説明

分解性粒子及び関連する方法

【課題】分解性粒子を製造するための方法を提供すること。
【解決手段】分解性重合体及び1つの溶媒を提供する工程であって、溶媒は、淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液を含む工程と;分解性重合体と溶媒とを合わせ分解性重合体組成物を形成する工程と;分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;及び、分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を分解性重合体組成物に対して適用する工程とを含む方法を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての相互参照)
本出願は、2006年7月25日に出願された米国出願第11/492,642号の一部継続出願であり、その全ての開示が参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
本発明は、一般に、分解性粒子を製造するための方法及び地下への応用におけるこのような分解性粒子の使用に関連した方法に関する。
【0003】
分解性粒子には、地下への応用、例えば坑井に使用したときに、不可逆的分解を受けることができる分解可能な材料(これらは、分解性重合体であることが多い)を含む。本明細書に使用される「粒子」という用語は、小板、削りくず、線維、薄片、薄帯、棒、条片、球状体、環状体、ペレット、錠剤又はその他のいずれかの適切な形状の、物理的形状を有し得る粒子をいう。本明細書に使用される「不可逆的」という用語は、分解可能な材料が原位置で(例えば、坑井内で)分解するはずであるが、分解後に原位置で(例えば、坑井において)再結晶又は再び固化するはずがないことを意味する。「分解」又は「分解可能な」という用語は、分解可能な材料が受けるであろう、例えば不均一な分解(すなわち全体侵食(bulk erosion)及び均一な(すなわち表面侵食(surface erosion))分解という、加水分解性分解の2つの相対的に極端な事例の両方、並びにこれら2つの分解の間の任意の段階の分解を指す。この分解は、とりわけ化学反応もしくは熱反応の結果であることができ、又は反応は、放射線によって誘導される。本明細書に使用される「重合体」という用語は、いずれの特定の重合度も意味せず;例えば、オリゴマーは、この定義内に包含される。
【0004】
分解性重合体の分解性は、少なくとも部分的には、そのバックボーン構造に依存することが多い。例えば、バックボーン内に加水分解し得る、及び/又は酸化し得る結合が存在すると、本明細書に記述したように分解するであろう材料を生じることが多い。このような重合体が分解する速度は、反復単位、組成物、配列、長さ、分子幾何学、分子量、形態(例えば、結晶化度、球晶のサイズ及び配向)、親水性、疎水性、表面領域及び添加物のタイプに依存する。また、重合体が供される環境、例えば温度、湿気の存在、酸素、微生物、酵素、pHその他は、重合体がどのくらい分解するかに影響を及ぼし得る。
【0005】
分解性重合体の物理的特性は、反復単位の組成、鎖の柔軟性、極性基の存在、分子量、分枝度、結晶化度、配向その他などのいくつかの要因に依存する。例えば、短鎖分枝は、重合体の結晶化度を減少させ、一方、長鎖分枝は、溶融粘度を低下させ、とりわけ張力-硬化挙動と共に伸展粘性を与える。利用される材料の特性は、これを別の重合体と混合し、及び共重合することによって、又は巨大分子構造(例えば、高分枝重合体、星型又はデンドリマー、その他)を変更することによって、さらに目的に合わせることができる。このようないずれの適切な分解性重合体(例えば、疎水性、親水性、分解速度、その他)の特性も、選択された官能基をポリマー鎖の間に導入することによって目的に合わせることができる。
【0006】
地下への応用に有用な分解性粒子を(例えば、酸前駆体、流体損失制御粒子、転換剤、濾過ケーク成分、掘削流体添加物、セメント添加物、その他として)作製するために使用される一般的方法は、特にエマルジョン法及び溶液沈殿法を含む。エマルジョン法を使用して分解性粒子を製造するためには、典型的には、ポリ(乳酸)などの分解可能な重合材料を、ハロゲン化溶媒、例えば塩化メチレンに溶解して、重合体溶液を形成し、その後、次いで水及び界面活性物質を十分な剪断力にて重合体溶液に添加して、エマルジョンを形成させる。エマルジョンの形成後、次いで真空ストリッピング又は水蒸気ストリッピングによってエマルジョンから溶媒を除去して、本質的に溶媒を含まない重合体の粒子を水相に残してもよい。次いで、水を除去して、粒子を遠心分離、濾過又は噴霧乾燥によって収集してもよい。同様に、溶液沈殿法での分解性粒子の製造には、重合体溶液を形成するために、水混和性溶媒に分解性重合体を溶解することを含む。次いで、十分な剪断を使用して界面活性物質及び/又は水を重合体の溶液に添加し、その結果溶媒が重合体溶液から分離して、本質的に溶媒を含まない重合体の粒子を残し、これらの粒子を既に論議したのと同じ方法によって収集してもよい。
【0007】
