説明

制御された活性薬剤放出又は血液適合性のための、装置、製品、コーティング及び方法

本発明は、制御された活性薬剤放出のため、そして/又は血液適合性表面を提供するための装置、製品、コーティング及び方法に関する。さらに具体的には、本発明は、制御された活性薬剤放出と同一とみなすコポリマー組成物及び装置、製品及び方法に関する。ある実施形態では、本発明は、コポリマー組成物を含む。上記コポリマー組成物は、コポリマー及び活性薬剤を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、極性部分を含むモノマー単位の有効な部分を含む。上記活性薬剤は、極性を有することができる。上記活性薬剤は、荷電されうる。上記活性薬剤は、非極性であることができる。ある実施形態では、上記コポリマー組成物は、ランダムコポリマーを含む。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、血小板の付着を減らすことができるブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、SurModics,Inc.(米国企業、米国を除いた全ての国の指定に関する出願人)の名称において、並びにTimothy M.Kloke,Bob Hergenrother及びLaurie R.Lawin(全て米国民、米国の指定に関する出願人)の氏名において、2006年7月27日に国際特許出願として出願され、そして2005年7月29日に出願された米国出願第60/703,555号、及び2005年11月3日に出願された同第60/733,423号の優先権を主張する。
発明の分野
【0002】
本発明は、有効量の、極性部分を含む一又は複数のモノマー単位と、荷電している部分を有しない少なくとも一種の第二のモノマー単位とを含むコポリマー組成物を含む組成物と、それらを用いる方法に関する。本発明は、制御された活性薬剤放出のため、又は血液適合性のためのコポリマー組成物及び装置、製品、並びに方法に関する。上記ポリマー組成物は、活性薬剤を含むことができる。上記組成物は、制御された活性薬剤放出を提供することができる。上記ポリマー組成物は、例えば、埋め込むことができる装置用の血液適合性表面を提供することができる。
【背景技術】
【0003】
治療の利益は、場合によっては、活性薬剤を放出する時間を延ばすような様式で、活性薬剤を患者に供給することにより達成されうる。さらに、治療の利益は、全身の代わりに、特定のターゲット組織に活性薬剤を供給することにより得ることができる。これは、ターゲット組織に対する上記薬剤の作用を最大化することができる一方で、他の組織への副作用を制限することができるからである。これらの利益を提供するアプローチの一つは、医療装置上の活性薬剤を含む、ドラッグポリマーデリバリーシステムを用いることである。コーティングが、活性薬剤が溶出する速度を制御するように働くことができる一方で、当該コーティングが医療装置上にあるという事実により、上記デリバリーが、特定の組織に近接する。
【0004】
ドラッグデリバリーシステムにおいてドラッグ放出速度を制御することは、有効な治療水準を達成するために望ましい。いくつかの活性薬剤は、現在のドラッグポリマーデリバリーシステムによる溶出が速すぎ、他の活性薬剤は、十分速く溶出しない。これらは、活性薬剤がそれらの化学的特性、例えば、サイズ、疎水性、電荷等に非常に多様性を有し、そしてこれらの特性が、上記ドラッグポリマーデリバリーシステム成分及び溶出媒体とのそれらの相互作用に影響を与えることに部分的に起因する。例えば、小さな親水性薬剤、例えば、トリゴネリン−HCL、ジクロフェナク及びクロルヘキシジンジアセテートは、現在のドラッグポリマーデリバリーシステムから大きな初期バーストを伴って溶出するのが典型的であり、従って、溶出速度制御が乏しいことが実証されている。生物活性薬剤は、発散特性を有することができ、そして当該生物活性薬剤は、親水性及び疎水性の活性薬剤の両方の放出を制御することができるポリマーデリバリーシステムを得るための課題でありうる。ドラッグデリバリーポリマーシステムは、規定された速度で、親水性及び疎水性ドラッグの両方を溶出させることができるが、上記ポリマーシステムは、放出速度の変化を達成するための能力により制限されることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、必要性は、1種又は2種以上の種々の薬剤を用いて、有効な溶出プロフィールを提供することができるドラッグポリマーデリバリーシステムにおいて存在する。
改良された血液接触材料を開発するために用いられている2つの一般的な戦略には、バルク材料そのものの化学的性質を改良すること、そして/又は上記材料の界面特性を改良することが含まれる。後者のアプローチに関して、いくつかの種類の材料が、血液適合性を改良する目標を有する、血液が接触する表面と共有結合する。これらには、抗凝固剤、例えば、ヘパリン及びヒルジン;ヒドロゲル;ポリエチレンオキシド(PEO);アルブミン結合剤;細胞膜成分;プロスタグランジン;及び一定のポリマーが含まれる。これらのアプローチは、たんぱく質吸着、血小板付着及び活性化、並びに血栓形成を減らすことに関して、種々の程度で成功している。
従って、有効な血液適合性を提供することができるコーティング又は材料に関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有効量の、極性部分を含む一又は複数のモノマー単位と、荷電している部分を有しない少なくとも一種の第二のモノマー単位とを含むコポリマー組成物を含む組成物と、それを含む方法とに関する。上記ポリマー組成物は、活性薬剤を含むことができる。上記組成物は、制御された活性薬剤放出を提供することができる。上記ポリマー組成物は、例えば、埋め込むことができる装置用の血液適合性表面を提供することができる。
【0007】
本発明は、制御された活性薬剤放出を提供するための、装置、製品、コーティング及び方法に関する。本発明の実施形態には、活性薬剤を含むコポリマー組成物を含む装置、製品、コーティング及び方法が含まれる。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、コポリマー組成物を含む。上記コポリマー組成物は、コポリマー及び活性薬剤を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、極性部分を含むモノマー単位の有効部分を含む。上記活性薬剤は、極性を有することができる。上記活性薬剤は、荷電されうる。上記活性薬剤は、非極性でありうる。ある実施形態では、上記コポリマー組成物は、ランダムコポリマーを含む。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含む。
【0009】
本発明は、血液適合性を付与するための装置、製品、コーティング及び方法に関する。本発明の実施形態には、血液適合性を付与するために有効なコポリマー組成物を含む装置、製品、コーティング及び方法が含まれる。
【0010】
ある実施形態では、本発明は、血液適合性のコポリマー組成物を含む。ある実施形態では、上記血液適合性のコポリマーには、有効な割合の、極性部分含有モノマー単位が含まれる。ある実施形態では、上記コポリマー組成物は、ランダムコポリマーを含む。ある実施形態では、上記血液適合性のランダムコポリマーには、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーが含まれる。
【0011】
ある実施形態では、本発明は、上記コポリマー組成物を含む製品を含む。上記製品は、医療装置でありうる。上記医療装置は、患者に導入するように構成された構造物と、当該構造物上に配置された上記コポリマー組成物とを含むことができる。上記製品は、基板でありうる。上記基板は、表面に配置されたコポリマー組成物を含むことができる。上記製品は、上記コポリマー組成物から生成することができるか、又は上記コポリマー組成物のコアを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
定義
本明細書において、用語「極性の」は、極性を示す分子又は部分、例えば、双極子を有するものを指す。極性分子又は部分は、第一の部位における一部又は完全な正電荷、及び第二の部位における一部又は完全な負電荷を有することができる。極性分子又は部分には、親水性分子又は部分が含まれる。極性部分には、ヒドロキシル、アミド、エーテル、チオール、チオエーテル、エステル、チオエステル、ボラン、ボラート、及び金属錯体、アミン、カルボニル等が含まれる。極性部分はまた、荷電している部分を含む。極性分子又は部分は、例えば、正電荷、負電荷、又は正電荷及び負電荷の両方(例えば、分子内塩として)を有することができる。
【0013】
本明細書において、用語「荷電」又は「荷電された(荷電している)」は、正電荷、負電荷、又は正電荷及び負電荷の両方(例えば、分子内塩として)を有する分子又は部分、並びに上記分子又は部分の塩を指す。好適な正に荷電している分子又は部分(例えば、水性組成物中、中性pHにおいて)には、アミン、第四級アンモニウム部分、スルホニウム、ホスホニウム、フェロセン等が含まれる。好適な負に荷電している分子又は部分(例えば、水性組成物中、中性pHにおいて)には、カルボキシレート、アルコキシレート、強い電子求引性基で置換されたフェノール(例えば、テトラクロロフェノール)、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、スルフェート、スルホネート、チオカルボキシレート、ヒドロキサム酸、ニトロ等が含まれる。
【0014】
本明細書において、用語「治療する」、「治療」、「治療法」及び「療法」は、1つ又は2つ以上の症状、原因、又は疾患又は不調の影響を、減らすこと、軽減すること、進行を遅くすること、改善すること、弱くすること、又は減少させることを指す。本明細書において、用語「防ぐ」は、疾患又は不調の発現を、遅らせる、遅延させる、遅くする、抑制する、又は止める若しくは改善することを指す。
【0015】
本明細書において、用語「予備生成したポリマー」は、重合されておらず、そして適用の際又は適用の後に重合することができるモノマー又はマクロマーとは対照的に、提供の前に既に重合されているポリマーを意味する。
【0016】
本明細書において、本発明の組成物中の成分の量を修飾するか、又は本発明の方法において用いられる用語「約」は、例えば、現実の世界におけるポリマー組成物、コーティングされた基板及び医療装置を製造するために用いられる試薬及び試薬取り扱い手順を典型的に評価することにより;これらの手順における不注意による誤りにより;上記組成物を製造するか又は上記方法を実施するために用いられる成分の製造、供給源又は純度の差等により生じうる数量の変化を指す。用語「約」により修飾されたか否かに関わらず、特許請求の範囲は、当該量の等価量(equivalent)を含む。
【0017】
コポリマー組成物
本発明は、有効量の、極性部分を含む一又は複数のモノマー単位と、荷電している部分を有しない少なくとも一種の第二のモノマー単位とを含むコポリマー組成物を含む組成物及びそれを用いる方法に関する。上記ポリマー組成物は、活性薬剤を含むことができる。上記組成物は、極性又は疎水性の活性薬剤の有利な溶出を提供することができる。上記ポリマー組成物は、例えば、埋め込むことができる装置用の血液適合性表面を提供することができる。
【0018】
上記コポリマーの特定の実施形態には、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのランダムコポリマー、P(BMA−co−AMPS)が含まれる。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、約0.5〜約30モル%、約1〜約20モル%、又は約2〜約10モル%のAMPSを含むことができる。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、約0.5〜約30モル%、約10〜約20モル%、又は約15モル%のAMPSを含むことができる。
【0019】
上記コポリマー組成物
有効量の、極性部分を含む一又は複数のモノマー単位と、少なくとも1種の第二のモノマー単位(荷電している部分を有しない)とを含むポリマーの実施形態を、例えば、次の式A:
【化1】

