説明

分級装置及び分級方法

【課題】分級効率に優れた分級装置を提供すること。
【解決手段】微小流路、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成された少なくとも1つの隔壁、前記隔壁により形成された複数の分割流路、前記隔壁の全部又は一部に形成されたフィルタ、前記フィルタに交わる向きに電界を印加する電界印加部、前記分割流路の少なくとも1つに荷電粒子分散液を供給する供給口、及び、前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路に、分級された荷電粒子を排出する排出口、を有することを特徴とする分級装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分級装置及び分級方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を分級する方法としては、ローターとステーターなどからなる遠心力と慣性力のバランスで分級する方法と、網などを用いて篩分する方法とがある。
【0003】
目詰まり防止のため、限外ろ過器のように流れ方向にフィルタを設けたものが考えられる。
特許文献1には、懸濁液を取り込む入口ポートと、前記入口ポートに一端が取り付けられた湾曲形状の流路と、前記流路の下流側に取り付けられた複数の分岐流路と、前記分岐流路それぞれの下流側の一端に取り付けられ、前記湾曲形状の流路と前記分岐流路を経た後の懸濁液を排出する複数の出口ポートとを備えたことを特徴とするマイクロチャンネル装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、沈降槽を用いて懸濁液中の固体微粒子の分級を行う固体微粒子分級装置であって、沈降槽に懸濁液を連続供給する懸濁液供給手段、前記沈降槽内に浸漬された互いに離隔されその離隔空間を前記懸濁液の流路とする一対の電極、該一対の電極に電圧を印加する直流電源及び前記流路を通った懸濁液の上澄み部分を連続的に回収する上澄み部回収手段、を有してなる固体微粒子分級装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、微粒子分散液中の微粒子をマイクロ流路を用いて分級する微粒子の分級方法であって、微粒子分散液を、マイクロ流路の導入部から層流で送液する送液工程、重力方向に印加した電界により、微粒子をマイクロ流路内上面に移動させる電界印加工程、及び、微粒子の沈降速度差により、微粒子を分級する分級工程をこの順で含むことを特徴とする微粒子の分級方法が開示されている。
【0006】
また、非特許文献1には、遠心力とフィルタ効果を組み合わせたマイクロデバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−330008号公報
【特許文献2】特開2005−334865号公報
【特許文献3】特開2007−144270号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Xu Ji et al, "A CENTRIFUGATION-ENHANCED HIGH-EFFICIENCY MICRO-FILTER WITH SPIRAL CHANNEL", TRANSDUSER & EOROSENSERS '07 (The 14th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems, Lyon, France, June 10-14, 2007) abstract pp.1865-1868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、分級効率に優れた分級装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の<1>及び<5>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>及び<6>とともに以下に記載する。
<1>微小流路、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成された少なくとも1つの隔壁、前記隔壁により形成された複数の分割流路、前記隔壁の全部又は一部に形成されたフィルタ、前記フィルタに交わる向きに電界を印加する電界印加部、前記分割流路の少なくとも1つに荷電粒子分散液を供給する供給口、及び、前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路に、分級された荷電粒子を排出する排出口、を有することを特徴とする分級装置、
<2>前記隔壁が、前記微小流路内に流体の流れ方向に交差し、前記供給口を有する分割流路が次第に狭くなるように傾斜を有する、前記<1>に記載の分級装置、
<3>前記フィルタが鉛直方向に対して傾斜するように形成され、前記荷電粒子分散液が供給される供給口を有する分割流路が前記フィルタの下方に形成された、前記<1>又は<2>に記載の分級装置、
<4>前記電界印加部が、荷電粒子が水平方向よりも上方に移動するように電界を印加する、前記<1>〜<3>いずれか1つに記載の分級装置、
<5>前記<1>〜<4>いずれか1つに記載の分級装置の供給口に荷電粒子分散液を送流する供給工程、印加した電界により荷電粒子を移動させ、フィルタの目開きよりも小さい荷電粒子のみをフィルタを通過させる分級工程、及び、前記フィルタを通過した荷電粒子を含む流体を排出口から回収する回収工程、を含むことを特徴とする分級方法、
<6>荷電粒子の重力沈降及び電界による移動を利用した、前記<5>に記載の分級方法。
【発明の効果】
【0011】
上記<1>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、分級効率に優れた分級装置を提供することができる。
