初期解生成方法及び生成装置
【課題】最適化問題をメタヒューリスティック手法により解く場合の初期解を短時間で効率的に生成し、実行可能解の探索精度を向上させる。
【解決手段】プラントを構成する複数の機器の運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、プラントモデルを定式化するステップS1と、機器の接続関係を、操作変数、従属変数及び固定変数を要素に持つ行列として生成するステップS2と、前記行列に基づいて機器のエネルギー種別を決定するステップS3と、操作変数の行列内の位置を含む操作変数情報を生成するステップS4と、エネルギー種別、操作変数情報及び機器の効率に基づいて、操作変数を持つ機器の優先順位を決定するステップS5と、優先順位の高い機器から、制約条件を満たす操作変数値を順に計算して初期解を生成するステップS6とを有する。
【解決手段】プラントを構成する複数の機器の運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、プラントモデルを定式化するステップS1と、機器の接続関係を、操作変数、従属変数及び固定変数を要素に持つ行列として生成するステップS2と、前記行列に基づいて機器のエネルギー種別を決定するステップS3と、操作変数の行列内の位置を含む操作変数情報を生成するステップS4と、エネルギー種別、操作変数情報及び機器の効率に基づいて、操作変数を持つ機器の優先順位を決定するステップS5と、優先順位の高い機器から、制約条件を満たす操作変数値を順に計算して初期解を生成するステップS6とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立加工プラントや鉄鋼精製プラント、ガスコージェネレーションシステム等の各種プラントにおいて、複数の機器を有するプラントの運用コストを最小化する最適化問題の初期解を生成する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントにおいては、時々刻々変化する負荷と電力、燃料、蒸気等の供給量とのバランスを考慮しながら、電力コスト、燃料コスト等の運用コストや環境負荷を最小化するようなプラント構成機器の起動・停止状態や出力を求め、これを最適運用計画として決定することが求められている。
【0003】
従来、この種の最適運用計画の決定方法としては、例えば特許文献1〜3に記載された最適化手法が知られている。
特許文献1には、システムの運用コストを最小化する混合整数線形計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運用計画を決定する熱源運転支援制御方法及び制御システム等が記載されている。
特許文献2には、エネルギープラントの最適運用問題を混合整数計画問題として定式化し、Evolutionary Particle Swarm Optimization(EPSO)等のメタヒューリスティック手法を用いてプラント構成機器の起動・停止状態や燃料注入量を決定するようにしたプラント最適運用計画装置が記載されている。
特許文献3には、複数の電源の運転計画等に適用可能な組み合わせ最適化問題を、タブーサーチ等のメタヒューリスティック手法を用いて解くようにした組み合わせ最適化システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−317049号公報(段落[0013],[0025]〜[0090]、図1,図3等)
【特許文献2】特開2006−48474号公報(段落[0012]〜[0059]、図1等)
【特許文献3】特開2009−48353号公報(段落[0018]〜[0087]、図1〜図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された混合整数線形計画法のような数理計画法の分野では、分枝限定法がよく知られており、この分枝限定法を用いれば厳密解を算出することが可能である。しかし、問題の規模によっては計算時間が指数的に増加する場合があり、時間に制約がある場合には計算を途中で打ち切らざるを得ないこともある。その場合、解の精度は最初の離散変数を連続量に緩和した近似解に基づく初期解に依存することになり、離散変数を連続量に緩和した際に元問題の構造を良好に近似できていなければ、最適解とはかけ離れたものとなってしまう。
【0006】
一方、特許文献2,3に開示されているメタヒューリスティック手法は、多項式時間で実用的な準最適解が得られる近似手法である反面、大域的最適解が得られる理論的保証がない等、求解の信頼性に乏しいという問題がある。特に、高次元の決定変数や制約条件数の問題をペナルティ関数法等によって考慮する場合には性能が大幅に低下してしまい、実行可能な初期解すら発見することが難しくなる。このように実行可能で良質な初期解が存在しない場合には、効率的な探索を行うことができず、最適運用計画の決定も困難である。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、各種プラントの運用コストを最小化する最適化問題をメタヒューリスティック手法によって解く場合の初期解を短時間で効率的に生成し、実行可能解の探索精度を向上させるようにした、初期解生成方法及び生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る初期解生成方法は、プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する第1ステップと、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する第2ステップと、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定する第3ステップと、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する第4ステップと、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する第5ステップと、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する第6ステップと、を有するものである。
【0009】
請求項2に係る初期解生成装置は、プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する装置において、
前記コンピュータシステムは、演算処理装置、及びこの演算処理装置により実行されるプログラム、入出力装置、記憶装置を少なくとも備え、
前記演算処理装置は、前記プログラムに従った演算処理により、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する定式化手段、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する接続関係生成手段、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定するエネルギー種別決定手段、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する操作変数情報生成手段、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する優先順位決定手段、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する操作変数値計算手段、として機能するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラントの運用コストを最小化する最適化問題をコンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法によって解く場合に、実用的な時間で効率的に初期解を生成することができ、最適運用計画の決定に有用な初期解生成方法及び生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る最適運用システム等のプログラム構成を示すブロック図である。
