説明

切断装置

本発明は、流動しうる流体・固体混合物を、切断フィルタに対して回転可能に配置され、回転軸の軸方向に切断フィルタに密接するように第1の付勢方向に付勢されるブレードロータによって細断する切断装置に関する。本発明によれば、少なくとも第1面と第2面によって区切られる少なくとも1つの自由空間が設けられ、第1面は、軸方向に不動にブレードロータに配置され、第2面は、軸方向に不動に切断フィルタに配置され、第1面と第2面はブレードロータの回転軸の周りに相対回転不可能に配置され、少なくとも1つの自由空間内に少なくとも1つのフリーホイールが配置されて、第1面と第2面に密接するように第2の付勢方向へ軸方向に付勢される。第1面と第2面は、少なくとも部分的に、両面の半径方向の間隔が第2の付勢方向に向かって次第に小さくなり、これによってブレードロータと切断フィルタの第1の付勢方向と逆の方向の相対運動が阻止されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動しうる流体・固体混合物を、切断フィルタに対して回転可能に配置され、回転軸の軸方向に切断フィルタに密接するように第1の付勢方向に付勢されるブレードロータによって細断する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動しうる流体・固体混合物として、例えば、繊維, 織物, 骨, 木片, 髪, 草などの粗い-, 浮遊-, または漂流材料を一緒に運ぶ媒体、流体または懸濁液がある。
【0003】
冒頭に述べた種類の切断装置は、マセレータまたは湿式細断機とも呼ばれ、流動しうる流体・固体混合物を細断し、均質化し、分散させるために用いられる。この切断装置は、例えば下水処理場で固体の割合が高いスラッジを流動化するため用いられる。上記切断装置は、さらに、バイオガスプラントで例えば廃水,汚水,塵芥およびミストを細断,混合し、屠殺場や飼料工場で食品芥や家畜死体残芥を細断し、染料工場でラッカー小片やラッカー残滓を細断し、化学工場での洗剤や接着剤の製造で媒体中の固体材料を細断,混合し、魚粉製造で魚や魚芥を細断するのに用いられる。固体材料の限定された細断は、例えばごみ処理工場においても特に重要である。
【0004】
切断フィルタ(篩)として、例えば好ましくは鋼製の穴あき板や篩板が用いられる。ブレードロータは、ブレードロータが回転する際に切断フィルタとの間で固体材料を細断するように、軸方向に切断フィルタに向けて密接させられる。そのため、ブレードロータは、切断フィルタを軸方向に押圧する。
【0005】
特許文献 DE 29910596 U1 は、切断要素つまりブレードロータを透過格子つまり切断フィルタに向けて付勢する付勢装置を開示し、この付勢装置は、ピストンとして形成された押圧部材を備え、この押圧部材の圧力室が適切な圧力媒体によって加圧できて、切断要素が透過格子を押圧する力がピストン力に相当する。特許文献 DE 202005010617 U1 は、ブレードロータが、軸方向力発生部材によって動作位置に固定される付勢装置を開示する。さらに、この付勢装置は、ブレードロータを駆動する回転軸が、駆動モータを受け入れるピストン内に密閉され、このピストンは、ブレードロータを切断フィルタに向けて付勢する圧力媒体を供給するシリンダを備えている。特許文献 DE 202006014804 U1 は、細断装置のブレードロータのための付勢装置を開示し、この付勢装置は、ブレードロータが、共回りする付勢部材に止め具で固定され、付勢部材が、軸方向に制御されて調整できるようになっている。穴あき板またはフィルタ板に対する付勢部材の軸方向位置は、適切な手段によって制御できる。駆動軸は、下部のクランプナットによって付勢部材に連結され、このようにして、穴あき板またはフィルタ板に対するブレードロータの基本位置が、調整できるようになっている。この実施形態は、付勢部材の軸方向位置の制御とブレードロータの基本位置の確定を可能にする。しかし、この実施形態は、更に簡素化し,改善することができ、付勢力の制御および穴あき板またはフィルタ板からのブレードロータの浮き上がり防止手段を簡素化し,改善することができる。
【0006】
