説明

制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートの製造方法

【課題】制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを効率よく簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置で、該シートに機械的に制御された反りを与えることを特徴とする。本発明の製造方法において、好ましくは、前記シートが前記位置で上下1組の反り制御ロール間を通過するようにし、該反り制御ロールの形状を選択することにより、および/または、該反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置することにより、前記シートに機械的に制御された反りを与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂シートは、例えば、押出成形法により製造される。この場合、熱可塑性樹脂シートは、樹脂組成物を加熱溶融し、ダイスから押出した後、冷却ロールで圧延し、ガイドロールを経て、引取ロールなどで引き取りながら冷却固化することにより得られる。熱可塑性樹脂シートを押出成形法で製造する場合、一般的には、反りを抑制して平坦なシートを得ることを意図して、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷却ロールの温度を調節し、かつ押し出されたシートを加熱することにより、温度を高くした後、緩やかに徐冷することにより、内部応力を緩和する方法が開示され、特許文献2には、最終の冷却ロールと最初のガイドロールとの間でシートに撓みを持たせることにより、内部応力を緩和する方法が開示され、特許文献3および4には、第2および第3冷却ロールの速度比を調節し、ロール温度を比較的低めに設定することにより、内部応力の発生を抑制する方法が開示され、特許文献5には、特許文献2および3に開示された方法を併用する改良方法が開示されている。
【0004】
このように、従来技術では、内部応力の発生を抑制したり、内部応力を緩和したりすることにより、反りを抑制して平坦なシートを得ることに主眼が置かれていた。
【0005】
ところが、熱可塑性樹脂シートの用途によっては、むしろ意図的に反りを与えることが必要な場合がある。例えば、液晶表示装置や医療用モニターなどのバックライトユニットに用いる光拡散板は、製造時には平坦であっても、空気中の水分を吸収した後、ライトに対向する側がライトの熱で乾燥して収縮することにより、表示面側に向かう凸状の反りが発生して、バックライトユニットを使用する際の表示性能に悪影響を及ぼすという問題点がある。
【0006】
また、建材用途において、R形状の部分に施工する場合、反りのない平坦な建材に比べて、意図的に反りを与えた建材は、下地への沿い性が良好であり、建材にかかる応力も低減される。反りを有する建材として、熱可塑性樹脂シートを製造する場合は、いったん平坦なシートを押出成形してから、熱間成形によって反りを与える方法が採用されてきた。
【0007】
しかし、この方法では、押出成形の工程とは別に熱間成形の工程が余分に必要となり、建材の製造コストが上昇するという問題点がある。
【0008】
そこで、特許文献6には、熱可塑性樹脂シートの製造ラインを利用して、冷却ロールから出たシートの温度が所定の範囲内にあるときに、シートを加熱または冷却してシート上下面の温度差を制御することにより、シートの反り量を調節する方法が提案されている。
【0009】
しかし、この方法では、シート上下面の温度差を精度よく制御するのが困難であり、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを製造することは困難であると思われる。
【特許文献1】特開平6−344417号公報
【特許文献2】特開平7−276471号公報
【特許文献3】特開2001−139705号公報
【特許文献4】特開2005−81757号公報
【特許文献5】特開2004−126185号公報
【特許文献6】特開2002−120249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを効率よく簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、種々検討の結果、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近である位置で、該シートに機械的に(場合によっては、さらに熱的に)制御された反りを与えることができることを見出して、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置で、該シートに機械的に制御された反りを与えることを特徴とする制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートの製造方法(以下「本発明の製造方法」ということがある。)を提供する。
【0013】
本発明の製造方法において、好ましくは、前記シートが前記位置で上下1組の反り制御ロール間を通過するようにし、該反り制御ロールの形状を選択することにより、および/または、該反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置することにより、前記シートに機械的に制御された反りを与える。なお、前記反り制御ロールの位置における前記シートの温度は、好ましくは、(Tg±20℃)の範囲内にある。また、前記反り制御ロールの温度を上下で調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、および/または、前記反り制御ロールの位置またはその付近で、前記シート上下面の温度差を調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、前記シートにさらに熱的に制御された反りを与えてもよい。
