説明

列車無線システム

【課題】 1編成の列車に設けられた複数の車上装置のいずれかと地上装置とが無線通信を行う列車無線システムにおいて、地上装置との無線通信に用いる車上装置の切り替えを簡易な構成により実現する。
【解決手段】 操作部21は、人による操作に応じて送信情報を各車上装置20,30に伝送する。現用系の車上装置20は、操作部21から送信情報を受け付けると、制御部22により送受信機23に送信起動をかけ、共用器25、アンテナ26を経由して地上装置10へ無線信号を送信させる。一方、予備系の車上装置30は、操作部21から送信情報を受け付けてから所定の時間が経過するまでに現用系の車上装置20からの無線信号を送受信機33により受信しなかった場合に、制御部32により送受信機33に送信起動をかけ、共用器35、アンテナ36を経由して地上装置10へ無線信号を送信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線回線を使用した通信システムに関し、特に、1編成の列車に設けられた複数の車上装置のいずれかと地上装置とが無線通信を行う列車無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上に設置された地上装置と列車に搭載された車上装置との間で無線により通信を行う列車無線システムは、従来技術では、1編成の列車に設けられた複数の車上装置はそれぞれ独立しており、他の車上装置の使用状況、故障状態などの情報を引き通し線により伝送して、現用、予備の切り替えを行っていた。現用とは、地上装置との無線通信を行うよう設定された車上装置をいい、予備とは、現用の故障時などに現用に代替して動作する(地上装置との無線通信を行う)よう設定された車上装置をいう。
【0003】
図2には、従来の列車無線システムのブロック図を例示してある。
この列車無線システムは、地上装置50及び車上装置60、70を有している。地上装置50は、制御部51による制御の下で動作する送信機52及び受信機53を共用器54を介してアンテナ55に接続した構成となっている。同様に、車上装置60、70は、それぞれ、制御部63、73による制御の下で動作する送信機64、74及び受信機65、75を共用器66、76を介してアンテナ67、77に接続した構成となっている。ここで、受信機53(地上側)及び送信機64、74(車上側)は無線周波数f1に設定され、送信機52(地上側)及び受信機65、75(車上側)は無線周波数f2に設定されている。また、車上装置60、70には、それぞれ、切替部62、72を介して制御部63、73に接続された操作部61、71が設けられている。また、車上装置60の切替部62と車上装置70の切替部72とは引き通し線80により接続されており、車上装置60と車上装置70の間で使用状況等の情報を受け渡すことの他、一方の車上装置が故障等の場合に当該一方の車上装置の操作部からの送信情報を他方の車上装置へ受け渡すことができるようにしてある。
【0004】
この列車無線システムでは、例えば、操作部61は、人(操作者)による操作に応じて送信指示(送信情報)を車上装置60へ伝送する。車上装置60は、操作部61から伝送された送信情報を受け付けると、制御部63により送信機64に送信起動をかけ、高周波信号(無線信号)を共用器66、アンテナ67を経由して地上装置50へ送信させる。
【0005】
図2に例示した従来の列車無線システムにおける、系(現用系及び予備系)の切り替え動作について説明する。
車上装置60が現用系であり、車上装置70が予備系である場合において、車上装置60が故障等で無線通信(例えば通話)に使用できない場合の切り替え動作を説明する。
車上装置60の制御部63は自装置の状態を監視しており、自装置に故障等が発生して無線通信に使用できないことを検知した場合には、制御部63が主導して自装置の切替部62の接続状態を切り替えて、自装置に設けられた操作部61を車上装置70に接続する。また、車上装置70の制御部73においても車上装置60の状態を監視しており、車上装置60に故障等が発生して無線通信に使用できないことを検知した場合には、制御部73が主導して車上装置60の切替部62及び自装置の切替部72の接続状態を切り替えて、車上装置60に設けられた操作部61を車上装置70に接続する。これにより、予備系であった車上装置70が現用系に切り替えられる。
【0006】
次に、車上装置70が現用系であり、車上装置60が予備系である場合において、車上装置70が故障等で無線通信(例えば通話)に使用できない場合の切り替え動作を説明する。
車上装置70の制御部73は自装置の状態を監視しており、自装置に故障等が発生して無線通信に使用できないことを検知した場合には、制御部73が主導して自装置の切替部72の接続状態を切り替えて、自装置に設けられた操作部71を車上装置60に接続する。また、車上装置60の制御部63においても車上装置70の状態を監視しており、車上装置70に故障等が発生して無線通信に使用できないことを検知した場合には、制御部63が主導して車上装置70の切替部72及び自装置の切替部62の接続状態を切り替えて、車上装置70に設けられた操作部71を車上装置60に接続する。これにより、予備系であった車上装置60が現用系に切り替えられる。