上記<2>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より分級効率に優れた分級装置を提供することができる。
上記<3>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、微小流路内での詰まりや閉塞を生ずることなく、長時間の連続使用が可能な分級装置を提供することができる。
上記<4>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、より微小流路内での詰まりや閉塞を生ずることなく、長時間の連続使用が可能な分級装置を提供することができる。
上記<5>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、分級効率に優れた分級方法を提供することができる。
上記<6>に記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比して、微小流路内での詰まりや閉塞を生ずることなく、長時間の連続使用が可能な分級方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の分級装置の一実施形態を表す断面図である。
【図2】本実施形態における円形のフィルタ孔の形成パターンの一例を示す模式図である。
【図3】本実施形態における三角形のフィルタ孔の形状パターンの他の一例を示す模式図である。
【図4】本実施形態における六角形のフィルタ孔の形状パターンの他の一例を示す模式図である。
【図5】本実施形態における円形のフィルタ孔の形状パターンの他の一例を示す模式図である。
【図6】本実施形態における三角形のフィルタ孔の形状パターンの他の一例を示す模式図である。
【図7】本実施形態の分級装置の他の一実施形態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(分級装置)
本実施形態の分級装置は、微小流路、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成された少なくとも1つの隔壁、前記隔壁により形成された複数の分割流路、前記隔壁の全部又は一部に形成されたフィルタ、前記フィルタに交わる向きに電界を印加する電界印加部、前記分割流路の少なくとも1つに荷電粒子分散液を供給する供給口、及び、前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路に、分級された荷電粒子を排出する排出口、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本実施形態の分級方法は、本実施形態の分級装置の供給口に荷電粒子分散液を送流する供給工程、印加した電界により荷電粒子を移動させ、フィルタの目開きよりも小さい荷電粒子のみをフィルタを通過させる分級工程、及び、前記フィルタを通過した荷電粒子を含む流体を排出口から回収する回収工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本実施形態の分級装置及び分級方法は、荷電粒子の持つ極性に着眼して荷電粒子の移動を制御し、安定に精度よく分級するものである。即ち、微小流路に設けたフィルタと交叉する方向に電界を印加する電界印加部を設け、荷電粒子の極性に合わせて電界を印加して荷電粒子を移動させることにより、フィルタ孔径よりも粒径の小さい荷電粒子のみをフィルタを通過させることができる。かかる分級装置及び分級方法により、荷電粒子を高効率かつ高精度に分級することができる。以下、適宜図面を参照しながら本実施形態について詳述する。
なお、同一の符号は特に断りのない限り同一の対象を指す。なお、数値範囲を表す「A〜B」等は、「A以上B以下」と同義であり、数値範囲の両端を含む。
【0016】
図1は、本実施形態の分級装置の一実施形態を表す断面図である。図1において、分級装置1は、直線状の微小流路2を有している。微小流路2には、隔壁3及びフィルタ5が設けられており、微小流路2を分割流路6と分割流路7とに仕切っている。分割流路6及び分割流路7に流れる流体の流れ方向は、各分割流路6及び分割流路7と平行であり、図1中では矢印R1及びR2で表される。
【0017】
微小流路2には隔壁3で仕切られた分割流路6及び7それぞれに流体を供給する供給口10及び供給口11が設けられている。また、分級装置1は、供給口10及び11に流体を送液するための供給路(不図示)を有することが好ましい。
なお、本実施形態の分級装置は図1に示すように、荷電粒子分散液Aの供給口11とは別に、洗浄液や分散媒体等の流体を分割流路に導入する供給口10を有していてもよい。荷電粒子分散液の供給口は1つでもよいが、複数の供給口を設けて、複数種の荷電粒子を混合した上でフィルタ5により分級することもできる。
供給路10及び供給口11への流体の導入は、マイクロシリンジ、ロータリーポンプ、スクリューポンプ、遠心ポンプ、ピエゾポンプ等で圧入することが好ましい。
流体の分割流路6及び7における流速は、0.1〜20ml/時であることが好ましく、0.5〜10ml/時であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、分級効率が向上するため好ましい。
【0018】
荷電粒子分散液Aを供給路を介して供給口11から分割流路7に供給すると、荷電粒子分散液Aは分割流路7と平行(図1中の矢印R2)に送流される。本実施形態においては、供給口10から導入された流体と、供給口11から導入された流体とが、微小流路2中のフィルタ5が設けられた部分において、層流状態を形成することが好ましい。
【0019】
図1においては、電界印加部を形成する電界印加用電極8及び9は、微小流路2内のフィルタ5に対して鉛直方向に上下に配置されており、フィルタ5に対して直交する向きに電界を印加することができる。
【0020】
