説明

刈取り用アタッチメント

【課題】 この発明は油圧ショベルの作業用アームの先端に取り付けられて、さとうきび等を刈り取る刈取りアタッチメントに関する。
【解決手段】左右一対の爪部を有する一対のグラップルフォークを対向させて開閉し被刈取り物を把持しうるグラップル本体と、前記一方のグラップルフォークに形成された左右一対の爪部の間に設けられた刈取りカッタ装置とからなり、該刈取りカッタ装置のブレードが、前記一方のグラップルフォークの外面側で前記左右一対の爪部先端部の間に突出してなることを特徴とする.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧ショベルの作業用アームの先端に取り付けられて、さとうきび等を刈り取る刈取りアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
さとうきびを刈り取る刈取機として、従来、特許第2975356号の農耕用トラクタを利用したさとうきび刈取機では、農耕用トラクタの車体フレームの前部左右両側面にディバイダアタッチメントを取付け、農耕用トラクタの三点リンクにベースカッタアタッチメントを取り付けている。
上記ディバイダアタッチメントは、ディバイダと、当該ディバイダの後方中央に位置していて前転する押し倒しローラとを有し、当該ディバイダを昇降自在に平行リンク支持体に支持させ、昇降シリンダによってこれらを昇降させるようにしている。
また、ベースカッタアタッチメントは、左右一対のベースカッタと当該ベースカッタ後方に位置していて前転する引出しローラとを有し、当該引出しローラを昇降シリンダによって昇降可能にベースカッタフレームに取付けている。
そして、前記ベースカッタアタッチメントのフレームに油圧ポンプを設け、当該油圧ポンプを自在継ぎ手を介して農耕用トラクタのPTO軸(動力取出し軸)によって駆動するようにし、ディバイダ、押し倒しローラ、ベースカッタ、引出しローラをそれぞれ単独の油圧モータで駆動し、これらの油圧モータ及び上記両昇降シリンダを上記油圧ポンプによって駆動する構成となっている。
そして、前方に押し倒しローラを設けてさとうきびを前方に押し倒し、トラクタの腹の下に押し倒されたさとうきびをベースカッタにより根切りし、根元を引出しローラで押さえながら後方に引込むことができる。
しかし、上記構成では、押し倒しローラでさとうきびを押さえつけ、後方の離間位置にあるベースカッタで根元を切断するので、把持から根切りまでに時間がかかり、更に、切断後の根元も引出しローラで押さえ付けるので、さとうきびを傷める虞れがあり、収穫回数が減少して効率的ではない。
また、台風などで任意の方向に倒れてしまっているさとうきびを収穫することは困難であった。
一方、把持機能を有するアタッチメントとして、例えば、実開平4−134561号に例示するように、一対のグラップルフォークを開閉できるようにしたグラップルも知られているが、刈取りはできなかった。
【特許文献1】特許第2975356号公報
【特許文献2】実開平4−134561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、さとうきび等の被刈取り物が、自立していても横向きに倒れていても、一対のグラップルフォークで掴んで刈取り姿勢にして、刈取りカッタで刈り取ることができる刈取り用アタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
作業機の作業アームに取り付けられる刈取り用アタッチメントであって、
左右一対の爪部を有する一対のグラップルフォークを対向させて開閉し被刈取り物を把持しうるグラップル本体と、
前記一方のグラップルフォークに形成された左右一対の爪部の間に設けられた刈取りカッタ装置とからなり、
該刈取りカッタ装置のブレードが、前記一方のグラップルフォークの外面側で前記左右一対の爪部先端部の間に突出してなることを特徴とする刈取り用アタッチメント。
また、請求項2の発明では、
前記刈取りカッタ装置が、ハウジングの一方の壁面に作動可能にブレードを設けた刈取りカッタと、該刈取りカッタを回転または往復動させる作動装置とをハウジング内に内蔵しており、
前記一方の壁面に対向するハウジングの他方の壁面がグラップルフォークの爪部間で先端部を除く部分を塞ぐ底壁面となっていることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
