説明

切削工具用の交換可能なインサートシート部材

【課題】本発明は、工具本体と切削インサートとを備えた金属切削工具用の交換可能なインサートシート部材に関する。また、本発明は、交換可能なインサートシート部材を備えた金属切削工具に関する。
【解決手段】交換可能なインサートシート部材(6)は、工具本体(2)と切削インサート(3)との間に設けられ、工具本体(2)と切削インサート(3)とが直接接触しないように、所定の接触領域で工具本体(2)と切削インサート(3)とに接触し、交換可能なインサートシート部材(6)は粉体射出成形によって作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能なインサートシート部材が切削工具の工具本体と切削インサートとの間に配置されるように設けられている切削工具用の交換可能なインサートシート部材に関する。また、本発明は交換可能なインサートシート部材を備える金属切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、切削インサートは、切り屑を除去する金属切削加工、旋削加工、転削加工又は穴明け加工などに用いられる。多くの場合、超硬合金の敷板は、切削インサートと工具ホルダポケットの底壁との間に差し挟まれる。敷板は、切削工具の使用による過度の摩耗や損傷から工具ホルダポケットを保護するものである。切削インサートの工具面に対するエンボス加工は、摩耗を防止する一つの方法である。敷板が、ねじで締結された切削インサートと共に使用される場合において、敷板は雌ねじを有する特別なねじによってポケット内の所定位置に保持される。雌ねじは切削インサートの締結に用いられ、特別なねじは敷板を工具本体に締結する。切削インサートを固定するために使用されるねじは、切削インサートの孔を挿通し、特別なねじの雌ねじに係合するように設けられている。通常の敷板は、工具ホルダの底壁に直接に固定されるように設けられている。敷板の支持面は、切削インサートの底面を支持する。
【0003】
一般に、切削インサートは、部分的に硬く、耐摩耗性を有する材料、例えば超硬合金やセラミックスなどで作られる。工具ホルダ本体は、相対的に弾性を有する材料、特に鋼で作られる。工具ホルダポケットを過度の摩耗や損傷から保護するために、敷板は超硬合金などの非常に硬く耐摩耗性を有する材料から作られる。一般に、敷板は、平行な平面に研削される。
【0004】
敷板にあるねじ孔の存在は、切削インサートを最も大きく支持する可能性がある接触面積を小さくする。ねじ孔は相対的に大きく、敷板と切削インサートとの間の接触可能な面積は相対的に小さくなる。幅が非常に狭い先端材料の加工に関して、小さな切削インサートの使用の要求がある。工具本体の敷板で小さな切削インサートを保持することは、敷板と切削インサートとの間の接触面積が小さくなる問題があるため、切削加工中における強固な締結部材を必要とする一定の要求がある。
【0005】
切削インサートの安定的かつ強固は保持は重要な問題であり、切削インサートの破壊又は破損の危険性を減らす。正確に保持することは、切削作業において非常に重要であり、小さな公差を有する最終製品の生産に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、切削工具に取り付けられる切削インサート用の改良された交換可能なインサートシート部材を提供することである。本発明の他の目的は、最新のインサート幾何学形状に適合する交換可能なインサートシート部材を提供すること、例えば、加工費用が高く、又は通常の切削インサートシート(インサート取付け座)を加工する方法によって作ることが不可能で、インサートシートが非常に複雑である交換可能なインサートシート部材を提供することである。他の目的は、切削インサートの位置決めの正確性を改善することであり、また、他の目的は工具本体の工具寿命時間を長くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は請求項1及び11に開示された発明により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0008】
本発明は、金属切削用の交換可能なインサートシート部材に関し、交換可能なインサートシート部材は切削工具の工具本体と切削インサートとの間に配置され、交換可能なインサートシート部材は、工具本体と切削インサートとに接触し、工具本体と切削インサートは直接接触せず、交換可能なインサートシート部材は粉体射出成形によって作られている。
【0009】