荷電粒子分散液Aに含まれる荷電粒子のうち、フィルタ5の目開きよりも小さな微粒子14は電界印加により鉛直上方に移動し、フィルタ5を通過して分割流路6へと移動する。微粒子14は、R1方向に流れる流体とともに分割流路6を通過して、排出口12から荷電粒子分散液Bとして排出される。
一方、荷電粒子分散液Aに含まれる荷電粒子のうち、目開き以上の大きさの粗粒子15はフィルタ5を通過することなくR2方向に流れる送液とともに分割流路7を通過し、排出口13から荷電粒子分散液Cとして排出される。以下、さらに本実施形態の分級装置について詳述する。
【0021】
<微小流路、分割流路>
本実施形態の分級装置は、微小流路、及び、当該微小流路内に隔壁により形成された複数の分割流路を有する。
本実施形態においては、前記分割流路を有する微小流路は直線状及び曲線状のいずれであってもよい。直線状とは、特にフィルタが設けられている流路部分に曲がり部を有していないことを意味する。フィルタが設けられている部分に曲がり部を有する場合、微小流路又は分割流路内にディーン渦が発生し、一旦フィルタを通過した荷電粒子が再びフィルタを通過して元の分割流路に戻るという現象が生じうる。従って、荷電粒子の動きを制御する手段がない場合には分級効率が低下する。ここで、分級効率が低下するとは、分級が十分に行われないこと(分級精度が低いこと)及び分級に長時間を要することのそれぞれ又は双方を指す。
本実施形態の分級装置は、電界印加部を有しており、電界印加により荷電粒子の動きを制御できる。従って、ディーン渦による荷電粒子の元の分割流路への戻りを抑制できる。また、元の分割流路に戻ったとしても即座に再びフィルタを通過させることが可能となる。従って、本実施形態の分級装置によれば、たとえ微小流路に曲がり部を有し、ディーン渦が発生したとしても、高い分級効率が達成できる。また、本実施形態の分級装置においては、微小流路が直線状の流路に限定されないため設計の自由度が高い。ただし、分級効率の観点から、直線上の流路であることが好ましい。
【0022】
また、微小流路内が層流支配でなく、乱流支配の場合であっても同様の理由から高い分級効率で荷電粒子を分級することが可能である。ただし、分級効率の観点から、本実施形態の分級装置は、微小流路の寸法及び当該流路を通過する流体の流速が小さく層流支配の装置であることが好ましい。
【0023】
本実施形態において、微小流路内を通過する流体が層流を形成するためには、レイノルズ数が2,300以下であることが好ましい。ここで、レイノルズ数(Re)は、下記式で表されるものである。
Re=uL/ν
(u:流速、L:代表長さ、ν:動粘性係数)
【0024】
微小流路全長は特に限定されないが、1〜10cmであることが好ましく、1〜7cmであることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、粒子による閉塞などが起こりにくい。
【0025】
また、微小流路のうち、フィルタが形成された微小流路長(フィルタの長さに相当する。)は、フィルタと流体との十分な接触面積が得られ、十分な分級を行うことができる範囲で適宜選択することが可能である。フィルタの長さは、荷電粒子が微小流路内で移動し、分級されるのに十分な長さで適宜選択することが好ましい。
また、電界印加部は、フィルタが形成された領域に十分に電界が印加されるようにフィルタが形成された部分の微小流路長さと比べて、同一又は長く形成されていることが好ましい。かかる長さの電界印加部を設けることにより、フィルタを通過した荷電粒子が元の分割流路に戻ることがなく、高い分級精度で分級できる。
フィルタが形成された微小流路の長さは、1〜100mmが好ましく、10〜70mmがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、フィルタと流体との十分な接触面積を確保できるとともに、微小流路の送液時間が短く、処理速度が速い。
【0026】
微小流路の流路幅(円相当直径で表す。)は、20〜5,000μmであることが好ましく、40〜3,000μmであることがより好ましく、50〜2,000μmであることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、層流が形成されやすいため分級効率に優れる。
【0027】
また、分割流路の流路幅(円相当直径で表す。)は、10〜3,000μmであることが好ましく、20〜2,000μmであることがより好ましく、25〜1,000μmであることがさらに好ましい。
【0028】
なお、本実施形態の分級装置においては、微小流路及び分割流路の断面は正方形、長方形等に限られず、楕円形、円形、角が丸みを帯びた略矩形など、いずれの形状でもよい。
【0029】
<隔壁・フィルタ>
本実施形態の分級装置は、前記微小流路内に流体の流れ方向に形成された少なくとも1つの隔壁を有する。さらに、前記隔壁の全部又は一部にはフィルタが形成されている。隔壁は微小流路を2以上の分割流路に隔てるものであれば特に限定されるものではない。「流体の流れ方向に形成された」とは、流体の流れ方向と隔壁に形成されたフィルタとが平行になるように形成されたものに限定するものではなく、流れ方向に対して傾斜を有していてもよいことを意味する。ただし、供給口を有する分割流路は、流れ方向に対して傾斜した隔壁又はフィルタに流路幅を狭められることはあっても、目詰まり防止の観点から、完全に遮断されることはない。
【0030】
また、前記隔壁の全部にフィルタが形成されているとは、隔壁そのものがフィルタで形成されている態様を示す。一方、前記隔壁の一部にフィルタが形成されているとは、例えば孔を有しない隔壁材料にエッチング等によりフィルタ孔を形成するなど、隔壁とフィルタとが一体のものとして形成された態様や、隔壁の一部に別途作製したフィルタ部分を接続するなどの態様を含むが、強度の観点から隔壁とフィルタとが一体として形成されたものが好ましい。
【0031】
