説明

切換弁構造

【課題】 伸縮体における伸縮の可不可の制御と、この伸縮体の伸縮時における最適な減衰力の発生を可能にする流体圧回路の具現化にあって、切換弁を高価にする構成の採用を回避する。
【解決手段】 伸縮体1とリザーバタンクTとを接続する流路L中に配設の減衰手段2の上流側に配設のロック弁における可不可を選択する切換弁32が伸縮体1側から誘導のパイロット圧の供給で連通ポジションに切り換わると共に、この切換状態が状態維持手段20で維持され、上記のパイロット圧の解除時に状態維持手段20におけるスプール21の手動操作による強制移動で切換弁32が遮断ポジション32bに切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切換弁構造に関し、特に、減衰作用をする伸縮体を有する免震装置あるいは大型機器に利用される流体圧回路を構成する切換弁への具現化に向く切換弁構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
減衰作用をする伸縮体を有する免震装置あるいは大型機器に利用される流体圧回路としては、これまでに種々の提案があり、たとえば、特許文献1には、免震装置を構成するボールアイソレータなどの免震支承に並列される油圧シリンダなどの伸縮体の伸縮と、この伸縮体の伸縮に伴う減衰作用を可能にする提案が開示されている。
【0003】
すなわち、この文献開示の流体圧回路は、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に減衰手段を有し、この減衰手段は、伸縮体からの作動油が通過するとき、伸縮体の伸縮を抑制する減衰作用を具現化する。
【0004】
その一方で、この流体圧回路は、上記の流路中にあって、減衰手段の上流側に配設されて減衰手段の作動の可不可を選択するロック機構を有し、このロック機構は、流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されてこのロック弁の作動の可不可を選択する切換弁とを有してなる。
【0005】
そして、この流体圧回路にあって、ロック機構における切換弁は、常閉型のオンオフ弁たるソレノイドバルブからなり、伸縮体やその周辺などに設けられる種々の検知手段からの信号に基づく通電時に連通ポジション(オン状態)に切り換わってロック弁のオン作動を許容し、通電解除時に遮断ポジション(オフ状態)に戻ってロック弁をオフ作動させ、このロック弁をロック状態に維持する。
【0006】
それゆえ、この文献開示の流体圧回路にあって、ロック機構における切換弁は、たとえば、免震支承に並列する伸縮体が風による微小なストロークで伸縮する場合に、ロック機構におけるロック弁をロック状態に維持し、伸縮体の伸縮を阻止して、たとえば、構築物の風による揺れを阻止する。
【0007】
一方、この流体圧回路にあって、上記の切換弁は、伸縮体が地震による揺れで大きいストロークで伸縮する場合には、通電されてオン状態になり、上記のロック弁をオン作動(開放作動)させて減衰手段の作動による減衰力発生で伸縮体の伸縮を抑制し、たとえば、構築物における横揺れを速やかに鎮静化する。
【0008】
そして、地震の揺れによる伸縮体の伸縮が収まると、センサーが検知したりタイマーを経るなどしたりして切換弁への通電が解除され、したがって、切換弁がオフ状態に復帰し、上記のロック弁のオフ作動(閉鎖作動)を保障する。
【0009】
ちなみに、上記の文献開示の流体圧回路にあっては、伸縮体の伸縮ストロークが極めて大きく、したがって、減衰手段を通過する作動油量が過大になる場合には、ロック機構の上流側に配設のリリーフ弁が作動して、その過大となる伸縮体からの作動油をリザーバタンクに放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005‐351320号公報(要約,明細書中の段落0007,同0017,図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した文献開示の流体圧回路にあっては、切換弁の作動によるロック弁の作動、すなわち、所定のロック機能の発揮および減衰機能の発揮について、基本的に不具合がある訳ではないが、実施に際して、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0012】
すなわち、上記した文献開示の提案にあって、ロック機構における切換弁は、種々のセンサーなどからなる検知手段からの信号に基づく通電でオン状態に切り換わり、通電解除でオフ状態に戻るソレノイドバルブからなる。
【0013】
それゆえ、この流体圧回路を利用する場合には、減衰手段およびロック機構の作動を保障すべく、ロック機構における切換弁における適正な作動のために、種々のセンサーなどからなる検知手段が伸縮体やその周辺に配設されることが必須になり、その配設を要しない場合に比較すると、この流体圧回路を具体化する構成を高価なものにする危惧がある。