【0007】
また、列車無線システムに関する従来技術として、例えば、それぞれが運用チャネルと保守チャネルを持つ2つの無線装置のそれぞれに別装置から電源を供給し、かつ現用/予備の切換は無線装置単位で行い、無線基地局制御部は、キー操作により現用、待機のどちらの無線装置にも選択接続できるようにして、どちらの無線基地局制御部のテストも常に可能とする構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−341547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2を参照して説明した従来技術では、車上装置60、70のそれぞれが自他装置の故障状態の監視結果に基づいて系の切り替え(使用する系の選択)を行っていた。このため、各車上装置60、70に、自装置の故障状態を監視する機能、他装置から引き通し線80を介して得られる情報に基づいて他装置の故障状態を監視する機能、自装置の切替部や他装置の切替部を制御して系を切り替える機能、などを設ける必要があった。また、車上装置60と車上装置70との間で状態通知用の信号や切り替え制御用の信号など多くの信号を受け渡す必要があり、その受け渡しのために多くの引き通し線80を設ける必要があった。また、系の切り替え制御に用いる設定条件が多くなり、制御が複雑になっていた。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、1編成の列車に設けられた複数の車上装置のいずれかと地上装置とが無線通信を行う列車無線システムにおいて、地上装置との無線通信に用いる車上装置の切り替えを簡易な構成により実現することが可能な列車無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では列車無線システムを以下のように構成した。
すなわち、地上装置と車上装置が無線により通信する列車無線システムにおいて、1編成の列車に複数の車上装置が設けられ、前記複数の車上装置の各々は、前記地上装置に対して信号を無線により送信する地上送信手段と、他の車上装置から前記地上装置に対して無線により送信された信号を受信する他車上受信手段と、送信指示を受け付ける送信指示受付手段と、自装置が現用である場合に前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられたことに応じて当該送信指示に応じた信号を前記地上送信手段により無線送信し、自装置が予備用である場合に前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられてから所定の時間が経過するまでに他の車上装置から無線送信された信号が前記他車上受信手段により非受信であった(つまり、受信されなかった)ことに応じて当該送信指示に応じた信号を前記地上送信手段により無線送信する送信制御手段と、を備える。
従って、この列車無線システムによると、例えば、予備用の車上装置が、送信指示から所定の時間が経過するまでに現用(又は、他の予備用)の車上装置による地上装置に対する信号を受信できない場合に、地上装置に対する信号を送信するため、地上装置との無線通信に用いる車上装置の切り替えを簡易な構成により実現することができる。
【0012】
ここで、例えば、車上装置は列車に搭載され、地上装置は地上に設置される。
また、1編成の列車に設けられる複数の車上装置の数としては、種々な数が用いられてもよい。
また、或る車上装置が他の車上装置から地上装置に対して無線により送信された信号を受信する構成に関して、例えば、当該信号に送信元となる車上装置(ここでは、前記他の車上装置)の識別情報或いは当該車上装置が設けられた列車の識別情報を含めるようにして、自装置と同一の列車に設けられた他の車上装置からの信号(のみ)を受信するような構成とすることもできる。
また、送信指示としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、ユーザ(人)による操作部の操作に応じて受け付けられる送信指示や、地上装置から無線により送信される信号による送信指示(送信要求)などを用いることができる。
また、送信指示は、例えば、1編成の列車に設けられた全ての車上装置に共通に入力される。
また、自装置が現用であるか或いは予備用であるかは、例えば、予め或いは運用中に、設定や変更される。また、通常は、1つの車上装置が現用とされ、他の車上装置が予備用とされる。
【0013】
また、他の構成例として、全ての車上装置に、送信指示が受け付けられてから送信を行うまでの所定の時間(送信待機時間)を設定することとして、送信待機時間がゼロ又は予め定められた程度で小さい車上装置を現用とみなし、送信待機時間がそれより大きい車上装置を予備用とみなすようなことも可能である。また、送信待機時間としては、種々な値が設定されてもよく、例えば、車上装置の状況(例えば、正常、軽故障、重故障など)に応じた値が設定されるような構成とすることもできる。