フィルタとしては、パルプ繊維、プラスチック繊維又は金属繊維を織ったメッシュ状のフィルタ、エッチング、電鋳法、陽極酸化により精密加工してフィルタ状とした金属フィルタ、自己組織化によるプラスチック製のハニカムフィルタ、セラミック製フィルタなど各種フィルタが好ましく使用できる。特に効率よく処理するためには、開口率の高いフィルタを用いることが好ましい。
【0032】
上記メッシュ状フィルタとしては、プラスチック繊維を織ったものとしては、ナイロンメッシュ、ポリエステルメッシュ、ポリプロピレンメッシュ、テフロン(登録商標)メッシュ、ポリエチレンメッシュが例示できる。また、カーボンファイバを織り込んだナイロンメッシュ、カーボンファイバを織り込んだナイロンメッシュ等、2種以上の繊維で織られた繊維も例示できる。さらに、芯鞘二重構造の繊維で織られたメッシュ状フィルタ(例えば、Vスクリーン(NBC社製))も挙げられる。金属繊維としては、SUS等を織ったメッシュ状フィルタが例示できる。
【0033】
エッチング、電鋳法、陽極酸化等により精密加工してフィルタ状とした金属フィルタも使用することができる。
金属フィルタの作製方法としては、特に制限はなく、例えば、エッチング加工法や、エレクトロフォーミング加工法(電鋳法)により精密加工した薄膜パターンとして作製し、他の薄膜パターンと共に積層することにより、複雑な形状の分級装置でも容易に製造できる。電鋳法で金属フィルタを作製すると、膜厚を薄くでき、孔径の精度が高く、全体の均一性にも優れ、高精度な分級が可能となる。
金属フィルタの材質としては、種々の金属を用いることができ、また、合金であっても、複数種の金属層を積層したものであっても、表面処理をほどこしたものであってもよい。これらの中でも、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)又は銅(Cu)が好ましい。
【0034】
ハニカムフィルムフィルタとしては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2001−157574号公報、特開2005−262777号公報、特開2007−291367号公報等に記載された開口率の高い自己組織化膜による樹脂製フィルムが例示できる。
材質としては、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性脂肪族ポリエステル、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等)及び両親媒性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールブロック共重合体、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基又はカルボキシ基を併せ持つポリマー、ヘパリンやデキストラン硫酸、DNA、RNAの核酸などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン等の水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性ポリマー等)を含む複合材料が例示できる。
その他、ハニカムフィルムフィルタの材質としては、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリブタジエンが例示できる。
【0035】
これらの中でも、高い開口率が得られる観点から、自己組織化による樹脂製フィルムのハニカムフィルムフィルタが好ましく、中でもポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムが好ましい。開口率が高いと処理量を上げることができ分級効率の向上が図れる。
【0036】
本実施形態において、フィルタの目開きは、荷電粒子分散液に含まれる粒子の粒径や、所望とする分級の下限(又は上限)に応じて適宜選択すればよいが、0.01〜500μmであることが好ましく、0.1〜200μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。ここで目開きとは、通過できる球状粒子の最大直径をいう。
【0037】
一方、分級精度に重要なのが、目開きの均一性である。これを変動係数で表した場合、変動係数は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。フィルタの目開き、均一性(変動係数)が上記範囲内であると分級精度に優れる。
【0038】
本実施形態において、フィルタの目開き率(開口率)は、5%以上であることが好ましく、20〜60%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、フィルタの強度が強く、また、圧力損失が少なく、送液量を多くすることができるので好ましい。
【0039】
フィルタ厚みは20μm以下であることが好ましく、5〜20μmがより好ましく、10〜20μmがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、フィルタ強度に優れる。
【0040】
フィルタに形成された孔(フィルタ孔)の形状としては、特に制限はなく、円形、楕円形、多角形などが挙げられるが、これらの中でも、円形、四角形、三角形、六角形であることが好ましい。
フィルタ孔の形成パターンとしては特に制限はなく、円形、楕円形、多角形などを並べたパターンが挙げられる。例えば、図2に示すような円形のフィルタ孔の形成パターン、図3に示すような三角形のフィルタ孔の形成パターン、及び、図4に示すような六角形のフィルタ孔の形成パターンを好適に挙げることができる。ほぼ球形の荷電粒子を分級する場合、円形以外の形状の孔であると、孔が荷電粒子により塞がれても、隙間が生じ、流体が完全に流れなくなることがない。
【0041】
また、フィルタ孔の形成パターンとしては、図5や図6に示すように、孔のない部分(補強部43)を設けることが好ましい。前記補強部43を設けることにより、薄い膜厚のフィルタであっても十分な強度が得られる。また、流路面や電界印加される部分のみフィルタ孔の形状パターンを形成し、流路を形成しない部分や電界が印加されない部分は加工しないようにすることもできる。