【図2】図1の各機能を実現するためのコンピュータシステムのブロック図である。
【図3】プラント構成機器の接続状態とその行列化を示す図である。
【図4】本実施形態に係る初期解生成方法を示すフローチャートである。
【図5】図3の下段に示した行列の縮約前後の説明図である。
【図6】本実施形態における既操作変数の更新状態を示す説明図である。
【図7】本実施形態における既操作変数の更新状態を示す説明図である。
【図8】機器のグループ、エネルギー種別及び効率の一例を示す図である。
【図9】優先パターンの説明図である。
【図10】図9に示した優先パターンの優先順位の説明図である。
【図11】図3における機器3,4の優先順位の説明図である。
【図12】操作変数値の決定方法の説明図である。
【図13】本実施形態に係る初期解生成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、本実施形態に係る最適運用システム等のプログラム構成を示すブロック図である。この最適運用システムは、例えば、組立加工プラントや鉄鋼精製プラント、ガスコージェネレーションシステム等の各種プラントにおいて、コンピュータシステムがメタヒューリスティック手法を実行することにより、プラントの運用コストを最小化するような機器の起動・停止状態、出力等を最適運用計画として決定するためのものである。
【0013】
図1において、プラントモデルエンジニアリング機能10は、ユーザが後述する入力装置を用いて、プラントを構成する複数の機器の入出力モデル、上下限制約、機器同士の接続関係を編集し、最適運用システム20に与えるためのものである。なお、最適運用システム20には、Particle Swarm Optimization(PSO)やタブーサーチ等のメタヒューリスティック手法を用いるためのパラメータや電力負荷予測値・熱負荷予測値・蒸気負荷予測値等も与えられるようになっている。
【0014】
最適運用システム20はシミュレータ21を備えており、このシミュレータ21は、プラントを構成する複数の機器の運用値(起動・停止状態及び入出力等)並びに運用コストを計算する。最適化機能23は、シミュレータ21によって計算された運用コストが最小となるように、メタヒューリスティック手法を用いて機器の運用値を予め設定された回数だけ探索し、更新する。結果出力機能24は、運用コストを最小にする最終的な運用値を、最適化結果30として外部に出力する。
初期解生成機能22は、後に詳述する処理を実行してメタヒューリスティック手法における最適化演算の初期解を生成するものである。
【0015】
図2は、図1の諸機能を実現するためのコンピュータシステムを示しており、周知のパソコン等によって構成されている。
図2において、CPU41は、図1のプラントモデルエンジニアリング機能10、シミュレータ21、初期解生成機能22、最適化機能23、結果出力機能24等のプログラムを実行し、かつ、システム全体を制御する。
メモリ42は、CPU41が実行するプログラムやデータが一時的に格納されるものであり、RAM等によって構成されている。
入力装置43はキーボードやマウス、タッチパネル等からなり、出力装置44は、ディスプレイやプリンタ等からなっている。
外部記憶装置45はハードディスク装置や可搬型の記憶装置からなり、前記メモリ42に送られるプログラムやデータ、決定された最適運用計画等が格納される。
通信装置46は、必要に応じて設けられるものであり、他の情報処理システムとの間で各種の指令やデータを送受信するために用いられる。
【0016】
さて、本実施形態において、プラントを構成する機器の接続関係は、図3の上段に示すように矩形で示す機器(ノード)と線(リンク)とによって表されるものとする。これらの接続関係は、図2の入力装置43、出力装置44を媒介としてCPU41が図1のプラントモデルエンジニアリング機能10を実行することにより編集、定義され、外部記憶装置45に格納される。
ここで、「機器」とは、タービンやボイラ、冷凍機、負荷機器等を始めとして、電力エネルギーや熱エネルギーの投入端、これらのエネルギーを分配する機器、合流させる機器等をすべて含む概念である。図3に例示した機器0〜機器7には、線に接続された端子(機器と線とを結ぶ■,○,●)が存在するものとし、これらの端子は以下のいずれかの変数に対応している。このため、以下では、機器の端子とこれに対応する変数とを同じ意味で用いるものとする。
なお、線(リンク)で結ばれた端子(機器と線とを結ぶ■,○,●)は、同じ値であるものとする。
【0017】
・操作変数:未知であり、図1の最適化機能23及びシミュレータ21の連携動作によって決定される変数であって、例えば機器の運用値である(図3の上段における■)。
・従属変数:未知であるが、操作変数が決まれば従属的に決定される変数であって、例えば機器の運用値である(図3の上段における○)。
・固定変数:既知であり、ユーザがプラントモデルエンジニアリング機能10を介して予め設定する変数であって、例えば電力負荷予測値や熱負荷予測値である(図3の上段における●)。
【0018】
図1のシミュレータ21は、ユーザにより予め設定された固定変数と、シミュレーションにより決定された操作変数とに基づいて、プラントモデルエンジニアリング機能10から与えられた、プラントを構成する複数の機器の入出力モデル、上下限制約、を用いてその他の従属変数を求める。
すべての変数が求められるためには、固定変数同士、または操作変数同士、固定変数と操作変数とがノードまたはリンクによって直接接続されてはならない。また、最適運用計画を決定するための計算は固定変数または操作変数から開始されるため、プラントには固定変数もしくは操作変数が少なくとも一つ含まれる必要がある。
【0019】
シミュレータ21による計算の順序として、図3の上段の例では、固定変数を持つ機器5、機器7、操作変数を持つ機器3、機器4から計算が開始される。まず、機器6の三つの従属変数、機器1の右下の従属変数が計算される。次に、機器3及び機器4の入出力モデルから、機器3及び機器4の左側の従属変数が定まる。これにより、機器2の右側の2つの従属変数が定まる。そして、機器2の入出力モデルにより左側の従属変数が定まる。よって、機器1の右上側の従属変数が定まる。最後に、機器1の入出力モデルより機器1の左側の従属変数が定まり、機器0の右側の従属変数が定まることで、すべての変数が定まることによってシミュレーションが終了する。
【0020】
上記のシミュレーションを予め設定された回数だけ実行することにより、例えば機器0が電力や熱の投入端である場合に、機器0の右側の従属変数として、目的関数である運用コストの最小化を実現するようなすべての変数が決定され、プラントの最適運用計画が決定される。
本実施形態の初期解生成方法及び生成装置は、上記のシミュレーションにより最適解の探索を開始する際の変数(主として操作変数)を初期解として生成するためのものである。
【0021】
以下、本実施形態に係る初期解生成方法を図4のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図2のCPU41は、外部記憶装置45から読み出してメモリ42に格納した図1の初期解生成機能22に係るプログラムに従って、以下の各ステップを実行する。
始めに、プラントモデルを定式化する(ステップS1)。具体的には、プラントの電力コスト、燃料コスト等の運用コストを最小化する最適化問題を定式化することになる。
目的関数は、機器の運用に伴って発生するコストの総和の最小化であり、図3の例では、例えば、機器2、機器3、機器4を運用するための運用コストの総和として、機器0の右側の端子(従属変数)を目的関数値とする。
【0022】
操作変数には、所定の計画期間における計画点ごとの機器の入出力端子(例えば、図3における機器3、機器4が冷凍機である場合の右側の端子)を指定する。仮に、計画期間が24時間であって計画点が1時間ごとに存在する場合、機器3、機器4の右側の端子を操作変数とすると、操作変数の数は2×24=48となる。
