説明

判別装置、判別方法およびプログラム

【課題】学習判別システムにおいて演算量の少ない学習および判別を行う。
【解決手段】学習フェーズにおいて、学習画素超球面写像部110は、肌のみを撮像した画像を取得して色の特徴空間に写像した上で単位肌ベクトルuとして超球面上へ写像する。超平面設定部130は、単位肌ベクトルuの各々の平均ベクトルm'またはmを法線ベクトルとして有する超平面を設定する。学習画素次元圧縮部140は、単位肌ベクトルuの各々を超平面φに射影し、さらに超平面φの基底ベクトルに射影して射影肌ベクトルy'とする。判別境界設定部160は、「肌」と「肌以外のもの」とを判別するための判別境界の閾値Kを設定する。設定された超平面φ、超平面φの基底ベクトル、判別境界の閾値Kは、判別フェーズにおいても使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習判別システムに関し、特に予め学習を行い、判別対象が集合に属するか否かを判別する判別装置、および、これらにおける処理方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パターン認識技術においては、特徴空間内の学習データの捉え方によって様々な手法が提案されている。特に、テンプレートマッチング法では、クラス(カテゴリー)毎のまとまりを1つの代表ベクトル(テンプレート)により表現し、入力ベクトルと各クラスの代表ベクトルとの距離や類似度を評価することにより、最も近いクラスが識別される。代表ベクトルを求める学習フェーズにおいては、各クラスに属する学習データの分布から、クラス毎の平均ベクトルが求められる。また、入力をクラス分けする判別フェーズにおいては、クラス毎の平均ベクトルとの間のユークリッド空間が利用される(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】麻生英樹、津田宏治、村田昇著「パターン認識と学習の統計学」、岩波書店、2003年4月、p.12−16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、特徴空間におけるデータの分布によって、学習フェーズや判別フェーズにおいて多くの演算量を必要とし、そのために処理時間を要するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、学習判別システムにおいて演算量の少ない学習および判別を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位学習ベクトルに変換することにより上記学習情報の各々を超球面上へ写像する学習情報写像部と、上記単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定部と、上記単位学習ベクトルの各々を上記超平面に射影した上で上記超平面の基底ベクトルに射影した射影学習ベクトルとすることにより上記学習情報の次元を圧縮する学習情報次元圧縮部と、上記射影学習ベクトルの各々の分布から上記学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定部と、判別対象情報を上記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより上記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像部と、上記単位判別対象ベクトルを上記超平面に射影した上で上記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより上記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮部と、上記射影判別対象ベクトルについて上記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別部とを具備する判別装置、その処理方法および処理手順を実行するためのプログラムである。これにより、学習情報を超球面上へ写像して、学習および判別における演算量を減少させるという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記超平面設定部は、上記特徴空間の原点を通るように上記超平面を設定してもよい。これにより、特定の項がゼロになり、さらに演算量を減少させるという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記学習情報次元圧縮部は、上記超平面に射影された上記単位学習ベクトルの各々に対する主成分分析により上記超平面の上記基底ベクトルを生成してもよい。これにより、主成分分析を通じて基底ベクトルを生成させるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記判別境界設定部は、上記射影学習ベクトルの各々のマハラノビス距離に基づいて上記判別境界を設定するようにしてもよい。これにより、さらに演算量を減少させるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記学習情報および上記判別対象情報は物体に関する色情報であり、上記判別境界は上記物体を判別するための境界とすることができる。
【0011】
また、本発明の第2の側面は、第1の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第1の単位学習ベクトルに変換することにより上記第1の学習情報の各々を超球面上へ写像する第1の学習情報写像部と、上記第1の学習情報と背反する第2の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第2の単位学習ベクトルに変換することにより上記第2の学習情報の各々を超球面上へ写像する第2の学習情報写像部と、上記第1の単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定部と、上記第1の単位学習ベクトルの各々を上記超平面に射影した上で上記超平面の基底ベクトルに射影した第1の射影学習ベクトルとすることにより上記第1の学習情報の次元を圧縮する第1の学習情報次元圧縮部と、上記第2の単位学習ベクトルの各々を上記超平面に射影した上で上記超平面の基底ベクトルに射影した第2の射影学習ベクトルとすることにより上記第2の学習情報の次元を圧縮する第2の学習情報次元圧縮部と、上記第1および第2の射影学習ベクトルの各々の分布から上記第1および第2の学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定部と、判別対象情報を上記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより上記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像部と、上記単位判別対象ベクトルを上記超平面に射影した上で上記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより上記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮部と、上記射影判別対象ベクトルについて上記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別部とを具備する判別装置、その処理方法および処理手順を実行するためのプログラムである。