【0014】
本発明の製造方法において、前記シートを構成する熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂およびノルボルネン系樹脂よりなる群から選択され、また、光拡散性を発現するために、微粒子を含有していてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記製造方法により得られることを特徴とする制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートが効率よく簡便に得られる。得られた熱可塑性樹脂シートは、例えば、光拡散板として、液晶表示装置のバックライトユニットに用いる場合には、予めライト側に向かうわずかな反りを与えておき、使用時にライトの熱でほぼ平坦になるように設計しておけば、表示面側に向かう反りが発生して液晶表示パネルを押すことがないので、液晶表示装置の表示性能に悪影響を及ぼすことがない。また、医療用モニターなどのバックライトにおいても同様に、予めライト側に向かうわずかな反りを与えておき、使用時にライトの熱でほぼ平坦になるように設計しておけば、医療用モニターなどの表示性能に悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
≪制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートの製造方法≫
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置で、該シートに機械的に制御された反りを与えることを特徴とする。ここで、「反り」とは、熱可塑性樹脂シートが平坦な場合からのずれを意味し、具体的には、熱可塑性樹脂シートを吊り下げた状態で、押出成形の流れ方向(以下「縦方向」ということがある。)および押出成形の幅方向(以下「横方向」ということがある。)の相対する各辺の中央に糸を張った場合に、シートの中央部から糸までの距離を意味する。なお、シートが表面側に反った場合(すなわち、反りが上向きに凸状の場合)を+、シートが裏面側に反った場合(すなわち、反りが下向きに凸状の場合)を−で表記する。
【0018】
本発明の製造方法において、反りの大きさは、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、−100mm以上、−5mm以下または+5mm以上、+100mm以下程度の範囲内である。なお、熱可塑性樹脂シートの反りは、縦方向および/または横方向に沿って付けられている。ここで、反りが縦方向に沿って付けられているとは、シートを横方向から見たときに、シートが上向きまたは下向きに凸状に見えることを意味し、反りが横方向に沿って付けられているとは、シートを縦方向から見たときに、シートが上向きまたは下向きに凸状に見えることを意味し、反りが縦方向および横方向に付けられているとは、シートの周辺部から中央部に向かって上向きまたは下向きに凸状に湾曲していることを意味する。なお、熱可塑性樹脂シートが縦方向および横方向に反りを有する場合、用途によっては、反りの大きさは縦方向および横方向で同程度であることが好ましい。
【0019】
本発明の製造方法において、好ましくは、前記シートが前記位置で上下1組の反り制御ロール間を通過するようにし、該反り制御ロールの形状を選択することにより、および/または、該反り制御ロールの高さを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置することにより、前記シートに機械的に制御された反りを与える。なお、前記反り制御ロールの位置における前記シートの温度は、好ましくは、(Tg±20℃)の範囲内にある。シートの温度が(Tg−20℃)未満である場合には、シートの温度が低すぎるので、シートに反りを与えることが困難なことがある。逆に、シートの温度が(Tg+20℃)を超える場合には、シートの温度が高すぎるので、シートに与えた反りの大きさが変化して、シートに所望の反りを与えられないことがある。
【0020】
また、前記反り制御ロールの温度を上下で調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、および/または、前記反り制御ロールの位置またはその付近で、前記シート上下面の温度差を調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、前記シートにさらに熱的に制御された反りを与えてもよい。
【0021】
本発明の製造方法において、押出成形に用いる上下1組の反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置すれば、シートの縦方向に沿って反りを与えることができる。また、上下1組の反り制御ロールとして、例えば、クラウニングや逆クラウニング、弓形など形状を有するロールを用いれば、シートの横方向に沿って反りを与えることができる。さらに、上下1組の反り制御ロールの温度を上下で変えることにより、シート上下面の温度差を調節してシート上下面の冷却速度に差を生じさせても、反りを与えることができる。このような反り制御ロールによる反りの制御に加えて、押出成形の流れ方向において反り制御ロールより下流側の位置で、シートを加熱および/または冷却することにより、シート上下面の温度差を調節してシート上下面の冷却速度に差を生じさせてもよい。なお、シートを加熱および/または冷却することにより、シート上下面の温度差を調節する位置は、できる限り反り制御ロールに近い方が好ましい。
