説明

列車制御地上装置および列車制御システム

【課題】同じ軌道回路を走行する列車が複数種類存在し、かつそれらの信号方式が異なる場合において、地上装置は複数の信号を混信させることなく送信し、また車上装置が信号を極力とぎれることなく受信し続ける様にする。
【解決手段】軌道回路2Tに列車30aが進入した時、列車検知装置1a内の軌道リレー2a,3aにより列車の在線および列車の種類を検出する。その情報を、軌道回路3Tに設置されている地上側ATC装置5bに送信する。その情報により、列車30aのATC信号11bのみを予め送信する。これにより、列車30aは軌道回路3T進入時にATC信号11bをすぐに受信を開始することができる。また地上側ATC装置5bは他の信号方式の列車に使用するATC信号12bは送信せず、列車30aに必要なATC信号11bのみを選択して送信するので混信の影響を考慮する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上から車上に所定の信号を送信して速度制御などの列車制御を行うATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)又はATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)などの列車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、列車の高速運転及び高密度運転に伴い、デジタル伝送方式の列車制御装置が採用されることが多くなっている。
【0003】
このデジタル電文方式の列車制御を採用した列車制御装置の地上側においては、所定の周波数からなる搬送波を所定の列車制御情報で変調処理して車上に送信するための所定のデジタル信号を生成し、この生成されたデジタル信号を伝送器を介して軌道回路を生成するレールの始端側に送信するように構成されている。このレール上を走行する列車の車上装置においては、レールに送信されている列車制御情報を受電器を介して受信し、その受信した信号を復調処理して、その列車制御用情報に基づいて所定の列車制御を行うように構成されている。車上装置は地上側からの信号を常に受信することを基本としており、この信号を一定時間受信できなかった場合や意味を持った情報として受け取れなかった場合(後者はデジタル方式による場合を指す。)、危険と判断して列車を非常停止させる。
【0004】
ところで、前記のデジタル伝送方式の列車制御装置において、前記デジタル信号はある程度の長さ(bit数)の信号を受けて初めて意味を持つものであり、車上装置が正しい信号として受信するためには、ある程度の時間を要することになる。
【0005】
従来技術では、前記デジタル信号を列車の在線,非在線に関わらず、常に地上装置が前記デジタル信号を生成、送信しておき、当該軌道回路に列車が進入した時点で車上装置が前記デジタル信号を受信できる様にしていた。
【0006】
ところが、前記の方法において、当該軌道回路に信号方式の異なる複数種類の列車が通過する場合は、同じレール上に複数種類の信号を常に送信することになる。同一線区の複数の軌道回路に分割された軌道回路において、前記列車制御装置の他に、列車検知装置,踏み切り制御などが各軌道に設けてあり、それらの装置の制御周波数帯域は互いに異なり、制御に影響がないように周波数を割り当てている。このことにより、この列車制御装置が使用できる周波数帯が限られるため、複数の異なる信号方式の各信号に割り当てる周波数は、どうしても近い周波数となり、複数の列車制御信号は、互いに影響を与えやすくなってしまう。この場合、信号同士の混信による影響を考慮せねばならず、システムの信頼性が低下する問題があった。
【0007】
また、特許文献1には、デジタル電文に次軌道のデジタルATC信号の情報を付加することにより信号を区別する方法が示されているが、適用する区間の信号方式の中に複雑な情報を付加することができないアナログ方式のものがあれば、この特許文献1の方法は適用できない。また、既に何らかの信号方式の列車が走行している区間(軌道回路)に新たに別の信号方式の列車を走行させる場合で、特許文献1の方法行う場合、既設の信号方式は特許文献1の方式に合わせるため車上装置の変更が必要となる可能性がある。
【0008】