特許文献 DE 20217550 U1 は、軸方向力を発生させる部材の自己阻止作用によって動作位置に固定され、この動作位置では、ばねが一方向にしか働かず,逆方向には上記軸方向力を発生させる部材の自己阻止作用によってばねが撓まないブレードロータを開示する。軸方向力を発生させる部材は、特許文献 DE 20217550 U1 では、自己阻止作用をもつ螺旋くさびまたは偏心板として具現されている。これによって、ばねだけで付勢されるブレードロータが、切断フィルタから浮き上がり、撓むばねによって正確な細断ができず、切断フィルタに固体材料が集まることを防ぐようにしている。しかし、この方法は、構造の観点、特に付勢力の調整と保持および切断フィルタからのブレードロータの浮き上がり防備の点で、更に簡素化し,改善する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、上記欠点の1つまたは幾つかを低減し、或いは無くすことである。さらに、本発明の課題は、上記改善の必要性の少なくとも一部をカバーすることである。さらにまた、本発明の課題は、従来技術の上記欠点に対する代替の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、少なくとも第1面と第2面で区切られる少なくとも1つの自由空間を特徴とする冒頭で述べた切断装置であって、
上記第1面は、軸方向に不動にブレードロータに配置され、
上記第2面は、軸方向に不動に切断フィルタに配置され、
上記第1面と第2面は、上記ブレードロータの回転軸の周りに相対回転不可能に配置され、
上記少なくとも1つの自由空間内に、上記第1面および第2面に密接するように第2の付勢方向に向けて軸方向に付勢される少なくとも1つのフリーホイールを配置し、
上記第1面と第2面は、少なくとも部分的に、半径方向の相互間隔が上記第2の付勢方向に向かって次第に小さくなり、
これによって、ブレードロータと切断フィルタの第1の付勢方向とは逆の軸方向の相対運動が阻止されるようになっている切断装置によって解決される。
【0009】
上記ブレードロータは、少なくとも1つ,好ましくは2つ以上のブレードを備え、このブレードは、切断フィルタを押圧するようにこの切断フィルタに接触する。ブレードは、切断装置の耐用年数に亘って摩耗するから、切断フィルタに対するブレードロータの付勢力によって、ブレードは切断フィルタに向かって追従する。付勢力が弱すぎると、逆に例えば固体材料の増加または特定種類の固体材料によって、切断フィルタからブレードロータが浮き上がって、切断フィルタに最早接触しないようになる。斯かる場合、信頼できる細断が不可能になり、固体材料が切断フィルタ上に堆積する。
【0010】
そこで、本発明の切断装置は、ブレードロータを切断フィルタに対して第1の付勢方向に付勢する機構の他に、第2の付勢方向に付勢する第2の付勢機構を備える。この第2の付勢機構は、少なくとも1つ,場合によっては2つ以上の自由空間を有し、この自由空間内にフリーホイールを配置している。以下の実施形態では、1つまたは2以上の自由空間に夫々1つまたは2つ以上のフリーホイールが類似して当てはまる。
【0011】
自由空間は、例えばブレードロータに形成されたブレードロータの軸方向に不動に連結する第1面によって区画される。一方、自由空間は、切断フィルタの軸方向に不動に連結する第2面によって区画され、例えば切断フィルタが、ハウジングと中空軸を介して駆動軸に連結され、上記第2面が、この駆動軸に形成されている。第1面と第2面は、ブレードロータの回転軸の周りに相対回転しないように設けられている。
【0012】
フリーホイールは、ブレードロータの回転軸の方向に延びる第2の付勢方向に向けて、自由空間の第1面と第2面を押圧するように付勢される。その際、付勢力は、第1面とフリーホイールおよび第2面とフリーホイールの間にクランプ作用が生じて、第1面上,第2面上の一方または両方でのフリーホイールの滑りが阻止されるように選ばれるのが好ましい。
【0013】
ブレードロータの回転軸の半径方向への第1面と第2面の間隔は、第2の付勢方向に沿って減少する。フリーホイールは、第1面と第2面の半径方向の間隔がフリーホイールの直径に対応する自由空間内の箇所で第1面と第2面に接触する。第1面と第2面の半径方向の間隔がフリーホイールの直径よりも小さい自由空間内の箇所に、フリーホイールが位置することは不可能である。これによって、第1面と第2面の相対運動 − 従ってブレードロータと切断フィルタの相対運動 − は、自由空間内のフリーホイールがある箇所での第1面と第2面の半径方向の間隔が小さくなること阻止するものとなる。このようにして、ブレードロータを切断フィルタから浮き上がらせる第1面と第2面の軸方向の相対運動,つまり第1付勢方向と逆方向への第1面と第2面の相対運動が阻止されるように効率的な自己阻止作用を奏することができる。