により表すことができる。
【0020】
式Aにおいて、各[]部分は、任意の順序、例えば、ランダムに存在することができる、上記ポリマー中に存在するモノマー単位を表す。各Rsは、独立して、H又はCH3である。各a、b、c及びdは、独立して、1〜4、1〜3、1〜2、1、2又は3である。
【0021】
各X及びZは、独立して、極性部分である。例えば、ある実施形態では、Xは、メチルプロパンスルホネート部分(例えば、アミドイソブチルスルホネート(−C(O)NHC(CH32CH2SO3H、上記モノマーAMPSのペンダント部分))であるか、又は当該メチルプロパンスルホネート部分を含むことができる。例えば、ある実施形態では、Xは、メチルプロパンスルホネート部分であるか、又は当該メチルプロパンスルホネート部分を含むことができ、そしてZは存在しない(m=0)。ある実施形態では、Xは、カルボキシル含有部分、第四級アンモニウム含有部分、ピリジニウム含有部分、それらの組み合わせ等であるか、又はそれらを含むことができる。
【0022】
各W及びYは、独立して、荷電している部分ではない基である。W又はYは、例えば、極性若しくは非極性部分であるか、又は当該極性若しくは非極性部分を含むことができる。W又はYは、例えば、アルキル、アリール、メチレン、アミド、メチル、アルコール、エーテル、アミド、エステル、カルバメート、カーボネート、それらの組み合わせ等であるか、又はそれらを含むことができる。ある実施形態では、Wは、−C(O)O(CH23CH3部分(上記モノマー、ブチルメタクリレートのペンダント部分)であるか、又はそれを含むことができる。
【0023】
式Aにおいて、各m、n、o及びpは、上記ポリマーにおける対応するモノマー単位のモル分画を表し、そしてm+nは、有効なモル分画を表す。例えば、m+nは、約0.5〜約30モル%、約1〜約20モル%、又は約2〜約10モル%であることができる。さらなる例の目的で、m+nは、約1.5モル%、約3モル%、又は約9モル%であることができる。m又はnのどちらかも、ゼロであることができるが、m+n>0である。本発明のポリマーは、「約」により修飾されていないこれらの範囲若しくは量、又はこれらの数量(quantity)を、個々に含むことができる。o又はpのどちらかはゼロであることができるが、o+p>0である。
【0024】
好適なランダムコポリマーには、極性モノマー単位、例えば、水溶性モノマー単位が含まれうる。水溶性モノマー単位には、Polymer Handbook(Branderup and Immergut,eds.),3d Edition(1989)以降,John Wiley and Sons,NYに水溶性として列挙されるものが含まれる。好適なランダムコポリマーは、有機溶媒に可溶である。
【0025】
好適なランダムコポリマーには、水溶性極性モノマー単位、例えば、極性又は荷電している置換基(例えば、カチオン性又はアニオン性置換基)を含む水溶性N−置換化(N−substituted)アクリルアミド、極性又は荷電している置換基(例えば、カチオン性又はアニオン性置換基)を含む水溶性アクリル酸エステル、水溶性カルボキシル含有モノマー単位、水溶性第四級アンモニウム含有モノマー単位、それらの組み合わせ等が含まれうる。好適なランダムコポリマーには、極性置換基を含むN−置換化アクリルアミド、例えば、アクリルアミド−メチルプロパンスルホネート(AMPS)が含まれうる。
【0026】
好適なランダムコポリマーには、荷電している置換基を含むN−置換化アクリルアミド、例えば、アクリルアミド−メチルプロパンスルホネート(AMPS)のアルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩が含まれうる。好適なランダムコポリマーには、極性置換基を含むアクリル酸エステル、例えば、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートが含まれうる。好適なランダムコポリマーには、荷電している置換基を含むアクリル酸エステル、例えば、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートのアルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩が含まれうる。好適なランダムコポリマーには、カチオン性置換基を含む水溶性N−置換化アクリルアミド、例えば、水溶性第四級アンモニウム置換化アクリルアミド又はメタクリルアミドが含まれうる。
【0027】
好適なランダムコポリマーには、第二のモノマー単位として、アクリレート又はメタクリレートが含まれうる。好適な第二のモノマー単位には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アルキル又はアリールアクリレート、アルキル又はアリールメタクリレート、ビニルメチルエーテル、それらの組み合わせ等が含まれる。好適な第二のモノマー単位には、メタクリレート、例えば、ブチルメタクリレートが含まれる。
【0028】
荷電されていない極性部分を含む好適なポリマー主鎖には、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、置換されたポリアルキレンイミン(例えば、置換されたポリエチレンイミン)等が含まれる。
好適なランダムコポリマーには、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート、P(BMA−co−AMPS)が含まれる。
【0029】
上記コポリマーには、約0.5〜約30モル%、約1〜約20モル%、又は約2〜約10モル%の極性モノマー単位が含まれる。上記コポリマーは、約1.5モル%、約3モル%、又は約9モル%の極性モノマー単位を含むことができる。上記コポリマーは、約70〜約99.5モル%、約80〜約99モル%、又は約90〜約98モル%、又は約85〜約95モル%の第二のモノマー単位を含むことができる。上記コポリマーは、約98.5モル%、約97モル%、又は約91モル%の第二のモノマー単位を含むことができる本発明のポリマーは、「約」により修飾されていないこれらの範囲若しくは量、又はこれらの数量を、個々に含むことができる。
【0030】
ある実施形態では、上記コポリマーは、湿潤した場合に当該コポリマーがヒドロゲルを生成しないような量で、極性モノマー単位を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、湿潤した場合に当該コポリマーが膨張しないような量で、極性モノマー単位を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、湿潤した場合に当該コポリマーが大きく膨張しないような量で、極性モノマー単位を含むことができる。
【0031】
本発明のコポリマー組成物を、公知の方法を用いて、基板又は装置に適用することができる。例えば、上記コポリマーを、活性薬剤及び溶媒と混合することができ、そしてスプレー(例えば、エアロゾル又は超音波)、ディッピングにより、又は超音波コーターを用いて、基板又は装置に適用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、予備生成したポリマーを含むことができる。例えば、活性薬剤を、予備生成したポリマーと混合して、次いで、基板上に堆積させることができる。上記方法は、上記コポリマー組成物を適用した後、上記装置を乾燥させることを含むことができる。
【0032】
上記コポリマー組成物を、例えば、約5%〜約75%、約5%〜約50%、約5%〜約35%、又は約5%〜約10%の相対湿度で適用することができる。本発明を制限するものではないが、本発明のコポリマー組成物をより高い相対湿度で適用すると、より低い湿度と比較して、活性薬剤放出の速度が速くなると考えられる。
【0033】
コポリマー及び活性薬剤を含む組成物
本発明は、コポリマー及び活性薬剤を含む組成物を含む。ある実施形態では、本発明に従う組成物は、当該組成物から活性薬剤の制御された溶出を提供する。ある実施形態では、本発明の組成物は、装置、製品、コーティング又は方法に用いることができ、そして、例えば、上記活性薬剤の制御された溶出を提供する。上記コポリマーは、少なくとも一種の極性モノマー単位を含むことができる。上記活性薬剤は、少なくとも一種の極性部分を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーが少なくとも一種の極性モノマー単位を含むか、上記活性薬剤が電荷を含むか、又は上記コポリマーが少なくとも一種の極性モノマー単位を含み、そして上記活性薬剤が電荷を含む。上記活性薬剤は、疎水性でありうる。
【0034】
ある実施形態では、上記コポリマーは、少なくとも一種の極性モノマー単位及び第二のモノマー単位を含む。上記コポリマーは、有効量の、極性部分を含む一又は複数のモノマー単位を含むことができる。上記量は、活性薬剤、例えば、極性の又は荷電している活性薬剤のために有効な溶出プロフィール又は制御された溶出プロフィールを提供する等のために有効であることができる。上記量は、活性薬剤、例えば、疎水性の活性薬剤のために有効な溶出プロフィール又は制御された溶出プロフィールを提供するために有効であることができる。上記極性部分は、上記ポリマー主鎖に由来するポリマー主鎖又は基のペンダントであることができる。上記第二のモノマー単位は、極性を有するか、又は非極性であることができる。例えば、上記第二のモノマー単位は、疎水性の特性であることができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、ランダムコポリマーである。ランダムコポリマーは、例えば、少なくとも一種の極性モノマー単位及び第二のモノマー単位を含むことができる。ランダムコポリマーは、ブロックコポリマーではない。
【0035】
上記コポリマーの特定の実施形態には、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのランダムコポリマー、P(BMA−co−AMPS)が含まれる。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、約0.5〜約30モル%、約1〜約20モル%、又は約2〜約10モル%のAMPSを含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、約1.5モル%、約3モル%、又は約9モル%の極性モノマー単位を含むことができる。上記コポリマーは、約70〜約99.5モル%、約80〜約99モル%、若しくは約90〜約98モル%、又は約85〜約95モル%の第二のモノマー単位を含むことができる。上記コポリマーは、約98.5モル%、約97モル%、又は約91モル%の第二のモノマー単位を含むことができる。本発明のポリマーは、「約」により修飾されていないこれらの範囲若しくは量、又はこれらの数量を、個々に含むことができる。
【0036】
本発明のコーティングされたコポリマー組成物は、約2〜約70wt−%、約2〜約50wt−%、約5〜約50wt−%、約5〜約40wt−%、約10〜約30wt−%、又は約15〜約30wt−%の濃度において、活性薬剤を含むことができる。本発明のコポリマー組成物は、約15wt−%又は約30wt−%の濃度において、活性薬剤を含むことができる。
【0037】
本発明の組成物は、上記活性薬剤のために、種々の有効な溶出プロフィールを提供することができる。ある実施形態では、本発明の組成物は、活性薬剤の持続放出を提供することができる。本明細書において、用語「持続放出」は、本発明のコポリマー組成物が存在しない類似又は同一のコーティングと比較して、活性薬剤の持続放出を示す溶出プロフィールを指す。本発明の実施形態は、持続放出プロファイルを有するものを含む。本明細書において、用語「少ないバースト(バーストが少ない)」は、本発明のコポリマー組成物が存在しない類似又は同一のオーティングと比較して、有意に小さな初期の放出バーストを示す溶出プロフィールを指す。本発明の実施形態は、バーストが少ない放出プロファイルを有するものを含む。ある実施形態では、本発明のコポリマー組成物は、直線状の放出プロファイルを提供することができる。
【0038】
ある実施形態では、本発明の組成物は、遅延を含む放出プロファイルを提供することができる。本明細書において、遅延の際、かなりの量の活性薬剤が溶出し、溶出が曲線として増加する時間が続く。遅延は、より後の促進された溶出速度と比較して、溶出がゆっくりと始まるプロファイルを含むことができる。種々のシステムが、遅延を示すことができる。例えば、生分解性上塗りが、遅延を誘発することができる。
【0039】
ある実施形態では、本発明のコポリマー組成物は、上記活性薬剤のための所望の放出プロファイル及び上記コーティングがされた製品に対する望ましい機械的性質を提供する。例えば、本発明のコポリマーは、親水性の、極性の、又は荷電している活性薬剤の持続放出を提供することができる。例えば、本発明のコポリマー組成物でコーティングされたステントを伸張させることができ、そして当該コーティングには、ヒビが入らない。
【0040】
血液適合性組成物
本発明は、表面に血液適合性部分を提供する、当該表面の少なくとも一部に上記コポリマーを含む物体を含む。本発明はまた、物体を血液適合性にする方法を含み、当該方法は、上記物体の表面の少なくとも一部を、本発明のコポリマーでコーティングすることを含む。ある実施形態では、本発明の組成物を、装置、製品、コーティング又は方法中で用いることができ、そして例えば、血液適合性を付与することができる。
【0041】
上記コポリマーは、有効量の少なくとも一種の極性モノマー単位を含むことができる。ある実施形態では、上記コポリマーは、有効量の少なくとも一種の極性モノマー単位及び第二のモノマー単位を含むことができる。上記量は、例えば、500個の血小板/mm2未満の血小板結合から明らかなように、血液適合性表面を提供する等のために有効でありうる。ある実施形態では、上記血液適合性表面は、約500個の血小板/mm2、約200個の血小板/mm2、約100個の血小板/mm2、約50個の血小板/mm2、又は約20個の血小板/mm2、約10個の血小板/mm2、又は約5個の血小板/mm2において血小板を結合させる。
【0042】
上記極性部分は、上記ポリマー主鎖、又は上記ポリマー主鎖に由来する基のペンダント内にあってもよい。上記第二のモノマー単位は、極性を有するか、又は非極性でありうる。例えば、上記第二のモノマー単位は、疎水性の特性を有しうる。ある実施形態では、上記コポリマーは、ランダムコポリマーでありうる。ランダムコポリマーは、例えば、少なくとも一種の極性モノマー単位及び第二のモノマー単位を含むことができる。ランダムコポリマーは、ブロックコポリマーではない。
【0043】
上記コポリマーの特定の実施形態には、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのランダムコポリマー、P(BMA−co−AMPS)が含まれる。ある実施形態では、上記ランダムコポリマーは、約0.5〜約30モル%、約5〜約20モル%、約10〜約20モル%、又は約15モル%のAMPSを含むことができる。上記コポリマーは、約70〜約99.5モル%、約80〜約95モル%、約80〜約90モル%、又は約85モル%の第二のモノマー単位を含むことができる。本発明のポリマーは、「約」により修飾されていないこれらの範囲若しくは量、又はこれらの数量を、個々に含むことができる。
【0044】
血液適合性を、種々の公知の方法により評価することができる。血液適合性を、対照表面、例えば、低密度ポリエチレンの表面又はPBMAの表面と比較して評価することができる。高い血液適合性を、血小板の表面又は物体への結合が少ないことを実証することにより測定することができる。上記コポリマー組成物に結合する少ない又はほんのわずかな血小板により証明されるように、本発明のコーティングされたコポリマー組成物は血液適合性を付与することができる。血液適合性は、その外面に、例えば、ポリブチルメタクリレート(PBMA)又はパリレンCを有する同一の装置と比較して、その外面に本発明の組成物を有する物体に血小板が結合する程度を測定することにより評価することができる。血小板の結合を、公知の方法により決定することができる。ある実施形態では、本発明のコーティングは、約90%、約95%、約98%、約99%、約99.9%、又は約99.9%超、結合した血小板の数を減らす。
【0045】
ある実施形態では、例えば、その外面に、パリレンCを有する同一の装置と比較して、血流に曝された際に、その外面(例えば、ステント)上に本発明の組成物を有する医療装置に血小板が結合する程度を測定することにより、血液適合性を評価することができる。血小板の結合は、例えば、結合した血小板のガンマカウントを測定することを含む、公知の方法により決定することができ、ここで、上記血小板は、例えば、111Inを用いて、放射性同位体でラベル付けされている。ある実施形態では、本発明の組成物を有する医療装置をコーティングすることにより、コーティングされていないか、又は当業界に公知の一般的な組成物によりコーティングされている装置と比較して、上記医療装置が血流にさらされた場合に結合した血小板の数が減る。
【0046】
ある実施形態では、本発明のコポリマー組成物は、所望の水準の血液適合性と、コーティングされた製品上の望ましい機械的性質とを付与する。例えば、本発明のコポリマーは、血小板の結合を、約99%以上減少させることができ、そして許容可能な機械的性質、例えば、上記製品の表面に対するコーティングの順応性又は上記コーティング面の減少したクラッキングを有するコーティングを提供することができる。
【0047】
本発明のコポリマー組成物を含む実施形態
本発明は、本発明のコポリマー組成物を含むか、また本発明のコポリマー組成物でコーティングされた種々の基板又は装置を含む。ある実施形態では、本発明は、患者の中又は上に導入するように構成された構造物と、当該構造物上に配置された本発明のコポリマー組成物とを含む医療装置を含む。ある実施形態では、上記組成物は、事前重合され、堆積されたポリマーを含む。ある実施形態では、本発明は、本発明のコポリマー組成物を含むコーティングを含む。ある実施形態では、本発明は、コアを含む製品を含み、当該コアは、本発明のコポリマー組成物を含むことができる。
【0048】
ある実施形態では、本発明の組成物を、別のポリマーのブレンドとして用いることができる。上記ブレンド中の他のポリマーを、第二のポリマー又はブレンドポリマーと称することができる。ある実施形態では、上記ブレンドは、種々の添加されたポリマーを含むことができる。本発明の組成物を、例えば、疎水性ポリマー、例えば、ポリ(エチレン−co−ビニルアセテート)(PEVA)又はポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)とのブレンドとして用いることができる。本発明の組成物とのブレンド中で用いるために好適なポリマーは、本明細書の以下に記載されている。
【0049】
ある実施形態では、本発明の組成物を、本発明の組成物の下にある又は上にある別のポリマーと共に用いることができる。すなわち、本発明の組成物を、層状系のコーティングの成分として用いることができる。本発明の組成物を有する層内で用いるために好適なポリマーは、本明細書の以下に記載されている。
【0050】
ある実施形態では、本発明は、医療装置に関する。上記医療装置は、患者を治療するために構成された構造物と、当該構造物上に配置されているランダムコポリマー組成物とを含むことができる。上記コポリマー組成物は、活性薬剤及びランダムコポリマーを含むことができる。上記ランダムコポリマーは、極性モノマー単位を含むことができる。上記活性薬剤は、荷電しているか、極性を有するか、又は疎水性であることができる。ある実施形態では、上記装置は、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含むランダムコポリマーを含むことができる。上記医療装置を、患者の中又は上に導入するように構成することができる。
【0051】
ある実施形態では、上記装置は、酸性型のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含むランダムコポリマーを含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのアルカリ金属塩を含むランダムコポリマーを含むことができる。
【0052】
ある実施形態では、上記装置は、埋め込むことができる装置を含むか、又は当該埋め込むことができる装置であることができる。ある実施形態では、上記装置は、患者の外面上で用いることを含むか、又は患者の外面上で用いるために構成させることができる(例えば、創傷被覆材又は組織シーラント)。ある実施形態では、上記装置は、基材(base material)を含む構造物を含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、表面を含む構造物を含むことができ、上記組成物は、上記表面上に配置されている。
【0053】
ある実施形態では、上記活性薬剤を、荷電させることができる。ある実施形態では、上記活性薬剤は、2kD未満の分子量を有することができ、そして25℃で10mg/mL超の水溶性を有する。
ある実施形態では、上記装置は、上記ランダムコポリマー組成物上に配置されている上塗りを含むことができる。ある実施形態では、上記上塗りは、プラズマ蒸着ポリマー又は蒸着ポリマーを含むことができる。ある実施形態では、上記上塗りは、別個の開始剤を要求しないポリマー(すなわち、自己開始ポリマー)を含むことができる。
【0054】
本発明は、本発明の血液適合性のコポリマー組成物を含むか、又は当該組成物でコーティングされている種々の基板又は装置を含む。ある実施形態では、本発明は、患者の中又は上に導入するために構成された構造物と、当該構造物上に配置されている本発明の血液適合性のコポリマー組成物とを含む医療装置を含む。ある実施形態では、上記組成物は、事前重合された、堆積された血液適合性のコポリマーを含む。ある実施形態では、本発明は、本発明の血液適合性のコポリマー組成物を含むコーティングを含む。
【0055】
ある実施形態では、本発明の血液適合性のコポリマー組成物を、本発明の組成物の下にある別のポリマーと共に用いることができる。すなわち、本発明の血液適合性のコポリマー組成物を、層状系のコーティングの上塗り成分として用いることができる。
【0056】
ある実施形態では、本発明は、医療装置に関する。上記医療装置は、患者を治療するために構成された構造物と、当該構造物上に配置されている血液適合性のランダムコポリマー組成物とを含むことができる。上記血液適合性のランダムコポリマーは、極性モノマー単位を含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含む血液適合性のランダムコポリマーを含むことができる。上記医療装置を、患者の中又は上に導入するように構成させることができる。
【0057】
ある実施形態では、上記装置は、15モル%のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む血液適合性のランダムコポリマーを含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、酸性型のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む血液適合性のランダムコポリマーを含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのアルカリ金属塩を含む血液適合性のランダムコポリマーを含むことができる。
【0058】
ある実施形態では、上記装置は、埋め込むことができる装置を含むか、又は当該埋め込むことができる装置であることができる。ある実施形態では、上記装置は、患者の外面に用いることを含むことができるか、又は患者の外面上に用いるために構成されうる(例えば、創傷被覆材又は組織シーラント)。ある実施形態では、上記装置は、基材を含む構造物を含むことができる。ある実施形態では、上記装置は、表面を含む構造物を含むことができ、上記血液適合性のコポリマー組成物が、上記表面上に配置されている。
【0059】
ある実施形態では、上記装置は、上記血液適合性のランダムコポリマー組成物の下にある溶出性の活性薬剤を含むポリマー組成物を含むことができる。上記実施形態では、溶出性の活性薬剤を含む上記ポリマー組成物は、本発明のランダムコポリマー組成物を含むことができる。
【0060】
ブレンド及び層
本発明のコポリマー組成物を、別の(例えば、第二の)ポリマーと共に、種々の構成物に用いることができる。例えば、上記他のポリマーを、本発明のコポリマーとのブレンド中で用いることができる。例えば、本発明の組成物を、上記他のポリマーの上又は周囲の上塗りとして用いることができる。例えば、上記他のポリマーは、層状の構成物において本発明の組成物の下にあるか又は上にあることができる。
【0061】
本発明のコポリマー組成物を含む基板又は装置は、本発明のコポリマー組成物と第二のポリマーとのブレンドを含むことができる。本発明の組成物を含む基板又は装置はまた、本発明の組成物の上又は周囲の上塗りを含むことができる。本発明の組成物を含む基板又は装置は、別のポリマーの上又は周囲の上塗りとして本発明の組成物を含むことができる。
【0062】
ある実施形態では、本発明のコポリマーとブレンドされたか、又は本発明のコポリマーと層状に重ねた上記ポリマーは、少なくとも1種のポリマーを含むことができる。ある実施形態では、上記層状の構成物は、第一のポリマー及び第二のポリマーを含む複数のポリマーを含む。これらの第一及び第二のポリマーはまた、本発明のコポリマー組成物とのブレンドで用いることができる。上記ブレンド又は層状の構成物が、1種のポリマーのみを含む場合、それは、本明細書に記載される第一又は第二のポリマーのどちらかであることができる。本明細書において、ポリマーを記述する際に用いられる、用語「(メタ)アクリレート」は、メチル基を含む状態(メタクリレート)又はメチル基のない状態(アクリレート)を意味する。
【0063】
好適な第一のポリマーの例には、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、及び特に、2〜8個の炭素のアルキル鎖長を有するもの、及び50キロダルトン〜900キロダルトンの分子量を有するものが含まれる。例示的な第一のポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)である。上記ポリマーは、例えば、Aldrichから購入することができ、分子量は、約200,000ダルトン〜約320,000ダルトンの範囲にわたり、そして種々の固有粘性率、溶解性及び状態(例えば、結晶又は粉末)を有する。
【0064】
好適な第一のポリマーの例にはまた、ポリ(アリール(メタ)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、及びポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)から成る群から選択されるポリマーが含まれる。上記用語は、ポリマー構造物を記述するために用いられ、そこでは、少なくとも1種の炭素鎖及び少なくとも1種の芳香環が、アクリル基、典型的にはエステルと結合し、本発明の組成物が供給される。特に、好ましいポリマー構造物は、6〜16個の炭素原子を有し、そして約50〜約900キロダルトンの重量平均分子量を有するアリール基を有するものである。好適なポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールアルキ(メタ)アクリレート)(poly(arylalky(meth)acrylate)又はポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)を、芳香族部分をも含むアルコールに由来する芳香族エステルから製造することができる。
【0065】
(アリール(メタ)アクリレート)の例には、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)及び−メタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロ(ブロモ、フルオロ)アクリレート)及びポリ(ペンタクロロ(ブロモ、フルオロ)メタクリレート)、並びにポリ(フェニルアクリレート)及びポリ(フェニルメタクリレート)が含まれる。ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)の例には、ポリ(ベンジルアクリレート)及びポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)及びポリ(2−フェネチルメタクリレート、並びにポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)が含まれる。ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)の例には、種々のポリエチレングリコール分子量を有する、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)及びポリ(フェノキシエチルメタクリレート)、及びポリ(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)及びポリ(エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレートが含まれる。
【0066】
好適な第二のポリマーの例は、購入可能であり、そしてビーズ、ペレット、顆粒等の形状の、約10%〜約50%(12%、14%、18%、25%、33%のバージョンが市販されている)の酢酸ビニル濃度を有するポリ(エチレン−co−ビニルアセテート)(pEVA)を含む。より低い%のビニルアセテートを有するpEVAコポリマーが、典型的な溶媒にだんだんと不溶性になる一方で、より高い%のビニルアセテートを有するものは、耐久性が次第に弱くなる。
【0067】
本発明において用いるための例示的なポリマー混合物は、PBMA及びpEVAの混合物を含む。ポリマーのこの混合物は、約0.25〜約70%(wt)の絶対的なポリマー濃度(すなわち、上記上塗り又はブレンド内の両ポリマーを一緒にした総濃度)を有し、有用であることが証明されている。上記混合物は、約0.05〜約70%(wt)のコーティング溶液において、個々のポリマー濃度を有し、有効であることが証明されている。好ましい態様の一つでは、上記ポリマー混合物は、100キロダルトン〜900キロダルトンの分子量を有するPBMAと、24〜36重量%の酢酸ビニル含有率を有するpEVAコポリマーとを含む。特に好ましい実施形態では、上記ポリマー混合物は、200キロダルトン〜400キロダルトンの分子量を有するPBMAと、30〜34重量%の酢酸ビニル含有率を有するpEVAコポリマーとを含む。
【0068】
本発明の第二のポリマーはまた、(i)ポリ(アルキレン−co−アルキル(メタ)アクリレート、(ii)他のアルキレンとのエチレンコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)ジオレフィンが誘導された非芳香族ポリマー及びコポリマー、(v)芳香族基含有コポリマー、並びに(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーから成る群から選択される1種又は2種以上のポリマーを含むことができる。本発明の第一のポリマーはまた、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)及びポリ(芳香族(メタ)アクリレート)から成る群から選択されるポリマーを含むことができ、ここで、「(メタ)」は、アクリル及び/又はメタクリルの状態(それぞれ、アクリレート及び/又はメタクリレートに相当する)のどちらかの上記分子を含むことが、当業者に理解されるであろう。
【0069】
ポリ(アルキレン−co−アルキル(メタ)アクリレート)は、当該アルキル基が、直鎖又は分岐鎖のどちらかであり、そして干渉しない基又は原子で置換されているか又は置換されていないそれらのコポリマーを含む。上記アルキル基は、好ましくは1〜8個の炭素原子、そしてさらに好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。ある実施形態では、上記アルキル基はメチルである。いくつかの実施形態では、上記アルキル基を含むコポリマーは、約15%〜約80%(wt)のアルキルアクリレートを含むことができる。上記アルキル基がメチルである場合、上記ポリマーは、いくつかの実施形態では約20%〜約40%のメチルアクリレートを、特定の実施形態では約25〜約30%のメチルアクリレートを含む。上記アルキル基がエチルである場合、上記ポリマーは、ある実施形態では約15%〜約40%のエチルアクリレートを含み、そして上記アルキル基がブチルである場合、ある実施形態では約20%〜約40%のブチルアクリレートを含む。
【0070】
あるいは、本発明において用いるための第二のポリマーは、他のアルキレンとのエチレンコポリマーを含むことができ、同様に、直鎖及び分岐鎖のアルキレン、並びに置換された又は置換されていないアルキレンを含むことができる。例には、3〜8個の分岐鎖又は直鎖の炭素原子を含むアルキレンから調製されたコポリマーが含まれる。ある実施形態では、例には、3〜4個の分岐鎖又は直鎖の炭素原子を含むアルキレン基から調製されたコポリマーが含まれる。特定の実施形態では、例には、3個の炭素原子を含むアルキレン基(例えば、プロペン)から調製されたコポリマーが含まれる。
【0071】
例として、上記他のアルキレンは、直鎖のアルキレン(例えば、1−アルキレン)である。この種の例示的なコポリマーは、約20%〜約90%のエチレン(モルに基づく)を含むことができる。ある実施形態では、この種のコポリマーは、約35%〜約80%(モル)のエチレンを含む。上記コポリマーは、約30キロダルトン〜約500キロダルトンの分子量を有する。例示的なコポリマーは、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(エチレン−co−1−ブテン)、ポリ(エチレン−co−1−ブテン−co−1−ヘキセン)及び/又はポリ(エチレン−co−1−オクテン)から成る群から選択される。
【0072】
本発明で用いるために好適な「ポリブテン」は、イソブチレン、1−ブテン及び/又は2−ブテンをホモ重合するか、又はランダム共重合することに由来するポリマーを含む。上記ポリブテンは、任意の異性体のホモポリマーであることができ、又は上記ポリブテンは、任意の比率におけるモノマー単位のコポリマー又はターポリマーであることができる。ある実施形態では、上記ポリブテンは、少なくとも約90%(wt)のイソブチレン又は1−ブテンを含む。特定の実施形態では、上記ポリブテンは、少なくとも約90%(wt)のイソブチレンを含む。
【0073】
上記ポリブテンは、干渉しない量の他の材料又は添加剤を含むことができ、例えば、上記ポリブテンは、最大1000ppmの抗酸化物質(例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−メチルフェノール又はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT))を含むことができる。例として、上記ポリブテンは、約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンの分子量を有することができる。ある実施形態では、上記ポリブテンは、約200キロダルトン〜約600キロダルトンを有することができる。特定の実施形態では、上記ポリブテンは、約350キロダルトン〜約500キロダルトンを有することができる。約600キロダルトン超、1,000キロダルトン超の分子量を有するポリブテンを使用することができるが、これらを用いることはより難しいと考えられている。
【0074】
さらに別の第二のポリマーは、ジオレフィンに由来する非芳香族ポリマー又はコポリマーであって、当該ポリマー又はコポリマーを調製するために用いられるジオレフィンモノマーが、ブタジエン(CH2=CH−CH=CH2)及び/又はイソプレン(CH2=CH−C(CH3)=CH2)から選択されるものを含む。ある実施形態では、上記ポリマーは、ジオレフィンモノマーに由来するホモポリマーであるか、又は非芳香族のモノ−オレフィンモノマーとのジオレフィンモノマー単位のコポリマーであり、そして所望により、上記ホモポリマー又はコポリマーは、部分的に水素化されている。上記ポリマーは、cis−、trans−及び/若しくは1,2−モノマー単位の重合により、又は3種のモノマー全ての混合物から調製されたポリブタジエンと、cis−1,4−及び/又はtrans−1,4−モノマー単位の重合により調製されたポリイソプレンとから成る群から選択されうる。
【0075】
あるいは、上記ポリマーは、非芳香族モノ−オレフィンモノマー、例えば、アクリロニトリル、並びにアルキル(メタ)アクリレート及び/又はイソブチレンに基づくコポリマー、例えば、グラフトコポリマー及びランダムコポリマーである。ある実施形態では、上記モノ−オレフィンモノマーがアクリロニトリルである場合には、共重合されたアクリロニトリルは、最大約50重量%で存在し、そして上記モノ−オレフィンモノマーがイソブチレンである場合、上記ジオレフィンは、イソプレン(例えば、「ブチルゴム」として商業的に知られているものを生成させる)である。例示的なポリマー及びコポリマーは、約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンのMwを有する。ある実施形態では、ポリマー及びコポリマーは、BHTを有する場合及び有しない場合において、約200キロダルトン〜約200キロダルトンのMwを有する。
【0076】
さらに別の第二のポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーを含む芳香族基含有コポリマーを含む。ある実施形態では、上記芳香族基を、スチレンの重合により、上記コポリマー中に導入する。特定の実施形態では、上記ランダムコポリマーは、スチレンモノマーと、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、C1〜C4のアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)及び/又はブテンから選択される1種又は2種以上のモノマーとの共重合に由来するコポリマーである。
【0077】
有用なブロックコポリマーには、(a)ポリスチレンのブロック、(b)ポリブタジエン、ポリイソプレン及び/又はポリブテン(例えば、イソブチレン)から選択されたポリオレフィンのブロック、並びに(c)所望により、ポリオレフィンブロック内で共重合された第三のモノマー(例えば、エチレン)が含まれる。上記芳香族基含有コポリマーは、約10%〜約50%(wt)の重合された芳香族モノマーを含み、そして上記コポリマーの分子量は、約300キロダルトン〜約500キロダルトンである。ある実施形態では、上記コポリマーの分子量は、約100キロダルトン〜約300キロダルトンである。
【0078】
さらに別の第二のポリマーは、エピクロロヒドリンホモポリマー及びポリ(エピクロロヒドリン−co−アルキレンオキシド)コポリマーを含む。ある実施形態では、上記コポリマーの場合には、共重合されたアルキレンオキシドは、エチレンオキシドである。例として、エピクロロヒドリン含有ポリマーのエピクロロヒドリン含有率は、約30%〜100%(wt)である。ある実施形態では、エピクロロヒドリン含有率は、約50%〜100%(wt)である。ある実施形態では、上記エピクロロヒドリン含有ポリマーは、約100キロダルトン〜約300キロダルトンのMwを有する。
【0079】
本発明のポリマーはまた、生分解性ポリマーを含む。好適な生分解性ポリマー材料は、(a)非ペプチド系ポリアミノポリマー;(b)ポリイミノカーボネート;(c)アミノ酸由来ポリカーボネート及びポリアリレート;並びに(d)ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーから選択される。上記生分解性ポリマー材料は、分解して無毒の分解生成物を生成し、そして身体に重大な拒絶反応を生じさせない。
【0080】
好適な生分解性ポリマーの例には、ポリ(L−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン(polydioxanone)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスフェートエステル)、ポリホスホスエステル(polyphosphosester)ウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、並びに上記ポリマーのコポリマー及びブレンドが含まれる。好適な生分解性ポリマーには、生分解性生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デキストラン、多糖類、でん粉コラーゲン及びヒアルロン酸が含まれる。
【0081】
上記ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(ブチレンテレフタレート)に基づくポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーを含むか、又は当該ブロックコポリマーであることができ、そして次の一般的な構造:
[−(OCH2CH2n−O−C(O)−C64−C(O)−]x[−O−(CH24−O−C(O)−C64−C(O)−]y
(式中、−C64−は、テレフタル酸の各エステル化分子に由来する二価の芳香環残渣を表し、nは、各親水性PEGブロック内のエチレンオキシド単位の数を表し、xは、上記コポリマー内の親水性ブロックの数を表し、そしてyは、上記コポリマー内の疎水性ブロックの数を表す)
により記載することができる。
好ましくは、nは、PEGブロックの分子量が300〜約4000となるように選択される。好ましくは、x及びyは、マルチブロックコポリマーが、約55重量%から、最大約80重量%のPEGを含むように選択される。
【0082】
上記コポリマー構造中のn、x及びyの値を変化させて、上記ブロックコポリマーを作り変え、複数の物理的特性(例えば、親水性、接着性、強度、展性、分解性、耐久性、可とう性)及び活性薬剤放出特性(例えば、制御されたポリマー分解及び膨潤により)を付与することができる。ある実施形態では、上記コポリマーの分解により、有毒な分解生成物又は酸環境は作り出されず、そしてその親水性の性質により、不安定な活性薬剤、例えば、たんぱく質(例えば、リゾチーム)の安定性が維持される。
【0083】
ある実施形態では、上記生分解性ポリマー材料は、非ペプチド系ポリアミノ酸ポリマーからできている。好適な非ペプチド系ポリアミノ酸ポリマーは、例えば、米国特許第4,638,045号明細書([Non−Peptide Polyamino Acid Bioerodible Polymers」、1987年1月20日)に記載されている。
一般的に、これらのポリマー材料は、下記:
【化2】