その他の従来技術として、デジタル信号を送信する当該軌道回路へ列車が進入したことを検知した後、デジタル電文を生成して当該軌道回路に送信する方式がある。しかしながら、この場合地上装置は、デジタル信号を送信する当該軌道回路へ列車が進入したことを検知して、デジタル信号を生成して当該軌道回路に送信するまでに、ある程度の時間を要することになり、車上装置はデジタル信号を受信する時間が遅くなる。当該軌道回路を列車が高速で通過する場合や、当該軌道回路の長さが短い場合は、地上装置が送信したデジタル信号を車上装置が受信し終えるまでに、列車が当該軌道回路を通過してしまう可能性があり、車上装置は信号を意味をもった情報として受け取れず、車上装置がデジタル信号一定時間内に受け取れず列車を非常停止させてしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−37155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
軌道回路に列車制御の信号方式の異なる複数種類の列車が通過する場合に、同じレール上で異なる信号同士が混信することを防止し、列車制御システムの信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、前記レールを前記列車制御信号の信号方式の異なる複数の列車が通行する場合に、軌道回路での列車の在線および前記列車の種類を判定する列車検知装置と、軌道回路に列車制御信号を送信する送信器と、を備え、前記送信器は、前記列車検知装置から軌道回路での列車の在線および前記列車の種類の情報を受信し、前記列車の種類に応じた信号方式の列車制御信号を軌道回路に送信する構成とすることにより、同じレール上に複数種類の信号を送信する必要が無くなる。
【0012】
さらには、地上装置は当該軌道回路の在線(進入)情報ではなく、列車進入側の他の軌道回路で検出した列車の在線および種類の情報を当該軌道回路へ送信することにより、当該軌道回路に列車が進入する前に予め信号を送信しておくことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軌道回路に信号方式の異なる複数種類の列車が通過する場合に、同じレール上で異なる信号同士が混信することがなく、列車制御システムの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1において列車30aが走行するときのATC地上装置の動作を示す図である。
【図2】本発明の実施例1において列車30bが走行するときのATC地上装置の動作を示す図である。
【図3】本発明の実施例2において列車30cが走行するときのATC地上装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、2つの実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
同じ軌道回路に信号方式の異なる種類の列車が通過する例として、三線軌にATCを適用した場合を実施例1として示す。
【0017】
図1および図2に、本発明の実施例1における構成を示す。21,22,23はレールを表しており、3本のレールを軌道回路1T,2T,3T,4Tで分割して構成している(この分割構成は図外においても続く。)。この軌道回路上において、21および23のレール上を走行する列車30aと、21および22のレール上を走行する列車30bが存在する。列車30aが走行する場合を図1で、列車30bが走行する場合を図2を用いて説明している。以下の説明において、各列車は軌道回路を1T,2T,3T,4Tの順で走行するものとする。
【0018】
列車30a(図1参照)は各軌道回路2T,3Tを走行する場合において各軌道回路内を流れるATC信号11a,11bを車上の受信アンテナ32aで受信し、その情報に基づいて車上装置33aが列車30aの走行などを制御する。車上装置33aはATC信号11a,11bを一定時間受信できなかった場合や意味を持った情報としてうけとれなかった場合(後者はデジタル方式による場合。)、危険と判断して列車30aを停止させる(なお、説明を省略したが軌道回路1Tおよび4Tにおいても同様のことが言える。)。
【0019】
列車30b(図2参照)が各軌道回路2T,3Tを走行する場合も、軌道回路内を流れるATC信号により車上装置が列車を制御するが、列車30aとは信号方式が異なるため、列車30bは11a,11bとは異なるATC信号12a,12bの信号を受信アンテナ32bで受信して、車上装置33bが列車30bの走行などを制御する。車上装置33bは同様にATC信号12a,12bを一定時間受信できない場合や意味をもった情報として受け取れなかった場合(デジタル方式の場合)、列車30bを停止させる(軌道回路1Tおよび4T走行時も同様。)。
【0020】