制約条件は、各操作変数及び各従属変数の上下限制約値であり、図3では、機器3、機器4の操作変数、その他の従属変数ごとに上下限制約値を設定する。
【0023】
次いで、機器の接続関係を行列化する(ステップS2)。具体的には、図3の上段に表した機器の接続関係を、行列の形で表現する。
例えば、n個の機器を有するプラントにおいて、機器の接続関係は(n×n)行列として表される。よって、図3の上段に示した8個の機器0〜機器7の接続関係は、下段に示すように(8×8)行列によって表される。
【0024】
図3の下段に示した行列の要素は、各機器の端子状態を表している。例えば、機器iの端子が機器jの端子に接続されている場合、i行j列の要素は“0”以外の値を持ち、接続されていない場合、i行j列の要素は“0”となる。なお、図3の行列では、“0”である要素を空白にて示してある。
上記の点を含め、行列の要素を以下の数値によって定義する。
“0”:未接続
“1”:操作変数
“2”:従属変数
“3”:固定変数
【0025】
なお、上記の行列化(ステップS2)に付随する処理として、行列の要素を整理することにより行列内の情報を縮約する。
具体的には、i行j列の要素とj行i列の要素とを比較し、どちらかが“1”(:操作変数)である場合には二つの要素を“1”に統一し、どちらかが“3”(:固定変数)である場合には二つの要素を“3”に統一し、更に二つの要素がいずれも“2”(:従属変数)の場合には“2”のままとする。
上記の規則による縮約前後の行列を、図5に示す。
【0026】
次に、縮約後の行列に基づいて、エネルギー種別を決定する(ステップS3)。
プラントでは様々なエネルギー(例えば、電力、熱、蒸気、燃料など)を考慮する必要がある。そこで、このステップでは、以下の手順に従ってエネルギー種別を決定する。
機器種別として、エネルギー変換(例えば、電力,燃料から熱,蒸気への変換など)が行われない機器、エネルギー変換が行われる機器を予め区別しておき、この機器種別を属性データとして図2の外部記憶装置45に格納しておく。例えば、図3の例において、機器0、機器1、機器2、機器6は分配や合流等の和演算機能を有する機器であり、エネルギー変換が行われないので、その旨を機器種別として外部記憶装置45に格納しておく。また、ガスタービンやボイラ等、エネルギー変換が行われる機器については、その旨を機器種別として外部記憶装置45に格納しておく。
【0027】
次いで、縮約前の行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器、例えば図5の縮約後の行列における機器0に接続されている機器を抽出し、その機器に対応する行と列の成分すべてを列挙して同じエネルギー種別とする。次に、機器1に接続されている機器を抽出して同様の処理を行い、更に機器2、機器6についても同様の処理を行って複数の機器をエネルギー種別により分類する。
図3の接続関係において、変数の位置(i行j列)を位置(I,J)で表すものとすると、機器0と同じエネルギー種別である変数は(0,1)、(1,0)となる。また、機器1と同じエネルギー種別である変数は、(1,0)、(0,1)、(1,2)、(2,1)、(1,5)、(5,1)となる。さらに、機器2と同じエネルギー種別である変数は(2,1)、(1,2)、(2,3)、(3,2)、(2,4)、(4,2)となる。また、機器6と同じエネルギー種別である変数は、(6,3)、(3,6)、(6,4)、(4,6)、(6,7)、(7,6)となる。
よって、(0,1)、(1,0)、(1,2)、(1,5)、(2,1)、(2,3)、(2,4)、(3,2)、(4,2)、(5,1)が、同じエネルギー種別の変数となる。また、(3,6)、(4,6)、(6,3)、(6,4)、(6,7)、(7,6)が別の同じエネルギー種別となる。
【0028】
次に、操作変数情報を生成する(ステップS4)。
すなわち、行列の従属関係を取得し、操作変数である端子の計算の優先順序を求める。具体的には以下の手順を実行する。
始めに、縮約後の行列に着目し、要素に固定変数のみが含まれる行、つまり要素に“3”のみが含まれる行を検索する。そして、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。例えば、図6(a)において、要素に“3”のみが含まれる行は機器6の行(行番号6)であり、この行番号6と同じ列番号6の列内の要素を抽出する。これにより、列番号6内の二つの要素 “1”,“1”が抽出される。
【0029】
次いで、抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新する。また、行列を縮約する前の対称にある要素(例えば、1行2列にある要素に対して2行1列にある要素)も同様に既操作変数を示す“6”に更新する。
このとき、同じ列内に操作変数が複数あれば、その組を一つのグループとみなし、操作変数が存在する行番号、列番号から操作変数の位置(既操作変数の位置)を記憶する。
【0030】
図6(a)では、列番号6内に、操作変数に対応する二つの要素 “1”,“1”が抽出されたため、図6(b),(c)に示すようにこれら二つの要素を、既操作変数を示す“6”に更新すると共に、一つのグループとみなして操作変数の位置を記憶する。なお、図6(b),(c)の右側の操作変数情報の表に示すごとく、操作変数の位置(i行j列)を位置(I,J)で表すものとすると、既操作変数の“6”に更新された操作変数の位置は3行6列、4行6列の二つであるため、位置(I,J)は(3,6)及び(4,6)となる。
また、同じグループに属する操作変数は、計算の順序を同一(順序1)とする。
【0031】
次いで、要素に既操作変数を示す“6”のみが含まれる行を検索する。そして、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。例えば、図6(c)において、要素に“6”のみが含まれる行は行番号3,4であり、これらの行番号3,4と同じ列番号3,4の列内の要素を抽出する。これにより、列番号3,4内の二つの要素 “2”,“2”が抽出される。
【0032】
抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新する。また、行列を縮約する前の対称にある要素も同様に既操作変数を示す“6”に更新する。このとき、同じ列内に操作変数が複数あれば、その組を一つのグループとみなし、操作変数が存在する行番号、列番号から操作変数の位置(既操作変数の位置)を記憶する。
【0033】
図6(d)では、列番号3,4内に、従属変数に対応する二つの要素 “2”,“2”が抽出されたため、図6(d),(e)に示すようにこれら二つの要素を既操作変数を示す“6”に更新する。なお、ここで既操作変数“6”とした変数は従属変数であったので、操作変数の位置は記憶しない。
【0034】
以下同様にして、図7(a)〜(d)に示すごとく、要素に既操作変数を示す“6”のみが含まれる行を検索し、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。そして、抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新し、既操作変数を示す“6”に更新した変数が操作変数である場合にのみ操作変数位置を記憶する。
このようにして、図7(d)の如く、すべての行列の要素が固定変数に対応する“3”または既操作変数に対応する“6”になったら、行列の要素の更新を終了する。
なお、上記の処理によって得られた操作変数情報は、外部記憶装置45に格納される。
【0035】
次に、優先パターン、優先順位を決定する(ステップS5)。ここで、優先パターンとは、各機器について優先的に運用するか否か(優先または非優先)を定めたパターンをいい、優先順位とは、各優先パターンにおいて各機器を運用する際の順位をいう。
前述したステップS3により得られたエネルギー種別と、ステップS4により得られた操作変数情報(図6,図7の右側の表)とを用いて、操作変数を有する機器の優先パターン及び優先順位を決定する。
