位置を設定している。この液面検出器として、圧力検知方式、静電容量検知方式などがあるが、特に圧力検知方式においては液面検知の応答性が遅いため、ノズルの液中への浸漬量が多くなり、ノズル洗浄に要する洗浄液および処理時間が増加するという問題があった。
【0003】
このため、従来においては、ノズル先端部における液面検出器とは別個に、容器内の液体の液面を検出するために容器の高さ方向に沿って複数の対向電極を設け、ノズルによる吸引動作前に複数の対向電極間の静電容量の容器高さ方向における分布を取得することによって、容器内の液体の正確な液面高さを求める分析装置が提案されていた(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−266768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の分析装置においては、ノズル先端部における液面検出器とは別個に、容器内の液体の液面を検出するための対向電極を複数設ける必要があるため、分析装置の装置構成が複雑化するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、容器内の液体の液面を正確に検出するために装置構成を複雑化せずとも精度の高い分注処理を行なうことができる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる分注装置は、容器内に挿入されることによって前記容器が保持する液体を吸引し、該吸引した液体を分注先の反応容器に吐出するノズルを備えた分注装置において、前記ノズル先端に設けられ、前記容器内の液体の液面高さを検出する液面検出手段と、前記ノズルを昇降させる昇降手段と、前記容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとに前記ノズルの下降速度切替高さを設定する設定手段と、前記昇降手段に対して、前記設定手段が設定した下降速度切替高さまで前記ノズルを高速下降させ、前記下降速度切替高さからは前記ノズルを低速下降させて前記容器内の液体に前記ノズルを挿入させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分注装置は、前記液面検出手段は、吸引対象の液体を保持する容器における前記ノズルによる液体吸引後の液面高さを検出し、前記制御手段は、前記記憶手段によって記憶された情報のうち、吸引対象の液体を保持する容器の液面高さの値を前記液面検出手段によって検出された液体吸引後の液体の液面高さの値で書き替えることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる分注装置は、分注処理に関する情報を出力する出力手段をさらに備え、前記液面検出手段は、前記吸引対象の液体を保持する容器における前記ノズルによる液体吸引後の液面高さを検出し、前記制御手段は、前記液面検出手段によって検出された液体吸引前の液体の液面高さおよび前記ノズルによる吸引量をもとに前記ノズルによる液体吸引後の液体の液面高さを演算し、該演算した液面高さと前記液面検出手段によって検出された液体吸引前の液面高さとの差分値が所定の閾値以上である場合には、前記ノズルによって所定量の液体が吸引されていない旨を示す警告を前記出力手段に出力させることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる分注装置は、前記ノズルは、分析装置における分析対象である前記検体を分注する検体ノズル、または、検体を分析するために使用される試薬を分注する試薬ノズルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる分注装置は、容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶しておき、記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得することによって、装置構成を複雑化せずとも容器内の液体の液面を取得することができ、さらに取得した初期液面高さまたは液面高さをもとにノズルの下降速度切替高さを設定して、下降速度切替高さまでノズルを高速下降させ下降速度切替高さからはノズルを低速下降させて容器内の液体にノズルを挿入させることによって、ノズル先端に設けられた液面検出手段による高精度な液面検出処理を可能にするため、精度の高い分注処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態として、血液や尿などの液体検体または試薬を分注する分注装置を有した分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬をキュベット21にそれぞれ分注し、分注したキュベット21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、キュベット21は、容量が数nL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0014】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注部12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注部16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0015】
検体移送部11は、血液や尿などの液体検体を保持した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注部12によって、反応テーブル13上に配列して搬送されるキュベット21に分注される。また、検体移送部11は、検体容器11aの種別を検出する検体容器種別検出部11cを有する。検体容器種別検出部11cは、検体分注部12による分注対象である検体が保持された検体容器11aの種別を検出し、制御部31に出力する。
