説明

利得制御回路、通信装置、電子機器、及び、利得制御方法

【課題】相互変調歪を抑制することのできる技術を提供する。
【解決手段】利得制御回路10Aは、入力信号を増幅する第1増幅器12と、第1増幅器12に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器12の増幅率を制御する信号判定部20とを備える。通信装置は、受信信号を増幅する第1増幅器12と、第1増幅器12から出力された信号に基づいて受信処理を行なう信号処理部14と、第1増幅器12に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器12の増幅率を制御する信号判定部20とを備える。利得制御方法においては、入力信号を増幅する第1増幅器12に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて、フィードフォワード系で第1増幅器12の増幅率を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、利得制御回路、通信装置、電子機器、及び、利得制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路において、周波数の異なる複数の信号が入力される場合、いわゆる相互変調歪が問題となる。例えば、受信回路の入力段に設けられる増幅回路の場合が典型的である。例えば、2つの搬送周波数の差が所望波の周波数近傍に存在する場合に、この妨害波成分も復調される“相互変調歪”の問題がある。典型的には、自局の受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅回路や周波数混合回路の線形性能が低いと受信帯域(通常は変調信号の1次成分だけを考えればよい)内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0003】
“相互変調歪”の問題を防止する手法としては、例えば、受信回路の入力部に、波長選択性を持つバンドパスフィルタを追加する手法が知られている。しかしながら、この手法は、バンドパスフィルタ分のコストの増大や基板面積の拡大等を招く。又、バンドパスフィルタは、一般的には、固定の周波数に対してのみ作用するため、対応周波数を可変して使用することは難しく通信チャネル(換言すると搬送周波数:以下では「バンド」ともいう)ごとに用意する必要がある。
【0004】
相互変調歪の問題を防止する他の手法としては、そもそもの発生原因である“回路部材の非直線動作”を改善する手法も知られている。回路部材の追加を伴わない手法である。例えば、回路の線形性能を高くするために、なるべく直線領域で動作させるように、バイアス電流を大きくする、DCバイアス点を最適化する等の対策が有効になるが、電源電圧の増大や消費電力の増大を招く。あるいは、線形性のよい高価な回路部材を使用するということも考えられるが、高価な回路部材を使っても、原理的に非線形性をゼロにすることはできない。
【0005】
これに対して、相互変調歪が起こることを避けられないものとして、使用状態において相互変調歪を抑制し得るように、入力段を利得制御回路(可変利得増幅回路)とし、大入力時には利得を制限することで、利得制御回路やその後段の周波数変換回路(混合回路、ミキサ)での歪を抑制する技術が、例えば、特開2000−244353号公報に提案されている。
【0006】
しかしながら、特開2000−244353号公報に提案されている技術は、入力信号の系統に利得制御回路を2段設け、又、各利得制御回路用のレベル検出回路(検波器)を各別に設けており、回路が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−244353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当該技術分野では、相互変調歪を抑制することのできる他の技術が求められている。
【0009】
本開示は、相互変調歪を抑制することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様に係る利得制御回路は、入力信号を増幅する第1増幅器と、第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部とを備える。本開示の第1の態様に係る利得制御回路の従属項に記載された各利得制御回路は、本開示の第1の態様に係る利得制御回路のさらなる有利な具体例を規定する。
【0011】
本開示の第2の態様に係る通信装置は、受信信号を増幅する第1増幅器と、第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部とを備える。本開示の第2の態様に係る通信装置は、第1の態様に係る利得制御回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第2の態様に係る通信装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0012】
本開示の第3の態様に係る電子機器は、入力信号を増幅する第1増幅器と、第1増幅器から出力された信号に基づいて信号処理を行なう信号処理部と、第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部とを備える。本開示の第3の態様に係る電子機器は、第1の態様に係る利得制御回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第3の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。
【0013】
本開示の第4の態様に係る電子機器は、受信信号を増幅する第1増幅器と、第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部とを備える。本開示の第4の態様に係る電子機器は、第1の態様に係る利得制御回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第4の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。
