説明

切削インサート固定装置

【課題】本発明は切削インサートをツールホルダーに固定する装置に関するものである。
【解決手段】本発明は、切削インサートポケットと装着空洞とを含むツールホルダーと、クランプ部と装着空洞に設けられるレバー部とを含むクランプレバーと、固定ネジとを含む。固定ネジはツールホルダーの側面から装着空洞まで下に延びる孔に締結される。固定ネジの一端部は固定ネジの回転軸に垂直な加圧面を含み、クランプレバーのレバー部の側面は固定ネジの加圧面と接触する傾斜面を含む。本発明の固定装置によると切削インサートをツールホルダーに堅固に固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は切削インサートをツールホルダーに固定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、貫通孔を有する切削インサート1をツールホルダー3のポケット9に固定させるために、L字状クランプレバー7とこれを加圧する固定ネジ5とを用いる従来の切削インサート固定装置を示す。
【0003】
図2及び図3は日本特許第2877140号に開示されている切削インサート固定装置を示す。ツールホルダー3の装着空洞10にL字状クランプレバー7が設けられた後、切削インサート1がツールホルダー3のポケット9に装着される。この時、切削インサート1の貫通孔1aにクランプレバー7のクランプ部7aが挿入される。ツールホルダー3の側面から装着空洞10までネジ孔8が形成される。固定ネジ5は固定ネジ5の円錐形端部の傾斜面5aがクランプレバー7のレバー部7bと接触するまでネジ孔8に締結される。傾斜面5aがレバー部7bの上面を滑りながら固定ネジ5がクランプレバー7を加圧する。これにより、クランプ7は支持部7cを基準に時計方向に回転して、クランプ部が切削インサート1の貫通孔1aの内壁に当接してクランプ部7aが切削インサート1をツールホルダー3のポケット9側に圧着することによって、切削インサート1がツールホルダー3のポケット9に固定される。
【0004】
クランプレバー7のクランプ部7aが貫通孔1aを通じて切削インサート1を圧着するクランピング力は、固定ネジ5がクランプレバー7のレバー部7bを下方向に押すことにより発生する。クランプレバー7のレバー部7bを直接押し下げられるように固定ネジ5を垂直に挿入するのが理想的であるが、スイス型旋盤のように多数のツールホルダーを同時に用いる加工工具では、ツールホルダー間の間隔が小さいので、空間上の制約によって固定ネジ5をツールホルダーの側面を通じて挿入せざるを得ない。
【0005】
しかし、日本特許第2877140号に開示されたクランプレバー7でのように、固定ネジ5の円錐形端部の傾斜面がクランプレバー7のレバー部7bをスライディングしながらクランプレバー7を加圧する場合、固定ネジ5の加圧力はレバー部7bを切削インサートのクランピングとは実質的な関係がない支持部7cの方向に圧着するように多く分配されてしまう。その結果、固定ネジ5の加圧力が、切削インサートのクランピングに実質的に必要なレバー部7bを下に押す力には少なく分配され、切削インサートをツールホルダーに堅固に固定できなくする。
【0006】
また、従来のL字状クランプレバー7においては、レバー部7bと固定ネジ5とが互いに線接触したり曲面と曲面とが互いに相対的な位置が移動されながら接触するので、レバー部7bと固定ネジ5とが望ましい面接触を達成できないが、この場合、切削インサート1に大きな力がかかれば、固定ネジ5とレバー部7bとの接触部分にスライディングが発生するようになる。このようなスライディングが固定ネジ5とレバー部7bの位置を変化させて安定したクランピングをできなくする。
【0007】
また、固定ネジの回転によりレバー部7b上で固定ネジ5がスライディングすれば、接触部分に摩耗が発生する。このようなスライディングが数回繰り返されれば、接触部分が甚だしく摩耗して固定ネジ5とレバー部7bとの接触部分が変動するようになる。この場合、クランピング状態での固定ネジ5とレバー部7bとの相対的な位置が変化するので不安定なクランピング状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来技術のこのような問題を解決するためのもので、固定ネジの加圧力が効率良くクランピング力に転換され、切削インサートに大きな力がかかる時、固定ネジとレバー部との接触部分でのスライディングを防止し、固定ネジとレバー部との接触部分が摩耗しても固定ネジとレバー部との相対的な位置が変わらない固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明の望ましい実施形態による固定装置は、切削インサートポケットと前記ポケットの一部を通じて開放される装着空洞とを含むツールホルダーと、切削インサートの貫通孔に挿入されるクランプ部と前記装着空洞に設けられるレバー部とを含むクランプレバーと、前記クランプレバーのレバー部を加圧して前記切削インサートをツールホルダーに固定させる固定ネジとを含む。前記固定ネジは前記ツールホルダーの側壁から前記装着空洞まで下に延びる孔に締結される。前記固定ネジの一端部には前記固定ネジの回転軸に垂直な加圧面が形成され、前記クランプレバーのレバー部の側面には前記固定ネジの加圧面と接触する傾斜面が形成される。
【0010】
前記レバー部の傾斜面の傾斜角度は20度〜70度、望ましくは50度である。
【0011】
本発明の他の実施形態によると、ツールホルダーの固定ネジのためのネジ孔が前記ツールホルダーの両側面に形成される。また、前記クランプレバーのレバー部は両側面に傾斜面を含む。