【0014】
そして、上記の流体圧回路にあっては、切換弁がソレノイドバルブからなるから、切換弁が電気部品の経年劣化で作動不能にならないようにするために、あらかじめ電気部品を交換するなどのメンテナンスを必須にし、性能保障を容易にしない不具合がある。
【0015】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、伸縮体における伸縮の可不可の制御と、この伸縮体の伸縮時における最適な減衰力の発生を可能にする流体圧回路の具現化にあって、その構成要素たる切換弁を高価にする構成の採用を回避して、その流体圧回路における汎用性の向上を期待するのに最適となる切換弁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するために、この発明による切換弁構造の構成を基本的には、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、このロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にこのロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路にあって、上記の切換弁に入力される外部信号が上記のロック弁の上流側たる上記の伸縮体から誘導されるパイロット圧とされる一方で、上記の切換弁が上記の外部信号たるパイロット圧の供給時あるいは解除時に切り換えられて上記のロック弁の作動を許容する連通ポジションおよび上記のロック弁の作動を阻止する遮断ポジションを有し、この切換弁における連通ポジションあるいは遮断ポジションが上記の外部信号たるパイロット圧の供給時あるいは解除時に状態維持手段で維持されて上記のロック弁の作動の可不可状態を継続すると共に、この状態維持手段が外力操作によって上記の切換弁における連通ポジションから遮断ポジションへの切り換えあるいは上記の遮断ポジションから連通ポジションへの切り換えを可能にしてなるとする。
【発明の効果】
【0017】
それゆえ、この発明によれば、伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、このロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にこのロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路にあって、上記の切換弁に入力される外部信号が上記のロック弁の上流側たる上記の伸縮体から誘導されるパイロット圧とされるから、切換弁が入力される外部信号を電気的信号にするソレノイドバルブからなる場合に比較して、切換弁およびこれに電気的に接続される関連部品における経年劣化による作動不能を招来させないためにする電気部品の交換などのメンテナンスを不要にし、性能保障を容易にする。
【0018】
そして、この発明によれば、切換弁がパイロット圧を外部信号にするから、伸縮体やその周辺に電気的信号を出力するための種々の検知手段を設ける必要がなく、また、検知手段からの検知結果を電気的信号にするための演算処理などする制御手段を設ける必要もなく、この流体圧回路を具現化する装置全体の複雑化や大型化などの回避が容易になる。
【0019】
一方、この流体圧回路にあって、切換弁が外部信号たるパイロット圧の供給時あるいは解除時に切り換えられてロック弁の作動を許容する連通ポジションおよびロック弁の作動を阻止する遮断ポジションを有する一方で、この切換弁における連通ポジションあるいは遮断ポジションがパイロット圧の供給時あるいは解除時に状態維持手段で維持されて、この切換弁がロック弁の作動可不可状態を継続すると共に、この状態維持手段が外力操作によって上記の切換弁における連通ポジションから遮断ポジションへの切り換えあるいは遮断ポジションから連通ポジションへの切り換えを可能にしてなるから、連通ポジションから遮断ポジションへの切り換えあるいは遮断ポジションから連通ポジションへの切り換えがセンサーなどの検知手段やタイマーなどを利用して自動的に切り換わる場合に比較して、この切換弁における構成の簡素化が可能になり、この切換弁を有する流体圧回路を具現化する装置類におけるコストの高騰化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】伸縮体を有する免震装置を原理的に示す図である。
【図2】この発明の切換弁構造を具現化する流体圧回路を原理的に示す回路図である。
【図3】この発明の切換弁構造を具現化する切換弁の一実施形態を示す断面図である。
