説明

制御された凝集体サイズを有する水溶性ナノ粒子

複数の水溶性量子ドットを分散物中に提供することによって、分散水溶性量子ドットを形成し、水溶性量子ドットの凝集体サイズを調整する方法であって、複数の水溶性量子ドットは両親媒性ポリマーで修飾されており、両親媒性ポリマー単位の量子ドットに対する比率がより小さな量子ドット凝集体の分散物を得るためには高めに維持されて、より大きな量子ドット凝集体の分散物を得るためには低めに維持されるようにある量の両親媒性ポリマーが分散物に加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府に支援された研究又は開発に関する記述
適用されない。
【0002】
本発明は概してナノ粒子の分野に関する。より詳細には、本発明はナノ粒子凝集体のサイズを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
10−9メートルの2桁以内の少なくとも1つの寸法を有する粒子は一般的にナノ粒子であると考えられている。ナノ粒子は、輸送及び性質の観点から全単位として振舞う小さな物体として、個々の分子と固体との間のブリッジとして考えることができる。特に、サイズが小さいために、多数の特有の性質がこれらの粒子によって示されている。量子ドット、以下QDs、はナノ粒子の1つの分野であり、研究の焦点であって商業的応用に対して優れた可能性を示してきた。QDsは半導体、蛍光、又は放射特性を示し得る。例えば、QDsはそれらの高検出感度及び量子効率によって、生物学的標識のための有機染料に対して好適な代替品として使用されている。
【0004】
一般的に、QDsは無機物質から構成されているため、通常は水に不溶である。しかし、生物医学研究又は抗菌薬に対する代用品などの実質的な応用において使用するために、水溶性は必要な物理的特性である。従来の研究は様々な界面活性剤又は配位子を用いることでQDの水溶性を達成するよう行われてきた。例えば、ポリビニルピロリドン、以下PVPは水に溶解するポリマーである。PVPは疎水性及び親水性の成分の両方を有する両親媒性であり、PVPは不活性であるために人間による摂取に対して安全である。PVPは多数の錠剤の結合剤として、及び化粧品産業における応用のために使用されている。このポリマーは非含水システムにおいて表面の不動態化及び安定化を目的としてQDsを修飾するために使用されてきた。
【0005】
単一QDs及び制御されたQD凝集体サイズは、バクテリアなどの生細胞に対するQDsの効果の商業的応用及び基礎的研究の両方に対して特に重要である。なぜなら、異なる細胞は、異なるサイズで示されるが同じ化学成分を有するQDsに対して様々な反応を有し得るからである。しかしながら、今日まで、研究において生物医学的な応用に対して好ましい水溶液中での制御されたQD凝集体のサイズは主張されてこなかった。
【0006】
従って、材料の化学的性質を変えずに水中でQDsを分散させ得る新しい合成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態において、個々に分散された水溶性量子ドットを形成する方法は、1つ又は複数の量子ドット前駆体をポリマー溶液中で混合させることで水溶性量子ドットを形成することを含む。さらに、その方法は水溶性量子ドットを溶媒中に分散させることで分散物を形成することを含む。
【0008】
複数の水溶性量子ドットを分散物中に提供することによって、水溶性量子ドットの凝集体サイズを調整する方法において、複数の水溶性量子ドットは両親媒性ポリマーで修飾される。両親媒性ポリマー単位の量子ドットに対する比率は、より小さなQD凝集体の分散物を得るためには高めに維持されて、及びより大きなQD凝集体の分散物を得るためには低めに維持されるように、ある量の両親媒性ポリマーを分散物に添加することを含んでいる。
【0009】
以下の発明の詳細な説明がより良く理解され得るために、上記記載は発明の特徴及び技術的利点をやや広めに説明してきた。発明のさらなる特徴及び利点は、発明の特許請求の範囲の主要部を形成する本明細書の以下に記載されている。開示された概念及び特定の実施形態は、発明の同じ目的を実行するために、その他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用できると当業者に理解されるべきである。また、そのような同等の構成は、添付の特許請求の範囲に説明されているように発明の精神及び範囲から逸脱しないと当業者に理解されるべきである。