【0014】
しかし、フリーホイールの在る箇所で第1面と第2面の半径方向の間隔が大きくなるような第1.第2面の相対運動は、可能である。これは、ブレードロータが切断フィルタ上で切断フィルタに向かうような相対運動,つまり第1の付勢方向へ向かう相対運動が可能であることを意味する。これは、ブレードが摩耗した際,ブレードロータを切断フィルタに追従させるために、特に必要である。
【0015】
本発明の切断装置は、ブレードロータを切断フィルタに向けて付勢する手段の他、自己阻止装置として作用する更なる付勢装置を有し、この付勢装置は、構造的に簡単に実現でき、同時に切断フィルタからのブレードロータの浮き上がりを防止できるという利点がある。本発明の切断装置は、切断フィルタからのブレードロータの浮き上がりを防止できる代替解決手段であって、従来技術で述べた解決手段よりも簡素化され,効率的で,信頼性が高い。
【0016】
本発明は、第1面がブレードロータのホルダ部に形成され、ブレードロータが回転不可能に,好ましくはフィットキーによって駆動軸に連結され、駆動軸が、ブレードロータを回転駆動するように更に構成することができる。本発明は、第2面を駆動軸に形成するように更に構成することができる。
【0017】
ブレードロータは、駆動軸に回転不可能に連結されるのが好ましく、駆動軸は、ブレードロータをその回転軸の周りに回転させる役割を果たす。本発明によるブレードホルダと駆動軸の連結は、ブレードホルダが、ブレードロータのホルダ部を介して好ましくはフィットキーによって回転不可能に駆動軸に連結される。ブレードロータのホルダ部は、例えば中空シリンダの形をとることができる。
【0018】
軸方向に不動にブレードロータに形成される第1面は、更なる好ましい構成によれば、ブレードロータのホルダ部に形成される。第1面は、好ましくは中空シリンダの内面に形成することができる。更に、第2面を駆動軸に形成することが好ましい。この場合、第2面が形成される駆動軸は、ブレードロータが回転不可能に連結される駆動軸と同一であることが特に好ましい。
【0019】
以上の更なる構成によって、本発明による特に効率的な切断装置の構造が有利に生じる。
【0020】
本発明は、第1面を円錐状内面または円錐状内面の一部とし、第2面をシリンダの外面またはシリンダの外面の一部とするように形成することができる。
【0021】
第1面を円錐状内面とし、第2面をシリンダの外面とするように形成することは、自由空間を環状に形成する場合に特に有利である。第1面を円錐状内面の一部とし、第2面をシリンダの外面の一部とするように形成することは、自由空間を一部環状に形成する場合に特に有利である。これらの構成は、第1面をブレードロータのホルダ部に形成し、第2面を駆動軸に形成する場合に、上記更なる構成の組み合わせにおいて特に有利である。
【0022】
これらの更なる構成において、自由空間は、例えばブレードロータの最も好ましくは中空シリンダとして形成されるホルダ部内面の環状の凹部で形成され、第1面として好ましくは半径方向内側に向かう円錐面を呈する。この更なる構成は、大抵少なくとも一部円筒状の駆動軸の外面を、更に有利に第2面として用いる。これによって、第1付勢方向と逆方向のブレードロータと切断フィルタの相対運動を確実に阻止できる簡素で効率的な構造が提供される。
【0023】
この更なる構成は、駆動軸の強度が凹部によって減じないという他の利点がある。さらに、この更なる構成の組み立て,整備,修理を特に効率的に行うことができる。
【0024】
本発明は、第2付勢方向を第1付勢方向にすることができる。
【0025】
この更なる構成は、自由空間内のフリーホイールを、ブレードロータが切断フィルタを付勢する方向と同じ方向に確実に付勢する。この更なる構成は、第1面を円錐面としてブレードロータのホルダ部に形成し、第2面を駆動軸のシリンダの外面として形成するという既述の構成との関係で特に好ましい。この更なる構成も、その組み立て,整備,修理において傑出している。