【0016】
検体分注部12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。図2に示すように、このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なう検体ノズル12bが取り付けられている。アーム12aが昇降することによって、アーム12a先端の検体ノズル12bも昇降することとなる。検体ノズル12b先端には、検体容器11a内の検体Lsの液面高さを検出する液面検知器12cが設けられている。この液面検知器12cは、液面に接触することによって静電容量またはノズルに加わる圧力値が変化することを利用して、検体ノズル12b先端が検体の液面に接触したか否かを検出し、検出結果を制御部31に出力する。検体分注部12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注部12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中から検体ノズル12bによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、キュベット21に検体を吐出して分注を行なう。
【0017】
反応テーブル13は、キュベット21への検体や試薬の分注、キュベット21の攪拌、測光、洗浄および汚れ検出用測光を行なうためにキュベット21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0018】
試薬庫14は、キュベット21内に分注される試薬が保持された試薬ボトル15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬ボトル15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬ボトル15を試薬分注部16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14は保冷機能を有し、試薬庫14は、内部に試薬ボトル15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬ボトル15内に保持された試薬を冷却し、試薬の蒸発や変性を抑制する。
【0019】
試薬ボトル15の側面部には、試薬ボトル15に保持された試薬に関する試薬情報が記録された記憶媒体が付されている。たとえば、記憶媒体は、試薬ボトル15に保持された試薬が使用される分析項目、試薬の名称、ロット情報、ボトル種別情報などを記憶する。この記憶媒体は、符号化された各種の情報を表示し光学的に読み取られるバーコード記号であるほか、所定周波数の電波を介して記憶する試薬情報の送信および記憶する試薬情報の書替えを行なうRFIDタグであってもよい。
【0020】
試薬庫14の外周部には、この記憶媒体を読み取る試薬ボトル読取部14aが設けられている。試薬ボトル読取部14aは、記憶媒体に対して赤外光または可視光を発し、記憶媒体からの反射光を処理することによって、記憶媒体の情報を読み取る。また、試薬ボトル読取部14aは、記憶媒体を撮像処理し、撮像処理によって得られた画像情報を解読して、記憶媒体の情報を取得してもよい。また、試薬ボトル読取部14aは、所定周波数の電波を介して、記憶媒体の情報の読み取りおよび記憶媒体の情報の書替えを行なってもよい。試薬ボトル読取部14aは、読み取った記憶媒体の情報を、この記憶媒体が付された試薬ボトル15の試薬庫14内のポジションに対応づけて制御部31に出力する。
【0021】
試薬分注部16は、検体分注部12と同様に、図1および図3に示すように、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズル16bが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。アーム16aが昇降することによって、アーム16a先端の試薬ノズル16bも昇降することとなる。そして、図3に示すように、試薬ノズル16b先端には、検体ノズル12bと同様に、試薬ボトル15内の試薬Lrの液面高さを検出する液面検知器16cが設けられている。この液面検知器16cは、液面検知器12cと同様に、静電容量またはノズルに加わる圧力値の変化をもとに、試薬ノズル16b先端が試薬の液面に接触したか否かを検出し、検出結果を制御部31に出力する。試薬分注部16は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬ボトル15内の試薬を試薬ノズル16bによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送されたキュベット21に分注する。
【0022】
攪拌部17は、キュベット21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送されたキュベット21に光源から分析光(340〜800nm)を照射し、キュベット21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0023】
洗浄部19は、洗浄ノズルによって、測光部18による測定が終了したキュベット21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了したキュベット21を洗浄する。
【0024】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部35および出力部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0025】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。