【図4】図3に示す切換弁の作動状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、図示した実施形態に基づいてこの発明を説明するが、この発明による切換弁構造は、たとえば、図1に示すように、構築物Aと地盤Gとの間に配設されて減衰作用をする伸縮体1を有する免震装置に利用される流体圧回路の具現化に向く。
【0022】
免震装置は、上記の伸縮体1に言わば並列される積層ゴム支柱からなる免震支承Sを有しており、この免震支承Sは、たとえば、地震によって地盤Gが横揺れするときに、この地盤Gの横揺れを構築物Aに伝播させないように機能する。
【0023】
そして、伸縮体1は、たとえば、地震による地盤Gの横揺れに起因して構築物Aが横揺れするとき、この構築物Aにおける横揺れを速やかに鎮静化するための減衰作用をする。
【0024】
このことからすると、上記の免震支承Sについては、図示する積層ゴム支柱からなるのに代えて、図示しないが、凡そ免震機能を発揮する限りには、ボールアイソレータなどからなるとしても良い。
【0025】
ちなみに、この流体圧回路は、その構成からすると、図示しないが、上記の伸縮体1が床面などに設置されて大型機器に連結され、この大型機器における減衰作用を具現化するとしても良い。
【0026】
伸縮体1は、たとえば、液体圧シリンダたる油圧シリンダからなり、図2に示すように、この油圧シリンダは、シリンダ体1aと、このシリンダ体1aに対して出没可能に連繋するロッド体1bと、このロッド体1bに連設されながらシリンダ体1a内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体1a内にロッド側室R1とピストン側室R2を画成するピストン体1cとを有してなる。
【0027】
そして、この油圧シリンダたる伸縮体1にあって、上記のロッド側室R1とピストン側室R2は、シリンダ体1aの外に配設の連通路1dを介して連通可能とされる一方で、この連通路1dに配設のチェック弁1eで、ピストン側室R2のロッド側室R1への連通が許容される一方で、その逆の流れとなるロッド側室R1のピストン側室R2への連通が遮断される、いわゆる、ユニフロー型に設定されている。
【0028】
また、この伸縮体1にあっては、後述する排出路たるメインの流路Lの他に設けられる吸い込み路1fを介してのリザーバタンクTからの作動油のピストン側室R2への流入が許容されており、この吸い込み路1fには、ピストン側室R2側からの作動油のリザーバタンクTへの逆流を阻止するチェック弁1gが配設されている。
【0029】
それゆえ、上記の伸縮体1にあっては、ロッド体1bがシリンダ体1a内に没入する収縮作動時に、リザーバタンクTへの流出をチェック弁1gで阻止されたピストン側室R2の作動油が連通路1dおよびこの連通路1dに配設のチェック弁1eを介してシリンダ体1a内のロッド側室R1に流入し、このロッド側室R1から切換弁構造を構成するメインの流路Lに流入する。
【0030】
そして、上記と逆に、ロッド体1bがシリンダ体1a内から突出する伸長作動時には、ピストン体1cの移動で収縮されるロッド側室R1からの作動油が連通路1dのチェック弁1eで反対側のピストン側室R2への流入を阻止されるため上記のメインの流路Lに流入する。
【0031】
なお、ピストン体1cの移動で膨張するピストン側室R2には、リザーバタンクTからの作動油が吸い込み流路1fおよびこの流路1f中のチェック弁1gを介して補充される。
【0032】
なお、上記の伸縮体1は、油圧シリンダからなり、したがって、作動流体に作動油を利用するが、流体圧シリンダとされる限りには、他の流体を使用しても良く、たとえば、錆などの弊害がなければ水を作動流体にしても良い。
【0033】
また、図示するところでは、上記の伸縮体1が油圧シリンダからなるが、凡そ流体の流出入で伸縮する限りには、免震装置や他の機器類に適用するにあたり強度などの不具合がなければ、たとえば、油圧シリンダ以外にも流体の流出入で伸縮可能とされる容器が利用されても良い。
【0034】
ところで、流体圧回路は、基本的には、伸縮体1におけるロッド側室R1とリザーバタンクTとを接続するメインの流路L中に配設されて作動流体たる作動油の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段2と、この減衰手段2の上流側に配設されて上記の流路Lの開閉を可能にするロック機構3とを有してなる。
【0035】
そして、ロック機構3は、作動時に上記の流路Lを開閉するロック弁31と、このロック弁31に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にロック弁31の作動の可不可を可能にする切換弁32とを有してなる。
【0036】
まず、減衰手段2は、作動油の通過時に所定の減衰作用をするもので、それゆえ、その具体的な構成については、任意の構成を選択できるが、図示するところでは、メインの流路Lにおける油圧状況に応じた減衰作用を具現化できる可変型の減衰弁からなる。
