説明

分繊用ポリエステルフィラメント及びそれから得られる嗜好性飲料抽出フィルター

【課題】嗜好性飲料抽出フィルターとしての安全性に優れ、織物での成形性に優れた嗜好性飲料抽出フィルター用モノポリエステルフィラメントとなし得る分繊用マルチフィラマント、該マルチフィラメントを分繊した嗜好性飲料抽出フィルター用のモノフィラメント、ならびに、該モノフィラメントの織物からなる嗜好性飲料抽出フィルターを提供する。
【解決手段】比重5g/cm以上の重金属をポリエステル製造用触媒として含まないPET系ポリエステルからなり、特にイソフタル酸を5〜20モル%共重合した融点が200℃〜240℃の分繊維用ポリエステルマルチフィメントであって、特定の断面形状と物性を併有するものは、分繊後のモノフィラメントが嗜好性飲料抽出フィルター素材としての安全性に優れ、織物での成形性に優れた嗜好性飲料抽出フィルターとなし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嗜好性飲料抽出フィルター用に適したポリエステルフィラメント及びそれを用いた嗜好性飲料抽出フィルターに関する。特に、ポリエステル製造用触媒として比重5g/cm以上の重金属を実質的に含まないポリエステルであってポリマー成分の20モル%以下の割合でイソフタル酸等が共重合されており、融点が200℃〜240℃の範囲にある異形断面フィラメントであって、分繊後のモノフィラメントが嗜好性飲料抽出フィルターとしての安全性に優れ、織物での成形性に優れた嗜好性飲料抽出フィルターとなし得るポリエステルフィラメント、並びに、該モノフィラメントからなる嗜好性飲料抽出フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、嗜好性飲料抽出フィルター、特に紅茶等に使用される嗜好性飲料抽出フィルターは紙やポリプロピレン又はポリエチレンの不織布が主流として用いられているが、近年の傾向としては、嗜好性飲料抽出バッグ中の紅茶等の茶葉が見える高級感嗜好品として織物製の嗜好性飲料抽出バッグの要求が増えてきている。かかる織物の構成としては嗜好性飲料抽出バッグ中の紅茶等の茶葉が見え易く、中の茶葉が外に出ないという目的から、モノフィラメントを平織りにしたシャー織物が主流である。
【0003】
織物の嗜好性飲料抽出バッグに用いられる嗜好性飲料抽出フィルターの素材繊維としてはナイロンが主流であり、ナイロン繊維からなる抽出用フィルター或いは抽出用バッグは立体形状の保持性に優れ、また変形した場合の弾性回復力にも富んでおり、織物の柔らかさの点での風合いに優れている。しかし、ナイロン繊維からなる抽出用バッグは熱湯中でのナイロン繊維の膨潤による抽出用バッグの寸法変化や嗜好性飲料成分の吸収による色調変化、抽出後容器からナイロン抽出バッグを取り出す際の液切れが悪い事、また、ナイロンの比重の関係で熱湯中での抽出用バッグの沈降性に劣る事等の問題が以前から指摘されていた。
【0004】
このようなナイロン繊維の問題点を改善する目的で、ポリエステル繊維による嗜好性飲料抽出フィルター等が研究されてきており、特許第3459951号では融点差が100℃以上ある芯・鞘2重構造を有するポリエステル系繊維からなる織物の嗜好性飲料抽出フィルターが提案されている。しかしながら、該技術ではポリエステル繊維中にポリエステル製造用触媒として用いられる金属触媒については考慮されておらず、ポリエステル繊維による嗜好性飲料抽出フィルターの環境安全性が求められている。
【特許文献1】特許第3459951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、嗜好性飲料抽出フィルターとしての安全性に優れ、織物での成形性に優れた嗜好性飲料抽出フィルター用モノポリエステルフィラメントとなし得る分繊用マルチフィラマントを提供することにある。本発明の他の目的は、該マルチフィラメントを分繊した嗜好性飲料抽出フィルター用のモノフィラメントを提供することにあり、さらなる目的は、該モノフィラメントの織物からなる嗜好性飲料抽出フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明の、嗜好性飲料抽出フィルター用として好適な分繊用マルチフィラメント、それを分繊した嗜好性飲料抽出フィルター用モノフィラメント、ならびに、それを用いた嗜好性飲料抽出フィルターを完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の分繊用マルチフィラメントは、維繊維を構成するポリマー繰り返し単位の80モル以上%がエチレンテレフタレート単位である共重合ポリエステルで構成され、真比重5.0以上の金属元素の含有量が0.5重量ppm以下であるポリエステルで構成されたマルチフィラメントであって、下記(1)〜(4)の条件を同時に満足することを特徴とする分繊用ポリエステルマルチフィラメントである。
(1)繊維断面が扁平であること
(2)伸度が20〜40%であること
(3)単糸繊度が10〜40デシテックスであること
(4)フィラメント数が4〜20本であること
【0008】
かかる本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメントでは、繊維を構成する共重合ポリエステルが全酸成分の5〜20モル%の割合でイソフタル酸が共重合されたポリエステルであり、かつ、繊維の融点が200℃〜240℃の範囲にあるものが好適である。
【0009】
さらに、本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメントは、繊維断面おける扁平形状が、長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有し、扁平断面繊維の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さB(短軸)の比、すなわち扁平度A/Bが3〜6であるものが好適である。
【0010】
そして、該分繊用ポリエステルマルチフィラメントを構成する共重合ポリエステルが、その合成時に、下記一般式(I)で表されるホスホネート化合物を使用し、
【化1】