【0026】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。
【0027】
記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。記憶部35は、ノズルによる吸引対象である液体を保持する容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶する。すなわち、記憶部35は、検体容器11aの各種別に応じた初期液面高さである最大液面高さ、および、各検体容器11aに保持される検体の液面高さを記憶する。また、記憶部35は、試薬ボトル15の各種別にそれぞれ応じた試薬の初期液面高さ、および、各試薬ボトル15に収容される試薬の液面高さを記憶する。
【0028】
制御部31は、記憶部35が記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとにノズルの下降速度切替高さを設定する。すなわち、制御部31は、記憶部35が記憶する情報の中から吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとに試薬ノズル16bの下降速度切替高さを設定する。また、制御部31は、記憶部35が記憶する情報の中から吸引対象の検体を保持する検体容器11aの種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の検体を保持する検体容器11aの液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとに検体ノズル12bの下降速度切替高さを設定する。そして、制御部31は、ノズルを昇降させる昇降機構に対して、設定した下降速度切替高さまでノズルを高速下降させ、下降速度切替高さからはノズルを低速下降させて容器内の液体にノズルを挿入させる。すなわち、制御部31は、アーム12a,16aに対して、設定した下降速度切替高さまで検体ノズル12bまたは試薬ノズル16bを高速下降させ、下降速度切替高さからは検体ノズル12bまたは試薬ノズル16bを低速下降させて試薬ボトル15内または検体容器11a内の試薬または検体に検体ノズル12bまたは試薬ノズル16bを挿入させる。
【0029】
出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0030】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数のキュベット21に対して、検体分注部12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注部16が試薬ボトル15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送されるキュベット21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0031】
つぎに、試薬分注部16における試薬分注処理について説明する。図4は、図1に示す試薬分注部16における試薬分注処理の処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、制御部31は、試薬分注部16への試薬分注処理タイミングであると判断した場合、分注対象となる試薬を保持する試薬ボトル15から実際に所定量の試薬を吸引する前に、本吸引処理が、この分注対象の試薬を保持する試薬ボトル15に対する開封後最初の吸引処理であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0032】
制御部31は、本吸引処理がこの試薬ボトル15に対する開封後最初の吸引処理であると判断した場合(ステップS2:Yes)、この試薬ボトル15の種別情報を取得する(ステップS4)。制御部31は、試薬ボトル読取部14aによって読み取られた各試薬ボトル15に付された記憶媒体の情報をもとに、この試薬ボトル15の種別情報を取得する。制御部31は、記憶部35が記憶する情報の中から、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の種別に応じた初期液面高さ(Hr)を取得する(ステップS6)。ここで、試薬ボトル15は、種別が限定されている上に、種別に応じたボトル形状や、試薬の初期充填量も予め判明している場合がほとんどである。したがって、種別に応じたボトル形状および試薬の初期充填量をもとに、試薬ボトル15の種別ごとに試薬ボトル15に保持される試薬の初期液面高さを求めることができる。そこで、分析装置1においては、図5のテーブルT1に例示すように、記憶部35に、種別に応じたボトル形状および試薬の初期充填量をもとに予め求めた試薬の初期液面高さを各試薬ボトル15の種別に対応づけて記憶しておく。制御部31は、記憶部35に記憶された図5のテーブルT1を参照することによって、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の種別に応じた初期液面高さを取得する。
【0033】
一方、制御部31は、本吸引処理がこの試薬ボトル15に対する開封後最初の吸引処理でないと判断した場合(ステップS2:No)、すなわち、本吸引処理の前に既にこの試薬ボトル15に対して吸引処理が行なわれていた場合には、この試薬ボトル15に保持される試薬の液面高さ(Hr)を取得する(ステップS8)。試薬の液面高さ(Hr)は、後述するステップS20およびステップS38の処理によって取得されたものであり、たとえば図6に例示するテーブルT2のように、記憶部35に、試薬庫14のポジション、試薬ボトル種別、試薬の残量に対応づけて記憶される。制御部31は、記憶部35に記憶された図6のテーブルT2を参照することによって、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15に保持される試薬の液面高さを取得する。分析装置1においては、液面高さ(Hr)は、記憶部53に記憶されており、制御部31は自動的に液面高さを取得するため、分析装置1の操作者による液面高さを入力する入力処理を必要としないことから、操作者の作業負担を軽減することができる。