図1において、軌道回路2Tに列車30aが進入すると、車軸31aによりレール21,23が電気的に短絡されて、列車検知装置1aの内部にある軌道リレー2a(レール21,23上の列車検知用)が落下する。このとき、軌道リレー3a(レール21,22上の列車検知用)はレール23に接続されていないため落下しない。列車在線列車種別判定部4aは軌道リレー2aおよび3aの状態を常に監視しており、軌道リレー2aが動作(落下)した場合に、列車が進入したこと及び列車の種別が列車30aであることを判定し、軌道リレー3aが動作(落下)した場合に、列車が進入したこと及び列車の種別が列車30bであることを判定する。軌道リレー2aが動作した時、列車在線種別判定部4aは、判定した列車在線列車種別情報13を、進出側(列車の進行方向)に隣接している軌道回路3Tに設置されている地上側ATC装置5bに送信する。その列車在線列車種別情報13に基づき、ATC信号生成装置8bは列車30aの信号方式の制御信号を生成して、ATC信号送信器6b(レール21,23へ送信用)からATC信号11b(列車30a用)を軌道回路3Tに、列車30aが進入する前に予め送信しておく。これにより、列車30aが軌道回路2Tを通過して3Tに進入したとき、車上アンテナ32aはATC信号11bをすぐに受信することができる。
【0021】
その後、列車30aが軌道回路3Tを進出して軌道回路4Tへ進入した場合には、軌道リレー2b(レール21,23上の列車検知用)が扛上し、列車在線列車種別判定部4bから地上側ATC装置5bへ列車在線情報15が送信される。このように在線から非在線へ変化する列車在線の情報を受けると、地上側ATC装置5bは軌道回路3TへのATC信号11b(列車30a用)の送信を停止する。このような構成とすることで、列車が前の軌道回路および当該軌道回路のどちらにも在線しない場合は、ATC信号を軌道回路へ送信しない構成とすることができ、常に信号を送信する構成と比較するとエネルギーの節約となる。
【0022】
ここで、本実施例においては、列車の進出側に隣接する軌道回路へ列車種別に応じたデジタル信号を送信する構成としたが、列車の進出側の軌道回路であれば、隣接しない軌道回路であってもよい。
【0023】
軌道回路へ列車が進入したことを検知して、デジタル信号を生成して当該軌道回路にこのデジタル信号を送信するまでには、ある程度の時間を要する。そのため、従来技術においては、車上装置がデジタル信号を受信するまでに時間がかかり、当該軌道回路を列車が高速で通過する場合や、当該軌道回路の長さが短い場合は、地上装置が送信したデジタル信号を車上装置が受信し終えるまでに、列車が当該軌道回路を通過してしまう可能性があり、車上装置は信号を意味をもった情報として受け取れず、列車を非常停止しなければならないという問題があった。
【0024】
これに対し、本実施例によれば、列車の在線検知を行う軌道回路よりも進出側の他の軌道回路に、在線を検知した列車種別に応じたデジタル信号を送信することにより、デジタル信号を車上装置が受信し終えるまでの時間を従来よりも短縮することができ、列車を非常停止しなければならないという問題を解消できる。
【0025】
なお、仮に軌道回路3TにATC信号11bおよび12bを常に送信した場合は、レール21上で11bと12bが混信することになるため、互いに影響をおよぼさない周波数を選定し、かつ車上アンテナ32aまたは車上装置33aで11bだけを選別するなどの対応が必要となる。そのため、車上装置を高性能の装置とする必要があり、コスト高となり、また、信号同士の混信による影響があり、システムの信頼性が低下する問題があった。
【0026】
本実施例においては、列車30a用のATC信号11bまたは列車30b用のATC信号12bのうち必要なものだけ選択して送信するため、車上装置を必要以上に高性能化する必要がなく、またシステムの信頼性も向上させることができる。
【0027】
なお、図1上では混信の状態をわかりやすくするために、12bが送信されているように見えるが、本実施例においては図1の状態で12bは送信しない。
【0028】
次に図2において、軌道回路2Tに列車30bが進入すると、車軸31bによりレール21,22が電気的に短絡されて、列車検知装置1aの内部にある軌道リレー3aが落下する。このとき、軌道リレー2aはレール22に接続されていないため落下しない。列車在線列車種別判定部4aは、軌道リレー3aの動作(落下)により列車が進入したこと及び列車の種別が列車30bであることを判定して、列車在線列車種別情報13を、軌道回路3Tに設置されている地上側ATC装置5bに送信する。この列車在線列車種別情報13により、ATC信号生成装置8bは列車30b用の制御信号を生成して、ATC信号送信器7b(レール21,22へ送信用)からATC信号12b(列車30b用)を軌道回路3Tに予め送信しておく。
【0029】
これにより、列車30bが軌道回路2Tを通過して軌道回路3Tに進入したとき、車上受信アンテナ32bはATC信号12bをすぐに受信することができる。
【0030】