【0022】
上記のように、反り制御ロールによる反りの制御に加えて、シート上下面の温度差を調節することを併用すれば、より大きい反りを与えることができる。より大きい反りを与えるには、例えば、上側の反り制御ロールとして、逆クラウニング形状のロールを用い、下側の反り制御ロールとして、クラウニング形状のロールを用い、および/または、反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側に配置し、かつ上側の反り制御ロールの温度を下側の反り制御ロールの温度より低く設定し、かつ反り制御ロールを通過したシートの表面を冷却し、および/または、前記シートの裏面を加熱するか;あるいは、上側の反り制御ロールとして、クラウニング形状のロールを用い、下側の反り制御ロールとして、逆クラウニング形状のロールを用い、および/または、反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから下側に配置し、かつ上側の反り制御ロールの温度を下側の反り制御ロールの温度より高く設定し、かつ反り制御ロールを通過したシートの表面を加熱し、および/または、前記シートの裏面を冷却すればよい。
【0023】
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートに、反り制御ロールの高さ、形状、温度に応じて制御された反りを与える方法であるので、特許文献6に記載された方法、すなわち、シートを加熱または冷却してシート上下面の温度差を制御することにより、シートの反り量を調節する方法に比べて、反りの制御が容易かつ確実であり、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを効率よく簡便に製造することができる。
【0024】
熱可塑性樹脂シートの材質としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;アクリル−スチレン系樹脂;ノルボルネン系樹脂;などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリカーボネート系樹脂が特に好適である。
【0025】
なお、熱可塑性樹脂シートは、単一の材質から形成されていても2種以上の材質から形成されていてもよく、また、単一の層から構成されていても複数の層から構成されていてもよい。
【0026】
シートを構成する熱可塑性樹脂には、例えば、安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、分散剤、蛍光増白剤、拡散剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
【0027】
あるいは、熱可塑性樹脂シートの少なくとも片面に、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、蛍光増白剤、拡散剤などの添加剤を含有する薄層を設けてもよい。これらの添加剤は、単一の薄層に全部を含有させても、複数の薄層に、別々に、または、組み合わせて含有させてもよい。
【0028】
薄層を構成する材質としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの樹脂のうち、(メタ)アクリル系樹脂が好適である。この場合、帯電防止剤や紫外線吸収剤を配合する代わりに、あるいは、配合すると共に、帯電防止性を有する(メタ)アクリル系樹脂や紫外線吸収性を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いてもよい。
【0029】
薄層の厚さ(薄層が複数の場合は各薄層の厚さ)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄層の厚さが100μmを超えると、熱可塑性樹脂シートと異なる材質を用いた場合、熱収縮率の差や吸水率の差による意図しない反りが発生することがある。なお、薄層の厚さは、薄層を形成した熱可塑性樹脂シートにおける任意の10点をミクロトームで厚さ15μmにスライスし、その断面を顕微鏡で観察して薄層の厚さを実測し、その10点平均値とする。
【0030】
薄層には、例えば、安定化剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その種類などに応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
【0031】
熱可塑性樹脂シートの厚さ(薄層を形成した場合は薄層を含めた厚さ)は、好ましくは0.5mm以上、15mm以下、より好ましくは1mm以上、10mm以下である。厚さが0.5mm未満であると、熱可塑性樹脂シートの機械的強度が低下することがある。逆に、厚さが15mmを超えると、熱可塑性樹脂シートの押出成形が困難になり、シートの品質が低下することがある。
【0032】
熱可塑性樹脂シートを光拡散板として用いる場合には、例えば、上記のような熱可塑性樹脂に、透明な微粒子と、必要に応じて、蛍光増白剤および酸化防止剤とを、それぞれ適量添加することになるが、この場合の熱可塑性樹脂シートは、ヘイズが好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であり、および/または、全光線透過率が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。なお、ヘイズおよび全光線透過率は、JIS K7105に準拠した測定法により測定した値である。また、熱可塑性樹脂シートに含有される微粒子は、光源からの光を均一かつ良好に拡散するために、実質的に均一に分散されていることが好ましい。