【0034】
次いで、制御部31は、下降速度切替高さを設定する(ステップS9)。制御部31は、下降速度切替高さとして、ステップS6またはステップS8において取得した初期液面高さまたは液面高さである高さ(Hr)に、所定の余裕値Aを加えた高さを設定する。余裕値Aは、たとえば、試薬ノズル16bによる吸引量ばらつきや試薬ノズル16bを昇降させる試薬分注部16における昇降機構の昇降精度などをもとに設定された値である。
【0035】
制御部31は、設定した下降速度切替高さである高さ(Hr+A)まで試薬ノズル16bを高速下降させ(ステップS10)、下降速度切替高さである高さ(Hr+A)からは試薬ノズル16bを低速下降させる低速下降処理を行なう(ステップS12)。
【0036】
すなわち、分析装置1においては、図7に示すように、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の試薬Lrの液面高さ(Hr)よりも所定の余裕値Aを持たせた高さ(Hr+A)までは、試薬ノズル16bは、高速で下降する。そして、試薬ノズル16bは、高さ(Hr+A)からは低速で下降する。この場合、液面検知器16cによる液面検出処理は継続して行なわれる。このように、分析装置1においては、液面上近傍からは試薬ノズル16bは低速で下降する。このため、分析装置1においては、高速下降のまま停止した場合に発生する振動が試薬ノズル16bに発生しないため、試薬ノズル16bの振動に起因する静電容量変化や圧力値変化のノイズ発生を抑制することができる。したがって、分析装置1においては、ノイズ発生による液面の誤検出を防止し、試薬ボトル15内の試薬Lrの液面を正確に検出することができる。また、分析装置1においては、下降速度切替高さにおいて高速下降から低速下降に切り替えているため、ノイズ発生を防止するために下降速度を低速に維持したまま試薬ノズル16bを下降させた場合と比較して、試薬ノズル16bの下降時間を短縮化することができることから、吸引処理全体に要する時間を短縮化することができる。
【0037】
そして、液面検知器16cは、試薬ノズル16bの低速下降処理にともなって液面検出処理を継続し、制御部31は、液面検知器16cから出力された検出結果をもとに、試薬ノズル16b先端が試薬Lrの液面に到達したか否かを判断する(ステップS14)。
【0038】
制御部31は、試薬ノズル16b先端が試薬Lrの液面に到達したと判断するまでステップS14の判断処理を繰り返し、試薬ノズル16b先端が試薬Lrの液面に到達したと判断した場合(ステップS14:Yes)、液面検知器16cによる検出結果をもとに、液面検知器16cが計測した試薬Lrの実際の液面高さ(hr)を取得する(ステップS16)。
【0039】
次いで、制御部31は、取得した試薬Lrの実際の液面高さ(hr)情報をもとに、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15内に現に残存している試薬の残量を演算する(ステップS18)。制御部31は、既に取得していた試薬ボトル種別情報および試薬ボトルの種別に応じて設定されている試薬残量を求めるための残量式などを用いて、吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15内に現に残存している試薬の残量を演算する。そして、制御部31は、演算した試薬の残量および本分注処理において試薬ノズル16bによる試薬吸引量をもとに、吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)を演算する(ステップS20)。
【0040】
制御部31は、試薬ノズル16bを下降させる下限値を設定する。制御部31は、この下限値として、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)から所定の余裕値Bを減じた高さ、すなわち(Hra−B)を設定する。余裕値Bは、たとえば試薬ノズル16bによる吸引量ばらつきなどをもとに設定される。そして、制御部31は、設定した下限値の高さ(Hra−B)まで試薬ノズル16bを下降させ(ステップS22)、その後、試薬ノズル16bに対して所定量の試薬Lrを吸引させる吸引処理を行なう(ステップS24)。すなわち、分析装置1においては、図7に示すように、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)よりも余裕値B分だけ深く試薬ノズル16bを試薬Lr内に浸漬させている。したがって、分析装置1においては、吸引処理後においても試薬ノズル16b先端が試薬Lr内に浸漬するように試薬ノズル16bの下降位置を設定しているため、試薬ノズル16bの試薬内への浸漬深さ不足に起因する吸引量不足および空気吸引を防止し、所定量の試薬を確実に吸引することができる。さらに、分析装置1においては、吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)を演算することによって試薬ノズル16bの試薬Lr内への浸漬量を可能な限り抑制しているため、ノズル洗浄に要する洗浄液および処理時間を必要最小限に抑制することができる。
【0041】