刈取りカッタのブレードが、該ブレードを装着した爪部先端部の外面に対して先端に向かって漸次離間する方向に傾斜して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は、被刈取り物が横に倒れていても、一対のグラップルフォークで掴んで起こして刈取り姿勢に支えることができ、その姿勢で、グラップルフォークの外面側に設けた刈取りカッタで刈り取ることができる。
従って、被刈取り物がどのような姿勢であっても、確実に刈り取り作業を行うことができる。
また、刈り取りに際して、被刈取り物を無理に押さえ付けることがなく、被刈取り物を傷つけることもないので、収穫回数を増やすことができる。
更に、グラップル本体に、刈取りカッタと作動装置を取り付けるだけの簡単な構成であり、装置を大型化する必要が無く、またグラップル本体による被刈取り物の収集や積み込み作業も行うことができるので、多用途のアタッチメントとして機能し、経済性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明は、一方のグラップルフォークの左右一対の爪部の間に刈取りカッタ装置を設けて、被刈取り物を一対のグラップルフォークで刈取り姿勢に支え、刈取りカッタ装置のブレードで刈り取ることを実現した。
以下に、この発明の刈取り用アタッチメントの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、刈取り用アタッチメント1を備えた作業機40の一実施例を示す。
作業機40は、下部走行体42上に旋回装置43を介して上部旋回体44を設置し、該上部旋回体44上に運転室45及びパワーユニット46等を搭載すると共に、多関節構造の作業用アーム47を有する油圧ショベル構成からなっている。
【0008】
[刈取り用アタッチメント]
前記作業用アーム47の先端に刈取り用アタッチメント1が取付けられている。
刈取り用アタッチメント1は、前記作業用アーム47の先端に、油圧シリンダ48により回動可能に取り付けられたブラケット2と、該ブラケット2に旋回装置3を介して取り付けられたフレーム4と、該フレーム4に枢着された一対のグラップルフォーク5、6とを有するグラップル本体1Aからなっており、前記一方のグラップルフォーク5の一対の爪部5a、5a’間に刈取りカッタ装置10を備えている。
【0009】
[グラップルフォーク]
一対のグラップルフォーク5と6は、図2および図5に示すように、それぞれフレーム4に枢軸ピンP1、P2を中心に開閉自在に枢着されている。
各グラップルフォーク5と6は、それぞれ複数の離間した爪部5a、5a’と6a、6a’を有している。
【0010】
図示例の各爪部5a、5a’と6a、6a’は先端が曲がった鉤爪形状からなって、一対のグラップルフォーク5と6が閉じた際に先端が交叉するので、双方が重ならないように交互にずれて配置されている。
本実施例では、一方のグラップルフォーク5は左右の両端側に一対の爪部5a、5a’を有しており、その中間には爪部を設けていない。
他方のグラップルフォーク6は、前記爪部5a、5a’のそれぞれ内側にずれるように配置された爪部6a、6a’を有している(図5参照)。
【0011】
前記一対のグラップルフォーク5と6の作動装置として、本実施例では公知の油圧シリンダ7と連動用リンク8とを有している。
即ち、油圧シリンダ7はその一端をフレーム4にピンP3により連結し、他端をピンP4により一方のグラップルフォーク5の作動片5bに連結する。
また、一対のグラップルフォーク5、6に一体に形成された作動片5b、6bは、ピンP5、P6で枢着された連動用リンク8により連結される(図2参照)。
【0012】
これにより、前記シリンダ7を伸縮すると、ピンP4を介して一方のグラップルフォーク5が、枢軸ピンP1を中心に枢動し、該一方のグラップルフォーク5の枢動により前記リンク8を介して他方のグラップルフォーク6も枢軸ピンP2を支点にして枢動し、これにより一対のグラップルフォーク5、6が開閉して開放位置と把持位置とに変位する。
この発明では、上記一対のグラップルフォーク5と6の作動装置は上記構成に限定されず、その他の公知の開閉作動構成に置き換えることができる。
【0013】
[刈取りカッタ装置]
刈取りカッタ装置10は、図3および図4に示すように、略箱型のハウジング11と、該ハウジング11の外側にブレード21を設け機構部をハウジング内に設けた刈取りカッタ20と、同様にハウジング11に内蔵されて前記刈取りカッタ20のブレード21を回転方向または往復方向に動かす作動装置30とからなっている。
【0014】
[ハウジング]
