説明

分離装置

【課題】簡単な構造にも係わらず分離槽内に旋回流を効率よく発生できると共に、排水等の液体の供給管を分離槽の周壁に対し直角方向に接続できる分離装置を提供する。
【解決手段】流入する液体に含まれる固形物を分離する装置1において、分離槽2と、分離槽2の内部を流入室3と流出室4に縦方向に仕切ると共に板状のスクリーン8を配置した仕切板5と、流入室3に形成された供給部6と、流出室4に形成された排出部7とを備え、仕切板5は供給部6から水平方向に流入する液体の流入方向に対して傾斜して配置され、且つ、その傾斜角度は流入する液体に1つの水平な旋回流を形成するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道や工場内の廃水処理施設等を流通する排水などの液体に含まれる固形状の不純物を分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部に敷設される下水道の雨水排水処理施設に流入する雨水などの排水は、一部は雨水貯留浸透施設などにより地中に貯留若しくは排出され、残りは河川等に放流される。そして下水道を流通する雨水の中には土砂、種々のゴミ類、紙類、落ち葉、等の固形状の不純物(以下、単に固形物という。)が混入しており、それら固形物が河川に流入することで水質汚濁、環境汚染の原因となり、また未処理のままで雨水貯留浸透施設に流入すると、施設のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、コスト的にも不利である。特に浸透用施設では浸透機能の低下を生じる原因となり、長期間での利用が困難となる場合がある。そこで、下水道の一部に固形物を分離する排水の分離装置が設けられる。
【0003】
排水の分離装置として、排水に旋回流を発生させ、その旋回流により固形物を分離する分離装置があり、そのような分離装置として、例えばドイツのUFT社の商品名フルードセップが知られている。しかしフィルター若しくはスクリーンを有しない分離装置は、メンテナンスは容易であるが浮遊性や細かい固形物の分離・捕捉は困難である。
【0004】
一方、旋回流発生方式とスクリーン分離方式を組み合わせた分離装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の分離槽は、平断面が円形の分離槽の下方に円筒形のスクリーンを配置し、分離槽の上方から排水を接線方向に供給することにより槽内に旋回流を発生させ、下方に配置したスクリーンで固形物を分離し、排水のみをスクリーンの外側に通過させるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−141326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記従来の分離装置は、旋回流を効率よく発生させるために、分離槽の円形周壁の接線方向に排水の供給管を接続しなければならないため、周壁に正確な角度での接続用の孔加工が必要である。特にコンクリート二次製品でその接続用孔を工場で加工するには非常に手間がかかり、また、円筒形のスクリーンは構造が複雑になり、コストアップになるという問題がある。
【0007】
さらに、工場等で排水の流入口と流出口を設けない分離槽本体を製造し、それを施工現場に搬入して排水管路に接続する場合、施工現場で上流側の管路と下流側の管路方向に合わせて分離槽本体に管路接続用の貫通孔を施工するケースもある。そのようなときに円形の周壁を曲面加工により正確な貫通孔施工をするには熟練性を必要とし、施工工数も多くなる。
【0008】
そこで本発明は、簡単な構造にも係わらず分離槽内に旋回流を効率よく発生できると共に、排水等の液体の供給管を分離槽の周壁に対し直角方向に接続できる分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明の第1の分離装置は、流入する液体に含まれる固形物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に縦方向に仕切ると共に板状のスクリーンを配置した仕切板と、流入室に形成された供給部と、流出室に形成された排出部とを備え、前記仕切板は供給部から水平方向に流入する液体の流入方向に対して傾斜して配置され、且つ、その傾斜角度は流入する液体に1つの水平な旋回流を形成するように設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