【0042】
<電界印加部>
本実施形態の分級装置は、前記フィルタに交わる向きに電界を印加する電界印加部を有する。分級装置が電界印加部を有していない場合、フィルタを通過する粒子が減少し、分級精度及び分級効率が低下する。
電界は、フィルタの鉛直方向下面から上面に向かってフィルタ目開きよりも小さい荷電粒子が通過するように印加されることが好ましい。かかる態様により、フィルタ目開きよりも大きい荷電粒子は重力によりフィルタから離れる方向に沈降するため、フィルタ目詰まりが発生しにくく、長時間の連続使用が可能となるため好ましい。
【0043】
電界の強度は、荷電粒子の特性により、適宜選択することが好ましい。本実施形態において、印加する電圧の強さは、荷電粒子分散液の種類や、微小流路径によっても異なるが、0.2〜10Vが好ましく、0.5〜5Vがより好ましい。さらに好ましくは、0.5〜2Vである。上記の数値の範囲内であると、水などの電気分解により発生した気泡による微小流路の目詰まりが抑制され、荷電粒子の移動による分級が充分に行われる。
【0044】
電界による荷電粒子の移動速度は下記の式を満たすと考えられる。
v=qE/6πηa
(v:粒子の移動速度、q:電荷量、E:電界、η:粘性係数、a:粒子半径)
上記式に示す通り、荷電粒子の移動速度は、荷電粒子の大きさとその電荷量、電界の大きさにより決定される(「最新 電子写真プロセス技術」(ソフト技研、経営開発センター出版部)、第400頁)。
なお、荷電粒子の移動速度は重力にも影響を受ける。重力は荷電粒子の粒径の3乗に比例する。従って、適切な電界を印加すれば、粒径の大きい重い荷電粒子は重力の方が電界による電気力よりも大きくなるため重力方向に沈降する。一方、粒径の小さい軽い荷電粒子は電界による電気力の方が重力により加わる力よりも大きいため浮上する。このように、重い荷電粒子を沈降させると共に軽い荷電粒子を浮上させることにより、より高精度な分級が可能となる。
【0045】
従って、フィルタ目開きよりも小さい荷電粒子が水平方向よりも上方に移動する向きに電界が印加されることがより好ましい。具体的には、負に帯電している荷電粒子に対して電界を印加する場合には、フィルタに対して鉛直方向上部に位置する電界印加用電極が正となる電界を印加する態様が好ましく。また、これとは逆に、正に帯電している荷電粒子に電界を印加する場合には、フィルタに対して鉛直方向上部に位置する電界印加用電極が負となる電界を印加する態様が好ましい。
【0046】
電界印加用電極の形状は、適宜選択することができるが、微小流路断面が全体として矩形の場合には、この電界印加用電極は対向する1対の平行平板電極とすることが好ましい。また、流路断面が略円状である場合には、重力方向の上下に流路形状に合わせて丸みを帯びた電界印加用電極を流路内壁に設けることが好ましい。電界印加用電極は流路内壁に流体と直接接触するように設けてもよいし、流体媒体と直接接しないように適切な材料で覆われていてもよい。
電界印加用電極は、微小流路を形成した後、蒸着やメッキなどにより作製することができるが、電界印加用電極を微小流路壁面に埋め込むことにより作製することもできる。
【0047】
本実施形態の分級装置を連続使用した結果、フィルタ孔に荷電粒子が目詰まりする場合や、電界印加用電極に荷電粒子が付着する場合がある。この場合、電界印加部の電源コントローラー等を制御することにより逆電界を短時間かけ、フィルタ孔や電界印加用電極から荷電粒子を剥がすことができる。逆電界印加後、流れ方向に剥がした荷電粒子を移動させ、再度、元の電界をかけることにより連続的に分級することができる。
【0048】
<荷電粒子分散液を供給する供給口>
本実施形態の分級装置は、前記分割流路の少なくとも1つに荷電粒子分散液を供給する供給口を有する。
荷電粒子分散液に含まれる荷電粒子は、電界印加により移動する粒子であることが好ましい。電界印加により移動する粒子とは、ゼータ電位を有する粒子のことである。電界印加により移動する荷電粒子のゼータ電位は、一般のゼータ電位を測定できる機器で測定することができる。機器としては、Spectrometer DT1200(Dispersion Technology社製)が挙げられる。本実施形態に用いられる荷電粒子は、荷電粒子分散液の状態において、ゼータ電位が絶対値で1〜1,000mVの範囲のものが好ましく、絶対値で30〜300mVの範囲のものが生産性の点でより好ましい。
【0049】
荷電粒子の粒子径は0.01〜500μmであることが好ましく、0.1〜200μmであることがより好ましく、0.1〜50μmであることがさらに好ましい。粒子径が上記範囲内であると、微小流路詰まりが抑制でき、かつ、良好な分級効率が得られる。
【0050】
荷電粒子の形状は、特に限定されないが、針状で、特に、長軸が流路幅の1/4より大きくなると詰まりの可能性が高くなる場合がある。このような観点から、荷電粒子の長軸長と短軸長との比(長軸長/短軸長)は、1〜50の範囲が好ましく、1〜20の範囲がより好ましい。なお、粒径、粒子形状に合わせて、適宜流路幅を選択することが好ましい。
【0051】
本実施形態に用いられる荷電粒子は、媒体液体中で正あるいは負の極性を有するものが好ましい。例えば、水媒体中では、粒子表面に−COOHや−CN、−SO3などの分子末端が存在する場合は負の極性を示し、―NH3や−NH4+などの分子末端が存在する場合は正の極性を有する。本実施形態に用いることができる荷電粒子としては、特開2007−144270号公報の段落0034〜0039に記載の負の極性を示す微粒子及び正の極性を示す微粒子が挙げられる。
【0052】
本実施形態においては、基本的にはどのような媒体液体も使用できるが、該媒体液体の電気伝導度は0〜50μS/cmであることが好ましく、より好ましくは0〜20μS/cmであり、さらに好ましくは0〜10μS/cmである。前記媒体液体の電気伝導度が50μS/cmを超えると電界での微粒子の移動が安定しない場合がある。