本発明の交換可能なインサートシート部材は、周知の粉体射出成形によって作られている。粉体冶金において、射出成形は、金属又はセラミック粉末、超硬合金などの複合物の製造に使用される。超硬合金の粉体は、通常は高分子と共にミルで混合される。成形プロセス後に、高分子は取り除かれ、複合物は対応する工具プレスによる方法と実質的に同じ方法で焼結される。粉体射出成形(PIM)は、成形される材料に依存して、金属射出成形(MIM)とセラミック射出成形(CIM)とに分類される。
【0010】
粉体射出成形技術による効果は、生産物の形状を自由に形成できることである。形状は、機械加工可能な、又は幾何学的に扱い易いものに制限されない。更に、粉体成形部品の焼結後の仕上げ面は、必ずしも研磨工程を必要としない品質とすることができる。研磨ステップは、通常は高価となり、しばしば時間を消費する。
【0011】
請求項1による本発明の効果は、交換可能なインサートシート部材が、切削インサートの底面及び側面の両方で切削インサートを支持するために作られているということである。粉体射出成形品の幾何学形状を自由に形成するために、交換可能なインサートシート部材の切削インサート支持面は、任意の切削インサートに係合する幾何学形状に調整されることができる。切削インサートと交換可能なインサートシート部材との間の接触領域は、切削インサートの平面領域に配置されるだけでなく、特別の切削インサートの幾何学形状に適合するように設計されることもできる。切削インサートと交換可能なインサートシート部材との間の増加した接触面積は、特に、切削インサートが小さいサイズであり、及び/又は複雑な形状であるときに、切削インサートの安定性を改善し、より強固な保持をもたらす。
【0012】
支持面の増加は、切削インサートと交換可能なインサートシート部材との間で小さい平均接触圧力をもたらす。接触圧力が十分に高いときは、材料は塑性変形し、例えば、交換可能なインサートシート部材の面内で切削インサートの浮き上がり(embossing)又は塑性変形を生じる。小さな平均接触圧力によって、交換可能なインサートシート部材及び工具本体の塑性変形又は浮き上がりのリスクが減少する。
【0013】
本発明の交換可能なインサートシート部材は、任意の適切な材料で作られることができ、粉体射出成形(PIM)によって作られることができる。PIM製品は、最終製品の粒子サイズや不純物が制御され、高性能な材料特性が得られるという効果がある。
【0014】
一実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、金属粉末を使用する金属射出成形によって作られる。このような交換可能なインサートシート部材は、例えば、超硬合金又はタングステン合金、一例として、プランゼー社の「Densimet」(登録商標)で作られる。他の材料は、コバルト基合金、例えば、デロロステライト(登録商標)である。本発明の一実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、Ni、Co、Cr、W、Mo及びFeのグループから選択された少なくとも一つを備える材料で作られている。
【0015】
交換可能なインサートシート部材は、工具本体と切削インサートとの間に配置されているため、工具本体と切削インサートとの間で直接の接触はない。交換可能なインサートシート部材は、振動減衰効果をもたらす。交換可能なインサートシート部材の材料及び/又は設計は、振動減衰の能力に依存して選択される。
【0016】
本発明の一実施形態において、交換可能なインサートシート部材は一体成形品である。一体成形品の一つの効果は、特に、小さいサイズの切削インサートが適用されるとき、交換可能なインサート部材の取り扱い及び交換が容易であるということである。一体成形品の交換可能なインサートシート部材の他の効果は、交換可能なインサートシート部材の締結が切削インサートの締結を妨げないように、設計されている。工具本体に対する交換可能なインサートシート部材の締結は、切削インサートから所定の距離に配置されることができ、すなわち、雌ねじを有する高価なねじを必要としない。
【0017】
本発明の一実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、内接円が8mmの直径を有する切削インサートを支持するために設けられている。このサイズの切削インサートは、サイズが小さく、切削インサートの底面における面積が小さく、したがって、従来の平坦な敷板を使用したときの有効な接触面積が小さいために、特に安定して保持したり、制御することが難しい。本発明による交換可能なインサートシート部材によると、切削インサートと交換可能なインサートシート部材との間の接触面積は増加し、これにより、インサートを強固に安定して保持することができる。これは、粉体射出成形技術は、サイズ毎に高精度で複雑な幾何学形状の生産を許容することができるためである。