【0026】
本発明は、代替的に第2付勢方向を第1付勢方向と逆に更に構成することができる。
【0027】
この更なる構成は、上述の好ましい更なる構成が運動学的に反転して選ばれた場合に、特に好ましい。これは、例えば第1面をブレードロータのホルダ部の中空シリンダ内面とし、第2面を駆動軸の凹部の円錐状内面または駆動軸(例えば駆動軸に固定されたスリーブ)として形成した場合である。
【0028】
この代替的構成も、簡素で効率的な構造であるうえ、ブレードロータと切断フィルタの第1付勢方向と逆方向への相対運動を確実に阻止する。
【0029】
上記2つの代替的実施形態の相違は、第2の代替的実施形態のフリーホイールの付勢方向が、運動学的反転により、第1付勢方向と逆 − つまり第1の代替実施形態の第2付勢方向と逆 − になっていることである。これに対応して、第2の代替的実施形態の第1面と第2面は、第1の代替的実施形態の第1面と第2面とは逆方向に収斂する。
【0030】
次に述べる好ましい更なる構成は、今まで述べてきた総ての更なる構成、特に第1と第2の代替的実施形態と組み合わせることができる。
【0031】
本発明は、自由空間を環状凹部として形成することができる。
【0032】
自由空間を回転対称な環状に形成することは、好ましくは第1面や第2面が形成される切断装置の構成要素が、大抵少なくとも部分的に回転対称に形成されるので、有利である。本発明による回転対称な環状凹部は、少なくとも第1面と第2面で区切られた任意の断面形状をもつことができる。環状凹部は、ブレードロータのホルダ部に在る駆動軸と特に同軸に形成することができる。特に第1面と第2面の一方または双方がブレードロータに、例えば、好ましくは中空シリンダとして形成されるブレードロータのホルダ部と駆動軸に形成される場合は、自由空間を環状凹部として形成することが、製造技術上有利である。
【0033】
本発明は、フリーホイールを球として形成するように更に構成できる。
【0034】
本発明によれば、フリーホイールは、自由空間に適合する例えば卵形,円錐形,レンズ形など種々の形状にすることができる。フリーホイールは、更に例えば円形,楕円形,レンズ形などの断面を有するリングまたは部分リングとして形成することができる。さらに、フリーホイールは、例えば円筒として形成することができる。しかし、フリーホイールを球として形成することが特に好ましい。球状のフリーホイールは、製造が簡単なうえ精度が高いという利点を有する。球状のフリーホイールは、組み立ての際に自由空間内にフリーホイールを任意の方向に方向付けることができる、つまり、自由空間内にフリーホイールを特定方向に方向付ける必要がないという更なる利点を有する。
【0035】
本発明は、圧縮ばねによってフリーホイールを第1面と第2面の間で付勢するように更に構成することができる。
【0036】
圧縮ばねは、第1端をフリーホイールに、第2端を自由空間の一端に夫々連結することができる。本発明によるこの更なる構成は、フリーホイールを簡単,安価かつ確実に付勢することができる。
【0037】
本発明は、ブレードロータを本質的に一定で,好ましくは調整可能な付勢力で付勢して切断フィルタに密接させるように更に構成することができる。
【0038】
ブレードロータと切断フィルタの間に例えば引張ばねによって付勢力を生じさせる場合、ブレードの摩耗でばねの伸びが減少し、その結果付勢力が減少する。付勢力の減少は、切断装置の機能低下をもたらしうる。そこで、本発明の更なる構成は、ブレードロータが切断フィルタを押圧する付勢力が、切断装置の耐用寿命に亘って,つまり特にブレードロータのブレードが摩耗した場合でも本質的に一定であるようにしている。
【0039】
更に、付勢力が調整可能,つまり可変であることが有利である。これは、切断装置が、種々の固体割合の流体・固体混合物や種々の種類の流体・固体混合物を細断するなど種々の用途に用いられる場合、特に有利である。流体・固体混合物の種類に応じて特定の付勢力が必要で、この付勢力は、本発明によれば好都合に対応して調整でき、調整後は本質的に一定を維持する。
【0040】
本発明は、切断フィルタに対するブレードロータの付勢力が、1つまたは2以上の引張ばねによって作られ、引張ばねのばね力は、調整可能なことが好ましい。
【0041】