これにより、互いに背反する2種類の学習情報を超球面上へ写像して、学習および判別における演算量を減少させるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、学習判別システムにおいて演算量の少ない学習および判別を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の適用イメージの例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における判別装置の学習機能構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における肌ベクトル520(s)および肌集合530の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における単位肌ベクトル540(u)、超球面550および平均ベクトル560(m')の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における単位平均ベクトル561(m)および超平面570(φ)の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における基底ベクトル580(ei)、射影肌ベクトル590(y')および判別境界600の一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における判別装置の判別機能構成の一例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における入力ベクトル620(x)の一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における単位入力ベクトル640(ux)および超球面650の一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における超平面670(φ)、基底ベクトル680(ei)および射影入力ベクトル690(z')の一例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における学習フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における判別フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における判別装置の学習機能構成の一例を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における肌ベクトル520(s)、非肌ベクトル525(p)および肌集合530の一例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における単位肌ベクトル540(u)、単位非肌ベクトル545(q)、超球面550および平均ベクトル560(m')の一例を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態における単位平均ベクトル561(m)および超平面570(φ)の一例を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における基底ベクトル580(ei)、射影肌ベクトル590(y')、射影非肌ベクトル595(r')および判別境界600の一例を示す図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態における学習フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(学習画素として肌色画素のみを用いた例)
2.第2の実施の形態(学習画素として肌色画素および非肌色画素を用いた例)
3.変形例
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の適用イメージの例を示す図である。撮像装置20によって人11を含む被写体を撮像する場合、人11の肌部分を正確に判断できれば、撮像装置20や他の装置によるポスト処理において、肌色補正などを的確に施すことが可能となる。人11は、顔、手、腕、足などにおいて、少なくとも一部の肌が露出しているものとする。
【0016】
しかしながら、被写体には人11以外の物体が含まれることがある。同図の例では、人11以外の物体として、犬12およびポスター13が示されている。犬12は、肌の色に近い色あいをした動物の一例として示されている。ポスター13には、人の顔や顔以外の肌が印刷されているものとする。本発明の実施の形態では、人11の肌の露出している部分を「肌」と判別し、それ以外の犬12およびポスター13のような物体を「肌ではない」と判別する。
【0017】
なお、判別結果は、表示画面においてユーザに明示的に提示されてもよく、また、他のソフトウェア処理のための付加情報として間接的に提示されてもよい。前者の場合には、肌と判別された部分を撮像画像上において強調表示することが考えられる。後者の場合には、肌と判別された撮像画像上の座標位置をメタデータとして画像ファイルに格納することが考えられる。
【0018】
ここで、撮像装置20における撮像素子の前面に配置されるカラーフィルタとして、赤(R)、緑(G)、青(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)および黄(Y)の6色を想定する。撮像素子の1つの画素には何れか1色のカラーフィルタが配置されるが、デモザイク処理を経ることによって各画素について6色の色情報を揃えることができる。これにより、任意の画素xiは、色の特徴空間における座標(Ri、Gi、Bi、Ci、Mi、Yi)に写像される。
【0019】
<1.第1の実施の形態>
本発明の実施の形態は、肌ベクトルの判別境界を学習するための学習フェーズと、判別対象画素が肌であるか否かを判別境界に基づいて判別する判別フェーズの2段階からなる。
【0020】
なお、学習フェーズは、判別フェーズに先立って予め実行される。学習フェーズにおいて、超平面を定める法線ベクトルが決定される。さらに、この学習フェーズにおいて、超平面の基底および判別境界が決定される。これら法線ベクトル、超平面の基底および判別境界を利用することにより、判別フェーズにおいて判別対象画素が肌であるか否かが判別される。
【0021】
[判別装置の学習機能構成例]
図2は、本発明の第1の実施の形態における判別装置の学習機能構成の一例を示す図である。この学習機能構成は、学習画素超球面写像部110と、超平面設定部130と、学習画素次元圧縮部140と、判別境界設定部160とを備えている。
【0022】
学習画素超球面写像部110は、肌のみを撮像した画像を取得して色の特徴空間に写像した上で超球面上へ写像するものである。この学習画素超球面写像部110は、特徴空間写像部111と、単位ベクトル変換部112とを備えている。なお、学習画素超球面写像部110は、特許請求の範囲に記載の学習情報写像部の一例である。
【0023】