本発明において好ましく用いられる媒体液体としては、例えば、水、アルコール等が使用可能であり、特に水を主体とする水媒体が好ましい。
【0053】
前記水としては、イオン交換水、蒸留水、電解イオン水などが挙げられる。また、前記有機溶剤系媒体としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n
−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン、キシレンなど、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0054】
本実施形態において、前記荷電粒子分散液における荷電粒子の含有率は、0.1〜40体積%であることが好ましく、0.5〜25体積%であることがより好ましく、1〜10体積%であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、荷電粒子の回収が容易であり、フィルタの目詰まりを生じにくい。
【0055】
なお、本実施形態において、前記粒子の体積平均粒径は、下記粒径(5μm以下)の場合を除き、例えばコールターカウンターTA−II型(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定することができる。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定することができる。また、荷電粒子の粒径が5μm以下の場合は、例えばレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−920、(株)堀場製作所製)を用いて測定することができる。また、粒子濃度が低い場合は、光学顕微鏡下での画像解析による粒度及び粒度分布測定を行う。例えば、ルーゼックス画像解析装置(ニコレ社製、LuzexIII)を用い、測定することができる。
【0056】
<排出口>
本実施形態の分級装置は、前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路に、分級された荷電粒子を排出する排出口を有する。
ここで、「前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路」は、荷電粒子分散液が供給される供給口を有する分割流路とフィルタを介して隔てられた、別の分割流路を意味する。従って、「分級された荷電粒子」とは、フィルタを通過することによりフィルタを介して隔てられた分割流路に移動した荷電粒子を意味する。フィルタを通過した荷電粒子は、別の分割流路に形成された排出口を介して分級装置の外部に排出される。一方、フィルタを通過しなかった荷電粒子は、分割流路をそのまま進み、荷電粒子分散液が供給される供給口を有する分割流路の末端に形成された排出口を介して分級装置の外部に排出される。
【0057】
もう1つの本実施形態の分級装置としては、前記隔壁が、前記微小流路内に、流体の流れ方向に交差し、前記供給口を有する分割流路が次第に狭くなるように傾斜を有するように形成された分級装置が挙げられる。
図7は、本実施形態の分級装置の他の一実施形態を表す断面図である。図7において、分級装置20は、直線状の微小流路2を有している。また、微小流路2には、フィルタ5を有する隔壁3が設けられており、微小流路2を2つの分割流路26及び27に仕切っている。
微小流路2において、流体の流れ方向は、微小流路2と平行であり、図7中では矢印R3で示されている。隔壁3(フィルタ5)は、流体の流れ方向R3に対して交差するように設けられており、図7では、隔壁3(フィルタ5)と流体の流れ方向R3との傾斜角をθで示している。
微小流路2に平行(流体の流れに平行)に隔壁3が設けられている場合を傾斜角θ=0°、流路に垂直(流体の流れに垂直)に隔壁が設けられている場合を傾斜角θ=90°とすると、前記隔壁の傾斜角θは、60°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。また、傾斜角θは、5°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、20°以上であることがさらに好ましい。傾斜角θが上記範囲内であると、微小流路が詰まりにくく、分級効率に優れる。
【0058】
また、図7において、微小流路2には、隔壁3で仕切られた2つの分割流路(26及び27)のうち一方の流路27にのみ流体を供給する供給口30が設けられている。また、図7では、分級装置20は、供給口30に流体を送液するための供給路31を有する。
荷電粒子分散液Aの供給路31への導入方法、及び、流速は、図1に示す実施態様と同様であり、好ましい範囲も同様である。
荷電粒子分散液Aを供給路31を介して供給口30から微小流路2に供給すると、荷電粒子分散液Aは微小流路2と平行(図1中の矢印R3)に送流される。荷電粒子分散液A中の荷電粒子のうち、隔壁(フィルタ)3に設けられた目開きよりも小さな微粒子14はフィルタ5を通過して分割流路26へと移動する。その後、排出口32から排出路33を介して荷電粒子分散液Bとして分級装置20の外へ排出される。
一方、目開き以上の大きさの粗粒子15は分割流路27へ送液され、排出口34から排出され、排出路35を介して荷電粒子分散液Cとして分級装置20の外へ排出される。
【0059】
本実施形態においては、フィルタの孔径が異なる分級装置を2個以上連結して、多段階に荷電粒子を分級させることもできる。また、本実施形態の分級装置は、電界を利用して荷電粒子を移動させるため、フィルタ平面が鉛直方向に平行であっても荷電粒子を通過させ、分級可能である。従って、引用文献3に記載された分級装置と比較して、分級装置の設置箇所の自由度が高い。
【0060】
本実施形態において、分級装置の材質は特に限定されず、金属、セラミックス、プラスチック、ガラスなど、一般的に微小流路を有する装置等に用いられるものが使用可能であり、送液する分散媒体などに応じて、適宜選択することができる。