分解性粒子を作製する現法に付随した1つの問題は、界面活性物質及び/又は複数の溶媒が必要なことである。エマルジョン法及び溶液沈殿法は共に、1種以上の溶媒及び/又は界面活性物質を使用することが必要である。さらにまた、これらの方法に使用してもよいハロゲン化溶媒は、健康及び環境の懸念をもたらすであろう。したがって、界面活性物質及び/又はハロゲン化溶媒を含む複数の溶媒の使用を必要としない分解性粒子を作製する方法を有することは、有益かつより費用効果的であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(要旨)
本発明は、一般に、分解性粒子を製造するための方法及び地下への応用におけるこのような分解性粒子の使用に関連した方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施態様において、本発明は、分解性重合体及び1つの溶媒を提供する工程であって、溶媒が、淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液を含む工程と;分解性重合体と溶媒とを合わせ分解性重合体組成物を形成する工程と;分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を分解性重合体組成物に対して適用する工程とを含む方法を提供する。
【0010】
もう一つの実施態様において、本発明は、分解性重合体と淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液から本質的になる溶媒とを提供する工程と;分解性重合体と溶媒とを合わせて分解性重合体組成物を形成する工程と;分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を分解性重合体組成物に対して適用する工程と;分解性粒子の少なくとも一部を処理流体内に取り込む工程とを含む方法を提供する。
【0011】
さらにもう一つの実施態様において、本発明は、分解性重合体と1つの溶媒とを提供する工程であって、溶媒が、淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液を含む工程と;分解性重合体と溶媒とを合わせて分解性重合体組成物を形成する工程と;分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を分解性重合体組成物に対して適用する工程と;分解性粒子の少なくとも一部をグラベルパック組成物内に取り込む工程と;分解性粒子を分解させる工程とを含む方法を提供する。
本発明の特徴及び利点は、以下に続く実施態様の記述を読むことにより、当業者には容易に明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、一般に、分解性粒子を製造するための方法及び地下への応用におけるこのような分解性粒子の使用に関連した方法に関する。本発明の方法及び組成物によって提供される多くの利点のうちの1つは、界面活性物質及び/又は複数の溶媒を用いずに、本発明の分解性粒子を作製する能力である。加えて、もう一つの利点は、本発明の分解性粒子は、健康及び環境の懸念をもたらし得るハロゲン化溶媒を用いずに作製し得ることである。
【0013】
本発明の方法によれば、分解性重合体組成物を形成するために、分解性重合体を1つの溶媒と組み合わせる。次いで、分解性重合体組成物中の溶媒が、分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる。本明細書に使用される「可塑化する」という用語は、分解性重合体の軟化又は柔軟性の増大をいう。任意に、分解性重合体組成物は、分解性重合体の可塑化を促進するために、撹拌されても、及び/又は穏やかに加熱されてもよい。いずれの適切な混合及び/又は加熱装置を使用してもよい。分解性重合体が少なくとも部分的に可塑化された後、次いで、分解性粒子が形成し始めるように十分な剪断を分解性重合体組成物に適用してもよい。一部の実施態様において、適用される剪断は、毎分約5000回転(「rpm」)以上であってもよい。高速分散器、ジェットノズル、インラインミキサー(種々のスクリーンを伴う)、その他を含むが、これらに限定されるわけではないいずれの適切な剪断装置をこれらの方法に使用してもよい。
【0014】
本発明の方法と組み合わせて使用してもよい適切な分解性重合体の例には、脂肪族ポリエステル;ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ε-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシエステルエーテル);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(無水物);ポリカーボネート;ポリ(オルソエステル);ポリ(アミノ酸);ポリ(エチレンオキサイド);ポリ(ホスファゼン);ポリエーテルエステル、ポリエステルアミド、ポリアミド及びこれらの共重合体、組み合わせ又は誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。本明細書に使用される「共重合体」という用語は、2つの重合体の組み合わせに限定されないが、重合体、例えばターポリマーその他の任意の組み合わせを含む。これらの適切な重合体の中で、ポリ(乳酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)及びポリ(ラクチド)-コ-ポリ(グリコリド)共重合体などの脂肪族ポリエステルが好ましい。一部の実施態様において、分解性重合体は、ポリ(乳酸)であってもよい。