【0014】
本開示の第5の態様に係る利得制御方法は、入力信号は希望波と妨害波とを含み、希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する。本開示の第5の態様に係る利得制御方法は、第1の態様に係る利得制御回路の従属項に記載された各技術・手法が同様に適用可能であり、それが適用された構成は、第5の態様に係る利得制御方法のさらなる有利な具体例を規定する。
【0015】
要するに、本開示の技術は、フィードフォワード系で第1増幅器の増幅率を制御する。特開2000−244353号公報に提案されている技術のような、入力信号の系統に利得制御回路を2段設ける必要はない。
【発明の効果】
【0016】
本開示の利得制御回路、通信装置、電子機器、利得制御方法によれば、フィードフォワードによって第1増幅器の増幅率を制御するので、特開2000−244353号公報に提案されている技術とは異なる利得制御手法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、混変調歪を説明する図である。
【図2】図2は、本実施形態の利得制御回路の基本構成を説明する図である。
【図3】図3は、本実施形態の利得制御回路の第1変形構成を説明する図である。
【図4】図4は、本実施形態の利得制御回路の第2変形構成を説明する図である。
【図5】図5は、実施例1の通信装置(受信回路を持つ)を説明する図である。
【図6】図6は、入力増幅部(利得制御回路)の構成例を示す図である。
【図7】図7は、通信装置の入力レベルとSN比(SNR)の関係を示した図である。
【図8】図8は、希望波が−30dBmのときの入力増幅部の減衰量とSN比及びIIP3の関係を示した図である。
【図9】図9は、希望波が−14dBmのときの入力増幅部の減衰量とSN比及びIIP3の関係を示した図である。
【図10】図10は、実施例2の通信装置(受信回路を持つ)を説明する図である。
【図11】図11は、実施例2の通信装置の動作を説明する図である。
【図12】図12(A)〜図12(C)は、実施例3を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0019】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.混変調歪について
3.基本構成
4.変形構成1
5.変形構成2
6.具体的な適用例
実施例1:基本構成と対応
実施例2:変形構成1
実施例3:通信装置、電子機器への適用
【0020】
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。
【0021】
本実施形態の構成において、利得制御回路、通信装置、電子機器は、入力信号(例えば受信信号)を増幅する第1増幅器と、第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部とを備える。第1増幅器に対する利得制御系は、フィードフォワードで実現される。そのため、基本的には、入力信号の系統に利得制御回路を2段設ける必要はない。更には、全体としてみれば、回路が簡易になる。電子機器の場合、第1増幅器、受信部、及び、信号判定部を具備する通信部を複数備えるとよい。
【0022】
例えば、入力信号(例えば受信信号)が希望波と妨害波とを含む場合、信号判定部は、希望波と妨害波の各レベルを判定する。
【0023】
この際、第1の手法として、信号判定部は、希望波のレベルと妨害波のレベルを区別することなく判定してよい。希望波のレベルの方が大きければ希望波のレベルの絶対値で制御するし、妨害波のレベルの方が大きければ妨害波のレベルの絶対値で制御する。
【0024】
第1の手法をとる場合、好ましくは、信号判定部は、第1増幅器に入力される入力信号を増幅する第2増幅器と、第2増幅器の出力信号のレベルを検出するレベル検出部とを有するのがよい。この場合、レベル検出部は、第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは相対関係を持って第1増幅器を制御する。
【0025】
この場合、好ましくは、第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは同じに制御されるのがよい。オフセット調整等の付加回路が不要になる。
【0026】
又、この場合、第2増幅器は第1増幅器に対してサイズ比例で小さいのがよい。第1増幅器はノイズ性に良好なものがよいが、第2増幅器はその必要がなく、希望波のレベルと妨害波のレベルを区別できれいばよいからである。
【0027】
第2の手法として、信号判定部は、希望波のレベルを検出する第1レベル検出部と、妨害波のレベルを検出する第2レベル検出部と、第1レベル検出部と第2検出部の検出結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御するレベル判定部とを有するのがよい。つまり、希望波のレベルと妨害波のレベルを区別して判定する構成である。
【0028】
第1の手法及び第2の手法の何れにおいても、希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御するのがよい。
【0029】
本実施形態の構成において、利得制御回路、通信装置、電子機器は、第1増幅器の出力には、出力信号の帯域を希望波の帯域に制限する帯域制限部が設けられていてもよい。第1増幅器に対する利得制御系をフィードフォワードで実現するので、第1増幅器の出力における帯域制限の影響を受けないからである。
【0030】
本実施形態の構成において、利得制御回路、通信装置、電子機器は、第1増幅器の後段に、第1増幅器の出力信号のレベルと対応した信号のレベルを検出して第1増幅器の増幅率を制御する帰還制御ループが設けられていてもよい。入力信号が小さいときの利得制御ループがあった方がよいからである。この制御ループは負帰還で構成するのが好適であるが、必ずしも、負帰還には限定されない。