また第2の分離装置は、上記第1の分離装置において、前記仕切板の傾斜角度は20度〜65度の範囲であることを特徴とするものである。
【0011】
また第3の分離装置は、上記第1又は第2の分離装置において、前記仕切板に配置される板状のスクリーンの面が円弧面、複数の縦方向の折れ曲がり部を有する折曲面または平面に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また第4の分離装置は、上記第1ないし第3のいずれかの分離装置において、前記スクリーンは断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成され、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の内面の一部が形成されると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記形成される水平方向の旋回流の下流側に傾斜していることを特徴とするものである。
【0013】
また第5の分離装置は、上記第1ないし第4のいずれかの分離装置において、前記流出室の底部に液体の排液部が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
また第6の分離装置は、上記第1ないし第5のいずれかの分離装置において、仕切板の上部に流入室と流出室を連通するオーバーフロー部が設けられ、排出部には油分や浮遊性の固形物の流入を防止する堰部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の分離装置は、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に縦方向に仕切ると共に板状のスクリーンを配置した仕切板と、流入室に形成された供給部と、流出室に形成された排出部とを備え、前記仕切板は流入部から水平方向に流入する液体の流入方向に対して傾斜して配置され、且つ、その傾斜角度は流入する液体に1つの水平な旋回流を形成するように設定されていることを特徴とする。
【0016】
上記第1の分離装置によれば、分離槽内に板状のスクリーンを配置した仕切板を1枚設けるだけで、流入室内に水平方向の旋回流を効率よく生成することができると共に、スクリーン部分で液体に含まれる固形物を分離できる。このように旋回流生成機能と固形物分離機能がスクリーンを配置した1枚の仕切板で同時に発揮されるので、分離装置の構造が簡単化し且つコンパクト化できコスト的にも有利になる。
【0017】
さらに上記分離装置において、スクリーン部分で液体が流入室側から流出室側に通過し固形物が阻止されるが、その際、スクリーン面に阻止されて付着する固形物は水平方向の旋回流により効率よく剥離される。そのためスクリーン部分が固形物で部分的にもしくは全面的に閉塞される恐れが少なく、スクリーンの初期通液率を長期間維持することができる。
【0018】
また第2の分離装置では、上記第1の分離装置において、前記板状のスクリーンを配置した仕切板の傾斜角度を20度〜65度の範囲にすると、流入室内に1つの水平方向の旋回流をより効率的に生成させることができる。
【0019】
また第3の分離装置では、上記第1または第2の分離装置において、前記仕切板に配置した板状のスクリーンの面を、円弧面、複数の縦方向の折れ曲がり部を有する折曲面または平面に形成することができる。仕切板に配置された板状のスクリーンの面を上記いずれかの形状にすると、主としてスクリーン部分で水平方向の旋回流を効率よく生成することができる。
【0020】
また第4の分離装置では、上記第1ないし第3のいずれかの分離装置において、前記スクリーンを断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成し、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の内面の一部を形成すると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線を前記形成される水平方向の旋回流の下流側に傾斜させることができる。
【0021】
このようなウェッジワイヤスクリーンを用いることにより、微細な固形状の不純物も効率よく分離できる。また、ウェッジワイヤスクリーンを構成する各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の面を形成し、その頭部の配列形状を供給部から供給される流液に水平方向の旋回流を形成させるように構成したので、ウェッジワイヤスクリーンに付着する微細な固形状の不純物もその旋回流で容易に剥離される。そのためウェッジワイヤスクリーンを目詰まりしにくい状態で運転することができる。