その他の実施態様において、分解性重合体は、ポリ(オルソエステル)であってもよい。また、加水分解性の分解に供されるその他の分解性重合体も適しているであろう。適切な分解性重合体の選択は、特定の適用及び含まれる条件に依存するであろう。考慮するその他の指針には、得られる分解生成物、必要な分解の程度のために必要とされる時間、及び所望の分解結果(例えば、空隙)を含む。また、特定の分解性重合体の相対的な結晶性及び非結晶質の程度は、分解性粒子の相対的硬度に影響を及ぼし得る。その他の適切な分解性重合体の例には、望まれている有用な、又は望ましい分解生成物を、例えば酸を放出する分解性重合体を含む。このような分解生成物は、坑井への応用に、例えばその中に(濾過ケーク内などに)存在する粘性をもたせた処理流体又は酸可溶性成分を破壊するために有用であろう。
【0015】
適切な脂肪族ポリエステルは、下記に示した反復単位の一般式を有してもよい:
【化1】

式中、nは75〜10,000の間の整数であり、Rは、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、アセチル、ヘテロ原子又はこれらの混合物である。これらの脂肪族ポリエステルの中では、ポリ(ラクチド)が好ましい。ポリ(ラクチド)は、縮合反応によって乳酸から、又はより一般的には環状のラクチド単量体の開環重合によって合成される。乳酸及びラクチドは両方とも、同じ繰り返し単位を達成することができるので、本明細書に使用される一般的用語のポリ(乳酸)は、ラクチド、乳酸又はオリゴマーなどから重合体が作製された方法に関する何の限定も伴わず、かつ重合度又は可塑化のレベルに関係なく、式Iをいう。ラクチド単量体は、一般に3つの異なる形態:2つの立体異性体Lラクチド-及びD-ラクチド、並びにラセミ体D,L-ラクチド(メソ-ラクチド)で存在する。乳酸のオリゴマー及びラクチドのオリゴマーは、以下の式によって定義される:
【化2】

式中、mは、整数2≦m≦75である。好ましくは、mは、整数及び2≦m≦10である。これらの制限は、それぞれ、約5,400以下、及び約720以下の平均分子量に対応する。ラクチド単位のキラリティーは、とりわけ分解速度、並びに物理的及び機械的特性を調整するための手段を提供する。例えばポリ(L-ラクチド)は、比較的遅い加水分解速度をもつ半結晶性重合体である。これは、分解性粒子のより遅い分解が望まれる本発明の適用に望ましいであろう。ポリ(D,L-ラクチド)は、より速い加水分解速度を生じる、より非晶質の重合体であり得る。これは、より迅速な分解が適しているその他の応用のために適するであろう。乳酸の立体異性体を、本発明に従って使用するために個々に、又は組み合わせて使用してもよい。加えて、これらを、例えばグリコリド又はε-カプロラクトン、1,5-ジオキセパン-2-オン、トリメチレンカルボネート又はその他の適切な単量体のようなその他の単量体と共重合して、異なる特性もしくは分解時間をもつ重合体を得てもよい。加えて、とりわけ立体異性体を混和すること、共重合すること、もしくはさもなければ混合することか、高分子量及び低分子重量ポリ(ラクチド)を混和すること、共重合すること、もしくはさもなければ混合することによって、又はポリ(ラクチド)を別のポリエステルもしくはポリエステル樹脂と共に混和すること、共重合すること、又はさもなければ混合することによって、乳酸立体異性体を修飾して本発明に使用することができる。
【0016】
本発明における使用に適した溶媒は、とりわけ分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化するべきである。例えば、本発明における使用に適した溶媒は、分解性重合体を可塑化することにより、分解性重合体を軟化し、及び/又は柔軟性を増大するであろう。分解性重合体を可塑化することができるいずれの溶媒も、本発明における使用に適しているであろう。適切な溶媒の例には、淡水、塩水、鹹水もしくは海水を含むが、これらに限定されるわけではない水溶液、又は本発明に従って使用されるその他の成分と、もしくは地下地層と悪い方向に反応しない任意のその他の水に基づいた液体;メタノール;エタノール;炭酸プロピレン;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;イソプロパノール;グリセロールポリエチレンオキシドなどの多価アルコール;オリゴマー乳酸;クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリブチルオリゴマー、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル及びクエン酸アセチルトリエチル);グルコースモノエステル;部分脂肪酸性エステル;PEG モノラウレート;トリアセチン;ポリ(e-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチレート);グリセリン-1-ベンゾアート-2,3-ジラウレート;グリセリン-2-ベンゾアート-1,3-ジラウレート;ビス(ブチルジエチレングリコール)アジパート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリンジアセタートモノカプリレート;ジアセチルモノアシルグリセロール;ポリプロピレングリコール(及びこれらのエポキシ誘導体);ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート;グリセロール;エチルフタリルエチルグリコレート;ポリ(エチレンアジパート)ジステアレート;ジ-イソ-ブチルアジパート;及びこれらの組み合わせ又は誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。