【0061】
(分級方法)
本実施形態の分級方法は、前記分級装置の供給口に荷電粒子分散液を送流する供給工程、印加した電界により荷電粒子を移動させ、フィルタの目開きよりも小さい荷電粒子のみをフィルタを通過させる分級工程、及び、前記フィルタを通過した荷電粒子を含む流体を排出口から回収する回収工程、を含むことを特徴とする。また、荷電粒子の重力沈降及び電界による移動を利用した分級方法であることが好ましい。
【0062】
図1に示す分級装置を一例として、本実施形態の分級方法について詳述する。供給路(不図示)を介して供給口11から荷電粒子分散液Aを分割流路7へと送液する。一方、分割流路6には、供給路(不図示)を介して供給口11から荷電粒子の含まれていない純水のみを分割流路6へと送液する。
送液された荷電粒子分散液A及び純水の流れ方向は分割流路6及び7と平行であり、図1では矢印R1及びR2で示されている。荷電粒子分散液A中にフィルタ3の目開きよりも小さい粒径である微粒子14と、目開きよりも大きい粒径である粗粒子15とが含まれている場合、電界を印加するとフィルタ目開きよりも粒径の小さい微粒子14のみがフィルタ5を通過して分割流路6へと移動する。一方、フィルタ目開きよりも粒径の大きい粗粒子15はフィルタ5を通過することができず、分割流路7中を送液と共に通過する。
荷電粒子分散液Aは、フィルタ5の鉛直方向下部に送液される。粗粒子15はフィルタから離れる方向に重力がかかることからフィルタ孔に目詰まりしにくい。従って、粗粒子15は流体の流れによって、分割流路6の底面を転がるようにして下流に送られ、排出口13を通って排出路へと送られる。このように、前記荷電粒子分散液が供給される供給口を有する分割流路7が前記フィルタ5の鉛直方向下方に形成されていると、荷電粒子の重力沈降及び電界による移動を利用することにより、分級効率に優れた分級方法を提供できる。
【0063】
フィルタ5の目開きを適宜選択することによって、所望の粒径以下の微粒子14はフィルタ5を通過して分割流路6へと移動する。ここで、微小流路が曲がり部を有している場合、ディーン渦が発生し、微粒子14が再びフィルタ5を通過して、荷電粒子分散液Aを送液した分割流路7に戻るという現象が生じる場合がある。しかし、本実施態様の分級方法によれば、電界により荷電粒子の動きを制御可能なので、問題なく分級することができる。従って、本実施形態における分級方法によれば、例え曲がり部を有する分級装置を使用したとしても、荷電粒子分散液Bには粗粒子15の混入はない。
【実施例】
【0064】
以下、本実施形態を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本実施形態はこれらに制限されるものではない。
【0065】
<体積平均粒径測定>
荷電粒子分散液に含まれる粒子の体積平均粒径測定には、コールターカウンターTA−II型(ベックマン・コールター(株)製)を用いた。この場合、粒子の粒径レベルにより、最適なアパーチャーを用いて測定した。粒子の粒径がおよそ5μm以下の場合は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。
【0066】
<粒度分布測定>
コールターカウンターTA−II(ベックマン・コールター(株)製)を用いて粒度分布を測定した。
測定結果から、10μm以上(10μm以下)の粒子の比率(個数%)を算出した。
また、得られた荷電粒子の粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、個々の荷電粒子の体積及び数について小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒径を、体積平均粒子径D16v、及び、数平均粒子径D16pと定義し、累積50%となる粒径を、体積平均粒子径D50v、及び、数平均粒子径D50pと定義した。同様に、累積84%となる粒径を、体積平均粒子径D84v、及び、数平均粒子径D84pと定義した。この際、体積平均粒度分布指標(GSDv)は、(D84v/D16v1/2として定義し、数平均粒度指標(GSDp)は、(D84p/D16p1/2として定義した。これらの関係式を用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)を算出した。
【0067】
<分級装置の作製方法>
図1に示す態様の分級装置を作製した。
厚さ7mm、50mm×50mmのアクリル樹脂板2枚の平面にそれぞれ、全長50mm、幅500μm×深さ500μmの直線流路(分割流路6及び7)をエンドミルで堀り、流路底面を金属メッキし、電界を印加するための電界印加部をフィルタ5と同じ長さとなるように設けた。この2枚のアクリル樹脂板を向かい合わせ、間にフィルタ5(ハニカムフィルム、ポリカーボネート(PC)製、目開きφ10μm、開口率55%、変動係数3%、厚さ約5μm)を挟んだ。この時、微小流路の出入り口付近はハニカムフィルムに穴のない部分(空孔無部)がそれぞれ10mmできるようにした。その状態で、アクリル板をビスで固定し、分級装置とした。分割流路の供給口及び排出口には、ジョイント部材(不図示)を作製し、水、荷電粒子分散液Aの送流と分級後の荷電粒子分散液B及びCが回収できるようにした。
【0068】
荷電粒子分散液Aとして、体積平均粒径D50vが6.8μmで、体積平均粒度分布指標(GSDv)が1.28であるスチレンアクリル(StAcr)系粒子を分散した固形分濃度約2重量%の分散液を使用した。その時の10μm以上の粒子は約4体積%であった。
水はイオン交換水を使用した。電界印加電極に印加した電圧は約0.8Vであった。水及び荷電粒子分散液Aの流量は約8ml/時とした。
分級装置は、微小流路が水平になるように設置し、鉛直方向上向きに荷電粒子が移動するように電界を印加した。
【0069】