その後、列車30bが軌道回路3Tを進出して軌道回路4Tへ進入した場合には、軌道リレー3b(レール21,22上の列車検知用)が扛上し、列車在線列車種別判定部4bから地上側ATC装置5bへ列車在線情報15が送信される。この列車在線情報15を受けると、地上側ATC装置5bは軌道回路3TへのATC信号12b(列車30b用)の送信を停止する。このような構成とすることで、列車が前の軌道回路および当該軌道回路のどちらにも在線しない場合は、ATC信号を軌道回路へ送信しない構成とすることができ、常に信号を送信する構成と比較するとエネルギーの節約となる。
【0031】
図1の説明で述べた本実施例の効果と同様に、列車30bが進入する図2の場合においても、列車の在線検知を行う軌道回路よりも進出側の他の軌道回路に、在線を検知した列車種別に応じたデジタル信号を送信することにより、デジタル信号を車上装置が受信し終えるまでの時間を従来よりも短縮することができ、列車を非常停止しなければならないという問題を解消でき、また、列車種別に応じたATC信号を選択して送信するため、車上装置を必要以上に高性能化する必要がなく、システムの信頼性も向上させることができる。
【0032】
つまり、当該軌道回路に信号方式の異なる複数の種類の列車が通過する場合で、在線する列車を判定して、前記列車に対応した信号のみを選択して送信することにより、レール上を流れる列車制御の信号は1種類のみとなり、複数信号の混信を考慮する必要がなくなる。
【0033】
さらに、本実施例のシステムにおいては、様々な種類の信号方式の列車が当該軌道回路を通過する場合においても対応が可能である。例えば、送信する複数の信号が、同一周波数帯を用いており、デジタルとアナログのみの違いであった場合においても、このシステムにおいては実現が可能である。また、既に何らかの信号方式の列車が走行している区間に、新たに別の信号方式の列車を走行させる場合においても地上装置側で選択して信号を送信するので、既設車上装置側の変更は不要となる。
【0034】
さらに、当該軌道回路を列車が高速で通過する場合や、当該軌道回路が短い場合においても、進出側の軌道回路に予め信号を送信しておくことにより、当該軌道回路に列車が進入した時点で車上装置が信号を受信することができる。また、列車が前の軌道回路および当該軌道回路のどちらにも在線しない場合(列車の在線情報を前の軌道回路に設置された列車在線列車種別判定部から受信しない場合)は、信号を送信しない構成とすることができ、常に信号を送信する構成と比較するとエネルギーの節約となる。
【実施例2】
【0035】
実施例1では三線軌において本発明を適用した場合を例に挙げたが、実施例2では2本のレールで構成される一般的な軌道回路で本発明を適用する場合を例に挙げる。
【0036】
図3に、本発明の実施例2における構成を示す。実施例1と主に異なる点は、軌道回路を構成するレールが21と23の2本であること、列車の種別を判定する手段が違うこと、などである。
【0037】
この軌道回路上を走行する列車として30c,30dが存在し、その信号方式は異なるものとする。図3は列車30cが走行する場合を表している。実施例1では列車によって通るレールの違いを検出して列車の種別を判断していたが、本実施例においては軌道回路を構成するレールは2本であり、列車30c,30dはともに同じレール21,23上を通るため、列車の通るレールによっては列車の種別を判断できない。
【0038】
そこで、列車種別を判断する一例として、地上側に地上側トランスポンダ9a,9bを、車上側には車上側トランスポンダ34cを設置する方法を図3に示している。以下に詳細な手法について説明する。
【0039】
軌道回路2Tに列車30cが進入した場合、車軸31cによりレール21,23が電気的に短絡されて、列車検知装置1aの内部にある軌道リレー2aが落下する。列車在線列車種別判定部4aは軌道リレー2aの動作(落下)により列車の進入(在線)を検知する。一方、車上側トランスポンダ34cは、軌道回路2Tに設置されている地上側トランスポンダ9aの上を通過する際に、自車の列車種別(30cであること)を表す情報を地上側トランスポンダ9aに送信する。地上側トランスポンダ9aは受信した情報を列車在線列車種別判定部4aに送信する。列車在線列車種別判定部4aは地上側トランスポンダ9aからの情報をもとに列車種別を判断する。列車在線列車種別判定部4aは、列車在線検知および列車種別を判定した後、判断した列車在線列車種別情報13を、進出側に隣接している軌道回路3Tに設置されている地上側ATC装置5bに送信する。その列車在線列車種別情報13により、ATC信号生成装置8bは列車30c用の制御信号を生成して、ATC信号送信器6bから列車30c用のATC信号14b(列車30c用)を軌道回路3Tに予め送信しておく。これにより、列車30cが軌道回路2Tを通過して3Tに進入したとき、車上アンテナ32cはATC信号14bをすぐに受信することができる。
【0040】