【0022】
さらに、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記形成される旋回流の下流側に傾斜されているので、旋回流の上流側における頭部の端部が下流側における頭部の端部より流入室内側に突出する。そのため旋回流が突出した端部に衝突してコアンダ効果により液体がスリットに効率よく引き込まれ、結果としてスクリーンの開口率を実質的に増大させることができる。従って、数ミクロン〜数十ミクロン程度の固形状の不純物を分離可能なようにスリットの間隔を小さくしても、通水効率が高いためスクリーンの面積を抑制でき、さらなる装置のコンパクト化を達成できる。
【0023】
また第5の分離装置では、上記第1ないし第4のいずれかの分離装置において、前記流出室の底部に液体の排液部を設けることができる。このような排液部を設けることにより、分離装置の清掃等のメンテナンスを行う際に、分離槽内に滞留する液体を外部に排出することができる。
【0024】
また第6の分離装置では、上記第1ないし第5のいずれかの分離装置において、仕切板の上部に流入室と流出室を連通するオーバーフロー部を設け、排出部には油分や浮遊性の固形物の流入を防止する堰部を設けることができる。このように構成すると、例えば液体が下水道に流入する雨水の場合、大雨のときなどに一時的に大量の浮遊性の固形物や油分が雨水と共に流入室側に流入したときでも、それらはオーバーフロー部から流出室側にオーバーフローして滞留するが、堰部によりそれらが排出部から下流側に流出することを防止される。なお流出室に滞留した浮遊性の固形物や油分は適当な時期に外部に取り出せばよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に図面に基づいて本発明の最良の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の分離装置の第1実施例であり、(a)は(b)のA−A方向の平断面図、(b)は(a)のB−B方向の縦断面図である。
【0027】
分離装置1は平断面が円形な分離槽2と、分離槽2の内部を流入室3と流出室4に縦方向に仕切ると共に板状のスクリーン8を配置した仕切板5と、流入室3に開口する液体の供給部6と、流出室4に形成された液体の排出部7を備えている。そして供給部6には例えば下水道の上流側の管路に接続する短管6aが接続され、排出部7には下流側の管路に接続する短管7aが接続される。なお場合によっては短管6a,7aを省略し、下水道等の管路を直接供給部6と排出部7に接続することもできる。そして排出部7は、流出室4の分離槽2本体の側壁部であれば、点線で示す排出部(7)のようにどこにでも接続することができるので、スクリーンの設置位置との併用により、本分離装置の設置場所の状況に応じて流入部に対する流出部の取付け位置を自由に変えることが可能となる。
【0028】
分離槽2は鉄筋コンクリート、金属、繊維強化プラスチックなどで作ることができる。図1(b)に示すように分離槽2の上部は開放状態となっており、分離処理時には鉄板等の開閉自在な蓋体9で閉鎖される。流入室3と流出室4の内部はそれらの上方の空間部分で互いに連通しており、その空間部分はオーバーフロー部10を形成する。オーバーフロー部10は前記のように、大雨のときなどに一時的に大量の浮遊性の固形物や油分が雨水と共に流入室側に流入した際に、それらを流出室4にオーバーフローさせることにより、流入室3が固形物等で充満し閉塞されることを防止するものである。
【0029】
排出部7には堰部11が設けられ、堰部11によりオーバーフローしてきた浮遊性の固形物や油分が排出部7から下流側に流出することを防止している。なお流出室4に滞留した浮遊性の固形物や油分は、蓋体9を開けて上方から取り出して除去することができる。また分離槽2内部に滞留する液体を適宜外部に排出するため、流出室4の下部には排液部12が設けられる。排出部12は配管とそれに設けた開閉弁を有するが、場合によってはくみ上げポンプを配管に設けることもできる。
【0030】