フィルタを通過して得られた微粒子出口分散液(荷電粒子分散液B)には、10μm以上の粒子は含まれておらず、10μm以上の粒子の比率が0体積%であった。また、粗粒子出口分散液(荷電粒子分散液C)には10μm以下の荷電粒子が約35体積%含まれるだけであった。約2時間送液したが、フィルタへの荷電粒子の詰まりはほとんどなく、分級性能も変化なかった。
【0070】
投入した荷電粒子分散液中の荷電粒子は送液中に重力方向に徐々に沈降する。このとき、粒径の大きい重たい荷電粒子ほど早く沈降する。ここに、重力方向と反対に荷電粒子を移動させるような電界をかけると荷電粒子の沈降速度が下がる。実施例1においては、10μmの粒径の荷電粒子は沈降が止まるような状態となるように電界を印加した。ここで、10μmより小さい粒子は、重力と反対方向に移動するため、フィルタの孔を通過し、荷電粒子分散液Bとして排出口12から回収された。10μmを超える粒径の荷電粒子はほとんど沈降した状態で、荷電粒子分散液Cとして排出口13から回収された。基本的に10μm以上の粒子はフィルタを通過しないため、フィルタが詰まらず、長時間の連続運転が可能となった。
【0071】
(実施例2)
実施例1で使用したハニカムフィルムに代えて、電鋳法による金属(Ni)メッシュフィルタ(目開き10μm、開口率58%、変動係数2%、厚さ10μm)を使用し、荷電粒子分散液の送液量を12ml/時、印加電圧を0.7Vとした以外は実施例1と同様にして分級し、評価した。結果を表1に示した。
【0072】
(実施例3)
実施例1で使用した分級装置を、微小流路が鉛直方向に平行になるように設置し、分級装置上部から水及び荷電粒子分散液Aを送液し、印加電圧を0.6Vとし、分級装置下部にて荷電粒子分散液B及びCを回収した以外は、実施例1と同様にして分級し、評価した。結果を表1に示した。
【0073】
(実施例4)
<分級装置の作製方法>
図7に示した分級装置を作製した。
厚さ7mmのアクリル樹脂板の一面にエンドミルを用いて分割流路を掘り、流路底面を金属メッキし、電界印加用電極を設けた。また、供給路及び排出路はそれぞれ流路へ貫通穴を開けることにより形成した。
その後、ハニカムフィルム(ポリカーボネート(PC)製の自己組織化によるフィルム、目開き10μmであり、厚み6μm、開口率50%、変動係数4%)を挟み、ビスで固定した。これにより、図7に示すようなフィルタ及び電界印加用電極を有する分級装置を作製した。
【0074】
また、図7において微小流路2の長さは30mm、微小流路2は流路幅500μm×深さ500μm、供給路31は、流路幅300μm×深さ300μm、排出路33は流路幅250μm×深さ300μm、排出路35は流路幅250μm×深さ300とした。
送液は、シリンジポンプで行い、送液速度は5ml/時とした。
【0075】
2時間の連続運転を行い、排出路33から排出された荷電粒子分散液B及び排出路35から排出された荷電粒子分散液Cを回収した。回収した荷電粒子分散液B、及び、荷電粒子分散液Cについて、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示した。
【0076】
(比較例1)
電界を印加しない以外は、実施例1と同様にして荷電粒子分散液B及び荷電粒子分散液Cを回収した。荷電粒子分散液Bについては粒径10μm以上の粒子の比率を、荷電粒子分散液Cについては粒径10μm以下の粒子の比率を測定した。結果を表1に示した。
【0077】
【表1】

【符号の説明】
【0078】
1、20:分級装置
2:微小流路
3:隔壁
5:フィルタ
6、7、26、27:分割流路
8、9:電界印加用電極
10、11、30:供給口
12、13、32、34:排出口
14:微粒子
15:粗粒子
31:供給路
33、35:排出路
41:フィルタ孔
42:フィルタ基材
43:補強部
A、B、C:荷電粒子分散液
R1、R2、R3:流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小流路、
前記微小流路内に流体の流れ方向に形成された少なくとも1つの隔壁、
前記隔壁により形成された複数の分割流路、
前記隔壁の全部又は一部に形成されたフィルタ、
前記フィルタに交わる向きに電界を印加する電界印加部、
前記分割流路の少なくとも1つに荷電粒子分散液を供給する供給口、及び、
前記供給口を有する分割流路とは別の少なくとも1つの分割流路に、分級された荷電粒子を排出する排出口、を有することを特徴とする
分級装置。
【請求項2】
前記隔壁が、前記微小流路内に流体の流れ方向に交差し、前記供給口を有する分割流路が次第に狭くなるように傾斜を有する、請求項1に記載の分級装置。
【請求項3】
前記フィルタが鉛直方向に対して傾斜するように形成され、前記荷電粒子分散液が供給される供給口を有する分割流路が前記フィルタの下方に形成された、請求項1又は2に記載の分級装置。
【請求項4】
前記電界印加部が、荷電粒子が水平方向よりも上方に移動するように電界を印加する、請求項1〜3いずれか1つに記載の分級装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1つに記載の分級装置の供給口に荷電粒子分散液を送流する供給工程、
印加した電界により荷電粒子を移動させ、フィルタの目開きよりも小さい荷電粒子のみをフィルタを通過させる分級工程、及び、
前記フィルタを通過した荷電粒子を含む流体を排出口から回収する回収工程、を含むことを特徴とする
分級方法。
【請求項6】
荷電粒子の重力沈降及び電界による移動を利用した、請求項5に記載の分級方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−227823(P2010−227823A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78202(P2009−78202)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】