(式中、上記モノマー単位は、側基R1、R2及びR3の一つ以上のところで、加水分解に不安定な結合により結合されており、そしてR1、R2、R3は、天然由来のアミノ酸の側基であり;Zは、任意の望ましいアミン保護基又は水素であり;そしてYは、任意の望ましいカルボキシル保護基又はヒドロキシルである)
に具体的に説明される2つの構造の一方を有する2つ又は3つのアミノ酸単位を含むモノマーに由来する。
【0084】
各モノマー単位は、天然由来のアミノ酸を含み、次いで、アミド又は「ペプチド」結合以外の結合を経由して、モノマー単位として重合される。上記モノマー単位は、ペプチド結合を介した2つ又は3つのアミノ酸単位からできていてもよく、ひいては、ジペプチド又はトリペプチドを含む。上記モノマー単位の正確な組成に関わらず、全ては、ポリペプチド鎖に特有であるアミド結合を生成するアミノ及びカルボキシル基を経由するよりはむしろ、それらのそれぞれの側鎖を経由して、加水分解に不安定な結合により重合される。上記ポリマー組成物は無毒であり、生分解性であり、そして種々の治療用途における活性薬剤のデリバリーに関するゼロ次放出動力学(zero−order release kinetics)を提供することができる。
【0085】
これらの態様に従って、上記アミノ酸は、天然由来のL−α−アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリシン、アルギニン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、シトルリン、オルニチン、ランチオニン、ヒポグリシンA、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、α−アミノアジピン酸、カナバニン、ベンコリックアシッド(venkolic acid)、チオールヒスチジン、エルゴチオニン(ergothionine)、ジヒドロキシフェニルアラニン、及びたんぱく質化学において特徴付けられ且つ良好に認められている他のアミノ酸から選択される。
【0086】
ある実施形態では、上記生分解性ポリマー材料は、ポリイミノカーボネートからできていてもよい。ポリイミノカーボネートは、ポリカーボネートに構造的に関連し、ここで、イミノ基(>C=NH)は、ポリカーボネート中で、通常カルボニル酸素により占められている場所に存在する。
従って、上記生分解性成分は、下記結合:
【化3】