上記ハウジング11は、一方のグラップルフォーク5に形成された左右一対の爪部5a、5a’の間に嵌合しており、その先端が前記爪部5a、5a’の先端部より短く設定されて、該爪部5a、5a’の先端部間に所定の空間が開口して隙間部Sが形成されるようになっている。
【0015】
[刈取りカッタ]
本実施例の刈取りカッタ20は、ブレード21と、ブレード21の回転機構の一例を示す従動側ベルト車26とからなっている。
該従動側ベルト車26はハウジング11内の第1支持片12に軸支されており、その回転軸27が第1支持片12を貫通してハウジング11の外側へ突出しており、該回転軸27によりハウジング11の外側に設けられたブレード21が回転するようになっている。
【0016】
前記回転軸27には作動片23が一体に設けられている。
該作動片23は、中心線から若干ずらして偏心し中央部から半径方向に延びる連結アーム24を90度間隔で4つ突設した形状からなっている(図6参照)。
該連結アーム24には、延出方向に沿って固定用のねじ孔25が等間隔に複数(図示例では3つ)穿設されている
【0017】
[ブレード]
ブレード21は、本実施例の場合、略矩形状からなっており、前記爪部5a、5a’による把持の邪魔にならないように、刃先が前記一対の爪部5a、5a’の先端より短く、且つ前記隙間部Sに突出するように配置されると共に、前記グラップルフォーク5の非把持側となる外面側に配置されている。
【0018】
また、前記ブレード21の刃先は、前記爪部5a、5a’の先端部の略扁平な外面に対して、先端に向かって徐々に離れるように傾斜して配置することが好ましい(図4参照)。
なお、本実施例では、一対の爪部5a、5a’間の間隔が広い一方のグラップルフォーク5側に設けられたが、反対側のグラップルフォーク6に設けてもよい。
【0019】
そして、該ブレード21は、前記連結アーム24のそれぞれに、長さ調整可能に取り付けられる。
即ち、上記ブレード21には、長手方向に沿って長さ調整用のねじ穴22が等間隔に複数(図示例では5つ)穿設されている。
【0020】
そこで、前記連結アーム24のねじ孔25とブレード21のねじ穴22を整合してネジやボルトなどの図示しない固定具により着脱可能に固定するので、整合するねじ穴22位置をずらすことでブレード21を長さ調整しうる。
【0021】
[作動装置]
作動装置30は、油圧モータ31と、該油圧モータ31の出力軸を回転軸32として回転する原動側ベルト車33とからなっている。
そして、該油圧モータ31はハウジング内11の第2支持片13に支持されており、該油圧モータ31の出力軸は前記第2支持片13に軸受けされながら貫通し、回転軸32として原動側ベルト車33が回転駆動するようになっている。
【0022】
ここで、原動側ベルト車33と従動側ベルト車26とは、ハウジング11内で同一面上となうように平行に配置されており、前記原動側ベルト車33と従動側ベルト車26との間には無端ベルト35が掛け渡されて、油圧モータ31の回転力を伝動し、ブレード21の回転力としている。
【0023】
図7に示す刈取りカッタ20のブレード21は、平面視略ソックス状からなっており、刃先21a側が幅広く、基部21b側が幅狭に形成されている。
その他の構成は、前記実施例と同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
また、図8に示す刈取りカッタ20は、中央部分21Aを有し前記連結アーム24に対応して中心線から偏心して半径方向に延びる連結片21Bを90度間隔で4つ形成し、丸鋸刃形状の環状体21Cと一体に連結された1つのブレード21からなっており、前記連結片21Bには連結アーム24のねじ孔25に対応して同じ数のネジ孔22が形成されており、該ネジ孔22を前記連結アーム24のねじ孔25と整合してねじやボルト等の図示しない固定具で固定する構成となっている。
【0025】
上記構成からなっているので、使用に際しては、さとうきび等の被刈取り物が横向きに倒れていても、図9に示すグラップルフォーク5と6での被刈取り物を掴んで刈取り姿勢にする。
そして、図10(a)に示すように、刈取り姿勢で把持されている被刈取り物を、前記刈取りカッタ20のブレード21を回転させて刈り取ることができる。
【0026】
また、立毛状態の被刈取り物は、図10(b)に示すように、グラップルフォーク5と6を開いた状態で、グラップルフォーク5を下にして刈取りカッタ20のブレード21を回転させて刈り取ることができる。
その他、被刈取り物の姿勢の状況に応じて、グラップルフォーク5と6を旋回し、任意の向きで被刈取り物を把持して、同様に刈取りカッタ20のブレード21を回転させて刈り取ることができる。