特徴空間写像部111は、肌であるという事象を生起する画素を学習情報として入力して、図3に示すように、色の特徴空間510における座標(Ri、Gi、Bi、Ci、Mi、Yi)に写像するものである。学習情報としての画素は一般に複数入力される。特徴空間に写像された各学習情報を、ここでは具体的に肌ベクトル520(s)として表す。また、この肌ベクトル520(s)の集合を肌集合530として表す。なお、肌ベクトル520(s)は、6色に対応する要素s1乃至s6により、次式のように表される。
s=[s123456
【0024】
単位ベクトル変換部112は、肌ベクトル520(s)の集合の各々を、大きさ「1」の単位ベクトルに変換するものである。この単位ベクトル変換部112によって変換された肌ベクトルは、図4に示すように、単位肌ベクトル540(u)として表される。この単位肌ベクトル540(u)は、次式により算出される。なお、||s||は肌ベクトル520(s)の大きさを表す。
u=s/||s||
【0025】
この単位肌ベクトル540(u)は単位ベクトルであるから、全て超球面550上に写像されることになる。なお、ここでは、単位ベクトルを便宜上、大きさ「1」として扱ったが、それぞれが等しい所定の長さであればよく、その場合にも超球面550上に写像される。
【0026】
超平面設定部130は、単位肌ベクトル540(u)の各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定するものである。この超平面設定部130は、平均ベクトル生成部131と、単位ベクトル変換部132と、超平面生成部133とを備えている。
【0027】
平均ベクトル生成部131は、図4に示すように、単位肌ベクトル540(u)の各々の平均ベクトル560(m')を生成するものである。この平均ベクトル560(m')は、次式により算出される。ただし、kは肌集合530の要素数である。
【数1】

【0028】
単位ベクトル変換部132は、平均ベクトル560(m')を大きさ「1」の単位ベクトルに変換するものである。この単位ベクトル変換部132により変換される平均ベクトルmは次式により算出される。
m=m'/||m'||
【0029】
超平面生成部133は、図5に示すように、単位平均ベクトル(m)を法線ベクトルとして有する超平面570(φ)を生成するものである。この超平面570(φ)は、特徴空間510の原点を通るように設定されると、特定の項がゼロになるため、演算を簡略化することができる。なお、単位平均ベクトル561(m)の代わりに、単位ベクトルに変換する前の平均ベクトル560(m')を用いることも可能である。この超平面生成部133によって設定された超平面φに関する情報は、信号線139によって判別機能に伝達される。
【0030】
学習画素次元圧縮部140は、単位肌ベクトル540(u)の各々を超平面570(φ)に射影し、さらに超平面570(φ)の基底ベクトルに射影して射影学習ベクトルとするものである。この学習画素次元圧縮部140により、学習情報としての次元が圧縮される。この学習画素次元圧縮部140は、超平面射影部141と、主成分分析部142と、基底射影部143とを備えている。なお、学習画素次元圧縮部140は、特許請求の範囲に記載の学習情報次元圧縮部の一例である。
【0031】
超平面射影部141は、図6に示すように、単位肌ベクトル540(u)の各々を超平面570(φ)に射影するものである。超平面上の任意の点としての単位肌ベクトル540(u)を、任意の点Xoを通る超平面570(φ)上の肌ベクトルyとして正射影する場合、肌ベクトルyは次式により算出される。
y=u−(m・(u−Xo)/||m||2)m
上述のように、超平面570(φ)は、特徴空間510の原点を通るように設定された場合、Xo=0である。また、超平面の半径が「1」のとき、||m||=1である。したがって、上式は、次式のように簡略化できる。
y=u−(m・u)m
【0032】
また、超平面射影部141において、次のように正射影とは異なる射影を行うことも可能である。超平面が空間内の任意の点Xoを通る場合には、次式により肌ベクトルyを求めることができる。
y=(m・(Xo−u)/(m・u))u+u
一方、超球面が平均ベクトルmの示す点において超球面と接する場合には、次式により肌ベクトルyを求めることができる。
y=((||m||2−m・u)/(m・u))u+u
【0033】
主成分分析部142は、肌ベクトルyの集合を主成分分析にかけることにより、図6のように、超平面の基底ベクトル580(ei(iは1から5の整数))を求めるものである。主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)とは、変数間の関係から主成分を求め、変数の次元を圧縮する手法である。この主成分分析の結果、固有値と固有ベクトルが得られる。固有値を降順に並べた際の、固有値の最も大きなものに対応する固有ベクトルが、最も分散の多い方向のベクトルになる。そして、2番目以降の固有ベクトルはそれぞれ直交する性質を有するため、これらを基底ベクトル580(ei)として用いることができる。この基底ベクトル580(ei)は、信号線149によって判別機能に伝達される。
【0034】
基底射影部143は、肌ベクトルyを各基底ベクトル580(ei)に射影して、図6に示すように、射影肌ベクトル590(y')とするものである。これにより、特徴空間座標系で表現されていた肌ベクトルyを、超平面φの座標系の射影肌ベクトル590(y')として表現できるようになる。これは次式により表される。
y'=ei・y
y'=[y'1 y'2 y'3 y'4 y'5
【0035】
なお、超平面φ座標の原点は、特徴空間座標の原点と一致させてよい。
【0036】
判別境界設定部160は、図6に示すように、「肌」と「肌以外のもの」とを判別するための判別境界600を設定するものである。この判別境界設定部160は、マハラノビス距離生成部161と、閾値決定部163とを備えている。
【0037】
マハラノビス距離生成部161は、射影肌ベクトル590(y')の各々について原点からのマハラノビス距離L(y')を生成するものである。マハラノビス距離L(y')を採用するのは、射影肌ベクトル590(y')の集合の分布の偏りをなくし、分布を等方的にするためである。マハラノビス距離L(y')は、次式により生成される。ただし、σiは、射影肌ベクトル590(y')の集合における標準偏差である。
【数2】

【0038】
閾値決定部163は、マハラノビス距離L(y')の集合の分布から、判別の際の閾値Kを決定するものである。ここでは、肌の分布をガウス分布と仮定して、射影肌ベクトル590(y')の集合の9割5分を含むよう、2σに相当するマハラノビス距離L(y')を閾値Kとして設定することを想定する。この閾値Kは、信号線169によって判別機能に伝達される。
【0039】
[判別装置の判別機能構成例]
図7は、本発明の第1の実施の形態における判別装置の判別機能構成の一例を示す図である。この判別機能構成は、判別画素超球面写像部210と、判別画素次元圧縮部240と、境界判別部260とを備えている。
【0040】
判別画素超球面写像部210は、判別対象となる画素を取得して色の特徴空間に写像した上で超球面上へ写像するものである。この判別画素超球面写像部210は、特徴空間写像部211と、単位ベクトル変換部212とを備えている。なお、判別画素超球面写像部210は、特許請求の範囲に記載の判別対象情報写像部の一例である。