【0031】
<混変調歪について>
以下で説明する基本構成及びその変形例並びに実施例を説明するに当たって、重要な評価ファクタである混変調歪について先ず説明する。図1は、混変調歪を説明する図である。
【0032】
増幅回路の特性を評価する場合に、交流特性(帯域幅、スルー・レート、セトリングタイム等)だけでなく、例えば、高調波歪、スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ(SFDR:Spurious Freedynamic Range)、相互変調歪(IMD:InterModulation Distortion)、インターセプトポイント(IP:Intercept Point、IP2,IP3等)、ノイズ(S/N:Signal to Noise Ratio)、ノイズ・フィギュア(NF:Noise Figure)等の項目が含まれる。
【0033】
例えば、純粋な単一周波数の正弦波が増幅回路(他の能動素子でも同様である)を通過する場合、その特性と非直線性に応じて高調波歪が発生する。正弦波の周波数を変えながら高調波歪を測定しただけでは、異なる周波数の信号が入力される場合の用途(例えば通信用途)に使用する増幅回路の真の性能を評価するには不十分である。多くの通信用途では、周波数領域で多重化した多数のチャネルを使うために、2つ或いはそれ以上の規定された周波数での相互変調歪の量を用いて、増幅回路を評価することが必要になる。
【0034】
2つの信号(ツー・トーン信号と称する)による歪みの発生を調べると、2次及び3次の相互変調積が発生することが分かる。図1は、その様子を表しているもので、周波数がf1とf2の2つの信号を非線形素子に加えたときに発生する2次と3次の相互変調積に着目して示している。一般的に、2次相互変調歪はIP2の値を使って規定し、3次相互変調歪はIP3の値を使って規定する。尚、入力レベル側を読んだ数字はIIPで表し、出力レベル側を読んだ数字はOIPで表し、さらにそれらに次数(乗数)を付けて、IIP2、IIP3、OIP2、OIP3等と表す。
【0035】
周波数の近い2つの正弦波(ツー・トーン信号)を同時に受信回路に加えている状態での評価結果である。シングル・トーンの出力信号電力(dBm)とともに、2次相互変調歪や3次相互変調歪みの(シングル・トーンに対する)相対値を、入力信号電力の関数としてプロットしたものである。基本波に対する関数は傾き1のカーブとして表される。回路の非線形性をべき級数展開で近似すると、2次相互変調歪の振幅は信号入力が1dB増加するごとに2dB増加するので、これを傾き2のカーブとして図に表してある。同様に、3次相互変調歪の振幅は入力信号が1dB増加するごとに3dB増加するので、傾き3のカーブで表される。尚、実際には、入力信号が特定のレベルを越えると、出力信号の増加がクリップし(頭打ちになり)始める。つまり、理想的な傾き1の直線が破線で示されている領域は、実際には実線で示されるように出力が圧縮される。
【0036】
ここで、2次及び3次相互変調歪みの直線を延長すると、理想的な出力応答を表す線の延長部分と交差する。ここが、2次及び3次のインターセプト・ポイント(IP2,IP3)である。尚、これらは、回路が整合負荷(例えば50Ω)に供給する出力電力をdBmで表している。
【0037】
<基本構成>
図2は、本実施形態の利得制御回路の基本構成を説明する図である。利得制御回路10Aは、信号処理回路1に組み込まれており、可変増幅部12と、レベル検出機能を持つ信号処理部14と、信号判定部20とを備えている。
【0038】
可変増幅部12は主信号パスに設けられており、その出力信号が信号処理部14に入力され、信号処理部14にて所定の信号処理が行なわれる。このため、可変増幅部12としては、ノイズ特性の良好な(一般的にサイズが大きくなる)低雑音増幅器が使用される。例えば、信号処理部14は、受信処理を行なうものである場合、復調回路が設けられる。信号処理部14は、所要の信号処理を行なうに当たり、入力レベル(可変増幅部12の出力レベル)或いは当該入力レベルと対応する信号処理部14内部における所定の機能部の信号レベルを検出して、その検出結果を可変増幅部12に供給する。これにより、主信号パスに関して、可変増幅部12の入力レベルが所定レベルよりも小さいときに、信号処理部14の入力レベルが一定となるように、可変増幅部12と信号処理部14との間でフィードバックループ(NFB)により自動利得調整(AGC:Automatic Gain Control)機能が働くように構成されている。尚、可変増幅部12の入力レベルが小さいときに、信号処理部14の入力レベルが一定となるようにする主信号パスに関しての利得調整機能は、フィードバックループにより構成するものに限らず、その他の任意の回路構成をとってもよい。
【0039】
信号判定部20は、主信号パスとは別の信号パス(レプリカ信号パスと称する)に設けられており、可変増幅部12に入力される信号の状態を判定し、可変増幅部12の入力レベルが所定レベルよりも大きいときに、信号処理部14の入力レベルが一定となるように、可変増幅部12との間でフィードフォワード(FF)により自動利得調整機能が働くように構成されている。
【0040】
ここで、信号判定部20と可変増幅部12とによるフィードフォワード系のAGCのスタート点(AGC_start)をαdBmとする。信号判定部20の閾値(Threshold)をβdBmとする。
【0041】
希望信号が大きくなると、信号判定部20の判定出力に応じて可変増幅部12の利得を減らしていく。低信号入力の場合、可変増幅部12の利得を最大にしてNF(雑音指数)の劣化を防ぎ、逆に大入力では利得を制限することで、可変増幅部12及び信号処理部14での歪を抑制し、ダイナミックレンジの広い信号伝送装置1(例えば受信回路)を構成するようにしている。
【0042】