【0018】
本発明の一実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、切削インサートを支持する支持面を備え、支持面の少なくとも一部分は非平面である。本発明の他の実施形態において、交換可能なインサート部材は、切削インサートの支持のための少なくとも2つの支持面を備え、2つの支持面のそれぞれの少なくとも一部分が非平面である。これは、平面でない外面を有する切削インサートに関して効果的である。交換可能なインサートシート部材は、切削インサートの外面のネガコピーとして、少なくとも部分的に形成されている。これによって、交換可能なインサートシート部材と切削インサートとの間の接触面積が増加し、正確かつ安定性良く保持することができる。切削インサートは支持面が平面であることを要しないため、これは切削インサートの幾何学的形状の設計における自由度を高める。
【0019】
一実施形態において、本発明による交換可能なインサートシート部材は、インサート座が切削インサートの形状に対して相補的なネガ又は逆(inverse)の幾何学形状を有するように作られている。係合する支持面の大きさは、例えば、交換可能なインサートシート部材の硬さに応じて調整され、硬い材料では小さい支持面が必要とされる。
【0020】
本発明の他の実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、少なくとも一つのダブルポジティブの切削インサートを支持するために適合される。ダブルポジティブの切削インサートは支持底面と支持頂面の両方に対して傾斜している支持側面を有するため、本発明の交換可能なインサートシート部材は効果的である。
【0021】
一実施形態において、交換可能なインサート部材は、表面被覆によって、少なくとも部分的に被覆されている。表面被覆は、例えばCVD技術又はPVD技術、又は従来から知られている他の利用可能な被覆技術により行われる薄膜被覆とすることができる。表面被覆は、例えば、交換可能なインサートシート部材の耐摩耗性を改善し、又はその外観を改善する。
【0022】
本発明の他の実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、少なくとも2つの切削インサートを支持するために設けられている。交換可能なインサートシート部材は、3つ以上の切削インサートを支持することもできる。
【0023】
交換可能なインサートシート部材は、工具本体の直径を横断して延びる本体を備え、インサート部材は本体に固定される。他の実施形態において、切削工具の全ての切削インサートは、それぞれ同一の交換可能なインサートシート部材に取り付けられることができる。
【0024】
本発明の他の実施形態において、交換可能なインサートシート部材は、工具本体の前側部分を構成することができる。これは、前側部分が工具本体を摩耗から保護する効果がある。粉体射出成形で作られた前側部分は、製造時間を短くできるという効果があり、これにより、工具本体の加工時間が減少し、加工が容易化し、時間と費用が節約される。
【0025】
また、本発明は、交換可能なインサートシート部材用のインサート座を備える凹所を有する工具本体と、凹所に装着された本発明の交換可能なインサートシート部材と、交換可能なインサートシート部材に装着された切削インサートと、を備えた金属切削工具を開示する。
【0026】
本発明による切削工具の一実施形態において、交換可能なインサートシート部材と凹所との間の面は平面である。この平面は、製造を容易にするという効果がある。
【0027】
本発明による切削工具の一実施形態において、切削インサート及び交換可能なインサートシート部材は、これらの間の接触面積が3つの分離した領域に配置されるように接続され、切削インサートは3つの異なる方向で支持される。これは、装着された切削インサートの安定性を高める効果がある。
【0028】
本発明は、添付の図面に関係する好ましい実施形態を通じてより詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】工具本体から分離された交換可能なインサートシート部材及び切削インサートを示す、本発明による金属切削工具の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】ねじでそれぞれ締結された切削インサート及び交換可能なインサートシート部材を示す、図1の金属切削工具の斜視図である。
【図3】図1及び2に示された切削インサート及び交換可能なインサートシート部材の分解斜視図である。
【図4】2つの切削インサートを支持するために設けられた交換可能なインサートシート部材を示す、本発明による交換可能なインサートシート部材の他の実施形態の分解斜視図である。