を有するポリイミノカーボネートから形成されうる。
【0087】
例えば、有用なポリイミノカーボネートの一つは、次の一般的なポリマー構造式:
【化4】

(式中、Rは、非縮合芳香族有機環を含む二価の有機基であり、そしてnは1超である)
を有する。
【0088】
上記一般式のR基の好ましい実施形態は、下記:
【化5】

(式中、R’は、C1〜C6の低級アルケンである)
【化6】

(式中、nは1以上の整数であり、Xは、ヘテロ原子、例えば、−O−、−S−、又は架橋基(bridging group)、例えば、−NH−、−S(=O)−、−SO2−、−C(=O)−、−C(CH32−、−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH2−CH(CH3)−である)
【化7】

により例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
また、次の一般式:
【化8】

(式中、Xは、O、NH又はNR’’’であり、ここでR’’’は、低級アルキル基であり;そしてR’’は、ポリオレフィン等のポリマーを含む炭化水素、オリゴグリコール又はポリグリコール、例えば、ポリアルキレングリコールエーテル、ポリエステル、ポリウレア、ポリアミン、ポリウレタン又はポリアミドの二価の残渣である)
の化合物を利用することができる。
【0090】
これらの実施形態に従って用いるための例示的な出発物質は、次の式:
【化9】

を有するジフェノール化合物と、次の式:
【化10】

を有するジシアネート化合物とを含み、R1及びR2は、同一又は異なって、そしてアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン又はヘテロ原子を含む官能基である。
【0091】
1及びZ2は、それぞれ、水素、ハロゲン、低級アルキル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、チオエーテル、スルホキシド及びスルホニルから成る群から選択される、1又は2以上の同一又は異なる基を表すことができる。好ましくは、各Z1及びZ2は、それぞれ、水素である。
【0092】
ある実施形態では、上記生分解性ポリマー材料は、種々の型のアミノ酸由来ポリカーボネート及びポリアリレートからできていてもよい。これらのアミノ酸由来ポリカーボネート及びポリアリレートを、一定のアミノ酸由来ジフェノール出発物質を、それぞれ、ホスゲン又はジカルボン酸のどちらかと反応させて調製することができる。この実施形態のアミノ酸由来ポリカーボネート及び/又はポリアリレートの調製のための例示的なアミノ酸由来ジフェノール出発物質は、重合して熱加工を可能とする十分に低いガラス転移温度(「Tg」)を有するポリイミノカーボネートを生成することができるモノマーである。
【0093】
この実施形態に従うモノマーは、次に示される式:
【化11】

(式中、R1は、最大18個の炭素原子を含むアルキル基である)
を有するアミノ酸エステル誘導体であるジフェノール化合物である。
【0094】
さらに別の実施形態では、上記生分解性ポリマー材料は、親水性のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)及び生分解性の配列の両方を含むコポリマーからできていてもよく、ここで各PAO単位の炭化水素部分は、1〜4個の炭素原子、又は2個の炭素原子(すなわち、PAOがポリ(エチレンオキシド)である)を含む。例えば、有用な生分解性ポリマー材料は、PAO及びアミノ酸又はペプチド配列を含むブロックコポリマーから作ることができ、そして構造:−L−R1−L−R2−により独立して表される1種又は2種以上の反復構造単位を含み、ここでR1はポリ(アルキレンオキシド)であり、Lは−O−又は−NH−であり、そしてR2は、少なくとも1種のペンダント型アミノ基及び2つのカルボン酸基を含むペプチド配列又はアミノ酸である。
【0095】
他の有用な生分解性ポリマー材料は、チロシン由来ジフェノールモノマー単位及びポリ(アルキレンオキシド)、例えば、下記:
【化12】