このような構成の利得制御回路10Aにおいては、入力信号が所定レベルよりも小さいと、可変増幅部12の増幅機能により、信号処理部14の入力レベルが低下しないように働く。一方、入力信号が所定レベルよりも大きいと、信号判定部20の判定結果を受けて、可変増幅部12の減衰(アッテネート)機能により、信号処理部14の入力レベルが過大にならないように働き、可変増幅部12や信号処理部14での歪を抑えることができる。例えば、入力レベルがAGCのスタート点よりも大きく、且つ、信号判定部20の閾値よりも大ききければ、当該機能が働く。特開2000−244353号公報に提案されている技術を適用する場合、信号処理部14よりも入力信号の系統に利得制御回路を2段設けることになるが、本実施形態では、利得制御回路は1つで済む。又、信号判定部20による制御は、フィードバック制御でないので、可変増幅部12よりも後段側の回路の帯域制限の影響を受けることなく、広帯域に妨害信号を検出できる。
【0043】
尚、信号判定部20は、希望信号と妨害信号の各信号レベルの状態を判定するので、可変増幅部12よりも広帯域であることが肝要となる。即ち、希望信号成分だけでなく妨害信号成分の周波数帯域にも対応したものであることが求められる。一方、可変増幅部12は、希望信号成分の周波数帯域に対応したものであれば十分であり、妨害信号成分についての周波数特性は低下していた方が好ましい位である。
【0044】
提案書の図1が社外公知であることを証明する文献がないとのことですので、提案書の図1も本願発明範囲に含めるように記載しました。
【0045】
<変形構成1>
図3は、本実施形態の利得制御回路の第1変形構成を説明する図である。第1変形構成の利得制御回路10Bは、信号判定部20に、可変増幅部22とレベル検出部24とを設けている点が基本構成の利得制御回路10Aと異なる。その他の点は利得制御回路10Aと同じである。
【0046】
変形構成1の信号判定部20は、可変増幅部12に周波数の異なる複数種類の信号が供給される場合において、所望周波数の信号(希望信号)とそれ以外の信号(妨害信号)の各信号レベルの状態に基づき、可変増幅部12が適正な状態で動作するように制御する点に特徴がある。「可変増幅部12が適正な状態で動作するように」とは、希望信号レベルと妨害信号レベルの状態に関わらず、IIP3が所要レベルとなる状態で可変増幅部12が動作するようにすることを意味する。
【0047】
例えば、希望信号レベル、妨害信号レベル、及び、IIP3の関係は、図1に示した通りになる。即ち、対数表記において、希望信号に対する関数は傾き1のカーブとして表され、3次相互変調歪は、傾き3のカーブで表される、換言すると、2信号の積の3乗に比例して増加する。所要のIIP3レベルにしようとした場合、希望信号レベル及び妨害信号レベルの何れか一方のレベルだけで決まるものではなく、双方が関係したものである。この点を考慮して、IIP3が所要レベルとなる状態で可変増幅部12が動作するようにする。具体的には、希望信号レベル(D:Desire_Input)と妨害信号レベル(U:Undesire_Input)の比(D/U)が一定となる状態で可変増幅部12の利得制御動作が行なわれるようにする。
【0048】
この機能により、希望信号と妨害信号とのレベル差の影響を受けずに、適正に可変増幅部12を制御することができる。希望信号が大きくなると、信号判定部20の判定出力に応じて可変増幅部12の利得を減らしていく。低信号入力の場合、可変増幅部12の利得を最大にしてNF(雑音指数)の劣化を防ぎ、逆に大入力では利得を制限することで、可変増幅部12及び信号処理部14での歪を抑制し、ダイナミックレンジの広い信号伝送装置1(例えば受信回路)を構成するようにしている。
【0049】
変形構成1では、この機能の実現のため、信号判定部20において、可変増幅部22は、主信号パスの可変増幅部12の可変幅と対応した可変幅で動作する可変利得増幅器が使用される。信号判定部20について説明したことから理解されるように、可変増幅部22は可変増幅部12よりも広帯域であることが肝要となる。一方、レベル判定を好適に行なえれば十分であり、ノイズ特性はさほど問題とならないので、低雑音増幅器である必要はない。この点を考慮すれば、可変増幅部22としては、主信号パスの可変増幅部12のサイズ比例で小さくしたものを使用するのが好ましい。「サイズ比例」とすることで、その他の点の特性は可変増幅部12と概ね同じにできる利点がある。
【0050】
「主信号パスの可変増幅部12の可変幅と対応した可変幅で動作する」とは、第1増幅器の一例である可変増幅部12の増幅率と第2増幅器の一例である可変増幅部22の増幅率とが相対関係を持って制御されればよく、可変増幅部12と同じ可変幅であることが典型例であるが、これには限定されず、多少の相違があってもよい。この相違分はレベル検出部24にオフセット機能を持たせる等して、相殺することができるからである。
【0051】
可変増幅部22の出力信号はレベル検出部24に供給される。レベル検出部24は、可変増幅部22の出力で信号レベルを検出し、主信号パスの可変増幅部12を制御する。これにより、S/Nの無駄無く可変増幅部12のダイナミックレンジを拡大できる利得制御方式を実現できる。レプリカ信号パスの可変増幅部22の効果により、希望信号と妨害信号のレベル差一定(D/U一定)で利得制御を行なうことができる。可変増幅部12の入力における妨害信号と希望信号とのレベル差の影響を受けることなく(入力レベルに関わらず)、常に最適な動作点で利得制御を行なうことができ、適正に可変増幅部12を制御することができる。NFとダイナミックレンジの両面で好適な信号伝送装置1を構成することができる。
【0052】
<変形構成2>
図4は、本実施形態の利得制御回路の第2変形構成を説明する図である。第2変形構成の利得制御回路10Cは、信号判定部20に、レベル検出部26A及びレベル検出部26Bとレベル判定部28とを設けている点が基本構成の利得制御回路10Aと異なる。その他の点は利得制御回路10Aと同じである。
【0053】
変形構成2は、変形構成1と同様に、希望信号レベルDと妨害信号レベルUの比(D/U)が一定となる状態で可変増幅部12の利得制御動作が行なわれるようにする。この機能により、希望信号と妨害信号とのレベル差の影響を受けずに、適正に可変増幅部12を制御することができる。
【0054】