【0041】
特徴空間写像部211は、判別対象となる画素を入力して、図8に示すように、色の特徴空間610における座標(Ri、Gi、Bi、Ci、Mi、Yi)に写像するものである。ここでは、写像されたベクトルを入力ベクトル620(x)として表す。この特徴空間610は、学習機能における特徴空間510と同じ空間である。なお、入力ベクトル620(x)は、6色に対応する要素x1乃至x6により、次式のように表される。
x=[x123456
【0042】
単位ベクトル変換部212は、入力ベクトル620(x)を、大きさ「1」の単位ベクトルに変換するものである。この単位ベクトル変換部212によって変換された入力ベクトルは、図9に示すように、単位入力ベクトル640(ux)として表される。この単位入力ベクトル640(ux)は、次式により算出される。
ux=x/||x||
【0043】
この単位入力ベクトル640(ux)は単位ベクトルであるから、全て超球面650上に写像されることになる。なお、ここでは、単位ベクトルを便宜上、大きさ「1」として扱ったが、それぞれが等しい所定の長さであればよく、その場合にも超球面650上に写像される。
【0044】
判別画素次元圧縮部240は、単位入力ベクトル640(ux)を超平面670(φ)に射影し、さらに超平面670(φ)の基底ベクトルに射影して射影入力ベクトルとするものである。この判別画素次元圧縮部240により、判別対象の次元が圧縮される。この判別画素次元圧縮部240は、超平面射影部241と、基底射影部243とを備えている。なお、判別画素次元圧縮部240は、特許請求の範囲に記載の判別対象情報次元圧縮部の一例である。
【0045】
超平面射影部241は、図10に示すように、単位入力ベクトル640(ux)を超平面670(φ)に射影するものである。超平面670(φ)は学習機能における超平面570(φ)と同じものであり、超平面570(φ)に関する情報は信号線139によって供給される。この超平面射影部241により射影される入力ベクトルzは、次式により算出される。
z=ux−(m・ux)m
【0046】
基底射影部243は、入力ベクトルzを各基底ベクトル680(ei)に射影して、図10に示すように、射影入力ベクトル690(z')とするものである。基底ベクトル680(ei)は、学習機能における基底ベクトル580(ei)と同じものであり、信号線149により供給される。この射影により、特徴空間座標系で表現されていた入力ベクトルzを、超平面φの座標系の射影入力ベクトル690(z')として表現できるようになる。これは次式により表される。
z'=ei・z
z'=[z'1 z'2 z'3 z'4 z'5
【0047】
境界判別部260は、「肌」であるか「肌以外のもの」であるかを判別するものである。この境界判別部260は、マハラノビス距離生成部261と、閾値判別部263とを備えている。
【0048】
マハラノビス距離生成部261は、射影入力ベクトル690(z')について原点からのマハラノビス距離L(z')を生成するものである。このマハラノビス距離L(z')は、学習機能における射影肌ベクトル590(y')と同様の式により算出される。
【0049】
閾値判別部263は、マハラノビス距離L(z')と閾値Kとの関係から、「肌」であるか「肌以外のもの」であるかを判別するものである。ここで、閾値Kは、学習機能において決定されたものであり、信号線169により供給される。この閾値判別部263において、マハラノビス距離L(z')が閾値K未満であれば、入力xに対応する画素を「肌」であると判別する。一方、マハラノビス距離L(z')が閾値K以上の場合は、入力xに対応する画素を「肌以外のもの」であると判別する。
【0050】
[学習フェーズの処理手順例]
図11は、本発明の第1の実施の形態における学習フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【0051】
まず、肌のみを撮影した肌画像が取得されると(ステップS911)、特徴空間写像部111は肌画像を肌ベクトル520(s)として特徴空間510に写像する(ステップS912)。また、単位ベクトル変換部112は、肌ベクトル520(s)の集合の各々を、単位肌ベクトル540(u)に変換する(ステップS913)。
【0052】
そして、平均ベクトル生成部131は、単位肌ベクトル540(u)の各々の平均ベクトル560(m')を生成する(ステップS914)。単位ベクトル変換部132は、平均ベクトル560(m')を単位平均ベクトル561(m)に変換する(ステップS915)。これら平均ベクトル560(m')または単位平均ベクトル561(m)により超平面が設定される。この超平面570(φ)は、特徴空間510の原点を通るように設定される。
【0053】
超平面射影部141は、単位肌ベクトル540(u)の各々を超平面570(φ)に射影して肌ベクトルyとする(ステップS916)。また、主成分分析部142は、肌ベクトルyの集合を主成分分析にかけることにより、超平面の基底ベクトル580(ei)を生成する(ステップS917)。そして、基底射影部143は、肌ベクトルyを各基底ベクトル580(ei)に射影して、射影肌ベクトル590(y')とする(ステップS918)。
【0054】
そして、マハラノビス距離生成部161は、全教師データとして射影肌ベクトル590(y')の各々について原点からのマハラノビス距離L(y')を生成する(ステップS919)。そして、閾値決定部163は、マハラノビス距離L(y')の集合の分布から、判別の際の閾値Kを決定する(ステップS920)。
【0055】
なお、この実施の形態において、ステップS912、S913は、特許請求の範囲に記載の学習情報写像手順の一例である。また、ステップS914、S915は、特許請求の範囲に記載の超平面設定手順の一例である。また、ステップS916〜S918は、特許請求の範囲に記載の学習情報次元圧縮手順の一例である。また、ステップS919、S920は、特許請求の範囲に記載の判別境界設定手順の一例である。
【0056】
[判別フェーズの処理手順例]
図12は、本発明の第1の実施の形態における判別フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【0057】
まず、判別画素超球面写像部210は、判別対象となる画素を入力ベクトル620(x)として、色の特徴空間610に写像する(ステップS931)。単位ベクトル変換部212は、入力ベクトル620(x)を、単位入力ベクトル640(ux)に変換する(ステップS932)。
【0058】
そして、超平面射影部241は、単位入力ベクトル640(ux)を超平面670(φ)に射影する(ステップS933)。なお、超平面670(φ)は学習フェーズにおける超平面570(φ)と同じものである。基底射影部243は、入力ベクトルzを各基底ベクトル680(ei)に射影して、射影入力ベクトル690(z')とする(ステップS934)。なお、基底ベクトル680(ei)は、学習フェーズにおける基底ベクトル580(ei)と同じものである。
【0059】