スクリーン8を配置した仕切板5は、分離槽2の内部を流入室3と流出室4に縦方向に仕切るものであり、金属や繊維強化プラスチックなどで作ることができる。仕切板5はスクリーン8を保持できるように例えば枠状に形成され、その周囲を分離槽2の内壁に固定することができる。しかしスクリーン8自体を分離槽2の内壁に直接固定することもでき、その場合はスクリーン8が仕切板5を兼用することになる。
【0031】
図1の実施例では、スクリーン8を配置した仕切板5の底部は分離槽2の底面から上方に位置しており、そのため仕切板5の底部は底板5aで閉鎖され、その底板5aにより流入室3と流出室4が下方においても互いに仕切られる。
【0032】
図1の実施例では、仕切板5が枠幅の小さな枠体に形成され、その枠体の内側にスクリーン8が配置されている。そのため分離槽2の内部を流入室3と流出室4に仕切る機能は主としてスクリーン8の部分が担っており、そのため水平方向の旋回流を生成する機能も主としてスクリーン8の部分が担っている。
【0033】
図1の実施例では、分離槽2内に縦方向に配置される板状のスクリーン8の面が円弧面とされている。スクリーン8は供給部6から水平に流入する液体の流入方向に対して傾斜して配置され、且つ、その傾斜角度は流入する液体に1つの水平な旋回流を形成するように設定されている。
【0034】
例えば幅の小さな枠体で構成した仕切板5に配置されるスクリーン8の面が平面に形成されている場合は、図2に示すように、その平面と供給部6から水平方向に流入する液体の流入方向の角度θが本発明でいう傾斜角度となる。しかし本実施例のようにスクリーン8の面が円弧面に形成されている場合は、円弧面の両端(図1(a)に示す仕切板5の2箇所に連結する部分)を結ぶ直線と供給部6から水平方向に流入する液体の流入方向との角度θが本発明でいう傾斜角度となる。
【0035】
実験によれば、スクリーン8の傾斜角度θを90度とした場合、すなわち供給部6から水平方向に流入する液体の流入方向に対して垂直にスクリーン8を配置した場合は、液体はスクリーン8に衝突して互いに逆方向の2つの水平方向の旋回流と、スクリーンに沿って下方に向う旋回流が生成する。これにより流入した水流が3方向に分散されることによりそれら旋回流の流速は弱くなり、スクリーン8の面に付着する固形物の剥離力も小さい。
【0036】
スクリーン8の傾斜角度θを90度から減少していくと、互いに逆方向の2つの水平方向の旋回流の一方の流速が次第に大きくなり、それに応じて他方の流速が次第に小さくなる。スクリーン8の傾斜角度θが65度〜20度の範囲では、2つの水平方向の旋回流は生成されず、流速の大きな1つの水平方向の旋回流が効率よく生成する。
【0037】
スクリーン8の傾斜角度θが20度より小さい範囲(最小5度程度まで)では、流入部6から流入する液体はスクリーン8に沿ってほぼ直線状に向って流れ、多くの液体は分離槽2の反対側の内壁面に鋭角で衝突するようになるので、一部は水平方向の旋回流を生成するが、下方に向う旋回流が多く生成されるようになる。このような下方に向かう旋回流が多く生成すると水平方向の旋回流による固形物の分離機能が低下し、流入室3内における固形物の沈降作用も低下する。
【0038】
これらの実験結果から、スクリーン8の傾斜角度θは65度〜20度の範囲に設定することが望ましいことが分かった。
【0039】
次に図1の分離装置1により液体に含まれる固形物を分離する方法を説明する。供給部6から流入室3内に流入した液体は、その流入方向に対して65度〜20度の範囲の傾斜角度で配置されているスクリーン8に接触し、その傾斜するスクリーン8の面に沿って循環するような水平方向の旋回流が生成する。
【0040】
スクリーン8に接触した液体の一部は流出室4側に通過するが、液体に含まれている固形物はスクリーン8の表面に補足されて通過せず分離される。そして供給部6から液体が流入している間は、流入室3の内部に水平方向の旋回流が生成すると共に、その流入量に相当する液体量がスクリーン8を通過して流出室4側に流出する。
【0041】
スクリーン8の面に捕捉されて付着する固形物は水平方向の旋回流により効率よく剥離される。剥離した砂などの固形物は旋回流に乗って移動するが、大部分は移動途中において重力により下方に沈降し、流入室の底部領域に堆積する。なお、スクリーン8として後述するウェッジワイヤスクリーンを用いて微細な固形物まで分離する場合は、微細な固形物が旋回流に乗って流入室3内を循環する割合が多くなる。しかし微細な固形物の絶対量は少ないので、例え流入室3内を循環していても、分離処理を長期間継続することができるので実用上は問題にならない。一方、スクリーン8を通過して流出室4側に流出した液体は、堰部11の底部に形成した開口部から排出部7に流出し、そこから下流側の管路に排出される。