一部の実施態様において、溶媒は、本質的に水溶液からなっていてもよい。どの特定の溶媒を使用するかの選択は、特定の分解性重合体、分解性重合体組成物中の分解性重合体の濃度及びその他の同様の要因によって決定してもよい。本発明の方法は、1つの溶媒を使用することが必要なだけであるが、一部の実施態様において、この溶媒は、適切な溶媒の組み合わせ又は水溶液で希釈された適切な溶媒であってもよい。ある実施態様において、溶媒は、少なくとも部分的に、分解性重合体を可塑化するために十分な量で含まれるべきである。一部の実施態様において、溶媒は、容積の約1%〜約99.9%の範囲の量で分解性重合体組成物に含まれてもよい。その他の実施態様において、溶媒は、容積の約5%〜約80%の範囲の量で分解性重合体組成物に含まれてもよい。もう一つの実施態様において、溶媒は、容積の約10%〜約50%の範囲の量で分解性重合体組成物に含まれてもよい。
【0017】
加えて、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、その他などのハロゲン化溶媒を、分解性重合体を可塑化するために使用してもよいが、これらの溶媒は、安全懸念、環境問題の可能性、引火点及び曝露可能性に関する安全性問題の可能性、並びに相対的コストのために、望ましくないであろう。
【0018】
いくつかの要因に応じて、本発明の方法から作製される分解性粒子の平均サイズ分布を変更してもよい。これらの要因には、使用する溶媒のタイプ及び/又は量、使用する特定の分解性重合体、分解性重合体の分子量、分解性重合体組成物中の分解性重合体の濃度、適用される剪断の量、特定の添加物の存在、温度条件、その他を含むが、これらに限定されるわけではない。望まれる平均粒子サイズ分布は、これらの要因のいずれかを修正することによって望まれるとおりに修正することができる。本開示の利益がある当技術分野の当業者は、所望の粒子サイズ分布を達成するために、修正すべき特定の要因を同定することができるであるであろう。
【0019】
本発明の分解性粒子は、使用に応じて、処理流体の有無にかかわらず、地下への応用に使用することができる。本明細書に使用される「処理流体」という用語は、所望の機能と一緒に、及び/又は所望の目的のために地下への応用に使用してもよい任意の流体をいう。「処理流体」という用語は、流体又はこれらのいずれかの成分によるいずれの特定の作用も意味しない。本開示の利益がある当技術分野の当業者は、いつ分解性粒子を処理流体と組み合わせて使用してもよく、又は使用しなくてもよいかを認識することができるであろう。1つの重要な点は、処理流体に分解性粒子を取り込む能力である。もう一つの重要な点は、分解性粒子の分解のために望ましいタイミングである。もう一つの重要な点は、選ばれた処理流体中での必要とされる分解性粒子の濃度である。
【0020】
分解性粒子は、加工要因、使用される分解性重合体のタイプなどに応じて、相対硬度、柔軟性、分解速度、その他など、異なる特性を有してもよい。作製される分解性粒子の具体的特性は、特定のプロセスパラメーター(組成物を含む)を変更することによって変更してもよく、これは本開示の利益がある当技術分野の当業者には明らかであろう。特定の使用に応じて、分解性粒子は、分解により空隙を作製すること、その後に特定の機能のために有用となるであろう一定の望ましい分解生成物を放出すること、及び/又は一時的に液体の流れを制限することを含むが、これらに限定されるわけではないいくつかの目的を有してもよい。作製される分解性粒子を使用することができる地下への応用の例には、流体損失制御粒子、転換剤、濾過ケーク成分、掘削流体添加物、セメント添加物、その他の酸前駆体成分などへの応用を含むが、これらに限定されるわけではない。いくつかの例の具体的な非限定的実施態様を後述してある。
【0021】
一部の方法において、分解性粒子は、割裂の導電率を増大するために使用してもよい。これは、分解性粒子を、プロップ剤粒子を含む破砕流体内に取り込む工程と、プロップ剤粒子により、割裂内に分解性粒子を含むプロップ剤マトリックスを形成させる工程と、及び分解性粒子を、プロップ剤マトリックス中に空隙を形成するように分解させる工程とによって達成してもよい。「プロップ剤マトリックス」という用語は、プロップ剤粒子のいくらかの硬化体をいう。
地下への応用のもう一つの例において、分解性粒子は、地下地層内の流体を分流するために使用してもよい。
【0022】
もう一つの例において、分解性粒子は、地下地層の一部に対していくらかの程度の砂処理を提供するようにデザインされた組成物に使用してもよい。このような方法の例において、分解性粒子は、いくらかの程度の砂処理を提供するような様式で坑井中に配置されたセメント組成物中に取り込まれてもよい。このようなセメント組成物の例には、水硬性セメント、ポンプ可能なスラリーを形成するのに十分な水及び本発明の方法によって形成された分解性粒子を含む。任意に、セメンティング組成物に使用されるその他の添加物を添加してもよい。
【0023】