【0037】
この可変型の減衰弁からなる減衰手段2にあっては、伸縮体1の伸縮速度に応じて減衰特性を変化させ得るので、伸縮体1を適用する免震装置に最適な減衰特性を得られる点で有利となる。
【0038】
なお、減衰手段2として、単なる絞り弁を使用しても良いが、この場合は、図示しないが、伸縮体1とリザーバタンクTとの間で並列する複数の流路Lがそれぞれ減衰手段2とロック機構3におけるロック弁31とを有すると共に、各減衰手段2がそれぞれ異なる減衰特性を発揮する設定の場合の利用に向くであろう。
【0039】
つぎに、ロック機構3におけるロック弁31は、具体的には、弁体たるポペット31aを有し、このポペット31aは、流路L中に形成される弁座31bに附勢手段31cで附勢された状態で着座しながら上記弁座31bよりも上流側の油圧をポペット31aの背面側に導く通路31dを有し、この通路31dには絞り31eを有し、さらに、図1中で右端面側となる附勢手段31cを有する背面側を後述する切換弁32に連通している。
【0040】
それゆえ、このロック弁31にあっては、図示するように、ポペット31aが前進状態にあって弁座31bに着座した状態にあるときに流路Lを閉鎖し、したがって、伸縮体1におけるロッド側室R1からの作動油が流路Lを介して後述する減衰手段2側、すなわち、リザーバタンクTに流出し得なくなり、その結果、伸縮体1が伸縮不能なロック状態に維持される。
【0041】
そして、このロック弁31にあっては、図示しないが、ポペット31aが附勢バネ31cの附勢力に打ち勝って図中で右行するように後退するときに流路Lを開放し、したがって、伸縮体1におけるロッド側室R1からの作動油が流路Lおよび減衰手段2を介してリザーバタンクTに流出することを許容し、このとき、減衰手段2が作動油の通過によって所定の減衰作用を具現化する。
【0042】
なお、図2に示す実施形態において、ロック弁31は、ポペット31aを有するが、このポペット31aが機能するところを勘案すると、これに代えて、図示しないが、弁体としてスプールを有しても良い。
【0043】
また、上記したところでは、ロック弁31は、前進時に流路Lを閉鎖し、後退時に流路Lを開放するが、この発明が意図するところからすれば、これに代えて、前進時に流路Lを開放し、後退時に流路Lを閉鎖するとしても良い。
【0044】
切換弁32は、この発明に言う切換弁構造を具現化するもので、基本的には、パイロット切換弁からなり、外部信号たるパイロット圧の供給時に切り換わって上記のロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を許容する連通ポジション32aと、外部信号たるパイロット圧の解消時でもあるパイロット圧の供給前の状態に維持されて上記のロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を阻止する遮断ポジション32bとを有している。
【0045】
そして、この切換弁32にあって、上記の連通ポジション32aおよび遮断ポジション32bの維持については、この切換弁32に組み込まれた後述の状態維持手段20によって維持されるとし、また、この状態維持手段20に対する手動操作などで連通ポジション32aから遮断ポジション32bへの復帰作動を可能にする。
【0046】
なお、状態維持手段20は、外力操作によって切換弁32を連通ポジション32aから遮断ポジション32bに、あるいは、遮断ポジション32bから連通ポジション32aに切り換えることを可能にするが、図示するところでは、遮断ポジション32bから連通ポジション32aへの切り換えは、上記したように、外部信号たるパイロット圧の供給時に実践され、逆の連通ポジション32aから遮断ポジション32bへの切り換えが手動操作で具現化される。
【0047】
そして、切換弁32にあって、連通ポジション32aから遮断ポジション32bに切り換えるとき、すなわち、状態維持手段20の実働は、センサーなどの検知手段やタイマーなどを利用して自動的に実践されるのではなく、言わば手動操作で実践されるとするから、たとえば、ハンマーの打撃で実現されても良い。
【0048】
それゆえ、この切換弁32にあっては、図示するように、遮断ポジション32bに維持されるときに、上記したロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を遮断し、したがって、ロック弁31を開放作動し得なくする。
【0049】
そして、この切換弁32にあっては、図示しないが、後述するパイロット圧の供給を受けて連通ポジション32aに切り換えられるときに、上記したロック弁31におけるポペット31aの背面側のリザーバタンクTへの連通を許容して上記のロック弁31の開放作動を許容する。
【0050】