【0033】
微粒子の材質としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、これらの共重合体などの合成樹脂;ガラス;スメクタイト、カオリナイトなどの粘土化合物;シリカ、アルミナなどの無機酸化物;などが挙げられる。これらの材質のうち、シリコーン系樹脂、シリカが特に好適である。
【0034】
微粒子は、単一の材質から形成されていても2種以上の材質から形成されていてもよく、また、材質が同じ1種類の微粒子から構成されていても材質が異なる2種類以上の微粒子から構成されていてもよい。
【0035】
微粒子の形状としては、例えば、球状、扁平状、楕円体状、多角形状、板状などが挙げられる。これらの形状を有する微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの形状を有する微粒子のうち、球状粒子が好適であるが、球状粒子よりも強い光拡散性を有しており、少量の添加で高い輝度が得られることから、扁平状、楕円体状、多角形状、板状などの異形粒子が好適な場合もある。
【0036】
微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、30μm以下、より好ましくは0.5μm以上、25μm以下、さらに好ましくは1μm以上、20μm以下である。平均粒子径が0.1μm未満であると、熱可塑性樹脂シートに入射した光を充分に拡散することができないことがある。逆に、平均粒子径が30μmを超えると、熱可塑性樹脂シートを通過する光量が減少し、輝度が低下することがある。なお、微粒子の平均粒子径は、顕微鏡で観察した任意の微粒子100個について粒子径を測定し、単純平均した値である。また、微粒子が異形粒子の場合、最大径と最小径との平均を粒子径とする。
【0037】
微粒子の使用量は、シートを構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、20質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上、10質量部以下である。使用量が0.1質量部未満であると、熱可塑性樹脂シートに入射した光が充分に拡散されないことがある。逆に、使用量が20質量部を超えると、熱可塑性樹脂シートの押出成形が困難になることや、熱可塑性樹脂シートを通過する光量が減少し、輝度が低下することがある。
【0038】
シートを構成する熱可塑性樹脂として特に好適なポリカーボネート系樹脂は、例えば、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法で反応させることにより得られる。
【0039】
二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称、ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。これらの二価フェノールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの二価フェノールのうち、ビスフェノールAが特に好適である。
【0040】
また、カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメートなどが挙げられ、具体的には、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが用いられる。
【0041】
上記のような二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート系樹脂を製造する際には、必要に応じて、触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤などを用いてもよい。
【0042】
また、ポリカーボネート系樹脂は、3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート系樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート系樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート系樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0043】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、粘度平均分子量で表して、好ましくは15,000以上、40,000以下、より好ましくは18,000以上、35,000以下である。なお、粘度平均分子量は、塩化メチレン100mLにポリカーボネート系樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた値である。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−40.83
(ただし、c=0.7、[η]は極限粘度、Mは粘度平均分子量)
【0044】