その後、列車30cが軌道回路3Tを進出して軌道回路4Tへ進入した場合には、軌道リレー2b(レール21,23上の列車検知用)が扛上し、列車在線列車種別判定部4bから地上側ATC装置5bへ列車在線情報15が送信される。この列車在線情報15を受けると、地上側ATC装置5bは軌道回路3TへのATC信号14b(列車30b用)の送信を停止する。このような構成とすることで、列車が前の軌道回路および当該軌道回路のどちらにも在線しない場合は、ATC信号を軌道回路へ送信しない構成とすることができ、常に信号を送信する構成と比較するとエネルギーの節約となる。
【0041】
ここで、本実施例においては、列車の進出側に隣接する軌道回路へ列車種別に応じたデジタル信号を送信する構成としたが、列車の進出側の軌道回路であれば、隣接しない軌道回路であってもよい。
【0042】
また、図3では列車の在線と列車の種別を判定する列車在線列車種別判定部4aを備える構成としたが、列車の在線を行って列車在線情報を進出側に設置されている地上側ATC装置に送信する列車在線判定部と、列車の種別を判定して列車種別情報を進出側に設置されている地上側ATC装置に送信する列車種別判定部と、を別々に備えても良い。
【0043】
本実施例は、実施例1と同様に、列車の在線検知を行う軌道回路よりも進出側の他の軌道回路に、在線を検知した列車種別に応じたデジタル信号を送信することにより、デジタル信号を車上装置が受信し終えるまでの時間を従来よりも短縮することができ、列車を非常停止しなければならないという問題を解消できる。また、列車種別に応じたATC信号を選択して送信するため、車上装置を必要以上に高性能化する必要がなく、システムの信頼性も向上させることができる。
【0044】
つまり、当該軌道回路に信号方式の異なる複数の種類の列車が通過する場合で、在線する列車を判定して、前記列車に対応した信号のみを選択して送信することにより、レール上を流れる列車制御の信号は1種類のみとなり、複数信号の混信を考慮する必要がなくなる。
【0045】
さらに、本実施例のシステムにおいては、様々な種類の信号方式の列車が当該軌道回路を通過する場合においても対応が可能である。例えば、送信する複数の信号が、同一周波数帯を用いており、デジタルとアナログのみの違いであった場合においても、このシステムにおいては実現が可能である。また、既に何らかの信号方式の列車が走行している区間に、新たに別の信号方式の列車を走行させる場合においても地上装置側で選択して信号を送信するので、既設車上装置側の変更は不要となる。
【0046】
さらに、当該軌道回路を列車が高速で通過する場合や、当該軌道回路が短い場合においても、進出側の軌道回路に予め信号を送信しておくことにより、当該軌道回路に列車が進入した時点で車上装置が信号を受信することができる。また、列車が前の軌道回路および当該軌道回路のどちらにも在線しない場合は信号を送信しない構成とできるため、常に信号を送信する構成と比較するとエネルギーの節約となる。
【0047】
列車30dが走行する場合については図示しないが、列車30dが地上側トランスポンダ9a上を通過する場合においては、列車30cとは異なる列車30dの列車種別(列車30dであること)を表す情報を地上側トランスポンダ9aに送信する。
【0048】
後は列車30cの進行時と同様に、列車在線列車種別判定部4aが列車30dの在線と列車種別を判断し、列車在線列車種別情報13をATC信号生成装置8bに送信する。その列車在線列車種別情報13をもってATC信号生成装置8bが列車30d用のATC信号15bを軌道回路3Tに予め送信することにより、列車30dが軌道回路2Tを通過して3Tに進入したとき、列車30dはATC信号15bをすぐに受信することができる。
【0049】
尚、列車の種別を判断する手段として、本実施例ではトランスポンダを例に挙げたが、その他の手段として、車軸検知器を使用して列車によって異なる車軸間の距離を測定して列車の種別を判断する方法や、カメラを使用して車体の形状や列車番号表示を読み取り列車の種別を判断する方法を用いて構成することもできる。
【0050】
本実施例によると、2線軌上を列車制御信号方式が異なる複数の列車が走行する場合にも、本発明を適用することができ、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0051】
1T,2T,3T,4T 軌道回路
1a,1b 列車検知装置
2a,2b,3a,3b 軌道リレー
4a,4b 列車在線列車種別判定部
5a,5b 地上側ATC装置
6a,6b,7a,7b ATC信号送信器
8a,8b ATC信号生成装置
9a,9b 地上側トランスポンダ
11a,11b,12a,12b,14a,14b ATC信号
13 列車在線列車種別情報
15 列車在線情報
21,22,23 レール