(式中、R1は、−CH=CH−又は(−CH2−)jであり、ここでjは0〜8であり;R2は、最大18個の炭素原子を含み、そして所望により少なくとも1つのエーテル結合を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル及びアルキルアリール基、並びに上記コポリマーに共有結合した生物学的及び医薬的に活性な化合物の誘導体から選択され;各R3は、独立して、1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基から選択され;yは、5〜約3000であり;そしてfは、上記コポリマーにおいて、アルキレンオキシドのモル分率(%)であり、そして約0.01〜約0.99の範囲にわたる)
に示されるポリカーボネートを含む、ポリアリレート又はポリカーボネートランダムブロックコポリマーからできている。
【0096】
いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖の分解及び吸収の速度をさらに制御するために、ペンダント型カルボン酸基を、ポリカーボネート、ポリアリレート及び/又はそれらのポリ(アルキレンオキシド)ブロックコポリマーのための上記ポリマーバルク内に導入することができる。
【0097】
上記上塗り材料はまた、天然ポリマー、例えば、多糖類、例えば、ポリデキストラン、グリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロン酸、及びポリペプチド又は可溶性たんぱく質、例えば、アルブミン及びアビジン、並びにそれらの組み合わせを含むことができる。天然ポリマー及び合成ポリマーの組み合わせをまた、用いることができる。記載されるように、上記合成及び天然のポリマー及びコポリマーをまた、反応性基、例えば、熱反応性基又は光反応性基を用いて誘導することができる。
【0098】
光活性化できるアリールケトン、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、キノン、アントロン及びアントロン様複素環(すなわち、10位にN、O又はSを有するもの等のアントロンの複素環式の類似体)、又はそれらの置換化(例えば、環置換化)誘導体が好ましい。好ましいアリールケトンの例には、アントロンの複素環式の誘導体、例えば、アクリドン、キサントン及びチオキサントン、並びにそれらの環置換化誘導体が含まれる。特に好ましいには、約360nm超の励起エネルギーを有するチオキサントン及びその誘導体である。
【0099】
米国特許第5,563,056号明細書(Swanら)、米国特許第6,214,901号明細書(Chudzikら)、米国特許出願公開第20020041899号明細書(現米国特許第7,056,533号)(Chudzikら)、米国特許出願公開第20020188037号明細書(Chudzikら)、及び米国特許出願公開第20030129130号明細書(Guireら)を参照して、本明細書に組み入れる。
【0100】
活性薬剤
本発明のコポリマー組成物はまた、1種又は2種以上の活性薬剤、例えば、生理活性薬剤を含むことができる。ある量の生理活性薬剤を上記装置に適用して、治療に有効な量の薬剤を、コーティングされた装置を受け入れる患者に供給することができる。特に有用な薬剤は、心臓血管機能に作用するもの又は心臓血管に関連する不調を治療するために用いられうるものを含む。ある実施形態では、上記活性薬剤は、エストラジオールを含む。ある実施形態では、上記活性薬剤は、ラパマイシンを含む。
【0101】
本発明に有用な活性薬剤は、下記を含む複数の種類の治療薬を含むことができる:トロンビンインヒビター、抗血栓薬、血栓溶解薬、線維素溶解薬、抗凝固薬、抗血小板薬、血管痙攣インヒビター、カルシウムチャンネル遮断薬、ステロイド、血管拡張薬、抗高血圧症薬、抗微生物薬、抗生物質、抗菌物質、抗寄生虫薬及び/又は抗原虫液剤、防腐剤、抗真菌薬、血管形成薬、抗血管形成薬、表面糖たんぱく質受容体のインヒビター、抗有糸分裂薬、微小管インヒビター、抗分泌薬、アクチンインヒビター、リモデリングインヒビター、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗薬、縮瞳薬、抗増殖薬、抗ガン化学療法薬、抗がん剤、抗ポリメラーゼ薬(antipolymerase)、抗ウイルス薬、抗AIDS薬物、抗炎症ステロイド又は非ステロイド系抗炎症薬、鎮痛薬、解熱薬、免疫抑制薬、免疫調節薬、成長ホルモン拮抗薬、成長因子、放射線治療薬、ペプチド、たんぱく質、酵素、細胞外マトリックス成分、ACEインヒビター、遊離ラジカル捕捉剤、キレート化合物、抗酸化物質、光線力学的治療薬、遺伝子治療薬、麻酔薬、抗毒素、神経毒、オピオイド、ドーパミン作動薬、睡眠薬、抗ヒスタミン薬、精神安定薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬及び抗パーキンソン薬物、鎮痙薬及び筋肉収縮薬(muscle contractant)、抗コリン作用薬、眼病用薬剤、抗緑内障液剤、プロスタグランジン、抗うつ薬、抗精神病薬物、神経伝達物質、制吐薬、造影剤、特効を有するターゲッティング薬剤(specific targeting agent)、及び細胞応答調整剤。
【0102】
さらに具体的には、実施態様において、上記活性薬剤は、下記を含むことができる:ヘパリン、共有結合性ヘパリン(covalent heparin)、合成ヘパリン塩、又は別のトロンビンインヒビター;ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、D−フェニルアラニル−L−ポリ−L−アルギニルクロロメチルケトン、又は別の抗血栓薬;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター、又は別の血栓溶解薬;線維素溶解薬;血管痙攣インヒビター;カルシウムチャンネル遮断薬、ニトレート、一酸化窒素、一酸化窒素助触媒、一酸化窒素供与体、ジピリダモール、又は別の血管拡張剤;HYTRIN(商標)又は他の抗高血圧症薬;糖たんぱく質Ilb/IIIaインヒビター(abciximab)又は表面糖たんぱく質受容体の別のインヒビター;アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル又は別の抗血小板薬;コルヒチン又は別の抗有糸分裂薬、又は別の微小管インヒビター;ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイド、又は別の抗分泌薬;サイトカラシン又は別のアクチンインヒビター;細胞周期インヒビター;レモデリングインヒビター;デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチド、又は分子遺伝学的研究用の別の薬剤;メトトレキサート、又は別の代謝拮抗薬若しくは抗増殖剤;クエン酸タモキシフェン、TAXOL(商標)、パクリタキセル、又はそれらの誘導体、ラパマイシン(又は他のラパログ)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、テノピシド(tenopiside)、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド及びその類似体、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン等)、ストレプトゾシン、メトトレキサート(多くの指標と共に用いられる)、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2−クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー又は他の抗ガン性化学療法薬;シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、ピメクロリムス(pimecrolimus)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、mTORインヒビター、又は別の免疫抑制薬;コルチゾール、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、デキサメタゾンアセテート、デキサメタゾン誘導体、ベタメタゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6U−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、又は別のステロイド系薬剤;トラピジル(PDGF拮抗薬)、アンジオペプチン(成長ホルモン拮抗薬)、アンジオジェニン、成長因子(例えば、血管内皮成長因子(VEGF))、又は抗成長因子抗体(例えば、商品名LUCENTIS(商標)の下で市販されているラニビズマブ)、又は別の成長因子拮抗薬又は作動薬;ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸ペルゴリド、又は別のドーパミン作動薬;60Co(半減期5.3年)、192Ir(73.8日)、32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99Tc(6時間)、又は別の放射線治療薬;ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステン又は放射線不透過性薬剤として作用する別の重金属;ペプチド、たんぱく質、細胞外マトリックス成分、細胞成分又は別の生物系薬剤;カプトプリル、エナラプリル又は別のアンギオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター;アンギオテンシン受容体ブロッカー;酵素インヒビター(成長因子シグナル変換キナーゼインヒビター);アスコルビン酸、α−トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキサミン、21−アミノステロイド(ラザロイド、lasaroid)又は別の遊離のラジカル捕捉剤、鉄キレート剤又は抗酸化物質;14C−、3H−、131I−、32P−又は36S−が放射性同位体でラベル付けされた形態又は他の上述のものの放射性同位体でラベル付けされた形態;エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロン等)又は別の性ホルモン;AZT又は他の抗ポリメラーゼ薬;アシクロビル、ファムシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、Norvir、Crixivan、又は他の抗ウイルス薬;5−アミノレブリン酸、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘマトポルフィリン、ローダミン123又は他の光線力学的治療薬;シュードモナス アエルジノサ(Pseudomonas aeruginosa)外毒素Aに対するκ−抗体であって、A431表皮癌細胞と反応性を有するもの、サポリン(saporin)に共有結合したノルアドレナリン作動性の酵素ドーパミンβ−ヒドロキシラーゼに対するモノクローナル抗体、又は他の抗体で目標を定められた治療薬剤;遺伝子治療薬剤;エナラプリル及び他のプロドラッグ;PROSCAR(商標)、HYTRIN(商標)又は良性前立腺過形成(BHP)を治療するための他の薬剤;ミトーテン、アミノグルテチミド、ブレベルジン(breveldin)、アセトアミノフェン、エトダラック(etodalac)、トルメチン、ケトロラック、イブプロフェン及び誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ナブメトン、オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、これらの任意の混合物、又はこれらの任意の誘導体。
【0103】
上記コーティング材料にまた含まれうる他の生物学的に有用な化合物には、ホルモン、β−ブロッカー、抗狭心症薬、心臓の変力剤、コルチコステロイド、鎮痛薬、抗炎症薬、抗不整脈薬、免疫抑制薬、抗菌物質、抗高血圧症薬、抗マラリア薬、抗がん剤、抗原虫薬、抗甲状腺薬、鎮静薬、睡眠薬及び神経弛緩薬、利尿剤、抗パーキンソン症候群治療薬、胃腸薬、抗ウイルス薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗菌薬、ヒスタミンH−受容体拮抗薬、脂質調節薬、筋弛緩薬、栄養剤、例えば、ビタミン及びミネラル、興奮剤、核酸、ポリペプチド、及びワクチンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
抗生物質は、微生物の成長を抑制するか、又は微生物を殺す物質である。抗生物質は、合成的に製造されるか、又は微生物により生産されうる。抗生物質の例には、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ゲルダナマイシン、ゲルダナマイシン類似体、セファロスポリン等が含まれる。セファロスポリンの例には、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン及びセフォペラゾンが含まれる。
【0105】
防腐剤は、一般的に非特異的な様式において、例えば、微生物の活性を妨げるか、又は微生物を消滅させることのどちらかにより、当該微生物の成長又は行動を防ぐ又は阻止する物質として認められている。防腐剤の例には、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール系化合物、ヨウ素担体化合物、第四級アンモニウム化合物及び塩素化合物が含まれる。
【0106】
抗ウイルス薬は、ウイルスの複製を破壊又は抑圧することができる物質である。抗ウイルス薬の例には、α−メチル−1−アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ−エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5−ヨード−2’−デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン及びアデニンアラビノシドが含まれる。
【0107】
酵素インヒビターは、酵素反応を抑制する物質である。酵素インヒビターの例には、塩化エドロホニウム、N−メチルフィソスチグミン、ネオスチグミンブロミド、フィソスチグミンスルフェート、タクリンHCL、タクリン、1−ヒドロキシマレエート、ヨードツベルシジン(iodotubercidin)、p−ブロモテトラミソール(p−bromotetramisole)、10−(α−ジエチルアミノプロピオニル)−フェノチアジンヒドロクロリド、カルミダゾリウムクロリド、ヘミコリニウム−3,3,5−ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼインヒビターI、ジアシルグリセロールキナーゼインヒビターII、3−フェニルプロパルギルアミニー(3−phenylpropargylaminie)、N−モノメチル−L−アルギニンアセテート、カルビドパ、3−ヒドロキシベンジルヒドラジンHCl、ヒドララジンHCl、クロルジリン(clorgylin)HCl、デプレニールHCl L(−)、デプレニールHCl D(+)、ヒドロキシルアミンHCl、イプロニアジドホスフェート、6−MeO−テトラヒドロ−9H−ピリド−インドール、ニアルアミド、パルギリンHCl、キナクリンHCl、セミカルバジドHCl、トラニルシプロミンHCl、N,N−ジエチルアミノエチル−2,2−ジ−フェニルバレレートヒドロクロリド、3−イソブチル−1−メチルキサンテン(xanthne)、パパベリンHCl、インドメタシン化された2−シクロオクチル−2−ヒドロキシエチルアミンヒドロクロリド、2,3−ジクロロ−α−メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9−ジクロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−lH−2−ベンズアゼピンヒドロクロリド、p−アミノグルテチミド、p−アミノグルテチミドタルトレートR(+)、p−アミノグルテチミドタルトレートS(−)、3−ヨードチロシン、α−メチルチロシンL(−)、α−メチルチロシンD(−)、セタゾールアミド(cetazolamide)、ジクロロフェナミド、6−ヒドロキシ−2−ベンゾチアゾールスルホンアミド、メシル酸イマチニブ(Gleevec(商標))及びアロプリノールが含まれる。
【0108】
解熱剤は、発熱を和らげるか、又は熱を下げることができる物質である。抗炎症薬は、炎症をなくす又は抑えることができる物質である。上記薬剤の例には、アスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、インドメタシンナトリウム三水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナク、インドプロフェン及びナトリウムサリチルアミドが含まれる。
【0109】
局部麻酔薬は、局部における麻酔効果を有する物質である。上記麻酔薬の例には、プロカイン、リドカイン、テトラカイン及びジブカインが含まれる。
造影剤は、in vivoで、所望の部位、例えば、腫瘍を投影することができる薬剤である。造影剤の例には、in vivoで検出可能な標識を有する物質、例えば、蛍光標識に接着した抗体が含まれる。用語「抗体」は、抗体全体及びそれらの断片を含む。
【0110】
細胞応答調整剤は、化学走化性因子、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)である。他の化学走化性因子には、好中球活性化たんぱく質、単球走化性たんぱく質、マクロファージ炎症性たんぱく質、SIS(small induced secreted)、血小板因子、血小板塩基性たんぱく質、メラノーマ成長促進活性、上皮細胞成長因子、形質転換成長因子α、繊維芽細胞成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、骨成長/軟骨−誘導因子(α及びβ)、及びマトリックス金属プロテアーゼインヒビターが含まれる。他の細胞応答調整剤は、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキンインヒビター、α、β及びγを含むインターフェロン;造血因子、例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子及び果粒球−マクロファージコロニー刺激因子;α及びベータを含む腫瘍壊死因子;形質転換成長因子(β)、例えば、β−1、β−2、β−3、インヒビン、アクチビン、及びこれらのたんぱく質の生産のためにエンコードするDNA、アンチセンス分子、アンドロゲン性受容体ブロッカー及びスタチン薬剤である。
【0111】
ある実施形態では、上記活性薬剤は、微粒子内に存在することができる。ある実施形態では、微粒子を、上記コポリマーの表面に分散されうる。
上記活性薬剤に起因するコーティングの重量は、所与の適用における所与の活性薬剤のために望ましい範囲内であることができる。いくつかの実施形態では、上記活性薬剤に起因するコーティングの重量は、上記装置の有効表面積のcm2あたり、約1μg〜約10mgの活性薬剤の範囲内である。「有効」表面積は、上記組成物それ自体でコーティングされるべき余地のある表面を意味する。平坦で、無孔の表面の場合には、例えば、これは、一般的に、それ自体巨視的な表面積を有するが、かなり多孔質な又は複雑な(例えば、波状、ひだ状、又は繊維状)表面の場合、上記有効表面積は、巨視的な表面積よりも非常に大きい場合がある。ある実施形態では、上記活性薬剤に起因するコーティングの重量は、上記装置の総表面積のcm2あたり、約0.01mg〜約0.5mgである。ある実施形態では、上記活性薬剤に起因するコーティングの重量は、約0.01mg超である。
【0112】
いくつかの実施形態では、1種超の活性薬剤を、上記コーティング内に用いることができる。特に、共薬剤(co−agent)又は共ドラッグ(co−drug)を用いることができる。共薬剤又は共ドラッグは、第一の薬剤又はドラッグと異なる作用をすることができる。上記共薬剤又は共ドラッグは、上記第一の薬剤又はドラッグと異なる溶出プロフィールを有することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、上記活性薬剤は、親水性でありうる。ある実施形態では、上記活性薬剤は、1500ダルトン未満の分子量を有することができ、そして25℃で、10mg/mL超の水溶性を有することができる。いくつかの実施形態では、上記活性薬剤は、疎水性でありうる。ある実施形態では、上記活性薬剤は、25℃で10mg/mL未満の水溶性を有することができる。
【0114】
基板
本発明の実施形態は、金属、ポリマー、セラミック及び天然材料を含む種々の基板表面から、活性薬剤をデリバリーする能力を提供する。
【0115】
金属には、チタン、ステンレス鋼及びコバルトクロムが含まれるが、これらに限定されるものではない。好適な金属はまた、貴金属、例えば、金、銀、銅及び白金を含むことができる。最後に、好適な金属は、合金、例えば、ニチノール又はコバルトクロム合金を含むことができる。
【0116】
ポリマーには、付加重合又は縮合重合のどちらかから生じたオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含む合成ポリマーから生成させたものが含まれる。例(それらに限定されるものではない)には、アクリル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド、及びアクリルアミドから重合したもの;ビニル、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、及びビニリデンジフルオリド、縮合ポリマー(これらに限定されるものではない)、例えば、ナイロン、例えば、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド、及びポリヘキサメチレンドデカンジアミド、及びポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジメチルシロキサン、及びポリエーテルエーテルケトンが含まれる。
【0117】
本発明の実施形態はまた、基板として、セラミックを使用することを含む。上記セラミックには、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア及びアルミナ、並びにガラス、シリカ及びサファイアが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
装置のコンポーネントとして用いる場合、人間の組織を含む一定の天然材料、例えば、骨、軟骨、皮膚及び歯;並びに他の有機材料、例えば、木材、セルロース、圧縮カーボン、ゴム、絹、羊毛及び綿がまた好適である。
【0119】
上記基板の組成物はまた、樹脂、多糖類、ケイ素、又はシリカ系材料、ガラス、フィルム、ゲル及び膜を含むことができる。
上記基板は、生分解性を有することができる。
【0120】
装置
本発明の実施形態は、複数の異なる種類の装置、例えば、医療装置(例えば、血液適合性が改良されること望ましい)と共に用いられうる。医療装置は、埋め込むことができる装置及び非埋め込み型の医療装置の両方を含むことができる。
【0121】
本発明の実施形態は、下記(それらに限定されるものではない)を含む埋め込むことができるか、又は一時的に埋め込むことができる装置に用いることができる:血管系装置、例えば、グラフト(例えば、腹部大動脈瘤グラフト等)、ステント(例えば、典型的にはニチノールから製造した自己拡張型ステント、典型的にはステンレス鋼から調製されたバルーン膨張型ステント、分解性の冠状動脈用ステント等)、カテーテル(例えば、動脈用、静脈用、血圧用、ステント移植皮弁等)、弁(例えば、ポリマー又はカーボン製の機械的な弁、生体弁、弁デサイン、例えば、経皮、縫製カフス等)、塞栓症保護フィルター(例えば、遠心性保護装置)、大静脈フィルター、動脈瘤除外装置、人工心臓、心臓用ジャケット、及び心臓補助装置(例えば、左心室補助装置)、埋め込むことができる除細動器、電気刺激装置及びリード(例えば、ペースメーカー、リードアダプター及びリードコネクタ)、移植された医療装置電力供給体(例えば、バッテリー等)、末梢心臓血管用装置、心房中隔欠損症クロージャ、左心耳用フィルター、弁用環状形成(valve annuloplasty)装置(例えば、弁形成リング)、僧帽弁修復装置、血管インターベンション装置、心臓補助ポンプ、及び血管アクセス装置(例えば、非経口的栄養補給カテーテル、血管アクセスポート、中心静脈アクセスカテーテル);外科的装置、例えば、すべての種類の縫合糸、ステイプル、吻合装置(例えば、吻合用クロージャ)、縫合用アンカー、止血用バリア、スクリュー、プレート、クリップ、血管用インプラント、組織骨格、脳脊髄液用シャント、水頭症用シャント、排液チューブ、カテーテル、例えば、胸腔吸引排液用カテーテル、膿瘍排液用カテーテル、胆汁排液用製品、及び埋め込むことができるポンプ;整形外科用装置、例えば、関節用インプラント、寛骨臼カップ、膝蓋骨用ボタン、骨修復/増大装置、脊椎用装置(例えば、椎間板等)、骨用ピン、軟骨修復装置、及び人工腱;歯科用装置、例えば、人工歯根及び歯科用欠損部修復装置;ドラッグデリバリー装置、例えば、ドラッグデリバリー用ポンプ、移植されたドラッグ注入用チューブ、ドラッグ注入用カテーテル、及び硝子体用ドラッグデリバリー装置;眼科用装置、例えば、眼窩インプラント、緑内障排出シャント及び眼内レンズ;泌尿器用装置、例えば、陰茎用装置(例えば、インポテンス用インプラント)、括約筋、尿道、前立腺及び膀胱用装置(例えば、失禁用装置、良性前立腺過形成管理装置、前立腺ガン用インプラント等)、導尿カテーテル、例えば、留置(「Foley」)及び非留置導尿カテーテル及び腎臓部用装置;合成プロテーゼ、例えば、前胸部用プロテーゼ及び人工臓器(例えば、膵臓、肝臓、肺、心臓等);呼吸用装置、例えば、肺用カテーテル;神経系用装置、例えば、神経刺激器、神経系用カテーテル、神経脈管用バルーンカテーテル、神経系動脈瘤(neuroaneurysm)治療用コイル及び神経系用パッチ(neuropatch);耳鼻科用装置、例えば、鼻用ボタン、鼻及び気道用副木、鼻用タンポン、耳用ウィック、耳用排液チューブ、鼓膜切開排出チューブ、耳鼻科用ストリップ、喉頭切除術用チューブ、食道用チューブ、食道用ステント、喉頭用ステント、唾液分泌用バイパスチューブ及び気管開口術用チューブ;バイオセンサ用装置、例えば、グルコースセンサ、心臓用センサ、動脈内血液ガスセンサ;腫瘍学用インプラント;並びに疼痛管理用インプラント。
【0122】
好適な非埋め込み型の装置の部類には、下記が含まれうる:透析装置及び関連するチューブ、カテーテル、膜及びグラフト;自己輸血用装置;血管及び外科用装置、例えば、アテレクトミーカテーテル、血管造影用カテーテル、大動脈内バルーンポンプ、心臓内吸引装置、血液ポンプ、血液酸素供給装置(例えば、チューブ及び膜)、血液フィルタ、血液温度モニター、血液かん流ユニット、血漿交換ユニット、トランジションシース、拡張器、子宮内圧用装置、凝塊抽出用カテーテル、経皮経腔的血管形成術用カテーテル、電気生理学用カテーテル、呼吸回路コネクタ、スタイレット(血管及び非血管)、冠状動脈用ガイドワイヤー、末梢用ガイドワイヤー;拡張器(例えば、尿等);外科用機器(例えば、外科用メス等);内視鏡装置(例えば、内視鏡手術組織抽出機、食道の聴診器);及び一般的な医療用及び医療関連装置、例えば、血液保存用バッグ、臍帯用テープ、膜、手袋、外科的なドレープ、創傷被覆材、組織シーラント、組織用接着剤、創傷管理装置、注射針、経皮クロージャ装置、トランスデューサプロテクター、ペッサリー、子宮出血用パッチ、PAPブラシ、クランプ(例えば、強力なクランプ(bulldog clamp))、カニューレ、細胞培養装置、in vitro診断用材料、クロマトグラフ支持材料、感染抑制装置、人工肛門袋取付け装置、受胎調節装置;使い捨ての温度プローブ;並びにガーゼ。
【0123】
いくつかの態様では、上記ポリマー組成物を、眼科用装置に関連して利用することができる。これらの態様によると、好適な眼科用装置は、眼の所望の範囲に生物活性薬剤を供給することができる。いくつかの態様では、上記装置を利用して、生物活性薬剤を、眼の前区(レンズの前部)及び/又は眼の後区(レンズの後ろ)に供給することができる。好適な眼科用装置をまた利用して、所望の場合に、生物活性薬剤を、眼に近接する組織に供給することができる。
【0124】
いくつかの態様では、眼の外側又は内側の部位に配置するように構成される眼科用装置と共に、上記ポリマー組成物を利用することができる。好適な外部装置は、生物活性薬剤の局所的な投与のために構成されうる。上記外部装置は、眼の外面、例えば、角膜(例えば、コンタクトレンズ)又は眼球結膜上に存在することができる。いくつかの実施形態では、好適な外部装置は、眼の外面に近接して存在することができる。
【0125】
上記眼の内部の部位に配置するように構成される装置は、眼の所望の範囲内に存在することができる。いくつかの態様では、上記眼科用装置を、眼球内の部位、例えば、硝子体のところに配置させるように構成させることができる。実例となる眼球内の装置には、米国特許第6,719,750号明細書(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)及び同第5,466,233号明細書(Weinerらの「Tack for Intraocular Drug Delivery and Method for Inserting and Removing Same」);米国特許出願公開第2005/0019371号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、同第2004/0133155号明細書(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)、同第2005/0059956号明細書(Varnerらの「Devices for Intraocular Drug Delivery」)、及び同第2003/0014036号明細書(Varnerらの「Reservoir Device for Intraocular Drug Delivery」);及び同第2005/0276837号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、同第2005/0271706号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、同第2005/0287188号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、同第2005/0271703号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」)、同第2005/0281863号明細書(Andersonらの「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」);並びに関連出願に記載されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0126】
いくつかの態様では、眼の中の網膜下の範囲に配置させるように、上記眼科用装置を構成させることができる。網膜下の適用の実例となる眼科用装置には、米国特許出願公開第2005/0143363号明細書(de Juanらの「Method for Subretinal Administration of Therapeutics Including Steroids;Method for Localizing Pharmacodynamic Action at the Choroid and the Retina;及びRelated Methods for Treatment and/or Prevention of Retinal Diseases」);同第2006/0110428号明細書(de Juanらの「Methods and Devices for the Treatment of Ocular Conditions」);及び関連出願に記載されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
眼の所望の組織内に配置させるように、眼科用装置を構成することが好適である。例えば、眼科用装置、例えば、強膜の外(extrasclerally)であるが、結膜の中にある装置、例えば、緑内障排液装置等を、眼の網膜下の範囲に配置させるように構成させることができる。
【0128】
下記の例を参照して、本発明をより理解することができる。これらの例は、本発明の特定の実施形態を代表することを目的とするものであって、本発明の範囲を制限することを目的とするものではない。特に断りのない限り、パーセント(%)であるすべての数は、重量パーセントである。
【実施例】
【0129】
例1−本発明のコポリマー組成物は、荷電している活性薬剤の溶出を制御する
ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマー、P(BMA−co−AMPS)であって、その中に導入された活性薬剤、1,4−ジ−メチルピリジンヨージド(DMPI)を有するものが、当該活性薬剤の溶出を制御した。
【0130】
実験1
材料及び方法
ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1,4−ジメチルピリジニウムヨージド(DMPI)を、Aldrich,Milwaukee,WIから購入した。2,2−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)(Vazo(商標)52)を、Dupont,Wilmington,DEから購入した。PBMAを、有機溶媒を用いて抽出することにより精製し、不純物、例えば、残余のモノマーを除去した。
【0131】
ポリマーA:BMA(20mL、17.9g、126ミリモル)、AMPS(1.66g、8ミリモル、6モル%)を、60mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。攪拌棒と共に、この反応混合物を、120mLの琥珀色のジャーに入れた。当該溶液を、45分間、アルゴンでスパージ(sparge)した。開始剤、Vazo(商標)52(0.06g、0.24ミリモル)を添加し、そして上記ジャーを58℃の水浴に入れた。上記反応を18時間実施し、次いでさらに2時間にわたり室温まで冷却した。当該反応混合物を、2000mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマーを沈殿させた。この初期沈殿物(1x)を、45℃で48時間乾燥させ、次いで、5時間の間、50℃において、減圧オーブン内に置いた。乾燥したコポリマーを50mLの溶媒に溶解させ、そしてこの溶液を5℃における1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、上記コポリマーを沈殿させた。この2回沈殿させたコポリマー(2x)をブフナー漏斗内に集め、10mLの脱イオン水(5℃)を用いて、3回すすいだ。上記コポリマーを、室温の換気フード内で一晩中乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。
【0132】
ポリマーB:BMA(18.8mL、16.8g、118ミリモル)、AMPS(3.31g、16ミリモル、12モル%)を、60mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)内に溶解させた。攪拌棒と共に、この反応混合物を、120mLの琥珀色のジャーに入れた。当該溶液を、45分間、アルゴンでスパージした。開始剤、Vazo(商標)52(0.06g、0.24ミリモル)を添加し、そして上記ジャーを58℃の水浴に入れた。上記反応を23時間実施し、次いでさらに2時間にわたり室温まで冷却した。ポリマーB及びポリマーCを得るための2つの異なる沈殿手順を完了するために、反応混合物を2つに分けた。
【0133】
ポリマーB:30mL(1/2)の反応混合物を、1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内に酸性型のAMPSを生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、40℃の減圧オーブン内で7時間乾燥させた。上記コポリマーを35mLの溶媒に溶解させ、そして1700mLの脱イオン水(5℃)の浴に沈殿させて、上記コポリマーを精製した。沈殿物をブフナー漏斗上に集め、そして10mLの脱イオン水(5℃)で3回すすいだ。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。
【0134】
ポリマーC:ポリマーBの反応に由来する、残余の反応混合物30mLを、化学量論的な量のNaOH(1mL、10N)を含む1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内にAMPSのNa+塩形態を生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、40℃の減圧オーブン内で7時間乾燥させた。上記コポリマーを35mLの溶媒に溶解させ、そして1700mLの脱イオン水(5℃)の浴に沈殿させて、上記コポリマーを精製した。沈殿物をブフナー漏斗上に集め、そして10mLの脱イオン水(5℃)で3回すすいだ。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。
【0135】
特性化
3種のポリ(n−ブチルメタクリレート−co−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)ポリマーA、B及びCを、高分解能マジック角度回転(HRMAS)技法を用いたNMR分光光度計で評価したところ、所望の生成物と一致した。1H NMR BL4 HRMAS(CDCl3) 2.8(ブロード、2H)におけるスルフェート基に近接したAMPS、メチレン及び3.95(ブロード、2H)におけるエステル酸素に近接するPBMA、メチレン。上記スルフェート基に近接するAMPS、メチレンシグナルと、上記エステル酸素に近接するPBMA、メチレンシグナルとを統合すると、ポリマーAは、1.5モル%のAMPSを含み、そしてポリマーB及びCは、3モル%のAMPSを含むことが示されている。
【0136】
試料調製
コーティング溶液を、15/85のDPMI/ポリマーマトリックス重量比及び30mg/mLの固形分濃度を用いて、THF(70%)及びメタノール(30%)の混合溶媒の中で調製した。この溶液を、超音波コーターを用いて、ステントに適用した。コーティングされたステントを、in−vitro溶出試験の前に、室温、減圧下で、最小の24時間乾燥させた。
【0137】
溶出
上記ステントを、4mLのリン酸緩衝塩類溶液(PBS)(pH7.4、37℃)の中に吊るすことにより、in vitro溶出試験を実施した。選択された時点において、PBS試料媒体を、新しい溶液と交換し、そして当該試料を、UV/可視分光光度計を用いて、DPMI又は他の活性薬剤の含有率に関して、定量的に分析した。
【0138】
結果
表1は、ステント上にコーティングし、そしてin vitro溶出に関して解析した、種々のDMPI含有ポリマーを示している。対照試料は、DMPIを含むPBMAコーティングであった。全ての試料コーティングは、DMPI/ポリマー又はコポリマーが、15/85%(wt/wt)であった。
【0139】
【表1】