かつ、該ポリエステル中のチタン金属元素含有量(Ti)及びリン元素含有量(P)が、下記数式(1)を満足するように合成されたものであることが好ましい。
【数1】

【0011】
また、本発明の嗜好性飲料抽出フィルター用モノフィラメントは、上記の如き本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメントを分繊して得られた嗜好性飲料抽出フィルター用ポリエスモノテルフィラメントである。
そして、嗜好性飲料抽出フィルターは、上記のポリエステルモノフィラメントを少なくとも経糸又は緯糸のいずれか一方として含む織物からなる嗜好性飲料抽出フィルターである。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明によれば、嗜好性飲料抽出フィルターとしての環境安全性に優れ、織物での抽出バッグの成形性、風合等にも優れた嗜好性飲料抽出フィルター用ポリエステルフィラメントを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメント及びそれを分繊して得られたモノフィラメントでは、繊維を構成するポリマーが、少なくとも80モル%以上がエチレンテレフタレート単位で構成され、かつ、20モル%以下の割合で他のポリマー繰り返し単位を含むPET系共重合ポリエステルであって、真比重5.0以上の金属元素の含有量が0〜0.5重量ppmであることが必要である。
【0014】
さらに具体的には、比重5.0以上の金属元素、特にアンチモン、ゲルマニウム等の含有量が0.5重量ppm以下と極めて少ないことが環境安全性の観点から重要であり、このため、該ポリエステル製造用の触媒としてはトリメリット酸チタンが好適に用いられる。さらに、リン化合物として、下記一般式(I)で表されるホスホネート化合物を使用し、
【化2】