【0012】
本発明の固定装置は、前記レバー部の傾斜面と前記クランプ部との間に設けられるスナップリングをさらに含む。前記スナップリングは幅方向に弾性変形可能で、前記クランプレバーが前記装着空洞に挿入されていない時、前記スナップリングの最大幅は前記装着空洞の側壁間の距離より大きい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定ネジをツールホルダーの側面に挿入する場合、固定ネジの加圧力が効率良くクランピング力に転換され、切削インサートをツールホルダーに堅固に固定できる。
【0014】
レバー部の傾斜面と固定ネジの加圧面とが望ましい面接触をなすことができるので、切削インサートがクランピングされた状態で切削インサートに大きな力がかかってもレバー部の傾斜面と固定ネジの加圧面との間の摩擦力により切削インサートはツールホルダーに堅固に固定され維持される。
【0015】
また、レバー部の傾斜面と固定ネジの加圧面のうちの一方が摩耗しても、固定ネジをさらに締めさえすれば切削インサートは堅固に固定され維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の切削インサート固定装置の分解図である。
【図2】従来の切削インサート固定装置の平面図である。
【図3】従来の切削インサート固定装置の一部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による切削インサート固定装置の分解図である。
【図5】本発明の第1実施形態による切削インサート固定装置の一部断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による切削インサート固定装置の斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるクランピング力の分配を示す。
【図8】本発明の第2実施形態による切削インサート固定装置の一部断面図である。
【図9】本発明によるスナップリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では添付した図面を参照して本発明の多様な実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図4は本発明の第1実施形態による切削インサート固定装置の分解図である。ツールホルダー103の先端部は切削インサート101が位置するポケット109を含む。ポケット109はツールホルダー103の幅方向に配置される第1側面109aとツールホルダー103の長手方向に配置される第2側面109bとを備える。ツールホルダー103の先端部の内部はL字状クランプレバー107が挿入される装着空洞110を含む。また、装着空洞110はポケット109の一部分を通じて開放される。装着空洞110はネジ孔108と連通される。固定ネジのためのネジ孔108はツールホルダー103の側面から装着空洞110まで下に延びる。
【0019】
図5及び図6には、L字状クランプレバー107を加圧する固定ネジ105により切削インサート101がクランピングされている、本発明の第1実施形態による切削インサート固定装置が示されている。
【0020】
L字状クランプレバー107と当接する固定ネジ105の端部は固定ネジ105の回転軸と垂直な加圧面105aを含む。固定ネジのネジ孔108はツールホルダー103の側面から装着空洞110まで下に延び、これに締結される固定ネジ105も下に傾斜するように装着される。
【0021】
L字状クランプレバー107は縦に延長するクランプ部107aと横に延長するレバー部107bとを備える。クランプ部107aの端部は切削インサート101の貫通孔101aに挿入される。レバー部107bの側面には固定ネジ105の加圧面105aと当接する傾斜面107dが形成される。
【0022】
固定ネジ105がL字状クランプレバー107のレバー部107bの傾斜面107dを押しながら加圧すると、L字状クランプレバー107が支持部107cを基準に時計方向に回転し、クランプ部107aの端部が切削インサート101の貫通孔101aの内面を加圧する。これにより、切削インサート101がツールホルダー103のポケット109に固定される。
【0023】
図7を参照し、本発明の第1実施形態によるクランピング力の分配について説明する。固定ネジ105の加圧面は固定ネジ105の回転軸に垂直である。L字状クランプレバー107が回転してクランプ部107aの端部が切削インサート101の貫通孔の内面に当接する時、L字状クランプレバー107の傾斜面107dは固定ネジ105の回転軸と垂直になるように形成される。この時、クランプレバー107の傾斜面107dは固定ネジ105の加圧面105aと面接触する。この状態で固定ネジ105を締めて発生する加圧力はL字状クランプレバー107のレバー部107bに伝達され、このような加圧力はいずれもレバー部107bを下に押す力Fdとレバー部107bを側方向に押す力Fbとに分配され、レバー部107bを支持部107c側に圧着する力には分配されない。レバー部107bを下に押す力FdによりL字状クランプレバー107は支持部107cを中心に時計方向に回転し、クランプ部107aが切削インサート101をツールホルダー103のポケットの側面109a、109b間に圧着する。一方、レバー部107bを側方向に押す力Fbは固定ネジ105が側面から下に斜めに配置されるため、必然的に発生するが、実質的にクランピング力に用いられない。レバー部107bを下に押す力Fdとレバー部107bを側方向に押す力Fbとの分配比率はレバー部107bの傾斜面107dの傾斜した角度と固定ネジ105の回転軸の方向を変えて調節できる。レバー部107bの傾斜面107dの傾斜角はレバー部107bの側面に対して略20度〜70度の範囲にあり、望ましくは略50度である。