ポリカーボネート系樹脂には、必要に応じて、例えば、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステルなどの熱安定剤;トリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル系などの紫外線吸収剤;アニオン系、カチオン系、両性系、非イオン系の界面活性剤や、導電性樹脂などの帯電防止剤;アントラキノン系染料などのブルーイング剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAの低分子量ポリカーボネート、デカブロモジフェニレンエーテルなどの難燃剤;三酸化アンチモンなどの難燃助剤;などの添加剤を、その性能を発現する添加量で配合してもよい。
【0045】
上記したように、本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートに、反り制御ロールの高さ、形状、温度に応じて制御された反りを与える方法である。
【0046】
本発明の製造方法における押出成形の条件、例えば、ダイスからの吐出量、冷却ロールの温度や間隔、引取ロールの引き取り速度などは、平坦な熱可塑性樹脂シートを製造する場合と実質的に同様の条件を設定すればよく、特に限定されるものではない。ただし、ダイスからの吐出量を調節して、および/または、各種ヒーターなどの加熱手段を用いて、反り制御ロールの位置におけるシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近、好ましくは(Tg±20℃)の範囲内であるようにする必要がある。なお、一般的には、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置は、ダイスからの吐出量を多くすると、押出成形の流れ方向における下流側に移動し、逆に、ダイスからの吐出量を少なくすると、押出成形の流れ方向における上流側に移動する。
【0047】
本発明の製造方法に用いる代表的なシート押出機の構成を模式的に図1に示す。このシート押出機10は、押出装置(図示せず)、ダイス11、第1冷却ロール12、第2冷却ロール13、第3冷却ロール14、ガイドロール15、引取ロール16からなる通常のシート押出機であり、さらに付加的に、第3冷却ロール14とガイドロール15との間に、上下1組の反り制御ロール17が配置されている。なお、反り制御ロール17は、上側または下側に移動して、その高さを調節することができる。
【0048】
図1に示すシート押出機を用いて熱可塑性樹脂シートを製造する際に、反り制御ロール17の移動に加えて、シート上下面の温度差を調節するには、例えば、反り制御ロール17とガイドロール15との間に、好ましくは、押出成形の流れ方向において反り制御ロール17の直ぐ下流側に、シートを加熱するための加熱手段、シートを冷却するための冷却手段、必要に応じてシートを保温するための保温手段などを配置すればよい。シートの上面を高温側にし、シートの下面を低温側にするには、シートの上側に加熱手段と、必要に応じて保温手段とを配置し、および/または、シートの下側に冷却手段を配置し、あるいは、シートの上面側を低温側にし、シートの下面を高温側にするには、シートの上側に冷却手段を配置し、および/または、シートの下側に加熱手段と、必要に応じて保温手段とを配置する。加熱手段としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ヒーター、熱風機などが挙げられ、冷却手段としては、例えば、送風機、冷風機などが挙げられ、保温手段としては、例えば、保温カバーなどが挙げられるが、いずれも特に限定されるものではない。
【0049】
図1に示すシート押出機10を用いて、本発明の熱可塑性樹脂シートを製造する工程を以下に説明する。まず、シートを構成する熱可塑性樹脂と、必要に応じて、種々の添加剤とを、押出装置(図示せず)に供給し、充分に混練した後、ダイス11から溶融状態のシート状に押し出す。押し出されたシートを第1冷却ロール12と第2冷却ロール13との間に導入して第2冷却ロール13の周面上を進行させ、続いて、第2冷却ロール13と第3冷却ロール14との間に導入して第3冷却ロール14の周面上を進行させ、剥離ライン18の位置で第3冷却ロール14から離脱させ、上下1組の反り制御ロール17の間を通過させた後、ガイドロール15を経て、引取ロール16によって引き取る。
【0050】
このとき、反り制御ロール17の位置は、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近、好ましくは(Tg±20℃)の範囲内である位置であり、この位置で、反り制御ロール17の形状を選択することにより、および/または、反り制御ロール17を平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置することにより、熱可塑性樹脂シート20に機械的に制御された反りを与える。
【0051】
反り制御ロール17の形状に応じて制御された反りを与えるには、反り制御ロール17として、例えば、クラウニングや逆クラウニング、弓形などの形状を有するロールを用いればよく、横方向に沿って上向きまたは下向きの反りが与えられる。この場合、反りの大きさは、反り制御ロール17のクラウニング量やボウ量に応じて制御することができる。
【0052】
また、反り制御ロール17の高さに応じて制御された反りを与えるには、例えば、図2に示すように、反り制御ロール17を上側に配置すれば、縦方向に沿って上向きにそりが与えられ、逆に、図3に示すように、反り制御ロール17を下側に配置すれば、縦方向に沿って下向きにそりが与えられる。この場合、反りの大きさは、反り制御ロール17の高さ(平坦なシートが得られる高さからの移動距離)に応じて制御することができる。具体的には、例えば、反り制御ロール17を、平坦なシートが得られる高さを基準にして、上側または下側に100mm以下程度の範囲内で配置すれば、それぞれ、100mm以下程度の範囲内にある上向きまたは下向きに反りが与えられる。