そして、制御部31は、吸引処理(ステップS24)終了後、液面検知器16cによる液面検出処理を継続して行なわせた状態で、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)から所定の余裕値Cを加えた高さ(Hra+C)まで試薬ノズル16bを低速上昇させる(ステップS26)。この余裕値Cは、試薬ノズル16bによる吸引量ばらつきや試薬ノズル16bを昇降させる試薬分注部16における昇降機構の昇降精度などをもとに設定された値である。この高さ(Hra+C)は、試薬ノズル16b先端の液面検知器16cに試薬Lrの液面を検知させるために、試薬ノズル16b先端が試薬液面上に位置する高さとなるように設定される。
【0042】
そして、制御部31は、高さ(Hra+C)までの低速上昇処理によって液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)情報を取得する(ステップS28)。なお、吸引後の試薬Lrの実際の液面高さ検出においては、制御部31によって試薬ノズル16bが低速上昇させるため、高速上昇した場合に生じる振動が試薬ノズル16bに発生せず、試薬ノズル16bの振動に起因する液面の誤検出を防止することができる。その後、制御部31は、上死点まで試薬ノズル16bを高速上昇させる(ステップS30)。
【0043】
次いで、制御部31は、本吸引処理が正常に行なわれたか否かを検証する。具体的には、制御部31は、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)と、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)との差分値が、所定の閾値未満であるか否かを判断する(ステップS32)。図8に示すように、試薬ノズル16bによる吸引処理が適正に行なわれた場合、吸引後における試薬Lrの液面高さは高さ(Hra)まで低くなる。しかしながら、試薬ノズル16bの詰まりなどによって所定量の試薬が実際に吸引されなかった場合には、吸引後における試薬Lrの液面高さは、液面高さ(Hra)よりも高くなってしまう。したがって、分析装置1は、試薬ノズル16bによる試薬吸引処理を検証するため、試薬ノズル16bによる試薬吸引量のばらつきや液面検知器16cの計測誤差などをもとに所定の閾値Trを設定する。そして、制御部31は、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)と、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)との差分値Drが所定の閾値Tr以上となる場合には、矢印Y11に示すように、試薬ノズル16bの吸引処理に吸引エラーが発生し、分析装置1に要求される分析精度を保持することができないと判断する。
【0044】
したがって、制御部31は、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)と、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)との差分値が、所定の閾値未満でないと判断した場合(ステップS32:No)、すなわち、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)と、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)との差分値が、所定の閾値以上であると判断した場合、試薬ノズル16bによって所定量の試薬が吸引されていないと判断する(ステップS34)。そして、制御部31は、出力部36に対して、試薬ノズル16bによって所定量の試薬が吸引されていない旨を示す警告である分注エラーを出力させる(ステップS36)。このように、分析装置1においては、吸引処理ごとに吸引処理が適正に行なわれたか否かを検証して分注処理を厳格に管理し、分析精度の向上を図っている。
【0045】
これに対し、制御部31は、演算した吸引後における試薬Lrの液面高さ(Hra)と、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)との差分値が、所定の閾値未満であると判断した場合(ステップS32:Yes)、試薬ノズル16bによって所定量の試薬が適正に吸引されたと判断する。そして、記憶部35によって記憶された情報のうち、吸引対象であった試薬を保持する試薬ボトル15の液面高さ(Hr)の値を、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さ(hra)の値に書き替える(ステップS38)。吸引処理ごとに、吸引対象であった試薬を保持する試薬ボトル15の液面高さの値を、液面検知器16cが計測した吸引処理後の試薬Lrの実際の液面高さの値に書き替えることによって、記憶部35内の液面高さに関する情報を常に最新のものとすることができることから、記憶部35内の情報を用いて行なわれる吸引処理の各処理を常に正確に制御することができる。
【0046】
そして、制御部31は、次の分注動作はあるか否かを判断する(ステップS40)。制御部31は、次の分注動作はあると判断した場合(ステップS40:Yes)、次の吸引対象の試薬に対して、試薬ノズル16bの下降処理、液面検知器16cによる液面検出処理を適正に行なうために、ステップS8に戻り、次の吸引対象の試薬を保持する試薬ボトル15の液面高さ(Hr)を取得した後、ステップS10以降の各処理を行なう。一方、制御部31は、次の分注動作はないと判断した場合(ステップS40:No)、分注処理を終了する。
【0047】
つぎに、検体分注部12における検体分注処理について説明する。図9は、図1に示す検体分注部12における検体分注処理の処理手順を示すフローチャートである。まず、制御部31は、検体分注部12への検体分注処理タイミングであると判断した場合、分注対象となる検体を保持する検体容器11aから実際に所定量の検体を吸引する前に、本吸引処理が、この分注対象の検体を保持する検体容器11aに対する最初の吸引処理であるか否かを判断する(ステップS202)。
【0048】