【0024】
このように、本発明によれば、固定ネジ105の加圧力がL字状クランプレバー107のレバー部107bを支持部107c側に圧着する力にはほぼ転換されないため、加圧力はレバー部107bを下方向に押す力に多く分配され、その結果、固定ネジ105の加圧力がクランピング力に転換される比率が高くなる。
【0025】
図8は本発明の第2実施形態による切削インサート固定装置を示す。本発明の第2実施形態による切削インサート固定装置は、ツールホルダー103の両側面にツールホルダーの固定ネジのためのネジ孔108、118と、これに対応してレバー部の両側面にクランプレバー107のレバー部の傾斜面とを含む。これを除いた他の構成は第1実施形態と同一である。第2実施形態によれば、ツールホルダー103が特殊な作業位置にあるため、一方の側面のネジ孔108を通じて固定ネジ105を締結し難い場合、反対側面に形成されたネジ孔118を通じて固定ネジ105を締結して切削インサート101をクランピングでき、作業効率及び多様性を向上させることができる。
【0026】
図9には本発明の第1及び第2実施形態による切削インサート固定装置に装着され得るスナップリング120が示されている。スナップリング120はスプリング鋼からなる板を折り曲げて形成され、上部の一部は開放される。スナップリング120はクランプレバー107のレバー部107bの傾斜面107dとクランプ部107aとの間に結合する。スナップリング120は幅方向に弾性変形可能で、装着空洞110に装着される前のスナップリング120の最大幅は装着空洞110の両側壁間の距離より大きい。従って、スナップリング120を装着したクランプレバー107が装着空洞110に嵌められれば、スナップリング120は幅が減るように弾性変形され装着空洞110の側壁に接触する。この時、装着空洞110の側壁とスナップリング120との間で発生する摩擦力によってクランプレバー107が装着空洞110から離脱することが防止される。
【0027】
以上、本発明を望ましい実施形態を挙げて説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本技術分野の通常の知識を有する者であれば本発明の範囲を逸脱しなくてもこれから多様な変形実施が可能であるという点を理解することができる。例えば、本発明の一実施形態による切削インサート固定装置は固定ネジの加圧力がL字状クランプレバーの支持部側にL字状クランプレバーを圧着する力には実質的に分配されないが、傾斜面の方向を調整することによって固定ネジの加圧力のうちの一部のみがL字状クランプレバーの支持部側にL字状クランプレバーを圧着する力に分配されるようにすることができる。また、切削インサートポケットの側面の位置及び形状は切削インサートの形状及びクランピング位置に応じて変わることができる。このような変形は当業者に自明な事項に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートポケットと、前記ポケットの一部を通じて開放される装着空洞とを含むツールホルダーと、
切削インサートの貫通孔に挿入されるクランプ部と前記装着空洞に設けられるレバー部とを含むクランプレバーと、
前記クランプレバーのレバー部を加圧して前記切削インサートを前記ツールホルダーに固定させる固定ネジと、を含み、
前記固定ネジは前記ツールホルダーの側面から前記装着空洞まで下に延びる孔に締結され、
前記固定ネジの一端部には前記固定ネジの回転軸に垂直な加圧面が形成され、前記クランプレバーのレバー部の側面には前記固定ネジの加圧面と接触する傾斜面が形成される、
切削インサート固定装置。
【請求項2】
前記レバー部の傾斜面の傾斜角度は20度〜70度である、請求項1に記載の切削インサート固定装置。
【請求項3】
前記レバー部の傾斜面の傾斜角度は50度である、請求項2に記載の切削インサート固定装置。
【請求項4】
ネジ孔が前記ツールホルダーの両側面に形成され、前記クランプレバーのレバー部は両側面に傾斜面を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削インサート固定装置。
【請求項5】
前記クランプレバーは前記レバー部の傾斜面と前記クランプ部との間に設けられるスナップリングを含み、前記スナップリングは幅方向に弾性変形可能で、前記クランプレバーが前記装着空洞に挿入されていない時、前記スナップリングの最大幅は前記装着空洞の側壁間の距離より大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削インサート固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−514543(P2012−514543A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545290(P2011−545290)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2009/008016
【国際公開番号】WO2010/082736
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508151781)デグテック エルティーディー (30)
【Fターム(参考)】