【0140】
図1は、表1で概略を説明した試料に関するDMPI溶出プロフィールを示す。初期の24時間の放出又は「バースト」は、PBMAから放出されたDMPIは最大であり、そしてポリマーA及びポリマーBから放出されたDMPIは最小であった。DPMIの長時間の持続放出が、全ての処方に関して達成された。
【0141】
実験2
材料及び方法
ポリマーD:BMA(17.6mL、15.6g、110ミリモル)、AMPS(5.0g、24ミリモル、18モル%)を、60mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。攪拌棒と共に、この反応混合物を、120mLの琥珀色のジャーに入れた。溶液を1時間、アルゴンを用いてスパージした。開始剤、Vazo(商標)52(0.06g、0.24ミリモル)を添加し、そして上記ジャーを58℃の水浴に入れた。上記反応を17時間実施し、次いでさらに2時間にわたり室温まで冷却した。ポリマーD及びポリマーEを得るための2つの異なる沈殿手順を完了するために、反応混合物を2つに分けた。
【0142】
ポリマーD:40mL(1/2)の反応混合物を、1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内に酸性型のAMPSを生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。上記コポリマーを25mLの溶媒に溶解させ、そして1500mLの脱イオン水(5℃)の浴に沈殿させて、上記コポリマーを精製した。沈殿物をブフナー漏斗上に集め、そして10mLの脱イオン水(5℃)で3回すすいだ。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。
【0143】
ポリマーE:ポリマーDの反応に由来する、残余の反応混合物40mLを、化学量論的に過剰量の5倍のNaOH(1mL、10N)を含む1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内にAMPSのNa+塩形態を生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。上記コポリマーを25mLの溶媒に溶解させ、そして1500mLの脱イオン水(5℃)の浴に沈殿させて、上記コポリマーを精製した。沈殿物をブフナー漏斗上に集め、そして10mLの脱イオン水(5℃)で3回すすいだ。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。
【0144】
特性化
2種のポリ(n−ブチルメタクリレート−co−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)ポリマーD及びEを、1H NMR分光法を用いて分析したところ、所望の生成物と一致した。1H NMR(THF−d8) スルフェート基2.8(ブロード、2H)に近接するAMPS、メチレン、及びエステル酸素3.95(ブロード、2H)に近接するPBMA、メチレン。上記スルフェート基に近接するAMPS、メチレンシグナルと、上記エステル酸素に近接するPBMA、メチレンシグナルとを統合すると、ポリマーD及びEは、9モル%のAMPSを含むことが示されている。
【0145】
試料調製
2種のコーティング溶液を、15/85のDPMI/ポリマー重量比及び30mg/mLの固形分濃度を用いて調製した。溶液1は、70:30のTHF:MeOHブレンドであり、そして溶液2は、80:20のTHF:MeOHブレンドであった。これらの溶液を、超音波コーターを用いて、ステントに適用した。コーティングされたステントを、in−vitro溶出試験の前に、室温、減圧下で、最小の24時間乾燥させた。
【0146】
溶出
in vitro溶出試験を、実験1のように実施した。
【0147】
結果
図2は、ポリマーマトリックスD及びEから放出されるべき活性薬剤DMPIに関する溶出プロフィールを含む。当該溶出プロフィールは、ドラッグ放出の際のコーティング溶液の溶媒の作用を示す。2種のポリマーにおいて、上記コーティング溶液内におけるメタノールと比較したTHFの量が増えると、放出されるドラッグの量が少なくなる。
【0148】
実験3
材料及び方法
ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、及び1,4−ジメチルピリジニウムヨージド(DPMI)を、Aldrich,Milwaukee,WIから購入した。2,2−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)(Vazo(商標)52)を、Dupont,Wilmington,DEから購入した。透析チューブ(3 Spectra/Por(商標)膜 MWCO3,500)を、Spectrum Laboratories,Inc.,Rancho Dominguez、CAから購入した。
ポリマーBは、実験1で調製され、そして特徴付けられた通りである。
【0149】
ポリマーF:ポリマーB(308mg)を、THF(4mL)中に溶解させた。透析チューブを、THF/水(50/50)溶液内で湿潤させた。当該チューブの一方の端部を紐で縛って閉じ(tie shut)、そしてコポリマー溶液を、当該透析チューブに注いだ。上記コポリマー溶液を含むガラス瓶をTHFですすぎ、そしてすすぎ内容物を上記チューブ内に注いだ。上記チューブの他方の端部を紐で縛って閉じ、そして上記チューブを、THF(560mL)、水(560mL)及び塩化ナトリウム(10g)を含む溶液に入れた。上記コポリマーを、3日にわたり、THF、水及び塩化ナトリウムを含むいくつかの溶液で透析し、上記コポリマーをナトリウム塩に転換させた。次いで、上記コポリマーを、3日間、脱イオン水で透析して、過剰の塩化ナトリウムを取り除いた。上記透析チューブの内容物を、丸底フラスコ内に集めて、ロータリーエバポレーションにより水を取り除き、そしてオーブン内で、減圧下、55℃において、一晩中、組成物を乾燥し、302mgのポリマーFを回収した。
【0150】
特性化
ポリ(n−ブチルメタクリレート−co−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリマーBの解析は、実験1で完了した。
【0151】
試料調製
コーティング溶液を、15/85のDPMI/ポリマーマトリックス重量比及び30mg/mLの固形分濃度を用いて、THF(80%)及びメタノール(20%)の混合溶媒の中で調製した。この溶液を、超音波コーターを用いて、ステントに適用した。コーティングされたステントを、in−vitro溶出試験の前に、室温、減圧下で、最小の24時間乾燥させた。
【0152】
溶出
in vitro溶出試験を、実験1のように実施した。
【0153】
結果
図3は、ポリマーB及びポリマーFに関するDPMI溶出プロフィールを示す。ナトリウム塩に転化させるために透析されたポリマーFは、ポリマーBにおいて溶出した18%に対して、26%の若干大きな初期の1日バーストを示した。両コポリマーは、6〜24日の溶出に関する直線状の放出を示した。上記グラフの直線部分における活性薬剤の放出は、ポリマーF(0.43μg/日)が、ポリマーB(0.13μg/日)よりも3.3倍速い。従って、この実験は、AMPSの酸及び塩形態が、ドラッグ溶出速度を制御するために用いることができることを示している。
【0154】
例2−本発明のコポリマー組成物は、疎水性薬剤の溶出を制御する
材料及び方法
トリアムシノロンアセトニド(TA)を、Sigma,St.Louis,MOから購入した。ポリマーA〜Dは、例1及び2の通りであった。
【0155】
試料調製
コーティング溶液を、33/67のTA/ポリマーマトリックス重量比及び30mg/mLの固形分濃度を用いて、溶媒としてのTHF中で調製した。この溶液を、超音波コーターを用いて、ステントに適用した。コーティングされたステントを、in−vitro溶出試験の前に、室温、減圧下で、最小の24時間乾燥させた。
【0156】
溶出
in vitro溶出試験を、実験1のように実施した。
【0157】
結果
表1は、ステント上にコーティングし、そしてin vitro溶出に関して解析した、種々のTA含有ポリマーを示している。対照試料は、TAを含むPBMAコーティングであった。全ての試料コーティングは、TA/ポリマー又はコポリマーが、33/67%(wt/wt)であった。
【0158】
【表2】