【0053】
さらに、反り制御ロール17の温度を上下で調節してシート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、熱的に制御された反りを与えることもできる。この場合、反りの大きさは、上側の反り制御ロール17と下側の反り制御ロール17との温度差に応じて制御することができる。
【0054】
なお、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、予めDSC(示差走査熱量測定法)により測定しておけばよい。また、反り制御ロールの位置におけるシートの表面温度および裏面温度は実質的に同一であるので、押し出されたシートの温度は、シートの表面温度を意味し、放射温度計で測定することができる。
【0055】
こうして得られる熱可塑性樹脂シートは、押出形成に用いる上下1組の反り制御ロールの高さ、形状、温度に応じて制御された反りを有する。本発明の製造方法によれば、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートが、押出成形の工程とは別に熱間成形の工程を設けることなく、効率よく簡便に製造することができるので、工業的に有利である。
【0056】
≪熱可塑性樹脂シート≫
本発明の熱可塑性樹脂シートは、上記のような方法により製造される熱可塑性樹脂シートであり、例えば、液晶表示装置や医療用モニターなどのバックライトユニットに用いる光拡散板や建築物の建材として利用することができるが、液晶表示装置の表示性能を長期間にわたり安定化させることができるので、特に、15インチを超える液晶テレビやデスクトップ型パーソナルコンピュータの液晶ディスプレイに用いられる大型の液晶表示装置に、バックライトユニットの光拡散板として好適に用いられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
まず、シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)、シートの温度、反りの大きさを測定する方法について説明する。
【0059】
<ガラス転移温度(Tg)>
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(商品名:Thermo Plus DSC8230、(株)リガク製)を用いて、JIS K 7121に準拠して測定した。具体的には、試料を示差走査熱量計にセットし、180℃で10分間保持した後、80℃に急冷し、安定したところで、20℃/分の速さで、180℃まで昇温し、得られたDSC曲線からガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0060】
<シートの温度>
押し出されたシートの温度は、放射温度計(商品名:IR−TAF、(株)チノー製)を用いて測定した。なお、反り制御ロールの位置におけるシートの表面温度および裏面温度は、実質的に同一であるので、シートの表面温度をシートの温度とした。
【0061】
<反りの大きさ>
反りの大きさは、縦1,000mm×横1,000mmの熱可塑性樹脂シートを、横方向の一辺を端部付近で3等分する位置に孔をあけ、これに紐を通してシートを吊り下げ、この状態でシートの縦方向および横方向の相対する各辺の中央に糸を張り、シートの中央部から糸までの距離を鋼尺で測定した。なお、反りが上向きに凸状の場合を+、反りが下向きに凸状の場合を−で表記する。
【0062】
≪参考例≫
幅1,200mmのTダイス、直径300mmの第1、第2および第3冷却ロール、直径200mmの反り制御ロール、ガイドロール、ならびに引取ロールを備えたシート押出機(その構成は図1に示すシート押出機と同様である。)を用いて、以下のようにして、ポリカーボネート系樹脂シートを製造した。
【0063】
上記のようなシート押出機にスクリュー径120mmのTダイリップを取り付け、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂(商品名:302−6、住友ダウ(株)製;ガラス転移温度(Tg):153℃)を、温度約280℃、幅1,100mmで連続的に押出し、第1冷却ロールと第2冷却ロールとで圧延し(両面タッチ方式)、冷却しながら、ポリカーボネート系樹脂シートを成形し、例えば、図1に示すように、剥離ライン18からガイドロール15までシートが平坦になるように上下1組の反り制御ロール17(上下ロール温度:95℃)を配置し、引取ロール16で引き取り、平坦なポリカーボネート系樹脂シート20を得た。なお、反り制御ロールの位置におけるシートの温度は、(Tg+5℃)であった。得られたシートの幅方向の両端を50mmずつサイドトリミングして幅1,000mmとし、長さ1,000mmにクロスカットすることにより、厚さ2mmのポリカーボネート系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0064】
≪実施例1≫
例えば、図2に示すように、剥離ライン18からガイドロール15までをシートが上向きに凸状になるように上下1組の反り制御ロール17(上下ロール温度:95℃)を配置したこと、さらに詳しくは、反り制御ロールの高さを、平坦なシートが得られる高さを基準にして、上側に2cm移動させたこと以外は、参考例と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0065】