制御部31は、本吸引処理がこの検体容器11aに対する最初の吸引処理であると判断した場合(ステップS202:Yes)、この検体容器11aの種別情報を取得する(ステップS4)。検体容器11aの種別は、図1に示す検体容器種別検出部11cによって検出される。
【0049】
この検体容器種別検出部11cは、図10に例示するように、検体容器11aの高さ方向の各位置にそれぞれ設けられたセンサー111c〜115cによって構成されている。センサー111c〜115cは、たとえば赤外光または可視光を発し、反射光の受信の有無によって、検体容器11aの有無などを検出する。たとえば、検体容器11aの種別として、図10に示すように、それぞれ高さの異なる種別A〜Eがある場合には、図11に示すテーブルT11の行R1〜R6のように、各センサー111c〜115cの検出結果から検体容器11aの種別を種別A〜E、または、検体容器11aなしと判断する。たとえば、図10および図11に示すように、種別Aである検体容器11aはセンサー112c〜115cに対応する高さを有するため、センサー111c以外のセンサー112c〜115cによって検出された場合には、この検体容器11aの種別は、種別Aであると判断される。なお、図11のテーブルT11などの検体容器11aの種別判断に要する情報は記憶部35に記憶される。
【0050】
そして、制御部31は、記憶部35が記憶する情報の中から、吸引対象の検体を保持する検体容器11aの種別から予測される最大液面高さ(Hs)を初期液面高さとして取得する(ステップS206)。ここで、検体容器11aは、種別が限定されている上に、種別に応じて、検体容器11a内に注入される検体容量の最大量も設定されている場合がほとんどである。したがって、種別に応じた検体の最大容量をもとに、検体容器11aの種別ごとに検体容器11aに保持される検体の最大液面高さを求めることができる。そこで、分析装置1においては、図12のテーブルT12に例示すように、記憶部35に、検体容器11aの種別から予測される検体の最大液面高さを各検体容器11aの種別に対応づけて記憶しておく。制御部31は、記憶部35に記憶された図12のテーブルT12を参照することによって、吸引対象の検体を保持する検体容器11aの種別に応じた最大液面高さを取得する。
【0051】
一方、制御部31は、本吸引処理がこの検体容器11aに対する最初の吸引処理でないと判断した場合(ステップS202:No)、すなわち、本吸引処理の前に既にこの検体容器11aに対して吸引処理が行なわれていた場合には、この検体容器11aに保持される検体の液面高さ(Hs)を取得する(ステップS208)。検体の液面高さ(Hs)は、後述するステップS220およびステップS238の処理によって取得されたものであり、記憶部35に記憶される。
【0052】
次いで、制御部31は、下降速度切替高さを設定する(ステップS209)。制御部31は、下降速度切替高さとして、ステップS206またはステップS208において取得した最大液面高さまたは液面高さである高さ(Hs)に、所定の余裕値Dを加えた高さを設定する。余裕値Dは、たとえば、検体ノズル12bによる吸引量ばらつきや検体ノズル12bを昇降させる検体分注部12における昇降機構の昇降精度などをもとに設定された値である。
【0053】
制御部31は、設定した下降速度切替高さである高さ(Hs+D)まで検体ノズル12bを高速下降させ(ステップS210)、下降速度切替高さである高さ(Hs+D)からは検体ノズル12bを低速下降させる低速下降処理を行なう(ステップS212)。この結果、図4のステップS12と同様に、分析装置1においては、検体ノズル12bの高速下降からの停止によって生じる振動に起因する静電容量変化や圧力値変化のノイズ発生による誤検出を防止できるとともに、下降速度を低速に維持したまま検体ノズル12bを下降させた場合と比較して、検体ノズル12bの下降時間を短縮化することができる。
【0054】
そして、液面検知器12cは、検体ノズル12bの低速下降処理にともなって液面検出処理を継続し、制御部31は、液面検知器12cから出力された検出結果をもとに、検体ノズル12b先端が検体の液面に到達したか否かを判断する(ステップS214)。
【0055】
制御部31は、検体ノズル12b先端が検体の液面に到達したと判断するまでステップS214の判断処理を繰り返し、検体ノズル12b先端が検体の液面に到達したと判断した場合(ステップS214:Yes)、液面検知器12cによる検出結果をもとに、液面検知器12cが計測した検体の実際の液面高さ(hs)を取得する(ステップS216)。
【0056】
次いで、制御部31は、取得した検体の実際の液面高さ(hs)情報をもとに、吸引対象の検体を保持する検体容器11a内に現に残存している検体の残量を演算する(ステップS218)。制御部31は、既に取得していた検体容器11aの種別情報および検体容器11aの種別に応じて設定されている検体残量を求めるための残量式などを用いて、吸引対象の検体を保持する検体容器11a内に現に残存している検体の残量を演算する。そして、制御部31は、演算した検体の残量および本分注処理において検体ノズル12bによる検体吸引量をもとに、吸引後における検体の液面高さ(Hsa)を演算する(ステップS220)。
【0057】
制御部31は、検体ノズル12bを下降させる下限値を設定する。制御部31は、この下限値として、演算した吸引後における検体の液面高さ(Hsa)から所定の余裕値Eを減じた高さ、すなわち(Hsa−E)を設定する。余裕値Eは、たとえば検体ノズル12bによる吸引量ばらつきなどをもとに設定される。そして、制御部31は、設定した下限値の高さ(Hsa−E)まで検体ノズル12bを下降させ(ステップS222)、その後、検体ノズル12bに対して所定量の検体を吸引させる吸引処理を行なう(ステップS224)。図4に示すステップS22およびステップS24と同様に、分析装置1においては、吸引処理後においても検体ノズル12b先端が検体内に浸漬するように検体ノズル12bの下降位置を設定しているため、検体ノズル12bの検体内への浸漬深さ不足に起因する吸引量不足および空気吸引を防止するともに、検体ノズル12bの検体内への浸漬量を可能な限り抑制しているため、ノズル洗浄に要する洗浄液および処理時間を必要最小限に抑制することができる。