【0042】
流入室3と流出室4の上部はオーバーフロー部10により互いに連通している。前記のように、一時的に大量の浮遊性の固形物や油分が雨水と共に流入室3側に流入したときに、それらはオーバーフロー部10から流出室4側にオーバーフローして滞留するようになっている。オーバーフローしてきた浮遊性の固形物や油分は堰部11により阻止されるので、排出部7から下流側に流出することはない。
【0043】
分離装置1で液体処理を長期間継続すると、流入室3内に堆積する固形物の量も次第に増加していくので、適当な時期に分離処理を停止して堆積した固形物を外部に排出する必要がある。それには先ず、流出室4に設けた排液部12のバルブを開けて分離槽2内の液体を排出し、次に分離槽2の上部を覆う蓋体9を開け、堆積した固形物を上方に引き上げて取り除く操作を行う。
【実施例2】
【0044】
図3は本発明の分離装置の第2実施例を示すもので、図1(b)に準じてその縦断面図だけを示す。この実施例が図1の例と異なる部分は、スクリーン8を配置した仕切板5の底部が分離槽2の底面まで達していることのみで、そのほかの部分は同様に構成される。従って同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
本実施例のように構成すると、スクリーン8の有効面積が図1の例より大きくできる。スクリーン8の有効面積を大きくすると、スクリーンコストはそれに応じて高くなる場合が多いが、スクリーンの開口率が同じであれば全体としての通液量が増加し、単位時間当たりの分離処理容量を増やすことができる。
【実施例3】
【0046】
図4は図1に示すスクリーン8の変形例の模式的な平面図である。幅の小さい枠体で構成した仕切板5にスクリーン8が配置されているが、スクリーン8の面は複数(本変形例では2つ)の縦方向の折れ曲がり部を有する折曲面に形成されている。なお分離槽2の内部の液体の流れ方向を矢印で示している。本実施形態において、供給部6から水平方向に流入する液体の流入方向に対するスクリーン8の傾斜角度θは、前記流入方向とスクリーン8の両端部を結ぶ線の挟角になる。
【実施例4】
【0047】
図5は図1に示すスクリーン8の別の変形例の模式的な平面図である。この変形例でも幅の小さい枠体で構成した仕切板5にスクリーン8が配置されているが、スクリーン8の面は平面に形成されている。なお図5においても分離槽2の内部の液体の流れ方向を矢印で示している。
【0048】
上記の各実施例におけるスクリーン8としては、材質的には防食性材料を使用し、形状的には、一般に慣用されているパンチングメタル等の硬質な板状のスクリーンを用いることができる。しかし微細な固形物を分離する場合には、ウェッジワイヤスクリーンを用いることが望ましい。
【0049】
図6に(スクリーン8としての)ウェッジワイヤスクリーン8の1例を示す。図6(a)は前方から見たウェッジワイヤスクリーン8の斜視図、図6(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。ウェッジワイヤスクリーン8は断面楔状の複数のウェッジワイヤ8aを平行に配列して構成され、各ウェッジワイヤ8a間に10ミクロン〜1mm程度の微小なスリット8bが形成されている。そして各ウェッジワイヤ8aは複数の支持棒8cに点溶接等により固定される。なお各ウェッジワイヤ8aおよび支持棒8cは例えばステンレス等の耐食性の金属材料で作られる。ウェッジワイヤスクリーン8に形成される各スリット8bは数ミクロン〜数百ミクロン程度の固形状の不純物の通過を阻止し、流液だけを通過させる。
【0050】
図7はウェッジワイヤスクリーン8を構成するウェッジワイヤ8aとスリット8bの部分拡大断面図である。断面が楔状のウェッジワイヤ8aは所定間隔で互いに平行に配列しており、その頭部8dの面が流入室側の面の一部を形成する。各ウェッジワイヤ8aの軸線方向が分離槽2の上下方向になるようにウェッジワイヤスクリーン8を配置すると、ウェッジワイヤ8aの頭部8dの面から垂直方向に延長する楔の軸線Sは、図7の矢印Lで示すようにスクリーンの面に沿った旋回流方向Lの下流側に傾斜する。なお旋回流方向Lと頭部8dの面との角度αは3度〜8度、通常5度程度に設定される。
【0051】