【0036】
例えば、操作変数を有する機器が機器1〜機器5であり、そのうち三つの機器1〜機器3が同じグループ、残り二つの機器4,機器5が別のグループにある場合、エネルギー種別及び効率の逆数が図8のように表されているとする。なお、効率は通常、(出力/入力)として表されるが、ここでは演算の便宜上、効率の逆数である(入力/出力)を用いており、その値が小さいほど実際の効率が大きいものとする。
【0037】
優先パターンは、グループとエネルギー種別とのすべての組合せにより、図9に示すように4通り(優先パターン1〜4)が生成される。図9に示す優先パターン内の要素の「1」は優先、「−1」は非優先を示す。なお、機器1〜機器3は同じグループに属するが、エネルギー種別は機器1と機器2,3とで異なるため、機器1が優先または非優先の場合、機器2,3が非優先または優先の場合というように場合分けして優先パターンを生成した結果、図9のようになる。ここで、優先パターンの生成に当たっては、機器の効率を考慮しないものとする。
【0038】
次に、優先パターン1〜4のそれぞれにつき機器の優先順位を決定する。この優先順位は、各優先パターン内でグループごとに決定される。各優先パターンにおいて、優先である機器同士、または非優先である機器同士の順位付けは、効率の逆数の大小を比較して行う。
図9の優先パターン1〜4における機器の優先順位を決定すると、図10のようになる。
【0039】
図3に示した例では、操作変数を有する機器は機器3及び機器4であり、機器3及び機器4はグループ及びエネルギー種別が同じであるため、優先パターンは設定せず、機器の効率によって優先順位が決定される。仮に、図3における機器3のほうが機器4よりも効率の逆数が小さい(実際の効率が大きい)とすると、機器3,4の優先順位は図11の1パターンのみとなる。
【0040】
次に、操作変数値を計算する(ステップS6)。
ステップS5により求めた機器の優先順位に基づき、操作変数値を計算することにより初期解を生成する。操作変数値の計算の方針は、効率の逆数が小さい操作変数から優先的に、与えられた端子値を按分していくことである。ここで、端子値とは、操作変数に接続されている既知の固定変数または計算済みの従属変数もしくは操作変数をいう。図3の例では、機器7の固定変数が端子値に相当しており、例えば電気負荷予測値、熱負荷予測値等である。
【0041】
このとき、端子値(上記の例では固定変数値)を複数の操作変数に按分して操作変数値を求める手順は、以下のとおりである。
機器7の固定変数の端子値が機器6の右側の従属変数の端子値となり、機器6は先に記載したように和演算機能を有する機器であるため、機器6の左側の従属変数の端子に按分される端子値は、機器7の固定変数の端子値となる。よって、機器7の固定変数の端子値が、そのまま機器3及び機器4に按分されることとなる。
図11に示したように、図3の機器3が優先順位1番目、機器4が優先順位2番目であるとすると、優先順位1番目の機器3の操作変数(機器3の右側の端子)に対しては、
・固定変数値(機器7の固定変数値)≧機器3の操作変数の定格値である場合、操作変数=定格値とする。
・固定変数値(機器7の固定変数値)<機器3の操作変数の上限値である場合、操作変数=端子値とする。
【0042】
優先順位2番目の機器4の操作変数(機器4の右側の端子)に対しては、
端子値’=固定変数値(機器7の固定変数値)−計算済みの操作変数値の和(機器3の操作変数に割り当てられた変数値)
として端子値を端子値’に更新し、優先順位1番目の場合と同様に、
・端子値’≧機器4の操作変数の定格値である場合、操作変数=定格値とする。
・端子値’<機器4の操作変数の上限値である場合、操作変数=端子値’とする。
【0043】
このようにして操作変数値を計算していき、端子値’が0になれば、一つのグループにおける操作変数値の計算、つまり端子値の按分は終了したことになり、その後、他のグループの操作変数値の計算に移行する。この時、計算されなかった操作変数値は0となる。
以上の手順を、すべての計画点、すべての優先パターンにおける操作変数につき実行して処理を終了する(ステップS7,S8)。
【0044】
上述した一連の処理により、グループ及びエネルギー種別に応じて優先パターンが複数生成されるので、初期解としては複数個分生成される。なお、これらの初期解は効率の大小によって優先順位が決定され、優先順位が高いほど、按分される値が大きくなる。
これらの複数個生成された初期解を用いて既存のメタヒューリスティック手法における探索を実行することにより、実用的な時間内でプラントの最適運用計画を生成することができる。
【0045】
なお、図13は、本実施形態に係る初期解生成装置の構成図であり、前述した図2のコンピュータシステムにおいて、図1の初期解生成機能22を実現する部分を中心にして表したものである。
図13において、50は前記CPU41等からなる演算処理装置であり、51は前記ステップS1〜S8を実行するためのプログラムである。
演算処理装置50は、プログラム51に従った演算処理により、前記ステップS1〜S6にそれぞれ相当する定式化手段511、接続関係生成手段512、エネルギー種別決定手段513、操作変数情報生成手段514、優先順位決定手段515、操作変数値計算手段516として機能する。なお、52は図2における入力装置43及び出力装置44に相当する入出力装置、53は同じくメモリ42及び外部記憶装置45に相当する記憶装置である。
【符号の説明】
【0046】
10: プラントモデルエンジニアリング手段
20:最適運用システム
21:シミュレータ
22:初期解生成機能
23:最適化機能
24:結果出力機能
30:最適化結果
41:CPU
42:メモリ
43:入力装置
44:出力装置
45:外部記憶装置
46:通信装置
47:バス
50:演算処理装置
51:プログラム
511:定式化手段
512:接続関係生成手段
513:エネルギー種別決定手段
514:操作変数情報生成手段
515:優先順位決定手段
516:操作変数値計算手段
52:入出力装置
53:記憶装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立加工プラントや鉄鋼精製プラント、ガスコージェネレーションシステム等の各種プラントにおいて、複数の機器を有するプラントの運用コストを最小化する最適化問題の初期解を生成する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラントにおいては、時々刻々変化する負荷と電力、燃料、蒸気等の供給量とのバランスを考慮しながら、電力コスト、燃料コスト等の運用コストや環境負荷を最小化するようなプラント構成機器の起動・停止状態や出力を求め、これを最適運用計画として決定することが求められている。
【0003】
従来、この種の最適運用計画の決定方法としては、例えば特許文献1〜3に記載された最適化手法が知られている。
特許文献1には、システムの運用コストを最小化する混合整数線形計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運用計画を決定する熱源運転支援制御方法及び制御システム等が記載されている。
特許文献2には、エネルギープラントの最適運用問題を混合整数計画問題として定式化し、Evolutionary Particle Swarm Optimization(EPSO)等のメタヒューリスティック手法を用いてプラント構成機器の起動・停止状態や燃料注入量を決定するようにしたプラント最適運用計画装置が記載されている。
特許文献3には、複数の電源の運転計画等に適用可能な組み合わせ最適化問題を、タブーサーチ等のメタヒューリスティック手法を用いて解くようにした組み合わせ最適化システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−317049号公報(段落[0013],[0025]〜[0090]、図1,図3等)
【特許文献2】特開2006−48474号公報(段落[0012]〜[0059]、図1等)