変形構成2では、この機能の実現のため、希望信号のレベルとを検出する機能部と、妨害信号のレベルを検出する機能部を各別に設け、その結果に基づき、D/U比が一定となる状態で可変増幅部12を制御する構成を採っている。具体的には、レベル検出部26Aは希望信号のレベルを検出するものであり、例えば、その入力段に希望信号の周波数帯域成分を通過させる帯域通過濾波回路(バンドパスフィルタ)が使用される。一方、レベル検出部26Bは妨害信号のレベルを検出するものであり、例えば、その入力段に希望信号の周波数帯域成分を抑制する帯域阻止(抑制)濾波回路(バンドエリミネーションフィルタ、ノッチフィルタ)が使用される。レベル検出部26Aの検出結果及びレベル検出部26Bの検出結果はレベル判定部28に供給される。レベル判定部28は、レベル検出部26Aの検出結果及びレベル検出部26Bの検出結果で信号レベルを検出し、主信号パスの可変増幅部12を制御する。これにより、S/Nの無駄無く可変増幅部12のダイナミックレンジを拡大できる利得制御方式を実現できる。レプリカ信号パスのレベル検出部26A及びレベル検出部26B並びにレベル判定部28の効果により、希望信号と妨害信号のレベル差一定(D/U一定)で利得制御を行なうことができる。可変増幅部12の入力における妨害信号と希望信号とのレベル差の影響を受けることなく、常に最適な動作点で利得制御を行なうことができる。NFとダイナミックレンジの両面で好適な信号伝送装置1を構成することができる。
【0055】
<具体的な適用例>
以下に、前述した利得制御回路10の具体的な適用例について説明する。以下では、無線通信用の受信回路に使用される自動利得制御回路(AGC回路)への適用例で説明する。例えば、通信機、TV、或いは移動通信を行なうデジタルオーディオブロードキャスティング(DAB)等、受信信号が変動し、かつ他の送信アンテナから隣接のチャンネルに大きな信号レベルを受けることがある受信回路に用いられるAGC回路へ適用するのが好適である。
【実施例1】
【0056】
[構成]
図5は、実施例1の通信装置(受信回路を持つ)を説明する図である。通信装置810Aは、入力増幅部812と、搬送周波数F_@を生成する受信側局部発振部814と、周波数混合部815(いわゆるミキサー)と、復調信号処理部816(例えばバンドパスフィルタ)と、出力増幅部817と、復調回路818とを備え、入力増幅部812には受信アンテナ811が接続されている。受信側局部発振部814と周波数混合部815とで周波数変換部が構成される。入力増幅部812は、受信アンテナ811で受けた受信信号の振幅をゲイン倍するものであり、前述の可変増幅部12と対応する。復調回路818からは、ゲイン制御信号GC1が入力増幅部812に供給され、負帰還増幅回路が構成されるようにしている。
【0057】
通信装置810Aは、受信周波数に帯域制限をかけて希望する周波数のみ選択するようになっており、入力増幅部812の負荷にフィルタ回路813(タンク回路)が設けられている。フィルタ回路813は、入力増幅部812の出力信号の帯域を希望波の帯域に制限する帯域制限部の一例である。これに対応して、入力増幅部812の入力信号レベルを判定する信号判定部820A(前述の信号判定部20と対応)が、主信号パスとは別のレプリカ信号パスに設けられている。信号判定部820Aは、レベル検出部824(レベル検出部24と対応)を有する。入力増幅部812の前にレベル検出部824を設け、その検波結果をゲイン制御信号GC2として用いて入力増幅部812を制御する。
【0058】
[利得制御回路]
図6は、入力増幅部812(利得制御回路)の構成例を示す図である。
【0059】
入力段にアッテネータ回路830が設けられ、そのタップ出力ごとに差動増幅回路840が接続された構成である。因みに、入力端は直接に1段目の差動増幅回路840に接続されるようにしている。アッテネータ回路830としては、例えば抵抗ラダー回路を使用することができる。差動増幅回路840は、差動対のトランジスタ842及びトランジスタ844と、それらの電流源となるトランジスタ846を有する。
【0060】
アッテネータ回路830のタップのそれぞれが順に、差動対のトランジスタ842及びトランジスタ844の一方の入力端に接続される。差動対のトランジスタ842及びトランジスタ844の他方の入力端は共通に接続され、さらにゲインを決定する帰還回路と接続される。この帰還回路はゲイン制御信号GC1によって動作するものと対応する。差動対は、電流制御トランスコンダクタンス(gm)増幅回路(Gm−AMP)として動作する。トランジスタ846の制御入力端(ゲート)には、差動対の何れか1つを動作させる制御信号(ゲイン制御信号GC2と対応)が供給される。どの段の差動対を動作させるかにより、過大入力時の動作状態(ゲイン)が決まる。
【0061】
[実施例1の動作]
図7〜図9は、実施例1の通信装置810Aの動作を説明する図である。ここで、図7は、通信装置810Aの入力レベルとSN比(SNR)の関係を示した図である。図8は、希望波が−30dBmのときの入力増幅部812の減衰量とSN比及びIIP3の関係を示した図である。図9は、希望波が−14dBmのときの入力増幅部812の減衰量とSN比及びIIP3の関係を示した図である。
【0062】
図7に示すように、AGCのスタート点を−50dBmとしている。入力レベルが大きければノイズ特性が良好であることが分かる。
【0063】
図8は、希望波が−30dBmの動作点を表しており、このとき、レベル検出部824の閾値(threshold)は−30dBmに設定されている。例えば、妨害波の信号レベルが−14dBm時の所要IIP3を+12dBmと仮定すると、入力増幅部812を16dB減衰させると受信可能となることが分かる。
【0064】
大入力時には利得を制限することで、入力増幅部812或いはその後段回路での歪を抑制することができる。但し、多少の難点がある。例えば、図9は、希望波が−14dBmの動作点を表しており、この場合は、希望波のみの動作点で既に所要IIP3を満足しているにも関わらず、よりS/Nを劣化させるような動作をする。つまり、実施例1の通信装置810Aでは、希望波レベルが妨害波レベルを超えるまでは妨害波の絶対値レベルで検波して利得を制御することから、全ての受信レベルにおいて最適な動作点で動作できない難点がある。
