説明

切粉圧縮機

【課題】 切粉集積用ホッパーと、ホッパー内に蓄積された切粉を搬送するスクリューと、搬送先の切粉を圧縮しブロック成形する圧縮室を有する切粉圧縮機において、切粉状態に関わらず確実に切粉をスクリューまで搬送できる切粉圧縮機を提供する。
【解決手段】 ホッパーとスクリューとの間に裁断及び引き込み機能を有するクラッシャを設けて切粉の搬送性向上を図るとともに、クラッシャを駆動するモータ電流の変化特性に基づいてモータを制御し、切粉の過剰噛み込みを防止する切粉圧縮機の機器構成と制御システムを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の切削加工時等に発生する切粉を圧縮しブロック状に成形することで廃材処理運搬時の体積減少、及び金属屑再利用としての商品価値を向上させる切粉圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の切粉圧縮機は、切粉集積用ホッパーと、ホッパー内に蓄積された切粉を搬送するスクリューと、搬送先の切粉を圧縮しブロック成形する圧縮室を有した機構が一般的である。
なお、前記搬送スクリューは、切粉を圧縮室まで効率よく搬送するのが目的であるが、切粉が巻きついて塊状となった場合はスクリューによる搬送が困難になる。
【0003】
この課題を解決するために、例えば塊状になった切粉を押し込み部材により強制的に搬送スクリューに押し込む機構を有する特開2000−117584がある。
また、搬送方向に沿ってスクリューの螺旋ピッチを変えることで、ホッパー内の切粉を略均等に沈下させ、塊状になるのを抑制した特開2002−283175もある。
しかしながら、上記手段をとっても塊状態となった切粉についてはスクリューでの搬送が困難になる場合が多い。
【特許文献1】特開2000−117584号公報
【特許文献2】特開2002−283175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホッパー内の切粉集積が塊状態であっても確実に切粉をスクリューに送り込み、圧縮室まで切粉の搬送を可能にする切粉圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決手段として切粉が塊状になった場合、スクリューで搬送しにくい点に着目し、ホッパーとスクリューとの間に裁断及び引き込み機能を有するクラッシャを設けることで、塊状の切粉を搬送し易い形態にすることを狙いとする。
【0006】
クラッシャが、ホッパー内の切粉集積を裁断し、または引き込むことにより効果的に切粉を細分化してスクリューに送り出す働きを具現化するために、本発明では、クラッシャを駆動するモータ電流の変化特性に基づいてモータを制御し、切粉の過剰噛み込みに対する有効な防止策を切粉圧縮機の機器構成と制御システムで実現した。
【発明の効果】
【0007】
ホッパー内の切粉集積を効率よく細分化するクラッシャを、ホッパーとスクリューの間に設置することで、切粉を確実にスクリューへ搬送することが可能となった。
これによって、ホッパー内の切粉集積を攪拌したり押し込んだりする人手によるこれまでの作業を不要にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施態様を図面に基づき説明する。
図1、図2は切粉圧縮機の側面図と断面図である。この切粉圧縮機は、ホッパー1と、ホッパー1下部に設置し、内部にクラッシャ3とスクリュー4を有するケーシング2と、それらを駆動するモータ5と、切粉を圧縮しブロック成形する圧縮室6と、圧縮をおこなう油圧シリンダ7と、切粉ブロック8を排出するシャッター9と、シャッター9の開閉をおこなう油圧シリンダ10と、モータ5と油圧シリンダ7及び10の作動を連動制御する制御装置11を備える。
【0009】
クラッシャ3の機能は、ホッパー1内の切粉集積12を裁断し、またはその一部を引き込むことにより切粉を細分化し、効率よく切粉を螺旋刃状のスクリュー4に送り出すことである(図3)。
クラッシャ3の構造を図4に示すが、複数のカッター3aを交互に組み合わせた2本の切刃軸3bを平行に配置したもので、カッター相互の隙間3cは切粉の裁断が無理なくできるように切粉の厚みにほぼ等しく設定している(図6)。
また、消耗部位であるカッター3aには市販品の切削チップを装着できるチップ取り付け部3dを設け、コスト削減を図っている(図7)が、特に切刃構造は特定せず、例えば図8に示すように、一体構造の切刃3eとしてもよいし、更に切刃軸3bそのものが一体でも機能的には問題はない。
【0010】
クラッシャ3及びスクリュー4は、1体のケーシング2に収納され、1基のモータ5により駆動される。すなわち、モータ5の回転がチェーン13によってスクリュー軸に伝えられ、スクリュー4を回転させる。次に、スクリュー軸に勘合されたギヤ14がクラッシャ3の片側軸のギヤと噛み合い、ギヤユニット15を介してクラッシャ3の他軸にも回転が伝わる。
また、ギヤユニット15の代わりに単一ギヤを用い、ギヤ14に噛み合う切刃軸3bのみを連動させ、引き込まれる切粉によって、もう一方の切刃軸3bを回転させる仕組みとしてもよい。切粉の裁断効率や引き込み効果の面からは、2本の切刃軸3bには適度の回転差をつけることが望ましいが、切粉の性状によっては単一ギヤの構成が適合する場合もある。