【特許文献3】特開2009−48353号公報(段落[0018]〜[0087]、図1〜図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された混合整数線形計画法のような数理計画法の分野では、分枝限定法がよく知られており、この分枝限定法を用いれば厳密解を算出することが可能である。しかし、問題の規模によっては計算時間が指数的に増加する場合があり、時間に制約がある場合には計算を途中で打ち切らざるを得ないこともある。その場合、解の精度は最初の離散変数を連続量に緩和した近似解に基づく初期解に依存することになり、離散変数を連続量に緩和した際に元問題の構造を良好に近似できていなければ、最適解とはかけ離れたものとなってしまう。
【0006】
一方、特許文献2,3に開示されているメタヒューリスティック手法は、多項式時間で実用的な準最適解が得られる近似手法である反面、大域的最適解が得られる理論的保証がない等、求解の信頼性に乏しいという問題がある。特に、高次元の決定変数や制約条件数の問題をペナルティ関数法等によって考慮する場合には性能が大幅に低下してしまい、実行可能な初期解すら発見することが難しくなる。このように実行可能で良質な初期解が存在しない場合には、効率的な探索を行うことができず、最適運用計画の決定も困難である。
【0007】
そこで、本発明の解決課題は、各種プラントの運用コストを最小化する最適化問題をメタヒューリスティック手法によって解く場合の初期解を短時間で効率的に生成し、実行可能解の探索精度を向上させるようにした、初期解生成方法及び生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る初期解生成方法は、プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する第1ステップと、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する第2ステップと、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定する第3ステップと、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する第4ステップと、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する第5ステップと、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する第6ステップと、を有するものである。
【0009】
請求項2に係る初期解生成装置は、プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する装置において、
前記コンピュータシステムは、演算処理装置、及びこの演算処理装置により実行されるプログラム、入出力装置、記憶装置を少なくとも備え、
前記演算処理装置は、前記プログラムに従った演算処理により、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する定式化手段、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する接続関係生成手段、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定するエネルギー種別決定手段、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する操作変数情報生成手段、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する優先順位決定手段、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する操作変数値計算手段、として機能するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラントの運用コストを最小化する最適化問題をコンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法によって解く場合に、実用的な時間で効率的に初期解を生成することができ、最適運用計画の決定に有用な初期解生成方法及び生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る最適運用システム等のプログラム構成を示すブロック図である。
【図2】図1の各機能を実現するためのコンピュータシステムのブロック図である。
【図3】プラント構成機器の接続状態とその行列化を示す図である。
【図4】本実施形態に係る初期解生成方法を示すフローチャートである。
【図5】図3の下段に示した行列の縮約前後の説明図である。
【図6】本実施形態における既操作変数の更新状態を示す説明図である。
【図7】本実施形態における既操作変数の更新状態を示す説明図である。
【図8】機器のグループ、エネルギー種別及び効率の一例を示す図である。
【図9】優先パターンの説明図である。
【図10】図9に示した優先パターンの優先順位の説明図である。
【図11】図3における機器3,4の優先順位の説明図である。
【図12】操作変数値の決定方法の説明図である。
【図13】本実施形態に係る初期解生成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、本実施形態に係る最適運用システム等のプログラム構成を示すブロック図である。この最適運用システムは、例えば、組立加工プラントや鉄鋼精製プラント、ガスコージェネレーションシステム等の各種プラントにおいて、コンピュータシステムがメタヒューリスティック手法を実行することにより、プラントの運用コストを最小化するような機器の起動・停止状態、出力等を最適運用計画として決定するためのものである。
【0013】
図1において、プラントモデルエンジニアリング機能10は、ユーザが後述する入力装置を用いて、プラントを構成する複数の機器の入出力モデル、上下限制約、機器同士の接続関係を編集し、最適運用システム20に与えるためのものである。なお、最適運用システム20には、Particle Swarm Optimization(PSO)やタブーサーチ等のメタヒューリスティック手法を用いるためのパラメータや電力負荷予測値・熱負荷予測値・蒸気負荷予測値等も与えられるようになっている。
【0014】
最適運用システム20はシミュレータ21を備えており、このシミュレータ21は、プラントを構成する複数の機器の運用値(起動・停止状態及び入出力等)並びに運用コストを計算する。最適化機能23は、シミュレータ21によって計算された運用コストが最小となるように、メタヒューリスティック手法を用いて機器の運用値を予め設定された回数だけ探索し、更新する。結果出力機能24は、運用コストを最小にする最終的な運用値を、最適化結果30として外部に出力する。
初期解生成機能22は、後に詳述する処理を実行してメタヒューリスティック手法における最適化演算の初期解を生成するものである。
【0015】
図2は、図1の諸機能を実現するためのコンピュータシステムを示しており、周知のパソコン等によって構成されている。
図2において、CPU41は、図1のプラントモデルエンジニアリング機能10、シミュレータ21、初期解生成機能22、最適化機能23、結果出力機能24等のプログラムを実行し、かつ、システム全体を制御する。
メモリ42は、CPU41が実行するプログラムやデータが一時的に格納されるものであり、RAM等によって構成されている。
入力装置43はキーボードやマウス、タッチパネル等からなり、出力装置44は、ディスプレイやプリンタ等からなっている。
外部記憶装置45はハードディスク装置や可搬型の記憶装置からなり、前記メモリ42に送られるプログラムやデータ、決定された最適運用計画等が格納される。
通信装置46は、必要に応じて設けられるものであり、他の情報処理システムとの間で各種の指令やデータを送受信するために用いられる。