【0058】
そして、制御部31は、吸引処理(ステップS224)終了後、液面検知器12cによる液面検出処理を継続して行なわせた状態で、演算した吸引後における検体の液面高さ(Hsa)から所定の余裕値Fを加えた高さ(Hsa+F)まで検体ノズル12bを低速上昇させる(ステップS226)。この余裕値Fは、検体ノズル12bによる吸引量ばらつきや検体ノズル12bを昇降させる検体分注部16における昇降機構の昇降精度などをもとに設定された値である。この高さ(Hsa+F)は、検体ノズル12b先端の液面検知器12cに検体の液面を検知させるために、検体ノズル12b先端が検体液面上に位置する高さとなるように設定される。
【0059】
そして、制御部31は、高さ(Hsa+F)までの低速上昇処理によって液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さ(hsa)情報を取得する(ステップS228)。なお、吸引後の検体の実際の液面高さ検出においては、制御部31によって検体ノズル12bが低速上昇させるため、高速上昇した場合に生じる振動が検体ノズル12bに発生せず、検体ノズル12bの振動に起因する液面の誤検出を防止することができる。その後、制御部31は、上死点まで検体ノズル12bを高速上昇させる(ステップS230)。
【0060】
次いで、制御部31は、本吸引処理が正常に行なわれたか否かを検証する。具体的には、制御部31は、演算した吸引後における検体の液面高さ(Hsa)と、液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さ(hsa)との差分値が、所定の閾値未満であるか否かを判断する(ステップS232)。分析装置1は、検体ノズル12bによる検体吸引処理を検証するため、検体ノズル12bによる検体吸引量のばらつきや液面検知器16cの計測誤差などをもとに所定の閾値を設定する。
【0061】
そして、図4に示すステップS32と同様に、制御部31は、演算した吸引後における検体の液面高さ(Hsa)と、液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さ(hsa)との差分値が、所定の閾値未満でないと判断した場合(ステップS232:No)、検体ノズル12bによって所定量の検体が吸引されていないと判断する(ステップS234)。そして、制御部31は、出力部36に対して、検体ノズル12bによって所定量の検体が吸引されていない旨を示す警告である分注エラーを出力させる(ステップS236)。このように、分析装置1においては、吸引処理ごとに吸引処理が適正に行なわれたか否かを検証して分注処理を厳格に管理し、分析精度の向上を図っている。
【0062】
これに対し、制御部31は、演算した吸引後における検体の液面高さ(Hsa)と、液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さ(hsa)との差分値が、所定の閾値未満であると判断した場合(ステップS232:Yes)、検体ノズル12bによって所定量の検体が適正に吸引されたと判断し、記憶部35によって記憶された情報のうち、吸引対象であった検体を保持する検体容器11aの液面高さ(Hs)の値を、液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さ(hsa)の値に書き替える(ステップS238)。吸引処理ごとに、吸引対象であった検体を保持する検体容器11aの液面高さの値を、液面検知器12cが計測した吸引処理後の検体の実際の液面高さの値に書き替えることによって、記憶部35内の液面高さに関する情報を常に最新のものとすることができることから、記憶部35内の情報を用いて行なわれる吸引処理の各処理を常に正確に制御することができる。
【0063】
そして、制御部31は、次の分注動作はあるか否かを判断する(ステップS240)。制御部31は、次の分注動作はあると判断した場合(ステップS240:Yes)、次の吸引対象の検体に対して、検体ノズル12bの下降処理、液面検知器16cによる液面検出処理を適正に行なうために、ステップS208に戻り、次の吸引対象の検体を保持する検体容器11aの液面高さ(Hs)を取得した後、ステップS209以降の各処理を行なう。一方、制御部31は、次の分注動作はないと判断した場合(ステップS240:No)、分注処理を終了する。
【0064】
このように、本発明にかかる分析装置1は、容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶しておき、記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得することによって、分注機構の装置構成を複雑化せずとも既存の装置構成のままで、容器内の液体の液面を取得することができる。そして、分析装置1は、さらに取得した初期液面高さまたは液面高さをもとにノズルの下降速度切替高さを設定して、下降速度切替高さまでノズルを高速下降させ下降速度切替高さからはノズルを低速下降させて容器内の液体にノズルを挿入させることによって、ノズル先端に設けられた液面検出手段による高精度な液面検出処理を可能にすることから、精度の高い分注処理を行なうことができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、下降速度切替高さでノズルの下降速度を高速から低速に切り替えている。すなわち、実施の形態においては、制御部31が、図13に示すように、下降速度切替高さにノズルが位置する時間T1において、ノズルの下降速度を高速から低速にそのまま切り替えた場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。制御部31は、たとえば、図14に示すように、下降速度切替高さに対応する時間T1を境界にして、ノズル下降速度を所定の値まで徐々に低速化して、ノズルの振動をさらに抑制して、ノイズ発生による誤検出を確実に防止するようにしてもよい。