刈り取り後の被刈取り物は、グラップルフォーク5,6で把持し収集し、作業機40の作業用アーム47を用いて、そのまま搬送車への積み込み作業を行うことができる。
【0027】
本実施例では、ベルト伝動装置を用いて刈取りカッタのブレードを回転させる構成を例示したが、その他の巻掛け伝動装置であってもよいし、巻掛け伝動装置を用いずに、直接に回転モータの出力軸に前記作動片を取付け、該作動片にブレードを取り付ける構成であってもよい。
【0028】
また、ブレードを回転させて被刈取り物を切断する構成を例示したが、ブレードを往復動させて被刈取り物を切断するようにしてもよい。
その場合は、作動装置は回転ではなく往復運動を行う装置を用い、あるいは刈取りカッタ側の伝動装置として回転力を往復運動に変換する伝動装置を用いればよい。
【0029】
また、作動装置の動力は、作業機の油圧系統と接続して油圧駆動することが好ましいが、電動モータを用いてもよい。
被刈取り物としてさとうきびを例示したが、その他の植物であってもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】刈取り用アタッチメントを備えた作業機の実施例を示す側面図である。
【図2】図1の刈取り用アタッチメントの側面図である。
【図3】刈取りカッタ装置を備えた一方のグラップルフォークの平面図である。
【図4】同側断面図である。
【図5】一対のグラップルフォークを他方のグラップルフォークの底面から見た図である。
【図6】図1のブレードを示す平面図である。
【図7】異なる形状のブレードを示す平面図である。
【図8】更に別の形状のブレードを示す平面図である。
【図9】横倒した被刈取り物を把持しようとする状態を説明する側面図である。
【図10】(a)は横倒状態の被刈取り物の刈り取りを説明する側面図、(b)は、立毛状態の被刈取り物の刈り取りを説明する側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 刈取り用アタッチメント
1A グラップル本体
2 ブラケット
3 旋回装置
4 フレーム
5、6 グラップルフォーク
5a、5a’爪部
6a、6a’爪部
7 油圧シリンダ
8 連動用リンク
10 刈取りカッタ装置
11 ハウジング
12 第1支持片
13 第2支持片
20 刈取りカッタ
21 ブレード
22 ねじ穴
27 回転軸
23 作動片
24 連結アーム
25 ねじ孔
26 従動側ベルト車
27 回転軸
30 作動装置
31 油圧モータ
32 回転軸
33 原動側ベルト車
13 第2支持片
35 無端ベルト
40 作業機
42 上部走行体
43 旋回装置
44 上部旋回体
45 運転室
46 パワーユニット
47 作業用アーム
48 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の作業アームに取り付けられる刈取り用アタッチメントであって、
左右一対の爪部を有する一対のグラップルフォークを対向させて開閉し被刈取り物を把持しうるグラップル本体と、
前記一方のグラップルフォークに形成された左右一対の爪部の間に設けられた刈取りカッタ装置とからなり、
該刈取りカッタ装置のブレードが、前記一方のグラップルフォークの外面側で前記左右一対の爪部先端部の間に突出してなることを特徴とする刈取り用アタッチメント。
【請求項2】
刈取りカッタ装置が、ハウジングの一方の壁面に作動可能にブレードを設けた刈取りカッタと、該刈取りカッタを回転または往復動させる作動装置とをハウジング内に内蔵しており、
前記一方の壁面に対向するハウジングの他方の壁面がグラップルフォークの爪部間で先端部を除く部分を塞ぐ底壁面となっていることを特徴とする請求項1に記載の刈取り用アタッチメント。
【請求項3】
刈取りカッタ装置のブレードが、該ブレードを装着した爪部先端部の外面に対して先端に向かって漸次離間する方向に傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の刈取り用アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−142236(P2009−142236A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325305(P2007−325305)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】