【0010】
表記及び用語
特定の用語は、特定のシステムの構成要素を参照した以下の説明及び特許請求の範囲全体において使用される。この文書は、名称は異なるが機能は異ならない構成要素を区別することを意図しない。
【0011】
以下の考察及び特許請求の範囲では、用語「含む」及び「有する」は制約がない態様で用いられているため、「・・を含むが、これに限定されない。」を意味するよう解釈されなければならない。
【0012】
さらに、考察及び特許請求の範囲では、用語“溶液”は、以下に示すものとほとんど同じ意味で制約がない態様で用いられ、“懸濁液”、“混合物”、“コロイド”、“エマルション”、“分散物”又は液体状態において維持される成分の組み合わせの理論によって制限されないように意味するよう解釈されなければならない。
【0013】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明のために、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ZnOQDsのPVP依存分散物の概念図である。
【図2】PVPが被覆されたZnOQDsとPVPが被覆されていないZnOQDsとを比較したX線回折グラフである。
【図3】5つの試料のゲル状ZnOQD溶液の構成の比較を示す図である。
【図4】ZnOQDゲル状溶液の試料の光散乱を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は個々に分散された水溶性量子ドットを形成するための方法の実施形態を示している。方法は1つ又は複数の量子ドット前駆体10を両親媒性ポリマー12を含む溶液中に分散させることで、水溶性量子ドット16を形成することを含む。水溶性量子ドットの形成によって、ドットは一般的に凝集体14を形成する。追加量の両親媒性ポリマー12を量子ドットの凝集体に加えることで、それらを分散させて水中に分散した量子ドット16を形成することができる。理論に制限されることなく、溶液中の両親媒性12ポリマーの量は量子ドットナノ粒子16の分散を決定する。すなわち、両親媒性ポリマー12の濃度が増加することによって、量子ドット凝集体14は個々に分散された量子ドット16となり得る。本明細書で使用されるように、語句「個々に分散された量子ドット」は約0.1nmから約100nm、好ましくは約1nmから約50nm、及び最も好ましくは約1nmから10nmの範囲の平均直径を有する量子ドットの単一粒子を指し得る。
【0016】
さらなる実施形態では、量子ドット凝集体14サイズを調節する方法は、両親媒性ポリマー12の濃度を溶液中で増加させて、溶液中での量子ドット凝集体14の分散を増加させることを含む。ある実施形態では、溶液中での両親媒性ポリマー14の濃度の増加は量子ドット凝集体14を希釈する。あるいは、量子ドット凝集体14を含む溶液に両親媒性ポリマー12を加えることは、凝集体14の分散物を増加させる。溶液中での両親媒性ポリマー12の濃度の増加は、凝集体14のサイズをさらに減少させる。開示された方法は、様々な応用のために、例えば、限定的ではないが、抗菌性応用、光電子的応用、又は生物医学的応用のために、量子ドット凝集体14サイズの微調整を可能とする。両親媒性ポリマーの濃度は望まれるQD凝集体サイズに合わせて調整される。また、両親媒性ポリマー量は量子ドットの表面積に依存する。
【0017】
1つ又は複数の量子ドット前駆体は量子ドットを形成するために当業者に知られている任意の化合物を含み得る。特に、1つ又は複数の量子ドット前駆体は半導体化合物を含むことができる。適した半導体化合物の例として、II−VI及びIII−V族半導体化合物群及びそれらの組み合わせを含み得る。II−VI半導体化合物群は元素周期表のII及びVI族のそれぞれから選ばれる元素を含み得る。あるいはIII−V族半導体は元素周期表のIII及びV族のそれぞれから選ばれる元素を含み得る。例示的な実施形態では、少なくとも元素は亜鉛(Zn)を含み、及び第2の元素は酸素(O)を含む。
【0018】
ある実施形態では、両親媒性ポリマーは当業者に知られたあらゆる両親媒性ポリマーを含む。また、当業者に理解されているように、両親媒性ポリマーは疎水領域及び親水領域を含む極性ポリマーである。ある実施例では、両親媒性ポリマーは水溶性ポリマーを含む。例示的な実施形態では、ポリマーはポリ(ビニルピロリドン)、以下PVP、を含む。