【実施例2】
【0065】
[構成]
図10は、実施例2の通信装置(受信回路を持つ)を説明する図である。通信装置810Bは、実施例1の通信装置810Aに対して、信号判定部820の構成を変更している。具体的には、信号判定部820Bは、可変増幅部822(可変増幅部22と対応)とレベル検出部824(レベル検出部24と対応)を有する。可変増幅部822としては、妨害波も適正に処理できるように広帯域な可変利得増幅器を使用するが、ノイズ性能は良好である必要がないので主信号パスの可変増幅部812のサイズ比例で小さくしたものを使用する。入力増幅部812の前に信号判定部820Bを設け、その検波結果をゲイン制御信号GC2として用いて入力増幅部812を制御する。
【0066】
可変増幅部822は、主信号パスの入力増幅部812と同じ可変幅で、且つ、広帯域な可変利得増幅器を持つ。このレプリカ信号パスを持つことにより、フィルタ回路813の帯域制限を受けることなく、広帯域に妨害波を検波でき、且つ、可変増幅部822の効果により、希望波と妨害波のレベル差を一定(D/U一定)とした状態で、利得制御を行なうことができる。
【0067】
[実施例2の動作]
図11は、実施例2の通信装置810Bの動作を説明する図である。ここで、図11は、実施例1の図9と対応し、希望波=−14dBmと希望波=−14dBmのとき(つまりD/U=0dBの場合)の入力増幅部812の減衰量とS/N比及びIIP3をそれぞれ示した図である。
【0068】
通信装置810Bの入力レベルとSN比は実施例1と同じ図7に示したのと同じ特性とである。レベル検出部824の閾値は、実施例1と同様に−30dBmであるとする。希望波=−30dBmと妨害波=−14dBmのときは、実施例1と同様に、図8に示した動作をする。
【0069】
実施例2の通信装置810Bにおけるレベル検出部824のレベル計算は、図11中に示した通りである。例えば、検波閾値を−30dBmとしており、AGCスタート=−50dBmであるので、D/U=−20dBで利得を制御する。例えば、図11において、図中に条件1で示すように、希望波=−14dBm、妨害波=−14dBmのときは、レベル検出部824による入力増幅部812に対する制御は−36dBの減衰(ATT)動作となる(∵−14−36=−50)。このとき、D/U=0dBであり、レベル検出部824への入力レベルは−50dBmで閾値以下であるので、この場合は動作しない。このため、不要なS/Nの劣化は起きない。
【0070】
一方、図中に条件2で示すように、希望波=−14dBm、妨害波=+6dBmのときは、レベル検出部824への入力レベルは−30dBmで丁度閾値であるので、この状態以降(つまり妨害波が+6dBm以上)がAGC動作開始の臨界点となる。臨界点がD/U=−20dBであることが分かる。
【0071】
更に、図中に条件3で示すように、希望波=−50dBm、妨害波=−30dBmのときは、レベル検出部824による入力増幅部812に対する制御は±0dBの減衰(ATT)動作となる(∵−50−0=−50)。このとき、レベル検出部824への入力レベルは−30dBmで丁度閾値であるので、この状態以降(つまり妨害波が−30dBm以上)がAGC動作開始の臨界点となる。この場合も、臨界点がD/U=−20dBであることが分かる。
【0072】
実施例2によれば、可変増幅部822の効果により、希望波と妨害波のレベル差を、検波閾値とAGCスタートとの差にと対応するD/U比を一定として利得制御を行なうことができる。このように、実施例2では、実施例1のように妨害波の絶対値レベルで検波して利得を制御するのではなく、D/U一定で利得制御をかけるので、希望波と妨害波の各入力レベルに関わらず、常に最適な動作点で利得制御を行なうことができる。上記のようにD/U一定で利得制御をかける本発明を実施することで入力レベルに関わらず常に最適な動作点で利得制御を行うことが可能となる。
【実施例3】
【0073】
図12は、実施例3を説明する図である。ここで、図12(A)は電子機器内における複数の通信装置の配置イメージを示し、図12(B)は通信装置の詳細構成例を示し、図12(C)は搬送周波数の周波数配置の例を示す。
【0074】
実施例3は、1つの電子機器の筐体内に複数の通信装置を配置して通信を行なう場合への適用例である。例えば、1つの電子機器内の同一基板内に全通信装置(通信チップ)が搭載され、各搬送搬送周波数を予め設定しておく形態である。電子機器内の回路基板上に、3組以上の送受信の組合せが、配置や電波の指向性等に拘わらず無作為に行なわれるような場合を想定する。
【0075】
例えば、図12では、3バンドの周波数配置を適用する場合で示している。図12(A)に示すように、電子機器751内の回路基板701上には、送信器の機能を持つ通信装置710_1と受信器の機能を持つ通信装置810_1の組、送信器の機能を持つ通信装置710_2と受信器の機能を持つ通信装置810_2の組、送信器の機能を持つ通信装置710_3と受信器の機能を持つ通信装置810_3の組、といった3組の送受信の組合せでなる信号伝送装置1Aが収容されている。
【0076】
図12(B)に示すように、通信装置710_1、通信装置710_2、通信装置710_3のそれぞれは、変調対象信号処理部712と、信号増幅部713と、ローカル周波数としての搬送周波数F_n(nは1、2、3の何れか)を生成する送信側局部発振部714と、周波数混合部715(いわゆるミキサー)と、出力増幅部717とを備え、出力増幅部717には送信アンテナ718が接続されている。送信側局部発振部714と周波数混合部715とで変調部が構成される。変調対象信号処理部712は、例えばローパスフィルタを有し、被変調信号の受信帯域幅を制限する。信号増幅部713は、変調対象信号処理部712から出力された信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部715は、信号増幅部713から出力された信号と送信側局部発振部714からの搬送信号(搬送周波数F_n)とを乗算することで変調処理を行なう。出力増幅部717は、周波数混合部715で変調された信号の振幅をゲイン倍する。