しかも、該ポリエステル中のチタン(Ti)及びリン(P)含有量が下記数式(1)を満足するように合成されていることが好ましい。
【数2】

【0015】
本発明のマルチフィラメントでは、繊維形成ポリマーとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)系の共重合ポリエステルを使用するが、中でも、ポリマーを構成する全酸成分の5〜20モル%の割合でイソフタル酸が共重合されており、融点が200〜240℃の範囲にある共重合ポリエステルが好適である。
【0016】
ホモポリエステル繊維(融点255〜260℃)からなるフィルターは、ナイロン繊維からなるフィルターと比べて織物での抽出用バッグを形成する際に用いられる超音波シール法やヒートシール法による溶着性が乏しく、また、一旦溶着しても剥離し易い難点があり、これが従来この分野でポリエステル繊維が多く使用されていない理由でもあった。しかし、繊維の融点が200〜240℃の範囲になるようイソフタル酸を上記の割合で共重合させたポリエチレンテレフタレート系繊維では、超音波シール法等による加工性がナイロン繊維とほぼ同程度まで高く出来る。ただし、繊維の融点が240℃を超える場合は、超音波シール法やヒートシール法による溶着性が乏しく、また、一旦溶着しても剥離し易いため、抽出バックを形成する際のシール部にて糸の解れが発生するため抽出用バッグとして使用に適さない。一方、融点が220℃未満の場合は、超音波シール法やヒートシール法等による溶着性は高く、一旦溶着した後も剥離し難いが、繊維の強度が弱く、分繊工程での糸切れが多くなり工程通過性が悪くなる。したがって、繊維の融点は200〜240℃がよく、特に200〜220℃が好ましい。
【0017】
また、本発明の分繊用マルチフィラメントにあっては、繊度、物性もまた重要である。まず、伸度が20〜40%の範囲内にあることが必要であり、中でも25〜35%が好ましい。伸度が20%を下回ると紡糸工程での糸切れや分繊工程での糸切れが多くなり工程通過性が悪くなる。また、伸度が40%を上回ると延伸斑による未延伸部分が発生し、その部分が濃染化されることにより染め品位が著しく低下する。
【0018】
さらに、本発明により製造される分繊用ポリエステルマルチフィラメントの分繊後の単糸繊度は10〜40デシテックスであることが必要であり、20〜30デシテックスが好ましい。単糸繊度が上記の下限よりも小さくなると分繊が難しくなり、逆に上限より大きくなると巻き取り中にパッケージの型崩れや綾外れが発生して工程通過性が著しく悪くなる。また、マルチフィラメント糸の単糸数は4〜20本、特に4〜10本、であることが分繊性及び分繊工程での工程通過性を確保する観点から好ましい。
【0019】
本発明においては、各単糸(単繊維)の断面は、扁平断面であって、その扁平形状が、長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有するのが好ましい。図2にこのような扁平断面形状の一例を示す。上記の扁平断面繊維では、断面の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さB(短軸)の比で表される扁平度A/Bが3〜6であることが特に好ましい。本発明では、このような特異な繊維断面形状にすることにより、織物での経糸と緯糸の交点の部分における繊維断面の接触点が、丸断面(円形断面)繊維の場合より多くなり、織物での抽出用バッグを形成する際に用いられる超音波シール法やヒートシール法による溶着性が向上する。また、通常のポリエステル繊維からなる織物等に較べて著しく柔らかくなりまた風合いも優れるため、嗜好性飲料抽出フィルター又は抽出バッグに適した物性を有する。さらに、この扁平断面繊維からなる織物は、丸断面繊維と同じ織物密度構成であっても丸断面繊維の織物に比べ、織物での目開き(メッシュ)が小さく、これにより嗜好性飲料抽出フィルターの性能が向上する。しかも、抽出バッグの中にある紅茶等の茶葉が熱湯中にこぼれ難いという効果が見られる。
【0020】
本発明におけるマルチフィラメントを構成するポリエステルの固有粘度(ο−クロロフェノール、35℃で測定)は0.40〜0.80の範囲にあることが好ましく、さらに0.45〜0.75、特に0.50〜0.70、の範囲が好適である。固有粘度が0.40未満であると、繊維の強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が0.80を超えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があるため不経済である。
【0021】
本発明におけるポリエステルマルチフィラメントは、必要に応じて、繊維中に少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明に係る嗜好性飲料抽出フィルター用モノフィラメントは、上記の如きポリエステルマルチフィラメントを従来公知の方法で分繊したものであり、したがって、その繊度は単糸繊度が10〜40デシテックスである。この際、上記の分繊用マルチフィラメントは、フラットヤーンのままで分繊してもよく、仮撚加工後に分繊してもよい。このように分繊したモノフィラメントを経糸又は緯糸あるいはその両方に用いて製織して織物として嗜好性飲料抽出フィルターとして好適に使用することができる。また、必要に応じ、これをバックに成形することで、良好な嗜好性飲料抽出バッグとすることができる。いずれの場合も、得られたモノフィラメントからなる織物は、紅茶、緑茶、その他の嗜好飲料用のフィルターとして有用であるが、特に経糸に丸(円形)断面繊維を用い、緯糸に上記の扁平断面繊維を用いた織物構成にするのが好ましい。織物の組織としては一般に平織物が適当であるが、綾織物やその他の組織であっても構わない。得られた織物を適当なサイズに裁断して所定部分を超音波シール、ヒートシール等の方法で融着させることで、袋状とすることもできる。