【0019】
ある実施形態では、水溶性量子ドットは塩基性溶液中でPVP存在下において酢酸亜鉛二水和物を加水分解することによって調製される。量子ドットは酢酸亜鉛二水和物を塩基性溶媒中で溶解させることによって調製される。好ましい実施形態では、塩基性溶媒は水酸化カリウムである。あるいは、塩基性溶媒は当業者に知られている任意の適した塩基性溶媒を含み得る。さらなる実施形態では、水酸化カリウムのモル濃度は約5mMから約30mMの間であり、より好ましくは約10mMから約20mMの間であり、そして最も好ましくは約15mMから約17mMの間である。ある実施形態では、酢酸亜鉛二水和物は塩基性溶液に直接混合される。
【0020】
1つの実施形態では、Zn2+の(例えばKOHなどの)塩基に対するモル比は約0.1から約3.0の範囲、好ましくは約0.3から約0.7の間、そして最も好ましくは約0.45から約0.55の間に維持される。Zn2+のビニルピロリドンモノマーの反復単位に対するモル比は約0.4から約2.0の範囲、好ましくは約0.75から約1.0の間、及びより好ましくは、約0.83から約0.95の間に維持される。溶液中でのZn2+の濃度は約8mMから約200mMの範囲、好ましくは約20mMから約80mMの間、そしてより好ましくは約30mMから約50mMの間に維持される。
【0021】
ある実施形態では、混合溶液は高温で機械式撹拌によって反応される。撹拌(stirring)、ソニケーション(sonication)、振動(shaking)及びスワーリング(swirling)は全て機械式撹拌の適した方法であるが、これらに制限されない。好ましい実施形態では、溶液は還流される間、撹拌される。還流の工程は好ましくは溶液の沸点近くの温度で行われる。より詳細には、温度は約40℃から約200℃のであり、好ましくは約50℃から約90℃の間であり、及び例示的な実施形態では約60℃である。この反応は約1時間から約5時、好ましくは約1時間から約3時間、及び最も好ましくは約1.75時間から約2.25時間の間継続される。還流の後、ZnOQDsはPVPで被覆又はコートされた量子ドットであると考え得る。ある実施例では、PVP被覆ZnOQDsは黄色がかった色を有している。
【0022】
理論に制限されることなく、反応が還流された後に、結果的に生じるコロイド溶液は濃縮される。ある実施形態では、濃縮された溶液は濃縮コロイド分散物であり得る。溶液は、約20℃から約50℃、より好ましくは約30℃から約50℃の間、及び好ましい実施形態では約40℃にて真空下で蒸発されることによって濃縮される。蒸発の工程は、回転蒸発、熱蒸発、フラッシュ蒸発、低圧蒸発、又はそれらの任意の組み合わせを利用してさらに行うことができる。あるいは、当業者に知られているような、溶媒を除去することで溶液を濃縮するその他の方法が使用されてもよい。
【0023】
ある実施形態では、PVP被覆ZnOQDsは、ゲル状のコロイド分散物をさらに形成して沈殿する。ゲル状コロイド分散物は濃縮コロイドを含み得る。濃縮溶液からのZnOQDsの沈殿は追加的な溶媒を蒸発−濃縮溶液に混合することによって行われる。溶媒は当業者に知られた任意の溶媒であり得る。例示的な実施形態では、溶媒のヘキサン及びイソプロパノールが、濃縮コロイド分散物又はゲル状物質に混合される。濃縮コロイド分散物のヘキサンに対する体積比は約0.05から約1の範囲、好ましくは約0.1から約0.3の間、及びより好ましくは約0.18から約0.23の間である。濃縮コロイド分散物のイソプロパノールに対する体積比は約0.3から約3の範囲、好ましくは約0.7から約1.2の間、及びより好ましくは約0.9から約1.1の間である。ある実施形態では、混合物はPVP被覆ZnOQDs凝集体が十分に容器の底に沈殿するまで約0℃に維持される。さらなる実施形態では、容器はゲル状ZnOQDsをさらに堆積させて且つ上澄みを除去するために遠心分離される。遠心分離及び上澄みの除去の後に、ゲル状ZnOQDsは溶媒中に再分散される。ある実施形態では、溶媒はヘキサン、水、ベンゼン、トルエン、アセトン、エタノール、又はメタノールを含み、好ましい実施形態では、溶媒はメタノールである。理論に制限されることなく、ゲル状ZnOQDsの溶媒中での洗浄は、約10回、好ましくは約1回から3回の間、及び例示的な実施形態では約2回繰り返されることで、PVP被覆ZnOQDsが精製される。