30a,30b,30c 列車
31a,31b,31c 車軸
32a,32b,32c 車上受信アンテナ
33a,33b,33c 車上装置
34c 車上側トランスポンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器が列車の走行するレールを所定の長さに区分して形成された軌道回路へ列車制御信号を送信し、列車の車上装置が前記軌道回路から前記列車制御信号を受信して、前記列車の制御を行う列車制御システムに使用される列車制御地上装置において、
前記レールを前記列車制御信号の信号方式の異なる複数の列車が通行する場合に、
軌道回路での列車の在線および前記列車の種類を判定する列車検知装置と、
軌道回路に列車制御信号を送信する送信器と、を備え、
前記送信器は、前記列車検知装置から軌道回路での列車の在線および前記列車の種類の情報を受信し、前記列車の種類に応じた信号方式の列車制御信号を軌道回路に送信することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御地上装置において、
前記送信器から前記軌道回路に送信される前記列車制御信号は、前記軌道回路に在線した前記列車の種類に応じた信号方式からなることを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の列車制御地上装置において、
前記列車の走行するレールは、第1レール,第2レール,第3レールの3線で構成され、
前記3線のレールを走行する列車は、第1レールと第2レールの上を走行する第1列車と、第1レールと第3レールの上を走行し前記第1列車とは列車制御信号の信号方式の異なる第2列車とからなり、
前記列車検知装置は、第1レールと第2レールとに接続された第1軌道リレーと、第1レールと第3レールとに接続された第2軌道リレーと、を備え、
前記第1軌道リレーと、前記第2軌道リレーの落下状態を監視して列車の在線および列車の種類を判定することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の列車制御地上装置において、
前記列車検知装置は、前記列車に搭載された車上トランスポンダから列車の種類の情報を受信する地上トランスポンダと、前記軌道回路と接続された軌道リレーを備え、
前記地上トランスポンダから情報により列車の種類を判定し、前記軌道リレーからの情報により前記列車の在線を判定することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項5】
送信器が列車の走行するレールを所定の長さに区分して形成された軌道回路へ列車制御信号を送信し、列車の車上装置が前記軌道回路から前記列車制御信号を受信して、前記列車の制御を行う列車制御システムに使用される列車制御地上装置において、
前記レールを前記列車制御信号の信号方式の異なる複数の列車が通行する場合に、
第1軌道回路での列車の在線および前記列車の種類を判定する列車検知装置と、
第1軌道回路よりも前記列車の進出側に設置された第2軌道回路に列車制御信号を送信する送信器と、を備え、
前記送信器は、前記列車検知装置から第1軌道回路での列車の在線および前記列車の種類の情報を受信し、前記列車の種類に応じた信号方式の列車制御信号を第2軌道回路に送信することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項6】
請求項5に記載の列車制御地上装置において、
前記第2軌道回路は、前記第1軌道回路に隣接することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項7】
請求項5に記載の列車制御地上装置において、
前記列車が前記第2軌道回路へ進入する前に、前記送信器は、前記第2軌道回路へ前記列車制御信号を送信することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の列車制御地上装置において、
前記第2軌道回路での列車の在線および前記列車の種類を判定する第2列車検知装置を備え、
前記第2列車検知装置は、「在線」から「非在線」となった場合に、第2軌道回路の列車の在線情報を送信器に送信し、前記送信器は、前記第2列車検知装置からの在線情報を受けて前記第2起動回路への列車制御信号の送信を停止することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の列車制御地上装置において、
前記送信器から前記第2軌道回路に送信される列車制御信号は、前記第1軌道回路に在線した前記列車の種類に応じた信号方式からなることを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項10】