【0077】
図12(B)に示すように、通信装置810_1、通信装置810_2、通信装置810_3のそれぞれは、入力増幅部812と、搬送周波数F_nを生成する受信側局部発振部814と、周波数混合部815(いわゆるミキサー)と、復調信号処理部816(例えばローパスフィルタ)と、出力増幅部817とを備え、入力増幅部812には受信アンテナ811が接続されている。受信側局部発振部814と周波数混合部815とで復調部が構成される。入力増幅部812は、受信アンテナ811で受けた受信信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部815は、入力増幅部812から出力された受信信号と受信側局部発振部814からの搬送信号(搬送周波数F_n)とを乗算することで復調処理を行なう。復調信号処理部816は、例えばローパスフィルタを有し、復調信号の受信帯域幅を制限する。出力増幅部817は、復調信号処理部816から出力された復調信号の振幅をゲイン倍する。
【0078】
図12(B)に示すように、通信装置710_1に全受信帯域幅Bw1の被変調信号S711を入力し、搬送周波数F_1の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ811にてこの変調信号を受けて通信装置810_1に入力し、復調部で復調して復調信号S811を出力増幅部817から出力する。
【0079】
図12(B)に示すように、通信装置710_2に全受信帯域幅Bw2の被変調信号S721を入力し、搬送周波数F_2の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ811にてこの変調信号を受けて通信装置810_2に入力し、復調部で復調して復調信号S821を出力増幅部817から出力する。
【0080】
図12(B)に示すように、通信装置710_3に全受信帯域幅Bw3の被変調信号S731を入力し、搬送周波数F_3の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ811にてこの変調信号を受けて通信装置810_3に入力し、復調部で復調して復調信号S831を出力増幅部817から出力する。
【0081】
ここで、搬送周波数F_1、搬送周波数F_2、搬送周波数F_3の周波数配置としては、図12(C)に示すように、搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とが周波数差D12を隔て、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とが周波数差D23(=D12)を隔てて配置されている。搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔はH12であり、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔はH23(=H12)である。
【0082】
このような周波数配置の場合、周波数利用効率は高いが、混変調が問題となる。例えば、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が受信され非線形性を持つ増幅回路や周波数混合回路に入力されると、2つの搬送周波数の差の信号(妨害波成分)も出力される。図12(C)に示す周波数配置の場合、2つの搬送周波数の差が所望波の周波数近傍に存在することになり、妨害波成分も復調される“相互変調歪”の問題がある。典型的には、自局の受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅回路や周波数混合回路の線形性能が低いと受信帯域(通常は変調信号の1次成分だけを考えればよい)内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0083】
このようなケースにおいて、本実施形態(基本構成や変形構成1或いは変形構成2更には実施例1或いは実施例2)を適用することで、
【0084】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0085】
前記実施形態の記載を踏まえれば、特許請求の範囲に記載の請求項に係る技術の他に、例えば、以下の技術が抽出される。以下列記する。
[付記1]
入力信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた利得制御回路。
[付記2]
入力信号は希望波と妨害波とを含み、
信号判定部は、希望波と妨害波の各レベルを判定する
付記1に記載の利得制御回路。
[付記3]
信号判定部は、希望波のレベルと妨害波のレベルを区別することなく判定する
付記2に記載の利得制御回路。
[付記4]
信号判定部は、
第1増幅器に入力される入力信号を増幅する第2増幅器と、
第2増幅器の出力信号のレベルを検出するレベル検出部
とを有し、
第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは相対関係を持って制御される
付記3に記載の利得制御回路。
[付記5]
第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは同じに制御される
付記4に記載の利得制御回路。
[付記6]
第2増幅器は第1増幅器に対してサイズ比例で小さい
付記4又は付記5に記載の利得制御回路。
[付記7]
信号判定部は、
希望波のレベルを検出する第1レベル検出部と、
妨害波のレベルを検出する第2レベル検出部と、
第1レベル検出部と第2検出部の検出結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御するレベル判定部
とを有する付記2に記載の利得制御回路。
[付記8]
希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する