【図5】締結位置にある切削インサート及び交換可能なインサートシート部材を示す、図4の金属切削工具の斜視図である。
【図6】5個の切削インサートを支持するために設けられた交換可能なインサートシート部材を示す、本発明による交換可能なインサートシート部材の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1及び2は、本発明による第1の実施形態の金属切削工具1を開示する。この実施形態における金属切削工具1は、被削材、特に鋼やアルミニウム合金などの金属材料の切り屑を除去する加工に用いられる転削工具である。転削工具は、工具本体2と、切削インサート3と、交換可能なインサートシート部材6と、切削インサート3及びインサートシート部材6を締結するためのねじ4,5を含む。図3は、図1及び2に示されたインサートシート部材6及び切削インサート3の拡大図である。
【0031】
工具本体2は、フライス盤の工具ホルダに連結される後側軸部7を備える。工具本体は、工具本体1の縦方向(長手方向)の中心軸を形成する回転軸C1の周りの回転方向で回転するように構成されている。工具本体2は、工具本体2の縦方向の中心軸C1に沿って、後側軸部7に対して反対側に位置する前側部分8を備える。
【0032】
転削工具は、複数の切削インサート3と工具本体1に取付けられるインサートシート部材6とを備える。切削インサート3とインサートシート部材6はそれぞれ交換可能である。切削インサート3は、工具本体2より硬い材料、例えば、超硬合金やセラミックスなどで作られている。インサートシート部材6は、工具本体2より硬い材料、例えば、超硬合金やセラミックスなどの粉体射出成形により作られている。工具本体2は鋼で作られている。
【0033】
工具本体2は、一つのインサートシート部材6と一つの切削インサート3とを収容する複数の凹所19を備えている。図1〜3に開示された実施形態において、転削工具は2つの切削インサート3と2つのインサートシート部材6とを備える。転削工具は、2つの切削インサート3及び2つの凹所19よりも少ないか、又はそれよりも多い数、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つなどの切削インサート及び凹所を備えることもでき、インサートシート部材6は個々の凹所19に配置されることに留意されたい。
【0034】
個々の凹所19は、インサートシート部材6の座9を備える。座9は、インサートシート部材のサポートを形成するように構成されている。図1に示されるように、一つの切削インサートと対応するインサートシート部材は座の内側に示され、座は、2つの底面10,11と、主支持側面14と、2つの副支持側面12,13とを有している。支持底面10は、支持底面11の面に平行である平面によって規定されている。支持側面12,13,14は、支持底面10,11に対して上側にある。支持側面12は支持側面13,14に対して垂直である。
【0035】
図2において、個々のインサートシート部材6は、インサートシート部材6の孔104と図1及び3に示す支持底面11を通る締結孔103を通って延びる締結ねじ4によって座9に固定されている。インサートシート部材6の底面(不図示)は、インサートシート部材6が工具本体2に固定されるとき、インサートシート部材6が座9の支持面10,11,12,13,14と接触するように形成されている。
【0036】
図1〜3に示された個々のインサートシート部材6は、一つの切削インサート3を支持するようになっている。インサートシート部材6は、第1の孔104と、第2の孔105とを有し、インサート座100は、支持底面15と、複数の支持側面16a,16b,17a,17bと、複数の逃げ面30,31,32,33とを有する。インサート座100は、所定の位置で切削インサート3を支持するように形成されている。第1の孔104は、そこを通って延びる締結ねじ4を介して工具本体2にインサートシート部材6を締結するために、インサート座100から分離している。
【0037】
図1〜6、特に図3で詳細に示される切削インサート3は、頂面121と、底面(不図示)と、頂面121及び底面に接続するエッジ側面130とを有するダブルポジティブ切削インサートである。頂面121とエッジ側面130との間の稜線は上側切れ刃110を規定し、底面と側面130との間の稜線は下側切れ刃111を規定する。切削インサート3は、上側切れ刃110と、下側切れ刃111と、切削インサート3を通って延びる中央孔101とを有する。エッジ側面130は切削インサート3の周囲を延びる。エッジ側面130は、切削インサート3の周囲を延び、エッジ側面130を上側部131と下側部132とに分離する移行部40を有する。上側部131は上側切れ刃110に接続し、下側部132は下側切れ刃111に接続する。切削インサート3は、平面視において略四角形である。頂面121と上側部131とによって規定される切削インサートの上側半分は、切削インサート3の下側半分に対し、中心軸Aの周りで角度的にわずかにずれて配置され、下側半分は底面と下側部132とによって規定されている。