上記のいずれの場合においても、一対の切刃軸3bの回転方向は、対向側に相反回転することになる。
このようにケーシング2内にクラッシャ3及びスクリュー4を収納し、かつギヤユニット15または単一ギヤによりクラッシャ3を従動させることで、駆動モータを1基にし装置のコンパクト化を図っている。
【0011】
スクリュー4で搬送された切粉は圧縮室6に滞積し、一定量になるとモータ5が停止するとともに油圧シリンダ7が作動し、パンチ16と受圧板を兼ねたシャッター9の間で切粉ブロック8が成形される。
続いて、切粉ブロック8をシャッター9からシュート17を経由してケース18に収納するには、油圧シリンダ10と7を連動させてシャッター9の開閉とパンチ16の昇降を行う必要がある。
駆動モータ5及び油圧シリンダ7と10の作動の切り替えは、後述する制御装置11が担っている。
また、切粉には切削油やクーラント等の液剤が付着しており、環境保全の面から液剤を回収することが好ましいため、シャッター9の下部にある受皿19に分離回収し、配管20を通して液剤ケース21に取り出す構造となっている。
【0012】
次に、切粉をホッパー1に投入した後、切粉ブロック8を排出するまでの制御信号の流れを説明する(図9)。
先ず、モータ5の電流値をコンパレータにより制御信号に変換し、制御装置11に取り込む。
制御装置11は、クラッシャ3に切粉が過剰噛み込みする際の許容負荷電流値を上限として正転、反転を切り替え、モータ5の過負荷を防止するとともに、一定時間反転することで一旦切粉を戻し、過剰噛み込みを解消した後、正転に戻すことでスクリュー4への切粉の安定的な送り込みを図っている。
また、制御装置11は、正転時の電流値が適性範囲内にある時間を積算し、所定の積算値に到達するまでモータ5の切り替え制御を繰り返す。
積算値が所定の値に到達すると、モータ5を停止し油圧シリンダ7を作動させて、切粉の圧縮を開始する。切粉の圧縮過程では、パンチ16の位置を感知センサー列22よりモニターし、切粉の圧縮量を算出する。
圧縮量が所定の量に満たない場合は、制御装置11はモータ5へ信号を戻し、所定の圧縮量を超えるまで、切粉の搬送と圧縮を繰り返すことで切粉ブロック8の定量化を図る。
切粉ブロック8が定量化された後、制御装置11は油圧シリンダ10と7を連動させて、シャッター9を開くとともにパンチ16を下降させ、切粉ブロック8を排出する。
その後、感知センサー列22及び油圧シリンダ10の位置からパンチ16の上昇とシャッター9の閉鎖を確認し、モータ5に制御信号を戻す。
切粉のクラッシャ3への最初の噛み込みから切粉ブロック8の排出を経て、再度モータ5を作動するまでを1回の切粉ブロック成形サイクルとすることで、本発明に係わる切粉圧縮機の連動制御システムを確立した。
【0013】
以上の機器構成及び連動制御システムによって、切粉を効果的に細分化し、スクリュー4への搬送性を向上させた切粉圧縮機を提供することができ、ホッパー1内の切粉集積12を攪拌したり押し込んだりする人手による非生産的作業を不要にした。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】切粉圧縮機の側面図である。
【図2】切粉圧縮機の断面図である。
【図3】切粉圧縮機の正面図である。
【図4】クラッシャの上面図である。
【図5】クラッシャの一部である切刃軸の図である。
【図6】クラッシャの機能部位である裁断隙間の図である。
【図7】クラッシャの構成部品であるカッターの図である。
【図8】クラッシャの構成部品であるカッターの一例図である。
【図9】切粉圧縮機の制御システム線図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ホッパー
2 ケーシング
3 クラッシャ
3a カッター
3b 切削軸
3c 裁断隙間
3d チップ取り付け部
3e 一体構造の切刃
4 スクリュー
5 モータ
6 圧縮室
7 圧縮油圧シリンダ
8 切粉ブロック
9 排出シャッター
10 シャッター開閉油圧シリンダ
11 制御装置
12 切粉集積
13 チェーン
14 ギヤ
15 ギヤユニット
16 パンチ
17 シュート
18 ケース
19 受皿
20 配管
21 液剤ケース
22 感知センサ列













【特許請求の範囲】
【請求項1】
切粉集積用ホッパーと、切粉を搬送するスクリューと、切粉を圧縮しブロック成形する圧縮室を備える切粉圧縮機において、ホッパー内の切粉集積を裁断し、または引き込むことにより、切粉を細分化して確実にスクリューへ送り込む機能を有するクラッシャをスクリュー上部に配置するとともに、モータ電流値によりクラッシャ、スクリュー、及びプレスの作動を制御し、モータ過負荷時にモータを逆転させてクラッシャへの切粉の過剰噛み込みを防ぐことを特徴とした切粉圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−289462(P2006−289462A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115603(P2005−115603)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(593146017)光精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】