また、この切換弁32にあっては、状態維持手段20で連通ポジション32aあるいは遮断ポジション32bを維持し得るから、パイロット圧が解消され、したがって、この切換弁32が遮断ポジション32bに戻されても良い状況になっても、言わばすぐさま遮断ポジション32bに戻らない。
【0051】
その結果、たとえば、この切換弁32が連通ポジション32aに切り換わり、したがって、爾後に伸縮体1の伸縮が鎮静化された状態になっても、すぐさま遮断ポジション32bに戻らないが、この流体圧回路を有する免震装置の利用の実際を鑑みるとそれで足りると言い得る。
【0052】
すなわち、たとえば、地震で構築物Aが横揺れし、このとき、流体圧回路において、切換弁32が連通ポジション32aに切り換わり、したがって、伸縮体1の伸縮が許容され、その後、地震が収まり、構築物Aの横揺れが収まり、したがって、伸縮体1の伸縮が収まったとき、たとえば、直ちに人が構築物Aの床下に潜って、この切換弁32において遮断ポジション32bに戻す作業をすることは余りないと言い得る。
【0053】
つまり、地震による構築物Aの揺れが収まった後は、構築物Aに異変がないかが点検されるであろうが、免震装置を構成する流体圧回路において、切換弁32が直ちに遮断ポジション32bに戻されなければならない必要性は少ないと言い得る。
【0054】
以上からすると、この発明におけるように、切換弁32において、遮断ポジション32bへの戻し操作は、状態維持手段20を利用した手動操作、たとえば、ハンマー打撃によることで充分であり、また、手動操作で遮断ポジション32bに戻す場合には、センサー類やタイマーなどを利用して言わば自動的に遮断ポジション32bに戻す場合に比較して、この切換弁32の構成をいたずらに複雑にしなくて済み、部品コストの上からも有利になる。
【0055】
上記した切換弁32にあっては、外部信号たるパイロット圧の供給時に連通ポジション32aに切り換わり、外部信号たるパイロット圧の解消時に遮断ポジション32bに戻るとするが、この発明が意図するところからすれば、これに代えて、パイロット圧の解消時に連通ポジション32aに切り換わり、パイロット圧の供給時に遮断ポジション32bに戻るとしても良い。
【0056】
それゆえ、この切換弁32にあっては、外部信号を電気的信号にするソレノイドバルブからなる場合に比較して、切換弁32自体およびこれに電気的に接続される関連部品における経年劣化による作動不能を招来させないためにする電気部品の交換などのメンテナンスを不要にし、性能保障を容易にする。
【0057】
そして、この切換弁32によれば、パイロット圧を外部信号にするから、伸縮体1やその周辺に電気的信号を出力するための種々の検知手段を設ける必要がなく、また、検知手段からの検知結果を電気的信号にするための演算処理などする制御手段を設ける必要もなく、この流体圧回路を具現化する装置全体の複雑化や大型化などの回避が容易にする。
【0058】
ところで、この切換弁32における状態維持手段20は、図3および図4に示すように、スプール21とディテント機構を備え、このディテント機構が切換弁32における外部信号たるパイロット圧の供給前の図3に示す遮断ポジション32b(図2参照)を維持すると共に、切換弁32における外部信号たるパイロット圧の供給時の図4に示す連通ポジション32a(図2参照)を維持する。
【0059】
具体的に看ると、このディテント機構は、状態維持手段20を構成するスプール21における細径部21aからなる凹部と、この凹部に出没可能とされるボール22と、このボール22を受けるプッシャ23と、このプッシャ23の進退に追随してロック弁31とリザーバタンクTとを結ぶ流路を開閉するチェック弁24とを有してなる。
【0060】
そして、このディテント機構にあって、上記のチェック弁24がいわゆるシート部に離着座するボール24aとこのボール24aを背後側から附勢するバネ24bとを有し、このバネ24bの附勢力で上記のプッシャ23が前進方向に附勢され、このプッシャ23が上記のボール22を附勢する。
【0061】
一方、状態維持手段20は、前記したように、外力操作によって遮断ポジション32bから連通ポジション32aに切り換えることを可能にするもので、図示するところでは、上記のスプール21を有してなる。
【0062】
そして、この状態維持手段20にあって、スプール21は、前記した細径部21aを挟むように大径部21bと小径部21cとを有し、この大径部21bと小径部21bとの間に画成される容室たる上記の細径部21aからなる凹部にパイロット流路4を介して外部信号たるシーケンス弁41で設定されるパイロット圧を流入させる。
【0063】
それゆえ、このスプール21にあっては、上記した凹部にパイロット圧が作用すると、大径部21bと小径部21cとの受圧面差から遮断ポジション32bから図3中で左行して、図4に示すように連通ポジション32aに切り換わる。
【0064】