もう一つの例において、分解性粒子は、地下地層を透過する坑井内のセメンティングケーシングなどの、主要なセメンティング作業に使用されるセメント組成物に取り込まれてもよい。このようなセメント組成物の例には、水硬性セメント、ポンプ可能なスラリーを形成するのに十分な水及び本発明の方法によって形成された分解性粒子を含む。任意に、セメンティング組成物に使用されるその他の添加物を添加してもよい。
【0024】
もう一つの例において、分解性粒子は、グラベルパック組成物に取り込まれてもよい。分解性粒子の分解により、酸に基づいた任意の分解生成物を使用して、地下地層内にある濾過ケークの一部を含むが、これらに限定されるわけではない地下地層内の酸可溶性成分を分解してもよい。
【0025】
もう一つの例において、分解性粒子を、粘性をもたせた処理流体(例えば、破砕流体又はグラベルパック液体)と共に取り込んで、粘性をもたせた処理流体のためのブレーカーとして作用させる(すなわち、少なくとも部分的に、粘性をもたせた処理流体の粘性を減少させる)ことができる
もう一つの例において、分解性粒子は、濾過ケークにおける自己分解する結合剤として使用してもよい。
【0026】
もう一つの例において、分解性粒子は、フラクチャリングなどの地下処置の間に、少なくとも部分的に流体損失を制御するか、又は最小化するための流体損失制御添加物として使用してもよい。
もう一つの例において、分解性粒子は、地下地層における表面を洗浄又は切断することと組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0027】
本発明のより優れた理解を容易にするために、好ましい実施態様の以下の実施例を示してある。以下の実施例は、決して本発明の範囲を限定、又は定義するものと解釈されるべきではない。
【0028】
(実施例1)
本発明の分解性粒子は、100グラム(「g」)の非晶質ポリ(乳酸)を1000ミリリットル(「mL」)のメタノール中に置くことによって作製した。次いで、生じる溶液を110°F以下まで撹拌しながら加熱し、およそ3時間保持してポリ(乳酸)を可塑化させた。その後、メタノールを傾瀉して、可塑化したポリ(乳酸)を放置し、次いで500mLのメタノールを可塑化されたポリ(乳酸)に添加した。次いで、溶液を、大型スクリーンをもつSilverson L4RT-A Lab Mixerにおいて、5500rpmにておよそ5分間、7000rpmにて10分及び最後に9500rpmにて10分間剪断した。次いで、生じる分解性粒子を、これらを溶液の底面に定着させて、メタノールを傾瀉することによって収集した。図1をここで参照し、生じる分解性粒子の粒度分布を示してある。加えて、作製した粒子のメジアン粒子径は、およそ164μmであったことが分かる。
【0029】
(実施例2)
本発明の分解性粒子は、100グラム(「g」)の結晶性ポリ(乳酸)を1000ミリリットル(「mL」)の淡水に置くことによって作製した。次いで、溶液を、およそ0.056インチの穴径を有する大型スクリーンを備えたSilverson L4RT-A Lab Mixerにおいて、5500rpmにておよそ5分間及び7000rpmにて10分間剪断した。次いで、 Lab Mixerの大きなスクリーンをおよそ0.015インチの穴径を有する小さなスクリーンに置き換えて、溶液を9500にて25〜30分間剪断した。次いで、生じる分解性粒子を、これらを溶液の底面に定着させて、水を傾瀉することによって収集した。図2をここで参照し、生じる分解性粒子の粒度分布を示してある。加えて、作製した粒子のメジアン粒子径は、およそ30μmであったことが分かる。
【0030】
したがって、本発明は、言及した目的及び利点、並びにそれらに固有のものを達成するために十分に適応されている。上に開示した詳細な実施態様は、例証のみであり、本発明は、本明細書の教示の利益を有する当業者に明白な、異なってはいるが同等の様式で改変、及び実施してもよい。当業者によって多数の変更がなされてもよい一方、このような変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の精神に包含される。さらにまた、上記の特許請求の範囲に記載されているもの以外に、本明細書に示した構成又はデザインの詳細に対する限定は意図されない。したがって、上に開示した特定の例示の実施態様を変更、又は改変してもよいこと、及び全てのこのようなバリエーションが本発明の範囲及び精神の範囲内とみなされることが明らかである。特に、本明細書に開示されたあらゆる値の範囲(例えば、「約aから約b」、又は同等に、「およそaからb」、又は同等に、「およそa〜b」)は、値のそれぞれの範囲の冪集合(全てのサブセットのセット)を指すものとして理解されるべきである。特許請求の範囲における用語は、他に明確に、及び特許権所有者によって明らかに定義されない限り、これらの明白な通常の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
これらの図面は、本発明のいくつかの実施態様の一定の態様を図示しており、本発明を限定し、又は定義するために使用されるべきではない。
【図1】本発明の方法の結果として作製されるいくつかの分解性粒子の粒度分布を視覚的に図示する。
【図2】本発明の方法の結果として作製されるいくつかの分解性粒子の粒度分布を視覚的に図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解性重合体及び1つの溶媒を提供する工程であって、前記溶媒が、淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液を含む工程と;