【0016】
さて、本実施形態において、プラントを構成する機器の接続関係は、図3の上段に示すように矩形で示す機器(ノード)と線(リンク)とによって表されるものとする。これらの接続関係は、図2の入力装置43、出力装置44を媒介としてCPU41が図1のプラントモデルエンジニアリング機能10を実行することにより編集、定義され、外部記憶装置45に格納される。
ここで、「機器」とは、タービンやボイラ、冷凍機、負荷機器等を始めとして、電力エネルギーや熱エネルギーの投入端、これらのエネルギーを分配する機器、合流させる機器等をすべて含む概念である。図3に例示した機器0〜機器7には、線に接続された端子(機器と線とを結ぶ■,○,●)が存在するものとし、これらの端子は以下のいずれかの変数に対応している。このため、以下では、機器の端子とこれに対応する変数とを同じ意味で用いるものとする。
なお、線(リンク)で結ばれた端子(機器と線とを結ぶ■,○,●)は、同じ値であるものとする。
【0017】
・操作変数:未知であり、図1の最適化機能23及びシミュレータ21の連携動作によって決定される変数であって、例えば機器の運用値である(図3の上段における■)。
・従属変数:未知であるが、操作変数が決まれば従属的に決定される変数であって、例えば機器の運用値である(図3の上段における○)。
・固定変数:既知であり、ユーザがプラントモデルエンジニアリング機能10を介して予め設定する変数であって、例えば電力負荷予測値や熱負荷予測値である(図3の上段における●)。
【0018】
図1のシミュレータ21は、ユーザにより予め設定された固定変数と、シミュレーションにより決定された操作変数とに基づいて、プラントモデルエンジニアリング機能10から与えられた、プラントを構成する複数の機器の入出力モデル、上下限制約、を用いてその他の従属変数を求める。
すべての変数が求められるためには、固定変数同士、または操作変数同士、固定変数と操作変数とがノードまたはリンクによって直接接続されてはならない。また、最適運用計画を決定するための計算は固定変数または操作変数から開始されるため、プラントには固定変数もしくは操作変数が少なくとも一つ含まれる必要がある。
【0019】
シミュレータ21による計算の順序として、図3の上段の例では、固定変数を持つ機器5、機器7、操作変数を持つ機器3、機器4から計算が開始される。まず、機器6の三つの従属変数、機器1の右下の従属変数が計算される。次に、機器3及び機器4の入出力モデルから、機器3及び機器4の左側の従属変数が定まる。これにより、機器2の右側の2つの従属変数が定まる。そして、機器2の入出力モデルにより左側の従属変数が定まる。よって、機器1の右上側の従属変数が定まる。最後に、機器1の入出力モデルより機器1の左側の従属変数が定まり、機器0の右側の従属変数が定まることで、すべての変数が定まることによってシミュレーションが終了する。
【0020】
上記のシミュレーションを予め設定された回数だけ実行することにより、例えば機器0が電力や熱の投入端である場合に、機器0の右側の従属変数として、目的関数である運用コストの最小化を実現するようなすべての変数が決定され、プラントの最適運用計画が決定される。
本実施形態の初期解生成方法及び生成装置は、上記のシミュレーションにより最適解の探索を開始する際の変数(主として操作変数)を初期解として生成するためのものである。
【0021】
以下、本実施形態に係る初期解生成方法を図4のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図2のCPU41は、外部記憶装置45から読み出してメモリ42に格納した図1の初期解生成機能22に係るプログラムに従って、以下の各ステップを実行する。
始めに、プラントモデルを定式化する(ステップS1)。具体的には、プラントの電力コスト、燃料コスト等の運用コストを最小化する最適化問題を定式化することになる。
目的関数は、機器の運用に伴って発生するコストの総和の最小化であり、図3の例では、例えば、機器2、機器3、機器4を運用するための運用コストの総和として、機器0の右側の端子(従属変数)を目的関数値とする。
【0022】
操作変数には、所定の計画期間における計画点ごとの機器の入出力端子(例えば、図3における機器3、機器4が冷凍機である場合の右側の端子)を指定する。仮に、計画期間が24時間であって計画点が1時間ごとに存在する場合、機器3、機器4の右側の端子を操作変数とすると、操作変数の数は2×24=48となる。
制約条件は、各操作変数及び各従属変数の上下限制約値であり、図3では、機器3、機器4の操作変数、その他の従属変数ごとに上下限制約値を設定する。
【0023】
次いで、機器の接続関係を行列化する(ステップS2)。具体的には、図3の上段に表した機器の接続関係を、行列の形で表現する。
例えば、n個の機器を有するプラントにおいて、機器の接続関係は(n×n)行列として表される。よって、図3の上段に示した8個の機器0〜機器7の接続関係は、下段に示すように(8×8)行列によって表される。
【0024】
図3の下段に示した行列の要素は、各機器の端子状態を表している。例えば、機器iの端子が機器jの端子に接続されている場合、i行j列の要素は“0”以外の値を持ち、接続されていない場合、i行j列の要素は“0”となる。なお、図3の行列では、“0”である要素を空白にて示してある。
上記の点を含め、行列の要素を以下の数値によって定義する。
“0”:未接続
“1”:操作変数
“2”:従属変数
“3”:固定変数
【0025】
なお、上記の行列化(ステップS2)に付随する処理として、行列の要素を整理することにより行列内の情報を縮約する。
具体的には、i行j列の要素とj行i列の要素とを比較し、どちらかが“1”(:操作変数)である場合には二つの要素を“1”に統一し、どちらかが“3”(:固定変数)である場合には二つの要素を“3”に統一し、更に二つの要素がいずれも“2”(:従属変数)の場合には“2”のままとする。
上記の規則による縮約前後の行列を、図5に示す。
【0026】
次に、縮約後の行列に基づいて、エネルギー種別を決定する(ステップS3)。
プラントでは様々なエネルギー(例えば、電力、熱、蒸気、燃料など)を考慮する必要がある。そこで、このステップでは、以下の手順に従ってエネルギー種別を決定する。
機器種別として、エネルギー変換(例えば、電力,燃料から熱,蒸気への変換など)が行われない機器、エネルギー変換が行われる機器を予め区別しておき、この機器種別を属性データとして図2の外部記憶装置45に格納しておく。例えば、図3の例において、機器0、機器1、機器2、機器6は分配や合流等の和演算機能を有する機器であり、エネルギー変換が行われないので、その旨を機器種別として外部記憶装置45に格納しておく。また、ガスタービンやボイラ等、エネルギー変換が行われる機器については、その旨を機器種別として外部記憶装置45に格納しておく。
【0027】
次いで、縮約前の行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器、例えば図5の縮約後の行列における機器0に接続されている機器を抽出し、その機器に対応する行と列の成分すべてを列挙して同じエネルギー種別とする。次に、機器1に接続されている機器を抽出して同様の処理を行い、更に機器2、機器6についても同様の処理を行って複数の機器をエネルギー種別により分類する。
図3の接続関係において、変数の位置(i行j列)を位置(I,J)で表すものとすると、機器0と同じエネルギー種別である変数は(0,1)、(1,0)となる。また、機器1と同じエネルギー種別である変数は、(1,0)、(0,1)、(1,2)、(2,1)、(1,5)、(5,1)となる。さらに、機器2と同じエネルギー種別である変数は(2,1)、(1,2)、(2,3)、(3,2)、(2,4)、(4,2)となる。また、機器6と同じエネルギー種別である変数は、(6,3)、(3,6)、(6,4)、(4,6)、(6,7)、(7,6)となる。