また、各車上装置では、自装置から送信を行う条件が満たされた場合には、通常(正常時)は送信を行うが、例えば、送信を行うことができない程度で故障している場合には送信は行えず、また、例えば、予め設定された条件に基づいて、送信を行うことはできるが所定の故障があるために自ら送信を行うことをしないようにする設定を用いることもできる。
【0014】
列車無線システムの他の構成例を以下に示す。
すなわち、地上装置と車上装置が無線により通信する列車無線システムにおいて、1編成の列車に複数の車上装置が設けられ、前記複数の車上装置の各々は、前記地上装置に対して信号を無線により送信する地上送信手段と、他の車上装置から前記地上装置に対して無線により送信された信号を受信する他車上受信手段と、送信指示を受け付ける送信指示受付手段と、前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられてから送信を行うまでの時間として設定された送信待機時間を記憶する記憶手段と、前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられてから前記記憶手段に記憶された送信待機時間が経過するまでに他の車上装置から無線送信された信号が前記他車上受信手段により非受信であった(つまり、受信されなかった)ことに応じて当該送信指示に応じた信号を前記地上送信手段により無線送信し、当該送信待機時間が経過するまでに他の車上装置から無線送信された信号が前記他車上受信手段により受信された場合には非送信とする(つまり、送信しないようにする)送信制御手段と、を備える。
従って、この列車無線システムによると、或る車上装置が送信指示から送信待機時間が経過するまでに他の車上装置による地上装置に対する信号を受信できない場合に、当該或る車上装置から地上装置に対する信号が送信されるため、地上装置との無線通信に用いる車上装置の切り替えを簡易な構成により実現することができる。
【0015】
ここで、送信待機時間は、例えば、各車上装置毎に異なる値が設定される。また、運用中に、各車上装置の状況などに応じて、各車上装置の送信待機時間が変更されてもよい。また、送信待機時間が小さいほど、送信の優先順位が高いとみなすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る列車無線システムによると、地上装置との無線通信に用いる車上装置の切り替えを簡易な構成により実現することができる。例えば、引き通し線により車上装置間で受け渡す信号から、従来技術で受け渡していた車上装置の使用状態や故障情報などの信号を減らすことができる。また、例えば、従来技術のような切り替え制御が不要となるため、車上装置の二重化(及び更なる多重化)を簡単に実現することができ、引き通し線により3以上の車上装置を接続することで更なる多重化(三重化、四重化など)を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る列車無線システムのブロック図の一例である。
【図2】従来の列車無線システムのブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1には、本例に係る列車無線システムの機能ブロックを例示してある。
本例の列車無線システムは、1編成の列車に複数(本例では2つ)の車上装置20、30が実装(搭載)され、これらの車上装置20、30により地上に設置された地上装置10と無線回線にて通信を行うものである。
【0019】
地上装置10は、制御部11による制御の下で動作する送信機12及び受信機13を共用器14を介してアンテナ15に接続した構成となっている。車上装置20、30は、それぞれ、制御部22、32による制御の下で動作する送受信機23、33及び受信機24、34を共用器25、35を介してアンテナ26、36に接続した構成となっている。
なお、受信機13(地上側)及び送受信機23、33(車上側)は無線周波数f1に設定され、送信機12(地上側)及び受信機24、34(車上側)は無線周波数f2に設定されている。すなわち、本例の列車無線システムでは、図2に示された列車無線システムにおける送信機64、74に代えて送受信機23、33を車上装置20、30に設けており、これにより、一方の車上装置(例えば車上装置20)から地上装置10に対して送信された高周波信号(無線信号)を他方の車上装置(例えば車上装置30)のアンテナにより受信して共用器を経由して送受信機により受信することができる。
また、車上装置20の制御部22と車上装置30の制御部32とは回線(引き通し線)40により接続されており、この引き通し線40には、更に、車上装置20に設けられた操作部21及び車上装置30に設けられた操作部31が接続されている。これにより、操作部21、31からの送信情報を車上装置20、30の両方へ受け渡すことができるようにしてある。
【0020】