精製されたPVP被覆ZnOQDsは、制限されないが、メタノールなどの溶媒中に再分散される。すべての溶媒はすでに本明細書中で上述された蒸発手段によって完全に除去される。あるいは、溶媒は当業者に知られている任意の適した方法によって除去し得る。好ましい実施形態では、溶媒は真空下で回転蒸発によって除去される。少量の水性溶媒が乾燥されたPVP被覆ZnOQDsに加えられることで、ZnOQDsのゲル状分散物を再形成する。溶媒は当業者に知られている任意の適した水性溶媒を含み得る。ある実施例では、溶媒は蒸留された脱イオン水を含む。さらなる実施形態では、溶媒の体積は約1mLから約10mLの間、好ましくは約2mLから約9mLの間、及び最も好ましくは約4mLから約6mLの間の蒸留脱イオン水である。さらなる実施形態では、両親媒性ポリマー被覆、又はコートQD凝集体は少なくとも1年間水中で安定である。
【0024】
本発明の様々な代表的な実施形態をさらに示すために、以下の例が提供される。
【実施例】
【0025】
ゲル状ZnOQDsの調製
(99.99%、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から得られた)16mMのKOH、及び(MW8000、シグマ−アルドリッチから得られた)1.332gのPVPが、最初に200mlのメタノールに60℃で30分間還流及び撹拌されながら溶解されることで、均一溶液が得られた。次に、40μMの(99.99%、フルカ(Fluka)から得られた)酢酸亜鉛二水和物は直接塩基性メタノール溶液に加えられた。[Zn2+]/[K]=0.5のモル比を有するZn2+及びKの濃度はそれぞれ40及び80mMにそれぞれ調製された。[Zn2+]のPVP(反復単位)に対するモル比は1:1.5である。その後、この開始溶液は還流及び撹拌されて60℃で反応に供された。2時間の反応時間の後、コロイド分散物は真空下で回転蒸発によって40℃で10倍に濃縮された。
【0026】
黄色がかったPVP被覆ZnOQDsは沈殿して、ゲル状ZnOQDsはヘキサン:濃縮コロイド分散物:イソプロパノール=5:1:1の体積比で、ヘキサン及びイソプロパノールを濃縮コロイドに加えた後にすぐに形成された。混合物は、PVP被覆ZnOQD凝集体が完全に容器の底に堆積するまで0℃で12時間維持された。遠心分離及び上澄みの除去の後に、ゲル状ZnOQDsはメタノール中で再分散された。上記の操作はPVP被覆ZnOQDsを精製するために少なくとも2回繰り返された。精製されたPVP被覆ZnOQDsはメタノール中で再分散されて、その後メタノール及び残りの溶媒は真空下で回転蒸発によって完全に除去された。5mlの蒸留、脱イオン水が乾燥されたPVP被覆ZnOQDsに加えられることで、ZnOQDsのゲル状分散物が形成された。(以下、「試料A」と指定される)このゲル状試料は約0.6gのZnOQDsを含有していた。
【0027】
ゲル状及び水溶性ZnOQDsの特性
図2はPVP被覆ZnOQDsのX線回折(XRD)粉末図形を示している。これは、Cu−Kα入射放射線(λ=1.5418Å)を用いたブルカーD8新型粉末X線回折計(Bruker D8 Advanced Powder X-ray Diffractometer)によって発生したものである。洗浄した後に、XRD試料はゲル状ZnOQDsを110℃で2時間乾燥させて、すり鉢とすりこぎで得られた粉末をすりつぶして作成された。
【0028】
精製されたPVP被覆ZnOQDsに対する高分解能透過電子顕微鏡法(HR−TEM)は、200kVで稼働されるJEOL 2010 HR−TEMを用いて実行された。TEM試料は精製PVP被覆ZnOQDsを取ってそれらをメタノール中に再分散させて、混合物を希釈して、その後コロイド分散物の液滴を400メッシュの炭素被覆銅グリッド上に載せることによって作成された。その後、グリッドは画像化する前に1日デシケータ内で乾燥された。
【0029】
PVP被覆ZnOQDsの水中での動的光散乱(DLS)はゼータパルス(ZetaPALS)(ブロックヘブン インスツルメンツ(Brookhaven Instruments))を用いて実行された。コロイド試料は最小限のノイズで最高の信号を達成するために希釈された。試料AからEはZnOなしのPVPに加えて試験された。得られた自己相関関数は数値法と一致して、構造因子及び時間依存強度は平均流体力学的移動度を定量化するために使用され、それらは凝集/単一粒子サイズに直接関連する。
【0030】