よって、(0,1)、(1,0)、(1,2)、(1,5)、(2,1)、(2,3)、(2,4)、(3,2)、(4,2)、(5,1)が、同じエネルギー種別の変数となる。また、(3,6)、(4,6)、(6,3)、(6,4)、(6,7)、(7,6)が別の同じエネルギー種別となる。
【0028】
次に、操作変数情報を生成する(ステップS4)。
すなわち、行列の従属関係を取得し、操作変数である端子の計算の優先順序を求める。具体的には以下の手順を実行する。
始めに、縮約後の行列に着目し、要素に固定変数のみが含まれる行、つまり要素に“3”のみが含まれる行を検索する。そして、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。例えば、図6(a)において、要素に“3”のみが含まれる行は機器6の行(行番号6)であり、この行番号6と同じ列番号6の列内の要素を抽出する。これにより、列番号6内の二つの要素 “1”,“1”が抽出される。
【0029】
次いで、抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新する。また、行列を縮約する前の対称にある要素(例えば、1行2列にある要素に対して2行1列にある要素)も同様に既操作変数を示す“6”に更新する。
このとき、同じ列内に操作変数が複数あれば、その組を一つのグループとみなし、操作変数が存在する行番号、列番号から操作変数の位置(既操作変数の位置)を記憶する。
【0030】
図6(a)では、列番号6内に、操作変数に対応する二つの要素 “1”,“1”が抽出されたため、図6(b),(c)に示すようにこれら二つの要素を、既操作変数を示す“6”に更新すると共に、一つのグループとみなして操作変数の位置を記憶する。なお、図6(b),(c)の右側の操作変数情報の表に示すごとく、操作変数の位置(i行j列)を位置(I,J)で表すものとすると、既操作変数の“6”に更新された操作変数の位置は3行6列、4行6列の二つであるため、位置(I,J)は(3,6)及び(4,6)となる。
また、同じグループに属する操作変数は、計算の順序を同一(順序1)とする。
【0031】
次いで、要素に既操作変数を示す“6”のみが含まれる行を検索する。そして、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。例えば、図6(c)において、要素に“6”のみが含まれる行は行番号3,4であり、これらの行番号3,4と同じ列番号3,4の列内の要素を抽出する。これにより、列番号3,4内の二つの要素 “2”,“2”が抽出される。
【0032】
抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新する。また、行列を縮約する前の対称にある要素も同様に既操作変数を示す“6”に更新する。このとき、同じ列内に操作変数が複数あれば、その組を一つのグループとみなし、操作変数が存在する行番号、列番号から操作変数の位置(既操作変数の位置)を記憶する。
【0033】
図6(d)では、列番号3,4内に、従属変数に対応する二つの要素 “2”,“2”が抽出されたため、図6(d),(e)に示すようにこれら二つの要素を既操作変数を示す“6”に更新する。なお、ここで既操作変数“6”とした変数は従属変数であったので、操作変数の位置は記憶しない。
【0034】
以下同様にして、図7(a)〜(d)に示すごとく、要素に既操作変数を示す“6”のみが含まれる行を検索し、その行番号と同じ列番号の列内の要素を抽出する。そして、抽出された要素の中に従属変数に対応する“2”または操作変数に対応する“1”があれば、それぞれ既操作変数を示す“6”に更新し、既操作変数を示す“6”に更新した変数が操作変数である場合にのみ操作変数位置を記憶する。
このようにして、図7(d)の如く、すべての行列の要素が固定変数に対応する“3”または既操作変数に対応する“6”になったら、行列の要素の更新を終了する。
なお、上記の処理によって得られた操作変数情報は、外部記憶装置45に格納される。
【0035】
次に、優先パターン、優先順位を決定する(ステップS5)。ここで、優先パターンとは、各機器について優先的に運用するか否か(優先または非優先)を定めたパターンをいい、優先順位とは、各優先パターンにおいて各機器を運用する際の順位をいう。
前述したステップS3により得られたエネルギー種別と、ステップS4により得られた操作変数情報(図6,図7の右側の表)とを用いて、操作変数を有する機器の優先パターン及び優先順位を決定する。
【0036】
例えば、操作変数を有する機器が機器1〜機器5であり、そのうち三つの機器1〜機器3が同じグループ、残り二つの機器4,機器5が別のグループにある場合、エネルギー種別及び効率の逆数が図8のように表されているとする。なお、効率は通常、(出力/入力)として表されるが、ここでは演算の便宜上、効率の逆数である(入力/出力)を用いており、その値が小さいほど実際の効率が大きいものとする。
【0037】
優先パターンは、グループとエネルギー種別とのすべての組合せにより、図9に示すように4通り(優先パターン1〜4)が生成される。図9に示す優先パターン内の要素の「1」は優先、「−1」は非優先を示す。なお、機器1〜機器3は同じグループに属するが、エネルギー種別は機器1と機器2,3とで異なるため、機器1が優先または非優先の場合、機器2,3が非優先または優先の場合というように場合分けして優先パターンを生成した結果、図9のようになる。ここで、優先パターンの生成に当たっては、機器の効率を考慮しないものとする。
【0038】
次に、優先パターン1〜4のそれぞれにつき機器の優先順位を決定する。この優先順位は、各優先パターン内でグループごとに決定される。各優先パターンにおいて、優先である機器同士、または非優先である機器同士の順位付けは、効率の逆数の大小を比較して行う。
図9の優先パターン1〜4における機器の優先順位を決定すると、図10のようになる。
【0039】
図3に示した例では、操作変数を有する機器は機器3及び機器4であり、機器3及び機器4はグループ及びエネルギー種別が同じであるため、優先パターンは設定せず、機器の効率によって優先順位が決定される。仮に、図3における機器3のほうが機器4よりも効率の逆数が小さい(実際の効率が大きい)とすると、機器3,4の優先順位は図11の1パターンのみとなる。
【0040】
次に、操作変数値を計算する(ステップS6)。
ステップS5により求めた機器の優先順位に基づき、操作変数値を計算することにより初期解を生成する。操作変数値の計算の方針は、効率の逆数が小さい操作変数から優先的に、与えられた端子値を按分していくことである。ここで、端子値とは、操作変数に接続されている既知の固定変数または計算済みの従属変数もしくは操作変数をいう。図3の例では、機器7の固定変数が端子値に相当しており、例えば電気負荷予測値、熱負荷予測値等である。
【0041】
このとき、端子値(上記の例では固定変数値)を複数の操作変数に按分して操作変数値を求める手順は、以下のとおりである。
機器7の固定変数の端子値が機器6の右側の従属変数の端子値となり、機器6は先に記載したように和演算機能を有する機器であるため、機器6の左側の従属変数の端子に按分される端子値は、機器7の固定変数の端子値となる。よって、機器7の固定変数の端子値が、そのまま機器3及び機器4に按分されることとなる。
図11に示したように、図3の機器3が優先順位1番目、機器4が優先順位2番目であるとすると、優先順位1番目の機器3の操作変数(機器3の右側の端子)に対しては、
・固定変数値(機器7の固定変数値)≧機器3の操作変数の定格値である場合、操作変数=定格値とする。
・固定変数値(機器7の固定変数値)<機器3の操作変数の上限値である場合、操作変数=端子値とする。
【0042】
優先順位2番目の機器4の操作変数(機器4の右側の端子)に対しては、
端子値’=固定変数値(機器7の固定変数値)−計算済みの操作変数値の和(機器3の操作変数に割り当てられた変数値)
として端子値を端子値’に更新し、優先順位1番目の場合と同様に、
・端子値’≧機器4の操作変数の定格値である場合、操作変数=定格値とする。