≪実施例2≫
例えば、図2に示すように、剥離ライン18からガイドロール15までをシートが上向きに凸状になるように反り制御ロール17(上下ロール温度:95℃)を配置したことと、上側の反り制御ロールとして、逆クラウニング形状のロールを用い、下側の反り制御ロールとして、クラウニング形状のロールを用いたこと、さらに詳しくは、各々クラウニング量2cmの上下1組の反り制御ロールの高さを、平坦なシートが得られる高さを基準にして、上側に2cm移動させたこと以外は、参考例と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。なお、反り制御ロールの位置におけるシートの温度は、(Tg−10℃)であった。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0066】
≪実施例3≫
例えば、図3に示すように、剥離ライン18からガイドロール15までをシートが下向きに凸状になるように上下1組の反り制御ロール17(上下ロール温度:95℃)を配置したこと、さらに詳しくは、反り制御ロールの高さを、平坦なシートが得られる高さを基準にして、下側に4cm移動させたこと以外は、参考例と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。なお、反り制御ロールの位置におけるシートの温度は、(Tg−5℃)であった。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0067】
≪実施例4≫
例えば、図3に示すように、剥離ライン18からガイドロール15までをシートが下向きに凸状になるように上下1組の反り制御ロール17を配置したことと、上下の反り制御ロールの温度差を調節したこと、さらに詳しくは、反り制御ロール(上ロール温度:100℃、下ロール温度:80℃)の高さを、平坦なシートが得られる高さを基準にして、下側に4cm移動させたこと以外は、参考例と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。なお、反り制御ロールの位置におけるシートの温度は、(Tg+10℃)であった。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0068】
≪実施例5≫
熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂(商品名:HH203、PSジャパン(株)製);ガラス転移温度(Tg):108℃)を使用し、成形温度を約220℃、反り制御ロール17の温度を上下60℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリスチレン系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0069】
≪実施例6≫
熱可塑性樹脂としてメタクリル系樹脂(商品名:スミペックスEX、住友化学(株)製;ガラス転移温度(Tg):97℃)を使用し、成形温度を約250℃、反り制御ロール17の温度を上下80℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、メタクリル系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0070】
≪実施例7≫
熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂(商品名:ユーピロンE2000FN、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製;ガラス転移温度(Tg):154℃)を使用し、このポリカーボネート系樹脂100質量%に、微粒子としてシリカ球状微粒子(商品名:シーホスターKE−P150、(株)日本触媒製;平均粒子径:1.33〜1.83μm)を0.5質量%混合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0071】
≪比較例1〜3≫
反り制御ロールの位置におけるシートの温度を(Tg+30℃)に設定したこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0072】
≪比較例4〜6≫
反り制御ロールの位置におけるシートの温度を(Tg−30℃)に設定したこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして、ポリカーボネート系樹脂シートを得た。得られたシートの反りを測定した結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、押し出されたシートの温度が(Tg−20℃)以上、(Tg+20℃)以下の範囲内となる位置で反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置した実施例1〜7の熱可塑性樹脂シートは、押し出されたシートの温度が(Tg+5℃)となる位置で反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さに配置した参考例の熱可塑性樹脂シートに比べて、明らかに機械的に制御された反りが与えられている。さらに詳しくは、フラットな形状を有する反り制御ロールを用いた実施例1、3、5、6および7の熱可塑性樹脂シートは、それぞれ、縦方向に沿って上向きまたは下向きの反りが与えられ、その反りの大きさは反り制御ロールの移動距離に応じて制御されている。また、反り制御ロールとして選択された形状を有するロールを用いた実施例2の熱可塑性樹脂シートは、縦方向および横方向に沿って同程度の反りが与えられ、その反りの大きさは反り制御ロールの移動距離およびクラウニング量に応じて制御されている。さらに、反り制御ロールの温度を上下で調節してシート上下面の冷却速度に差を生じさせた実施例4の熱可塑性樹脂シートは、縦方向および横方向に沿ってより大きい反りが与えられている。