前記分解性重合体と前記溶媒とを合わせて分解性重合体組成物を形成する工程と;
前記分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;及び、
分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を前記分解性重合体組成物に対して適用する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記溶媒がハロゲン化されていない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程が、前記分解性重合体組成物を撹拌する工程及び/又は加熱する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記十分な剪断を適用する工程が、毎分約5000回転数の量で剪断を適用する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記分解性重合体が:脂肪族ポリエステル;ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ε-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシエステルエーテル);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(無水物);ポリカーボネート;ポリ(オルソエステル);ポリ(アミノ酸);ポリ(エチレンオキサイド);ポリ(ホスファゼン);ポリエーテルエステル;ポリエステルアミド;ポリアミド;及びこれらの共重合体、組み合わせ又は誘導体からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記分解性重合体がポリ(乳酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)及びポリ(ラクチド)-コ-ポリ(グリコリド)共重合体からなる群より選択される脂肪族ポリエステルである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が以下の少なくとも1つ、すなわち:メタノール;エタノール;炭酸プロピレン;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;イソプロパノール;多価アルコール;グリセロールポリエチレンオキシド;オリゴマー乳酸;クエン酸エステル;クエン酸トリブチルオリゴマー;クエン酸トリエチル;クエン酸アセチルトリブチル;クエン酸アセチルトリエチル;グルコースモノエステル;部分脂肪酸エステル;PEG モノラウレート;トリアセチン;ポリ(e-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチレート);グリセリン-1-ベンゾアート-2,3-ジラウレート;グリセリン-2-ベンゾアート-1,3-ジラウレート;ビス(ブチルジエチレングリコール)アジパート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリンジアセタートモノカプリレート;ジアセチルモノアシルグリセロール;ポリプロピレングリコール(及びこれらのエポキシ誘導体);ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート;グリセロール;エチルフタリルエチルグリコレート;ポリ(エチレンアジパート)ジステアレート;ジ-イソ-ブチルアジパート;及びこれらの組み合わせ又は誘導体をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が容積の約10%〜約50%の範囲の量で前記分解性重合体組成物中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記分解性粒子の少なくとも一部を地下用途に使用して、前記地下地層内の流体を分流する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記分解性粒子の少なくとも一部を、粘性をもたせた処理流体内に取り込む工程をさらに含み、前記分解性粒子は、前記粘性をもたせた処理流体のための粘性ブレーカーとして作用することができる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記分解性粒子の少なくとも一部をグラベルパック内に取り込む工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、前記分解性粒子の少なくとも一部を濾過ケーク内に取り込む工程をさらに含み、前記分解性粒子の少なくとも一部は、前記濾過ケークにおいて分解可能な結合剤として作用することができる方法。
【請求項13】