このように各ウェッジワイヤ8aの軸線Sを傾斜させると、図示のように、旋回流の上流側における頭部8dの端部8eが下流側における頭部8dの端部8fより流入室3の内側方向に突出する。そのため旋回流が各ウェッジワイヤ8aの突出した端部8eに衝突し、コアンダ効果によりスリット8bに効率よく引き込まれる。そのためスクリーン8としての通液率を実質的に増大させる効果をもたらす。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の分離槽は種々の液体に含まれる固形物を分離する装置として利用できる。本発明に適用できる流液には、家屋、道路、田畑から下水道に流入する雨水や一般排水、工場排水、料理店の厨房排水、食肉加工工場の排水、あるいは工業用水なども含むことができる。また、機械油や切削油等の切粉や粉塵を含んだ廃油、廃油を含む排水、アルコールを含む酒類製造廃液、等に適用することもできる。何れにしても、固形物を含む液体から固形物を分離し、あるいは固形物を含みかつ比重の異なる液体の混合体から固形物を分離すると共に比重の大きい液体を分離するような要求に対して対応することができる。さらに、それらの排水を再利用する時にも適用が可能であり、従って多くの産業に適用した場合でも、夫々好ましく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】分離装置の第1実施例であり、(a)は(b)のA−A方向の平断面図、(b)は(a)のB−B方向の縦断面図である。
【図2】スクリーン8の液体の流入方向に対する角度θを説明する図である。
【図3】分離装置の第2実施例を説明する図である。
【図4】分離装置の第3実施例を説明する図である。
【図5】分離装置の第4実施例を説明する図である。
【図6】スクリーンとしてのウェッジワイヤスクリーンの例を示す図である。
【図7】ウェッジワイヤスクリーンを構成するウェッジワイヤとスリットの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 分離装置
2 分離槽
3 流入室
4 流出室
5 仕切板
5a 底板
6 供給部
6a 短管
7 排出部
7a 短管
8 ウェッジワイヤスクリーン
8a ウェッジワイヤ
8b スリット
8c 支持棒
8d 頭部
8e、8f 端部
9 蓋体
10 オーバーフロー部
11 堰部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する液体に含まれる固形物を分離する装置において、分離槽と、分離槽の内部を流入室と流出室に縦方向に仕切ると共に板状のスクリーンを配置した仕切板と、流入室に形成された供給部と、流出室に形成された排出部とを備え、前記仕切板は供給部から水平方向に流入する液体の流入方向に対して傾斜して配置され、且つ、その傾斜角度は流入する液体に1つの水平な旋回流を形成するように設定されていることを特徴とする分離装置。
【請求項2】
請求項1において、前記仕切板の傾斜角度は20度〜65度の範囲であることを特徴とする分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記仕切板に配置される板状のスクリーンの面が円弧面、複数の縦方向の折れ曲がり部を有する折曲面または平面に形成されていることを特徴とする分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記スクリーンは断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成され、各ウェッジワイヤの頭部で流入室側の内面の一部が形成されると共に、各ウェッジワイヤの頭部から先端部に向かう軸線が前記形成される水平方向の旋回流の下流側に傾斜していることを特徴とする分離装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、前記流出室の底部に液体の排液部が設けられていることを特徴とする分離装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、仕切板の上部に流入室と流出室を連通するオーバーフロー部が設けられ、排出部には油分や浮遊性の固形物の流入を防止する堰部が設けられていることを特徴とする分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220088(P2009−220088A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70693(P2008−70693)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】