【0066】
なお、上記実施の形態で説明した分析装置1は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などのように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」など、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワーク回線を介して接続した管理サーバや他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す検体分注部の要部を説明する図である。
【図3】図1に示す試薬分注部の要部を説明する図である。
【図4】図1に示す試薬分注部における試薬分注処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図6】図1に示す記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図7】図1に示す試薬分注部における試薬分注処理を説明する図である。
【図8】図1に示す試薬分注部における試薬分注処理を説明する図である。
【図9】図1に示す検体分注部における検体分注処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図1に示す検体容器種別検出部を説明する図である。
【図11】図1に示す記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図12】図1に示す記憶部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図13】図1に示す検体ノズルまたは試薬ノズルの下降速度の時間変化を説明する図である。
【図14】図1に示す検体ノズルまたは試薬ノズルの下降速度の時間変化の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御機構
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
11c 検体容器種別検出部
12 検体分注部
12a,16a アーム
12b 検体ノズル
12c,16c 液面検知器
13 反応テーブル
14 試薬庫
14a 試薬ボトル読取部
15 試薬ボトル
16 試薬分注部
16b 試薬ノズル
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 キュベット
31 制御部
32 入力部
33 分析部
35 記憶部
36 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に挿入されることによって前記容器が保持する液体を吸引し、該吸引した液体を分注先の反応容器に吐出するノズルを備えた分注装置において、
前記ノズル先端に設けられ、前記容器内の液体の液面高さを検出する液面検出手段と、
前記ノズルを昇降させる昇降手段と、
前記容器の各種別にそれぞれ応じた初期液面高さ、および、各容器に保持される液体の液面高さを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する情報の中から吸引対象の液体を保持する容器の種別に応じた初期液面高さまたは吸引対象の液体を保持する容器の液面高さを取得し、取得した初期液面高さまたは液面高さをもとに前記ノズルの下降速度切替高さを設定する設定手段と、
前記昇降手段に対して、前記設定手段が設定した下降速度切替高さまで前記ノズルを高速下降させ、前記下降速度切替高さからは前記ノズルを低速下降させて前記容器内の液体に前記ノズルを挿入させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記液面検出手段は、吸引対象の液体を保持する容器における前記ノズルによる液体吸引後の液面高さを検出し、
前記制御手段は、前記記憶手段によって記憶された情報のうち、吸引対象の液体を保持する容器の液面高さの値を前記液面検出手段によって検出された液体吸引後の液体の液面高さの値で書き替えることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
分注処理に関する情報を出力する出力手段をさらに備え、
前記液面検出手段は、前記吸引対象の液体を保持する容器における前記ノズルによる液体吸引前の液面高さを検出し、
前記制御手段は、前記液面検出手段によって検出された液体吸引前の液体の液面高さおよび前記ノズルによる吸引量をもとに前記ノズルによる液体吸引後の液体の液面高さを演算し、該演算した液面高さと前記液面検出手段によって検出された液体吸引後の液面高さとの差分値が所定の閾値以上である場合には、前記ノズルによって所定量の液体が吸引されていない旨を示す警告を前記出力手段に出力させることを特徴とする請求項2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記ノズルは、分析装置における分析対象である検体を分注する検体ノズル、または、前記検体を分析するために使用される試薬を分注する試薬ノズルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−180605(P2009−180605A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19660(P2008−19660)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】