請求項5ないし請求項9のいずれかに記載の列車制御地上装置において、
前記列車の走行するレールは、第1レール,第2レール,第3レールの3線で構成され、
前記3線のレールを走行する列車は、第1レールと第2レールの上を走行する第1列車と、第1レールと第3レールの上を走行し前記第1列車とは列車制御信号の信号方式の異なる第2列車とからなり、
前記列車検知装置は、第1レールと第2レールとに接続された第1軌道リレーと、第1レールと第3レールとに接続された第2軌道リレーと、を備え、
前記第1軌道リレーと、前記第2軌道リレーの落下状態を監視して列車の在線および列車の種類を判定することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項11】
請求項5ないし請求項9のいずれかに記載の列車制御地上装置において、
前記列車検知装置は、前記列車に搭載された車上トランスポンダから列車の種類の情報を受信する地上トランスポンダと、前記第1軌道回路と接続された軌道リレーを備え、
前記地上トランスポンダから情報により列車の種類を判定し、前記軌道リレーの落下状態から前記列車の在線を判定することを特徴とする列車制御地上装置。
【請求項12】
列車の走行するレールを所定の長さに区分して形成された軌道回路へ列車制御信号を送信する送信器と、
前記軌道回路から前記列車制御信号を受信して、前記列車の制御を行う車上装置と、を備えることを特徴とする列車制御システムにおいて、
前記車上装置で処理可能な前記列車制御信号の信号方式の異なる複数の列車が前記レールを通行する場合に、
第1軌道回路での列車の在線および前記列車の車上装置で処理可能な信号方式の種類を判定する列車検知装置と、
第1軌道回路よりも前記列車の進出側に設置された第2軌道回路に列車制御信号を送信する送信器と、を備え、
前記送信器は、前記列車検知装置から第1軌道回路での列車の在線および前記列車の車上装置で処理可能な信号方式の種類の情報を受信し、前記信号方式の種類に応じた列車制御信号を第2軌道回路に送信することを特徴とする列車制御システム。
【請求項13】
請求項12に記載の列車制御システムにおいて、
前記第2軌道回路は、前記第1軌道回路に隣接することを特徴とする列車制御システム。
【請求項14】
請求項12に記載の列車制御システムにおいて、
前記列車が前記第2軌道回路へ進入する前に、前記送信器は、前記第2軌道回路へ前記列車制御信号を送信することを特徴とする列車制御システム。
【請求項15】
請求項12ないし請求項14のいずれかに記載の列車制御システムにおいて、
前記第2軌道回路での列車の在線および前記列車の車上装置で処理可能な信号方式の種類を判定する第2列車検知装置を備え、
前記第2列車検知装置は、列車在線判定が「在線」から「非在線」となった場合に、第2軌道回路の列車の在線情報を送信器に送信し、前記送信器は、前記第2列車検知装置からの在線情報を受けて前記第2起動回路への列車制御信号の送信を停止することを特徴とする列車制御システム。
【請求項16】
請求項12ないし請求項15のいずれかに記載の列車制御システムにおいて、
前記送信器から前記第2軌道回路に送信される列車制御信号は、前記第1軌道回路に在線した前記列車の車上装置で処理可能な信号方式からなることを特徴とする列車制御システム。
【請求項17】
請求項12ないし請求項16のいずれかに記載の列車制御システムにおいて、
前記列車の走行するレールは、第1レール,第2レール,第3レールの3線で構成され、
前記3線のレールを走行する列車は、第1レールと第2レールの上を走行する第1列車と、第1レールと第3レールの上を走行し前記第1列車とは前記車上装置で処理可能な列車制御信号の信号方式が異なる第2列車とからなり、
前記列車検知装置は、第1レールと第2レールとに接続された第1軌道リレーと、第1レールと第3レールとに接続された第2軌道リレーと、を備え、
前記第1軌道リレーと、前記第2軌道リレーの落下状態を監視して列車の在線および列車の種類を判定することを特徴とする列車制御システム。
【請求項18】
請求項12ないし請求項16のいずれかに記載の列車制御システムにおいて、
前記列車検知装置は、前記列車に搭載された車上トランスポンダから前記列車の車上装置で処理可能な列車制御信号の信号方式の情報を受信する地上トランスポンダと、前記第1軌道回路と接続された軌道リレーを備え、
前記地上トランスポンダから情報により列車の車上装置で処理可能な列車制御信号の信号方式を判定し、前記軌道リレーの落下状態から前記列車の在線を判定することを特徴とする列車制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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