図1に例示した列車無線システムの動作について、車上装置20を現用系、車上装置30を予備系と仮定して説明する。
人(操作者)による操作に応じて操作部21(又は操作部31)から伝送された送信指示(送信情報)を各車上装置20、30にて受け付けた場合について説明する。
操作部21(又は操作部31)は、人(操作者)による操作に応じて送信情報を各車上装置20、30の制御部22、32に伝送する。
現用系の車上装置20は、操作部21(又は操作部31)から送信情報を受け付けたことに応じて、制御部22により送受信機23に送信起動をかけ、前記送信情報に応じた無線信号を共用器25、アンテナ26を経由して地上装置10へ送信させる。
一方、予備系の車上装置30は、操作部21(又は操作部31)から送信情報を受け付けた場合、制御部32による送受信機33に対する送信起動をかけずに一旦待機する。そして、他の車上装置(本例では現用系の車上装置20)から地上装置10に対して送信される無線信号を前記送信情報の受け付けから所定の時間(例えば、一定の時間)内にアンテナ36及び共用器35を介して送受信機33により受信(着信)しなかったことに応じて、制御部32により送受信機33に送信起動をかけ、前記送信情報に応じた無線信号を共用器35、アンテナ36を経由して地上装置10へ送信させる。これに対して、予備系の車上装置30では、他の車上装置(本例では、現用系の車上装置20)からの無線信号を前記所定の時間内に受信した場合には、送受信機33に対して送信起動をかけない。
【0021】
次に、地上装置10から無線送信された送信指示(応答要求信号)を各車上装置20、30にて受け付けた場合について説明する。
地上装置10は、制御部11により送信機12に送信起動をかけ、応答要求信号を共用器14、アンテナ15を経由して各車上装置20、30へ送信させる。
現用系の車上装置20は、地上装置10からの応答要求信号をアンテナ26及び共用器25を介して受信機24により受信して制御部22により応答要求信号を検知したことに応じて、制御部22により送受信機23に送信起動をかけ、前記応答要求信号に応答する無線信号を共用器25、アンテナ26を経由して地上装置10へ送信させる。
一方、予備系の車上装置30は、地上装置10からの応答要求信号をアンテナ36及び共用器35を介して受信機34により受信して制御部32により応答要求信号を検知した場合、制御部32による送受信機33に対する送信起動をかけずに(すなわち、地上装置10に対する応答をせずに)一旦待機する。そして、他の車上装置(本例では現用系の車上装置20)から地上装置10に対して送信される無線信号(応答信号)を前記応答要求信号の受け付けから所定の時間(例えば、一定の時間)内にアンテナ36及び共用器35を介して送受信機33により受信(着信)しなかったことに応じて、制御部32により送受信機33に送信起動をかけ、前記応答要求信号に応答する無線信号を共用器35、アンテナ36を経由して地上装置10へ送信させる。これに対して、予備系の車上装置30では、他の車上装置(本例では、現用系の車上装置20)からの無線信号(応答信号)を前期所定の時間内に受信した場合には、送受信機33に対して応答のための送信起動をかけない。
【0022】
このように、本例の各車上装置20、30には、それぞれ、他の車上装置から地上装置10に対して送信される周波数の無線信号を受信できる送受信機23、33を実装してあり、引き通し線40経由で他の車上装置の使用状態等を検知せずに、空中線経由で他の車上装置の使用状態等を検知して、自装置から地上装置10に対して無線信号を送信するか否かを判断しており、これにより、二重系(車上装置20、30)の切り替えを実現している。
【0023】
なお、各車上装置20、30から送信する信号に自装置の識別情報或いは自装置が設けられた列車の識別情報を付加するようにしてもよく、これにより、他の車上装置からの無線信号を受信した車上装置において、無線信号の送信元の車上装置が自装置と同じ列車に搭載されているか或いは他の列車に搭載されているかを判別することができる。
【0024】
ここで、本例では、各車上装置20、30のメモリに、自装置の系の種別(現用系又は予備系)を示す情報を記憶しており、この情報により自装置に設定された系の種別を判断して動作を行うよう構成してあるが、このような系の設定を行わない構成としてもよい。
一例として、各車上装置20、30のメモリにそれぞれ異なる送信待機時間の情報を記憶させておき、各車上装置20、30は、送信指示を受け付けてから各送信待機時間が経過するまで待機し、その間に他の車上装置から地上装置10に対して送信された無線信号を受信しなかった場合に、自装置から地上装置10に対して無線信号を送信する。つまり、各車上装置の送信待機時間は車上装置の優先順位を表しており、送信待機時間の短い方を現用系、送信待機時間の長い方を予備系とみなすことができる。
【0025】
上記のような、各車上装置に送信待機時間を設定する形態は、1編成の列車に3台以上の車上装置を搭載する構成において特に有用であり、簡易な構成で車上装置の多重化を実現することができる。