【0023】
本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメントの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、紡糸口金1より吐出した溶融マルチフィラメントを、紡糸口金直下に設けた50〜200℃の雰囲気温度に保持した長さ50〜200mmの保温領域10を通過させて急激な冷却を抑制した後、冷却風11によりこの溶融マルチフィラメントを急冷して固体マルチフィラメントに変え、オイリングローラー2にてモノフィラメントの状態でオイリングを施し、糸分けガイド3を通った後、集束してマルチフィラメントの状態にして70℃〜120℃に加熱した第一ゴデットローラー4とそのセパレートローラー5に巻き付けで、500〜2000m/分の速度で引取り、引き続き、巻き取ることなく130〜160℃に加熱した、第一ゴデットローラー4よりも速い周速で回転する第二ゴデットローラー6とそのセパレートローラー7に巻き付け、上記第一ゴデットローラー4と第二ゴデットローラー6との間で2.0〜5.0倍に延伸し、続いて、巻き取り機8により第二ゴデットローラー6よりも低速で巻き取ってマルチフィラメントパッケージを得る方法を採用することができる。
【0024】
本発明の分繊用ポリエステルマルチフィラメントはそのまま分繊工程に供給し、分繊して使用されたり、仮撚加工を施して捲縮を付与した後に分繊して、フィルター用途に使用される。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0026】
(1)繊維中の比重5.0以上の金属成分の分析(真比重5.0以上の金属元素の含有量)
繊維サンプルを硫酸アンモニウム、硫酸、硝酸、過塩素酸とともに混合して約300℃で9時間湿式分解後、蒸留水で希釈し、理学製ICP発光分析装置(JY170 ULTRACE)を用いて定性分析し、比重5.0以上の金属元素の存在の有無を確認した。そして、1重量ppm以上の存在が確認された金属元素について、その元素含有量を示した。
(2)伸度
JIS−L−1013に基づいて定速伸長引張試験機であるオリエンテック(株)社製テンシロンを用いて、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分にて測定した。
(3)固有粘度
ポリエステルポリマーの固有粘度は、オルソクロロフェノール溶液について、35℃において測定した粘度の値から求めた。
(4)分繊断糸率(%)
分繊用ポリエステルマルチフィラメントを巻き取った10kg巻ドラム状パッケージを、単糸1本1本に糸切れなく分繊速度500m/分にて分繊できた分繊用マルチフィラメントの割合を満管率(%)で表す。なお、分繊されたモノフィラメントの巻量は1kg巻とする。合否判定基準は80%以上を合格とした。
(5)熱処理(200℃)での織物の交点溶着性、抽出バッグ形成時の超音波シール性
抽出バック製造の専門家によるテストにより評価した。
(6)風合い
織物の専門家による官能検査等により、良否を判定した。
【0027】
[実施例1]
重合触媒としてチタン化合物としてトリメット酸チタンを5mmol%及びリン化合物としてトリエチルホスホノアセテートを30mmol%含有し、イソフタル酸成分をポリマー成分の17mol%の割合で共重合させた固有粘度0.650のポリエチレンテレフタレートイソフタレート共重合体(PETI)のペレットを140℃で5時間乾燥した。しかる後、溶融紡糸工程で、吐出孔径0.55mmの孔5ホールが同心円状に配列されている2個の紡糸口金から、それぞれ、ポリマー吐出温度280℃で、単一吐出孔当りの吐出量が8.0g/分となるように押し出して、モノフィラメントの状態でオイリングを施し、2つの紡糸口金から吐出されたモノフィラメントを合糸してフィラメント本数10本のマルチフィラメントとして、100℃に加熱した第一ゴデットローラーで16ターンさせて、700m/分で引き取りつつ、第一ゴデットローラーの4.4倍の速度で第二ゴデットローラーに10ターンさせ4.4倍に延伸した後、フィラメント本数10本のマルチフィラメントとして巻き取った。
この条件で丸断面繊維と扁平度4の長軸方向に丸断面単糸の4個が直線状に接合した扁平断面繊維の2種のマルチフィラメントを製造した。得られた各マルチフィラメントの物性は表1に示すとおりであった。
【0028】
次いで、各マルチフィラメントについて、それぞれ分繊を行い、得られたモノフィラメントで経糸を丸断面繊維とし、緯糸を扁平断面繊維として平織物[タフタ、27dTexモノフィラメント、打込数(97×97/インチ)]を製織し、精錬を行った後、水洗い乾燥後、テンションをかけた状態で加熱空気中(200℃)で熱処理し、糸の交点に軽い溶着を付与して得られた平織物を、超音波シール法より抽出バッグを形成した。
この条件で巻き取られた丸断面繊維と扁平度4の長軸方向に丸断面単糸の4個が直線状に接合した扁平断面繊維のマルチフィラメントは表1に示すとおり、ともに分繊性も良好であった。また、上記の平織物は超音波シール法による溶着性が良好であり、織物の風合いも柔らかく嗜好性飲料抽出フィルター又は抽出バッグに適したものであった。
【0029】
[比較例1]
繊維断面を経糸及び緯糸共に丸断面繊維を使用した以外は実施例1と同じ条件で抽出バッグを形成した。その結果を表1に併記する。
【0030】
[比較例2]
重合触媒としてチタン化合物としてトリメット酸チタンを5mmol%及びリン化合物としてトリエチルホスホノアセテートを30mmol%含有し、固有粘度0.650のポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を使用した以外は実施例1と同じ条件で抽出バッグを形成した。その結果を表1に併記する。
【0031】
【表1】