ブレードロータと切断フィルタ間の付勢力を1つまたは2以上の引張ばねで作ることは、簡単,安価かつ確実な構造である。この場合、ばね力は調整可能または可変であることが好ましく、これは、引張ばねの少なくとも固定点の少なくとも1つを移動させることによって実現できる。
【0042】
駆動の際、差し込み伝動装置と中空軸の使用が可能であり、この中空軸は、ブレードロータの切断フィルタに対する付勢に必要な付勢力を、ねじ軸を介して外側に配置したばねからブレードロータへ伝えて調整する。ばねの代わりに、油圧シリンダを用いることもできる。
【0043】
本発明は、ブレードロータの摩耗寸法に対して引張ばねの長さが長くなるように更に構成することができる。
【0044】
ブレードの摩耗は、引張ばねのばね行程の長さに影響しうる。本発明によるブレードに生じうる摩耗が、引張ばねの長さに比して非常に小さい場合、ブレードの摩耗は、付勢力に非本質的にしか影響せず、付勢力は極僅かしか変化しない。従って、構造的に特に簡単な構成でもって、ブレードが摩耗する場合でもブレードロータの切断フィルタに対する付勢に必要な付勢力を本質的に一定に確実に維持することができる。
【0045】
本発明は、引張ばねの第1端をブレードロータに、第2端を駆動軸に夫々連結するように更に構成できる。
【0046】
この更なる構成は、切断フィルタが駆動軸に軸方向に不動に連結されている場合に特に有利であり、ブレードロータと駆動軸が1つまたは2つ以上の引張ばねによって連結されていると、ブレードロータを切断フィルタに対して簡単に付勢することができる。この場合、引張ばねの第1端は、ブレードロータのホルダ部に連結されているのが好ましい。
【0047】
本発明は、少なくとも1つの自由空間と場合によっては切断フィルタに対するブレードロータの付勢のための1つまたは2つ以上の引張ばねを中空軸の中空空間に配置するように更に構成することができる。
【0048】
流動しうる流体・固体混合物の細断は、高い汚染度をもたらす。本発明による自由空間は、その中に配置されて付勢されるフライホイールが、汚染や残滓によってその機能に悪影響を与えられる可能性がある。しかし、本発明の中空軸の中空空間内の自由空間の配置は、自由空間の汚染をより簡単で構造的に有利な具合に防止する。その際、中空軸の中空空間は、細断されるべき流体・固体混合物に対して密閉されているのが好ましい。さらに、切断フィルタに対してブレードロータを付勢する1つまたは2つ以上の引張ばね −切断フィルタに対してブレードロータを付勢する既述の1つまたは2つ以上の引張ばねと同じであるのが好ましい − を中空軸の中空空間内に配置する。なぜなら、これらの引張ばねも、汚染や残滓によってその機能の少なくとも一部を失う可能性があるからである。
【0049】
さらに、駆動軸は、中空空間内に回転可能に配置されるのが好ましい。こうして、少なくとも1つの自由空間と、切断フィルタに対してブレードロータを付勢すべく上記自由空間に都合良く配置した1つまたは2つ以上の引張ばねとを備えた本発明の構成は、構造的出費を極僅か或いは全く必要としない
【0050】
本発明は、フリーホイールを第1面と第2面に密接させる付勢力が解放できるように更に構成することができる。これは、例えばブレードロータのブレードを交換する際などブレードロータを切断フィルタから取り外す場合、特に好ましい。
【0051】
本発明は、更に次のように構成することができる。即ち、本発明の細断装置は、
−フィットキーによって駆動軸に回転不可能に連結されたブレードロータのホルダ部であって、上記駆動軸は、切断フィルタに軸方向に不動に固定された中空軸内に、回転可能かつ軸方向に不動に収容され、上記ブレードロータを回転駆動するように形成されているホルダ部と、
−上記ブレードロータのホルダ部に駆動軸と同心に環状凹部として形成された自由空間であって、第1面が円錐状内面として上記ブレードロータのホルダ部に形成され、第2面が、上記駆動軸の外面として形成された自由空間とを備え、
−上記第1面と第2面の半径方向の間隔は、上記切断フィルタに向かう方向に拡大し、
−少なくとも1つのフライホイールが、少なくとも1つの圧縮ばねによって付勢され、
−上記ブレードロータは、1つまたは2つ以上の引張ばねによって上記切断フィルタを押圧するように付勢され、
−上記自由空間と引張ばねと上記駆動軸の少なくとも一部とが上記中空軸の中空空間内に配置され、
−上記引張ばねは、上記ブレードロータの摩耗寸法に比較して大きい長さを有する。