【0159】
図4は、表2の試料に関して、総ドラッグ充填量のパーセンテージとしてのTA溶出プロフィールを示す。放出されるTAの量を、上記コポリマー内に導入されたAMPSの量で制御した。AMPSの量を増やすと、上記コポリマーから放出されるTAの量が増え、そして上記コポリマー内のAMPS濃度が低くなると、TAの放出が連続的に少なくなった。AMPSを含まないPBMAから最小量のドラッグが溶出した。
【0160】
例3−本発明のポリマー組成物は血液適合性を付与する
この例は、本発明に従うコポリマー組成物が、物体の血液適合性を増すことを測定した。
【0161】
材料及び方法
公知の方法で、多血小板血しょうを調製した。血液を、3.8%のクエン酸ナトリウムを含む凝固チューブに集めた。上記チューブを、室温で15分間、200gで遠心分離機にかけ、多血小板血しょうの浮遊物を得た。PRP中の血小板数は、規定の350,000〜500,000個の血小板/μLであった。
【0162】
感光性ピロリドンを次の通りに製造した:1.0kg(4.42モル)の4−ベンゾイル安息香酸(BBA)を、還流冷却器及びオーバーヘッドスターラーを備えている、乾燥した5リットルのMorton製フラスコに添加し、続いて、645mL(8.84モル)のチオニルクロリド及び725mLのトルエンを添加した。次いで、3.5mLのジメチルホルムアミドを添加し、そして当該混合物を4時間の間、還流させて加熱した。冷却後、溶媒を減圧下で除去し、そして3×500mLのトルエンを用いた3回のエバポレーションにより、残差のチオニルクロリドを除去した。
【0163】
上記生成物を、1:4のトルエン:ヘキサンから再結晶化させ、減圧オーブン内で乾燥した後、988g(91%収率)を得た。生成物の融点は、92〜94℃であった。80MHz(1H NMR(CDCl3))における核磁気共鳴(NMR)分析は、所望の生成物と一致した:芳香族プロトン 7.20〜8.25(m,9H)。すべての化学シフト値は、テトラメチルシラン内部標準からのppmダウンフィールドにある。上記感光性ピロリドンは、l−ビニル−2−ピロリドン及びAPMAを共重合し、続いて、ショッテン−バウマン条件下で、4−ベンゾイルベンゾイルクロリドを用いて、上記ポリマーを光誘導体化することにより調製された。
【0164】
ポリマーG:BMA(14.9mL、13.3g、93.8ミリモル)、AMPS(8.32g、40.2ミリモル、30モル%)を、60mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。攪拌棒と共に、この反応混合物を、120mLの琥珀色のジャーに入れた。当該溶液を、1.5時間、アルゴンでスパージした。開始剤、Vazo(商標)52(0.06g、0.24ミリモル)を添加し、そして上記ジャーを58℃の水浴に入れた。上記反応を19時間実施し、次いでさらに2時間にわたり室温まで冷却した。ポリマーG及びポリマーHを得るための2つの異なる沈殿手順を完了するために、反応混合物を2つに分けた。
【0165】
ポリマーG:40mL(1/2)の反応混合物を、1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内に酸性型のAMPSを生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。上記コポリマーを25mLのTHF及び15mLのメタノールに溶解させ;透析チューブ(Spectra/Por膜、3500のMWカットオフ)内に置き;そして48時間の間、水中に置いた。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥させた。
【0166】
ポリマーH:ポリマーGの反応に由来する、残余の反応混合物40mLを、NaOH(3mL、10N)を含む1800mLの脱イオン水(5℃)に注ぎ、コポリマー内にAMPSのNa+塩形態を生成させた。当該コポリマーを、室温の換気フード内で24時間乾燥し、次いで、室温の減圧オーブン内で24時間乾燥させた。Na+の形態は、上記酸性型のコポリマーよりも硬く且つもろかった。上記コポリマーを25mLのTHF及び15mLのメタノールに溶解させ;透析チューブ(Spectra/Por膜、3500のMWカットオフ)内に置き;そして48時間の間、水中に置いた。上記コポリマーを、室温で一晩中乾燥させた。硫黄含有率の元素分析により、上塗りに用いられたポリマーG生成物は、約14%のAMPSを含むことが示された。
【0167】
低密度ポリエチレン(LDPE)の試験片(例えば、1.5cm×1.5cmシート)を、下記を用いてコーティングした:
パリレンベースコート上の感光性ピロリドン及びPBMA;
パリレンベースコート上のP(BMA−co−(9%)AMPS)のナトリウム塩(ポリマーE);
酸性型のP(BMA−co−(14%)AMPS)(ポリマーG);又は
パリレンベースコート上のP(BMA−co−(14%)AMPS)のナトリウム塩(ポリマーH)。
【0168】
上記試料を、室温で1時間、多血小板血しょうにさらし、そしてタイロードの緩衝剤で2回洗浄した。血小板を、室温において、PBS内で、ホルムアルデヒドを用いて固定した。試料を、脱イオン水ですすいだ。細胞膜を、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)内のTriton X−100を用いて透過化し、続いて、PBSですすいだ。
【0169】
血小板付着を、血小板アクチンの蛍光視覚化により測定した。簡潔にまとめると、上記血小板は、暗闇の中でインキュベートし、洗浄し、そして蛍光顕微鏡を用いて、スライド上でそれらを観察することにより、ファロイジン−Alexa Fluor 546(分子プローブ,A−22283)を用いて可視化された。画像は、200倍の画像で示された。
【0170】
結果
P(BMA−co−AMPS)は、PBMAと比較して、静的な人間の血小板付着を減らした(図5〜図7)。P(BMA−co−(14%)AMPS)(ポリマーG及びH)を用いてコーティングされた試料(図6及び図7)、特に酸性型(図7、ポリマーG)は、血小板の結合が非常に少なかった。これらの画像は、血小板の結合が非常に少ないことを示している。18モル%AMPS(ポリマーE)を用いて製造されたコポリマーは、PBMAがコーティングされた表面と比較して、血小板の付着を有意に減らさなかった。コーティングされていないLDPE及び感光性ピロリドンがコーティングされたLDPEは、対照としてはたらき、そして結果は予想通りであった。すなわち、コーティングされていないLDPE上では、血小板の付着が多く、そして感光性ピロリドンがコーティングされたLDPEでは、血小板の付着が少なかった。
【0171】
P(BMA−co−(14%)AMPS)(酸又はナトリウムの塩又は形態、ポリマーG及びH、それぞれ)でコーティングされた試料は、P(BMA又はPBMA−co−(9%)AMPS)(ポリマーE)表面よりも親水性であることが明らかであった。
【0172】
例4−PBMA/AMPSコポリマー組成物でコーティングされているステントは、in vitroの冠状動脈ステント血栓症モデルにおいて血液適合性を有する
この例は、本発明に従うPBMS/AMPSコポリマー組成物コーティングが、in vitroの冠状動脈ステント血栓症モデルの血液適合性を高めることを測定した。
【0173】
材料及び方法
試料調製
公知の方法により、ヘパリン化された牛の血液を調製した。血小板を、上記血液から単離し、そして公知の方法を用いて、放射性同位体(111In)でラベル付けし、次いで、上記血液に戻した。
【0174】
4種のコーティング組成物を、超音波コーターを用いてステントに適用した。全てのステントを処理して、パリレンC下塗りを形成した(パリレン;比較4A)。残ったステントを処理して、治療量のパクリタキセル;50%のPBMA、30%のPEVA(33%の酢酸ビニル含有量)及び20%のパクリタキセルのブレンド(PBMA/PEVA/PCLTXL;比較4B)、並びにさらに、第一のコーティング溶液中の50%のPBMA、30%のPEVA(33%酢酸ビニル含有量)、及び20%のパクリタキセルのブレンド、続いて2%のPBMA及び98%の光活性化ヘパリン(米国特許出願公開第2005/0244453号明細書(Stuckeら)に記載されるように製造される、参照により本明細書に組み入れる)(HEP;比較4C)を含む第2のコーティング溶液、又はP(BMA−co−(14%)AMPS)(例3に記載されるポリマーG)(4D)のどちらかを含むコーティング溶液を用いて上塗りを形成させた。表3は、冠状動脈血栓症モデル内で試験されたステントに適用されたコーティング組成物の順序を示す。
【0175】
【表3】