・端子値’<機器4の操作変数の上限値である場合、操作変数=端子値’とする。
【0043】
このようにして操作変数値を計算していき、端子値’が0になれば、一つのグループにおける操作変数値の計算、つまり端子値の按分は終了したことになり、その後、他のグループの操作変数値の計算に移行する。この時、計算されなかった操作変数値は0となる。
以上の手順を、すべての計画点、すべての優先パターンにおける操作変数につき実行して処理を終了する(ステップS7,S8)。
【0044】
上述した一連の処理により、グループ及びエネルギー種別に応じて優先パターンが複数生成されるので、初期解としては複数個分生成される。なお、これらの初期解は効率の大小によって優先順位が決定され、優先順位が高いほど、按分される値が大きくなる。
これらの複数個生成された初期解を用いて既存のメタヒューリスティック手法における探索を実行することにより、実用的な時間内でプラントの最適運用計画を生成することができる。
【0045】
なお、図13は、本実施形態に係る初期解生成装置の構成図であり、前述した図2のコンピュータシステムにおいて、図1の初期解生成機能22を実現する部分を中心にして表したものである。
図13において、50は前記CPU41等からなる演算処理装置であり、51は前記ステップS1〜S8を実行するためのプログラムである。
演算処理装置50は、プログラム51に従った演算処理により、前記ステップS1〜S6にそれぞれ相当する定式化手段511、接続関係生成手段512、エネルギー種別決定手段513、操作変数情報生成手段514、優先順位決定手段515、操作変数値計算手段516として機能する。なお、52は図2における入力装置43及び出力装置44に相当する入出力装置、53は同じくメモリ42及び外部記憶装置45に相当する記憶装置である。
【符号の説明】
【0046】
10: プラントモデルエンジニアリング手段
20:最適運用システム
21:シミュレータ
22:初期解生成機能
23:最適化機能
24:結果出力機能
30:最適化結果
41:CPU
42:メモリ
43:入力装置
44:出力装置
45:外部記憶装置
46:通信装置
47:バス
50:演算処理装置
51:プログラム
511:定式化手段
512:接続関係生成手段
513:エネルギー種別決定手段
514:操作変数情報生成手段
515:優先順位決定手段
516:操作変数値計算手段
52:入出力装置
53:記憶装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する第1ステップと、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する第2ステップと、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定する第3ステップと、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する第4ステップと、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する第5ステップと、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する第6ステップと、
を有することを特徴とする初期解生成方法。
【請求項2】
プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する装置において、
前記コンピュータシステムは、演算処理装置、及びこの演算処理装置により実行されるプログラム、入出力装置、記憶装置を少なくとも備え、
前記演算処理装置は、前記プログラムに従った演算処理により、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する定式化手段、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する接続関係生成手段、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定するエネルギー種別決定手段、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する操作変数情報生成手段、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する優先順位決定手段、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する操作変数値計算手段、
として機能することを特徴とする初期解生成装置。
【請求項1】
プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する方法において、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する第1ステップと、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する第2ステップと、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定する第3ステップと、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する第4ステップと、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する第5ステップと、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する第6ステップと、
を有することを特徴とする初期解生成方法。
【請求項2】
プラントを構成する複数の機器の起動・停止状態及び出力を含む運用値を、コンピュータシステムを用いてメタヒューリスティック手法により決定する最適化問題の初期解を生成する装置において、
前記コンピュータシステムは、演算処理装置、及びこの演算処理装置により実行されるプログラム、入出力装置、記憶装置を少なくとも備え、
前記演算処理装置は、前記プログラムに従った演算処理により、
前記プラントの運用コストの最小化を目的関数とし、予め設定された入出力エネルギーを変数として表現した前記機器の入出力モデル、所定の制約条件、機器同士の接続関係からプラントモデルを定式化する定式化手段、
前記機器の接続関係を、前記機器の入出力モデルの変数に対して、最適化により決定される未知の操作変数、予め設定される固定変数、この操作変数または固定変数に応じて決定される従属変数、を割り当て、各変数を要素に持つ行列として生成する接続関係生成手段、
前記行列に基づいて、エネルギー変換が行われない機器の変数と、当該エネルギー変換が行われない機器の変数に接続されている他の機器の変数とを、同一のエネルギー種別を持つ変数として決定するエネルギー種別決定手段、
前記行列の各要素に基づいて、前記固定変数から全ての変数を求める計算順序を求め、前記操作変数の計算の優先順位と前記行列内の位置とを含む、操作変数情報を生成する操作変数情報生成手段、
前記エネルギー種別、前記操作変数情報、及び、機器の効率に基づいて、前記操作変数を持つ機器の優先順位を決定する優先順位決定手段、
前記操作変数情報に基づく計算順序に従い、前記優先順位の高い機器から、前記機器の入出力モデルに基づいて前記制約条件を満たす操作変数値を順に計算して前記初期解を生成する操作変数値計算手段、
として機能することを特徴とする初期解生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−190300(P2012−190300A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53855(P2011−53855)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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