そして、この状態維持手段20によって、すなわち、ディテント機構を構成する凹部から後退するようにして抜け出したボール22がチェック弁24を構成する附勢バネ24bのバネ力でスプール21の小径部に21cに押し付けられることで切換弁32における切換状態が維持される。
【0065】
そして、図4に示すように、スプール21が左行するときには、チェック弁24が開放状態になり、ロック弁31の背後側がリザーバタンクT側に連通し、したがって、このロック弁31が開放作動で減衰手段2の作動を保障される。
【0066】
また、図4に示す状態から上記した凹部片パイロット圧画の供給が解消されるとき、すなわち、伸縮体1(図2参照)の伸縮が停止されて、この伸縮体1側からの油圧作用がなくなることでパイロット圧が解消されると、スプール21が図23に示す遮断ポジション32bに戻り得ることになる。
【0067】
すなわち、前記した文献開示のソレノイドバルブからなる切換弁にあってもそうであるが、この種の切換弁の多くが、外部入力が解消するときに復元要素たる附勢バネのバネ力で旧状に復するとするが、この発明の切換弁32にあっては、外部入力たるパイロット圧が解消されたからと言って、直ちに遮断ポジション32bに戻ることはない。
【0068】
すなわち、前記したように、この切換弁32は、附勢バネのような復元要素を有しないから、言わば自然に旧状には復さず、改めて外力を入力しないと旧状には復さない。
【0069】
そして、改めて入力する外力は、前記した状態維持手段20を構成するスプール21に入力されるもので、具体的には、スプール21が強制的に移動されない限りに、旧状に復帰できないとしている。
【0070】
このとき、スプール21における細径部21aからなる凹部にあって、パイロット圧が解消されているから、スプール21は、図4に示す遮断ポジション23bから図3に示す連通ポジション32aに容易に移行し得る。
【0071】
そして、スプール21が移行して遮断ポジション32bに復帰した後は、この状態が状態維持手段20を構成するディテント機構で維持される。
【0072】
それゆえ、上記した切換弁32、すなわち、この発明の切換弁構造によれば、 流体圧回路にあって、切換弁32が外部信号たるパイロット圧の供給時に切り換えられてロック弁31の作動を許容する連通ポジション32aおよびパイロット圧の解除時に切換可能とされる遮断ポジション32bを有する一方で、この切換弁32における連通ポジション32aあるいは遮断ポジション32bが状態維持手段20で維持されると共に、この状態維持手段20が外力操作によって切換弁32における連通ポジション32aから遮断ポジション32bへの切り換えを可能にしてなるから、このポジションの切り換えがセンサーなどの検知手段やタイマーなどを利用して自動的に切り換わる場合に比較して、この切換弁32における構成の簡素化を可能にし、この切換弁32を有する流体圧回路を具現化する装置類におけるコストの高騰化を回避できる。
【0073】
一方、前記したように、この発明にあって、切換弁32には、外部信号としてパイロット圧が供給され、そして、このパイロット圧は、図示するところにあって、前記したロック機構3を構成するロック弁31の上流側となる伸縮体1からパイロット流路4を介して誘導される。
【0074】
すなわち、パイロット流路4は、基端が前記したメインの流路Lに接続され、途中にパイロット圧を設定するシーケンス弁41を有すると共に、このパイロット流路4におけるいわゆる逆流、すなわち、伸縮体1側からのパイロット流路4への安定した油圧の供給を可能にするチェック弁42を有して、切換弁32にパイロット圧を誘導する。
【0075】
ちなみに、図示する切換弁32にあっては、これが遮断ポジション32bにあるときにこの遮断ポジション32bとリザーバタンクTとを連通する流路中に絞り32cを有してなるが、この絞り32cは、遮断ポジション32bにおける急激な圧抜けを阻止する。
【0076】
すなわち、前記した切換弁32においては、連通ポジション32aにあるのを遮断ポジション32bに戻す操作の際に、パイロット圧が残存し、したがって、連通ポジション32aから遮断ポジション32bへの戻し操作が円滑に実現できなくなることを回避するための圧抜きを可能にするが、だからと言って、急激に圧抜けする場合には、連通ポジション32aから遮断ポジション32bに急激に切り換わり、仮に、このとき、伸縮体1が完全にいわゆる中立状態に戻っていないまま伸縮が阻止されることを回避することにある。
【0077】
それゆえ、この絞り32cにあっては、前記したように、切換弁32の実際の作動を勘案すると、すなわち、切換弁32において経時的に作動油が漏れてパイロット圧が解消する状態になり得ることを勘案すると、その配設が省略されても良い。
【0078】