【0052】
好都合にも特に好ましい上記本発明の特徴と組み合わせられ,特に効率的な構造で際立った上記更なる構成は、一方で − ブレードの摩耗が増加しても − 切断フィルタに対するブレードロータの本質的に一定の付勢力を保証し、他方で切断フィルタからのブレードロータの浮き上がりを同様に確実に阻止する。同時に、本発明による上記更なる構成は、例えば自由空間および引張ばねが、中空軸内に配置されているから汚染が防止されるので、簡単に作ることができ、長い耐用年数をもたらす。
【0053】
本発明による切断装置の更なる有利な変形実施形態は、上述の更なる構成の特徴の組み合わせの結果として生じる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照して次に例示的に説明される。即ち、
【図1】図1は、本発明による切断装置の断面図である。
【図2】図2は、図1中の部分Iの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明による切断フィルタの断面を示す。切断フィルタに対するブレードロータの付勢および切断フィルタからのブレードロータの浮き上がりを阻止する付勢方向は、図2に拡大して詳しく示される。
【0056】
流動しうる流体・固体混合物は、入口開口531を経て切断装置1に入り、細断された後に流路800を貫流し、出口開口522から切断装置1を出る。
【0057】
切断装置1は、ブレードロータ100を備え、ブレードロータ100は、ホルダ部110,ブレードホルダ12および複数のブレードを有し、図1では、そのうちの2つのブレード121,122を示している。
【0058】
ブレード121,122は、切断フィルタ200に密接する。切断フィルタ200は、細断された流体・固体混合物が通り抜ける多くの開口210をもつ。
【0059】
ブレードロータ100は、ホルダ部110を介し、フィットキー130によって駆動軸300に回転不可能に連結される。駆動軸300は、モータ700によって駆動される。
【0060】
駆動軸300は、中空軸510内に回転可能に収容される。中空軸510は、ハウジング500に不動に連結される。ハウジング500は、連結フランジ521をもつハウジング壁520と出口開口522を有する。切断フィルタ200は、連結フランジ521を介してハウジング500に不動に連結されている。さらに、ハウジング部分530は、連結フランジ531を経て連結フランジ521に不動に連結される。
【0061】
中空軸510は、流体・固体混合物の流路800から軸シールリング541,542によって密封された中空空間511を有する。
【0062】
中空軸510とハウジング500と切断フィルタ200は、互いに不動に連結される。駆動軸300は、軸方向に不動に中空空間510に連結され、従ってハウジング500を介して軸方向に不動に切断フィルタ200に連結される。
【0063】
ブレードロータ100は、複数の引張ばねによって切断フィルタ200に向けて付勢され、図1,2では、そのうちの2つの引張ばね601,602のみを示している。引張ばね601,602は、その第1端611,612が、ブレードロータ100のホルダ部110の端部111に固定され、その第2端621,622が、駆動軸の引張ばねホルダ631,632に固定されている。引張ばね601,602は、その第1端611と第2端612の間の長さが、ブレードロータ100のブレード121,122の生じうる摩耗寸法に比較して大きい。こうして、ブレード121,122の摩耗が進んでも、切断フィルタに対するブレードロータの付勢力が、本質的に一定になるようにしている。
【0064】
ブレードロータ100のホルダ部110は、円錐状凹部400として形成された自由空間を有する。自由空間400は、ホルダ部110に形成された第1面410と、駆動軸300に形成された第2面420をもつ。第1面410は、円錐内面として形成され、第2面420は、円筒状の駆動軸の外面として形成される。凹部400は、切断フィルタ200に向かって拡大している。自由空間400内には、球430として形成された多くのフリーホイールが配置され、図1,2では、そのうちの2つのフリーホイール431,432が示されている。
【0065】