【0038】
切削インサート3は、異なる刃先交換位置で交換可能である。一つの交換位置において、上側切れ刃110が切削し、切削インサート3の頂面121が切り屑生成面又はすくい面を形成し、切削インサート3の下面(付図示)が座9の底面15上に接する支持面を形成する。
【0039】
図2において、切削インサート3は、切削インサート3の中央孔101とインサートシート部材6の第2の孔105を通って延び、支持底面10の締結孔102に係合する締結ねじ5によって座100に固定される(図1及び3参照)。切削インサート3は、3つの領域で支持された固定位置にあり、3方向で支持される。切削インサート3の下面は面15によって支持され、切削インサート3の上側部131の一部分は、インサートシート部材6の支持側面16a,16bによって支持され、切削インサート3の上側部131の他の部分は、インサートシート部材6の支持側面17a,17bによって支持されている。インサートシート部材6の支持側面は、部分的に湾曲した面又は非平面16a,17a及び、平面部分と平面でない部分とを有する切削インサート3の上側部131に係合する部分的な平面16b,17bである。交換可能なインサートシート部材6は、切削インサート3が取付け位置にあるときに切削インサートと接触しない複数の領域30,31,32,33を有する。
【0040】
インサートシート部材6の更なる実施形態について説明する。同一の参照符号は開示された全ての実施形態で同一の要素を示すことに留意されたい。
【0041】
図4及び5は、第1の実施形態とは異なるインサートシート部材6の第2の実施形態を示す。インサートシート部材6が2つの切削インサート3のために設けられた2つの座100を備える。この切削工具の切削インサート3の全ては、同じインサートシート部材6に備えられる。インサートシート部材6は、インサートシート部材6の下部から下向きに突出する実質的に円柱状のシャフト21を有する。工具本体は、インサートシート部材6を収容するように構成され、実質的に筒状の孔140は工具本体2の回転軸C1に沿って延びるように配置されている。工具本体2は、インサートシート部材6の支持面152,153,154を支持するために設けられた支持面141,142を有する。
【0042】
図5において、インサートシート部材6は工具本体2に固定され、2つの切削インサート3は締結ねじ20を介してインサートシート部材6の座100に固定されている。個々の締結ねじ20は、切削インサート3の中央孔101及びインサートシート部材6の孔150を通って延び、工具本体2の支持面142を貫通する締結孔151に係合する。孔140はインサートシート部材6のシャフト21が挿入されるように設けられ、図5に示すように、インサートシート部材6が工具本体2に取付けられる。
【0043】
図6はインサートシート部材6の第3の実施形態を開示する。この実施形態は、交換可能なインサートシート部材6が5つの切削インサート3を備え、インサートシート部材6が転削工具の前側部分を形成する点において、第1及び第2の実施形態と相違する。インサートシート部材6は、5つの切削インサート3を備える。個々の切削インサート3は、締結ねじ22を介してインサートシート部材6に固定されるように設けられている。締結ねじ22は、切削インサート3の中央孔101を通って延び、インサートシート部材6の締結孔161に係合する。交換可能なインサートシート部材6は、工具本体2の突出部160とインサートシート部材6の底面にある対応する孔(不図示)によって工具本体2に強固に固定されるように設けられている。インサートシート部材6は、工具本体2の回転軸C1に沿って延びる中央孔171,172を通る締結要素を介して工具本体2に固定されている。
【0044】
本発明は、開示された実施形態に制限されず、以下の請求項の範囲内で変更することができる。例えば、交換可能なインサートシート部材6は、任意の他の切削インサート、例えば、円形状、多角形状のインサートであって、ネガティブ又はポジティブの幾何学形状を有するインサートに適用することができる。切削インサート3は、任意の形状及びサイズ、例えば、切削インサートの内接円が6mm、12mm又は15mmの直径を有するサイズとすることができる。切削工具1は、転削工具、穴明け工具又は旋削工具とすることができる。更に、交換可能なインサートシート部材6は、上記の例において開示された1つ、2つ又は5つ以外に、任意の数の切削インサートを備えることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 切削工具