一方、図示する流体圧回路にあっては、伸縮体1とリザーバタンクTとを接続するリリーフ流路5を設けると共に、このリリーフ流路5中に伸縮体1における過大油圧作用を回避するリリーフ弁51を設けてなる。
【0079】
それゆえ、このリリーフ流路5中にリリーフ弁51を設ける流体圧回路にあっては、伸縮体1における過大油圧作用を回避し得るから、たとえば、地震で最伸長状態あるいは最収縮状態になるような場合にも、伸縮体1が作動油漏れなどを招来せずして伸縮可能となり、したがって、構築物Aにおける強度に依存した耐震を実現可能にする。
【0080】
前記したところでは、免震装置にあって、伸縮体1は、通常は伸縮が阻止されるロック状態に維持されるとしたが、この発明が意図するところは、伸縮体1の伸縮を可能にするロック機構3におけるロック弁31の作動が切換弁32によるとし、しかも、この切換弁32の作動がパイロット圧を外部信号とするところにあるから、この観点からすれば、伸縮体1が通常は伸縮可能な状態にあり、地震の揺れの入力で瞬時にロック弁31がロック状態に切り換わると共に、切換弁32の作動が可能とされるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
減衰作用をする伸縮体を有する免震装置あるいは大型機器に利用される流体圧回路を構成する切換弁への具現化に向く。
【符号の説明】
【0082】
1 伸縮体
2 減衰手段
3 ロック機構
4 パイロット流路
5 リリーフ流路
20 状態維持手段
21 スプール
21b 大径部
21c 小径部
31 ロック弁
31a 弁体たるポペット
32 切換弁
32a 連通ポジション
32b 遮断ポジション
41 シーケンス弁
51 リリーフ弁
L 流路
T リザーバタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮体とリザーバタンクとを接続する流路中に配設されて作動流体の通過時に所定の減衰作用をする減衰手段と、この減衰手段の上流側に配設されて上記の流路の開閉を可能にするロック機構とを有し、このロック機構が作動時に上記の流路を開閉するロック弁と、このロック弁に接続されて外部信号の入力時あるいは解除時にこのロック弁の作動の可不可を可能にする切換弁とを有してなる流体圧回路にあって、上記の切換弁に入力される外部信号が上記のロック弁の上流側たる上記の伸縮体から誘導されるパイロット圧とされる一方で、上記の切換弁が上記の外部信号たるパイロット圧の供給時あるいは解除時に切り換えられて上記のロック弁の作動を許容する連通ポジションおよび上記のロック弁の作動を阻止する遮断ポジションを有し、この切換弁における連通ポジションあるいは遮断ポジションが上記の外部信号たるパイロット圧の供給時あるいは解除時に状態維持手段で維持されて上記のロック弁の作動の可不可状態を継続すると共に、この状態維持手段が外力操作によって上記の切換弁における連通ポジションから遮断ポジションへの切り換えあるいは上記の遮断ポジションから連通ポジションへの切り換えを可能にしてなることを特徴とする切換弁構造。
【請求項2】
上記の外部信号たるパイロット圧が上記のロック弁の上流側に基端が接続するパイロット流路に配設のシーケンス弁で設定されてなる請求項1に記載の切換弁構造。
【請求項3】
上記の状態維持手段がディテント機構を備え、このディテント機構が上記のパイロット圧の供給時あるいは解消時のこの切換弁における遮断ポジションおよび連通ポジションの維持を可能にしてなる請求項1または請求項2に記載の切換弁構造。
【請求項4】
上記の状態維持手段がスプールを有すると共に、このスプールにおける上記の大径部と上記の小径部との間に画成される容室に上記の外部信号たるパイロット圧を導入させてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の切換弁構造。
【請求項5】
上記のロック弁がポペットあるいはスプールからなりながら進退時に流路を開閉する弁体を有し、この弁体の背面に作用する作用力の切り換えでこの弁体を進退させてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の切換弁構造。
【請求項6】
上記の伸縮体と上記のリザーバタンクとを接続するリリーフ流路を設けると共に、このリリーフ流路中に上記の伸縮体における過大油圧作用を回避するリリーフ弁を設けてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載の切換弁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−159836(P2010−159836A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3070(P2009−3070)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】