フリーホイール431,432は、圧縮ばね441,442によって第2付勢方向450に向けて第1面410と第2面420に密接するように付勢される。第1付勢方向630および第2付勢方向450と逆方向、つまり切断フィルタ200から離れる方向へのブレードロータ100の運動は、第1面410および第2面420に密接するようなフリーホイール431,432の付勢力によって不可能になっている。切断フィルタ200の方向へのブレードロータ100の追従、つまり第1付勢方向630および第2付勢方向450への運動は、第1面410および第2面420に対して密接するようなフリーホイール431,432の付勢力によって阻止されない。
【0066】
フリーホイール431,432と圧縮ばね441,442をもつ自由空間400、引張ばねホルダ631,632をもつ引張ばね601,602、ブレードロータ100のホルダ部110の一部、および駆動軸300の一部は、中空軸510の中空空間511内に配置され、従って軸シールリング541,542によって流体・固体混合物の流路800から密封されている。このようにして、切断フィルタ200に向けてブレードロータ100を付勢するための(ホルダ部110の端部111と引張ばねホルダ631,632に固定された引張ばね601,602によって実現される)付勢機構のみならず、ブレードロータ100が切断フィルタ200から第1付勢方向630と逆方向に浮き上がるのを阻止するための(自由空間の第1面と第2面に対して密接するようなフリーホイール431,432の付勢によって実現される)第2の付勢機構も、汚染から防護された空間内に配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動しうる流体・固体混合物を、切断フィルタ(200)に対して回転可能に配置され、回転軸(140)の軸方向に切断フィルタに密接するように第1の付勢方向(630)に付勢されるブレードロータ(100)によって細断する切断装置(1)において、
少なくとも1つの第1面と少なくとも1つの第2面によって区切られる自由空間(400)を備え、
−上記第1面(410)は、軸方向に不動にブレードロータに配置され、
−上記第2面(420)は、軸方向に不動に切断フィルタに配置され、
−上記第1面と第2面は、上記ブレードロータの回転軸の周りに相対回転不可能に配置され、
−上記少なくとも1つの自由空間内に、上記第1面および第2面に密接するように第2の付勢方向に向けて軸方向に付勢される少なくとも1つのフリーホイール(431,432)を配置し、
−上記第1面と第2面は、少なくとも部分的に、半径方向の相互間隔が上記第2の付勢方向(450)に向かって次第に小さくなり、
−これによって、ブレードロータと切断フィルタの上記第1の付勢方向とは逆の軸方向の相対運動が阻止されるようになっている切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切断装置(1)において、上記第1面(410)は、ブレードロータ(100)の
ホルダ部(110)に形成され、このホルダ部は、ブレードロータを回転不可能に,好ましくはフィットキー(130)によって駆動軸(300)に連結し、この駆動軸は、ブレードロータを回転駆動するように形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切断装置(1)において、上記第2面(420)は、駆動軸(300)に形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記第1面は、円錐状内面または円錐状内面の一部として形成され、上記第2面(420)は、シリンダの外面またはシリンダの外面の一部として形成されることを特徴とする切断装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記第2の付勢方向(450)は、上記第1の付勢方向(630)と同じであることを特徴とする切断装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記第2の付勢方向(450)は、上記第1の付勢方向(630)と逆であることを特徴とする切断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記自由空間(400)は、環状の凹部として形