すなわち、各車上装置に設けられた操作部から伝送される送信指示(送信情報)及び地上装置10から無線送信される送信指示(応答要求信号)を全ての車上装置で受け付けるようにし、各車上装置は、自装置について設定された送信待機時間が経過するまでに他の車上装置から地上装置10に対して送信された無線信号を受信しなかった場合に、自装置から地上装置10に対して無線信号を送信するようにする。
【0026】
ここで、各車上装置の送信待機時間(送信起動をかけるまでの時間)としては、予め設定されたもの(すなわち、各車上装置の優先順位を固定したもの)であってもよく、或いは、自装置の状況(例えば、通常、軽故障、重故障など)を監視する機能を設け、自装置内の状況に応じた時間を設定(変更)するもの(すなわち、各車上装置の優先順位を適宜入れ替えるもの)であってもよい。なお、自装置の状況に応じた時間は種々の方式により算出することも可能であり、例えば、各車上装置に固有に設定された基準の送信待機時間に、車上装置の状況毎に規定された時間を加算して求めることも可能である。
【0027】
また、1編成の列車に3台以上の車上装置を搭載する構成において、各車上装置に系の種別(現用系又は予備系)を設定すると共に、現用系に設定された1台の車上装置には送信待機時間を設定せず、予備系に設定された残りの車上装置に対して送信待機時間を設定するようにしてもよい。
【0028】
また、本例では、各車上装置は自装置から送信を行う条件が満たされた場合には、自装置が故障により無線通信を行えない場合を除いて地上装置10に対して無線信号を送信するが、例えば、無線通信できるものの所定の故障が発生している状況の場合は地上装置10に対する無線信号の送信を行わない構成としてもよく、この場合には、故障の内容に応じた送信条件を予め設定しておき、この設定内容に従って無線信号の送信を行うか否かを判断すればよい。
【0029】
本例では、例えば、複数の基地局(地上装置)と複数の車上局(車上装置)との間で無線回線にて通信を行うシステムにおいて、1編成内に2つ(又はそれ以上)の車上装置を設け、これら車上装置を引き通し線で接続し、1つを現用、残りを予備として使用する構成とし、各車上装置には、他の車上装置から地上局へ送信された信号を受信できる送受信機を設け、各車上装置に設けられた操作部のいずれかに対して人(操作者)が送信操作を行うと、その操作部は全ての車上装置へ送信起動をかけ、予め設定してある優先順位の高い車上装置(現用)が非故障時に地上装置への送信を行い、優先順位が次(又はそれ以降)の車上装置(予備)は、車上装置(現用又は予備)から送信される信号の着信が一定時間ない場合に地上装置への送信を行う構成とすることで、無線キャリアの有無で他の車上装置の故障検知を可能とし、地上装置との無線通信に用いる車上装置を切り替える車上装置多重系切替方式を実現することができる。
【0030】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0031】
10:地上装置、 11:制御部、 12:送信機、 13:受信機、 14:共用器、 15:アンテナ、 20、30:車上装置、 21、31:操作部、 22、32:制御部、 23、33:送受信機、 24、34:受信機、 25、35:共用器、 26、36:アンテナ、 40:引き通し線、
50:地上装置、 51:制御部、 52:送信機、 53:受信機、 54:共用器、 55:アンテナ、 60、70:車上装置、 61、71:操作部、 62、72:切替部、 63、73:制御部、 64、74:送信機、 65、75:受信機、 66、76:共用器、 67、77:アンテナ、 80:引き通し線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置と車上装置が無線により通信する列車無線システムにおいて、
1編成の列車に複数の車上装置が設けられ、
前記複数の車上装置の各々は、前記地上装置に対して信号を無線により送信する地上送信手段と、他の車上装置から前記地上装置に対して無線により送信された信号を受信する他車上受信手段と、送信指示を受け付ける送信指示受付手段と、自装置が現用である場合に前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられたことに応じて当該送信指示に応じた信号を前記地上送信手段により無線送信し、自装置が予備用である場合に前記送信指示受付手段により送信指示が受け付けられてから所定の時間が経過するまでに他の車上装置から無線送信された信号が前記他車上受信手段により非受信であったことに応じて当該送信指示に応じた信号を前記地上送信手段により無線送信する送信制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする列車無線システム。

【図1】
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【図2】
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