そして、マハラノビス距離生成部261は、射影入力ベクトル690(z')について原点からのマハラノビス距離L(z')を生成する(ステップS935)。そして、閾値判別部263において、マハラノビス距離L(z')と閾値Kとの関係から、「肌」であるか「肌以外のもの」であるかが判別される。すなわち、マハラノビス距離L(z')が閾値K未満であれば(ステップS936)、入力xに対応する画素は「肌」であると判別される(ステップS937)。一方、マハラノビス距離L(z')が閾値K以上の場合は(ステップS936)、入力xに対応する画素は「肌以外のもの」であると判別される(ステップS938)。
【0060】
画像中から肌領域を見つける場合は、上述の1画素単位の肌判別の処理手順をラインスキャン順に順番に繰り返し実行することにより、画像中の肌領域を特定することが可能である。
【0061】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、肌画像を学習情報として超球面550に写像した後に超平面570を設定し、超平面570の基底ベクトル580が生成される。学習情報が基底ベクトル580に写像された後にマハラノビス距離の集合の分布から、判別の際の閾値Kが決定される。判別対象についても基底ベクトル680に写像された後にマハラノビス距離が生成され、閾値Kとの関係により「肌」であるか「肌以外のもの」であるかが判別される。
【0062】
なお、この実施の形態において、ステップS931、S932は、特許請求の範囲に記載の判別対象情報写像手順の一例である。また、ステップS933、S934は、特許請求の範囲に記載の判別対象情報次元圧縮手順の一例である。また、ステップS935〜S938は、特許請求の範囲に記載の境界判別手順の一例である。
【0063】
この第1の実施の形態では一つの事象を学習情報として用いたが、以下の第2の実施の形態では背反する2つの事象を学習情報として用いる例について説明する。
【0064】
<2.第2の実施の形態>
[判別装置の学習機能構成例]
図13は、本発明の第2の実施の形態における判別装置の学習機能構成の一例を示す図である。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態の学習画素超球面写像部110が事象生起学習画素超球面写像部110として機能し、第1の実施の形態の学習画素次元圧縮部140が事象生起学習画素次元圧縮部140として機能する。また、第1の実施の形態に加えて、事象非生起学習画素超球面写像部120と、事象非生起学習画素次元圧縮部150とを備えている。
【0065】
事象生起学習画素超球面写像部110は、「肌」であるという事象が生起した画素を学習情報とするものであり、肌のみを撮像した画像を取得して色の特徴空間に写像した上で超球面上へ写像するものである。機能上は上述の第1の実施の形態の学習画素超球面写像部110と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、事象生起学習画素超球面写像部110は、特許請求の範囲に記載の第1の学習情報写像部の一例である。
【0066】
事象非生起学習画素超球面写像部120は、「肌」であるという事象が生起しない画素を学習情報とするものであり、肌以外を撮像した画像を取得して色の特徴空間に写像した上で超球面上へ写像するものである。この事象非生起学習画素超球面写像部120は、特徴空間写像部121と、単位ベクトル変換部122とを備えている。なお、事象非生起学習画素超球面写像部120は、特許請求の範囲に記載の第2の学習情報写像部の一例である。
【0067】
特徴空間写像部121は、「肌」であるという事象を生起しない画素を学習情報として入力して、図14に示すように、色の特徴空間510における座標(Ri、Gi、Bi、Ci、Mi、Yi)に写像するものである。学習情報としての画素は一般に複数入力される。「肌」であるという事象を生起しない画素について特徴空間に写像された各学習情報を、ここでは具体的に非肌ベクトル525(p)として表す。
【0068】
単位ベクトル変換部122は、非肌ベクトル525(p)の集合の各々を、大きさ「1」の単位ベクトルに変換するものである。この単位ベクトル変換部122によって変換された非肌ベクトルは、図15に示すように、単位非肌ベクトル545(q)として表される。
【0069】
超平面設定部130は、図16のように、単位肌ベクトル540(u)の各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面570を設定するものである。機能上は上述の第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
事象生起学習画素次元圧縮部140は、単位肌ベクトル540(u)の各々を超平面570(φ)に射影し、さらに超平面570(φ)の基底ベクトルに射影して射影学習ベクトルとするものである。機能上は上述の第1の実施の形態の学習画素次元圧縮部140と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、事象生起学習画素次元圧縮部140は、特許請求の範囲に記載の第1の学習情報次元圧縮部の一例である。
【0071】
事象非生起学習画素次元圧縮部150は、単位非肌ベクトル545(q)の各々を超平面570(φ)に射影し、さらに超平面570(φ)の基底ベクトルに射影して射影学習ベクトルとするものである。この事象非生起学習画素次元圧縮部150は、超平面射影部151と、基底射影部153とを備えている。なお、事象非生起学習画素次元圧縮部150は、特許請求の範囲に記載の第2の学習情報次元圧縮部の一例である。
【0072】
超平面射影部151は、図17に示すように、単位非肌ベクトル545(q)の各々を超平面570(φ)に射影するものである。この超平面射影部151により射影される非肌ベクトルrは、次式により算出される。
r=q−(m・q)m
【0073】
基底射影部153は、非肌ベクトルrを各基底ベクトル580(ei)に射影して、図17に示すように、射影非肌ベクトル595(r')とするものである。これにより、特徴空間座標系で表現されていた非肌ベクトルrを、超平面φの座標系の射影非肌ベクトル595(r')として表現できるようになる。これは次式により表される。
r'=ei・r
r'=[r'1 r'2 r'3 r'4 r'5
【0074】
なお、第1の実施の形態と同様に、超平面φ座標の原点は特徴空間座標の原点と一致させてよい。
【0075】
判別境界設定部160は、「肌」と「肌以外のもの」とを判別するための判別境界を設定するものである。この判別境界設定部160は、マハラノビス距離生成部161および162と、閾値決定部164とを備えている。
【0076】
マハラノビス距離生成部161は、射影肌ベクトル590(y')の各々について原点からのマハラノビス距離L(y')を生成するものである。マハラノビス距離生成部162は、射影非肌ベクトル595(r')の各々について原点からのマハラノビス距離L(r')を生成するものである。マハラノビス距離の生成式については上述の第1の実施の形態と同様である。
【0077】
閾値決定部164は、マハラノビス距離L(y')およびL(r')の集合の分布から、判別の際の閾値Kを決定するものである。以下、ベイズ決定則により閾値Kを決定する手法について説明する。
【0078】