図2の挿入図は単一PVP被覆ZnOQDのTEM画像を示している。この結晶QD粒子は観察されるほとんど全ての粒子に見られる球状の代表物である。また、TEMは約4から5nmに見積もられる比較的均一なサイズ分布を明らかにした。対応するXRD粉末図形(図1)はZnOのウルツ鉱型構造を示している。デバイ−シェラー(Debye-Scherrer)式を基にした平均粒子サイズ、t、の計算は、
t=0.89λ/(βcosθ)、
によって与えられる。式中、λはX線波長(1.5418Å)であり、βは回折ピークの半値全幅であり、及びθは回折角である。この方程式より、私たちは、

であることを発見し、それはTEM観測と一致している。
【0031】
制御された凝集サイズを有する水溶性ZnOQDsの調製
PVPはゲル状試料に加えられて、その後、水が加えられる。PVP量を変化させることによって、凝集体サイズの制御が達成される。これはA、B、C、D及びEの文字によって指定される5つの試料を作成することによって示されている。
【0032】
実施例1の上述されたゲル状試料(図3A)から、0.1gのZnOQDsが100mlの水に分散された。ソニケーションの後、分散物はZnO凝集体の分散によって濁った(図3B)。(10、20及び30gの)PVPはゲル状試料(0.1gZnOQDs)に加えられて、その後、水は全体の体積が100mlに到達するまでそれぞれの試料に加えられた。これらの3つの試料は図3C、3D、及び3Eとしてそれぞれ示されている。
【0033】
図3は精製されたゲル状ZnOQDs(図3A)、及び異なる量のPVPを用いて水中で分散されたZnOQDs(図3B−E)の画像を示している。光散乱が徐々に減少することは、加えられるPVPの量が増加するにつれて見られ、それは凝集体サイズの減少と一致している。図3Bの場合では、初期合成の後において、PVPは加えられず、(数百ミクロンサイズの)大きいZnOQD凝集体は溶液がほぼ不透明となる程度に可視光を散乱させる。図3Cに示されるように、PVP:ZnO=100:1のとき、溶液はZnOQD凝集体サイズの減少によって透明となるが、ZnOQD凝集体はまだ数百nmから数ミクロンの大きさである。PVPの量がPVP:ZnO=200:1まで増加すると(図3D)、溶液は透明となる。それはZnOQD凝集体が100nmのサイズまで減少したことを示し、可視光はもはや散乱されない。図3Eでは、より多くのPVPが加えられても、図3Dに示されるのと同様の透過性を示すが、分散物はわずかに黄色である。図4に示されているような動的光散乱は、図3D及び3Eに示される試料における実際のZnOQD凝集体サイズを見積もるために使用されてきた。図3DにおけるZnOQD凝集体の平均サイズは約10nmから14nmまで広い後部が伸びて見積もられ、分散物は個々に分散されたZnOQDsが低率で含まれることを示している。図3Eにおける試料の場合では、4−5nmの平均粒子サイズは水中に分散された単一ZnOQDsを指している。従って、使用されるPVPの量を調節することによって、ZnOQDsは水中ミクロンサイズ凝集体から単一QDsまで低下させ得る。図1はこの概念を図式的に表している。
【0034】
発明の好ましい実施形態が上記に示され説明されてきたが、それ自体の修正も発明の精神及び教示から逸脱することなく当業者によって行われ得る。本明細書に記載された実施形態は単なる例示であり、制限を意味するものではない。本明細書に開示された多くの変更及び修正は可能であり、発明の精神の範囲内である。従って、保護の範囲は上記記載によって制限されず、以下の特許請求の範囲によってのみ制限され、その範囲は特許請求の範囲の要旨と同等なもの全てを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散水溶性量子ドットを形成する方法であって、
a)第1ポリマー溶液を形成する段階、
b)量子ドット前駆体溶液を第1ポリマー溶液中で混合させて被覆量子ドット溶液を形成する段階、
c)被覆量子ドット溶液中の第1ポリマー濃度を変更して量子ドットを分散させる段階、及び
d)量子ドットを溶液中で再懸濁させて分散水溶液量子ドットを形成する段階を含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、a)は両親媒性ポリマー溶液を溶解させる段階を含む方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、両親媒性ポリマー溶液はポリ(ビニルピロリドン)を含む方法。