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記フリーホイール(431,432)は、球として形成されていることを特徴とする切断装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記フリーホイール(431,432)は、上記第1面(410)と第2面(420)の間に縮装された圧縮ばね(441,442)によって付勢されることを特徴とする切断装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記ブレードロータ(100)は、好ましくは調整可能で本質的に一定の付勢力で切断フィルタ(200)に密接するように切断フィルタ(200)を付勢することを特徴とする切断装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、切断フィルタ(200)に対するブレードロータ(100)の付勢は、1つまたは2つ以上の引張ばね(601,602)によって生じ、好ましくは付勢力が調整可能であることを特徴とする切断装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記引張ばね(601,602)は、ブレードロータ(100)の摩耗寸法に比較して大きい長さを有することを特徴とする切断装置。
【請求項13】
請求項3,11,12のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記引張ばね(601,602)は、第1端をブレードロータ(100)に、第2端を駆動軸(300)に夫々連結していることを特徴とする切断装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1つに記載の切断装置(1)において、上記少なくとも1つの自由空間(400)および場合によっては1つまたは2つ以上の引張ばね(601602)は、ブレードロータ(100)を切断フィルタに向けて付勢するため、中空軸(510)の中空空間(511)内に配置されていることを特徴とする切断装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1つに記載の切断装置において、
a 上記ブレードロータ(100)のホルダ部(110)は、フィットキー(130)によって駆動軸(300)に回転不可能に連結され、この駆動軸は、ブレードロータを回転駆動すべく、切断フィルタ(200)を軸方向に不動に連結した定置の中空軸(510)内に回転可能かつ軸方向に移動不可能に収容されるように形成され、
b 上記自由空間(400)は、ブレードロータのホルダ部に駆動軸と同心の凹部として形成され、上記第1面(410)がブレードロータのホルダ部に円錐状内面として、上記第2面(420)が駆動軸の外面として夫々形成され、
c 第1面と第2面の半径方向の間隔は、切断フィルタに向かう方向に拡大し、
d 少なくとも1つのフリーホイール(431,432)が、少なくとも1つの圧縮ばね(441,442)によって付勢され、
e 上記ブレードロータは、1つまたは2つ以上の引張ばね(601,602)によって切断ブレードを付勢し、
f 上記自由空間と引張ばねと駆動軸の少なくとも一部は、中空軸の上記中空空間内に配置され、
g 上記引張ばねは、ブレードロータの摩耗寸法に比較して大きい長さを有する
ことを特徴とする切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−521285(P2012−521285A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501287(P2012−501287)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053800
【国際公開番号】WO2010/108932
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230484)フーゴ・フォーゲルザング・マシネンバウ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】HUGO VOGELSANG MASCHINENBAU GMBH
【Fターム(参考)】