距離Lの位置に写された入力が肌であるとき、その状態をωsとする。入力が肌以外であるとき、その状態をωnとする。判別器が入力を「肌」であると判別することをαs、「肌以外」であると判別することをαnと表現する。このとき、損失は次のように与えられる。
ωsであったとき;
判別器がαsと判別する時に生じる損失λss=λ(αs|ωs)
判別器がαnと判別する時に生じる損失λns=λ(αn|ωs)
ωnであったとき;
判別器がαsと判別する時に生じる損失λsn=λ(αs|ωn)
判別器がαnと判別する時に生じる損失λnn=λ(αn|ωn)
【0079】
したがって、距離Lの位置に写像された入力を、「肌」または「肌以外」と判別するとき、それぞれのベイズリスクR(αs|L)およびR(αn|L)は次式により与えられる。
R(αs|L)=λ(αs|ωs)P(ωs|L)
+λ(αs|ωn)P(ωn|L)
R(αn|L)=λ(αn|ωs)P(ωs|L)
+λ(αn|ωn)P(ωn|L)
【0080】
決定境界である閾値Kは、R(αs|L)=R(αn|L)となるLに等しい。したがって、閾値Kは、以下の評価関数F(L)の評価値が0になるときの距離Lとして決定することができる。
F(L)=λ(αn|ωs)P(ωs|L)+λ(αn|ωn)P(ωn|L)
−λ(αs|ωs)P(ωs|L)−λ(αs|ωn)P(ωn|L)
【0081】
上式は、ベイズの公式により、次式のように書き換えることによって解くことが可能になる。
F'(L)={λ(αn|ωs)−λ(αs|ωs)}P(L|ωs)P(ωs)
−{λ(αs|ωn)−λ(αn|ωn)}P(L|ωn)P(ωn)
ここで、F'(L)=F(L)/P(L)である。
【0082】
また、P(ωs)およびP(ωn)は、それぞれ、入力が「肌」および「肌以外」のものである事前確率である。この値は、ユーザの利用傾向から定めるか、または、P(ωs)=P(ωn)とする。
【0083】
また、P(L|ωs)およびP(L|ωn)は、次式により与えられる。
P(L|ωs)=#skin(L)/#skin_total
P(L|ωn)=#non_skin(L)/#non_skin_total
ここで、#skin(L)は、マハラノビス距離Lの位置に存在する肌集合の要素数である。#skin_totalは、肌集合の全要素数である。#non_skin(L)は、マハラノビス距離Lの位置に存在する肌以外の物体集合の要素数である。#non_skin_totalは、肌以外の物体集合の全要素数である。
【0084】
肌と肌以外の物体の判別の場合、十分な数の教師データを用いることで、F'(L)の関数は滑らかになり、F'(L)=0となるLは1つに定まる。決定境界を示す閾値Kは、評価関数F'(L)の評価値が0になるときの距離Lである。
【0085】
なお、ここでは、決定境界を1つとしたため、F'(L)=0となるLは1つに定まるものとしたが、決定境界を複数用意することも可能である。例えば、区間ごとに、「肌」および「肌以外」に分けてもよい。また、このようにしてF'(L)=0となるLが複数求められた場合には、その中で最も大きなLを決定境界とすることができる。
【0086】
[判別装置の判別機能構成例]
本発明の第2の実施の形態における判別装置の判別機能構成は、図7により説明した第1の実施の形態と同様のものを利用することができる。すなわち、図13の閾値決定部164により決定された閾値Kを用いて、図7の判別機能構成により「肌」であるか「肌以外のもの」であるかを判別することができる。
【0087】
[学習フェーズの処理手順例]
図18は、本発明の第2の実施の形態における学習フェーズの処理手順の一例を示す図である。
【0088】
まず、肌のみを撮影した肌画像が取得されると(ステップS951)、特徴空間写像部111は肌画像を肌ベクトル520(s)として特徴空間510に写像する(ステップS952)。また、肌以外を撮影した非肌画像が取得されると(ステップS953)、特徴空間写像部121は非肌画像を非肌ベクトル525(p)として特徴空間510に写像する(ステップS954)。そして、単位ベクトル変換部112は、肌ベクトル520(s)の集合の各々を、単位肌ベクトル540(u)に変換する(ステップS955)。また、単位ベクトル変換部122は、非肌ベクトル525(p)の集合の各々を、単位非肌ベクトル545(q)に変換する(ステップS956)。
【0089】
そして、平均ベクトル生成部131は、単位肌ベクトル540(u)の各々の平均ベクトル560(m')を生成する(ステップS957)。単位ベクトル変換部132は、平均ベクトル560(m')を単位平均ベクトル561(m)に変換する(ステップS958)。これら平均ベクトル560(m')または単位平均ベクトル561(m)により超平面が設定される。この超平面570(φ)は、特徴空間510の原点を通るように設定される。
【0090】
超平面射影部141は、単位肌ベクトル540(u)の各々を超平面570(φ)に射影して肌ベクトルyとする(ステップS959)。また、超平面射影部151は、単位非肌ベクトル545(q)の各々を超平面570(φ)に射影して非肌ベクトルrとする(ステップS960)。
【0091】
そして、主成分分析部142は、肌ベクトルyの集合を主成分分析にかけることにより、超平面の基底ベクトル580(ei)を生成する(ステップS961)。基底射影部143は、肌ベクトルyを各基底ベクトル580(ei)に射影して、射影肌ベクトル590(y')とする(ステップS962)。また、基底射影部153は、非肌ベクトルrを各基底ベクトル580(ei)に射影して、射影非肌ベクトル595(r')とする(ステップS963)。
【0092】
そして、マハラノビス距離生成部161は、射影肌ベクトル590(y')の各々について原点からのマハラノビス距離L(y')を生成する(ステップS964)。また、マハラノビス距離生成部162は、射影非肌ベクトル595(r')の各々について原点からのマハラノビス距離L(r')を生成する(ステップS964)。そして、閾値決定部164は、マハラノビス距離L(y')およびL(r')の集合の分布から、評価関数F'(L)により、判別の際の閾値Kを決定する(ステップS965)。
【0093】
なお、この実施の形態において、ステップS952、S955は、特許請求の範囲に記載の第1の学習情報写像手順の一例である。また、ステップS954、S956は、特許請求の範囲に記載の第2の学習情報写像手順の一例である。また、ステップS957、S958は、特許請求の範囲に記載の超平面設定手順の一例である。また、ステップS959、S961、S962は、特許請求の範囲に記載の第1の学習情報次元圧縮手順の一例である。また、ステップS960、S963は、特許請求の範囲に記載の第2の学習情報次元圧縮手順の一例である。また、ステップS964、S965は、特許請求の範囲に記載の判別境界設定手順の一例である。
【0094】
[判別フェーズの処理手順例]
本発明の第2の実施の形態における判別フェーズの処理手順は、図12により説明した第1の実施の形態と同様のものを利用することができる。すなわち、図11のステップS920において決定された閾値Kを用いて、図12の処理手順例により「肌」であるか「肌以外のもの」であるかを判別することができる。