【請求項4】
請求項2の方法であって、塩基性溶液は少なくとも1つの水酸化物の塩基を含む方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、量子ドット前駆体溶液は、II−VI族化合物、III−V族化合物及びそれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つを含む方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、量子ドット前駆体溶液は亜鉛(Zn2+)及び酸素を含む方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、量子ドット前駆体溶液はb)の前に塩溶液に溶解される量子ドット前駆体を含む方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、塩溶液は少なくとも1つの水酸化物塩を含む方法。
【請求項9】
請求項7の方法であって、亜鉛(Zn2+)量子ドット前駆体溶液と塩溶液とを、前駆体の塩に対するモル比が少なくとも0.1:1で混合する段階をさらに含む方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、b)は量子ドット前駆体溶液と第1ポリマー溶液とを体積比が少なくとも1:1.5で混合する段階を含む方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、c)は追加の第1ポリマー溶液を被覆量子ドット溶液に加える段階を含む方法。
【請求項12】
請求項1の方法であって、c)は被覆量子ドット溶液を少なくとも45℃の温度で還流する段階を含む方法。
【請求項13】
請求項1の方法であって、c)は、被覆量子ドット溶液の機械的撹拌を含む方法。
【請求項14】
請求項1の方法であって、c)は溶液を少なくとも20℃の温度で蒸発させる段階を含む方法。
【請求項15】
請求項1の方法であって、c)はゲル状沈殿物を形成する段階を含む方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、ゲル状沈殿物を溶媒中で洗浄する段階をさらに含む方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、ゲル状沈殿物の溶媒に対する体積比は少なくとも0.1:1である方法。
【請求項18】
請求項1の方法であって、d)は遠心分離で上澄みを除去する段階をさらに含む方法。
【請求項19】
水溶性量子ドット凝集体サイズを調整する方法であって、
a)両親媒性ポリマーで修飾されている複数の水溶性量子ドットを、分散物中に提供する段階、
b)両親媒性ポリマーが量子ドット凝集体を分散させるように、所定量の両親媒性ポリマーを分散物に加える段階、を含む方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、両親媒性ポリマーはポリ(ビニルピロリドン)である方法。
【請求項21】
請求項19の方法であって、1つ又は複数の量子ドットはII−VI及びIII−V化合物及びそれらの組み合わせを含む方法。
【請求項22】
請求項19の方法であって、1つ又は複数の量子ドットはZnOを含む方法。
【請求項23】
請求項19の方法であって、量子ドットの両親媒性ポリマーに対するモル比は少なくとも0.75:1である方法。
【請求項24】
請求項22の方法であって、量子ドットの両親媒性ポリマーに対するモル比は少なくとも0.4:1である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−509312(P2011−509312A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527151(P2010−527151)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077723
【国際公開番号】WO2009/079061
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510081159)ザ テキサス エー アンド エム ユニバーシティ システム (1)
【Fターム(参考)】