付記4乃至付記7の何れか1項に記載の利得制御回路。
[付記9]
第1増幅器の出力には、出力信号の帯域を希望波の帯域に制限する帯域制限部が設けられている
付記1乃至付記8の何れか1項に記載の利得制御回路。
[付記10]
第1増幅器の後段に、第1増幅器の出力信号のレベルと対応した信号のレベルを検出して第1増幅器の増幅率を制御する制御ループが設けられている
付記1乃至付記9の何れか1項に記載の利得制御回路。
[付記11]
受信信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、
第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた通信装置。
[付記12]
入力信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて信号処理を行なう信号処理部と、
第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた電子機器。
[付記13]
受信信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、
第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた電子機器。
[付記14]
第1増幅器、受信部、及び、信号判定部を具備する通信部を複数備えた
付記13に記載の電子機器。
[付記15]
入力信号を増幅する第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて、フィードフォワード系で第1増幅器の増幅率を制御する
利得制御方法。
[付記16]
入力信号は希望波と妨害波とを含み、
希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する
付記15に記載の利得制御方法。
【符号の説明】
【0086】
1…信号処理回路、10…利得制御回路、12…可変増幅部、14…信号処理部、20…信号判定部、22…可変増幅部、24…レベル検出部、26A…レベル検出部、26B…レベル検出部、28…レベル判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた利得制御回路。
【請求項2】
入力信号は希望波と妨害波とを含み、
信号判定部は、希望波と妨害波の各レベルを判定する
請求項1に記載の利得制御回路。
【請求項3】
信号判定部は、希望波のレベルと妨害波のレベルを区別することなく判定する
請求項2に記載の利得制御回路。
【請求項4】
信号判定部は、
第1増幅器に入力される入力信号を増幅する第2増幅器と、
第2増幅器の出力信号のレベルを検出するレベル検出部
とを有し、
第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは相対関係を持って制御される
請求項3に記載の利得制御回路。
【請求項5】
希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する
請求項4に記載の利得制御回路。
【請求項6】
第1増幅器の増幅率と第2増幅器の増幅率とは同じに制御される
請求項5に記載の利得制御回路。
【請求項7】
第2増幅器は第1増幅器に対してサイズ比例で小さい
請求項6に記載の利得制御回路。
【請求項8】
信号判定部は、
希望波のレベルを検出する第1レベル検出部と、
妨害波のレベルを検出する第2レベル検出部と、
第1レベル検出部と第2検出部の検出結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御するレベル判定部
とを有する請求項2に記載の利得制御回路。
【請求項9】
希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する
請求項8に記載の利得制御回路。
【請求項10】
第1増幅器の出力には、出力信号の帯域を希望波の帯域に制限する帯域制限部が設けられている
請求項1に記載の利得制御回路。
【請求項11】
第1増幅器の後段に、第1増幅器の出力信号のレベルと対応した信号のレベルを検出して第1増幅器の増幅率を制御する制御ループが設けられている
請求項1に記載の利得制御回路。
【請求項12】
受信信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、
第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた通信装置。
【請求項13】
入力信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて信号処理を行なう信号処理部と、
第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた電子機器。
【請求項14】
受信信号を増幅する第1増幅器と、
第1増幅器から出力された信号に基づいて受信処理を行なう受信部と、
第1増幅器に入力される受信信号を判定し、判定結果に基づいて第1増幅器の増幅率を制御する信号判定部
とを備えた電子機器。
【請求項15】
第1増幅器、受信部、及び、信号判定部を具備する通信部を複数備えた
請求項14に記載の電子機器。
【請求項16】
入力信号を増幅する第1増幅器に入力される入力信号を判定し、判定結果に基づいて、フィードフォワード系で第1増幅器の増幅率を制御する
利得制御方法。
【請求項17】
入力信号は希望波と妨害波とを含み、
希望波と妨害波のレベル差一定で第1増幅器の増幅率を制御する
請求項16に記載の利得制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195735(P2012−195735A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57725(P2011−57725)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】