【0095】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、肌画像および非肌画像を学習情報として超球面550に写像した後に超平面570を設定し、超平面570の基底ベクトル580が生成される。学習情報が基底ベクトル580に写像された後にマハラノビス距離の集合の分布から、ベイズ決定則により判別の際の閾値Kが決定される。判別対象についても基底ベクトル680に写像された後にマハラノビス距離が生成され、閾値Kとの関係により「肌」であるか「肌以外のもの」であるかが判別される。
【0096】
<3.変形例>
上述の実施の形態では、RGBCMYの6色のカラーフィルタに基づく色の特徴空間を想定したが、色の数は任意の自然数を採用することができる。また、このRGBCMYの特定色のカラーフィルタに限定されず、任意の物体分光反射率を有するカラーフィルタを利用することができる。
【0097】
また、上述の実施の形態では、判別フェーズにおいて、マハラノビス距離が閾値K未満であれば「肌」であると判別し、閾値K以上であれば「肌以外のもの」であると判別したが、両者の関係はこれに限定されるものではない。マハラノビス距離が閾値K以下の場合に「肌」であると判別し、閾値Kを超える場合に「肌以外のもの」であると判別してもよい。
【0098】
また、上述の実施の形態では、閾値Kを設定する基準として超平面座標のマハラノビス距離を用いた例について説明したが、超平面座標のユークリッド距離を用いることも可能である。
【0099】
また、上述の実施の形態では、超平面を設定する際に学習画素の平均ベクトルを利用したが、これ以外にも、肌集合530の分散が小さくなるようなメタヒューリスティックな手法により、集合への分散が小さくなるように超平面を設定することも考えられる。例えば、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)やシミュレーテッドアニーリング等の手法が想定される。
【0100】
また、判別対象となる画素の大きさ(ノルム)が、ある値未満である場合もしくはある値以下である場合には、単位ベクトル変換部212において単位ベクトルに変換する代わりにゼロベクトルとして扱ってもよい。また、判別対象となる画素が写像された特徴空間610における座標は、全てゼロ以上の数であることを条件としてもよい。
【0101】
また、上述の実施の形態では、教師データとして肌の画像を与えたが、データの形式は画像でなくてもよく、データ配列であっても本質的に違いはない。
【0102】
また、上述の実施の形態では、肌の判別の例を挙げたが、本発明は肌の判別に限定されるものではなく、より一般的な判別に利用することができる。例えば、空、土、芝生などの物体判別の要素からシーン判別を行うことも想定される。
【0103】
また、本発明は、画像処理装置に限定されるものではなく、計算機能を有する装置全般に適用可能である。例えば、音声データ処理などにも適用することができる。
【0104】
このように、本発明の実施の形態によれば、学習情報および判別対象をノーマライズして超球面上に乗せて取り扱うため、ロバストな判別を行うことができる。また、超球面から超平面に射影することにより、超平面座標系で表現することが可能となり、次元が圧縮され、判断を簡略化することができる。また、超平面が原点を通るようにすることにより、特定の項がゼロになり、演算を簡略化することができるようになる。また、判別の際にマハラノビス距離を基準とすることにより、超楕円を超円として扱うことが可能となり、1次元により表現することができ、判断を簡略化することができる。
【0105】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、本発明の実施の形態において明示したように、本発明の実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本発明の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0106】
また、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
110 (事象生起)学習画素超球面写像部
120 (事象非生起)学習画素超球面写像部
111、121 特徴空間写像部
112、122 単位ベクトル変換部
130 超平面設定部
131 平均ベクトル生成部
132 単位ベクトル変換部
133 超平面生成部
140 (事象生起)学習画素次元圧縮部
150 (事象非生起)学習画素次元圧縮部
141、151 超平面射影部
142 主成分分析部
143、153 基底射影部
160 判別境界設定部
161、162 マハラノビス距離生成部
163、164 閾値決定部
210 判別画素超球面写像部
211 特徴空間写像部
212 単位ベクトル変換部
240 判別画素次元圧縮部
241 超平面射影部
243 基底射影部
260 境界判別部
261 マハラノビス距離生成部
263 閾値判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位学習ベクトルに変換することにより前記学習情報の各々を超球面上へ写像する学習情報写像部と、
前記単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定部と、
前記単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影学習ベクトルとすることにより前記学習情報の次元を圧縮する学習情報次元圧縮部と、
前記射影学習ベクトルの各々の分布から前記学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定部と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像部と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮部と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別部と
を具備する判別装置。
【請求項2】
前記超平面設定部は、前記特徴空間の原点を通るように前記超平面を設定する請求項1記載の判別装置。
【請求項3】
前記学習情報次元圧縮部は、前記超平面に射影された前記単位学習ベクトルの各々に対する主成分分析により前記超平面の前記基底ベクトルを生成する請求項1記載の判別装置。
【請求項4】
前記判別境界設定部は、前記射影学習ベクトルの各々のマハラノビス距離に基づいて前記判別境界を設定する請求項1記載の判別装置。
【請求項5】
前記学習情報および前記判別対象情報は物体に関する色情報であり、前記判別境界は前記物体を判別するための境界である請求項1記載の判別装置。
【請求項6】
第1の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第1の単位学習ベクトルに変換することにより前記第1の学習情報の各々を超球面上へ写像する第1の学習情報写像部と、
前記第1の学習情報と背反する第2の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第2の単位学習ベクトルに変換することにより前記第2の学習情報の各々を超球面上へ写像する第2の学習情報写像部と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定部と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第1の射影学習ベクトルとすることにより前記第1の学習情報の次元を圧縮する第1の学習情報次元圧縮部と、