【0075】
これに対し、押し出されたシートの温度が(Tg±30℃)となる位置で反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置した比較例1〜6の熱可塑性樹脂シートは、押し出されたシートの温度が低すぎるか、あるいは高すぎることから、押し出されたシートの温度が(Tg+5℃)となる位置で反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さに配置した参考例の熱可塑性樹脂シートと同様に、機械的に制御された反りが与えられていない。
【0076】
以上の結果から、熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置で、好ましくは(Tg±20℃)の範囲内となる位置で、該シートに機械的に制御された反り、好ましくは、反り制御ロールの高さ、形状、温度に応じて制御された反りを与え得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートを効率よく簡便に提供できるので、このような熱可塑性樹脂シートを、例えば、液晶表示装置や医療用モニターなどのバックライトユニットに用いる光拡散板や建築物の建材として用いることにより、幅広い分野で多大の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の製造方法に用いられる代表的なシート押出機の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すシート押出機を用いて熱可塑性樹脂シートを製造する際に、上向きに凸状の反りを与えるように上下1組の反り制御ロールを上側に移動させた場合を示す模式図である。
【図3】図1に示すシート押出機を用いて熱可塑性樹脂シートを製造する際に、下向きに凸状の反りを与えるように上下1組の反り制御ロールを下側に移動させた場合を示す模式図である。
【符号の説明】
【0079】
10 シート押出機
11 ダイス
12 第1冷却ロール
13 第2冷却ロール
14 第3冷却ロール
15 ガイドロール
16 引取ロール
17 反り制御ロール
18 剥離ライン
20 熱可塑性樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートを押出成形するにあたり、押し出されたシートの温度が該シートを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)付近となる位置で、該シートに機械的に制御された反りを与えることを特徴とする制御された反りを有する熱可塑性樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記シートが前記位置で上下1組の反り制御ロール間を通過するようにし、該反り制御ロールの形状を選択することにより、および/または、該反り制御ロールを平坦なシートが得られる高さから上側または下側に配置することにより、前記シートに機械的に制御された反りを与える請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記反り制御ロールの位置における前記シートの温度が(Tg±20℃)の範囲内にある請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記反り制御ロールの温度を上下で調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、前記シートにさらに熱的に制御された反りを与える請求項2または3記載の製造方法。
【請求項5】
前記反り制御ロールの位置またはその付近で、前記シート上下面の温度差を調節して前記シート上下面の冷却速度に差を生じさせることにより、前記シートにさらに熱的に制御された反りを与える請求項2〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記シートを構成する熱可塑性樹脂が微粒子を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記シートを構成する熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂およびノルボルネン系樹脂よりなる群から選択される請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法により得られることを特徴とする制御された反りを有する熱可塑性樹脂シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283700(P2007−283700A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115603(P2006−115603)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(390018050)日本ポリエステル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】