【0176】
上記ステントを、37℃の温度及び約75mL/分の流速における血流ループ回路システムを用いて、1時間の間、ヘパリン化した牛の血液にさらした。パリレンC下塗り及びPBMA/PEVA/パクリタキセルがコーティングされたステントは、対照としてはたらいた。
【0177】
1時間のところで実験を終了させたのち、上記ステントを、in vitro血液ループシステムから取り出し、そしてガラス瓶内に置き、標識付けた血小板のガンマカウントにより評価し、血小板付着の量を測定した(Sukavaneshvarら、ASAIO J.,44、M393−396、1998)。
【0178】
結果
結果を表4に示す。
【0179】
【表4】

【0180】
パリレン(商標)下塗りの上のポリマーGコーティングを有するステントのガンマカウントは、パリレン(商標)又はPBMA/PEVA上塗りを有する対照のステントのそれよりも非常に少なかった。パリレン(商標)コーティング及びポリマーGコーティングを有するステントのガンマカウントは、ヘパリンの第二コーティングを有するステントのそれと同等であった。これらの結果は、ポリマーGの表面は、短期間の血液との接触にさらされた場合に、血小板の接着を減らし、そしてヘパリン化した表面の血栓特性と同様の血栓特性を有することを示唆している。
【0181】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる単数形(「a」、「an」及び「the」)は、内容物が明らかに別のものを規定する場合でない限り、複数形の指示物を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「化合物(a compound)」を含む組成物の参照には、2種又は3種以上の化合物の混合物が含まれる。また、用語「又は」は、内容物が明らかに別のものを規定する場合でない限り、「及び/又は」を含む意味で一般的に用いられていることに留意すべきである。
【0182】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、用語「構成される」は、特定の課題を実施する又は特定の構成を採用するために構築又は構成されるシステム、機器、他の構造物を記載する。用語「構成される」は、他の同様の句、例えば、アレンジ及び構成される、構築及びアレンジされる、適合される及び構成される、適合、構築、製造及びアレンジされる等と交換可能に用いられうる。
【0183】
本明細書中の全ての出版物及び特許出願は、本明細書に関する当業界の水準を示す。
本発明は、種々の特定の且つ好ましい実施形態及び技術に関連して記載されてきた。しかし、本明細書の精神及び範囲内にありながら、多くの変形及び改良をなすことができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】図1は、対照のコーティングと、本発明に従うコポリマーコーティングとから、時間と共に溶出する活性薬剤、DMPIの量を図解的に説明する。
【図2】図2は、本発明に従うコポリマーコーティングから、時間と共に溶出する活性薬剤、DMPIの量を図解的に説明する。
【図3】図3は、本発明に従うコポリマーコーティングから、時間と共に溶出する活性薬剤、DMPIの量を図解的に説明する。
【0185】
【図4】図4は、本発明に従うコポリマーコーティングから、時間と共に溶出する活性薬剤、トリアムシノロンアセトニドの量を図解的に説明する。
【図5】図5は、PBMAがコーティングされた表面に結合した血小板を示す、蛍光顕微鏡写真を具体的に説明する。
【0186】
【図6】図6は、P(BMA−co−(14%)AMPS)のナトリウム塩でコーティングされた表面に結合した血小板が大きく減少したことを示す蛍光顕微鏡写真を具体的に説明する。
【図7】図7は、酸性型のP(BMA−co−(14%)AMPS)でコーティングされた表面に結合した血小板が大きく減少したことを示す蛍光顕微鏡写真を具体的に説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療するために構成された構造物;及び
活性薬剤及びランダムコポリマーを含む、前記構造物上に配置されているランダムコポリマー組成物;
を含む医療装置であって、
前記ランダムコポリマーが、極性モノマー単位を含み:
前記活性薬剤が、荷電しているか、極性を有するか、又は疎水性である。
【請求項2】
前記ランダムコポリマーが、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ランダムコポリマーが、約1.5モル%、約3モル%、又は約9モル%のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ランダムコポリマーが、酸性型のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記ランダムコポリマーが、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのアルカリ金属塩を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
埋め込むことができる装置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記構造物が基材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記構造物が表面を含み、当該表面に前記組成物が配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記活性薬剤が荷電している、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記活性薬剤が2KD未満の分子量を有し、そして25℃で10mg/mL超の水溶性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ランダムコポリマー組成物が複数の活性薬剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記複数の活性薬剤が、荷電している活性薬剤及び疎水性の活性薬剤を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、患者の中又は上に導入するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ランダムコポリマー組成物が、第二の(ブレンド)ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ランダムコポリマー組成物が血液適合性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
患者を治療するために構成された構造物;及び
前記構造物上に配置されている血液適合性のランダムコポリマー組成物;
を含む医療装置であって、
前記ランダムコポリマーは、極性モノマー単位を含む。
【請求項17】
前記ランダムコポリマーが、ブチルメタクリレート−co−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートコポリマーを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ランダムコポリマーが、約10〜約20モル%のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記ランダムコポリマーが、酸性型のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記ランダムコポリマーが、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートのアルカリ金属塩を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記血液適合性のランダムコポリマー組成物の下に溶出性の活性薬剤を含むポリマー組成物をさらに含む、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
溶出性の活性薬剤を含む前記ポリマー組成物が、前記ランダムコポリマー組成物を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
埋め込むことができる装置を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項24】
前記構造物が基材を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項25】
前記構造物が表面を含み、前記組成物が当該表面に配置されている、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記装置が、患者の中又は上に導入するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項27】
前記ランダムコポリマー組成物が、第二の(ブレンド)ポリマーをさらに含む、請求項16に記載の装置。
【請求項28】
前記ランダムコポリマーが、約15モル%のアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネートを含む、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−502355(P2009−502355A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524219(P2008−524219)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029555
【国際公開番号】WO2007/016405
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】