2 工具本体
3 切削インサート
4 ねじ
6 インサートシート部材
9 座
10,11 支持底面
12,13 副支持底面
14 主支持底面
16a,16b,17a,17b 支持側面
19 凹所
21 円柱状のシャフト
100 インサート座
101 中央孔
103 締結孔
110 上側切れ刃
111 下側切れ刃
121 頂面
130 エッジ側面
131 上側部
132 下側部
140 円筒状の孔
141,142 支持面
160 突出部
161 締結穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(2)と切削インサート(3)とを備えた金属切削工具用の交換可能なインサートシート部材(6)であって、
交換可能なインサートシート部材(6)は、工具本体(2)と切削インサート(3)との間に設けられ、工具本体(2)と切削インサート(3)とが直接接触しないように、所定の接触領域で工具本体(2)と切削インサート(3)とに接触し、
交換可能なインサートシート部材(6)は、粉体射出成形によって作られていることを特徴とする交換可能なインサートシート部材。
【請求項2】
交換可能なインサートシート部材(6)は一体成形品であることを特徴とする請求項1に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項3】
交換可能なインサートシート部材(6)は、Ni、Co、Cr、W、Mo及びFeのグループから選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項4】
交換可能なインサートシート部材(6)は内接円の直径が8mm以下の切削インサートを支持することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項5】
交換可能なインサートシート部材(6)は切削インサートを支持する支持面を備え、少なくとも一つの支持面が非平面(16a,17a)であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項6】
交換可能なインサートシート部材(6)は切削インサートを支持する少なくとも2つの支持面を備え、2つの支持面の少なくとも一部分が非平面(16a,17a)であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項7】
交換可能なインサートシート部材(6)は少なくとも一つのダブルポジティブ切削インサート(3)を保持することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項8】
交換可能なインサートシート部材(6)は、表面被覆によって少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項9】
交換可能なインサートシート部材(6)は、少なくとも2つの切削インサートを支持することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項10】
交換可能なインサートシート部材(6)は、工具本体(2)に取付けられたときに金属切削工具の(1)の前側部分を構成することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の交換可能なインサートシート部材。
【請求項11】
交換可能なインサートシート部材(6)の座(9)である凹所(19)を有する工具本体(2)を備えた金属切削工具(1)であって、
請求項1〜10の何れか一項に記載の交換可能なインサート部材(6)が、座(9)に取り付けられ、少なくとも一つの切削インサート(3)が交換可能インサートシート部材(6)に取り付けられることを特徴とする金属切削工具。
【請求項12】
交換可能なインサートシート部材(6)と凹所(19)との間の接触領域が平面であることを特徴とする請求項11に記載の金属切削工具。
【請求項13】
切削インサート(3)及び交換可能なインサートシート部材(6)は、切削インサート(3)及びインサートシート部材(6)の間の接触領域が分離した3つの領域で接触し、切削インサート(3)が3つの異なる方向で支持されることを特徴とする請求項11又は12に記載の金属切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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