前記第2の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第2の射影学習ベクトルとすることにより前記第2の学習情報の次元を圧縮する第2の学習情報次元圧縮部と、
前記第1および第2の射影学習ベクトルの各々の分布から前記第1および第2の学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定部と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像部と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮部と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別部と
を具備する判別装置。
【請求項7】
学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位学習ベクトルに変換することにより前記学習情報の各々を超球面上へ写像する学習情報写像手順と、
前記単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定手順と、
前記単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影学習ベクトルとすることにより前記学習情報の次元を圧縮する学習情報次元圧縮手順と、
前記射影学習ベクトルの各々の分布から前記学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定手順と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像手順と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮手順と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別手順と
を具備する判別方法。
【請求項8】
第1の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第1の単位学習ベクトルに変換することにより前記第1の学習情報の各々を超球面上へ写像する第1の学習情報写像手順と、
前記第1の学習情報と背反する第2の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第2の単位学習ベクトルに変換することにより前記第2の学習情報の各々を超球面上へ写像する第2の学習情報写像手順と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定手順と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第1の射影学習ベクトルとすることにより前記第1の学習情報の次元を圧縮する第1の学習情報次元圧縮手順と、
前記第2の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第2の射影学習ベクトルとすることにより前記第2の学習情報の次元を圧縮する第2の学習情報次元圧縮手順と、
前記第1および第2の射影学習ベクトルの各々の分布から前記第1および第2の学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定手順と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像手順と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮手順と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別手順と
を具備する判別方法。
【請求項9】
学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位学習ベクトルに変換することにより前記学習情報の各々を超球面上へ写像する学習情報写像手順と、
前記単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定手順と、
前記単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影学習ベクトルとすることにより前記学習情報の次元を圧縮する学習情報次元圧縮手順と、
前記射影学習ベクトルの各々の分布から前記学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定手順と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像手順と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮手順と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
第1の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第1の単位学習ベクトルに変換することにより前記第1の学習情報の各々を超球面上へ写像する第1の学習情報写像手順と、
前記第1の学習情報と背反する第2の学習情報の各々を特徴空間に写像した上で所定の長さを有する第2の単位学習ベクトルに変換することにより前記第2の学習情報の各々を超球面上へ写像する第2の学習情報写像手順と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々の平均ベクトルを法線ベクトルとして有する超平面を設定する超平面設定手順と、
前記第1の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第1の射影学習ベクトルとすることにより前記第1の学習情報の次元を圧縮する第1の学習情報次元圧縮手順と、
前記第2の単位学習ベクトルの各々を前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した第2の射影学習ベクトルとすることにより前記第2の学習情報の次元を圧縮する第2の学習情報次元圧縮手順と、
前記第1および第2の射影学習ベクトルの各々の分布から前記第1および第2の学習情報に関する判別境界を設定する判別境界設定手順と、
判別対象情報を前記特徴空間に写像した上で所定の長さを有する単位判別対象ベクトルに変換することにより前記判別対象情報を超球面上へ写像する判別対象情報写像手順と、
前記単位判別対象ベクトルを前記超平面に射影した上で前記超平面の基底ベクトルに射影した射影判別対象ベクトルとすることにより前記判別対象情報の次元を圧縮する判別対象情報次元圧縮手順と、
前記射影判別対象ベクトルについて前記判別境界に含まれるか否かを判別する境界判別手順と
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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