前記分解性粒子の少なくとも一部を、水硬性セメント及び水を含むセメント組成物中に置くことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記分解性粒子の少なくとも一部を、プロップ剤粒子を含む破砕流体内に取り込む工程と;前記プロップ剤粒子の一部により、地下地層の割裂内に少なくとも複数の前記分解性粒子を含むプロップ剤マトリックスを形成させる工程と;及び前記分解性粒子を、前記プロップ剤マトリックス中に少なくとも1つの空隙を形成するように分解させる工程とをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液から本質的になる分解性重合体と溶媒とを提供する工程と;
前記分解性重合体と前記溶媒とを合わせて分解性重合体組成物を形成する工程と;
前記分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;
分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を前記分解性重合体組成物に対して適用する工程と;及び、
前記分解性粒子の少なくとも一部を処理流体内に取り込む工程と、
を含む方法。
【請求項16】
前記分解性重合体が:脂肪族ポリエステル;ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ε-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシエステルエーテル);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(無水物);ポリカーボネート;ポリ(オルソエステル);ポリ(アミノ酸);ポリ(エチレンオキサイド);ポリ(ホスファゼン);ポリエーテルエステル;ポリエステルアミド;ポリアミド;及びこれらの共重合体、組み合わせ又は誘導体からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記分解性重合体がポリ(乳酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルソエステル)及びポリ(ラクチド)-コ-ポリ(グリコリド)共重合体からなる群より選択される脂肪族ポリエステルである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記分解性重合体と1つの溶媒とを提供する工程であって、前記溶媒が:
淡水、塩水、鹹水、海水及びこれらの組み合わせからなる群より選択される水溶液を含む工程と;
前記分解性重合体と前記溶媒とを合わせて分解性重合体組成物を形成する工程と;
前記分解性重合体を少なくとも部分的に可塑化させる工程と;
分解性粒子を形成し始めるように、十分な剪断を前記分解性重合体組成物に対して適用する工程と;
前記分解性粒子の少なくとも一部をグラベルパック組成物内に取り込む工程と;及び、
前記分解性粒子を分解させる工程、
を含む方法。
【請求項19】
前記分解性重合体が:脂肪族ポリエステル;ポリ(ラクチド);ポリ(グリコリド);ポリ(ε-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシエステルエーテル);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(無水物);ポリカーボネート;ポリ(オルソエステル);ポリ(アミノ酸);ポリ(エチレンオキサイド);ポリ(ホスファゼン);ポリエーテルエステル;ポリエステルアミド;ポリアミド;及びこれらの共重合体、組み合わせ又は誘導体からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒が以下の少なくとも1つ、すなわち:メタノール;エタノール;炭酸プロピレン;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;イソプロパノール;多価アルコール;グリセロールポリエチレンオキシド;オリゴマー乳酸;クエン酸エステル;クエン酸トリブチルオリゴマー;クエン酸トリエチル;クエン酸アセチルトリブチル;クエン酸アセチルトリエチル;グルコースモノエステル;部分脂肪酸性エステル;PEG モノラウレート;トリアセチン;ポリ(e-カプロラクトン);ポリ(ヒドロキシブチレート);グリセリン-1-ベンゾアート-2,3-ジラウレート;グリセリン-2-ベンゾアート-1,3-ジラウレート;ビス(ブチルジエチレングリコール)アジパート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリンジアセタートモノカプリレート;ジアセチルモノアシルグリセロール;ポリプロピレングリコール(及びこれらのエポキシ誘導体);ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート;グリセロール;エチルフタリルエチルグリコレート;ポリ(エチレンアジパート)ジステアレート;ジ-イソ-ブチルアジパート;及びこれらの組み合わせ又は誘導体をさらに含む、請求項18記載の方法。

【公開番号】特開2009−114220(P2009−114220A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−193897(P2007−193897)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(507251077)ハルリブルトン エネルギ セルビセス インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】