【0032】
表1からも明らかなように、繊維融点が205℃で経糸に丸断面、緯糸に扁平断面を使用した実施例1の織物は、超音波シール性も良好であり、抽出バッグとしての風合いも柔らかく良好なものであった。これに対し、繊維融点が205℃で経糸、緯糸ともに丸断面を使用した比較例1の織物は、超音波シール後の解れが何度か見られ、超音波シール性が良好であるとは言えず、抽出バッグとしての風合いも硬く良いものであるとは言い難いものであった。また、繊維融点が256℃のPETフィラメントで経糸に丸断面、緯糸に扁平断面を使用した比較例2の織物は織物の風合いは、比較的柔らかいものであるが、超音波シールが悪く抽出バッグとしては使用出来ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のポリエステルフィラメントは織物嗜好性飲料抽出フィルター素材として有用であり、特に紅茶等に使用される抽出バッグ用としてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施する紡糸機の概略を示す模式図である。
【図2】本発明の分繊用マルチフィラメントの繊維断面の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1:紡糸口金
2:オイリングローラー
3:糸分けガイド
4:第一ゴデットローラー
5:第一セパレートローラー
6:第二ゴデットローラー
7:第二セパレートローラー
8:巻き取り機
9:マルチフィラメントパッケージ
10:保温領域
11:冷却風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を構成するポリマー繰り返し単位の80モル以上%がエチレンテレフタレート単位である共重合ポリエステルで構成され、真比重5.0以上の金属元素の含有量が0.5重量ppm以下であるポリエステルで構成されたマルチフィラメントであって、かつ、下記(1)〜(4)の条件を同時に満足することを特徴とする嗜好性飲料抽出フィルター用として好適な分繊用ポリエステルマルチフィラメント。
(1)繊維断面が扁平であること
(2)伸度が20〜40%であること
(3)単糸繊度が10〜40デシテックスであること
(4)フィラメント数が4本以上20本以下であること
【請求項2】
繊維を構成する共重合ポリエステルが全酸成分の5〜20モル%の割合でイソフタル酸が共重合されたポリエステルであり、かつ、繊維の融点が200〜240℃の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の分繊用ポリエステルマルチフィラメント。
【請求項3】
繊維断面おける扁平形状が、長軸方向に丸断面単糸の3〜6個が直線状に接合したような形状を有し、扁平断面繊維の最大径の長さA(長軸)と該長軸に直交する最大径の長さB(短軸)の比で表される扁平度A/Bが3〜6であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の分繊用ポリエステルマルチフィラメント。
【請求項4】
繊維を構成する共重合ポリエステルが、その合成時に、下記一般式(I)
【化1】

で表されるホスホネート化合物を使用し、かつ、該ポリエステル中のチタン金属元素含有量(Ti)及びリン元素含有量(P)が、下記数式(1)
【数1】

を満足するように合成されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の分繊用ポリエステルマルチフィラメント。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の分繊用ポリエステルマルチフィラメントを分繊して得られた嗜好性飲料抽出フィルター用ポリエスモノテルフィラメント。
【請求項6】
請求項5記載のポリエスモノテルフィラメントを少なくとも経糸又は緯糸として含む織物からなる嗜好性飲料抽出フィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−45244(P2008−45244A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223199(P2006−223199)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】